(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022049803
(43)【公開日】2022-03-30
(54)【発明の名称】クリアランス検出装置
(51)【国際特許分類】
G01B 11/14 20060101AFI20220323BHJP
B21D 51/30 20060101ALI20220323BHJP
【FI】
G01B11/14 H
B21D51/30 D
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020156026
(22)【出願日】2020-09-17
(71)【出願人】
【識別番号】391035430
【氏名又は名称】東洋製罐グループエンジニアリング株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100153497
【弁理士】
【氏名又は名称】藤本 信男
(74)【代理人】
【識別番号】100189083
【弁理士】
【氏名又は名称】重信 圭介
(72)【発明者】
【氏名】羽鳥 泰規
(72)【発明者】
【氏名】芦名 正人
(72)【発明者】
【氏名】高橋 和樹
【テーマコード(参考)】
2F065
【Fターム(参考)】
2F065AA22
2F065AA52
2F065BB06
2F065DD06
2F065FF02
2F065FF04
2F065GG04
2F065HH03
2F065JJ03
2F065MM02
2F065MM16
2F065PP22
2F065QQ03
2F065QQ21
2F065QQ24
2F065QQ29
2F065QQ31
2F065QQ45
2F065UU07
(57)【要約】
【課題】簡単な構成で、複数のシーミングチャックやシーミングロールを測定する場合にも、照射体や検出器を迅速に設置可能で、作業者の負担や作業時間の増加を抑制可能なクリアランス検出装置を提供すること。
【解決手段】照射体111と、照射体111から照射された照射光B1を検出可能な検出器112とを有するクリアランス検出装置100であって、照射体111および検出器112は、本体部110に配置され、本体部110は、シーミングチャックSCとリフタープレートPとの間に固定可能に構成され、照射体111は、照射光B1をシーミングチャックSCとシーミングロールR1・R2との間を通過可能に配置され、検出器112は、通過光B2を受光可能に配置されていること。
【選択図】
図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
容器の缶蓋巻締め機のシーミングチャックとシーミングロールとの間に照射光を照射する照射体と、照射体から照射された照射光を検出可能な検出器とを有するクリアランス検出装置であって、
前記照射体および前記検出器は、本体部に配置され、
前記本体部は、シーミングチャックとシーミングチャックの下方に配置されたリフタープレートとの間に固定可能に構成され、
前記照射体は、照射光をシーミングチャックとシーミングロールとの間を通過可能に配置され、
前記検出器は、シーミングチャックとシーミングロールとの間を通過した照射光である通過光を受光可能に配置されていることを特徴とするクリアランス検出装置。
【請求項2】
前記照射体および前記検出器は、前記本体部上の位置を変更して固定可能に構成されていることを特徴とする請求項1に記載のクリアランス検出装置。
【請求項3】
前記本体部には、照射光の照射方向を変更する照射側光路変更体が設けられ、
前記照射体からの照射光は、前記照射側光路変更体を経由してからシーミングチャックとシーミングロールとの間を通過することを特徴とする請求項1または請求項2に記載のクリアランス検出装置。
【請求項4】
前記本体部には、通過光の照射方向を変更する検出側光路変更体が設けられ、
通過光は、前記検出側光路変更体を経由してから前記検出器に照射されることを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれかに記載のクリアランス検出装置。
【請求項5】
前記本体部、前記照射体および前記検出器は、前記本体部がシーミングチャックとリフタープレートとの間に固定された際に、シーミングチャックより下方に位置することを特徴とする請求項1乃至請求項4のいずれかに記載のクリアランス検出装置。
【請求項6】
前記本体部は、シーミングチャックとリフタープレートとの間に発生する押圧力を検出可能な押圧力測定器を有することを特徴とする請求項1乃至請求項5のいずれかに記載のクリアランス検出装置。
【請求項7】
検出したクリアランスの値および・または検出した押圧力を記憶する記憶手段をさらに有することを特徴とする請求項1乃至請求項6のいずれかに記載のクリアランス検出装置。
【請求項8】
前記検出器は、通過光をデジタルデータとして取得可能であることを特徴とする請求項1乃至請求項7のいずれかに記載のクリアランス検出装置。
【請求項9】
前記検出器から取得したデジタルデータを自動的に解析して、シーミングチャックとシーミングロールとの間のクリアランスを算出可能な制御装置をさらに有することを特徴とする請求項8に記載のクリアランス検出装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、容器の缶蓋巻締め機のシーミングチャックとシーミングロールとの間に照射光を照射する照射体と、照射体から照射された照射光を検出可能な検出器とを有するクリアランス検出装置に関する。
【背景技術】
【0002】
一般的に、容器充填設備等で用いられる容器に缶蓋を巻締める缶蓋巻締め機として、容器に缶蓋を押さえつけるシーミングチャックと、シーミングチャックの周囲を回転しながら缶蓋を容器に巻締めるシーミングロールを用いるものが公知である。
このような缶蓋巻締め機は、運転開始時やメンテナンス時等に、容器や缶蓋の仕様に合わせて、シーミングチャックとシーミングロールとのクリアランスを調整する必要がある。
一般的には、ダイヤルゲージやシックネスゲージ等を用いて直接測定しながらシーミングチャックとシーミングロールとが規定の位置関係になるように調整する方法が行われており、特許文献1に記載されたような、光学的装置を用いてシーミングチャックとシーミングロールとの位置関係を確認する方法も公知である。
【0003】
この特許文献1に記載のクリアランス検出装置(光学的装置100)は、缶蓋巻締め機(巻締機)のシーミングチャック(チャック50)とシーミングロール(ロール52)との間に、シーミングチャック(チャック50)やシーミングロール(ロール52)よりも下方に配置された照射体(レーザー光源)から上方に向けて照射された照射光(光)を照射側光路変更体(プリズム108)を介して通過させ、さらに検出側光路変更体(プリズム110)を介して検出器(CCDカメラ114)で検出することで、シーミングチャック(チャック50)とシーミングロール(ロール52)との間のクリアランスの形状を検出するものである。
さらに、検出器(CCDカメラ114)で検出したクリアランスの形状データを、自動的にあるいはオペレーターの補助によって、適切なソフトウェアを通じて解析することで、クリアランスの測定値を得ることができるものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところが、特許文献1に記載のクリアランス検出装置は、未だ改善の余地があった。
すなわち、特許文献1に記載のクリアランス検出装置は、照射体や照射側光路変更体、検出器や検出側光路変更体がそれぞれ複数のシーミングチャックやシーミングロールを測定する場合、照射体や照射側光路変更体、検出器や検出側光路変更体の位置をそれぞれ別々に移動して調整する必要があるため、作業者の負担や作業時間が増加してしまう虞があった。
【0006】
本発明は、上記課題を解決するものであり、簡単な構成で、複数のシーミングチャックやシーミングロールを測定する場合にも、照射体や検出器を迅速に設置可能で、作業者の負担や作業時間の増加を抑制可能なクリアランス検出装置を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明のクリアランス検出装置は、容器の缶蓋巻締め機のシーミングチャックとシーミングロールとの間に照射光を照射する照射体と、照射体から照射された照射光を検出可能な検出器とを有するクリアランス検出装置であって、前記照射体および前記検出器は、本体部に配置され、前記本体部は、シーミングチャックとシーミングチャックの下方に配置されたリフタープレートとの間に固定可能に構成され、前記照射体は、照射光をシーミングチャックとシーミングロールとの間を通過可能に配置され、前記検出器は、シーミングチャックとシーミングロールとの間を通過した照射光である通過光を受光可能に配置されていることにより、前記課題を解決するものである。
【発明の効果】
【0008】
請求項1に係るクリアランス検出装置によれば、照射体および検出器は本体部に配置され、本体部がリフタープレートとシーミングチャックとの間に挟まれて固定されるため、照射体や検出器の本体部上での位置を一度調整してしまえば、同じ缶蓋巻締め機に設けられた複数のヘッドのシーミングチャックとシーミングロールとのクリアランスを測定する際に、改めて照射体や検出部の位置を調整する手間を省くことができ、作業時間を低減できる。
また、照射体からの照射光(通過光)を検出器で検出してシーミングチャックとシーミングロールとのクリアランスの形状を捉えることができるため、立体的な形状に直接ゲージを当てて測定する場合に比べて測定誤差が少なく、測定者ごとの個人差も出ず、確実にシーミングチャックとシーミングロールとの位置関係を適正なものに調整できる。
【0009】
請求項2に記載の構成によれば、照射体および検出器は、本体部上の位置を変更して固定可能に構成されているため、シーミングチャックやシーミングロールの形状や径が異なるヘッドに対しても、本体部上での照射体および検出器の簡単な位置合わせのみで迅速にクリアランスを検出できる。
請求項3に記載の構成によれば、本体部には照射側光路変更体が設けられ、照射光は、照射側光路変更体を経由してからシーミングチャックとシーミングロールとの間を通過するため、照射体の位置を缶蓋巻締め機に干渉しない自由な位置に配置できる。
【0010】
請求項4に記載の構成によれば、本体部には検出側光路変更体が設けられ、通過光は、検出側光路変更体を経由してから検出器に照射されるため、検出器の位置を缶蓋巻締め機に干渉しない自由な位置に配置できる。
請求項5に記載の構成によれば、本体部、照射体および検出器は、本体部がシーミングチャックとリフタープレートとの間に固定された際に、シーミングチャックより下方に位置するため、測定するヘッドに隣接するシーミングチャックやシーミングロールとの干渉が少なく、クリアランス検出装置の調整操作が容易に実施できる。
【0011】
請求項6に記載の構成によれば、本体部は、シーミングチャックとリフタープレートとの間に発生する押圧力を検出可能なため、缶蓋巻締め機のヘッドの調整時間をより一層短縮でき、作業効率も向上できる。
請求項7に記載の構成によれば、検出したクリアランスの値および・または検出した押圧力を記憶する記憶手段をさらに有するため、シーミングチャックとシーミングロールとの適正な位置関係を示すクリアランスや適正な押圧力の値を記憶しておくことで、次回シーミングチャックやシーミングロールの位置を調整する際に、前回調整時との数値の差を簡単に特定でき、迅速に適正な位置に調整することができる。
【0012】
請求項8に記載の構成によれば、検出器は、通過光をデジタルデータとして取得可能であるため、作業者の読み取りや書き取りといった作業による誤入力の可能性を排除でき、確実に正しい値を記録することができる。
請求項9に記載の構成によれば、検出器から取得したデジタルデータを自動的に解析して、シーミングチャックとシーミングロールとの間のクリアランスを算出可能な制御装置をさらに有するため、作業者はクリアランス検出装置を正しい位置にセットすることのみで、簡単にシーミングチャックとシーミングロールとの間のクリアランスの状態を知ることができ、より一層迅速に適正な位置に調整することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】生産ラインLに配置された缶蓋巻締め機Mの斜視図。
【
図2】生産ラインLに配置された缶蓋巻締め機Mの拡大図。
【
図3】缶蓋巻締め機MのシーミングチャックSCと第1シーミングロールR1と第2シーミングロールR2とリフタープレートPとの位置関係を示す拡大図。
【
図4】缶蓋巻締め機Mによる容器への缶蓋CLの巻締め時の各部の位置関係を示す模式断面図。
【
図5】本発明の一実施形態に係るクリアランス検出装置100の斜視図。
【
図6】本発明の一実施形態に係るクリアランス検出装置100の、位置決め部材115を除いた各部の位置関係を示す斜視図。
【
図7】本発明の一実施形態に係るクリアランス検出装置100を缶蓋巻締め機Mに装着した状態を示す斜視図。
【
図8】本発明の一実施形態に係るクリアランス検出装置100の、缶蓋巻締め機Mに装着した状態を示す断面模式図。
【
図9】本発明の一実施形態に係るクリアランス検出装置100の、照射体111から検出器112までの光路を示す斜視図。
【
図10】本発明の一実施形態に係るクリアランス検出装置100が検出する、第1シーミングロールR1とシーミングチャックSCとの間の形状を示す投影図の模式図。
【
図11】本発明の一実施形態に係るクリアランス検出装置100の、シーミングチャックSCとシーミングチャックSCbとの外径の違いによる位置関係の変化を示す模式断面図。
【
図12】本発明の一実施形態に係るクリアランス検出装置100が検出した、シーミングロールR1とシーミングチャックSCとの間の形状の解析手順1を示す説明図。
【
図13】本発明の一実施形態に係るクリアランス検出装置100が検出した、シーミングロールR1とシーミングチャックSCとの間の形状の解析手順2を示す説明図。
【
図14】本発明の一実施形態に係るクリアランス検出装置100が検出する、第2シーミングロールR2とシーミングチャックSCとの間の形状を示す投影図の模式図。
【
図15】本発明の一実施形態に係るクリアランス検出装置100の検出器112で取り込んだ画像を基に解析する手順を示したフロー図。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下に本発明の一実施形態に係るクリアランス検出装置100について、図面に基づいて説明する。
【0015】
クリアランス検出装置100は、例えば、
図1乃至
図4に示すように、生産ラインLに配置される缶蓋巻締め機Mの、第1シーミングロールR1および第2シーミングロールR2と、シーミングチャックSCとの間のクリアランスを検出する装置である。
缶蓋巻締め機Mは、缶蓋CLを被せた容器CをシーミングチャックSCと挟み所定の押圧力を与えるリフターユニット∪のリフタープレートPをさらに有しており、缶蓋CLの側方から第1シーミングロールR1を近づけて缶蓋CLと容器Cの口部を抱き合わせるように巻き込み、次に第2シーミングロールR2を近づけて缶蓋CLと容器Cの口部を圧着するように締める二重巻締法による接合を行うものである。
【0016】
なお、リフターユニット∪はカム等により容器Cを上下動する機構を有し、リフタープレートPの下方には所定の押圧力でリフタープレートPを上方に付勢する弾性部材(図示しない)が配置されており、缶蓋CLおよび容器CをシーミングチャックSCで挟んだ際にリフタープレートPを介して圧縮変形した弾性部材(図示しない)によって、缶蓋CLおよび容器Cへの押圧力が発生する。
【0017】
クリアランス検出装置100は、
図5および
図6に示すように、本体部110と、本体部110の上部に設けられたチャック嵌合部116と、本体部110の下部に設けられた押圧力測定器117とを有している。
本体部110には、第1シーミングロールR1および第2シーミングロールR2と、シーミングチャックSCとの間に照射光を照射する照射体111と、第1シーミングロールR1および第2シーミングロールR2と、シーミングチャックSCとの間を通過した照射光である通過光を検出する検出器112と、第1照射側光路変更体113aと、第2照射側光路変更体113bと、第1検出側光路変更体114aと、第2検出側光路変更体114bとがそれぞれ位置決め部材115を介して配置されている。
【0018】
押圧力測定器117には、
図8に示すように、押圧力測定器117の高さを調整するアジャストスクリュー118と、ロードセルホルダー120とが設けられており、ロードセルホルダー120とアジャストスクリュー118とは、ベアリング119を介して接続されている。
また、押圧力測定器117には、本体部110と接続する接続部123が設けられ、接続部123とアジャストスクリュー118とは、ネジ係合している。
【0019】
ロードセルホルダー120内には、ロードセルプレート121と、ロードセルプレート121とロードセルホルダー120との間に挟まれるようにロードセル122が設けられている。
ロードセル122は、アンプ(図示しない)を介してパソコン等の制御装置(図示しない)に接続されており、ロードセル122の測定値を制御装置(図示しない)の画面上に表示できる。
【0020】
なお、照射体111、検出器112、第1照射側光路変更体113a、第2照射側光路変更体113b、第1検出側光路変更体114a、第2検出側光路変更体114bは、位置決め部材115によって本体部110上での固定位置を調整可能に構成されている。
また、チャック嵌合部116および押圧力測定器117は、本体部110から脱着可能に構成されている。
【0021】
次に、本発明の一実施形態に係るクリアランス検出装置100による、クリアランスの検出方法および測定方法について、
図7乃至
図15に基づいて説明する。
【0022】
まず、
図7乃至
図9に示すように、リフタープレートP上にロードセルプレート121を載せ、シーミングチャックSCにチャック嵌合部116が嵌合するように位置合わせして、シーミングチャックSCとリフタープレートPとでクリアランス検出装置100を挟む。
【0023】
次に、予め本体部110に位置決め部材115を介して仮止めした照射体111、検出器112、第1照射側光路変更体113a、第2照射側光路変更体113b、第1検出側光路変更体114a、第2検出側光路変更体114bを、照射体111からの照射光B1が第1シーミングロールR1とシーミングチャックSCとの間を通過可能且つ、通過光B2が検出器112で検出可能な位置に調整し、固定する。
【0024】
なお、本実施形態では、照射体111はレーザー光を照射し、検出器112はレーザー光を検出可能なCCDカメラで構成され、照射体111および検出器112は、互いにシーミングチャックSCよりも下方で同じ高さ且つ同じ向きで水平方向に照射光B1を照射可能または水平方向からの通過光B2を検出可能に配置されている。
また、本実施形態では、第1照射側光路変更体113a、第2照射側光路変更体113b、第1検出側光路変更体114a、第2検出側光路変更体114bは、いずれもプリズムで形成されており、入射する照射光B1または通過光B2の進行方向を90度変えるように配置されている。
これによって、缶蓋巻締め機Mの狭い箇所へ照射体111や検出器112を進入させる必要がなく、測定対象以外のシーミングロールやシーミングチャックにも干渉することなく作業を進めることができる。
【0025】
以上のようにセットしたクリアランス検出装置100によって、照射体111から水平方向に照射された照射光B1は第1照射側光路変更体113aによって進行方向を上方に変え、さらに第2照射側光路変更体113bによって進行方向をクリアランスに向かう水平方向に変え、クリアランスを通過した照射光である通過光B2は第2検出側光路変更体114bによって進行方向を下方に変え、さらに第1検出側光路変更体114aによって進行方向を検出器に向かう水平方向に変えて検出器112に到達する。
この通過光B2を検出器112で捉えると、
図10に示すような平面画像データを取得できる。
【0026】
この平面画像データから、第1シーミングロールR1とシーミングチャックSCとの間のクリアランス、例えば、バーチカルランニングクリアランスVCやロールクリアランスRCを測定することで、第1シーミングロールR1とシーミングチャックSCとの位置関係を簡単に確認できる。
また、バーチカルランニングクリアランスVCおよびロールクリアランスRCをゲージ等を立体的な形状に直接当てて測定する場合に比べて、測定誤差や作業者ごとの個人差が発生することがないため、第1シーミングロールR1とシーミングチャックSCとを、確実に適正な位置に調整できる。
また、非接触でバーチカルランニングクリアランスVCおよびロールクリアランスRCを測定可能なため、シーミングロールやシーミングチャックを傷つけることがない。
【0027】
なお、クリアランス検出装置100には押圧力測定器117が設けられており、クリアランス検出装置100をシーミングチャックSCとリフタープレートPとで挟んで固定する際に、容器Cおよび缶蓋CLへの押圧力の測定も同時に実施可能であるため、第1シーミングロールR1とシーミングチャックSCとの間のクリアランスの調整時に、測定器具を交換することなくシーミングチャックSCとリフタープレートPとによる容器Cおよび缶蓋CLへの押圧力を調整できる。
【0028】
ここで、押圧力測定器117を用いた、シーミングチャックSCとリフタープレートPによる容器Cおよび缶蓋CLへの押圧力の調整方法の具体例ついて説明する。
図8に示すように、シーミングチャックSCとリフタープレートPとの間に挟むようにクリアランス検出装置100を配置し、制御装置(図示しない)の画面に表示されているロードセル122の測定値を0に合わせる。
【0029】
このとき、押圧力測定器117のアジャストスクリュー118と接続部123とがネジ係合されているため、アジャストスクリュー118を回転させることで、接続部123を上下方向に移動可能、すなわち、クリアランス検出装置100全体の高さを調整可能に構成されている。
アジャストスクリュー118を回転させてクリアランス検出装置全体の高さを所定量伸ばすと、シーミングチャックSCは高さ方向の位置は変わらないためリフタープレートPが下方に押し込まれ、リフタープレートPを介して弾性部材(図示しない)が圧縮されるため、シーミングチャックSCとリフタープレートPとに挟まれた押圧力測定器117にかかる押圧力がロードセル122の測定値として制御装置(図示しない)の画面に表示される。
【0030】
これによって、ロードセル122の測定値の変化を確認しながらリフターユニット∪に設けられたアジャストスクリュー(図示しない)で弾性部材(図示しない)のセット長(圧縮量)を調整することで、シーミングチャックSCとリフタープレートPとで缶蓋CLおよび容器Cを挟んだ際に発生する押圧力を、簡単に適正値に調整できる。
【0031】
また、缶蓋巻締め機Mには複数のヘッドが搭載されているが、一つのヘッドの第1シーミングロールR1とシーミングチャックSCの測定時の位置に照射体111、検出器112、第1照射側光路変更体113a、第2照射側光路変更体113b、第1検出側光路変更体114a、第2検出側光路変更体114bを固定しておけば、クリアランス検出装置100を他のヘッドのシーミングチャックとリフタープレートとの間に挟むだけで他のヘッドの第1シーミングロールとシーミングチャックとのクリアランスを測定を開始でき、作業効率が向上する。
【0032】
また、チャック嵌合部116は本体部110から脱着可能に構成されているため、形状の異なるシーミングチャックやリフタープレートを使用した缶蓋巻締め機に対しても、それぞれの形状に適合するチャック嵌合部116を簡単に付け替えて対応できる。
なお、シーミングチャックを径の異なるものに変えた場合、照射光B1の光路に対するシーミングチャックの側面の位置が変わるが、位置決め部材115の位置を調整して第1照射側光路変更体113a、第2照射側光路変更体113b、第1検出側光路変更体114a、第2検出側光路変更体114bの位置を変えることで照射光B1の光路を所望の位置に変えて対応することができる。
【0033】
また、
図11に示すように、照射光B1の光路と取り替えたシーミングチャックSCbの側面との相対距離が変わらないように、チャック嵌合部116bの中心軸Cbの位置をチャック嵌合部116の中心軸Caから変更し、ロードセル122の中心軸Ccの位置からずらして本体部110に取り付けることで、位置決め部材115の位置を調整せずに、チャック嵌合部116bの付け替えのみで対応することができる。
なお、同一仕様の缶蓋巻締め機で取り扱う缶蓋CLの外径は大きく変わることがないため、同一仕様の缶蓋巻締め機でシーミングチャックSCの外径が変更されても、ロードセル122の中心軸Ccとチャック嵌合部116の中心軸とのずれは微小であり、押圧力測定器117によって安定して押圧力を測定できるものである。
【0034】
さらに、検出器112で取得した画像をデジタルデータとして自動的に解析するソフトウェアを用いることで、作業者による測定値の読み取りや書き取りといった作業による誤入力の可能性を排除でき、確実に正しい値を記録することができる。
【0035】
ここで、検出器112でデジタルデータとして取り込んだ画像を制御装置を用いて解析する場合の、バーチカルランニングクリアランスVCおよびロールクリアランスRCの算出方法の具体例について説明する(処理の流れを
図15に示す。)。
なお、説明のため、検出器112は画素数1200×1600のCCDカメラとするが、検出器112の仕様はこれに限定されない。
【0036】
まず、取り込んだ画像を二値化処理およびラベリング処理をし、レーザー光を捉えた箇所のみ、すなわち、
図12に示すように、第1シーミングロールR1とシーミングチャックSCとのクリアランス部分のドットのみを黒色表示したラベリング処理画像を取得する。
なお、実際に二値化処理およびラベリング処理を施した画像は第1シーミングロールR1とシーミングチャックSCとのクリアランス部分は黒く塗りつぶされた画像となるが、説明のため
図12および
図13では輪郭線と無数の細かい点で示す。
次に、ラベリング処理画像の上下左右から見たクリアランス部分の輪郭線(境界線)のデータを取得し、画像上の座標(画像の横方向をX座標、画像の縦方向をY座標とする)を規定する。
【0037】
規定した座標データを基に、シーミングチャックSCの上面座標を算出する。
まず、ラベリング処理画像内のシーミングチャックSCの側面のうち、X軸で最も右側に位置する箇所を座標Ps(Xs、Ys)とし、座標PsからY軸上方向にのばした仮想線LsがシーミングチャックSCの上面と交差した箇所を座標Pc(Xs、Yc1)とする。
座標Pc(Xs、Yc1)からX軸右方向に1ドットずつ座標をずらし、当該X座標でのチャック上面と交差する箇所のY座標をYc2、Yc3~Yc100と100ドット分取得し、その平均値をシーミングチャックSCの上面を示す直線Lc(Yc)とする。
【0038】
次に、仮想線Lsと第1シーミングロールR1の下面とが交差した箇所を座標Pr(Xs、Yr1)とする。
座標Pr(Xs、Yr1)からX軸右方向に1ドットずつ座標をずらし、当該X座標での第1シーミングロールR1の下面と交差する箇所のY座標をYr2、Yr3~Yr100と100ドット分取得し、第1シーミングロールR1の下面を示す回帰直線Lrを算出する。
【0039】
同様に、シーミングチャックSCの上面LcをY軸下方向に60ドット移動した場合にシーミングチャックSCの側面と交差する箇所の座標Pv(Xc1、Yc+60)とし、シーミングチャックSCの上面LcをY軸下方向に500ドット移動した箇所まで1ドットずつ座標をずらし、当該Y座標でのシーミングチャックSCの側面と交差する箇所のX座標をXc1、Xc2~Xc441と441ドット分取得し、シーミングチャックSCの側面を示す回帰直線Lvを算出する。
シーミングチャックSCの上面を示す直線Lcと回帰直線Lvとが交差する箇所を座標Pt(Xt、Yc)とし、座標PtからY軸上方向にのばした仮想線Ltが回帰直線Lrと交差する箇所を座標Pf(Xt、Yf)とする。
座標Pfと座標Ptとの間の距離が第1シーミングロールR1の下面からシーミングチャックSCの上面のまでの最短距離、すなわち、バーチカルランニングクリアランスVCである。
【0040】
次に、回帰直線Lvを基準線とした新たな座標軸Xv軸と、Xv軸に直交する座標軸Yv軸を規定し、回帰直線LvからXv軸左側に向かってデータスキャンを行う。
これによって、回帰直線Lvから第1シーミングロールR1側に向かう範囲は、回帰直線LvからXv軸方向、すなわち、回帰直線Lvから垂直方向に距離を測定することが可能な角度補正をかけたものに相当する。
【0041】
回帰直線Lvを基準線としたデータスキャン後、第1シーミングロールR1の側面のうち最も回帰直線Lvに近い箇所の座標Pb(Xvb、Yvb)を取得する。
座標Pbから回帰直線LvまでのXv軸方向最短距離が、第1シーミングロールR1の側面からシーミングチャックSCの側面までの最短距離、すなわち、ロールクリアランスRCである。
【0042】
缶蓋巻締め機Mの全てのヘッドの第1シーミングロールR1とシーミングチャックSCとの間のクリアランスを測定して適正な位置に調整した後、同様に第2シーミングロールR2とシーミングチャックSCとの間のクリアランスを通過した照射光である通過光を検出器112で捉えると、
図14に示すような平面画像データを取得できる。
この平面画像データから、第2シーミングロールR2とシーミングチャックSCとの間のクリアランス、例えば、バーチカルランニングクリアランスVCや、ロールクリアランスRCを測定することで、第2シーミングロールR2とシーミングチャックSCとの位置関係を簡単に確認でき、第2シーミングロールR2とシーミングチャックSCとを、確実に適正な位置に調整できる。
【0043】
以上、本発明の実施形態を詳述したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された本発明を逸脱することなく種々の設計変更を行うことが可能である。
【0044】
なお、上述した実施形態では、照射体はレーザー光を照射するものとして説明したが、照射体の構成はこれに限定されず、例えば、照射体が発光ダイオードであってもよく、赤外線照射装置であってもよい。
また、上述した実施形態では、検出器はCCDカメラであるとして説明したが、検出器の構成はこれに限定されず、例えば、CMOSセンサなど他の撮像素子でもよく、白黒でもカラーでも画像がゆがまずに検出できればよい。また、通過光を半透明の板の裏側に投影してシーミングロールとシーミングチャックとの間のクリアランスの輪郭をなぞるトレース台でもよい。
【0045】
また、上述した実施形態では、第1シーミングロールとシーミングチャックとのクリアランスを測定した後に第2シーミングロールとシーミングチャックとのクリアランスを測定するものとして説明したが、測定手順はこれに限定されず、例えば、第2シーミングロールとシーミングチャックとのクリアランスを測定した後に第1シーミングロールとシーミングチャックとのクリアランスを測定してもよく、ヘッドごとに交互に測定してもよい。
また、上述した実施形態では、照射側光路変更体および検出側光路変更体は入射した光の進行方向を90度変えるプリズムで形成されているものとして説明したが、照射側光路変更体および検出側光路変更体の構成はこれに限定されず、例えば、入射した光の進行方向を60度変えるプリズムで形成されていてもよく、鏡面で形成されていてもよい。
【0046】
また、上述した実施形態では、照射体から照射された照射光は、第1照射側光路変更体と第2照射側光路変更体を通過してシーミングロールとシーミングチャックとの間を通過し、通過光として第2検出側光路変更体と第1検出側光路変更体を通過して検出器で検出するものとして説明したが、照射体から照射された照射光が検出器に検出されるまでの過程はこれに限定されず、例えば、照射光が通過する照射側光路変更体が1つや3つ以上でもよく、通過光が通過する検出側光路変更体が1つや3つ以上でもよく、照射側光路変更体や検出側光路変更体がなくてもよい。
また、上述した実施形態では、本体部の下部にはロードセルが設けられているものとして説明したが、クリアランス検出装置の構成はこれに限定されず、例えば、ロードセルが本体部とチャック嵌合部との間に設けられていてもよく、ロードセルがなくてもよい。
【0047】
また、上述した実施形態では、検出器で取得した画像から、バーチカルランニングクリアランスとロールクリアランスを測定および・または解析するものとして説明したが、測定箇所や解析方法はこれに限定されず、例えば、バーチカルランニングクリアランスとロールクリアランス以外の箇所を測定してもよく、シーミングロールとシーミングチャックとの間の適正な位置関係を示す投影画像に、検出器で取得した画像を重ね合わせてシーミングロールとシーミングチャックとの位置関係を調整するようにしてもよい。
また、上述した実施形態では、照射体、検出器、第1照射側光路変更体、第2照射側光路変更体、第1検出側光路変更体、第2検出側光路変更体は、位置決め部材を介して本体部に固定されるものとして説明したが、本体部への固定方法はこれに限定されず、例えば、位置決め部材を介さずに直接本体部に固定されていてもよい。
【符号の説明】
【0048】
100 ・・・ クリアランス検出装置
110 ・・・ 本体部
111 ・・・ 照射体
112 ・・・ 検出器
113a ・・・ 第1照射側光路変更体
113b ・・・ 第2照射側光路変更体
114a ・・・ 第1検出側光路変更体
114b ・・・ 第2検出側光路変更体
115 ・・・ 位置決め部材
116、116b ・・・ チャック嵌合部
117 ・・・ 押圧力測定器
118 ・・・ アジャストスクリュー
119 ・・・ ベアリング
120 ・・・ ロードセルホルダー
121 ・・・ ロードセルプレート
122 ・・・ ロードセル
123 ・・・ 接続部
B1 ・・・ 照射光
B2 ・・・ 通過光
C ・・・ 容器
CL ・・・ 缶蓋
L ・・・ 生産ライン
M ・・・ 缶蓋巻締め機
P ・・・ リフタープレート
∪ ・・・ リフターユニット
R1 ・・・ 第1シーミングロール
R2 ・・・ 第2シーミングロール
SC、SCb ・・・ シーミングチャック
Ca ・・・ シーミングチャックSCおよびチャック嵌合部116の中心軸
Cb ・・・ シーミングチャックSCbおよびチャック嵌合部116bの中心軸
Cc ・・・ ロードセル122の中心軸
RC ・・・ ロールクリアランス
VC ・・・ バーチカルランニングクリアランス
Ps ・・・ ラベリング処理画像内のシーミングチャックSCの側面のうちX軸方向で最も右側に位置する箇所の座標
Ls ・・・ ラベリング処理画像内の座標PsからY軸上方向にのばした仮想線
Pc ・・・ ラベリング処理画像内の仮想線LsがシーミングチャックSCの上面と交差した箇所の座標
Lc ・・・ ラベリング処理画像内のシーミングチャックSCの上面を示す直線
Pr ・・・ ラベリング処理画像内の仮想線Lsと第1シーミングロールR1の下面とが交差した箇所の座標
Lr ・・・ ラベリング処理画像内の第1シーミングロールR1の下面を示す回帰直線
Pv ・・・ ラベリング処理画像内のシーミングチャックSCの上面LcをY軸下方向に60ドット移動した場合にシーミングチャックSCの側面と交差する箇所の座標
Lv ・・・ ラベリング処理画像内のシーミングチャックSCの側面を示す回帰直線
Pt ・・・ ラベリング処理画像内の直線Lcと回帰直線Lvとが交差する箇所の座標
Lt ・・・ ラベリング処理画像内の座標PtからY軸上方向にのばした仮想線
Pf ・・・ ラベリング処理画像内の仮想線Ltと回帰直線Lrとが交差する箇所の座標
Pb ・・・ ラベリング処理画像内の第1シーミングロールR1の側面のうち、座標軸Xv軸方向で最も回帰直線Lvに近い箇所の座標