(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022049806
(43)【公開日】2022-03-30
(54)【発明の名称】ズームレンズおよび撮像装置
(51)【国際特許分類】
G02B 15/167 20060101AFI20220323BHJP
G02B 15/20 20060101ALN20220323BHJP
G02B 13/18 20060101ALN20220323BHJP
【FI】
G02B15/167
G02B15/20
G02B13/18
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020156033
(22)【出願日】2020-09-17
(71)【出願人】
【識別番号】000001007
【氏名又は名称】キヤノン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100110412
【弁理士】
【氏名又は名称】藤元 亮輔
(74)【代理人】
【識別番号】100104628
【弁理士】
【氏名又は名称】水本 敦也
(74)【代理人】
【識別番号】100121614
【弁理士】
【氏名又は名称】平山 倫也
(72)【発明者】
【氏名】井元 悠
【テーマコード(参考)】
2H087
【Fターム(参考)】
2H087KA02
2H087KA03
2H087MA12
2H087MA18
2H087NA14
2H087PA15
2H087PA16
2H087PB20
2H087QA02
2H087QA07
2H087QA17
2H087QA22
2H087QA26
2H087QA34
2H087QA42
2H087QA45
2H087RA05
2H087RA12
2H087RA13
2H087RA32
2H087SA23
2H087SA27
2H087SA30
2H087SA32
2H087SA43
2H087SA47
2H087SA49
2H087SA50
2H087SA53
2H087SA55
2H087SA63
2H087SA64
2H087SA65
2H087SA72
2H087SA75
2H087SA76
2H087SB01
2H087SB12
2H087SB15
2H087SB16
2H087SB23
2H087SB25
2H087SB31
2H087SB33
2H087SB41
2H087UA06
(57)【要約】
【課題】小型軽量、高変倍比、高い光学性能の点で有利なズームレンズを提供する。
【解決手段】ズームレンズは、物体側から像側へ順に配置された、変倍のためには移動しない正の屈折力の第1レンズ群L1と、変倍の場合に移動する2つ又は3つの中間レンズ群L2、L3と、正の屈折力の最終レンズ群L4からなる。中間レンズ群のうち最も物体側のレンズ群と最も像側のレンズ群は負の屈折力を有する。第1レンズ群は少なくとも1つの負レンズと5つの正レンズを含み、該第1レンズ群の一部が焦点調節のために移動する。最終レンズ群の横倍率をβR、ズームレンズの空気換算長としてのバックフォーカスをbf、第1レンズ群のうち最も物体側のレンズ面から最終レンズ群のうち最も像側のレンズ面までの距離とバックフォーカスbfとの和をTLとして、-2.5≦βR≦-1.7および0.16≦bf/TL≦0.25なる条件を満足する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
物体側から像側へ順に配置された、
変倍のためには移動しない正の屈折力の第1レンズ群と、
変倍の場合に移動する2つ又は3つの中間レンズ群と、
正の屈折力の最終レンズ群とからなるズームレンズであって、
前記中間レンズ群のうち最も物体側のレンズ群と最も像側のレンズ群とは負の屈折力を有し、
前記第1レンズ群は少なくとも1つの負レンズと5つの正レンズとを含み、該第1レンズ群の一部が焦点調節のために移動し、
前記最終レンズ群の横倍率をβR、前記ズームレンズの空気換算長としてのバックフォーカスをbf、前記第1レンズ群のうち最も物体側のレンズ面から前記最終レンズ群のうち最も像側のレンズ面までの距離と前記バックフォーカスbfとの和をTLとして、
-2.5≦βR≦-1.7
0.16≦bf/TL≦0.25
なる条件式を満足することを特徴とするズームレンズ。
【請求項2】
前記最終レンズ群は、該最終レンズ群内で最も長い空気間隔を境として、正の屈折力のFR群と正の屈折力のRR群とからなり、
前記FR群の焦点距離をfFR、前記RR群の焦点距離をfRRとして、
0.3≦fFR/fRR≦0.7
なる条件式を満足することを特徴とする請求項1に記載のズームレンズ。
【請求項3】
前記最終レンズ群は、複数の負レンズを含み、
前記複数の負レンズのうち最も屈折率が高い負レンズのd線における屈折率をndRn、焦点距離をfRn、前記最終レンズ群の焦点距離をfRとして、
2.05≦ndRn
-0.7≦fRn/fR≦-0.1
なる条件式を満足することを特徴とする請求項1または2に記載のズームレンズ。
【請求項4】
前記FR群は1つ以上の正レンズを含み、
d線を基準とするアッベ数νdとg線およびF線における部分分散比θgFとに関するマップにおいてνd=60.49、θgF=0.5436の座標点とνd=36.26、θgF=0.5828の座標点とを結ぶ直線からの部分分散比θgFにおける差を異常分散性とし、前記FR群に含まれる前記正レンズの異常分散性の平均値をΔθgFFRpとして、
-0.010≦ΔθgFFRp≦-0.002
なる条件式を満足することを特徴とする請求項2に記載のズームレンズ。
【請求項5】
前記FR群は1つ以上の負レンズを含み、
d線を基準とするアッベ数νdとg線およびF線における部分分散比θgFとに関するマップにいてνd=60.49、θgF=0.5436の座標点とνd=36.26、θgF=0.5828の座標点とを結ぶ直線からの部分分散比θgFにおける差を異常分散性とし、前記FR群に含まれる前記負レンズの異常分散性の平均値をΔθgFFRnとして、
0.000<ΔθgFFRn≦0.050
なる条件式を満足することを特徴とする請求項2または4に記載のズームレンズ。
【請求項6】
前記RR群は1つ以上の正レンズを含み、
d線を基準とするアッベ数νdとg線およびF線における部分分散比θgFとの関するマップにおいてνd=60.49、θgF=0.5436の座標点とνd=36.26、θgF=0.5828の座標点とを結ぶ直線からの部分分散比θgFにおける差を異常分散性とし、前記RR群に含まれる前記正レンズの異常分散性の平均値をΔθgFRRpとして、
0.005≦ΔθgFRRp≦0.050
なる条件式を満足することを特徴とする請求項2、4または5に記載のズームレンズ。
【請求項7】
前記RR群は1つ以上の負レンズを含み、
d線を基準とするアッベ数νdとg線およびF線における部分分散比θgFとに関するマップにおいてνd=60.49、θgF=0.5436の座標点とνd=36.26、θgF=0.5828の座標点とを結ぶ直線からの部分分散比θgFにおける差を異常分散性とし、前記RR群に含まれる前記負レンズの異常分散性の平均値をΔθgFRRnとして、
-0.010≦ΔθgFRRn≦0.010
なる条件を満足することを特徴とする請求項2、4、5または6に記載のズームレンズ。
【請求項8】
前記第1レンズ群は、物体側から像側へ順に、
焦点調節のためには移動しない負の屈折力の1aレンズ群と、
焦点調節のために像側へ移動する正の屈折力の1bレンズ群と、
焦点調節のためには移動しない正の屈折力の1cレンズ群とからなり、
前記1aレンズ群は、少なくとも2つの負レンズと1つの正レンズとを含み、
前記1bレンズ群は、少なくとも1つの正レンズを含み、
前記1cレンズ群は、少なくとも1つの負レンズと少なくとも3つの正レンズとを含むことを特徴とする請求項1から7のいずれか一項に記載のズームレンズ。
【請求項9】
請求項1から8のいずれか一項に記載のズームレンズと、
該ズームレンズにより形成された像を撮る撮像素子とを有することを特徴とする撮像装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ズームレンズおよび撮像装置に関する。
【背景技術】
【0002】
放送用カメラ、映画用カメラ、デジタルスチルカメラおよびビデオカメラ等の撮像装置に用いられるズームレンズは、小型で軽量でありながらも広画角で高変倍比であり、さらに画角の中心部から周辺部まで解像力が均一に高く色収差が少ないことが望まれている。
【0003】
特許文献1、2には、物体側から像側へ順に、変倍に際して不動の正の屈折力の第1レンズ群と、変倍に際して移動する負の屈折力の第2レンズ群と、像面移動補正用の負の屈折力の第3レンズ群と、変倍に際して不動の正の屈折力の第4レンズ群とにより構成された小型軽量のズームレンズが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2009-042346号公報
【特許文献2】WO17/158899号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ズームレンズは、撮像装置が有する撮像素子の大型化に伴って大型化する傾向がある。
【0006】
本発明は、例えば、小型軽量、高変倍比、全ズーム域にわたる高い光学性能の点で有利なズームレンズを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一側面としてのズームレンズは、物体側から像側へ順に配置された、変倍に際して不動の正の屈折力の第1レンズ群と、変倍に際して移動する2つ又は3つの中間レンズ群と、正の屈折力の最終レンズ群からなる。中間レンズ群のうち最も物体側のレンズ群と最も像側のレンズ群は負の屈折力を有する。第1レンズ群は少なくとも1つの負レンズと5つの正レンズを含み、該第1レンズ群の一部が焦点調節のために移動する。最終レンズ群の横倍率をβR、ズームレンズの空気換算長としてのバックフォーカスをbf、第1レンズ群のうち最も物体側のレンズ面から最終レンズ群のうち最も像側のレンズ面までの距離とバックフォーカスbfとの和をTLとして、
-2.5≦βR≦-1.7
0.16≦bf/TL≦0.25
なる条件を満足することを特徴とする。なお、該ズームレンズを備えた撮像装置も、本発明の他の一側面を構成する。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、例えば、小型軽量、高変倍比、全ズーム域にわたる高い光学性能の点で有利なズームレンズを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図10】光学材料のアッベ数と部分分散比のマップを示す図。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の実施例について図面を参照しながら説明する。
図1、
図3、
図5および
図7はそれぞれ、本発明の実施例1、実施例2、実施例3および実施例4であるズームレンズの広角端における無限遠物体への合焦状態での断面を示している。なお、広角端は変倍用のレンズ群がズームレンズの焦点距離を最も短くするように配置された状態であり、望遠端は変倍用のレンズ群がズームレンズの焦点距離を最も長くするように配置された状態である。
【0011】
図1、
図3、
図5および
図7において、左側が物体側(前側)であり、右側が像側(後方)である。実施例1、2のズームレンズは、物体側から像側へ順に配置された、ズーミング(変倍)に際して不動の正の屈折力の第1レンズ群L1と、ズーミングに際して移動する2つの中間レンズ群としての第2レンズ群L2および第3レンズ群L3と、正の屈折力の最終レンズ群(第4レンズ群)L4とにより構成されている。また実施例3、4のズームレンズは、物体側から像側へ順に配置された、ズーミングに際して不動の正の屈折力の第1レンズ群L1と、ズーミングに際して移動する3つの中間レンズ群L2、L3、L4と、正の屈折力の最終レンズ群(第5レンズ群)L5とにより構成されている。これらのような構成を有するズームレンズは、小型軽量でありながらも高変倍(ズーム)比を得やすい。
【0012】
各実施例において、第1レンズ群L1は、物体側から像側へ順に配置された3つのサブレンズ群L1a、L1b、L1cにより構成されている。第1レンズ群L1の一部であるサブレンズ群L1bは、フォーカスレンズ群であり、無限遠物体から近距離物体へのフォーカシング(焦点調節)のために像側へ移動する。第1レンズ群L1の一部が移動してフォーカシングを行うことで、ズーミングに伴うピント移動を抑制することができ、被写体にズームインする際に被写体への合焦状態を維持することができる。一方、サブレンズ群L1a、L1cはフォーカシングに際して不動のレンズ群である。
【0013】
また、第1レンズ群L1は、少なくとも1つの負レンズと5つの正レンズを含んでいる。これにより、高変倍比を得ながらも全ズーム域および全フォーカス域にわたって高い光学性能を得易くすることができる。
【0014】
また、各実施例において、ズーミングに際して移動する2つ又は3つの中間レンズ群はいずれも負の屈折力を有する。中間レンズ群は、ズーミングのために移動してもよいし、ズーミングに伴う像面移動を補正するために移動してもよい。最終レンズ群は、ズーミングに際して不動のレンズ群である。
【0015】
SPは開口絞りであり、各実施例では中間レンズ群と最終レンズ群との間に配置されている。Iは像面であり、ズームレンズを用いた撮像においては、該ズームレンズにより形成された光学素子を光電変換する撮像素子の撮像面または銀塩フィルムの感光面が配置される。
【0016】
図2、
図4、
図6および
図8中の(A)、(B)、(C)はそれぞれ、実施例1~4に対応する数値実施例1~4のズームレンズの広角端、中間ズーム位置および望遠端における無限遠物体への合焦状態での縦収差を示している。これらの縦収差図のうち球面収差図において、実線、二点鎖線、一点鎖線および破線はそれぞれe線(546.1nm)、g線(435.8nm)、C線(656.3nm)およびF線(486.1nm)における球面収差を示している。非点収差図における破線と実線はそれぞれ、メリディオナル像面とサジタル像面を示している。歪曲図には、e線(546.1nm)における歪曲を示している。倍率色収差における二点鎖線、一点鎖線および破線はそれぞれ、g線、C線およびF線における倍率色収差を示している。ωは半画角、FnoはFナンバーを示す。なお、各縦収差図は、球面収差を0.4mmのスケールで、非点収差を0.4mmのスケールで、歪曲を5%のスケールで、倍率色収差を0.05mmのスケールで描いている。
【0017】
各実施例のズームレンズは、最終レンズ群の横倍率をβR、空気換算長としてのバックフォーカスをbf、第1レンズ群L1のうち最も物体側のレンズ面から最終レンズ群のうち最も像側のレンズ面までの光軸上の距離とバックフォーカスbfとの和をTLとする。このとき、以下の条件式(1)、(2)を満足している。
-2.5≦βR≦-1.7 (1)
0.16≦bf/TL≦0.25 (2)
条件式(1)は、最終レンズ群の横倍率βRに関する条件を示している。βRが条件式(1)の下限を下回ると、最終レンズ群の横倍率の絶対値が大きくなりすぎて、最終レンズ群より物体側のレンズ群の屈折力が相対的に大きくなる。これにより、各レンズ群内で発生する諸収差が増増加し、高い光学性能の達成が困難となるため、好ましくない。βRが条件式(1)の上限を超えると、最終レンズ群の横倍率の絶対値が小さくなりすぎて、ズームレンズの小型軽量化が困難となるため、好ましくない。
【0018】
条件式(2)は、バックフォーカスとレンズ全長との関係に関する条件を示している。bf/TLが条件式(2)の下限を下回ると、バックフォーカスの確保が困難となるかレンズ全長が長くなりすぎてズームレンズの使用が困難となるため、好ましくない。bf/TLが条件式(2)の上限を超えると、バックフォーカスが長くなりすぎてズームレンズの小型軽量化が困難となるか、レンズ全長を短くするために各レンズ群の屈折力を大きくする結果として諸収差が増加して高い光学性能の実現が困難となるため、好ましくない。
【0019】
各実施例では、上述した構成を有し、条件式(1)、(2)を満足することで、小型軽量で高変倍比であり、さらに全ズーム域にわたって高い光学性能を有するズームレンズを得ることができる。
【0020】
次に、各実施例のズームレンズが満足することが好ましい条件について説明する。最終レンズ群は、該最終レンズ群内で最も長い空気間隔を境として、正の屈折力のFR群と正の屈折力のRR群とにより構成されている。FR群の焦点距離をfFR、RR群の焦点距離をfRRとする。また最終レンズ群は、複数の負レンズを含み、該複数の負レンズのうち最も屈折率が大きい負レンズのd線における屈折率をndRn、焦点距離をfRn、最終レンズ群の焦点距離をfRとする。さらに、FR群は1つ以上の正レンズと1つ以上の負レンズを含み、FR群内の正レンズの異常分散性の平均値をΔθgFFRp、FR群内の負レンズの異常分散性の平均値をΔθgFFRnとする。
【0021】
異常分散性は、
図10に示す、d線を基準とするアッベ数νdとg線およびF線における部分分散比θgFのマップにおいてνd=60.49、θgF=0.5436の座標点とνd=36.26、θgF=0.5828の座標点とを結ぶ直線(破線)からの部分分散比θgFの差異である。なお、アッベ数νdと部分分散比θgFはそれぞれ、g線における屈折率をng、F線における屈折率をnF、d線における屈折率をnd、C線における屈折率をnCとするとき、
νd=(nd-1)/(nF-nC)
θgF=(ng-nF)/(nF-nC)
と定義される光学定数である。
【0022】
また、RR群は1つ以上の正レンズと1つ以上の負レンズを含み、RR群内の正レンズの異常分散性の平均値をΔθgFRRp、RR群内の負レンズの異常分散性の平均値をΔθgFRRnとする。
【0023】
このとき、各実施例のズームレンズは、以下の条件式(3)~(9)をうち少なくとも1つを満足することが好ましい。
【0024】
0.3≦fFR/fRR≦0.7 (3)
2.05≦ndRn (4)
-0.7≦fRn/fR≦-0.1 (5)
-0.010≦ΔθgFFRp≦-0.002 (6)
0.000<ΔθgFFRn≦0.050 (7)
0.005≦ΔθgFRRp≦0.050 (8)
-0.010≦ΔθgFRRn≦0.010 (9)
条件式(3)は、最終レンズ群内のFR群とRR群の焦点距離の比に関する条件を示している。fFR/fRRが条件式(3)の下限を下回ると、FR群の焦点距離が小さくなりすぎて高い光学性能を実現することが困難となるか、RR群の焦点距離が大きくなりすぎてバックフォーカスが長くなることでズームレンズの小型軽量化が困難となるため、好ましくない。fFR/fRRが条件式(3)の上限を超えると、FR群の焦点距離が大きくなりすぎてRR群の大型化につながり、ズームレンズの小型軽量化が困難となるか、RR群の焦点距離が小さくなりすぎてバックフォーカスを確保することが困難となるため、好ましくない。
【0025】
条件式(4)は、最終レンズ群内の最大屈折率を有する負レンズの屈折率に関する条件を示している。ndRnが条件式(4)の下限を下回ると、ペッツバール和が増大して画角周辺部の光学性能を十分に高くすることが困難となるため、好ましくない。
【0026】
条件式(5)は、最終レンズ群内の最大屈折率を有する負レンズの焦点距離fRnと最終レンズ群の焦点距離fRとの関係に関する条件を示している。fRn/fRが条件式(5)の下限を下回ると、負レンズの焦点距離の絶対値が大きすぎてペッツバール和の補正効果が低くなることで高い光学性能を達成することが困難となるか、最終レンズ群の焦点距離の絶対値が小さくなりすぎて必要なバックフォーカスを確保することが困難となるため、好ましくない。fRn/fRが条件式(5)の上限を超えると、負レンズの焦点距離の絶対値が小さすぎて諸収差が増加することで高い光学性能を達成することが困難となるか、最終レンズ群の焦点距離の絶対値が大きくなりすぎてズームレンズの小型軽量化が困難となるため。好ましくない。
【0027】
条件式(6)~(9)は、最終レンズ群に含まれる正レンズおよび負レンズの光学材料の異常分散性に関する条件を示している。これらの条件を満足することにより、特に軸上色収差と倍率色収差を効果的に抑制することができる。ΔθgFFRpが条件式(6)の下限を下回ると、軸上色収差が補正不足となり、高い光学性能を達成することが困難となるため、好ましくない。ΔθgFFRpが条件式(6)の上限を超えると、軸上色収差が補正過剰となり、高い光学性能を達成することが困難となるため、好ましくない。
【0028】
ΔθgFFRnが条件式(7)の下限を下回ると、軸上色収差が補正過剰となり、高い光学性能を達成することが困難となるため、好ましくない。ΔθgFFRnが条件式(7)の上限を超えると、軸上色収差が補正不足となり、高い光学性能を達成することが困難となるため、好ましくない。
【0029】
ΔθgFRRpが条件式(8)の下限を下回ると、倍率色収差が補正不足となり、高い光学性能を達成することが困難となるため、好ましくない。ΔθgFRRpが条件式(8)の上限を超えると、倍率色収差が補正過剰となり、高い光学性能を達成することが困難となるため、好ましくない。
【0030】
ΔθgFRRnが条件式(9)の下限を下回ると、倍率色収差が補正過剰となり、高い光学性能を達成することが困難となるため、好ましくない。ΔθgFRRnが条件式(9)の上限を超えると、倍率色収差が補正不足となり、高い光学性能を達成することが困難となるため、好ましくない。
【0031】
また、第1レンズ群L1は物体側から像側へ順に、フォーカシングに際して不動の負の屈折力の1aレンズ群と、フォーカシングのために像側へ移動する正の屈折力の1bレンズ群と、フォーカシングに際して不動の正の屈折力の1cレンズ群により構成されることが好ましい。これにより、ズーミングやフォーカシングによらず高い光学性能を実現することができる。この際、1aレンズ群は少なくとも2つの負レンズと1つの正レンズを含み、1bレンズ群は、少なくとも1つの正レンズを含み、1cレンズ群は少なくとも1つの負レンズと少なくとも3つの正レンズを含むことが好ましい。
なお、条件式(1)~(9)の数値範囲を以下のように設定すると、より好ましい。
【0032】
-2.18≦βR≦-1.72 (1a)
0.17≦bf/TL≦0.23 (2a)
0.35≦fFR/fRR≦0.65 (3a)
2.0503≦ndRn (4a)
-0.60≦fRn/fR≦-0.15 (5a)
-0.009≦ΔθgFFRp≦-0.003 (6a)
0.005≦ΔθgFFRn≦0.040 (7a)
0.010≦ΔθgFRRp≦0.040 (8a)
-0.008≦ΔθgFRRn≦0.005 (9a)
条件式(1)~(9)の数値範囲を以下のように設定すると、さらに好ましい。
【0033】
-2.15≦βR≦-1.74 (1b)
0.175≦bf/TL≦0.215 (2b)
0.4≦fFR/fRR≦0.6 (3b)
2.0507≦ndRn (4b)
-0.40≦fRn/fR≦-0.20 (5b)
-0.008≦ΔθgFFRp≦-0.004 (6b)
0.010≦ΔθgFFRn≦0.025 (7b)
0.015≦ΔθgFRRp≦0.030 (8b)
-0.005≦ΔθgFRRn<0.000 (9b)
以下、実施例1から4のズームレンズについて具体的に説明する。また実施例1~4に対応する数値例1~4を実施例4の後にまとめて示す。さらに実施例(数値例)1~4の条件式(1)から(9)の値を表1にまとめて示す。
【実施例0034】
図1に示す実施例1のズームレンズは、物体側から像側へ順に、正の屈折力の第1レンズ群L1、負の屈折力の第2レンズ群L2、負の屈折力の第3レンズ群L3および正の屈折力の第4レンズ群L4により構成されている。本実施例のズームレンズでは、広角端から望遠端へのズーミングに際して、第1レンズ群L1は不動であり、第2レンズ群L2は像側に単調移動して主として変倍を行い、第3レンズ群L3はズーミングに伴う像面移動を補正するために移動する。第4レンズ群L4は、ズーミングに際して不動である。
【0035】
第1レンズ群L1は、物体側から像側へ順に、フォーカシングに際して不動の負の屈折力の1aレンズ群L1aと、フォーカシングのために移動する正の屈折力の1bレンズ群L1bと、フォーカシングに際して不動の正の屈折力の1cレンズ群L1cとにより構成されている。1aレンズ群L1aは、1つの正レンズと3つの負レンズを有する。1bレンズ群L1bは、1つの正レンズを有する。1cレンズ群L1cは、4つの正レンズと2つの負レンズを有する。
【0036】
以上のように構成された本実施例のズームレンズは、ズーミングおよびフォーカシングに伴う収差変動を抑制して高い光学性能を達成している。また、第4レンズ群L4の横倍率とバックフォーカスを適切に設定することにより、小型軽量で高変倍比でありながら高い光学性能を達成している。
表1に示すように、本実施例(数値例1)のズームレンズは条件式(1)~(9)をすべて満足しており、小型軽量および高変倍比で全ズーム域にわたって高い光学性能を有する。
本実施例のズームレンズでは、広角端から望遠端へのズーミングに際して、第1レンズ群L1は不動であり、第2レンズ群L2は像側に単調移動して主として変倍を行い、第3レンズ群L3はズーミングに伴う像面移動を補正するために移動する。第4レンズ群L4は、ズーミングに際して不動である。
第1レンズ群L1は、物体側から像側へ順に、フォーカシングに際して不動の負の屈折力の1aレンズ群L1aと、フォーカシングのために移動する正の屈折力の1bレンズ群L1bと、フォーカシングに際して不動の正の屈折力の1cレンズ群L1cとにより構成されている。1aレンズ群L1aは、1つの正レンズと3つの負レンズを有する。1bレンズ群L1bは、1つの正レンズを有する。1cレンズ群L1cは、4つの正レンズと2つの負レンズを有する。
以上のように構成された本実施例のズームレンズは、ズーミングおよびフォーカシングに伴う収差変動を抑制して高い光学性能を達成している。また、第4レンズ群L4の横倍率とバックフォーカスを適切に設定することにより、小型軽量で高変倍比でありながら高い光学性能を達成している。
表1に示すように、本実施例(数値例2)のズームレンズは条件式(1)~(9)をすべて満足しており、小型軽量および高変倍比で全ズーム域にわたって高い光学性能を有する。