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特開2022-49828パターン形成方法および半導体装置の製造方法
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022049828
(43)【公開日】2022-03-30
(54)【発明の名称】パターン形成方法および半導体装置の製造方法
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/3065 20060101AFI20220323BHJP
   H01L 21/027 20060101ALI20220323BHJP
   B29C 59/02 20060101ALI20220323BHJP
【FI】
H01L21/302 105A
H01L21/30 502D
B29C59/02 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】15
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020156068
(22)【出願日】2020-09-17
(71)【出願人】
【識別番号】318010018
【氏名又は名称】キオクシア株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001092
【氏名又は名称】特許業務法人サクラ国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 寛暢
(72)【発明者】
【氏名】中 義祐
【テーマコード(参考)】
4F209
5F004
5F146
【Fターム(参考)】
4F209AF01
4F209AG05
4F209AH33
4F209PA02
4F209PB01
4F209PN09
5F004EA02
5F004EA03
5F004EA06
5F146AA31
(57)【要約】
【課題】パターンを有するハードマスクを容易に形成する。
【解決手段】パターン形成方法は、第1のマスク層を加工対象物の上に形成する工程と、第1の無機材料と、第1の有機材料と、を含む第1の複合材料を塗布して第1のマスク層の上に第2のマスク層を形成する工程と、第2のマスク層を加工してパターンを形成する工程と、オゾンを含む第1の酸化性ガスに第2のマスク層を曝露して第1の無機材料を酸化させるとともに第1の有機材料の少なくとも一部を第2のマスク層から除去する工程と、第2のマスク層を用いて第1のマスク層をエッチングすることにより第1のマスク層にパターンを転写する工程と、を具備する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1のマスク層を加工対象物の上に形成する工程と、
第1の無機材料と、第1の有機材料と、を含む第1の複合材料を塗布して前記第1のマスク層の上に第2のマスク層を形成する工程と、
前記第2のマスク層を加工してパターンを形成する工程と、
オゾンを含む第1の酸化性ガスに前記第2のマスク層を曝露して前記第1の無機材料を酸化させるとともに前記第1の有機材料の少なくとも一部を前記第2のマスク層から除去する工程と、
前記第2のマスク層を用いて前記第1のマスク層をエッチングすることにより前記第1のマスク層に前記パターンを転写する工程と、
を具備する、パターン形成方法。
【請求項2】
前記第1の酸化性ガスに前記第2のマスク層を曝露することにより、前記第1の有機材料の一部が前記第2のマスク層から除去される、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記第1の酸化性ガスに前記第2のマスク層を曝露することにより、前記第1の有機材料の全部が前記第2のマスク層から除去される、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記第1の無機材料は、シリコンを含み、
前記第1の有機材料は、ナノインプリント材料を含む、請求項1ないし請求項3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
前記第1の無機材料は、ジルコニウム、ハフニウム、チタン、亜鉛、インジウム、および錫からなる群より選ばれる少なくとも一つの金属元素を含み、
前記第1の有機材料は、レジスト材料を含む、請求項1ないし請求項3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
前記第1の酸化性ガスに前記第2のマスク層を曝露した後に、前記第1の無機材料と同じまたは異なる無機化合物である第2の無機材料を含む気体に前記第2のマスク層を曝露する工程と、オゾンを含む第2の酸化性ガスに前記第2のマスク層を曝露する工程と、を交互に切り替える工程をさらに具備する、請求項1ないし請求項5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
前記切り替える工程の後に、フッ素を含むガスに前記第1のマスク層の表面を曝露する工程をさらに具備する、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記第1のマスク層の酸素濃度は、26.2質量%以下である、請求項1ないし請求項7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
第1の有機材料を含む第1のマスク層を加工対象物の上に形成する工程と、
第2の有機材料を含む第2のマスク層を前記第1のマスク層の上に形成する工程と、
前記第2のマスク層を加工してパターンを形成する工程と、
第3の無機材料と、第3の有機材料と、を含む第2の複合材料を塗布して前記第2のマスク層の上に第3のマスク層を形成する工程と、
前記第3のマスク層を加工して前記パターンの反転パターンを形成する工程と、
オゾンを含む第1の酸化性ガスに前記第3のマスク層を曝露して前記第3の無機材料を酸化させるとともに前記第3の有機材料の少なくとも一部を前記第3のマスク層から除去する工程と、
前記第3のマスク層を用いて前記第1のマスク層をエッチングすることにより前記第1のマスク層に前記反転パターンを転写する工程と、
を具備する、パターン形成方法。
【請求項10】
前記第1の酸化性ガスに前記第3のマスク層を曝露することにより、前記第3の有機材料の一部が前記第3のマスク層から除去される、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
前記第1の酸化性ガスに前記第3のマスク層を曝露することにより、前記第3の有機材料の全部が前記第3のマスク層から除去される、請求項9に記載の方法。
【請求項12】
前記第3の無機材料は、シリコン、チタン、ハフニウム、ジルコニウム、およびアルミニウムからなる群より選ばれる少なくとも一つの元素を含み、
前記第2の有機材料は、ナノインプリント材料を含む、請求項9ないし請求項11のいずれか一項に記載の方法。
【請求項13】
前記第3の無機材料は、シリコン、チタン、ハフニウム、ジルコニウム、およびアルミニウムからなる群より選ばれる少なくとも一つの元素を含み、
前記第2の有機材料は、レジスト材料を含む、請求項9ないし請求項11のいずれか一項に記載の方法。
【請求項14】
前記第1の酸化性ガスに前記第3のマスク層を曝露した後に、前記第3の無機材料と同じまたは異なる無機化合物である第4の無機材料を含む気体に前記第3のマスク層を曝露する工程と、オゾンを含む第2の酸化性ガスに前記第3のマスク層を曝露する工程と、を交互に切り替える工程をさらに具備する、請求項9ないし請求項13のいずれか一項に記載の方法。
【請求項15】
パターンを有するエッチングマスクを加工対象物の上に形成する工程と、
前記エッチングマスクを用いて前記加工対象物をエッチングする工程と、
を具備し、
前記エッチングマスクは、
第1のマスク層を加工対象物の上に形成する工程と、
第1の無機材料と、第1の有機材料と、を含む第1の複合材料を塗布して前記第1のマスク層の上に第2のマスク層を形成する工程と、
前記第2のマスク層を加工してパターンを形成する工程と、
オゾンを含む第1の酸化性ガスに前記第2のマスク層を曝露して前記第1の無機材料を酸化させるとともに前記第1の有機材料の少なくとも一部を前記第2のマスク層から除去する工程と、
前記第2のマスク層を用いて前記第1のマスク層をエッチングすることにより前記第1のマスク層に前記パターンを転写する工程と、
を含む方法により形成される、半導体装置の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、パターン形成方法および半導体装置の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
3次元メモリ等の半導体装置の製造方法において、エッチングマスクとして金属酸化物を含むハードマスクを用いて加工対象物をエッチングする技術が知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】米国特許出願公開2012/0241411号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
実施形態の発明が解決しようとする課題は、パターンを有するハードマスクを容易に形成することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
実施形態のパターン形成方法は、第1のマスク層を加工対象物の上に形成する工程と、第1の無機材料と、第1の有機材料と、を含む第1の複合材料を塗布して第1のマスク層の上に第2のマスク層を形成する工程と、第2のマスク層を加工してパターンを形成する工程と、オゾンを含む第1の酸化性ガスに第2のマスク層を曝露して第1の無機材料を酸化させるとともに第1の有機材料の少なくとも一部を第2のマスク層から除去する工程と、第2のマスク層を用いて第1のマスク層をエッチングすることにより第1のマスク層にパターンを転写する工程と、を具備する。
【図面の簡単な説明】
【0006】
図1】パターン形成方法の例を説明するためのフローチャートである。
図2】第1のマスク層形成工程S1-1の例を説明するための断面模式図である。
図3】第2のマスク層形成工程S1-2の例を説明するための断面模式図である。
図4】パターン形成工程S1-3を説明するための断面模式図である。
図5】パターン形成工程S1-3を説明するための断面模式図である。
図6】酸化工程S1-4の例を説明するための断面模式図である。
図7】酸化工程S1-4の例を説明するための断面模式図である。
図8】サイクル工程S1-5の例を説明するための断面模式図である。
図9】サイクル工程S1-5の例を説明するための断面模式図である。
図10】エッチング工程S1-6の例を説明するための断面模式図である。
図11】第2のマスク層形成工程S1-2の例を説明するための断面模式図である。
図12】パターン形成工程S1-3を説明するための断面模式図である。
図13】酸化工程S1-4の例を説明するための断面模式図である。
図14】酸化工程S1-4の例を説明するための断面模式図である。
図15】サイクル工程S1-5の例を説明するための断面模式図である。
図16】エッチング工程S1-6の例を説明するための断面模式図である。
図17】パターン形成方法の他の例を説明するためのフローチャートである。
図18】第2のマスク層形成工程S2-2の例を説明するための断面模式図である。
図19】パターン形成工程S2-3を説明するための断面模式図である。
図20】第3のマスク層形成工程S2-4の例を説明するための断面模式図である。
図21】反転パターン形成工程S2-5を説明するための断面模式図である。
図22】酸化工程S2-6の例を説明するための断面模式図である。
図23】酸化工程S2-6の例を説明するための断面模式図である。
図24】サイクル工程S2-7の例を説明するための断面模式図である。
図25】サイクル工程S2-7の例を説明するための断面模式図である。
図26】エッチング工程S2-8の例を説明するための断面模式図である。
図27】第2のマスク層形成工程S2-2の例を説明するための断面模式図である。
図28】パターン形成工程S2-3を説明するための断面模式図である。
図29】第3のマスク層形成工程S2-4の例を説明するための断面模式図である。
図30】反転パターン形成工程S2-5を説明するための断面模式図である。
図31】酸化工程S2-6の例を説明するための断面模式図である。
図32】酸化工程S2-6の例を説明するための断面模式図である。
図33】サイクル工程S2-7の例を説明するための断面模式図である。
図34】エッチング工程S2-8の例を説明するための断面模式図である。
図35】半導体装置の製造方法の例を説明するためのフローチャートである。
図36】エッチングマスク形成工程S10の例を説明するための断面模式図である。
図37】エッチング工程S20の例を説明するための断面模式図である。
図38】エッチングマスク形成工程S10の例を説明するための断面模式図である。
図39】エッチング工程S20の例を説明するための断面模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0007】
以下、実施形態について、図面を参照して説明する。図面に記載された各構成要素の厚さと平面寸法との関係、各構成要素の厚さの比率等は現物と異なる場合がある。また、実施形態において、実質的に同一の構成要素には同一の符号を付し適宜説明を省略する。
【0008】
<第1の実施形態>
図1は、パターン形成方法の例を説明するためのフローチャートである。パターン形成方法例は、図1に示すように、第1のマスク層形成工程S1-1と、第2のマスク層形成工程S1-2と、パターン形成工程S1-3と、酸化工程S1-4と、サイクル工程S1-5と、エッチング工程S1-6と、を具備する。
【0009】
[第1のマスク層形成工程S1-1]
図2は、第1のマスク層形成工程S1-1の例を説明するための断面模式図であり、加工対象物1のX軸と、X軸に直交するとともにX軸に直交するY軸に直交するZ軸と、を含むX-Z断面の一部を示す。第1のマスク層形成工程S1-1により、図2に示すように、加工対象物1の上にマスク層2を形成する。
【0010】
加工対象物1は、例えばシリコン基板等の基板の上に設けられた相変化メモリ(PCM)等のメモリを構成するメモリ層を含む。
【0011】
マスク層2は、例えば有機材料を含む。マスク層2は、例えばSpin On Carbon(SOC)膜を含む。SOC膜は、炭素を含む材料を塗布し、スピンコート法により形成される炭素系薄膜である。
【0012】
[第2のマスク層形成工程S1-2]
図3は、第2のマスク層形成工程S1-2の例を説明するための断面模式図であり、加工対象物1のX-Z断面の一部を示す。第2のマスク層形成工程S1-2により、図3に示すように、マスク層2の上にマスク層3Aを形成する。
【0013】
マスク層3Aは、有機材料31aと、無機材料32aと、を含む。マスク層3Aは、接着層4を介してマスク層2に接合される。接着層4の例は、炭素を含む有機膜等を含む。なお、接着層4は、必ずしも設けられなくてもよい。マスク層3Aは、有機材料31aと無機材料32aとを含む複合材料を接着層4の表面に塗布することにより形成される。複合材料を用いることにより、無機材料32aをマスク層5に含侵させる工程を追加する必要が無いため好ましい。
【0014】
有機材料31aは、炭素を含む高分子材料であり、例えばナノインプリントリソグラフィ(NIL)に適用可能な紫外線硬化樹脂等のナノインプリント材料を含む。有機材料31aは、無機材料32aと反応可能な反応サイトを有する。無機材料32aと反応可能な反応サイトとは、例えば無機材料が配位可能な非共有電子対を含み、例えばポリマーに含まれるカルボニル基やアミド基等の官能基に存在する非共有電子対等が挙げられる。
【0015】
マスク層3Aに対し、マスク層2は、反応サイトの数がマスク層3Aよりも少ないまたは反応サイトを有しない有機材料を含む。マスク層2の反応サイトを少なくするためには、マスク層2の酸素濃度がマスク層3Aの酸素濃度よりも低く、マスク層2の酸素濃度が26.2質量%以下であることが好ましい。酸素濃度は、ラザフォード後方散乱分析(RBS)または水素前方散乱分析(HFS)によりマスク層2に含まれる原子組成を測定し、上記組成に原子量を乗じて酸素含有量を百分率で表すことにより測定できる。
【0016】
無機材料32aは、半金属元素からなる群より選ばれる少なくとも一つの元素を含む無機化合物である。半金属元素は、金属元素と非金属元素との中間の特性を有する材料であり、例えばシリコン(Si)を含む。
【0017】
[パターン形成工程S1-3]
図4および図5は、パターン形成工程S1-3を説明するための断面模式図であり、加工対象物1のX-Z断面の一部を示す。パターン形成工程S1-3により、図4に示すように、マスク層3Aを加工して凹部Dを形成する。NILを用いたパターン形成方法では、マスク層3Aの上に型(テンプレート)を押し当て、光を照射してマスク層3Aを硬化させることによりマスク層3Aに凹部Dを含むパターンを形成する。このとき、凹部Dの下にマスク層3Aの一部が残存する。
【0018】
さらに、パターン形成工程S1-3により、図5に示すように、マスク層3Aの凹部をエッチングして凹部Dの下のマスク層3Aの残部を除去することにより、開口Hを含むパターンを形成する。このとき、接着層4の凹部Dに面する一部もエッチングされる。
【0019】
凹部Dの下のマスク層3Aの残部の厚さ(Residual Layer Thickness:RLT)は、パターンサイズに関係なく一定の値を有するため、パターンの微細化が進むと、パターンの高さに対する相対厚さが無視できないほど大きくなる。このため、微細化が進むほど、残部を除去した後のマスク層3Aは薄くなりやすい。
【0020】
これに対し、本実施形態では、有機材料31aと無機材料32aとの複合材料を用いてマスク層3Aを形成することにより、パターン形成後のマスク層3Aの厚さの低下を抑制できる。
【0021】
[酸化工程S1-4]
図6および図7は、酸化工程S1-4の例を説明するための断面模式図であり、加工対象物1のX-Z断面の一部を示す。酸化工程S1-4により、第1の酸化性ガスにマスク層3Aを曝露する。第1の酸化性ガスは、曝露後に排気される。
【0022】
マスク層3A中の有機材料31aは、無機材料32aと反応する反応サイトを有する。第1の酸化性ガスにマスク層3Aを曝露することにより、第1の酸化性ガスが無機材料32aを酸化させて無機材料32aの酸化物を形成できる。
【0023】
第1の酸化性ガスは、例えばオゾンを含む。オゾンは酸化力が高いため、第1の酸化性ガスがオゾンを含む場合、図6および図7に示すように、第1の酸化性ガスにマスク層3Aを曝露することにより有機材料31aの少なくとも一部が除去される。有機材料31aが除去された後に残る無機材料32aの酸化物は、例えば非晶質または結晶である。
【0024】
無機材料32aの酸化物の形成や有機材料31aの除去により、マスク層3Aの酸素原子濃度および半金属原子濃度が上昇し、炭素原子濃度が低下する。酸素原子濃度、炭素原子濃度、半金属原子濃度は、例えばX線光電子分光法(X-ray Photoelectron Spectroscopy:XPS)法により測定できる。
【0025】
上記曝露により除去される有機材料31aの量は、例えば処理温度、処理時間等の処理条件に応じて調整可能である。例えば、第1の処理温度および第1の処理時間で上記曝露を実施することにより、図6に示すように、有機材料31aの全部を除去できる。これにより、無機材料32aによりマスク層3Aを構成できるため、マスク層2に対して高い選択比を有するハードマスクであるエッチングマスクを形成できる。また、第1の処理温度よりも低い第2の処理温度または第1の処理時間よりも短い第2の処理時間で上記曝露を実施することにより、図7に示すように有機材料31aの一部を除去するとともに他の一部を残存させることができる。これにより、マスク層3Aの収縮率を小さくできるため、パターンの寸法精度を高めることができる。
【0026】
酸化工程S1-4では、無機材料32aの酸化物を形成するとともに有機材料31aの少なくとも一部を除去することにより、マスク層3Aのエッチング選択比、エッチング耐性、剥離性能等の特性を改善できる。
【0027】
[サイクル工程S1-5]
サイクル工程S1-5により、無機材料導入工程S1-5-1と、酸化工程S1-5-2とを、例えばサイクル数がN(Nは1以上の自然数)回に到達するまで、交互に切り替える。サイクル数は、エッチングマスクに要求されるパラメータに応じて適宜設定される。なお、必ずしもサイクル工程S1-5を実施しなくてもよい(N=0)。
【0028】
図8および図9は、サイクル工程S1-5の例を説明するための断面模式図であり、加工対象物1のX-Z断面の一部を示す。無機材料導入工程S1-5-1により無機材料33aを含む第1の気体にマスク層3Aを曝露し、図8に示すようにマスク層3Aに無機材料33aを導入し、第1の気体の排気後、酸化工程S1-5-2によりオゾンを含む第2の酸化性ガスにマスク層3Aを曝露する。第2の酸化性ガスは、曝露後に排気される。
【0029】
無機材料33aは、第2の酸化性ガスと反応して酸化することにより酸化物を形成する。これにより、マスク層3Aの膜密度を高めることができる。
【0030】
無機材料33aは、無機材料32aと同じまたは異なる無機化合物である。無機材料33aは、半金属元素からなる群より選ばれる少なくとも一つの元素を含む無機化合物である。半金属元素は、例えばシリコン(Si)を含む。
【0031】
無機材料33aは、例えば化学気相成長(Chemical Vapor Deposition :CVD)法や原子層堆積(Atomic Layer Deposition:ALD)法で使用可能なプレカーサである。例えばシリコンを含むプレカーサの一例は、トリス(ジメチルアミノ)シラン(TDMAS)である。なお、複数のプレカーサを用いる場合、互いに反応しにくいまたは反応しないプレカーサを用いることが好ましい。
【0032】
マスク層3A中に浸透可能な無機材料33aの量は、反応サイトに応じて制限される。これに対し、前述のとおり酸化工程S1-4により有機材料31aの少なくとも一部を除去することにより、上記量の制限が緩和される。
【0033】
なお、無機材料導入工程S1-5-1と酸化工程S1-5-2との切り替えを繰り返すことにより、図9に示すように、マスク層2の表面のOH基等の官能基により、開口Hにおけるマスク層2の表面にも無機材料33aの酸化物が形成されることがある。このとき、六フッ化硫黄(SF)等のフッ素を含むガスにマスク層2の表面を曝すことにより、上記酸化物を除去できる。その後、再び無機材料導入工程S1-5-1と酸化工程S1-5-2とを交互に切り替えてもよい。
【0034】
無機材料導入工程S1-5-1と、酸化工程S1-5-2と、を交互に切り替えることにより、マスク層3Aの膜密度を高めることができる。これにより、エッチング耐性、特に高い反応性イオンエッチング(RIE)耐性を高めることができる。例えば、高いアスペクト比を有するパターンを形成する場合、エッチングマスクは長時間エッチングガスに曝されるため、高いエッチング耐性が要求される。
【0035】
[エッチング工程S1-6]
図10は、エッチング工程S1-6の例を説明するための断面模式図であり、加工対象物1のX-Z断面の一部を示す。エッチング工程S1-6により、図10に示すように、マスク層3Aを用いてマスク層2をエッチングしてマスク層3Aのパターンをマスク層2に転写する。マスク層2は、例えばドライエッチングやウェットエッチングを用いてエッチングされる。
【0036】
以上のように、本実施形態では、所望の厚さを有するハードマスクを容易に形成してパターンを形成できる。
【0037】
<第2の実施形態>
パターン形成方法の他の例は、図1と同様に、第1のマスク層形成工程S1-1と、第2のマスク層形成工程S1-2と、パターン形成工程S1-3と、酸化工程S1-4と、サイクル工程S1-5と、エッチング工程S1-6と、を具備する。なお、第1のマスク層形成工程S1-1は、第1の実施形態と同じであるため、本実施形態では説明を省略する。
【0038】
[第2のマスク層形成工程S1-2]
図11は、第2のマスク層形成工程S1-2の例を説明するための断面模式図であり、X-Z断面の一部を示す。第2のマスク層形成工程S1-2により、図11に示すように、マスク層2の上に、有機材料31bと無機材料32bとを含むマスク層3Bを形成する。マスク層3Bは、有機材料31bと無機材料32bとを含む複合材料をマスク層2の表面に塗布することにより形成される。複合材料を用いることにより、無機材料32bをマスク層3Bに含侵させる工程を追加する必要が無いため好ましい。
【0039】
有機材料31bは、炭素を含む高分子材料であり、例えば極端紫外線(EUV)硬化型レジスト等のレジスト材料を含む。有機材料31bは、無機材料32bと反応可能な反応サイトを有する。これに対し、マスク層2は、反応サイトの数がマスク層3Bよりも少ないまたは反応サイトを有しない有機材料を含む。マスク層2のその他の説明は、第1の実施形態のマスク層2の説明を適宜援用できる。
【0040】
無機材料32bと反応する反応サイトとは、例えば無機材料が配位可能な非共有電子対を含み、例えばポリマーに含まれるカルボニル基やアミド基等の官能基に存在する非共有電子対等が挙げられる。
【0041】
無機材料32bは、金属元素からなる群より選ばれる少なくとも一つの元素を含む無機化合物である。金属元素は、例えばジルコニウム(Zr)、ハフニウム(Hf)、チタン(Ti)、亜鉛(Zn)、インジウム(In)、および錫(Sn)からなる群より選ばれる少なくとも一つの元素を含む。
【0042】
[パターン形成工程S1-3]
図12は、パターン形成工程S1-3を説明するための断面模式図であり、加工対象物1のX-Z断面の一部を示す。パターン形成工程S1-3により、図12に示すように、マスク層3Bを加工して開口Hを含むパターンを形成する。
【0043】
[酸化工程S1-4]
図13および図14は、酸化工程S1-4の例を説明するための断面模式図であり、加工対象物1のX-Z断面の一部を示す。酸化工程S1-4により、第1の酸化性ガスにマスク層3Bを曝露する。第1の酸化性ガスは、曝露後に排気される。
【0044】
マスク層3B中の有機材料31bは、無機材料32bと反応する反応サイトを有する。第1の酸化性ガスにマスク層3Bを曝露することにより、第1の酸化性ガスが無機材料32bを酸化させて無機材料32bの酸化物を形成できる。
【0045】
第1の酸化性ガスは、例えばオゾンを含む。オゾンは酸化力が高いため、第1の酸化性ガスがオゾンを含む場合、図13および図14に示すように、第1の酸化性ガスにマスク層3を曝露することにより有機材料31bの少なくとも一部が除去される。有機材料31bが除去された後に残る無機材料32bの酸化物は、例えば非晶質または結晶である。これにより、エッチングマスクのエッチング選択比、エッチング耐性、剥離性能等を改善することができる。
【0046】
無機材料32bの酸化物の形成や有機材料31bの除去により、マスク層3Bの酸素原子濃度および金属原子濃度が上昇し、炭素原子濃度が低下する。酸素原子濃度、炭素原子濃度、金属原子濃度は、例えばXPS法により測定できる。
【0047】
上記曝露により除去される有機材料31bの量は、例えば処理温度および処理時間に応じて調整可能である。例えば、第1の処理温度および第1の処理時間で上記曝露を実施することにより、図13に示すように、有機材料31bの全部を除去できる。これにより、無機材料32bによりマスク層3Bを構成できるため、マスク層2に対して高い選択比を有するエッチングマスクを形成できる。また、第1の処理温度よりも低い第2の処理温度または第1の処理時間よりも短い第2の処理時間で上記曝露を実施することにより、図14に示すように有機材料31bの一部を除去するとともに他の一部を残存させることができる。これにより、マスク層3Bの収縮率を小さくできるため、パターンの寸法精度を高めることができる。
【0048】
[サイクル工程S1-5]
サイクル工程S1-5により、無機材料導入工程S1-5-1と、酸化工程S1-5-2とを、例えばサイクル数がN(Nは12以上の自然数)回に到達するまで、交互に切り替える。サイクル数は、エッチングマスクに要求されるパラメータに応じて適宜設定される。なお、必ずしもサイクル工程S1-5を実施しなくてもよい。
【0049】
図15は、サイクル工程S1-5の例を説明するための断面模式図であり、加工対象物1のX-Z断面の一部を示す。無機材料導入工程S1-5-1により無機材料33bを含む第2の気体にマスク層3Bを曝露してマスク層3Bに無機材料33bを導入し、第2の気体の排気後、酸化工程S1-5-2によりオゾンを含む第2の酸化性ガスにマスク層3Bを曝露する。第2の酸化性ガスは、曝露後に排気される。
【0050】
無機材料33bは、第2の酸化性ガスと反応して無機材料33bを酸化させて無機材料33bの酸化物を形成することができる。これにより、マスク層3Bの膜密度を高めることができる。
【0051】
無機材料33bは、無機材料32bと同じまたは異なる無機化合物である。無機材料33bは、金属元素からなる群より選ばれる少なくとも一つの元素を含む無機化合物である。金属元素は、例えばジルコニウム(Zr)、ハフニウム(Hf)、チタン(Ti)、亜鉛(Zn)、インジウム(In)、および錫(Sn)からなる群より選ばれる少なくとも一つの元素を含む。
【0052】
無機材料33bは、例えばCVD法やALD法で使用可能なプレカーサである。例えばジルコニウムを含むプレカーサの一例は、テトラキス(ジメチルアミノ)ジルコニウム(TDMAZ)である。なお、複数のプレカーサを用いる場合、互いに反応しにくいまたは反応しないプレカーサを用いることが好ましい。
【0053】
サイクル毎に無機材料33bの種類および第2の酸化性ガスの種類を変更してもよい。これにより、マスク層3B中の各無機元素の組成比を制御でき、マスク層3Bのエッチング選択比、エッチング耐性、剥離性能等を調整することができる。また、加工対象物1をエッチングするときに無機材料の酸化物が飛散してエッチング面に再付着することを抑制できるため、エッチングの阻害を防止できる。また、サイクル数が2以上(N≧2)の場合、第2の酸化性ガスにオゾンを用いた第2の酸化工程を含んでいれば、第2の酸化性ガスに水を用いた第2の酸化工程を含んでいてもよい。
【0054】
有機材料31bを含むマスク層3B中に浸透可能な無機材料33bの量は、反応サイトに応じて制限される。これに対し、酸化工程S1-4により有機材料31bの少なくとも一部を除去することにより、上記量の制限が緩和される。
【0055】
なお、第1の実施形態と同様に、無機材料導入工程S1-5-1と酸化工程S1-5-2との切り替えを繰り返すことにより、マスク層2の反応サイトにより、開口Hにおけるマスク層2の露出部の表面にも無機材料33bの酸化物が形成されることがある。このとき、六フッ化硫黄(SF)等のフッ素を含むガスにマスク層2の表面を曝すことにより、上記酸化物を除去できる。その後、再び無機材料導入工程S1-5-1と酸化工程S1-5-2とを交互に切り替えてもよい。
【0056】
無機材料導入工程S1-5-1と、酸化工程S1-5-2と、を交互に切り替えることにより、マスク層3Bの膜密度を高めることができる。これにより、エッチング耐性、特に高い反応性イオンエッチング(RIE)耐性を高めることができる。例えば、高いアスペクト比を有するパターンを形成する場合、エッチングマスクは長時間エッチングガスに曝されるため、高いエッチング耐性が要求される。
【0057】
[エッチング工程S1-6]
図16は、エッチング工程S1-6の例を説明するための断面模式図であり、加工対象物1のX-Z断面の一部を示す。エッチング工程S1-6により、図16に示すように、マスク層3Bを用いてマスク層2をエッチングしてマスク層3Bのパターンをマスク層2に転写する。マスク層2は、例えばドライエッチングやウェットエッチングを用いてエッチングされる。
【0058】
以上のように、本実施形態では、所望の厚さを有するハードマスクを容易に形成してパターンを形成できる。
【0059】
<第3の実施形態>
図17は、パターン形成方法の他の例を説明するためのフローチャートである。パターン形成方法例は、図17に示すように、第1のマスク層形成工程S2-1と、第2のマスク層形成工程S2-2と、パターン形成工程S2-3と、第3のマスク層形成工程S2-4と、反転パターン形成工程S2-5と、酸化工程S2-6と、サイクル工程S2-7と、エッチング工程S2-8と、を具備する。なお、第1のマスク層形成工程S2-1については、第1の実施形態の第1のマスク層形成工程S1-1と同じであるため、ここでは説明を省略する。
【0060】
[第2のマスク層形成工程S2-2]
図18は、第2のマスク層形成工程S2-2の例を説明するための断面模式図であり、加工対象物1のX-Z断面の一部を示す。第2のマスク層形成工程S2-2により、図18に示すように、マスク層2の上にマスク層3Cを形成する。
【0061】
マスク層3Cは、有機材料31cを含む。マスク層3Cは、接着層4を介してマスク層2に接合される。マスク層3Cは、有機材料31cを含む材料を接着層4の表面に塗布することにより形成される。
【0062】
有機材料31cは、炭素を含む高分子材料であり、例えばナノインプリントリソグラフィに適用可能な紫外線硬化樹脂等のナノインプリント材料を含む。
【0063】
[パターン形成工程S2-3]
図19は、パターン形成工程S2-3を説明するための断面模式図であり、加工対象物1のX-Z断面の一部を示す。パターン形成工程S2-3により、図19に示すように、マスク層3Cを加工して凹部を形成する。NILを用いたパターン形成方法では、マスク層3Cの上にテンプレートを押し当て、光を照射してマスク層3Cを硬化させることによりマスク層3Cに凹部Dを含むパターンを形成する。このとき、凹部Dの下にマスク層3Cの一部が残存する。
【0064】
[第3のマスク層形成工程S2-4]
図20は、第3のマスク層形成工程S2-4の例を説明するための断面模式図であり、加工対象物1のX-Z断面の一部を示す。第3のマスク層形成工程S2-4により、図20に示すように、マスク層3Cの上にマスク層5を形成する。
【0065】
マスク層5は、有機材料51と、無機材料52と、を含む。マスク層5は、有機材料51と、無機材料52と、を含む複合材料をマスク層3Cの表面に塗布することにより形成される。複合材料を用いることにより、無機材料52をマスク層5に含侵させる工程を追加する必要が無いため好ましい。
【0066】
有機材料51は、炭素を含む高分子材料であり、例えばSpin On Glass(SOG)膜やSpin On Metal(SOM)膜を含む。SOG膜は、シロキサン等のシリコン酸化物またはシリコンを含む材料を塗布し、スピンコート法により形成されるシリコン系薄膜である。SOM膜は、金属を含む材料を塗布し、スピンコート法により形成される金属系薄膜である。有機材料51は、無機材料52と反応可能な反応サイトを有する。無機材料52と反応可能な反応サイトとは、例えば無機材料が配位可能な非共有電子対を含み、例えばポリマーに含まれるカルボニル基やアミド基等の官能基に存在する非共有電子対等が挙げられる。
【0067】
マスク層5に対し、マスク層2およびマスク層3Cは、反応サイトの数がマスク層5よりも少ないまたは反応サイトを有しない有機材料を含む。マスク層2、マスク層3Cの反応サイトを少なくするためには、マスク層2、マスク層3Cの酸素濃度がマスク層5の酸素濃度よりも低く、マスク層2、マスク層3Cの酸素濃度が26.2質量%以下であることが好ましい。酸素濃度は、ラザフォード後方散乱分析(RBS)または水素前方散乱分析(HFS)によりマスク層2、マスク層3Cに含まれる原子組成を測定し、上記組成に原子量を乗じて酸素含有量を百分率で表すことにより測定できる。
【0068】
無機材料52は、半金属元素および金属元素からなる群より選ばれる少なくとも一つの元素を含む無機化合物である。半金属元素は、例えばシリコン(Si)を含む。金属元素は、例えばチタン(Ti)、タングステン(W)、ハフニウム(Hf)、ジルコニウム(Zr)、およびアルミニウム(Al)からなる群より選ばれる少なくとも一つの元素を含む。
【0069】
[反転パターン形成工程S2-5]
図21は、反転パターン形成工程S2-5を説明するための断面模式図であり、加工対象物1のX-Z断面の一部を示す。反転パターン形成工程S2-5により、図21に示すように、マスク層5を加工してマスク層3Cのパターンの反転パターンを形成する。反転パターンは、被覆部Cを含む。反転パターンは、マスク層5を厚さ方向に沿ってマスク層3Cの上面が露出するまでエッチングし、その後マスク層5の残部を用いてマスク層3Cおよび接着層4をエッチングすることにより形成される。
【0070】
[酸化工程S2-6]
図22および図23は、酸化工程S2-6の例を説明するための断面模式図であり、加工対象物1のX-Z断面の一部を示す。酸化工程S2-6により、第1の酸化性ガスにマスク層5を曝露する。第1の酸化性ガスは、曝露後に排気される。
【0071】
マスク層5中の有機材料51は、無機材料52と反応する反応サイトを有する。第1の酸化性ガスにマスク層5を曝露することにより、第1の酸化性ガスが無機材料52を酸化させて無機材料52の酸化物を形成できる。
【0072】
第1の酸化性ガスは、例えばオゾンを含む。オゾンは酸化力が高いため、第1の酸化性ガスがオゾンを含む場合、図22および図23に示すように、第1の酸化性ガスにマスク層3を曝露することにより有機材料51の少なくとも一部が除去される。有機材料51が除去された後に残る無機材料52の酸化物は、例えば非晶質または結晶である。これにより、エッチングマスクのエッチング選択比、エッチング耐性、剥離性能等を改善することができる。
【0073】
無機材料52の酸化物の形成や有機材料51の除去により、マスク層5の酸素原子濃度および金属原子濃度が上昇し、炭素原子濃度が低下する。酸素原子濃度、炭素原子濃度、金属原子濃度は、例えばXPS法により測定できる。
【0074】
上記曝露により除去される有機材料51の量は、例えば処理温度および処理時間等の処理条件に応じて調整可能である。例えば、第1の処理温度および第1の処理時間で上記曝露を実施することにより、図22に示すように、有機材料51の全部を除去できる。これにより、無機材料52によりマスク層5を構成できるため、マスク層2に対して高い選択比を有するエッチングマスクを形成できる。また、第1の処理温度よりも低い第2の処理温度または第1の処理時間よりも短い第2の処理時間で上記曝露を実施することにより、図23に示すように有機材料51の一部を除去するとともに他の一部を残存させることができる。これにより、マスク層5の収縮率を小さくできるため、パターンの寸法精度を高めることができる。
【0075】
[サイクル工程S2-7]
サイクル工程S2-7により、無機材料導入工程S2-7-1と、酸化工程S2-7-2とを、例えばサイクル数がN(Nは1以上の自然数)回に到達するまで、交互に切り替える。サイクル数は、エッチングマスクに要求されるパラメータに応じて適宜設定される。なお、必ずしもサイクル工程S2-7を実施しなくてもよい(N=0)。
【0076】
図24および図25は、サイクル工程S2-7の例を説明するための断面模式図であり、加工対象物1のX-Z断面の一部を示す。無機材料導入工程S2-7-1により無機材料53を含む第3の気体にマスク層5を曝露し、図24に示すようにマスク層5に無機材料53を導入し、第3の気体の排気後、酸化工程S2-7-2によりオゾンを含む第2の酸化性ガスにマスク層5を曝露する。第2の酸化性ガスは、曝露後に排気される。
【0077】
無機材料53は、第2の酸化性ガスと反応して無機材料53を酸化させて無機材料53の酸化物を形成することができる。これにより、マスク層5の膜密度を高めることができる。
【0078】
無機材料53は、無機材料52と同じまたは異なる無機化合物である。無機材料53は、半金属元素および金属元素からなる群より選ばれる少なくとも一つの元素を含む無機化合物である。半金属元素は、例えばシリコン(Si)を含む。金属元素は、例えばチタン(Ti)、タングステン(W)、ハフニウム(Hf)、ジルコニウム(Zr)、およびアルミニウム(Al)からなる群より選ばれる少なくとも一つの元素を含む。
【0079】
無機材料53は、例えばCVD法やALD法で使用可能なプレカーサである。例えばCVD法やALD法で使用可能なプレカーサである。例えばシリコンを含むプレカーサの一例は、トリス(ジメチルアミノ)シラン(TDMAS)である。また、Zrを含むプレカーサの一例は、テトラキス(ジメチルアミノ)ジルコニウム(TDMAZ)である。なお、複数のプレカーサを用いる場合、互いに反応しにくいまたは反応しないプレカーサを用いることが好ましい。
【0080】
サイクル毎に無機材料53の種類および第2の酸化性ガスの種類を変更してもよい。これにより、マスク層5中の各無機元素の組成比を制御でき、マスク層5のエッチング選択比、エッチング耐性、剥離性能等を調整することができる。また、加工対象物1をエッチングするときに無機材料の酸化物が飛散してエッチング面に再付着することを抑制できるため、エッチングの阻害を防止できる。また、サイクル数が2以上(N≧2)の場合、第2の酸化性ガスにオゾンを用いた第2の酸化工程を含んでいれば、第2の酸化性ガスに水を用いた第2の酸化工程を含んでいてもよい。
【0081】
無機材料53を含むマスク層3中に浸透可能な無機材料53の量は、反応サイトに応じて制限される。これに対し、酸化工程S2-6により有機材料51の少なくとも一部を除去することにより、上記量の制限が緩和される。
【0082】
無機材料導入工程S2-7-1と、酸化工程S2-7-2と、を交互に切り替えることにより、マスク層5の膜密度を高めることができる。これにより、エッチング耐性、特に高い反応性イオンエッチング(RIE)耐性を高めることができる。例えば、高いアスペクト比を有するパターンを形成する場合、エッチングマスクは長時間エッチングガスに曝されるため、高いエッチング耐性が要求される。
【0083】
なお、無機材料導入工程S2-7-1と酸化工程S2-7-2との切り替えを繰り返すことにより、マスク層2の反応サイトにより、図25に示すように、マスク層2の露出部の表面にも無機材料53の酸化物が形成されることがある。このとき、六フッ化硫黄(SF)等のフッ素を含むガスにマスク層2の表面を曝すことにより、上記酸化物を除去できる。その後、再び無機材料導入工程S2-7-1と酸化工程S2-7-2とを交互に切り替えてもよい。
【0084】
[エッチング工程S2-8]
図26は、エッチング工程S2-8の例を説明するための断面模式図であり、加工対象物1のX-Z断面の一部を示す。エッチング工程S2-8により、図26に示すように、マスク層5を用いてマスク層2をエッチングしてマスク層5のパターンをマスク層2に転写する。マスク層2は、例えばドライエッチングやウェットエッチングを用いてエッチングされる。
【0085】
以上のように、本実施形態では、所望の厚さを有するハードマスクを容易に形成してパターンを形成できる。
【0086】
<第4の実施形態>
パターン形成方法の他の例は、図17と同様に、第1のマスク層形成工程S2-1と、第2のマスク層形成工程S2-2と、パターン形成工程S2-3と、第3のマスク層形成工程S2-4と、反転パターン形成工程S2-5と、酸化工程S2-6と、サイクル工程S2-7と、エッチング工程S2-8と、を具備する。なお、第1のマスク層形成工程S2-1は、第3の実施形態と同じであるため、本実施形態では説明を省略する。
【0087】
[第2のマスク層形成工程S2-2]
図27は、第2のマスク層形成工程S2-2の例を説明するための断面模式図であり、X-Z断面の一部を示す。第2のマスク層形成工程S2-2により、図27に示すように、マスク層2の上に、有機材料31dを含むマスク層3Dを形成する。
【0088】
有機材料31dは、炭素を含む高分子材料であり、例えば極端紫外線(EUV)硬化型レジスト等のレジスト材料を含む。マスク層3Dは、有機材料31dを含む材料をマスク層2の表面に塗布することにより形成される。
【0089】
[パターン形成工程S2-3]
図28は、パターン形成工程S2-3を説明するための断面模式図であり、加工対象物1のX-Z断面の一部を示す。パターン形成工程S2-3により、図28に示すように、マスク層3Dを加工して開口Hを含むパターンを形成する。
【0090】
[第3のマスク層形成工程S2-4]
図29は、第3のマスク層形成工程S2-4の例を説明するための断面模式図であり、加工対象物1のX-Z断面の一部を示す。第3のマスク層形成工程S2-4により、図29に示すように、マスク層3Dの上にマスク層5を形成する。
【0091】
マスク層5は、有機材料51と、無機材料52と、を含む。マスク層5は、有機材料51と、無機材料52と、を含む複合材料をマスク層3Dの表面に塗布することにより形成される。複合材料を用いることにより、無機材料52をマスク層5に含侵させる工程を追加する必要が無いため好ましい。マスク層5、有機材料51、および無機材料52のその他の説明は、第3の実施形態と同じであるため、ここでは説明を省略する。
【0092】
[反転パターン形成工程S2-5]
図30は、反転パターン形成工程S2-5を説明するための断面模式図であり、加工対象物1のX-Z断面の一部を示す。反転パターン形成工程S2-5により、図30に示すように、マスク層5を加工してマスク層3Dのパターンの反転パターンを形成する。反転パターンは、被覆部Cを含む。反転パターンは、マスク層5を厚さ方向に沿ってマスク層3Dの上面が露出するまでエッチングし、その後マスク層5の残部を用いてマスク層3Dをエッチングすることにより形成される。
【0093】
[酸化工程S2-6]
図31および図32は、酸化工程S2-6の例を説明するための断面模式図であり、加工対象物1のX-Z断面の一部を示す。酸化工程S2-6により、第1の酸化性ガスにマスク層3Dを曝露する。第1の酸化性ガスは、曝露後に排気される。
【0094】
マスク層5中の有機材料51は、無機材料52と反応する反応サイトを有する。第1の酸化性ガスにマスク層5を曝露することにより、第1の酸化性ガスが無機材料52を酸化させて無機材料52の酸化物を形成できる。
【0095】
第1の酸化性ガスは、例えばオゾンを含む。オゾンは酸化力が高いため、第1の酸化性ガスがオゾンを含む場合、図31および図32に示すように、第1の酸化性ガスにマスク層3を曝露することにより有機材料51の少なくとも一部が除去される。有機材料51が除去された後に残る無機材料52の酸化物は、例えば非晶質または結晶である。これにより、エッチングマスクのエッチング選択比、エッチング耐性、剥離性能等を改善することができる。
【0096】
無機材料52の酸化物の形成や有機材料51の除去により、マスク層5の酸素原子濃度および金属原子濃度が上昇し、炭素原子濃度が低下する。酸素原子濃度、炭素原子濃度、金属原子濃度は、例えばXPS法により測定できる。
【0097】
上記曝露により除去される有機材料51の量は、例えば処理温度および処理時間等の処理条件に応じて調整可能である。例えば、第1の処理温度および第1の処理時間で上記曝露を実施することにより、図31に示すように、有機材料51の全部を除去できる。これにより、無機材料52によりマスク層5を構成できるため、マスク層2に対して高い選択比を有するエッチングマスクを形成できる。また、第1の処理温度よりも低い第2の処理温度または第1の処理時間よりも短い第2の処理時間で上記曝露を実施することにより、図32に示すように有機材料51の一部を除去するとともに他の一部を残存させることができる。これにより、マスク層5の収縮率を小さくできるため、パターンの寸法精度を高めることができる。
【0098】
[サイクル工程S2-7]
サイクル工程S2-7により、無機材料導入工程S2-7-1と、酸化工程S2-7-2とを、例えばサイクル数がN(Nは1以上の自然数)回に到達するまで、交互に切り替える。サイクル数は、エッチングマスクに要求されるパラメータに応じて適宜設定される。なお、必ずしもサイクル工程S2-7を実施しなくてもよい。
【0099】
図33は、サイクル工程S2-7の例を説明するための断面模式図であり、加工対象物1のX-Z断面の一部を示す。無機材料導入工程S2-7-1により無機材料53を含む第3の気体にマスク層5を曝露し、図33に示すようにマスク層5に無機材料53を導入し、第3の気体の排気後、酸化工程S2-7-2によりオゾンを含む第2の酸化性ガスにマスク層5を曝露する。第2の酸化性ガスは、曝露後に排気される。
【0100】
無機材料53は、第2の酸化性ガスと反応して無機材料53を酸化させて無機材料53の酸化物を形成することができる。これにより、マスク層5の膜密度を高めることができる。無機材料53のその他の説明は、第3の実施形態と同じであるため、ここでは説明を省略する。
【0101】
サイクル毎に無機材料53の種類および第2の酸化性ガスの種類を変更してもよい。これにより、マスク層5中の各無機元素の組成比を制御でき、マスク層5のエッチング選択比、エッチング耐性、剥離性能等を調整することができる。また、加工対象物1をエッチングするときに無機材料の酸化物が飛散してエッチング面に再付着することを抑制できるため、エッチングの阻害を防止できる。また、サイクル数が2以上(N≧2)の場合、第2の酸化性ガスにオゾンを用いた第2の酸化工程を含んでいれば、第2の酸化性ガスに水を用いた第2の酸化工程を含んでいてもよい。
【0102】
無機材料53を含むマスク層3中に浸透可能な無機材料53の量は、反応サイトに応じて制限される。これに対し、酸化工程S2-6により有機材料51の少なくとも一部を除去することにより、上記量の制限が緩和される。
【0103】
無機材料導入工程S2-7-1と、酸化工程S2-7-2と、を交互に切り替えることにより、マスク層5の膜密度を高めることができる。これにより、エッチング耐性、特に高い反応性イオンエッチング(RIE)耐性を高めることができる。例えば、高いアスペクト比を有するパターンを形成する場合、エッチングマスクは長時間エッチングガスに曝されるため、高いエッチング耐性が要求される。
【0104】
なお、無機材料導入工程S2-7-1と酸化工程S2-7-2との切り替えを繰り返すことにより、マスク層2の反応サイトにより、マスク層2の露出部の表面にも無機材料52の酸化物が形成されることがある。このとき、六フッ化硫黄(SF)等のフッ素を含むガスにマスク層2の表面を曝すことにより、上記酸化物を除去できる。その後、再び無機材料導入工程S2-7-1と酸化工程S2-7-2とを交互に切り替えてもよい。
【0105】
[エッチング工程S2-8]
図34は、エッチング工程S2-8の例を説明するための断面模式図であり、加工対象物1のX-Z断面の一部を示す。エッチング工程S2-8により、図34に示すように、マスク層5を用いてマスク層2をエッチングしてマスク層5のパターンをマスク層2に転写する。マスク層2は、例えばドライエッチングやウェットエッチングを用いてエッチングされる。
【0106】
以上のように、本実施形態では、所望の厚さを有するハードマスクを容易に形成してパターンを形成できる。
【0107】
<第5の実施形態>
図35は、半導体装置の製造方法の例を説明するためのフローチャートである。半導体装置の製造方法例は、図35に示すように、エッチングマスク形成工程S10と、エッチング工程S20と、を具備する。
【0108】
[エッチングマスク形成工程S10]
図36は、エッチングマスク形成工程S10の例を説明するための断面模式図であり、加工対象物1のX-Z断面の一部を示す。エッチングマスク形成工程S10により、加工対象物1の上にエッチングマスクM1を形成する。エッチングマスクM1は、ハードマスクであり、開口Hを含むパターンを有する。図36は第1の実施形態の方法により形成されたエッチングマスクM1を示すが、これに限定されず、エッチングマスクM1は、第2の実施形態の方法を用いて形成してもよい。
【0109】
[エッチング工程]
図37は、エッチング工程S20の例を説明するための断面模式図であり、加工対象物1のX-Z断面の一部を示す。エッチング工程S20により、エッチングマスクM1を用いて加工対象物1をエッチングする。加工対象物1は、例えばRIEによりエッチングすることができる。エッチングマスクM1は、エッチング後に除去される。
【0110】
以上のように、本実施形態では上記実施形態に記載の方法によりパターンを有するハードマスクを形成して、ハードマスクを用いて加工対象物をエッチングすることにより、高いアスペクト比を有するパターンであっても加工対象物を容易にエッチングしてパターンを形成することができる。
【0111】
<第6の実施形態>
半導体装置の製造方法の他の例は、第5の実施形態と同様に、エッチングマスク形成工程S10と、エッチング工程S20と、を具備する。
【0112】
[エッチングマスク形成工程S10]
図38は、エッチングマスク形成工程の例を説明するための断面模式図であり、加工対象物1のX-Z断面の一部を示す。エッチングマスク形成工程により、加工対象物1の上にエッチングマスクM2を形成する。エッチングマスクM2は、ハードマスクであり、被覆部Cを含むパターンを有する。図38は第3の実施形態の方法により形成されたエッチングマスクM2を示すが、これに限定されず、エッチングマスクM2は、第4の実施形態の方法を用いて形成してもよい。
【0113】
[エッチング工程S20]
図39は、エッチング工程の例を説明するための断面模式図であり、加工対象物1のX-Z断面の一部を示す。エッチング工程により、エッチングマスクM2を用いて加工対象物1をエッチングする。加工対象物1は、例えばRIEによりエッチングすることができる。エッチングマスクM2は、エッチング後に除去される。
【0114】
以上のように、本実施形態では上記実施形態に記載の方法によりパターンを有するハードマスクを形成して、ハードマスクを用いて加工対象物をエッチングすることにより、高いアスペクト比を有するパターンであっても加工対象物を容易にエッチングしてパターンを形成することができる。
【0115】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0116】
1…加工対象物、2…マスク層、3…マスク層、3A…マスク層、3B…マスク層、3C…マスク層、3D…マスク層、4…接着層、5…マスク層、31a…有機材料、31b…有機材料、31c…有機材料、31d…有機材料、32a…無機材料、32b…無機材料、33a…無機材料、33b…無機材料、51…有機材料、52…無機材料、53…無機材料。
図1
図2
図3
図4
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図8
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図10
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