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特開2022-49833地盤改良体造成装置、及び地盤改良体造成方法
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  • 特開-地盤改良体造成装置、及び地盤改良体造成方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022049833
(43)【公開日】2022-03-30
(54)【発明の名称】地盤改良体造成装置、及び地盤改良体造成方法
(51)【国際特許分類】
   E02D 3/12 20060101AFI20220323BHJP
【FI】
E02D3/12 102
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020156076
(22)【出願日】2020-09-17
(71)【出願人】
【識別番号】390036504
【氏名又は名称】日特建設株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100156867
【弁理士】
【氏名又は名称】上村 欣浩
(74)【代理人】
【識別番号】100143786
【弁理士】
【氏名又は名称】根岸 宏子
(72)【発明者】
【氏名】三上 登
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 潤
【テーマコード(参考)】
2D040
【Fターム(参考)】
2D040AB03
2D040BA08
2D040CA01
2D040CB03
2D040DA13
2D040EA04
2D040EA17
(57)【要約】
【課題】工費や設備費を抑制することができ、また作業性の点でも優れる地盤改良体造成装置を提案する。
【解決手段】本発明の地盤改良体造成装置1は、軸線Oを中心に正方向及び逆方向に回転可能なロッド2と、ロッド2に対し、軸線Oを含む平面に対して傾いた傾斜面S内で揺動するように取り付けられ、軸線Oに沿う向きに指向する閉姿勢と軸線Oに対して傾く向きに指向する開姿勢に変位する撹拌翼8と、を備える。
【選択図】図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
軸線を中心に正方向及び逆方向に回転可能なロッドと、
前記ロッドに対し、前記軸線を含む平面に対して傾いた傾斜面内で揺動するように取り付けられ、前記軸線に沿う向きに指向する閉姿勢と前記軸線に対して傾く向きに指向する開姿勢に変位する撹拌翼と、を備える地盤改良体造成装置。
【請求項2】
前記ロッドは、前記撹拌翼が地盤に接触した状態で正方向及び逆方向の何れか一方に回転した際に当該撹拌翼を前記閉姿勢で停止させる第一ストッパーと、当該撹拌翼が地盤に接触した状態で正方向及び逆方向の何れか他方に回転した際に当該撹拌翼を前記開姿勢で停止させる第二ストッパーと、を有する請求項1に記載の地盤改良体造成装置。
【請求項3】
前記ロッドは、液体を前記軸線に沿う向きに吐出する第一吐出口を備える請求項1又は2に記載の地盤改良体造成装置。
【請求項4】
前記ロッドは、液体を前記軸線に対して傾く向きに吐出する第二吐出口を備える請求項1~3の何れか一項に記載の地盤改良体造成装置。
【請求項5】
軸線を中心に正方向及び逆方向回転可能なロッドと、
前記ロッドに対し、前記軸線を含む平面に対して傾いた傾斜面内で揺動するように取り付けられ、前記軸線に沿う向きに指向する閉姿勢と前記軸線に対して傾く向きに指向する開姿勢に変位する撹拌翼と、を備える地盤改良体造成装置を使用して地盤改良体を造成する地盤改良体造成方法であって、
前記撹拌翼を地盤に接触させた状態で前記ロッドを正方向及び逆方向の何れか一方に回転させつつ前進させて、当該撹拌翼を前記閉姿勢に変位させた状態で削孔を行う第一ステップを含む、地盤改良体造成方法。
【請求項6】
前記ロッドは、液体を前記軸線に沿う向きに吐出する第一吐出口、又は液体を前記軸線に対して傾く向きに吐出する第二吐出口を備え、
前記撹拌翼を地盤に接触させた状態で前記ロッドを正方向及び逆方向の何れか他方に回転させつつ前進又は後退させ、且つ前記第一吐出口又は前記第二吐出口から改良材を吐出して地盤と改良材とを撹拌混合させて地盤改良体を造成する第二ステップを含む、請求項5に記載の地盤改良体造成方法。
【請求項7】
前記第一ステップにおいて、前記撹拌翼を前記閉姿勢に変位させた状態で前記第一吐出口から削孔液を吐出させつつ削孔を行う請求項6に記載の地盤改良体造成方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、地盤内に地盤改良体を造成する地盤改良体造成装置、及びこの装置を使用した地盤改良体造成方法に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば所望する強度を具備しない地盤や圧密沈下の可能性の高い軟弱な地盤、液状化の危険性のある地盤には、必要に応じて地盤改良が行われる。このような地盤改良に用いられる従来の地盤改良工法として、ケーシングで先行削孔を行い、次いで、先端に撹拌翼を備えるロッドをケーシング内に挿入して撹拌翼を所定深度まで前進させ、更に、ケーシングを引き抜いて撹拌翼を開姿勢に変位させた(拡径させた)後にロッドを回転させることにより、破砕されている地盤と改良材(例えば主成分がセメントミルク)を撹拌混合させて所望径の地盤改良体(地盤改良杭)を造成する工法が知られている。
【0003】
また特許文献1には、地盤を先行削孔する(或いは先行して地盤をほぐす)ケーシングと、ケーシング内をスライドするとともに回転自在なロッドと、ロッドの先端に備えられる拡径自在な撹拌翼とを備える地盤改良体造成装置、及びこの装置を使用した地盤改良体造成方法が示されている。この地盤改良体造成装置による地盤改良体造成方法では、先行掘削を行う際にケーシングとともにロッドも前進させて、先行掘削後もケーシングを削孔内に位置させている。そして、撹拌翼をケーシングの先端から張り出させて開姿勢に変位させた後、ロッドを回転させることによって、地盤と改良材の撹拌混合を行っている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第5746577号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、先行削孔に用いたケーシングを引き抜く場合、地盤からの抜管作業は時間を要するため、歩掛が悪くなるうえ工費が嵩むことになる。またケーシングやロッドの脱着作業を要するため、作業時に指が挟まれる等の事故が発生するおそれがある他、重量物を運搬しなければならない点でも難がある。またケーシングを地盤から抜管しない場合でも、ケーシングに要する費用が嵩んで設備費が増えることになる。
【0006】
このような従来の問題点に鑑み、本発明では、工費や設備費を抑制することができ、また作業性の点でも優れる地盤改良体造成装置、及びこの装置を使用する地盤改良体造成方法を提案する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、軸線を中心に正方向及び逆方向に回転可能なロッドと、前記ロッドに対し、前記軸線を含む平面に対して傾いた傾斜面内で揺動するように取り付けられ、前記軸線に沿う向きに指向する閉姿勢と前記軸線に対して傾く向きに指向する開姿勢に変位する撹拌翼と、を備える地盤改良体造成装置である。
【0008】
このような地盤改良体造成装置において、前記ロッドは、前記撹拌翼が地盤に接触した状態で正方向及び逆方向の何れか一方に回転した際に当該撹拌翼を前記閉姿勢で停止させる第一ストッパーと、当該撹拌翼が地盤に接触した状態で正方向及び逆方向の何れか他方に回転した際に当該撹拌翼を前記開姿勢で停止させる第二ストッパーと、を有することが好ましい。
【0009】
そして前記ロッドは、液体を前記軸線に沿う向きに吐出する第一吐出口を備えることが好ましい。
【0010】
前記ロッドは、液体を前記軸線に対して傾く向きに吐出する第二吐出口を備えることが好ましい。
【0011】
また本発明は、軸線を中心に正方向及び逆方向回転可能なロッドと、前記ロッドに対し、前記軸線を含む平面に対して傾いた傾斜面内で揺動するように取り付けられ、前記軸線に沿う向きに指向する閉姿勢と前記軸線に対して傾く向きに指向する開姿勢に変位する撹拌翼と、を備える地盤改良体造成装置を使用して地盤改良体を造成する地盤改良体造成方法であって、前記撹拌翼を地盤に接触させた状態で前記ロッドを正方向及び逆方向の何れか一方に回転させつつ前進させて、当該撹拌翼を前記閉姿勢に変位させた状態で削孔を行う第一ステップを含む、地盤改良体造成方法でもある。
【0012】
このような地盤改良体造成方法において、前記ロッドは、液体を前記軸線に沿う向きに吐出する第一吐出口、又は液体を前記軸線に対して傾く向きに吐出する第二吐出口を備え、前記撹拌翼を地盤に接触させた状態で前記ロッドを正方向及び逆方向の何れか他方に回転させつつ前進又は後退させ、且つ前記第一吐出口又は前記第二吐出口から改良材を吐出して地盤と改良材とを撹拌混合させて地盤改良体を造成する第二ステップを含むことが好ましい。
【0013】
そして前記第一ステップにおいて、前記撹拌翼を前記閉姿勢に変位させた状態で前記第一吐出口から削孔液を吐出させつつ削孔を行うことが好ましい。
【発明の効果】
【0014】
本発明の地盤改良体造成装置は、軸線を中心に正方向及び逆方向に回転可能なロッドと、ロッドに対して傾斜面内で揺動するように取り付けられる撹拌翼とを備えているため、撹拌翼が地盤に接触した状態で正方向及び逆方向の何れか一方にロッドを回転させると撹拌翼を閉姿勢に変位させることができ、また正方向及び逆方向の何れか他方にロッドを回転させると撹拌翼を開姿勢に変位させることができる。このため、正方向及び逆方向の何れか一方に回転させつつロッドを前進させれば、撹拌翼を閉姿勢に変位させた状態で先行掘削を行うことができる。すなわち本発明の地盤改良体造成装置、及びこれを使用する地盤改良体造成方法によれば、先行掘削に必要であった従来のケーシングが不用になるため、工費や設備費を抑制することができ、また作業性も向上する。またロッドを正方向及び逆方向の何れか他方に回転させれば、撹拌翼を開姿勢に変位させることができるため、改良材を加えることによって地盤と改良材を撹拌混合させて地盤改良体を造成することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】本発明に係る地盤改良体造成装置の一実施形態に関し、(a)は撹拌翼が閉姿勢に変位した状態での側面図であり(b)はB-Bに沿う断面図である。
図2図1に示す矢印Aに沿う矢視図である。
図3】(a)はD-Dに沿う断面図であり、(b)はE-Eに沿う断面図であり、(c)はF-Fに沿う断面図である。
図4】(a)はC-Cに沿う断面図であり、(b)はG-Gに沿う断面図であり、(c)はH-Hに沿う断面図である。
図5】ロッドの回転方向と撹拌翼の変位方向との関係を示した図である。
図6】撹拌翼が開姿勢に変位した状態を示した図である。
図7】撹拌翼が開姿勢に変位した状態での第一吐出口、第二吐出口への流路について説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、図面を参照しながら本発明に係る地盤改良体造成装置、及びこの装置を使用した地盤改良体造成方法の一実施形態について説明する。以下の説明においては便宜上、図1に示したように軸線Oが鉛直方向を指向していて、ロッド2に対して撹拌翼8が位置する側を「下」、その逆側を「上」として説明する。なお本発明に係る地盤改良体造成装置、及び地盤改良体造成方法は、この方向での使用に限定されるものではなく、上記特許文献1のように、鉛直方向に対して傾く方向(鉛直方向に対して斜め方向、或いは水平方向)での使用も含む。
【0017】
図1は、本発明に係る地盤改良体造成装置の一実施形態に関する側面図である。本実施形態の地盤改良体造成装置1は、図1に示すようにロッド2を備えている。ロッド2は、中空部材3と、中継部材4と、先端部材5と、センターシャフト6(図3参照)と、カバー7で構成されている。また地盤改良体造成装置1は、図4に示すように、一対の撹拌翼8と、ピン9を備えている。
【0018】
なお図示は省略するが、地盤改良体造成装置1は、ロッド2を、軸線Oを中心に正方向及び逆方向させ、また軸線Oに沿って前進及び後退させる掘削機を備えている。更に地盤改良体造成装置1は、従来の地盤改良体造成装置と同様に、掘削液や改良材を貯留するためのタンクや、タンクから掘削液や改良材を圧送するためのコンプレッサ等の各種設備も備えている。なお掘削液とは、地盤を掘削する際の排土性や孔壁の安定性等を高めることを目的に使用されるものであって、例えば水や、水に各種の気体や液体を混合させたものである。また改良材とは、地盤改良体を造成する際に使用されるものであって、例えばセメントミルクである。
【0019】
以下、上述した中空部材3~ピン9について、図1図4を参照しながら詳細に説明する。
【0020】
中空部材3は、図3に示すように円筒状をなすものであって、その内側には、上述した各種設備から圧送される掘削液や改良材が流動する。中空部材3の上端部は、上述した不図示の掘削機に連結している。
【0021】
中継部材4は、その上端部において、中空部材3の下端部に差し込まれて中空部材3と連結する円筒状の第一連結部4aを備えている。中継部材4の中央部には、センターシャフト6が挿通される中央孔4bが設けられていて、中央孔4bの径方向外側には、図4に示すように、上下方向に延在するとともに軸線Oを挟んで対向する一対の上側通路4cが設けられている。そして中継部材4の下端部における外周面には、円板状になる第一フランジ4dと、第一フランジ4dの下方に位置する円環状の環状壁4eが設けられている。
【0022】
先端部材5は、その上端部において、環状壁4eの内側に挿入される円柱状の第二連結部5aを備えている。第二連結部5aの外周面には、円板状になる第二フランジ5bが設けられている。また第二連結部5aの中央部には、センターシャフト6を保持する雌ねじ状の保持部5cが設けられている。保持部5cの径方向外側には、図3に示すように上下方向に延在した後に径方向外側に向けて延在して先端部材5の外周面に開口する通路(下側第二通路5d)が、軸線Oを挟んで一対設けられている。ここで、下側第二通路5dが先端部材5の外周面で開口する部位を第二吐出口5eと称する。保持部5cの径方向外側には、図4に示した下側第一通路5fも設けられている。下側第一通路5fは、先端部材5の内側を下側第二通路5dとは交差しないように(連通しないように)延在し、最終的に軸線Oに沿って延在して、先端部材5の下端面で開口している。ここで、下側第一通路5fが先端部材5の下端面で開口する部位を第一吐出口5gと称する。このように先端部材5の内部には、合計3つの通路(2つの下側第二通路5dと1つの下側第一通路5f)が設けられている。なお、図4(c)に示すように、2つの下側第二通路5dと下側第一通路5fの上方での位置は、軸線Oから同距離であって周方向に90°ずれる関係にある。また、軸線Oから下側第二通路5d、下側第一通路5fまでの距離は、中継部材4における上側通路4cの軸線Oからの距離と同一である。
【0023】
また先端部材5は、図4(a)に示すようにその下端部において、軸線Oを含む平面(本実施形態では垂直面)に対して傾いた傾斜面Sと平行に延在する下部傾斜面5hを備えている。下部傾斜面5hは、軸線Oを挟んで対向する位置に一対設けられている。下部傾斜面5hは、図1に示すように側面視における左側端部において、先端部材5の外周面に対して左側段差5jを持ってつながっている。また下部傾斜面5hにおける上端部は、図4に示すように先端部材5の外周面に対して上側段差5kをもってつながっている。更に下部傾斜面5hには、ピン9を保持する保持孔5mが設けられている。
【0024】
センターシャフト6は、下端部が雄ねじ状に形成されていて、図4(a)に示すように雌ねじ状に形成された保持部5cに螺合させることによって先端部材5に保持される。またセンターシャフト6は、中継部材4の中央孔4bに挿入されて、図示したようにワッシャーやねじ等によって中継部材4を抜け止め保持する。
【0025】
カバー7は、外周面は円筒状であって、内周面は、第一フランジ4d、環状壁4e、第二フランジ5bに適合するように凹凸状に形成されている。カバー7は、軸線Oを挟んで二つ割りになるものであって、センターシャフト6によって組み合わされた中継部材4と先端部材5に対して取り付けられ、これらを外周側から回転可能且つ抜け出し不能に保持している。なお、中継部材4に対して先端部材5は、軸線Oを中心に回転可能であるが、不図示の回転方向ストッパーによって、周方向に所定の範囲でのみ回転する。本実施形態において先端部材5は、中継部材4に対して、図3図4に示した上側通路4cと下側第一通路5fが連通する位置(上側通路4cと下側第二通路5dは非連通となる位置)から、図7に示した上側通路4cと下側第二通路5dが連通する位置(上側通路4cと下側第一通路5fは非連通となる位置)まで90°回転する。
【0026】
撹拌翼8は、全体的に半円柱状をなすとともに図1に示すように幅方向両側が切り落とされたような形状になるものである。ここで、撹拌翼8の上端部における幅方向左側の端部を左側上端部8aと称し、幅方向右側の端部を右側上端部8bと称する。左側上端部8aの下方には、幅方向外側に向けて突出する突起部8cが設けられている。また撹拌翼8の上端部には、図4に示すように、傾斜面Sと平行に延在する上部傾斜面8dが設けられている。上部傾斜面8dは、先端部材5の下部傾斜面5hに対して摺動可能に当接する。また撹拌翼8の上端部には、ピン9が挿入される円形の軸孔8eが設けられている。そして撹拌翼8の下端部には、円柱状をなすとともに先端部が半球状になるチップ8fが設けられている。
【0027】
ピン9は、上部傾斜面8dと下部傾斜面5hを当接させた状態で、軸孔8eに挿入されて保持孔5mに保持されるものである。これにより撹拌翼8は、図4に示した傾斜面Sに沿うようにして先端部材5に対して揺動可能に保持される。なお撹拌翼8は、図1に示すように軸線Oに沿う向きに指向する閉姿勢において、先端部材5の左側段差5jに対して左側上端部8aが当接し、また先端部材5の下端部に対して突起部8cが当接する。また撹拌翼8は、揺動して図6に示すように軸線Oに対して傾く向きに指向する(本実施形態の撹拌翼8は、軸線Oに対して約90°傾く向きに指向する)開姿勢において、上側段差5kに対して右側上端部8bが当接する。
【0028】
このような構成になる地盤改良体造成装置1は、撹拌翼8を地盤に接触させた状態で図5に示すように軸線Oを中心に中空部材3をR1方向に正回転(本実施形態では平面視において右回りに回転)させると、中継部材4も中空部材3とともに回転し、上述した回転方向ストッパーが機能した後は、中継部材4とともに先端部材5も回転する。これにより、傾斜面Sに沿うようにして先端部材5に対して揺動可能に保持された撹拌翼8は、地盤から受ける反力によって、先端部材5に対してS1方向に揺動する。そして中空部材3のR1方向への回転を継続すると、撹拌翼8は、図6に示すように上側段差5kに対して右側上端部8bが当接する位置まで揺動し、開姿勢に変位する。その後も中空部材3をR1方向へ回転させると、開姿勢に変位させたままの状態で撹拌翼8を回転させることができる。
【0029】
一方、図5に示すように中空部材3をR2方向に逆回転(本実施形態では平面視において左回りに回転)させる場合は、中継部材4も中空部材3とともに同方向に回転し、回転方向ストッパーが機能した後は先端部材5も同方向に回転するため、撹拌翼8は、地盤から受ける反力によって、先端部材5に対してS2方向に揺動する。このため撹拌翼8は、先端部材5の左側段差5jに対して左側上端部8aが当接し、また先端部材5の下端部に対して突起部8cが当接する位置まで揺動し、閉姿勢に変位する。その後も中空部材3をR2方向へ回転させると、閉姿勢に変位させたままの状態で撹拌翼8を回転させることができる。
【0030】
このような地盤改良体造成装置1を使用して地盤改良体を造成するに当たっては、撹拌翼8を地盤に接触させた状態で中空部材3をR2方向に回転させつつ前進させる。これにより、閉姿勢に変位させたままの状態で撹拌翼8が回転し、撹拌翼8の下端部に設けたチップ8f等によって地盤を削孔することができる。なお、地盤を削孔するにあたっては、中空部材3に掘削液を圧送する。中空部材3をR2方向に回転させた状態においては、図3図4に示すように、上側通路4cと下側第二通路5dは非連通である一方、上側通路4cと下側第一通路5fは連通する。このため、中空部材3を流動する掘削液は、上側通路4cと下側第一通路5fを通って、第一吐出口5gから吐出される。すなわち、撹拌翼8が閉姿勢に変位した状態で回転する際、掘削液は、対をなす撹拌翼8の間から下向きに吐出される。このため掘削土は、掘削液によって押し出され、掘削された地盤と撹拌翼8等との隙間から排土される。
【0031】
所定の深さまで削孔した後、地盤改良体を造成するにあたっては、中空部材3をR1方向に逆回転させ、また中空部材3に改良材を圧送する。これにより、閉姿勢の撹拌翼8を開姿勢に変位させることができる。また図7に示したように、上側通路4cと下側第一通路5fは非連通である一方、上側通路4cと下側第二通路5dは連通するため、改良材を第二吐出口5eから吐出させることができる。そして中空部材3を前進又は後退させることにより、地盤と改良材とを撹拌混合させることができるため、地盤改良体を造成することができる。
【0032】
以上、本発明の一実施形態について説明したが、本発明は係る特定の実施形態に限定されるものではなく、上記の説明で特に限定しない限り、特許請求の範囲に記載された本発明の趣旨の範囲内において、種々の変形・変更が可能である。また、上記の実施形態における効果は、本発明から生じる効果を例示したに過ぎず、本発明による効果が上記の効果に限定されることを意味するものではない。
【0033】
例えば本実施形態では、図5に示すように軸線Oを中心に中空部材3をR1方向に正回転させた際に撹拌翼8を開姿勢に変位させ、中空部材3をR2方向に逆回転させた際に撹拌翼8を閉姿勢に変位させるように構成したが、中空部材3をR1方向に正回転させた際に撹拌翼8を閉姿勢に変位させ、中空部材3をR1方向に逆回転させた際に撹拌翼8を開姿勢に変位させるように構成してもよい。
【0034】
また撹拌翼8が閉姿勢で維持される際、左側段差5jに対して左側上端部8aが当接し、先端部材5の下端部に対して突起部8cが当接するようにしたが、何れか一方の組み合わせでもよい。
【0035】
上述した実施形態では、中空部材3の回転方向に応じて、中空部材3を流動する流体の吐出口が第一吐出口5g又は第二吐出口5eに切り替わるように構成したが、切り替え機能を取り除き、例えば第一吐出口5gからのみ吐出されるようにしてもよい。撹拌翼8を開姿勢に変位させて中空部材3を後退させながら地盤と改良材とを撹拌混合させる際、撹拌翼8が受ける抵抗が大きくなると、撹拌翼8が縮径して撹拌効率が損なわれるおそれがある。このような場合には、第一吐出口5gから下方に向けて改良材を吐出させつつ、中空部材3をR1方向に回転させながらこれを前進させることが好ましい。すなわちこの場合、撹拌翼8は、図6に示すように上側段差5kに対して右側上端部8bが当接していているため、撹拌翼8が受ける抵抗が大きくなってもそれ以上開くことがない。このため、撹拌翼8を開姿勢に維持したまま地盤と改良材とを効率よく撹拌させることができる。
【0036】
また、撹拌翼8を閉姿勢、又は開姿勢に維持するためのロック機構を追加してもよい。このようなロック機構を設ける場合は、例えば上記のように中空部材3を後退させながら地盤と改良材とを撹拌混合する場合でも撹拌効率が損なわれることがない。
【符号の説明】
【0037】
1:地盤改良体造成装置
2:ロッド
3:中空部材
4:中継部材
4a:第一連結部
4b:中央孔
4c:上側通路
4d:第一フランジ
4e:環状壁
5:先端部材
5a:第二連結部
5b:第二フランジ
5c:保持部
5d:下側第二通路
5e:第二吐出口
5f:下側第一通路
5g:第一吐出口
5h:下部傾斜面
5j:左側段差(第一ストッパー)
5k:上側段差(第二ストッパー)
5m:保持孔
6:センターシャフト
7:カバー
8:撹拌翼
8a:左側上端部
8b:右側上端部
8c:突起部
8d:上部傾斜面
8e:軸孔
8f:チップ
9:ピン
O:軸線
S:傾斜面
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7