(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022049844
(43)【公開日】2022-03-30
(54)【発明の名称】首部用サポート具
(51)【国際特許分類】
A61F 5/01 20060101AFI20220323BHJP
A61F 5/02 20060101ALI20220323BHJP
A61F 5/042 20060101ALI20220323BHJP
【FI】
A61F5/01 D
A61F5/02 D
A61F5/042 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】1
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020156098
(22)【出願日】2020-09-17
(71)【出願人】
【識別番号】508302040
【氏名又は名称】根橋 豊光
(74)【代理人】
【識別番号】100135460
【弁理士】
【氏名又は名称】岩田 康利
(74)【代理人】
【識別番号】100084043
【弁理士】
【氏名又は名称】松浦 喜多男
(74)【代理人】
【識別番号】100142240
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 優
(72)【発明者】
【氏名】根橋 豊光
【テーマコード(参考)】
4C098
【Fターム(参考)】
4C098BC39
4C098BC42
4C098BC45
4C098BD02
(57)【要約】
【課題】使用者が仰臥姿勢で首部を載せた状態で頚椎を整復することのできる首部用サポート具を提供する。
【解決手段】首部用サポート具1は、左右対称形状のサポート具本体10を備え、下部には下向きに凸となる湾曲形状を有した左右一対の弾性脚部20が下向きに突出するように形成され、上部の後側には、上向きに凸となる湾曲形状を有した左右一対の弾性首支持部30が上向きに突出するように形成され、上部の前側には、上端の高さが弾性首支持部30よりも低い背支持部40が形成され、サポート具本体10の後端部が、中央側が凹となる湾曲形状を有し、使用状態で、上側中央凹溝部31の溝底と使用者との間には空隙が形成される。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定の設置面に載置された使用状態で、仰臥する使用者の首部を支持する首部用サポート具であって、
弾性材料からなり、前記使用者における首部において胴体側を前方とし、頭部側を後方とする左右対称形状のサポート具本体を備え、
前記設置面に対向する前記サポート具本体の下部には、上部が連続しており、下側に向かうほど離間する左右一対の弾性脚部が下向きに突出するように形成されており、当該左右一対の弾性脚部間が、当該サポート具本体の前後方向に貫かれた下側中央凹溝部となっており、
前記弾性脚部の下端部が、当該サポート具本体の側面視において下向きに凸となる弧状の湾曲形状を有しており、
前記サポート具本体の上部の後側には、下部が連続しており、上側に向かうほど離間する左右一対の弾性首支持部が上向きに突出するように形成されており、当該左右一対の弾性首支持部間が、当該サポート具本体の前後方向に貫かれた上側中央凹溝部となっており、
前記弾性首支持部の上端部が、当該サポート具本体の側面視において上向きに凸となる弧状の湾曲形状を有しており、
前記サポート具本体の上部の前側には、上端の高さが前記弾性首支持部の上端よりも低い背支持部が形成されており、
前記サポート具本体の後端部が、側面視において当該サポート具本体の中央側が凹となる弧状の湾曲形状を有しており、
さらに、前記サポート具本体の左右の側部の中央部には、当該サポート具本体の左右方向を深さ方向とする側部凹陥部がそれぞれ形成されており、
前記上側中央凹溝部と前記下側中央凹溝部との間には中央基部が形成され、前記中央基部において当該サポート具本体の左右対称軸を含む縦断面が、高さ方向の最大厚肉長さよりも前後方向の最大前後長さの方が長い長尺形状であり、
前記使用状態で、仰臥する使用者の頚椎が前記左右一対の弾性首支持部によって挟持されると共に前記上側中央凹溝部の側壁形状に沿って整列され、かつ、当該上側中央凹溝部の溝底と当該使用者との間には空隙が形成されてなり、さらに、前記使用者の第一肋椎関節を含む部位が前記背支持部上に位置してなる
ことを特徴とする首部用サポート具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、使用者が仰臥姿勢で首部を載せることによって頚椎を整復することができる首部用サポート具に関する。
【背景技術】
【0002】
現代社会において、人類の運動器障害上で危惧される問題として取り上げられている1つに、スマートフォン利用時間の増加と長時間のデスクワークが起因と推測されている2種類の頚椎前屈位姿勢に誘発されたストレートネック(スマホ首)や、不良姿勢等の脊柱不良形態化の結果を導く社会現象がある。この現象は、人類の車社会による歩行量の低下とパソコン等の普及による座位姿勢の相対的な時間延長が影響していることも否めない事実と推察した。すると、この近代人類に発生した趨勢は、後世にわたる人類の生活習慣の予測から特に先進国において拍車がかかることが推測された。
【0003】
現時点で、世に公開されている頚椎の整復あるいは首周辺の症状を軽減する目的で開発されたであろうと推測される器具や商品は幾つか存在している。また、それらを分別すると、他者介入型器具(以下:他者型;臨床家らが介入し治療道具等として他人への使用を主体とした器具)と自己使用型器具(以下:自己型;一般人が自分への使用を主体とした器具)との大きく2種類の用途に区別することができる。そして、それらの開発器具自体が有効的な物品と仮定した場合に、他者型の注意すべき特有の案件として、介入者が知識的に商品の使用方法を明確に理解しているか否かによって使用結果に差異が発生する可能性の案件1と、介入者が、使用方法を明確に把握したことを前提に、行使する際の技術的な問題として、各商品の開発者が理想とする操作が、能力的な実践力として介入者に準備されていなければ使用結果に差異が発生するという案件2と、商品使用時には、行使する側とされる側の最低で2名の人員が対峙する環境が必須であるという案件3からなる3つの問題が存在している。
【0004】
そこで案件1・2の、使用した結果に差異が発生する場合が存在するという問題では、介入者の各商品に対する知識的な使用方法の理解度と、技術的な習熟度が、器具の機能的性質にダイレクトに関与してしまうことから、器具本来の性質や性能および身体への本質的な効果を分析する妨げになってしまう。また案件3では、一人で商品を使用し、その効果を得ることが不可能である。したがって、これらの問題は他者型の永遠の課題的要素と判断した。
【0005】
次に自己型の案件であるが、他者型で述べた案件1に関しては、自己型も同一条件となり、使用者(自己)が知識的に商品の使用方法を明確に理解しているか否かによって使用結果に差異が発生する可能性が存在している。案件2に関しても、取扱い説明書等を解読したうえで、使用方法の理解度に個々の差異が発生する可能性を前提に捉え、やはり自己による商品の使用方法や使用技術の実践的要因による個体差が使用結果に表現されることも当然否定できない。すると自己型は他者が介入する要素のみを除外できる条件から、個人の使用期間中には理解力や技術力が変化しない限り、概ね一定した結果が導かれることが多い傾向が存在しているであろうと、過去の各商品使用者達への発明者らの観察眼やそれに付随する商品分析の経験値等から推察した。
【0006】
このような人類の商品使用に係わる社会的趨勢から発明者らは、商品の使用説明の読解力や理解力は他者型・自己型に共通関与することから、本開発器具に関しては用途的に他者が介入する要素を排除することが、商品使用によって人体に及ぼされる効果の誤差が減少することで、ある程度の安定した商品使用結果が得られやすく商品のみに固有される能力のみを効果的期待値として要求するには、他者型に比して優位性が高いと判断した。そこで「枕のような使用方法によって商品の上に頭頚部を乗せるように委ねながら仰臥位姿勢となり、使用者の頭頚部の質量を利用した自重のみで使用効果を齎す器具(以下、枕型器具という)」に注目した。
【0007】
上述のような枕型器具として、例えば特許文献1に開示されているような、半円柱形状(いわゆるかまぼこ形状)を有し、頚椎の生理的前弯形状を促す運動補助器具がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、上記運動補助器具にあっては、頭蓋質量を牽引力として利用しており、そのストレッチ効果を促す概念を選択している結果、当該器具が頭蓋骨を支持せずに、頭部が器具の外部で自重落下する状態を導く機構になっており、さらにその応力は、頚椎の各関節に隙間を発生させる機構となる問題がある。
【0010】
また、上記運動補助器具を含めるその他の器具にあっては、委ねられた頭頚部に対して、左右均等に押圧効果するための左右を2分するセンター設置へ誘導する形状的特徴が一応の器具の中には時に存在するものの詳細な接触箇所へと誘導するための違和感等が発生する機能が存在しないため、頭頚部を委ねる場所として制約領域が存在しない構造であり、当該器具の左右の真ん中に頭頚部を設置しない場合に、いずれの場所に頭頚部を設置しても使用することが可能な構造であり、開発者が設計上から意図した効果的要素が発揮されない可能性が存在する構造であるという問題がある。
【0011】
さらに、頚椎の生理的前弯形状を促すことを考慮し、円柱の円を底面として直立させ、その状態を縦方向に切断した形状、いわゆる「かまぼこ形状」を利用して、仰臥位時の頚椎後面の空間を埋めるよう宛がい、頚椎の生理的前弯形状を強制的に再現させようとする意図が推測される。しかし、頚椎の骨格上で最も背面側に相当する棘突起がその形状特性から、頭頚部の自重を加担して当該器具の上面と接触する仕組みになるため、理論的には点接触の荷重支持構造になる。したがって厳密的には、当該器具に対しては、棘突起の先端部を支点としたやじろべぇのような一点支持となることから揺れが発生する構造であり、その動揺性は頚椎を相対的に捉えても、その一点支持構造においては、接触点からの介達外力によって頚椎の各関節面には剪断力が発生する状態となり、左右方向への不安定性が生じる構造的特徴が「かまぼこ形状」の器具と棘突起との接触関係に内在している。また、頚椎の重要な環椎後頭関節・環軸関節・椎間関節に対しては、これらの全関節面に総括的な連続性を導き、各関節面を近接させる目的で、枕型器具と棘突起との接触関係は非接触とし、ダイレクトな接触支持をする力学的エネルギーが本質的に必要である。しかし、既存の枕型器具においては棘突起や頚椎の関節面にピンポイントで接触している器具が概ねであり、機構的に各関節面を集約して近接させる機能が不充分である。したがって、既存の枕型器具では、安全な整復応力も発生しない構造であるという問題がある。
【0012】
これら問題点に鑑み、頚椎に対して新たな整復機能を器具内に内在させることで、人類の頚椎を起因とする様々な不定愁訴(頭痛・三叉神経痛・歯痛・眩暈・特発性難聴等)や諸症状を違和感として認識した際にその認識者が、自らの使用によって症状を緩和・改善または消失を可能にする商品開発を目的とした。
【0013】
また、本発明によって解決しようとする問題は、発明者らの頚椎への処方概念を具現化し、既存の類似する枕型器具との形状的・機構的相違の認知や、商品化時には取扱説明書等を公開されることで既存の類似商品との明確な処方概念の違いを表面化すると同時に、今もなお各医療機関において連綿と継承実施されている牽引療法に対して間接的に疑義を提示し医学的概念の変貌にも繋がる可能性を含めてもいる。
【0014】
さらに、本発明には、発明者らの徒手整復術の要素を、形状と材質との2つの特性を混合させた結果を機能的主体として表現し、身体に作用する応力を演繹して開発し、一般人が本開発器具を、自ら使用する行為(仰臥位姿勢で頭頚部を本開発器具に委ねる行為)のみによって本件発明者が実施する頚椎への処置と類似の効果が得られる事を想定した。また、本発明が必要となるもう一つの理由として、脊柱疾患を専門に研究している臨床家の間でも特に処置が難解で特殊な訓練も要し、時には医原病(医療行為が原因で出現する症状)化する可能性も稀ではない頚椎の整復法に対して、素人であっても容易に有効かつ安全な頚椎を対処する手段に繋がる開発を目指すものである。
【0015】
すなわち本発明は、使用者が仰臥姿勢で首部を載せた状態で頚椎を整復することのできる首部用サポート具を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0016】
本発明は、所定の設置面に載置された使用状態で、仰臥する使用者の首部を支持する首部用サポート具であって、弾性材料からなり、前記使用者における首部において胴体側を前方とし、頭部側を後方とする左右対称形状のサポート具本体を備え、前記設置面に対向する前記サポート具本体の下部には、上部が連続しており、下側に向かうほど離間する左右一対の弾性脚部が下向きに突出するように形成されており、当該左右一対の弾性脚部間が、当該サポート具本体の前後方向に貫かれた下側中央凹溝部となっており、前記弾性脚部の下端部が、当該サポート具本体の側面視において下向きに凸となる弧状の湾曲形状を有しており、前記サポート具本体の上部の後側には、下部が連続しており、上側に向かうほど離間する左右一対の弾性首支持部が上向きに突出するように形成されており、当該左右一対の弾性首支持部間が、当該サポート具本体の前後方向に貫かれた上側中央凹溝部となっており、前記弾性首支持部の上端部が、当該サポート具本体の側面視において上向きに凸となる弧状の湾曲形状を有しており、前記サポート具本体の上部の前側には、上端の高さが前記弾性首支持部の上端よりも低い背支持部が形成されており、前記サポート具本体の後端部が、側面視において当該サポート具本体の中央側が凹となる弧状の湾曲形状を有しており、さらに、前記サポート具本体の左右の側部の中央部には、当該サポート具本体の左右方向を深さ方向とする側部凹陥部がそれぞれ形成されており、前記上側中央凹溝部と前記下側中央凹溝部との間には中央基部が形成され、前記中央基部において当該サポート具本体の左右対称軸を含む縦断面が、高さ方向の最大厚肉長さよりも前後方向の最大前後長さの方が長い長尺形状であり、前記使用状態で、仰臥する使用者の頚椎が前記左右一対の弾性首支持部によって挟持されると共に前記上側中央凹溝部の側壁形状に沿って整列され、かつ、当該上側中央凹溝部の溝底と当該使用者との間には空隙が形成されてなり、さらに、前記使用者の第一肋椎関節を含む部位が前記背支持部上に位置してなることを特徴とする首部用サポート具である。
【0017】
かかる発明の構成を以下に順に説明する。
【0018】
(要素1)
人間の個体差がある頚椎の形状や異常状態に無生物が対応しつつ、頚椎整復応力として機能する
図16(a)に示した正中線C方向に向かい左右から挟み込み均等加圧する力学的機構(
図16(a)内の矢印線)の存在。
【0019】
すなわち、上記使用状態において上記左右一対の弾性首支持部が、仰臥する使用者の頚椎Kの背面側にある棘突起K1ではなく、その横部分を左右から挟み込んで均等に加圧することで、頚椎を正しく整列させて整復を促すことができる。
【0020】
(要素2)
頚椎棘突起先端部の非接触性を齎す本発明中央部付近の溝構造。
【0021】
すなわち、前記上側中央凹溝部の溝底と使用者との間に空隙(隙間)が形成されることで、棘突起K1が応力を加えられることなく頚椎の整復を行うことができる。ここで、例えば棘突起K1を背面側から支持するような構成であると、上述のように棘突起K1を支点としてやじろべぇのように左右に揺動して頚椎の整復を阻害するおそれが生じてしまう。
【0022】
(要素3)
頭頚部質量を左右で2分設置することを考慮した縦断面(鉛直断面)内の一部V字構造による頭頚部の荷重要素を一線に集約させる機構の内在。
【0023】
すなわち、本発明の首部用サポート具において左右一対の弾性首支持部が左右対称形状をなして略V字形状で使用者の首部を支持することによって、当該首部用サポート具と使用者の首部との左右方向のずれをなくしてバランスよく頭部を支持することができ、的確に効果を発揮させることができる。
【0024】
(要素4)
左右に存在する頚椎の各関節へ加圧機能を考慮したシンメトリー化された対面型並走2連曲面アーチ支持構造。
【0025】
すなわち、左右一対で並置された前記弾性首支持部がそれぞれ上向きに凸となる弧状の湾曲形状を有していることで、使用者の頚椎を下からアーチ状に支持して整復を促すことができる。なお、ここでいうアーチ状とは、石橋構造の輪石(要石を含む)のように上側に向かって凸となる湾曲形状を示し、
図16(b)内で二点鎖線A1にて示すように、仰臥した使用者の頚椎の背側が上側に向かって凸となる湾曲形状であることに対応した形状であることを示す。
【0026】
(要素5)
頭部の落下抑制を考慮した後頭部下縁を的確に支持する構造。
【0027】
すなわち、前記サポート具本体の後端部が、側面視において当該サポート具本体の中央側が凹となる弧状の湾曲形状を有していることで、当該サポート具本体が使用者の頭部を弾性的に支持しつつ宙吊り状態を抑制し、使用者の個体差によらず後頭部の自重落下および頚椎の牽引作用を防止することができる。
【0028】
(要素6)
いわゆる支保工の概念を利用し、個体差が存在する頚椎の生理的前弯を再現・修復・保全を促すために、当該首部用サポート具使用時の形状変化に連動する本体中央基部縦断面図における形状変化(一部高さ方向への後発的凸アーチ形状出現変化:個々の使用者によって委ねられた頭頚部条件に伴い、本件首部用サポート具を構成する軟素材(弾性材料)の特性から、その断面図の曲率半径が各々適宜変化する変形型楕円類似形状の存在と、当該サポート具本体裏面の側面視において下向きに凸となる弧状の湾曲形状による床面(設置面)との前後2か所の間隙部の形成よって当該サポート具本体全体が複合的に変形する要素からなる使用者への個別対応を想定した変化)構造の内在。
【0029】
すなわち、前記中央基部において当該サポート具本体の左右対称軸を含む縦断面が、高さ方向の最大厚肉長さよりも前後方向の最大前後長さの方が長い長尺形状であると、使用者の頭頚部が当該サポート具本体に委ねられ接触が開始した際に頚椎の回転転位と側方転位が修復され始めると同時に、前記弾性脚部の下端部が、当該サポート具本体の側面視において下向きに凸となる弧状の湾曲形状を有している構造に基づき、頭頚部の自重によって頚椎への回転転位と側方転位の修復接触圧を緩めることなく長尺形状の後端部が下方向(設置面方向)に沈み、結果的に長尺形状の上端縁が上方への凸形状に湾曲変形するように歪む機構が生じることにより頚椎を効果的に生理的前弯形状へと整復することができる。なお、前記縦断面形状が前後に長い略楕円形状であることが望ましく、少なくとも当該縦断面の上端縁形状が頚椎のアーチ形状に沿った形状であることがさらに望ましい。
【0030】
なお、発明者らは、本発明が従来のものとは異なる点の一つとして、以下のような概念を提唱している。
すなわち、現代医療における頚椎症等の症状に対して様々な物理的療法が実施されているが、その中で一般人に最も周知な療法として実施されている一つに牽引療法がある。この療法は、首(頚椎)にストレッチ効果を施し、伸ばされるという行為が、頚椎の椎間孔を拡大し圧迫している神経根への刺激を開放する等の身体に有効性が高いと解釈した概念であり、その影響から既存の自己型には、頚椎伸展機能(いわゆるストレッチ効果)が内在されている器具が多い。しかし発明者らは、人間は地球上の重力と大気圧という加圧環境下に生息することが生理的な条件であること、ならびにヒトの立位では、脊柱の最上部に概ね5キログラム近傍の質量が存在する頭部が脊柱全体を法線方向に加圧している条件下が生理的であること、ならびに牽引療法に対するエビデンス(下記のインターネットサイト参照)等を考慮し、身体への有効な手段に対する一つの選択として、牽引の概念(引く概念:牽引療法)とは反対の押圧する概念(押す概念:面圧療法)を研究し論文(下記のインターネットサイト参照)等により提言もしている。
【0031】
https://www.jstage.jst.go.jp/article/rigaku/42/6/42_42-6kikaku_ito_toshikazu/_pdf
【0032】
https://jglobal.jst.go.jp/detail?JGLOBAL_ID=200902134901535238&Rel=1#%7B%22Category%22%3A%220%22%2C%22Keyword%22%3A%22%5C%22200901100512176332%5C%22%22%7D
【0033】
この2種の異なる概念から、発明者らが考える身体への影響性を踏まえた選択自体が、本発明内容に係わる新規性が起因する要素でもあって、既存する多数の商品に、本発明に類する器具が存在しない理由でもある。
【0034】
この「押す(押圧または面圧)概念」を元に、特に上記要素5において、頭部の自重落下を抑制して頚椎の各関節に大きなストレスをかけることなく頚椎を整復する効果が期待できる。
【発明の効果】
【0035】
本発明の首部用サポート具は、好適に頚椎の整復を促すことができる効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0036】
【
図1】実施例にかかる首部用サポート具の前側を主に示す斜視図である。
【
図2】実施例にかかる首部用サポート具の後側を主に示す斜視図である。
【
図3】実施例にかかる首部用サポート具の平面図である。
【
図4】実施例にかかる首部用サポート具を示し、(a)は背面図であり、(b)は右側面図である。
【
図5】実施例にかかる首部用サポート具の断面形状を示す説明図である。
【
図6】実施例にかかる首部用サポート具の縦断面図である。
【
図7】実施例にかかる首部用サポート具を使用している状態を平面視で示す説明図である。
【
図8】実施例にかかる首部用サポート具を使用している状態を側面視で示す説明図である。
【
図9】実施例にかかる首部用サポート具を使用している状態を断面視で示す説明図である。
【
図10】(a)は頚椎関節の整復時を示す説明図であり、(b)は環椎後頭関節、環軸関節および頚椎椎間関節における不整合性を示す説明図である。
【
図11】実施例にかかる首部用サポート具の並走2連曲面アーチを説明するための説明図である。
【
図12】アーチ形状を支保工によって補修する状態を示す説明図である。
【
図13】実施例にかかる首部用サポート具の底面図である。
【
図14】(a)は仰臥位時の呼吸(吸気)によって後頭部に圧力が加わる状態を示す説明図であり、(b)は仰臥位時の呼吸運動によって胸郭の可動性から生じる頚椎関節を含めた脊柱全体への微振動作用が脊柱の撓り運動や頚椎・胸椎・腰椎の各湾曲に対して曲率変化等を誘発させることで椎間関節へも影響を与える状態を示す説明図である。
【
図15】実施例にかかる首部用サポート具を他者介入型にて使用する状態を示す説明図である。
【
図16】(a)は頚椎の説明図であり、(b)は頚椎がアーチ形状を有して並んでいる状態を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0037】
以下、本発明にかかる首部用サポート具を具体化した実施例を詳細に説明する。なお、本発明は、下記に示す実施例に限定されることはなく、適宜設計変更が可能である。
【0038】
首部用サポート具1(以下、単にサポート具1ともいう)は、所定の設置面GLに載置された状態で、仰臥する使用者の首部を下から支持するものである。なお、サポート具1の特性に基づき、サポート具1の上面を表面と適宜記載し、下面を裏面と適宜記載している。
【0039】
サポート具1は、
図1~
図5に示すように、ポリウレタン樹脂等の弾性材料からなり、使用者における首部において胴体側を前方とし、頭部側を後方とする左右対称形状のサポート具本体10を備えている。
【0040】
サポート具本体10の設置面GLに対向する下部には、上部が後述する中央基部60で連続しており、下側に向かうほど離間する左右一対の弾性脚部20,20が下向きに突出するように形成されている。また、当該左右一対の弾性脚部20,20間に形成された凹溝が、サポート具本体10の前後方向に貫かれた下側中央凹溝部21となっている。
【0041】
さらに、弾性脚部20の下端部が、サポート具本体10の側面視において下向きに凸となる弧状の湾曲形状を有している。
【0042】
一方、サポート具本体10の上部の後側には、下部が後述の中央基部60で連続しており、上側に向かうほど離間する左右一対の弾性首支持部30,30が上向きに突出するように形成されている。また、当該左右一対の弾性首支持部30,30間に形成された凹溝が、サポート具本体10の前後方向に貫かれた上側中央凹溝部31となっている。
【0043】
さらに、弾性首支持部30の上端部のうち後側が、サポート具本体10の側面視において上向きに凸となる弧状の湾曲形状を有している。
【0044】
これに対し、サポート具本体10の上部の前側には、上端の高さが弾性首支持部30の上端の高さよりも低い背支持部40が形成されている。
【0045】
また、サポート具本体10の後端部が、側面視においてサポート具本体10の中央側が凹となる弧状の湾曲形状を有している。
【0046】
さらに、サポート具本体10の左右の側部の中央部には、サポート具本体10の左右方向を深さ方向とする側部凹陥部51,51がそれぞれ形成されている。
【0047】
また、上側中央凹溝部31と下側中央凹溝部21との間には中央基部60が形成されている。中央基部60においてサポート具本体10の左右対称軸を含む縦断面が、高さ方向の最大厚肉長さよりも前後方向の最大前後長さの方が長い長尺形状である(
図5参照)。
【0048】
そして、サポート具1の使用状態では、
図7~
図9に示すように、仰臥する使用者の頭部Hがサポート具1の後端部に載置され、頚椎Kが左右一対の弾性首支持部30によって左右から挟持されると共に上側中央凹溝部31における側壁(溝壁)の形状に沿って整列される。ここで、上側中央凹溝部31の溝底と使用者との間には空隙Sが形成されており、棘突起K1が応力を受けない構成とされている。さらに、前記使用状態では、使用者の第一肋椎関節R1を含む部位が背支持部40上に位置している。
【0049】
以下に、サポート具1の構成によって奏される効果について記載する。
サポート具1の縦断面において、
図4(a)で示す二点鎖線A2のような深い溝を形成し、棘突起の先端部がサポート具1に接触しないようにV字構造を内在させた。次に、頭蓋質量を含む頭頚部の自重落下に伴い
図4(a)に示したV字形状の中央部に頭頚部を設置することで基本的には頭頚部質量が左右均等に2分される状況へと導かれバランスよく安定支持され易い状態を促している。また仮に、頭頚部質量が左右でアンバランスに2分されて委ねられ設置された場合には、サポート具1を構成する軟素材の特性から、荷重配分の左右不均衡性から頭頚部が左右のいずれかに傾き不安定感を認識することが可能であり、頭頚部の左右重心がサポート具1のセンター(左右を二分する中心線)から逸脱している状態を使用者自身のバランス感覚によって気付かされる構造でもあるため、結果として使用者自身には、頭頚部の本サポート具1への再設置要求が自主的に発生され、設置動作の誘導的機能が内在されている。したがって、V字構造の意図は、使用者により委ねた頭頚部の設置条件によって生じる左右頭頚部質量の荷重配分の均衡または不均衡に伴う機構的な安定性または不安定性の発生状態の有無から違和感の有無の認識が容易となる形状であるため、サポート具1の左右中央部に頭頚部質量を均等分配するように自己判断して設置することが可能な構造でもある。
【0050】
すなわち、左右一対の弾性首支持部30の間に頭頚部が嵌まり込むようにして載置されるため、左右のずれが生じず、頚椎の整復を適正に行うことができる。このとき、頚椎Kの棘突起K1は空隙Sが存在することによってサポート具1から応力を受けることがなく、棘突起K1を支点とした頚椎Kの揺動等が発生することもない。
【0051】
さらに、サポート具1に側部凹陥部51を設けることで、
図5の二点鎖線A3のようなC字&逆C字の形状(または2つを合わせた全体としてのX形状)を形成し、この地面反力を利用したC形状が生み出す板バネ機構から中央の二点鎖線A4の方向に向かう応力を促し、
図16(a)で示した左右の矢印方向から正中線C方向に向かう整復応力として左右均等の圧力が発生する構造とした。
【0052】
サポート具1の縦断面形状を
図5のようにX字型としサポート具1が単体で床面等に安定設置できる構造とし左右方向への不安定性を解消した。
【0053】
実際に行われる関節整復法の一例として、
図10(a)の丸内に示したように椎間関節が離開した関節面を、体表面から脂肪組織・筋組織を排除しつつ異常な関節面へと手指を絞り込むように骨格の内部方向に向かい侵入させて、ダイレクトに押圧して整復手技を行うものがある。このように、環椎後頭関節と環軸関節および頚椎椎間関節における不整合性(
図10(b)参照)の状態を整復し、各関節面を密着させるためにサポート具1の一部が棘突起に接触せずに頚椎を支持し、ダイレクトに環椎後頭関節・環軸関節および頚椎椎間関節に押圧機構が作用する必要がある。
【0054】
そのためサポート具1には、仰臥位姿勢にて頭頚部を委ねた際の、上側中央凹溝部31の底部に空隙Sが形成され、当該空隙Sに棘突起が侵入するスペースとしての溝構造を設け、また頚椎の各関節部がスムーズに左右方向からの接触応力で挟まれる構造によって頚椎が安定支持される陥凹部としての上側中央凹溝部31を形成した。
【0055】
次に、
図11内に二点鎖線A5で示すように左右の双方が向き合う形状の対面型並走2連曲面アーチ構造とし、環椎後頭関節、環軸関節および頚椎椎間関節の異常関節面に整復機構がダイレクトに作用する押圧形状とした。また、頚椎全体の関節面に対し並走2連曲面アーチ構造は、左右の各関節面への押圧力を均一に機能させつつ、さらに頚椎のストレートネック現象の予防と生理的前弯形状に導く目的の必要性にも対応した。
【0056】
また、二点鎖線A5や
図1内に二点鎖線A6で示すアーチ形状は
図12に示す支保工の概念に基づく整復概念であり、軟素材によるサポート具1における形状の変形する経緯を想定して個別対応型の頚椎の関節異常状態に対する自己整復法でもある。
【0057】
すなわち、頚椎の関節異常に対して左右一対の上側中央凹溝部31の内面に形成されたアーチ形状がガイド役となって頚椎を正しく整列させる整復作用を発揮することができる。
【0058】
従来の枕型器具を使用する場合には、頭蓋骨を支持しない構造であるため頭蓋質量によって頚椎が後屈伸展する。本発明においては押す概念として面圧療法を行うことを主旨とするため、頭蓋骨の落下作用による牽引作用が発生しないように仰臥位で頭蓋骨と頚椎との緻密な関節等の連続性が分離しないように頭部と頚部の両方を連続的に支持する構造が必要である。
【0059】
そのため、頭頚部の支持に対し、頚椎と後頭骨下縁までを上述の対面型並走2連曲面アーチが連続的に支持する構造とし、後頭骨下縁部は
図4(b)内で二点鎖線A7がC字形状で示す板バネ機構によって後頭骨を支持する構造を内在させ、地面反力による頭頚部の落下を抑制した。
【0060】
すなわち、サポート具本体10の後端部が、側面視においてサポート具本体10の中央側が凹となる弧状の湾曲形状を有していることにより、当該後端部が板バネの如く作用して頭部を支持し、頭部の自重落下を抑制して環椎後頭関節および頚椎の各関節の離開を防止している。
【0061】
頚椎や頭蓋骨をはじめとする人間の骨格は、正常状態でも個々の年齢・性別・脊柱湾曲の曲率・変形の有無・関節の柔軟性等の様々な個体差が存在し、また正常から逸脱した想定不可能な不規則な関節異常状態の存在も考慮しつつ、本発明では、それらを総括的な対象として、すべての状況に対して安全または、ある程度の領域まで良結果が得られる状態へと導く機構を無生物化として表現することを目的としている。そこで本開発器具(サポート具1)は、例えばシリコーン等の弾性体で製造することも想定し、サポート具1の形状としては、左右がシンメトリーであり、それに対してヒトが仰臥位姿勢となり頭頚部を委ねる行為によって発生する応力が地面反力を有しながら弾性変形する機構を利用して使用者個々の状態に個別対応しながら頚椎を保全または整復する形状とした。
【0062】
頚椎の湾曲形状にも曲率的な要素としての個体差が存在しており、
図16(b)で示した仰臥位姿勢時に7つの椎体が石橋のように表現される頚椎のアーチ構造のキーストーン(石橋アーチ内で一番高い位置にある石)に相当する椎体もアーチ形状の相違から個々によって対象となる椎体に相違がある。そこで、
図4(b)内の二点鎖線A8で示すサポート具1の裏面(下面)側面視を逆アーチ形状とし、床面との非接触の形状を有する構成した。この部位の間隙構造によって使用者が頭頚部を委ねる動作時に、本サポート具1表面(上面)の上端部は、頭頚部との接触状態は保ちながら顕著に変形しやすい状態が発生することで、頚椎の全ての関節部と本サポート具1表面(上面)の密接性は保有し、さらに自重落下により頚椎後面を接触支持する圧力に減圧部が発生しないように追従しながら接触加圧力も維持または増加しつつ、支持力も緩めずに保持する機能を内在させた。また、裏面(下面)側面視の逆アーチ形状には別の理由もある。それは本サポート具1裏面(下面)と設置面(例えば床等)との空隙S2,S3は、頭頚部質量の荷重負荷によって本開発器具の内部素材が流動変形するスペースとして機能し、サポート具1が臨機応変に弾性変形し、万人の相違ある頚椎形状にフィット感を導く構造的な目的もある。これは、
図16(b)のように枕型器具を設置しない条件で仰臥位となった場合に、発生した頚椎のアーチ空間をサポート具1が部分的な上方(頚椎方向)への局所押圧力としての過剰刺激が発生しない状況を考慮した形状であり、可能な限り均等な圧力で後頭部下縁から頚椎後面を全て埋め尽くすことを期待した構造である。
【0063】
すなわち、弾性脚部20の下端部が、サポート具本体10の側面視において下向きに凸となる弧状の湾曲形状を有していることにより、個々の頚椎湾曲形状に相違ある使用者にサポート具本体10は臨機応変に形状が変化することによって対応し頭頚部重量をバランスよく支持することができる。
【0064】
さらに、上述の効果と一部重複するが、以下の効果も期待できる。
【0065】
左右一対の弾性首支持部30,30の中央部の縦方向に深い溝形状による空隙Sを形成することによって、棘突起K1の接触を避けることができる。
【0066】
また、上側中央凹溝部31の形状は縦断面が一部V字構造であり漏斗(円錐形状)の断面と同様の形状となることから、漏斗機能に保有された集中させる(集める)機構を存在させる。この形状によって、頭頚部の自重が加わった際には、7つの頚椎棘突起K1が一線に集約される構造となり、頚椎Kの側方転移と回旋転移を整復することを意図とした構造となる。また、V字構造の特性から首が太い細い等といった個々の頚部周径差へも臨機応変に対応することが可能な構造でもある。
【0067】
上側中央凹溝部31のV字状の溝による空隙Sによって棘突起K1の背面先端部は、非接触のフリー(自然可動)状態とし、その代わりに頭部および頚椎部を直接支持する対面型並走2連曲面アーチ構造が、側方から左右均等圧で挟み込む機構を上側中央凹溝部31の表面に形成する。この形状により、頭頚部を支持しつつ頚椎の側方転移を整復し、同時に頚椎の回旋転移を整復することを意図とした構造となる。
【0068】
頚椎に牽引作用が発生しない構造として、頭蓋骨(後頭部)を支持する機能が必要なため、本サポート具1表面から上方向に突出し、左右で向き合いつつ漸次拡大する2つの対面型の曲面形状(後頭部下縁および第1頚椎から第7頚椎および第1肋骨周辺までの全面が接触し、各々の骨形状を安定支持するに必要な接触面積を有する形状)を形成し、後頭部下縁の落下を抑制する構造とする。
【0069】
後頭部下縁を支持する機能として、サポート具1の後端部には、板バネの機構構造で用いられている湾曲面からなる曲線部分が確認可能であり、弾性脚部20が設置面GLに接触することで発生する地面反力が、中央基部60を介して弾性首支持部30や背支持部40まで伝達され、その力学的作用により弾性首支持部30の表面側に委ねられた後頭部を支持する構造となる。
【0070】
サポート具1に頭頚部を委ねた際に、後頭部を設置面と非接触な状態にするため、サポート具1の表面と裏面との厚みに充分な高さを有する構造になる。この構造の意図は、サポート具1表面に後頭部下縁を委ねた際に、仮にサポート具1の高さが不充分であり、後頭部の一部が設置面GLと接触してしまった場合を想定したことによる。本発明は、7椎体ある頚椎Kが湾曲して配列する形状を石橋に例え、その石橋の崩落状態を修復する方法として用いられている支保工の概念を利用しているからである。そこでサポート具1には、理論的内容として頚椎Kに対しても対面型並走2連曲面アーチ構造を利用することで支保工の概念と同様の概念で修復機構が発生することを本発明で提唱する意図が内在しており、その理論を成立させる条件の1つに、石橋修復時の橋台部の一端側に相当する部位が、サポート具1表面後端部に委ねられた状態にある後頭部下縁である必要があり、また、それ以外の後頭部の一部が設置面GLとは非接触状態を必要条件とし、仮に設置面GLと接触してしまうことで支点が変化し、頚椎後面に対して、サポート具1表面が面加圧機構を促す機構が成立せず、二者(サポート具1表面と頭頚部後面)との間隙に非接触または微弱接触の部位が導かれる可能性が生まれ、修復方法の対象とした支保工の概念から逸脱し、頚椎の修復機能が消失されてしまうからである。
【0071】
なお、頭部後面が床面(設置面)と非接触であることについては、一見は牽引作用が発生する既存の枕型器具との相違が不明瞭になりがちだが、実際にはサポート具1が後頭部下縁に接触支持する条件下では全身を覆う表皮(人間の個体表面を一層して覆う境界膜)がヒト個体の全体を包皮しているため、頭部では脳頭蓋から顔面頭蓋、さらに前頚部へと表皮の連続性があり、すなわち、その膜張力作用の存在によっても頭頚部に牽引作用が働かない構造であることを理解されたい。
【0072】
サポート具1の表面後端部(上面後端部)に接触する後頭骨下縁と、サポート具1の表面前端部(上面前端部)に隣接する頚部と胸部の移行部(第7頚椎周辺)との両端部2点は、形状的に橋台構造における2点支持として機能する構造となる。その為にサポート具1が軟素材(例えば:シリコーン樹脂製やポリウレタン樹脂製等)を使用した場合は、頭頚部質量が荷重されることによって、
図8に示すように弾性脚部20の前後両端部が落下変形し、その結果として頭頚部に支保工の原理が発生する構造となる。この支保工の概念から、弾性首支持部30の表面形状に委ねられた頚部後面には、頚椎Kの関節面の全てに面圧力が施され、異常状態に陥っている頚椎の関節に整復力を加えることになる。
【0073】
サポート具1の中心核(core)部分には量感(中央基部60)を形成し、本開発器具の外郭(shell)が変形した際に、その中心核のボリュームの存在が、その外郭の変形に連動して中心核(core)部分に伝達される応力量を一部は減少させ、また、一部は従属させる機構を導く形状となる。これは、サポート具1の表面両端部(上面両端部)が落下した後にサポート具1の中央縦断面によって描かれる変形型楕円類似形状の残存像を演繹しており、頚椎Kの生理的前弯形状を再構築またはストレートネック等を予防する形状へと変形する過程を想定した量感形状として構造設計している。
【0074】
頚椎関節における離開した関節面への押圧機構を、頚椎Kの左右に存在する関節面の全てに対して均等に施すために、上側中央凹溝部31の表面形状は、シンメトリーで左右が対向する曲面的な対面型並走2連曲面アーチ構造(
図1参照)としている。
【0075】
上側中央凹溝部31の表面形状は、頭頚部の自重落下時に接触支持し、その際に環椎後頭関節・環軸関節・頚椎椎間関節における各関節部の接面不具合(頚椎の側方転位および回旋転位等によって発生する非生理的な関節の状態)に対して左右均等な面接触加圧によって頚椎Kの棘突起K1が一線に集中配列機序を促すために、弾性首支持部30表面中央部の溝の外側に2つの面が対面並走する構造としている。
【0076】
弾性首支持部30表面の縦断面の一部V字構造に加え、サポート具1の裏面(下面)である弾性脚部20側は設置面GLに設置された際に自立を可能とするため本サポート具1後方観および縦断面はX字型の構造としている。また、断面X形状と下側中央凹溝部21の形状によってサポート具1は、表裏の2面に頭頚部をリバーシブルで委ねることも可能とした構造でもある。
【0077】
弾性脚部20の設置面GLとの接触点は、左右の緩やかな2連アーチ構造による2点(
図13における二点鎖線A9参照)接触とし、またサポート具1の裏面形状中央部の前後端部は凹面形状(
図13における二点鎖線A10参照)を形成している。この構造によってサポート具1側方観には設置面GLと間隙が形成されるように、側面中央部が凸形状の曲線構造となる。さらに、この構造は、頚椎Kの側方転位・回旋転位および7つの頚椎の配列状態から表現される生理的前弯からの逸脱という最も発生頻度の高い3種の異常に対して、初めに使用者がサポート具1の表面(軟素材の場合)に頭頚部を委ね、皮膚と接触し始めた際に、頚椎Kの側方転位ならびに回旋転位が整復し始められ、その次に、頭蓋質量および頚部の自重がサポート具1の表面(上面)に徐々に加わり表面形状が一層荷重変形しながらサポート具1の裏面(下面)に存在する設置面GLとの間隙部も埋め尽くされるように荷重変形し、サポート具1自体が全体的に変形する状態をあえて導き、それらの段階的に変形してゆく経緯とその経緯によって導かれた中央基部を中心核とするその変形後の外郭形状が個別への対応を考慮した構造でもある。
【0078】
本発明は、ストレートネック・頚椎後弯・交通事故傷害・スポーツ外傷等といった、人類の様々な生理的状態から逸脱した不規則かつ想定不可能な頚椎Kの不確定な異常形態に対して、医療者による検査・診断・処置等という介入を行使せずに一般人が対応できる構造である。サポート具1の使用者各々に個別対応することを念頭に、徒手整復術の代わりとして、発明者らが徒手整復において実施している頚椎整復術の応力を解析し、頭頚部の荷重負荷が加わる状態を想定したうえで、サポート具1の材質と形状的特性を踏まえ、サポート具1の数か所の弾性反発力を利用した骨格整復力と、反対にサポート具1の局所の弾性変形による従属作用部が、頭頚部質量に対して複合的に反応した集積結果として使用者各々に対応した変形後のサポート具1の形状として表現され、異常状態にある頚椎の形状的修復機構が発生する構造設計となっている。
【0079】
弾性脚部20の下端部における下向きに凸となる弧状の湾曲形状が齎す別の効果として、人間が仰臥位姿勢時の胸郭の可動に伴う脊柱の連動性機能の温存を考慮している。呼吸運動による胸郭の拡張と収縮に伴う肋骨の動きは、肋椎関節から胸椎へと可動性を連動し、脊椎全体も微動しているため、仰臥位時には
図14(a)で示す状態で後頭部が床面を僅かに加圧している。
【0080】
すると、その際に発生する後頭部からの地面反力は、
図14(b)で示す状態で頚椎の湾曲に対し悪影響となる応力が作用する場合があるため、その対策として弾性脚部20の側方視で曲線形状を形成することで、仰臥位時の呼吸運動に伴う脊柱の微動に追従し、揺りかごの様な動きで脊柱の可動性を束縛しない構造となっている。
【0081】
サポート具1の他者介入型(他者型)としての使用方法を以下に記載する。
図15に示すように、中央基部60から突き出されている左右一対の背支持部40のY字形状を利用してサポート具1の後面中央部から軸心を貫くように応力を加えることで前面側の応力が2分され頚椎Kに存在する環椎後頭関節、環軸関節および頚椎椎間関節の左右の全ての関節面に均等な整復圧を施すことが可能な構造になっており、また軟素材の特性から個体差にフィットするように柔軟に変形する機構となっている。
【0082】
上記に記載した一連の内容について、現存する枕型器具に内在された牽引機能やストレッチ機能および局所押圧形式のピンポイント形状等は、椎間関節部が離開する方向性であると同時に、頭頚部に存在する全ての関節に対して直接的に面接触支持する構造には至っていないと考える。
【0083】
本発明は、本来の地球上に生息した人間に必要不可欠な条件として生理的に作用している大気圧の加圧要素を、有効かつ安全性が保たれる限界点での固体化として表現することを念頭に、頭頚部後面を包み込むように全面圧を施し、頭頚部の関節が全て密接する方向への従来にない器具開発を目的としているため過去の類似商品とは概念も含めて異例的な理論の具現化開発である。
【0084】
上記実施例における各部の寸法形状は適宜自由に選択可能である。
【符号の説明】
【0085】
1 首部用サポート具(サポート具)
10 サポート具本体
20 弾性脚部
21 下側中央凹溝部
30 弾性首支持部
31 上側中央凹溝部
40 背支持部
51 側部凹陥部
60 中央基部
GL 設置面
K 頚椎
K1 棘突起
S 空隙