(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022049867
(43)【公開日】2022-03-30
(54)【発明の名称】切断加工用刃物及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
B26D 1/28 20060101AFI20220323BHJP
B24C 1/02 20060101ALI20220323BHJP
B24C 1/04 20060101ALI20220323BHJP
B24C 11/00 20060101ALI20220323BHJP
B24C 1/06 20060101ALI20220323BHJP
B26D 7/18 20060101ALI20220323BHJP
B31B 50/22 20170101ALI20220323BHJP
【FI】
B26D1/28 B
B24C1/02
B24C1/04 F
B24C11/00 D
B24C1/06
B26D7/18 E
B31B50/22
【審査請求】有
【請求項の数】15
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020156127
(22)【出願日】2020-09-17
(11)【特許番号】
(45)【特許公報発行日】2021-06-16
(71)【出願人】
【識別番号】595007035
【氏名又は名称】近畿刃物工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100143085
【弁理士】
【氏名又は名称】藤飯 章弘
(72)【発明者】
【氏名】阿形 恒三
【テーマコード(参考)】
3C021
3E075
【Fターム(参考)】
3C021FC01
3E075AA07
3E075BA01
3E075CA01
3E075DB02
3E075DB07
3E075DB17
3E075FA04
3E075GA02
(57)【要約】
【課題】段ボールシート等のシート材を切断した際に生じる糸条の切断屑が離脱しやすくすることができる切断加工用刃物及びその製造方法を提供する。
【解決手段】上刃と下刃との協働によってシート材を切断する切断装置において使用される切断加工用刃物であって、扇形状の刃物本体と、前記刃物本体の外周部に沿って配置される刃部とを備え、前記刃部の側面であって該刃部の刃先を含む領域に、微小な凹凸からなる粗面部が形成されていることを特徴とする切断加工用刃物。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
上刃と下刃との協働によってシート材を切断する切断装置において使用される切断加工用刃物であって、
扇形状の刃物本体と、前記刃物本体の外周部に沿って配置される刃部とを備え、
前記刃部の側面であって該刃部の刃先を含む領域に、微小な凹凸からなる粗面部が形成されていることを特徴とする切断加工用刃物。
【請求項2】
前記粗面部の最大高さSzは、10μm以上400μm以下の範囲であることを特徴とする請求項1に記載の切断加工用刃物。
【請求項3】
前記粗面部は、前記刃部の周方向に沿って同一幅の帯状となるように形成されている請求項1又は2に記載の切断加工用刃物。
【請求項4】
前記粗面部は、前記刃部の側面に対し、ブラスト加工を施すことにより形成されていることを特徴とする請求項1から3のいずれかに記載の切断加工用刃物。
【請求項5】
上刃と下刃との協働によってシート材にスリットを形成する溝切り装置において使用される切断加工用刃物であって、
扇形状に形成される刃物本体と、スリットを形成する溝切り刃と、スリットの端部を形成する切込生成刃とを備え、
前記溝切り刃は、前記刃物本体の厚み方向両側縁に沿ってそれぞれ設けられており、
前記溝切り刃の外側側面であって該溝切り刃の刃先を含む領域に、微小な凹凸からなる粗面部が形成されていることを特徴とする切断加工用刃物。
【請求項6】
前記粗面部の最大高さSzは、10μm以上400μm以下の範囲であることを特徴とする請求項5に記載の切断加工用刃物。
【請求項7】
前記粗面部は、前記溝切り刃の周方向に沿って同一幅の帯状となるように形成されている請求項5又は6に記載の切断加工用刃物。
【請求項8】
前記粗面部は、前記溝切り刃の側面に対し、ブラスト加工を施すことにより形成されていることを特徴とする請求項5から7のいずれかに記載の切断加工用刃物。
【請求項9】
前記切込生成刃は、前記刃物本体の一端側に着脱自在に取り付け可能に構成される請求項5から8のいずれかに記載の切断加工用刃物。
【請求項10】
前記刃物本体における外周縁よりも径方向外側に前記切込生成刃の刃先部を配置して、前記切込生成刃を保持可能に構成される請求項5から9のいずれかに記載の切断加工用刃物。
【請求項11】
前記切込生成刃は、平刃の刃先部を備えていることを特徴とする請求項5から10のいずれかに記載の切断加工用刃物
【請求項12】
前記切込生成刃は、半円筒状の刃先部を備えていることを特徴とする請求項5から10のいずれかに記載の切断加工用刃物。
【請求項13】
前記切込生成刃は、前記刃先部の先端に刃先切欠き部を有していることを特徴とする請求項11または12に記載の切断加工用刃物。
【請求項14】
前記切込生成刃の幅は、前記刃物本体の厚みと略同一寸法であることを特徴とする請求項5から13のいずれかに記載の切断加工用刃物。
【請求項15】
上刃と下刃との協働によってシート材を切断する切断装置において使用される切断加工用刃物の製造方法であって、
扇形状の刃物本体の外周部に沿って配置される刃部の側面であって該刃部の刃先を含む領域に、ブラスト加工によって微小な凹凸からなる粗面部を形成する粗面部形成ステップを備えることを特徴とする切断加工用刃物の製造方法。
【請求項16】
前記ブラスト加工において、平均粒径が300μm以上1.1mm以下の珪砂または金属片が前記刃部の側面に吹きつけられることを特徴とする請求項15に記載の切断加工用刃物の製造方法。
【請求項17】
前記粗面部形成ステップは、前記刃部の周方向に沿って同一幅の帯状の前記粗面部を形成するようにブラスト加工を施すことを特徴とする請求項15又は16に記載の切断加工用刃物の製造方法。
【請求項18】
前記粗面部形成ステップにおいて、前記粗面部の最大高さSzが、10μm以上400μm以下となるように、ブラスト加工を行うことを特徴とする請求項15から17のいずれかに記載の切断加工用刃物の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、切断加工用刃物及びその製造方法に関する。特に、ダンボールシート等のシート材を切断する切断加工用刃物及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
物を保管又は移動等させるための包装箱として、
図15に示すような段ボールシート100を組み立てて製造される段ボール箱が知られている。この段ボール箱の上蓋及び底板は、段ボールシート100の一部にスリット101を形成して切り離された部分を互いに重なり合うように折り畳んで形成される。
【0003】
このスリット101の形成に際して、溝切り装置が用いられるのが一般的であり、この溝切り装置には、
図16に示すような切断加工用刃物60がよく用いられる(例えば、特許文献1の従来技術参照)。
【0004】
この切断加工用刃物60は、扇形状に形成された刃物本体部61に切込生成刃62と切断刃63とが一体形成されている。切込生成刃62は、刃物本体61の外周面の一端から径方向外方に、刃物本体61の端面と面一になるように突出しており、端面の幅方向両側に角部64を備えている。切断刃63は、刃物本体部61の外周面に沿って、刃物本体61の厚み方向両側にそれぞれ設けられている。
【0005】
切断加工用刃物60は、
図17及び
図18に示すような溝切り装置70に取り付けられる。
図17は溝切り装置の概略構成を示す側面図であり、
図18は正面図である。この溝切り装置70には、上述した切断加工用刃物60が上刃として2枚取り付けられるが、それぞれの刃物を切断加工用刃物60a,60bとして、溝切り装置70の構成について以下説明する。
【0006】
溝切り装置70は、上側回転軸71及び下側回転軸72を備えている。上側回転軸71及び下側回転軸72は、互いに平行に、シート給送ラインLを挟んで対向するように配置されており、それぞれ円盤状の一対の上側回転ホルダ73,73及び一対の下側回転ホルダ74,74を備えている。
【0007】
一対の上側回転ホルダ73,73には、上刃である2枚の切断加工用刃物60a,60bがそれぞれボルト等の締結具(図示せず)により挟持されている。これら切断加工用刃物60a、60bは、一対の回転ホルダ73,73の外周に沿って所定の間隔を空けて、かつ、それぞれの切込生成刃62a,62bが、外周方向に沿って向き合うように取り付けられる。これに対し、一対の下側回転ホルダ74,74のそれぞれの対向面には、下刃である2枚の受刃75,75が、切断加工用刃物60a及び60bの厚み寸法よりも僅かに広く設定した所定間隔をあけて取り付けられる。なお、この受刃75,75は、リング状に構成される刃物であり、その外周部分に刃部が形成されている。なお、リング状の受刃75,75は、単一のリング状の切断加工用刃物を用いて受刃として構成してもよく、或いは、例えば、半リング状に形成した切断加工用刃物を下側回転ホルダ74,74に2つ設置して、リング状となる受刃を構成するようにしてもよい。また、扇状に形成される切断加工用刃物を下側回転ホルダ74,74に複数設置することにより、リング状となる受刃を構成するようにしてもよい。
【0008】
次に、以上の構成を備えた溝切り装置70を用いて、段ボールシート50にスリットを形成する方法を説明する。
図17に示すように、上側回転ホルダ73,73及び下側回転ホルダ74,74を回転させた状態で、溝切り装置70のシート給送ラインL上に沿って、段ボールシート100を
図17の右側から溝切り装置70に給送する。これにより、上刃である切断加工用刃物60aが、下刃である受刃75,75の隙間に挟み込まれて、段ボールシート100が切断され、
図15に示すような終端部102を終点とした前方スリット101が形成される。同様に、他方の切断加工用刃物60bが、受刃75,75の隙間に挟み込まれて、段ボールシート100が切断され、始端部103を起点とした後方スリット101が形成される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
ところが、従来から用いられている切断加工用刃物を用いてスリット加工を行った場合、段ボールシート100側の切断面の内側に細い糸状(ひげ状)の切断屑が残ってしまうという問題があった。具体的に段ボールシートを切断加工用刃物で切断するときの過程を示す
図19(a)~(e)を用いて説明する。
図19(a) は段ボールシート100が上刃である切断加工用刃物62a(62b)及び下刃である受刃75(切断加工用刃物)に挟み込まれる直前の図であり、上刃である切断加工用刃物62a(62b)は、この状態から
図19(b)に示すように、下刃である受刃75,75の間に向けて段ボールシート100を上方から押し潰していく。このとき、
図19(b)に示すように、段ボールシート100が潰されると中芯100cの段頂部が扁平に変形し、更に潰れると段頂部の側面部がS字状に変形して中芯100cに重なり部Zが形成される。そして、
図19(c)に示すように、上刃である切断加工用刃物62a(62b)が段ボールシート100を上方からさらに押し潰していき、段ボールシート100のライナ100aが上刃である切断加工用刃物62a(62b)により切断され、段ボールシート100のライナ100bが下刃である受刃75により切断される。そして、
図19(d)に示すように、段ボールシート100の重なり部Zが、上刃である切断加工用刃物62a(62b)及び下刃である受刃75に挟み込まれることにより、段ボールシート100の重なり部Zが上刃である切断加工用刃物62a(62b)及び下刃である受刃75で剪断され、段ボールシート100が切断される。その結果、
図19(e)に示すように、切断された中芯100cの重なり部Zはスリット屑104と分断されて細い糸状の紙片(切断屑110a)として形成され、この切断屑110aが段ボールシート100側に残った状態になってしまう。つまり、重なり部Zは、スリット屑104側の切断屑110bと分離して切断屑110aとなり、段ボールシート100のライナ100a,100bの間に挟まったままの状態になってしまう。
【0011】
ここで、この切断屑110aが細いものとなった場合には、
図20に示すように、切断屑110aがライナ100a,100bの間から容易にはみ出してしまう。そして、この切断屑110aが段ボールシート100に残ったまま次工程に運ばれて最終製品としての段ボール箱になると、当然段ボール箱としての品質が低下してしまう。また、このような細い切断屑110aが完全に分離されていない段ボール箱に箱詰め工程で品物を詰めたり、封緘したりすると、これらの工程中に振動や衝撃によって切断屑110aが箱の内部に落ちてしまう。即ち、包装される品物の中に切断屑110aが紛れ込むことになってしまう。このように包装される品物の中に切断屑110aが紛れ込むことは、特に食品などの清潔を旨とする商品では許されることではない。
【0012】
本発明は、このような問題を解決するためになされたものであって、段ボールシート等のシート材を切断した際に生じる糸状の切断屑が離脱しやすくすることができる切断加工用刃物及びその製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明の前記目的は、上刃と下刃との協働によってシート材を切断する切断装置において使用される切断加工用刃物であって、扇形状の刃物本体と、前記刃物本体の外周部に沿って配置される刃部とを備え、前記刃部の側面であって該刃部の刃先を含む領域に、微小な凹凸からなる粗面部が形成されていることを特徴とする切断加工用刃物により達成される。
【0014】
また、上記切断加工用刃物において、前記粗面部の最大高さSzは、10μm以上400μm以下の範囲であることが好ましい。
【0015】
また、前記粗面部は、前記刃部の周方向に沿って同一幅の帯状となるように形成されていることが好ましい。
【0016】
また、前記粗面部は、前記刃部の側面に対し、ブラスト加工を施すことにより形成されていることが好ましい。
【0017】
また、本発明の前記目的は、上刃と下刃との協働によってシート材にスリットを形成する溝切り装置において使用される切断加工用刃物であって、扇形状に形成される刃物本体と、スリットを形成する溝切り刃と、スリットの端部を形成する切込生成刃とを備え、前記溝切り刃は、前記刃物本体の厚み方向両側縁に沿ってそれぞれ設けられており、前記溝切り刃の外側側面であって該溝切り刃の刃先を含む領域に、微小な凹凸からなる粗面部が形成されていることを特徴とする切断加工用刃物により達成される。
【0018】
この切断加工用刃物において、前記粗面部の最大高さSzは、10μm以上400μm以下の範囲であることが好ましい。
【0019】
また、前記粗面部は、前記溝切り刃の周方向に沿って同一幅の帯状となるように形成されていることが好ましい。
【0020】
また、前記粗面部は、前記溝切り刃の側面に対し、ブラスト加工を施すことにより形成されていることが好ましい。
【0021】
また、前記切込生成刃は、前記刃物本体の一端側に着脱自在に取り付け可能に構成されることが好ましい。
【0022】
また、前記刃物本体における外周縁よりも径方向外側に前記切込生成刃の刃先部を配置して、前記切込生成刃を保持可能に構成されることが好ましい。
【0023】
また、前記切込生成刃は、平刃の刃先部を備えていることが好ましい。
【0024】
また、前記切込生成刃は、半円筒状の刃先部を備えていることが好ましい。
【0025】
また、前記切込生成刃は、前記刃先部の先端に刃先切欠き部を有していることが好ましい。
【0026】
また、前記切込生成刃の幅は、前記刃物本体の厚みと略同一寸法であることが好ましい。
【0027】
また、本発明の前記目的は、上刃と下刃との協働によってシート材を切断する切断装置において使用される切断加工用刃物の製造方法であって、 扇形状の刃物本体の外周部に沿って配置される刃部の側面であって該刃部の刃先を含む領域に、ブラスト加工によって微小な凹凸からなる粗面部を形成する粗面部形成ステップを備えることを特徴とする切断加工用刃物の製造方法により達成される。
【0028】
この切断加工用刃物の製造方法において、前記ブラスト加工において、平均粒径が300μm以上1.1mm以下、より好ましくは500μm以上900μm以下の珪砂または金属片が前記刃部の側面に吹きつけられることが好ましい。
【0029】
また、前記粗面部形成ステップは、前記刃部の周方向に沿って同一幅の帯状の前記粗面部を形成するようにブラスト加工を施すことが好ましい。
【0030】
また、前記粗面部形成ステップにおいて、前記粗面部の最大高さSzが、10μm以上400μm以下となるように、ブラスト加工を行うことが好ましい。
【発明の効果】
【0031】
本発明によれば、段ボールシート等のシート材を切断した際に生じる糸条の切断屑が離脱しやすくすることができる切断加工用刃物及びその製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【
図1】本発明の一実施形態に係る切断加工用刃物の平面図である。
【
図3】
図1に示す切断加工用刃物における溝切り刃の変形例を示す要部拡大平面図である。
【
図4】
図1に示す切断加工用刃物における溝切り刃の変形例を示す要部拡大平面図である。
【
図5】(a)は、
図1に示す切断加工用刃物が備える切込生成刃の平面図であり、(b)は、(a)における矢視B方向から見た場合の側面図であり、(c)は、(a)における矢視C方向から見た場合の正面図であり、(d)は、(a)における矢視D方向から見た場合の背面図である。
【
図6】
図1に示す切断加工用刃物の製造方法の一例を説明するための説明図である。
【
図7】
図1に示す切断加工用刃物の作動を説明する説明図である。
【
図8】段ボールシートを切断加工用刃物で切断するときの過程及び効果を説明するための説明図である。
【
図9】
図1に示す切断加工用刃物の変形例を示す概略構成断面図である
【
図10】
図1に示す切断加工用刃物が備える切込生成刃の変形例を示す図であり、(a)は、切断加工用刃物が備える切込生成刃の平面図であり、(b)は、(a)における矢視E方向から見た場合の側面図であり、(c)は、(a)における矢視F方向から見た場合の正面図であり、(d)は、(a)における矢視G方向から見た場合の背面図である。
【
図11】(a)は、
図5に示す切込生成刃の変形例を示す平面図であり、(b)は、
図10に示す切込生成刃の変形例を示す平面図である。
【
図12】
図1に示す切断加工用刃物が備える刃物本体の変形例を示す平面図である。
【
図13】下刃として使用される受刃を示す平面図である。
【
図14】
図13に示す受刃(切断加工用刃物)の概略構成断面図である。
【
図15】スリットが形成された後の段ボールシートの概略平面図である。
【
図17】切断加工用刃物が取り付けられた溝切り装置の概略構成を示す側面図である。
【
図18】切断加工用刃物が取り付けられた溝切り装置の概略構成を示す正面図である。
【
図19】段ボールシートを切断加工用刃物で切断するときの過程を示す説明図である。
【
図20】段ボールシートに形成されたスリットの一例を示す拡大図である。
【発明を実施するための形態】
【0033】
以下、本発明の実施形態について添付図面を参照して説明する。なお、各図は、構成の理解を容易ならしめるために部分的に拡大・縮小している。
図1は、本発明の一実施形態にかかる切断加工用刃物を示す平面図であり、
図2は、そのA-A断面における拡大図である。切断加工用刃物1は、回転しながら段ボールシートや合成樹脂製シート等のシート材にスリットを形成するための刃物であり、
図1及び
図2に示すように、刃物本体2と、溝切り刃3と、切込生成刃4とを備えている。
【0034】
刃物本体2は、ステンレスや鉄、工具鋼等の金属材料により形成されており、
図1に示すように、平面視において扇形状に形成されている。この刃物本体2は、その一端側(刃物本体2の一方の側面側)に二つのボルト孔21を備えている。ボルト孔21は、刃物本体2に切込生成刃4をボルト50により取り付けるための孔である。なお、二つのボルト孔21は、刃物本体2の径方向に沿って並んで形成されている。
【0035】
溝切り刃3は、従来の切断加工用刃物60(
図28参照)と同様に、刃物本体2の外周部に沿って配置されている。本実施形態における溝切り刃3は、シート材にスリット加工を施すように構成される刃部であり、
図2に示すように、刃物本体2の厚み方向両側縁にそれぞれ設けられている。この溝切り刃3の具体的形態は特に限定されず、例えば、
図3の要部拡大平面図に示すように、ノコ歯状に形成してもよい。溝切り刃3をノコ歯状に形成する場合、互いに隣接する各ノコ歯3の各頂点3a間距離Sが、例えば、2.0mm~4.0mmとなるように形成し、各ノコ歯3の最大高さHが、例えば、2.0mm~3.5mmとなるように形成することが好ましい。また、溝切り刃3をノコ歯状に形成する場合、
図3に示すように、各ノコ歯3の各頂点3a間に介在するノコ歯3の輪郭形状3bが平面視V字状となるように形成してもよく、
図4(a)に示すように、輪郭形状3bが、平面視湾曲状となるように形成してもよい。更に、
図4(b)に示すように、輪郭形状3bが、平面視において一方側に傾斜するV字状となるように形成してもよい。
【0036】
切込生成刃4は、切断加工用刃物1によりスリット加工されるときに出る屑片(スリット屑)の一端を段ボールシート等のシート材から切り落とし、スリットの端部を形成するための刃部である。この切込生成刃4は、
図1や
図5(a)~(d)に示すように、刃物本体2の一端側に着脱自在に取り付けられる平板状の取付部41と、取付部41の一端部に形成される刃先部42とを備えている。刃先部42は、平刃として構成されている。取付部41の厚みは、例えば、2mm~15mmの範囲に設定される。ここで、
図5(a)は、切込生成刃4を上方から見た場合の平面図であり、
図5(b)は、
図5(a)の矢視B方向から見た側面図である。また、
図5(c)は、
図5(a)の矢視C方向から見た正面図であり、
図5(d)は、
図5(a)の矢視D方向から見た背面図である。切込生成刃4は、例えば、
図1に示すように、刃物本体2の外周面から径方向外側に、刃先部42が突出するようにして刃物本体2の一端側に固定される。この切込生成刃4の幅は、刃物本体2の厚みと略同一寸法となるように構成することが好ましい。また、取付部41は、刃物本体2の径方向に沿う方向に長尺となるように構成されており、刃物本体2に形成されるボルト孔21に対応して形成される貫通孔43を備えている。本実施形態においては、取付部の輪郭が、平面視矩形状となるように構成している。なお、切込生成刃4は、ボルト50を締め付けることにより、ボルト頭で取付部41を刃物本体2側に押さえ付けることによって、刃物本体2の所定位置に固定される。貫通孔43の周囲の部分が、ボルト50のボルト頭と当接する部分となる。
【0037】
図5における切込生成刃4においては、貫通孔43が、刃物本体2の径方向に沿う長孔状に形成されており、取付部41(切込生成刃4)は、刃先部42を刃物本体2の径方向に位置調整可能に構成されている。つまり、長孔状の貫通孔43の長手方向の寸法が、刃物本体2に形成される二つのボルト孔21間の距離(二つのボルト孔21を含むボルト孔21間の距離)よりも長くなるように構成されている。なお、この貫通孔43の幅寸法(
図5(a)においては、上下方向の幅寸法)は、挿通されるボルト50の軸部の径よりも大きくなるように設定されている。
【0038】
なお、上記実施形態においては、切断加工用刃物1によりスリット加工されるときに出る屑片の一端を段ボールシート等のシート材から切り落とす切込生成刃4として、刃物本体2の一端側に着脱自在に取り付けられる構成のものを備えているが、このような構成に特に限定されず、例えば、従来例において示した
図16に示すように、刃物本体2と一体的に構成され、刃物本体2の外周面の一端から径方向外方に刃物本体2の端面と面一になるように突出するものとして形成することもできる。
【0039】
本発明においては、
図1や
図2に示すように、溝切り刃3の外側側面であって該溝切り刃3の刃先31を含む領域に、微小な凹凸からなる粗面部5が形成されている。この粗面部3は、刃物本体2の厚み方向両側縁にそれぞれ設けられる各溝切り刃3の外側側面に形成されている。また、粗面部5は、溝切り刃3の周方向に沿って帯状となるように形成されている。なお、帯状に形成される粗面部5の形成領域は、溝切り刃3の周方向全域に形成してもよく、或いは、溝切り刃3の周方向両端部部分を除いた領域に形成するようにしてもよい。また、粗面部5の幅(刃物本体2の径方向における長さ)は、
図1及び
図2に示すように、溝切り刃3の周方向に沿って同一寸法となるように(同一幅の帯状)となるように形成されている。なお、粗面部5の幅(刃物本体2の径方向における長さ)としては、例えば、溝切り刃3の刃先31から刃物本体2の径方向内側に向けて、5mm以下程度の寸法とすることが好ましい。
【0040】
粗面部5は、溝切り刃3の側面に対し、ブラスト加工を施すことにより形成されることが好ましい。例えば、平均粒径が300μm以上1.1mm以下、より好ましくは500μm以上900μm以下の珪砂または金属粒が刃部(溝切り刃3)の側面に吹きつけられることにより粗面部5が形成されることが好ましい。また、粗面部5は、最大高さSz(表面粗さSz)が、例えば10μm以上400μm以下であることが好ましく、70μm以上300μm以下であることがより好ましい。 ここで、最大高さSzは、二次元のパラメータであるRzを三次元に拡張したパラメータであり、ISO 25178に準拠して測定される。粗面部5のSzは、Rzと同様に、粗面部5の表面の凹凸の有無を表す指標である。
【0041】
次に、上述の上刃として使用される切断加工用刃物1の製造方法の一例について、
図6を用いて説明する。なお、この製造方法の一例においては、切込生成刃4が刃物本体2と一体化して構成されるものを例にとり説明する。まず、
図6(a)の平面図に示すような扇形状に形成された板状の金属部材8の外周部を切削加工等することにより、
図6(b)の平面図に示されるような、締結ボルト挿通用の孔を有すると共に、切込生成刃4を有する加工途中の刃物本体2を形成する。切込生成刃4は、刃物本体2の外周面の一端から径方向外方に突出するように形成される。また、切込生成刃4は、刃物本体2の端面と面一になるように形成される。
【0042】
次に、
図6(c)の要部断面図に示すように、刃物本体2の外周部に沿って当該外周部の少なくとも一部分を切削することにより傾斜面を形成して一対の溝切り刃3(刃部)を構成する。具体的に説明すると、刃物本体2の外周部に溝81を切削加工により形成する。この溝81は、刃物本体2の外周部にそって、当該外周部における両端部近傍を除く外周部全域に形成される。溝81は、断面視V字状の形状に形成され、当該溝81を構成する互いに対向する側面は、断面視において傾斜面となっている。溝81が形成された刃物本体2の外周部先端(傾斜面の端縁)は、刃先となるため先鋭となるように形成される。
【0043】
次いで、溝切り刃3が形成された刃物本体2に対して焼入れ処理を行い、その後、
図6(d)に示すように、溝切り刃3(刃部)の側面であって該溝切り刃3(刃部)の刃先を含む領域に、ブラスト加工によって微小な凹凸からなる粗面部5を形成する(粗面部形成ステップ)。このブラスト加工においては、平均粒径が300μm以上1.1mm以下、より好ましくは500μm以上900μm以下の珪砂または金属粒が刃部(溝切り刃3)の側面に吹きつけられることが好ましい。また、粗面部形成ステップにおいては、溝切り刃3(刃部)の周方向に沿って同一幅の帯状の粗面部5を形成するようにブラスト加工を施すことが好ましく、また、粗面部形成ステップにおいては、粗面部5の表面粗さが、最大高さSzが、例えば10μm以上400μm以下、より好ましくは70μm以上300μm以下となるように、ブラスト加工を行うことが好ましい。このような粗面部形成過程が完了することにより、切断加工用刃物1の製造工程が完了する。
【0044】
なお、上述の粗面部形成ステップの前工程として焼入れ処理を行うように構成しているが、粗面部形成ステップの後工程において焼入れ処理を行うように構成してもよい。
【0045】
以上の構成を備えた切断加工用刃物1は、例えば
図17及び
図18に示すような溝切り装置70(切断装置)に取り付けられて使用される。段ボールシート等のシート材にスリットを形成する方法は、上記背景技術で説明した方法と同一であるため、ここでは詳細な説明を省略する。
【0046】
本実施形態に係る切断用加工刃物1は、溝切り刃3の外側側面であって該溝切り刃3の刃先31を含む領域に、微小な凹凸からなる粗面部5が形成されているため、
図7に示すように、溝切り刃3がシート材100を切断し当該シート材100の下方側に抜ける際に、溝切り刃3の刃先エリアに形成される粗面部5が、中芯100cの重なり部Zに起因して形成される細い糸状の紙片(切断屑110a)を効果的に段ボールシート100のライナ100a,100bの間からスリット側に移動させ、段ボールシート100から離脱させることができる。段ボールシート100から離脱した切断屑110aは、スリットを介して下方側に落下することとなる。より具体的に説明すると、段ボールシートを切断加工用刃物で切断するときの過程を示す
図8(a)~(f)に示すように、段ボールシート100の中芯100cの重なり部Zが上刃である切断加工用刃1及び下刃である受刃75の側面( エッジ)で剪断され、段ボールシート100が切断される過程において、上刃である切断加工用刃物1における溝切り刃3の刃先エリアに形成される粗面部5と糸状の切断屑110aとなる部分Zとが接することになるが、この接触時に粗面部5の微小な凹凸との摩擦によって、切断屑部分Zは、溝切り刃3の刃先外表面から離れにくくなり、また、溝切り刃3の刃先31に切断屑部分Zが引っ掛かった状態で、該溝切り刃3の下方移動に伴ってスリット下方側に導かれ、段ボールシート100のライナ100a,100bの間から離脱し下方側へと落下することとなる。つまり、本発明に係る切断加工用刃物1によれば、段ボールシート100の切断と同時に、中芯100cの重なり部Zに起因して形成される細い糸状の切断屑110aをスリット下方側に導くことが可能となり、この結果、スリット加工工程の後工程、例えば、段ボールシート100を組み立てて段ボール箱の形態に構成する工程や、段ボール箱に品物を箱詰めする工程において、切断屑110aが紛れ込むことを効果的に防止することが可能となる。
【0047】
また、粗面部5は、溝切り刃3の周方向に沿ってその略全域に形成されているため、シート材100に形成される切断端面全域において、中芯100cの重なり部Zに起因して形成される細い糸状の切断屑110aが、段ボールシート100のライナ100a,100bの間に残留してしまうことを効果的に防止することができる。
【0048】
また、粗面部5は、溝切り刃3の周方向に沿って同一幅の帯状となるように形成されているため、糸状の切断屑110aの段ボールシート100からの離脱効果を一定とすることが可能となる。また、所定の幅を有する粗面部5がスリット101の切断端面に接触することにより、切断端面に付着する紙粉を効果的に除去することも可能となる。
【0049】
以上、本発明の一実施形態に係る切断加工用刃物1について説明したが、切断加工用刃物1の具体的構成は、上記実施形態に限定されない。例えば、上記実施形態においては、シート材に対してスリットを形成できるように切断加工用刃物1を構成するために、刃物本体2の厚み方向両側縁にそれぞれ溝切り刃3が設けられているが、このような形態に特に限定されない。例えば、単にシート材を切断して分離できるように、
図9の概略構成断面図(
図1のA-A断面に相当)に示すように、単一の刃部21を刃物本体2の外周部に沿って配置するように構成し、この刃部21の側面であって該刃部21の刃先21aを含む領域に、微小な凹凸からなる粗面部5が形成されるように切断加工用刃物1を構成してもよい。このような構成を採用する場合、刃部21の両側側面であって刃先21aを含む領域にブラスト加工を施すことにより粗面部5を形成するようにしてもよく、或いは、片側の側面側において刃先を含む領域にブラスト加工を施すことにより粗面部5を形成するようにしてもよい。このような構成の切断加工用刃物は、シート材を切断する切断装置において上刃として使用される。
【0050】
また、上記実施形態においては、刃物本体2の厚み方向両側縁にそれぞれ設けられる溝切り刃3の両方に粗面部5を形成するように構成しているが、例えば、いずれか一方の溝切り刃3にのみ粗面部5を設けるように構成してもよい。
【0051】
また、上記実施形態においては、切込生成刃4の刃先部42は、平刃として構成しているが、例えば、
図10に示すように、半円筒状の形態として構成され、その裏面側の一端部が
図10(a)及び(b)の破線で示すように切り欠かれることにより、一端外周縁に半円形状の刃先が形成されるように構成してもよい。なお、切込生成刃4は、刃先部42の外周曲面を刃物本体2の一端側に露出させる向きにて刃物本体2の一端側に取り付けられる。ここで、
図10(a)は、切込生成刃4を上方から見た場合の平面図であり、
図10(b)は、
図10(a)において示される矢視E方向から見た場合の側面図である。また、
図10(c)は、
図10(a)において示される矢視F方向から見た場合の正面図であり、
図10(d)は、
図11(a)において示される矢視G方向から見た場合の背面図である。
【0052】
また、上記実施形態においては、平板状に切込生成刃4を形成し、その一端部に平刃としての刃先部42を備えるように構成しているが、
図11(a)に示すように、この刃先部42に、一又は複数の刃先切欠き部421を形成するようにしてもよい。また、上記
図10に示すような半円筒状の形態として切込生成刃4を構成し、その一端外周縁に半円形状の刃先を形成する場合であっても、当該刃先(刃先部42の先端)に、
図11(b)に示すように、一又は複数の刃先切欠き部421を形成するようにしてもよい。
【0053】
また、上記実施形態においては、切込生成刃4の刃先部42を刃物本体2の径方向に位置調整可能に構成しつつ、二つのボルト50によって刃物本体2に固定される切込生成刃4の構成について説明したが、このような構成に特に限定されず、単一のボルト50によって、刃物本体2の径方向に位置調整可能に切込生成刃4を刃物本体2に固定される構成を採用してもよい。
【0054】
また、上記実施形態において、刃物本体2は、扇形状の形態を有するように構成されているが、例えば、
図12に示すように、刃物本体2の一端側を平面視において略三角形状に切り欠かれて形成される本体切欠き部を構成し、刃物本体2の端面25に対して角度θの傾斜を有する支持面27を備えるように構成してもよい。角度θは、5°~30°の範囲が好ましく、特に10°~20°の範囲が好適であり、本実施形態では15°としている。なお、切込生成刃4を固定する際に用いられるボルト孔21は、支持面27に形成されており、切込生成刃4は、当該支持面27に取り付けられる。
【0055】
また、上記実施形態においては、粗面部5を、上刃として使用される切断加工用刃物1に形成しているが、このような構成に特に限定されず、例えば、下刃として使用される受刃(下刃として使用される切断加工用刃物)にも粗面部5を形成することにより、同様な効果、つまり、糸状の切断屑110aを段ボールシート100のライナ100a,100bの間から効果的に離脱させることができるという効果を発揮する。
【0056】
下刃として使用される受刃は、例えば、溝切り装置70が有する一対の下側回転ホルダ74,74のそれぞれの対向面に取り付けられるものであり、
図13に示すように、半リング状(扇形状)に構成される第1切断加工用刃物1a及び第2切断加工用刃物1bを備えるようにして構成されている。第1切断加工用刃物1a及び第2切断加工用刃物1bは、それぞれ、刃物本体2と、刃部3とを備えている。
【0057】
各刃物本体2は、ステンレスや鉄、工具鋼等の金属材料により形成されており、
図13に示すように、平面視において略扇形状(半リング状)に形成されている。なお、各刃物本体2には、所定の位置に、ボルト等の締結具が挿入可能な貫通孔21が形成されている。
【0058】
各刃部3は、シート材を切断する刃であり、刃物本体2の片側であって、刃物本体2の外周部に沿って形成されている。この刃部3の具体的形態は特に限定されず、例えば、上述の上刃として使用される切断加工用刃物1に関して説明した
図5の要部拡大平面図に示すように、ノコ歯状に形成してもよい。刃部3をノコ歯状に形成する場合、互いに隣接する各ノコ歯3の各頂点3a間距離Lが、例えば、2.0mm~4.0mmとなるように形成し、各ノコ歯3の最大高さHが、例えば、2.0mm~3.5mmとなるように形成することが好ましい。また、刃部3をノコ歯状に形成する場合、
図5に示すように、各ノコ歯3の各頂点3a間に介在するノコ歯3の輪郭形状3bが平面視V字状となるように形成してもよく、
図6(a)に示すように、輪郭形状3bが、平面視湾曲状となるように形成してもよい。更に、
図6(b)に示すように、輪郭形状3bが、平面視において一方側に傾斜するV字状となるように形成してもよい。なお、刃部3は、溝切り装置が有する一対の下側回転ホルダ74,74のそれぞれの対向面に受刃を取り付けた際に、対向する面側に形成される。
【0059】
粗面部5は、刃部3の側面であって該刃部3の刃先を含む領域に、微小な凹凸を形成することにより構成されている。また、粗面部5は、刃部3の周方向に沿って帯状となるように形成されている。なお、帯状に形成される粗面部5の形成領域は、刃部3の周方向全域に形成される。また、粗面部5の幅(刃物本体2の径方向における長さ)は、
図13及び
図14に示すように、刃部3の周方向に沿って同一寸法となるように(同一幅の帯状)となるように形成されている。なお、粗面部5の幅(刃物本体2の径方向における長さ)としては、例えば、刃部3の刃先から刃物本体2の径方向内側に向けて、5mm以下程度の寸法とすることが好ましい。なお、粗面部5は、溝切り装置が有する一対の下側回転ホルダ74,74のそれぞれの対向面に受刃を取り付けた際に、互いに対向する面側に形成される。
【0060】
粗面部5は、刃部3の側面に対し、ブラスト加工を施すことにより形成されることが好ましい。例えば、平均粒径が300μm以上1.1mm以下、より好ましくは500μm以上900μm以下の珪砂または金属粒が刃部の側面に吹きつけられることにより粗面部5が形成されることが好ましい。また、粗面部5は、最大高さSz(表面粗さSz)が、例えば10μm以上400μm以下となるように、より好ましくは70μm以上300μm以下となるように構成されることが好ましい。
【0061】
ここで、下刃として使用される受刃は、上述のように、半リング状に形成した第1及び第2切断加工用刃物1a,1bを2つ組み合わせてリング状にすることにより構成してもよく、或いは、例えば単一のリング状の切断加工用刃物を用いて構成してもよい。また、3つ以上の扇形に形成される切断加工用刃物を組み合わせてリング状にすることにより構成してもよい。
【0062】
このような構成の受刃は、刃部3の側面であって該刃部3の刃先を含む領域に、微小な凹凸からなる粗面部5が形成されているため、
図8に示すように、上刃である切断加工用刃物1との協働によって段ボールシートを切断する際に、受刃の刃部3の刃先エリアに形成される粗面部5が、中芯100cの重なり部Zに起因して形成される細い糸状の紙片(切断屑110a)を効果的に段ボールシート100のライナ100a,100bの間からスリット側に移動させることを補助し、段ボールシート100から離脱させることができる。段ボールシート100から離脱した切断屑は、スリットを介して下方側に落下することとなる。より具体的に説明すると、
図8に示すように、段ボールシート100の中芯100cの重なり部Zが上刃である切断加工用刃1及び下刃である受刃で剪断され、段ボールシート100が切断される過程において、下刃である受刃における刃先エリアに形成される粗面部5と糸状の切断屑が接することになるが、この接触時に粗面部5の微小な凹凸との摩擦によって、上刃との間で挟み込まれる切断屑部分が、下刃の刃先外表面から離れにくくなり、該切断屑部分が、段ボールシート100のライナ100a,100bの間の奥の方に移動することが抑制されることになり、上刃である切断加工用刃物1における溝切り刃3の下方移動に伴って、糸状の切断屑が、段ボールシート100のライナ100a,100bの間から離脱してスリットの下方側へと落下することを補助することが可能となる。つまり、下刃として使用される受刃(切断加工用刃物1a,1b)によれば、段ボールシート100の切断と同時に、中芯100cの重なり部Zに起因して形成される細い糸状の切断屑110aが、段ボールシート100のライナ100a,100bの間に残留すること効果的に抑制することが可能となり、この結果、スリット加工工程の後工程、例えば、段ボールシート100を組み立てて段ボール箱の形態に構成する工程や、段ボール箱に品物を箱詰めする工程において、切断屑110aが紛れ込むことを効果的に防止することが可能となる。
【0063】
また、粗面部5は、刃部3の周方向に沿ってその略全域に形成されているため、シート材に形成される切断端面全域において、中芯100cの重なり部Zに起因して形成される細い糸状の切断屑が、段ボールシート100のライナ100a,100bの間に残留してしまうことを効果的に防止することができる。
【0064】
また、粗面部5は、刃部3の周方向に沿って同一幅の帯状となるように形成されているため、糸状の切断屑の段ボールシートからの離脱効果を一定とすることが可能となる。
【符号の説明】
【0065】
1 切断加工用刃物
2 刃物本体
3 溝切り生成刃
31 刃先
4 切込生成刃
5 粗面部
100 シート材
【手続補正書】
【提出日】2021-02-02
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
上刃と下刃との協働によって、一対のライナーの間に中芯を備える段ボールシートを切断する切断装置において使用される切断加工用刃物であって、
扇形状の刃物本体と、前記刃物本体の外周部に沿って配置される刃部とを備え、
前記刃部の側面であって該刃部の刃先を含む領域に、微小な凹凸からなる粗面部が形成されており、
前記粗面部の最大高さSzは、10μm以上400μm以下の範囲であり、
切断過程で形成される前記中芯に基づく糸状の切断屑と前記粗面部との接触により前記一対のライナー間から前記切断屑を離脱可能とすることを特徴とする切断加工用刃物。
【請求項2】
前記粗面部は、前記刃部の周方向に沿って同一幅の帯状となるように形成されている請求項1に記載の切断加工用刃物。
【請求項3】
前記粗面部は、前記刃部の側面に対し、ブラスト加工を施すことにより形成されていることを特徴とする請求項1又は2に記載の切断加工用刃物。
【請求項4】
上刃と下刃との協働によって、一対のライナーの間に中芯を備える段ボールシートにスリットを形成する溝切り装置において使用される切断加工用刃物であって、
扇形状に形成される刃物本体と、スリットを形成する溝切り刃と、スリットの端部を形成する切込生成刃とを備え、
前記溝切り刃は、前記刃物本体の厚み方向両側縁に沿ってそれぞれ設けられており、
前記溝切り刃の外側側面であって該溝切り刃の刃先を含む領域に、微小な凹凸からなる粗面部が形成されており、
前記粗面部の最大高さSzは、10μm以上400μm以下の範囲であり、
切断過程で形成される前記中芯に基づく糸状の切断屑と前記粗面部との接触により前記一対のライナー間から前記切断屑を離脱可能とすることを特徴とする切断加工用刃物。
【請求項5】
前記粗面部は、前記溝切り刃の周方向に沿って同一幅の帯状となるように形成されている請求項4に記載の切断加工用刃物。
【請求項6】
前記粗面部は、前記溝切り刃の側面に対し、ブラスト加工を施すことにより形成されていることを特徴とする請求項4又は5に記載の切断加工用刃物。
【請求項7】
前記切込生成刃は、前記刃物本体の一端側に着脱自在に取り付け可能に構成される請求項4から6のいずれかに記載の切断加工用刃物。
【請求項8】
前記刃物本体における外周縁よりも径方向外側に前記切込生成刃の刃先部を配置して、前記切込生成刃を保持可能に構成される請求項4から7のいずれかに記載の切断加工用刃物。
【請求項9】
前記切込生成刃は、平刃の刃先部を備えていることを特徴とする請求項4から8のいずれかに記載の切断加工用刃物
【請求項10】
前記切込生成刃は、半円筒状の刃先部を備えていることを特徴とする請求項4から9のいずれかに記載の切断加工用刃物。
【請求項11】
前記切込生成刃は、前記刃先部の先端に刃先切欠き部を有していることを特徴とする請求項9または10に記載の切断加工用刃物。
【請求項12】
前記切込生成刃の幅は、前記刃物本体の厚みと略同一寸法であることを特徴とする請求項4から11のいずれかに記載の切断加工用刃物。
【請求項13】
上刃と下刃との協働によって、一対のライナーの間に中芯を備える段ボールシートを切断する切断装置において使用され、切断過程で形成される前記中芯に基づく糸状の切断屑を前記一対のライナー間から離脱可能な切断加工用刃物の製造方法であって、
扇形状の刃物本体の外周部に沿って配置される刃部の側面であって該刃部の刃先を含む領域に、ブラスト加工によって、最大高さSzが、10μm以上400μm以下の範囲となる微小な凹凸からなる粗面部を形成する粗面部形成ステップを備えることを特徴とする切断加工用刃物の製造方法。
【請求項14】
前記ブラスト加工において、平均粒径が300μm以上1.1mm以下の珪砂または金属片が前記刃部の側面に吹きつけられることを特徴とする請求項13に記載の切断加工用刃物の製造方法。
【請求項15】
前記粗面部形成ステップは、前記刃部の周方向に沿って同一幅の帯状の前記粗面部を形成するようにブラスト加工を施すことを特徴とする請求項13又は14に記載の切断加工用刃物の製造方法。
【手続補正2】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0013
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0013】
本発明の前記目的は、上刃と下刃との協働によって、一対のライナーの間に中芯を備える段ボールシートを切断する切断装置において使用される切断加工用刃物であって、扇形状の刃物本体と、前記刃物本体の外周部に沿って配置される刃部とを備え、前記刃部の側面であって該刃部の刃先を含む領域に、微小な凹凸からなる粗面部が形成されており、前記粗面部の最大高さSzは、10μm以上400μm以下の範囲であり、切断過程で形成される前記中芯に基づく糸状の切断屑と前記粗面部との接触により前記一対のライナー間から前記切断屑を離脱可能とすることを特徴とする切断加工用刃物により達成される。
【手続補正3】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0014
【補正方法】削除
【補正の内容】
【手続補正4】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0017
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0017】
また、本発明の前記目的は、上刃と下刃との協働によって、一対のライナーの間に中芯を備える段ボールシートにスリットを形成する溝切り装置において使用される切断加工用刃物であって、扇形状に形成される刃物本体と、スリットを形成する溝切り刃と、スリットの端部を形成する切込生成刃とを備え、前記溝切り刃は、前記刃物本体の厚み方向両側縁に沿ってそれぞれ設けられており、前記溝切り刃の外側側面であって該溝切り刃の刃先を含む領域に、微小な凹凸からなる粗面部が形成されており、前記粗面部の最大高さSzは、10μm以上400μm以下の範囲であり、切断過程で形成される前記中芯に基づく糸状の切断屑と前記粗面部との接触により前記一対のライナー間から前記切断屑を離脱可能とすることを特徴とする切断加工用刃物により達成される。
【手続補正5】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0018
【補正方法】削除
【補正の内容】
【手続補正6】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0027
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0027】
また、本発明の前記目的は、上刃と下刃との協働によって、一対のライナーの間に中芯を備える段ボールシートを切断する切断装置において使用され、切断過程で形成される前記中芯に基づく糸状の切断屑を前記一対のライナー間から離脱可能な切断加工用刃物の製造方法であって、扇形状の刃物本体の外周部に沿って配置される刃部の側面であって該刃部の刃先を含む領域に、ブラスト加工によって、最大高さSzが、10μm以上400μm以下の範囲となる微小な凹凸からなる粗面部を形成する粗面部形成ステップを備えることを特徴とする切断加工用刃物の製造方法により達成される。
【手続補正7】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0030
【補正方法】削除
【補正の内容】