(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022049950
(43)【公開日】2022-03-30
(54)【発明の名称】紡機のドラフト装置におけるドラフト方法、及び紡機のドラフト装置
(51)【国際特許分類】
D01H 5/22 20060101AFI20220323BHJP
【FI】
D01H5/22
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020156263
(22)【出願日】2020-09-17
(71)【出願人】
【識別番号】000003218
【氏名又は名称】株式会社豊田自動織機
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 博宣
(72)【発明者】
【氏名】中野 勉
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 江平
【テーマコード(参考)】
4L056
【Fターム(参考)】
4L056AA01
4L056BC01
(57)【要約】
【課題】紡績工程を短縮することができる、もしくはレイアウトの制約に制限されることなく繊維束の太さのムラをより低減することができる紡機のドラフト装置におけるドラフト方法、及び紡機のドラフト装置を提供すること。
【解決手段】1本の繊維束20を切断工程によって切断することにより生じた上流切断繊維束21と下流切断繊維束22とを、重合工程によって重ね合わせる。よって、予め2本以上の繊維束20を準備する必要が無く、1本の繊維束20を予め準備するだけで、2本以上の繊維束20を1本に合わせるといったダブリングを行うことができるため、レイアウトの制約に制限されることがない。重合工程後の繊維束20をメインドラフト工程によって所定の太さに引き伸ばすため、重合工程が行われていない繊維束20を引き伸ばす場合に比べると、繊維束20の太さのムラが低減される。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
繊維束を引き伸ばしつつ下流側に送る複数のローラ対を備え、
前記複数のローラ対は、
バックローラ対と、
前記バックローラ対よりも下流側に位置する第1下流ローラ対と、
前記第1下流ローラ対よりも下流側に位置する第2下流ローラ対と、
前記第2下流ローラ対よりも下流側に位置するフロントローラ対と、を含む紡機のドラフト装置におけるドラフト方法であって、
前記バックローラ対と前記第1下流ローラ対との間で前記繊維束を切断する切断工程と、
前記切断工程が行われたことにより切り離された2つの繊維束のうち、上流側に位置する繊維束を上流切断繊維束とし、前記2つの繊維束のうち、下流側に位置する繊維束を下流切断繊維束とすると、
前記切断工程後に、前記上流切断繊維束の下流端を、前記下流切断繊維束の上流端よりも下流側に位置させ、前記上流切断繊維束と前記下流切断繊維束とを重ね合わせる重合工程と、
前記重合工程後に、前記第2下流ローラ対から送られてくる繊維束を前記フロントローラ対と前記第2下流ローラ対との間で所定の太さに引き伸ばすメインドラフト工程と、を行うことを特徴とする紡機のドラフト装置におけるドラフト方法。
【請求項2】
前記切断工程では、前記バックローラ対及び前記第1下流ローラ対の回転速度又は回転方向に差を生じさせることにより前記バックローラ対と前記第1下流ローラ対との間で前記繊維束を切断することを特徴とする請求項1に記載の紡機におけるドラフト装置におけるドラフト方法。
【請求項3】
前記重合工程では、前記第1下流ローラ対に把持されている前記下流切断繊維束を前記第2下流ローラ対に送って前記第2下流ローラ対に把持させ、前記バックローラ対に把持されている前記上流切断繊維束を前記第1下流ローラ対に送って前記第1下流ローラ対に把持させ、前記第1下流ローラ対の回転速度を前記第2下流ローラ対の回転速度よりも速くすることで、前記上流切断繊維束の下流端を、前記下流切断繊維束の上流端よりも下流側に位置させ、前記上流切断繊維束と前記下流切断繊維束とを重ね合わせることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の紡機のドラフト装置におけるドラフト方法。
【請求項4】
前記第1下流ローラ対の回転速度を前記第2下流ローラ対の回転速度よりも速くすることで前記第1下流ローラ対と前記第2下流ローラ対との間で繊維束の弛みを発生させる弛み発生工程と、
前記切断工程後に、前記第1下流ローラ対を逆回転させることで、前記弛み発生工程によって前記第1下流ローラ対と前記第2下流ローラ対との間で弛んでいる前記下流切断繊維束を、前記第1下流ローラ対と前記バックローラ対との間に向けて引き戻す引き戻し工程と、を行い、
前記重合工程では、前記バックローラ対を正回転させることで前記バックローラ対に把持されている前記上流切断繊維束の下流端を、前記引き戻し工程によって引き戻された前記下流切断繊維束の上流端よりも下流側に位置させ、前記上流切断繊維束と前記下流切断繊維束とを重ね合わせることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の紡機のドラフト装置におけるドラフト方法。
【請求項5】
前記重合工程では、前記上流切断繊維束と前記下流切断繊維束との重合部位の長さが、前記上流切断繊維束と前記下流切断繊維束とが重なっていない部位の長さの2倍以上となるように、前記上流切断繊維束と前記下流切断繊維束とを重ね合わせることを特徴とする請求項1~請求項4のいずれか一項に記載の紡機におけるドラフト装置におけるドラフト方法。
【請求項6】
前記メインドラフト工程では、前記重合工程において形成された繊維束に発生する周期的な太さのムラを打ち消すべく、ドラフト倍率を変化させることを特徴とする請求項1~請求項5のいずれか一項に記載の紡機のドラフト装置におけるドラフト方法。
【請求項7】
繊維束を引き伸ばしつつ下流側に送る複数のローラ対を備え、
前記複数のローラ対は、
バックローラ対と、
前記バックローラ対よりも下流側に位置する第1下流ローラ対と、
前記第1下流ローラ対よりも下流側に位置する第2下流ローラ対と、
前記第2下流ローラ対よりも下流側に位置するフロントローラ対と、を含む紡機のドラフト装置であって、
請求項1~請求項6のいずれか一項に記載の紡機のドラフト装置におけるドラフト方法によって前記繊維束を引き伸ばすべく、前記バックローラ対、前記第1下流ローラ対、前記第2下流ローラ対、及び前記フロントローラ対の回転を制御する制御部を備えていることを特徴とする紡機のドラフト装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、紡機のドラフト装置におけるドラフト方法、及び紡機のドラフト装置に関する。
【背景技術】
【0002】
紡績の粗紡工程や精紡工程などにおいて、紡機のドラフト装置によって繊維束が引き伸ばされると、繊維束の太さのムラが増幅する場合があり、ドラフト装置によって引き伸ばされた繊維束は、ドラフト装置によって引き伸ばされる前と比べて、均斉度が低下してしまう虞がある。そこで、例えば特許文献1のような練条機を用いて、粗紡工程や精紡工程を行う前に、複数の繊維束を1本に合わせるといったダブリングを行うことで、繊維束の太さのムラを低減することが行われている。また、例えば特許文献2のような精紡機では、2本の繊維束を1本に合わせてから繊維束を引き伸ばすことによって、繊維束の太さのムラを低減している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平9-301638号公報
【特許文献2】特開平9-49136号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1のような練条機を用いる場合、粗紡工程や精紡工程の前に練条工程が必要となるため紡績に必要な工程数が多くなる。また、特許文献2のような精紡機を用いて、繊維束の太さのムラを低減しようとする場合、少なくとも2本以上の繊維束を1本に合わせて糸を紡出するために、繊維束の本数に応じてクリールに多くの篠巻(粗糸ボビン)を準備しなければならず、レイアウトに制約があり、3本以上の繊維束を合わせて糸を紡出することは実際には困難である。
【0005】
本発明は、上記課題を解決するためになされたものであって、その目的は、紡績工程を短縮することができる、もしくはレイアウトの制約に制限されることなく繊維束の太さのムラをより低減することができる紡機のドラフト装置におけるドラフト方法、及び紡機のドラフト装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決する紡機のドラフト装置におけるドラフト方法は、繊維束を引き伸ばしつつ下流側に送る複数のローラ対を備え、前記複数のローラ対は、バックローラ対と、前記バックローラ対よりも下流側に位置する第1下流ローラ対と、前記第1下流ローラ対よりも下流側に位置する第2下流ローラ対と、前記第2下流ローラ対よりも下流側に位置するフロントローラ対と、を含む紡機のドラフト装置におけるドラフト方法であって、前記バックローラ対と前記第1下流ローラ対との間で前記繊維束を切断する切断工程と、前記切断工程が行われたことにより切り離された2つの繊維束のうち、上流側に位置する繊維束を上流切断繊維束とし、前記2つの繊維束のうち、下流側に位置する繊維束を下流切断繊維束とすると、前記切断工程後に、前記上流切断繊維束の下流端を、前記下流切断繊維束の上流端よりも下流側に位置させ、前記上流切断繊維束と前記下流切断繊維束とを重ね合わせる重合工程と、前記重合工程後に、前記第2下流ローラ対から送られてくる繊維束を前記フロントローラ対と前記第2下流ローラ対との間で所定の太さに引き伸ばすメインドラフト工程と、を行う。
【0007】
これによれば、1本の繊維束を切断工程によって切断することにより生じた上流切断繊維束と下流切断繊維束とを、重合工程によって重ね合わせている。したがって、予め2本以上の繊維束を準備する必要が無く、1本の繊維束を予め準備するだけで、2本以上の繊維束を1本に合わせるといったダブリングを行うことができるため、レイアウトの制約に制限されることがない。そして、重合工程後の繊維束をメインドラフト工程によって所定の太さに引き伸ばすため、重合工程が行われていない繊維束を引き伸ばす場合に比べると、繊維束の太さのムラを低減することができる。したがって、例えば、従来技術のように、粗紡工程や精紡工程の前に練条機を用いた練条工程を行わなくても、練条工程を行う場合と同程度あるいはそれ以上に繊維束の太さのムラを低減することができる。以上により、紡績工程を短縮することができる、もしくはレイアウトの制約に制限されることなく繊維束の太さのムラをより低減することができる。
【0008】
上記紡機のドラフト装置におけるドラフト方法において、前記切断工程では、前記バックローラ対及び前記第1下流ローラ対の回転速度又は回転方向に差を生じさせることにより前記バックローラ対と前記第1下流ローラ対との間で前記繊維束を切断するとよい。このような方法は、バックローラ対と第1下流ローラ対との間で繊維束を切断する切断工程を行う上で好適である。
【0009】
上記紡機のドラフト装置におけるドラフト方法において、前記重合工程では、前記第1下流ローラ対に把持されている前記下流切断繊維束を前記第2下流ローラ対に送って前記第2下流ローラ対に把持させ、前記バックローラ対に把持されている前記上流切断繊維束を前記第1下流ローラ対に送って前記第1下流ローラ対に把持させ、前記第1下流ローラ対の回転速度を前記第2下流ローラ対の回転速度よりも速くすることで、前記上流切断繊維束の下流端を、前記下流切断繊維束の上流端よりも下流側に位置させ、前記上流切断繊維束と前記下流切断繊維束とを重ね合わせるとよい。このような方法は、切断工程によって生じた上流切断繊維束と下流切断繊維束とを重ね合わせる重合工程を行う上で好適である。
【0010】
上記紡機のドラフト装置におけるドラフト方法において、前記第1下流ローラ対の回転速度を前記第2下流ローラ対の回転速度よりも速くすることで前記第1下流ローラ対と前記第2下流ローラ対との間で繊維束の弛みを発生させる弛み発生工程と、前記切断工程後に、前記第1下流ローラ対を逆回転させることで、前記弛み発生工程によって前記第1下流ローラ対と前記第2下流ローラ対との間で弛んでいる前記下流切断繊維束を、前記第1下流ローラ対と前記バックローラ対との間に向けて引き戻す引き戻し工程と、を行い、前記重合工程では、前記バックローラ対を正回転させることで前記バックローラ対に把持されている前記上流切断繊維束の下流端を、前記引き戻し工程によって引き戻された前記下流切断繊維束の上流端よりも下流側に位置させ、前記上流切断繊維束と前記下流切断繊維束とを重ね合わせるとよい。このような方法は、切断工程によって生じた上流切断繊維束と下流切断繊維束とを重ね合わせる重合工程を行う上で好適である。
【0011】
上記紡機のドラフト装置におけるドラフト方法において、前記重合工程では、前記上流切断繊維束と前記下流切断繊維束との重合部位の長さが、前記上流切断繊維束と前記下流切断繊維束とが重なっていない部位の長さの2倍以上となるように、前記上流切断繊維束と前記下流切断繊維束とを重ね合わせるとよい。
【0012】
これによれば、例えば、上流切断繊維束と下流切断繊維束との重合部位の長さが、上流切断繊維束と下流切断繊維束とが重なっていない部位の長さの2倍の長さよりも短い場合に比べると、メインドラフト工程において引き伸ばされる繊維束の同一断面内での重なり本数を多くすることができる。その結果として、繊維束の太さのムラの低減度合いを大きくすることができる。
【0013】
上記紡機のドラフト装置におけるドラフト方法において、前記メインドラフト工程では、前記重合工程において形成された繊維束に発生する周期的な太さのムラを打ち消すべく、ドラフト倍率を変化させるとよい。これによれば、メインドラフト工程によって、繊維束の太さのムラをさらに低減することができる。
【0014】
上記課題を解決する紡機のドラフト装置は、繊維束を引き伸ばしつつ下流側に送る複数のローラ対を備え、前記複数のローラ対は、バックローラ対と、前記バックローラ対よりも下流側に位置する第1下流ローラ対と、前記第1下流ローラ対よりも下流側に位置する第2下流ローラ対と、前記第2下流ローラ対よりも下流側に位置するフロントローラ対と、を含む紡機のドラフト装置であって、上記した紡機のドラフト装置におけるドラフト方法によって前記繊維束を引き伸ばすべく、前記バックローラ対、前記第1下流ローラ対、前記第2下流ローラ対、及び前記フロントローラ対の回転を制御する制御部を備えている。
【発明の効果】
【0015】
この発明によれば、紡績工程を短縮することができる、もしくはレイアウトの制約に制限されることなく繊維束の太さのムラをより低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】第1の実施形態における紡機のドラフト装置を模式的に示す模式図。
【
図4】上流切断繊維束及び下流切断繊維束を模式的に示す模式図。
【
図7】第2の実施形態における紡機のドラフト装置を模式的に示す模式図。
【発明を実施するための形態】
【0017】
(第1の実施形態)
以下、紡機のドラフト装置におけるドラフト方法、及び紡機のドラフト装置を具体化した第1の実施形態を
図1~
図6にしたがって説明する。
【0018】
図1に示すように、紡機のドラフト装置10は、複数のローラ対11を備えている。複数のローラ対11は、繊維束20を引き伸ばしつつ下流側に送る。したがって、繊維束20は、複数のローラ対11によって送り出される。なお、以下の説明において、「下流」とは、繊維束20が複数のローラ対11によって送り出される方向の下流を意味し、「上流」とは、繊維束20が複数のローラ対11によって送り出される方向の上流を意味する。
【0019】
複数のローラ対11は、上流側から順にバックローラ対12、第1下流ローラ対13、第2下流ローラ対14、及びフロントローラ対15を有している。すなわち、バックローラ対12は最も上流側に位置するローラ対11であり、フロントローラ対15は最も下流側に位置するローラ対11である。バックローラ対12は、バックボトムローラ12aと、バックトップローラ12bと、を有している。バックトップローラ12bは、バックボトムローラ12aに対応する位置に配置されている。バックトップローラ12bは、バックボトムローラ12aに向けて押し付けられている。
【0020】
第1下流ローラ対13は、バックローラ対12よりも下流側に位置している。第1下流ローラ対13は、第1下流ボトムローラ13aと、第1下流トップローラ13bと、を有している。第1下流ボトムローラ13aは、バックボトムローラ12aに対して、繊維束20が送り出される方向で隣り合っている。第1下流ボトムローラ13aは、バックボトムローラ12aよりも下流側に位置している。第1下流トップローラ13bは、バックトップローラ12bに対して、繊維束20が送り出される方向で隣り合っている。第1下流トップローラ13bは、バックトップローラ12bよりも下流側に位置している。第1下流トップローラ13bは、第1下流ボトムローラ13aに対応する位置に配置されている。第1下流トップローラ13bは、第1下流ボトムローラ13aに向けて押し付けられている。
【0021】
第2下流ローラ対14は、第1下流ローラ対13よりも下流側に位置している。第2下流ローラ対14は、第2下流ボトムローラ14aと、第2下流トップローラ14bと、を有している。第2下流ボトムローラ14aは、第1下流ボトムローラ13aに対して、繊維束20が送り出される方向で隣り合っている。第2下流ボトムローラ14aは、第1下流ボトムローラ13aよりも下流側に位置している。第2下流トップローラ14bは、第1下流トップローラ13bに対して、繊維束20が送り出される方向で隣り合っている。第2下流トップローラ14bは、第1下流トップローラ13bよりも下流側に位置している。第2下流トップローラ14bは、第2下流ボトムローラ14aに対応する位置に配置されている。第2下流トップローラ14bは、第2下流ボトムローラ14aに向けて押し付けられている。
【0022】
フロントローラ対15は、第2下流ローラ対14よりも下流側に位置している。フロントローラ対15は、フロントボトムローラ15aと、フロントトップローラ15bと、を有している。フロントボトムローラ15aは、第2下流ボトムローラ14aに対して、繊維束20が送り出される方向で隣り合っている。フロントボトムローラ15aは、第2下流ボトムローラ14aよりも下流側に位置している。フロントトップローラ15bは、第2下流トップローラ14bに対して、繊維束20が送り出される方向で隣り合っている。フロントトップローラ15bは、第2下流トップローラ14bよりも下流側に位置している。フロントトップローラ15bは、フロントボトムローラ15aに対応する位置に配置されている。フロントトップローラ15bは、フロントボトムローラ15aに向けて押し付けられている。
【0023】
本実施形態のドラフト装置10は、バックボトムローラ12a、第1下流ボトムローラ13a、第2下流ボトムローラ14a、及びフロントボトムローラ15aを備えた4線式の構成になっている。
【0024】
ドラフト装置10は、バックローラ用駆動モータ31、第1下流ローラ用駆動モータ32、第2下流ローラ用駆動モータ33、及びフロントローラ用駆動モータ34を備えている。バックローラ用駆動モータ31は、バックボトムローラ12aを回転させるために駆動する。第1下流ローラ用駆動モータ32は、第1下流ボトムローラ13aを回転させるために駆動する。第2下流ローラ用駆動モータ33は、第2下流ボトムローラ14aを回転させるために駆動する。フロントローラ用駆動モータ34は、フロントボトムローラ15aを回転させるために駆動する。
【0025】
バックローラ用駆動モータ31の駆動によって、バックボトムローラ12aが回転すると、バックトップローラ12bがバックボトムローラ12aの回転に同期して回転する。第1下流ローラ用駆動モータ32の駆動によって、第1下流ボトムローラ13aが回転すると、第1下流トップローラ13bが第1下流ボトムローラ13aの回転に同期して回転する。第2下流ローラ用駆動モータ33の駆動によって、第2下流ボトムローラ14aが回転すると、第2下流トップローラ14bが第2下流ボトムローラ14aの回転に同期して回転する。フロントローラ用駆動モータ34の駆動によって、フロントボトムローラ15aが回転すると、フロントトップローラ15bがフロントボトムローラ15aの回転に同期して回転する。
【0026】
ドラフト装置10は、エプロン対16を備えている。エプロン対16は、ボトムエプロン16aと、トップエプロン16bと、を有している。ボトムエプロン16aは、テンサーバー17及び第2下流ボトムローラ14aに巻き掛けられている。トップエプロン16bは、エプロンクレードル18及び第2下流トップローラ14bに巻き掛けられている。トップエプロン16bは、ボトムエプロン16aに向けて押し付けられている。ボトムエプロン16aは、第2下流ボトムローラ14aの回転に伴って回動する。そして、トップエプロン16bは、ボトムエプロン16aの回動に同期して回動する。
【0027】
ドラフト装置10は、制御装置30を備えている。制御装置30は、中央処理制御装置(CPU)を備えている。また、制御装置30は、各種プログラムやマップ等を予め記憶した読出専用メモリ(ROM)、CPUの演算結果等を一時記憶するランダムアクセスメモリ(RAM)等により構成されるメモリを備えている。さらに、制御装置30は、タイマカウンタ、入力インターフェース、出力インターフェース等を備えている。
【0028】
制御装置30は、バックローラ用駆動モータ31、第1下流ローラ用駆動モータ32、第2下流ローラ用駆動モータ33、及びフロントローラ用駆動モータ34それぞれに電気的に接続されている。制御装置30は、バックローラ用駆動モータ31、第1下流ローラ用駆動モータ32、第2下流ローラ用駆動モータ33、及びフロントローラ用駆動モータ34それぞれの駆動を制御する。
【0029】
そして、制御装置30によって、バックローラ用駆動モータ31の駆動が制御されることにより、バックボトムローラ12aの回転が制御され、結果として、バックローラ対12の回転が制御される。また、制御装置30によって、第1下流ローラ用駆動モータ32の駆動が制御されることにより、第1下流ボトムローラ13aの回転が制御され、結果として、第1下流ローラ対13の回転が制御される。さらに、制御装置30によって、第2下流ローラ用駆動モータ33の駆動が制御されることにより、第2下流ボトムローラ14aの回転が制御され、結果として、第2下流ローラ対14の回転が制御される。また、制御装置30によって、フロントローラ用駆動モータ34の駆動が制御されることにより、フロントボトムローラ15aの回転が制御され、結果として、フロントローラ対15の回転が制御される。したがって、制御装置30は、繊維束20を引き伸ばすべく、バックローラ対12、第1下流ローラ対13、第2下流ローラ対14、及びフロントローラ対15の回転を制御する制御部として機能している。
【0030】
次に、第1の実施形態の紡機のドラフト装置10におけるドラフト方法を説明しながら、第1の実施形態の作用について説明する。第1の実施形態の紡機のドラフト装置10におけるドラフト方法では、切断工程と、重合工程と、メインドラフト工程と、を行う。
【0031】
なお、制御装置30は、切断工程、重合工程、及びメインドラフト工程において、第1下流ボトムローラ13aが常に正回転するように第1下流ローラ用駆動モータ32の駆動を制御する。したがって、本実施形態の紡機のドラフト装置10での紡出中では、第1下流ローラ対13は、常に正回転している。また、制御装置30は、切断工程、重合工程、及びメインドラフト工程において、第2下流ボトムローラ14aが常に正回転するように第2下流ローラ用駆動モータ33の駆動を制御する。したがって、本実施形態の紡機のドラフト装置10での紡出中では、第2下流ローラ対14は、常に正回転している。さらに、制御装置30は、切断工程、重合工程、及びメインドラフト工程において、フロントボトムローラ15aが常に正回転するようにフロントローラ用駆動モータ34の駆動を制御する。したがって、本実施形態の紡機のドラフト装置10での紡出中では、フロントローラ対15は、常に正回転している。
【0032】
第2下流ローラ対14及びフロントローラ対15は、メインドラフト比に応じて予め決められている回転速度でそれぞれ正回転している。本実施形態では、第1下流ローラ対13の回転速度が、メインドラフト比に応じて予め決められている第2下流ローラ対14の回転速度よりも速くなるように、第1下流ローラ対13の回転速度が予め設定されている。また、メインドラフト比に応じて予め決められているフロントローラ対15の回転速度は、メインドラフト比に応じて予め決められている第2下流ローラ対14の回転速度よりも速くなっている。
【0033】
図2に示すように、まず、制御装置30は、切断工程を行う。制御装置30は、切断工程では、バックボトムローラ12aが逆回転するようにバックローラ用駆動モータ31の駆動を制御する。その結果、切断工程では、第1下流ローラ対13が正回転するとともにバックローラ対12が逆回転する。
【0034】
切断工程において、第1下流ローラ対13が正回転するとともにバックローラ対12が逆回転すると、バックローラ対12と第1下流ローラ対13との間で繊維束20が切断される。このように、切断工程では、第1下流ローラ対13を正回転させるとともにバックローラ対12を逆回転させることによりバックローラ対12と第1下流ローラ対13との間で繊維束20を切断する。したがって、切断工程では、バックローラ対12及び第1下流ローラ対13の回転方向に差を生じさせることによりバックローラ対12と第1下流ローラ対13との間で繊維束20を切断する。
【0035】
なお、以下の説明において、切断工程が行われたことにより切り離された2つの繊維束20のうち、上流側に位置する繊維束20を上流切断繊維束21とし、切断工程が行われたことにより切り離された2つの繊維束20のうち、下流側に位置する繊維束20を下流切断繊維束22とする。
【0036】
図3に示すように、制御装置30は、切断工程後に、重合工程を行う。制御装置30は、重合工程では、バックボトムローラ12aの回転が逆回転から正回転に切り替わるようにバックローラ用駆動モータ31の駆動を制御する。これにより、重合工程では、バックボトムローラ12aが正回転し、結果として、バックローラ対12が正回転する。したがって、重合工程では、バックローラ対12、第1下流ローラ対13、及び第2下流ローラ対14それぞれが正回転している。そして、切断工程後に、第1下流ローラ対13に把持されている下流切断繊維束22が第2下流ローラ対14に送られて第2下流ローラ対14に把持されるとともに、バックローラ対12に把持されている上流切断繊維束21が第1下流ローラ対13に送られて第1下流ローラ対13に把持される。このとき、下流切断繊維束22は、第1下流ローラ対13によって把持された状態が解除されるまで、第2下流ローラ対14に送られる。したがって、下流切断繊維束22の上流端22eは、第1下流ローラ対13と第2下流ローラ対14との間に位置している。
【0037】
さらに、第1下流ローラ対13の回転速度が、メインドラフト比によって予め決められている第2下流ローラ対14の回転速度よりも速いため、重合工程では、第1下流ローラ対13に把持されている上流切断繊維束21の下流端21eが、第2下流ローラ対14に把持されている下流切断繊維束22の上流端22eを追い越す。その結果、第1下流ローラ対13に把持されている上流切断繊維束21の下流端21eが、第2下流ローラ対14に把持されている下流切断繊維束22の上流端22eよりも下流側に位置する。これにより、上流切断繊維束21と下流切断繊維束22とが重なる。
【0038】
このように、重合工程では、切断工程後に、第1下流ローラ対13に把持されている下流切断繊維束22を第2下流ローラ対14に送って第2下流ローラ対14に把持させ、バックローラ対12に把持されている上流切断繊維束21を第1下流ローラ対13に送って第1下流ローラ対13に把持させる。そして、第1下流ローラ対13の回転速度を第2下流ローラ対14の回転速度よりも速くすることで、上流切断繊維束21の下流端21eを、下流切断繊維束22の上流端22eよりも下流側に位置させ、上流切断繊維束21と下流切断繊維束22とを重ね合わせる。したがって、重合工程では、第1下流ローラ対13の回転速度と第2下流ローラ対14の回転速度との差によって上流切断繊維束21と下流切断繊維束22とを重ね合わせる。
【0039】
図4に示すように、上流切断繊維束21と下流切断繊維束22との重合部位20aの長さL1は、上流切断繊維束21と下流切断繊維束22とが重なっていない部位20bの長さL2の2倍になっている。具体的には、制御装置30は、重合工程において、上流切断繊維束21と下流切断繊維束22との重合部位20aの長さL1が、上流切断繊維束21と下流切断繊維束22とが重なっていない部位20bの長さL2の2倍になるように、第1下流ローラ用駆動モータ32の駆動を制御する。これにより、重合工程において、上流切断繊維束21と下流切断繊維束22との重合部位20aの長さL1が、上流切断繊維束21と下流切断繊維束22とが重なっていない部位20bの長さL2の2倍になるように、第1下流ローラ対13の回転速度が制御される。したがって、上流切断繊維束21と下流切断繊維束22との重合部位20aの長さL1、及び上流切断繊維束21と下流切断繊維束22とが重なっていない部位20bの長さL2は、第1下流ローラ対13の回転速度と第2下流ローラ対14の回転速度との比によって決定される。このように、重合工程では、上流切断繊維束21と下流切断繊維束22との重合部位20aの長さL1が、上流切断繊維束21と下流切断繊維束22とが重なっていない部位20bの長さL2の2倍以上となるように、上流切断繊維束21と下流切断繊維束22とを重ね合わせる。
【0040】
制御装置30は、重合工程後に、メインドラフト工程を行う。ここで、メインドラフト比によって予め決められているフロントローラ対15の回転速度が、メインドラフト比によって予め決められている第2下流ローラ対14の回転速度よりも速い。これにより、メインドラフト工程では、第2下流ローラ対14から送られてくる繊維束20が、フロントローラ対15とエプロン対16との間で引き伸ばされる。したがって、メインドラフト工程では、第2下流ローラ対14から送られてくる繊維束20を、フロントローラ対15の回転速度と第2下流ローラ対14の回転速度との差によって引き伸ばす。
【0041】
図5に示すように、重合工程後に、第2下流ローラ対14から送られてくる繊維束20は、上流切断繊維束21と下流切断繊維束22との重合により大径部201及び小径部202とからなる太さのムラが周期的に発生している場合がある。例えば、大径部201と小径部202とが交互に繰り返し発生する場合がある。そこで、メインドラフト工程では、このような重合工程において形成された繊維束20に発生する周期的な太さのムラを打ち消すべく、ドラフト倍率を変化させる。具体的には、繊維束20の周期的な太さのムラを打ち消すべく、フロントローラ用駆動モータ34の駆動を制御して、フロントローラ対15の回転速度を制御する。
【0042】
図6には、メインドラフト工程におけるドラフト倍率の変化を示している。ここで、例えば、繊維束20の大径部201を引き伸ばす場合を考える。この場合、制御装置30は、フロントローラ対15の回転速度が、繊維束20の小径部202を引き伸ばすときのフロントローラ対15の回転速度よりも速くなるように、フロントローラ用駆動モータ34の駆動を制御する。これにより、
図6に示すように、繊維束20の大径部201を引き伸ばすときのドラフト倍率が、繊維束20の小径部202を引き伸ばすときのドラフト倍率よりも大きくなる。
【0043】
一方で、繊維束20の小径部202を引き伸ばす場合を考える。この場合、制御装置30は、フロントローラ対15の回転速度が、繊維束20の大径部201を引き伸ばすときのフロントローラ対15の回転速度よりも遅くなるように、フロントローラ用駆動モータ34の駆動を制御する。これにより、
図6に示すように、繊維束20の小径部202を引き伸ばすときのドラフト倍率が、繊維束20の大径部201を引き伸ばすときのドラフト倍率よりも小さくなる。
【0044】
繊維束20において、大径部201の発生箇所、及び小径部202の発生箇所は、重合工程のときの第1下流ローラ対13の回転速度、及び第2下流ローラ対14の回転速度により推定することが可能である。したがって、ドラフト倍率を変化させるタイミングや変化の度合いについては、重合工程のときの第1下流ローラ対13の回転速度、及び第2下流ローラ対14の回転速度に基づいて予め求められている。そして、制御装置30には、重合工程のときの第1下流ローラ対13の回転速度、及び第2下流ローラ対14の回転速度と、ドラフト倍率を変化させるタイミングや変化の度合いとの関係を示すマップが予め記憶されている。
【0045】
このように、メインドラフト工程では、重合工程後に、第2下流ローラ対14から送られてくる繊維束20をフロントローラ対15と第2下流ローラ対14との間で所定の太さに引き伸ばす。そして、所定の太さに引き伸ばされた繊維束20が、フロントローラ対15から紡出される。制御装置30は、以上のように説明したドラフト方法によって繊維束20を引き伸ばすべく、バックローラ対12、第1下流ローラ対13、第2下流ローラ対14、及びフロントローラ対15の回転を制御する。第1の実施形態では、切断工程、重合工程、及びメインドラフト工程が一連の流れで繰り返し行われる。
【0046】
第1の実施形態では以下の効果を得ることができる。
(1-1)1本の繊維束20を切断工程によって切断することにより生じた上流切断繊維束21と下流切断繊維束22とを、重合工程によって重ね合わせている。したがって、予め2本以上の繊維束20を準備する必要が無く、1本の繊維束20を予め準備するだけで、2本以上の繊維束20を1本に合わせるといったダブリングを行うことができるため、レイアウトの制約に制限されることがない。そして、重合工程後の繊維束20をメインドラフト工程によって所定の太さに引き伸ばすため、重合工程が行われていない繊維束20を引き伸ばす場合に比べると、繊維束20の太さのムラを低減することができる。したがって、例えば、従来技術のように、粗紡工程や精紡工程の前に練条機を用いた練条工程を行わなくても、練条工程を行う場合と同程度あるいはそれ以上に繊維束20の太さのムラを低減することができる。以上により、紡績工程を短縮することができる、もしくはレイアウトの制約に制限されることなく繊維束20の太さのムラをより低減することができる。
【0047】
(1-2)切断工程では、バックローラ対12及び第1下流ローラ対13の回転方向に差を生じさせることによりバックローラ対12と第1下流ローラ対13との間で繊維束20を切断する。このような方法は、バックローラ対12と第1下流ローラ対13との間で繊維束20を切断する切断工程を行う上で好適である。
【0048】
(1-3)重合工程では、第1下流ローラ対13に把持されている下流切断繊維束22を第2下流ローラ対14に送って第2下流ローラ対14に把持させ、バックローラ対12に把持されている上流切断繊維束21を第1下流ローラ対13に送って第1下流ローラ対13に把持させる。そして、第1下流ローラ対13の回転速度を第2下流ローラ対14の回転速度よりも速くすることで、上流切断繊維束21の下流端21eを、下流切断繊維束22の上流端22eよりも下流側に位置させ、上流切断繊維束21と下流切断繊維束22とを重ね合わせる。このような方法は、切断工程によって生じた上流切断繊維束21と下流切断繊維束22とを重ね合わせる重合工程を行う上で好適である。
【0049】
(1-4)重合工程では、上流切断繊維束21と下流切断繊維束22との重合部位20aの長さL1が、上流切断繊維束21と下流切断繊維束22とが重なっていない部位20bの長さL2の2倍となるように、上流切断繊維束21と下流切断繊維束22とを重ね合わせる。これによれば、例えば、上流切断繊維束21と下流切断繊維束22との重合部位20aの長さL1が、上流切断繊維束21と下流切断繊維束22とが重なっていない部位20bの長さL2の2倍の長さよりも短い場合に比べると、メインドラフト工程において引き伸ばされる繊維束20の同一断面内での重なり本数を多くすることができる。その結果として、繊維束20の太さのムラの低減度合いを大きくすることができる。
【0050】
(1-5)メインドラフト工程では、重合工程において形成された繊維束20に発生する周期的な太さのムラを打ち消すべく、ドラフト倍率を変化させる。これによれば、メインドラフト工程によって、繊維束20の太さのムラをさらに低減することができる。
【0051】
(第2の実施形態)
以下、紡機のドラフト装置におけるドラフト方法、及び紡機のドラフト装置を具体化した第2の実施形態を
図7にしたがって説明する。なお、以下に説明する実施形態では、既に説明した第1の実施形態と同一構成について同一符号を付すなどして、その重複する説明を省略又は簡略する。
【0052】
第2の実施形態では、重合工程が、第1の実施形態で説明した重合工程とは方法が異なっている。具体的には、第2の実施形態では、重合工程を行うために、弛み発生工程及び引き戻し工程を行う。なお、紡機のドラフト装置10の構成は、第1の実施形態の紡機のドラフト装置10の構成と同じであるため、以下の説明では、第2の実施形態のドラフト方法を説明しながら、第2の実施形態の作用について説明する。
【0053】
図7に示すように、第2の実施形態では、切断工程によって生じた下流切断繊維束22が、第1下流ローラ対13及び第2下流ローラ対14に架け渡された状態で、第1下流ローラ対13及び第2下流ローラ対14にそれぞれ把持されている。そして、下流切断繊維束22の上流端22eは、バックローラ対12と第1下流ローラ対13との間に位置している。
【0054】
弛み発生工程では、第1下流ローラ対13の回転速度を第2下流ローラ対14の回転速度よりも速くすることで第1下流ローラ対13と第2下流ローラ対14との間で繊維束20の弛みを発生させる。具体的には、制御装置30は、弛み発生工程では、第1下流ローラ対13の回転速度が、第2下流ローラ対14の回転速度よりも速くなるように、第1下流ローラ用駆動モータ32及び第2下流ローラ用駆動モータ33の駆動を制御する。これにより、下流切断繊維束22は、第1下流ローラ対13と第2下流ローラ対14との間で弛む。
【0055】
制御装置30は、引き戻し工程では、切断工程後に、第1下流ローラ対13が逆回転するように、第1下流ローラ用駆動モータ32の駆動を制御する。これにより、第1下流ローラ対13と第2下流ローラ対14との間で弛んでいる下流切断繊維束22が、第1下流ローラ対13とバックローラ対12との間に向けて引き戻される。このように、引き戻し工程では、切断工程後に、第1下流ローラ対13を逆回転させることで、弛み発生工程によって第1下流ローラ対13と第2下流ローラ対14との間で弛んでいる下流切断繊維束22を、第1下流ローラ対13とバックローラ対12との間に向けて引き戻す。
【0056】
制御装置30は、重合工程では、まず、バックローラ対12が正回転するようにバックローラ用駆動モータ31の駆動を制御する。これにより、バックローラ対12に把持されている上流切断繊維束21が第1下流ローラ対13に送られて、バックローラ対12に把持されている上流切断繊維束21の下流端21eが、第1下流ローラ対13に把持されている下流切断繊維束22の上流端22eよりも下流側に位置する。これにより、上流切断繊維束21と下流切断繊維束22とが重なる。このように、重合工程では、バックローラ対12を正回転させることでバックローラ対12に把持されている上流切断繊維束21の下流端21eを、引き戻し工程によって引き戻された下流切断繊維束22の上流端22eよりも下流側に位置させ、上流切断繊維束21と下流切断繊維束22とを重ね合わせる。
【0057】
制御装置30は、重合工程後に、第1下流ローラ対13が正回転するように第1下流ローラ用駆動モータ32の駆動を制御する。これにより、重合工程において形成された繊維束20が、第1下流ローラ対13及び第2下流ローラ対14からフロントローラ対15に送られる。そして、第1の実施形態と同様に、メインドラフト工程が行われることにより、第2下流ローラ対14から送られてくる繊維束20がフロントローラ対15と第2下流ローラ対14との間で所定の太さに引き伸ばされる。第2の実施形態では、弛み発生工程、切断工程、引き戻し工程、重合工程、及びメインドラフト工程が一連の流れで繰り返し行われる。
【0058】
第2の実施形態では、第1の実施形態の効果(1-1)、(1-2)、(1-4)、及び(1-5)と同様の効果に加えて、以下の効果を得ることができる。
(2-1)第1下流ローラ対13の回転速度を第2下流ローラ対14の回転速度よりも速くすることで第1下流ローラ対13と第2下流ローラ対14との間で繊維束20の弛みを発生させる弛み発生工程を行う。さらに、切断工程後に、第1下流ローラ対13を逆回転させることで、弛み発生工程によって第1下流ローラ対13と第2下流ローラ対14との間で弛んでいる下流切断繊維束22を、第1下流ローラ対13とバックローラ対12との間に向けて引き戻す引き戻し工程を行う。そして、重合工程では、バックローラ対12を正回転させることでバックローラ対12に把持されている上流切断繊維束21の下流端21eを、引き戻し工程によって引き戻された下流切断繊維束22の上流端22eよりも下流側に位置させ、上流切断繊維束21と下流切断繊維束22とを重ね合わせる。このような方法は、切断工程によって生じた上流切断繊維束21と下流切断繊維束22とを重ね合わせる重合工程を行う上で好適である。
【0059】
なお、上記各実施形態は、以下のように変更して実施することができる。上記各実施形態及び以下の変更例は、技術的に矛盾しない範囲で互いに組み合わせて実施することができる。
【0060】
○ 上記各実施形態において、切断工程では、例えば、バックローラ対12の回転を停止させるとともに、第1下流ローラ対13を正回転させることによりバックローラ対12と第1下流ローラ対13のとの間で繊維束20を切断するようにしてもよい。また、切断工程において、バックローラ対12の回転速度が第1下流ローラ対13の回転速度に対して極端に遅い回転速度で正回転させることによりバックローラ対12と第1下流ローラ対13のとの間で繊維束20を切断するようにしてもよい。さらには、バックローラ対12を逆回転させるとともに、第1下流ローラ対13の回転を停止させることによりバックローラ対12と第1下流ローラ対13のとの間で繊維束20を切断するようにしてもよい。要は、切断工程において、バックローラ対12及び第1下流ローラ対13の回転速度に差を生じさせることによりバックローラ対12と第1下流ローラ対13との間で繊維束20を切断するようにしてもよい。
【0061】
○ 上記各実施形態において、重合工程では、上流切断繊維束21と下流切断繊維束22との重合部位20aの長さL1が、上流切断繊維束21と下流切断繊維束22とが重なっていない部位20bの長さL2の2倍の長さよりも長くなるように、上流切断繊維束21と下流切断繊維束22とを重ね合わせてもよい。要は、重合工程では、上流切断繊維束21と下流切断繊維束22との重合部位20aの長さL1が、上流切断繊維束21と下流切断繊維束22とが重なっていない部位20bの長さL2の2倍以上となるように、上流切断繊維束21と下流切断繊維束22とを重ね合わせるようにするとよい。
【0062】
○ 上記各実施形態において、重合工程では、上流切断繊維束21と下流切断繊維束22との重合部位20aの長さL1が、上流切断繊維束21と下流切断繊維束22とが重なっていない部位20bの長さL2の2倍の長さよりも短くなるように、上流切断繊維束21と下流切断繊維束22とを重ね合わせてもよい。
【0063】
○ 上記各実施形態において、メインドラフト工程では、ドラフト倍率を変化させなくてもよく、第2下流ローラ対14から送られてくる繊維束20をフロントローラ対15と第2下流ローラ対14との間で、一定のドラフト倍率で引き伸ばすようにしてもよい。
【0064】
○ 上記各実施形態において、複数のローラ対11は、例えば、第1下流ローラ対13と第1下流ローラ対13との間に、繊維束20を案内するための補助ローラ対を備えた構成であってもよい。要は、複数のローラ対11は、バックローラ対12と、第1下流ローラ対13と、第2下流ローラ対14と、フロントローラ対15と、を含む構成であればよい。
【0065】
○ 上記各実施形態において、切断工程では、例えば、カッタ、もしくは、周知の粗糸停止装置を用いて、バックローラ対12と第1下流ローラ対13との間で繊維束20を切断してもよい。
【0066】
○ 上記各実施形態において、重合工程では、例えば、周知の繊維束集束装置を用いて、上流切断繊維束21と下流切断繊維束22とを重ね合わせるようにしてもよい。
【符号の説明】
【0067】
10…ドラフト装置、11…ローラ対、12…バックローラ対、13…第1下流ローラ対、14…第2下流ローラ対、15…フロントローラ対、20…繊維束、21…上流切断繊維束、21e…下流端、22…下流切断繊維束、22e…上流端、30…制御部として機能する制御装置。