(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022049974
(43)【公開日】2022-03-30
(54)【発明の名称】トンネル工事におけるズリ搬出システム及びズリ搬出方法
(51)【国際特許分類】
E21D 9/12 20060101AFI20220323BHJP
E21F 13/06 20060101ALI20220323BHJP
【FI】
E21D9/12 B
E21F13/06
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020156293
(22)【出願日】2020-09-17
(71)【出願人】
【識別番号】594036135
【氏名又は名称】株式会社東宏
(74)【代理人】
【識別番号】100082418
【弁理士】
【氏名又は名称】山口 朔生
(74)【代理人】
【識別番号】100167601
【弁理士】
【氏名又は名称】大島 信之
(74)【代理人】
【識別番号】100201329
【弁理士】
【氏名又は名称】山口 真二郎
(74)【代理人】
【識別番号】100220917
【弁理士】
【氏名又は名称】松本 忠大
(72)【発明者】
【氏名】小林 雅彦
【テーマコード(参考)】
2D054
【Fターム(参考)】
2D054AC20
2D054DA02
2D054DA17
2D054DA21
(57)【要約】
【課題】ズリの搬送効率を顕著に高めつつズリ破砕待ちによるタイムロスを解消することで急速施工を実現可能なズリ搬出システム及びズリ搬出方法を提供すること。
【解決手段】本発明のズリ搬出システム1は、1台又は複数台のズリ積込機10と、1台又は複数台のズリ搬送車20と、ズリ貯蔵装置30と、破砕装置40と、ベルトコンベア50と、を備え、ズリ貯蔵装置30が、受入口31と、吐出口32と、移送手段33と、を有し、移送手段33によって、受入口31から吐出口32へのズリの移送速度を制御することで、破砕装置40の破砕待ちによるズリ搬送車20の待機時間を解消可能に構成したことを特徴とする。本発明のズリ搬出方法は、ズリ搬出システム1を用いて、搭載工程S1と、搬送工程S2と、移送工程S3と、破砕工程S4と、を行うことを特徴とする。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
トンネル工事において、切羽から発生したズリを破砕して坑外へ搬出する、ズリ搬出システムであって、
切羽付近に配置したズリ積込機であって、切羽から発生したズリを地盤から掬い上げ可能な、1台又は複数台のズリ積込機と、
発破時に施工装置を待機させる待機エリアより坑口側に配置した、ズリ貯蔵装置と、
切羽付近から前記ズリ貯蔵装置の間を往復可能に配置したズリ搬送車であって、前記ズリ積込機が掬い上げたズリを搬送して、前記ズリ貯蔵装置内へ投入可能な、1台又は複数台のズリ搬送車と、
前記ズリ貯蔵装置の坑口側に配置した、破砕装置と、
前記破砕装置の坑口側から坑外にわたって延設した、ベルトコンベアと、を備え、
前記ズリ貯蔵装置は、前記ズリ搬送車が排出するズリを受け入れ可能な受入口と、前記破砕装置の投入口内へズリを吐出可能な吐出口と、前記受入口と前記吐出口を接続し、上部に任意の量のズリを貯蔵しつつ、前記受入口から前記吐出口へ任意の速度でズリを移送可能な移送手段と、を有し、
前記移送手段によって、前記受入口から前記吐出口へのズリの移送速度を制御することで、前記破砕装置の破砕待ちによる前記ズリ搬送車の待機時間を解消可能に構成したことを特徴とする、
ズリ搬出システム。
【請求項2】
前記ズリ積込機一台のズリ掬い上げ容量V1と、前記ズリ搬送車一台のズリ積載量V2と、前記ズリ貯蔵装置のズリ貯蔵容量V3とが、
V1<V2<V3・・(式1)
の関係にあることを特徴とする、請求項1に記載のズリ搬出システム。
【請求項3】
切羽から前記ズリ貯蔵装置までの距離である搬送距離が、前記破砕装置による時間当たりズリ破砕量V4と、前記ズリ搬送車による前記ズリ貯蔵装置への時間当たりズリ投入量V5、の関係において、
V4<V5・・(式2)
を満たす距離であることを特徴とする、請求項1又は2に記載のズリ搬出システム。
【請求項4】
前記搬送距離が、200m以上であることを特徴とする、請求項3に記載のズリ搬出システム。
【請求項5】
前記ズリ貯蔵装置が、自走可能な走行手段を備えることを特徴とする、請求項1乃至4のいずれか一項に記載のズリ搬出システム。
【請求項6】
請求項1乃至5に記載のズリ搬出システムを用いて、切羽から発生したズリを破砕して坑外へ搬出する、ズリ搬出方法であって、
前記ズリ積込機によって、切羽から発生したズリを地盤から掬い上げ、前記ズリ搬送車に搭載する、搭載工程と、
前記ズリ搬送車によって、前記待機エリアを通過してズリを前記ズリ貯蔵装置まで搬送し、前記ズリ貯蔵装置の受入口に投入する、搬送工程と、
前記移送手段によって、任意の移送速度で前記受入口から前記吐出口へズリを移送して、前記吐出口から前記破砕装置の投入口内へ吐出する、移送工程と、
前記破砕装置によって、ズリを破砕して前記ベルトコンベア上に排出する、破砕工程と、を備え、
前記移送工程において、前記移送手段によるズリの移送速度を制御することで、前記破砕装置の破砕待ちによる前記ズリ搬送車の待機時間を解消せしめたことを特徴とする、
ズリ搬出方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、トンネル工事におけるズリ搬出システム及びズリ搬出方法に関し、特に、ズリの搬送効率を顕著に高めつつ、ズリ破砕待ちによるタイムロスを解消することで急速施工を実現可能な、ズリ搬出システム及びこれを用いてなるズリ搬出方法に関する。
【背景技術】
【0002】
山岳トンネル工事では、発破又は機械掘削によって切羽付近に堆積したズリを、ホイールローダで掬い上げてクラッシャ内に投入し、クラッシャで破砕した後にベルトコンベアに載せて坑外へ向けて搬出している。
近年、長距離山岳トンネルの工事の増加に伴い、トンネル工事の急速施工が追及されているところ、発破掘削の施工サイクルの3割以上を占めるズリ処理をいかに効率化するか、すなわち切羽から生じたズリをいかに効率的に坑外へ搬出して早期に切羽を開放するか、が施工上の喫緊の課題となっている。
ズリ搬出の効率化に関する従来技術として、特許文献1には、台車により搬入部をスライド伸縮可能なテールピース台車を用いた、搬出システム及び搬出方法が開示されている。この発明によれば、発破時には台車をスライドして搬入部を切羽から退避させて装置の安全を図るとともに、ズリの搬入時には台車をスライドして搬入部を切羽に近づけ、移動式クラッシャを搬入部前に据え付けることで、切羽と移動式クラッシャとの距離を短縮し、ホイールローダによるズリの搬送効率を高める。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1の技術によれば、切羽とクラッシャの距離を比較的近距離にすることで、ホイールローダの走行距離を短縮して、切羽のズリをクラッシャに投入する搬送効率(t/h)を向上させることができる。
しかし、クラッシャによるズリの破砕能力(t/h)には限度があり、ホイールローダによるズリの搬送効率がクラッシャの破砕能力を超過すると、ズリがクラッシャの破砕室の容量を超え、ズリが破砕・排出されるまで、ホイールローダがズリを保持したまま待機する必要が生じる。
以上のように、徒にズリの搬送能力だけを高めても、クラッシャの能力が十分でなければ、結局はクラッシャの破砕待ちによるタイムロスが生じる。
これを解消するには、搬送効率を上回る破砕能力のクラッシャを導入すればよいが、例えば破砕能力500t/hのクラッシャは300t/hのクラッシャの2倍以上の調達コストがかかり、工事原価を圧迫する。また、クラッシャが大型化することで、限られた坑内空間を占有し、施工車両の通行に支障が生じるおそれがある。
【0005】
以上から理解できるように、切羽からクラッシャへズリの搬送効率だけを高めても、ズリの搬送効率がクラッシャの破砕能力を超えることで、破砕待ちのタイムロス(ホイールローダの停止)が生じてしまう。
他方、クラッシャの破砕能力を高めても、破砕効率がズリの搬送効率を超えると、ズリの搬送待ちのタイムロス(クラッシャの停止)が生じてしまう。
【0006】
本発明の目的は、以上のような従来技術の課題を解決し、ズリの搬送効率と破砕能力のギャップを解消させることで、切羽を早期に開放し、急速施工を達成可能なズリ搬出システム及びズリ搬出方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明のズリ搬出システムは、切羽付近に配置したズリ積込機であって、切羽から発生したズリを地盤から掬い上げ可能な、1台又は複数台のズリ積込機と、発破時に施工装置を待機させる待機エリアより坑口側に配置した、ズリ貯蔵装置と、切羽付近からズリ貯蔵装置の間を往復可能に配置したズリ搬送車であって、ズリ積込機が掬い上げたズリを搬送して、ズリ貯蔵装置内へ投入可能な、1台又は複数台のズリ搬送車と、ズリ貯蔵装置の坑口側に配置した、破砕装置と、破砕装置の坑口側から坑外にわたって延設した、ベルトコンベアと、を備え、ズリ貯蔵装置は、ズリ搬送車が排出するズリを受け入れ可能な受入口と、破砕装置の投入口内へズリを吐出可能な吐出口と、受入口と吐出口を接続し、上部に任意の量のズリを貯蔵しつつ、受入口から吐出口へ任意の速度でズリを移送可能な移送手段と、を有し、移送手段によって、受入口から吐出口へのズリの移送速度を制御することで、破砕装置の破砕待ちによるズリ搬送車の待機時間を解消可能に構成したことを特徴とする。
【0008】
本発明のズリ搬出システムは、ズリ積込機一台のズリ掬い上げ容量V1と、ズリ搬送車一台のズリ積載量V2と、ズリ貯蔵装置のズリ貯蔵容量V3とが、
V1<V2<V3・・(式1)
の関係にあってもよい。
【0009】
本発明のズリ搬出システムは、切羽からズリ貯蔵装置までの距離である搬送距離が、破砕装置による時間当たりズリ破砕量V4と、ズリ搬送車によるズリ貯蔵装置への時間当たりズリ投入量V5、の関係において、
V4<V5・・(式2)
を満たす距離であってもよい。
【0010】
本発明のズリ搬出システムは、搬送距離が、200m以上であってもよい。
【0011】
本発明のズリ搬出システムは、ズリ貯蔵装置が、自走可能な走行手段を備えていてもよい。
【0012】
本発明のズリ搬出方法は、ズリ積込機によって、切羽から発生したズリを地盤から掬い上げ、ズリ搬送車に搭載する、搭載工程と、ズリ搬送車によって、待機エリアを通過してズリをズリ貯蔵装置まで搬送し、ズリ貯蔵装置の受入口に投入する、搬送工程と、移送手段によって、任意の移送速度で受入口から吐出口へズリを移送して、吐出口から破砕装置の投入口内へ吐出する、移送工程と、破砕装置によって、ズリを破砕してベルトコンベア上に排出する、破砕工程と、を備え、移送工程において、移送手段によるズリの移送速度を制御することで、破砕装置の破砕待ちによるズリ搬送車の待機時間を解消せしめたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
ズリ搬出システム及びズリ搬出方法は、ズリ搬送車による大ロット輸送によりズリの搬送効率を高めつつ、ズリ搬送車とズリ破砕装置の間に、ズリ貯蔵機能とズリ移送機能を兼備したズリ貯蔵装置を介在させることで、搬送効率と破砕効率のギャップを解消することができる。
これによって、大型の破砕装置を用いることなく、ズリ破砕待ちによるタイムロスを解消し、早期に切羽を開放して、急速施工を実現することができる。
また、破砕装置を、施工装置の待機エリアより坑口側に配置することで、施工装置の作業効率を高めると共に、限られた坑内空間を有効に利用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図3】本発明に係るズリ搬出システムのサイクルタイムの説明図。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、図面を参照しながら本発明のトンネル工事におけるズリ搬出システム及びズリ搬出方法について詳細に説明する。
なお、本明細書において「ズリ」とはトンネル掘削の際に発破や破砕によって生じた岩片や土砂などを総称する。
【実施例0016】
[ズリ搬出システム]
<1>全体の構成(
図1)。
本発明のズリ搬出システム1は、山岳トンネル工事において、発破や掘削によって切羽から発生したズリを破砕して坑外へ搬出する一連の工程に使用するシステムである。
ズリ搬出システム1は、切羽付近に配置したズリ積込機10と、ズリ貯蔵装置30と、切羽からズリ貯蔵装置30まで往復可能に配置したズリ搬送車20と、ズリ貯蔵装置30より坑口側に配置した破砕装置40と、破砕装置40より坑口側に配置したベルトコンベア50と、を少なくとも備える。
本例では、1台のズリ積込機10、2台のズリ搬送車20、及び各1機のズリ貯蔵装置30、破砕装置40、ベルトコンベア50の組合せを採用する。
なお、ズリ積込機10やズリ搬送車20の台数はこれに限らず、ズリ積込機10のバケット容量、ズリ搬送車20のダンプ容量、ズリ搬送車20によるズリの搬送効率、破砕装置40の破砕効率、および導入コスト等との兼ね合いで、適宜の台数の組合せを採用することができる。
本発明のズリ搬出システム1は、ズリ搬送車20と破砕装置40の間に、ズリ貯蔵機能とズリ移送機能を兼備したズリ貯蔵装置30を介在させた点に一つの特徴を有する。
【0017】
<1.1>施工エリア。
本発明では、トンネルを、切羽側から坑口側へ向かって順に、退避エリアA1、待機エリアA2、破砕エリアA3に区分する。
退避エリアA1は、発破掘削時に飛散石による施工装置Mへの損傷を防ぐために確保するエリアである。
退避エリアA1は、概ね切羽から60~100m程度である。
待機エリアA2は、施工装置Mを待機させるエリアである。
待機エリアA2は、退避エリアA1の坑口側から概ね100m程度である。これは、施工装置Mのドリルジャンボ、吹付機、ブレーカー、変電台車、風塵機等を相互に隔離して配置した距離である。
破砕エリアA3は、ズリを破砕して坑外へ搬出するエリアである。
破砕エリアA3は、待機エリアA2の坑口側から坑口に至る区間である。
本発明のズリ搬出システム1は、ズリ貯蔵装置30及び破砕装置40を、待機エリアA2より坑口側の破砕エリアA3に配置した点に一つの特徴を有する。
【0018】
<2>ズリ積込機。
ズリ積込機10は、ズリを地盤から掬い上げてズリ搬送車20に積み込む重機である。
ズリ積込機10は、退避エリアA1の切羽付近に配置し、発破時には待機エリアA2で待機する。
本例ではズリ積込機10として、サイドダンプ使用のホイールローダ(バケット容量2.3m3)を採用する。ただしこれに限らず、バックホウその他の重機であってもよい。
ズリ積込機10のその他の構成は公知なのでここでは詳述しない。
【0019】
<3>ズリ搬送車。
ズリ搬送車20は、切羽のズリをズリ貯蔵装置30まで搬送する車両である。
ズリ搬送車20は、退避エリアA1と破砕エリアA3との間を往復し、発破時には待機エリアA2で待機する。
本例では、ズリ搬送車20として、重ダンプトラック(ダンプ容量14.0m3)を採用する。ただしこれに限らず、10tダンプその他の車両であってもよい。
ズリ搬送車20のその他の構成は公知なのでここでは詳述しない。
【0020】
<4>ズリ貯蔵装置。
ズリ貯蔵装置30は、ズリ貯蔵機能とズリ移送機能を兼備した装置である。
ズリ貯蔵装置30は、待機エリアA2より坑口側であって、切羽から搬送距離D離間した位置に配置する。
ズリ貯蔵装置30は、ズリ搬送車20が排出するズリを受け入れ可能な受入口31と、破砕装置40の投入口内へズリを吐出可能な吐出口32と、受入口31と吐出口32を接続し、上部に任意の量のズリを貯蔵しつつ、受入口31から吐出口32へ任意の速度でズリを移送可能な移送手段33と、を有する。
本例ではズリ貯蔵装置30として、移送手段33にコンベアを備えたエプロンフィーダーを採用する。
ズリ貯蔵装置30は、クローラ等の自走可能な走行手段34を備えていてもよい。
なお、本例では、ズリ貯蔵装置30の切羽側に、ズリ搬送車20が乗り上げて受入口31内にズリを投入するためのスロープを設置している。
この他、スロープと受入口31の間に、ズリ搬送車20の荷台と受入口31との高低差を解消するための乗り継ぎベルトコンベアを配置してもよい。
【0021】
<4.1>ズリ積込機、ズリ搬送車、及びズリ貯蔵装置の容量の関係。
本発明のズリ搬出システム1は、切羽からズリ貯蔵装置30までのズリの搬送を、ズリ積込機10によらず、ズリ搬送車20によって大ロット搬送することで、ズリの搬送効率を高める。
よって、ズリ搬送車20一台あたりのズリ積載量(ダンプ容量)V2は、ズリ積込機10一台あたりのズリ掬い上げ容量(バケット容量)V1より大きい(V1<V2)。
また、本発明のズリ搬出システム1は、ズリ搬送車20によるズリ搬送効率が、破砕装置40の破砕能力を超過した場合、ズリをズリ貯蔵装置30上に貯蔵しつつ破砕装置40へ適宜のタイミングで移送することで、破砕待ちによるタイムロスを解消する。
よって、ズリ貯蔵装置30のズリ貯蔵容量V3は、ズリ搬送車20一台あたりのズリ積載量(ダンプ容量)V2より大きい(V2<V3)。
以上より、ズリ積込機10のズリ掬い上げ容量V1と、ズリ搬送車20のズリ積載量V2と、ズリ貯蔵装置30のズリ貯蔵容量V3とは、以下の式1の関係を満たす。
V1<V2<V3・・(式1)
【0022】
<5>破砕装置。
破砕装置40は、ズリを破砕する装置である。
破砕装置40は、ズリ貯蔵装置30の吐出口32の坑口側に配置する。
本例では破砕装置40として、ズリ貯蔵装置30の吐出口32から排出されたズリを受け入れる投入口と、投入口から送られたズリを破砕する破砕室と、破砕室で破砕されたズリをベルトコンベア50に搬出するテールと、を備えた移動式のジョークラッシャー(破砕能力300t/h)を採用する。
破砕装置40のその他の構成は公知なのでここでは詳述しない。
【0023】
<6>ベルトコンベア。
ベルトコンベア50は、破砕装置40によって破砕したズリを坑外に搬出する装置である。
ベルトコンベア50は、坑外に向けて連続するベルコン本体51と、切羽の進行に合わせてベルトを延長するためのテールピース台車52と、を有する。
ベルトコンベア50のその他の構成は公知なのでここでは詳述しない。
【0024】
<7>搬送距離。
搬送距離Dは、切羽からズリ貯蔵装置30までの距離である。
ズリ貯蔵装置30は、待機エリアA2の施工装置Mとの干渉を避けるため、待機エリアA2より坑口側に配置する。すると搬送距離Dは概ね200m(退避エリア100m+待機エリア100m)以上となる。
また、搬送距離Dが長すぎる場合、ズリ搬送車20によるズリ搬送待ちのタイムロス(ズリ貯蔵装置30及び破砕装置40の稼働停止)が生じるため、搬送距離Dは、破砕装置による時間当たりズリ破砕量V4と、ズリ搬送車によるズリ貯蔵装置への時間当たりズリ投入量V5、の関係において、以下の式2の関係を満たす必要がある。
V4<V5・・(式2)
【0025】
<8>ズリ搬出方法(
図2)。
本発明のズリ搬出方法は、搭載工程S1と、搬送工程S2と、移送工程S3と、破砕工程S4と、を少なくとも備える。
搭載工程S1では、切羽付近の地盤に堆積したズリを、ズリ積込機10のバケットで掬い上げて、ズリ搬送車20の荷台に搭載する。
搬送工程S2では、ズリを搭載したズリ搬送車20を走行させて、待機エリアA2を通過し、ズリ貯蔵装置30手前のスロープに乗り上げる。続いてズリ搬送車20の荷台をダンプアップして、ズリを受入口31内に投入する。
移送工程S3では、ズリ貯蔵装置30上のズリを、移送手段33によって任意の移送速度で吐出口32へ向けて移送し、吐出口32から破砕装置40内へ吐出する。
移送工程S3における移送速度は、破砕装置40の破砕能力を超えない程度の速度、すなわち破砕装置40の投入口をズリで溢れさせず、かつ破砕装置40の稼働を止めない程度の速度に制御することが望ましい。
破砕工程S4では、破砕装置40でズリを破砕し、ベルトコンベア50上に排出する。
本発明のズリ搬出方法は、ズリ貯蔵装置30内における受入口31から吐出口32へのズリの移送速度を制御することで、破砕装置40の破砕待ちによるズリ搬送車20のタイムロスと、ズリ搬送車20の搬送待ちによる破砕装置40のタイムロスを同時に解消することができる。
【0026】
<9>サイクルタイムの対比(
図3)。
本発明のズリ搬出システム1による施工サイクルを、従来技術と比較する。
ここで、ズリ搬出に係るサイクルタイムは、切羽におけるズリの掬い上げから、ズリ貯蔵装置30(実施例1)又は破砕装置(比較例1、2)への投入までの時間を表す。
実施例1における、切羽からズリ貯蔵装置30までの距離(搬送距離D)は300m、比較例1、2における、切羽から破砕装置までの距離は60mである。
【0027】
<9.1>比較例1、2。
比較例1、2では、切羽のズリをズリ積込機(サイドダンプ)で掬い上げ、そのまま破砕装置(クラッシャ)まで搬送して投入する。
比較例1と比較例2は破砕装置の規格のみが異なる。すなわち比較例1の破砕装置は、実施例1と同じ300tクラッシャであり、比較例2の破砕装置は500tクラッシャである。
比較例1では、サイドダンプによるズリの搬送効率が300tクラッシャの破砕能力を超過するため、10秒/回の破砕待ちタイムロスが生じる。
比較例2では、サイドダンプによるズリの搬送効率が500tクラッシャの破砕能力の範囲内にあるため、ズリの破砕待ち時間は生じない。
【0028】
<9.2>対比分析。
実施例1は、ズリ搬送車20のズリ積載量(14.0m3)がズリ積込機10のズリ掬い上げ容量(2.3m3)の6倍であるため、ズリの積み込み時間が、比較例1、2の6倍である。
また、実施例1は、搬送距離D(300m)が比較例1、2(60m)の5倍であるため、搬送距離Dの往復に係る時間も、比較例1、2の5倍である。
以上より、実施例1では、ズリの搬送に係る時間(180.0秒/回)が比較例1(41.8秒/回)及び比較例2(31.8秒/回)より長い。
一方、ズリをズリ搬送車20によって大ロット輸送することにより、ズリの搬送回数(24.7回)は比較例1、2(150.1回)6分の1程度で済む。
これらの作業を2台のズリ搬送車20で行うことで、サイクルタイムは更に2分の1となる。
また、実施例1では、ズリ搬送車20が搬送したズリを、破砕装置40ではなくズリ貯蔵装置30に投入するため、ズリの破砕待ちによるタイムロスは生じない。
【0029】
<9.3>結論。
以上より、実施例1、比較例1、比較例2におけるズリ処理のサイクルタイムはそれぞれ、37.0分/回、104.6分/回、79.6分/回となる。
結論として、実施例1の場合、ズリ処理に係るサイクルタイムを、比較例1との比較で64%以上削減することができる。また、実施例1より破砕能力の高い500tクラッシャを用いた比較例2との比較でも、サイクルタイムを53%以上削減することができる。