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特開2022-49996熱成形用発泡樹脂積層シート、成形品、及び容器
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022049996
(43)【公開日】2022-03-30
(54)【発明の名称】熱成形用発泡樹脂積層シート、成形品、及び容器
(51)【国際特許分類】
   B32B 5/18 20060101AFI20220323BHJP
   C08L 23/12 20060101ALI20220323BHJP
   C08L 23/04 20060101ALI20220323BHJP
   C08L 53/00 20060101ALI20220323BHJP
   B32B 27/32 20060101ALI20220323BHJP
【FI】
B32B5/18
C08L23/12
C08L23/04
C08L53/00
B32B27/32 E
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020156335
(22)【出願日】2020-09-17
(71)【出願人】
【識別番号】396000422
【氏名又は名称】リスパック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000659
【氏名又は名称】特許業務法人広江アソシエイツ特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】三輪 佳慶
(72)【発明者】
【氏名】中川 満弘
(72)【発明者】
【氏名】市川 浩志
(72)【発明者】
【氏名】陸浦 至
【テーマコード(参考)】
4F100
4J002
【Fターム(参考)】
4F100AK06B
4F100AK07A
4F100AK07B
4F100AL02A
4F100AL02B
4F100BA02
4F100BA03
4F100BA06
4F100BA07
4F100BA10A
4F100BA10B
4F100DJ01A
4F100DJ02A
4F100GB16
4F100JA06A
4F100JA06B
4F100JC00B
4F100YY00A
4F100YY00B
4J002BB03Y
4J002BB04Y
4J002BB12X
4J002BP02W
4J002BP03W
4J002FD010
4J002FD320
4J002GF00
4J002GG01
(57)【要約】
【課題】シート成形性及び外観に優れる熱成形用発泡樹脂積層シート、並びに該シートを成形することにより得られ、外観及び剛性に優れる成形品及び容器を提供する。
【解決手段】本発明の熱成形用発泡樹脂積層シートは、ポリプロピレン系樹脂を主成分とし、発泡層及び非発泡層を含み、前記発泡層は、第1のブロックポリプロピレン樹脂及びホモポリプロピレン樹脂を含み、前記非発泡層は、第2のブロックポリプロピレン樹脂及び低密度ポリエチレン系樹脂を含有する。また、本発明の成形品及び容器は、本発明の熱成形用発泡樹脂積層シートを成形することにより得られる。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
発泡層及び非発泡層を含み、
前記発泡層は、第1のブロックポリプロピレン樹脂及びホモポリプロピレン樹脂を含み、前記非発泡層は、第2のブロックポリプロピレン樹脂及び低密度ポリエチレン系樹脂を含有することを特徴とする、ポリプロピレン系樹脂を主成分とする熱成形用発泡樹脂積層シート。
【請求項2】
前記低密度ポリエチレン系樹脂が植物由来低密度ポリエチレン系樹脂であることを特徴とする、請求項1に記載の積層シート。
【請求項3】
前記発泡層中の樹脂成分全体を100重量%とした場合、前記第1のブロックポリプロピレン樹脂の含有量が50~70重量%であり、且つ前記ホモポリプロピレン樹脂の含有量が50~30重量%であり、
前記非発泡層中の樹脂成分全体を100重量%とした場合、前記第2のブロックポリプロピレン樹脂の含有量が70~90重量%であり、且つ前記低密度ポリエチレン系樹脂の含有量が10~30重量%であることを特徴とする、請求項1又は2に記載の積層シート。
【請求項4】
前記第1のブロックポリプロピレン樹脂のMFR値が1~6g/10分、第2のブロックポリプロピレンのMFR値が8~20g/10分、前記ホモポリプロピレン樹脂のMFR値が50~70g/10分、及び前記低密度ポリエチレン系樹脂のMFR値が3~15g/10分であることを特徴とする、請求項1~3のいずれか1項に記載の積層シート。
【請求項5】
連続気泡率が25%以下であることを特徴とする、請求項1~4のいずれか1項に記載の積層シート。
【請求項6】
前記発泡層の両側に前記非発泡層が積層されていることを特徴とする、請求項1~5のいずれか1項に記載の積層シート。
【請求項7】
請求項1~6のいずれか1項の記載の積層シートを成形して得られる成形品。
【請求項8】
請求項1~6のいずれか1項の記載の積層シートを成形して得られる容器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シート成形性及び外観に優れる熱成形用発泡樹脂積層シート、並びに該シートを成形することにより得られ、外観及び剛性に優れる成形品及び容器に関する。
【背景技術】
【0002】
ポリプロピレン(以下、「PP」という。)系樹脂の発泡シートは、物理的特性に優れることから各種成形品、例えば、飲食品用容器として広く使用されている。例えば、特許文献1には、エチレン-プロピレンブロック共重合体と直鎖低密度ポリエチレンの混合物を機材樹脂とするPP系樹脂発泡体が記載されている。
【0003】
様々な機能を発揮させるために、基材であるPP系樹脂発泡シートに、他の層を積層した積層シートが用いられている。しかし、積層シートを製造するために溶融樹脂を積層する際、溶融混錬物の発泡状態が大きく変化し、その結果、発泡シート内の気泡が大きくなり、あるいは発泡シート内で連続気泡が多く発生し、積層シートの二次加工性に悪影響を与えることが知られている。この点に関し、特許文献2では、発泡シート内の連続気泡率を低くするためのポリオレフィン系樹脂積層発泡シートの製造方法が開示されている。
【0004】
近年、プラスチックが大量に使用、廃棄されるにつれ、その埋め立て処理や焼却処理に伴う問題が問題視されている。プラスチックの燃焼処理は、燃焼時の有害ガスの発生及び大量の燃焼熱量による地球温暖化等の環境負荷を与える原因となっている。かかる環境負荷を低減するために、非石油由来の樹脂材料として、バイオポリエチレンを使用することが知られている。しかし、特許文献3には、バイオポリエチレンに単にポリプロピレンをブレンドしただけでは、得られる成形体の耐久性等に乏しく、落下等によって比較的簡単に破損することが指摘されている。この問題を解決するために、特許文献3には、バイオポリエチレンと、ポリプロピレンと、オレフィン系熱可塑性エラストマー及びαオレフィン系共重合体のうち少なくとも一方からなる樹脂成形体が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特公昭63-67810号公報
【特許文献2】特許第5714807号公報
【特許文献3】特開2013-227462号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記のように、発泡シート内の発泡状態が、積層シートの二次加工性に悪影響を与えることが知られている。そのため、連続気泡率が低く、シート成形性に優れた積層シートが求められている。また、積層シートを成形して得られる成形品を包装用容器として用いるために、積層シート及び成形品は外観及び剛性に優れていることが求められる。
【0007】
本発明は、シート成形性及び外観に優れる熱成形用発泡樹脂積層シート、並びに該シートを成形することにより得られ、外観及び剛性に優れる成形品及び容器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の熱成形用発泡樹脂積層シートは、ポリプロピレン系樹脂を主成分とし、発泡層及び非発泡層を含み、前記発泡層は、第1のブロックポリプロピレン樹脂及びホモポリプロピレン樹脂を含み、前記非発泡層は、第2のブロックポリプロピレン樹脂及び低密度ポリエチレン系樹脂を含有することを特徴とする。
【0009】
本発明の成形品及び容器は、本発明の熱成形用発泡樹脂積層シートを成形することにより得られる。
【発明の効果】
【0010】
本発明の熱成形用発泡樹脂積層シートは、連続気泡率が低く、シート成形性及び外観に優れる。また、本発明の成形品及び容器は、外観及び剛性に優れる。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明の実施の形態について以下に説明する。本実施形態は本発明を実施する一例であって、本発明は本実施形態に限定されるものではない。
【0012】
(1)熱成形用発泡樹脂積層シート
本発明の一実施形態の熱成形用発泡樹脂積層シート(以下、単に「前記積層シート」という。)は、ポリプロピレン(以下、「PP」という。)系樹脂を主成分とし、発泡層及び非発泡層を含み、前記発泡層は、第1のブロックPP樹脂及びホモPP樹脂を含み、前記非発泡層は、第2のブロックPP樹脂及び低密度ポリエチレン(以下、「PE」という。)系樹脂を含有する。
【0013】
前記積層シートは、PP系樹脂を主成分とする。前記PP系樹脂は、前記第1及び第2のブロックPP樹脂及び前記ホモPP樹脂と、任意に含まれる他のPP系樹脂を指す。ここで、「主成分」とは、前記発泡層及び前記非発泡層の両者において、前記PP系樹脂の含有量が、他の樹脂と比べて多いか、又は最も含有量の多い他の樹脂と同量である態様を意味する。より具体的には、「主成分」とは、前記発泡層及び前記非発泡層の両者において、樹脂成分全体を100重量%とした場合、前記PP系樹脂の含有量が50重量%以上、好ましくは60重量%以上含まれることを意味する。
【0014】
前記発泡層は、第1のブロックPP樹脂及びホモPP樹脂を含有する。前記第1のブロックPP樹脂及びホモPP樹脂の含有量には特に限定はなく、必要に応じて適宜選択することができる。例えば、前記発泡層中の樹脂成分全体を100重量%とした場合、前記第1のブロックPP樹脂の含有量を50~80重量%及び前記ホモPP樹脂の含有量を50~20重量%、好ましくは前記ブロックPP樹脂の含有量を50~70重量%及び前記ホモPP樹脂の含有量を50~30重量%とすることができる。
【0015】
前記ホモPP樹脂は、プロピレンの単独重合体である限り、具体的物性には特に限定はない。前記ホモPP樹脂として、例えば、MFR値が50~70g/10分であるホモPP樹脂を用いることができる。
【0016】
第1のブロックPP樹脂は、プロピレンを主成分とする直鎖ポリマーの中に、エチレンを主成分とするポリマー及びエチレン-プロピレン・ゴム状共重合体が分散し、海島構造を形成しているプロピレン-エチレンブロック共重合体である。前記ブロックPP樹脂は通常、ホモポリプロピレンを重合し、引き続きホモポリプロピレンの存在下にプロピレンとエチレンとを共重合することにより得ることができる。前記第1のブロックPP樹脂の具体的物性には特に限定はない。例えば、前記第1のブロックPP樹脂として、MFR値が1~6g/10分であるブロックPP樹脂を用いることができる。尚、本明細書中のMFR値は、JIS K7210:1999の方法に基づいてPP樹脂が測定温度230℃、荷重2.16kg、PE樹脂が測定温度190℃、荷重2.16kgの条件で測定される。
【0017】
前記発泡層は、樹脂成分として、前記第1のブロックPP樹脂及び前記ホモPP樹脂以外の他の樹脂を含んでいてもよい。前記他の樹脂として具体的には、例えば、PP系樹脂以外のポリオレフィン系樹脂(例えば、PE系樹脂)が挙げられる。前記他の樹脂としてPE系樹脂を用いる場合、該PE系樹脂は、非発泡層に含まれる低密度PE系樹脂と同じでもよく、異なるPE系樹脂でもよい。
【0018】
前記PE系樹脂として、非石油由来エチレン、例えば植物由来エチレンの重合(単独重合又は共重合)により得られるPE系樹脂が好ましい。かかる樹脂を用いることにより、燃焼時に化石由来原料のCO発生を抑制することができ、環境負荷を低減することができるので好ましい。植物由来エチレンは、例えば、植物原料(サトウキビ及びトウモロコシ等)から抽出する糖の発酵物又はセルロース発酵物からアルコール成分、特にエチルアルコールを蒸留分離し、その脱水反応により得ることができる。当該植物由来エチレンを通常の重合法により単独で、あるいは他の単量体と共重合することにより、植物由来PE系樹脂を得ることができる。
【0019】
前記植物由来PE系樹脂は、前記植物由来エチレンの重合により得られる限り、具体的構成に特に限定はない。前記PE系樹脂が共重合体の場合、エチレン単位の割合は80重量%以上、90重量%以上、あるいは95重量%以上とすることができる。前記植物由来PE系樹脂として具体的には、例えば、前記植物由来エチレンを単独で重合した低密度ポリエチレン(LDPE;密度0.910~0.930g/cm)、及び植物由来エチレン及びナフサ等の化石原料から精製される1-ブテン、1-ヘキセン等のαオレフィンを共重合した直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE;密度0.910~0.925g/cm)が挙げられる。これらのPEは周知の方法により製造することができる。
【0020】
前記発泡層を形成する方法には特に限定はない。前記発泡層は、公知の方法、例えば、主成分であるPP系樹脂と発泡成分とを溶融混練し、押出発泡することにより形成することができる。溶融混練及び発泡の条件には特に限定はなく、必要に応じて適宜設定することができる。前記発泡成分は、前記PP系樹脂を発泡させることができる限り、その種類に特に限定はない。前記発泡成分として、物理発泡剤(プロパン及びn-ブタン等)及び分解して炭酸ガス等の気体を発生する化学発泡剤(例えば、クエン酸ナトリウム等の有機系化学発泡剤及び炭酸水素ナトリウム等の無機系化学発泡剤)を用いることができる。
【0021】
前記発泡層の発泡倍率には特に限定はない。通常、前記発泡倍率は高くなる程、連続気泡率が高くなるが使用する材料は少なくなる。前記発泡倍率として好ましくは2倍以上、より好ましくは3倍以上である。前記発泡倍率が前記範囲内であると、同じ厚みで樹脂量が少ないため環境負荷を低減すると共に、軽量性及び断熱性に優れた積層シート及び成形品を得ることができるので好ましい。
【0022】
前記積層シートの連続気泡率は通常30%以下、好ましくは25%以下、更に好ましくは20%以下である。前記連続気泡率が前記範囲内であると、積層シートの耐熱性及び耐衝撃性等の機械的強度に優れ、また、シート厚みの変動及び火ぶくれ又はフローマーク発生等の外観形状の悪化を抑制し、更に、成形性を高めることができるので好ましい。前記連続気泡率は、例えば、実施例に記載の方法で算出することができる。
【0023】
前記非発泡層は、第2のブロックPP系樹脂及び低密度PE系樹脂を含有する。前記第2のブロックPP系樹脂及び前記低密度PE系樹脂の含有量には特に限定はなく、必要に応じて適宜選択することができる。前記非発泡層中の樹脂成分全体を100重量%とした場合、前記第2のブロックPP系樹脂の含有量を70~90重量%及び低密度PE系樹脂の含有量を10~30重量%とすることができる。
【0024】
前記第2のブロックPP系樹脂は、前記第1のブロックPP系樹脂と構造又は物性が異なるブロックPP系樹脂である限り、その構造及び物性に特に限定はない。特別な言及がない限り、前記第2のブロックPP系樹脂についての詳細は、前記第1のブロックPP系樹脂の説明が妥当する。前記第2のブロックPP系樹脂として、例えば、前記第1のブロックPP系樹脂とMFR値が異なるブロックPP系樹脂、より具体的には、前記第1のブロックPP系樹脂よりもMFR値が高い(例えば、8~20g/10分)のブロックPP系樹脂を用いることができる。
【0025】
一般的に、低密度PE系樹脂は、エチレンを高温高圧条件で重合することにより得られる。このような条件で重合することにより、エチレンが単純な鎖状に結合せず、多く長鎖分岐及び短鎖分岐を有する。前記低密度PE系樹脂の密度は0.910~0.930の範囲である。前記低密度PE系樹脂は、密度が前記範囲内にある限り、その具体的な構造には特に限定はない。但し、前記低密度PE系樹脂には、直鎖状低密度PE系樹脂は含まれない。直鎖状低密度PE系樹脂は、チーグラー触媒等を用い、エチレンに少量のα-オレフィンを共重合させて製造され、直鎖状の分子骨格と短鎖分岐を有する。前記直鎖状低密度PE系樹脂として具体的には、密度が0.910~0.925であり、且つ分岐鎖の炭素数が8以下、あるいは6以下のPE系樹脂が挙げられる。
【0026】
前記低密度PE系樹脂として具体的には、例えば、MFR値が3~15g/10分である低密度PE系樹脂を用いることができる。
【0027】
前記低密度PE系樹脂として、非石油由来エチレンを重合することにより得られる低密度PE系樹脂、例えば、植物由来エチレンを通常の重合法により単独で、あるいは他の単量体と共重合することにより得られる植物由来の低密度PE系樹脂が好ましい。かかる樹脂を用いることにより、燃焼時に化石由来原料のCO発生を抑制することができるので好ましい。前記植物由来エチレンについては、上記の説明が妥当する。
【0028】
前記非発泡層の厚さには特に限定はなく、必要に応じて適宜設定することができる。前記非発泡層の厚さは通常、前記積層シートの全厚みの0.1~50%、好ましくは0.1~20%である。前記非発泡層の厚さが前記範囲内であると、製造中にコルゲートが顕著となり易い条件下、例えば積層シートが厚くなった場合又は導入発泡材料が多い場合でも、高いコルゲート抑制効果を得ることができ、また、発泡層の気泡成長を抑制する程度が低くなることから、発泡層の高発泡倍率が達成され、シートの軽量性を維持することができるので好ましい。尚、前記非発泡層が2層以上である場合、各非発泡層の厚さの合計が前記範囲内であればよい。
【0029】
前記積層シートにおいて、前記非発泡層は、前記発泡層のいずれの面に設けられていてもよい。例えば、前記非発泡層は、前記発泡層の外側表面に設けることができる。かかる態様により、前記シート及び成形品の外観に優れるので好ましい。この場合、前記非発泡層は、前記発泡層に直接積層されていてもよく、他の層を介して前記発泡層に積層されていてもよい。
【0030】
前記積層シートの層構造は、前記発泡層及び前記非発泡層を含む限り特に限定はない。前記積層シートは、前記発泡層及び非発泡層のみで構成されていてもよく、必要に応じて更に他の層を有していてもよい。また、前記発泡層は1層単独でもよく、組成又は物性が異なる2層以上が積層された多層構造でもよい。同様に、前記非発泡層は1層単独でもよく、組成又は物性が異なる2層以上が積層された多層構造でもよい。
【0031】
前記積層シートの層構造として具体的には、例えば、前記発泡層を前記非発泡層の間に存在させた態様(サンドイッチ構造)が挙げられる。かかる態様により、前記シート及び成形品の外観及び強度に優れることから好ましい。前記サンドイッチ構造において、前記非発泡層は、両方とも前記発泡層に直接積層されていてもよく、あるいは、前記非発泡層のいずれか一方若しくは両方が他の層を介して前記発泡層に積層されていてもよい。また、前記サンドイッチ構造において、前記非発泡層の少なくとも一方を2層以上の多層構造とすることができる。
【0032】
前記積層シートは、成形性を著しく損なわない範囲で、必要に応じて他の成分を含んでいてもよい。前記他の成分として具体的には、例えば、公知の樹脂シートに用いられている添加剤、例えば、難燃剤、紫外線吸収剤、蛍光増白剤、帯電防止剤、防曇剤、滑剤、アンチブロッキング剤、流動性改良剤、可塑剤、分散剤、及び抗菌剤が挙げられる。前記他の成分は、前記発泡層及び非発泡層のいずれか一方に含んでいてもよく、両方に含んでいてもよい。
【0033】
従来の積層シートでは、耐衝撃強度又は耐熱性等の物性の改善のために、有機系又は無機系の充填材が使用されていた。前記積層シートは、かかる充填材、特に無機系充填材を含有してもよく、あるいは含有しなくてもよい。飲食品用容器等の成形品では軽量であることが好ましいところ、充填材を含有しないことにより、積層シート及び成形品の重量を軽減することができるので好ましい。尚、「充填剤を含有しない」は、充填剤を全く含まない態様だけでなく、積層シートの重量に実質的に影響を与えない程度の量を含有する態様、例えば、前記積層シート100重量%中、充填剤を重量0.1重量%以下、好ましくは0.05重量%以下、更に好ましくは0.01重量%以下含有する態様も含む。
【0034】
有機系の充填材として具体的には、例えば、PMMAビーズ、セルロース繊維、ポリアミド繊維、アラミド繊維、ポリエステル繊維、籾殻、木粉、おから、タピオカ粉末、米粉、及びケナフ繊維が挙げられる。また、無機系充填材として具体的には、例えば、タルク、炭酸カルシウム、シリカ、珪藻土、アルミナ、酸化チタン、酸化マグネシウム、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、珪酸カルシウム、ガラスビーズ、ベントナイト、ガラスフレーク、ガラス繊維、カーボンファイバー、アルミニウム粉、硫化モリブデン、ボロン繊維、チタン酸カリウム、チタン酸カルシウム、ハイドロタルサイト、炭素繊維、軽石粉、雲母、リン酸カルシウム、及びリン酸アルミニウムが挙げられる。
【0035】
前記積層シートの具体的形状には特に限定はない。前記樹脂シートの具体的形状は、必要に応じて適宜決定することができる。よって、前記「シート」の用語には、フィルム状も含まれる。本シートの厚みは、例えば、0.1~3mm、あるいは0.5~2mmとすることができる。
【0036】
前記積層シートの具体的用途には特に限定はない。後述のように、前記積層シートは、種々の成形法により、容器等の成形品を得るために用いることができる。
【0037】
前記積層シートは、前記発泡層及び前記非発泡層を積層することができる限り、その製造方法に限定はない。前記積層シートは、共押出法、射出成形法、及び加熱成形等の一般的な積層成形法により製造することができる。共押出法では、任意の短軸押出機及び二軸押出機を使用できる。前記共押出法では、発泡層及び非発泡層をダイスより押し出す直前に、これらの層を溶融状態で積層する方法であれば、具体的手法に限定はない。共押出法として具体的には、例えば、前記発泡層及び前記非発泡層の原料を押出機で溶融混錬した後、ダイス内で積層するマルチマニホールド方式、並びに発泡層及び非発泡層をダイスに流入させる直前に積層するフィードブロック方式(コンバイニングアダプター方式)が挙げられる。前記ダイスは、T型ダイス、コートハンガー型、又は環状ダイスのいずれも使用できる。共押出法において、ダイスより押し出された発泡樹脂積層シートは、公知の方法、例えばポリシングロール、エアーナイフ、又はマンドレル等により冷却固化される。その後、巻き取り機にて巻き取られ、又は裁断機にて所定の寸法にカットされる。
【0038】
前記積層シートの製造において、必要に応じて冷却固化後に後処理をしてもよい。該後処理には特に制限はない。該後処理として具体的には、例えば、コロナ処理、火炎処理、フレーム処理、プラズマ処理等の極性基付与処理工程、コーターロールによる防曇剤又は帯電防止剤等のコーティング工程、フィルム張り合わせ、印刷、及び塗装が挙げられる。特に、フィルム貼合は、二次成形時前に貼合する熱成形前ラミ法、発泡樹脂積層シート成形時の冷却時に貼合する熱ラミ法、一旦発泡樹脂積層シートを冷却した後、再度加熱ロール等で加温して貼合する方法等あるが、いずれの公知の方法によっても貼合することが可能である。貼合するフィルムの種類も、CPPフィルム、及びその印刷フィルム、EVOHなどを積層したフィル等、特に限定はないがポリオレフィン系と接着し易い、貼合面にポリオレフィン系樹脂を配したフィルム、又は塩素化ポリプロピレンや低分子量のポリオレフィンを混合したインク、接着剤等を塗布したフィルムを用いることが好ましい。
【0039】
(2)成形品及び容器
本成形品は、前記積層シートを成形することにより得ることができる。該成形としては通常、熱成形が挙げられる。該熱成形の具体的方法には特に限定はなく、公知の熱成形方法、例えば、熱盤成形、真空成形、圧空成形、真空圧空成形、両面真空成形、プラグ成形、又はプレス成形を用いることができる。また、熱成形の条件も特に限定はない。成形条件は必要に応じて適宜決定することができる。
【0040】
本成形品の形状、寸法、及び具体的用途には特に限定はない。本成形品の用途としては、包装用容器等の容器、例えば、飲食品包装用容器が挙げられる。尚、前記「容器」は、容器全体だけでなく、容器の一部も含む。例えば、前記「容器」には、容器の本体のみならず、容器の蓋体も含まれる。
【実施例0041】
以下、実施例により本発明を具体的に説明する。尚、本発明は、実施例に示す形態に限定されない。本発明の実施形態は、目的及び用途等に応じて、本発明の範囲内で種々変更することができる。
【0042】
1.熱成形用発泡樹脂積層シートの製造
原料として、以下の各成分を用いた。
<高密度ポリエチレン(HDPE)>
「SHC7260」(ブラスケム社製;MFR 7.2g/10分)
<低密度ポリエチレン(LDPE)>
「SBC818」(ブラスケム社製;MFR 8.3g/10分)
<直鎖低密度ポリエチレン(LLDPE)>
「SLH218」(ブラスケム社製;MFR 2.3g/10分)
<ブロックポリプロピレン(BPP)(I)>
「FTS6200」(日本ポリプロ社製;MFR 2.5g/10分)
<ブロックポリプロピレン(BPP)(II)>
「BC3BRFA」(日本ポリプロ社製;MFR 12g/10分)
<ホモポリプロピレン(HPP)>
「SA06GA」(日本ポリプロ社製;MFR 60g/10分)
<発泡核剤>
「ファインセルマスターPO410K」(大日精化工業社製)
<発泡剤>
炭酸ガス
【0043】
発泡層並びに非発泡の中間層及び表層を形成するために、それぞれの押出機に、前記の各原料を表1~3に示す割合でドライブレンドして供給した。各押出機でドライブレンドされた原料を加熱溶融し、溶融混合した樹脂を共押出することにより、実施例及び比較例の積層シート(厚さ:1.5mm、坪量:390g/m、積層構造:表層/中間層/発泡層/中間層/表層)を得た。発泡層の押出機では、押出機の前半で溶融混錬可塑化を行い、次いで押出機の中間部分にて炭酸ガス(発泡剤)を注入して混錬した。尚、前記発泡層の炭酸ガスの注入量は、積層シートの厚みが1.5mmになるように調整した。
【0044】
【表1】
【0045】
【表2】
【0046】
【表3】
【0047】
表1~3において、ポリオレフィン樹脂の配合量は重量%である。また、発泡核剤の配合量は、ポリオレフィン樹脂全体量に対する重量部である。
【0048】
実施例及び比較例の積層シートについて、以下に記載の方法により、性能評価及び測定を行った。その結果を表1~3に併記する。表1~3中、「-」は、積層シートが得られなかったため、性能評価及び測定を実施しなかったことを意味する。
【0049】
(1)発泡倍率(倍)
積層シートから試験片を切り出し、試験片重量(g)を、該試験片の外形寸法から求められる体積(cm)で割って、積層シートの見掛け密度を求めた。更に、ポリプロピレン樹脂の密度(0.91g/cm)を、積層シートの見掛け密度で割ることにより、発泡倍率を算出した。
【0050】
(2)連続気泡率(%)
積層シートからランダムに2cm×2cmのサンプルを5枚切り取り、その重量(浸漬前重量)を測定した。次いで、サンプルを水に浸漬し、0.09MPa以下の真空下で3分間放置した後に取り出した。その後、表面及び断面の付着水分をよく拭き取り、サンプルの重量(浸漬後重量)を測定した。そして、以下の式から連続気泡率(%)を算出した。
F={(M-m)/[m×(f-1)]/S}×100

F;連続気泡率(%)、M;浸漬後重量(g)、m;浸漬前重量(g)、f;発泡倍率、S;積層シートの固体成分の比重
【0051】
(3)坪量(g)
積層シートを100mm×100mmに切り出し、化学天秤を用いて重量(g)を計測した。計測された重量に100を乗じた数値を坪量とした。
【0052】
(4)シート成形性
1.5mm、390g/mの積層シートが得られ、且つ連続気泡率が20%以下のものを「〇」と評価した。一方、1.5mm、390g/mの積層シートが得られなかったものを「×」と評価した。
【0053】
(5)シート外観
実施例及び比較例の各積層シートの表面を目視で観察し、外観全体が良好なものを「〇」、外観の一部又は全体に不良が見られるものを「△」と評価した。
【0054】
2.成形品の製造
真空圧空成形装置(浅野研究所製)を用いて、上ヒーター325℃、下ヒーター290℃の条件で実施例及び比較例の積層シートを真空圧空成形することにより、実施例及び比較例の角型容器(上部;12mm×12mm、開口部;120mmφ、底部;80mmφ、深さ;65mm)を製造した。実施例及び比較例の容器について、以下に記載の方法により、性能評価及び測定を行った。その結果を表1~3に併記する。表1~3中、「-」は、積層シートが得られなかったため、又は成形により容器を製造することができなかったため(比較例2、4、及び5)、性能評価及び測定を実施しなかったことを意味する。
【0055】
(1)容器成形性
真空圧空成形装置を用いて容器を製造する際、問題なく成形できるか、あるいは成形条件を調整することにより成形することができるものを「〇」と評価した。一方、成形条件を調整しても容器を製造することができなかったものを「×」と評価した。
【0056】
(2)容器腰強度(g)
「テンシロン万能試験機RTC-1310A」((株)オリエンテック製)を用いて、容器を短手方向に立てた状態で保持し、容器の長辺側側壁部全体を、幅方向に18mm圧縮し(圧縮速度;400mm/分)、この時の最大応力を腰強度とした。
【0057】
(3)座屈強度(kg)
「オートグラフAGS-X」(島津製作所製)に容器本体を伏せて載置し、容器底面全体にアクリル板を置き、その中心を10mm/分の速度で圧縮し、容器が座屈する強度を測定した。
【0058】
(4)嵌合強度(g)
容器本体に別途熱成形して得られた蓋体(内嵌合蓋:直径;120mmφ、深さ;17mm)を被せ、バネ秤を用いてその押し込み強度を測定し、嵌合強度とした。
【0059】
3.結果
表1より非発泡層である中間層のPE系樹脂として、低密度PE系樹脂を用いた実施例1~9の積層シートは、1.5mmの厚みまで発泡することができ、また、連続気泡率が12%以下と低く、シート成形性に優れている。また、実施例1~9の積層シートの外観には火ぶくれ又はフローマークの発生がほとんど認められず、外観も優れている。また、実施例1~9の積層シートから得られた容器では、腰強度、座屈強度、及び嵌合強度のいずれも大きく、剛性に優れると共に、容器成形性にも優れている。
【0060】
一方、非発泡層である中間層のPE系樹脂として、高密度PE系樹脂を用いた比較例1~9では、シート厚みが1.3mm程度になると、連続気泡率が大きくなり、1.5mmの厚みのシート自体が形成できず(比較例3、6~9)、シートが形成されても連続気泡率が30%以上であるため、シート成形性及び容器成形性に劣り、成形により容器を得ることができなかった。また、非発泡層である中間層のPE系樹脂として、直鎖低密度PE系樹脂を用いた比較例11、12、14~18でも同様に、連続気泡率が大きくなり、1.5mmの厚みのシート自体が形成できなかった。尚、直鎖低密度PE系樹脂を用いた比較例のうち、比較例10及び13の積層シートは連続気泡率が低く、容器の剛性にも優れているが、シートの外観には火ぶくれ又はフローマークの発生が認められたことから、実施例と比較して、外観性が十分でなかった。