(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022050001
(43)【公開日】2022-03-30
(54)【発明の名称】ガラス板の製造方法及びその製造装置。
(51)【国際特許分類】
C03B 5/225 20060101AFI20220323BHJP
C03B 17/06 20060101ALI20220323BHJP
【FI】
C03B5/225
C03B17/06
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020156342
(22)【出願日】2020-09-17
(71)【出願人】
【識別番号】000232243
【氏名又は名称】日本電気硝子株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100107423
【弁理士】
【氏名又は名称】城村 邦彦
(74)【代理人】
【識別番号】100120949
【弁理士】
【氏名又は名称】熊野 剛
(74)【代理人】
【識別番号】100168550
【弁理士】
【氏名又は名称】友廣 真一
(72)【発明者】
【氏名】玉村 周作
(72)【発明者】
【氏名】西村 康宏
(57)【要約】
【課題】清澄管の傾斜の態様を適正にして、清澄管の内圧の増大を防止する事と、清澄管内における溶融ガラス中の泡の停滞を防止する事との両立を図る。
【解決手段】ガラス板の製造装置1が、ガラス原料を加熱して溶融ガラスGmを生成する溶融炉2と、溶融炉2で生成された溶融ガラスGmに清澄処理を施す貴金属製の清澄管5と、清澄処理が施された溶融ガラスGmを用いてガラスリボンGrを成形する成形手段4とを備え、清澄管5が、下流側に移行するに連れて高位置になるように傾斜すると共に、水平軸に対する清澄管5の傾斜角度αが、0.25~5°である。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ガラス原料を加熱して溶融ガラスを生成する溶融工程と、前記溶融工程で生成された溶融ガラスを貴金属製の清澄管に供給して清澄処理を施す清澄工程と、前記清澄工程を経た溶融ガラスを用いてガラスリボンを成形する成形工程とを備えたガラス板の製造方法であって、
前記清澄管が、下流側に移行するに連れて高位置になるように傾斜すると共に、水平軸に対する前記清澄管の傾斜角度が、0.25~5°であることを特徴とするガラス板の製造方法。
【請求項2】
前記清澄管の上流側から下流側に向かう方向の複数箇所に、溶融ガラス中で発生した泡を排出するベント部を設けたことを特徴とする請求項1に記載のガラス板の製造方法。
【請求項3】
前記清澄管が、上流側から下流側に向かう方向で複数の区画領域に区分され、各区画領域に、溶融ガラス中で発生した泡を排出するベント部を設けたことを特徴とする請求項1に記載のガラス板の製造方法。
【請求項4】
ガラス原料を加熱して溶融ガラスを生成する溶融炉と、前記溶融炉で生成された溶融ガラスに清澄処理を施す貴金属製の清澄管と、前記清澄処理が施された溶融ガラスを用いてガラスリボンを成形する成形手段と、を備えたガラス板の製造装置であって、
前記清澄管が、下流側に移行するに連れて高位置になるように傾斜すると共に、水平軸に対する前記清澄管の傾斜角度が、0.25~5°であることを特徴とするガラス板の製造装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ガラス板の製造方法及びその製造装置に係り、詳しくは、清澄管で溶融ガラスに清澄処理を施す工程を含むガラス板の製造方法及びその製造装置に関する。
【背景技術】
【0002】
周知のように、ガラス板は、例えば、ディスプレイ(液晶ディスプレイ、プラズマディスプレイ、有機ELディスプレイ等)及び有機EL照明において、ガラス基板やカバーガラスとして利用されている。
【0003】
この種のガラス板は、一般的に、溶融ガラスを生成する溶融工程、生成後の溶融ガラスに清澄処理を施す清澄工程、清澄処理後の溶融ガラスを攪拌する均質化工程、及び均質化工程後の溶融ガラスを用いてガラスリボンを成形する成形工程等を経て製造される。
【0004】
このガラス板の製造に用いられる装置の具体的な構成は、例えば特許文献1に開示されている。この装置は、上流側から順に、溶融工程を行う溶融炉、清澄処理を行う白金や白金合金等の貴金属製の清澄管(清澄槽)、均質化処理を行う複数(同文献では2個)の攪拌ポット、及び成形工程を行う成形手段等を備えている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、特許文献1に開示された清澄管は、下流側に移行するに連れて高位置になるように傾斜している(同文献の
図1参照)。本発明者等は、鋭意研究を重ねた結果、清澄管をこのように傾斜させるにしても、その傾斜の態様が適正でなければ、以下に示すような問題が生じることを知見した。
【0007】
特許文献1のように水平軸に対する清澄管の傾斜角度が大きいと、清澄管の特に流入口付近の内圧が大きくなり、清澄管に損傷や破損が生じ得ることを知見した。一方、水平軸に対して清澄管を水平にすると、すなわち、清澄管を水平にすると、清澄管内で溶融ガラス中に発生した泡が停滞し、この停滞した泡により清澄管の内面が酸化して多量の貴金属異物(白金ブツ等)が発生し得ることを知見した。
【0008】
以上の観点から、本発明は、清澄管の傾斜の態様を適正にして、清澄管内での泡の停滞を防止する事と、清澄管の内圧の増大を防止する事との両立を図ることを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者等による上記知見に基づいて創案された本発明の第一の側面は、ガラス原料を加熱して溶融ガラスを生成する溶融工程と、前記溶融工程で生成された溶融ガラスを貴金属製の清澄管に供給して清澄処理を施す清澄工程と、前記清澄工程を経た溶融ガラスを用いてガラスリボンを成形する成形工程とを備えたガラス板の製造方法であって、前記清澄管が、下流側に移行するに連れて高位置になるように傾斜すると共に、水平軸に対する前記清澄管の傾斜角度が、0.25~5°であることに特徴づけられる。
【0010】
このような構成によれば、清澄管が下流側に移行するに連れて高位置になるように傾斜しているだけでなく、水平軸に対する清澄管の傾斜角度が、0.25~5°とされていることで、以下に示すような利点が得られる。すなわち、清澄管の当該傾斜角度が0.25°以上であると、清澄管内の溶融ガラス中で発生した泡は下流側に向かって円滑に移動する。したがって、清澄管内に許容しがたい量の泡が残存する事態を回避できる。これに対して、清澄管の当該傾斜角度が0.25°未満であると、清澄管内で泡が停滞し、この停滞した泡により清澄管の内面が酸化して多量の貴金属異物(白金ブツ等)が発生する事態を招く。そのため、製造されるガラス板の品質低下さらには製品歩留まりの低下を招く。本発明では、清澄管内で泡が停滞する事態を回避できるため、このような不具合は生じ難い。しかも、本発明では、清澄管の当該傾斜角度が5°以下であるため、清澄管の特に流入口付近の内圧が増大せず、清澄管の損傷や破損が生じ難くなる。これにより、清澄管の耐久性が向上する。これに対して、清澄管の当該傾斜角度が5°を超えると、清澄管の特に流入口付近の内圧が増大し、清澄管に損傷や破損が生じ易くなる。以上の事情から、本発明によれば、清澄管内での泡の停滞を防止する事と、清澄管の内圧の増大を防止する事との両立を図ることができる。このような事情を勘案すれば、清澄管の当該傾斜角度の下限値は0.5°であることがより好ましい。また、その上限値は2°であることがより好ましい。
【0011】
この構成において、前記清澄管における上流側から下流側に向かう方向の複数箇所に、溶融ガラス中で発生した泡を排出するベント部を設けるようにしてもよい。
【0012】
このようにすれば、清澄管内からの泡の排出を確実に行うことができる。すなわち、清澄管内での泡の量が過多である場合に一つのベント部から排出しようとすると、ベント部に泡が継続的又は断続的に到達することにより、ベント部の周辺における清澄管の内面が継続的又は断続的にガスに曝されて酸化するおそれがある。複数のベント部を設ければ、一つのベント部から排出される泡の量が減少するので、ベント部に間欠的に泡が到達することとなる。このため、ベント部の周辺における清澄管の内面がガスに曝される時間を低減でき、酸化の懸念を払拭できる。
【0013】
この構成に代えて、前記清澄管が、上流側から下流側に向かう方向で複数の区画領域に区分され、各区画領域に、溶融ガラス中で発生した泡を排出するベント部を設けるようにしてもよい。ここで、区画領域とは、例えば個々に温度調整(通電加熱等による)を行うために区画された領域をいう。
【0014】
このようにすれば、各区画領域において発生する泡を排出できるので、一つのベント部から排出される泡の量が適正となる。このため、ベント部の周辺における清澄管の内面がガスに曝される時間をより確実に低減でき、酸化の懸念をより確実に払拭できる。
【0015】
本発明者等による上記知見に基づいて創案された本発明の第二の側面は、ガラス原料を加熱して溶融ガラスを生成する溶融炉と、前記溶融炉で生成された溶融ガラスに清澄処理を施す貴金属製の清澄管と、前記清澄処理が施された溶融ガラスを用いてガラスリボンを成形する成形手段と、を備えたガラス板の製造装置であって、前記清澄管が、下流側に移行するに連れて高位置になるように傾斜すると共に、水平軸に対する前記清澄管の傾斜角度が、0.25~5°であることに特徴づけられる。
【0016】
この製造装置によれば、該製造装置と実質的に構成が同一である既述の製造方法と同一の作用効果を得ることができる。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、清澄管の傾斜の態様が適正化され、清澄管内の溶融ガラス中に発生する泡の停滞を防止する事と、清澄管の内圧の増大を防止する事との両立が図られる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】本発明の実施形態に係るガラス板の製造装置の全体構成を示す概略正面図である。
【
図2】本発明の実施形態に係るガラス板の製造方法を説明するためのフローチャートである。
【
図3】本発明の第一実施形態に係るガラス板の製造方法及びその製造装置の主たる構成要素である清澄管を示す縦断正面図である。
【
図4】
図3のA―A線に従って切断した縦断側面図である。
【
図5】本発明の第二実施形態に係るガラス板の製造方法及びその製造装置の主たる構成要素である清澄管を示す縦断正面図である。
【
図6】本発明の第三実施形態に係るガラス板の製造方法及びその製造装置の主たる構成要素である清澄管を示す縦断正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の実施形態に係るガラス板の製造方法及びその製造装置について添付図面を参照しつつ説明する。
【0020】
図1は、本発明に係るガラス板の製造方法を実施するための製造装置を例示している。同図に示すように、この製造装置1は、大別すると、上流端に配備されてガラス原料を加熱して溶融ガラスGmを生成する溶融炉2と、溶融炉2から流出した溶融ガラスGmを下流側に向かって移送する移送装置3と、移送装置3から供給される溶融ガラスGmを用いてガラスリボンGrを成形する成形手段4とを備える。
【0021】
移送装置3は、上流側から順に、清澄管(清澄槽)5と、攪拌ポット(攪拌槽)6と、状態調整ポット(状態調整槽)7とを有する。清澄管5の流入口5aは、第一接続パイプ8を介して溶融炉2の流出口2bに通じている。清澄管5の流出口5bは、第二接続パイプ9を介して攪拌ポット6の流入口6aに通じている。攪拌ポット6の流出口6bは、冷却パイプ10を介して状態調整ポット7の流入口7aに通じている。
【0022】
清澄管5は、溶融炉2で生成された溶融ガラスGmに清澄処理を施すものである。攪拌ポット6は、清澄処理を施された溶融ガラスGmを攪拌して均質化処理を施すものである。状態調整ポット7は、均質化処理が施された溶融ガラスGmの粘度や流量の調整を行うものである。なお、攪拌ポット6は、移送装置3の上流側から下流側に向かう方向(以下、移送方向という)に複数個を並列に設けるようにしてもよい。
【0023】
成形手段4は、オーバーフローダウンドロー法により溶融ガラスGmを流下させて帯状に成形する成形体11と、成形体11に溶融ガラスGmを導く大径の導入パイプ12とを有する。導入パイプ12には、移送装置3の状態調整ポット7から小径のパイプ13を経て溶融ガラスGmが供給される。
【0024】
次に、上記構成からなる製造装置1を用いてガラス板を製造する方法について説明する。
図2に示すように、ガラス板の製造方法は、大別すると、溶融工程S1と、清澄工程S2と、成形工程S3とを備える。
【0025】
溶融工程S1は、溶融炉2でガラス原料を加熱して溶融ガラスGmを生成する工程である。清澄工程S2は、溶融工程S1で生成された溶融ガラスGmを清澄管5に供給して清澄処理を施す工程である。成形工程S3は、清澄工程を経た溶融ガラスGmを用いてガラスリボンGrを成形する工程である。
【0026】
上記構成を備えたガラス板の製造装置1及びその製造方法の特徴として、
図1に示すように、清澄管5が、下流側に移行するに連れて高位置になるように傾斜し、且つ、水平軸に対する清澄管5の傾斜角度αが、0.25°~5°とされている。清澄管5の傾斜角度αは、水平軸に対する第一接続パイプ8の傾斜角度βよりも小さくされている。清澄管5は、白金または白金合金等の貴金属で形成されている。なお、第一接続パイプ8、第二接続パイプ9、攪拌ポット6、冷却パイプ10、状態調整ポット7、小径のパイプ13、及び導入パイプ12も、白金または白金合金等の貴金属で形成されている。
【0027】
[第一実施形態]
図3は、本発明の第一実施形態に係るガラス板の製造装置1及びその製造方法の主たる構成要素である清澄管5を示す縦断正面図であり、
図4は、
図3のA―A線に従って切断した縦断側面図である。
図3に示すように、清澄管5は、既述の角度αで傾斜する筒状部5pと、筒状部5pの移送方向両端に形成された一対のフランジ部5fと、一対のフランジ部5fの外周部(本実施形態では上部)にそれぞれ一体形成された電極部5eとを備える。清澄管5は、電極部5eに電圧を印加することで通電加熱される。そして、電極部5eに印加する電圧を変更することで、清澄管5内の溶融ガラスGmの温度調整が行われる。清澄管5内には、気相空間が形成されることなく、溶融ガラスGmが充満している。清澄管5内の溶融ガラスGmは、例えば1450℃~1650℃に加熱されている。この溶融ガラスGm中には泡Buが含まれており、清澄管5の下流側端部における上部には泡Buを排出するベント部14が設けられている。
【0028】
さらに、清澄管5内には、移送方向の複数箇所(図例では四箇所)に仕切り板15が配設されている。仕切り板15は、
図4に示すように、筒状部5pの内面5iに固定された環状部材であって、この環状部材15の上部には欠落部15xが設けられている。清澄管5内における溶融ガラスGm中の泡Buは、この欠落部15xを通過して下流側に向かって移動した後、ベント部14から排出されるようになっている。
【0029】
詳述すると、清澄管5の傾斜角度αは0.25°以上であるため、清澄管5内の溶融ガラスGm中で発生して浮上した泡Buは、停滞することなく、
図3に矢印で示すように、筒状部5pの内面5iの上部に接触しながら下流側に向かって円滑に移動する。例えば、傾斜角度αが0.25°である場合、泡Buは0.1m/hで移動し、傾斜角度αが0.5°である場合、泡Buは0.4m/hで移動し、傾斜角度αが1°である場合、泡Buは1.5m/hで移動する。この移動した泡Buは、その全てもしくは略全てが、同図に矢印aで示すようにベント部14から排出される。したがって、清澄管5内に泡Buが停滞してガス溜まりが発生する事態を回避できる。これに対して、清澄管5の傾斜角度αが0.25°未満であると、泡Buの移動速度が不足し、清澄管5内で泡Buが停滞する。例えば、傾斜角度αが0°である場合、泡Buは略同じ位置に留まって停滞するので、泡の移動速度は約0m/hとなる。この停滞した泡Buにより形成されるガス溜まりで筒状部5pの内面5iの上部が酸化して多量の貴金属異物(白金ブツ等)が発生する。そのため、製造されるガラス板の品質低下さらには製品歩留まりの低下を招く。本実施形態における清澄管5内では、泡Buが停滞する事態を回避できるため、このような不具合は生じ難い。
【0030】
しかも、本実施形態における清澄管5の傾斜角度αは5°以下であるため、清澄管5の特に流入口5a付近の内圧が増大せず、清澄管5の損傷や破損が生じ難くなる。これにより、清澄管5の耐久性が向上する。これに対して、清澄管の傾斜角度αが5°を超えると、清澄管5の特に流入口5a付近の内圧が増大し、清澄管5に損傷や破損が生じ易くなる。
【0031】
以上の事情から、本実施形態に係るガラス板の製造装置1及びその製造方法によれば、清澄管5内での泡Buの停滞を防止する事と、清澄管5の内圧の増大を防止する事との両立を図ることができる。このような事情を勘案すれば、清澄管5の傾斜角度αの下限値は0.5°であることがより好ましい。また、その上限値は2°であることがより好ましい。
【0032】
[第二実施形態]
図5は、本発明の第二実施形態に係るガラス板の製造装置1及びその製造方法の主たる構成要素である清澄管5を示す縦断正面図である。この第二実施形態における清澄管5が、上述の第一実施形態における清澄管5と相違している点は、清澄管5の移送方向の複数箇所(図例では二箇所)にベント部14を設けたところにある。なお、複数のベント部14のうちの一つのベント部14は、清澄管5の下流側端部に設けられている。
【0033】
泡Buの量が過多である場合、
図3のような一つのベント部14から排出しようとすると、ベント部14に泡Buが継続的又は断続的に到達することにより、ベント部14の周辺における清澄管5の内面が継続的又は断続的にガスに曝されて酸化するおそれがある。このように泡Buの量が過多である場合であっても、
図5の第二実施形態のように複数のベント部14を設ければ、一つのベント部14から排出される泡Buの量が減少するので、ベント部14に間欠的に泡Buが到達することとなる。このため、ベント部14の周辺における清澄管5の内面がガスに曝される時間を低減でき、酸化の懸念を払拭できる。その他の構成及び作用効果は、上述の第一実施形態と同一であるため、両実施形態に共通の構成要素については
図5に同一符号を付し、その説明を省略する。
【0034】
[第三実施形態]
図6は、本発明の第三実施形態に係るガラス板の製造装置1及びその製造方法の主たる構成要素である清澄管5を示す縦断正面図である。この第三実施形態における清澄管5が、上述の第二実施形態における清澄管5と相違している点は、清澄管5が上流側の第一管体5B1と下流側の第二管体5B2とから構成されているところにある。第一管体5B1は、第一筒状部5p1と、第一筒状部5p1の移送方向両端に形成された一対の第一フランジ部5f1と、これらフランジ部5f1の上部に一体形成された一対の第一電極部5e1とを備えている。第二管体5B2は、第二筒状部5p2と、第二筒状部5p2の移送方向両端に形成された一対の第二フランジ部5f2と、これら一対の第二フランジ部5f2の上部に一体形成された一対の第二電極部5e2とを備えている。なお、移送方向で隣り合う第一フランジ部5f1及び第二フランジ部5f2の相互間には、環状の絶縁部材16が介設されている。なお、図示しないが、第一管体5B1の上流端の第一フランジ部5f1と第一接続パイプ8の下流端のフランジ部8fとの間、及び、第二管体5B2の下流端の第二フランジ部5f2と第二接続パイプ9の上流端のフランジ部9fとの間にも、環状の絶縁部材が介設されている。さらに、第一筒状部5p1の下流側端部と、第二筒状部5p2の下流側端部とには、ベント部14がそれぞれ設けられている。したがって、この第三実施形態では、清澄管5が、第一管体である第一区画領域5B1と、第二管体である第二区画領域5B2とに区分され、それらの領域5B1、5B2ごとに通電加熱が行われると共に、それらの領域5B1、5B2ごとに溶融ガラスGm中の泡Buが各ベント部14から排出されるようになっている。その他の構成及び作用効果は、上述の第二実施形態と同一であるため、両実施形態に共通の構成要素については
図6に同一符号を付し、その説明を省略する。なお、この第三実施形態では、清澄管5が第一区画領域5B1と第二区画領域5B2との二つに区分されているが、三つ以上の複数の区画領域に区分されていてもよい。この場合には、三つ以上の複数の区画領域ごとにベント部を設けるようにしてもよいが、少なくとも最も下流側の区画領域、もしくは最も下流側の区画領域のみにベント部を設けるようにしてもよい。
【0035】
以上、本発明の実施形態に係るガラス板の製造方法及び製造装置1について説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々のバリエーションが可能である。
【0036】
例えば、以上の実施形態では、仕切り板15は、清澄管5の筒状部5pの補強を主目的とするが、仕切り板15の一部又は全部に代えて、溶融ガラスGmの撹拌を主目的とする仕切り板を用いてもよい。
【符号の説明】
【0037】
1 ガラス板の製造装置
2 溶融炉
3 移送装置
4 成形手段
5 清澄管
5B1 第一区画領域
5B2 第二区画領域
5Ba 上流区画領域
5Bb 下流区画領域
5Bc 上流区画領域
14 ベント部
Bu 泡
Gm 溶融ガラス
Gr ガラスリボン
S1 溶融工程
S2 清澄工程
S3 成形工程
α 傾斜角度