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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022050049
(43)【公開日】2022-03-30
(54)【発明の名称】ヘリコプター
(51)【国際特許分類】
   B64C 27/82 20060101AFI20220323BHJP
   B64C 27/04 20060101ALI20220323BHJP
   B64D 29/00 20060101ALI20220323BHJP
【FI】
B64C27/82
B64C27/04
B64D29/00
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020156412
(22)【出願日】2020-09-17
(71)【出願人】
【識別番号】515229125
【氏名又は名称】伊藤 彰
(74)【代理人】
【識別番号】100076831
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 捷雄
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 彰
(57)【要約】      (修正有)
【課題】メインローターの吹き下ろしによって揺れ動く樹木等の地上物体がテールローターに接触してテールローターが破損する可能性を効果的に減らすことができるヘリコプターを提供する。
【解決手段】機体の上方で回転するメインローターと、機体の後端部で回転して前記メインローターの回転方向と反対方向の前記機体の回転を抑制するテールローターと、前記テールローターの回転面及び外周を一体に覆って前記テールローターに接近する地上物体を押し退けることが可能なカバー部材と、を有する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
機体の上方で回転するメインローターと、
機体の後端部で回転して前記メインローターの回転方向と反対方向の前記機体の回転を抑制するテールローターと、
前記テールローターの回転面及び外周を一体に覆って前記テールローターに接近する地上物体を押し退けることが可能なカバー部材と、を有することを特徴とするヘリコプター。
【請求項2】
前記カバー部材は、前記テールローターの外周を環状に覆ってダクトを形成するダクト部材を有することを特徴とする請求項1に記載のヘリコプター。
【請求項3】
補助翼及び垂直尾翼が前記ダクト部材に設けられていることを特徴とする請求項2に記載のヘリコプター。
【請求項4】
前記カバー部材は、格子を外側に向かって凸なドーム型に成形したドーム部の外周の縁に連結用フランジが接続されたドーム部材を有することを特徴とする請求項1のヘリコプター。
【請求項5】
前記カバー部材は、金網を外側に向かって凸なドーム型に成形したドーム部の外周の縁に連結用フランジが接続されたドーム部材を有することを特徴とする請求項1のヘリコプター。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、テールローターに接近する地上物体を押し退けることが可能なカバー部材をテールローターの回転面及び外周を一体に覆って設けたヘリコプターに関する。
【背景技術】
【0002】
ヘリコプターは、エンジンを搭載して操縦席を設けられた機体の上方にメインローターを配置し、機体の後端部にテールローターを配置している。テールローターは、その回転に伴って水平方向の推力を機体に作用して、メインローターの回転に伴って機体に作用するメインローターの回転方向と反対方向のトルクを打ち消して、機体の回転を抑制する。
【0003】
特許文献1に記載されるように、ヘリコプターの飛行中やホバリング中にテールローターが破損すると、機体の操縦が困難になって墜落事故に至る場合がある。特許文献2に記載されるヘリコプターは、テールローターの外周を覆って環状(円筒状)のダクトを設けているため、ヘリコプターの飛行中やホバリング中に、テールローターに鳥や樹木等の地上物体が接触し難くなっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平6-312699号公報
【特許文献2】特開2016-165998号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
山岳救助活動や山間地の荷揚げげに使用されるヘリコプターは、山岳斜面の木々の枝に近接した位置でホバリングしたり、上昇/下降したり、着陸/離陸したりする場合がある。
【0006】
このとき、メインローターの吹き下ろしによって地上の樹木の枝が大きく揺動して、枝先がテールローターに接触する可能性がある。そして、高速で回転するテールローターに太い枝が接触すると、テールローターが破損することがある。
【0007】
特許文献2に記載された環状(円筒状)のダクトは、このような場合に、樹木の枝先がテールローターに接近したり、接触したりする可能性を減らすことができる。が、テールローターに接近する枝先を押し退けることはできない。
【0008】
本発明は、メインローターの吹き下ろしによって揺れ動く樹木等の地上物体がテールローターに接触してテールローターが破損する可能性を効果的に減らすことができるヘリコプターを提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の目的を達成するために本発明のヘリコプターは、機体の上方で回転するメインローターと、機体の後端部で回転して前記メインローターの回転方向と反対方向の前記機体の回転を抑制するテールローターと、前記テールローターの回転面及び外周を一体に覆って前記テールローターに接近する地上物体を押し退けることが可能なカバー部材と、を有することを特徴とする。
【0010】
そして、請求項2の発明は、前記カバー部材は、前記テールローターの外周を環状に覆ってダクトを形成するダクト部材を有することを特徴とする。
【0011】
そして、請求項3の発明は、補助翼及び垂直尾翼が前記ダクト部材に設けられていることを特徴とする。
【0012】
そして、請求項4の発明は、前記カバー部材は、格子を外側に向かって凸なドーム型に成形したドーム部の外周の縁に連結用フランジが接続されたドーム部材を有することを特徴とする。
【0013】
そして、請求項5の発明は、前記カバー部材は、金網を外側に向かって凸なドーム型に成形したドーム部の外周の縁に連結用フランジが接続されたドーム部材を有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0014】
本発明のヘリコプターによれば、メインローターの吹き下ろしによって揺れ動く樹木等の地上物体がテールローターに接近した際に、カバー部材がバンパーのように物体を押し退けて、或いはカバー部材が地上物体から押し退けられて、結果的に地上物体がテールローターへ接触することを阻止する。このため、地上物体がテールローターに接触してテールローターが破損する可能性を効果的に減らすことができる。
【0015】
請求項2のヘリコプターによれば、ダクト部材によって強度の高い、したがって地上物体の押し退け効果が高いカバー部材を形成することができる。
【0016】
請求項3のヘリコプターによれば、テールローターと機体の本体との間に補助翼及び垂直尾翼を設ける必要が無いため、ヘリコプターの機体の長さを小さくして機体を中心とするテールローターの回転範囲を狭くすることができる。
【0017】
請求項4、5のヘリコプターによれば、ドーム部材がアーチ型に強度を高められた面で地上物体に接触するので、テールローターの気流に対する抵抗が低くて地上物体との接触に強い強固なカバー部材が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】実施の形態1のヘリコプターの構成の説明図であって、カバー部材を機体の後端部に固定したヘリコプターの側面図である。
図2】実施の形態1のヘリコプターの構成の説明図であって、カバー部材を機体の後端部に固定したヘリコプターの平面図である。
図3図1のカバー部材の構成の説明図であって、(a)は平面図、(b)は側面図である。
図4】実施の形態2のヘリコプターの構成の説明図であって、ダクト部材を有するカバー部材を設けたヘリコプターの側面図である。
図5】実施の形態2のヘリコプターの構成の説明図であって、ダクト部材を有するカバー部材を設けたヘリコプターの平面図である。
図6図4のカバー部材の構成の説明図であって、(a)は平面図、(b)は側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、添付した図面を参照して、本発明のヘリコプターの実施の形態を詳細に説明する。
【0020】
<実施の形態1>
図1に示すように、実施の形態1のヘリコプター1の機体2は、本体2aの後側にテールブーム2dが設けられている。機体2は、本体の2aの上方に2枚のローター3b、3bを有するメインローター3が設けられ、機体2の後端部、テールブーム2dの先端に2枚のローター6b、6bを有するテールローター6が設けられている。
【0021】
本体2aの先頭側に操縦席2cが設けられ、操縦席2cからは、フロントウインドウ2eを通じた正面側の広い視野が確保されている。本体2aの側面に出入口2bが設けられ、ドア2fによって開閉可能に覆われている。本体2aの下面に着陸用のスキッド5が設けられている。スキッド5は、車輪を設けた引き込み脚等に置き換えてもよい。
【0022】
ヘリコプター1は、本体2aの上空でメインローター3を回転して発生させた揚力F1、F1を利用して機体2を空中に浮揚させて上昇及び下降させる。メインローター3が回転すると、メインローター3の流線型の断面に沿って空気が流れて、メインローター3の断面に揚力F1、F1が発生する。メインローター3が回転して発生した揚力F1、F1によってメインローター3が上昇し、シャフト3aを介して機体2が空中へ持ち上げられる。
【0023】
ヘリコプター1は、メインローター3を傾けることにより、メインローター3の揚力F1、F1の一部を推進力として利用して、水平方向の飛行速度や飛行方向を制御している。このため、メインローター3のシャフト3aの周辺は、メインローター3を制御するための複雑な機構を含んでいるが、ここでは、簡略化して図示した。
【0024】
ヘリコプター1は、メインローター3の直径の外側に位置させて、テールブーム2dの先端側にテールローター6を設けている。テールローター6は、後述するように、メインローター3の回転に伴って機体2に作用する水平面内のトルクを打ち消すために装備されている。
【0025】
ヘリコプター1の駆動機構4は、本体2aの後側にエンジン4aを格納している。エンジン4aの駆動力は、メインギヤボックス4bを経由し、テールギヤボックス4cで分岐してシャフト3a及びテールドライブシャフト4dに伝達される。エンジン4aの駆動力は、その大部分がシャフト3aを経由してメインローター3に伝達され、残りの部分がテールドライブシャフト4d、ローターギヤボックス4eを経由してテールローター6に伝達される。
【0026】
実施の形態1では、メインローター3及びテールローター6の速度比は一定であって、エンジン4aの回転数が一定に制御されるとき、メインローター3及びテールローター6の回転数はそれぞれ一定となる。このため、テールローター6は、傾き角度(ピッチ)を調整することにより、揚力F1、F1と推力F2、F2のバランスを変更させて、操縦者の意図する飛行状態を保っている。
【0027】
なお、テールローター6の駆動は、メインローター3の駆動から独立させて、別のエンジン又はモーターで行ってもよい。テールローター6の制御は、機体2の回転を検知して自動的にテールローター6の回転速度を変化させて推力F2、F2を調整する自動制御としてもよい。
【0028】
補助翼7は、断面形状が流線型の翼型であって、テールブーム2dの両側面から突出させて設けられている。補助翼7は、気流に対する断面の迎え角度を調整可能であって、ヘリコプター1の前進中に揚力を発生して機体2を持ち上げ、メインローター3で発生させる揚力F1の負担を軽減している。一方、垂直尾翼8は、断面形状が流線型の翼型であって、実施の形態1では垂直安定板のみの垂直尾翼8となっており、テールブーム2dの上下面から突出させて設けられている。垂直尾翼8は、飛行中のヘリコプター1の機体2の空中姿勢を安定させる。
【0029】
図2に示すように、メインローター3が矢印R1方向に回転すると、メインローター3の反力により、機体2には、メインローター3の回転面と平行な面内で機体2を矢印R2方向に回転させようとする回転力が作用する。機体2の矢印R2方向の回転を止めるために、テールブーム2dの後端側にテールローター6を設けている。テールローター6は、テールドライブシャフト4dの回転をローターギヤボックス4eで90度方向転換してテールローター6を垂直な回転面で回転させる。これにより、機体2の矢印R2方向と反対方向の推力F2、F2を発生させている。テールローター6による水平方向の推力F2、F2は、メインローター3の回転に伴って機体2に作用する矢印R2方向(水平方向)のトルクを打ち消して、機体2の回転を抑制する。
【0030】
ところで、テールローター6は、操縦席2cから後方へ大きく離れた位置で回転しているので、機体2が回転した際に操縦席2cから見えない位置で樹木等の地上物体に接触する可能性がある。そこで、実施の形態1では、テールローター6にカバー部材10を設けている。カバー部材10は、テールローター6の回転面の両側及び外周を一体に覆って、テールローター6に接近する地上物体をバンパーのように押圧して押しのけることが可能である。
【0031】
図3(a)に示すように、カバー部材10は、テールブーム2dにドーム部材12を取り付けた後に、ローターギヤボックス4eのシャフト6aをテールローター6の駆動ジョイント6cに連結し、その後、ドーム部材12にドーム部材11を連結して組み立てられている。
【0032】
ドーム部材12の内側には取付板12cが固定されている。取付板12cの孔6dにローターギヤボックス4eのシャフト6aが挿入される。ドーム部材12は、取付板12cの孔12eにねじ12dを挿入してテールブーム2dの雌ねじ12fに締め付けることにより、テールブーム2dに取り付けられる。
【0033】
ドーム部材12は、ドーム型に成形されたアルミニウムパイプの格子の上にステンレスの金網を被せて一体のドーム部12aを形成し、ドーム部12aの外周の縁に連結用フランジ12bが接続されている。
【0034】
ドーム部材11は、ドーム型に成形されたアルミニウムパイプの格子の上にステンレスの金網を重ねて一体のドーム部11aを形成し、ドーム部11aの外周の縁に連結用フランジ11bが接続されている。
【0035】
ドーム部材11は、連結用フランジ11bの孔11eにねじ11dを挿入し、連結用フランジ12bの雌ねじ11fに締め付けることにより、ドーム部材12に連結されている。
【0036】
<実施の形態2>
実施の形態1では、図1に示すように、補助翼7及び垂直尾翼8は、メインローター3が形成する吹き下ろし(ダウンウォッシュ)の影響を軽減するために、メインローター3とカバー部材10の間に設けられている。
【0037】
これに対して、実施の形態2では、図4に示すように、補助翼17及び垂直尾翼18は、メインローター3が形成する吹き下ろし(ダウンウォッシュ)の影響を軽減するために、カバー部材20の上に設けられている。
【0038】
実施の形態2は、補助翼17、垂直尾翼18、及びカバー部材20以外は、実施の形態1と同様に構成されているため、図4、5中、実施の形態1と共通する構成には図1、2と共通の符号を付して重複する説明を省略する。
【0039】
図4図5に示すように、実施の形態2では、テールローター6にカバー部材20を設けている。カバー部材20は、テールローター6の外周を環状に覆ってダクトを形成するダクト部材23と、ダクト部材23の両端に連結されてテールローター6の回転面の両側を覆うドーム部材21、22と、を有する。このため、カバー部材20は、テールローター6の回転面の両側及び外周を一体に覆って、テールローター6に接近する地上物体をバンパーのように押圧して押しのけることが可能である。
【0040】
図6(a)、(b)に示すように、テールブーム2dの後端に円筒状のダクト部材23が固定されている。実施の形態2では、エンジンから独立した駆動モーター19によってテールローター6が駆動されている。駆動モーター19は、環状のフランジに十字型のフレームを連結したモーター取付部材24の中心に固定され、駆動モーター19のシャフト6aにテールローター6が連結されている。
【0041】
カバー部材20は、ダクト部材23の一端(背面側)にモーター取付部材24及びドーム部材22を取り付けた後に、ダクト部材23の他端(正面側)にドーム部材21を連結して組み立てられている。
【0042】
ドーム部材22は、ドーム型に成形されたアルミニウムパイプの格子の上にステンレスの金網を被せて一体のドーム部22aを形成し、ドーム部22aの外周の縁に連結用フランジ22bが接続されている。
【0043】
ドーム部材21は、ドーム型に成形されたアルミニウムパイプの格子の上にステンレスの金網を重ねて一体のドーム部21aを形成し、ドーム部21aの外周の縁に連結用フランジ21bが接続されている。
【0044】
ドーム部材22及びモーター取付部材24は、連結用フランジ22bの孔22e及びモーター取付部材24の孔24eにねじ22dを挿入してダクト部材23の雌ねじ23fに締め付けることにより、ダクト部材23に連結されている。
【0045】
ドーム部材21は、連結用フランジ21bの孔21eねじ21dを挿入してダクト部材23の雌ねじ23fに締め付けることにより、ダクト部材23に連結されている。
【0046】
実施の形態2では、補助翼17及び垂直尾翼18がダクト部材23に設けられているので、図1に示す実施の形態1よりもヘリコプターの全長を短く設計して、狭い場所でも着陸や荷揚げが可能なヘリコプターを提供することができる。
【産業上の利用可能性】
【0047】
本発明のヘリコプターは、テールローターに接近する樹木の枝等をカバー部材によって押し退けることが可能であるから、テールローターに樹木の枝等を巻き込んでテールローターを破損する可能性が低くなる。したがって、山岳救助や被災地救助に伴うヘリコプターの遭難事故が少なくなって、救助作業環境の選択幅が広くなり、救助作業の能率を高めることができる。
【0048】
本発明のヘリコプターは、上述した実施の形態には限らない。カバー部材は、格子のみで形成してもよく、金網のみで形成してもよい。カバー部材の組み立てはねじには限らない。ワンタッチの留め金や溶接で組み立てられてもよい。
【符号の説明】
【0049】
1 ヘリコプター
2 機体
2a 本体
2b 出入口
2c 操縦席
2d テールブーム
2e フロントウインドウ
2f ドア
3 メインローター
3a シャフト
3b ローター
4 駆動機構
4a エンジン
5 スキッド
6 テールローター
6a シャフト
6b ローター
6c 駆動ジョイント
6d 孔
10、20 カバー部材
11、12 ドーム部材
11a、12a ドーム部
12c 取付板
11b、12b 連結用フランジ
11d、12d ねじ
11e、12e 孔
11f、12f 雌ねじ
19 駆動モーター
21、22 ドーム部材
21a、22a ドーム部
21b、22b 連結用フランジ
21d、22d ねじ
21e、22e 孔
23 ダクト部材
23f 雌ねじ
図1
図2
図3
図4
図5
図6