(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022050059
(43)【公開日】2022-03-30
(54)【発明の名称】磁気記憶装置及びメモリシステム
(51)【国際特許分類】
G11C 29/00 20060101AFI20220323BHJP
G11C 11/16 20060101ALI20220323BHJP
G11C 13/00 20060101ALI20220323BHJP
H01L 21/8239 20060101ALI20220323BHJP
H01L 43/08 20060101ALI20220323BHJP
【FI】
G11C29/00 456
G11C11/16 240
G11C13/00 270F
H01L27/105 447
H01L43/08 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】17
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020156432
(22)【出願日】2020-09-17
(71)【出願人】
【識別番号】318010018
【氏名又は名称】キオクシア株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100108855
【弁理士】
【氏名又は名称】蔵田 昌俊
(74)【代理人】
【識別番号】100103034
【弁理士】
【氏名又は名称】野河 信久
(74)【代理人】
【識別番号】100075672
【弁理士】
【氏名又は名称】峰 隆司
(74)【代理人】
【識別番号】100153051
【弁理士】
【氏名又は名称】河野 直樹
(74)【代理人】
【識別番号】100162570
【弁理士】
【氏名又は名称】金子 早苗
(72)【発明者】
【氏名】岩山 昌由
【テーマコード(参考)】
4M119
5F092
5L206
【Fターム(参考)】
4M119AA15
4M119AA17
4M119BB01
4M119CC05
4M119DD01
4M119DD09
4M119DD17
4M119DD32
4M119DD52
4M119EE22
4M119EE27
4M119GG01
4M119HH01
4M119HH04
4M119HH20
5F092AA05
5F092AA15
5F092AC12
5F092BB16
5F092BB23
5F092BB36
5F092BB43
5F092BC04
5F092BC07
5F092BC47
5L206AA22
5L206CC31
5L206CC38
5L206DD11
5L206DD25
5L206DD43
5L206DD50
5L206EE02
5L206FF08
5L206HH04
5L206HH10
(57)【要約】
【課題】安定に情報を記憶可能とする磁気記憶装置及びメモリシステムを提供する。
【解決手段】一実施形態の磁気記憶装置は、第1メモリセルと、制御回路と、を備える。第1メモリセルは、直列接続された第1磁気抵抗効果素子及び第1スイッチング素子を含む。制御回路は、第1動作において、第1条件を満たすまで、第1電圧を繰り返し第1メモリセルに印加するように構成される。
【選択図】
図7
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1メモリセルと、
制御回路と、
を備え、
前記第1メモリセルは、直列接続された第1磁気抵抗効果素子及び第1スイッチング素子を含み、
前記制御回路は、第1動作において、第1条件を満たすまで、第1電圧を繰り返し前記第1メモリセルに印加するように構成された、
磁気記憶装置。
【請求項2】
前記制御回路は、前記第1動作において、前記第1条件を満たすまで、前記第1電圧をステップアップさせながら繰り返し前記第1メモリセルに印加するように構成された、
請求項1記載の磁気記憶装置。
【請求項3】
前記第1条件は、前記第1メモリセルの抵抗値が第1閾値以上となることを含む、
請求項1記載の磁気記憶装置。
【請求項4】
前記第1電圧は、前記第1メモリセルの抵抗値と独立に設定される、
請求項1記載の磁気記憶装置。
【請求項5】
前記第1メモリセルは、第1配線と第2配線との間に接続され、
前記磁気記憶装置は、前記第1配線と第3配線との間に接続された第2メモリセルを更に備え、
前記第2メモリセルは、直列接続された第2磁気抵抗効果素子及び第2スイッチング素子を含み、
前記制御回路は、前記第1動作において、前記第1条件を満たすまで、前記第1電圧より低い第2電圧を繰り返し前記第2メモリセルに印加するように構成された、
請求項1記載の磁気記憶装置。
【請求項6】
前記磁気記憶装置は、前記第3配線と第4配線との間に接続された第3メモリセルを更に備え、
前記第3メモリセルは、直列接続された第3磁気抵抗効果素子及び第3スイッチング素子を含み、
前記制御回路は、前記第1動作において、前記第1条件を満たすまで、前記第2電圧より低い第3電圧を繰り返し前記第3メモリセルに印加するように構成された、
請求項5記載の磁気記憶装置。
【請求項7】
前記第2電圧は、前記第1電圧と前記第3電圧の中間値である、
請求項6記載の磁気記憶装置。
【請求項8】
前記第3電圧は、前記第1電圧及び前記第2電圧と独立に設定される、
請求項6記載の磁気記憶装置。
【請求項9】
前記第1メモリセルは、第1配線と第2配線との間に接続され、
前記磁気記憶装置は、
前記第1配線と第3配線との間に接続された第2メモリセルと、
前記第3配線と第4配線との間に接続された第3メモリセルと、
を更に備え、
前記第2メモリセルは、直列接続された第2磁気抵抗効果素子及び第2スイッチング素子を含み、
前記第3メモリセルは、直列接続された第3磁気抵抗効果素子及び第3スイッチング素子を含み、
前記制御回路は、前記第1動作において、前記第1条件を満たすまで、前記第1電圧を繰り返し前記第1メモリセル、前記第2メモリセル、及び前記第3メモリセルの各々に印加するように構成された、
請求項1記載の磁気記憶装置。
【請求項10】
前記第1条件は、前記第1メモリセル、前記第2メモリセル、及び前記第3メモリセルに基づく抵抗値が閾値以上であることを含む、
請求項9記載の磁気記憶装置。
【請求項11】
前記制御回路は、第1コマンドを受けると、前記第1動作を実行するように構成された、
請求項1記載の磁気記憶装置。
【請求項12】
メモリコントローラと、
複数のメモリセルを含むメモリセルアレイと、制御回路と、を備えた磁気記憶装置と、
を備え、
前記複数のメモリセルの各々は、直列接続された磁気抵抗効果素子及びスイッチング素子を含み、
前記制御回路は、前記メモリコントローラから第1コマンドを受けると、第1条件を満たすまで、第1電圧を繰り返し第1メモリセルに印加するように構成された、
メモリシステム。
【請求項13】
前記メモリコントローラは、第2条件を満たすと、第2コマンドを発行するように構成され、
前記制御回路は、前記メモリコントローラから前記第2コマンドを受けると、
前記複数のメモリセルから前記第1メモリセルを特定し、
前記特定した第1メモリセルのアドレス情報を前記メモリコントローラへ出力する
ように構成された、
請求項12記載のメモリシステム。
【請求項14】
前記第1コマンドは、前記第1メモリセルのアドレス情報を含む、
請求項13記載のメモリシステム。
【請求項15】
前記第2条件は、前記磁気記憶装置へのデータの書込み動作又は読出し動作の回数が第2閾値以上となることを含む、
請求項13記載のメモリシステム。
【請求項16】
前記第2条件は、前記磁気記憶装置が起動されたことを含む、
請求項13記載のメモリシステム。
【請求項17】
前記第2条件は、前記第2コマンドの直前の第2コマンドの発行から所定の期間が経過したことを含む、
請求項13記載のメモリシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
実施形態は、磁気記憶装置及びメモリシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
磁気抵抗効果素子を記憶素子として用いた磁気記憶装置(MRAM:Magnetoresistive Random Access Memory)と、当該磁気記憶装置を制御するメモリコントローラと、を含むメモリシステムが知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
安定に情報を記憶可能とする磁気記憶装置及びメモリシステムを提供する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
実施形態の磁気記憶装置は、第1メモリセルと、制御回路と、を備える。第1メモリセルは、直列接続された第1磁気抵抗効果素子及び第1スイッチング素子を含む。制御回路は、第1動作において、第1条件を満たすまで、第1電圧を繰り返し第1メモリセルに印加するように構成される。
【図面の簡単な説明】
【0006】
【
図1】実施形態に係る磁気記憶装置を含むメモリシステムの構成を説明するためのブロック図。
【
図2】実施形態に係る磁気記憶装置のメモリセルアレイの構成を説明するための回路図。
【
図3】実施形態に係る磁気記憶装置のメモリセルアレイの構成を説明するための断面図。
【
図4】実施形態に係る磁気記憶装置のメモリセルアレイの構成を説明するための断面図。
【
図5】実施形態に係る磁気記憶装置の磁気抵抗効果素子の構成を説明するための断面図。
【
図6】実施形態に係る磁気記憶装置を含むメモリシステムに記憶される不良メモリセルテーブルを説明するための概念図。
【
図7】実施形態に係る磁気記憶装置における一連の動作を説明するためのフローチャート。
【
図8】実施形態に係る磁気記憶装置におけるスキャン動作を説明するためのフローチャート。
【
図9】実施形態に係る磁気記憶装置におけるスキャン動作を説明するための模式図。
【
図10】実施形態に係る磁気記憶装置におけるスキャン動作を説明するための模式図。
【
図11】実施形態に係る磁気記憶装置における高抵抗化動作を説明するためのフローチャート。
【
図12】実施形態に係る磁気記憶装置における高抵抗化動作を説明するためのタイミングチャート。
【
図13】実施形態に係る磁気記憶装置における高抵抗化動作を説明するための模式図。
【
図14】実施形態の第1変形例に係る磁気記憶装置における一連の動作を説明するためのフローチャート。
【
図15】実施形態の第1変形例に係る磁気記憶装置における高抵抗化動作を説明するためのフローチャート。
【
図16】実施形態の第2変形例に係る磁気記憶装置における高抵抗化動作を説明するためのフローチャート。
【発明を実施するための形態】
【0007】
以下、図面を参照して実施形態について説明する。なお、以下の説明において、同一の機能及び構成を有する構成要素については、共通する参照符号を付す。また、共通する参照符号を有する複数の構成要素を区別する場合、当該共通する参照符号に添え字を付して区別する。なお、複数の構成要素について特に区別を要さない場合、当該複数の構成要素には、共通する参照符号のみが付され、添え字は付さない。ここで、添え字は、下付き文字や上付き文字に限らず、例えば、参照符号の末尾に添加される小文字のアルファベット、及び配列を意味するインデックス等を含む。
【0008】
1.実施形態
実施形態に係る磁気記憶装置について説明する。実施形態に係る磁気記憶装置は、例えば、磁気トンネル接合(MTJ:Magnetic Tunnel Junction)によって磁気抵抗効果(Magnetoresistance effect)を有する素子(MTJ素子)を抵抗変化素子として用いた、垂直磁化方式による磁気記憶装置を含む。MTJ素子を磁気抵抗効果素子(Magnetoresistance effect element)とも称する場合もある。本実施形態を含めて後述する実施形態では、磁気抵抗効果素子としてMTJ素子を適用した場合にて説明を行う。また、説明の便宜上、磁気抵抗効果素子MTJと表記して説明を行う。
【0009】
1.1 構成
まず、実施形態に係る磁気記憶装置の構成について説明する。
【0010】
1.1.1 メモリシステム
図1は、実施形態に係る磁気記憶装置を含むメモリシステムの構成を示すブロック図である。
【0011】
図1に示すように、メモリシステム1は、データを不揮発に記憶することが可能な複数のメモリセルMCを含む磁気記憶装置2と、当該磁気記憶装置2を制御するメモリコントローラ3と、を含む。メモリシステム1は、例えば、プロセッサ等のホストデバイス(図示せず)に接続される。
【0012】
メモリコントローラ3は、制御信号CNTを磁気記憶装置2との間で通信し、磁気記憶装置2内のメモリセルMCへのアクセス動作(例えば、データの書込み動作及び読出し動作等)を、磁気記憶装置2に命令する。また、メモリコントローラ3は、これらの動作の実行時に、各動作に対応するコマンドCMDを発行し、当該コマンドCMD及び動作対象のアドレスADDを、磁気記憶装置2に送る。アドレスADDは、複数のメモリセルMCのうちの1つを特定可能な情報であり、例えば、レイヤアドレス、ロウアドレス、及びカラムアドレスを含む。
【0013】
例えば、書込み動作時において、メモリコントローラ3は、書込み動作を指示するコマンドCMD及び書込み対象のアドレスADDと共に、書き込むべきデータ(書込みデータ)DATを、磁気記憶装置2に送る。読出し動作時において、メモリコントローラ3は、読出し動作を指示するコマンドCMD及び読出し対象のアドレスADDを磁気記憶装置2に送り、読み出されたデータ(読出しデータ)DATを、磁気記憶装置2から受ける。
【0014】
また、メモリコントローラ3は、例えば内部の図示しないRAMに、不良メモリセルテーブル5を記憶する。不良メモリセルテーブル5は、磁気記憶装置2内の複数のメモリセルMCのうち、正常に機能しないと判定されたメモリセルMCを特定するための情報を含む。不良メモリセルテーブル5の詳細については後述する。
【0015】
磁気記憶装置2は、メモリセルアレイ10、ロウ選択回路11、カラム選択回路12、デコード回路13、書込み回路14、読出し回路15、電圧生成回路16、入出力回路17、及び制御回路18を備える。
【0016】
メモリセルアレイ10は、各々が行(row)、及び列(column)の組に対応付けられた複数のメモリセルMCを備える。具体的には、同一行にあるメモリセルMCは、同一のワード線WLに接続され、同一列にあるメモリセルMCは、同一のビット線BLに接続される。
【0017】
ロウ選択回路11は、ワード線WLを介してメモリセルアレイ10と接続される。ロウ選択回路11には、デコード回路13からのアドレスADDのデコード結果(レイヤアドレス及びロウアドレス)が供給される。ロウ選択回路11は、アドレスADDのデコード結果に基づいたレイヤ及びロウに対応するワード線WLを選択状態に設定する。以下において、選択状態に設定されたワード線WLは、選択ワード線WLと言う。また、選択ワード線WL以外のワード線WLは、非選択ワード線WLと言う。
【0018】
カラム選択回路12は、ビット線BLを介してメモリセルアレイ10と接続される。カラム選択回路12には、デコード回路13からのアドレスADDのデコード結果(レイヤアドレス及びカラムアドレス)が供給される。カラム選択回路12は、アドレスADDのデコード結果に基づいたレイヤ及びカラムに対応するビット線BLを選択状態に設定する。以下において、選択状態に設定されたビット線BLは、選択ビット線BLと言う。また、選択ビット線BL以外のビット線BLは、非選択ビット線BLと言う。
【0019】
デコード回路13は、入出力回路17からのアドレスADDをデコードする。デコード回路13は、アドレスADDのデコード結果を、ロウ選択回路11、及びカラム選択回路12に供給する。アドレスADDは、選択されるカラムアドレス、及びロウアドレスを含む。
【0020】
書込み回路14は、メモリセルMCへのデータの書込みを行う。書込み回路14は、例えば、書込みドライバ(図示せず)を含む。
【0021】
読出し回路15は、メモリセルMCからのデータの読出しを行う。読出し回路15は、例えば、センスアンプ(図示せず)を含む。
【0022】
電圧生成回路16は、磁気記憶装置2の外部(図示せず)から供給された電源電圧を用いて、メモリセルアレイ10の各種の動作のための電圧を生成する。例えば、電圧生成回路16は、書込み動作の際に必要な種々の電圧を生成し、書込み回路14に出力する。また、例えば、電圧生成回路16は、読出し動作の際に必要な種々の電圧を生成し、読出し回路15に出力する。
【0023】
入出力回路17は、メモリコントローラ3からのアドレスADDを、デコード回路13に転送する。入出力回路17は、メモリコントローラ3からのコマンドCMDを、制御回路18に転送する。入出力回路17は、種々の制御信号CNTを、メモリコントローラ3と、制御回路18と、の間で送受信する。入出力回路17は、メモリコントローラ3からのデータDATを書込み回路14に転送し、読出し回路15から転送されたデータDATをメモリコントローラ3に出力する。
【0024】
制御回路18は、制御信号CNT及びコマンドCMDに基づいて、磁気記憶装置2内のロウ選択回路11、カラム選択回路12、デコード回路13、書込み回路14、読出し回路15、電圧生成回路16、及び入出力回路17の動作を制御する。
【0025】
1.1.2 メモリセルアレイの構成
次に、実施形態に係る磁気記憶装置のメモリセルアレイの構成について
図2を用いて説明する。
図2は、実施形態に係る磁気記憶装置のメモリセルアレイの構成を示す回路図である。
【0026】
以降の説明では、ワード線WLは、ロウアドレスm、及び偶数のレイヤアドレスkによって一意に識別されるものとし、インデックス<>を用いて“WL<k,m>”と示される。ビット線BLは、カラムアドレスn、及び奇数のレイヤアドレスkによって識別されるものとし、インデックス<>を用いて“BL<k,n>”と示される。メモリセルMCは、レイヤアドレスk、ロウアドレスm、及びカラムアドレスnによって一意に識別されるものとし、“MC<k,m,n>”と示される。ここで、k、m、nはそれぞれ、0≦k≦K、0≦m≦M、0≦n≦N(K、M、Nは自然数)の整数である。
【0027】
図2に示すように、メモリセルMCは、メモリセルアレイ10内でマトリクス状に配置され、複数のビット線BL(BL<1,0>、BL<1,1>、…、BL<3,0>、BL<3,1>、…)のうちの1本と、複数のワード線WL(WL<0,0>、WL<0,1>、…、WL<2,0>、WL<2,1>、…)のうちの1本と、の組に対応付けられ、レイヤアドレスk、ロウアドレスm、及びカラムアドレスnの組によって一意に識別される。より具体的には、レイヤアドレスkが偶数の場合、メモリセルMC<k,m,n>は、ワード線WL<k,m>とビット線BL<k+1,n>との間に接続され、レイヤアドレスkが奇数の場合、メモリセルMC<k,m,n>は、ワード線WL<k+1,m>とビット線BL<k,n>との間に接続される。
【0028】
メモリセルMC<k,m,n>は、直列に接続されたスイッチング素子SEL<k,m,n>及び磁気抵抗効果素子MTJ<k,m,n>を含む。
【0029】
スイッチング素子SELは、対応する磁気抵抗効果素子MTJへのデータ書込み及び読出し時において、磁気抵抗効果素子MTJへの電流の供給を制御するスイッチとしての機能を有する。より具体的には、例えば、或るメモリセルMC内のスイッチング素子SELは、当該メモリセルMCに印加される電圧が閾値電圧Vthを下回る場合、抵抗値の大きい絶縁体として電流を遮断し(オフ状態となり)、閾値電圧Vthを上回る場合、抵抗値の小さい導電体として電流を流す(オン状態となる)。すなわち、スイッチング素子SELは、流れる電流の方向に依らず、メモリセルMCに印加される電圧の大きさに応じて、電流を流すか遮断するかを切替え可能な機能を有する。
【0030】
スイッチング素子SELは、例えば2端子型のスイッチング素子であってもよい。2端子間に印加する電圧が閾値未満の場合、そのスイッチング素子は”高抵抗”状態、例えば電気的に非導通状態である。2端子間に印加する電圧が閾値以上の場合、スイッチング素子は”低抵抗”状態、例えば電気的に導通状態に変わる。スイッチング素子は、電圧がどちらの極性でもこの機能を有していてもよい。
【0031】
磁気抵抗効果素子MTJは、スイッチング素子SELによって供給を制御された電流により、抵抗値を低抵抗状態と高抵抗状態とに切替わることができる。磁気抵抗効果素子MTJは、その抵抗状態の変化によってデータを書込み可能であり、書込まれたデータを不揮発に保持し、読出し可能である記憶素子として機能する。
【0032】
しかしながら、スイッチング素子SELに何らかの不良が生じて短絡した場合、スイッチング素子SELは、印加される電圧に応じて磁気抵抗効果素子MTJに流れる電流を制御できない。この場合、当該短絡したスイッチング素子SELを含むメモリセルMCには、他のメモリセルMCが選択された場合においても意図しない電流が流れる可能性があり、好ましくない。以下では、当該短絡したスイッチング素子SELを含むメモリセルMCを「不良メモリセルMC」又は「フェイルビット」と呼び、正常なメモリセルMCと区別する。
【0033】
次に、メモリセルアレイ10の断面構造について
図3及び
図4を用いて説明する。
図3及び
図4は、実施形態に係る磁気記憶装置のメモリセルアレイの構成を説明するための断面図の一例であり、説明の便宜上、層間絶縁膜が省略して示される。
【0034】
なお、以下の説明では、半導体基板20の表面と平行な面をXY平面とし、XY平面に垂直な軸をZ軸とする。Z軸に沿って半導体基板20に近づく方向を「下方」とし、遠ざかる方向を「上方」とする。XY平面内において、互いに直交する2つの軸の組の一つをX軸及びY軸とする。
【0035】
図3及び
図4に示すように、メモリセルアレイ10は、半導体基板20の上方に設けられる。
【0036】
半導体基板20の上面上には、例えば、複数の導電体21が設けられる。複数の導電体21の各々は、導電性を有し、ワード線WLとして機能する。隣り合う2つの導電体21の間の部分には、絶縁体41が設けられる。これにより、複数の導電体21の各々は、互いに絶縁される。なお、
図3及び
図4では、複数の導電体21が半導体基板20上に設けられる場合について説明したが、これに限られない。例えば、複数の導電体21は、半導体基板20に接することなく、上方に離れて設けられてもよい。
【0037】
1つの導電体21の上面上には、各々が磁気抵抗効果素子MTJとして機能する複数の素子22が設けられる。1つの導電体21の上面上に設けられる複数の素子22は、例えば、X軸に沿って並んで設けられる。すなわち、1つの導電体21の上面には、X軸に沿って並ぶ複数の素子22が共通して接続される。なお、素子22の構成の詳細については、後述する。
【0038】
複数の素子22の各々の上面上には、スイッチング素子SELとして機能する素子23が設けられる。複数の素子23の各々の上面は、複数の導電体24のいずれか1つに接続される。
【0039】
複数の導電体24は、導電性を有し、ビット線BLとして機能する。1つの導電体24には、Y軸に沿って並ぶ複数の素子23が共通して接続される。なお、
図3及び
図4では、複数の素子23の各々が素子22上、及び導電体24上に設けられる場合について説明したが、これに限られない。例えば、複数の素子23の各々は、導電性のコンタクトプラグ(図示せず)を介して、素子22、及び導電体24と接続されていてもよい。
【0040】
以上のように構成されることにより、メモリセルアレイ10は、1本のワード線WLと1本のビット線BLとの間に1つのメモリセルMCが設けられる。
【0041】
1.1.3 磁気抵抗効果素子
次に、実施形態に係る磁気記憶装置の磁気抵抗効果素子の構成について
図5を用いて説明する。
図5は、実施形態に係る磁気記憶装置の磁気抵抗効果素子の構成を示す断面図である。
図5では、例えば、
図3及び
図4に示された磁気抵抗効果素子MTJをZ軸に垂直な平面(例えば、XZ平面)に沿って切った断面の一例が示される。
【0042】
図5に示すように、磁気抵抗効果素子MTJは、例えば、トップ層TOP(Top layer)として機能する非磁性体31、キャップ層CAP(Capping layer)として機能する非磁性体32、記憶層SL(Storage layer)として機能する強磁性体33、トンネルバリア層TB(Tunnel barrier layer)として機能する非磁性体34、参照層RL(Reference layer)として機能する強磁性体35、スペーサ層SP(Spacer layer)として機能する非磁性体36、シフトキャンセル層SCL(Shift cancelling layer)として機能する強磁性体37、及び下地層UL(Under layer)として機能する非磁性体38を含む。
【0043】
磁気抵抗効果素子MTJは、例えば、ワード線WL側からビット線BL側に向けて(Z軸方向に)、非磁性体38、強磁性体37、非磁性体36、強磁性体35、非磁性体34、強磁性体33、非磁性体32、及び非磁性体31の順に、複数の膜が積層される。磁気抵抗効果素子MTJは、例えば、磁気抵抗効果素子MTJを構成する磁性体の磁化方向が膜面に対して垂直方向を向く、垂直磁化型のMTJ素子として機能する。なお、磁気抵抗効果素子MTJは、上述の各層31~38の間に、図示しない更なる層を含んでいてもよい。
【0044】
非磁性体31は、非磁性の導電体であり、磁気抵抗効果素子MTJの上端とビット線BL又はワード線WLとの電気的な接続性を向上させる上部電極(top electrode)としての機能を有する。非磁性体31は、例えば、タングステン(W)、タンタル(Ta)、窒化タンタル(TaN)、チタン(Ti)、及び窒化チタン(TiN)から選択される少なくとも1つの元素又は化合物を含む。
【0045】
非磁性体32は、非磁性体であり、強磁性体33のダンピング定数の上昇を抑制し、書込み電流を低減させる機能を有する。非磁性体32は、例えば、酸化マグネシウム(MgO)、窒化マグネシウム(MgN)、窒化ジルコニウム(ZrN)、窒化ニオブ(NbN)、窒化シリコン(SiN)、窒化アルミニウム(AlN)、窒化ハフニウム(HfN)、窒化タンタル(TaN)、窒化タングステン(WN)、窒化クロム(CrN)、窒化モリブデン(MoN)、窒化チタン(TiN)、窒化バナジウム(VN)から選択される少なくとも1つの窒化物又は酸化物を含む。また、非磁性体32は、これら窒化物又は酸化物の混合物でもよい。すなわち、非磁性体32は、2種類の元素からなる二元化合物に限らず、3種類の元素からなる三元化合物、例えば、窒化チタンアルミニウム(AlTiN)等を含み得る。
【0046】
強磁性体33は、強磁性を有し、膜面に垂直な方向に磁化容易軸方向を有する。強磁性体33は、Z軸に沿って、ビット線BL側、ワード線WL側のいずれかの方向に向かう磁化方向を有する。強磁性体33は、鉄(Fe)、コバルト(Co)、及びニッケル(Ni)のうちの少なくともいずれか1つを含み、強磁性体33は、ボロン(B)を更に含む。より具体的には、例えば、強磁性体33は、鉄コバルトボロン(FeCoB)又はホウ化鉄(FeB)を含み、体心立方系の結晶構造を有し得る。
【0047】
非磁性体34は、非磁性の絶縁体であり、例えば酸化マグネシウム(MgO)を含み、上述の通り、ボロン(B)を更に含み得る。非磁性体34は、膜面が(001)面に配向したNaCl結晶構造を有し、強磁性体33の結晶化処理において、強磁性体33との界面から結晶質の膜を成長させるための核となるシード材として機能する。非磁性体34は、強磁性体33と強磁性体35との間に設けられて、これら2つの強磁性体と共に磁気トンネル接合を形成する。
【0048】
強磁性体35は、強磁性を有し、膜面に垂直な方向に磁化容易軸方向を有する。強磁性体35は、Z軸に沿って、ビット線BL側、ワード線WL側のいずれかの方向に向かう磁化方向を有する。強磁性体35は、例えば、鉄(Fe)、コバルト(Co)、及びニッケル(Ni)のうちの少なくともいずれか1つを含む。また、強磁性体35は、ボロン(B)を更に含んでいてもよい。より具体的には、例えば、強磁性体35は、鉄コバルトボロン(FeCoB)又はホウ化鉄(FeB)を含み、体心立方系の結晶構造を有し得る。強磁性体35の磁化方向は、固定されており、
図5の例では、強磁性体37の方向を向いている。なお、「磁化方向が固定されている」とは、強磁性体33の磁化方向を反転させ得る大きさの電流(スピントルク)によって、磁化方向が変化しないことを意味する。
【0049】
なお、
図5では図示を省略しているが、強磁性体35は、複数の層からなる積層体であってもよい。具体的には例えば、強磁性体35を構成する積層体は、上述の鉄コバルトボロン(FeCoB)又はホウ化鉄(FeB)を含む層を非磁性体34との界面層として有しつつ、当該界面層と非磁性体36との間に、非磁性の導電体を介して、更なる強磁性体が積層される構造であってもよい。強磁性体35を構成する積層体内の非磁性の導電体は、例えば、タンタル(Ta)、ハフニウム(Hf)、タングステン(W)、ジルコニウム(Zr)、モリブデン(Mo)、ニオブ(Nb)、及びチタン(Ti)から選択される少なくとも1つの金属を含み得る。強磁性体35を構成する積層体内の更なる強磁性体は、例えば、コバルト(Co)と白金(Pt)との多層膜(Co/Pt多層膜)、コバルト(Co)とニッケル(Ni)との多層膜(Co/Ni多層膜)、及びコバルト(Co)とパラジウム(Pd)との多層膜(Co/Pd多層膜)から選択される少なくとも1つの多層膜を含み得る。
【0050】
非磁性体36は、非磁性の導電体であり、例えばルテニウム(Ru)、オスミウム(Os)、イリジウム(Ir)、バナジウム(V)、及びクロム(Cr)から選択される少なくとも1つの元素を含む。
【0051】
強磁性体37は、強磁性を有し、膜面に垂直な方向に磁化容易軸方向を有する。強磁性体37は、Z軸に沿って、ビット線BL側、ワード線WL側のいずれかの方向に向かう磁化方向を有する。強磁性体37の磁化方向は、強磁性体35と同様に固定されており、
図5の例では、強磁性体35の方向を向いている。強磁性体37は、例えばコバルト白金(CoPt)、コバルトニッケル(CoNi)、及びコバルトパラジウム(CoPd)から選択される少なくとも1つの合金を含む。強磁性体37は、強磁性体35と同様、複数の層からなる積層体であってもよい。その場合、強磁性体37は、例えば、コバルト(Co)と白金(Pt)との多層膜(Co/Pt多層膜)、コバルト(Co)とニッケル(Ni)との多層膜(Co/Ni多層膜)、及びコバルト(Co)とパラジウム(Pd)との多層膜(Co/Pd多層膜)から選択される少なくとも1つの多層膜を含み得る。
【0052】
強磁性体35及び37は、非磁性体36によって反強磁性的に結合される。すなわち、強磁性体35及び37は、互いに反平行な磁化方向を有するように結合される。このため、
図5の例では、強磁性体35及び37の磁化方向は、互いに向かい合う方向を向いている。このような強磁性体35、非磁性体36、及び強磁性体37の結合構造を、SAF(Synthetic Anti-Ferromagnetic)構造という。これにより、強磁性体37は、強磁性体35の漏れ磁場が強磁性体33の磁化方向に与える影響を相殺することができる。このため、強磁性体35の漏れ磁場等によって強磁性体33の磁化の反転し易さに非対称性が発生すること(すなわち、強磁性体33の磁化の方向の反転する際の反転し易さが、一方から他方に反転する場合と、その逆方向に反転する場合とで異なること)が抑制される。
【0053】
非磁性体38は、非磁性の導電体であり、ビット線BLやワード線WLとの電気的な接続性を向上させる電極としての機能を有する。また、非磁性体38は、例えば、高融点金属を含む。高融点金属とは、例えば、鉄(Fe)及びコバルト(Co)より融点が高い材料を示し、例えば、ジルコニウム(Zr)、ハフニウム(Hf)、タングステン(W)、クロム(Cr)、モリブデン(Mo)、ニオブ(Nb)、チタン(Ti)、タンタル(Ta)、バナジウム(V)、ルテニウム(Ru)、及び白金(Pt)から選択される少なくとも1つの元素を含む。
【0054】
実施形態では、このような磁気抵抗効果素子MTJに直接書込み電流を流し、この書込み電流によって記憶層SL及び参照層RLにスピントルクを注入し、記憶層SLの磁化方向及び参照層RLの磁化方向を制御するスピン注入書込み方式を採用する。磁気抵抗効果素子MTJは、記憶層SL及び参照層RLの磁化方向の相対関係が平行か反平行かによって、低抵抗状態及び高抵抗状態のいずれかを取ることが出来る。
【0055】
磁気抵抗効果素子MTJに、
図5における矢印A1の方向、即ち記憶層SLから参照層RLに向かう方向に、或る大きさの書込み電流Ic0を流すと、記憶層SL及び参照層RLの磁化方向の相対関係は、平行になる。この平行状態の場合、磁気抵抗効果素子MTJの抵抗値は最も低くなり、磁気抵抗効果素子MTJは低抵抗状態に設定される。この低抵抗状態は、「P(Parallel)状態」と呼ばれ、例えばデータ“0”の状態と規定される。
【0056】
また、磁気抵抗効果素子MTJに、
図5における矢印A2の方向、即ち参照層RLから記憶層SLに向かう方向(矢印A1と反対方向)に、書込み電流Ic0より大きい書込み電流Ic1を流すと、記憶層SL及び参照層RLの磁化方向の相対関係は、反平行になる。この反平行状態の場合、磁気抵抗効果素子MTJの抵抗値は最も高くなり、磁気抵抗効果素子MTJは高抵抗状態に設定される。この高抵抗状態は、「AP(Anti-Parallel)状態」と呼ばれ、例えばデータ“1”の状態と規定される。
【0057】
なお、以下の説明では、上述したデータの規定方法に従って説明するが、データ“1”及びデータ“0”の規定の仕方は、上述した例に限られない。例えば、P状態をデータ“1”と規定し、AP状態をデータ“0”と規定してもよい。
【0058】
1.1.4 不良メモリセルテーブル
次に、実施形態に係る磁気記憶装置を含むメモリシステム内に記憶される不良メモリセルテーブルについて、
図6に示す概念図を用いて説明する。
【0059】
図6に示すように、不良メモリセルテーブル5は、不良メモリセルMCのアドレス情報と、不良メモリセルMCに接続されたワード線WL及びビット線BLのアドレス情報と、が互いに関連づけられて記憶される。
【0060】
具体的には、
図6の例では、メモリセルMC<3,5,7>のアドレス情報<3,5,7>と、メモリセルMC<6,8,9>のアドレス情報<6,8,9>とが不良メモリセルMCのアドレス情報として記憶される。
【0061】
また、メモリセルMC<3,5,7>を間に挟むワード線WL<4,5>のアドレス情報<4,5>と、ビット線BL<3,7>のアドレス情報<3,7>とがそれぞれ、記憶される。メモリセルMC<6,8,9>を間に挟むワード線WL<6,8>のアドレス情報<6,8>と、ビット線BL<7,9>のアドレス情報<7,9>とがそれぞれ、不良メモリセルMCに接続されたワード線WL及びビット線BLのアドレス情報として記憶される。
【0062】
なお、不良メモリセルMCのアドレス情報と、不良メモリセルMCに接続されたワード線WL及びビット線BLのアドレス情報の組と、は互いに1対1に対応する。このため、不良メモリセルテーブル5には、少なくともこれらのいずれか一方が記憶されていればよい。
【0063】
また、不良メモリセルテーブル5は、メモリコントローラ3内に記憶されるものとして説明したが、これに限られない。例えば、不良メモリセルテーブル5は、磁気記憶装置2内のメモリセルアレイ10内に不揮発に記憶されていてもよい。
【0064】
1.2 動作
次に、実施形態に係る磁気記憶装置の動作について説明する。
【0065】
1.2.1 不良メモリセルを高抵抗化するまでの一連の動作
まず、磁気記憶装置2内の不良メモリセルMCを高抵抗化するまでの一連の動作について、
図7に示すフローチャートを参照して説明する。
【0066】
図7に示すように、ステップST10において、メモリコントローラ3は、書込み動作又は読出し動作を実行する旨のコマンド(アクセスコマンド)を発行し、磁気記憶装置2に送出する。磁気記憶装置2は、メモリコントローラ3からアクセスコマンドを受けると、書込み動作又は読出し動作を実行する。上述の通り、制御回路18は、書込み動作において、書込み対象のメモリセルMCに所定の書込み電流Ic0又はIc1が流れるように、定電流方式の制御を実行する。同様に、制御回路18は、読出し動作において、読出し対象のメモリセルMCに所定の読出し電流が流れるように、定電流方式の制御を実行する。
【0067】
メモリコントローラ3は、例えば、書込み動作及び読出し動作の実行回数をカウントし、そのカウント値を記憶する。なお、メモリコントローラ3は、書込み動作のみ、又は読出し動作のみのカウント値をカウントしてもよい。
【0068】
ステップST30において、メモリコントローラ3は、書込み動作及び読出し動作の実行回数が閾値Nth以上であるか否かを判定する。例えば、メモリコントローラ3は、書込み動作及び読出し動作の実行回数のカウント値を所定の閾値Nth(例えば1万回)と比較する。書込み動作及び読出し動作の実行回数が閾値Nth以上である場合(ステップST30;yes)、処理はステップST50に進み、閾値Nth未満である場合(ステップST30;no)、処理はステップST10に戻る。すなわち、メモリシステム1は、書込み動作及び読出し動作の実行回数が閾値Nth以上となるまで、ステップST50以降の処理を実行することなく動作し得る。なお、閾値Nthは、複数個設定されていてもよく、互いに値の異なる複数個の閾値Nthのうちの1つを書込み動作及び読出し動作の実行回数が超える毎に、ステップST50以降の処理が1回実施されてもよい。
【0069】
ステップST50において、メモリコントローラ3は、スキャン動作を実行する旨のコマンド(スキャンコマンド)を発行し、磁気記憶装置2に送出する。スキャンコマンドを受けると、磁気記憶装置2は、メモリセルアレイ10内の全てのメモリセルMCに対するスキャン動作を実行する。
【0070】
制御回路18は、スキャン動作において、スキャン対象のメモリセルMCに所定の電圧が印加されるように、例えば、定電圧方式の制御を実行する。スキャン動作の結果、磁気記憶装置2は、不良メモリセルMCのアドレス情報を特定し、メモリコントローラ3に通知する。これにより、メモリコントローラ3は、不良メモリセルテーブル5内にメモリセルアレイ10内の不良メモリセルMCのアドレスを記憶することができる。スキャン動作の詳細については、後述する。
【0071】
ステップST70において、メモリコントローラ3は、不良メモリセルテーブル5内に記憶された情報に基づき、磁気記憶装置2内に不良メモリセルMCがあるか否かを判定する。不良メモリセルテーブル5内に不良メモリセルMCの情報が記憶されている場合(ステップST70;yes)、処理はステップST90に進み、不良メモリセルMCの情報が記憶されていない場合(ステップST70;no)、処理はステップST90を省略する。
【0072】
ステップST90において、メモリコントローラ3は、高抵抗化動作を実行する旨のコマンド(高抵抗化コマンド)を発行し、磁気記憶装置2に送出する。磁気記憶装置2は、メモリコントローラ3から高抵抗化コマンドを受けると、高抵抗化動作を実行する。高抵抗化コマンドには、例えば、高抵抗化させる対象の不良メモリセルMCのアドレス情報が含まれる。
【0073】
制御回路18は、高抵抗化動作において、高抵抗化対象の不良メモリセルMCに所定の電圧が印加されるように、定電圧方式の制御を実行する。これにより、磁気記憶装置2は、不良メモリセルMC内のスイッチング素子SELを高抵抗化させることができる。高抵抗化動作の詳細については、後述する。
【0074】
以上で、磁気記憶装置2内の不良メモリセルMCを高抵抗化するまでの一連の動作が終了する。
【0075】
1.2.2 スキャン動作
次に、スキャン動作の詳細について説明する。
【0076】
図8は、実施形態に係る磁気記憶装置におけるスキャン動作を説明するためのフローチャートであり、
図7におけるステップST50に対応する。
図8では、スキャンコマンドに基づく磁気記憶装置2における動作、及びこれに伴うメモリコントローラ3の動作が示される。
【0077】
図8に示すように、ステップST51において、ロウ選択回路11及びカラム選択回路12は、全てのワード線WL及び全てのビット線BLに電圧VSSを印加する。電圧VSSは、接地電圧であり、例えば0Vである。以下では、電圧VSSが0Vであるものとして説明する。
【0078】
ステップST52において、ロウ選択回路11は、ワード線WLのうちの1つを選択し、当該ワード線WLに電圧Varbを印加する。電圧Varbは、電圧VSSより高く、スイッチング素子SELの閾値電圧Vthより低い電圧である。
【0079】
ステップST53において、制御回路18は、ステップST51及びST52で設定された状態において、選択されたワード線WLに所定の大きさの電流が流れたか否かを判定する。所定の大きさの電流が検出された場合(ステップST53;yes)、処理はステップST54に進み、所定の大きさの電流が検出されなかった場合(ステップST53;no)、処理はステップST55に進む。
【0080】
ステップST54において、制御回路18は、ステップST52において選択されたワード線WLのアドレス情報をメモリコントローラ3に出力する。メモリコントローラ3は、当該アドレス情報を不良メモリセルテーブル5に記憶する。
【0081】
ステップST55において、制御回路18は、全てのワード線WLが選択済みであるか否かを判定する。全てのワード線WLが選択済みでない場合(ステップST55;no)、処理はステップST51に戻る。これにより、全てのワード線WLが選択済みとなるまで、ステップST51~ST54の処理が繰り返される。全てのワード線WLが選択済みである場合(ステップST55;yes)、処理はステップST56に進む。
【0082】
ステップST56において、ロウ選択回路11及びカラム選択回路12は、全てのワード線WL及び全てのビット線BLに電圧VSSを印加する。
【0083】
ステップST57において、カラム選択回路12は、ビット線BLのうちの1つを選択し、当該ビット線BLに電圧Varbを印加する。
【0084】
ステップST58において、制御回路18は、ステップST56及びST57で設定された状態において、選択されたビット線BLに所定の大きさの電流が流れたか否かを判定する。所定の大きさの電流が検出された場合(ステップST58;yes)、処理はステップST59に進み、所定の大きさの電流が検出されなかった場合(ステップST58;no)、処理はステップST60に進む。
【0085】
ステップST59において、制御回路18は、ステップST57において選択されたビット線BLのアドレス情報をメモリコントローラ3に出力する。メモリコントローラ3は、当該アドレス情報を不良メモリセルテーブル5に記憶する。この際、メモリコントローラ3は、ビット線BLのアドレス情報を、既に不良メモリセルテーブル5に記憶されたワード線WLのアドレス情報のいずれかと対応づける。これにより、不良メモリセルのアドレス情報を特定することができる。
【0086】
ステップST60において、制御回路18は、全てのビット線BLが選択済みであるか否かを判定する。全てのビット線BLが選択済みでない場合(ステップST60;no)、処理はステップST56に戻る。これにより、全てのビット線BLが選択済みとなるまで、ステップST56~ST59の処理が繰り返される。全てのビット線BLが選択済みである場合(ステップST60;yes)、スキャン動作は終了する。
【0087】
図9及び
図10は、実施形態に係る磁気記憶装置におけるスキャン動作を説明するための模式図であり、それぞれ
図8におけるステップST51~ST54、及びステップST56~ST59に対応する。
【0088】
図9及び
図10では、4本のワード線WL<k,m>、WL<k,m+1>、WL<k+2,m>、及びWL<k+2,m+1>、4本のビット線BL<k+1,n>、BL<k+1,n+1>、BL<k+3,n>、及びBL<k+3,n+1>、並びに当該4本のワード線WLのうちの1つと当該4本のビット線BLのうちの1つとの間の12個のメモリセルMCが示される。また、
図9及び
図10では、当該12個のメモリセルMCのうち、メモリセルMC<k+1,m,n>が不良メモリセルMCである場合のスキャン動作が示される。
【0089】
まず、ワード線WLが選択された場合の動作について、
図9を参照して説明する。
【0090】
図9に示すように、ワード線WL<k+2,m>が選択された場合、ワード線WL<k+2,m>に接続された複数のメモリセルMC(例えば、不良メモリセルMC<k+1,m,n>、並びに正常メモリセルMC<k+1,m,n+1>、MC<k+2,m,n>、及びMC<k+2,m,n+1>)には電圧Varbが印加される。
【0091】
正常メモリセルMC<k+1,m,n+1>、MC<k+2,m,n>、及びMC<k+2,m、n+1>内の各々のスイッチング素子SELは、閾値電圧Vthより低い電圧Varbが印加されてもオフ状態のままである。このため、正常メモリセルMC<k+1,m,n+1>、MC<k+2,m,n>、及びMC<k+2,m,n+1>には電流は流れない。
【0092】
一方、不良メモリセルMC<k+1,m,n>内のスイッチング素子SELは、短絡しているため、閾値電圧Vthより低い電圧Varbが印加されるとオン状態と同等に振る舞う。このため、不良メモリセルMC<k+1,m,n>を介して電流が流れる。
【0093】
このように、ワード線WL<k+2,m>に電圧Varbを印加して電流が流れた場合、当該ワード線WL<k+2,m>に接続された複数のメモリセルMCのうちの少なくとも1つのメモリセルMCが不良メモリセルMCであることが分かる。このため、制御回路18は、ワード線WL<k+2,m>のアドレス情報<k+2,m>をメモリコントローラ3に出力し、不良メモリセルテーブル5内に記憶させる。
【0094】
次に、ビット線BLが選択された場合の動作について、
図10を参照して説明する。
【0095】
図10に示すように、ビット線BL<k+1,n>が選択された場合、ビット線BL<k+1,n>に接続された複数のメモリセルMC(例えば、不良メモリセルMC<k+1,m,n>、並びに正常メモリセルMC<k+1,m+1,n>、MC<k,m,n>、及びMC<k,m+1,n>)には電圧Varbが印加される。
【0096】
正常メモリセルMC<k+1,m+1,n>、MC<k,m,n>、及びMC<k,m+1,n>内の各々のスイッチング素子SELは、閾値電圧Vthより低い電圧Varbが印加されてもオフ状態のままである。このため、正常メモリセルMC<k+1,m+1,n>、MC<k,m,n>、及びMC<k,m+1,n>には電流は流れない。
【0097】
一方、不良メモリセルMC<k+1,m,n>内のスイッチング素子SEL<k+1,m,n>は、短絡しているため、閾値電圧Vthより低い電圧Varbが印加されるとオン状態と同等に振る舞う。このため、不良メモリセルMC<k+1,m,n>を介して電流が流れる。
【0098】
このように、ビット線BL<k+1,n>に電圧Varbを印加して電流が流れた場合、当該ビット線BL<k+1,n>に接続された複数のメモリセルMCのうちの少なくとも1つのメモリセルMCが不良メモリセルMCであることが分かる。このため、制御回路18は、ビット線BL<k+1,n>のアドレス情報<k+1,n>をメモリコントローラ3に出力し、不良メモリセルテーブル5内に記憶させる。
【0099】
これにより、メモリコントローラ3は、不良メモリセルテーブル5内に記憶されたワード線WLのアドレス情報<k+2,m>と、ビット線BLのアドレス情報<k+1,n>との間のメモリセルMC<k+1,m,n>が不良メモリセルMCであると判定することができ、これらのアドレス情報を互いに関連づけて記憶することができる。
【0100】
1.2.3 高抵抗化動作
次に、不良メモリセルMCの高抵抗化動作について説明する。
【0101】
図11は、実施形態に係る磁気記憶装置における不良メモリセルに対する高抵抗化動作を説明するためのフローチャートであり、
図7におけるステップST90に対応する。
図11では、メモリコントローラ3からの高抵抗化コマンドに基づく磁気記憶装置2における動作が示される。
【0102】
まず、メモリコントローラ3は、高抵抗化対象の不良メモリセルMCのアドレス情報を含む高抵抗化コマンドを発行し、磁気記憶装置2に送出する。
【0103】
図11に示すように、ステップST91において、制御回路18は、高抵抗化コマンドを受けると、当該高抵抗化コマンド内に含まれる不良メモリセルMCのアドレス情報に基づき、不良メモリセルMCを高抵抗化の対象として選択する。以下では、説明の便宜上、選択された不良メモリセルMCを「選択メモリセルMC」と言う。
【0104】
ステップST92において、制御回路18は、変数iを“0”に初期化する(i=0)。
【0105】
ステップST93において、ロウ選択回路11及びカラム選択回路12は、選択メモリセルMCに電圧(Vf+iΔV)を印加する。例えば、ロウ選択回路11及びカラム選択回路12は、選択ワード線WLに電圧(Vf+iΔV)を印加し、選択ビット線BLに電圧VSSを印加する。電圧Vf及びΔVは、任意の値に設定可能であるが、例えば、選択メモリセルMCに印加される電圧(Vf+iΔV)がスイッチング素子SELの閾値電圧Vth、及びアクセス動作の際に選択メモリセルMCに印加される電圧(書込み電圧及び読出し電圧)より十分低い値となるように設定される。これにより、高抵抗化動作の際にメモリセルMCに印加される電圧による誤書込みの発生を抑制できる。
【0106】
なお、選択メモリセルMCへの電圧の印加に際し、選択ワード線WLと選択ビット線BLのどちらを高圧にするかは、任意に選択可能である。つまり、ロウ選択回路11及びカラム選択回路12は、選択ビット線BLに電圧(Vf+iΔV)を印加し、選択ワード線WLに電圧VSSを印加してもよい。
【0107】
ステップST94において、制御回路18は、ステップST93において選択メモリセルMCに流れる電流に基づいて抵抗値を算出し、当該抵抗値が閾値Rth以上であるか否かを判定する。閾値Rthは、例えば、スイッチング素子SELが短絡した状態におけるメモリセルMCの抵抗値に対して十分(例えば、3桁以上)大きい。すなわち、閾値Rthは、スイッチング素子SELが断線したと見なし得る大きさに設定される。選択メモリセルMCの抵抗値が閾値Rth以上であると判定された場合(ステップST94;yes)、処理はステップST96に進み、閾値Rth未満であると判定された場合(ステップST94;no)、処理はステップST95に進む。
【0108】
ステップST95において、制御回路18は、変数iをインクリメントさせ、ステップST93の処理に戻る。これにより、選択メモリセルMCの抵抗値が閾値Rth以上であると判定されるまで、ΔVずつステップアップされた電圧が選択メモリセルMCに印加される。
【0109】
ステップST96において、制御回路18は、全ての不良メモリセルMCを選択したか否かを判定する。例えば、制御回路18は、メモリコントローラ3から受けた高抵抗化コマンドに含まれる不良メモリセルMCのアドレスに全てアクセスしたか否かを判定する。選択していない不良メモリセルMCがあると判定される場合(ステップST96;no)、処理はステップST91に戻る。これにより、全ての不良メモリセルMCの抵抗値が閾値Rthを超えるまで、ステップST91~ST96が繰り返される。一方、全ての不良メモリセルMCを選択したと判定される場合(ステップST96;yes)、処理は終了する。
【0110】
以上により、高抵抗化動作が終了する。
【0111】
図12は、実施形態に係る磁気記憶装置における高抵抗化動作を説明するためのタイミングチャートである。
図12では、
図11のステップST93(及びST94)において選択メモリセルMCに印加される電圧と、その際の選択された不良メモリセルMCの抵抗値との関係が時系列で示される。そして、(j+1)回目の電圧の印加によって、選択メモリセルMCが高抵抗化する場合が示される(jは自然数)。
【0112】
図12に示すように、時刻t0において、変数iが“0”に設定され、電圧Vfが選択メモリセルMCに印加される。この際、選択された不良メモリセルMCのスイッチング素子SELは短絡している。このため、選択メモリセルMCには多量の電流が流れ、選択メモリセルMCの抵抗値は、閾値Rthに対して非常に小さな値となる。
【0113】
同様に、時刻t1及びt2においてそれぞれ、変数iが“1”及び“2”に設定され、電圧(Vf+ΔV)及び(Vf+2ΔV)が選択メモリセルMCに印加される。
図12の例では、この場合でも、選択メモリセルMCの抵抗値がほとんど上昇しない。すなわち、選択された不良メモリセルMCのスイッチング素子SELは短絡したままである。
【0114】
時刻tjにおいて、変数iがjに設定され、電圧(Vf+jΔV)が選択メモリセルMCに印加される。これにより、選択された不良メモリセルMCのスイッチング素子SELの短絡した部分がフューズし、断線又は断線したと見なせる程度に急激に高抵抗化する。このため、選択メモリセルMCには電流がほとんど(時刻t0~t2に選択メモリセルMCに流れる電流の1/1000程度しか)流れなくなり、選択メモリセルMCの抵抗値は閾値Rthを上回る。
【0115】
時刻tjにおいて、制御回路18は、選択された不良メモリセルMC内のスイッチング素子SELが高抵抗化したことを確認し、選択メモリセルMCに電圧VSSを印加する。これにより、高抵抗化動作が終了する。
【0116】
図13は、実施形態に係る磁気記憶装置における高抵抗化動作を説明するための模式図である。
図13では、メモリセルMC<k+1,m,n>が不良メモリセルMCであり、不良メモリセルテーブル5内には、当該不良メモリセルMC<k+1,m,n>に関連づけられて、ワード線WL<k+2,m>のアドレス情報<k+2,m>及びビット線BL<k+1,n>のアドレス情報<k+1,n>の組が記憶されているものとして説明する。
【0117】
図13に示すように、メモリセルMC<k+1,m,n>が高抵抗化対象の不良メモリセルMCとして選択された場合、選択ワード線WL及び選択ビット線BLの組は、ワード線WL<k+2,m>及びビット線BL<k+1,n>となる。
【0118】
ロウ選択回路11及びカラム選択回路12は、選択ワード線WL<k+2,m>に電圧(Vf+iΔV)を印加し、選択ビット線BL<k+1,n>に電圧VSSを印加する。これにより、選択メモリセルMC<k+1,m,n>に電位差|Vf+iΔV|が発生し、選択メモリセルMC内のスイッチング素子SELを高抵抗化させることができる。
【0119】
また、ロウ選択回路11及びカラム選択回路12は、選択ワード線WL以外の全てのワード線WL、及び選択ビット線BL以外の全てのビット線BLに電圧(Vf+iΔV)/2を印加する。これにより、図示されたメモリセルMCのうち、メモリセルMC<k+2,m,n>、MC<k+2,m,n+1>、MC<k+1,m+1,n>、MC<k+1,m,n+1>、MC<k,m+1,n>、及びMC<k,m,n>には電位差|Vf+iΔV|/2が発生し、半選択状態となる。しかしながら、電位差|Vf+iΔV|/2は、スイッチング素子SELを高抵抗化させないと見なせる程度に十分小さい。このため、半選択メモリセルMC内の正常なスイッチング素子SELが意図せず高抵抗化してしまうことを抑制できる。
【0120】
また、図示されたメモリセルMCのうち、メモリセルMC<k+2,m+1,n>、MC<k+2,m+1,n+1>、MC<k+1,m+1,n+1>、MC<k,m,n+1>、及びMC<k,m+1,n+1>には電位差が発生せず、非選択状態となる。このため、非選択メモリセルMC内の正常なスイッチング素子SELが意図せず高抵抗化してしまうことを抑制できる。
【0121】
以上のように動作することにより、高抵抗化動作において、選択メモリセルMC<k+1,m,n>を選択的に高抵抗化することができる。
【0122】
1.3. 本実施形態に係る効果
実施形態によれば、制御回路18は、高抵抗化動作において、スイッチング素子SELが不良であると判定されたメモリセルMCを選択する。ロウ選択回路11及びカラム選択回路12は、当該選択メモリセルMCの抵抗値が閾値Rth以上となるまで、変数iをインクリメントさせながら電圧Vf+iΔVを印加する。閾値Rthは、短絡したスイッチング素子SELの抵抗値の3桁以上の大きさに設定される。これにより、短絡したスイッチング素子SELを断線したとみなせる程度に高抵抗化させることができる。短絡したスイッチング素子SELが常にオン状態となるのに対して、高抵抗化したスイッチング素子SELは常にオフ状態とみなせるため、他のメモリセルMCをアクセス対象とするアクセス動作において、不良メモリセルMCを介して電流が流れることを抑制できる。したがって、使用不能となるメモリセルMCの数を低減することができる。
【0123】
また、高抵抗化動作において、選択メモリセルMCには、定電圧として電圧Vf+iΔVが印加される。これにより、スイッチング素子SELを断線させるために必要な電位差を印加することができる。補足すると、書込み動作では、選択メモリセルMCには、定電流として電流Ic0又はIc1を流すための電圧が印加される。このような定電流方式によれば、短絡したスイッチング素子SELを含むメモリセルMCには、低い電圧でも多量の電流が流れてしまうため、スイッチング素子SELを断線できる程度の電圧を当該メモリセルMCに印加することは困難である。実施形態によれば、制御回路18は、低電圧方式を使用して、選択メモリセルMCに電圧Vf+iΔVを印加する。これにより、短絡したスイッチング素子SELに、断線可能な大きさの電圧を印加することができる。
【0124】
また、ロウ選択回路11及びカラム選択回路12は、半選択メモリセルMCに対して、変数iをインクリメントさせながら、電圧(Vf+iΔV)/2を印加する。電圧(Vf+iΔV)/2は、スイッチング素子SELを意図せず断線させない程度の大きさに設定される。このため、半選択メモリセルMC内の正常なスイッチング素子SELを断線させることなく、選択メモリセルMC内の不良なスイッチング素子SELを選択的に断線することができる。
【0125】
また、ロウ選択回路11及びカラム選択回路12は、非選択メモリセルMCに対して、変数iに依らず、電圧VSSを印加する。これにより、非選択メモリセルMC内の正常なスイッチング素子SELを断線させることなく、選択メモリセルMC内の不良なスイッチング素子SELを選択的に断線することができる。
【0126】
また、メモリコントローラ3は、磁気記憶装置2によるアクセス動作が閾値Nth以上となると、スキャンコマンドを発行し、磁気記憶装置2に送出する。スキャンコマンドを受けると、磁気記憶装置2は、スキャン動作を実行し、不良メモリセルMCを特定する。特定された不良メモリセルMCのアドレス情報の通知を受けたメモリコントローラ3は、当該不良メモリセルMCのアドレス情報を含む高抵抗化コマンドを発行し、磁気記憶装置2に送出する。高抵抗化コマンドを受けた磁気記憶装置2は、高抵抗化動作を実行する。これにより、メモリシステム1は、使用回数の増加に伴って生じる不良メモリセルMCを定期的に高抵抗化することができる。したがって、使用不能となるメモリセルMCの数を抑制することができる。
【0127】
2. 変形例
なお、上述の実施形態には、種々の変形が適用可能である。
【0128】
2.1 第1変形例
例えば、上述の実施形態では、スキャン動作によって特定された不良メモリセルMCを選択的に高抵抗化する場合について説明したが、これに限られない。例えば、高抵抗化動作は、スキャン動作の結果に基づくことなく実行されてもよい。また、高抵抗化動作は、複数のメモリセルMCに対して一括して実行されてもよい。
【0129】
図14は、実施形態の第1変形例に係る磁気記憶装置内の不良メモリセルを高抵抗化するまでの一連の動作を説明するためのフローチャートであり、実施形態における
図7に対応する。
図14では、
図7で説明したステップST50及びST70が省略され、ステップST90に代えてステップST90Aが実行される。
【0130】
図14に示すように、ステップST10において、磁気記憶装置2は、メモリコントローラ3からアクセスコマンドを受けると、アクセス動作を実行する。
【0131】
ステップST30において、メモリコントローラ3は、アクセス動作の実行回数が閾値Nth以上であるか否かを判定する。アクセス動作の実行回数が閾値Nth以上である場合(ステップST30;yes)、処理はステップST90Aに進み、閾値Nth未満である場合(ステップST30;no)、処理はステップST10に戻る。
【0132】
ステップST90Aにおいて、メモリコントローラ3は、高抵抗化コマンドを発行し、磁気記憶装置2に送出する。ステップST90Aにおける高抵抗化コマンドは、例えば、不良メモリセルMCのアドレス情報を含まない。磁気記憶装置2は、メモリコントローラ3から高抵抗化コマンドを受けると、アドレス情報に基づくことなく、不良メモリセルMCに対する高抵抗化動作を実行する。
【0133】
以上で、磁気記憶装置2内の不良メモリセルMCを高抵抗化するまでの一連の動作が終了する。
【0134】
図15は、実施形態の第1変形例に係る磁気記憶装置における高抵抗化動作を説明するためのフローチャートであり、実施形態における
図11に対応する。
図15では、
図11で説明したステップST91及びST96が省略され、ステップST93に代えてステップST93Aが実行される。
【0135】
ステップST92において、制御回路18は、変数iを“0”に初期化する(i=0)。
【0136】
ステップST93Aにおいて、ロウ選択回路11及びカラム選択回路12は、全てのメモリセルMCに電圧(Vf+iΔV)を印加する。例えば、ロウ選択回路11及びカラム選択回路12は、全てのワード線WLに電圧(Vf+iΔV)を印加し、全てのビット線BLに電圧VSSを印加する。上述の通り、電圧(Vf+iΔV)は、スイッチング素子SELの閾値電圧Vthより十分低い値であるため、正常なスイッチング素子SELはオフ状態となる。このため、正常なメモリセルMCには、電流は流れない。一方、短絡したスイッチング素子SELには、当該電圧(Vf+iΔV)による多量の電流が流れ、スイッチング素子SELを高抵抗化することができる。
【0137】
ステップST94において、制御回路18は、ステップST93において全てのメモリセルMCに流れる電流に基づいて抵抗値を算出し、当該抵抗値が閾値Rth以上であるか否かを判定する。選択メモリセルMCの抵抗値が閾値Rth未満であると判定された場合(ステップST94;no)、処理はステップST95に進み、閾値Rth以上であると判定された場合(ステップST94;yes)、処理は終了する。
【0138】
ステップST95において、制御回路18は、変数iをインクリメントさせ、ステップST93Aの処理に戻る。これにより、算出される抵抗値が閾値Rth以上であると判定されるまで(つまり、全てのメモリセルMC内に存在する全ての不良メモリセルMCが高抵抗化されるまで)、ΔVずつステップアップされた電圧が全てのメモリセルMCに印加される。
【0139】
以上のように動作することにより、メモリセルアレイ10内の全ての不良メモリセルMCに対して一括して高抵抗化動作を実行することができる。
【0140】
2.2 第2変形例
また、例えば、上述の実施形態では、高抵抗化動作の際に不良メモリセルMCに定電圧をステップアップさせながら繰り返し印加する場合について説明したが、これに限られない。例えば、高抵抗化動作の際に不良メモリセルMCには、同じ値の電圧が(ステップアップさせずに)繰り返し印加されてもよい。
【0141】
図16は、実施形態の第2変形例に係る磁気記憶装置における高抵抗化動作を説明するためのフローチャートであり、実施形態における
図11に対応する。
図16では、
図11で説明したステップST92及びST95が省略され、ステップST93に代えてステップST93Bが実行される。
【0142】
ステップST91において、制御回路18は、高抵抗化コマンドを受けると、当該高抵抗化コマンド内に含まれる不良メモリセルMCのアドレス情報に基づき、不良メモリセルMCを高抵抗化の対象として選択する。
【0143】
ステップST93Bにおいて、ロウ選択回路11及びカラム選択回路12は、選択メモリセルMCに電圧Vfを印加する。例えば、ロウ選択回路11及びカラム選択回路12は、選択ワード線WLに電圧Vfを印加し、選択ビット線BLに電圧VSSを印加する。
【0144】
ステップST94において、制御回路18は、ステップST93Bにおいて選択メモリセルMCに流れる電流に基づいて抵抗値を算出し、当該抵抗値が閾値Rth以上であるか否かを判定する。選択メモリセルMCの抵抗値が閾値Rth以上であると判定された場合(ステップST94;yes)、処理はステップST96に進み、閾値Rth未満であると判定された場合(ステップST94;no)、処理はステップST93Bに戻る。これにより、選択メモリセルMCの抵抗値が閾値Rth以上であると判定されるまで、一定の電圧Vfが選択メモリセルMCに印加される。
【0145】
ステップST96において、制御回路18は、全ての不良メモリセルMCを選択したか否かを判定する。選択していない不良メモリセルMCがあると判定される場合(ステップST96;no)、処理はステップST91に戻る。これにより、全ての不良メモリセルMCの抵抗値が閾値Rthを超えるまで、ステップST91、ST93B、ST94、及びST96が繰り返される。一方、全ての不良メモリセルMCを選択したと判定される場合(ステップST96;yes)、処理は終了する。
【0146】
以上のように動作することにより、高抵抗化動作が終了する。
【0147】
3. その他
上述の実施形態では、アクセス動作が所定回数実行された後に、スキャン動作及び高抵抗化動作が実行される場合について説明したが、これに限られない。例えば、メモリコントローラ3は、スキャン動作及び高抵抗化動作を磁気記憶装置2(又はメモリシステム1)の起動時に実行してもよいし、定期的に実行してもよい。スキャン動作及び高抵抗化動作を定期的に実行する場合、メモリコントローラ3は、例えば、直前にスキャン動作及び高抵抗化動作を実行してからの経過時間が閾値以上となった際に、新たなスキャン動作及び高抵抗化動作のためのコマンドを発行し得る。
【0148】
また、スキャン動作及び高抵抗化動作は、磁気記憶装置2の製造中(例えば、磁気記憶装置2の出荷前、かつ磁気記憶装置2に対するチップバーンイン試験が終了した後)に実行されてもよい。磁気記憶装置2の製造中にスキャン動作及び高抵抗化動作が実行される場合、スキャンコマンド及び高抵抗化コマンドは、例えば、テスタ(図示せず)から発行され得る。
【0149】
また、上述の変形例では、全てのメモリセルMCに対して一括して高抵抗化動作を実行する場合について説明したが、これに限られない。例えば、高抵抗化動作は、レイヤ毎、カラム毎、ロウ毎など、メモリセルアレイ10内の複数のメモリセルMCのうちの一部に対して一括して実行されてもよい。より具体的には、例えば、レイヤ毎に高抵抗化動作を一括して実行する場合、高抵抗化対象のレイヤに属するメモリセルMCよりも上方の全ての配線(ワード線WL又はビット線BL)に電圧Vf+iΔVが印加され、下方の全ての配線に電圧VSSが印加される。これにより、高抵抗化対象のレイヤに属する全てのメモリセルMCに電圧Vf+iΔVを印加しつつ、他の全てのレイヤに属する全てのメモリセルには電圧VSSを印加することができる。以上のように動作することにより、レイヤ毎に一括して実行する高抵抗化動作を実現できる。
【0150】
また、上述の実施形態及び変形例では、高抵抗化動作において、選択メモリセルMCの抵抗値が閾値以上であるか否かを判定する場合について説明したが、これに限られない。例えば、メモリコントローラ3は、選択メモリセルMCに流れる電流値が閾値未満であるか否かを判定してもよい。この場合に設定される閾値は、例えば、短絡したスイッチング素子SELを含むメモリセルMCに流れる電流に対して3桁程度小さな値に設定され得る。
【0151】
また、上述の実施形態及び変形例では、スキャン動作において、電圧Varbを印加して不良メモリセルMCを特定する定電圧方式が用いられる場合について説明したが、これに限られず、定電流方式が用いられてもよい。この場合、不良メモリセルMCを特定するための判定動作は、所定の大きさの電圧が印加されたか否かによって判定し得る。
【0152】
また、上述の実施形態及び変形例で述べたメモリセルMCは、磁気抵抗効果素子MTJがスイッチング素子SELの下方に設けられる場合について説明したが、磁気抵抗効果素子MTJがスイッチング素子SELの上方に設けられてもよい。また、レイヤアドレスkが偶数の場合と奇数の場合とで、磁気抵抗効果素子MTJとスイッチング素子SELと間の上限関係が反対に設けられてもよい。
【0153】
また、上述の実施形態及び変形例で述べた磁気抵抗効果素子MTJは、記憶層SLが参照層RLの上方に設けられるトップフリー型である場合について説明したが、これに限られない。例えば、磁気抵抗効果素子MTJは、記憶層SLが参照層RLの下方に設けられるボトムフリー型であってもよい。その場合、データ“1”とデータ“0”の書込み電流の方向は
図5で示されたトップフリー型とは逆になる。
【0154】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0155】
1…メモリシステム、2…磁気記憶装置、3…メモリコントローラ、5…不良メモリセルテーブル、10…メモリセルアレイ、11…ロウ選択回路、12…カラム選択回路、13…デコード回路、14…書込み回路、15…読出し回路、16…電圧生成回路、17…入出力回路、18…制御回路、20…半導体基板、21,24,27…導電体、22,23,25,26…素子、31,32,34,36,38…非磁性体、33,35,37…強磁性体。