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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022050064
(43)【公開日】2022-03-30
(54)【発明の名称】フットカバー
(51)【国際特許分類】
   A41B 11/00 20060101AFI20220323BHJP
【FI】
A41B11/00 H
A41B11/00 B
【審査請求】有
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020156437
(22)【出願日】2020-09-17
(11)【特許番号】
(45)【特許公報発行日】2021-07-14
(71)【出願人】
【識別番号】520361966
【氏名又は名称】桜産業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100109254
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 雅典
(72)【発明者】
【氏名】田中 博行
(72)【発明者】
【氏名】ヴィエン・クィ
【テーマコード(参考)】
3B018
【Fターム(参考)】
3B018AA03
3B018AC01
(57)【要約】
【課題】 本願発明は、爪先に生じる違和感や縫合部の解れを解決することができるフットカバーを提供する。
【解決手段】 足の爪先から踵までを覆う被覆部に、甲部及び足首を露出させる履き口を有してなるフットカバーにおいて、
前記被覆部は、前記履き口が開口形成されて概ね環状を成す甲部ストレッチ生地と、底部ストレッチ生地の周縁同士を縫い合わせてなり、
前記甲部ストレッチ生地は、その前部において前記被覆部の足底側に回り込むように縫製されており、
前記底部ストレッチ生地は、前記回り込み部分と縫い合わされる縁部が前記回り込み形状の縁部に合わせて控えられた形状とされていることを特徴とする。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
足の爪先から踵までを覆う被覆部に、甲部及び足首を露出させる履き口を有してなるフットカバーにおいて、
前記被覆部は、前記履き口が開口形成されて概ね環状を成す甲部ストレッチ生地と、底部ストレッチ生地の周縁同士を縫い合わせてなり、
前記甲部ストレッチ生地は、その前部において前記被覆部の足底側に回り込むように縫製されており、
前記底部ストレッチ生地は、前記回り込み部分と縫い合わされる縁部が前記回り込み形状の縁部に合わせて控えられた形状とされていることを特徴とするフットカバー。
【請求項2】
前記甲部ストレッチ生地は、その前部において着用者の足指を収容する袋状部を形成するように縫製されており、
前記底部ストレッチ生地は、前記袋状部と縫い合わされる縁部が前記袋状部の縁部に合わせて控えられた形状とされていることを特徴とする請求項1記載のフットカバー。
【請求項3】
前記甲部ストレッチ生地と前記底部ストレッチ生地の縫合部は、主に着用者の指の非接地部分の下側を通るように形成されていることを特徴とする請求項1又は2記載のフットカバー。
【請求項4】
前記底部ストレッチ生地は、前後方向の着用者の土踏まずに対応する位置において、その左右両側の縁部が外側へ延出する凸状に形成されており、
前記甲部ストレッチ生地は、前記凸状部分と縫い合わせられる縁部が、前記凸状部分に合わせて内側へ控えられた凹状に形成されていることを特徴とする請求項1乃至3の何れかに記載のフットカバー。
【請求項5】
前記底部ストレッチ生地は、前後方向の着用者の土踏まずに対応する位置において、その左右両側の縁部に甲部側へ延出した部分を有しており、
前記甲部ストレッチ生地は、前記延出部分に対応するように控えられた部分を有していることを特徴とする請求項1乃至3の何れかに記載のフットカバー。
【請求項6】
前記甲部ストレッチ生地は、前記履き口に対応する位置において、その左右両側の縁部が部分的に内側に控えられた凹状に形成されており、
前記底部ストレッチ生地は、前記凹状部分と縫い合わされる縁部が、前記凹状部分に合わせて外側に延出した凸状に形成されていることを特徴とする請求項1乃至3の何れかにフットカバー。
【請求項7】
前記甲部ストレッチ生地は、前記履き口に対応する位置において、その左右両側の縁部に内側に控えられた部分を有しており、
前記底部ストレッチ生地は、前記控えられた部分に対応するように延出した部分を有していることを特徴とする請求項1乃至3の何れかにフットカバー。
【請求項8】
前記甲部ストレッチ生地は、その後部が着用者の踵の後面に沿うように立体的に縫製されていることを特徴とする請求項1乃至7の何れかに記載のフットカバー。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、甲部及び足首を露出させる履き口を開口形成してなり、パンプス等を履いた際に外へはみ出すことがないようにしたフットカバーに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、図4(a)に示すように、爪先Tから踵Hまでを覆う前後方向に長い被覆部101に甲部U及び足首Aを露出させる履き口102を開口形成したフットカバー100がある(例えば特許文献1参照。)。フットカバー100は、図4(b)に示すように、概ね長丸形の平板状で履き口部102となる開口200aを有する甲部ストレッチ生地200と、甲部ストレッチ生地200と略同外形で開口を有しない平板状の底部ストレッチ生地300を上下に重ねて外周縁同士を縫い合わせて形成する。
【0003】
かかるフットカバーは、通常の靴下と異なり、大きな履き口を有するため、被覆部101の前後に当接する爪先Tと踵Hで、前後方向に大きく引き伸ばして元に戻ろうとする引張力で装着状態を維持している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2016-39386号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、被覆部101は、着用時に爪先Tと踵Hで前後端の横幅寸法が固定されており、爪先Tと踵Hの間で前後方向に直線的に引っ張られるものであり、足の前後方向の中途部にある土踏まず(足底弓蓋)Sとの間に隙間Gを生じてフィット感が得られないという問題がある。
【0006】
また、ストレッチ生地を一方向に引き伸ばすと、直交する方向で幅を縮める特性があるところ、被覆部101は、着用時に各ストレッチ生地が主に前後方向に引き伸ばされ、上下左右方向に縮もうとして、直線的に形成される縫合部400を境として引き合っている。着用者が歩行動作により足指Fを甲部U側に反らせると、底部ストレッチ生地300は更に前後方向に引き伸ばされて横幅方向に縮むことで、甲部ストレッチ生地200を下方へ強く引っ張る。これにより開口部200aの左右両側にある側方部200bや踵部200cなど足に対する引っ掛かりが小さい部分がずり下げられて、フットカバーが脱げてしまうという問題を生じる。
【0007】
更に、フットカバー100は、周縁形状が同じ平板状のストレッチ生地を縫い合わせたものであるため、図4(a)に示すように、着用時に縫合部400が足底側と甲部側の境目にきて、特に敏感な爪先Tに接触することが多く、着用者に違和感(ごろつき感)を与えるという問題がある。特に爪が接触する場合には、繰り返し擦れることで縫合部400が解れて、短期間で穴が開くことも懸念される。
【0008】
上記のような事情に鑑みて、本願発明は、着用時の土踏まずに対するフィット感の不足、歩行時における脱げ易さ、あるいは爪先に生じる違和感や縫合部の解れを解決することができるフットカバーを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
請求項1の発明は、
足の爪先から踵までを覆う被覆部に、甲部及び足首を露出させる履き口を有してなるフットカバーにおいて、
前記被覆部は、前記履き口が開口形成されて概ね環状を成す甲部ストレッチ生地と、底部ストレッチ生地の周縁同士を縫い合わせてなり、
前記甲部ストレッチ生地は、その前部において前記被覆部の足底側に回り込むように縫製されており、
前記底部ストレッチ生地は、前記回り込み部分と縫い合わされる縁部が前記回り込み形状の縁部に合わせて控えられた形状とされていることを特徴とするフットカバー
を提供する。
【0010】
請求項2の発明は、
前記甲部ストレッチ生地は、その前部において着用者の足指を収容する袋状部を形成するように縫製されており、
前記底部ストレッチ生地は、前記袋状部と縫い合わされる縁部が前記袋状部の縁部に合わせて控えられた形状とされていることを特徴とする請求項1記載のフットカバー
を提供する。
【0011】
請求項3の発明は、
前記甲部ストレッチ生地と前記底部ストレッチ生地の縫合部は、主に着用者の指の非接地部分の下側を通るように形成されていることを特徴とする請求項1又は2記載のフットカバー
を提供する。
【0012】
請求項4の発明は、
前記底部ストレッチ生地は、前後方向の着用者の土踏まずに対応する位置において、その左右両側の縁部が外側へ延出する凸状に形成されており、
前記甲部ストレッチ生地は、前記凸状部分と縫い合わせられる縁部が、前記凸状部分に合わせて内側へ控えられた凹状に形成されていることを特徴とする請求項1乃至3の何れかに記載のフットカバー
を提供する。
【0013】
請求項5の発明は、
前記底部ストレッチ生地は、前後方向の着用者の土踏まずに対応する位置において、その左右両側の縁部に甲部側へ延出した部分を有しており、
前記甲部ストレッチ生地は、前記延出部分に対応するように控えられた部分を有していることを特徴とする請求項1乃至3の何れかに記載のフットカバー
を提供する。
【0014】
請求項6の発明は、
前記甲部ストレッチ生地は、前記履き口に対応する位置において、その左右両側の縁部が部分的に内側に控えられた凹状に形成されており、
前記底部ストレッチ生地は、前記凹状部分と縫い合わされる縁部が、前記凹状部分に合わせて外側に延出した凸状に形成されていることを特徴とする請求項1乃至3の何れかにフットカバー
を提供する。
【0015】
請求項7の発明は、
前記甲部ストレッチ生地は、前記履き口に対応する位置において、その左右両側の縁部に内側に控えられた部分を有しており、
前記底部ストレッチ生地は、前記控えられた部分に対応するように延出した部分を有していることを特徴とする請求項1乃至3の何れかにフットカバー
を提供する。
【0016】
請求項8の発明は、
前記甲部ストレッチ生地は、その後部が着用者の踵の後面に沿うように立体的に縫製されていることを特徴とする請求項1乃至7の何れかに記載のフットカバー
を提供する。
【発明の効果】
【0017】
請求項1の発明によれば、以下の優れた効果を奏する。甲部ストレッチ生地がその前部が被覆部の足底側に回り込むように縫製され、それに応じて底部ストレッチ生地の縁部が控えられているため、縫合部が爪先から下側にずれた位置に形成されるので、敏感な指先に縫合部が接触することがなくなり、着用者が違和感を覚えずに済む。また。歩行動作で爪が繰り返し擦れて生じる縫合部の解れが防止される。
【0018】
請求項2の発明によれば、請求項1の発明が奏する効果に加えて、以下の優れた効果を奏する。甲部ストレッチ生地がその前部に着用者の足指を収容する袋状部を形成するように縫製され、それに応じて底部ストレッチ生地の縁部が控えられているため、着用者が爪先を甲側に反らせても、底部ストレッチ生地は上方へ引っ張られることがない。これにより前後方向の伸びが抑えられ、結果として、底部ストレッチ生地が甲部ストレッチ生地の側方部や踵部をずり下げようとする引張力が軽減されて、フットカバーの脱げ易さが改善される。
【0019】
請求項3の発明によれば、請求項1又は2の発明が奏する効果に加えて、以下の優れた効果を奏する。甲部ストレッチ生地と底部ストレッチ生地の縫合部が、着用者の指の非接地部分の下側を通るように形成されることにより、着用者の足指が縫合部を踏むことがなく、歩行時における快適性が向上する。また、縫合部に足が直接触れることによる縫合部の解れが生じにくくなる。
【0020】
請求項4又は5の発明によれば、請求項1乃至3の発明が奏する効果に加えて、以下の優れた効果を奏する。底部ストレッチ生地において着用者の土踏まずに対応する位置の左右両側縁部が外側へ延出しており、それに縫い合わせられる底部ストレッチ生地の縁部が上記延出部分に応じて控えられているため、フットカバーを着用すると、底部ストレッチ生地が甲部側へ回り込むように延出し、これを甲部ストレッチ生地が引き上げるようになる。これにより、底部ストレッチ生地3が土踏まずSに沿うようになりフィット感が向上する。また、底部ストレッチ生地は、延出部分があることで左右方向に長くなる分、横幅方向の縮みを分散吸収するため、甲部ストレッチ生地を引き下げる方向の引張力が軽減されてフットカバーの脱げ易さが改善される。
【0021】
請求項6又は7の発明によれば、請求項1乃至3の発明が奏する効果に加えて、以下の優れた効果を奏する。甲部ストレッチ生地において履き口に対応する位置の縁部が内側へ控えられており、それに縫い合わせられる底部ストレッチ生地の縁部が上記控え形状部分に応じて延出しているため、底部ストレッチ生地は、延出部分があることで左右方向に長くなる分、フットカバーを着用したときに生じる横幅方向の縮みを分散吸収するため、履き口を左右に広げる引張力が軽減されてフットカバーの脱げ易さが改善される。また、控えられた甲部ストレッチ生地が、底部ストレッチ生地を上方に引っ張ることで、底部ストレッチ生地3の足底に対するフィット感が向上する。
【0022】
請求項8の発明によれば、請求項1乃至7の発明が奏する効果に加えて、以下の優れた効果を奏する。甲部ストレッチ生地の後部が装着者の踵に沿うように立体縫製を施されているので、フットカバー全体としてフィット感が向上し、脱げ難くなる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
図1】本発明のフットカバーの(a)単体斜視図、及び(b)足への着用状態を示す側面図。
図2】本発明のフットカバーの(a)甲部ストレッチ生地と底部ストレッチ生地を縫い合わせる前の状態を示す斜視図、及び(b)甲部ストレッチ生地の展開斜視図。
図3】別の実施例となるフットカバーの(a)甲部ストレッチ生地と底部ストレッチ生地を縫い合わせる前の状態を示す図、及び(b)甲部ストレッチ生地の展開斜視図。
図4】従来のフットカバーの(a)着用状態を示す側面図、及び(b)甲部ストレッチ生地と底部ストレッチ生地を縫い合わせる前の状態を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0024】
(フットカバーの構成)
本発明のフットカバーについて、図1及び図2に基づき説明する。本発明のフットカバー1は、伸縮性を有するストレッチ生地で左右対称に形成されており、図1(a)に示すように、前後方向に長い袋状に形成された被覆部11と、その上面側に開口形成されて前後方向に長い履き口12を有してなる。フットカバー1を着用すると、図1(b)に示すように、被覆部11がその前後端に当接する爪先Tと踵Hの間で前後方向に引き伸ばされて爪先Tから踵Hまでを覆い、履き口12が足の甲部Uの大半及び足首Aを露出させる。
【0025】
被覆部11は、図2(a)に示すように、履き口12となる開口2aを有して概ね環状を成す甲部ストレッチ生地2と、開口を有しない平板状の底部ストレッチ生地3とからなり、これらを上下に重ねて周縁(切断端)同士を縫い合わせることにより形成される。但し、甲部ストレッチ生地2と底部ストレッチ生地3は、上記従来のフットカバーとは異なり、相互に外形が異なっている。
【0026】
具体的には、図2(a)に示すように、甲部ストレッチ生地2は、その前部(図中の左側)の周縁が被覆部の足底側に回り込むように予め立体的に縫製されており、底部ストレッチ生地3は、上記回り込み部分と縫い合わされる前端の縁部Eと前部両側の縁部Eが、上記回り込み部分の内周縁形状に合わせて足底側の内方へ控えられた形状となっている。また、同図に示すように、底部ストレッチ生地3は、前後方向の中途部で着用者の土踏まずに対応する位置に左右両外側へ湾曲状に延出した部分31が設けられており、それに応じて、甲部ストレッチ生地2は、その前後方向の中途部の両側縁部Eが内方へ抉られるように幅方向の寸法が小さく控えられている。
【0027】
甲部ストレッチ生地2は、前部が立体的に縫い合わせられることで、図1(b)に示すように、着用者の足指Fを根元近くまで収容できる袋状部21と、その左右両側の後方に連続するように設けられて足底側に回り込む折込部22が予め形成されている。甲部ストレッチ生地2は、元々、図2(b)に示すような平板状であるが、前側部21a(袋状部21の足底側となる部分)と前部の左右両側部22aを同図の矢印で示すように下側に折り込んで、これらが縫合線23(図2(a))で縫い合わせられることにより、上記の袋状部21と折込部22が形成される。
【0028】
底部ストレッチ生地3は、甲部ストレッチ生地2の上記回り込み部分の内周縁部(切断端)に合わせて、図2(a)に示すように、前端縁Eが後側に控えられており、前部の左右両端縁Eが横方向の内側に控えられている。なお、フットカバー1において、甲部ストレッチ生地2の袋状部21と、底部ストレッチ生地3の前端縁Eを縫い合わせてなる縫製部4は、主に着用者の足指Fの第1関節と第2関節の間の非接地部分の下側を略真直ぐに通る概ね直線状に形成される。
【0029】
底部ストレッチ生地3は、図2(a)に示すような平板状であるが、外側に湾曲形状に延出している延出部分(凸状部分)31が同図に矢印で示すように上方へ折り込むようにして、甲部ストレッチ生地2の凹状に控えられた湾曲形状の縁部Eと縫い合わせることにより立体的に縫製する。これにより、底部ストレッチ生地3の前後方向の中途部に設けられた延出部分31は、図1(a)、(b)に示すようにフットカバー1の被覆部11の甲部側又は足の上方へ回り込むようになる。
【0030】
上記のとおり、甲部ストレッチ生地2と底部ストレッチ生地3の周縁部同士を縫い合わせることで、図1(a)に示すように、甲部ストレッチ生地2が、その前部において被覆部11の足底側に回り込むようになる一方、底部ストレッチ生地3が、その中途部において被覆部11の甲部側に回り込むようなフットカバー1が形成される。
【0031】
なお、甲部ストレッチ生地2の開口部2aの前側と後側の周縁部の裏側には、フットカバー1を足に着用したときに、甲部Uの前側及び踵Hの後ろ側に密着することにより、履き口12に対して足がずれ出しにくいようにする概ね円弧形状のシリコン製テープ24、25が取り付けられている。
【0032】
(フットカバーの作用効果)
(1)フットカバー1は、上記従来のフットカバー同様、着用時には、被覆部11が前後方向に引き伸ばされるが、底部ストレッチ生地3において、着用者の土踏まずSに対応する前後方向の中途部が、その左右両側において、図1(b)に示すように上方に凸状に延出する湾曲形状を成している一方、その延出部分31と縫い合わせられている甲部ストレッチ生地2は、縁部E図2)が上方へ凹状に控える湾曲形状を成す。その結果として、甲部ストレッチ生地2が土踏まずSに沿うように引き上げられ、優れたフィット感が得られるものである。
【0033】
(2)フットカバー1は、底部ストレッチ生地3が、図2(a)に示すように、延出部分31が設けられている中途部では左右方向に長く、ここで、前後方向に引き伸ばされることによる横幅方向の縮みを分散吸収できる。その結果として、底部ストレッチ生地3が甲部ストレッチ生地2の側方部2bや踵部2cをずり下げたり、履き口12を左右に広げたりする引張力が緩和され、フットカバーの脱げ易さが改善される。
【0034】
(3)フットカバー1は、図2(a)に示すとおり、甲部ストレッチ生地2の前部が着用者の足指Fを収容する袋状部21を形成するように立体的に縫製されており、それに応じて底部ストレッチ生地3の前端側の縁部Eは、着用時における足指Fの根元部近くまで控えられている。そのため、着用者が爪先Tを甲側(上方)に反らせても、それによって底部ストレッチ3が上方へ引っ張られることはない。これにより、上記従来のフットカバーで生じていた、着用者の歩行動作による底部ストレッチ3の前後方向の伸びが抑えられ、結果として、甲部ストレッチ生地の側方部2bや踵部2cをずり下げようとする引張力が軽減されて、フットカバーの脱げ易さが改善される。
【0035】
(4)袋状部21が着用者の足指Fを根元近くまで収容することにより、甲部ストレッチ生地2と底部ストレッチ生地3の前端の縫合部4が主に着用者の足指Fの非接地部分の下側を通る概ね直線形状に形成されている。これにより、着用者が歩行時に縫合部4を踏むことがなくなり、快適性を向上させることができる。また、縫合部4に足が直接触れることがないので、縫合部の解れも生じにくくなる。
【0036】
(フットカバーの別実施例)
上記実施例では、図1(b)に示すように、甲部ストレッチ生地2の前部に着用者の足指Fを収容する袋状部21を形成することとしたが、必ずしも足指Fを収容させなくてもよく、例えば図3に示すように、甲部ストレッチ生地2の前部が被覆部11の足底側へ僅かに回り込むようにするだけでも良い。これにより、被覆部11の前部に出る線状の縫合部4が足底側寄りに形成されて、フットカバーを着用したときに爪先Tより下側にずれた位置にくるため、着用者にごろつき感(違和感)を与えることが防止される。また、縫合部が爪先からずれた位置にくることにより、爪との擦れによる解れから生じる孔開きが防止される。
【0037】
上記実施例では、底部ストレッチ生地3の凸状部分31及びこれと縫い合わせられる甲部ストレッチ生地2の凹状に控えられた部分は、周縁部が湾曲状に形成されているが、これに限らず、直線的な山形状や台形状に形成されていても良い。また、底部ストレッチ生地3の凸状部分31は、甲部ストレッチ生地2の前部の立体縫製部分と相互に干渉しないようにするため、後ろ寄りに配置しているが、甲部ストレッチ生地2において、前部の立体縫製部分の前後寸法が短い場合や前部の立体縫製部分が無い場合には、前方へずらした位置に配置しても良いし、前後に長く延ばしても良い。
【0038】
上記実施例では、甲部ストレッチ生地2の前部を足底側に回り込ませて、それに応じて底部ストレッチ生地3の前端部を内側に控えた形状とする構造と、底部ストレッチ生地3の前後方向の中途部において甲部側に回り込ませて、それに応じて長手方向の甲部ストレッチ生地2を内側に控えた形状とする構造の両方を採用しているが、必ずしも両方の構造を採用する必要はなく、何れか一方のみを採用して、他方は上記従来のフットカバーと同様に甲部ストレッチ生地2と底部ストレッチ生地の外周縁形状を同じものとしても良い。
【0039】
上記実施例では、甲部ストレッチ生地2の後部は平板状のままとしたが、着用者の踵の後面に沿うように立体的に縫製することとしても良い。その他、本発明はその要旨を変更しない範囲で種々の変更を成し得るものである。
【符号の説明】
【0040】
1 フットカバー
11 被覆部
12 履き口
2 甲部ストレッチ生地
2a 開口
3 底部ストレッチ生地
31 延出部分(凸状部分)
図1
図2
図3
図4
【手続補正書】
【提出日】2021-03-19
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
足の爪先から踵までを覆う被覆部に、甲部及び足首を露出させる履き口を有してなるフットカバーにおいて、
前記被覆部は、前記履き口が開口形成されて概ね環状を成す甲部ストレッチ生地と、底部ストレッチ生地の周縁同士を縫い合わせてなり、
前記甲部ストレッチ生地は、その前部において前記被覆部の足底側に回り込む回り込み部分が予め形成されており、
前記底部ストレッチ生地は、前記回り込み部分の内周縁部と縫い合わされる縁部が前記内周縁部に合わせて控えられた形状とされていることを特徴とするフットカバー。
【請求項2】
前記甲部ストレッチ生地は、その前部において着用者の足指を収容する袋状部を形成するように縫製されており、
前記底部ストレッチ生地は、前記袋状部と縫い合わされる縁部が前記袋状部の縁部に合わせて控えられた形状とされていることを特徴とする請求項1記載のフットカバー。
【請求項3】
前記甲部ストレッチ生地と前記底部ストレッチ生地の縫合部は、主に着用者の指の非接地部分の下側を通るように形成されていることを特徴とする請求項1又は2記載のフットカバー。
【請求項4】
前記底部ストレッチ生地は、前後方向の着用者の土踏まずに対応する位置において、その左右両側の縁部が外側へ延出する凸状部分が形成されており、
前記甲部ストレッチ生地は、前記凸状部分と縫い合わせられる縁部が、前記凸状部分に合わせて内側へ控えられた凹状に形成されていることを特徴とする請求項1乃至3の何れかに記載のフットカバー。
【請求項5】
前記底部ストレッチ生地は、前後方向の着用者の土踏まずに対応する位置において、その左右両側の縁部に甲部側へ延出した延出部分を有しており、
前記甲部ストレッチ生地は、前記延出部分に対応するように控えられた部分を有していることを特徴とする請求項1乃至3の何れかに記載のフットカバー。
【請求項6】
前記甲部ストレッチ生地は、前記履き口に対応する位置において、その左右両側の縁部が部分的に内側に控えられた凹状に形成されており、
前記底部ストレッチ生地は、前記凹状に控えられた縁部と縫い合わされる縁部が、前記凹状に控えられた縁部に合わせて外側に延出した凸状に形成されていることを特徴とする請求項1乃至3の何れかに記載のフットカバー。
【請求項7】
前記甲部ストレッチ生地は、前記履き口に対応する位置において、その左右両側の縁部に内側に控えられた部分を有しており、
前記底部ストレッチ生地は、前記控えられた部分に対応するように延出した部分を有していることを特徴とする請求項1乃至3の何れかに記載のフットカバー。
【請求項8】
前記甲部ストレッチ生地は、その後部が着用者の踵の後面に沿うように立体的に縫製されていることを特徴とする請求項1乃至7の何れかに記載のフットカバー。
【手続補正2】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0009
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0009】
請求項1の発明は、
足の爪先から踵までを覆う被覆部に、甲部及び足首を露出させる履き口を有してなるフットカバーにおいて、
前記被覆部は、前記履き口が開口形成されて概ね環状を成す甲部ストレッチ生地と、底部ストレッチ生地の周縁同士を縫い合わせてなり、
前記甲部ストレッチ生地は、その前部において前記被覆部の足底側に回り込む回り込み部分が予め形成されており、
前記底部ストレッチ生地は、前記回り込み部分の内周縁部と縫い合わされる縁部が前記内周縁部に合わせて控えられた形状とされていることを特徴とするフットカバー
を提供する。
【手続補正3】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0012
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0012】
請求項4の発明は、
前記底部ストレッチ生地は、前後方向の着用者の土踏まずに対応する位置において、その左右両側の縁部が外側へ延出する凸状部分が形成されており、
前記甲部ストレッチ生地は、前記凸状部分と縫い合わせられる縁部が、前記凸状部分に合わせて内側へ控えられた凹状に形成されていることを特徴とする請求項1乃至3の何れかに記載のフットカバー
を提供する。
【手続補正4】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0013
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0013】
請求項5の発明は、
前記底部ストレッチ生地は、前後方向の着用者の土踏まずに対応する位置において、その左右両側の縁部に甲部側へ延出した延出部分を有しており、
前記甲部ストレッチ生地は、前記延出部分に対応するように控えられた部分を有していることを特徴とする請求項1乃至3の何れかに記載のフットカバー
を提供する。
【手続補正5】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0014
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0014】
請求項6の発明は、
前記甲部ストレッチ生地は、前記履き口に対応する位置において、その左右両側の縁部が部分的に内側に控えられた凹状に形成されており、
前記底部ストレッチ生地は、前記凹状に控えられた縁部と縫い合わされる縁部が、前記凹状に控えられた縁部に合わせて外側に延出した凸状に形成されていることを特徴とする請求項1乃至3の何れかに記載のフットカバー
を提供する。