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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022050144
(43)【公開日】2022-03-30
(54)【発明の名称】車両用冷却兼加熱装置
(51)【国際特許分類】
   B60H 1/00 20060101AFI20220323BHJP
   B60H 1/32 20060101ALI20220323BHJP
   B60H 1/08 20060101ALI20220323BHJP
【FI】
B60H1/00 102N
B60H1/32 611A
B60H1/08 611Z
B60H1/32 621B
B60H1/32 624F
B60H1/08 621C
B60H1/32 613Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020156574
(22)【出願日】2020-09-17
(71)【出願人】
【識別番号】506292974
【氏名又は名称】マーレ インターナショナル ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング
【氏名又は名称原語表記】MAHLE International GmbH
【住所又は居所原語表記】Pragstrasse 26-46, D-70376 Stuttgart, Germany
(72)【発明者】
【氏名】小池 智哉
【テーマコード(参考)】
3L211
【Fターム(参考)】
3L211BA56
3L211CA16
3L211DA24
3L211DA26
3L211DA29
3L211DA55
3L211DA91
(57)【要約】      (修正有)
【課題】飲食物の冷却および加熱を行いうる車両用冷却兼加熱装置を提供する。
【解決手段】車両用冷却兼加熱装置1は、車室内冷房システム2、エンジン冷却システム3および飲食物収納部を有する冷却兼加熱容器4を備えている。冷却兼加熱容器4の容器本体の熱伝導性材料からなる周壁に、冷房用冷媒が流れる冷媒流路と、エンジン冷却液が流れる冷却液流路とが設けられている。車室内冷房システム2の冷媒循環路24に、室外コンデンサ21から流出した冷媒を室内エバポレータ23に導く第1冷媒流通部25および同冷媒を冷却兼加熱容器4の冷媒流路に導く第2冷媒流通部26が並列状に設けられている。エンジン冷却システム3の冷却液循環路34に、ラジエータ31から流出した冷却液を直接エンジン30に戻す第1冷却液流通部35および同エンジン冷却液を冷却兼加熱容器4の冷却液流路に導く第2冷却液流通部36が並列状に設けられている。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
圧縮機、車室外に配置されかつ冷房時に圧縮機で圧縮された冷媒から熱を放熱させて凝縮させる室外熱交換器、車室内に配置されかつ冷房時に減圧された冷媒に受熱させて蒸発させる室内エバポレータ、およびこれらの機器の間で冷媒を循環させる冷媒循環路を有する車室内冷房システムと、エンジン、高温のエンジン冷却液から熱を放熱させるラジエータ、およびエンジンとラジエータの間でエンジン冷却液を循環させる冷却液循環路を有するエンジン冷却システムとを備えた車両に用いられて飲食物を冷却または加熱する車両用冷却兼加熱装置であって、
冷却または加熱される飲食物を取り出し自在に収納しうる収納部を有する冷却兼加熱容器を備えており、冷却兼加熱容器の収納部を取り囲む壁の少なくとも一部における収納部側を向いた面から一定の厚さを有する部分に、熱伝導性材料からなる熱伝導部が設けられ、当該熱伝導部に、車室内冷房システムを循環する冷媒の少なくとも一部が流れる冷媒流路と、エンジン冷却システムを循環するエンジン冷却液の少なくとも一部が流れる冷却液流路とが互いに独立して設けられ、
車室内冷房システムの冷媒循環路における室外熱交換器の冷媒流出側と圧縮機の冷媒流入側との間に、冷媒を室内エバポレータに導く第1冷媒流通部と、冷媒を冷却兼加熱容器の冷媒流路に導く第2冷媒流通部とが並列状に設けられ、第1冷媒流通部における室内エバポレータよりも上流側および第2冷媒流通部における冷却兼加熱容器の冷媒流路よりも上流側に、それぞれ冷媒を減圧する減圧器が配置されており、
エンジン冷却システムの冷却液循環路におけるラジエータの冷却液流出側とエンジンの冷媒流入側との間に、ラジエータから流出した冷却液を直接エンジンに戻す第1冷却液流通部と、ラジエータから流出した冷却液を冷却兼加熱容器の冷却液流路に導くとともに冷却液流路から流出した冷却液をエンジンに戻す第2冷却液流通部とが並列状に設けられている車両用冷却兼加熱装置。
【請求項2】
冷媒循環路における第1冷媒流通部と第2冷媒流通部との分岐部に、両冷媒流通部への冷媒流量を調整する第1調整弁が設けられている請求項1記載の車両用冷却兼加熱装置。
【請求項3】
冷却液循環路における第1冷却液流通部と第2冷却液流通部との分岐部に、両冷却液流通部への冷却液流量を調整する第2調整弁が設けられている請求項1または2記載の車両用冷却兼加熱装置。
【請求項4】
冷媒循環路における室外熱交換器の冷媒流出側と両冷媒流通部への分岐部との間の部分、および冷媒循環路における両冷媒流通部の合流部と圧縮機の冷媒流入側との間の部分にまたがって、室外熱交換器から流出した冷媒により、室内エバポレータおよび冷却兼加熱容器の冷媒流路のうちの少なくともいずれか一方から圧縮機に戻る冷媒を加熱して気化させる中間熱交換器が設けられている請求項1~3のうちのいずれかに記載の車両用冷却兼加熱装置。
【請求項5】
冷却兼加熱容器が、熱伝導性材料により形成され、かつ上端が開口するとともに下端が閉鎖された筒状の容器本体を備えており、容器本体の内部が収納部となり、容器本体の周壁に、冷媒流路および冷却液流路が、それぞれらせん状となるように周壁の全周にわたって設けられ、容器本体の周壁における冷媒流路および冷却液流路の外周側に断熱空間が形成されている請求項1~4のうちのいずれかに記載の車両用冷却兼加熱装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、車室内で飲料や食料の冷却や加熱を行うための車両用冷却兼加熱装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、車室内で飲料や食料の冷却のみを行う車両用冷蔵庫は、たとえば特許文献1および特許文献2に記載されているように公知である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平5-60445号公報
【特許文献2】特開2006-82604号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1および特許文献2に記載されているのは、あくまでも飲料や食料の冷却専用であり、場合によっては、飲料や食料の冷却に加えて加熱が求められることもある。
【0005】
この発明の目的は、上記問題を解決し、飲料や食料の冷却および加熱を行いうる車両用冷却兼加熱装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、上記目的を達成するために以下の態様からなる。
【0007】
1)圧縮機、車室外に配置されかつ冷房時に圧縮機で圧縮された冷媒から熱を放熱させて凝縮させる室外熱交換器、車室内に配置されかつ冷房時に減圧された冷媒に受熱させて蒸発させる室内エバポレータ、およびこれらの機器の間で冷媒を循環させる冷媒循環路を有する車室内冷房システムと、エンジン、高温のエンジン冷却液から熱を放熱させるラジエータ、およびエンジンとラジエータの間でエンジン冷却液を循環させる冷却液循環路を有するエンジン冷却システムとを備えた車両に用いられて飲食物を冷却または加熱する車両用冷却兼加熱装置であって、
冷却または加熱される飲食物を取り出し自在に収納しうる収納部を有する冷却兼加熱容器を備えており、冷却兼加熱容器の収納部を取り囲む壁の少なくとも一部における収納部側を向いた面から一定の厚さを有する部分に、熱伝導性材料からなる熱伝導部が設けられ、当該熱伝導部に、車室内冷房システムを循環する冷媒の少なくとも一部が流れる冷媒流路と、エンジン冷却システムを循環するエンジン冷却液の少なくとも一部が流れる冷却液流路とが互いに独立して設けられ、
車室内冷房システムの冷媒循環路における室外熱交換器の冷媒流出側と圧縮機の冷媒流入側との間に、冷媒を室内エバポレータに導く第1冷媒流通部と、冷媒を冷却兼加熱容器の冷媒流路に導く第2冷媒流通部とが並列状に設けられ、第1冷媒流通部における室内エバポレータよりも上流側および第2冷媒流通部における冷却兼加熱容器の冷媒流路よりも上流側に、それぞれ冷媒を減圧する減圧器が配置されており、
エンジン冷却システムの冷却液循環路におけるラジエータの冷却液流出側とエンジンの冷媒流入側との間に、ラジエータから流出した冷却液を直接エンジンに戻す第1冷却液流通部と、ラジエータから流出した冷却液を冷却兼加熱容器の冷却液流路に導くとともに冷却液流路から流出した冷却液をエンジンに戻す第2冷却液流通部とが並列状に設けられている車両用冷却兼加熱装置。
【0008】
2)冷媒循環路における第1冷媒流通部と第2冷媒流通部との分岐部に、両冷媒流通部への冷媒流量を調整する第1調整弁が設けられている上記1)記載の車両用冷却兼加熱装置。
【0009】
3)冷却液循環路における第1冷却液流通部と第2冷却液流通部との分岐部に、両冷却液流通部への冷却液流量を調整する第2調整弁が設けられている上記1)または2)記載の車両用冷却兼加熱装置。
【0010】
4)冷媒循環路における室外熱交換器の冷媒流出側と両冷媒流通部への分岐部との間の部分、および冷媒循環路における両冷媒流通部の合流部と圧縮機の冷媒流入側との間の部分にまたがって、室外熱交換器から流出した冷媒により、室内エバポレータおよび冷却兼加熱容器の冷媒流路のうちの少なくともいずれか一方から圧縮機に戻る冷媒を加熱して気化させる中間熱交換器が設けられている上記1)~3)のうちのいずれかに記載の車両用冷却兼加熱装置。
【0011】
5)冷却兼加熱容器が、熱伝導性材料により形成され、かつ上端が開口するとともに下端が閉鎖された筒状の容器本体を備えており、容器本体の内部が収納部となり、容器本体の周壁に、冷媒流路および冷却液流路が、それぞれらせん状となるように周壁の全周にわたって設けられ、容器本体の周壁における冷媒流路および冷却液流路の外周側に断熱空間が形成されている上記1)~4)のうちのいずれかに記載の車両用冷却兼加熱装置。
【発明の効果】
【0012】
上記1)~5)の車両用冷却兼加熱装置において、たとえば缶入り飲料や缶入り食料からなる飲食物を冷却する際には、飲食物を冷却兼加熱容器の収納部内に入れた状態で、車室内冷房システムおいて、圧縮機で圧縮された後に室外熱交換器で放熱した冷媒の少なくとも一部を第2冷媒流通部に流す。第2冷媒流通部を流れる冷媒は、第2減圧器で減圧された後に冷却兼加熱容器の冷媒流路に導かれ、冷媒流路を流れる間に収納部内の飲食物から熱を奪って気化し、圧縮機に戻される。そして、冷媒により熱を奪われた飲食物が冷却される。このとき、冷媒は、冷却兼加熱容器の収納部を取り囲む壁の少なくとも一部における収納部側を向いた面から一定の厚さを有する部分の熱伝導部に設けられた冷媒流路を流れるので、飲食物は比較的速やかに冷却される。
【0013】
たとえば缶入り飲料や缶入り食料からなる飲食物を加熱する際には、飲食物を冷却兼加熱容器の収納部内に入れた状態で、エンジン冷却システムにおいて、エンジンを冷却しかつラジエータで室外空気に放熱した冷却液の少なくとも一部を第2冷却液流通部に流す。第2冷却液流通部を流れる冷却液は、冷却兼加熱容器の冷却液流路に導かれ、冷却液流路を流れる間に収納部内の飲食物に放熱し、エンジンに戻される。そして、エンジン冷却液から熱を受熱した飲食物が加熱される。このとき、エンジン冷却液は、冷却兼加熱容器の収納部を取り囲む壁の少なくとも一部における収納部側を向いた面から一定の厚さを有する部分の熱伝導部に設けられた冷却液流路を流れるので、飲食物は比較的速やかに加熱される。
【0014】
上記2)の車両用冷却兼加熱装置によれば、飲食物の冷却と車室内の冷房とを同時に行う場合、第1冷媒流通部を流れるとともに第1減圧器で減圧された後に室内エバポレータに送られる冷媒量と、第2冷媒流通部を流れるとともに減圧器で減圧された後に冷却兼加熱容器の冷媒流路に送られる冷媒量とを、第1調整弁によって、必要な冷房性能および冷却性能を満たすように適切に調整することができる。
【0015】
上記3)の車両用冷却兼加熱装置によれば、飲食物の加熱を行う場合、第1冷却液流通部を通って直接ラジエータに送られるエンジン冷却液の量と、第2冷却液流通部を通って冷却兼加熱容器の冷却液流路に送られるエンジン冷却液の量とを、第2調整弁によって、必要なエンジン冷却能力および加熱性能を満たすように適切に調整することができる。
【0016】
上記4)の車両用冷却兼加熱装置によれば、中間熱交換器の働きによって、冷却兼加熱容器および室内エバポレータのうちの少なくともいずれか一方から流出しかつ完全に気化していない冷媒を、室外熱交換器から流出した高温高圧の冷媒により加熱して完全に気化させることが可能になり、圧縮機の損傷を防止することができる。
【0017】
上記5)の車両用冷却兼加熱装置によれば、冷却兼加熱容器の収納部を取り囲む壁の少なくとも一部における収納部側を向いた面から一定の厚さを有する部分の熱伝導性材料からなる熱伝導部を、比較的簡単に設けることができる。しかも、断熱空間の働きによって、冷媒流路を流れる冷媒と冷却兼加熱容器外の空気との間の無駄な熱交換、および冷却液流路を流れるエンジン冷却液と冷却兼加熱容器外の空気との間の無駄な熱交換を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】この発明による車両用冷却兼加熱装置の全体構成を概略的に示す図である。
図2図1の車両用冷却兼加熱装置に用いられる冷却兼加熱容器を示す下方から見た斜視図である。
図3図2の冷却兼加熱容器の容器本体を示す上方から見た斜視図である。
図4図2の冷却兼加熱容器の一部分を切り欠いて示す部分拡大斜視図である。
図5図2の冷却兼加熱容器のカバーを示す下方から見た斜視図である。
図6図2の冷却兼加熱容器内に飲食物を入れる際のカバーの状態を示す下方から見た斜視図である。
図7図2の冷却兼加熱容器の一部分を切り欠いて示す平面図である。
図8図2の冷却兼加熱容器の容器本体の一部分を切り欠いて示す斜視図である。
図9図2の冷却兼加熱容器の収納部内に缶入り飲食物を入れた状態を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、この発明の実施形態を、図面を参照して説明する。
【0020】
なお、以下の説明において、「アルミニウム」という用語には、純アルミニウムの他にアルミニウム合金を含むものとする。
【0021】
図1はこの発明による車両用冷却兼加熱装置の全体構成を概略的に示し、図2図8図1の車両用冷却兼加熱装置に用いられる冷却兼加熱容器の構成を示す。また、図9は冷却兼加熱容器内に缶入り飲食物を収納した状態を示す。
【0022】
図1において、車両用冷却兼加熱装置(1)は、冷媒が循環する車室内冷房システム(2)と、エンジン冷却液が循環するエンジン冷却システム(3)と、車室内冷房システム(2)を循環する冷媒により飲食物を冷却するとともにエンジン冷却システム(3)を循環するエンジン冷却液により飲食物を加熱する冷却兼加熱容器(4)とを備えている。
【0023】
車室内冷房システム(2)は、圧縮機(20)と、車室外に配置されかつ冷房時に圧縮機(20)で圧縮された冷媒から熱を放熱させて凝縮させる室外熱交換器としての室外コンデンサ(21)と、冷房時に室外コンデンサ(21)を通過した冷媒を減圧する第1減圧器としての第1膨張弁(22)と、車室内に配置され、かつ冷房時に第1膨張弁(22)で減圧された冷媒に熱を受熱させて蒸発させる室内エバポレータ(23)と、これらの機器を接続する冷媒循環路(24)とを備えている。
【0024】
車室内冷房システム(2)の冷媒循環路(24)における室外コンデンサ(21)の冷媒流出側と圧縮機(20)の冷媒流入側との間に、冷媒を室内エバポレータ(23)に導く第1冷媒流通部(25)と、冷媒を冷却兼加熱容器(4)に導く第2冷媒流通部(26)とが並列状に設けられており、第1冷媒流通部(25)における室内エバポレータ(23)よりも上流側に第1膨張弁(22)が設けられ、第2冷媒流通部(26)における冷却兼加熱容器(4)よりも上流側に第2減圧器としての第2膨張弁(28)が設けられている。車室内冷房システム(2)の冷媒循環路(24)における第1冷媒流通部(25)と第2冷媒流通部(26)との分岐部に、両冷媒流通部(25)(26)への冷媒流量を調整する第1調整弁(27)が設けられている。第1冷媒流通部(25)と第2冷媒流通部(26)とは、冷媒循環路(24)における圧縮機(20)の冷媒流入側よりも上流側において合流している。合流部を(241)で示す。
【0025】
冷媒循環路(24)における室外コンデンサ(21)の冷媒流出側と第1調整弁(27)との間の部分、および冷媒循環路(24)における両冷媒流通部(25)(26)の合流部(241)と圧縮機(20)の冷媒流入側との間の部分にまたがって、室外コンデンサ(21)から流出した高温高圧冷媒により、圧縮機(20)に戻る低温冷媒を加熱して気化させる中間熱交換器(29)が設けられている。中間熱交換器(29)は、たとえば外管と、外管内に間隔をおいて配置された内管とを備え、外管と内管との間の間隙が第1冷媒流路となるとともに内管内が第2冷媒流路となっている二重管式熱交換器が用いられる。室外コンデンサ(21)から流出した高温高圧冷媒および圧縮機(20)に戻る低温冷媒のうちのいずれか一方が第1冷媒流路を流れ、同他方が第2冷媒流路を流れる。
【0026】
エンジン冷却システム(3)は、エンジン(30)と、エンジン(30)を冷却した高温のエンジン冷却液の有する熱を車室外空気に放熱するラジエータ(31)と、ラジエータ(31)に並列状に設けられかつエンジン(30)を冷却した高温のエンジン冷却液の有する熱を空調用空気に放熱して空調用空気を加熱するヒータコア(32)と、ラジエータ(31)およびヒータコア(32)の下流側に配置されてエンジン冷却液を循環させるポンプ(33)と、これらの機器を接続する冷却液循環路(34)とを備えている。
【0027】
エンジン冷却システム(3)の冷却液循環路(34)におけるラジエータ(31)の冷却液流出側とエンジン(30)の冷却液流入側との間に、ラジエータ(31)から流出した冷却液を直接エンジン(30)に戻す第1冷却液流通部(35)と、ラジエータ(31)から流出した冷却液を冷却兼加熱容器(4)に導く第2冷却液流通部(36)とが並列状に設けられている。エンジン冷却システム(3)の冷却液循環路(34)における第1冷却液流通部(35)と第2冷却液流通部(36)との分岐部に、両冷却液流通部(35)(36)への冷却液流量を調整する第2調整弁(37)が設けられている。第1冷却液流通部(35)と第2冷却液流通部(36)とは、ポンプ(33)の冷却液吸い込み側よりも上流側において合流している。合流部を(341)で示す。
【0028】
ヒータコア(32)は、冷却液循環路(34)におけるエンジン(30)の冷却液流出側と第1冷却液流通部(35)とを接続しかつラジエータ(31)を迂回したバイパス部(38)に設けられている。冷却液循環路(34)からバイパス部(38)への分岐部には、ラジエータ(31)とヒータコア(31)への冷却液流量を調整する第3調整弁(39)が設けられている。
【0029】
図2図8に示すように、冷却兼加熱容器(4)は、上端が開口するとともに下端が閉鎖された円筒状であり、かつ内部が飲食物(T)を取り出し自在に収納しうる収納部(40)となっている容器本体(5)と、容器本体(5)の上端部に着脱自在に取り付けられて容器本体(5)の上端開口を開閉自在に覆うカバー(6)とからなる。容器本体(5)の周壁(50)および底壁(51)が収納部(40)を取り囲む壁となっている。
【0030】
容器本体(5)は、全体が熱伝導性材料であるアルミニウムにより形成されている。したがって、冷却兼加熱容器(4)における収納部(40)を取り囲む壁の少なくとも一部における収納部(40)側を向いた面、この実施形態では周壁(50)の内周面および底壁(51)の内面から一定の厚さを有する部分(厚み方向の全部分)に、アルミニウム(熱伝導性材料)からなる熱伝導部(52)が設けられていることになる。
【0031】
容器本体(5)の周壁(50)の熱伝導部(52)に、車室内冷房システム(2)を循環する冷媒の少なくとも一部が流れるらせん状冷媒流路(53)と、エンジン冷却システム(3)を循環するエンジン冷却液の少なくとも一部が流れるらせん状冷却液流路(54)とが互いに独立して設けられている。冷媒流路(53)および冷却液流路(54)の入口端は容器本体(5)の周壁(50)外周面の下部に開口し、同じく出口端は容器本体(5)の周壁(50)外周面の上部に開口している。冷媒流路(53)および冷却液流路(54)の入口端は周方向のほぼ同一位置にあり、冷媒流路(53)の出口端および冷却液流路(54)の出口端は周方向のほぼ反対位置にある。冷媒流路(53)の入口端は、容器本体(5)の周壁(50)外周面にろう材により接合されたアルミニウム製の第1管接続部材(55)に形成された第1流入路(551)を介して外部に通じさせられ、冷却液流路(54)の入口端は、第1管接続部材(55)に形成された第2流入路(552)を介して外部に通じさせられている。冷媒流路(53)の出口端は、容器本体(5)の周壁(50)外周面にろう材により接合されたアルミニウム製の第2管接続部材(56)に形成された第1流出路(561)を介して外部に通じさせられ、容器本体(5)の周壁(50)外周面にろう材により接合されたアルミニウム製の第3管接続部材(57)に形成された第2流出路(図示略)を介して外部に通じさせられている。
【0032】
車室内冷房システム(2)の冷媒循環路(24)の第2冷媒流通部(26)における第1調整弁(27)と冷却兼加熱容器(4)との間の配管の下流端が、第1流入路(551)に通じるように第1管接続部材(55)に接続され、同じく第2冷媒流通部(26)における冷却兼加熱容器(4)と合流部(241)の間の配管の上流端が、第1流出路(561)に通じるように第2管接続部材(56)に接続されている。エンジン冷却システム(3)の冷却液循環路(34)の第2冷却液流通部(36)における第2調整弁(37)と冷却兼加熱容器(4)との間の配管の下流端が、第2流入路(552)に通じるように第1管接続部材(55)に接続され、同じく第2冷却液流通部(36)における冷却兼加熱容器(4)と合流部(341)の間の配管の上流端が、第2流出路に通じるように第3管接続部材(57)に接続されている。
【0033】
冷却兼加熱容器(4)の容器本体(5)の周壁(50)における冷媒流路(53)および冷却液流路(54)の外周側に、冷媒流路(53)および冷却液流路(54)を径方向の外側から囲む断熱空間(58)が、周壁(50)における第1管接続部材(55)が接合されている部分を除いたほぼ全周に渡って形成されている。断熱空間(58)は、容器本体(5)の底壁(51)下端面から上方に向かって形成されており、上端は冷媒流路(53)および冷却液流路(54)の上端よりも若干下方の位置にある。
【0034】
カバー(6)は、環状のカバー本体(60)と、カバー本体(60)に径方向移動自在に配置された複数、この実施形態では4つの移動部材(61)とを備えている。カバー本体(60)は、頂壁(601)と、頂壁(601)の外周縁に垂下状に設けられかつ容器本体(5)の周壁(50)外周面の上部に沿う垂下壁(602)とよりなる。頂壁(601)の中央部には、容器本体(5)の周壁(50)と同心状となる円形貫通穴(603)が形成されている。貫通穴(603)の直径は、容器本体(5)の周壁(50)内周面の直径とほぼ同一である。
【0035】
移動部材(61)は、カバー本体(60)の貫通穴(603)を開閉するものであり、容器本体(5)の周壁(50)における断熱空間(58)よりも上方に形成されて周壁(50)を径方向に貫通したガイド穴(59)内に、カバー本体(60)の径方向に移動自在に配置されている。移動部材(61)とカバー本体(60)の垂下壁(602)との間には、移動部材(61)を径方向内方に付勢するコイルバネ(62)が配置されている。
【0036】
移動部材(61)は、径方向外側を構成する外側片(63)と、径方向内側を構成する内側片(64)とからなる。外側片(63)は、最も外側に移動した際に径方向内端部がガイド穴(59)から径方向内側に突出するとともに、最も内側に移動した際に径方向外端部がガイド穴(59)内に位置するようになっており、コイルバネ(62)が外側片(63)とカバー本体(60)の垂下壁(602)との間に介在させられている。外側片(63)における径方向内方に移動した際にガイド穴(59)から突出した部分の上面は、径方向内方に向かって下方に傾斜した傾斜面(631)となっている。内側片(64)は、バネ蝶番(65)を介して外側片(63)の径方向内端部に上下方向に回動自在に取り付けられており、バネ蝶番(65)により常に上方に付勢されている。
【0037】
たとえば缶入り飲料からなる飲食物(T)を冷却兼加熱容器(4)の収納部(40)内に入れる際には、飲食物(T)をカバー(6)の移動部材(61)上に乗せて下方に押す。すると、移動部材(61)の外側片(63)の傾斜面(631)が飲食物(T)の底面の周縁部により径方向外方に押されることにより、移動部材(61)が径方向外方に移動する。移動部材(61)が径方向外方に移動すると、飲食物(T)の底面周縁部が内側片(64)上に移行し、内側片(64)が下方に押されて下方に揺動し(図6参照)、図9に示すように、飲食物(T)が上端寄りの一部分を除いて収納部(40)内に入る。
【0038】
飲食物(T)を冷却兼加熱容器(4)の収納部(40)内から取り出す際には、飲食物(T)を上方に引き抜くだけで良い。すると、カバー(6)の移動部材(61)の内側片(64)がバネ蝶番(65)によって上方に揺動するとともに、コイルバネ(62)により外側片(63)が径方向内側に押されることによって、移動部材(61)が径方向内方に移動し、カバー本体(60)の貫通穴(603)が移動部材(61)により塞がれて容器本体(6)の上端開口が閉鎖される。
【0039】
上述した構成の車両用冷却兼加熱装置(1)において、車室内の冷房のみを行う場合には、車室内冷房システム(2)では、第1調整弁(27)の働きによって、冷媒は、第1冷媒流通部(25)を通って冷媒循環路(24)を流れる。冷媒は、圧縮機(20)で圧縮されて高温高圧とされた後に室外コンデンサ(21)で車室外空気に熱を放熱して凝縮し、ついで中間熱交換器(29)を通過した後に第1膨張弁(22)により減圧され、ついで室内エバポレータ(23)で空調用空気から熱を奪って蒸発する。室内エバポレータ(23)から流出した冷媒は、中間熱交換器(29)で室外コンデンサ(21)から流出した高温高圧の冷媒により熱を奪われて気化し、気相冷媒が圧縮機(20)に戻される。
【0040】
車室内の冷房と冷却兼加熱容器(4)の収納部(40)内に入れた飲食物(T)の冷却を同時に行う場合には、車室内冷房システム(2)では、第1調整弁(27)の働きによって、冷媒は、第1冷媒流通部(25)に加えて第2冷媒流通部(26)を通って冷媒循環路(24)を流れる。第1冷媒流通部(25)を通る冷媒は、上述した車室内の冷房のみを行う場合と同様に流れて冷房に寄与する。第2冷媒流通部(26)を通る冷媒は、圧縮機(20)で圧縮されて高温高圧とされた後に室外コンデンサ(21)で車室外空気に熱を放熱して凝縮し、ついで中間熱交換器(29)を通過した後に第2膨張弁(28)により減圧され、ついで第1管接続部材(55)の第1流入路(551)から冷却兼加熱容器(4)の冷媒流路(53)に入り、冷媒流路(53)を流れる間に飲食物(T)から熱を奪って蒸発し、第2管接続部材(56)の第1流出路(561)から流出する。第2管接続部材(56)の第1流出路(561)から流出した冷媒は、中間熱交換器(29)で室外コンデンサ(21)から流出した高温高圧の冷媒により熱を奪われて気化し、気相冷媒が圧縮機(20)に戻される。飲食物(T)は、冷媒の気化熱により冷却される。
【0041】
冷却兼加熱容器(4)の収納部(40)内に入れた飲食物(T)の冷却のみを行う場合には、車室内冷房システム(2)では、第1調整弁(27)の働きによって、冷媒は、第2冷媒流通部(26)のみを通って冷媒循環路(24)を流れる。第2冷媒流通部(26)を通る冷媒は、上述した車室内冷房および飲食物(T)の冷却を同時に行う場合と同様に流れて飲食物(T)の冷却に寄与する。
【0042】
エンジン(30)の冷却のみを行う場合には、エンジン冷却システム(3)では、第2調整弁(37)の働きによって、エンジン冷却液は、第1冷却液流通部(35)を通って冷却液循環路(34)を流れる。エンジン冷却液は、エンジン(30)を冷却して高温となった後にラジエータ(31)で室外空気に放熱して冷却され、エンジン(30)に戻される。
【0043】
エンジン(30)の冷却と車室内暖房が同時に行われる場合には、エンジン冷却システム(3)では、第3調整弁(39)の働きによって、エンジン冷却液は、第1冷却液流通部(35)およびバイパス部(38)を通って冷却液循環路(34)を流れる。エンジン(30)を冷却して高温となったエンジン冷却液の一部は、ラジエータ(31)で室外空気に放熱して冷却された後にエンジン(30)に戻される。エンジン(30)を冷却して高温となった冷却液の残部は、ヒータコア(32)で空調用空気に放熱して冷却された後にエンジン(30)に戻される。
【0044】
冷却兼加熱容器(4)の収納部(40)内に入れた飲食物(T)の加熱を行う場合には、上述したエンジン(30)の冷却の際に、第2調整弁(37)の働きによって、エンジン(30)は第2冷却液流通部(36)を通って冷却液循環路(34)を流れる。第2冷却液流通部(36)を通るエンジン冷却液は、第1管接続部材(55)の第2流入路(552)から冷却兼加熱容器(4)の冷却液流路(54)に入り、冷却液流路(54)を流れる間に飲食物(T)に熱を放熱して飲食物(T)を加熱し、第3管接続部材(57)の第2流出路から流出する。第3管接続部材(57)の第2流出路から流出した冷却液は、エンジン(30)に戻される。なお、この場合に、上述したようにして車室内暖房を同時に行うことも可能である。
【産業上の利用可能性】
【0045】
この発明による車両用冷却兼加熱装置は、車両において缶入り飲料や缶入り食物などの飲食物を冷却したり、加熱したりするのに好適に用いられる。
【符号の説明】
【0046】
(1):車両用冷却兼加熱装置
(2):車室内冷房システム
(20):圧縮機
(21):室外コンデンサ(室外熱交換器)
(22):第1膨張弁(減圧器)
(23):室内エバポレータ
(24):冷媒循環路
(241):合流部
(25):第1冷媒流通部
(26):第2冷媒流通部
(27):第1調整弁
(28):第2膨張弁(減圧器)
(29):中間熱交換器
(3):エンジン冷却システム
(30):エンジン
(31):ラジエータ
(34):冷却液循環路
(35):第1冷却液流通部
(36):第2冷却液流通部
(37):第2調整弁
(4):冷却兼加熱容器
(40):収納部
(5):容器本体
(50):周壁
(52):熱伝導部
(53):冷媒流路
(54):冷却液流路
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9