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特開2022-50149バッテリ管理システムの自動回復方法および装置
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  • 特開-バッテリ管理システムの自動回復方法および装置 図1
  • 特開-バッテリ管理システムの自動回復方法および装置 図2
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022050149
(43)【公開日】2022-03-30
(54)【発明の名称】バッテリ管理システムの自動回復方法および装置
(51)【国際特許分類】
   H01M 10/42 20060101AFI20220323BHJP
   H01M 10/48 20060101ALI20220323BHJP
   H02J 7/00 20060101ALI20220323BHJP
【FI】
H01M10/42 P
H01M10/48 P
H02J7/00 P
H02J7/00 S
H02J7/00 Y
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020156583
(22)【出願日】2020-09-17
(71)【出願人】
【識別番号】520114203
【氏名又は名称】株式会社スーリヤ
(74)【代理人】
【識別番号】100125265
【弁理士】
【氏名又は名称】貝塚 亮平
(74)【代理人】
【識別番号】100097157
【弁理士】
【氏名又は名称】桂木 雄二
(72)【発明者】
【氏名】シバスンタラン スハルナン
(72)【発明者】
【氏名】石黒 光一
(72)【発明者】
【氏名】草間 貢
【テーマコード(参考)】
5G503
5H030
【Fターム(参考)】
5G503AA01
5G503BA03
5G503BB02
5G503CA11
5G503CC02
5G503DA02
5G503EA08
5G503FA02
5G503FA06
5G503GB06
5G503GD03
5G503GD06
5H030AA10
5H030AS08
5H030FF22
5H030FF41
5H030FF42
5H030FF43
5H030FF44
5H030FF52
(57)【要約】
【課題】一時的なシステム障害を自動的に回復させることができるバッテリ管理システムの自動回復方法および装置を提供する。
【解決手段】バッテリ管理システム(BMS)からの出力に基づいて自動回復制御を実行する制御部(CTRL)が、負荷(104)に供給する出力電圧が所定値より低下すると、バッテリ(101)からBMSへの信号入力を遮断スイッチ105により遮断してBMSをリセットし、所定時間経過後に遮断スイッチ105の遮断を解除してBMSを再起動し、BMSからの出力が正常であればシステム正常復帰と判断し、正常でなければシステム故障と判断する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
負荷に電力を供給するバッテリを管理するバッテリ管理システムの自動回復方法であって、前記バッテリ管理システムからの出力に基づいて自動回復制御を実行する制御部が、前記負荷に供給する出力電圧が所定値より低下すると、
a)前記バッテリから前記バッテリ管理システムへの信号入力を遮断して前記バッテリ管理システムをリセットし、
b)所定時間経過後に前記遮断を解除して前記バッテリ管理システムを再起動し、
c)前記バッテリ管理システムからの出力が正常であればシステム正常復帰と判断し、正常でなければシステム故障と判断する、
ことを特徴とする自動回復方法。
【請求項2】
前記バッテリ管理システムからの出力が正常でない場合、前記a)およびb)を前記バッテリ管理システムからの出力が正常になるまで所定回数繰り返し、所定回数繰り返しても正常にならない場合に前記システム故障と判断する、ことを特徴とする請求項1に記載の自動回復方法。
【請求項3】
負荷に電力を供給するバッテリを管理するバッテリ管理システムの自動回復装置であって、
前記負荷に供給する出力電圧が所定値より低下することを検出する出力電圧モニタと、
前記バッテリからのセル電圧を含む検出信号の前記バッテリ管理システムへの出力を遮断あるいは導通する遮断スイッチと、
前記バッテリ管理システムからの出力に基づいて自動回復制御を実行する制御部と、
を有し、
前記制御部が、前記負荷に供給する出力電圧が所定値より低下すると、
a)前記遮断スイッチにより前記バッテリから前記バッテリ管理システムへの信号入力を遮断し、前記バッテリ管理システムをリセットし、
b)所定時間経過後に前記遮断を解除して前記バッテリ管理システムを再起動し、
c)前記バッテリ管理システムからの出力が正常であればシステム正常復帰と判断し、正常でなければシステム故障と判断する、
ことを特徴とする自動回復装置。
【請求項4】
前記制御部が、
前記バッテリ管理システムからの出力が正常でない場合、前記a)およびb)を前記バッテリ管理システムからの出力が正常になるまで所定回数繰り返し、
所定回数繰り返しても正常にならない場合に前記システム故障と判断する、
ことを特徴とする請求項3に記載の自動回復装置。
【請求項5】
負荷に電力を供給するバッテリを管理するバッテリ管理システムの自動回復装置としてコンピュータを機能させるプログラムであって、前記負荷に供給する出力電圧が所定値より低下すると、
a)前記バッテリから前記バッテリ管理システムへの信号入力を遮断して前記バッテリ管理システムをリセットし、
b)所定時間経過後に前記遮断を解除して前記バッテリ管理システムを再起動し、
c)前記バッテリ管理システムからの出力が正常であればシステム正常復帰と判断し、正常でなければシステム故障と判断する、
ように前記コンピュータを機能させることを特徴とするプログラム。
【請求項6】
前記バッテリ管理システムからの出力が正常でない場合、前記a)およびb)を前記バッテリ管理システムからの出力が正常になるまで所定回数繰り返し、所定回数繰り返しても正常にならない場合に前記システム故障と判断する、ことを特徴とする請求項5に記載のプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はバッテリ電源システムに搭載されたバッテリ管理システムの自動回復技術に関する。
【背景技術】
【0002】
複数のバッテリセルからなるバッテリパックは、モバイルコンピュータ、電気自動車あるいはハイブリッド電気自動車等の種々の用途に使用されているが、セル電圧、電流および温度を監視して故障状態を検出するバッテリ管理システム(BMS)が安全性を確保するために必要である。たとえば特許文献1にはバッテリの故障状態を事前に検知してバッテリを有効に保護する技術が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2012-15094号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
これまで提案されてきた技術はバッテリの故障状態を検知する方法であり、バッテリ管理システムの高性能化および高精度化を目的としている。上記の特許文献1では、セル電圧や温度等をモニタして障害が発生しそうになるとアラーム信号が出力され、ユーザにより必要な防護措置がとられていた。
【0005】
しかしながらシステムの障害には種々の要因があり、ユーザによる障害対策が必要な内的要因もあれば、システムの電源を落としてリセットすることで回復する一時的な外的要因もある。特に無人サイトでは一時的な障害状態であれば人の作業によることなく自動的に回復させることが望ましい。
【0006】
そこで、本発明の目的は、一時的なシステム障害を自動的に回復させることができるバッテリ管理システムの自動回復方法および装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一態様によれば、負荷に電力を供給するバッテリを管理するバッテリ管理システムの自動回復方法は、前記バッテリ管理システムからの出力に基づいて自動回復制御を実行する制御部が、前記負荷に供給する出力電圧が所定値より低下すると、a)前記バッテリから前記バッテリ管理システムへの信号入力を遮断して前記バッテリ管理システムをリセットし、b)所定時間経過後に前記遮断を解除して前記バッテリ管理システムを再起動し、c)前記バッテリ管理システムからの出力が正常であればシステム正常復帰と判断し、正常でなければシステム故障と判断する、ことを特徴とする。
本発明の別の態様によれば、負荷に電力を供給するバッテリを管理するバッテリ管理システムの自動回復装置は、前記負荷に供給する出力電圧が所定値より低下することを検出する出力電圧モニタと、前記バッテリからのセル電圧を含む検出信号の前記バッテリ管理システムへの出力を遮断あるいは導通する遮断スイッチと、前記バッテリ管理システムからの出力に基づいて自動回復制御を実行する制御部と、を有し、前記制御部が、前記負荷に供給する出力電圧が所定値より低下すると、a)前記遮断スイッチにより前記バッテリから前記バッテリ管理システムへの信号入力を遮断し、前記バッテリ管理システムをリセットし、b)所定時間経過後に前記遮断を解除して前記バッテリ管理システムを再起動し、c)前記バッテリ管理システムからの出力が正常であればシステム正常復帰と判断し、正常でなければシステム故障と判断する、ことを特徴とする。
本発明の更に別の態様によれば、負荷に電力を供給するバッテリを管理するバッテリ管理システムの自動回復装置としてコンピュータを機能させるプログラムは、前記負荷に供給する出力電圧が所定値より低下すると、a)前記バッテリから前記バッテリ管理システムへの信号入力を遮断して前記バッテリ管理システムをリセットし、b)所定時間経過後に前記遮断を解除して前記バッテリ管理システムを再起動し、c)前記バッテリ管理システムからの出力が正常であればシステム正常復帰と判断し、正常でなければシステム故障と判断する、ように前記コンピュータを機能させることを特徴とする。
このように構成することで、一時的なシステム障害であれば、セル電圧等の検出信号を遮断してバッテリ管理システムをリセットすることよりシステムを回復させることが可能となる。
また、前記バッテリ管理システムからの出力が正常でない場合、前記a)およびb)を前記バッテリ管理システムからの出力が正常になるまで所定回数繰り返し、所定回数繰り返しても正常にならない場合に前記システム故障と判断することができる。これにより、一時的な外的原因で出力電圧の低下が発生した場合であれば、複数回のリセット操作によりシステムを回復させることができる。複数回のリセット操作でも回復しない場合はシステム故障と高い信頼性で判断することができる。
以上述べたように、何らかの原因で負荷へ供給される電圧の降下あると、バッテリからのセル電圧その他検出信号のバッテリ管理システムへの出力を遮断してバッテリ管理システムをリセットする。これによりバッテリ管理システムからの出力が正常回復するか否かを判断し、回復しなければ回復するまでリセット操作を所定回数だけ繰り返し、それでも回復しなければアラームを出力し、ユーザへ通知しシステムを停止する。こうすることで、一時的なシステム障害であれば、数回のリセット操作によりシステムを回復させることができる。特に無人サイトにおいて、このような自動的なシステム回復により利便性が大いに高まる。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、一時的なシステム障害を自動的に回復させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本発明の一実施形態による自動回復装置を含む電源システムの概略的構成を示すブロック図である。
図2】本実施形態による自動回復方法を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0010】
1.システム構成
図1に例示するように、電源システム10は電源系と管理系とからなり、電源系はバッテリパック101、充電器102、インバータ103および負荷104からなる。バッテリパック101は複数のバッテリセル(Cell)からなり、周知の充電器102により充電可能である。バッテリセルとしてはリチウムイオン電池を用いることができる。バッテリパック101に蓄積された電力はインバータ103により所定の交流電力(ここではAC100V)に変換され負荷104へ供給される。負荷104は、たとえば無人サイトに設けられたモータを含む種々の電気機器であるが、これらに限定されるものではない。
【0011】
電源システム10の管理系は遮断スイッチ(Vin_SW)105、バッテリ管理システムBMSおよび制御部CTRLからなる。遮断スイッチ105は電界効果トランジスタを用いたON-OFFスイッチであり、バッテリパック101とBMSとの間に設けられ、バッテリパック101の各セルの電圧、電流、温度等の検出信号のBMSへの入力を遮断/導通することができる。BMSはセルモニタ106、CPU(Central Processing Unit)107およびアラーム(ALM)出力部108を有し、周知のようにセルの検出信号を監視し、電圧が上限あるいは下限を超えた場合や温度が上限を超えた場合など異常発生時にアラームを出力する。以下、CPUは「プロセッサ」と記す。
【0012】
制御部CTRLは出力電圧モニタ109、プロセッサ110および入出力部111からなる。出力電圧モニタ109はインバータ103の交流出力電圧を監視し、所定電圧より低下する出力低下あるいは出力ダウンを検出すると、プロセッサ110へ出力電圧低下の情報を出力する。プロセッサ110は、出力電圧低下が発生すると、後述する自動回復動作を起動する。自動回復動作において、プロセッサ110は入出力部111を通して遮断スイッチ105の遮断/導通、バッテリ管理システムBMSのリセット/再起動の制御を行う。
【0013】
なお、プロセッサ110は、図示しないメモリに格納されたコンピュータプログラムを実行することで、以下に述べる自動回復制御を実現することができる。以下、自動回復制御について説明する。
【0014】
2.自動回復動作
図2において、プロセッサ110は変数を初期化し(動作201)、出力電圧モニタ109からの情報によりインバータ103の出力電圧が低下しているか否かを判断する(動作202)。出力電圧が正常であれば(動作202のNO)、そのまま当該自動回復処理を終了する。
【0015】
インバータ103の出力電圧が低下している場合(動作202のYES)、プロセッサ110は入出力部111を通して遮断スイッチ105を遮断し、BMSをリセットする(動作203)。遮断スイッチ105を遮断することで、BMSにはバッテリパック101の各セルの検出信号が入力しなくなる。この入力のない状態でBMSをリセットすることでBMSのダウン状態が解消する場合がある。
【0016】
上述したようにインバータ103の出力電圧の低下は、バッテリパック101が原因である場合もあれば外部の一時的な要因である場合もある。バッテリパック101の障害であればBMSからは正常な出力は得られないが、外部の一時的な要因による出力ダウンであれば、BMSが正常に機能している限りバッテリ管理システムBMSから正常な出力が得られるはずである。そこで、出力電圧の低下が発生したときに、BMSをリセットしてから再度正常か否かを判断することで、出力電圧の低下が内的な原因によるものか、あるいは一時的な外的要因によるものかを判別することが可能である。なお、負荷104が原因となる場合を排除するために、動作203において負荷104の動作を停止させてもよい(Load_OFF)。
【0017】
遮断スイッチ105の遮断およびBMSのリセットから所定時間経過後に、プロセッサ110は、入出力部111を通して遮断スイッチ105を導通させてBMSを再起動し、BMSからの出力が正常か否かを判断する(動作204)。正常に復帰していれば(動作204のYES)、一時的な外的要因で出力ダウンしたと考えられるので、そのまま当該自動回復処理を終了する。
【0018】
BMSからの出力が回復しなければ(動作204のNO)、エラーカウントCerrを1だけインクリメントし(動作205)、エラーカウントCerrが規定値Cthを超えたか否かを判断する(動作206)。エラーカウントCerrが規定値Cth以下であれば(動作206のNO)、プロセッサ110はBMSの出力が正常になるまで所定回数Cthだけ動作203~動作206を繰り返す(動作204のNO、動作206のNO)。
【0019】
動作203~動作206、すなわち遮断スイッチ105の遮断およびBMSリセットと遮断スイッチ105の導通およびBMS再起動のシーケンスを所定回数Cth繰り返してもBMSの出力が正常にならない場合(動作206のYES)、プロセッサ110はシステムの故障と判断し、入出力部111からアラームを出力し、ユーザに通知する(動作207)。
【0020】
上述したように、本発明の一実施形態によれば、何らかの原因で負荷へ供給される電圧が降下すると、バッテリからのセル電圧その他検出信号をBMSへ入力しないように遮断してBMSをリセットする。その後、セル電圧その他検出信号の遮断を解除してBMSを再起動することで、BMSからの出力が正常回復するか否かを判断する。回復しなければ回復するまでリセット操作を所定回数だけ繰り返し、それでも回復しなければアラームを出力する。こうすることで、一時的なシステム障害であれば、数回のリセット操作によりシステムを回復させることができ、特に無人サイトでは本実施形態による自動回復制御によって利便性が大いに高まる。
【産業上の利用可能性】
【0021】
本発明はバッテリ管理システムBMSを有するバッテリ電源システムに適用可能である。
【符号の説明】
【0022】
10 電源システム
101 バッテリパック
102 充電器
103 インバータ
104 負荷
105 遮断スイッチ
106 セルモニタ
107 プロセッサ
108 アラーム出力部
109 出力電圧モニタ
110 入出力部
図1
図2