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2022-50157湿気硬化型組成物、および該湿気硬化型組成物を使用する塗膜の製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022050157
(43)【公開日】2022-03-30
(54)【発明の名称】湿気硬化型組成物、および該湿気硬化型組成物を使用する塗膜の製造方法
(51)【国際特許分類】
   C08L 101/02 20060101AFI20220323BHJP
   C08G 81/00 20060101ALI20220323BHJP
   C08L 83/04 20060101ALI20220323BHJP
【FI】
C08L101/02
C08G81/00
C08L83/04
【審査請求】有
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020156597
(22)【出願日】2020-09-17
(11)【特許番号】
(45)【特許公報発行日】2021-08-18
(71)【出願人】
【識別番号】500004955
【氏名又は名称】旭化成ワッカーシリコーン株式会社
(72)【発明者】
【氏名】田畑 卓哉
【テーマコード(参考)】
4J002
4J031
【Fターム(参考)】
4J002AA031
4J002CH051
4J002CK021
4J002CP052
4J002CP053
4J002GH01
4J031AA53
4J031AA56
4J031AA59
4J031AB04
4J031AC13
4J031AD01
4J031AD03
4J031AE02
4J031AF12
(57)【要約】
【課題】本発明は非イソシアネート系のバインダーとして加水分解性シリル基を有する重合体を含み、低粘度であり、施工後の硬化塗膜の最大機械物性を初期の段階で発現し、かつ塗膜収縮が小さい塗膜防水材組成物を提案することを目的とする。
【解決手段】シラン変性ポリマー(A)、シリコーン樹脂(B)に、所定の反応性を有する反応性を有する材料(C)を配合する。具体的には、シラン変性ポリマー(A)のシラン含有基の半分量が加水分解される時間(シラン含有基の半減期)を1.0とした場合、同条件における反応性を有する材料(C)の反応性基の半分量が加水分解される時間(反応性基の半減期)が0.1~20倍である、反応性を有する材料(C)を配合する。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
シラン変性ポリマー(A)と、
シリコーン樹脂(B)と、
反応性を有する材料(C)とを含み、
前記反応性を有する材料(C)は前記シラン変性ポリマー(A)と反応する反応性基を有し、
前記反応性基の半減期が前記シラン変性ポリマー(A)のシラン含有基の半減期の0.1~20倍である湿気硬化型組成物。
【請求項2】
前記反応性を有する材料(C)中の反応性基の含有量が0.5重量%以上10重量%以下である、請求項1に記載の湿気硬化型組成物。
【請求項3】
前記シラン変性ポリマー(A)は下記の一般式(1)で表される、請求項1または請求項2に記載の湿気硬化型組成物。
Y-[(CR -SiR(OR3-a (1)
(式(1)中、Yは、窒素、酸素、硫黄または炭素を介して結合されているx価の、ポリマー鎖として、ポリオキシアルキレンまたはポリウレタンを含む有機ポリマー基であって、
Rは、同じであっても異なってもよく、一価の、場合によって置換されているSiC-結合した炭化水素基であり、
は、同じであっても異なってもよく、水素原子、または炭素原子に窒素、リン、酸素、硫黄もしくはカルボニル基が結合することができる一価の、場合によって置換されている炭化水素基であり、
は、同じであっても異なってもよく、水素原子、または一価の、場合によって置換されている炭化水素基であり、
xは、1 から1 0 までの整数であり、
aは、0 、1 、もしくは2 であり、
bは、1 から1 0 までの整数である。)
【請求項4】
前記シラン変性ポリマー(A)の末端基のうち、少なくとも1つが、下記の一般式(2)または一般式(3)である、請求項1ないし請求項3のいずれか1項に記載の湿気硬化型組成物。
-O-C(=O)-NH-(CR -SiR(OR3-a (2)
-NH-C(=O)-NR’-(CR -SiR(OR3-a (3)
(式(2)、式(3)中、基および添字はそれらに対して上で特定された定義の一つを有し、
R’は、同じであっても異なってもよく、Rに対して与えられた定義を有する。)
【請求項5】
前記一般式(2)または前記一般式(3)において、aが1 、bが1である、請求項4に記載の湿気硬化型組成物。
【請求項6】
前記シリコーン樹脂(B)が下記の一般式(4)に示す単位を含むシリコーン樹脂であることを特徴とする、請求項1ないし請求項5のいずれか1項に記載の湿気硬化型組成物。
(RO) SiO(4-c-d-e)/2 (4)
(式(4)中、
は、同じであっても異なってもよく、水素原子、一価の、SiC-結合した、場合によって置換されている脂肪族炭化水素基、または式(4) の2 つの単位を橋かけしている二価の、場合によって置換されている脂肪族炭化水素基であり、
は、同じであっても異なってもよく、メチル基またはエチル基であり、
は、同じであっても異なってもよく、一価の、SiC-結合した、場合によって置換されている芳香族炭化水素基であり、
cは、0、1、2、もしくは3であり、
dは、0、1、2、3もしくは4であり、および
eは、0 、1 、もしくは2であり、
c+d+e≠0である)
【請求項7】
前記シリコーン樹脂(B)の前記シラン変性ポリマー(A)に対する含有量が、2.5倍未満であることを特徴とする、請求項1ないし請求項6のいずれか1項に記載の湿気硬化型組成物。
【請求項8】
前記反応性を有する材料(C)が、下記の一般式(4)または一般式(5)であることを特徴とする、請求項1ないし請求項7のいずれか1項に記載の湿気硬化型組成物。
(RO) SiO(4-c-d-e)/2 (4)
(式(4)中、
は、同じであっても異なってもよく、水素原子、一価の、SiC-結合した、場合によって置換されている脂肪族炭化水素基、または式(4)の2つの単位を橋かけしている二価の、場合によって置換されている脂肪族炭化水素基であり、
は、同じであっても異なってもよく、メチル基またはエチル基であり、
は、同じであっても異なってもよく、一価の、SiC-結合した、場合によって置換
されている芳香族炭化水素基であり、
cは、0、1、2、もしくは3であり、
dは、0、1、2、3もしくは4であり、
eは、0、1、もしくは2であり、
c+d+e≠0である)
Y-[(CR51 -SiR50 (OR523-f (5)
(式(5)中、Yは、窒素、酸素、硫黄または炭素を介して結合されているw価の、ポリマー鎖として、ポリオキシアルキレンまたはポリウレタンを含む有機ポリマー基であって、
50は、同じであっても異なってもよく、一価の、場合によって置換されているSiC-結合した炭化水素基であり、
51は、同じであっても異なってもよく、水素原子、または炭素原子に窒素、リン、酸素、硫黄もしくはカルボニル基が結合することができる一価の、場合によって置換されている炭化水素基であり、
52は、同じであっても異なってもよく、水素原子、または一価の、場合によって置換されている炭化水素基であり、
wは、1であり、
fは、0 、1 、もしくは2 であり、
gは、1 から1 0 までの整数である。)
【請求項9】
硬化触媒を含む請求項1ないし請求項7のいずれか一項に記載の湿気硬化組成物を硬化させて塗膜とすることを特徴とする塗膜の製造方法。
【請求項10】
前記塗膜は引張強さが2.0N/mm2以上、破断時の伸びが450%以上であることを特徴とする請求項8に記載の塗膜の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、特定のシラン架橋するポリマーとシリコーン樹脂、および特定の反応性を有する材料を含有する湿気硬化型組成物および該湿気硬化型組成物を使用する塗膜の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
一般的な塗膜防水材は、ウレタンやアクリル、クロロプレンゴム、アスファルト、シリコーンなどをバインダー成分とし、製品形態として1成分形と2成分形に分類される。これらバインダー成分に、鉱物質充填剤として、炭酸カルシウム、クレー、カーボンブラック、微粉末シリカや、その他顔料、増粘剤、界面活性剤、安定化剤や希釈剤などが添加される。
特にウレタンは高伸長や高強度などの様々な要求特性を満足さることが可能で処方設計自由度が非常に高いことから、塗膜防水材だけではなく、シーリング材や接着剤、塗料などのコーティング材といった様々な用途で使用され、実用化されて長年の実績のあるバインダーとして知られている。
しかし、ウレタンは反応性の高いイソシアネートを含有しているため、生態系や環境に対する有害性の観点から、脱イソシアネートが好まれる傾向にある。
【0003】
一方で、加水分解性シリル基を有する重合体は、イソシアネート非含有の湿気硬化型ポリマーとして知られており、接着剤、シーリング材、塗膜防水材や塗料などのコーティング材など工業、建築、土木、電気電子など多くの用途で幅広い分野で利用されている。
しかし、加水分解性シリル基を有する重合体は、塗膜防水材に求められる高伸長かつ高強度といった機械物性を発現することが困難であった。
【0004】
そこで、特許文献1ではイソシアネート含有量が低い、ウレタン結合を有する架橋性接着剤にシリコーン樹脂を用いることで、欧州DIN EN 204標準、耐久性クラスD4を満たす接着剤を実現している。しかし、施工に際し粘度が高いため、作業性および仕上がり性に課題が残っていた。
低粘度化を目的に有機溶剤を使用し作業性仕上がり性を改良することも考えられるが、生態系及び環境への有害性の観点から、無溶剤や水系タイプが求められる傾向にある。また有機溶剤は経時で硬化塗膜から揮発することによる塗膜収縮率が大きいため、コンクリートなどの基材への追従性が劣る場合、塗膜の亀裂や基材の密着性が劣るといった問題があった。
【0005】
硬化後の有機マトリックス(塗膜有効成分)を形成するベースポリマーと反応する反応性を有する材料を使用することで、低粘度化させかつ低収縮率とすることも可能であるが、経時でモジュラスなどの機械物性が変化し、硬化物の最大の機械物性を発現するために時間を要するといった課題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特表2014-521819号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、非イソシアネート系のバインダーとして加水分解性シリル基を有する重合体を含み、低粘度であり、施工後の硬化塗膜の最大機械物性を初期の段階で発現し、かつ塗膜収縮が小さい塗膜防水材組成物を提案することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、鋭意検討を重ねた結果、シリコーン樹脂を含み、シラン変性ポリマーを主成分とするコンパウンドに、所定の反応性を有する材料を配合することにより、施工後の塗膜の最大機械物性を初期の段階で発現し、かつ収縮が小さい塗膜を与える湿気硬化型組成物を見出し、本発明を完成するに至った。
【0009】
本発明の湿気硬化型組成物では、シラン変性ポリマーに対して、同程度の反応性を有する材料を用いることで、硬化塗膜の最大機械物性を初期の段階で発現することが可能となる。
具体的には、所定の条件(例えばpH9の条件である)において、シラン変性ポリマー(A)のシラン含有基の半分量が加水分解される時間(シラン含有基の半減期)を1.0とした場合、同条件における反応性を有する材料(C)の反応性基の半分量が加水分解される時間(反応性基の半減期)が0.1~20倍であれば、(A)、(B)、(C)を混合して得られた湿気硬化型組成物を塗布、硬化後1週間程度の初期の段階で最大機械物性を発現することが可能となる。半減期を測定する温度は(A)および(B)が液体である温度であればよく、例えば20℃以上30℃以下の温度であってもよい。(A)のシラン含有基の半減期を測定する温度と、(C)の反応性基の半減期を測定する温度は同じであることが好ましいが、±5℃以内の差異があってもよい。
【0010】
ここで、最大機械物性とは、(A)、(B)、(C)を混合、硬化後4週間以内に得られる機械物性(50%モジュラス)の最大値である。
より具体的には、シラン変性ポリマー(A)がアルコキシシリル基を有するポリマーである場合、アルコキシシランの半分量がシラノールに加水分解される時間(半減期)を1.0とした場合、その0.1~20倍の半減期を有する反応性を有する材料を用いることで、経時でモジュラスなどの機械物性の変化が小さい湿気硬化型組成物を与えることが可能である。
【0011】
反応性を有する材料とは、シラン変性ポリマーと反応する反応性基を有し、シラン変性ポリマーを含む湿気硬化型組成物を希釈する反応性希釈剤であり、反応により副生する物質により、アルコール、オキシム、アセトン、酢酸やアミン、アミドなどと大別される。特に、メトキシ基やエトキシ基を有するアルコキシシランが好ましい。
【0012】
反応性を有する材料の半減期がシラン変性ポリマーに対して20倍を超える場合、まず加水分解したシラン変性ポリマーのシラノール同士が脱水縮合反応により、シラン変性ポリマーマトリックス(架橋構造 )を形成する。その後、徐々に加水分解した反応性を有する材料のシラノール基同士が脱水縮合反応することにより、反応性を有する材料マトリックスを形成するため、経時でモジュラスなどの機械物性が大きく変化する傾向がある。
【0013】
一方で、反応性を有する材料の半減期がシラン変性ポリマーに対して0.5倍以上20倍以下である場合、シラン変性ポリマーおよび反応性を有する材料が相互に脱水縮合反応する。これにより、シラン変性ポリマーおよび反応性を有する材料が相互にマトリックスを形成する。このため、モジュラスなどの最大機械物性を早い段階で発現することが可能となり、経時でモジュラスなどの機械物性が大きく変化することがないと考えられる。
【0014】
また、反応性を有する材料はシラン変性ポリマーとの反応によりマトリックスを形成することから、有機溶剤を希釈剤として用いる場合と比較して、希釈剤の揮発による塗膜の収縮は起こりにくい。
反応性を有する材料は、シラン変性ポリマーと反応する反応性基を有する材料であればよく、反応性基の含有量は問わないが、塗膜の収縮を低減させる効果は、反応性を有する材料に含まれる反応性基の量が所定量以下(例えば10重量%以下)であることが特に好ましい。この範囲の反応性基の量であれば、反応性基の反応により副生する物質(例えば、アルコールである)が塗膜から蒸散する量が少ないため、塗膜の収縮低減がより少なくなるためである。
【0015】
反応性基の量の下限値は特に規定されないが、所定量以上(例えば、0.5重量%以上)の反応性基を有する反応性を有する材料であれば、シラン変性ポリマーと反応することにより、塗膜中に十分量が取り込まれるため、さらに好適である。
【0016】
よって、シラン変性ポリマーおよびシリコーン樹脂に、前記シラン変性ポリマーに対する半減期が0.1~20倍の反応性基を有する材料を併用させることで、塗膜防水材として十分な機械物性を有し、施工後の硬化塗膜の最大機械物性を初期の段階で発現可能となる。
さらに前記反応性を有する材料中の反応性基の含有量が0.5重量%以上10重量%以下である場合においては、塗膜収縮がより小さい湿気硬化型組成物が実現可能となる。
また、反応性を有する材料により湿気硬化型組成物全体の粘度を低下させると、湿気硬化型組成物の塗布工程の作業性が向上し、塗膜の仕上がり性が向上することから、好適である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明について詳細に説明する。
【0018】
本発明の湿気硬化型組成物は、少なくとも1液以上の形態であって、湿気により硬化して最終的に組成物の硬化物が得られるものであれば、いかなる態様、形態、組成であってもよい。湿気により加水分解し、シロキサン結合の生成により硬化し、アルコキシシリル基を有するポリマーを含有するコーティング材が代表的なものである。
【0019】
湿気硬化型組成物は、シラン変性ポリマー(A)と、シリコーン樹脂(B)と、所定の反応性を有する反応性を有する材料(C)と、を含むものであれば特に限定されない。
【0020】
<シラン変性ポリマー(A)について>
本発明におけるシラン変性ポリマー(A)は、少なくとも1つの湿気反応性オルガノシリル基を含む。これは、ポリマー骨格の一端に連結した末端オルガノシリル基であってもよい。好ましくは、少なくとも1つのポリオキシアルキレン構造単位を含むシラン変性ポリマーである。
シラン変性ポリマー(A)は有機重合体であれば特に限定されず、例えばポリオキシプロピレン重合体、ポリオキシブチレン重合体、ポリイソブチレン重合体、(メタ)アクリル酸エステル系重合体、またはこれら重合体を複数用いた有機重合体等であってもよい。
【0021】
シラン変性ポリマー(A)は、以下一般式(1)に示すシラン変性ポリマーであってもよい。
Y-[(CR -SiR(OR3-a (1)
(式(1)中、Yは、窒素、酸素、硫黄または炭素を介して結合されているx価の有機ポリマー基であって、ポリマー鎖として、ポリオキシアルキレンまたはポリウレタンを含むx価の有機ポリマー基であり、
Rは、同じであっても異なってもよく、一価の、場合によって置換されているSiC-結合した炭化水素基であり、
は、同じであっても異なってもよく、水素原子、または炭素原子に窒素、リン、酸素、硫黄もしくはカルボニル基が結合することができる一価の、場合によって置換されている炭化水素基であり、
は、同じであっても異なってもよく、水素原子、または一価の、場合によって置換されている炭化水素基であり、
xは、1 から1 0 までの整数であり、
aは、0 、1 、もしくは2 であり、
bは、1 から1 0 までの整数である。)
【0022】
シラン変性ポリマー(A)の末端基のうち、少なくとも1つが、下記一般式(2)または一般式(3)で示す基であってもよい。
-O-C(=O)-NH-(CR -SiR(OR3-a (2)
-NH-C(=O)-NR’-(CR -SiR(OR3-a (3)
(式(2)、式(3)中、基および添字はそれらに対して上で特定された定義の一つを有し、
R’は、同じであっても異なってもよく、Rに対して与えられた定義を有する。)
【0023】
例えば、上記一般式(2)または一般式(3)で示す末端基を有する、一般式(1)に示すシラン変性ポリマーは、pH9の条件にてアルコキシシランの半分量がシラノールに加水分解される時間(半減期)が1時間未満であり、これらシラノール同士の脱水縮合反応により湿気硬化型組成物のマトリックスを形成する。
【0024】
シラン変性ポリマーとしてのポリマー(A)は、湿気硬化型組成物の主成分であり、
塗布後に湿気により皮膜を形成する成分である。
シラン変性ポリマー(A)は、商業的な製品として購入することができ、または、化学的な一般的な方法によって調製することもできる。ポリマー(A)は単体であってもよく、2種類以上の混合物であってもよい。
メチレンスペーサーを介して隣接するウレタン単位に結合している反応性アルコキシシリル基を有するいわゆるα‐シラン末端のポリマーは、シラン変性ポリマー(A)として特に好適である。反応性が高く、空気と接触した際に高い硬化速度を達成することから、有毒なスズ触媒の配合の必要がないためである。市販のα―シラン末端ポリマーは、Wacker―Chemie AGからのGENIOSIL(登録商標)STP-E10またはSTP-E30である。
【0025】
基Rの例は、アルキル基、例えば、メチル、エチル、n-プロピル、イソプロピル、1-n-ブチル、2-n-ブチル、イソブチル、tert-ブチル、n-ペンチル、イソペンチル、ネオペンチル、tert-ペンチル基;ヘキシル基、例えばn-ヘキシル基;ヘプチル基、例えば、n-ヘプチル基;オクチル基、例えばn-オクチル基、イソオクチル基および2,2,4-トリメチルペンチル基;ノニル基、例えば、n-ノニル基;デシル基、例えば、n-デシル基;ドデシル基、例えば、n-ドデシル基;オクタデシル基、例えば、n-オクタデシル基;シクロアルキル基、例えば、シクロペンチル、シクロヘキシル、シクロヘプチル基およびメチルシクロヘキシル基;アルケニル基、例えば、ビニル、1-プロペニルおよび2-プロペニル基;アリール基、例えば、フェニル、ナフチル、アントリルおよびフェナントリル基;アルカリール基、例えば、o-、m-、p-トリル基、キシリル基およびエチルフェニル基、ならびにアラルキル基、例えば、ベンジル基、α-およびβ-フェニルエチル基である。
【0026】
置換された基Rの例は、ハロアルキル基、例えば、3,3,3-トリフルオロ-n-プロピル基、2,2,2,2’,2’,2’-ヘキサフルオロイソプロピル基およびヘプタフルオロイソプロピル基、ならびにハロアリール基、例えば、o-、m-およびp-クロロフェニル基である。
基Rは、好ましくは場合によってハロゲン原子によって置換されており1から6個の炭素原子を有している一価の炭化水素基を、より好ましくは1個または2個の炭素原子を有するアルキル基、より特定的にはメチル基を含む。
【0027】
基Rの例は、水素原子、Rに対して特定した基、また炭素原子に、窒素、リン、酸素、硫黄、炭素、またはカルボニル基によって結合されている、場合によって置換されている炭化水素基である。
好ましくは、Rは、水素原子および1から20個までの炭素原子を有する炭化水素基であり、より特定的には水素原子である。
【0028】
基Rの例は、水素原子または基Rに対して特定した例である。
基Rは、好ましくは、水素原子、または場合によってハロゲン原子によって置換されており、1から10個までの炭素原子を有するアルキル基、より好ましくは1から4個までの炭素原子を有するアルキル基、より特定的にはメチルおよびエチル基である。
【0029】
ポリマー基Yのベースとなるポリマーは、本発明においては、主鎖中の全結合の少なくとも50%、好ましくは少なくとも70%、より好ましくは少なくとも90%が炭素-炭素、炭素-窒素、または炭素-酸素結合である全てのポリマーであることが理解されるべきである。
【0030】
ポリマー基Yは、有機ポリマー基を好ましくは含み、それは、ポリマー鎖として、ポリオキシアルキレン、例えば、ポリオキシエチレン、ポリオキシプロピレン、ポリオキシブチレン、ポリオキシテトラメチレン、ポリオキシエチレン-ポリオキシプロピレンコポリマーおよびポリオキシプロピレン-ポリオキシブチレンコポリマー;炭化水素ポリマー、例えば、ポリイソブチレン、ポリエチレン、またはポリプロピレンおよびポリイソブチレンのイソプレンとのコポリマー;ポリイソプレン;ポリウレタン;ポリエステル、ポリアミド;ポリアクリレート;ポリメタクリレート;およびポリカーボネートを含み、それらは、好ましくは、-O-C(=O)-NH-、-NH-C(=O)O-、-NH-C(=O)-NH-、-NR’-C(=O)-NH-、NH-C(=O)-NR’-、-NHC(=O)-、-C(=O)-NH-、-C(=O)-O-、-O-C(=O)-、-O-C(=O)-O-、-S-C(=O)-NH-、-NH-C(=O)-S-、-C(=O)-S-、-S-C(=O)-、-S-C(=O)-S-、-C(=O)-、-S-、-O-および-NR’-によって1つの基または複数の基-[(CR )b-SiR(OR3-a]に結合され、ただし、R’は、同じであっても異なってもよく、Rに対して与えられた定義を有し、または基-CH(COOR”)-CH-COOR”であり、ここでR”は同じであっても異なってもよく、Rに対して与えられた定義を有する。
【0031】
基R’の例は、シクロヘキシル、シクロペンチル、n-プロピルおよびイソプロピル、n-ブチル、イソブチルおよびtert-ブチル、ペンチル基、ヘキシル基、またはヘプチル基のさまざまな立体異性体、およびまたフェニル基である。
基R’は、好ましくは、基-CH(COOR”)-CH2-COOR”または1から20個までの炭素原子を有する、場合によって置換されている炭化水素基、より好ましくは1から20個までの炭素原子を有する直鎖の基、分枝した基もしくはシクロアルキル基、または6から20個の炭素原子を有しており、場合によってハロゲン原子によって置換されているアリール基である。
【0032】
基R”は、好ましくは1から10個までの炭素原子を有するアルキル基、より好ましくはメチル基、エチル基、またはプロピル基である。
【0033】
より好ましくは、式(1)中の基Yは、ウレタン基およびポリオキシアルキレン基を、より好ましくはポリオキシプロピレン含有ウレタン基またはポリオキシプロピレン基を含む。
【0034】
ここでポリマー(A)は、ポリマー中の任意の望ましい位置、例えば、鎖内および/または末端に、好ましくは鎖内および末端に、より好ましくは末端に、記載されている様式で結合している基-[(CR -SiR(OR3-a]を有することができる。
【0035】
ポリマー(A)の末端基は、好ましくは、一般式(2)、または、一般式(3)である。
-O-C(=O)-NH-(CR -SiR(OR3-a (2)
-NH-C(=O)-NR’-(CR -SiR(OR3-a (3)
(式(2)、式(3)中、基および添字はそれらに対して上で特定された定義の一つを有し、
Rは、同じであっても異なってもよく、一価の、場合によって置換されているSiC-結合した炭化水素基であり、
R’は、同じであっても異なってもよく、Rに対して与えられた定義を有する。)
【0036】
本発明の1つの特に好ましい実施形態において、シラン変性ポリマー(A)は、いずれの場合も、-O-C(=O)-NH-(CR 基または-NH-C(=O)-NR’-(CR 基(R’、R1およびbは、上で特定した定義の1つを有する。)によって結合されているジメトキシメチルシリル、トリメトキシシリル、ジエトキシメチルシリル、またトリエトキシシリル末端基を有するシラン末端ポリエーテルおよびシラン末端ポリウレタン、より特定的にはシラン末端ポリプロピレングリコールおよびシラン末端ポリウレタンを含む。
【0037】
シラン変性ポリマー(A)の数平均分子量Mnは、好ましくは、少なくとも400g/mol、より好ましくは、少なくとも600g/mol、より特定的には少なくとも800g/molであり、好ましくは30,000g/mol未満、より好ましくは19,000g/mol未満である。
【0038】
シラン変性ポリマー(A)の粘度は、いずれの場合にも20℃で測定されて、好ましくは少なくとも0.2Pa・s、より好ましくは少なくとも1Pa・s、非常に好ましくは少なくとも5Pa・sであり、好ましくは1,000Pa・s以下、より好ましくは700Pa・s以下である。
【0039】
本発明の第一の特に好ましい実施形態の場合において、シラン変性ポリマー(A)は、ポリマー基Yとして、線状のまたは分枝したポリオキシアルキレン基、より好ましくはそれらの鎖末端が、好ましくは-O-C(=O)-NH-によって、1つの基または複数の基-[(CR -SiR(OR3-a]に結合されているポリオキシプロピレン基を含む。ここでは、全鎖末端の好ましくは少なくとも85%、より好ましくは少なくとも90%、より特定的には少なくとも95%が、-O-C(=O)-NH-によって基-[(CR -SiR(OR3-a ]に結合されている。
このポリオキシアルキレン基Yは、200から30,000、好ましくは1,000から20,000のMn(数平均分子量)を有する。そのようなシラン変性ポリマー(A)を調製するための適切な製造方法およびシラン変性ポリマー(A)の例それ自体も、既知であり、本明細書の開示内容に含まれるEP1535940B1またはEP1896523B1を含めた出版物に記載されている。対応するシラン末端ポリマーは、例えば、Wacker Chemie AGからGENIOSIL(登録商標)STP-Eの名称の下で市販されてもいる。
【0040】
シラン変性ポリマー(A)を化学的に合成する場合は、例えば、ヒドロシリル化、マイケル付加、ディールス-アルダー付加のような付加反応、またはイソシアネート官能性化合物とイソシアネート反応性の基を含む化合物との間の反応等のさまざまな既知の製造方法によって合成することができる。
【0041】
組成物全体に対するシラン変性ポリマー(A)の含有量は特に限定されず、例えば5~90質量部の範囲が好ましい。5質量部以上であれば、ポリマーマトリックスを形成する成分以外の成分が大量に組成物に残存することがなく、組成物としての十分な性能が発揮され、形成するポリマーマトリックスの量が十分で、求められる引張強さや伸び、引裂強度などの機械的特性が十分になり、接着不良、皮膜の割れ、など硬化物としての欠陥発生が少なく、かつ、他成分による弊害を起す可能性が低くなるからである。より好ましくは、10~60質量部の範囲である。
【0042】
<シリコーン樹脂(B)について>
シリコーン樹脂(B)は、シリコーン樹脂(A)とともに用いられることにより、塗膜防水材のマトリックスに組み込まれ、高強度の機械物性を発現させるものである。
シリコーン樹脂(B)の形態は特に限定されず、例えば液体、粉体、分散液、ゾル等であってもよく、粉体に被覆されていてもよい。
上記のシリコーン樹脂(B)はの例は、典型的には、下記一般式(4)を含有する。
(RO) SiO(4-c-d-e)/2 (4)
(式(4)中、
は、同じであっても異なってもよく、水素原子、一価の、SiC-結合した、場合によって置換されている脂肪族炭化水素基、または式(4)の2つの単位を橋かけしている二価の、場合によって置換されている脂肪族炭化水素基であり、
は、同じであっても異なってもよく、メチル基またはエチル基であり、
は、同じであっても異なってもよく、一価の、SiC-結合した、場合によって置換
されている芳香族炭化水素基であり、
cは、0、1、2、もしくは3であり、
dは、0、1、2、3もしくは4であり、
eは、0、1、もしくは2であり、
c+d+e≠0である)
【0043】
基Rの例は、Rに対して上で特定した脂肪族の例である。しかしながら、基Rは、また、例えば、式(4)の2つのシリル基を互いに結び付けている、例えば、メチレン、エチレン、プロピレン、またはブチレン基等の1から10個の炭素原子を有するアルキレン基等の二価の脂肪族基を含むこともできる。二価の脂肪族基の1つの特に現時点の例は、エチレン基である。
しかしながら、基R3は、好ましくは、ハロゲン原子により場合によって置換されており、1から18個までの炭素原子を有する一価のSiC-結合した脂肪族炭化水素原子群、より好ましくは1から8個までの炭素原子を有する脂肪族炭化水素基、より特定的にはメチル基を含む。
【0044】
基Rの例は、水素原子、または、基Rに対して特定されている例である。基Rは、水素原子、または場合によりハロゲン原子によって置換されており、1から10個までの炭素原子を有するアルキル基、より好ましくは1から4個までの炭素原子を有するアルキル基、より特定的にはメチルおよびエチル基を含む。
【0045】
基Rの例は、Rに対して上で特定されている芳香族基である。
基Rは、好ましくは、場合によってハロゲン原子によって置換されており1から18までの炭素原子を有するSiC-結合した芳香族炭化水素基、例えば、エチルフェニル、トリル、キシリル、クロロフェニル、ナフチル、またはスチリル基、より好ましくはフェニル基を含む。
【0046】
シリコーン樹脂(B)としての使用が特に好ましいのは、全ての基Rの少なくとも90%がメチル基であり、全ての基Rの少なくとも90%がメチル、エチル、プロピルまたはイソプロピル基であり、全ての基Rの少なくとも90%がフェニル基であるシリコーン樹脂である。
【0047】
本発明に従えば、それぞれの場合に、式(4)の単位の総数に基づいて、cが0である式(4)の単位を少なくとも20%、より好ましくは少なくとも40%有するシリコーン樹脂を使用することがさらに好ましい。
【0048】
本発明の1つの実施形態は、それぞれの場合に、式(4)の単位の総数に基づいて、cが値2を表す式(4)の単位を少なくとも10%、より好ましくは少なくとも20%であり、80%以下、より好ましくは60%以下有するシリコーン樹脂を使用する。
【0049】
優先的に使用されるシリコーン樹脂は、それぞれの場合に、式(4)の単位の総数に基づいて、dが値0または1を表す式(4)の単位を少なくとも80%、より好ましくは少なくとも95%有するものである。
【0050】
それぞれの場合に、式(4)の単位の総数に基づいて、dが値0を表す式(4)の単位を少なくとも60%、より好ましくは少なくとも70%であり、好ましくは99%以下、より好ましくは97%以下有するシリコーン樹脂を使用することが優先される。
【0051】
成分(B)としてより優先的に使用されるのは、それぞれの場合に、式(4)の単位の総数に基づいて、eが0以外の値を表す式(4)の単位を少なくとも1%、好ましくは少なくとも10%、より特定的には少なくとも20%有するシリコーン樹脂である。eが0以外である式(4)の単位のみを有するシリコーン樹脂(B)が使用され得るが、より好ましくは式(4)の単位の少なくとも10%、非常に好ましくは少なくとも20%であり、好ましくは80%以下、より好ましくは60%以下は、eが0のシリコーン樹脂(B)である。
【0052】
それぞれの場合に、式(4)の単位の総数に基づいて、eが値1を表す式(4)の単位を少なくとも20%、より好ましくは少なくとも40%有するシリコーン樹脂(B)を使用することが優先される。eが1である式(4)の単位のみを有するシリコーン樹脂(B)が使用され得るが、より好ましくは式(4)の単位の少なくとも10%、非常に好ましくは少なくとも20%であり、好ましくは80%以下、より好ましくは60%以下は、eが0のシリコーン樹脂(B)である。
【0053】
優先的に使用されるのは、それぞれの場合に、式(4)の単位の総数に基づいて、c+eの和が0または1である式(4)の単位を少なくとも50%有するシリコーン樹脂(B)である。
【0054】
本発明の1つの特に好ましい実施形態において、それぞれの場合に、式(4)の単位の総数に基づいて、eが1であり、cが0である式(4)の単位を少なくとも20%、より好ましくは少なくとも40%有するシリコーン樹脂が下地調整剤として使用される。この場合、式(4)の総単位の好ましくは70%以下、より好ましくは40%以下は、0以外のdを有する。
【0055】
本発明の別の特に好ましい実施形態において、成分(B)として使用されるシリコーン樹脂は、それぞれの場合に式(4)の単位の総数に基づいて、eが1であり、cが0である式(4)の単位を少なくとも20%、より好ましくは少なくとも40%有しており、さらに、cが1または2、好ましくは2であり、eが0である式(4)の単位を少なくとも1%、好ましくは少なくとも10%有する樹脂である。この場合、式(4)の全単位の好ましくは70%以下、より好ましくは40%以下は、0以外のdを有しており、式(4)の全単位の少なくとも1%は、dが0である。
【0056】
本発明に従って使用されるシリコーン樹脂(B)の例は、実質的に、好ましくは排他的に、(Q)式SiO4/2、Si(OR11)O3/2、Si(OR112/2およびSi(OR111/2の単位、(T)式PhSiO3/2、PhSi(OR11)O2/2およびPhSi(OR111/2の単位、(D)式MeSiO2/2およびMeSi(OR11)O1/2の単位、ならびに(M)式MeSiO1/2の単位からなる(式中、Meはメチル基であり、Phはフェニル基であり、R11は、水素原子または場合によってハロゲン原子によって置換されており、1から10個の炭素原子を有しているアルキル基、より好ましくは水素原子または1から4個の炭素原子を有しているアルキルである。)オルガノポリシロキサン樹脂であり、樹脂は好ましは、(T)単位のモル当り、0-2モルの(Q)単位、0-2モルの(D)単位、0-2モルの(M)単位を含む。
【0057】
本発明に従って使用されるシリコーン樹脂(B)の好ましい例は、実質的に、好ましくは排他的に、式PhSiO3/2、PhSi(OR11)O2/2およびPhSi(OR111/2のT単位、およびまた、式MeSiO2/2およびMeSi(OR11)O1/2のD単位からなる(式中、Meはメチル基であり、Phはフェニル基であり、R11は、水素原子または場合によってハロゲン原子によって置換されており、1から10個の炭素原子を有しているアルキル基、より好ましくは、水素原子または1から4個の炭素原子を有しているアルキル基であり、0.5対2.0の(T)単位対(D)単位のモル比を有する。)オルガノポリシロキサン樹脂である。
【0058】
本発明に従って使用されるシリコーン樹脂(B)のさらなる好ましい例は、実質的に、好ましくは排他的に、式PhSiO3/2、PhSi(OR11)O2/2およびPhSi(OR111/2のT単位、ならびにまた、式MeSiO3/2、MeSi(OR11)O2/2およびMeSi(OR111/2のT単位、ならびにまた、場合によって、式MeSiO2/2およびMeSi(OR11)O1/2のD単位からなる(式中、Meはメチル基であり、Phはフェニル基であり、R11は、水素原子または場合によってハロゲン原子によって置換されており、1から10個の炭素原子を有しているアルキル基、より好ましくは、水素原子または1から4個の炭素原子を有しているアルキル基であり、0.5対4.0のフェニルシリコーン単位対メチルシリコーン単位のモル比を有する。)オルガノポリシロキサン樹脂である。これらのシリコーン樹脂(B)中のD単位の量は、好ましくは10重量%未満である。
【0059】
本発明に従って使用されるシリコーン樹脂(B)のさらに好ましい例は、実質的に、好ましくは排他的に、式PhSiO3/2、PhSi(OR11)O2/2およびPhSi(OR111/2のT単位からなる(式中、Phはフェニル基であり、R11は、水素原子または場合によってハロゲン原子によって置換されており、1から10個の炭素原子を有しているアルキル基、より好ましくは、水素原子または1から4個の炭素原子を有しているアルキル基である。)オルガノポリシロキサン樹脂である。これらのシリコーン樹脂(B)中のD単位の量は、好ましくは10重量%未満である。
【0060】
本発明に従って使用されるシリコーン樹脂(B)は、好ましくは少なくとも400の、より好ましくは少なくとも600のMn(数平均分子量)を有する。このMnは、好ましくは400,000以下、より好ましくは10,000以下、より特定的には50,000以下である。
【0061】
本発明に従って使用されるシリコーン樹脂(B)は、23℃ および1,000hPaにおいて固体または液体のいずれかであり得、シリコーン樹脂(B)は、好ましくは液体である。このシリコーン樹脂は、10から100,000mPa・sまで、好ましくは50から50,000mPa・s まで、より特定的には100から20,000mPa・sまでの粘度を好ましくは有する。このシリコーン樹脂(B)は、好ましくは5以下、より好ましくは3以下の多分散性(Mw /Mn)を有する。
【0062】
このシリコーン樹脂(B)は、純粋な形、または適当な溶媒中の溶液の形のいずれかで使用され得る。
【0063】
この場合に使用され得る溶媒としては、エーテル(例えば、ジエチルエーテル、メチルtert-ブチルエーテル、グリコールのエーテル誘導体、THF)、エステル(例えば、酢酸エチル、酢酸ブチル、グリコールエステル)、炭化水素(例えば、ペンタン、シクロペンタン、ヘキサン、シクロヘキサン、ヘプタン、オクタン、または他の長鎖の、分枝したおよび分枝していないアルカン) 、ケトン( 例えば、アセトン、メチルエチルケトン)、芳香族( 例えば、トルエン、キシレン、エチルベンゼン、クロロベンゼン)、または他のアルコール( 例えば、メタノール、エタノール、グリコール、プロパノール、イソプロパノール、グリセロール、ブタノール、イソブタノール、tert-ブタノール)が挙げられる。
【0064】
しかしながら、有機溶媒を含まないシリコーン樹脂(B)を使用することが好ましい。
【0065】
シラン変性ポリマー(A)に対するシリコーン樹脂(B)の含有量は特に限定されず、例えばシラン変性ポリマー(A):シリコーン樹脂(B)が5:100~100:5質量部の範囲が好ましく、50:50~50:200がさらに好ましく、シリコーン樹脂(B)の前記シラン変性ポリマー(A)に対する含有量が、2.5倍未満であることがさらにより好ましい。
上記範囲であれば、ポリマーマトリックスを形成する成分以外の成分が大量に組成物に残存することがなく、組成物としての十分な性能が発揮され、形成するポリマーマトリックスの量が十分で、求められる引張強さや伸び、引裂強度などの機械的特性が十分になり、接着不良、皮膜の割れ、など硬化物としての欠陥発生が少なく、かつ、他成分による弊害を起す可能性が低くなるからである。
【0066】
<反応性を有する材料(C)について>
反応性を有する材料(C)は、所定の半減期を有する、シラン変性ポリマー(A)と反応する反応性基を含むものであれば特に限定されない。アルコール系、オキシム系、カルボン酸系、アミン系、アミド系等であってもよい。これらの反応性を有する材料はスズ化合物等の触媒存在下でシラン変性ポリマー(A)と反応する。
シラン変性ポリマー(A)を希釈する意味において、反応性を有する材料(C)の粘度はシラン変性ポリマー(A)よりも低いことが望ましい。反応性を有する材料(C)の粘度が2,200mPa・sよりも低い粘度であれば、さらに好適である。
【0067】
反応性を有する材料(C)は、所定の半減期を有する反応性基を有するものであれば特に限定されず、例えば下記一般式(4)を含有するシラン化合物であってもよい。
(RO) SiO(4-c-d-e)/2 (4)
(式(4)中、
は、同じであっても異なってもよく、水素原子、一価の、SiC-結合した、場合によって置換されている脂肪族炭化水素基、または式(4)の2つの単位を橋かけしている二価の、場合によって置換されている脂肪族炭化水素基であり、
は、同じであっても異なってもよく、メチル基またはエチル基であり、
は、同じであっても異なってもよく、一価の、SiC-結合した、場合によって置換されている芳香族炭化水素基であり、
cは、0、1、2、もしくは3であり、
dは、0、1、2、3もしくは4であり、
eは、0、1、もしくは2であり、
c+d+e≠0である)
【0068】
前記反応性を有する材料(C)であるシラン化合物は、単一のモノマーでも同一もしくは異なるモノマーが重合したオリゴマーでもよいが、pH9の条件にてアルコキシシランの半分量がシラノールに加水分解される時間(半減期)が20時間未満であり、これらシラノールとポリマー(A)および/もしくは前記反応性を有する材料として片末端変性シリコーン(C)のシラノール同士の脱水縮合反応により湿気硬化型組成物のマトリックスを形成する。
【0069】
反応性を有する材料(C)はまた、例えば下記の一般式(5)を含有する化合物であってもよい。
Y-[(CR51 -SiR50 (OR523-f (5)
(式(5)中、Yは、窒素、酸素、硫黄または炭素を介して結合されているw価の、ポリマー鎖として、ポリオキシアルキレンまたはポリウレタンを含む有機ポリマー基であって、
50は、同じであっても異なってもよく、一価の、場合によって置換されているSiC-結合した炭化水素基であり、
51は、同じであっても異なってもよく、水素原子、または炭素原子に窒素、リン、酸素、硫黄もしくはカルボニル基が結合することができる一価の、場合によって置換されている炭化水素基であり、
52は、同じであっても異なってもよく、水素原子、または一価の、場合によって置換されている炭化水素基であり、
wは、1であり、
fは、0 、1 、もしくは2 であり、
gは、1 から1 0 までの整数である。)
上記式(5)における反応性を有する材料(C)は、反応性を有する材料(C)の1分子に、平均して1個のシラン変性基を有する。シラン変性基を、1つの末端にのみ有する片末端変性タイプである場合において、末端の一部が未反応で残る場合もある。
【0070】
反応性を有する材料(C)は、例えば下記一般式(6)、(7)から選択されるシラン架橋ポリマーであってもよい。
22-O-Z-O-CO-NH-(CH)-SiR20 (OR213-v (6)
24-O-Z-O-CO-NH-(CH-Si(OR23 (7)
(式(6)、式(7)中
は、C結合したヒドロキシル基を含まない二価のポリマー基を示し、
は、C結合したヒドロキシル基を含まない二価のポリマー基を示し、
20は、同一であっても異なっていてもよく、一価のSiC結合した置換されていてもよいヒドロカルビル基を表し、
21は、同一であっても異なっていてもよく、水素原子又は一価の置換されていてもよいヒドロカルビル基を表し、
23は、同一であっても異なっていてもよく、水素原子又は一価の置換されていてもよいヒドロカルビル基を表し、
22は、一価の置換されていてもよいヒドロカルビル基を表し、
24は、一価の置換されていてもよいヒドロカルビル基を表し、
vは、0又は1、好ましくは0である)
【0071】
前記一般式(6)、(7)の反応性を有する材料(C)は、片末端変性タイプでありpH9の条件にてアルコキシシランの半分量がシラノールに加水分解される時間(半減期)が1時間未満であるこれらシラノールとポリマー(A)のシラノールの脱水縮合反応により湿気硬化型組成物のマトリックスを形成する。
【0072】
一般式(6)、(7)における基R20 の例は、アルキル基、例えば、メチル基、エチル基、n - プロピル基、イソプロピル基、1 - n - ブチル基、2 - n - ブチル基、イソブチル基、t e r t - ブチル基、n -ペンチル基、イソペンチル基、ネオペンチル基、t e r t - ペンチル基; ヘキシル基、例えば、n - ヘキシル基; ヘプチル基、例えば、n - ヘプチル基; オクチル基、例えば、n- オクチル基、イソオクチル基及び2 , 2 , 4 - トリメチルペンチル基; ノニル基、例えば、n - ノニル基; デシル基、例えば、n - デシル基; ドデシル基、例えば、n - ドデシル基; オクタデシル基、例えば、n - オクタデシル基; シクロアルキル基、例えば、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロヘプチル基及びメチルシクロヘキシル基; アルケニル基、例えば、ビニル基、1 - プロペニル基及び2 - プロペニル基; アリール基、例えば、フェニル基、ナフチル基、アントリル基及びフェナントリル基; アルカリール基、例えば、o - 、m - 、p - トリル基; キシリル基及びエチルフェニル基; 及びアラルキル基、例えば、ベンジル基、α - 及びβ - フェニルエチル基である。
【0073】
置換された基R20 の例は、ハロアルキル基、例えば、3,3,3-トリフルオロ-n-プロピル基、2,2,2,2‘,2‘,2‘-ヘキサフルオロイソプロピル基及びヘプタフルオロイソプロピル基、ハロアリール基、例えば、o-、m-及びp- クロロフェニル基である。
【0074】
基R20 は、好ましくは、ハロゲン原子で任意に置換されていてもよい1 ~ 6 個の炭素原子を有する一価のヒドロカルビル基、より好ましくは1 又は2 個の炭素原子を有するアルキル基、より詳細にはメチル基である。
【0075】
一般式(6)、(7)における基R21 及びR23 の例は、互いに独立して、水素原子又は一般式(6)、(7)における基R20 について特定された例である。
【0076】
基R21 及びR23 は、互いに独立して、好ましくは水素原子又はハロゲン原子で置換されていてもよい1 ~ 1 0 個の炭素原子を有するアルキル基、より好ましくは1 又は4 個の炭素原子を有するアルキル基、より詳細にはメチル基又はエチル基である。
【0077】
一般式(6)、(7)における基R22 及びR24 の例は、互いに独立して、一般式(6)、(7)基R20 について特定された例である。
【0078】
基R22及びR24は、互いに独立して、好ましくはハロゲン原子で置換されていてもよい1 ~ 1 0 個の炭素原子を有するアルキル基、より好ましくは1 ~ 6 個の炭素原子を有するアルキル基、より詳細にはメチル基、エチル基、n - プロピル基又はn - ブチル基である。
【0079】
一般式(6)、(7)ポリマー基Z 及びZ の例は、互いに独立して、C 結合したヒドロキシル基を含まないポリエステル基、ポリエーテル基、ポリウレタン基、ポリアルキレン基又はポリアクリレート基である。
【0080】
ポリマー基Z 及びZ は、互いに独立して、好ましくは、ポリマー鎖としてポリオキシアルキレン、例えば、ポリオキシエチレン、ポリオキシプロピレン、ポリオキシブチレン、ポリオキシテトラメチレン、ポリオキシエチレン- ポリオキシプロピレンコポリマー及びポリオキシプロピレン- ポリオキシブチレンコポリマー; 炭化水素ポリマー、例えば、ポリイソブチレン又はポリイソブチレンとイソプレンとのコポリマー; ポリクロロプレン; ポリイソプレン; ポリウレタン; ポリエステル; ポリアミド; ポリアクリレート; ポリメタクリレート; ビニルポリマー及び/ 又はポリカーボネート( これらはC - 結合したヒドロキシル基を含まない) を含む有機ポリマー基である。
【0081】
特に好ましくは、基Z 及びZ は、C 結合したヒドロキシル基を含まない線状ポリオキシアルキレン基である。
【0082】
基Z及びZ は、好ましくは少なくとも2 0 0 0 g / m o l 、より好ましくは少なくとも3 0 0 0 g / m o l 、非常に好ましくは少なくとも4 0 0 0 g / m o l の数平均モル質量( 数平均M n ) を有する。それらは好ましくは最大1 1 0 0 0 g / m o l 、より好ましくは最大9 0 0 0 g / m o l 、非常に好ましくは最大7 0 0 0 g / m o l の数平均モル質量M n を有する。
【0083】
ここで、数平均モル質量M n は、本発明との関連で、ポリスチレン標準に対して、THF中6 0℃、流速1.2 ml/分、及びRI (屈折率検出器) による検出で、ウォーターズ社( W a t e r s C o r p .) からのStyragel HR3-HR4-HR5-HR5カラム上で、100μl の注入容量でサイズ排除クロマトグラフィー(SEC) により決定する。
【0084】
反応性を有する材料(C)として使用することができる式(6) のポリマーは、好ましくは、以下の式
22-O-Z-OH (8)
のポリマーと以下の式
OCN-(CH)-SiR(OR213-v (9)
のシランとを反応させることにより調製され、式中全ての基及び添え字は、上記一般式(6)、(7)の定義の1 つを有する。
【0085】
反応性を有する材料(C)として使用することができる式(7) のポリマーは、好ましくは、以下の式
24-O-Z-OH (10)
のポリマーと以下の式
OCN-(CH-Si(OR23 (11)
のシランとを反応させることにより調製され、式中全ての基及び添え字は、上記の定義の1 つを有する。
【0086】
この場合の反応は、好ましくは、主に完全なシラン末端、即ち、存在する全O H 官能性鎖末端の少なくとも9 0 % 、より好ましくは少なくとも9 5 % 、より詳細には少なくとも9 8 % のシラン末端が存在するように行われる。
【0087】
好ましくは、式(8) 及び(10) の非シラン官能性ポリマーは、反応性を有する材料(C)を 1 0 0 質量部とした場合に、最大で1 5 質量部、より好ましくは最大で1 0 質量部、より詳細には最大で5 質量部の量で含むことができる。
【0088】
ここで、式(6)、(7)のポリマーは、原則としてE P 1 5 3 5 6 9 4 0 B 1 又はE P 1 8 9 6 5 2 3 B 1 号に記載された種類の方法によって調製することができ、これらの方法はそれぞれ式(8) 又は式(10) の単官能性ポリマーが反応物として使用され、反応物のそれぞれの化学量論がそれに応じて適合される点でのみ異なっている。適切な調製方法は、D E - A 1 0 2 0 1 3 2 1 6 8 5 2 号にさらに記載されている。
【0089】
式(6)、(7)のポリマーは、好ましくは触媒( K B ) の存在下で調製される。任意に使用される触媒( K B ) の例は、ビスマス含有触媒、例えば、ボルチャーズ有限会社( B o r c h e r s G m b H ) からの商品名B o r c h i ( R ) K a t 2 2 、B or c h i ( R ) K a t V P 0 2 4 3 又はB o r c h i ( R ) K a t V P 0 24 4 を有する触媒であり、そのほかの触媒は特表2016―534192にさらに記載されている。
【0090】
式(6)のポリマーは の調製のために触媒( K B ) が使用される場合、含まれる量は、いずれの場合も式(8) のO H 官能性ポリマー1 0 0 質量部を基準として、好ましくは0 .0 0 1 ~ 5 質量部、より詳細には0 . 0 5 ~ 1 質量部の量である。
【0091】
式(7)のポリマー の調製のために触媒( K B ) が使用される場合、含まれる量は、いずれの場合も式(10 ) のO H 官能性ポリマー1 0 0 質量部を基準として、好ましくは0 .0 0 1 ~ 5 質量部、より詳細には0 . 0 5 ~ 1 質量部の量である。
【0092】
本発明に従って使用される式(6)のポリマーの調製では、式(8) 及び(9) の反応物は、好ましくは、0 . 9 ~ 2 . 0 モル、好ましくは0 . 9 5 ~ 1 . 6 モル、より好ましくは1 . 0 ~ 1 . 4 モルのイソシアネート基が、ヒドロキシル官能基1 モル当たり使用されるように定量的な比で使用される。
【0093】
本発明に従って使用される式(7)ポリマーの調製では、式(10) 及び(11 ) の反応物は、好ましくは、0 . 9 ~ 2 . 0 モル、好ましくは0 . 9 5 ~ 1 . 6 モル、より好ましくは1 . 0 ~ 1 . 4 モルのイソシアネート基が、ヒドロキシル官能基1 モル当たり使用されるように定量的な比で使用される。
【0094】
式(6)及び式(7)のポリマーの平均分子量M n は、好ましくはそれぞれ少なくとも3 00 0 g / m o l 、好ましくは最大で8 0 0 0 g / m o l 、より好ましくは最大で7 0 0 0g / m o l である。
【0095】
式(6)及び式(7)のポリマーの粘度は、互いに独立して、いずれの場合も2 0 ℃ で測定して、好ましくは少なくとも0 . 2 P a・ s 、より好ましくは少なくとも0 . 5 P a ・s 、非常に好ましくは少なくとも1 P a ・s 、好ましくは最大で1 0 P a ・s 、より好ましくは最大で8 P a ・s 、より詳細には最大で5 P a・ s である。
【0096】
反応性を有する材料(C)として使用することができる式(6)のポリマーは、好ましくはいずれの場合も一方の鎖端で式- O - C O - N H - ( C H ) - S i ( C H ) ( O CH で停止された線状ポリオキシプロピレンを含む。他端では、非常に好ましくは、これらのポリマーはアルキル基を有し、例えば、ワッカー・ケミー社( 独国ミュンヘン)から入手可能な販売製品G E N I O S I L (登録商標 ) X M 2 0 が挙げられる。
【0097】
反応性を有する材料(C)として使用することができる式(7)のポリマー は、好ましくはいずれの場合も一方の鎖端で式- O - C O - N H - ( C H - S i ( O C Hで停止された線状ポリオキシプロピレンを含む。他端では、非常に好ましくは、これらのポリマーはアルキル基を有し、例えば、ワッカー・ケミー社( 独国ミュンヘン) から入手可能な販売製品G E N I O S I L ( 登録商標 ) X M 2 5 が挙げられる。
【0098】
反応性を有する材料(C) は、式(6)のポリマーのみ、式(7)のポリマーのみ、又は式(6)及び式(7)のポリマーの混合物であってもよい。式(6)、式(7)で表されるポリマーは、それぞれ式(6)、(7)で表される化合物1種のみを含んでもよいが、(6)、(7)で表される複数の化合物を含むこともできる。
【0099】
本発明の湿気硬化型組成物は、湿気硬化型組成物全体に対して、好ましくは最大で8 0 質量部、より好ましくは最大で7 0 質量部 、好ましくは少なくとも5質量部、より好ましくは少なくとも10質量部 の濃度で反応性を有する材料(C) を含む。
【0100】
<塗膜防水材組成および各原料>
上記一般式(1)に示すシラン変性ポリマー(A)を含有する湿気硬化型組成物を、各種用途において各種基材にコーティングする際のコーティング材組成物としての形態、組成物内容は限定されない。
典型的な用途である、建築建材や工業構造物などの基材にシラン変性ポリマーを含有する湿気硬化型組成物を塗布する場合は、下記の組成物であることが好ましい。
シラン変性ポリマー(A): 5~90質量部
シリコーン樹脂(B): 5~90量部
反応性を有する材料(C): 5~80質量部
無機粒子(D):0~20質量部
揺変剤(E):0~10質量部
アミン化合物(F): 0.01~10質量部
脱水剤(G): 0~10質量部
安定化剤(H): 0.01~5質量部
充填剤(I): 0~80質量部
硬化触媒(J): 0~5質量部
ただし、各成分の質量部は、湿気硬化型組成物全体を100質量部とした場合の質量部である。
【0101】
任意で配合される無機粒子(D)は、本発明の湿気硬化型組成物に対して、それらのファンデルワールス力により系内でネットワークを形成して系全体を増粘させることで、一定以上のチクソ性を付与している。
【0102】
無機粒子(D)の原料として用いられる無機粒子としては、例えばシリカ、二酸化チタン、ベントナイト、酸化亜鉛、タルク、カオリン、雲母、パーミキュライト、炭酸マグネシウム、炭酸カルシウム、ケイ酸アルミニウム、ケイ酸バリウム、ケイ酸カルシウム、ケイ酸マグネシウム、ケイ酸ストロンチウム、タングステン酸金属塩、マグネシウム、ゼオライト、硫酸バリウム、焼成硫酸カルシウム、リン酸カルシウム、弗素アパタイト、ヒドロキシアパタイト、金属石鹸等の無機粒子が挙げられる。 また、粒子に金属酸化物等を被覆させて得られる複合粒子や、粒子表面を化合物等で処理した改質粒子を用いてもよい。
【0103】
通常これらの粒子の表面はシラノール基、カルビノール基、あるいはその他の水酸基等の親水基で覆われている部分と、それらの基をアルキル基等で疎水化処理した基、ないしは、別の疎水性の基で覆われている部分が存在する。
その親水性基と疎水性基の比率を調整することにより、系における無機粒子の凝集性や溶解性を制御できる。
【0104】
前記無機粒子の中では、シリカを用いることが好ましい。シリカはフュームドシリカ、湿式シリカ、コロイダルシリカ等の種類があるが、いずれの種類のシリカの粒子においても表面には親水性であるシラノールが存在することと、そのシラノール基を任意の割合でアルキル基等による疎水化処理を行うことができるために、表面の親水基と疎水基のモル比を設定することが容易である。また、シリカは、凝集構造を取ること、各種油分との親和性が高く、入手容易性や経済性等の観点から、広汎な用途を与えることとなるため好ましい。
【0105】
本発明において最も好ましいシリカはフュームドシリカである。
フュームドシリカ粒子は、多次の凝集構造を取っている。そのため、凝集レベルに応じて表面の親水基と疎水基のバランスを制御したり、凝集単位を組み換えたりすることができる。
また、フュームドシリカ粒子は、多孔質構造を有しているので、表面積が大きくなり、より会合や吸着の機能が大きくなるため、系をより安定、均一に生成できるからである。
【0106】
フュームドシリカ粒子は、最小単位である1次粒子は、通常、5~30ナノメートル程
度の大きさであり、1次粒子が凝集して1次凝集体、すなわち2次粒子を形成している。
1次凝集体の大きさは、通常、100~400ナノメートル程度である。1次粒子同士は
化学結合により融合しているので、1次凝集体を分離するのは通常困難である。さらに、1次凝集体同士が凝集構造を形成しており、これを2次凝集体、すなわち3次粒子と称する。2次凝集体の大きさは概ね10μm程度である。2次凝集体における1次凝集体間の凝集形態は、通常、化学結合ではなく、水素結合やファンデルワールス力によるものである。
【0107】
フュームドシリカ粒子は、粉末状では2次凝集体が多くの場合の最も大きな凝集状態である。しかし、湿気硬化型組成物内では2次凝集体がさらに凝集することができる。すなわち、本発明において疎水化シリカがシラン末端変性ポリマーおよび反応性を有する材料(反応性希釈剤)の疎水部分に対してファンデルワールス力により有効にネットワークを形成している場合が、その一つの例である。その凝集を分離させる力は、2次凝集体を分離させる力よりも弱い力で分離できる。すなわち、本発明における湿気硬化型組成物において、施工時にくし目ごてなどで施工した際、その凝集を分離させることで作用時の粘度が低粘度化することが、その一つの例である。
【0108】
前記フュームドシリカ粒子は、疎水化されている場合が好ましく、疎水化に用いられる成分は特に限定されない。疎水化に用いられる成分は、例えばメチルトリクロロシランのようなハロゲン化有機ケイ素やジメチルジアルコキシシランのようなアルコキシシラン類、シラザン、低分子量のメチルポリシロキサンで、処理する公知の方法によって疎水化することができる。
【0109】
組成物全体に対する無機粒子(D)の含有量は、0.1~20質量部が望ましく、20質量部を超えると系全体の粘度が増加し、湿気硬化型組成物の製造時の撹拌不良による不均一化、施工時の作業性が著しく低下する可能性があるからである。より好ましくは1~10質量部、さらに好ましくは2~5質量部の範囲である。
【0110】
任意で配合される揺変剤としての成分(E)は、例えば有機系では水素添加ひまし油系、アマイド系、酸化ポリエチレン系、植物油重合油系、界面活性剤系などである。成分(E)は単一成分でもよくまたはこれらを2種以上併用しても良い。
【0111】
アミン化合物(F)は、本発明の湿気硬化型組成物に対し、硬化触媒または硬化共触媒の機能を有し、さらに、接着促進剤として作用することもできる成分である。
アミン化合物(F)は、構造や分子量は特に限定されず、商業的な製品として購入することができ、または、化学な一般的な方法によって調製することもできる。
アミン化合物(F)は単体であっても、2種類以上の混合物のいずれでも構わない。
【0112】
アミン化合物(F)は例えば、一般式(12)の単位を含む有機ケイ素化合物をであってもよい。一般式(12)の単位の一例としては、アミノプロピルトリメトキシシリル基が挙げられる。
Si(OR3132 (4-i-j-h)/2 (12)
(式(12)中、R31は、同じであっても異なってもよく、水素原子または場合によって置換されている炭化水素基を示し、
Dは、同じであっても異なってもよく、塩基性窒素を含む一価のSiC-結合した基を示し、
32は、同じであっても異なってもよく、塩基性窒素を含んでいない場合によって置換されている一価のSiC-結合した有機基を示し、
iは、0、1、2、または3、好ましくは1または0であり、
jは、0、1、2、または3、好ましくは1、2、または3、より好ましくは2または3であり、
hは、1、2、3、または4、好ましくは1であり、ただし、f+g+hの合計は、4以下であり、分子当り少なくとも1つの基Dが存在する。)
【0113】
アミン化合物(F)は、シラン、すなわち、i+j+h=4である一般式(11)の化合物ばかりでなく、シロキサン、すなわち、i+j+h≦3である式(12)の単位も、含むことができるが、シランが優先される。
【0114】
組成物全体に対するアミン化合物(F)の含有量は、0.01~10質量部の範囲が好ましい。
0.01質量部未満だと、硬化不良および/または接着不良が起きる可能性があるからである。10質量部を超えると、必要のない反応を起こさせたり、皮膜表面にしわの発生、塗膜形成後に周囲の材料を変質させるなどの弊害を起す可能性があり、また可使時間が短くなることにより施工不良が起きる可能性がある。また、保存安定性で増粘・ゲル化・硬化などの不具合が生じ可能性があるからである。より好ましくは、0.5~3.0質量部の範囲である。
【0115】
脱水剤(G)は、本発明の湿気硬化型組成物に対し、水捕捉を行うことにより、脱水せしめる成分である。
脱水剤(G)は、商業的な製品として購入することができ、または、化学的な一般的な方法によって調製することもできる。
成分(G)は単体であっても、2種類以上の混合物のいずれでも構わない。
【0116】
脱水剤(G)の例は、シラン、例えば、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルメチルジメトキシシラン、O-メチルカルバメートメチル-メチルジメトキシシラン、O-メチルカルバメートメチル-トリメトキシシラン、O-エチルカルバメートメチル-メチルジエトキシシラン、O-エチルカルバメートメチル-トリエトキシシランおよび/またはそれらの部分縮合物、およびまた、オルトエステル、例えば、1,1,1-トリメトキシエタン、1,1,1-トリエトキシエタン、トリメトキシメタンおよびトリエトキシメタンである。
【0117】
組成物全体に対する脱水剤(G)の含有量は含まれなくてもよいが、0.01~10質量部の範囲が好ましい。0.01質量部未満だと、脱水の効果が十分でなく、製造中および保存中に増粘、ゲル化、硬化などの不具合が生じる可能性があり、10質量部を超えると、塗膜の物性を劣化させるなどの弊害を起す可能性があるのと、施工後に硬化不良、未硬化を起こす可能性があるからである。より好ましくは、0.5~3.0質量部の範囲である。
【0118】
安定化剤(H)は、本発明の湿気硬化型組成物に対し、紫外線吸収剤、酸化防止剤、熱安定剤や光安定剤の機能を有し、ポリマー劣化の安定化剤として作用することもできる成分である。
安定化剤(H)は、商業的な製品として購入することができ、または、化学的な一般的な方法によって調製することもできる。
安定化剤(H)は単体であっても、2種類以上の混合物のいずれでも構わない。
【0119】
安定化剤(H)は、上記機能、作用を示すものでればよく、限定されないが、好ましくは、酸化防止剤、紫外線安定剤、HALSである。
【0120】
組成物全体に対する安定化剤(H)の含有量は、0.01~5質量部の範囲が好ましい。0.01質量部未満だと、紫外線や熱、酸化などによる塗膜劣化が起きる可能性があり、5質量部を超えると、予期せぬ不具合、例えば透明の製品であれば色調変化等、を起す可能性があるからである。より好ましくは、0.5~2.0質量部の範囲である。
【0121】
任意で配合される充填剤(I)は、本発明の湿気硬化型組成物に対し、増量材、粘度・粘性調整や引張強さや伸びなどの物性調整の機能を有し、含有する水分によってコーティング材の硬化促進剤として作用することもできる成分である。この成分は、上記の機能や作用を必要とされない場合は、本発明のコーティング材組成物にとっては必須成分ではない。
充填剤(I)は、商業的な製品として購入することができ、または、化学的な一般的な方法によって調製することもできる。
充填剤(I)は単体であっても、2種類以上の混合物のいずれでも構わない。
【0122】
充填剤(I)は、上記機能、作用を示すものでればよく、限定されないが、例としては、非補強性充填剤、好ましくは、最大50m2/gのBET表面積を有する充填剤、例えば、石英、珪砂、珪藻土、ケイ酸カルシウム、ケイ酸ジルコニウム、タルク、カオリン、ゼオライト、金属酸化物粉末、例えば、酸化アルミニウム、酸化チタン、酸化鉄、または酸化亜鉛および/またはそれらの混合酸化物、硫酸バリウム、炭酸カルシウム、セッコウ、窒化ケイ素、炭化ケイ素、窒化ホウ素、ガラス粉末およびポリマー粉、例えば、ポリアクリロニトリル粉末;補強性充填剤、50m2/gを超えるBET表面積を有する充填剤、例えば、熱分解により調製されたシリカ、沈降シリカ、沈降炭酸カルシウム、カーボンブラック、例えばファーネスブラックおよびアセチレンブラックおよび高いBET表面積の混合ケイ素/アルミニウム酸化物;三水酸化アルミニウムの中空ビーズの形の充填剤、例えば、ドイツ、ノイスの3M Deutschland GmbHから商標名Zeeospheres(商標)の下で入手できるものが例である磁性マイクロビーズ、例えば、スウェーデン、スンツバルのAKZONOBEL,Expancelから商標名EXPANCEL(登録商標)の下で入手できるその種の弾性ポリマービーズ、またはガラスビーズ;繊維形状の充填剤、例えば、アスベストおよびまたポリマー繊維である。
上記の充填剤は、例えば、オルガノシランおよび/もしくはオルガノシロキサンによる、または、ステアリン酸による処理によって、またはヒドロキシル基のアルコキシ基へのエーテル化によって疎水化されていてもよい。
【0123】
充填剤(I)は、好ましくは、炭酸カルシウム、タルク、水酸化アルミニウムおよびシリカであり、水酸化アルミニウムが特に好ましい。好ましい炭酸カルシウムのグレードは、粉砕または沈降であり、ステアリン酸等の脂肪酸またはそれらの塩により場合によって表面処理されている。好ましいシリカは、好ましくは、熱分解された(ヒュームド)シリカである。
【0124】
充填剤(I)は、好ましくは1質量部未満、より好ましくは0.5質量部未満の水分含量を有する。
【0125】
組成物全体に対する充填剤(I)の含有量は、0~80質量部の範囲が好ましい。より好ましくは、0~60質量部の範囲である。前記範囲内では、接着不良、皮膜の割れ、などコーティング材としての欠陥が発生する可能性ちいさく、また、製造時の粘度が適しているため均一に撹拌することができるからである。
【0126】
硬化触媒(J)は、本発明の湿気硬化型組成物に対し、硬化触媒の機能を有する成分である。この成分は、上記の機能や作用を必要とされない場合は、本発明の湿気硬化型組成物にとっては必須成分はないが、シラン末端変性ポリマー(A)の反応性が低い場合には有効となる成分である。
硬化触媒(J)は、商業的な製品として購入することができ、または、化学的な一般的な方法によって調製することもできる。
硬化触媒(J)は単体であっても、2種類以上の混合物であってもよい。
【0127】
硬化触媒(J)は、上記機能、作用を示すものでればよく、限定されないが、金属を含む成分(J)の例は、有機チタンおよび有機スズ化合物であり、例は、チタン酸エステル、例えば、チタン酸テトラブチル、チタン酸テトラプロピル、チタン酸テトライソプロピルおよびチタンテトラアセチルアセトネート;スズ化合物、例えば、ジブチルスズジラウレート、ジブチルスズマレエート、ジブチルスズジアセテート、ジブチルスズジオクタノエート、ジブチルスズアセチルアセトネート、ジブチルスズオキシドおよび対応するジオクチルスズ化合物である。
【0128】
金属を含まない硬化触媒(J)の例は、塩基性化合物、例えば、トリエチルアミン、トリブチルアミン、1,4-ジアザビシクロ[2.2.2]オクタン、1,5-ジアザビシクロ[4.3.0]ノン-5-エン、1,8-ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデカ-7-エン、N,N-ビス-(N,N-ジメチル-2-アミノエチル)メチルアミン、N,N-ジメチルシクロヘキシルアミン、N,N-ジメチルフェニルアミンおよびN-エチルモルホリニン(ethylmorpholinine)である。
【0129】
硬化触媒(J)として、酸性化合物、例えば、リン酸およびそのエステル、トルエンスルホン酸、硫酸、硝酸、またはその他の有機カルボン酸、例えば、酢酸および安息香酸を使用することが同様に可能である。
【0130】
組成物全体に対する硬化触媒(J)の含有量は、0~5質量部の範囲が好ましい。5質量部を超えると、可使時間が短くなることによる施工不良が起き、皮膜表面にしわが発生する可能性があり、保存中に増粘、ゲル化、硬化などの不具合が生じる可能性があるからである。より好ましくは、0~0.2質量部の範囲である。
【0131】
本発明の湿気硬化型組成物は、上述した成分以外にも、本発明の目的を達する限りにおいて、任意成分を含有することができる。例えば、消泡剤、硬化速度調整材、添加剤、接着向上剤および補助剤等の全てのその他の物質を含むことができる。場合により、接着性を向上させる成分、例えばエポキシシラン等、を添加することもできる。
【実施例0132】
実施例、比較例を示し、表1に結果を記載した上で本発明を具体的に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
【0133】
<半減期の測定>
シラン変性ポリマー(A)および反応性を有する材料(C)の半減期は、市販の緩衝液を含むNMR溶媒に測定対象物質((A)または(C)である)を添加し、これら混合溶液を撹拌することで加水分解反応を開始させ、撹拌直後から所定時間に、これら混合溶液の1H―NMRスペクトルを測定することにより、測定した。
例えば実施例1、実施例2で用いられるシラン変性ポリマー(A)および反応性を有する材料(C)はいずれも、-Si-O-CHの構造を有する。この場合、加水分解前(-Si-O-CH)と、加水分解後(CHOH)の比率を計測し、加水分解前の物質が半分量となるまでの時間を半減期とする。
【0134】
緩衝液の一例として、次の3種のうちいずれかを用いてもよい。
pH 4.0:メルク社バッファー溶液サーティピュア(登録商標)(クエン酸/水酸化ナトリウム/塩酸)
pH7.0:JT Baker社製緩衝液(リン酸二水素カリウム/リン酸水素ナトリウム)
pH 9.0:メルク社バッファー溶液サーティピュア(登録商標)pH 9.0(ホウ酸/塩化カリウム/水酸化ナトリウム)
緩衝液2250μLに、シフト試薬兼内部標準である3-(トリメチルシリル)プロピオン酸ナトリウム-2,2,3,3-d4(Na-TSP-d4)を含む重水450μLと、測定対象物質5μLを加え、5mmのNMRサンプルチューブに導入する。
Bruker社製NMR Avance DPX400を使用し、25℃で、5分毎にH-NMRを測定した。
【0135】
<湿気硬化型組成物の粘度測定>
実施例、比較例で得られた湿気硬化型組成物について、粘弾性測定装置(Physica MCR 301/アントンパール社製)を使用し、せん断速度(10 (1/s))における60秒後の測定値を粘度とした。
【0136】
<粘度評価基準>
粘度が30,000mPa・sより小さい場合、作業性および仕上がり性は良好である。
【0137】
<線収縮率>
実施例1~3および比較例1~5の湿気硬化型組成物を、金型に流し込み、へらで平滑に均し、23℃±2℃、湿度50%±5%の条件下で養生することで150mmx150mmx2mmの硬化シートを作成し、28日養生した後の塗膜(硬化物)の線形収縮率(150mmの線形方向に対して収縮した割合)を評価した。
【0138】
<線収縮率評価基準>
線収縮率が2%未満の場合、塗膜の収縮率は特に良好である。
【0139】
<引張強さおよび伸び>
実施例1~3および比較例1~5の塗膜のJIS K6249に記載の方法(3号ダンベル)で、一週間、2週間、4週間養生後の引張強さおよび伸びをそれぞれ評価した。
【0140】
<引張強さおよび伸び評価基準>
引張強さが2.3以上、および伸びが450以上場合、塗膜の機械物性は特に良好であると評価した。
【0141】
<機械物性変化率>
実施例1~3および比較例1~5の塗膜のJIS K6249に記載の方法(3号ダンベル)で、所定期間養生した50%モジュラス(試験片を50%伸長した際の引張応力)を評価した。
【0142】
<機械物性変化率評価基準>
実施例1~3および比較例1~5の塗膜について、7日間養生後の50%モジュラスに対する、28日以内の50%モジュラスの最大値と最小値の差の割合が20%未満である場合、最大機械物性を初期の段階で発現したと判断し、機械物性変化率は良好であると評価した。
【0143】
<湿気硬化型組成物および塗膜の総合評価>
湿気硬化型組成物の粘度が低く、得られる塗膜の28日後の線収縮率が2%未満であり、かつ、50%モジュラスの変化率が±20%未満であることを、施工後の塗膜の最大機械物性の初期段階での発現と、収縮の小さい塗膜を得るという本発明の課題を解決するための基準とした。
引張強さおよび伸びが大きい塗膜がえられれば、さらに好適である。
【0144】
<実施例1>
湿気硬化型組成物として次の各成分を用いた。
シラン変性ポリマー(A)として、Wacker Chemie AG社製のGENIOSIL(登録商標) STP-E30(粘度が25℃において30、000 mPa・s、上述の一般式(1)においてYはポリマー鎖としてオキシアルキレン基を含むウレタン基を介して結合されている2価の有機ポリマー基であり、R、R1、R2はいずれもメチル基であり、a=1であり、b=1であり、x=2である)を25.0質量部に対して、同社製のGENIOSIL(登録商標) STP-E10(粘度が25℃において10、000 mPa・s、上述の一般式(1)においてYはポリマー鎖としてオキシアルキレン基を含むウレタン基を介して結合されている2価の有機ポリマー基であり、R、R1、R2はいずれもメチル基であり、a=1であり、b=1であり、x=2である)を10.0質量部、シリコーン樹脂(B)として、同社製のSILRES(登録商標)IC 678(フェニル官能性T単位のみから成り、15重量%のメトキシ基含量および900g/molの平均モル質量を有する液体フェニルシリコーン樹脂)を15.0質量部、反応性を有する材料(C)として同社製のGENIOSIL XM20(反応性基の含有量は1.2重量%である)を20.0質量部、ビニルシラン系脱水剤(G)として、同社製のGENIOSIL(登録商標)XL10(ビニルトリメトキシシラン)を0.7質量部、安定化剤(H)として、同社製のGENIOSIL(登録商標)Stabilizer Fを2.50質量部を添加し均一に撹拌する。
Y-[(CR -SiR(OR3-a (1)
【0145】
無機粒子(D)として、同社製のHDK(登録商標)2000を1.50質量部、成分(I)の充填剤の合成炭酸カルシウムとして、白石工業社製のライトンBS-Oを43.3質量部添加混合し均一に混錬する。
さらにアミン化合物(F)として、Wacker Chemie AG社製のGENIOSIL(登録商標) GF96(3-アミノプロピルトリメトキシシラン)を2.00量部を添加し、均一に撹拌し湿気硬化型組成物1を調製した。
【0146】
得られた湿気硬化型組成物を金型に流し込み、へらで平滑に均し、23℃±2℃、湿度50%±5%の条件下で養生することで空気中の水分と反応・硬化させ、塗膜を得た。
【0147】
シラン変性ポリマー(A)であるGENIOSIL(登録商標) STP-E30、STP-E10のシラン含有基および反応性を有する材料(C)であるGENIOSIL(登録商標) XM20の反応性基の半減期はいずれも1時間であった。
したがって、反応性を有する材料(C)の反応性基半減期は、シラン変性ポリマー(A)のシラン含有基の半減期の1倍であった。
【0148】
湿気硬化型組成物1の粘度測定の結果、22,700mPa・sであり、基準値である30,000mPa・sよりも低い良好な結果が得られた。したがって、作業性および仕上がり性は良好であった。
得られた塗膜の4週間経過後の線収縮率は0.3%であり、得られた塗膜の収縮は特に小さかった。
塗膜の引張強さは1週間経過時に3.1MPa、4週間経過時に3.3Mpaであり、いずれも2.3MPaを上回り、特に十分な引張強さを有していた。
塗膜の伸びは、1週間経過時、2週間経過時、4週間経過時のいずれにおいても450を上回り、特に良好な特性を示した。
塗膜の50%モジュラスを測定した結果、1週間経過時は0.8であり、28日以内の最大値が0.8、最小値が0.7であった。すると、変化率は12.5%であり、基準値である20%未満であった。したがって、初期の段階から良好な機械物性を発現していたといえる。
【0149】
以上により、湿気硬化型組成物1は低粘度であり、塗膜の収縮は小さく、初期の段階で機械物性(50%モジュラス)を発現したことから、塗膜の物性は良好であったといえる。
【0150】
<実施例2>
反応性を有する材料(C)として同社製のSILRES(登録商標) BS1316(イソオクチルトリメトキシシランであり、反応性基の含有量は40重量%である)を20.0質量部用いた他は、すべて実施例1と同じ成分、同じ質量部数と調製方法を用い、湿気硬化型組成物2を得て、同様の評価を行った。
【0151】
シラン変性ポリマー(A)であるGENIOSIL(登録商標) STP-E30、STP-E10のシラン含有基の半減期は1時間であるのに対し、反応性を有する材料(C)であるSILRES(登録商標) BS1316の反応性基の半減期は17時間であった。
したがって、反応性を有する材料(C)の反応性基半減期は、シラン変性ポリマー(A)のシラン含有基の半減期の17倍であった。
【0152】
湿気硬化型組成物2の粘度測定の結果、7,800mPa・sであり、基準値である30,000mPa・sよりも低い良好な結果が得られた。したがって、作業性および仕上がり性は良好であった。
得られた塗膜の4週間経過後の線収縮率は1.9%であり、得られた塗膜の収縮は特に小さかった。反応性を有する材料(C)として使用したSILRES(登録商標) BS1316の反応性基含有量が10%を上回り、加水分解により生成したアルコールの減少分について、実施例1よりは収縮率がやや増加したと考えられる。
塗膜の引張強さは1週間経過時に4.3MPa、4週間経過時にも4.3Mpaであり、いずれも2.3MPaを上回り、特に十分な引張強さを有していた。
塗膜の伸びは、1週間経過時、2週間経過時、4週間経過時のいずれにおいても450を上回り、特に良好な特性を示した。
塗膜の50%モジュラスを測定した結果、1週間経過時は1.3であり、28日以内の最大値が1.3、最小値が1.1であった。すると、変化率は15.4%であり、基準値である20%未満であった。したがって、初期の段階から良好な機械物性を発現していたといえる。
【0153】
以上により、湿気硬化型組成物2は低粘度であり、塗膜の収縮は小さく、初期の段階で機械物性(50%モジュラス)を発現したことから、塗膜の物性は良好であったといえる。
【0154】
<実施例3>
シラン変性ポリマー(A)として同社製のGENIOSIL(登録商標) STP-E35(粘度が25℃において30、000 mPa・s、上述の一般式(1)においてYはポリマー鎖としてオキシアルキレン基を含むウレタン基を介して結合されている2価の有機ポリマー基であり、R1、R2はいずれもメチル基であり、a=0であり、b=3であり、x=2である)を25.0質量部に対して、同社製のGENIOSIL(登録商標) STP-E15(粘度が25℃において10、000 mPa・s、上述の一般式(1)においてYはポリマー鎖としてオキシアルキレン基を含むウレタン基を介して結合されている2価の有機ポリマー基であり、R1、R2はいずれもメチル基であり、a=0であり、b=3であり、x=2である)を10.0質量部を用いた。
反応性を有する材料(C)として同社製のGENIOSIL(登録商標) XM25を20.0質量部用いた。XM25の反応性基の含有量は1.9重量%である。
その他は、すべて実施例1と同じ成分、同じ質量部数と調製方法を用い、湿気硬化型組成物3を得て、同様の評価を行った。
【0155】
シラン変性ポリマー(A)であるGENIOSIL(登録商標) STP-E35、STP-E15のシラン含有基の半減期は1時間であり、反応性を有する材料(C)であるGENIOSIL(登録商標) XM25の反応性基の半減期も1時間であった。
したがって、反応性を有する材料(C)の反応性基半減期は、シラン変性ポリマー(A)のシラン含有基の半減期の1倍であった。
【0156】
湿気硬化型組成物3の粘度測定の結果、23,000mPa・sであり、基準値である30,000mPa・sよりも低い良好な結果が得られた。したがって、作業性および仕上がり性は良好であった。
得られた塗膜の4週間経過後の線収縮率は0.3%であり、得られた塗膜の収縮は特に小さかった。
塗膜の引張強さは1週間経過時に4.0MPa、4週間経過時に4.3Mpaであり、いずれも2.3MPaを上回り、特に十分な引張強さを有していた。
塗膜の伸びは450を上回り、特に良好な特性を示した。
塗膜の50%モジュラスを測定した結果、1週間経過時は1.0であり、28日以内の最大値が1.1、最小値が1.0であった。すると、変化率は10%であり、基準値である20%未満であった。したがって、初期の段階から良好な機械物性を発現していたといえる。
【0157】
以上により、湿気硬化型組成物3は低粘度であり、塗膜の収縮は小さく、初期の段階で機械物性(50%モジュラス)を発現したことから、塗膜の物性は良好であったといえる。
【0158】
<比較例1>
反応性を有する材料(C)を添加しなかった他は、実施例1と同じ成分、同じ質量部数と調製方法を用い、同様の評価を行った。
【0159】
湿気硬化型組成物の粘度測定の結果、59,000mPa・sであり、基準値を上回った。希釈剤として機能する反応性を有する材料(C)を入れていないため、低粘度化を実現できなかったものである。そのため作業性および仕上がり性は不良であった。
線収縮率および引張強さや伸び、いずれも塗膜の物性は良好であったものの、湿気硬化型組成物の粘度が高すぎる点において好ましくない。
【0160】
<比較例2>
希釈剤としてシェルケミカルズジャパン株式会社製のシェルゾールMC421(炭化水素系溶剤であり、反応性基を含まない)を20.0質量部数用いた他は、すべて実施例1と同じ成分、同じ質量部数と調製方法を用い、同様の評価を行った。
【0161】
粘度測定の結果、6,400mPa・sであり、作業性および仕上がり性は良好であった。
一方で、線収縮率測定の結果は2.0であり、基準値を上回る結果となった。希釈剤として使用したシェルゾールMC421は、反応性基を有しないため、塗膜のマトリックス中に取り込まれないことから、経時で揮発し、当該減少分について収縮率が増加したと考えられる。
引張強さや伸び測定の結果、いずれも塗膜物性は良好であった。
50%モジュラス測定の結果、基準値を上回り不良であった。すなわち1週間経過時は2.8であり、28日以内の最大値が3.5、最小値が2.8であった。すると、変化率は25%であり、基準値である20%を上回っていた。したがって、初期の段階から良好な機械物性を発現することができなかったといえる。
希釈剤として使用したシェルゾールMC421は、反応性基を有しないため、塗膜のマトリックス中に取り込まれないことから、経時で揮発し、それに伴い50%モジュラスも経時で変化したと考えられる。
【0162】
以上により、比較例2の湿気硬化型組成物は、低粘度ではあるものの、得られた塗膜の収縮が大きく、初期の段階で機械物性(50%モジュラス)を発現できなかった。
【0163】
<比較例3>
反応性を有する材料(C)としてWacker Chemie AG社製のSILRES(登録商標) BS1701(イソオクチルトリエトキシシラン、反応性基の含有量は49%である)を20.0質量部数用いた他は、すべて実施例1と同じ成分、同じ質量部数と調製方法を用い、同様の評価を行った。
【0164】
シラン変性ポリマー(A)であるGENIOSIL(登録商標) STP-E30、STP-E10のシラン含有基の半減期は1時間であるのに対し、反応性を有する材料(C)であるSILRES(登録商標) BS1701の反応性基の半減期は46時間であった。
したがって、反応性を有する材料(C)の反応性基半減期は、シラン変性ポリマー(A)のシラン含有基の半減期の46倍であった。
【0165】
湿気硬化型組成物1の粘度測定の結果、6,300mPa・sであり、基準値である30,000mPa・sよりも低い良好な結果が得られた。したがって、作業性および仕上がり性は良好であった。
得られた塗膜の4週間経過後の線収縮率は3.0%であり、基準値を上回る結果となった。
反応性を有する材料(C)として使用したSILRES(登録商標) BS1701の反応性基含有量が10%を上回り、加水分解により生成したアルコールの減少分について収縮率が増加したと考えられる。
引張強さや伸び測定の結果、いずれも塗膜物性は良好であった。
50%モジュラス測定の結果、基準値を上回り不良であった。すなわち、1週間経過後は1.3、28日以内の最大値が2.7、最小値が1.3であった。すると変化率は、108%であり、基準値である20%を上回っていた。
反応性を有する材料(C)として使用したSILRES(登録商標) BS1701の加水分解が遅く、それに続くシラノールの縮合反応も遅くなり50%モジュラスが経時で変化したと考えられる。
【0166】
以上により、比較例3の湿気硬化型組成物は低粘度であるものの、得られた塗膜の収縮が大きく、初期の段階で機械物性(50%モジュラス)を発現できなかった。
【0167】
<比較例4>
反応性を有する材料(C)としてWacker Chemie AG社製のSILRES(登録商標) IC678(シリコーン樹脂であり、反応性基の含有量は15重量%である)を20.0質量部数用いた他は、すべて実施例1と同じ成分、同じ質量部数と調製方法を用い、同様の評価を行った。
【0168】
シラン変性ポリマー(A)であるGENIOSIL(登録商標) STP-E30、STP-E10のシラン含有基の半減期は1時間であるのに対し、反応性を有する材料(C)であるSILRES(登録商標) IC678の反応性基の半減期は50時間であった。
したがって、反応性を有する材料(C)の反応性基半減期は、シラン変性ポリマー(A)のシラン含有基の半減期の50倍であった。
【0169】
粘度測定の結果、26,500mPa・sであり、基準値である30,000mPa・sよりも低い良好な結果が得られた。したがって、作業性および仕上がり性は良好であった。
線収縮率測定の結果、4週間経過後の線収縮率は1.3であった。
反応性を有する材料(C)として使用したSILRES(登録商標) IC678の反応性基含有量が10%を上回り、加水分解により生成したアルコールの減少分について収縮率が実施例1よりは増加したと考えられる。
引張強さは良好であったが、伸びは、1週間経過時、2週間経過時、4週間経過時のいずれにおいても450の基準値を下回った。反応性を有する材料(C)として使用したSILRES(登録商標) IC678により架橋点が大幅に増加したと考えられる。
一方、50%モジュラス測定の結果、基準値を上回り不良であった。すなわち、1週間経過後は5.3、28日以内の最大値が14.0、最小値が5.3であった。すると変化率は、164%であり、変化率は20%を上回っていた。反応性を有する材料(C)として使用したSILRES(登録商標) IC678の加水分解が遅く、それに続くシラノールの縮合反応も遅くなり50%モジュラスが経時で変化したと考えられる。
【0170】
以上により、比較例4の湿気硬化型組成物は低粘度であり、得られた塗膜の収縮は小さいものの、初期の段階で機械物性(50%モジュラス)を発現できなかった。
【0171】
<比較例5>
反応性を有する材料(C)としてWacker Chemie AG社製のSILRES(登録商標) IC368(シリコーン樹脂であり、反応性基の含有量は15重量%である)を20.0質量部数用いた他は、すべて実施例1と同じ成分、同じ質量部数と調製方法を用い、同様の評価を行った。
【0172】
シラン変性ポリマー(A)であるGENIOSIL(登録商標) STP-E30、STP-E10のシラン含有基の半減期は1時間であるのに対し、反応性を有する材料(C)であるSILRES(登録商標) IC368の反応性基の半減期は50時間であった。
したがって、反応性を有する材料(C)の反応性基半減期は、シラン変性ポリマー(A)のシラン含有基の半減期の50倍であった。
【0173】
湿気硬化型組成物の粘度測定の結果、30,400mPa・sであり、基準値を上回った。
線収縮率測定の結果、4週間経過後の線収縮率は1.3であった。
反応性を有する材料(C)として使用したSILRES(登録商標) IC368の反応性基含有量が10%を上回り、加水分解により生成したアルコールの減少分について収縮率が増加したと考えられる。
引張強さは良好であったが、伸びは基準値を下回った。反応性を有する材料(C)として使用したSILRES(登録商標) IC368により架橋点が増加したと考えられる。
50%モジュラス測定の結果、4週間経過後は伸びが50%を下回る結果となり、当該データが得られなかった。測定が可能であった2週間経過後の50%モジュラスとの比較を行うと変化率は20%を上回っていた。反応性を有する材料(C)として使用したSILRES(登録商標) IC368の加水分解が遅く、それに続くシラノールの縮合反応も遅くなり50%モジュラスが経時で変化し、かつ架橋点が大幅に増加したと考えられる。
【0174】
以上により、比較例5の湿気硬化型組成物は粘度が高く、初期の段階で機械物性(50%モジュラス)を発現できなかった。
【0175】
【表1】

【手続補正書】
【提出日】2021-05-13
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
シラン変性ポリマー(A)と、
シリコーン樹脂(B)と、
反応性を有する材料(C)とを含み、
前記シラン変性ポリマー(A)は下記の一般式(1)で表され、
前記シリコーン樹脂(B)は、
(Q)式SiO 4/2 、Si(OR 11 )O 3/2 、Si(OR 11 2/2 およびSi(OR 11 1/2 の単位、
(T)式PhSiO 3/2 、PhSi(OR 11 )O 2/2 およびPhSi(OR 11 1/2 の単位、
(D)式Me SiO 2/2 およびMe Si(OR 11 )O 1/2 の単位、ならびに
(M)式Me SiO 1/2 の単位からなる(式中、Meはメチル基であり、Phはフェニル基であり、R 11 は、水素原子またはハロゲン原子によって置換されており、1から10個の炭素原子を有しているアルキル基、水素原子または1から4個の炭素原子を有しているアルキルである。)オルガノポリシロキサン樹脂であり、(T)単位のモル当り、0-2モルの(Q)単位、0-2モルの(D)単位、0-2モルの(M)単位を含み、
前記反応性を有する材料(C)は下記の一般式(5)で表される片末端変性シリコーンであり、かつ、前記シラン変性ポリマー(A)と反応する反応性基を有し、
前記反応性基の半減期が前記シラン変性ポリマー(A)のシラン含有基の半減期の0.1~20倍であることにより、前記シラン変性ポリマー(A)および前記反応性を有する材料(C)が相互にマトリックスを形成し、経時での機械物性変化が小さいことを特徴とする、
湿気硬化型組成物。
Y-[(CR -SiR (OR 3-a (1)
(式(1)中、Yは、窒素、酸素、硫黄または炭素を介して結合されているx価の、ポリマー鎖として、ポリオキシアルキレンまたはポリウレタンを含む有機ポリマー基であって、
Rは、同じであっても異なってもよく、一価の、無置換または置換されているSiC-結合した炭化水素基であり、
は、同じであっても異なってもよく、水素原子、または炭素原子に窒素、リン、酸素、硫黄もしくはカルボニル基が結合することができる一価の、無置換または置換されている炭化水素基であり、
は、同じであっても異なってもよく、水素原子、または一価の、無置換または置換されている炭化水素基であり、
xは、2であり、
aは、0 、1 、もしくは2 であり、
bは、1 から1 0 までの整数である。)
Y-[(CR 51 -SiR 50 (OR 52 3-f (5)
(式(5)中、Yは、窒素、酸素、硫黄または炭素を介して結合されているw価の、ポリマー鎖として、ポリオキシアルキレンまたはポリウレタンを含む有機ポリマー基であって、
50 は、同じであっても異なってもよく、一価の、無置換または置換されているSiC-結合した炭化水素基であり、
51 は、同じであっても異なってもよく、水素原子、または炭素原子に窒素、リン、酸素、硫黄もしくはカルボニル基が結合することができる一価の、無置換または置換されている炭化水素基であり、
52 は、同じであっても異なってもよく、水素原子、または一価の、無置換または置換されている炭化水素基であり、
wは、1であり、
fは、0 、1 、もしくは2 であり、
gは、1 から1 0 までの整数である。)
【請求項2】
前記反応性を有する材料(C)中の反応性基の含有量が0.5重量%以上10重量%以下である、請求項1に記載の湿気硬化型組成物。
【請求項3】
前記シラン変性ポリマー(A)の末端基のうち、少なくとも1つが、下記の一般式(2)または一般式(3)である、請求項1または請求項2に記載の湿気硬化型組成物。
-O-C(=O)-NH-(CR -SiR(OR3-a (2)
-NH-C(=O)-NR’-(CR -SiR(OR3-a (3)
(式(2)、式(3)中、基および添字はそれらに対して上で特定された定義の一つを有し、
R’は、同じであっても異なってもよく、Rに対して与えられた定義を有する。)
【請求項4】
前記一般式(2)または前記一般式(3)において、aが1 、bが1である、請求項に記載の湿気硬化型組成物。
【請求項5】
前記シリコーン樹脂(B)の前記シラン変性ポリマー(A)に対する含有量が、2.5倍未満であることを特徴とする、請求項1ないし請求項のいずれか1項に記載の湿気硬化型組成物。
【請求項6】
硬化触媒を含む請求項1ないし請求項のいずれか一項に記載の湿気硬化組成物を硬化させて塗膜とすることを特徴とする塗膜の製造方法。
【請求項7】
前記塗膜は引張強さが2.0N/mm2以上、破断時の伸びが450%以上であることを特徴とする請求項に記載の塗膜の製造方法。