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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022050167
(43)【公開日】2022-03-30
(54)【発明の名称】遠隔操作式排水栓装置
(51)【国際特許分類】
   E03C 1/22 20060101AFI20220323BHJP
   E03C 1/23 20060101ALI20220323BHJP
   A47K 1/14 20060101ALI20220323BHJP
【FI】
E03C1/22 C
E03C1/23 Z
A47K1/14 B
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020156615
(22)【出願日】2020-09-17
(71)【出願人】
【識別番号】000157212
【氏名又は名称】丸一株式会社
(72)【発明者】
【氏名】平井 良典
【テーマコード(参考)】
2D061
【Fターム(参考)】
2D061DA01
2D061DA02
2D061DA03
2D061DB03
(57)【要約】
【課題】
蓋体を上方から引き上げる構成の遠隔操作式排水栓装置において、排水口が閉口している際に操作ボタン等操作体が上昇し、排水口が開口している際に操作ボタン等操作体が降下する遠隔操作式排水栓装置を提供する。
【解決手段】
遠隔操作式排水栓装置を、槽体の底面に設けられた排水口と、該排水口を覆うことで排水口を閉口する蓋体と、蓋体の動作を操作する操作部と、筒状のアウターチューブ、該アウターチューブ内を摺動するインナーワイヤ、からなるレリースワイヤと、から構成される遠隔操作式排水栓装置において、槽体に対してインナーワイヤの排水口側端部を固定し、蓋体に対してアウターチューブの排水口側端部を固定し、操作部への操作によってアウターチューブ内のインナーワイヤを摺動させることで、蓋体を動作させて排水口を開閉させるように構成する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
槽体の底面に設けられた排水口と、
該排水口を覆うことで排水口を閉口する蓋体と、
蓋体の動作を操作する操作部と、
筒状のアウターチューブ、該アウターチューブ内を摺動するインナーワイヤ、からなるレリースワイヤと、
から構成される遠隔操作式排水栓装置において、
槽体に対してインナーワイヤの排水口側端部を固定し、蓋体に対してアウターチューブの排水口側端部を固定し、
操作部への操作によってアウターチューブ内のインナーワイヤを摺動させることで、蓋体を動作させて排水口を開閉させることを特徴とする遠隔操作式排水栓装置。
【請求項2】
上記遠隔操作式排水栓装置において、
インナーワイヤを操作部側に付勢する戻りスプリングを備えると共に、
ケーシング体と、該ケーシング体内を進退するロック軸と、からなるロック機構を備え、
該ロック機構のケーシング体をアウターチューブに、ロック軸をインナーワイヤに、それぞれ接続し、
該ロック軸の端部を押し操作する都度、ロック軸がインナーワイヤ側に移動した状態で固定、固定を解除して戻りスプリングの作用によりロック軸をインナーワイヤとは反対の側に移動、を交互に繰り返すように構成したことを特徴とする、請求項1に記載の遠隔操作式排水栓装置。
【請求項3】
上記遠隔操作式排水栓装置を浴槽に備えると共に、
操作部には、インナーワイヤに連絡された操作体を備え、
操作部を浴槽の開口上縁から側面方向に向かって設けた鍔部に配置してなり、
排水口の閉口時に操作体が、鍔部上面と略同一となることを特徴とする、請求項1又は請求項2に記載の遠隔操作式排水栓装置。
【請求項4】
上記遠隔操作式排水栓装置において、
槽体の側面に突出部 を設け、該突出部に排水口を備えると共に、レリースワイヤのインナーワイヤを、突出部上に固定することを特徴とする、請求項1乃至請求項3のいずれか一つに記載の遠隔操作式排水栓装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、槽体の排水口を、排水口から離間した位置に設けた操作部への操作により開閉する遠隔操作式の排水栓装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来より、浴槽や洗面ボウルなどの槽体の内部に生じた排水を処理するため、槽体の底面等に排水口を設け、この排水口から配管部材を介し、下水側に排水を排出する方法が広く知られている。また、排水口を覆うように蓋体を配置することで槽体内に水を溜めると共に、蓋体を上昇させて排水口から離間させることで排水口を開口する方法があるが、この蓋体の昇降による排水口の開閉を、蓋体や排水口から離間した位置、例えば槽体の縁部や槽体側面の上方に設けた操作部への操作によって行う遠隔操作式の排水装置が知られている。
広く知られた遠隔操作式の排水装置としては、特許文献1に記載のような、槽体としての浴槽の底面に備えられた排水口と、排水口上を上下動することによって排水口を開閉する蓋体と、排水口内に配置されて蓋体を上下動させる支持部と、浴槽の開口周縁に設けられた鍔部に備えられた操作部と、操作部に加えられた操作を排水口内に備えられた支持部に伝達するレリースワイヤと、レリースワイヤの動作を固定するロック機構と、から構成されるものがある。
レリースワイヤは、可撓性を備えた筒状のアウターチューブと、アウターチューブ内を摺動する可撓性を備えたインナーワイヤとから構成される。
この特許文献1の遠隔操作式の排水装置では、操作部に操作を行うと、レリースワイヤのインナーワイヤを介して排水口内の支持部に操作が伝達され、蓋体が上下動する。遠隔操作により蓋体が降下すると、排水口の周囲を蓋体が当接することで排水の流路を無くし、排水口を閉口することができる。また、蓋体が上昇すると、排水口の周囲から蓋体が離間し、排水口が開口するため、槽体内に湯水などがある場合は排水として排水口から排水配管を介して下水側に排出することができる。
【0003】
遠隔操作式排水栓装置において、操作部には操作ボタンなど使用者が直接接触して操作を行う部分がある。特許文献1に記載の遠隔操作式排水栓装置では、使用者が操作ボタンに押し込み操作を行う毎に、蓋体を上昇した状態で固定し排水口を開口、固定を解除し蓋体を降下させて排水口を閉口、を交互に行うように構成されている。
ここで、蓋体の開閉と操作ボタンの進退は、レリースワイヤのインナーワイヤを介して連動しており、特許文献1に記載の遠隔操作式排水栓装置においては、蓋体が上昇して排水口が開口している場合は操作ボタンが降下し、蓋体が降下して排水口が閉口している場合は操作ボタンが上昇するように構成されている。
【0004】
ところで、特許文献1に記載の遠隔操作式排水栓装置は、浴槽の遠隔操作式排水栓装置であり、操作部は浴槽の開口に設けられた鍔部に備えられている。
浴槽の開口は浴湯の保温を目的に風呂蓋等で覆われるため、操作部が浴槽の鍔部にあると、操作部は風呂蓋に上方から覆われることとなる。このため、操作ボタンが鍔部よりも突出していると、風呂蓋が浴槽の開口を覆った際に、操作ボタンが風呂蓋に載置されることによって押し操作された状態となり、遠隔操作式排水栓装置が誤作動する場合がある。これを避けるため、特許文献1に記載の浴槽の操作部の操作ボタンは、最も上昇している状態、即ち蓋体が降下して排水口が閉口している状態の時に、操作ボタンの上端が浴槽の鍔部上面と略同一となるように構成している。このようにすることで、浴槽の開口を風呂蓋で覆っても、操作ボタンが風呂蓋に押し込まれることが無いようにし、排水口が誤作動により開閉することが無いようにしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2016-172961号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
浴槽の下方の空間を、接地面に対してできる限り上下方向に狭くしたい、という要望がある。例えば、浴槽の下方の空間を狭くすることで、その分浴槽の上縁を超えるのに必要な高さが低くなり、入浴の際に浴槽を超えることが容易になる。また、浴槽が設置される床下空間を高さ方向に狭くすれば、その分床上の生活空間を上下に広くすることができ、快適な生活空間とすることができる、というメリットがある。
このため、少しでも排水配管の高さ方向の幅を狭くすることが求められている。そこで、出願人は、浴槽の側面に突出部を設け、この突出部に上方からレリースワイヤを挿通し、アウターチューブを浴槽の突出部と操作部に固定し、インナーワイヤの一端を操作ボタンと連動させ、他端を蓋体に上方から接続し、排水口を開閉させる、という構造を発明した。このようにすることで、排水口の下方に遠隔操作式排水栓装置の支持部やレリースワイヤを配置する必要が無くなり、その分浴槽の下方の空間を接地面に対して狭くすることができる。
【0007】
しかしながら、段落0006に記載の構造では、次のような問題が発生した。
アウターチューブを浴槽と操作部に固定し、インナーワイヤを操作ボタンと蓋体に固定する段落0006に記載の構造の遠隔操作式排水栓装置では、操作ボタンが降下した状態の時に、インナーワイヤが排水口側に前進し、蓋体が排水口を覆って閉口した状態となり、操作ボタンが上昇した状態の時に、インナーワイヤが操作部側に後退し、蓋体が排水口から離間して開口した状態となる。
即ち、段落0006のような構成の遠隔操作式排水栓装置では、排水口が閉口した状態から開口した状態に変化する際、操作ボタンは上昇する。
排水口が閉口した状態の時に、操作ボタンの上端が、浴槽の鍔部上面と略同一となるように構成すると、排水口が開口した状態では、浴槽の鍔部よりも突出してしまい、風呂蓋で浴槽の開口を覆った際に、操作ボタンが風呂蓋に載置されることによって押し操作された状態となり、遠隔操作式排水栓装置が誤作動してしまう場合がある。
しかし、排水口が開口した状態の時に、操作ボタンの上端が、浴槽の鍔部上面と略同一となるように構成すると、排水口が閉口した状態では、浴槽の鍔部よりも窪んだ位置に降下してしまい、意匠性が悪くなる、という問題がある。また、浴槽は排水口が閉口した状態で入浴するものであり、操作ボタンが窪んだ状態の際に入浴すると、該窪み部分に入浴時に浴槽から溢れた湯水が溜まる等の不具合がある。窪み部分に湯水が溜まると、ロック機構等に湯水が入り込み、液体の表面張力がロック機構の動作を妨害して誤作動を生じたり、操作ボタンに操作を加えた際、操作ボタンの上昇に伴って窪み部分の湯水がまき散らされる、という不具合があった。
本発明は上記問題点に鑑み発明されたものであって、蓋体を上方から引き上げる構成の遠隔操作式排水栓装置において、排水口が閉口している際に操作ボタン等操作体が上昇し、排水口が開口している際に操作ボタン等操作体が降下する遠隔操作式排水栓装置を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
請求項1に記載の本発明は、槽体の底面に設けられた排水口と、該排水口を覆うことで排水口を閉口する蓋体と、蓋体の動作を操作する操作部と、筒状のアウターチューブ、該アウターチューブ内を摺動するインナーワイヤ、からなるレリースワイヤと、から構成される遠隔操作式排水栓装置において、
槽体に対してインナーワイヤの排水口側端部を固定し、蓋体に対してアウターチューブの排水口側端部を固定し、操作部への操作によってアウターチューブ内のインナーワイヤを摺動させることで、蓋体を動作させて排水口を開閉させることを特徴とする遠隔操作式排水栓装置である。
【0009】
請求項2に記載の本発明は、 上記遠隔操作式排水栓装置において、
インナーワイヤを操作部側に付勢する戻りスプリングを備えると共に、ケーシング体と、該ケーシング体内を進退するロック軸と、からなるロック機構を備え、該ロック機構のケーシング体をアウターチューブに、ロック軸をインナーワイヤに、それぞれ接続し、該ロック軸の端部を押し操作する都度、ロック軸がインナーワイヤ側に移動した状態で固定、固定を解除して戻りスプリングの作用によりロック軸をインナーワイヤとは反対の側に移動、を交互に繰り返すように構成したことを特徴とする、請求項1に記載の遠隔操作式排水栓装置である。
【0010】
請求項3に記載の本発明は、上記遠隔操作式排水栓装置を浴槽に備えると共に、操作部には、インナーワイヤに連絡された操作体を備え、操作部を浴槽の開口上縁から側面方向に向かって設けた鍔部に配置してなり、排水口の閉口時に操作体が、鍔部上面と略同一となることを特徴とする、請求項1又は請求項2に記載の遠隔操作式排水栓装置である。
尚、ここでいう「インナーワイヤに連絡され」とは、操作体がインナーワイヤに直接接続されている場合や、請求項2に記載したロック軸等を介して接続されている場合等、操作体の動作を何らかの形でインナーワイヤに伝えるように構成されている場合を示す表現である。
【0011】
請求項4に記載の本発明は、上記遠隔操作式排水栓装置において、
槽体の側面に突出部 を設け、該突出部に排水口を備えると共に、レリースワイヤのインナーワイヤを、突出部上に固定することを特徴とする、請求項1乃至請求項3のいずれか一つに記載の遠隔操作式排水栓装置である。
【発明の効果】
【0012】
請求項1に記載の本発明では、蓋体を上方から引き上げて上下動させる遠隔操作式排水栓装置において、排水口が開口している状態では、インナーワイヤを操作部から押し込んで固定した状態とし、排水口が閉口している状態では、インナーワイヤを操作部側に引き出した状態とすることができる。
請求項2に記載の本発明では、遠隔操作式排水栓装置にロック機構を備えることで、操作体への押し操作のみで排水口を開閉することができる。
また、本発明の構成では、排水口の開口時にインナーワイヤに連絡された操作体が操作部の奥側に押し込まれ、排水口の閉口時に操作体が操作部の手前側に突出乃至引き出される構造である。このため、請求項3に記載の本発明のように、遠隔操作式排水栓装置を浴槽に採用し、操作部を浴槽の開口上縁から側面方向に向かって設けた鍔部に備え、排水口の閉口時に、インナーワイヤに連絡した操作ボタンが、鍔部上面と略同一となるように構成すると、排水口の開口時に、インナーワイヤに連絡した操作ボタンが、鍔部上面よりも下方側(奥側)に押し込まれた状態となる。即ち、遠隔操作式排水栓装置の使用において、操作体が鍔部上面に突出した状態が無いものとでき、浴槽に風呂蓋を被せても、遠隔操作式排水栓装置が誤作動することが無いものとしつつ、浴槽の使用時である排水口の閉口時に操作体が浴槽の鍔部上面と略同一で、意匠性が良く、また操作部内に窪みが無いため湯水が溜まらない構造とすることができる。
請求項4に記載の遠隔操作式排水栓装置では、蓋体を上方から引き上げる構造の遠隔操作式排水栓装置としつつ、槽体の内部にレリースワイヤがほぼ露出しない構造にできる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】第一実施例の遠隔操作式排水栓装置を採用した浴室を示す断面図である。
図2図1の実施例の排水口が開口した状態を示す断面図である。
図3】第一実施例の部材構成を示す断面図である。
図4】段落0006に記載の従来の遠隔操作式排水栓装置を示す断面図である。
【0014】
以下に、本発明の実施例について、図面を参照しつつ説明する。
尚、本実施例の説明における「上」「下」は、図1の図示に基づいて記載する。
図1乃至図3に示した、本発明の第一実施例は、槽体の一種である浴槽Bと、浴槽Bに備えられた排水口1aを開閉する遠隔操作式排水栓装置、及び排水口1aから連続する排水配管から構成されてなる。
浴槽Bは上方が開口し、上方の開口周縁に鍔部B3を設けた箱体であって、その側面に、浴槽Bの槽体部分の底面と連続するようにして外側方向に突出部分B1を設け、この突出部分B1の底面に、上下に貫通する取付孔B2を備えてなる。
また、突出部分B1の上方の壁面であって、取付孔B2の直上に、後述する引上げ軸6が挿通した状態で固定される挿通孔B5を設けてなる。
また、浴槽Bの鍔部B3に操作部8を取り付ける操作部取付孔B4を備えてなる。
排水配管は、以下に記載する排水口本体1、配管部材P、目皿部材M、から構成される。
排水口本体1は、略円筒形状にして上端部分に周縁に沿って外方向に突出するフランジ部1bを備え、該フランジ部1bの下方の外側面に雄ネジを備えてなる。
また、開口の上縁部分に、後述する目皿部材Mを取り付ける段差部分を設けてなり、目皿部材Mを排水口1aに配置しても、目皿部材Mが浴槽B底面よりも高い位置となることは無い。
配管部材Pは、円筒状の管体であって、略90度に屈曲した屈曲管、直線状の直管、等の部材から構成される。本実施例では、上記した各種の管体の他、略90度に屈曲した管体であって、上流側の端部には、排水口本体1の雄ネジと螺合する雌ネジを有すると共に、下流側端部はネジを備えない管体を接続可能に構成された継手管2を備えてなる。
尚、本実施例においては、排水口本体1と継手管2の内径を同じ径とし、その内部に凹凸を設けないように構成してなる。このため、排水口1aから視認可能な部分、本実施例では排水口1aから直下方向となる継手管2の屈曲部分までは、内部が平滑に構成されてなる。
目皿部材Mは、排水口1aの内部に配置される、円環状の外周部分と、外周部分内に設けられた格子状部分からなり、排水時、排水の中に含まれる毛髪や一部の大きな塵芥を、排水から分離して捕集する機能を有する。
遠隔操作式排水栓装置は、以下に記載した、蓋体3と、引上げ軸6を備えた機構部4と、操作部8と、操作伝達部材としてのレリースワイヤ10と、から構成される。
蓋体3は、略円盤状の部材であって、その上面中央には後述する引上げ軸6下端と嵌合する嵌合部3aを備えてなる。
また、蓋体3の側面周縁には、排水口1aの周縁と水密に当接するための環状パッキングPKを備えてなる。
また、蓋体3の外径は前記フランジ部1bの外径よりも大きく、このため、蓋体3が降下して排水口1aを覆った際は、フランジ部1b、及びフランジ部1bと槽体の継ぎ目はその全体が蓋体3に覆われて目視できないように構成されている。このようにすることで、排水口1aの閉口時の意匠性を向上している。
機構部4は、浴槽Bの突出部分B1上に配置固定される部材であって、以下に記載する機構部本体5、引上げ軸6、C字リング7、から構成される。
機構部本体5は、平面視楕円形を成す基部部分と、該基部部分の一方の端部(図3では左側端部)位置から垂下される円筒部分5aと、から構成されてなる。
円筒部分5aには機構部本体5を上下に貫通する貫通孔5bを備えてなり、施工完了時、該貫通孔5bを引上げ軸6が水密的に上下に進退するように構成されてなる。
また、基部部分の挿通孔B5に隣接する部分の上面部分にはインナーワイヤ10cのワイヤ軸部10d先端を嵌合により取り付け固定する固定部5cを備えてなる。
また、機構部本体5の外周部分には、C字リング7によって、浴槽Bの突出部分B1の挿通孔B5に水密的に固定されるように構成されてなる。
引上げ軸6は、機構部本体5の貫通孔5bにガイドされるようにして水密的に上下に進退する部材であって、その上端部分には、側方に突出するアーム部6aを設け、このアーム部6aの端部が、図1図2にあるように、レリースワイヤ10のアウターチューブ10a下端の円筒部10bの外側面から嵌合固定するように構成されてなる。
また、引上げ軸6の下端は、蓋体3の嵌合部3aと嵌合可能に構成されてなる。
C字リング7は、平面視略C字形状を成す部材であって、機構部本体5の円筒部分5aが、浴槽Bの挿通孔B5を貫通した状態で、側面方向から嵌合させることで、機構部本体5を挿通孔B5に固定する部材である。
操作部8は、遠隔操作式排水栓装置の使用者が操作を行う部材であって、略円筒状にして操作部取付孔B4に固定される操作部本体8aと、操作部本体8a内部に上下動自在に配置される操作体としての操作ボタン8bと、上端は操作ボタン8bに接続され、下端はレリースワイヤ10に接続されるロック機構9と、から構成される。
ロック機構9は、円筒状のケーシング体であるロック機構本体9aと、ロック機構本体9a内に配置されてロック機構本体9a内を進退するロック軸9bとを備えてなり、スラストロック式と呼ばれる機構によって、施工完了時、ロック軸9bに上方から押し込み操作を行うと、ロック軸9bを下方に降下した状態で固定/固定を解除してロック軸9bを上昇可能な状態に開放する、を交互に繰り返すように構成されてなる。施工完了時、ロック軸9bは後述するレリースワイヤ10の戻りスプリングの作用により、固定を解除した状態では常に上方に上昇した状態となる。
レリースワイヤ10は、側面方向に可撓性を、軸方向に剛性を有したアウターチューブ10aと、該アウターチューブ10a内に摺動自在に配置される、側面方向に可撓性を、軸方向に剛性を有したインナーワイヤ10cと、インナーワイヤ10cの操作部8側端部に備えられた硬質の軸体からなるワイヤ軸部10dと、ワイヤ軸部10dをその内部に摺動自在に収納する硬質の筒体からなる円筒部10bと、摺動自在にレリースワイヤ10内に備えられ、インナーワイヤ10cをアウターチューブ10aに対して操作部8側に付勢する戻りスプリング(図示せず)と、から構成されてなる。本実施例においては、アウターチューブ10aの操作部8側の端部はロック機構本体9aの下端に接続固定されて構成されてなる。
【0015】
上記のように構成された浴槽Bの遠隔操作式排水栓装置と、浴槽Bの排水配管は、以下のようにして浴槽Bに施工される。尚、以下の施工においては、各接続箇所は、特に記載しなくても、必要に応じ、接着剤やパッキングなどを利用し、水密的に接続されるものである。
また、工場での製品の組み立て時において、レリースワイヤ10はロック機構9に接続固定した状態にて組み立てられる。具体的には、まずロック機構9のケーシング体であるロック機構本体9aにレリースワイヤ10のアウターチューブ10aを接続固定する。この接続によって、アウターチューブ10aがロック機構本体9aに接続固定されると共に、インナーワイヤ10c端部がロック軸9bに当接するように配置される。インナーワイヤ10cは、戻りスプリングの作用によって常時ロック機構9側に付勢されるため、この接続により、ロック軸9b下端に、インナーワイヤ10c上端が常時当接する状態となる。また、この接続によって、ロック軸9bに押し込み操作を行い、ロック軸9bを降下した状態で固定/固定を解除、の操作を行う都度、ロック軸9bに当接することで接続されているインナーワイヤ10cが降下した状態で固定/固定を解除し戻りスプリングの作用によってロック軸9bと共に上昇、を交互に繰り返すように動作する。
まず、浴槽Bの操作部取付孔B4に操作部本体8aを取り付ける。
次に、排水口本体1を浴槽Bの取付孔B2に取り付ける。この際には、排水口本体1のフランジ部1bの下面に浴槽Bの取付孔B2周縁上面を当接させた状態で、継手管2の雌ネジを排水口本体1の雄ネジに螺合させて締め付け、浴槽Bの取付孔B2周縁を、フランジ部1b下面と継手管2の上面とで挟持固定する。
次に、屈曲管、直管等の配管部材Pを組み合わせて、継手管2の下流側端部から下水側の配管までを配管部材Pにて接続する。尚、図示においては、継手管2の下流側端部に直管の配管部材Pを接続した箇所のみ図示し、他の構成は省略する。
次に、排水口1aの内部に目皿部材Mを配置する。
次に、操作部本体8aの内部に、レリースワイヤ10のワイヤ軸部10dを備えた排水口1a側端部を挿通した上で、ロック機構本体9aを操作部本体8a内に接続固定し、更に操作ボタン8bを操作部本体8a内に配置されるようにして、ロック軸9bの端部に接続する。
次に、レリースワイヤ10の排水口1a側端部を機構部4に接続する。
接続方法を具体的に説明すると、まず、アウターチューブ10a端部の円筒部10bの側面から、引上げ軸6のアーム部6a端部を嵌合接続させる。
次に、引上げ軸6を機構部本体5の貫通孔5bに貫通させ、更にインナーワイヤ10c先端のワイヤ軸部10dを機構部本体5の固定部5cに接続固定させて、レリースワイヤ10の機構部4への接続が完了する。
次に、突出部分B1の挿通孔B5に機構部4の円筒部分5aを挿通し、更にC字リング7を用いて挿通孔B5に機構部4の円筒部分5aを嵌合固定させる。
更に、機構部4の引上げ軸6の下端に、蓋体3の嵌合部3aを嵌合させて、本発明の遠隔操作式排水栓装置と、浴槽Bの排水配管の施工が完了する。
上記のように構成された実施例において、インナーワイヤ10cの排水口1a側端部であるワイヤ軸部10dは、機構部本体5に固定され、機構部本体5は浴槽Bの一部である挿通孔B5に固定されているから、上記実施例においては、槽体である浴槽Bに対してインナーワイヤ10cの排水口1a側端部は固定されている。また、アウターチューブ10aの排水口1a側端部である円筒部10bは引上げ軸6に固定されており、引上げ軸6は蓋体3に対して固定されているから、アウターチューブ10aの排水口1a側端部は、引上げ軸6を介し、蓋体3に固定されている。
また、設計事項として、施工完了時、操作部本体8aの上端は浴槽Bの鍔部B3上面よりも若干高い位置となるように取り付けられるが、機能的、また意匠的にはほぼ略同一とされる高さ位置に取り付けられる。また、上記遠隔操作式排水栓装置の使用時において、排水口1a周縁に蓋体3が当接し、排水口1aを閉口した状態において、操作体である操作ボタン8bの上面が、操作部本体8aの上端と略同一となるように構成されている。即ち、施工が完了し、排水口1aが閉口した状態において、操作体である操作ボタン8bは、槽体である浴槽Bの鍔部B3上面と略同一となるように設計されている。
【0016】
以下に、上記実施例の遠隔操作式の排水装置の使用方法を説明する。
上記のように構成した遠隔操作式の排水装置を使用する場合、図1に示したように、まず蓋体3が降下して排水口1aを閉口した状態とする。この時、操作ボタン8bは、浴槽Bの鍔部B3上面と略同一となっている。
この状態から操作ボタン8bに押し込み操作を行うと、ロック機構9のロック軸9bが降下した状態、すなわち下方に配置されているインナーワイヤ10cの方向に押し込まれた状態で固定され、操作体である操作ボタン8bも操作部本体8aの上縁から窪んだ状態で停止する。
ここで、インナーワイヤ10cはアウターチューブ10a内を摺動するが、インナーワイヤ10cの排水口1a側端部は浴槽Bに対して固定されているため、排水口1a側の端部が動作することは無い。結果として、排水口1a側端部であるワイヤ軸部10dの先端から、アウターチューブ10aのロック機構9との接続部までのインナーワイヤ10cの長さが、操作ボタン8bの押し込み操作前よりも押し込みを行った長さ分だけ延長したことになる。インナーワイヤ10c、アウターチューブ10a共に軸方向には剛性を有する一方で、側面方向には可撓性を有するため、レリースワイヤ10はインナーワイヤ10cの延長分、側方に円弧等を描くように、又は元々円弧を生じていた場合には円弧の径が大径になるように変形する。
一方、アウターチューブ10aは、その内部にインナーワイヤ10cが挿通しているため、その形状はインナーワイヤ10cに追従して屈曲又は円弧が大径化するが、ロック機構9との接続部は固定された状態のままであり、アウターチューブ10a自体も延長することは無い。そして、アウターチューブ10aの操作部8側端部はロック機構9を介し操作部本体8aに固定されているが、排水口1a側端部は引上げ軸6を介して蓋体3に固定されているものの、蓋体3は浴槽Bや排水口1aには固定されていない。このように、インナーワイヤ10cが延長する一方で、アウターチューブ10aが延長しないため、相対的にはアウターチューブ10aが、操作ボタン8bの押し込み長さ分短くなり、その長さ分、引上げ軸6、及び引上げ軸6に接続されている蓋体3を上方に引き上げることとなる。結果、図2に示したように、アウターチューブ10aに接続された引上げ軸6と蓋体3が上昇し、排水口1aから離間することで、排水口1aが開口する。浴槽B内に湯水等があった場合、湯水は排水として排水口1aから排出される。
排水に毛髪などが混入していた場合は、目皿部材Mによって捕集される。
この状態から再び操作ボタン8bに押し込み操作を行うと、ロック機構9のロック軸9bの固定が解除され、戻りスプリングの作用によって、ロック機構9のロック軸9bが上昇し、すなわちインナーワイヤ10cと反対の方向に移動するため、排水口1a側端部であるワイヤ軸部10dの先端から、アウターチューブ10aのロック機構9との接続部までのインナーワイヤ10cの長さが、インナーワイヤ10cが排水口1aを閉口していた当初の長さに戻る。
また、この時、操作ボタン8bは、浴槽Bの鍔部B3上面と略同一となっている。
このため、アウターチューブ10aの排水口1a側端部に接続されている引上げ軸6が降下し、引上げ軸6の下端に接続されている蓋体3が排水口1aの周縁に当接し、排水口1aを覆うことで、排水口1aが閉口する。
以降、排水口1aから離間した位置にある操作ボタン8bに押し操作を行うことで、遠隔操作により排水口1aを開閉することができる。
【0017】
本発明の実施例は上記のようであるが、本発明は上記実施例に限定されるものではなく、発明の主旨を変更しない範囲で自由に変更が可能である。
例えば上記実施例では、槽体としての浴槽Bに採用されてなるが、本発明は上記実施例に限定されるものではなく、洗面台の洗面ボウルや、流し台のシンクなど、他の槽体に採用しても構わない。
【符号の説明】
【0018】
1 排水口本体 1a 排水口
1b フランジ部 2 継手管
3 蓋体 3a 嵌合部
4 機構部 5 機構部本体
5a 円筒部分 5b 貫通孔
5c 固定部 6 引上げ軸
6a アーム部 7 C字リング
8 操作部 8a 操作部本体
8b 操作ボタン 9 ロック機構
9a ロック機構本体 9b ロック軸
10 レリースワイヤ 10a アウターチューブ
10b 円筒部 10c インナーワイヤ
10d ワイヤ軸部 B 浴槽
B1 突出部分 B2 取付孔
B3 鍔部 B4 操作部取付孔
B5 挿通孔 M 目皿部材
P 配管部材 PK 環状パッキング
図1
図2
図3
図4