(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022050181
(43)【公開日】2022-03-30
(54)【発明の名称】飲食品組成物、飲食品組成物の製造方法及びユーグレナの風味を改善する方法
(51)【国際特許分類】
A23L 2/38 20210101AFI20220323BHJP
A23L 33/105 20160101ALI20220323BHJP
A23L 33/10 20160101ALI20220323BHJP
A23L 33/135 20160101ALI20220323BHJP
【FI】
A23L2/38 C
A23L2/38 F
A23L33/105
A23L33/10
A23L33/135
【審査請求】未請求
【請求項の数】12
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020156639
(22)【出願日】2020-09-17
(71)【出願人】
【識別番号】506141225
【氏名又は名称】株式会社ユーグレナ
(74)【代理人】
【識別番号】100088580
【弁理士】
【氏名又は名称】秋山 敦
(74)【代理人】
【識別番号】100195453
【弁理士】
【氏名又は名称】福士 智恵子
(74)【代理人】
【識別番号】100205501
【弁理士】
【氏名又は名称】角渕 由英
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 健吾
(72)【発明者】
【氏名】北村 萌
(72)【発明者】
【氏名】大石 かすみ
(72)【発明者】
【氏名】西村 和生
(72)【発明者】
【氏名】斉藤 令
(72)【発明者】
【氏名】三重 啓次郎
(72)【発明者】
【氏名】深谷 理絵
(72)【発明者】
【氏名】アロラ きりは
(72)【発明者】
【氏名】岩城 章代
【テーマコード(参考)】
4B018
4B117
【Fターム(参考)】
4B018LB01
4B018LB03
4B018LB06
4B018LB07
4B018LB08
4B018MD48
4B018MD61
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4B117LL01
4B117LP01
4B117LP14
4B117LP17
(57)【要約】
【課題】ユーグレナの風味が改善された飲食品組成物、該飲食品組成物の製造方法及びユーグレナの風味を改善する方法を提供する。
【解決手段】飲食品組成物は、ユーグレナと、ショウガ、カレーリーフ、コリアンダー、パクチー及びホップからなる群より選択される少なくとも1種以上の植物抽出物及び/又は乳原料を含有することを特徴とする。また、飲食品組成物の製造方法は、ユーグレナと、ショウガ、カレーリーフ、コリアンダー、パクチー及びホップからなる群より選択される少なくとも1種以上の植物抽出物及び/又は乳原料を混合する混合工程を行うことを特徴とする。さらに、ユーグレナの風味を改善する方法は、ユーグレナを含有する飲食品組成物に、ショウガ、カレーリーフ、コリアンダー、パクチー及びホップからなる群より選択される少なくとも1種以上の植物抽出物及び/又は乳原料を添加する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ユーグレナと、
ショウガ、カレーリーフ、コリアンダー、パクチー及びホップからなる群より選択される少なくとも1種以上の植物抽出物及び/又は乳原料を含有することを特徴とする飲食品組成物。
【請求項2】
容器詰め飲料であることを特徴とする請求項1に記載の飲食品組成物。
【請求項3】
加熱殺菌済みであることを特徴とする請求項1又は2に記載の飲食品組成物。
【請求項4】
ショウガ、カレーリーフ、コリアンダー、パクチー、ホップ及びアオシソからなる群より選択される少なくとも1種以上の植物抽出物及び乳原料を含有することを特徴とする請求項1乃至3のいずれか一項に記載の飲食品組成物。
【請求項5】
ユーグレナと、ショウガ、カレーリーフ、コリアンダー、パクチー及びホップからなる群より選択される少なくとも1種以上の植物抽出物及び/又は乳原料を混合する混合工程を行うことを特徴とする飲食品組成物の製造方法。
【請求項6】
前記混合工程で得られた混合物を容器に詰める容器詰め工程を行うことを特徴とする請求項5に記載の飲食品組成物の製造方法。
【請求項7】
前記容器詰め工程で得られた容器詰めの飲食品組成物を加熱殺菌する加熱殺菌工程を行うことを特徴とする請求項6に記載の飲食品組成物の製造方法。
【請求項8】
前記混合工程では、ショウガ、カレーリーフ、コリアンダー、パクチー、ホップ及びアオシソからなる群より選択される少なくとも1種以上の植物抽出物及び乳原料を混合することを特徴とする請求項5乃至7のいずれか一項に記載の飲食品組成物の製造方法。
【請求項9】
ユーグレナを含有する飲食品組成物に、ショウガ、カレーリーフ、コリアンダー、パクチー及びホップからなる群より選択される少なくとも1種以上の植物抽出物及び/又は乳原料を添加することを特徴とするユーグレナの風味を改善する方法。
【請求項10】
前記飲食品組成物が容器詰め飲料であることを特徴とする請求項9に記載のユーグレナの風味を改善する方法。
【請求項11】
前記飲食品組成物が加熱殺菌されることを特徴とする請求項9又は10に記載のユーグレナの風味を改善する方法。
【請求項12】
ショウガ、カレーリーフ、コリアンダー、パクチー、ホップ及びアオシソからなる群より選択される少なくとも1種以上の植物抽出物及び乳原料を添加することを特徴とする請求項9乃至11に記載のユーグレナの風味を改善する方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、飲食品組成物、飲食品組成物の製造方法及びユーグレナの風味を改善する方法に関し、特に、ユーグレナに特有の風味が改善された飲食品組成物、該飲食品組成物の製造方法及びユーグレナに特有の風味を改善する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
食糧、飼料、燃料等としての利用が有望視されている生物資源として、ユーグレナ(属名:Euglena、和名:ミドリムシ)が注目されている。
ユーグレナは、ビタミン,ミネラル,アミノ酸,不飽和脂肪酸など、人間が生きていくために必要な栄養素の大半に該当する59種類もの栄養素を備え、多種類の栄養素をバランスよく摂取するためのサプリメントとしての利用や、必要な栄養素を摂取できない貧困地域での食糧供給源としての利用の可能性が提案されている(非特許文献1)。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0003】
【非特許文献1】嵐田亮、「微細藻類ユーグレナの特徴と食品・環境分野への応用」、光合成研究、vol.22,no.1,pp.33-38(2012).
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来、ユーグレナを含有する食品やサプリメント等が販売されてきたが、ユーグレナに特有の風味を効果的に改善する技術は報告されていなかった。本願発明者らは、ユーグレナを飲食品組成物に加工するに際し、ユーグレナに特有の風味があること、具体的には、容器に詰められた飲食品組成物を開封する際にユーグレナに特有の風味があること、特に、飲食品組成物を加熱殺菌した場合に、ユーグレナに特有の風味が強くなることを新たに見出した。
【0005】
本発明は、上記の課題に鑑みてなされたものであり、本発明の目的は、ユーグレナの風味が改善された飲食品組成物、該飲食品組成物の製造方法及びユーグレナの風味を改善する方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、上記課題を解決すべく鋭意研究した結果、ユーグレナを特定の成分と組み合わせることでユーグレナに特有の風味が改善されることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0007】
したがって、前記課題は、本発明の飲食品組成物によれば、ユーグレナと、ショウガ、カレーリーフ、コリアンダー、パクチー及びホップからなる群より選択される少なくとも1種以上の植物抽出物及び/又は乳原料を含有すること、により解決される。
このとき、前記食品組成物が、容器詰め飲料であるとよい。
このとき、前記食品組成物が、加熱殺菌済みであるとよい。
このとき、ショウガ、カレーリーフ、コリアンダー、パクチー、ホップ及びアオシソからなる群より選択される少なくとも1種以上の植物抽出物及び乳原料を含有するとよい。
【0008】
したがって、前記課題は、本発明の飲食品組成物の製造方法によれば、ユーグレナと、ショウガ、カレーリーフ、コリアンダー、パクチー及びホップからなる群より選択される少なくとも1種以上の植物抽出物及び/又は乳原料を混合する混合工程を行うこと、により解決される。
このとき、前記混合工程で得られた混合物を容器に詰める容器詰め工程を行うとよい。
このとき、前記容器詰め工程で得られた容器詰めの飲食品組成物を加熱殺菌する加熱殺菌工程を行うとよい。
このとき、前記混合工程では、ショウガ、カレーリーフ、コリアンダー、パクチー、ホップ及びアオシソからなる群より選択される少なくとも1種以上の植物抽出物及び乳原料を混合するとよい。
【0009】
したがって、前記課題は、本発明のユーグレナの風味を改善する方法によれば、ユーグレナを含有する飲食品組成物に、ショウガ、カレーリーフ、コリアンダー、パクチー及びホップからなる群より選択される少なくとも1種以上の植物抽出物及び/又は乳原料を添加すること、により解決される。
このとき、前記飲食品組成物が容器詰め飲料であるとよい。
このとき、前記飲食品組成物が加熱殺菌されるとよい。
このとき、ショウガ、カレーリーフ、コリアンダー、パクチー、ホップ及びアオシソからなる群より選択される少なくとも1種以上の植物抽出物及び乳原料を添加するとよい。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、ユーグレナに特有の風味が改善された飲食品組成物、該飲食品組成物の製造方法及びユーグレナに特有の風味を改善する方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】本実施形態に係る飲食品組成物の製造方法のフロー図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の実施形態(本実施形態)について説明する。
本実施形態は、ユーグレナに特有の風味が改善された飲食品組成物、該飲食品組成物の製造方法及びユーグレナに特有の風味を改善する方法に関するものである。
【0013】
<ユーグレナ>
本実施形態において、「ユーグレナ」とは、分類学上、ユーグレナ属(Euglena)に分類される微生物、その変種、その変異種及びユーグレナ科(Euglenaceae)の近縁種を含む。ここで、ユーグレナ属(Euglena)とは、真核生物のうち、エクスカバータ、ユーグレノゾア門、ユーグレナ藻綱、ユーグレナ目、ユーグレナ科に属する生物の一群である。
【0014】
ユーグレナ属に含まれる種として、具体的には、Euglena chadefaudii、Euglena deses、Euglena gracilis、Euglena granulata、Euglena mutabilis、Euglena proxima、Euglena spirogyra、Euglena viridisなどが挙げられる。
ユーグレナとして、ユーグレナ・グラシリス(E. gracilis),特に、ユーグレナ・グラシリス(E. gracilis)Z株を用いることができるが、そのほか、ユーグレナ・グラシリス(E. gracilis)Z株の変異株SM-ZK株(葉緑体欠損株)や変種のE. gracilis var. bacillaris、これらの種の葉緑体の変異株等の遺伝子変異株、Astasia longa等のその他のユーグレナ類であってもよい。
【0015】
ユーグレナ属は、池や沼などの淡水中に広く分布しており、これらから分離して使用しても良く、また、既に単離されている任意のユーグレナ属を使用してもよい。ユーグレナ属は、その全ての変異株を包含する。また、これらの変異株の中には、遺伝的方法、たとえば組換え、形質導入、形質転換等により得られたものも含有される。
【0016】
(ユーグレナ藻体)
本実施形態では、ユーグレナとしてユーグレナ藻体を用いることが可能である。ユーグレナ藻体として、遠心分離,濾過又は沈降等によって分離したユーグレナ生細胞をそのまま用いることができる。ユーグレナ生細胞は、培養槽から収穫後そのままの状態で使用することもできるが、水若しくは生理食塩水で洗浄するのが好ましい。また、ユーグレナ藻体が水などの液体に分散した分散液の状態で用いてもよい。本実施形態において、ユーグレナ生細胞を凍結乾燥処理やスプレー乾燥処理して得たユーグレナの乾燥藻体(ユーグレナ粉末)をユーグレナ藻体として用いると好適である。
【0017】
更に、ユーグレナ生細胞を超音波照射処理や、ホモゲナイズ等の機械処理を行うことにより得た藻体の機械的処理物をユーグレナ藻体として用いてもよい。また、機械的処理物に乾燥処理を施した機械的処理物乾燥物をユーグレナ藻体として用いてもよい。
【0018】
(ユーグレナ抽出物)
本実施形態では、ユーグレナとしてユーグレナ抽出物を用いることも可能であり、特にユーグレナ水性溶媒抽出物を用いると好適である。本実施形態において、「ユーグレナ水性溶媒抽出物」とは、水性溶媒を用いてユーグレナから抽出される抽出物を意味し、特に、水性溶媒として水を用い、5℃~600℃で、数秒~数十時間抽出したユーグレナの水抽出物又は熱水抽出物を用いることが好ましい。抽出に使用する水は、必ずしも蒸留水や、純水、又は超純水である必要はなく、例えば、水道水や不純物を含むものであってもよいが、活性成分の抽出を妨げる成分を含まない水が好ましい。
【0019】
本実施形態において、「水抽出物」とは、0~50℃(0℃を除く。)の水による抽出物を意味する。ここで、「水」とは、0~50℃(0℃を除く。)の水を意味する。水の温度は、活性成分に影響を与えずに、活性成分を十分に抽出できる範囲内であれば特に限定されるものではないが、好ましくは1~40℃、より好ましくは5~35℃、特に好ましくは10~30℃である。
【0020】
本実施形態において、「熱水抽出物」とは、50℃よりも高い温度の水による抽出物を意味し、「温水抽出物」とも呼ぶことができる。ここで、「熱水」とは、50℃よりも高温の水を意味し、「熱湯」も含む概念であり、沸騰状態にある水も含まれる。また、液体状態の熱水に限定されることなく、気体状態及び超臨界状態の熱水も含まれる。熱水の温度は、活性成分に影響を与えずに、活性成分を十分に抽出できる範囲内であれば特に限定されるものではないが、好ましくは50℃より高く120℃以下、より好ましくは50℃より高く100℃以下である。
【0021】
抽出に使用する水のpHは、活性成分に影響を与えずに、活性成分を十分抽出できる範囲内であれば特に限定されるものではないが、好ましくはpH4~10、より好ましくはpH5~9、特に好ましくはpH6~8であるとよい。
【0022】
なお、本実施形態では、水性溶媒として、水を単独で用いるが、活性成分に影響を与えずに、活性成分を十分抽出できるものであって、通常、抽出に用いることができる溶媒を1種または2種以上選択して用いてもよい。例えば、水、アルコール類、グリコール類などを挙げることができるが、これに限定されるものではない。アルコール類としては、エタノール、メタノール、n-プロパノール、イソプロパノール等が挙げられる。グリコール類としては、ブチレングリコール及びプロピレングリコール等が挙げられる。その他の水性溶媒としては、アセトン等が挙げられる。これらの溶媒は単独或いは水溶液として用いても良く、任意の2種または3種以上の混合溶媒として用いてもよい。
【0023】
抽出に用いる水性溶媒の温度は、例えば、0℃以上であり、活性成分に影響を与えないのであれば特に限定されることはない。沸騰状態又は超臨界状態にある水性溶媒を使用することもできるが、5℃~600℃の水性溶媒を使用するのが好ましく、10℃~200℃の水性溶媒を使用するのがより好ましい。したがって、抽出用の水性溶媒とは、沸騰状態や超臨界状態にある水性溶媒も含むものである。抽出に使用する水性溶媒の量は、ユーグレナ中に含まれる水溶性活性成分を十分に溶解することができる量であることが好ましい。
【0024】
抽出方法も特に限定されず、例えば、以下に示す方法により抽出を行うことができるが、これに限定されることなく、通常の抽出方法を自由に選択して用いることができる。例えば、ユーグレナの藻体乾燥粉末を水性溶媒に所定時間浸漬した後に遠心分離又は濾過する方法、ユーグレナの藻体乾燥粉末を水性溶媒に加えて震盪して均一に分散させた後に遠心分離又は濾過する方法、などが挙げられる。また、抽出を促進するために、ユーグレナを添加後の水性溶媒を加熱することも可能である。
【0025】
ユーグレナの水抽出は、以下に示すような通常の方法で行うことができるが、これに限定されるものではない。例えば、ユーグレナ組織及び水を容器に入れ、適宜攪拌又は震盪しながら所定時間静置し、得られた抽出液は、そのまま水抽出物として使用可能である。また、例えば、そのような抽出液を遠心して得られる上清を水抽出物として使用することもできる。また、そのような抽出液又は上清を濃縮、乾燥して水分を除去し、これを水抽出物として使用することもできる。水抽出は、抽出効率を上げて抽出時間を短縮するために、水に、少量、例えば、10質量%以下のアルコール、好ましくはエタノールを添加して行ってもよい。水抽出を行う場合の抽出時間は、活性成分が抽出される時間であれば特に限定されず、数秒~数十時間の範囲で、抽出の温度に応じて適宜設定することができる。
【0026】
熱水による抽出は、以下に示すような、通常用いられている方法で行なうことができるが、これに限定されるものではない。ユーグレナを、通常用いられる抽出器に水とともに導入した後に、加熱することで抽出を行う。沸騰水または超臨界状態にある水を使用して抽出する場合には、水の蒸気圧に耐え得る抽出器を使用する必要がある。抽出時の圧力は1~5000気圧に設定することができ、60~400気圧に設定するのが好ましい。
【0027】
高温高圧下で抽出を行なう場合には、抽出時間が長過ぎると活性成分が分解したり、化学反応を起こすことがある。従って、高温高圧下で抽出を行なうときには、抽出時間を短時間、例えば、3分以内とするのが好ましく、1分以内とするのがより好ましく、30秒以内とすることが特に好ましい。
【0028】
抽出したユーグレナ抽出物は、そのままでも本実施形態に係る食品組成物に用いることができるが、当該抽出物を更に、適当な分離手段(例えば、分配抽出、ゲル濾過法、シリカゲルクロマトグラフィー、逆相若しくは順相の高速液体クロマトグラフィーなど)により特定の画分を分画して用いることも可能である。また、ユーグレナ抽出物やその画分を、濃縮、乾燥して水性溶媒を除去し、これを水性溶媒抽出物として使用することもできる。
【0029】
<植物抽出物>
本実施形態において、ユーグレナと組み合わせることでユーグレナに特有の風味を改善することができる植物抽出物として、ショウガ、カレーリーフ、コリアンダー、パクチー及びホップからなる群より選択される少なくとも1種以上の芳香性植物の抽出物を用いることができる。
【0030】
本実施形態の飲食品組成物は、ショウガ、カレーリーフ、コリアンダー、パクチー及びホップからなる群より選択される少なくとも1種以上の植物抽出物を所定の含有量で含有する。これにより、ユーグレナを含有する飲食品組成物におけるユーグレナに特有の風味を改善することができる。また、ユーグレナと、ショウガ、カレーリーフ、コリアンダー、パクチー、ホップ及びアオシソからなる群より選択される少なくとも1種以上の植物抽出物を、乳原料と組み合わせることで、ユーグレナを含有する飲食品組成物におけるユーグレナに特有の風味を相乗的に改善することができる。
【0031】
本実施形態の飲食品組成物中の植物抽出物の含有量は、特に限定されず、ユーグレナの含有量、飲食品組成物の形態、目的に応じて、ユーグレナに特有の風味の改善効果が得られ、飲食品としての風味を損なわない範囲で自由に設定することが可能である。本実施形態の飲食品組成物中の植物抽出物の含有量は、飲食品組成物の全重量を100wt%としたときに、例えば、0.01wt%以上であり、好ましくは0.001wt%~5.0wt%、より好ましくは0.01wt%~3.0wt%、さらに好ましくは0.1wt%~2.0wt%、最も好ましくは0.01wt%~1.0wt%である。飲食品組成物中の植物抽出物の含有量が少ない場合本発明の効果が十分に得られない傾向にある。一方、飲食品組成物中の植物抽出物の含有量が多すぎると植物抽出物の風味が強くなりすぎるおそれがあり、結果として本発明の効果が十分に得られない傾向にある。なお、本願明細書において、○wt%~△wt%は、○wt%以上△wt%以下を意味する。
【0032】
<乳原料>
本実施形態において、ユーグレナと組み合わせることでユーグレナに特有の風味を改善することができる乳原料として、脱脂粉乳、生クリーム及び植物油脂からなる群より選択される少なくとも1種以上の乳原料を用いることができる。
【0033】
本実施形態の飲食品組成物は、脱脂粉乳、生クリーム及び植物油脂からなる群より選択される少なくとも1種以上の乳原料を所定の含有量で含有する。これにより、ユーグレナを含有する飲食品組成物におけるユーグレナに特有の風味を改善することができる。
【0034】
本実施形態の飲食品組成物中の乳原料の含有量は、特に限定されず、ユーグレナの含有量、飲食品組成物の形態、目的に応じて、ユーグレナに特有の風味の改善効果が得られ、飲食品としての風味を損なわない範囲で自由に設定することが可能である。本実施形態の飲食品組成物中の乳原料の含有量は、飲食品組成物の全重量を100wt%としたときに、例えば、0.01wt%以上であり、好ましくは0.02wt%以上、より好ましくは0.05wt%以上、さらに好ましくは0.1wt%以上、最も好ましくは0.2wt%以上である。飲食品組成物中の乳原料の含有量が少ないと本発明の効果が十分に得られない傾向にある。
【0035】
<飲食品組成物>
本実施形態に係る飲食品組成物は、ユーグレナと、ショウガ、カレーリーフ、コリアンダー、パクチー及びホップからなる群より選択される少なくとも1種以上の植物抽出物及び/又は乳原料を含有し、ユーグレナに特有の風味が改善されている。また、本実施形態に係る飲食品組成物は、ユーグレナと、ショウガ、カレーリーフ、コリアンダー、パクチー、ホップ及びアオシソからなる群より選択される少なくとも1種以上の植物抽出物を、乳原料と組み合わせて含有していることで、ユーグレナに特有の風味が相乗的に改善されている。
【0036】
ここで、「ユーグレナに特有の風味が改善されている」とは、ユーグレナが呈する風味が、ショウガ、カレーリーフ、コリアンダー、パクチー及びホップからなる群より選択される少なくとも1種以上の植物抽出物及び/又は乳原料を含有しないときよりも改善されていることをいう。
【0037】
本実施形態に係る飲食品組成物としては、例えば、飲料(清涼飲料、アルコール飲料、炭酸飲料、乳飲料、果汁飲料、茶、コーヒー、栄養ドリンク等)、醤油などの調味料、スープ類、クリーム類、各種乳製品類、畜肉加工品、農産加工品、アイスクリームなどの冷菓、各種粉末食品(飲料を含む)、濃縮飲料、保存用食品、冷凍食品、パン類、シリアル類、菓子類(キャンディ(のど飴)、クッキー、ビスケット、ガム、グミ、チョコレート等)などが挙げられるがこれに限定されるものではない。
【0038】
あるいは、保健機能食品(特定保健機能食品、栄養機能食品、機能性表示食品)や、いわゆる健康食品(飲料を含む)、濃厚栄養剤、流動食、乳児・幼児食にも用いることができる。
ここで特定保健用食品とは、生理学的機能等に影響を与える保健機能成分を含む食品であって、消費者庁長官の許可を得て特定の保健の用途に適する旨を表示可能なものである。
また栄養機能食品とは、栄養成分(ビタミン、ミネラル)の補給のために利用される食品であって、栄養成分の機能を表示するものである。栄養機能食品として販売するためには、一日当たりの摂取目安量に含まれる栄養成分量が定められた上限値、下限値の範囲内にある必要があり、栄養機能表示だけでなく注意喚起表示等もする必要がある。
また機能性表示食品とは、事業者の責任において、科学的根拠に基づいた機能性を表示した食品である。販売前に安全性及び機能性の根拠に関する情報などが消費者庁長官へ届け出られたものである。
【0039】
本実施形態に係る飲食品組成物には、ユーグレナやショウガ、カレーリーフ、コリアンダー、パクチー及びホップからなる群より選択される少なくとも1種以上の植物抽出物及び/又は乳原料に加え、飲食品組成物に通常用いることができる成分を、1種または2種以上自由に選択して配合することが可能である。例えば、各種調味料、保存剤、乳化剤、安定剤、香料、着色剤、防腐剤、pH調整剤などの、食品分野で通常使用し得る全ての添加剤を含有させることができる。
【0040】
(容器詰め飲食品組成物)
本実施形態に係る飲食品組成物は、内容物が容器に詰められた飲食品組成物、例えば、容器詰め飲料であることが好ましい。容器は、公知の密封容器であれば、適宜選択して用いることができる。容器は特に限定されるものではないが、例えば、プラスチック(ポリエチレンテレフタレート(PET)等)、アルミ、スチール、ガラス、紙等の単体もしくは複合材料又は積層材料からなる密封容器が挙げられる。また、容器形状は、特に限定されるものではないが、例えば、缶容器、ボトル容器等が挙げられる。
【0041】
本願発明者らは、容器に詰められた飲食品組成物を開封する際にユーグレナに特有の風味があることを新たに見出したが、ユーグレナと、ショウガ、カレーリーフ、コリアンダー、パクチー及びホップからなる群より選択される少なくとも1種以上の植物抽出物及び/又は乳原料を組み合わせることで、容器に詰められた飲食品組成物を開封する際にユーグレナに特有の風味を改善できる。また、ユーグレナと、ショウガ、カレーリーフ、コリアンダー、パクチー、ホップ及びアオシソからなる群より選択される少なくとも1種以上の植物抽出物を、乳原料と組み合わせることで、容器に詰められた飲食品組成物を開封する際にユーグレナに特有の風味が相乗的に改善することができる。
【0042】
(加熱殺菌済み飲食品組成物)
また、本実施形態に係る飲食品組成物は、加熱殺菌済みであることが好ましい。本願発明者らは、飲食品組成物を加熱殺菌した場合に、ユーグレナに特有の風味が強くなることを新たに見出したが、ユーグレナと、ショウガ、カレーリーフ、コリアンダー、パクチー、ホップ及びアオシソからなる群より選択される少なくとも1種以上の植物抽出物及び/又は乳原料を組み合わせることで、飲食品組成物を加熱殺菌した場合であっても、ユーグレナに特有の風味が強くなることを改善できる。また、ユーグレナと、ショウガ、カレーリーフ、コリアンダー、パクチー、ホップ及びアオシソからなる群より選択される少なくとも1種以上の植物抽出物を、乳原料と組み合わせることで、飲食品組成物を加熱殺菌した場合であっても、ユーグレナに特有の風味が強くなることを相乗的に改善することができる。
【0043】
<飲食品組成物の製造方法>
図1は、本実施形態に係る飲食品組成物の製造方法のフロー図である。
本実施形態に係る飲食品組成物の製造方法は、ユーグレナと、ショウガ、カレーリーフ、コリアンダー、パクチー及びホップからなる群より選択される少なくとも1種以上の植物抽出物及び/又は乳原料を混合する混合工程(ステップS1)を行うことを特徴とする。
【0044】
また、混合工程で得られた混合物を容器に詰める容器詰め工程(ステップS2)を行ってもよい。さらに、容器詰め工程で得られた容器詰めの飲食品組成物を加熱殺菌する加熱殺菌工程(ステップS3)を行ってもよい。加熱殺菌の条件は、特に限定されるものではなく、容器詰めの飲食品組成物を、例えば、70℃で15分加熱殺菌すればよい。また、混合工程では、ショウガ、カレーリーフ、コリアンダー、パクチー、ホップ及びアオシソからなる群より選択される少なくとも1種以上の植物抽出物及び乳原料を混合すると好適である。
【0045】
<ユーグレナの風味を改善する方法>
本実施形態に係るユーグレナに特有の風味を改善する方法は、ユーグレナを含有する飲食品組成物に、ショウガ、カレーリーフ、コリアンダー、パクチー及びホップからなる群より選択される少なくとも1種以上の植物抽出物及び/又は乳原料を添加することを特徴とする。
【0046】
このとき、飲食品組成物が容器詰め飲料であるとよい。さらに、飲食品組成物が加熱殺菌されるとよい。また、ユーグレナを含有する飲食品組成物に、ショウガ、カレーリーフ、コリアンダー、パクチー、ホップ及びアオシソからなる群より選択される少なくとも1種以上の植物抽出物及び乳原料を添加すると好適である。
【実施例0047】
以下、具体的実施例に基づいて本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
以下の実施例では、ユーグレナと各種原料を組み合わせた試料(試験液)を調製し、ユーグレナに特有の風味の改善効果について検討を行った。
【0048】
<原料>
以下に示す各原料を用いた。
・ユーグレナ・グラシリス粉末:株式会社ユーグレナ
(芳香性植物原料、植物抽出物)
・ショウガ抽出物※1:エスビー食品株式会社、「本生生しょうが」
・カレーリーフ抽出物※2:大津屋、「カレーリーフ(スリランカ産)」
・パクチー抽出物※2:エスビー食品株式会社、「セレクト パクチー(チップ)」
・コリアンダーフレーバー:高砂香料工業株式会社
・ホップフレーバー:高砂香料工業株式会社
・アオシソフレーバー:高砂香料工業株式会社
(その他芳香性原料)
・オレンジフレーバー:高砂香料工業株式会社
・マスカットモディファイヤー:三栄源エフ・エフ・アイ株式会社
・ミルクフレーバー:栄香料株式会社
・グリーンティーフレーバー:栄香料株式会社
(乳原料)
・脱脂粉乳:森永乳業株式会社、「脱脂粉乳」
・生クリーム(乳脂肪45%):タカナシ乳業株式会社、「特選北海道純生クリーム35」
・植物油脂(植物油脂75%):ネスレ日本株式会社、「VEEKREME H」
※1:ショウガ抽出物は、原料と水を1:1で混合し、上澄み液を使用した。
※2:カレーリーフ抽出物とパクチー抽出物は、原料6gに対し湯100mLで5分間煮だし、上澄み液を使用した。
【0049】
<調整方法>
各表に示す配合の試料(飲料、試験液)を製造した。容器に、ユーグレナ・グラシリス粉末、その他原料及び水を加えて、300gになるよう調整した。試料をガラス容器に充填し、キャップを施し、70℃で15分加熱殺菌した。加熱後、冷却して20℃で一晩保管後に試飲評価した。なお、ユーグレナ・グラシリス粉末の含有量は、ユーグレナ由来の風味を感じられる量として設定したに過ぎず、飲食品組成物におけるユーグレナの含有量は適宜設定すればよい。
【0050】
専門パネル6名により、下記の評価基準にて評価した。なお、試料1を対照例とした。
<官能評価の基準と評点>
・ユーグレナに特有の風味が対照例より大変強い:+2点
・ユーグレナに特有の風味が対照例より強い :+1点
・ユーグレナに特有の風味が対照例と同等 : 0点
・ユーグレナに特有の風味が対照例より弱い :-1点
・ユーグレナに特有の風味が対照例より大変弱い:-2点
【0051】
<試験1>
試験1の配合を表1に示す。
【0052】
【0053】
試験1の結果(平均評点)を表2に示す。
【0054】
【0055】
まず、容器に詰められた試料を開封する際にユーグレナに特有の風味があることが分かった。また、試料2(ショウガ抽出物)、試料6(ホップフレーバー)、試料12(脱脂粉乳0.8wt%)について、ユーグレナの風味が試料1(対照例)より大変弱くなったと評価された。他の試料についても、ユーグレナの風味が試料1よりも弱くなったと評価された。つまり、芳香性植物原料や乳原料がユーグレナの風味を改善する作用があることが分かった。
【0056】
<試験2>
試験2の配合を表3に示す。なお、試料31は、未加熱(未殺菌)とした。
【0057】
【0058】
試験2の結果(平均評点)を表4に示す。
【0059】
【0060】
まず、ユーグレナの風味は、加熱殺菌することで強くなることが確認された(未加熱の試料31は、評点が-1)。また、芳香性植物原料や乳原料の含有量が減るとユーグレナの風味を改善する作用が弱くなることが分かった。
【0061】
<試験3>
試験3の配合を表5に示す。
【0062】
【0063】
試験3の結果(平均評点)を表6に示す。
【0064】
【0065】
以下の表7に示すように、植物抽出物と乳原料を組み合わせることによる相乗効果が確認できた。特にホップ、コリアンダーは乳原料と組み合わせることによる相乗効果が高かった。
【0066】
【0067】
また、評価者平均点が-1点以下となった添加率を下限値とすると、結果は表8のようになった。なお、この下限値はあくまでも好適な含有量の目安に過ぎず、芳香性植物原料及び/又は乳原料の含有量は、特に限定されるものではなく、ユーグレナの含有量、飲食品組成物の形態、目的に応じて、ユーグレナの風味の改善効果が得られ、飲食品としての風味を損なわない範囲で自由に設定することが可能である。
【0068】
【0069】
<試験1~3のまとめ>
以上の結果から、飲食品組成物において、ユーグレナと、ショウガ、カレーリーフ、コリアンダー、パクチー及びホップからなる群より選択される少なくとも1種以上の植物抽出物及び/又は乳原料を含有することで、ユーグレナに特有の風味を改善することが可能であることが分かった。
【0070】
より詳細には、飲食品組成物において、ユーグレナと、ショウガ、カレーリーフ、コリアンダー、パクチー及びホップからなる群より選択される少なくとも1種以上の植物抽出物及び/又は乳原料を含有することで、容器に詰められた飲食品組成物を開封する際にユーグレナに特有の風味を改善できること、飲食品組成物を加熱殺菌した場合に強くなるユーグレナに特有の風味を改善できることが分かった。
【0071】
また、飲食品組成物において、ユーグレナと、ショウガ、カレーリーフ、コリアンダー、パクチー、ホップ及びアオシソからなる群より選択される少なくとも1種以上の植物抽出物を、乳原料と組み合わせることで、容器に詰められた飲食品組成物を開封する際にユーグレナに特有の風味を相乗的に改善できること、飲食品組成物を加熱殺菌した場合に強くなるユーグレナに特有の風味を相乗的に改善できることが分かった。