(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022050221
(43)【公開日】2022-03-30
(54)【発明の名称】荷受台昇降装置、および荷受台昇降装置を備える車両
(51)【国際特許分類】
B60P 1/44 20060101AFI20220323BHJP
【FI】
B60P1/44 E
【審査請求】有
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020156699
(22)【出願日】2020-09-17
(11)【特許番号】
(45)【特許公報発行日】2021-05-12
(71)【出願人】
【識別番号】000002358
【氏名又は名称】新明和工業株式会社
(72)【発明者】
【氏名】今井 俊彰
(57)【要約】
【目的】車両後方の施設や障害物との衝突を回避するとともに積みおろし作業を効率的に実施できる位置に停車できる荷受台昇降装置や同装置を備えた車両を提供する。
【構成】収納状態とされるとともに、前記荷箱と地面との間における荷物の積みおろしに利用されるときには前記荷箱に対して車両後方側に突出した略水平状態とされる荷受台と、前記車両後方側の物体のデータを取得する物体データ取得部と、当該物体データ取得部に接続されて前記物体のデータを処理する処理部と、前記処理部に接続されて前記物体までの距離が所望する距離に該当するか否かを判定する判定部と、当該判定部に接続されて外部機器に報知信号を出力する報知部とを備えた構成とする。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
荷箱が搭載された車両が走行するときには前記荷箱の下方に引き込まれた、または前記荷箱の後方で起立された収納状態とされるとともに、前記荷箱と地面との間における荷物の積みおろしに利用されるときには前記荷箱に対して車両後方側に突出した略水平状態とされる荷受台と、
前記車両後方側の物体のデータを取得する物体データ取得部と、
当該物体データ取得部に接続されて前記物体のデータを処理する処理部と、
前記処理部に接続されて前記物体までの距離が所望する距離に該当するか否かを判定する判定部と、
当該判定部に接続されて外部機器に報知信号を出力する報知部と
を備えたことを特徴とする荷受台昇降装置。
【請求項2】
前記処理部に接続されて前記略水平状態における前記荷箱から前記荷受台の先端部までの略水平距離を記憶する記憶部とを備え、
前記所望する距離は、前記略水平距離に基づいて判定される
ことを特徴とする請求項1に記載の荷受台昇降装置。
【請求項3】
前記記憶部には、前記略水平状態における地面に対する前記荷受台の先端部の高さが記憶されており、
前記所望する距離は、前記略水平距離および前記高さに基づいて判定される
ことを特徴とする請求項2に記載の荷受台昇降装置。
【請求項4】
前記物体データ取得部は前記車両後方側を撮影可能な撮影部を有し、
前記処理部によって、前記撮影部の撮影データに基づいて前記物体までの距離が算出される
ことを特徴とする請求項1から3のいずれかに記載の荷受台昇降装置。
【請求項5】
前記物体データ取得部は、前記車両後方側に対して計測波を送受信可能な計測部を有し、
前記処理部によって、前記車両後方側に照射して前記物体により反射された計測波に基づいて前記物体までの距離が算出される
ことを特徴とする請求項1から3のいずれかに記載の荷受台昇降装置。
【請求項6】
搭載された荷箱と地面との間で積みおろしする荷物が載置される荷受台を有し、前記積みおろしの際には前記荷受台が前記荷箱に対して車両後方側に突出した略水平状態とされるとともに、収納する際には前記荷受台が前記荷箱の下方に引き込まれる、または前記荷箱の後方で起立される構成の荷受台昇降装置を備える車両であって、
前記車両後方側の物体のデータを取得する物体データ取得部と、
当該物体データ取得部に接続されて前記物体のデータを処理する処理部と、
当該処理部に接続されて前記物体までの距離が所望する距離に該当するか否かを判定する判定部と、
当該判定部に接続されて外部機器に報知信号を出力する報知部と
を備えたことを特徴とする荷受台昇降装置を備える車両。
【請求項7】
前記物体データ取得部は車両後方側を撮影可能な撮影部を有し、
前記処理部に接続されて前記略水平状態における前記荷箱から前記荷受台の先端部までの略水平距離を記憶する記憶部と、
前記物体データ取得部に接続されて前記撮影部の撮影データに基づいて車両後方側を表示する表示部と、
を備え、
前記略水平距離に基づいて前記所望距離を把握可能なガイド領域が前記表示部に表示される
ことを特徴とする請求項6に記載の荷受台昇降装置を備える車両。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両に架装されて、荷箱と地面との間における荷物の積みおろしに利用される荷受台昇降装置、およびそうした荷受台昇降装置を備える車両に関する。
【背景技術】
【0002】
荷受台昇降装置は荷箱が搭載された車両の後部に架装され、昇降可能な荷受台を利用して地面と荷箱との間における荷物の積みおろしに利用される。こうした荷受台昇降装置には、車両が走行状態のときには、荷受台が荷箱後方で起立姿勢とされてロック部材を用いて保持されるもの(例えば特許文献1)や、荷受台が荷箱下方に収納されて保持されるもの(例えば特許文献2)などがある。荷受台昇降装置が架装される車両は、荷箱に多くの荷物を積んでおり、運転室(キャブ)後方には背の高い大きな荷箱が設けられることもある。このため、車両の運転者は車両後方が視認し難い状況となる。
【0003】
このため、車両を後方移動させる際の安全性を確保するために、カメラを荷箱に設置してギヤを後方移動用に切り替えることでカメラによって車両後方領域の安全確認を運転者が確認できる技術(例えば特許文献3)や、同趣旨の安全確認を目的としてカメラが設置された車両(普通自動車や他の種類の貨物自動車)も存在する。さらには、こうした技術に関して、荷受台昇降装置を備えた車両へ適用(例えば特許分類4)する発明も知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第6294451号公報
【特許文献2】特開2017-137046号公報
【特許文献3】特許第3291963号公報
【特許文献4】特許第6601930号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上述した技術が知られているものの、実際の荷受台昇降装置を備える車両には、カメラによる後方撮影機能が備わっていないものも多く、運転手が微妙な位置調整をしながら車両を所望する位置まで後進して停止させることとなり、運転手にかかる負荷は大きい。また、こうした停車作業には運転者だけでなく周辺状況を確認する確認者(警備員)などを待機させ、その確認者の声を介して微妙な位置調整を行って停車させることも多く、車両停止に要する人数が増加する。
【0006】
さらに、荷受台昇降装置を後部に備える車両においては、その車両を後進(後方移動)させる際に、通常のトラック(荷受台昇降装置が架装されていない車両)と根本的に異なる事情も存在する。通常のトラックの場合は、車両全体の長さまたは車両後端部の位置を把握することで、車両後方の障害物等との接触を防止する。しかしながら、荷受台昇降装置を後部に備える車両の場合は、到着した作業現場において、「車両全体の長さ」に加えて、荷受台を略水平状態にする領域も確保した「適正な位置」に停車させる必要がある。
【0007】
具体的には、荷受台昇降装置を備える車両は、走行状態のときに荷受台は荷箱後方に起立姿勢で保持された状態または荷箱下方に収納されて保持された状態となっている一方で、荷受台昇降装置を利用して荷物の積みおろしを行う際には、略水平状態に荷受台を車両後方に張り出した状態にする。このため、例えば街中で車両を停止させて荷物の積みおろし作業を行う場合、停車後に荷受台を略水平状態にするためのスペースとなり、車両を単に停車させるだけでなく、こうしたスペースも考慮して停車させる必要がある。集荷場などで荷物の積みおろしを行う場合には、水平姿勢の荷受台の車両前後方向の長さ分だけ予めドッグシェルターから離れて停車しなければ、ドッグシェルターに水平姿勢の荷受台の先端部を巧く当接できない。当接できず隙間が存在するのは当然好ましくなく、さらには接近しすぎても荷受台先端部がドッグシェルターの床面に対して浮いた状態となって、台車などの積みおろし作業効率を低下させてしまう。
【0008】
こうした特有の事情に関しては、運転手だけでなく、上述した確認者も把握しておく必要がある。特に、車両によっては荷受台昇降装置自体が異なる。車両走行状態で荷受台を起立状態にするものもあれば、荷箱下方に収納するものもある。同じタイプの荷受台昇降装置であっても、荷受台の大きさ自体が異なるものもある。このため、荷受台の略水平閉状態の長さは車両によって異なり、作業現場で待機する確認者にとって、様々な車両が日々訪れる状況下の中で様々な荷受台昇降装置の特徴を覚えておくことは非常に困難性が伴う。
【0009】
加えて、カメラを介して車両後方の領域を確認できたとしても、そのカメラ映像を通じて運転手が判断する必要があり、停車する作業場ごとに天候等含めて環境や雰囲気が異なる中で微妙な距離を的確に判断することにも困難性が伴い、運転手の技量や能力に大きく左右されてしまう。
【0010】
本発明は、これらの点を鑑みてなされており、車両の後方に架装されて、荷箱後方に水平姿勢となって荷物の積みおろしに利用される荷受台昇降装置やそうした荷受台昇降装置を備える車両において、荷物の積みおろしを行う上で的確な位置に簡易に車両を停止させることが可能な構成の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明では、上記課題の解決のために荷受台昇降装置に関して次の手段を用いる。荷箱が搭載された車両が走行するときには前記荷箱の下方に引き込まれた、または前記荷箱の後方で起立された収納状態とされるとともに、前記荷箱と地面との間における荷物の積みおろしに利用されるときには前記荷箱に対して車両後方側に突出した略水平状態とされる荷受台と、前記車両後方側の物体のデータを取得する物体データ取得部と、当該物体データ取得部に接続されて前記物体のデータを処理する処理部と、当該処理部に接続されて前記物体までの距離が所望する距離に該当するか否かを判定する判定部と、当該判定部に接続されて外部機器に報知信号を出力する報知部とを備えた構成とする。なお、ここで車両後方側の「物体」は、車両の荷箱に搭載予定の荷物や、後進する車両が接触しないように所望する距離だけ離れて停止するために基準となる物体、さらには停車想定位置と車両との間に存在する障害物や侵入する人などを指している。
【0012】
上記の構成において、略水平状態における車両前後方向に沿った長さ(例えば水平距離)を所望距離とすることで、車両が物体に対して所望距離まで近づいたときに報知部を介して運転者、作業者または周囲の者に知らせることができる。これらの者は報知部を介して車両の所望距離までの接近を知ることができ、荷受台昇降装置を備える車両が「適正な位置」まで移動したことを把握できる。つまり、簡易に車両を「適正な位置」に停止できる。なお、ここでこの「適正な位置」に関しては、上記の略水平状態における車両前後方向に沿った長さを所望距離にした場合には、車両停止後に荷受台を略水平状態に姿勢変更した上で荷物の積みおろしを行う場合に適した位置を指しており、必要な作業に応じて適宜設定変更が可能となっている。
【0013】
上記の構成に加えて、前記処理部に接続されて前記略水平状態における前記荷箱から前記荷受台の先端部までの略水平距離を記憶する記憶部とを備えており、前記所望距離は、前記略水平距離に基づいて判定される構成としても良い。この場合でも、上述のとおり、荷物の積みおろしに基づいた適正な位置に簡易に車両を停止できる。
【0014】
さらには、前記記憶部には、前記略水平状態における地面に対する前記荷受台の先端部の高さが記憶されており、前記所望距離は、前記略水平距離および前記高さに基づいて判定される構成としても良い。この場合、例えば集荷場のような所定の高さ位置で荷受台の先端部を当接させたい運用でも簡易に車両を停止できるので好ましい。つまり、単に荷受台を地面の高さ位置まで荷受台を下降させるのではなく、作業場の特徴に応じた高さ位置に適宜対応できるので汎用性が高まる。
【0015】
また、上述した各構成においては、前記物体データ取得部が、前記車両後方側を撮影可能な撮影部を有し、前記処理部によって前記撮影部の撮影データに基づいて前記物体までの距離が算出される構成を付加しても良い。撮影データに基づいて所望距離の判定を行うために、単に距離だけを確認するだけでなく、その撮影データを表示するなどの効果を実現するのに役立てることができる。他にも、前記物体データ取得部が、前記車両後方側に対して計測波を送受信可能な計測部を有し、前記処理部によって、前記車両後方側に照射して前記物体により反射された計測波に基づいて前記物体までの距離が算出される構成としても良い。こうした構成であっても確実に運転者などに物体の存在やこの物体に対する車両の接近距離を簡易に放置することができる。
【0016】
本発明では、上記課題の解決のために荷受台昇降装置だけでなく、荷受台昇降装置を備えた車両に関して次の手段を用いることもできる。搭載された荷箱と地面との間で積みおろしする荷物が載置される荷受台を有し、前記積みおろしの際には前記荷受台が前記荷箱に対して車両後方側に突出した略水平状態とされるとともに、収納する際には前記荷受台が前記荷箱の下方に引き込まれる、または前記荷箱の後方で起立される構成の荷受台昇降装置を備える車両であって、前記車両後方側の物体のデータを取得する物体データ取得部と、当該物体データ取得部に接続されて前記物体のデータを処理する処理部と、当該処理部に接続されて前記物体までの距離が所望する距離に該当するか否かを判定する判定部と、当該判定部に接続されて外部機器に報知信号を出力する報知部とを備えた構成とする。
【0017】
こうした構成とすることで、荷受台昇降装置自体に物体データ検知部、処理部および報知部を備えた構成とせずに、これらの少なくとも一部を荷受台昇降装置以外として、車両に備えた構成とすることもできる。荷受台昇降装置は一般的に架装メーカが車両メーカから納入した車両に架装されるが、上記の車両に備えた構成とすることで、架装メーカが直接的に検知部などを設けなくても、車両メーカが事前に車両に設けた構成とすることもでき、車両製造において色々な手順を採ることができ、製造効率の向上などにも役立てることができる。なお、これらの構成に加えて、前記物体データ取得部が車両後方側を撮影可能な撮影部を有し、前記処理部に接続されて前記略水平状態における前記荷箱から前記荷受台の先端部までの略水平距離を記憶する記憶部と前記物体データ取得部に接続されて前記撮影部の撮影データに基づいて車両後方側を表示する表示部とを備え、前記略水平距離に基づいて前記所望距離を把握可能なガイド領域が前記表示部に表示される構成も採ることで、運転者の操作性向上にもつながる。
【発明の効果】
【0018】
本発明に係る荷受台昇降装置や同装置を備えた車両は、後進操作する際の運転者の負荷を低減できる。また、周囲の者の負荷も低減できる。特に、周囲で待機する確認者の声を介して後進させる車両の停止タイミングを図ることが多かった運転者にとっては、本発明のように報知部を介して車両の停止タイミングを図ることは従来の習性と同一性を有するものであり、運転者にとって特別な操作方法の変更もなく好ましい。
【0019】
さらに、本発明によれば運転者や周囲の者の技量に左右されることも少ないため、熟練者でなくても簡易に車両を「適正な位置」に停止することができる。このため、車両停止後に荷受台を略水平状態にすることで、車両停止位置の適正度を改めて確認する必要もなく、当然ながら車両停止位置のやり直しなども不要となる。したがって、荷物の積みおろしに要する作業時間の不要な増加を確実に防止できる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【
図1】(a)は本発明の第1実施形態に係る垂直式の荷受台昇降装置を示す車両側方から見た要部側面図、(b)は同装置を車両後方から見た要部後面図である。
【
図2】本発明の第1実施形態に係る車両において荷受台昇降装置のコントロールユニットを示す模式図である。
【
図3】本発明の第1実施形態に係る車両の後進時における効果を説明する模式側面図である。
【
図4】本発明の第1実施形態に係る車両の後進時におけるコントロールユニットの制御フローチャートである。
【
図5】(a)は本発明の第1実施形態に係る変形例を示す車両側方から見た要部側面図、(b)は同例における車両後方から見た要部後面図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
本発明に係る荷受台昇降装置について、図面を用いて実施形態の一例を説明する。
図1(a)は、第1の実施形態に係る車両Tの後部に架装された荷受台昇降装置100の要部側面図である。車両Tは、車両前後方向を長手方向とする左右一対のシャシフレームCFと、シャシフレームCFに積層されたサブフレームSFと、サブフレームSF上に搭載された荷箱Bを有している。荷受台昇降装置100は、荷箱Bの後端に立設された左右一対の支柱1と、支柱1内部で昇降自在なスライダ2と、スライダ2の下端部に支持された荷受台3と、左右の支柱1の間に架設されたクロスメンバ4と、クロスメンバ4内で車両左右方向を長手方向として設けられた油圧シリンダ(不図示)と、クロスメンバ4の底部に固設された左右一対の取付ステー5L、5Rと、取付ステー5L、5Rに固定されたテールランプ6と、取付ステー5L、5Rの一方に固定された物体データ取得部(本実施形態では撮影部71及びレーザ部72)7と、この物体データ取得部7のデータを処理する処理部8と、処理部8のデータに基づいて判定する判定部9と判定部9の判定信号に基づいて外部機器(本実施形態ではアラーム機器)に報知信号を出力する報知部10とを備えている。ここで、アラーム機器は運転室(キャブ)内に設置されてアラーム音を発生することで運転者に報知する鳴音装置となっている。なお、説明の便宜上、支柱1は一点鎖線で示し、撮影部71及びレーザ部72には斜線を付した状態で示している。
【0022】
支柱1は後壁に切欠き部が設けられており、この切欠き部からスライダ2の一部が後方に突出しており、荷受台3はこの突出した部位に対して上下方向に回動可能に枢支されていて図示のように起立姿勢(実線部分)と水平姿勢(二点鎖線部分)との間で姿勢変更が可能(矢印A1)となっている。なお、荷受台3は起立姿勢のときに車両Tが走行時可能な状態となっており、水平姿勢に展開(矢印A1)されて地面に対して水平姿勢で昇降可能(矢印A2)となっている。スライダ2は、支柱1の内方空間を前方側と後方側に区分けする内壁1aを転動可能な転動ローラ2a、2bが設けられ、中間部にはワイヤWが止着された止着部2cが設けられている。
【0023】
クロスメンバ4は、車両の左右方向を長手方向として中空状の状態で支柱1及び荷箱Bの床面部に溶着されている。クロスメンバ4は、断面略コ字状の本体部41と本体部41の車両後方側に開放された開放部を閉じるカバー42とを有する。油圧シリンダは、カバー42を外した状態で本体部41の開放部から内方に収容される。
【0024】
クロスメンバ4内の油圧シリンダは、伸縮作動を行うことでワイヤWを支柱1に繰り出し、又は支柱1から引き込んでスライダ2を昇降作動させる。ワイヤWは、一端部が左右のスライダ2の上端部に止着され、スライダ2から上方に導かれ、支柱1の上部に設けられた滑車Cで下方に折り返される。折り返されたワイヤWの他端部は、下方に導かれ、支柱1の中間部からシーブ(不図示)を介してクロスメンバ4内に導かれて油圧シリンダに適宜止着されている。油圧シリンダの伸縮力がスライダ2の昇降の動力として用いられ、この伸縮力はワイヤW等の動力伝達部を介してスライダ2に伝達される。その結果、矢印A2で示すように、荷受台3は支柱1に沿って地面と荷箱Bの床面高さとの間で昇降作動される。
【0025】
取付ステー5L、5Rは、金属プレートが折り曲げられて形成されており、折り曲げられた上端部がクロスメンバ4の本体部41における底面部に対して溶着されるとともに、下端部が車両後方側を向いた状態となるように折り曲げられてなる。
【0026】
荷受台昇降装置100を車両後方から見た状態の
図1(b)に示すように、左右の取付ステー5L、5Rは左右方向における長さが異なっている。
【0027】
左側の取付ステー5Lは、右側の取付ステー5Rよりも長さL2だけ左右方向の長さが大きくなっている。車両外側で長さL1のテールランプ取付部位51には左右方向を長手方向とするテールランプ6が取り付けられている。また、車両内側で長さL2の固定部位52には、車両後方側の状況を把握するために物体の有無を確認するための物体データ取得部7が固定される。テールランプ6は、取付ステー5L、5Rのそれぞれにおいて、左右方向を長手方向とする切り欠き部5La、5Raに嵌る状態で、その一部となる照射面が車両後方側にわずかに突出した状態で固定されている。物体データ取得部7は、固定部位52には車両後方を撮影可能な撮影部71と、車両後方の物体までの距離を算定するためのレーザ部72とが固定されている。撮影部71は、矩形状の切り欠き部5Lbを介して車両後方側の領域を映すことが可能となるように固定部位52のうちの車両前方側に固定されており、レーザ部72は、円形状の切り欠き部5Lcを介して車両後方側に向かってレーザ光を出力するとともに車両後方側の物体で反射されたレーザ光を受信可能となるように同じく車両前方側に固定されている。なお、固定部位52は左側の取付ステー5Lのみに設けられた構成となっているが、右側の取付ステー5Rに設けられていても良い。さらには両方の取付ステー5L、5Rに設けられていても良い。特に、車両後方領域をできるだけ広い範囲を撮影できるようにするために、固定部位52は車両Tの内側(中央寄り)となる位置に設けられているが、撮影部71の撮影領域によっては車両Tの外側に固定部位52が設けられた構成としても良い。特に、車両側方側を重点的に撮影することが好ましい場合には、外側に固定部位52を設けるほうが好ましい。
【0028】
本実施形態の車両Tには、荷受台昇降装置100に、車両Tのバッテリから電力供給を受けるコントロールユニットCYが設けられている。コントロールユニットCYは、運転室(キャブ)内に設けられて車両Tのシフトレバーの位置変更を検知してその信号を出力するギア部11と、物体データ取得部7のデータ出力を受けて車両後方側の情報を表示する表示部12と、処理部8に接続されて予め荷受台3の長さなどの情報が記憶されている記憶部13と、同じく処理部8に接続されて作業者が操作する操作部の信号が入力されて油圧シリンダへの伸縮指令を出力する制御部14とを有している。シフトレバー内にはギア位置センサが設けられており、運転者のシフトレバーの変更操作に伴ってギア位置センサからの信号を物体データ取得部7に出力する構成となっている。シフトレバーがリバース位置(車両Tの後方移動)となった際、リバース位置情報に関するセンサ信号を受信した物体データ取得部7は、撮影部71及びレーザ部72をオン状態にする。
【0029】
撮影部71にはカメラを用いており、当該カメラを介して車両Tの後方領域が撮影される。撮影された映像は表示部12のモニタに表示されることで、運転室内の運転者が車両後方側の状況を確認することができる。なお、車両後部の撮影部71と運転室内のギア位置センサや表示部12との電気配線はシャシフレームCFに沿う状態で設けられており、撮影部71に接続される電気配線は、撮影部71がテールランプ6に近接した状態で取付ステー5Lに固定される。そのため、これらの電気配線に関して、テールランプ6に接続されている電気配線とともに設けることができ、車両Tにおける電気配線の取り回しが複雑化されることを防止できる。
【0030】
レーザ部72は、レーザ発信部と、レーザ受信部とを有する。レーザ発信部は、発光素子であるレーザダイオード、レーザダイオードの発光を制御する発光制御部、およびレーザダイオード発光面に対向して配置した投光を有する。また、レーザ受信部は、受光素子であるフォトダイオード、フォトダイオードの出力信号を処理する受信回路、およびフォトダイオードの受光面に対向して配置した受光レンズを有する。投光レンズと受光レンズとは電気的に接続されている。本実施形態ではレーザ部72において、レーザダイオードがレーザ光を発信してから、フォトダイオードが反射光を受光する構成となっている。
【0031】
レーザ部72(物体データ取得部7)に接続された処理部8では、上記のレーザ光の発信から受信までの経過時間、及びこの経過時間に基づいてレーザダイオードが発信したレーザ光を反射した物体(車両Tの後方側に存在する物体)までの距離に関して既知の位相差検出方式となる計測手法を採っている。ただし、他の方式(TOF(Time of Flight)方式や三角測距方式など)も適宜適用可能である。また、処理部8には作業者が直接入力したデータ、及び物体データ取得部7が処理部8に出力したデータを記憶する記憶部13も接続されている。なお、本実施形態では瞬時に距離計測が可能で、車両Tの後進時に計測するものであるため、車両Tの走行速度などの情報は処理部8に入力されないが、外部インターフェースを用いて車両Tの走行の速度や方向などを適宜付加して物体までの距離の計測を行う構成としても良い。また、レーザ光を発信するレーザ部72としているが、距離計測できるものであれば、超音波や他の波長のものを用いても良い。
【0032】
判定部9には、処理部8及び記憶部13が接続されている。判定部9には、処理部8から出力された車両後方側の物体までの距離に関するデータが入力され、記憶部13に記憶された荷受台3の長さに関するデータも入力される。判定部9では、荷受台3の長さに関するデータとして荷受台3の回動側の基端部から回動側の先端部までの長さが本実施形態に係る所望距離として入力されており、当該所望距離を物体までの距離に関するデータと比較する。比較することで「所望距離>物体までの距離」の状態から「所望距離=物体までの距離」となった際に報知部10に所望距離に達したことを示す報知信号を出力する。報知信号が入力された報知部10は運転室内のアラーム機器に信号出力し、この信号が入力されることでアラーム機器がアラーム音を発生する。アラーム音に関しては距離に応じて鳴音間隔を短くする、または音量を変更するなど適宜設定可能である。なお、記憶部13にはリセット部も接続されており、記憶された情報をリセットして再入力することもできる。
【0033】
処理部8には、記憶部13の出力情報を受信可能なガイド部15も接続されている。ガイド部15は、表示部12にも接続されており、上記の所望距離に応じて車両Tの幅方向(左右方向)に沿った所定長さのガイド線情報を作成して表示部12に出力する。表示部12では、ガイド線が表示される。ガイド線が表示されることで、運転者は停車後に行う荷受台昇降装置100を利用した荷物の積みおろし作業をイメージしやすくなり、表示部12を確認しながら荷物の積みおろして適した位置に簡易に車両Tの後進操作を停止することができる。
【0034】
本実施形態に係る荷受台昇降装置100、および当該装置100を備える車両Tの場合、次のような効果を奏する。
【0035】
荷受台昇降装置100が車両Tの後部に設けられて車両Tの後方で荷受台3の昇降作動が行われる構成および機能を有するため、荷受台3を作動させるための部材も車両Tの後部に複数設けられている。これらの部材によって、運転者が車両Tを後方移動させる際に撮影部71の撮影が阻害されないように撮影部71は設けられている。
図3(a)のように、一般的には車両走行状態のまま、具体的には荷受台3が起立姿勢で保持された状態のままで車両Tの後方移動は行われる。このとき、運転者がシフトレバーをリバース位置に設定したことによって、運転室の表示部12に車両Tの後方領域が映し出される。このとき、荷箱Bの下方領域から撮影部71によって撮影される撮影領域Sとなっており、当該撮影領域Sは、起立姿勢の荷受台3よりも下方の領域から撮影されることになる。撮影部71が固定される取付ステー5Lの固定部位52(
図1(b)参照)は、テールランプ6(
図1(b)参照)と隣合わせの位置に設けられているため、照射領域が他の部材に阻害されることのないように設定されているテールランプ6と同様に、撮影部71によって映し出される撮影領域Sを良好に映し出すことができる。撮影領域Sを良好に確保できる状態であれば、固定部位52は、テールランプ6の上側または下側であっても荷箱Bの下方領域からの車両後方における撮影領域Sであれば構わない。勿論、車両後方にある荷箱Bに積載予定の荷物(配送するプロパンガスなど)P1なども良好に映し出される。
【0036】
レーザ部72は、運転者がシフトレバーをリバース位置に設定したことによって、
図3(a)における車両Tから荷物P1までの距離を計測する。レーザ部72のレーザダイオードから発信されたレーザ光(図中の右方向に向かう白抜き矢印)が荷物P1に反射されてその反射光(図中の左方向に向かう白抜き矢印)をフォトダイオードが受信されることで距離が計測され、車両Tが後進して荷物P1に対して所望距離まで接近した際には報知部10を介して運転室内のアラーム機器がアラーム音を発生する。運転者は運転室内で車両Tの後進操作を行いながら、表示部12の映像を確認するとともにアラーム音を聞くことで簡易に車両Tの適正な停止位置を把握することができる。また、荷受台昇降装置100が設けられた車両Tにおいて、レーザ部72も撮影部71と同様に好適な位置に設けられているので安定して的確な距離計測が可能となる。
【0037】
表示部12に車両後方側の映像が表示されるので、運転者はその映像を確認しつつ車両Tを後進操作できるとともに、図示する起立状態の荷受台3を略水平状態に展開した際の領域G(車両Tの床面の高さHに相当する領域)に荷受台3が張り出した状態の長さまで車両Tが接近したことについて、アラーム音を介して理解することができる。さらに本実施形態では、ガイド部15によって表示部12にガイド線も表示されるので周囲の安全とともに適正な位置での停車の確実性が高くなっている。このため、車両Tを停止させた後に荷受台3を略水平状態に姿勢変更しても荷物P1と接触することもない。つまり、荷受台3が起立状態のときに、荷物の積みおろしに荷受台昇降装置100を利用するのに適した位置に車両Tを簡易に停止できる。なお、本実施形態では所望距離を略水平状態に張り出した荷受台3の車両前後方向に沿った長さとしているが、例えば
図3(b)のように、荷受台長さDに対して荷物P1との間の隙間領域の長さDPを加えた長さD1を所望距離としても良い。さらに、荷物P1の積みおろしを行うために必要な作業領域の長さDQをさらに加えた長さD2を所望距離としても良い。いずれの場合でも、予め記憶部13に設定する所望距離に合わせて巧く車両Tを停止させて、停車後の荷物の積みおろし作業の良好な作業環境を形成することに役立つ。
【0038】
他にも、定期的に利用する荷物の集荷場Rにおいて、
図3(c)のように荷物の積みおろしを行う集荷床面高さHRが車両Tの床面高さHよりも少し高い場合などには、荷受台3の先端3aが巧く当接するように距離DRを把握しておくことで上述した所定距離とすることもできる。当該所定距離DRは荷受台長さDよりも短いが、荷受台3の先端3aが集荷床面からほとんど浮かない状態となるような距離となっている。図示のように荷受台3が傾斜した状態となるように車両Tを停止させるには、車両Tの操作技量や車両後方側の映像だけでなく、所望距離DRに基づく制御を用いることが、車両Tの後進操作のやり直しも解消するだけでなく、荷受台3の先端3aが集荷床面に対して浮いてしまうことも防止できるので荷物の積みおろしに係る安全性も確保できるため好ましい。
【0039】
本実施形態において、荷物の積みおろしに荷受台昇降装置100を利用することを目的とした車両Tの操作手順は次のとおりとなる。
【0040】
荷物の積みおろしを行う近辺に車両Tが到着した後、車両Tを後進させて接近するためにシフトレバーをリバース位置に変更すると、車両Tが後進可能な状態となってギア部11から物体データ取得部7に信号出力する(S1)。この信号を受けて撮影部71及びレーザ部72が駆動され(S2)、運転室内の表示部12に車両後方側の映像が表示され(S3)、レーザ部72はレーザ光を用いて車両後方側の物体までの距離を計測する。なお、リバース位置に変更されることで撮影部71及びレーザ部72が駆動されるが、他の手段で駆動される構成としても良い。
【0041】
レーザ部72は、レーザダイオードからレーザ光を車両後方側に発信する(S4)。次に、レーザ部72はレーザ光を発信後にフォトダイオードが反射光を受信する(S5)と、その発信および受信に関するデータを処理部8に出力する。処理部8では、発信から受信までの経過時間を計測し、この経過時間に基づいてレーザ光を反射した物体までの距離(=レーザ光の伝播時間×経過時間/2)を計測する(S6)。処理部8は、計測された距離に関するデータを判定部9に出力する(S7)とともに、ガイド部15に対してもそのデータを出力する(S8)。なお、ガイド部15では荷受台3の長さDとなる位置(所望距離)において、表示部12に対して車両左右方向と平行な水平線(ガイド線)を表示するための信号を出力するように構成されており、この信号を出力するタイミングは処理部8から入力される距離に関するデータが、上記所望距離の1.2倍の大きさとなった際に設定されている。当該1.2倍の大きさを超えない間は継続的にガイド線を表示する信号が表示部12に出力される(S9)。このガイド線を運転手が確認することで適正な位置に車両が接近していることを把握することができ、車両Tを停止さえる位置もこのガイド線を確認することで容易に判断することができる。
【0042】
距離に関する処理データが入手力された判定部9では、予め記憶された荷受台3の長さDに相当する所望距離と比較する(S10)。判定部9は、比較することで車両Tが車両後方側の物体に対して所望距離まで接近したか否かを判定する。接近したことを判定した際には瞬時に報知部10にその情報を出力し(S11)、報知部10を介して運転室内のアラーム機器がアラーム音を発生する(S12)。判定部9における判定は所望距離と同等の大きさに基づいて行われているので、運転者はアラーム音の確認に即座に応答して車両Tを停車させれば簡易に略水平状態の荷受台3の長さに適した状態(荷受台昇降装置100を用いて荷物の積みおろしが行うのに適した位置)とすることができる。そして、車両Tを停止させ、シフトレバーをパーキング位置に操作することで物体データ取得部7の駆動を停止する(S13)。なお、本実施形態では、判定部9とガイド部15がそれぞれ応答するタイミングに関して、所望距離の1.2倍と1.0倍(同等の大きさ)と異なるように設定したが、これらの設定は適宜変更可能であり、同じ大きさ(例えばいずれも1.2倍に設定)にしても良い。
【0043】
上述のとおり、距離Dに関しては、荷受台3が水平姿勢とされた際に、荷受台3が地面に接地するまで下降されて荷受台3に荷物Pを簡易に積みことができる距離を指している。つまり、荷受台3の接地後に荷受台3と荷物P1との距離が大きいために、不要に荷物Pを荷受台3まで運ばなければならない状態、または荷受台3の接地後に改めて車両Tを後方移動させなければならない状態となる距離でなく、車両Tを停止させた後に荷受台3を水平姿勢に変更(展開)すると荷受台3と荷物が干渉することもなく、荷物を不要に移動させなくても簡易に荷受台3に積み込みが可能となる良好な距離を指している。当該距離Dを最初の車両Tの後方移動するタイミングに得ることで、荷物P1の積みおろし作業全体に要する時間短縮及び作業者の負担減少に貢献する。特に、水平姿勢とされた荷受台3とほぼ同じ高さ位置からの撮影部71による映像(
図2(a)中の点線領域G)となるので他の部位から撮影されたカメラ映像よりも的確に荷箱Bより後方に突出された荷受台3の大きさを的確に把握することができる。その上、取付ステー5Lに固定されていることで、起立姿勢の荷受台3だけでなく昇降する荷受台3との干渉も防止できる。
【0044】
また、車両の荷箱Bには、上方が閉ざされた形状、所謂バン型タイプのものもあれば、荷受台昇降装置が架装される車両の荷箱としては上方が開いた形状、所謂カーゴ型タイプのものもある。バン型タイプの場合であれば特許文献3のように荷箱上部にカメラを設置することは可能だが、カーゴ型タイプの場合だと、荷箱上部にカメラを設置することは困難となる。つまり、本実施形態に係る取付ステー5Lの固定部位52に撮影部71が設けられる構成であれば、荷箱Bの種別ごとにカメラの設置可否の条件が異なることもなく、安定して荷箱Bが搭載された車両Tに取り付けられた状態にすることができる。さらに、本実施形態に係る荷受台昇降装置100のように、車両走行状態で荷受台3が起立姿勢とされる場合には、後方側のほぼ車両幅全体にわたる領域を荷受台が覆う状態となるのでカメラの設置位置は非常に制限され、加えて、後方領域の安全を確認する用途上、その視界領域の広域性及び鮮明度の確保が重要とされるため、水平姿勢とされる荷受台3に近い位置で適切な距離Dで車両Tを停止できるほどに車両後方の撮影領域Sを確保できる構成は運転者及びメーカにとって視認上好ましい。その上で、本実施形態のように報知部10を介したアラームや表示部12におけるガイド線を確認できる効果は、車両Tを操作するユーザにとって非常に大きい。
【0045】
特に、カーゴ型タイプの荷箱Bであれば、背の高い荷物Pなどの場合には、荷物P1を荷箱Bに積載した際に、起立姿勢の荷受台3よりもさらに荷物P1の方が最上部の高さが大きくなることがある。この場合、さらに運転者の車両後方の視界が遮られてしまうが、撮影部71によって安定的に車両後方の領域を把握できるとともに、アラームやガイド線で安心して車両Tを好適な位置に停止させることができる。
【0046】
その他にも、車両Tの後方移動は荷受台3が起立移動でのみ説明しているが、作業者によっては、積みおろしの作業現場付近で車両Tを停止させた後に荷受台3を水平姿勢とし、残りのわずかの距離だけ車両Tを後方移動させることも可能である。この場合、荷箱Bの下方領域からの撮影部71の撮影領域となっていることで、その上に荷受台3が展開されていても後方領域Sを把握することが可能である。また、この場合であっても、同様にアラームやガイド線を利用して車両Tを好適な位置に停止させることができる。
【0047】
本実施形態に係る撮影部71は、上述のとおり、車両Tの後方移動のときに車両後方の安全確認かつ適切な位置での停車を目的として、荷箱Bの下方領域に撮影部71及びレーザ部72が取り付けられた構成となっている。したがって、必要以上に広い範囲での撮影領域やレーザ検知領域を必要とするものではなく、むしろ対象となる荷物の積みおろし現場まで移動した後に、車両Tの後部に設けられた荷受台昇降装置100を巧く利用するために後方移動させる程度の距離及び領域を撮影できる撮影部71やレーザ部72が設けられていれば良い。こうした目的を満たすための撮影部71の機能であれば良いので、不要に高精度で高機能な設備を施す必要もないので、設置費用の上昇も抑制できる。
【0048】
本実施形態に係る荷受台昇降装置では、取付ステー5Lはテールランプ取付部位51と固定部位52とが一体となった構成を有しているが、同じ効果を奏する場合には必ずしも一体化された構成に限定されず、例えば変形例として
図5(b)に示すように固定部位52がテールランプ取付部位51から離間した状態で、クロスメンバ4に設けられていても構わない。この場合、クロスメンバ442は、
図5(a)に示すようにカバー442が鉛直下方に下垂する下垂部442bを有する形状となっている。具体的には、
図5(b)のとおり、カバー本体部442aの左右方向中央部にクロスメンバ下垂部442bが設けられているが、同等の効果を得る場合にはクロスメンバ下垂部442bの位置も適宜変更可能である。このクロスメンバ下垂部442bは撮影部71及びレーザ部72の固定部位として構成されているが、この固定部位はカバー442に限定されず、クロスメンバの本体側に設けられても、クロスメンバ442以外に設けられていても良い。
【0049】
第1の実施形態では荷受台3が支柱1に沿って鉛直方向に昇降するタイプの荷受台昇降装置100に関して説明したが、本発明では他のタイプの荷受台昇降装置にも適用できる。
【0050】
その一例として、
図6(a)に示す本発明の第2の実施形態に係る荷受台昇降装置200、および当該装置200が設置された車両T2を用いて説明する。
【0051】
本実施形態に係る荷受台昇降装置200は、左右一対のリンクアーム201で支持された荷受台昇降装置200において適用可能である。この荷受台昇降装置200及び車両Tの構成について、上述した荷受台昇降装置100と異なる部分を中心に説明する。なお、荷受台3は第1の実施形態と同様に車両走行状態の際には起立姿勢で保持されるものであり、同じ符号を付している。なお、他の部材に関しても第1の実施形態と同様の機能を果たすものには同符号を付している。
【0052】
荷受台昇降装置200は、車両に対して上下回動可能に支持された左右一対のアーム201と、アーム201の先端に固定されて3枚のプレートが溶接されてなるコラム202と、コラム202に対して上下回動可能に支持された荷受台3とを既知の構成として備えている(例えば特開2015-166236号公報)。アーム2は、車両の荷箱Bを支持する左右一対のシャシフレームCYに架設された連結部203に連結されている。荷受台3は、回動アーム201によって荷受台3が地面と荷台高さとの間を昇降される。なお、図示された荷受台昇降装置200は、荷受台3が車両後方に回動(展開)されて接地した状態となっている。
【0053】
連結部203は、シャシフレームCFの下部に固着されたフレームブラケット203aと、左右のフレームブラケット203aに架設された連結パイプ203bと、連結パイプ203bの両端に固定された取付部材203cとで構成されている。
【0054】
アーム201は、左右の取付部材203cのそれぞれに支持されている。左右のアーム201のそれぞれは、2つのアーム(リフトアーム211、コンプレッションアーム212)で構成されている。上側のリフトアーム211は基端側が枢軸211aで枢支され、下側のコンプレッションアーム212は基端側が枢軸212aで枢支されている。また、各アーム21、22の先端側はコラム202に対して枢軸211b、212bでそれぞれ枢支されている。リフトアーム211及びコンプレッションアーム212は、取付部材203cとコラム202とで平行リンク機構を構成している。取付部材203cには油圧シリンダ204が設けられており、この油圧シリンダ204の伸縮を利用して平行リンク機構の上下回動が駆動されて、荷受台3の昇降動作が図示する水平状態を維持したまま行われる。
【0055】
図示する荷受台3は、その幅方向(車両幅方向と同一方向)と直交する方向(車両前後方向と同一方向)において、荷台203に近い側(図中の車両前方側)に基端部、荷台203から遠い側(図中の車両後方側)に先端部とを有している。荷受台3は、取付部材203c、リフトアーム211、コンプレッションアーム212及びコラム202で構成される平行リンク機構を用いて、図示する水平状態を維持したまま昇降作動が行われる。
【0056】
本実施形態に係る荷受台昇降装置200にも取付ステー205L、205Rが設けられており、左側の取付ステー205Lにはテールランプ6、撮影部71及びレーザ部72が固定され、右側の取付ステー205Rにはテールランプ6が固定されている。
【0057】
取付ステー205L、205Rは連結パイプ203bの左右側部のそれぞれにおいて、上方側に延出した状態で連結パイプに固定された2枚の上方ブラケットを介して設けられている。この取付ステー205L、205Rに対しては第1の実施形態と同様にテールランプ6、撮影部71及びレーザ部72が固定されている。したがって、荷箱Bの下方領域でテールランプに隣接する状態で撮影部71及びレーザ部72が設けられており、起立状態の荷受台3に阻害されることなく車両後方において撮影領域S(
図2(a)参照)を確保できるとともに、車両側後方領域に存在する物体までの距離の計測を行うこともできる。
【0058】
また、本発明は、同じ荷受台3が起立姿勢とされるものであって、
図6(b)に示す第3の実施形態に係る荷受台昇降装置300、及び同装置300が設置された車両T3にも同様に適用可能である。本実施形態でも同様に第1の実施形態と同じ機能となるものには同符号を付している。
【0059】
荷受台昇降装置300は、既知の構成(例えば特開2011-157029号公報)でもある車両後方に設けられた平行リンク機構301に、荷受台3が連結された構成を有している。平行リンク機構301は車両のメインフレーム等からなるシャシフレーム(不図示)に対して、車幅方向を長手方向とする支持部材302を介して取り付けられている。荷受台2を使用しない走行状態では図示のとおり、荷箱B3の後面に荷受台3が対向した起立状態となっている。荷箱B3の下方には平行リンク機構301と干渉しないように3つに分割されたバンパ(後突防止手段)も設けられている。特に、本実施形態に係る荷受台昇降装置300の場合、荷受台3の起立姿勢と水平姿勢との間における姿勢変更も平行リンク機構301に設けられた既知の油圧シリンダの伸縮に基づいて行われる。このため、
図3(c)のように荷物の積みおろしを行う集荷床面高さHRが車両Tの床面高さHよりも少し高い場合などに、荷受台3の先端3aが巧く当接するように距離DRを把握しておくことで所望する距離(例えば、
図3(c)中の距離DR)で車両Tを停車するように後進操作を行い、図示するような姿勢で荷受台3が停止するように油圧シリンダを制御することも可能となる。
【0060】
荷箱B3は、第1及び第2の実施形態のようにカーゴ型タイプではなくバン型タイプとなっており、その荷箱B3の左右の下部に固定された取付ステー305L、305Rを有しており、これら取付ステー305L、305Rには他の実施形態と同様にテールランプ6または撮影部71が固定されている。本実施形態に係る荷受台昇降装置300は、車両T3の左右方向(車幅方向)の中央寄りとなる位置に左右の平行リンク機構301が設けられているため、当該機構301によってテールランプ6の照射領域、撮影部71の撮影領域、及びレーザ部72の出力領域が阻害されないように取付ステー305L、305Rが左右方向の端部に設けられているが、特にこの位置に限定するものではない。
【0061】
第3の実施形態では平行リンク機構を用いた荷受台昇降装置として、荷受台3が車両走行状態のときに起立姿勢となるものとなっているが、平行リンク機構を用いた荷受台昇降装置としては荷受台が折りたたまれて荷箱B3の下方に収納されるタイプもある。この荷箱B3の下方に荷受台3が収納可能な荷受台昇降装置、及び同装置が設置された車両であっても、第3の実施形態のように取付ステー305L,305Rと、テールランプ6と、撮影部71と、レーザ部72とが設置された構成を有する本発明は適用可能である。
【0062】
以上のとおり、いずれのタイプの荷受台昇降装置であっても、取付ステーを介して撮影部71やレーザ部72を固定可能な構成を有することで、荷受台昇降装置に撮影領域が阻害されることを防止できるだけでなく、荷箱の後方に突出された状態の荷受台の高さに適した視点で車両後方領域を確認することができる。そのため、ドッグシェルターや積み込む荷物に車両が衝突することなく、かつ荷物の積みおろし作業に適した距離で後方移動する車両を停止させることに役立つ。車両(荷箱)に対する積みおろしに荷受台昇降装置を要するほどの重量または大きさの荷物が対象となるので、適した距離での車両停止は、荷物等との衝突だけでなく、目標停止位置よりも離れて車両が停止されたことを要因として、荷物を車両に接近させるための作業や車両の再度の後方移動(運転操作)などを省略することができ、荷物の積みおろし作業全体に係る作業効率の向上につながる。
【0063】
以上のように各実施形態においては、撮影部71やレーザ部72に基づく物体データ取得部7、アラーム機器に出力する報知部10などを荷受台昇降装置100に含めた構成として説明したが、これらは荷受台昇降装置100ではなく、車両Tを構成する装置や要素とすることもできる。つまり、荷受台昇降装置100を車両(ここでは完成した車両Tではなく同装置100が架装される前の車両を指す)に架装する架装メーカが物体データ取得部7までは製造しない、荷受台昇降装置100としてユニット化しない、さらには車両に架装しない形態も本発明に含まれるものである。そのため、物体データ取得部7が設けられていない既に出荷済みの車両に対して、物体データ取得部7を固定する場合にも同等の効果を得ることができる。
【0064】
また、物体データ取得部7は撮影部71及びレーザ部72を有する構成としたが、レーザ部72としてライダー(LiDAR:Light Detection and Ranging)を用いることで撮影部7を省略した構成としても同等の構成を得ることができるので適用可能である。ライダーは、投受光ユニットを有し、この投受光ユニットは、半導体レーザ、コリメートレンズ、ミラーユニット、レンズ、フォトダイオード、およびモーター、ならびにこれらの各構成部材を収容する筐体を有し、この筐体内に設けられた制御装置によって上述した実施形態と同様に車両後方側の物体までの距離の算出が可能となっている。投受光ユニットは、レーザスポット光によりライダーの測定領域内を走査することで得られた各画素の受光信号を出力する。距離算出部は、この受光信号に基づいて、測距点群データを生成する。半導体レーザは、パルス状のレーザ光束を出射する。コリメートレンズは、半導体レーザからの発散光を平行光に変換する。ミラーユニットは、コリメートレンズで平行とされたレーザ光を、回転するミラー面により測定領域に向かって走査投光するとともに、対象物からの反射光を反射させる。レンズは、ミラーユニットで反射された対象物からの反射光を集光する。フォトダイオードは、レンズにより集光された光を受光し、鉛直方向に並んだ複数の画素を有する。モーターはミラーユニットを回転駆動する。距離の算出は、これらの半導体レーザの出射タイミングと、フォトダイオードの受光タイミングとの時間間隔(時間差)に基づいて距離情報(距離値)を求める。距離の算出には、CPU(Central Processing Unit)とメモリーが用いられ、メモリーに記憶しているプログラムを実行することにより各種の処理を実行することによって測距点群データを求める。なお、測距点群データの生成には専用ハードウェア回路を備えてもよい。
【0065】
以上のとおり、本発明によれば、走行状態の際の荷受台を収納状態(格納状態)で車両Tを後進操作するような略水平状態の荷受台長さを考慮しない場合と異なり、収納状態のままであっても上記荷受台長さを想定した上での車両Tの後進操作が的確かつ簡易に実現できるため、安全面の向上と操作煩雑性の解消を果たすことができる。なお、荷受台長さを考慮せずに車両Tを後進操作することを望む場合には、撮影部71やレーザ部72、さらには報知部10の機能をOFFにするための切替操作部を別途設けても良い。もちろん、レーザ部72、判定部9、または報知部10の設定によっては、荷受台3の長さを含めずに荷受台3が起立状態での車両Tから所望距離でアラーム音を鳴らすような設定などにしても良い。
【産業上の利用可能性】
【0066】
本発明は、荷箱の設置領域から利用時に荷受台が荷箱後方に水平姿勢となって昇降される荷受台を備えた全ての荷受台昇降装置、及び当該荷受台昇降装置を備えた車両に対して有用である。そのため、こうした荷受台昇降装置、及び同装置を備えた車両においては、上述した形態だけでなく同じ技術思想や効果を備えた形態であれば適宜変更可能である。撮影部71やレーザ部72に関しては、起立状態とされる荷受台3を用いて説明したが、荷台や荷箱の下方に収納される荷受台昇降装置や同装置を備えた車両にも同様に適用可能であり、収納状態の荷受台などが阻害しない場合には撮影部71やレーザ部72の取り付け位置も荷台や荷箱の下方に限定するものではない。
【符号の説明】
【0067】
1 支柱
2 スライダ
3 荷受台
4 クロスメンバ
5 取付ステー
6 テールランプ
7 物体データ取得部
51 テールランプ取付部位
52 固定部位
71 撮影部
72 レーザ部
T、T2、T3 車両
B、B2、B3 荷箱
100、200、300 荷受台昇降装置
シャシフレーム CF
サブフレーム SF
【手続補正書】
【提出日】2021-01-08
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
荷箱が搭載された車両が走行するときには前記荷箱の下方に引き込まれた、または前記荷箱の後方で起立された収納状態とされるとともに、前記荷箱と地面との間における荷物の積みおろしに利用されるときには前記荷箱に対して車両後方側に突出した略水平状態とされる荷受台と、
前記荷箱の下方領域に取り付けられて前記車両後方側の物体までの距離のデータを取得する物体データ取得部と、
当該物体データ取得部に接続されて前記物体までの距離のデータを処理する処理部と、
前記処理部に接続されて前記物体までの距離が所望する距離に該当するか否かを判定する判定部と、
当該判定部に接続されて外部機器に報知信号を出力する報知部と
を備えたことを特徴とする荷受台昇降装置。
【請求項2】
前記処理部に接続されて前記略水平状態における前記荷箱から前記荷受台の先端部までの略水平距離を記憶する記憶部とを備え、
前記所望する距離は、前記略水平距離に基づいて判定されることを特徴とする請求項1に記載の荷受台昇降装置。
【請求項3】
前記記憶部には、前記略水平状態における地面に対する前記荷受台の先端部の高さが記憶されており、
前記所望する距離は、前記略水平距離および前記高さに基づいて判定される
ことを特徴とする請求項2に記載の荷受台昇降装置。
【請求項4】
前記物体データ取得部は前記車両後方側を撮影可能な撮影部を有し、
前記処理部によって、前記撮影部の撮影データに基づいて前記物体までの距離が算出される
ことを特徴とする請求項1から3のいずれかに記載の荷受台昇降装置。
【請求項5】
前記物体データ取得部は、前記車両後方側に対して計測波を送受信可能な計測部を有し、
前記処理部によって、前記車両後方側に照射して前記物体により反射された計測波に基づいて前記物体までの距離が算出される
ことを特徴とする請求項1から3のいずれかに記載の荷受台昇降装置。
【請求項6】
搭載された荷箱と地面との間で積みおろしする荷物が載置される荷受台を有し、前記積みおろしの際には前記荷受台が前記荷箱に対して車両後方側に突出した略水平状態とされるとともに、収納する際には前記荷受台が前記荷箱の下方に引き込まれる、または前記荷箱の後方で起立される構成の荷受台昇降装置を備える車両であって、
前記荷箱の下方領域に取り付けられて前記車両後方側の物体までの距離のデータを取得する物体データ取得部と、
当該物体データ取得部に接続されて前記物体までの距離のデータを処理する処理部と、
当該処理部に接続されて前記物体までの距離が所望する距離に該当するか否かを判定する判定部と、
当該判定部に接続されて外部機器に報知信号を出力する報知部と
を備えたことを特徴とする荷受台昇降装置を備える車両。
【請求項7】
前記物体データ取得部は車両後方側を撮影可能な撮影部を有し、
前記処理部に接続されて前記略水平状態における前記荷箱から前記荷受台の先端部までの略水平距離を記憶する記憶部と、
前記物体データ取得部に接続されて前記撮影部の撮影データに基づいて車両後方側を表示する表示部と、
を備え、
前記略水平距離に基づいて前記所望距離を把握可能なガイド領域が前記表示部に表示される
ことを特徴とする請求項6に記載の荷受台昇降装置を備える車両。