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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022050224
(43)【公開日】2022-03-30
(54)【発明の名称】支持部付き医療用テープ
(51)【国際特許分類】
   A61F 13/02 20060101AFI20220323BHJP
   A61L 15/00 20060101ALI20220323BHJP
【FI】
A61F13/02 390
A61F13/02 310D
A61L15/00
【審査請求】有
【請求項の数】1
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020156707
(22)【出願日】2020-09-17
(11)【特許番号】
(45)【特許公報発行日】2021-04-14
(71)【出願人】
【識別番号】507134655
【氏名又は名称】有限会社ちょうりゅう
(74)【代理人】
【識別番号】100108143
【弁理士】
【氏名又は名称】嶋崎 英一郎
(72)【発明者】
【氏名】平島 利文
【テーマコード(参考)】
4C081
【Fターム(参考)】
4C081AA03
4C081AA12
4C081BC02
4C081CA211
4C081CC05
4C081DA02
4C081DC02
4C081EA03
(57)【要約】      (修正有)
【課題】残留収縮力を原因とする貼付期間中の持続的な皮膚刺激を軽減する効果が高く、原因となる残留収縮力の程度が、拡大鏡又は顕微鏡レベルといえるような軽微な刺激であっても、過敏に反応してしまう皮膚への貼付を目的とした支持体付き医療用テープを提供する。
【解決手段】溶液ポリマーで製膜された伸縮性機能を有する伸縮性基材部と、前記伸縮性基材部を皮膚に貼付し保持する機能を有する粘着部と、前記粘着部を保護する機能を有する剥離部と、前記伸縮性基材部を支持する機能を有する支持部を備え、上層から前記支持部、前記伸縮性基材部、前記粘着部、及び前記剥離部の順に設けられ、製造工程において、前記粘着部の上層に前記伸縮性基材部の素材となる溶液ポリマーを塗布し、成形収縮終了前後に、前記伸縮性基材部の上層に前記支持部を積層し、使用時に、剥離部を取り除くことにより支持体付き医療用テープ内に存在する残留収縮力を減少させる。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
溶液ポリマーで製膜された伸縮性機能を有する伸縮性基材部と、前記伸縮性基材部を皮膚に貼付し保持する機能を有する粘着部と、前記粘着部を保護する機能を有する剥離部と、前記伸縮性基材部を支持する機能を有する支持部を備え、上層から前記支持部、前記伸縮性基材部、前記粘着部、及び前記剥離部の順に設けられている医療テープであって、製造工程において、前記粘着部の上層に前記伸縮性基材部の素材となる溶液ポリマーを塗布し、成形収縮終了前後に、前記伸縮性基材部の上層に前記支持部を積層し、使用時に、剥離部を取り除くことにより支持体付き医療用テープ内に存在する残留収縮力を減少させることを特徴とする支持部付き医療用テープ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、支持部付き医療用テープに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、医療現場等において、ガーゼ及びパッド等の被覆固定、留置針やカテーテル等の処置具の固定、創傷や皮膚の被覆保護等には、防水性、透湿性、及び皮膚追従性等に優れた機能を備えたポリウレタンフィルム等のフィルム状素材を用いた医療用テープが選択されている。留置針(りゅうちしん)とは、採血・点滴の際に、静脈内に挿入し身体に固定して使用する注射針であり、一週間前後に渡る点滴等にも使用される。
【0003】
これらのフィルム状素材は、厚さ10μm程度と非常に薄いため、単独では平面形態を保持できず、自然環境下では丸まりやすい。そのため、平面形態を保持するための支持体として、フィルム状素材の伸縮性基材より剛性の高い保形用カバー、例えば、非伸縮性のプラスチックフィルムにフィルム状素材を積層させることで平面形態を保持し、しわ等を形成しないようにしている。
【0004】
なお、その製造工程では、平面形態を保持するための支持体とフィルム状素材を積層させる手段として、非伸縮性のプラスチックフィルムの上層(片面)に、ポリウレタンフィルムの原料となる混液(ウレタン樹脂液と架橋剤液)を塗布した後、硬化させ製膜することで、ポリウレタンフィルムを得て、平面形態を保持するための支持体とフィルム状素材を積層させる方法が汎用されている。
【0005】
しかし、上述の方法では、ポリウレタンフィルムの製膜と支持体との積層を同時に行うため、ポリウレタンフィルム内に、ポリウレタンフィルムの原料となる混液の硬化に伴う成形収縮によって残留した収縮力(内部応力)が発生する。以下、「製造過程において伸縮性基材内に残留した収縮力」を「残留収縮力」と称する。よって、上述の方法で得られたポリウレタンフィルムを医療用テープの伸縮性基材、非伸縮性のプラスチックフィルムを医療用テープの支持体として用いた医療用テープ、すなわち、「ポリウレタンフィルムの原料となる混液(ウレタン樹脂液と架橋剤液)を原料とし、フィルム状の伸縮性基材の製膜と上層に位置する支持体との積層を同時に行い、伸縮性基材の下層に粘着剤が塗布され、最下層に非伸縮性の剥離紙を備え、伸縮性基材の上層に平面形態を保持するための支持体を備えた医療用テープ」では、伸縮性基材であるフィルム状素材に、成形収縮に伴う残留収縮力が存在することになる。すなわち、伸縮性基材が支持体に付着していない場合には、伸縮性基材は自由に収縮して残留収縮力を生じないが、伸縮性基材に支持体がよく付着していると、伸縮性基材は膜厚方向以外には自由に収縮できず、伸縮性基材と支持体との付着界面付近に残留収縮力が発生している。
【0006】
なお、支持体付き医療用テープの貼付手順は、1.剥離紙を取り除く。2.皮膚に貼付する。3.支持体を取り除く。となる。また、支持体付き医療用テープの残留収縮力は、剥離紙をすべて取り除いても消失せず、皮膚に貼付した後、支持体を取り除くことで放たれ、皮膚を持続的に収縮させる力となり、皮膚を収縮させるため、貼付期間中の持続的な皮膚刺激の原因となる。
【0007】
ここで、図1及び図2を用い、支持体付き医療用テープに存在する残留収縮力について説明する。図1は、支持体が二分された構造からなる支持体付き医療用テープを皮膚に貼付した後、親指側の支持体を取り除いた様子を示した説明図である。親指側の支持体及び小指側の支持体の下層に位置する伸縮性基材の状態を比較するため、親指側の支持体は、取り除いた状態であり、小指側の支持体は、取り除いていない状態である。皮膚に貼付した後、支持体を取り除いた親指側の伸縮性基材には、細かな皺が出現したが、支持体を取り除いていない小指側の伸縮性基材には、変化は確認できなかった。図2は、残りの支持体である、小指側の支持体を取り除いた状態を示しており、小指側の伸縮性基材にも細かな皺が出現している。このことは、支持体付き医療用テープでは、支持体を取り除いたことで伸縮性基材が支持体から解放されて収縮し、伸縮性基材に細かな皺を出現させたことを示しており、したがって、伸縮性基材には成形収縮に伴う残留収縮力が存在していたといえる。このように、支持体付き医療用テープでは、支持体を取り除くことで残留収縮力が放たれる。よって、支持体付き医療用テープに存在する成形収縮に伴う残留収縮力は、皮膚に貼付した後、支持体を取り除くことで、伸縮性基材を収縮させ、その結果、伸縮性基材に細かな皺を出現させることで確認できる。
【0008】
なお、医療テープ業界では、製品の取り扱い説明書等において、必ず「皮ふ刺激の原因となりますので、引っ張らずに(伸ばさずに)、貼ってください」といった注意喚起がおこなわれている。このことから、医療テープ業界において、伸縮性医療テープの伸縮基材部を「引き伸ばした状態」で皮膚に貼付することの危険性については、当業者常識として十分に理解していると推察される。また、プラスチック業界において、非伸縮性の支持体(プラスチックフィルム等)の上層に、溶液ポリマーを塗布し、乾燥させ、ポリウレタンフィルムの製膜と支持体との積層を同時に行えば、成形収縮に伴う残留収縮力(内部応力)がポリウレタンフィルム内に発生することは、当業者常識といえる。
【0009】
一方、医療テープ業界においては、支持体付き医療用テープの伸縮性基材部分であるポリウレタンフィルム内に、成形収縮に伴う残留収縮力が存在することに対する認識(当業者常識)は乏しいと推察する。仮に、医療テープ業界に成形収縮に伴う残留収縮力の存在についての認識(当業者常識)があり、残留収縮力が弊害を伴うと捉えているのであれば、製品の取り扱い説明書等に「伸縮性基材部分に実在する成形収縮に伴う残留収縮力」に対する注意等の記載があるはずである。現在製造販売されている医療用テープの取り扱い説明書等には、「本品の使用中に皮膚障害(発疹・発赤、かゆみ等)と思われる症状が現れた場合には、使用を中止し、適切な治療を行ってください。」といった注意喚起のみで、使用者の体質的な内因と捉えかねないような問題を含む注意喚起の記載である。よって、使用者が目的をもって使用する医療用テープであるにもかかわらず、「伸縮性基材部分に実在する成形収縮に伴う残留収縮力」に伴う弊害を、使用者自身が認識することなく、さらに防ぐ術もないまま使用してしまうという問題があった。さらに、この問題の根幹となるのは、「成形収縮に伴う残留収縮力」は、プラスチック業界においては当業者常識であるが、同様の素材を用いた製品を製造販売する医療テープ業界においては、当業者常識ではないという矛盾が生じていることであり、医療テープ業界では、弊害を伴う成形収縮に伴う残留収縮力について対応がなされていないという問題があった。
【0010】
一部では、伸縮性医療用テープの伸縮性基材の貼付期間中の持続的な皮膚刺激を軽減するための医療用テープ(例えば、特許文献1参照)が提案され、残留収縮力を原因とする支持体付き医療用テープの貼付期間中の持続的な皮膚刺激が改善されている。しかし、該医療用テープでは、製造工程において、伸縮性基材部を弛ませた状態又は引き伸ばさない状態で伸縮性基材部と伸張防止部を積層させることが必須のため、該医療用テープの製造は、効率の観点から、製造設備や製造コスト等の問題が浮上した。ゆえに、従来の支持体付き医療用テープでは、成形収縮に伴う残留収縮力に対応する製造は容易ではなく、医療用テープの伸縮性基材部分に、成形収縮に伴う残留収縮力が生じるため、成形収縮に伴う残留収縮力を原因とする貼付期間中の持続的な皮膚刺激を軽減することは容易ではなく、このような不利を適切に解決できる手段がなかったのが現状である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】特許第6312915号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
本発明は、上記の事情に鑑み、特に支持体付き医療用テープにおいて、残留収縮力を原因とする貼付期間中の持続的な皮膚刺激を軽減する効果が高く、原因となる残留収縮力の程度が、肉眼的なレベルではなく、拡大鏡又は顕微鏡レベルといえるような軽微な刺激であっても、過敏に反応してしまう皮膚への貼付を目的とした支持体付き医療用テープを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記課題を解決するため、本発明者は鋭意検討を重ねた結果、本発明を完成させるに至った。すなわち、本発明の支持部付き医療用テープは、溶液ポリマーで製膜された伸縮性機能を有する伸縮性基材部と、前記伸縮性基材部を皮膚に貼付し保持する機能を有する粘着部と、前記粘着部を保護する機能を有する剥離部と、前記伸縮性基材部を支持する機能を有する支持部を備え、上層から前記支持部、前記伸縮性基材部、前記粘着部、及び前記剥離部の順に設けられている医療テープであって、製造工程において、前記粘着部の上層に前記伸縮性基材部の素材となる溶液ポリマーを塗布し、成形収縮終了前後に、前記伸縮性基材部の上層に前記支持部を積層し、使用時に、前記剥離部を取り除くことにより支持部付き医療用テープ内に存在する残留収縮力を減少させることを特徴とする支持部付き医療用テープである。
【発明の効果】
【0014】
本発明の医療用テープは、従来の支持体付き医療用テープの残留収縮力を原因とする皮膚を持続的に収縮させる力を減少させるための手段を医療用テープに機能として取り入れることで、支持部付き医療用テープの製造時及び使用時の2度にわたり、残留収縮力を減少させることができる。製造時の積層により、支持部付き医療用テープの残留収縮力を減少させ、さらに、皮膚への貼付前に、支持部付き医療用テープの残留収縮力を再度減少させることができ、残留収縮力を減少させた状態で、皮膚に貼付することができるため、支持部付き医療用テープの残留収縮力による皮膚を持続的に収縮させる力を減少させることができ、該残留収縮力を原因とする貼付期間中の持続的な皮膚刺激を軽減させることができる。このことにより、原因となる残留収縮力の程度が、肉眼的なレベルではなく、拡大鏡又は顕微鏡レベルといえるような軽微な刺激であっても、過敏に反応してしまう皮膚への貼付が可能となり、低刺激の医療用テープや貼付剤等を提供することができる。また、皮脂腺や汗腺の炎症、毛根やその周辺組織の炎症、圧迫によって生じる皮膚の細胞や毛細血管等に対する血液循環不良による医療関連器機圧迫創傷等を予防することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1図1は、段落[0007]に記載の残留収縮力の確認に用いた親指側の支持体を取り除いた様子を示す説明図である。
図2図2は、図1に示した説明図の残りの支持体である小指側の支持体を取り除いた様子を示す説明図である。
図3図3は、本発明の第1の実施の形態を示す医療用テープの製造過程を示す図であり、剥離部、粘着部及び伸縮性基材部の積層過程の様子を示す概略断面図である。
図4図4は、本発明の第1の実施の形態を示す医療用テープの概略断面図である。
図5図5は、本発明の第1の実施の形態を示す医療用テープの使用時の様子を示す概略断面図である。剥離部4を取り除き、伸縮性基材部1内に存在した残留収縮力が放たれ、伸縮性基材部及び粘着部が支持部と同様の長さになった様子を示す。
図6図6は、本発明の第1の実施の形態を示す医療用テープの使用時の様子を示す概略断面図である。図5に示す状態から、皮膚に貼付し、支持部3を取り除いた様子を示す。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明者は、鋭意研究を重ねていく過程で、従来の支持体付き医療用テープの残留収縮力の要因は、支持体付き医療用テープ製造時の成形収縮にあり、従来の支持体付き医療用テープの残留収縮力は、剥離紙をすべて取り除いても消失せず、皮膚に貼付した後、支持体を取り除くことで放たれ、皮膚を持続的に収縮させる力となって、皮膚を収縮させるため、支持体付き医療用テープによる貼付期間中の持続的な皮膚刺激となる。そこで、支持体付き医療用テープの製造工程において、ポリウレタンフィルムの製膜と支持体との積層を同時に行うことによって生じる成形収縮に伴う残留収縮力について、製造時及び使用時の観点から成形収縮に伴う残留収縮力を減少させる手段について着目した。
【0017】
ここで、創傷や皮膚の被覆保護等を目的として、従来の支持体付き医療用テープを使用した場合の皮膚刺激について説明する。皮膚表面には、皮脂腺や汗腺の開口部があり、毛が存在する。そのため、支持体付き医療用テープの残留収縮力は、皮脂腺や汗腺の開口部を持続的に変形させ、時に閉塞させる力となり、皮脂腺や汗腺の炎症(発赤、腫脹、発熱、疼痛、機能障害)を促すことも少なくない。また、皮膚を持続的に収縮させる力は、皮膚を収縮させ、持続的に毛を引き上げる力となり、毛根やその周辺組織に炎症を引き起こすことも稀ではない。
【0018】
次に、ガーゼ及びパッド等の被覆固定、留置針やカテーテル等の処置具の固定を目的として従来の支持体付き医療用テープを使用した場合の皮膚刺激について説明する。支持体付き医療用テープの残留収縮力は、留置針やカテーテル等を固定するに留まらず、留置針やカテーテル等の固定部位の皮膚を持続的に圧迫する力として作用し、これらの処置具を介し、皮膚の細胞や毛細血管等を持続的に圧迫する力に変わる。
【0019】
次に、皮膚の細胞や毛細血管等を持続的に圧迫する力について説明する。例えば、血管は全身に張り巡らされており、その総延長は10万km程度、地球2周半程度に及ぶ。その95パーセント程度が、毛細血管である。毛細血管の直径は、わずか7μm程度であり、その壁の厚さは1μm以下と極めて薄い。そのため、無自覚的な軽微な圧迫であっても、皮膚の毛細血管には容易に変形や閉塞が生じうる。
【0020】
また、全身の細胞に酸素を運ぶ役割を担う赤血球は、血液1マイクロリットル中に500万個程度存在し、直径が7から8μm程度、厚さが2μm程度の両面中央が凹んだ円盤状の固形物であり、変形することで直径7μm程度の毛細血管を通過している。しかし、固形物である赤血球の変形には限度があるため、毛細血管にわずかな変形が生じても通過が困難となり、赤血球が詰まることによって毛細血管の閉塞が生じることも稀ではない。その結果、細胞に血液循環不良に伴う酸素不足が生じることも少なくない。
【0021】
また、圧迫に伴う血液循環不良が起因となり、皮膚の組織や細胞が局部的に死ぬ疾患に褥瘡、いわゆる床ずれがある。実験的には、身体の同一箇所に2時間以上の持続的な圧が加わると褥瘡が発生するといわれている。そのため、医療現場においては、ベッド等で寝ている状態の寝たきり患者に対しては約2時間間隔、車椅子等に座った状態では約30分間隔で、体位の変換をおこなうことを推奨し、褥瘡の発生を予防している。このように、褥瘡は数時間単位の圧迫に伴う血液循環不良が起因となって生じる。
【0022】
さらに、近年の支持体付き医療用テープは、従来の伸縮性医療用テープより皮膚追従性、透湿性、防水性、皮膚粘着性等が飛躍的に向上しており、一週間前後の継続貼付が可能となった。そのため、ガーゼ及びパッド等の被覆固定、特に、一週間前後に渡る点滴などの留置針の固定に、支持体付き医療用テープが使用されることも少なくなく、処置具を覆い皮膚を持続的に収縮させる力は、留置針やカテーテル等の医療関連器機の固定部位の皮膚を、数日間持続的に圧迫する力として作用することとなり、固定部位に医療関連器機圧迫創傷等の発生が危惧される。これは、褥瘡発生を予防するための数時間という限度をはるかに超えた時間であると言える。
【0023】
また、粘着剤や伸縮性基材の品質の向上により、剥がれにくく長時間の固定が可能となり、一週間以上の貼付が可能な製品も登場している。このように、剥がれにくく長時間の固定に優れた製品では、取扱説明等に「本品をはがす時は、皮膚を傷めないよう体毛の流れに沿ってゆっくりはがしてください。」といった注意喚起が重要となり、製品をはがす時の皮膚刺激を軽減するためには、製品をはがすことなく、はがれるまで放置する手段が有効となる。しかし、はがれるまで放置するという手段を用いれば、貼付期間は自ずと長くなり、残留収縮力を原因とする貼付期間中の持続的な皮膚刺激は、増加の一途を辿ることになる。
【0024】
なお、軽微な刺激であっても、違和感や苦痛を訴える患者は少なくない。しかし、身体に軽微な刺激が持続的に加わると、刺激に対し感覚が鈍くなる「知覚鈍麻」が生じ、違和感や苦痛を訴える患者が減少する。このことは、一般に「慣れ」と呼ばれているが、身体に加わっていた刺激が消失したことを意味するものではなく、さらに、皮膚の毛細血管に生じた変形や閉塞、及び血液循環不良等が改善されたことではない。段落[0017]~[0023]で述べたところの残留収縮力の程度は、肉眼的なレベルではなく、拡大鏡又は顕微鏡レベルといえるような軽微な刺激であっても十分にその原因となりうる。
【0025】
このように、貼付期間中の持続的な皮膚刺激を軽減するためには、成形収縮に至る過程を考慮し、支持部付き医療用テープの製造時に、残留収縮力を生じさせないように積層させ、さらに、支持部付き医療用テープの使用時に、皮膚への貼付前に残留収縮力を放つことで、成形収縮に伴う残留収縮力による、皮膚を持続的に収縮させる力を減少させることが肝要となる。ここで、該支持部付き医療用テープの製造工程において、前記剥離部の上層に前記粘着部を備え、前記粘着部の上層に、前記伸縮性基材部の素材となる溶液ポリマーを塗布し、製膜する。このとき、溶液ポリマーの成形収縮に伴い、前記伸縮性基材部の断面は、下底より上底が短い台形状となる。台形状となった前記伸縮性基材部では、前記粘着部に付着している前記伸縮性基材部の下底では、溶液ポリマーの成形収縮に伴う残留収縮力が発生している。一方、前記伸縮性基材部の上底では、現時点では積層されていないため、付着しておらず、自由に収縮しており、前記粘着部に付着している前記伸縮性基材部の下底から前記伸縮性基材部の上底の膜厚方向に向かうにつれ、残留収縮力は減少した状態にある。よって、前記粘着部に接する前記伸縮性基材部の下底と前記伸縮性基材部の上底とでは、溶液ポリマーの成形収縮に伴う残留収縮力に差異が生じているため、長さに差異が生じ、台形状をなしており、伸縮性基材部の上底は、前記粘着部に接する前記伸縮性基材部の下底と比較すると、残留収縮力が減少した状態といえる。そして、溶液ポリマーの成形収縮終了前後に、前記伸縮性基材部の上底に、前記支持部を積層させ、該支持部付き医療用テープは完成する。
【0026】
上述のように製造された該支持部付き医療用テープの使用手順は、1.剥離部を取り除く。2.皮膚に貼付する。3.支持部を取り除く。となる。該支持部付き医療用テープでは、はじめに剥離部を取り除く。すると、該支持部付き医療用テープは、伸縮性基材部及び粘着部が縮む。これは、剥離部が取り除かれたことにより、前記粘着部は、前記伸縮性基材部の伸縮性に追従し、前記粘着部と付着している前記伸縮性基材部の下底に発生した残留収縮力が放たれ、伸縮性基材部内に存在していた残留収縮力が減少したことによる。該支持部付き医療用テープの伸縮性基材部及び粘着部の長さは、放たれた残留収縮力の分だけ縮み、短くなる。そして、皮膚に貼付し、支持部を取り除く。支持部と前記伸縮性基材部の上底は、溶液ポリマーの成形収縮終了前後に積層しているため、前記支持部と付着している前記伸縮性基材部の上底では、溶液ポリマーの成形収縮に伴う残留収縮力は減少させた状態にあり、支持部を取り除いても、前記伸縮性基材部が縮むという明確な変化は起こらない。該支持部付き医療用テープでは、皮膚への貼付前に、前記剥離部を取り除くことで、支持部付き医療用テープの残留収縮力を再度減少させることができ、残留収縮力を減少させた状態で、皮膚に貼付することができる。よって、支持部付き医療用テープの製造時及び使用時の2度にわたり、残留収縮力を減少させることは、従来の支持体付き医療用テープの残留収縮力を原因とする皮膚を持続的に収縮させる力を減少させ、貼付期間中の持続的な皮膚刺激を軽減するための有効な手段となる。
【0027】
これらの有効な手段を支持部付き医療用テープに機能として取り入れることで、支持部付き医療用テープの使用時に、支持部付き医療用テープの残留収縮力を減少させた状態で、皮膚に貼付し、支持部付き医療用テープの残留収縮力による皮膚を持続的に収縮させる力を減少させ、該残留収縮力を原因とする貼付期間中の持続的な皮膚刺激を軽減させることが可能となり、軽微な刺激であっても過敏に反応してしまう皮膚への貼付が可能となる。さらに、貼付期間中の持続的な皮膚刺激を原因とする皮膚トラブルや医療関連器機圧迫創傷等の予防に期待することができる。これらの観点から見ると、従来の支持体付き医療用テープにおいては、支持体付き医療用テープの成形収縮に伴う残留収縮力に対する考慮がなされていないことがわかる。
【0028】
そこで、本発明者は、従来の支持体付き医療用テープの残留収縮力を減少させる機能を取り入れた支持部付き医療用テープを提供するために、伸縮性基材部の材料として、粘着部の上層に塗布した後、硬化し製膜となる素材から、支持部と積層が可能な素材を選択し、さらに製膜後に、医療用として使用可能な防水性、透湿性、及び皮膚追従性等に優れた伸縮性を有する素材を選択した。次に、粘着部の材料として、伸縮性基材部の伸縮機能に追従する機能を有し、剥離時の糊残りや角質損傷等が少ない医療用粘着剤を選択した。また、支持部の材料として、伸縮性基材部を支持する機能を有する非伸縮性素材を選択し、さらに、剥離部の材料として粘着部を保護する機能を有する素材を選択し、各素材が有する機能を利用して、支持体付き医療用テープを構成することを着想した。
【0029】
これらの素材を組み合わせ、該支持部付き医療用テープの製造工程において、前記粘着部の上層に前記伸縮性基材部の素材となる溶液ポリマーを塗布し、成形収縮終了前後に、前記伸縮性基材部の上層に前記支持部を積層し、該支持部付き医療用テープの使用時に、剥離部を取り除くことにより該支持部付き医療用テープ内に存在する残留収縮力を減少させることにより、従来の支持体付き医療用テープの残留収縮力を原因とする皮膚を持続的に収縮させる力を減少させるための手段を該支持部付き医療用テープに機能として取り入れることができ、残留収縮力を原因とする貼付期間中の持続的な皮膚刺激を軽減させることで、軽微な刺激であっても過敏に反応してしまう皮膚への貼付を可能とする医療用テープを提供することができるとの知見を得て、本発明を完成するに至った。
【0030】
本発明の医療用テープは、下層より、前記剥離部、前記粘着部、前記伸縮性基材部、及び前記支持部の順に設けられている。そして、製造工程において、前記粘着部の上層に前記伸縮性基材部の素材となる溶液ポリマーを塗布し、製膜し、前記伸縮性基材部に伸縮性機能を備えさせ、成形収縮終了前後に、前記伸縮性基材部の上層に前記支持部を積層する。その結果、図3に示すように、前記伸縮性基材部の形状は、溶液ポリマーの成形収縮に伴い下底より上底が短い台形状となり、製膜と支持体との積層を同時に行う従来技術で製造された伸縮性基材部の残留収縮力と比較し、前記伸縮性基材部の下底部分には同等の残留収縮力が存在するが、上底部分の残留収縮力は減少または消失している。なお、前記伸縮性基材部の下底部分に存在する残留収縮力は、支持部付き医療用テープの使用時に、前記剥離部を取り除くことにより、減少または消失させることができる。
【0031】
前記伸縮性基材部の上層に前記支持部を積層する時期は、溶液ポリマーの成形収縮に伴い下底より上底が短い台形状となり、前記支持部を積層しても、前記伸縮性基材部の上底部分に残留収縮力が発生しない成形収縮が終了した後が望ましい。しかし、選択する支持部や溶液ポリマーの素材、及び製造設備や製造効率等を考慮し、適切であれば成形収縮終了前を選択してもよく、仮に、成形収縮終了前を選択し、伸縮性基材部の上底部分に残留収縮力が発生したとしても、ポリウレタンフィルムの製膜と支持体との積層を同時に行う従来技術より、残留収縮力を減少させることができる。そのため、前記伸縮性基材部の上層に前記支持部を積層する時期は、成形収縮終了前後であればよく、本発明の効果を奏することができる限りにおいて特に限定されるものではない。
【0032】
本発明の医療用テープは、水平を保った前記剥離部の上層に前記粘着部を備え、前記粘着部の上層に前記伸縮性基材部の素材となる溶液ポリマーを塗布し、製膜し、前記伸縮性基材部に伸縮性機能を備えさせる。このとき、前記伸縮性基材部の断面は、図3で示すように、溶液ポリマーの成形収縮に伴い下底より上底が短い台形状となるように構成され、その後に、前記伸縮性基材部の上層に前記支持部を積層する。このことで、支持部付き医療用テープの使用時に、剥離部を取り除くことにより該支持部付き医療用テープ内に存在する残留収縮力を減少させることができる。なお、減少させる残留収縮力の程度は、完全に消失させることが望ましい。しかし、原因となる残留収縮力の程度は、肉眼的なレベルではなく、拡大鏡又は顕微鏡レベルといえるような軽微なものであるため、減少させる残留収縮力は、軽微でもよく、軽微であっても本発明の効果を十分に奏することができる。
【0033】
以下、図面を用いて本発明の実施例を詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。本発明は、支持部付き医療用テープを構成する素材の適切な選択・組み合わせ及び、製造工程において、前記粘着部の上層に、後に前記伸縮性基材部となるポリウレタンフィルムの原料である混液(ウレタン樹脂液と架橋剤液)を塗布し、成形収縮が終了した後に(図3)、前記伸縮性基材部の上層に前記支持部を積層し(図4)、支持部付き医療用テープの使用時に、剥離部を取り除くことにより(図5)、支持部付き医療用テープ内に存在する残留収縮力を放ち、支持部付き医療用テープの残留収縮力による皮膚を持続的に収縮させる力を減少させ、残留収縮力を原因とする貼付期間中の持続的な皮膚刺激を軽減させることを基本とする。本発明は、支持部付き医療用テープの製造時及び使用時の2度にわたり、残留収縮力を減少させることが必須である。
【0034】
図3から図6に示す本発明の第1の実施の形態である支持部付き医療用テープでは、伸縮性基材部の原料となる混液(ウレタン樹脂液と架橋剤液)で製膜された伸縮性機能を有する伸縮性基材部1と、伸縮性基材部1を皮膚に貼付し保持する機能を有する粘着部2と、粘着部を保護する機能を有する剥離部4と、伸縮性基材部1を支持する機能を有する支持部3から構成される。
【0035】
図3は、本発明の第1の実施の形態である支持部付き医療用テープの製造過程を示す図であり、剥離部、粘着部及び伸縮性基材部の積層過程の様子を示す概略断面図であり、伸縮性基材部の原料となる混液(ウレタン樹脂液と架橋剤液)の成形収縮に伴い、伸縮性基材部が下底より上底が短い台形状となった様子を示す説明図である。第1の実施の形態である支持部付き医療用テープでは、支持部付き医療用テープの使用時に、剥離部を取り除くことにより、支持部付き医療用テープ内に存在する残留収縮力を放つため、製造工程において、粘着部2の上層に、後に伸縮性基材部1となるポリウレタンフィルムの原料である混液(ウレタン樹脂液と架橋剤液)を塗布し、製膜した。製膜後の伸縮性基材部1の断面は、図3で示すように、伸縮性基材部の原料となる混液(ウレタン樹脂液と架橋剤液)の成形収縮に伴い下底より上底が短い台形状となる。なお、符号1は、伸縮性基材部、符号2は、粘着部、符号4は、剥離部である。
【0036】
図4は、本発明の第1の実施の形態である支持部付き医療用テープの概略断面図である。図3に示した、下底より上底が短い台形状となった伸縮性基材部に、支持部を積層し、該支持部付き医療用テープは完成する。該支持部付き医療用テープは、図3で示すように、伸縮性基材部の原料となる混液(ウレタン樹脂液と架橋剤液)の成形収縮に伴い下底より上底が短い台形状になり、製膜が完了し、成形収縮が終了した後に、図4で示すように、伸縮性基材部1の上層に、伸縮性基材部1と同様の長さの支持部3を積層させている。このとき、伸縮性基材部1の下底部分には残留収縮力が存在している。なお、符号1は、伸縮性基材部、符号2は、粘着部、符号3は、支持部、符号4は、剥離部である。
【0037】
図5及び図6は、本発明の第1の実施の形態を示す医療用テープの使用時の様子を示す概略断面図である。該支持部付き医療用テープの使用手順は、1.剥離部を取り除く。2.皮膚に貼付する。3.支持部を取り除く。である。図5は、剥離部4を取り除き、伸縮性基材部1の下底部分に存在していた残留収縮力を限りなく消失させた状態を示す。図6は、図5に示す状態から、粘着部2で皮膚5に貼付し、支持部3を取り除いた様子を示す。なお、符号1は、伸縮性基材部、符号2は、粘着部、符号3は、支持部、符号5は、皮膚である。
【0038】
この支持部付き医療用テープでは、製造工程において、前記剥離部の上層に前記粘着部を備え、前記粘着部の上層に、前記伸縮性基材部の素材となる溶液ポリマーを塗布し、製膜する。このとき、溶液ポリマーの成形収縮に伴い、前記伸縮性基材部の断面は、下底より上底が短い台形状となる(図3)。台形状となった前記伸縮性基材部では、前記粘着部に付着している前記伸縮性基材部の下底では、溶液ポリマーの成形収縮に伴う残留収縮力が発生している。一方、前記伸縮性基材部の上底は、現時点では積層されていないため、付着しておらず、自由に収縮しており、前記粘着部に付着している前記伸縮性基材部の下底から前記伸縮性基材部の上底の膜厚方向に向かうにつれ、残留収縮力は減少した状態にある。よって、前記粘着部に接する前記伸縮性基材部の下底と前記伸縮性基材部の上底とでは、溶液ポリマーの成形収縮に伴う残留収縮力に差異が生じているため、長さに差異が生じ、台形状をなしており、伸縮性基材部の上底は、前記粘着部に接する前記伸縮性基材部の下底と比較すると、残留収縮力が減少した状態といえる。そして、溶液ポリマーの成形収縮が終了した後に、前記伸縮性基材部の上底に、前記伸縮性基材部の上底と同様の長さの前記支持部を積層させ(図4)、該支持部付き医療用テープは完成する。
【0039】
上述のように製造された該支持部付き医療用テープの使用手順は、1.剥離部を取り除く。2.皮膚に貼付する。3.支持部を取り除く。となる。該支持部付き医療用テープでは、はじめに剥離部を取り除く。すると、該支持部付き医療用テープは、伸縮性基材部及び粘着部が縮み、支持部と同様の長さになる(図5)。これは、剥離部が取り除かれたことにより、前記粘着部は、前記伸縮性基材部の伸縮性に追従し、前記粘着部と付着している前記伸縮性基材部の下底に発生した残留収縮力が放たれ、伸縮性基材部内に存在していた残留収縮力が減少したことによる。該支持部付き医療用テープの伸縮性基材部及び粘着部の長さは、放たれた残留収縮力の分だけ縮み、短くなり、伸縮性基材部及び粘着部は、支持部と同様の長さになる。そして、皮膚に貼付し、支持部を取り除く。支持部と前記伸縮性基材部の上底は、溶液ポリマーの成形収縮が終了した後に積層しているため、前記支持部と付着している前記伸縮性基材部の上底には、溶液ポリマーの成形収縮に伴う残留収縮力は減少(消滅)させた状態であり、支持部を取り除いても、前記伸縮性基材部が縮むという明確な変化は起こらない。
【0040】
該支持部付き医療用テープでは、皮膚への貼付前に、前記剥離部を取り除くことで、支持体付き医療用テープの残留収縮力を再度減少させることができ、残留収縮力を減少させた状態で、皮膚に貼付することができる。よって、支持部付き医療用テープの製造時及び使用時の2度にわたり、残留収縮力を減少させ、支持部付き医療用テープの残留収縮力を原因とする皮膚を持続的に収縮させる力を減少させ、貼付期間中の持続的な皮膚刺激を軽減することが可能となる。したがって、本発明の支持部付き医療用テープでは、従来の支持体付き医療用テープの成形収縮に伴う残留収縮力を原因とする皮膚を持続的に収縮させる力を減少させるための手段を医療用テープに機能として取り入れることで、支持部付き医療用テープの使用時に、支持部付き医療用テープの残留収縮力を減少させた状態で、皮膚に貼付し、支持部付き医療用テープの残留収縮力による皮膚を持続的に収縮させる力を減少させ、該残留収縮力を原因とする貼付期間中の持続的な皮膚刺激を軽減させることが可能となる。このことにより、原因となる残留収縮力の程度が、肉眼的なレベルではなく、拡大鏡又は顕微鏡レベルといえるような軽微な刺激であっても、過敏に反応してしまう皮膚への貼付が可能となり、低刺激の医療用テープや貼付剤等を提供することができる。
【0041】
具体的には、本発明の第1の実施の形態において、製造工程では、上質紙の表面に剥離剤をコーティングした剥離紙を剥離部4とし、その上層にアクリル系粘着剤を塗布し、粘着部2とし、その上層に、後に伸縮性基材部1となる伸縮性基材部の原料となる混液(ウレタン樹脂液と架橋剤液)を塗布した後、硬化させ製膜することで、伸縮性基材部1であるポリウレタンフィルムを得て、製膜が完了し、伸縮性基材部の原料となる混液(ウレタン樹脂液と架橋剤液)の成形収縮に伴い下底より上底が短い台形状となり、支持部を積層しても、伸縮性基材部1の上底部分に残留収縮力が発生しない時期である成形収縮が終了した後に、図示はしないが、支持部3の下層に、伸縮性基材部1の原料となる混液(ウレタン樹脂液と架橋剤液)を薄く塗布し、粘着剤の役割を担わせた状態で伸縮性基材部1の上底に積層した。
【0042】
また、第1の実施の形態では、伸縮性基材部の素材としてポリウレタンフィルムの原料となる混液(ウレタン樹脂液と架橋剤液)を用いたが、伸縮性基材部の材料としては、粘着部の上層に塗布し、硬化し製膜となった後に、支持部と積層が可能な溶液ポリマー素材であればよい。また、ガーゼ及びパッド等の被覆固定、留置針やカテーテル等の処置具の固定、創傷や皮膚の被覆保護等の用途に応じ、それぞれに適した機能を備えさせることが可能な溶液ポリマー素材であれば、その他の新素材等を用いてもよく、異なる溶液ポリマー素材を混合または積層してもよく、本発明の効果を奏することができる限りにおいて特に限定されるものではない。また、粘着部の素材は、アクリル系粘着剤を用いたが、伸縮性基材部を皮膚に貼付し保持する機能を有し、伸縮性基材部の伸縮機能に追従する機能を有し、医療用として使用可能な粘着剤であればよく、用途に応じ、粘着剤を塗布する部位は一部もしくは全部でもよく、素材やその形状による制限を受けない。また、支持部の素材として、伸縮性基材部を支持する機能を有する非伸縮性のプラスチックフィルムを、物理的に分離していない一枚板の状態で用いたが、伸縮性基材部を支持する機能を有していれば、支持部の剛性は任意でよく、例えば、中央から二枚に分割されていてもよく、波状の切り込みで分割されていてもよく、さらに、支持部及びその上層に他の機能を備えていてもよく、結果として、剥離紙を取り除いた後に、伸縮性基材部を貼付可能な状態に支持していれば、使用時に支持部の一部が伸縮性基材部から剥離してもよく、用途に応じ、その素材や形状による制限を受けない。
【0043】
また、第1の実施の形態では、伸縮性基材部に支持部を積層する時期を成形収縮が終了し、図3で示す、ポリウレタンフィルムの原料となる混液(ウレタン樹脂液と架橋剤液)の成形収縮に伴い下底より上底が短い台形状となり、支持部を積層しても、伸縮性基材部の上底部分に残留収縮力が発生しない時期である成形収縮が終了した後を選択し、図示はしないが、支持部と伸縮性基材部との間に、ポリウレタンフィルムの原料である混液(ウレタン樹脂液と架橋剤液)を極薄く塗布し、粘着剤の役割を担わせた状態で支持部と伸縮性基材部を積層した。しかし、使用する伸縮性基材部や支持部の素材、及び製造設備や製造効率等を考慮し、成形収縮終了前を選択して支持部を積層してもよく、仮に、成形収縮終了前を選択し、伸縮性基材部の上底部分に残留収縮力が発生したとしても、伸縮性基材部の製膜と支持体への積層を同時に行う従来技術より、残留収縮力を減少させることができる。なお、貼付期間中の持続的な皮膚刺激の原因となる残留収縮力の程度は、肉眼的なレベルではなく、拡大鏡又は顕微鏡レベルといえるような軽微なものであるため、減少させる残留収縮力は軽微でもよく、軽微であっても本発明の効果を十分に奏することができる。なお、ここでいう「成形収縮終了前後」とは、粘着部の上層に伸縮性基材部の素材となる溶液ポリマーを塗布し、製膜する過程において、溶液ポリマーの成形収縮が終了する前後の時期を呼ぶ。具体的には、溶液ポリマーの成形収縮が始まり、その上層に支持部を積層しても、支持部と伸縮性基材部の間に存在する残留収縮力が、従来技術で製造された支持体付き医療用テープの支持体と伸縮性基材部の間に存在する残留収縮力より、減少させることができると理論的に判断できる時期(成形収縮終了前)から、溶液ポリマーの成形収縮が終了し、その上層に支持部を積層しても、支持部と伸縮性基材部の間に残留収縮力が発生しないと理論的に判断できる時期(成形収縮終了後)を呼ぶ。また、剥離部の素材は、上質紙の表面に剥離剤をコーティングした剥離紙をを用いたが、粘着部を保護する機能を有していれば、用途やデザイン、利便性等に応じ、任意でよく、素材やその形状による制限を受けない。
【0044】
図3から図6に示した本発明の医療用テープは、いずれも本発明の基本的構造を備えており、このような構成としたことにより、従来の支持体付き医療用テープの成形収縮に伴う残留収縮力を原因とする皮膚を持続的に収縮させる力を減少させるための手段を医療用テープに機能として取り入れることで、支持部付き医療用テープの使用時に、支持部付き医療用テープの残留収縮力を減少させた状態で、皮膚に貼付し、支持部付き医療用テープの残留収縮力による皮膚を持続的に収縮させる力を減少させ、残留収縮力を原因とする貼付期間中の持続的な皮膚刺激を軽減させることができる。このことにより、原因となる残留収縮力の程度が、肉眼的なレベルではなく、拡大鏡又は顕微鏡レベルといえるような軽微な刺激であっても、過敏に反応してしまう皮膚への貼付が可能となり、低刺激の医療用テープや貼付剤等を提供することができ、皮脂腺や汗腺の炎症、毛根やその周辺組織の炎症、圧迫によって生じる皮膚の細胞や毛細血管等に対する血液循環不良による医療関連器機圧迫創傷等の予防に期待することが可能となる。
【0045】
以上、第1の実施の形態では、医療用テープの形状を長方形とした例について説明してきたが、医療用テープの形状は、用途に応じ自由な形状を選択できる。ロール形状やシート形状でもよく、身体の各部位に適した形状とすることもできる。また、該医療用テープは、剥離部、粘着部、伸縮性基材部、及び支持部からなる構成を基本とするが、用途やデザイン、利便性等に応じ、該医療用テープの一部に、医療用テープ各部位が有する機能のいずれも有しない部位を混在させることもでき、ガーゼ及びパッド等を備えさせてもよい。なお、本発明は、皮膚に密着して貼付することを基本としているが、場合によっては、皮膚を医療用粘着剤等から保護するための保護材等を介して医療用テープを貼付してもよい。
【0046】
また、残留収縮力は、すべてを消失させることが望ましいが、わずかに減少させた状態であってもよい。なぜなら、段落[0017]~[0024]で述べたように、本特許が解決しようとする残留収縮力の程度は、肉眼的なレベルではなく、拡大鏡又は顕微鏡レベルであるからである。本明細書では、医療用テープの製造から貼付に至るまでの過程を記しており、「使用時」と「貼付期間中」を以下のように定義している。「使用時」とは、医療用テープの使用手順に従い、剥離紙を取り除き、皮膚に貼付し、支持体を取り除く迄を表す。「貼付期間中」とは、医療用テープを継続して貼付している間を表す。
【0047】
なお、本発明の医療用テープの機能は、身体への貼付を目的とする医療用テープに有効に作用する。例えば、皮膚刺激過敏症患者は、軽微な皮膚刺激にも激しく反応するため、経皮吸収可能な薬物を含有する医療用テープの使用が見送られることも少なくなかった。しかし、本発明の医療用テープは、軽微な皮膚刺激を軽減できるため、粘着部に、経皮吸収可能な薬物を配合することで、貼付薬として使用することができる。また、本発明の医療用テープにパッドを備えることで、処置製品として使用することができる。
【産業上の利用可能性】
【0048】
本発明の支持部付き医療用テープは、従来の支持体付き医療用テープの成形収縮に伴う残留収縮力を原因とする貼付期間中の持続的な皮膚刺激を軽減する効果が極めて高く、軽微な刺激であっても過敏に反応してしまう皮膚への貼付を可能とし、貼付期間中の持続的な皮膚刺激を原因とする皮膚トラブルや医療関連器機圧迫創傷等の予防に期待することができ、低刺激の医療用テープや貼付剤等を提供することが可能となり、医療業界に貢献するところ大である。
【符号の説明】
【0049】
1 伸縮性基材部
2 粘着部
3 支持部
4 剥離部
5 皮膚
図1
図2
図3
図4
図5
図6
【手続補正書】
【提出日】2021-02-05
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
溶液ポリマーで製膜された伸縮性機能を有する伸縮性基材部と、前記伸縮性基材部を皮膚に貼付し保持する機能を有する粘着部と、前記粘着部を保護する機能を有する剥離部と、前記伸縮性基材部を支持する機能を有する支持部を備え、上層から前記支持部、前記伸縮性基材部、前記粘着部、及び前記剥離部の順に設けられている支持部付き医療用テープの製造方法であって、
当該医療用テープの製造工程において、前記粘着部の上層に前記伸縮性基材部の素材となる溶液ポリマーを塗布し、成形収縮終了前後に、前記伸縮性基材部の上層に前記支持部を積層する工程を備え
使用時に、剥離部を取り除くことにより支持体付き医療用テープ内に存在する残留収縮力を減少させることを特徴とする支持部付き医療用テープの製造方法