(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022050241
(43)【公開日】2022-03-30
(54)【発明の名称】光点を投影する方法、デジタルプラネタリウムシステム、投影制御装置及びそのプログラム
(51)【国際特許分類】
H04N 5/74 20060101AFI20220323BHJP
H04N 5/66 20060101ALI20220323BHJP
G03B 21/14 20060101ALI20220323BHJP
G03B 21/00 20060101ALI20220323BHJP
G09G 5/00 20060101ALI20220323BHJP
G09G 5/38 20060101ALI20220323BHJP
G09B 27/00 20060101ALI20220323BHJP
【FI】
H04N5/74 Z
H04N5/66 A
G03B21/14 E
G03B21/00 D
G09G5/00 510B
G09G5/00 510V
G09G5/00 550B
G09G5/38 A
G09B27/00 B
【審査請求】未請求
【請求項の数】13
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020156732
(22)【出願日】2020-09-17
(71)【出願人】
【識別番号】508067839
【氏名又は名称】有限会社大平技研
(74)【代理人】
【識別番号】110002354
【氏名又は名称】特許業務法人平和国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】大平 貴之
【テーマコード(参考)】
2C032
2K203
5C058
5C182
【Fターム(参考)】
2C032EB01
2K203FA77
2K203FA82
2K203FA93
2K203FA94
2K203FB04
2K203GB44
2K203GB53
2K203GB62
2K203KA36
2K203MA01
2K203MA26
5C058AB07
5C058BA05
5C058BA07
5C058BA23
5C058BA24
5C058EA02
5C058EA03
5C058EA12
5C058EA31
5C182AA04
5C182AA12
5C182AC03
5C182AC43
5C182BB04
5C182BB05
5C182CA01
5C182CB11
5C182CB42
5C182CB54
5C182CC24
5C182DA44
5C182DA65
(57)【要約】
【課題】マルチプロジェクションシステムにおいて、容易に良好な投影を実現する。
【解決手段】本投影方法は、複数の光点を投影する方法であって、複数の光点の各々の位置と明るさとに関する情報を含む光点データを取得することと、投影する光点の各々を何れの光点群映像に含ませるかの割当を決定することであって、光点の位置が重複領域にあたるときには、光点ごとに指定されて全て同じではない所定の割当条件に基づいて、当該光点を、当該重複領域を含む何れの光点群映像に含ませるかの割当を決定することと、各々の位置と明るさと割当とに基づいて、投影する光点の各々を、光点群映像の少なくとも何れかに描画し、複数の光点群映像のデータである複数の光点群映像データを生成することと、各々の光点群映像データに基づいて各々の光点群映像を各々のプロジェクタに投影させることとを含む。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数のプロジェクタによる投影領域が重なる重複領域を有するように設置された複数のプロジェクタの各々に光点群映像を投影させることで複数の光点を投影する方法であって、
複数の光点の各々の位置と明るさとに関する情報を含む光点データを取得することと、
投影する前記光点の各々を何れの前記光点群映像に含ませるかの割当を決定することであって、前記光点の前記位置が前記重複領域にあたるときには、前記光点ごとに指定されて全て同じではない所定の割当条件に基づいて、当該光点を、当該重複領域を含む何れの前記光点群映像に含ませるかの割当を決定することと、
各々の前記位置と前記明るさと前記割当とに基づいて、前記投影する光点の各々を、前記光点群映像の少なくとも何れかに描画し、複数の前記光点群映像のデータである複数の光点群映像データを生成することと、
各々の前記光点群映像データに基づいて各々の前記光点群映像を各々の前記プロジェクタに投影させることと
を含む投影方法。
【請求項2】
前記重複領域には、複数の境界領域が設けられており、
前記割当条件は、前記光点ごとに指定された前記境界領域の情報を含み、
前記光点の前記位置と指定された当該境界領域との位置関係に基づいて、何れの前記光点群映像に含ませるかの割当が決定される、
請求項1に記載の投影方法。
【請求項3】
前記光点の前記位置が指定された前記境界領域の内部であるとき、
前記光点は当該境界領域を含む前記光点群映像の何れにも含められ、
前記光点の輝度は、前記位置に基づいて複数の当該光点群映像に振り分けられる、
請求項2に記載の投影方法。
【請求項4】
前記境界領域の面積は零である、請求項2に記載の投影方法。
【請求項5】
前記光点の移動方向に応じて前記境界領域の位置が補正される、請求項2乃至4の何れかに記載の投影方法。
【請求項6】
前記光点の位置と指定された前記境界領域との前記位置関係が所定の条件を満たしてから所定期間は、前記光点は当該境界領域を含む前記光点群映像の何れにも含められ、
前記光点の輝度は、前記所定の条件を満たした後の経過時間に基づいて複数の当該光点群映像に振り分けられる、
請求項2乃至5の何れかに記載の投影方法。
【請求項7】
前記重複領域には、境界線が設けられており、
前記割当条件は、前記光点ごとに指定された前記境界線を越えてからの遅延時間の情報を含み、
前記光点の位置が前記境界線を越えてから指定された前記遅延時間が経過したときに、何れの前記光点群映像に含ませるかの割当が変更される、
請求項1に記載の投影方法。
【請求項8】
前記重複領域には、複数の前記境界線が設けられており、
前記割当条件は、前記光点ごとに指定された前記境界線の情報をさらに含み、
前記光点の位置が指定された前記境界線を越えてから指定された前記遅延時間が経過したときに、何れの前記光点群映像に含ませるかの割当が変更される、
請求項7に記載の投影方法。
【請求項9】
前記光点の位置が前記境界線を越えてから指定された前記遅延時間が経過したときから所定期間は、前記光点は当該境界線を含む前記光点群映像の何れにも含められ、
前記光点の輝度は、指定された前記遅延時間が経過した後の経過時間に基づいて複数の当該光点群映像に振り分けられる、
請求項7又は8に記載の投影方法。
【請求項10】
前記光点の移動方向に応じて前記境界線の位置が補正される、請求項7乃至9の何れかに記載の投影方法。
【請求項11】
請求項1乃至10の何れかに記載の投影方法を実行するプロセッサを備える投影制御装置。
【請求項12】
請求項11に記載の投影制御装置と、
前記複数のプロジェクタと
を備えるデジタルプラネタリウムシステム。
【請求項13】
投影制御装置に請求項1乃至10の何れかに記載の投影方法を実行させるためのプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光点を投影する方法、デジタルプラネタリウムシステム、投影制御装置及びそのプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
プロジェクタを用いたデジタルプラネタリウムが知られている。デジタルプラネタリウムでは、複数のプロジェクタを用いたマルチプロジェクションシステムにより、ドーム型スクリーンの全面に高解像度の映像や星を投影することが行われる。複数のプロジェクタを用いることで、単一のプロジェクタを用いるよりも、高解像度で鮮明な映像や星空が再現される。
【0003】
マルチプロジェクションシステムでは、異なるプロジェクタによる投影映像同士の継ぎ目を目立たないようにすることが行われる。例えば、特許文献1には次のような技術が開示されている。この技術では、隣接する投影映像同士がわずかに重なり合うように位置関係が正確に合わせられる。重なり合う部分については、それぞれの映像の輝度を端に向かうほど低くするようになだらかに変化させ、かつ、重なり合った結果に生じる輝度を単一のプロジェクタで投影される場合の輝度と等しくなるようにする。このようにすることで、継ぎ目部分が目立たなくなる。
【0004】
このような技術では、投影位置にずれが生じると重なり合う部分で映像が二重に見えてしまうため、正確に位置を合わせることが重要である。特に、デジタルプラネタリウムで投影される星々の微細な点の映像では、位置ずれは目立ちやすい。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
マルチプロジェクションシステムにおいて、隣接する投影映像同士の位置関係を正確に合わせる負担は大きく、負担軽減が求められている。
【0007】
本発明は、マルチプロジェクションシステムにおいて、容易に良好な投影を実現することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の一態様によれば、投影方法は、複数のプロジェクタによる投影領域が重なる重複領域を有するように設置された複数のプロジェクタの各々に光点群映像を投影させることで複数の光点を投影する方法であって、複数の光点の各々の位置と明るさとに関する情報を含む光点データを取得することと、投影する前記光点の各々を何れの前記光点群映像に含ませるかの割当を決定することであって、前記光点の前記位置が前記重複領域にあたるときには、前記光点ごとに指定されて全て同じではない所定の割当条件に基づいて、当該光点を、当該重複領域を含む何れの前記光点群映像に含ませるかの割当を決定することと、各々の前記位置と前記明るさと前記割当とに基づいて、前記投影する光点の各々を、前記光点群映像の少なくとも何れかに描画し、複数の前記光点群映像のデータである複数の光点群映像データを生成することと、各々の前記光点群映像データに基づいて各々の前記光点群映像を各々の前記プロジェクタに投影させることとを含む。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、マルチプロジェクションシステムにおいて、容易に良好な投影を実現できる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】
図1は、一実施形態に係るデジタルプラネタリウムの構成例の概略を示す図である。
【
図2】
図2は、2台のプロジェクタで映像を投影する状態を模式的に示す図である。
【
図3】
図3は、第1実施形態に係る投影制御装置の動作の一例の概略を示すフローチャートである。
【
図4】
図4は、第1実施形態に係る光点データの構造の一例の概略を示す図である。
【
図5】
図5は、第2実施形態に係る動作について説明するための模式図である。
【
図6】
図6は、第2実施形態に係る投影制御装置の動作の一例の概略を示すフローチャートである。
【
図7】
図7は、第3実施形態に係る光点データの構造の一例の概略を示す図である。
【
図8】
図8は、第1の星と第2の星とが重複領域近傍を共に右側に境界線を超えて移動していく様子を模式的に示す図である。
【
図9】
図9は、第3実施形態に係る投影制御装置の動作の一例の概略を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0011】
[第1実施形態]
〈デジタルプラネタリウムの構成〉
第1実施形態について図面を参照して説明する。
図1は、第1実施形態に係るデジタルプラネタリウムシステム1の構成例の概略を示す図である。本実施形態のデジタルプラネタリウムシステム1は、半球形状を有するドームの内面に設けられたドーム型スクリーン50に星空、景色その他の映像を投影する。ドーム型スクリーン50に高解像度で鮮明な星空などの映像を投影するために、デジタルプラネタリウムシステム1は複数のプロジェクタ40を備えている。複数のプロジェクタ40を用いるいわゆるマルチプロジェクションにより、ドーム型スクリーン50の全面に映像が投影される。
【0012】
プロジェクタ40は、一般的なビデオプロジェクタと同様のプロジェクタである。プロジェクタ40は、プロジェクタ40に入力される映像データに基づいて、プロジェクタ40の光源から導かれた光を変調して映像を表す映像光を生成する。プロジェクタ40は、この映像光を、投影レンズを介してドーム型スクリーン50に投影する。
【0013】
デジタルプラネタリウムシステム1は、データ提供装置30と、投影制御装置10とを備える。データ提供装置30は、ドーム型スクリーン50に投影される映像の元データを提供する。投影制御装置10は、データ提供装置30によって提供される元データに基づいて各々のプロジェクタ40によって投影される映像のデータを生成し、各々のプロジェクタ40に映像のデータを提供し、各々のプロジェクタ40の動作を制御する。
【0014】
デジタルプラネタリウムシステム1が投影する映像としては、星空の映像、夜景と星空とを含む映像、星空に星座の画像が重ねられた映像、宇宙船と星空との映像、その他の様々な映像などが想定される。データ提供装置30は、デジタルプラネタリウムシステム1が投影する元データを提供する。デジタルプラネタリウムシステム1が投影する映像は、少なくとも星などの光点の映像を含む。データ提供装置30は、恒星や惑星を含む星などの光点を表す元データとして、複数の光点の各々の位置と明るさとに関する情報を含む光点データを提供する。光点データは、星を表す光点に限らず、夜景に含まれる光源に関する光点のデータを含んでいてもよい。また、データ提供装置30は、夜景などを表す元データとして、画素ごとの輝度値の情報を含む画像データをさらに提供してもよい。画像データは静止画であってもよいが、動画であってもよい。光点データも時間と共に変化するデータであってよい。
【0015】
映像の元データは、データ提供装置30から投影制御装置10に入力される。投影制御装置10は、入力された元データに基づいて、プロジェクタ40に入力される投影映像を表す映像データを作成する。データ提供装置30は、映像再生装置、コンピュータ、その他の機器であり得る。データ提供装置30と投影制御装置10とは、有線で接続されても、無線で接続されてもよく、データ提供装置30は遠隔地にありネットワークを介して投影制御装置10に接続されてもよい。
【0016】
投影制御装置10は、Central Processing Unit(CPU)、Application Specific Integrated Circuit(ASIC)、Field Programmable Gate Array(FPGA)、Graphics Processing Unit(GPU)等のプロセッサや、メモリや各種インターフェースなどの素子や装置を含む。このプロセッサは、プログラムにより、又はハードウェアにより、所定の動作を行う。投影制御装置10は、データ取得部12、割当決定部14、映像生成部16、映像出力部18等といった機能を備える。
【0017】
後に詳述するように、例えば、データ取得部12は、データ提供装置30から、星を表す情報として、複数の光点の各々の位置と明るさとに関する情報を含む光点データを取得する。割当決定部14は、投影する各々の光点について、複数のプロジェクタ40の何れによって投影するかという割当を決定する。なお、例えば複数のプロジェクタ40の何れの投影領域からも外れている光点など、光点データに含まれていても投影する必要がない光点については、何れのプロジェクタ40にも割り当てられなくてもよい。その結果、当該光点は、投影されないことになる。光点の割当にあたって、特に、後述するように複数のプロジェクタ40によって映像が投影される領域である重複領域内に光点があるとき、当該光点は、それらプロジェクタ40の何れによっても投影可能である。割当決定部14は、光点の位置が重複領域内であるとき、所定の割当条件に基づいて、何れのプロジェクタで投影するかを決定する。ここで、割当条件は複数設けられており、光点ごとに複数の割当条件のうちの何れかが指定されている。すなわち、割当条件は全ての光点で同じではなく、複数の光点は、互いに割当条件が異なる複数のグループに分けられ、異なるグループに属する光点では、割当条件が異なることになる。このようにして、割当決定部14は、重複領域内に位置する光点を、当該重複領域を含む複数の映像の何れに含ませるかの割当を決定する。
【0018】
映像生成部16は、投影する各々の光点について、光点データに含まれる位置と明るさと、割当決定部14によって決定された割当とに基づいて、少なくとも何れかのプロジェクタ40によって投影される映像に各々の光点を描画する。このようにして、映像生成部16は、光点を含むの映像のデータである光点群映像データを、プロジェクタ40毎に生成する。すなわち、映像生成部16は、複数の光点群映像データを生成する。映像出力部18は、各々の前記光点群映像データに基づいて、各々のプロジェクタ40に光点群映像を投影させる。
【0019】
このようにして、投影制御装置10の制御下で、データ提供装置30から提供されたデータに基づいて、プロジェクタ40は、星などの光点の映像を投影する。星の映像に限らず、景色や想像上の映像などの他の映像も、同様に、プロジェクタ40によって投影される。すなわち、データ提供装置30からそのデータが提供されると、投影制御装置10は、位置に基づき何れのプロジェクタ40によって投影するかを割り当てる。投影制御装置10は、対応する映像データを各々のプロジェクタ40に入力する。プロジェクタ40は、入力された映像データに基づいて映像を投影する。もちろん、景色や想像上の映像などの他の映像と光点の映像とが重畳された映像データが作成され、それに基づく映像が投影されてもよい。
【0020】
〈デジタルプラネタリウムシステムの動作〉
デジタルプラネタリウムシステム1の動作について説明する。ここでは説明を簡単にするために、2台のプロジェクタ40で映像を投影する場合を例に挙げて説明する。プロジェクタ40の台数が増えても、デジタルプラネタリウムシステム1としての動作は同様である。
【0021】
図2は、第1プロジェクタ41と第2プロジェクタ42との2台のプロジェクタで映像を投影する場合を模式的に示す図である。第1プロジェクタ41によって映像が投影されるドーム型スクリーン50上の領域を第1領域61と称することにする。第2プロジェクタ42によって映像が投影されるドーム型スクリーン50上の領域を第2領域62と称することにする。この例では、第1領域61が左側に、第2領域62が右側に、両領域が隣接して配置されている。第1領域61と第2領域62とは一部で重なり合っており、その領域を重複領域65と称することにする。また、第1領域61のうち重複領域65を除く領域を第1専有域63と称することにする。第1専有域63は、第1プロジェクタ41のみによって映像が投影される領域である。第2領域62のうち重複領域65を除く領域を第2専有域64と称することにする。第2専有域64は、第2プロジェクタ42のみによって映像が投影される領域である。重複領域65は、第1プロジェクタ41と第2プロジェクタ42との両方によって映像が投影される領域である。第1プロジェクタ41と第2プロジェクタ42との2台のプロジェクタによって、第1専有域63と重複領域65と第2専有域64とに映像が投影される。第1プロジェクタ41によって投影される映像を第1映像と称し、第2プロジェクタ42によって投影される映像を第2映像と称することにする。
【0022】
図2に示す例は、第1の星S1から第9の星S9までの9つの星を含む映像が、第1専有域63と重複領域65と第2専有域64とに投影されている例である。第1の星S1、第2の星S2及び第3の星S3は、第1専有域63に含まれているので、第1プロジェクタ41が投影する第1映像に含まれる。第8の星S8及び第9の星S9は、第2専有域64に含まれているので、第2プロジェクタ42が投影する第2映像に含まれる。第4の星S4、第5の星S5、第6の星S6及び第7の星S7は、重複領域65に含まれているので、割当条件に基づいて、第1映像に含まれたり、第2映像に含まれたり、両映像に含まれたりする。
【0023】
図2に示す例では、割当条件のために、重複領域65内に3つの境界領域、すなわち、第1境界領域71、第2境界領域72及び第3境界領域73が設けられている。また、各々の星には、第1境界領域71、第2境界領域72及び第3境界領域73の何れかの境界領域が例えばランダムに指定されている。この例では、各々の星が重複領域65内にあるとき、当該星は、当該星について指定された境界領域に対して、左側に位置しているときは第1映像に含まれ、右側に位置しているときは第2映像に含まれる。その星について指定された境界領域の内部に位置しているときには、当該星は、第1映像と第2映像との両方に含まれ、その輝度は、第1映像における輝度と第2映像における輝度とを合計して当該星の輝度となるように調整される。また、その輝度は、境界領域内の左側ほど第1映像における輝度が高く、境界領域内の右側ほど第2映像における輝度が高くになるように、調整される。もちろん境界領域の数はいくつであってもよい。また、境界領域内の星の輝度の振り分けは、ここに示す例に限らず、他の方法によってもよい。
【0024】
ここでの説明の例では、第4の星S4では境界領域として第2境界領域72が指定されており、第5の星S5では境界領域として第1境界領域71が指定されており、第6の星S6では境界領域として第3境界領域73が指定されており、第7の星S7では境界領域として第2境界領域72が指定されているものとする。
図2に示した状態では、第4の星S4は、指定された第2境界領域72の左側にあるので、第1映像に含まれる。第5の星S5は、指定された第1境界領域71の右側にあるので、第2映像に含まれる。第7の星S7は、指定された第2境界領域72の右側にあるので、第2映像に含まれる。
【0025】
第6の星S6は、指定された第3境界領域73内にあるので、第1映像と第2映像との両方に含まれる。第6の星S6の第1プロジェクタ41によって投影される像の明るさと第2プロジェクタ42によって投影される像の明るさとは、何れも単一のプロジェクタ40によって投影される場合の第6の星S6の像の明るさよりも暗くなっている。第1プロジェクタ41によって投影される第6の星S6の像と第2プロジェクタ42によって投影される第6の星S6の像とが重なって、ちょうど第6の星S6の明るさを表すように、第1プロジェクタ41によって投影される像の明るさと第2プロジェクタ42によって投影される像の明るさとは調整される。
【0026】
第1映像における第6の星S6の輝度と第2映像における第6の星S6の輝度との比は、例えば、第3境界領域73の左側エッジELからの距離と右側エッジERからの距離との比によって決定される。例えば、第6の星S6が左側エッジELから右側エッジERまでを2:8に分割する位置にあるとき、第6の星S6の第1映像における輝度は、光点データが示す輝度の80%の輝度とされ、第6の星S6の第2映像における輝度は、光点データが示す輝度の20%の輝度とされる。
【0027】
図3は、投影制御装置10の動作の一例の概略を示すフローチャートである。ここで説明する動作は、投影制御装置10が、データ提供装置30から投影すべき星に関する光点データを取得して、その光点データに基づいて星に関する光点群映像データを作成してプロジェクタに出力する例である。ここで、投影制御装置10は、光点群映像データとして、
図2に示した例のように、第1プロジェクタ41による投影のための第1映像のデータと、第2プロジェクタ42による投影のための第2映像のデータとを作成するものとする。
【0028】
ステップS101において、投影制御装置10は、データ提供装置30から、投影すべき星の情報を示す光点データを取得する。光点データは、星の映像を描画するために必要な、少なくとも複数の光点(星)の各々の位置と明るさとに関する情報を含む。
【0029】
図4は、光点データの構造の一例の概略を示す図である。この例では、n個の星の各々について、星を描画すべき位置を示す座標と、星の明るさを示す値と、描画する星の色と、何れの境界領域を用いるかを示す境界番号との情報が含まれる。星の座標は、投影される映像の画面上の座標であってもよいし、赤道座標などの天文学上の座標値であってもよいし、天文学上の座標値から座標変換により画面上の座標に変換された座標であってもよい。座標が天文学上の座標値であるとき、投影制御装置10は、この座標値に基づいて、所定の座標変換により画面上の座標を算出する。また、ここに示すのは一例であり、例えば、星の色の情報が省略されたり他の情報が追加されたりするなど、適宜に変更されてよい。ここでは、光点データに独立した境界番号の情報が含まれる例を示したが、何れの境界領域を用いるかは、例えば投影制御装置10がデータの番号(例えば1~n)に基づいて所定のルールで算出することで求められてもよい。この場合、境界番号の情報は、実質的にデータ番号に含まれることになる。
【0030】
ステップS102において、投影制御装置10は、映像を作成するにあたって、各種パラメータを初期化する。例えば、星の番号を示す変数iが1に設定され、第1映像及び第2映像が初期化される。
【0031】
ステップS103において、投影制御装置10は、星番号iの星を処理対象に設定し、星番号iのデータを読み込む。ステップS104において、投影制御装置10は、星番号iの星の座標の情報に基づいて、当該星が位置する領域が、第1専有域63、第2専有域64、重複領域65の何れであるかを判定する。当該星が位置する領域が、第1専有域63であると判定されたとき、処理はステップS105に進む。ステップS105において、投影制御装置10は、第1映像に、その座標、明るさ、色などに基づいて、星番号iの星を描画する。その後、処理はステップS110に進む。
【0032】
最も単純な星の描画方法は、明るさを示す値の平方根に基づいて算出される直径の円を、該当する位置に描くことで行われる。このとき、色の情報が用いられる。例えば、算出される円の直径が1ピクセル以上のときには、その円の輝度値は最高値等に設定され、直径が1ピクセル未満となるときには、明るさに応じてそのピクセルの輝度値が変更される。円の直径が1ピクセル以上のときに輝度値は最高値に設定されなくてもよく、ピクセルごとに輝度値が異なっていてもよい。このようにして、面積と輝度とによって明るさが表現された星の映像が作成される。なお、ドーム型スクリーン50の曲面において歪みが生じないように、円ではなく楕円とするなど、光点の形状が適宜に変更されてもよい。また、光点の明るさが時間と共に変化してもよく、それによって星が大気の揺らぎで瞬く様子が表現されてもよい。
【0033】
ステップS104において、星番号iの星が位置する領域が、第2専有域64であると判定されたとき、処理はステップS106に進む。ステップS106において、投影制御装置10は、第2映像に星番号iの星を描画する。その後、処理はステップS110に進む。
【0034】
ステップS104において、星番号iの星が位置する領域が、重複領域65であると判定されたとき、処理はステップS107に進む。ステップS107において、投影制御装置10は、当該星の境界番号に基づいて、境界判定を行う。星番号iの星の位置が、境界番号で指定された境界領域よりも左側の第1領域側であると判定されたとき、処理はステップS105に進み、投影制御装置10は、第1映像に星番号iの星を描画する。その後、処理はステップS110に進む。星番号iの星の位置が、境界番号で指定された境界領域よりも右側の第2領域側であると判定されたとき、処理はステップS106に進み、投影制御装置10は、第2映像に星番号iの星を描画する。その後、処理はステップS110に進む。
【0035】
星番号iの星の位置が、境界番号で指定された境界領域の内部であると判定されたとき、処理はステップS108に進む。ステップS108において、投影制御装置10は、星番号iの星の位置に関して、左側エッジELからの距離と右側エッジERからの距離との比によって、輝度割合を決定する。ステップS109において、投影制御装置10は、決定した輝度割合に基づいて、第1映像及び第2映像に星番号iの星を描画する。例えば、星番号iの星の位置が、左側エッジELから右側エッジERまでを2:8に分割する位置であるとき、投影制御装置10は、第1映像における輝度を元の輝度の80%の輝度とし、第2映像における輝度を元の輝度の20%の輝度とする。その後、処理はステップS110に進む。
【0036】
ステップS110において、投影制御装置10は、星の番号を示す変数iに1を加算する。ステップS111において、投影制御装置10は、変数iが光点データに含まれる星の数nよりも大きいか否かを判定する。変数iが星の数nよりも大きくないとき、処理はステップS103に戻る。このようにして、n個の星が、第1映像又は第2映像に描画される。
【0037】
ステップS111において変数iが星の数nよりも大きいと判定されたとき、処理はステップS112に進む。すなわち、全ての星が第1映像又は第2映像に描画されたとき、ステップS112において、投影制御装置10は、作成した第1映像のデータを第1プロジェクタ41へ出力し、作成した第2映像のデータを第2プロジェクタ42へ出力する。第1映像のデータを取得した第1プロジェクタ41は、ドーム型スクリーン50に第1映像を投影する。第2映像のデータを取得した第2プロジェクタ42は、ドーム型スクリーン50に第2映像を投影する。その後、処理はステップS101に戻る。
【0038】
以上の動作を繰り返すことで、更新される光点データに基づいて、次々と星を表す映像が作成され、星を表す映像がドーム型スクリーン50に投影される。
【0039】
本実施形態に係るデジタルプラネタリウムシステム1によれば、複数のプロジェクタ40を使ったマルチプロジェクション方式で星空を投影する場合において、仮に複数のプロジェクタ40の投影領域にわずかな位置ずれが発生しても、複数のプロジェクタ40で映像が投影される境界領域が重複領域65よりも狭いので、星が二重に見える領域は狭くなる。その結果、重複領域65の全体で星が二重に見えるような不自然な現象を起こすことがない。また、各々の星に応じて境界領域が異なるので、二重に見える領域が一直線に並んで目立つなどといったこともない。また、各々の星に応じて境界領域が異なるので、移動する星の映像を投影する場合であっても、全ての星が一斉にあるいは次々と一つの境界線をまたぐ際にずれるといったこともない。このようにして、デジタルプラネタリウムシステム1は、見た目に自然な星空を投影することができる。
【0040】
複数台のプロジェクタを用いるマルチプロジェクションシステムにおいて、重複領域で複数のプロジェクタにより投影される映像が完全に一致するような位置合わせが正確に行われていれば、重複領域における問題は発生しない。しかしながら、投影位置がわずかにずれるなどすると、投影される映像がずれ、映像が二重に見えるなどの状況が生じることがある。このようなずれは、投影領域の調整のわずかなずれや、プロジェクタやドーム型スクリーンの経時的な形状変化によっても発生し得る。
【0041】
一般に、投影領域の位置の調整については、プロジェクタの設置時に設置者によってソフトウェアを利用した手作業の調整作業が行われたり、カメラを用いて投影領域を撮影してその位置関係の解析結果に基づく機械的な調整が行われたりしている。しかしながら、人手による調整作業は、特殊な技能を有する専門の技術者による多大な労力を必要とする。また、カメラを用いた自動校正も長時間を要し、校正作業中はプロジェクションシステムを使用することができない。このため、温度変化などにより生じ得る上映中の位置ずれには、自動校正を用いても対処することが難しい。
【0042】
重複領域における投影位置のずれがあっても、投影される映像が景色や人物などの一般的な映像であれば、それほど目立たない。しかしながら、星空の映像のように、微細な点の集合が投影される場合には、重複領域において星が二重に見えてしまうなど、投影される映像は、見た目に極めて不自然なものとなる。
【0043】
位置ずれが生じてしまう場合に、星が二重に見えることをできるだけ減らすため、重複領域を狭くすることも考えられる。しかしながら、重複領域を狭くすると、投影される星が静止している場合にはよいものの、星が移動する場合には、その重複領域を境に星の位置が突然変化するように見えるため、重複領域が目立ち、この場合も、投影される映像は、見た目に極めて不自然なものとなる。
【0044】
これに対して本実施形態に係るデジタルプラネタリウムシステム1によれば、境界領域が重複領域65よりも狭いので、星が二重に見える領域は狭くなり、かつ、星に応じて境界領域が異なるので、移動する星の映像を投影する場合であっても、ずれが目立たない。このようにして、デジタルプラネタリウムシステム1は、見た目に自然な星空を投影することができる。
【0045】
[変形例]
上述の例は、星ごとに境界領域が予めランダムに割り当てられているものである。しかしながらこれに限らない。星ごとの境界領域の割り当ては、星の座標に基づいて、所定の規則に従って決められていてもよい。あるいは、星ごとの境界領域の割り当ては、予め決まっておらず、動的に変更されてもよい。
【0046】
上述の例では、境界領域は幅を有していたが、境界領域は幅を持たず、境界領域の面積は零であってもよい。すなわち、境界領域は境界線であってもよい。
【0047】
また、上述の例では、境界領域内の位置に応じて第1映像と第2映像とへの輝度の割当が決定されていたがこれに限らない。例えば、星が境界領域に入ったこと、星が境界領域の中央に位置することなど、星の位置と境界領域との位置関係が所定の条件を満たしてから所定時間は、当該星は第1映像及び第2映像の両方に描画されてもよい。そのときの星の映像の輝度は、当該所定の条件満たした後の経過時間に基づいて第1映像と第2映像とに振り分けられてもよい。
【0048】
[第2実施形態]
第2実施形態について説明する。ここでは、第1実施形態との相違点について説明し、同一の部分については、同一の符号を付してその説明を省略する。第1実施形態では、境界領域は固定されていた。これに対して、第2実施形態では、映像の移動方向に応じて境界領域の位置が変化する。
【0049】
本実施形態では、境界領域が幅を有さずその面積が零である場合、すなわち、境界領域が境界線である場合を例に挙げて説明する。しかしながら、これに限らず、第1実施形態の場合と同様に、境界領域が幅を有していても同様である。
【0050】
本実施形態に係る動作について、
図5に示す模式図を参照して説明する。本実施形態では、
図5(a)に示すように、重複領域65内に星Sごとに設定された幅を有しない境界領域である境界線76が設けられている。
図5(a)では、図示した星Sに指定された境界線76が示されているが、複数の境界線が設定されており、星ごとに何れかの境界線が指定されている。星Sが第1映像に描画されるか第2映像に描画されるかは、境界線76に対する星Sの位置に基づく判定が行われる。原則としては、星Sが境界線76よりも左側に位置するとき、星Sは第1映像に描画される。星Sが境界線76よりも右側に位置するとき、星Sは第2映像に描画される。なお、
図5においては、第1映像に描画される星Sは白丸で、第2映像に描画される星は黒丸で、模式的に示されている。ここで、本実施形態では、特に、星Sが右側に移動している映像においては、判定の基準に本来の境界線76よりも右側にシフトさせるように補正した右シフト境界線77を用いる。
【0051】
したがって、
図5(b)~(e)に模式的に示すように、星Sが右シフト境界線77の左側に位置しているとき、星Sは第1映像に描画される。ソフトウェア上のわずかなパラメータの振動などによりデータ処理上、
図5(c)~(d)に示すように、星Sが境界線76を行き来することがある。このような場合、判定基準に本来の境界線76を用いた場合、星Sが第1映像に含まれたり、第2映像に含まれたり小刻みに変化することが生じ得る。これに対して本実施形態では、境界線76上の振動によってこのような小刻みな変化は生じない。
【0052】
図5(f)に模式的に示される星Sが右シフト境界線77の右側まで移動したとき、星Sは、第1映像ではなくて第2映像に描画される。ここで、星Sが右シフト境界線77の右側まで移動したとき、判定の基準となる境界線は、右シフト境界線77ではなくて、本来の境界線76に戻される。その結果、
図5(f)~(g)に模式的に示すように、右シフト境界線77上で星Sの位置が振動したとしても、星Sの位置は境界線76の右側であるので、星Sが第2映像に含まれたり第1映像に含まれたり小刻みに変化することはない。
図5(h)に示すように引き続き星Sが右側に移動するとき、星Sは、引き続き境界線76の右側にあるので、星Sは第2映像に含まれる。
【0053】
星Sが左方向に移動するときも同様である。星Sが左方向に移動するときは、境界線76が左方向にシフトされるように補正した左シフト境界線が判定の基準に用いられる。
【0054】
図6は、この第2実施形態に係る投影制御装置10の動作の一例の概略を示すフローチャートである。このフローチャートを参照して星が右又は左に移動している場合の投影制御装置10の動作の概略について説明する。
【0055】
ステップS201において、投影制御装置10は、各種パラメータを初期化する。これらパラメータには、各星の以前の座標を示す値も含まれる。ステップS202において、投影制御装置10は、データ提供装置30から、投影すべき星の情報を示す光点データを取得する。ステップS203において、投影制御装置10は、映像を作成するにあたって、各種パラメータを初期化する。例えば、星の番号を示す変数iが1に設定され、第1映像及び第2映像が初期化される。ステップS204において、投影制御装置10は、星番号iの星を処理対象に設定し、星番号iのデータを読み込む。
【0056】
ステップS205において、投影制御装置10は、星の移動方向を判定する。ここで、光点データに星の移動方向に関する情報が含まれていてもよいし、以前の星の座標に基づいて、星の移動方向が導出されてもよい。右方向への移動であるとき、処理はステップS206に進む。ステップS206において、投影制御装置10は、過去の履歴に基づいて、星番号iの星が、本来の境界線より境界線を右側にシフトさせた右シフト境界線よりも右側の第2領域側に既に入っていたか否かを判定する。第2領域側に入っているとき、処理はステップS210に進む。第2領域側に入っていないとき、処理はステップS207に進む。ステップS207において、投影制御装置10は、境界線を本来の境界線より右側にシフトさせて、境界線を右シフト境界線とする。その後、処理はステップS210に進む。
【0057】
ステップS205において、移動方向が左方向への移動であると判定されたとき、処理はステップS208に進む。ステップS208において、投影制御装置10は、過去の履歴に基づいて、星番号iの星が、本来の境界線より境界線を左側にシフトさせた左シフト境界線よりも左側の第1領域側に既に入っていたか否かを判定する。第1領域側に入っているとき、処理はステップS210に進む。第1領域側に入っていないとき、処理はステップS209に進む。ステップS209において、投影制御装置10は、境界線を本来の境界線より左側にシフトさせて、境界線を左シフト境界線とする。その後、処理はステップS210に進む。
【0058】
ステップS210において、投影制御装置10は、星番号iの星が境界線に対して第1領域側であるか第2領域側であるかを判定する。この判定の基準となる境界線は、星ごとに指定された本来の境界線に基づいて上述のようにして決定された、本来の境界線又は本来の境界線より右若しくは左にシフトされた境界線である。
【0059】
星番号iの星が位置する領域が第1領域側であると判定されたとき、処理はステップS211に進む。ステップS211において、投影制御装置10は、第1映像に星番号iの星を描画する。その後、処理はステップS213に進む。一方、星番号iの星が位置する領域が第2領域側であると判定されたとき、処理はステップS212に進む。ステップS212において、投影制御装置10は、第2映像に星番号iの星を描画する。その後、処理はステップS213に進む。
【0060】
ステップS213において、投影制御装置10は、現在の星番号iの星の位置に基づいて、この星の現在の座標に関する情報が以前の座標として記録される。ステップS214において、投影制御装置10は、星の番号を示す変数iに1を加算する。ステップS215において、投影制御装置10は、変数iが光点データに含まれる星の数nよりも大きいか否かを判定する。変数iが星の数nよりも大きくないとき、処理はステップS204に戻る。このようにして、n個の星が、第1映像又は第2映像に描画される。
【0061】
変数iが星の数nよりも大きいとき、処理はステップS216に進む。ステップS216において、投影制御装置10は、作成した第1映像のデータを第1プロジェクタ41へ出力し、作成した第2映像のデータを第2プロジェクタ42へ出力する。第1映像のデータを取得した第1プロジェクタ41は、ドーム型スクリーン50に第1映像を投影する。第2映像のデータを取得した第2プロジェクタ42は、ドーム型スクリーン50に第2映像を投影する。その後、処理はステップS202に戻る。以上の動作を繰り返すことで、更新される光点データに基づいて、次々と星を表す映像が作成され、星を表す映像がドーム型スクリーン50に投影される。
【0062】
本実施形態では、境界線をシフトさせることによって、わずかなソフトウェア上のパラメータの振動などが存在しても、同じ星について第1プロジェクタ41による投影と第2プロジェクタ42による投影とが小刻みに切り替えられて不自然な投影が行われることが回避される。このようにして、デジタルプラネタリウムシステム1は、見た目に自然な星空を投影することができる。
【0063】
[第3実施形態]
第3実施形態について説明する。ここでは、第1実施形態及び第2実施形態との相違点について説明し、同一の部分については、同一の符号を付してその説明を省略する。第1実施形態及び第2実施形態では、重複領域65に含まれる各々の星を第1映像に含ませるか第2映像に含ませるかの割当の決定に用いられる割当条件として、各々の星に複数の境界領域のうちの何れかが指定されており、境界領域と星との位置関係に基づいて、割当が決定されている。これに対して第3実施形態では、割当条件として各々の星に一つの境界線を越えてからの遅延時間が指定されており、境界線を越えてからの経過時間と指定された遅延時間との関係で割当が決定される。ここで、遅延時間は星ごとに指定されており、全ての星で遅延時間が同じではなく、遅延時間が同じ星もあるものの、星ごとに遅延時間が異なり得る。
【0064】
図7は、第3実施形態に係る光点データの構造の一例の概略を示す図である。この例では、n個の星の各々について、星を描画すべき位置を示す座標と、星の明るさを示す値と、描画する星の色との情報が含まれる。これと共に、n個の星の各々について、遅延時間として第1遅延時間t
1と第2遅延時間t
2との情報が含まれる。第1遅延時間t
1及び第2遅延時間t
2は、例えばいくつかの異なる値の中から星ごとに何れかの値が指定されている。あるいは、光点データに独立した遅延時間の情報が含まれているのではなく、遅延時間は、例えば投影制御装置10によってデータの番号(例えば1~n)に基づいて所定のルールで算出されてもよい。この場合、遅延時間の情報は、実質的にデータ番号に含まれることになる。本実施形態では、境界線を越えてから指定された第1遅延時間t
1までは、当該星は第1映像に描画される。第1遅延時間t
1から第2遅延時間t
2までは、当該星は、第1映像及び第2映像に描画されるが、輝度の比重は経過時間に応じて第1映像から第2映像に徐々に移されていく。第2遅延時間t
2が経過したら、当該星は、第2映像に描画される。
【0065】
図8は、第1の星S1と第2の星S2とが、重複領域65近傍を共に右側に境界線76を超えて移動していく様子を模式的に示す図である。この図に示すように、丸印で示した星は、時間経過とともに左から右に移動する。符号a,b,…,zのうち同じ符号を付した丸印は、同じ時点の第1の星S1と第2の星S2との位置を示す。また、白丸は第1映像に描画される星を示し、黒丸は第2映像に描画される星を示し、第1映像と第2映像との両方に描画される星は、色の濃さでその輝度の比を示す。
【0066】
図8に示す例では、第1の星S1に指定された第1遅延時間t
11及び第2遅延時間t
21と、第2の星S2に指定された第1遅延時間t
12及び第2遅延時間t
22とは互いに異なる。第2の星S2の第1遅延時間t
12は第1の星S1の第1遅延時間t
11よりも長く、第2の星S2の第2遅延時間t
22は第1の星S1の第2遅延時間t
21よりも長い。ただし、第1遅延時間t
1から第2遅延時間t
2までの時間は、第1の星S1の場合の方が長い。したがって、第1の星S1は、a~iでは第1映像に描画され、i~nでは第1映像及び第2映像の両方に描画されてその輝度の比重は徐々に第2映像に移され、n~wでは第2映像に描画される。第2の星S2は、a~qでは第1映像に描画され、q~tでは第1映像及び第2映像の両方に描画されてその輝度の比重は徐々に第2映像に移され、t~zでは第2映像に描画される。このように、第1の星S1と第2の星S2とで、描画される映像が第1映像から第2映像に切り替わる位置もタイミングも異なる。その結果、境界線を越えるときに一斉に切り替わる場合と比較して、境界線は目立たなくなる。
【0067】
図9は、この第3実施形態に係る投影制御装置10の動作の一例の概略を示すフローチャートである。ここでは、第1映像の第1領域61側から第2映像の第2領域62側に各星が移動する場合の処理が示されている。このフローチャートを参照して投影制御装置10の動作の概略について説明する。第2領域62側から第1領域61側へ各星が移動する場合も同様である。
【0068】
ステップS301において、投影制御装置10は、初期データを取得し、各種パラメータを初期化する。これらパラメータには、各星の境界線を越えてからの経過時間ti、各星の状態を示す状態フラグ等も含まれる。ここで、各星の状態には、境界線を越えておらず第1映像に描画される第1状態と、境界線を越えてから第2遅延時間t2が経過して第2映像に描画される第2状態と、第1状態から第2状態に切り替わる遅延状態とがある。初期データには、投映開始時の各星の初期位置の情報が含まれている。初期値として、状態フラグは、初期位置が境界線よりも第1領域61側のときは第1状態に設定され、初期位置が境界線よりも第2領域62側のときは第2状態に設定される。
【0069】
ステップS302において、投影制御装置10は、データ提供装置30から、投影すべき星の情報を示す光点データを取得する。ステップS303において、投影制御装置10は、映像を作成するにあたって、各種パラメータを初期化する。例えば、星の番号を示す変数iが1に設定され、第1映像及び第2映像が初期化される。ステップS304において、投影制御装置10は、星番号iの星を処理対象に設定し、星番号iのデータを読み込む。
【0070】
ステップS305において、投影制御装置10は、星番号iの星の状態を判定する。状態フラグが第2状態のとき、状態は第2状態と判定される。状態フラグが遅延状態のとき、状態は遅延状態と判定される。状態フラグが第2状態でも遅延状態でもないとき、星番号iの星が境界線を越えたか否かが判定される。境界線を越えていないとき、状態は第1状態と判定される。境界線を越えたとき、状態フラグは遅延状態に変更され、経過時間tiのカウントアップが開始され、遅延状態と判定される。
【0071】
ステップS305において状態が第1状態と判定されたとき、処理はステップS306に進む。ステップS306において、投影制御装置10は、第1映像に星番号iの星を描画する。その後、処理はステップS312に進む。
【0072】
ステップS305において状態が第2状態と判定されたとき、処理はステップS307に進む。ステップS307において、投影制御装置10は、第2映像に星番号iの星を描画する。その後、処理はステップS312に進む。
【0073】
ステップS305において状態が遅延状態と判定されたとき、処理はステップS308に進む。ステップS308において、投影制御装置10は、経過時間の判定を行う。星番号iの星が境界線を越えてからの経過時間tiが当該星に指定された第1遅延時間t1iより小さいとき、すなわち境界線を越えてから第1遅延時間t1iが経過していないとき、処理はステップS306に進み、投影制御装置10は、第1映像に星番号iの星を描画する。
【0074】
ステップS308において経過時間tiが第1遅延時間t1i以上第2遅延時間t2i未満であると判定されたとき、すなわち境界線を越えてから第1遅延時間t1iが経過しているが第2遅延時間t2iは経過していないとき、処理はステップS309に進む。
【0075】
ステップS309において、投影制御装置10は、第1遅延時間t1iから第2遅延時間t2iまでの時間に対する第1遅延時間t1iを経過してからの時間に基づいて、当該星を第1映像及び第2映像に描画する際のそれぞれの輝度の割合を決定する。ステップS310において、投影制御装置10は、決定した割合に基づいて、当該星を第1映像及び第2映像に描画する。その後、処理はステップS312に進む。
【0076】
ステップS308において経過時間tiが第2遅延時間t2i以上であると判定されたとき、すなわち境界線を越えてから第2遅延時間t2iが経過したとき、処理はステップS311に進む。ステップS311において、投影制御装置10は、状態フラグを第2状態に変更する。その後、処理はステップS307に進み、投影制御装置10は、第2映像に星番号iの星を描画する。
【0077】
ステップS312において、投影制御装置10は、星の番号を示す変数iに1を加算する。ステップS313において、投影制御装置10は、変数iが光点データに含まれる星の数nよりも大きいか否かを判定する。変数iが星の数nよりも大きくないとき、処理はステップS304に戻る。このようにして、n個の星が、第1映像又は第2映像に描画される。
【0078】
変数iが星の数nよりも大きいとき、処理はステップS314に進む。ステップS314において、投影制御装置10は、作成した第1映像のデータを第1プロジェクタ41へ出力し、作成した第2映像のデータを第2プロジェクタ42へ出力する。第1映像のデータを取得した第1プロジェクタ41は、ドーム型スクリーン50に第1映像を投影する。第2映像のデータを取得した第2プロジェクタ42は、ドーム型スクリーン50に第2映像を投影する。その後、処理はステップS302に戻る。以上の動作を繰り返すことで、更新される光点データに基づいて、次々と星を表す映像が作成され、星を表す映像がドーム型スクリーン50に投影される。
【0079】
本実施形態では、各星が第1映像の第1領域61側から第2映像の第2領域62側に移動する場合に、星ごとに、描画される映像が第1映像から第2映像に切り替わる位置もタイミングも異なる。その結果、境界線を越えるときに一斉に切り替わる場合と比較して、境界線は目立たなくなる。また、第1遅延時間t1iから第2遅延時間t2iまでの時間を適度に短くすることで、第1映像と第2映像とにずれがあっても、星が二重に見える領域は狭くなる。このようにして、デジタルプラネタリウムシステム1は、見た目に自然な星空を投影することができる。
【0080】
[変形例]
第1遅延時間t1iと第2遅延時間t2iとの差は、星ごとに一定でもよい。すなわち、第1映像への描画から第2映像への描画への切り替わり要する時間は、全ての星で共通していてもよい。また、第1遅延時間t1iと第2遅延時間t2iとを一致させた状態、すなわち、第1遅延時間t1iが経過したときに第1映像への描画から第2映像への描画へと瞬時に切り替えるようにしてもよい。
【0081】
また、適切な遅延時間は、重複領域65の幅や星の移動時間によって異なることがあるので、遅延時間は可変でもよい。例えば、星の移動速度に応じて光点データに記録された遅延時間に所定の定数を掛けることで、星がゆっくり移動しているときは遅延時間を長くし、星が速く移動しているときは遅延時間を短くしてもよい。また、遅延時間を待たずに星が重複領域65を逸脱するときは、逸脱する前又は逸脱した瞬間に第1映像から第2映像へと切り替えてもよい。
【0082】
また、上述の第3実施形態では、境界線は一つとしたが、第1実施形態及び第2実施形態と同様に、複数の境界線が設けられ、星ごとに何れかの境界線が指定されていてもよい。
【0083】
また、第3実施形態においても、第2実施形態と同様に、移動方向に応じて境界線の位置が変更されてもよい。
【0084】
以上、本発明について、好ましい実施形態を示して説明したが、本発明は、前述した実施形態にのみ限定されるものではなく、本発明の範囲で種々の変更実施が可能であることはいうまでもない。
【符号の説明】
【0085】
1 デジタルプラネタリウムシステム
10 投影制御装置
12 データ取得部
14 割当決定部
16 映像生成部
18 映像出力部
30 データ提供装置
40 プロジェクタ
41 第1プロジェクタ
42 第2プロジェクタ
50 ドーム型スクリーン
61 第1領域
62 第2領域
63 第1専有域
64 第2専有域
65 重複領域
71 第1境界領域
72 第2境界領域
73 第3境界領域
76 境界線
77 右シフト境界線
EL 左側エッジ
ER 右側エッジ