IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 株式会社丸高工業の特許一覧

<>
  • 特開-電動工具 図1
  • 特開-電動工具 図2
  • 特開-電動工具 図3
  • 特開-電動工具 図4
  • 特開-電動工具 図5
  • 特開-電動工具 図6
  • 特開-電動工具 図7
  • 特開-電動工具 図8
  • 特開-電動工具 図9
  • 特開-電動工具 図10
  • 特開-電動工具 図11
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022050257
(43)【公開日】2022-03-30
(54)【発明の名称】電動工具
(51)【国際特許分類】
   B25F 5/00 20060101AFI20220323BHJP
   B25B 21/02 20060101ALI20220323BHJP
   B25B 21/00 20060101ALI20220323BHJP
【FI】
B25F5/00 G
B25F5/00 A
B25B21/02 G
B25B21/00 510Z
B25B21/00 530Z
【審査請求】有
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020156758
(22)【出願日】2020-09-17
(11)【特許番号】
(45)【特許公報発行日】2021-04-07
(71)【出願人】
【識別番号】510118101
【氏名又は名称】株式会社丸高工業
(74)【代理人】
【識別番号】100099324
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 正剛
(72)【発明者】
【氏名】高木 一昌
(72)【発明者】
【氏名】高木 栄造
(72)【発明者】
【氏名】坂巻 一弥
【テーマコード(参考)】
3C064
【Fターム(参考)】
3C064AA02
3C064AB02
3C064AC02
3C064BA05
3C064BA08
3C064BB22
3C064BB43
3C064BB45
3C064BB48
3C064CA03
3C064CA06
3C064CA28
3C064CA43
3C064CA53
3C064CB08
3C064CB17
3C064CB33
3C064CB36
3C064CB52
3C064CB72
(57)【要約】
【課題】作業時の音の発生を抑制するとともに、駆動軸の回転の安定と稼働時に生じる熱を放熱することができる電動工具を提供する。
【解決手段】モータ3の駆動により軸回転するスピンドル4の軸回転力を先端工具ビット300へ伝達する伝達機構を備えている。モータ3と伝達機構との間には放熱用空間60が形成され、スピンドル4の少なくとも一部の表面は放熱用空間60において露出している。露出したスピンドル4の表面には、スピンドル4の軸回転を阻害することなく当該スピンドル4の熱を放熱用空間へ放散するとともに伝達機構のモータ方向への変位を規制する規制部材8が装着されている。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
モータと、前記モータの駆動により軸回転するスピンドルと、前記スピンドルの軸回転力を先端工具ビットへ伝達する伝達機構と、を備えた電動工具であって、
前記モータと前記伝達機構との間には放熱用空間が形成され、
前記スピンドルの少なくとも一部の表面は前記放熱用空間において露出しており、
前記露出した前記スピンドルの表面に、前記スピンドルの軸回転を阻害することなく当該スピンドルに生じた熱を前記放熱用空間へ放散するとともに稼働時の前記伝達機構のモータ方向への変位を規制する規制部材が装着されていることを特徴とする、
電動工具。
【請求項2】
前記放熱用空間は、前記露出した前記スピンドルの表面を底面とする、側面視で対向する前記モータと前記伝達機構との間に二次元視点で凹状に形成される三次元空間であることを特徴とする、
請求項1に記載の電動工具。
【請求項3】
前記伝達機構は、ハンマー部材と、前記先端工具ビットを保持するビット保持機構と、前記ハンマー部材と前記ビット保持機構との間を弾性的に連結する弾性連結部材とを含み、前記スピンドル、前記ハンマー部材及び前記ビット保持機構のそれぞれの回転中心軸線が直線上で一致することを特徴とする、
請求項1又は2に記載の電動工具。
【請求項4】
前記モータ、前記スピンドル及び前記伝達機構を収容するハウジングと、前記ハウジングの外表面に固定するサブハウジングをさらに備えており、
前記サブハウジングには、側面視で前記回転中心軸線と一致する直線状のガイド線を含むガイド機構が設けられていることを特徴とする、
請求項3に記載の電動工具。
【請求項5】
前記モータ又は先端工具ビットの回転トルクを検知する検知手段を備えており、
前記伝達機構は、前記検知手段が所定の回転トルクを超えたことを検知すると金属部分間を衝突させることなく前記伝達を停止することを特徴とする、
請求項1から4のいずれか一項に記載の電動工具。
【請求項6】
前記モータ、前記スピンドル、前記伝達機構及び前記ビット保持機構をその内部に収容するハウジングを備えており、前記ハウジングのうち、稼働時に操作者側となる後端部に通気孔を形成し、前記後端部と反対側の前端部に排気孔を形成するとともに、前記放熱用空間に向かう部位にファンを設け、前記ファンによって循環した空気が前記排気孔から外部へ排気されることを特徴とする、
請求項1から5のいずれか一項に記載の電動工具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、建造物の内装工事あるいは外装工事などに用いられるドリルドライバー系の電動工具に関する。
【背景技術】
【0002】
ドリルドライバー系の電動工具として、例えば特許文献1に記載された回転衝撃工具が知られている。この回転衝撃工具は、錆等によりネジ穴とほぼ一体化して緩めにくい状態になっているネジにハンマーで回転衝撃を与えて緩めやすくする打撃機構と、ハンマーの動きを阻止する打撃停止機構とを備える。打撃機構が作動すると、回転衝撃工具がインパクトドライバーとして使用可能となり、一方、打撃停止機構が作動すると、回転衝撃工具が、打撃音の無い電動ドリルとして使用可能となる。
【0003】
また、特許文献2に記載された電動工具は、インパクトドライバーとして動作させるモード、震動ドリルとして動作させるモード、震動のないドリルとして動作させるモード、クラッチ機構を使用するクラッチモードのいずれかを物理的な操作機構を用いて選択できるように構成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平6-182674号公報
【特許文献2】特開2013-35090号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
建造物の内装工事あるいは外装工事では、インパクトドライバーのように、ハンマーが被打撃部を打撃するときの金属同士の衝突時に生じる音、すなわち打撃音の大きさとその発生頻度が工期に重大な影響を及ぼす。そのような電動工具の使用が容認される時間帯や曜日が限られるためである。特許文献1に開示された回転衝撃工具や特許文献2に開示された電動工具には、インパクトドライバー以外の動作モードを選択することができるが、操作者(作業者)による誤ったモード選択などによって打撃音を発生させてしまう場合がある。
【0006】
また、特許文献1,2に記載されている各工具は、1台で複数の工具として使用可能にするため、全ての工具用の部品をハウジングの限られた収容スペースに配置している。そのため、ハウジング内が緻密になっている。モータを駆動源とする電動工具では、近年のモータの高出力化によって、電動工具の発熱量が大きくなってきており、冷却ファンが設けられる場合もあるが、部品の緻密化によって、発熱している部品に冷却風が十分に当たらず、効果的に冷却できない問題が生じる。
【0007】
本発明は、金属同士の衝突を生じさせることなく、稼働時に発生する熱を効率的に放散できる電動工具を提供することを目的とする。本発明の他の目的は、後述する実施の形態例から明らかになるであろう。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の実施の一態様となる電動工具は、モータと、前記モータの駆動により軸回転するスピンドルと、前記スピンドルの軸回転力を先端工具ビットへ伝達する伝達機構と、を備えた電動工具であって、前記モータと前記伝達機構との間には放熱用空間が形成され、前記スピンドルの少なくとも一部の表面は前記放熱用空間において露出しており、前記露出した前記スピンドルの表面に、前記スピンドルの軸回転を阻害することなく当該スピンドルに生じた熱を前記放熱用空間へ放散するとともに稼働時の前記伝達機構のモータ方向への変位を規制する規制部材が装着されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明の電動工具によれば、稼働時に生じる熱を効率的に放散できる電動工具を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本発明の第1実施形態に係る電動工具の構造説明図。
図2】本実施形態で用いるブラシレスモータの構造説明図。
図3】アンビルとハンマー部材の係合状況を示す構造説明図。
図4】規制部材の構造例を示す外観斜視図。
図5】(a),(b)は、規制部材の他の構造例を示す断面図。
図6】規制部材の他の形状例を示す断面図。
図7】規制部材の他の形状例を示す断面図。
図8】モータ軸に、ファンが取付固定されている状態を示す模式図。
図9】本発明の第2実施形態に係る電動工具の構造説明図。
図10】(a),(b)は、第2実施形態における水準器の状態説明図。
図11】(a),(b)は、他の構成の水準器の状態説明図。
【発明を実施するための形態】
【0011】
[第1実施形態]
図1は、本発明の第1実施形態に係る電動工具の構造説明図である。便宜上、XYZの直交三次元軸を図中に設定する。Z軸は高さ方向、X軸は前後方向、Y軸は幅方向を表す。この電動工具1は、例えばネジ等の締め付け工具として使用されるもので、外装材としてハウジング2を備えており、このハウジング2の内側に、モータ3、スピンドル4、軸回転力の伝達機構5、各種電材などが収容されている。
【0012】
ハウジング2は、作業者が片手で操作可能なサイズの硬質樹脂製のもので、一対のカバー20とグリップ部21とを有している。一対のカバー20の各々には、内部に複数の仕切が形成されており、互いに対向させてネジ止め固定することで、各仕切で画定された部品空間に、上記モータ3等の部品が収容されるようになっている。作業時に操作者側となるハウジング2の後端(-X方向)には、複数の通気孔201が形成されており、ハウジング2の前端(+X方向)には排気孔202が形成されている。これは、排気孔202から排出される空気が操作者に直接当たらないようにするためである。
【0013】
グリップ部21は、操作者が把持可能なサイズ及び形状に成形されており、その下端部には、電池パック7が離脱自在に装着されている。グリップ部21の内部には、後述する電力制御機能、電子クラッチ制御機能、モータ制御機能などを行う制御基板100が固定されている。制御基板100には、電池パック7からモータ3へ供給されている電力(振幅値:電池パック7が離脱状態のときはゼロ値)V1、モータ3から後述する回転トルク検出信号S10が入力される。また、制御基板100からモータ3へは、駆動電力(振幅値)V2と後述する指令信号S11が出力される。
【0014】
モータ3は、電動工具1の回転駆動源となる部品である。本実施形態では、発熱量が一般に直流モータよりも少ないブラシレスモータを用いた場合の例を説明する。すなわち、本実施形態で用いるモータ3は、図2に示すように、ロータ(回転子)31とステータ(固定子)32とを備えるブラシレスモータである。ロータ31は、磁石を備えていて、モータ軸33と一体に回転する。モータ軸33には回転トルクセンサ34が設けられている。回転トルクセンサ34は、モータ軸33の駆動時に生じる回転トルクを検出するセンサであり、検出結果を表す上記信号S10を制御基板100に出力する。
【0015】
ステータ32はハウジング2の所定の内部仕切部位に固定され、その内側にロータ31が回転可能に配置されている。ロータ31の前方には、モータ軸受け部35が設けられている。モータ軸受け部35は、モータ軸33の前部を支持している。モータ軸33は、モータ軸受部35から更に前方に所定長さだけ突出している。
【0016】
スピンドル4は、モータ3の駆動により軸回転する軸回転体である。上記の通り、モータ軸33がモータ軸受部35から前方に突出しているので、スピンドル4は、このモータ軸33の端部に連結することで、モータ3の稼働に連動して軸回転する。
スピンドル4は、金属製の柱状部分41と、モータ軸33と反対側の端部に形成されている係合突起42とを有する。係合突起42は柱状部分41と一体に成形されており、柱状部分41を中心として、対称に延び、外周部が弧状に成形されている。この係合突起42は、伝達機構5の係合機構に連結される。なお、モータ軸33とスピンドル4との連結機構と、スピンドル4の係合突起42と伝達機構5の係合機構との連結態様については、それぞれこの種のスピンドル4を有する電動工具において周知のものなので、その具体的な説明は省略する。スピンドル4の柱状部分41の外径は、モータ軸33よりは太く、両端部の連結機構が存在する部分よりは細い。
【0017】
本実施形態の電動工具1では、モータ3と伝達機構5との間のハウジング2の内部に、放熱用空間60が形成されるようにした。放熱用空間60は、スピンドル4のうち柱状部分41の表面を底面とする、側面視(Y軸からの視点)で対向するモータ3と伝達機構5(本例ではハンマー部材51)との間に二次元視点で凹状に形成される三次元空間である。スピンドル4が金属製なので、モータ3等で発生した熱は、モータ軸33のうち露出部分及びスピンドル4の柱状部分41の表面から放熱用空間60へ放散される。そして、ハウジング2の通気孔201から流入した空気が放熱用空間60を循環して排気孔202から外部へ直ちに放散される。そのため、スピンドル4のみならず、ハウジング2の内部で熱が発生し、あるいは他の部品を通じて伝熱している部分の温度上昇が抑制される。また、スピンドル4の柱状部分41が露出しているので、スピンドル4が変形していないかどうかや軸回転の駆動系統が正常に稼働しているかどうかを容易に観察することができる。
【0018】
軸回転力の伝達機構5は、スピンドル4の係合突起42とバネ55を介して弾性連結されるハンマー部材51と、先端工具ビット300を保持するためのビット保持機構の一例となるアンビル53とを含んで構成される。アンビル53は、先端工具ビット300を離脱自在に保持するためのチャック孔52を有する公知の工具部品であり、その回転軸線が、モータ軸33の回転軸線及びハンマー部材51の回転軸線と一致するように配置される。スピンドル4とハンマー部材51とをバネ55を介して弾性的に連結するのは、先端工具ビット300でネジ等を締め付ける際に生じる応力を吸収してネジ等を傷めないようにするためである。
【0019】
アンビル53のうちチャック孔52とは反対側の端部にはアンビル53の回転軸を挟んで対称となる直交方向に延びる第1係合部531と,第2係合部532とが形成されている。また、ハンマー部材51のうちアンビル53側の端部には、第1係合部531を収容する第1窪み部511と第2係合部532を収容する第2窪み部512とが形成されている。
【0020】
ハンマー部材51には、例えば、市販されているインパクト工具の打撃機構のうち比重が他の部材よりも高いハンマー本体の部分を摘出して用いることができる。ハンマー部材51は、略円柱状の鋼製であり、その直径はスピンドル4の柱状部分41の2倍以上である。また、後述する先端工具ビット300の基端部にできるだけ近い位置に、その中心軸(回転軸線)を中心に軸回転自在に取り付ける。
本実施形態の電動工具1は、インパクト工具ではないが、比重が相対的に高いインパクト工具用のハンマー部材を用いることで、軸回転時の慣性力を高めることができる。すなわち、例えば先端工具ビット300の回転中心軸線が、モータ3やスピンドル4の回転中心軸線からずれようとすると、慣性力によって回転中心軸線回りに回転しようとする力(トルク)が発生し、駆動時の軸回転速度を安定に保つことができる(いわゆるコマが安定にまわり続ける原理)。
【0021】
本実施形態の電動工具1では、上述した放熱用空間60において、露出しているスピンドル4の柱状部分41の表面に、規制部材8を装着する。稼働時には、先端工具ビット300の応力により、伝達機構5、特にハンマー部材51のモータ3方向への変位が生じる。規制部材8は、スピンドル4の回転を阻害することなくこの変位を一定量以下に規制するための部材(いわゆるスペーサ)であるが、本実施形態では、スピンドル4の柱部分42に生じた熱を放熱用空間60へ放散する役割も持つ。規制部材8は、熱伝導材料、例えば金型で製造された鋼製の一対の樋を対向させることで構成される。ただし、熱伝導性が阻害されない場合は、硬質樹脂材料で形成してもよい。規制部材8を鋼で形成する場合は、スピンドル4の機械強度の補強して、回転軸線の変動(振れ)を抑制することができる。
【0022】
規制部材8のX方向の長さは、放熱用空間60において露出するスピンドル4の柱状部分41の長さよりも僅かに小さい。これは、伝達機構5(ハンマー部材51)の僅かな変位を積極的に許容するためである。すなわち、規制部材8のX方向の長さは、バネ55による変位が許容されるほどそのバネ55が付勢されたときのハンマー部材51とモータ軸受け部33との距離(長さ)である。また、規制部材8を平面に展開したときの幅の合計は、スピンドル4の柱状部分41の外径とほぼ同じである。
【0023】
規制部材8は、交換自在に装着される。そのため、図4に示されるように、例えば同一形状及びサイズの一対の樋81をスピンドル4の柱状部分41の外周に被せた後、各樋81を締結具で固定する。一方の樋81の一対の端部811,813は、対向する他方の樋81の一対の端部812,814と互いに係合する形状に成形されている。
【0024】
規制部材8は、また、図5(a)、(b)に示されるように、それぞれスピンドル4の柱状部分41の表面に当接される複数のスペーサ部品81a~81jを集合させ、これらを相互に接着させるか、あるいは、位置決め後に締結具、例えば金属テープ85などを巻いて固定してもよい。
【0025】
あるいは、規制部材8を、図6に例示される線状又は棒状の導体86で構成し、この導体86をスピンドル4の表面に巻回してボルトとナットとで固定するようにしてもよい。さらに、図7に示すように、規制部材8を、基台部分が円弧状の放熱フィン87で構成し、この放熱フィン87をスピンドル4の表面に被せ、あるいは、貼り付けるようにしてもよい。図6及び図7の形状例の規制部材8では、スピンドル4の柱状部分41の表面を通じて伝達された熱と放熱用空間60との接触面積が、これらが無い場合に比べて格段に増えるため、放熱効果をさらに高めることができる。
【0026】
次に、図1及び図8を参照して、ハウジング2のグリップ部の内部に設けられる制御基板100について説明する。制御基板100は、絶縁性基板上に、電力制御回路101、モータ制御回路102、電子クラッチ制御回路103等を設けたものである。電力制御回路101は、電池パック7から出力される電力V1を監視しており、電力V1が所定値以下に低下した場合は、アラーム信号などを出力する。また、電池パック7から供給される電力V1を一部減圧して、モータ制御回路102及び電子クラッチ制御回路103の能動素子等へ供給する。
【0027】
モータ制御回路102は、ハウジング2の所定部位に設けられた図示しない操作パネルの電源オン操作によってモータ3に所定の設定レベルの電力V2を供給し、電源オフ操作あるいは後述する電子クラッチ制御回路103からの指令信号S11によって、モータ3への電力V2の供給を停止する。
【0028】
電子クラッチ制御回路103は、モータ制御回路102がモータ3を駆動したときの電力と、その電力が供給された時点の回転トルクセンサ34で検出された回転トルクとを取得する。そして、取得したこれらの回転トルクが予め操作パネル等に設定されたトルク設定値に達したかどうかを判別し、達したときは、モータ制御回路102へ、モータ3への電力供給を停止させる旨の指令信号S11を出力する。これにより、モータ3は回転を停止するので、伝達機構5から先端工具ビット300への回転駆動力の伝達が停止する。
つまり、回転トルクがトルク設定値に達したらモータを空転させてその回転駆動力が先端工具ビット300に伝達されないようにする機械的なクラッチ機能を、電気的な制御によって実現している。そのため、金属部分間の衝突のないクラッチ機能を実現することができる。
【0029】
トルク設定値は、操作者が任意に設定し、適宜変更することができる。この設定値の設定及び変更は、機械的機構の切り替えによるものではなく、電気的な制御によって実現されるため、簡易に実現することができる。
【0030】
[第2実施形態]
本発明の第2実施形態について説明する。図9は、第2実施形態に係る電動工具1’の構造説明図である。この電動工具1’は、第1実施形態の電動工具1のハウジング2の外表面にサブハウジング9を被せて固定したものである。他の構成部品については、第1実施形態の電動工具1と同じである。そのため、第1実施形態において説明した要素については、同じ符号を付してその説明を省略する。
【0031】
サブハウジング9は硬質樹脂製であり、側面部分にガイド機構が設けられている。ガイド機構は、側面視で回転中心軸線と一致する直線状のガイド線91と水準器92とを備えて構成される。ガイド線91は、操作者(作業者)に対して、先端工具ビット300の取付の際の位置決めや、作業時に力を加える方向(回転中心軸線の方向)をガイドするために使用される。
【0032】
水準器92は、回転中心軸線の水平に対する角度を確認する器具であり、ガラス容器の中に液体を入れたものである。電動工具1’が右肩下がりで傾いている場合は、図10(a)に示すように,水面921が右肩下がりとなり、電動工具1’が左肩下がりで傾いている場合は、図10(b)に示すように,水面921も左肩下がりとなる。そのため、電動工具1’の現在の水平面に対する角度を知ることができる。
【0033】
あるいは、水準器92に代えて、気泡を残した状態で液体を入れた水準器93を使用してもよい。この水準器93は、電動工具1’が右肩下がりで傾いている場合は、図11(a)に示すように,気泡931が左上に移動し、電動工具1’が左肩下がりで傾いている場合は、図11(b)に示すように,気泡が右上に移動する。そのため、気泡931の位置で電動工具1’の現在の水平面に対する角度を知ることができる。
【0034】
このような水準器92,93は、例えば建造物に対してネジを水平に打ち込んだり、あるいは緩めたりするときに使用される。
なお、水準器92,93は不可欠なものではないので、ガイド線91だけでガイド機構を構成することもできる。この場合、ガイド線91を1本のみならず、それぞれ異なる角度のものを複数設けてもよい。
また、サブハウジング9に、通気孔又は排気孔を形成してもよい。
【0035】
[変形例]
以上、本発明の実施の一形態例を説明したが、本発明は、さまざまな態様で実施することができる。例えば、本実施形態では、ハンマー部材51とスピンドル4の係合機構42とをバネ55で弾性連結させる例を説明したが、規制部材8によってアンビル53の第1係合部531と第2係合部532とがハンマー部材51の第1窪み部511及び第2の窪み部512から離脱しない範囲に動作を制限した公知のクラッチ機構を用いてもよい。
【0036】
また、本実施形態では、回転トルクセンサ34をモータ軸33に設けた場合の例を説明したが、スピンドル4の表面、規制部材8、あるいはアンビル53の基端付近に設けてもよい。
【0037】
また、ハウジング2のうち放熱用空間60付近、あるいは、放熱用空間60を指向する部位に、ファンが取付固定されていてもよい。これにより、ハウジング2の内部に、後端の通気孔201から前端の排気孔202へ向かう空気の循環作用が相まってモータ3等をより効率的に冷却することができる。
【0038】
本実施形態では、先端工具ビット300がドライバーであることを前提として説明したが、先端工具ビット300はドリルであってもよい。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
【手続補正書】
【提出日】2020-12-18
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】請求項5
【補正方法】変更
【補正の内容】
【請求項5】
前記モータ又は先端工具ビットの回転トルクを検知する検知手段を備えており、
前記伝達機構は、前記検知手段が所定の回転トルクを超えたことを検知すると前記伝達を停止することを特徴とする、
請求項1から4のいずれか一項に記載の電動工具。
【手続補正2】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】請求項6
【補正方法】変更
【補正の内容】
【請求項6】
前記モータ、前記スピンドル、前記伝達機構及び前記ビット保持機構をその内部に収容するハウジングを備えており、前記ハウジングのうち、稼働時に操作者側となる後端部に通気孔を形成し、前記後端部と反対側の前端部に排気孔を形成するとともに、前記放熱用空間に向かう部位にファンを設け、前記ファンによって循環した空気が前記排気孔から外部へ排気されることを特徴とする、
請求項3又は4に記載の電動工具。