(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022050278
(43)【公開日】2022-03-30
(54)【発明の名称】水回り用陶器板及び水回り設備
(51)【国際特許分類】
A47K 1/00 20060101AFI20220323BHJP
E03C 1/18 20060101ALI20220323BHJP
A47B 96/18 20060101ALI20220323BHJP
【FI】
A47K1/00 L
E03C1/18
A47K1/00 Q
A47B96/18 H
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020156795
(22)【出願日】2020-09-17
(71)【出願人】
【識別番号】591013045
【氏名又は名称】株式会社三彩
(74)【代理人】
【識別番号】100191189
【弁理士】
【氏名又は名称】浅野 哲平
(74)【代理人】
【識別番号】100199761
【弁理士】
【氏名又は名称】福屋 好泰
(72)【発明者】
【氏名】上田 和弘
【テーマコード(参考)】
2D061
【Fターム(参考)】
2D061BA01
2D061BB00
2D061BE00
2D061BE02
(57)【要約】
【課題】水回り設備の外観デザインの選択肢を増やすことが可能な水回り用陶器板及び当該水回り用陶器板を用いた水回り設備を提供すること
【解決手段】水回り設備に用いられる水回り用陶器板10において、素地12の厚み方向に開設された貫通孔16、18を有する構成とした。この水回り用陶器板10によれば、貫通孔16、18を利用して配管が必要な水槽部分や給水栓部分といった水回り部分を適当に組み合わせることができるので、水回り設備の構成部材に関する組合せのバリエーションが広がる。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
水回り設備に用いられる水回り用陶器板であって、
素地の厚み方向に開設された貫通孔を有することを特徴とする、水回り用陶器板。
【請求項2】
前記貫通孔の内周面に釉薬層が形成されていることを特徴とする、請求項1に記載の水回り用陶器板。
【請求項3】
前記水回り設備は、洗面台であり、
前記貫通孔には、水槽の下面側部分が配されることを特徴とする、請求項1または請求項2に記載の水回り用陶器板。
【請求項4】
前記貫通孔は、第1の貫通孔と、当該第1の貫通孔とは異なる位置にある第2の貫通孔とを含む、請求項1に記載の水回り用陶器板。
【請求項5】
前記第1の貫通孔および前記第2の貫通孔各々の内周面に前記釉薬層が形成されていることを特徴とする、請求項4に記載の水回り用陶器板。
【請求項6】
前記水回り設備は、洗面台であり、
前記第1の貫通孔には、水槽の下面側部分が配され、
前記第2の貫通孔には、給水栓部分が配されることを特徴とする、請求項4または請求項5に記載の水回り用陶器板。
【請求項7】
請求項1から請求項6のいずれか1項に記載の水回り用陶器板を備えた、水回り設備。
【請求項8】
前記貫通孔の周縁部分にシール材が設けられていることを特徴とする、請求項7に記載の水回り設備。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水回り設備に用いられる水回り用陶器板及び当該水回り用陶器板を用いた水回り設備に関する。
【背景技術】
【0002】
住宅や公共施設の水回り設備の一つである洗面台は、給水口の下方に設けられる水槽部分(洗面器や洗面ボウルとも呼ばれる)が天板部分と一体成形されたものが一般的である(例えば、特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、洗面台の天板部分と水槽部分を一体成形する場合、天板部分と水槽部分が同じ材質となるため、外観デザインのバリエーションが形状・色彩的な観点に限定されてしまう。その結果、材質的な観点における外観デザインが全体的に一様なものとなり、外観デザインの選択肢が限定的になる。
【0005】
上記した課題に鑑み、本発明は、水回り設備の外観デザインの選択肢を増やすことが可能な水回り用陶器板及び当該水回り用陶器板を用いた水回り設備を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の目的を達成するため、本発明は、水回り設備に用いられる水回り用陶器板であって、素地の厚み方向に開設された貫通孔を有することを特徴とする。
【0007】
また、前記貫通孔の内周面に釉薬層が形成されていてもよい。
【0008】
さらに、前記水回り設備は、洗面台であり、前記貫通孔には、水槽の下面側部分が配される構成であってもよい。
【0009】
あるいは、前記貫通孔は、第1の貫通孔と、当該第1の貫通孔とは異なる位置にある第2の貫通孔とを含むものであってもよい。
【0010】
この場合において、前記第1の貫通孔および前記第2の貫通孔各々の内周面に前記釉薬層が形成されていてもよい。
【0011】
さらに、前記水回り設備は、洗面台であり、前記第1の貫通孔には、水槽の下面側部分が配され、前記第2の貫通孔には、給水栓部分が配される構成であってもよい。
【0012】
また、本発明に係る水回り設備は、上記構成のうちの何れかを有する水回り用陶器板を備えることを特徴とする。
【0013】
この場合に、前記貫通孔の周縁部分にシール材が設けられていてもよい。
【発明の効果】
【0014】
上記構成を有する本発明の水回り用陶器板及び水回り設備によれば、素地の厚み方向に貫通孔が開設されているので、当該貫通孔を利用して配管が必要な水槽部分や給水栓部分といった水回り部分を適当に組み合わせることができる。これにより、水回り設備の構成部材に関する組合せのバリエーションが広がるので、水回り設備の外観デザインの選択肢を増やすことが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】第1実施形態に係る水回り設備の概略構成を示す正面図である。
【
図2】第1実施形態に係る水回り用陶器板の(a)斜視図および(b)A-A線断面の部分拡大図である。
【
図3】第2実施形態に係る水回り用陶器板に水槽部分を設置した場合の貫通孔部分の拡大断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明に係る水回り用陶器板及び水回り設備それぞれの実施形態について、水回り設備の一種である洗面台を例にとり、図面を参照しながら説明する。
【0017】
<第1実施形態>
図1に示すように、第1実施形態に係る洗面台100は、第1実施形態に係る水回り用陶器板10(以下、単に「陶器板」という。)を備える。陶器板10は、三方を壁面102,104,106で囲まれた空間の所要高さの位置に水平姿勢に支持された状態で固定されている。陶器板10の上面からは、給水栓108が突出して設けられている。また、陶器板10の上面には、同じく陶器製の洗面ボウル110が、給水栓108の給水口下方に配置されている。すなわち、洗面台100では、陶器板10が天板部分を構成し、この陶器板10とは別体の洗面ボウル110が水槽部分を構成している。
【0018】
陶器板10は、一枚ものの素地12の外面における所要部分に釉薬層14が形成された基本構成からなる。具体的には、
図2に示すように、素地12は、ある一定以上の厚みを有する板状に成形されている。素地12には、その厚み方向に貫通した2つの貫通孔16,18が開設されている。そして、素地12の裏側の主面12B以外の外面、すなわち、表側の主面12F、側周面12S、及び貫通孔16,18各々の内周面に釉薬層14が形成されている。なお、
図2では、貫通孔16部分の断面のみを概略的に示しているが、貫通孔18部分の断面も貫通孔16部分と同様の構成となっている。
【0019】
貫通孔16の内周面のうち、少なくとも表側の端縁部分16E(エッジ部分)は、実際には、ある程度丸みを帯びた(あるいは、面取りされた)形状をしている。そして、この貫通孔16の端縁部分16Eに洗面ボウル110の下面部分が接触した状態で支持されている。また、貫通孔16の空間部分には、洗面ボウル110の下面側の一部が配されている。なお、図示を省略しているが、洗面ボウル110の下部には、貫通孔16を利用して排水管が接続されている。このように、陶器板10が有する貫通孔16は、洗面ボウル110組み合わせるに際して、洗面ボウル110の下面側部分を支持する役割と、配管用の孔としての役割とを兼ね備えている。
【0020】
貫通孔18も、上記した貫通孔16同様、その内周面のうち、少なくとも表側の端縁部分は、ある程度丸みを帯びた(あるいは、面取りされた)形状をしている。そして、この貫通孔18を利用して、給水管と接続された給水栓108が取り付けられている。すなわち、貫通孔18には、配管を含めた給水栓108の取り付け用の孔としての役割がある。
【0021】
上記したように、陶器板10を洗面台100の天板として用いる場合、日常的に水が使用される環境下に置かれることとなる。水分は、カビの発生、ひいては、腐食の原因となるため、特に注意が必要である。この点、本実施形態の陶器板10では、素地12の表面部分のみならず、貫通孔16,18各々の内周面にも釉薬層14が形成されているため、日常的な使用環境下において、水分がしみ込みにくくなっている。これにより、別体構成の陶器製の洗面ボウル110を組み合わせやすく、水分に起因する腐食を生じ難くすることが可能となり、その結果、水回り設備の構成部材として好適に用いることができるのである。
【0022】
続いて、本実施形態に係る陶器板10の製造方法について説明する。陶器板10は、基本的には、従来と同様の方法により製造することが可能である。以下、各工程の一例を簡単に説明する。
【0023】
はじめに、原料となる粘土(陶土)を準備し、成形金型の型枠内に粘土を押し込んで一枚ものの板状をした生素地を成形する(成形工程)。続いて、板状に成形された生素地に貫通孔16,18を形成し(孔あけ工程)、孔のあいた生素地を所要期間乾燥させる(乾燥工程)。そして、乾燥工程を経た生素地を素焼きして素焼き素地を作り(素焼き工程)、素焼き素地の外面の所要部分に釉薬を塗る(施薬工程)。最後に、本焼き工程を経て、陶器板10が完成する。なお、上記した「孔あけ工程」は、乾燥工程の後、素焼き工程までのタイミングで行うこととしても構わない。
【0024】
<第2実施形態>
上記した第1実施形態では、陶器板10に開設された貫通孔16,18各々の内周面に釉薬層14が形成されているが、貫通孔の内周面には、必ずしも釉薬層が形成されている必要はない。
【0025】
例えば、
図3に示す第2実施形態に係る陶器板20のように、素地22の表側の主面22Fに釉薬層24が形成されており、貫通孔26の内周面部分は素地22の外面が露出した態様であっても構わない。この場合、貫通孔26の周縁部分(洗面ボウル110の下面と釉薬層24との間の部分)に、水分の浸入を防ぐための合成樹脂製のシール材30を設けておくのが望ましい。また、陶器板20では、本焼き工程を終えた後に「孔あけ工程」を行うようにしてもよい。これにより、水回り設備の施工現場における配管作業について柔軟な対応が可能となる。
【0026】
なお、上記したシール材30は、第1実施形態に係る陶器板10における貫通孔16,18の周縁部分に設けることとしても構わない。
【0027】
以上、本発明に係る水回り用陶器板及び水回り設備を実施形態に基づいて説明したが、本発明は上記した態様に限らないことは勿論であり、例えば、以下のように変形した形態で実施しても構わない。
【0028】
<変形例>
(1)上記実施形態では、釉薬層14,24が素地12,22の外面に対して一層のみ形成されているが、釉薬層の態様については特に限定されるものではない。例えば、種類の異なる釉薬が複数層にわたって形成されていてもよい。また、素地と釉薬層との間に、例えば、模様などをあしらうための材料で構成される中間層が部分的に形成されたような態様であっても構わない。
【0029】
(2)上記実施形態において、陶器板10は、洗面ボウル110の下面側部分が配される第1の貫通孔である貫通孔16と、配管を含めた給水栓108部分が配される第2の貫通孔である貫通孔18の2つの貫通孔を有するものであるが、貫通孔は、1つであってもよいし、3つ以上の複数であってもよい。要するに、貫通孔の内周面に釉薬層が形成されているものであれば、水回り設備の構成部材として好適に用いることが可能である。
【0030】
(3)上記実施形態では、洗面台100の天板部分に陶器板10を用いたが、天板部分の周囲の三方を囲む壁面の一部に、陶器板を採用しても構わない。例えば、給水栓が正面の壁面から突出して設けられた仕様の洗面台の化粧板部分を陶器板にしてもよい。この場合も、貫通孔を配管用の孔として利用すればよい。
【0031】
(4)また、給排水管の取り回しの態様によっては、貫通孔を有しない陶器板を水回り設備の構成部材として用いることとしても勿論構わない。例えば、上記した実施形態の洗面台100において、正面の壁面104の一部を陶器板で構成する態様が一例として挙げられる。あるいは、天板部分に給排水管の配管用の孔が不要である場合は、置き型の洗面ボウルを支持するための天板として、陶器板を利用することも可能である。
【0032】
(5)上記実施形態では、天板とは別体で構成された陶器製の洗面ボウル110を水槽部分に採用しているが、陶器製の天板にガラス製や金属製の洗面ボウルを組み合わせた態様で実施することとしても勿論構わない。これにより、従来とはまた違った雰囲気の「和モダン」な水回り設備を提供することが可能となる。
【0033】
本発明は、その趣旨を逸脱しない範囲で当業者の知識に基づいて種々なる改良、修正、又は変形を加えた態様でも実施できる。また、同一の作用又は効果が生じる範囲内で、何れかの発明特定事項を他の技術に置換した形態で実施しても良い。
【符号の説明】
【0034】
10 水回り用陶器板
12 素地
14 釉薬層
16 貫通孔
18 貫通孔
100 洗面台(水回り設備)