IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 湖南源品細胞生物科技有限公司の特許一覧

特開2022-50292ウイルス感染及び/又はウイルス感染による合併症の治療における間葉系幹細胞の応用
<>
  • 特開-ウイルス感染及び/又はウイルス感染による合併症の治療における間葉系幹細胞の応用 図1
  • 特開-ウイルス感染及び/又はウイルス感染による合併症の治療における間葉系幹細胞の応用 図2
  • 特開-ウイルス感染及び/又はウイルス感染による合併症の治療における間葉系幹細胞の応用 図3
  • 特開-ウイルス感染及び/又はウイルス感染による合併症の治療における間葉系幹細胞の応用 図4
  • 特開-ウイルス感染及び/又はウイルス感染による合併症の治療における間葉系幹細胞の応用 図5
  • 特開-ウイルス感染及び/又はウイルス感染による合併症の治療における間葉系幹細胞の応用 図6
  • 特開-ウイルス感染及び/又はウイルス感染による合併症の治療における間葉系幹細胞の応用 図7
  • 特開-ウイルス感染及び/又はウイルス感染による合併症の治療における間葉系幹細胞の応用 図8
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022050292
(43)【公開日】2022-03-30
(54)【発明の名称】ウイルス感染及び/又はウイルス感染による合併症の治療における間葉系幹細胞の応用
(51)【国際特許分類】
   A61K 35/51 20150101AFI20220323BHJP
   A61P 31/12 20060101ALI20220323BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20220323BHJP
   A61P 39/06 20060101ALI20220323BHJP
   C12N 5/0775 20100101ALN20220323BHJP
【FI】
A61K35/51
A61P31/12
A61P43/00 105
A61P39/06
C12N5/0775
【審査請求】有
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021005497
(22)【出願日】2021-01-18
(31)【優先権主張番号】202010979148.X
(32)【優先日】2020-09-17
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(31)【優先権主張番号】202010979140.3
(32)【優先日】2020-09-17
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(31)【優先権主張番号】202010979138.6
(32)【優先日】2020-09-17
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(71)【出願人】
【識別番号】521025658
【氏名又は名称】湖南源品細胞生物科技有限公司
(74)【代理人】
【識別番号】100130111
【弁理士】
【氏名又は名称】新保 斉
(72)【発明者】
【氏名】薛 志剛
(72)【発明者】
【氏名】伊 寧
(72)【発明者】
【氏名】斉 凌彬
(72)【発明者】
【氏名】呂 波
(72)【発明者】
【氏名】李 嬋藝
(72)【発明者】
【氏名】鄭 春兵
(72)【発明者】
【氏名】李 偉林
(72)【発明者】
【氏名】華 江舟
(72)【発明者】
【氏名】顔 騰龍
(72)【発明者】
【氏名】楊 袁
【テーマコード(参考)】
4B065
4C087
【Fターム(参考)】
4B065AA90X
4B065AA93X
4B065CA44
4C087AA01
4C087AA02
4C087BB59
4C087NA14
4C087ZB21
4C087ZB33
4C087ZC37
(57)【要約】      (修正有)
【課題】ウイルス感染及び/又はウイルス感染による合併症の治療における間葉系幹細胞の応用を提供する。
【解決手段】MSC(間葉系幹細胞)によって、酸化ストレス刺激下で複数種類の抗酸化ストレス遺伝子を高度に発現し、複数種類の抗酸化ストレス因子を分泌し、炎症反応と免疫細胞の過剰な活性化を抑制し、それによって人体の炎症指標と心筋損傷指標を改善する。また、MSCによって、ウイルス感染患者の単球遺伝子発現と単球毒性遺伝子発現を調節し、過剰な免疫応答を抑制し、肺胞機能を保護し、ウイルス感染患者の肺および全身の臓器の損傷を軽減することができる。MSCは、ウイルス感染患者の最終分化細胞亜群における抗ウイルス関連遺伝子発現と、最終分化細胞亜群における血液凝固関連細胞の遺伝子発現を調節し、ウイルス感染患者の単球の過剰な活性化を抑制することができ、ウイルス感染患者の合併症の効果的な治療を達成することができる。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ウイルス感染患者の単球の調節、ウイルス感染患者の最終分化細胞の遺伝子発現の調節、または人体の酸化ストレス状態の改善における間葉系幹細胞の応用。
【請求項2】
前記間葉系幹細胞がウイルス感染患者の単球の調節に応用される場合、前記間葉系幹細胞は、ウイルス感染によって誘発された合併症の効果的な治療を達成するために、ウイルス感染患者の単球の遺伝子発現及び/又は毒性遺伝子発現を調節するために使用され、
前記間葉系幹細胞がウイルス感染患者の最終分化細胞の遺伝子発現の調節に応用される場合、前記間葉系幹細胞は、ウイルス感染によって誘発された合併症の効果的な治療を達成するために、ウイルス感染患者の最終分化細胞亜群における抗ウイルス関連遺伝子の発現及び/又は血液凝固関連遺伝子の発現を調節するために使用され、
前記間葉系幹細胞が人体の酸化ストレス状態の改善に応用される場合、前記間葉系幹細胞は、ウイルス感染患者の酸化ストレス状態を改善するために使用されることを特徴とする請求項1に記載の応用。
【請求項3】
前記間葉系幹細胞は、複数の抗酸化ストレス遺伝子を高度に発現し、複数の抗酸化ストレス因子を分泌することにより、ウイルス感染患者の酸化ストレス状態を改善するために使用されることを特徴とする請求項2に記載の応用。
【請求項4】
前記間葉系幹細胞で高度に発現する抗酸化ストレス遺伝子には、GPX4、GSTP1、PRDX1、PRDX2、PRDX3、PRDX4、PRDX5、PRDX6、SOD1、SOD2、TXNRD1、NQO1、PARK7、PSMB5、SLC38A1及びVIMが含まれることを特徴とする請求項3に記載の応用。
【請求項5】
酸化ストレス条件下で前記間葉幹細胞によって分泌される抗酸化ストレス因子には、GSTP1、PRDX1、PRDX2、VIM、GPX4、PSMB5及びSOD1が含まれることを特徴とする請求項3に記載の応用。
【請求項6】
前記ウイルス感染によって誘発される合併症とは、急性呼吸困難症候群を指すことを特徴とする請求項2に記載の応用。
【請求項7】
前記間葉系幹細胞がウイルス感染患者の単球の調節に応用される場合、前記応用のステップには、
間葉系幹細胞製剤を調製するステップS1と、
ウイルス感染患者をスクリーニングして、少なくとも間葉系幹細胞治療群および従来治療群を含むグループに分けるようにグループ化するステップS2と、
従来治療群でウイルス感染患者に対して従来の治療を行うと同時に、調製した間葉系幹細胞製剤を従来治療群の従来の治療計画に組み込み、間葉系幹細胞治療群のウイルス感染患者に対して併用治療を行うステップS3と、
シングルセルシーケンシング技術を使用して、回復後の患者の末梢血単球をサンプリングおよび分析して、回復後の患者の単球遺伝子発現および単球毒性遺伝子発現状況を取得するステップS4と、
を含むことを特徴とする請求項6に記載の応用。
【請求項8】
前記間葉系幹細胞がウイルス感染患者の最終分化細胞の遺伝子発現の調節に応用される場合、前記応用のステップには、
間葉系幹細胞製剤を調製するステップS1と、
ウイルス感染患者をスクリーニングして、少なくとも間葉系幹細胞治療群および従来治療群を含むグループに分けるようにグループ化するステップS2と、
従来治療群でウイルス感染患者に対して従来の治療を行うと同時に、調製した間葉系幹細胞製剤を従来治療群の従来の治療計画に組み込み、間葉系幹細胞治療群のウイルス感染患者に対して併用治療を行うステップS3と、
シングルセルシーケンシング技術を使用して、回復後の患者の末梢血単球をサンプリングおよび分析して、回復後の患者の最終分化細胞亜群における抗ウイルス関連遺伝子の発現および最終分化細胞亜群における血液凝固関連遺伝子発現状況を取得するステップS4と、
を含むことを特徴とする請求項6に記載の応用。
【請求項9】
前記回復後の患者には、間葉系幹細胞治療群で治癒したウイルス感染患者と、従来治療群で治癒したウイルス感染患者が含まれることを特徴とする請求項7または8に記載の応用。
【請求項10】
前記間葉系幹細胞が人体の酸化ストレス状態の改善に応用される場合、前記応用のステップには、
間葉系幹細胞製剤を調製するステップS1と、
シングルセルシークエンシング方法を使用して、ステップS1で調製した間葉系幹細胞を検出し、間葉系幹細胞における抗酸化ストレス遺伝子の発現状況を分析するステップS2と、
ステップS1で調製した間葉系幹細胞を異なる酸化ストレス刺激条件下でそれぞれ培養し、培養した間葉系幹細胞における抗酸化ストレス因子の分泌状況を検出するステップS3と、
を含むことを特徴とする請求項5に記載の応用。
【請求項11】
前記ステップS2の具体的な実施には、シングルセルシークエンシング方法を使用して調製された間葉系幹細胞を検出するステップ、および前記間葉系幹細胞の複数の抗酸化ストレス遺伝子の発現状況を分析するステップが含まれることを特徴とする請求項10に記載の応用。
【請求項12】
前記ステップS3の具体的な実施には、まず調製した間葉系幹細胞を従来の条件と異なる濃度の酸化ストレス刺激下で培養し、次に異なる条件と異なる期間の下で間葉系幹細胞における抗酸化ストレス因子の分泌状況を検出および分析するステップを含むことを特徴とする請求項10に記載の応用。
【請求項13】
前記間葉系幹細胞製剤の調製方法は、
臍帯を集めてペトリ皿に入れ、臍帯組織を生理食塩水で洗浄するステップS11と、
洗浄した臍帯組織を小さな組織片に切り、ペトリ皿に植えて培養するステップS12と、
ペトリ皿の培養液を取り除き、生理食塩水で洗浄し、トリプシンを加えてペトリ皿の細胞が消化完了するまで消化をし、消化完了すると、停止液を加えて消化を止め、細胞懸濁液を遠心分離管に移して遠心分離し、上澄み液を廃棄し、次に、適切な量の培養液で細胞を再懸濁してカウントし、最後に、カウント結果に従って新しいペトリ皿に細胞懸濁液を植えて培養するステップS13と、
ステップS13における新しいペトリ皿の培養液を取り除き、生理食塩水で洗浄してトリプシンを加えてペトリ皿の細胞が消化完了するまで消化をし、消化完了すると、停止液を加えて消化を止め、次に、セルストレーナーで濾過し、濾過した細胞懸濁液を遠心分離管に移してカウントし、遠心分離して上澄み液を廃棄し、次に、細胞調製懸濁液を調製し、細胞調製懸濁液を追加して細胞を再懸濁し、最後に、細胞懸濁液をトランスファーバッグに移し、低温環境に置いて取りに備え、そうすると間葉系幹細胞製剤の調製が完了となるステップS14と、
ステップS14で調製された間葉系幹細胞製剤が合格であるかを検査するステップS15と、
を含むことを特徴とする請求項7、8及び10のいずれか一項に記載の応用。
【請求項14】
ウイルス感染患者における最終分化細胞遺伝子発現、単球遺伝子発現を調節する、または人体の酸化ストレス状態を改善するための方法であって、
間葉系幹細胞製剤を調製するステップ1)と、
ウイルス感染患者の併用治療のために間葉系幹細胞製剤を、従来の治療プログラムに組み込むステップ2)と、を含む方法。
【請求項15】
ウイルス感染患者の併用治療のために前記間葉系幹細胞製剤を使用する方法は、末梢静脈注入による間葉系幹細胞製剤治療を含むことを特徴とする請求項14に記載の方法。
【請求項16】
前記間葉系幹細胞製剤の注入量は、体重1キログラムあたり(0.8~1)×10個細胞であることを特徴とする請求項15に記載の方法。
【請求項17】
前記間葉系幹細胞製剤の末梢静脈注入の回数は3回であり、二つの注入は3dおきに行われることを特徴とする請求項15に記載の方法。






【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願の相互参照)
本出願は2020年9月17日に中国特許庁に提出され、出願番号202010979140.3、発明の名称「ウイルス感染患者の最終分化細胞の遺伝子発現の調節におけるMSCの応用」、出願番号202010979138.6、発明の名称「人体の酸化ストレス状態の改善における間葉系幹細胞の応用」及び出願番号202010979148.X、発明の名称「ウイルス感染患者の単球の調節における間葉系幹細胞の応用」の中国特許出願の優先権を要求し、そのすべての内容は参照により本出願に組み合わせる。
【0002】
本発明は、生物医学工学の技術分野、特にウイルス感染患者の単球の調節、ウイルス感染患者の最終分化細胞の遺伝子発現の調節、または人体の酸化ストレス状態の改善における間葉系幹細胞の応用に関する。
【背景技術】
【0003】
ウイルス感染とは、人体に寄生して繁殖し、病気を引き起こす可能性のあるウイルスによって引き起こされる感染症を指す。主に、発熱、頭痛、全身不快感等の全身性中毒症状、ならびにウイルスの組織や臓器への寄生や侵入によって引き起こされる炎症損傷によって引き起こされる局所症状として現れる。ウイルス感染患者は、体内でサイトカインストームが誘発され、炎症反応やさまざまな合併症が引き起こされやすい。また、ウイルス感染(インフルエンザ、SARS、MERS、エボラなど)は人から人に急速に広がり、人間の健康に大きな脅威をもたらす。特に、2020年に世界中に広がっている新型コロナウイルス(COVID-19ウイルス)は、人間の健康と経済に深刻な損失をもたらした。COVID-19の病原体は、現在、重度急性呼吸症候群コロナウイルス2(SARS-CoV-2)と呼ばれる新型コロナウイルスであることが確認されている。現在、このウイルスに対する特定の薬剤もワクチンも開発に成功していなく、SARS-CoV-2の現れは、臨床医に困難な治療のジレンマをもたらした。ほとんどの感染患者は、発熱、乾性咳、疲労などの非特異的な症状を示した。ほとんどの患者の予後は良好であるが、一部の重症例は急速に急性呼吸困難症候群、敗血症性ショック、代謝性アシドーシス、血液凝固機能障害、さらには死に至る可能性がある。患者は、体内のサイトカインストームが原因で状態が悪化する可能性があり、SARS-CoV-2が世界的な流行病を引き起こす新型ウイルス株であることを鑑み、抗ウイルス療法や免疫療法などの効果的な標的療法が緊急に必要とされている。
【0004】
現在、ウイルス感染症やウイルス感染症の合併症に対する特別な治療法はなく、サポートと症候性治療が主なものであり、抗ウイルス薬もホルモン治療も効果的ではない。通常、補助的な手段で患者の症状を緩和する一方、主に患者自身の免疫によってウイルス感染とその合併症を克服する。ウイルス感染の重症患者の末梢血中のCD4+およびCD8+T細胞の数はしばしば大幅に減少し、一部の患者は異常な免疫活性化を示し、サイトカインストーム症候群(CSS)を引き起こし、肺等の臓器の深刻な損傷と死につながる。従来技術の主な解決手段はグルココルチコイドの使用であるが、ウイルス感染患者における免疫の過剰活性化と免疫抑制との急速な転換のため、ホルモンの使用はウイルスクリアランスの遅延および二次感染のリスクにつながるリスクがある。
【0005】
現在では、ウイルス感染及び/又はウイルス感染による合併症を治療するために使用された間葉系幹細胞の報告および記録はない
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、ウイルス感染及び/又はウイルス感染による合併症の治療における間葉系幹細胞の応用を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の目的を達成するために、本発明は以下の技術的解決手段を提供する。
【0008】
本発明は、ウイルス感染患者における単球の調節、ウイルス感染患者における最終分化細胞の遺伝子発現の調節、または人体の酸化ストレス状態の改善における間葉系幹細胞の応用を提供する。
【0009】
好ましくは、前記間葉系幹細胞がウイルス感染患者の単球の調節に応用される場合、前記間葉系幹細胞は、ウイルス感染によって誘発された合併症の効果的な治療を達成するために、ウイルス感染患者の単球の遺伝子発現及び/又は毒性遺伝子発現を調節するために使用され、
【0010】
前記間葉系幹細胞がウイルス感染患者の最終分化細胞の遺伝子発現の調節に応用される場合、前記間葉系幹細胞は、ウイルス感染によって誘発された合併症の効果的な治療を達成するために、ウイルス感染患者の最終分化細胞亜群における抗ウイルス関連遺伝子の発現及び/又は血液凝固関連遺伝子の発現を調節するために使用され、
【0011】
前記間葉系幹細胞が人体の酸化ストレス状態の改善に応用される場合、前記間葉系幹細胞は、ウイルス感染患者の酸化ストレス状態を改善するために使用される。
【0012】
好ましくは、前記間葉系幹細胞は、複数種類の抗酸化ストレス遺伝子を高度に発現し、複数種類の抗酸化ストレス因子を分泌することにより、ウイルス感染患者の酸化ストレス状態を改善するために使用される。
【0013】
好ましくは、前記間葉系幹細胞で高度に発現する抗酸化ストレス遺伝子には、GPX4、GSTP1、PRDX1、PRDX2、PRDX3、PRDX4、PRDX5、PRDX6、SOD1、SOD2、TXNRD1、NQO1、PARK7、PSMB5、SLC38A1及びVIMが含まれる。
【0014】
好ましくは、酸化ストレス条件下で前記間葉幹細胞によって分泌される抗酸化ストレス因子には、GSTP1、PRDX1、PRDX2、VIM、GPX4、PSMB5及びSOD1が含まれる。
【0015】
好ましくは、前記ウイルス感染によって誘発される合併症とは、急性呼吸困難症候群を指す。
【0016】
好ましくは、前記間葉系幹細胞がウイルス感染患者の単球の調節に応用される場合、前記応用のステップは、
間葉系幹細胞製剤を調製するステップS1と、
ウイルス感染患者をスクリーニングして、少なくとも間葉系幹細胞治療群及び従来治療群を含むグループに分けるようにグループ化するステップS2と、
従来治療群でウイルス感染患者に対して従来の治療を行うと同時に、調製した間葉系幹細胞製剤を従来治療群の従来の治療計画に組み込み、間葉系幹細胞治療群のウイルス感染患者に対して併用治療を行うステップS3と、
シングルセルシーケンシング技術を使用して、回復後の患者の末梢血における単球をサンプリングおよび分析して、回復後の患者の単球遺伝子発現および単球毒性遺伝子発現状況を取得するステップS4と、を含む。
【0017】
好ましくは、前記間葉系幹細胞がウイルス感染患者の最終分化細胞の遺伝子発現の調節に応用される場合、前記応用のステップは、
間葉系幹細胞製剤を調製するステップS1と、
ウイルス感染患者をスクリーニングして、少なくとも間葉系幹細胞治療群および従来治療群を含むグループに分けるようにグループ化するステップS2と、
従来治療群でウイルス感染患者に対して従来の治療を行うと同時に、調製した間葉系幹細胞製剤を従来治療群の従来の治療計画に組み込み、間葉系幹細胞治療群のウイルス感染患者に対して併用治療を行うステップS3と、
シングルセルシーケンシング技術を使用して、回復後の患者の末梢血単球をサンプリングおよび分析して、回復後の患者の最終分化細胞サブセットにおける抗ウイルス関係遺伝子発現および最終分化細胞サブセットにおける血液凝固の関係遺伝子発現状況を取得するステップS4と、を含む。
【0018】
好ましくは、前記回復後の患者には、間葉系幹細胞治療群で治癒したウイルス感染患者と、従来治療群で治癒したウイルス感染患者が含まれる。
【0019】
好ましくは、前記間葉系幹細胞が人体の酸化ストレス状態の改善に応用される場合、前記応用のステップは、
間葉系幹細胞製剤を調製するステップS1と、
シングルセルシークエンシング方法を使用して、ステップS1で調製した間葉系幹細胞を検出し、間葉系幹細胞における抗酸化ストレス遺伝子の発現状況を分析するステップS2と、
ステップS1で調製した間葉系幹細胞を異なる酸化ストレス刺激条件下でそれぞれ培養し、培養した間葉系幹細胞における抗酸化ストレス因子の分泌状況を検出するステップS3と、を含む。
【0020】
好ましくは、前記ステップS2の具体的な実施には、シングルセルシークエンシング方法を使用して調製された間葉系幹細胞を検出すること、および前記間葉系幹細胞の複数種類の抗酸化ストレス遺伝子の発現状況を分析することが含まれる。
【0021】
好ましくは、前記ステップS3の具体的な実施には、まず調製した間葉系幹細胞を、従来の条件と、各種の濃度の酸化ストレス刺激下で培養し、次に様々な条件と各種の期間の下で間葉系幹細胞における抗酸化ストレス因子の分泌状況を検出および分析するステップを含む。
【0022】
好ましくは、前記間葉系幹細胞製剤の調製方法は、
臍帯を集めてペトリ皿に入れ、臍帯組織を生理食塩水で洗浄するステップS11と、
洗浄した臍帯組織を小さな組織片に切り、ペトリ皿に植えて培養するステップS12と、
ペトリ皿の培養液を取り除き、生理食塩水で洗浄し、トリプシンを加えて消化をし、ペトリ皿の細胞が消化されるまで、停止液を加えて消化を止め、細胞懸濁液を遠心分離管に移して遠心分離し、上澄み液を廃棄し、次に、適切な量の培養液で細胞を再懸濁してカウントし、最後に、カウント結果に従って新しいペトリ皿に細胞懸濁液を植えて培養するステップS13と、
ステップS13での新しいペトリ皿の培養液を取り除き、生理食塩水で洗浄してトリプシンを加えてペトリ皿の細胞が消化されるまで消化をし、消化完了すると、停止液を加えて消化を止め、次に、セルストレーナーで濾過し、濾過した細胞懸濁液を遠心分離管に移してカウントし、遠心分離して上澄み液を廃棄し、次に、細胞調製懸濁液を調製し、細胞調製懸濁液を追加して細胞を再懸濁し、最後に、細胞懸濁液をトランスファーバッグに移し、低温環境に置いて取りに備え、よって間葉系幹細胞製剤の調製を完了するステップS14と、
ステップS14で調製された間葉系幹細胞製剤が合格するかを検査するステップS15と、を含む。
【0023】
本発明はまた、ウイルス感染患者における最終分化細胞遺伝子発現、単球遺伝子発現を調節するための、または人体の酸化ストレス状態を改善するための方法を提供し、それは、
間葉系幹細胞製剤を調製するステップ1)と、
ウイルス感染患者の併用治療のために間葉系幹細胞製剤を、従来の治療プログラムに組み込むステップ2)と、を含む。
【0024】
好ましくは、ウイルス感染患者の併用治療のために前記間葉系幹細胞製剤を使用する方法は、末梢静脈注入による間葉系幹細胞製剤治療を含む。
【0025】
好ましくは、前記間葉系幹細胞製剤の注入量は、体重1キログラムあたり(0.8~1)×10個細胞である。
【0026】
好ましくは、前記間葉系幹細胞製剤の末梢静脈注入の回数は3回であり、二つの注入は3dおきに行われる。
【発明の効果】
【0027】
従来の技術と比較して、本発明は、ウイルス感染及び/又はウイルス感染による合併症の治療における間葉系幹細胞の応用を提供する。本発明において、間葉系幹細胞は、酸化ストレス刺激下でさまざまな抗酸化ストレス遺伝子を高度に発現し、さまざまな抗酸化ストレス因子を分泌し、さまざまな抗酸化ストレス因子を通じて人体の炎症反応と免疫細胞の過剰な活性化を効果的に抑制し、よって人体の炎症指標と心筋損傷指標を効果的に改善できる。本発明において、間葉系幹細胞は、ウイルス感染患者における単球遺伝子発現および単球毒性遺伝子発現への効果的な調節を達成し、患者体内の過剰な免疫応答を適時にかつ効果的に抑制し、患者体内の肺胞機能が効果的に保護され、ウイルス感染患者の肺と全身器官の損傷を大幅に軽減し、したがって、間葉系幹細胞は、患者の単球遺伝子の発現および単球毒性遺伝子の発現を通じて、ウイルス感染患者の合併症の効果的な治療を達成した。本発明において、間葉系幹細胞は、ウイルス感染患者の最終分化細胞亜群における抗ウイルス関連遺伝子の発現および最終分化細胞亜群における血液凝固関連細胞遺伝子の発現を効果的に調節することができ、それにより、ウイルス感染患者の単球の過剰な活性化を効果的に抑制し、ウイルス感染患者の合併症の効果的な治療を実現する。
【図面の簡単な説明】
【0028】
図1】ウイルス感染患者の単球の調節における本発明によって提供される間葉系幹細胞の応用ステップのフローチャートである。
図2】本発明の間葉系幹細胞製剤の調製方法のフローチャートである。
図3】人体の酸化ストレス状態を改善する際に本発明によって提供される間葉系幹細胞の応用ステップのフローチャートである。
図4】本発明の前記間葉系幹細胞における抗酸化ストレス遺伝子の発現レベルの模式図である。
図5】ウイルス感染患者の最終分化細胞の遺伝子発現を調節する際に本発明によって提供されるMSCの応用ステップのフローチャートである。
図6】本発明における前記末梢血単球の20個のサブグループの次元減少分析図である。
図7】本発明のMSC治療群、従来治療群および健康群におけるウイルス感染合併症を有する患者の2つの単球亜群(mono4及びmono5)の模式図である。
図8】本発明におけるMSC治療群、従来治療群および健康群のCD14+細胞亜群における各差次的遺伝子の割合の模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0029】
当業者が本発明の技術的解決手段をよりよく理解できるようにするために、本発明を添付の図面を参照してさらに詳細に説明する。
【0030】
本発明で言及される元の治療計画は、中華人民共和国国家衛生健康委員会の総局および国家中医薬管理局事務局によって発行された新型コロナウイルス肺炎の診断および治療計画で採用された治療計画を指し、MSC+はMSC治療群を意味し、MSC-は従来治療群を意味し、Healthyは健康群を意味し、ここで、MSC(Mesenchymal Stem Cells)は間葉系幹細胞を意味することに留意されたい。
【0031】
図1に示されるように、本発明は、単球遺伝子発現の調節および単球毒性遺伝子発現の調節における間葉系幹細胞の応用を通じて、ウイルス感染によって誘発される合併症の効果的な治療を達成する、ウイルス感染患者の単球の調節における間葉系幹細胞(mesenchymal stem cells、MSC)の応用を提供する。ここで、前記ウイルス感染によって誘発される合併症は、急性呼吸困難症候群を指し、応用の具体的なステップは、
間葉系幹細胞製剤を調製するステップS1と、
ウイルス感染患者をスクリーニングして、少なくとも間葉系幹細胞治療群および従来治療群を含むグループに分けるようにグループ化するステップS2と、
従来治療群でウイルス感染患者に対して従来の治療を行うと同時に、調製した間葉系幹細胞製剤を従来治療群の従来の治療計画に組み込み、MSC治療群のウイルス感染患者に対して併用治療を行うステップS3と、
シングルセルシーケンシング技術を使用して、回復後の患者の末梢血単球をサンプリングおよび分析して、回復後の患者の単球遺伝子発現および単球毒性遺伝子発現状況を取得するステップS4と、を含む。
【0032】
そのうち、図2に示すように、前記間葉系幹細胞製剤の調製方法は、
臍帯を集めてペトリ皿に入れ、臍帯組織を生理食塩水で洗浄するステップS11と、
洗浄した臍帯組織を小さな組織片に切り、ペトリ皿に植えて培養するステップS12と、
ペトリ皿の培養液を取り除き、生理食塩水で洗浄し、トリプシンを加えてペトリ皿の細胞が消化されるまで消化をし、消化完成すると停止液を加えて消化を止め、細胞懸濁液を遠心分離管に移して遠心分離し、上澄み液を廃棄し、次に、適切な量の培養液で細胞を再懸濁してカウントし、最後に、カウント結果に従って新しいペトリ皿に細胞懸濁液を植えて培養するステップS13と、
ステップS13における新しいペトリ皿の培養液を取り除き、生理食塩水で洗浄してトリプシンを加えてペトリ皿の細胞が消化されるまで消化をし、消化完成すると停止液を加えて消化を止め、次に、セルストレーナーで濾過し、濾過した細胞懸濁液を遠心分離管に移してカウントし、遠心分離して上澄み液を廃棄し、次に、細胞調製懸濁液を調製し、細胞調製懸濁液を追加して細胞を再懸濁し、最後に、細胞懸濁液をトランスファーバッグに移し、低温環境に置いて取りに備え、そうすると間葉系幹細胞製剤の調製が完了となるステップS14と、
ステップS14で調製された間葉系幹細胞製剤が合格かを検査するステップS15と、を含む。
【0033】
本実施例において、前記間葉系幹細胞製剤は、ヒト臍帯間葉系幹細胞(Human umbilical cord mesenchymal stem cells、hUC-MSC)を使用して調製され、調製プロセスは全て消毒後のクリーンベンチで実行され、調製プロセスで必要な器具と消耗品等は、全て75%のアルコールで消毒することを必要とし、調製プロセスでは、ペトリ皿のコレクションまたは細胞及び特定の操作プロセスを詳細にマークすることも必要である。同時に、ステップS13とステップS14の間で幹細胞を凍結することもでき、ステップS14を実行する必要がある場合は、幹細胞製剤を調製する前に、凍結した幹細胞を蘇生させる必要があり、ステップS13とステップS14の間に幹細胞を凍結することもでき、ステップS14の幹細胞製剤の調製を行う必要がある前に、凍結した幹細胞を蘇生させる必要があり、ここで幹細胞の凍結および蘇生の操作は従来技術に属し、ここでは更に詳細に釈明することはない。
【0034】
本実施例において、前記間葉系幹細胞製剤の合格検査は、コレクションの品質検査、臍帯間葉系幹細胞の一次細胞バンクのストレージ検査、および臍帯間葉系幹細胞のマスター細胞バンクのストレージ検査も含み、合格検査のステップと基準は、既存の一般的な検査と一致しているため、ここでは更に詳細に釈明することはない。
【0035】
ここで、前記併用治療とは、調製された間葉系幹細胞製剤を、MSC治療群の併用治療計画として従来治療群の従来の治療計画に組み込み、間葉系幹細胞製剤は、従来の治療計画における唯一の干渉要因としてウイルス感染患者に対して併用投与を行い、同時に併用治療計画で併用投与状況を追跡および記録することである。本実施例において、MSC治療群プロセス全体で、間葉系幹細胞製剤は末梢静脈から注入され、前記間葉系幹細胞製剤の注入用量は、好ましくは、体重1キログラムあたり(0.8~1)×10個細胞である。注入回数は3回、二つの注入は3dおきに行われる。注入の0~15minにおいて、注入速度は10滴/minであり、明らかな反応がない場合は、20滴/minの速度で注入を続ける。
【0036】
この実施例では、選択した一般的な新型コロナウイルス陽性患者(SARS-CoV-2ウイルス感染患者)をMSC治療群サンプルと従来の治療群(つまり元の治療計画)のサンプルとして2つのグループに均等に分け、サンプルの2つのグループのウイルス感染患者が治癒した後、回復した患者の末梢血単球をサンプリングし、次に、シングルセルシーケンシング技術を使用して、それぞれ各グループの回復後の患者から収集された末梢血単球サンプル(すなわち、ウイルス感染患者の合併症からの細胞サンプル)をグループ分析し、分析結果を処理する。それにより回復後の患者体内の単球遺伝子発現および単球毒性遺伝子発現状況を得て、詳細は以下の通りである。表1に、MSC治療群と従来治療群の回復後患者の間の単球遺伝子発現の関係表を示し、表2は、MSC治療群と従来治療群の回復後患者のCD14細胞亜群(mono3)で高度に発現した細胞毒性遺伝子の表を示し、表3は、MSC治療群と従来治療群の回復後患者の間のCD14細胞亜群(mono3)で高度に発現した細胞毒性遺伝子の発現の関係表を示している。分析と処理のプロセスで、得られた単球(特にCD14+細胞)亜群の高度に発現した細胞マーカー遺伝子が異なること、つまり、ウイルス感染に対する人体の免疫応答における異なる細胞亜群の機能が異なることを発見し、したがって、ウイルス感染によって誘発される合併症を治療するために、異なる細胞亜群に関与する信号伝達経路を、対応する遮断または活性化方法によって、体内のサイトカインストームを阻害し、同時に局所組織の損傷を修復するために体の機能を活性化し、よって治療効果を達成する。他の実施例において、他のウイルス感染患者も、MSC治療群および従来治療群のサンプルとして選択できる。ここで、表のp_val値が0.01未満の場合、MSC治療群と従来治療群との間のデータに有意差があることを意味し、データが小さいほど差が大きくなり、p_val_adj値は調整後のp_val値を表すに留意すべきである。
【0037】
【表1】
【0038】
表1から、MSC治療群と従来治療群の回復後患者の間では、単球亜群におけるS100A8、S100A9、およびVCAN遺伝子の遺伝子発現の有意差状況がわかり、従来治療群と比較して、回復後のMSC治療群の患者におけるS100A8遺伝子、S100A9遺伝子およびVCAN遺伝子の遺伝子発現は有意にアップレギュレートされ、S100A8およびS100A9遺伝子は、ミトコンドリア機能を阻害することにより心筋細胞死をもたらす初期の重要な分子であるため、VCAN遺伝子は、細胞の接着と移動の調節に関与する硫酸軟骨プロテオグリカンVersicanのコード化を担当する。同時に、間葉系幹細胞は、一方では、低い免疫原性と先天性および後天性免疫の調節を通じて過剰な免疫応答を効果的に制御し、人体の複数の器官への損傷を抑制することができる。他方では、間葉系幹細胞は、静脈内注入により人体に入った後、一部は肺に蓄積し、肺細胞の微小環境を改善し、肺胞上皮細胞を保護し、肺機能を改善する可能性があるため、急性肺損傷、重度の肺炎、ARDS、および呼吸不全の治療のための間葉系幹細胞の臨床研究のすべては、細胞注入が優れた安全性と有効性を持っていることを示している。したがって、前記間葉系幹細胞は、ウイルス感染患者体内の単球亜群Mono3のS100A8遺伝子、S100A9遺伝子、およびVCAN遺伝子を標的細胞に直接接触させるか、サイトカインを分泌することによって調節効果を発揮し、それによって単球亜群Mono3のS100A8、S100A9、VCAN遺伝子の遺伝子発現を効果的に調節できる。
【0039】
要約すると、ウイルス感染患者体内の単球の遺伝子発現を調節するための間葉系幹細胞の応用は、T細胞の活性化と増殖を効果的に抑制し、NK細胞の殺傷機能を抑制し、調節性T細胞の増殖を促進し、回復後患者の酸素化指数を改善し、回復後の患者の肺の炎症性損傷を軽減でき、それによってウイルス感染患者によって誘発される合併症の効果的な治療を実現する。
【0040】
【表2】
【0041】
【表3】
【0042】
表2と表3から、CD14細胞亜群(mono3は3番目の亜群を表し)の細胞毒性遺伝子GNLY、NKG7、GZMB、およびPRF1はすべて高度に発現していることがわかり、従来治療群と比較して、MSC治療群の患者は、回復後にNKG7遺伝子が有意にダウンレギュレートされた。細胞毒性遺伝子GNLYによって発現されるヒトグラニュリシンは広範囲の細胞毒性を持っているため、多くの細菌、真菌、寄生虫、哺乳類細胞等に対してすべて異なる程度の殺傷活性を持っている。細胞毒性遺伝子GZMBによってコードされるグランザイムBは、セリンプロテアーゼファミリーメンバーに属し、これは、細胞毒性リンパ球によって媒介される顆粒状エキソサイトーシスの免疫効果における強力なキラーファクターであり、細胞毒性リンパ球活性化のマーカーとして使用でき、グランザイムBは抗ウイルス感染と密接に関連しており、さまざまな細胞内病原体の免疫応答に関与している。細胞毒性遺伝子PRF1は、パーフォリン1のコード化を担当し、このタンパク質は、細胞毒性T細胞等の細胞によって生成され、通常は分泌顆粒に保存され、標的細胞と接触すると放出され、カルシウムイオンの存在下で標的細胞膜を貫通できる管状孔に凝集し、よって標的細胞を溶解する。細胞毒性遺伝子NKG7によってコードされるタンパク質は、細胞溶解能力を持つリンパ球の一種に位置する、分子量17-kDaの細胞毒性タンパク質、顆粒膜タンパク質、および4回膜貫通型タンパク質である。それはカルシウムイオンチャネルとして、NK細胞および活性化細胞毒性T細胞で高度に発現する。同時に、前記間葉系幹細胞は、一方では、低い免疫原性と先天性および後天性免疫の調節によって過剰な免疫応答を効果的に制御し、人体の複数の器官への損傷を抑制することができる。他方では、間葉系幹細胞は、静脈内注入により人体に入った後、一部は肺に蓄積し、肺細胞の微小環境を改善し、肺胞上皮細胞を保護し、肺機能を改善する可能性がある。したがって、急性肺損傷、重度の肺炎、ARDS、および呼吸不全の治療のための間葉系幹細胞の臨床研究はずべて、細胞注入が良好な安全性および有効性を有することを示した。それにより、ウイルス感染患者体内の単球亜群Mono3の細胞毒性遺伝子GNLY、NKG7、GZMB、およびPRF1は、間葉系幹細胞を介して標的細胞と直接接触するか、サイトカインの分泌を介して調節効果を発揮し、細胞毒性遺伝子GNLY、NKG7、GZMBおよびPRF1の遺伝子発現への効果的な調節を実現する。
【0043】
間葉系幹細胞をウイルス感染患者の単球毒性遺伝子の発現の調節に適用すると、T細胞の活性化と増殖を効果的に抑制し、NK細胞の殺傷機能を抑制し、調節性T細胞の増殖を促進し、それによって回復後の患者の酸素化指数を改善し、また、回復後の患者の肺の炎症性損傷を軽減できることによってウイルス感染患者によって誘発される合併症の効果的な治療を達成することがわかる。
【0044】
本発明はまた、人体の酸化ストレス状態を改善することにおける間葉系幹細胞(mesenchymal stem cells、間葉系幹細胞)の応用、特にウイルス感染患者の酸化ストレス状態を改善することにおける間葉系幹細胞の応用を提供し、シングルセルシークエンシング方法を使用して、間葉系幹細胞における抗酸化ストレス遺伝子の発現状況を検出および分析し、従来の条件下および異なる濃度の酸化ストレス刺激条件下で間葉系幹細胞製剤を培養し、次に、さまざまな条件下でさまざまな時点に間葉系幹細胞の抗酸化ストレス因子の分泌状況を検出して分析し、前記間葉系幹細胞は、さまざまな抗酸化ストレス遺伝子を高度に発現し、酸化ストレス環境の刺激下でさまざまな抗酸化ストレス因子を分泌することができ、抗酸化ストレス因子を介して、人体(特にウイルス感染患者)の炎症反応と免疫細胞の過剰な活性化を効果的に抑制するため、間葉系幹細胞は人体の酸化ストレス状態を効果的に改善することができる。
【0045】
ここで、前記間葉系幹細胞で高度に発現する抗酸化ストレス遺伝子には、GPX4、GSTP1、PRDX1、PRDX2、PRDX3、PRDX4、PRDX5、PRDX6、SOD1、SOD2、TXNRD1、NQO1、PARK7、PSMB5、SLC38A1及びVIMが含まれる。酸化ストレス条件下で間葉系幹細胞によって分泌される抗酸化ストレス因子には、GSTP1、PRDX1、PRDX2、VIM、GPX4、PSMB5及びSOD1が含まれる。
【0046】
図3に示すように、ここで、人体の酸化ストレス状態の改善における前記間葉系幹細胞の応用には、
間葉系幹細胞製剤を調製するステップS1と、
シングルセルシークエンシング方法を使用して、ステップS1で調製した間葉系幹細胞を検出し、間葉系幹細胞における抗酸化ストレス遺伝子の発現状況を分析するステップS2と、
ステップS1で調製した間葉系幹細胞を異なる酸化ストレス刺激条件下でそれぞれ培養し、培養した間葉系幹細胞における抗酸化ストレス因子の分泌状況を検出するステップS3と、を含む。
【0047】
図2に示すように、ここで、前記間葉系幹細胞製剤の調製方法は、
臍帯を集めてペトリ皿に入れ、臍帯組織を生理食塩水で洗浄するステップS11と、
洗浄した臍帯組織を小さな組織片に切り、ペトリ皿に植えて培養するステップS12と、
ペトリ皿の培養液を取り除き、生理食塩水で洗浄し、トリプシンを加えてペトリ皿の細胞が消化完成されるまで消化をし、消化完成すると停止液を加えて消化を止め、細胞懸濁液を遠心分離管に移して遠心分離し、上澄み液を廃棄し、次に、適切な量の培養液で細胞を再懸濁してカウントし、最後に、カウント結果に従って新しいペトリ皿に細胞懸濁液を植えて培養するステップS13と、
ステップS13における新しいペトリ皿の培養液を取り除き、生理食塩水で洗浄してトリプシンを加えて、ペトリ皿の細胞が消化完成されるまで消化をし、消化完成すると停止液を加えて消化を止め、次に、セルストレーナーで濾過し、濾過した細胞懸濁液を遠心分離管に移してカウントし、遠心分離して上澄み液を廃棄し、次に、細胞調製懸濁液を調製し、細胞調製懸濁液を追加して細胞を再懸濁し、最後に、細胞懸濁液をトランスファーバッグに移し、低温環境に置いて取りに備え、そうすると間葉系幹細胞製剤の調製が完了となるステップS14と、
ステップS14で調製された間葉系幹細胞製剤が合格であるかを検査するステップS15と、を含む。
【0048】
本実施例において、前記間葉系幹細胞製剤は、HUC-間葉系幹細胞(Human umbilical cord mesenchymal stem cells、ヒト臍帯間葉系幹細胞)を使用して調製されたものであって、その調製プロセスはすべて消毒後のクリーンベンチで実行され、調製プロセスで必要な器具と消耗品等は、75%のアルコールで消毒する必要があり、調製プロセスでは、ペトリ皿のコレクションまたは細胞及び特定の操作プロセスを詳細にマークすることも必要である。同時に、ステップS13とステップS14の間に幹細胞を凍結することもでき、ステップS14の幹細胞製剤の調製を行う必要がある前に、凍結した幹細胞を蘇生させる必要があり、ここで幹細胞の凍結および蘇生操作は従来技術に属し、ここでは更に詳細に釈明することはない。
【0049】
本実施例において、前記間葉系幹細胞製剤の合格検査は、コレクションの品質検査、臍帯間葉系幹細胞の一次細胞バンクのストレージ検査、および臍帯間葉系幹細胞のマスター細胞バンクのストレージ検査も含み、合格検査のステップと基準は、既存の一般的な検査と一致しているため、ここでは更に詳細に釈明することはない。
【0050】
図4に示すように、ここで、前記ステップS2の具体的な実施には、シングルセルシークエンシング方法を使用して調製された間葉系幹細胞を検出するステップ、および前記間葉系幹細胞の抗酸化ストレス遺伝子の発現状況を分析するステップが含まれる。
【0051】
ここで、前記ステップS3の具体的な実施には、まず調製した間葉系幹細胞を従来の条件及び異なる濃度の酸化ストレス刺激下でそれぞれ培養し、次に異なる条件と異なる期間の下で間葉系幹細胞における抗酸化ストレス因子の分泌状況を検出および分析するステップを含む。
【0052】
本実施例において、図4から、シングルセルシークエンシング方法を使用して、調製された間葉系幹細胞を検出し、間葉系幹細胞における抗酸化ストレス遺伝子の発現状況を分析し、前記間葉系幹細胞で高度に発現する抗酸化ストレス遺伝子には、GPX4、GSTP1、PRDX1、PRDX2、PRDX3、PRDX4、PRDX5、PRDX6、SOD1、SOD2、TXNRD1、NQO1、PARK7、PSMB5、SLC38A1及びVIMが含まれたことがわかる。また、発明者らは調製した間葉系幹細胞を従来の条件及び異なる濃度の酸化ストレス刺激下でそれぞれ培養し、次に異なる条件と異なる期間の下で間葉系幹細胞における抗酸化ストレス因子の分泌状況を検出および分析し、検出結果は、さまざまな濃度の過酸化水素の刺激下で、間葉系幹細胞がGSTP1、PRDX1、PRDX2、VIM、GPX4、PSMB5及びSOD1などのさまざまな抗酸化ストレス因子を分泌でき、これらの抗酸化ストレス因子はすべて、優れた抗酸化効果を発揮する可能性があるため、人体の酸化ストレス状態の改善にプラスの効果をもたらすことを示している。ここで、この実施例では、培養された間葉系幹細胞の上澄み液を検出・分析し、検出結果を表4に示し、表4は、間葉系幹細胞を従来の条件下およびさまざまな濃度の酸化ストレス刺激下で培養した後の抗酸化ストレス因子の分泌状況表を示している。
【0053】
【表4】
【0054】
表4から、従来の条件下(すなわち、過酸化水素の濃度が0μM)で培養された間葉系幹細胞と比較して、それらは外部酸化ストレス刺激(すなわち、過酸化水素の濃度がそれぞれ50μM、100μM及び200μMである刺激)条件下で、間葉系幹細胞のさまざまな抗酸化ストレス因子は、異なる期間(すなわち、間葉系幹細胞培養後6h、12h及び24h)にずべて増加したことがわかり、したがって、間葉系幹細胞は、酸化ストレス刺激条件下で様々な抗酸化ストレス因子を分泌することができ、したがって、間葉系幹細胞は、人体の酸化ストレス状態を効果的に改善することができる。
【0055】
本発明の作用原理および技術的効果をさらに説明するために、発明者らは、一般的なタイプの新型コロナウイルス陽性患者(すなわち、SARS-CoV-2ウイルス感染患者)を選択してMSC治療群サンプルおよび従来治療群(すなわち、元の治療計画)サンプルとしての2つのグループに均等に分け、ここで、MSC治療群の治療計画は、調製された間葉系幹細胞製剤を、MSC治療群に組み込むことであり、ウイルス感染患者のための併用投与を行うための元の治療計画における唯一の干渉因子として機能し、従来治療群の治療計画は、元の治療計画、すなわち、中華人民共和国国家衛生健康委員会の総局および国家中医薬管理局事務局によって発行された新型コロナウイルス肺炎の診断および治療計画で採用された治療計画を指す。結果は、従来治療群と比較して、回復後のMSC治療群の患者の酸化ストレス状態を効果的に改善することができることを示し、したがって、MSC治療群における間葉系幹細胞製剤の併用治療は、ウイルス感染回復後の患者の炎症反応と免疫細胞の過剰な活性化を効果的に抑制し、ウイルス感染回復後の患者を炎症指標と心筋障害指標が効果的に改善されたと結論付ける。間葉系幹細胞は人体の酸化ストレス状態、特にウイルス感染患者の酸化ストレス状態を改善することができ、間葉系幹細胞はウイルス感染回復後の患者の炎症反応と免疫細胞の過剰な活性化を抑制することは、複数の抗酸化ストレス遺伝子の高発現と複数の抗酸化ストレス因子の分泌によって達成されると結論づける。
【0056】
前記間葉系幹細胞製剤は、複数の抗酸化ストレス遺伝子を高度に発現し、酸化損傷環境において複数の抗酸化ストレス因子を分泌し、人体の酸化ストレス状態を効果的に改善することができることが分かる。
【0057】
図5に示すように、本発明は、ウイルス感染患者における最終分化細胞遺伝子発現の調節におけるMSCの応用を提供し、MSCを、患者の最終分化細胞亜群における抗ウイルス関連遺伝子の発現および最終分化細胞亜群における血液凝固関連遺伝子の発現の調節に応用することにより、ウイルス感染によって誘発される合併症の効果的な治療を達成する。ここで、前記ウイルス感染によって誘発される合併症は、急性呼吸困難症候群を指し、その応用の具体的なステップは、
MSC製剤を調製するS1と、
ウイルス感染患者をスクリーニングして少なくともMSC治療群および従来治療群を含むグループに分けるようにグループ化するステップS2と、
従来治療群におけるウイルス感染患者に対して従来の治療を行うと同時に、調製したMSC製剤をMSC治療群に組み込み、MSC治療群のウイルス感染患者に対して併用治療を行うステップS3と、
シングルセルシーケンシング技術を使用して、回復後の患者の末梢血単球をサンプリングおよび分析して、回復後の患者の最終分化細胞亜群における抗ウイルス関連遺伝子の発現及び最終分化細胞亜群における血液凝固関連遺伝子の発現を取得するステップS4と、を含む。
【0058】
図2に示すように、前記MSC製剤の調製方法は、
臍帯を集めてペトリ皿に入れ、臍帯組織を生理食塩水で洗浄するステップS11と、
洗浄した臍帯組織を小さな組織片に切り、ペトリ皿に植えて培養するステップS12と、
ペトリ皿の培養液を取り除き、生理食塩水で洗浄し、トリプシンを加えてペトリ皿の細胞が消化完成されるまで消化をし、消化完成すると、停止液を加えて消化を止め、細胞懸濁液を遠心分離管に移して遠心分離し、上澄み液を廃棄し、次に、適切な量の培養液で細胞を再懸濁してカウントし、最後に、カウント結果に従って新しいペトリ皿に細胞懸濁液を植えて培養するステップS13と、
ステップS13における新しいペトリ皿の培養液を取り除き、生理食塩水で洗浄してトリプシンを加えてペトリ皿の細胞が消化完成されるまで消化をし、消化完了すると、停止液を加えて消化を止め、次に、セルストレーナーで濾過し、濾過した細胞懸濁液を遠心分離管に移してカウントし、遠心分離して上澄み液を廃棄し、次に、細胞調製懸濁液を調製し、細胞調製懸濁液を追加して細胞を再懸濁し、最後に、細胞懸濁液をトランスファーバッグに移し、低温環境に置いて取りに備え、MSC製剤の調製を完了するステップS14と、
ステップS14で調製されたMSC製剤が合格できるかを検査するステップS15と、を含む。
【0059】
本実施例において、前記MSC製剤は、ヒト臍帯間葉系幹細胞(Human umbilical cord mesenchymal stem cells、hUC-MSC)を使用して調製されたものであって、その調製プロセスは消毒後のクリーンベンチで実行され、調製プロセスで必要な器具と消耗品等は、75%のアルコールで消毒することを必要とし、調製プロセスでは、ペトリ皿のコレクションまたは細胞及び特定の操作プロセスを詳細にマークすることも必要である。同時に、ステップS13とステップS14の間に幹細胞を凍結することもでき、ステップS14の幹細胞製剤の調製を行う必要がある前に、凍結した幹細胞を蘇生させる必要があり、ここで幹細胞の凍結および蘇生操作は従来技術に属し、ここでは更に詳細に釈明することはない。
【0060】
本実施例において、前記MSC製剤の合格検査は、コレクションの品質検査、臍帯間葉系幹細胞の一次細胞バンクのストレージ検査、および臍帯間葉系幹細胞のマスター細胞バンクのストレージ検査も含み、合格検査のステップと基準は、既存の一般的な検査と一致しているため、ここでは更に詳細に釈明することはない。
【0061】
ここで、前記ステップS3の併用療法とは、ステップS1で調製したMSC製剤をMSC治療群の併用治療計画に組み込むことを指し、MSC製剤は、元の従来の治療計画における唯一の干渉因子としてウイルス感染患者に併用投与を実施し、同時に併用治療計画で併用投与状況を追跡および記録する。本実施例において、MSC治療群プロセス全体で、MSC製剤はすべて末梢静脈から注入され、前記間葉系幹細胞製剤の注入量は、体重1キログラムあたり(0.8~1)×10個細胞であり、前記注入回数は3回、二つの注入はは3dおきに行われて、注入の0~15min、注入速度は10滴/minであり、明らかな反応がない場合は、20滴/minの速度で注入を続ける。ウイルス感染患者体内の単球数は、健康な人体内のよりも多く、特にCD14+単球亜群(CD14+mono4及びCD14+mono5、つまりCD14細胞の4番目の亜群およびCD14細胞の5番目の亜群)は、健康な人体内にはほとんど見られず、CD14+mono5細胞亜群の遺伝子IFIT1、IFIT2、IFIT3、およびISG15は、主にウイルス防御のプロセスに関与し、ウイルスゲノムの複製とインターフェロンαに対する細胞応答の調節を担当し、同時に、CD14+mono4細胞亜群の遺伝子PPBP、遺伝子PF4、遺伝子TREML1、および遺伝子PF4V1は、主に血小板脱顆粒のプロセスに関与し、白血球の走化性およびリポ多糖への応答を積極的に調節し、よって、ウイルス感染患者の感染と合併症の期間中、細胞亜群CD14+mono5とCD14+mono5が抗ウイルス、抗感染、血液凝固において重要な役割を果たしていることがわかる。
【0062】
本実施例において、選択した一般的な新型コロナウイルス陽性患者(すなわちSARS-CoV-2ウイルス感染患者)を2つのグループに均等に分け、MSC治療群と従来治療群(つまり元の治療計画)のサンプルとして使用し、サンプルの2つのグループのウイルス感染患者が治癒した後、回復した患者の末梢血単球をサンプリングし、次に、シングルセルシーケンシング技術を使用して、それぞれ各グループの回復後の患者から収集された末梢血単球サンプル(すなわち、ウイルス感染患者の合併症からの細胞サンプル)をグループ化して分析し、処理し、MSC治療群と従来治療群の回復後患者体内も抗ウイルス関連遺伝子発現量と血液凝固機能関連遺伝子発現量が得られ、詳細は以下である。表5は、MSC治療群と従来治療群の単球における抗ウイルス関連遺伝子発現量を示し、表6は、MSC治療群と従来治療群におけるウイルスに対する最も効果的なI型インターフェロン信号経路と抗ウイルス関連遺伝子発現量を示し、表7に、MSC治療群と従来治療群における血液凝固機能関連遺伝子発現量を示す。ここで、表のp値が0.01未満の場合は、MSC治療群と従来治療群の間のデータに有意差があることを意味し、データが小さいほど差が大きいことに注意する必要がある。
【0063】
【表5】
【0064】
【表6】
【0065】
表5、表6、図6図7、および図8から、CD14+mono5細胞亜群は健康な人体内にはほとんど見られないことがわかり、これは、単球のCD14+mono5細胞亜群がウイルス感染患者にのみ存在することを示し、また、MSC治療群のうちCD14+mono5細胞亜群の割合は1.4%であったのに対し、従来治療群のうちCD14+mono5細胞亜群の割合は6.0%であり、同時に、従来治療群と比較して、MSC治療群のI型インターフェロン信号経路および抗ウイルス応答に関与する一連の遺伝子(遺伝子IFIT1、遺伝子IFIT2、遺伝子IFIT3、および遺伝子ISG15)の遺伝子発現レベルは有意に低く、MSC治療群のCD14+mono5細胞亜群の遺伝子発現レベルも低い。
【0066】
【表7】
【0067】
表6、表7、図6図7、および図8から、CD14+mono4細胞亜群は健康な人体内にはほとんど見られないことがわかり、これは、単球のCD14+mono4細胞亜群がウイルス感染患者にのみ存在することを示し、かつ、MSC治療群のCD14+mono4細胞亜群の割合は3.3%であり、従来治療群のCD14+mono5細胞亜群の割合は5.3%であり、同時に、従来治療群と比較して、MSC治療群は、I型インターフェロン信号経路に関与する遺伝子の発現レベルが有意に低く、MSC治療群も、CD14+mono4細胞亜群の遺伝子発現レベルが低かった。
【0068】
要約すると、MSCは、ウイルス感染患者体内の単球の過剰な活性化を抑制することができ、これは、単球が過剰な活性化から回復するのに非常に有益であり、MSCは、ウイルス感染患者体内の活性化単球の数(抗ウイルス関連遺伝子を発現するmono5および凝固関連遺伝子を発現するmono4を含む)を効果的に抑制し、炎症性遺伝子の遺伝子発現レベルを調節することができる。したがって、MSCを介してウイルス感染患者の最終分化細胞の遺伝子発現を調節することで、ウイルス感染患者の臨床症状を改善し、患者の死亡率を大幅に減らし、ウイルス感染によって引き起こされる合併症を効果的に治療できる。
【0069】
表5、表6、および表7で、avg-logFC値が正の場合、MSC治療群の遺伝子発現量が従来治療群よりアップレギュレートされていることを示し、avg-logFC値が負の場合、MSC治療群の遺伝子発現量が従来治療群よりダウンレギュレートされていることを示し、p値が0.05未満の場合、MSC治療群と従来治療群では遺伝子発現量に有意差があることを示している。
【0070】
上記は、本発明の好ましい実施形態にすぎず、本発明の原理から逸脱することなく、当業者にとって、いくつかの改善および修正を行うことができ、これらの改善および修正もまた本発明の保護範囲のうちのものと見なされるべきであることに留意されたい。












図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
【手続補正書】
【提出日】2021-01-18
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ウイルス感染患者の単球の調節、ウイルス感染患者の最終分化細胞の遺伝子発現の調節、または人体の酸化ストレス状態の改善における間葉系幹細胞の応用。
【請求項2】
前記間葉系幹細胞がウイルス感染患者の単球の調節に応用される場合、前記間葉系幹細胞は、ウイルス感染によって誘発された合併症の効果的な治療を達成するために、ウイルス感染患者の単球の遺伝子発現及び/又は毒性遺伝子発現を調節するために使用され、
前記間葉系幹細胞がウイルス感染患者の最終分化細胞の遺伝子発現の調節に応用される場合、前記間葉系幹細胞は、ウイルス感染によって誘発された合併症の効果的な治療を達成するために、ウイルス感染患者の最終分化細胞亜群における抗ウイルス関連遺伝子の発現及び/又は血液凝固関連遺伝子の発現を調節するために使用され、
ここで、前記ウイルス感染によって誘発される合併症とは、急性呼吸困難症候群を指し、
前記間葉系幹細胞が人体の酸化ストレス状態の改善に応用される場合、前記間葉系幹細胞は、ウイルス感染患者の酸化ストレス状態を改善するために使用され
ここで、前記間葉系幹細胞は、複数の抗酸化ストレス遺伝子を高度に発現し、複数の抗酸化ストレス因子を分泌することにより、ウイルス感染患者の酸化ストレス状態を改善するために使用されることを特徴とする請求項1に記載の応用。
【請求項3】
前記間葉系幹細胞で高度に発現する抗酸化ストレス遺伝子には、GPX4、GSTP1、PRDX1、PRDX2、PRDX3、PRDX4、PRDX5、PRDX6、SOD1、SOD2、TXNRD1、NQO1、PARK7、PSMB5、SLC38A1及びVIMが含まれ、
酸化ストレス条件下で前記間葉系幹細胞によって分泌される抗酸化ストレス因子には、GSTP1、PRDX1、PRDX2、VIM、GPX4、PSMB5及びSOD1が含まれることを特徴とする請求項に記載の応用。
【請求項4】
前記間葉系幹細胞がウイルス感染患者の単球の調節に応用される場合、前記応用のステップには、
間葉系幹細胞製剤を調製するステップS1と、
ウイルス感染患者をスクリーニングして、少なくとも間葉系幹細胞治療群および従来治療群を含むグループに分けるようにグループ化するステップS2と、
従来治療群でウイルス感染患者に対して従来の治療を行うと同時に、調製した間葉系幹細胞製剤を従来治療群の従来の治療計画に組み込み、間葉系幹細胞治療群のウイルス感染患者に対して併用治療を行うステップS3と、
シングルセルシーケンシング技術を使用して、回復後の患者の末梢血単球をサンプリングおよび分析して、回復後の患者の単球遺伝子発現および単球毒性遺伝子発現状況を取得するステップS4と、
を含むことを特徴とする請求項に記載の応用。
【請求項5】
前記間葉系幹細胞がウイルス感染患者の最終分化細胞の遺伝子発現の調節に応用される場合、前記応用のステップには、
間葉系幹細胞製剤を調製するステップS1と、
ウイルス感染患者をスクリーニングして、少なくとも間葉系幹細胞治療群および従来治療群を含むグループに分けるようにグループ化するステップS2と、
従来治療群でウイルス感染患者に対して従来の治療を行うと同時に、調製した間葉系幹細胞製剤を従来治療群の従来の治療計画に組み込み、間葉系幹細胞治療群のウイルス感染患者に対して併用治療を行うステップS3と、
シングルセルシーケンシング技術を使用して、回復後の患者の末梢血単球をサンプリングおよび分析して、回復後の患者の最終分化細胞亜群における抗ウイルス関連遺伝子の発現および最終分化細胞亜群における血液凝固関連遺伝子発現状況を取得するステップS4と、
を含むことを特徴とする請求項に記載の応用。
【請求項6】
前記回復後の患者には、間葉系幹細胞治療群で治癒したウイルス感染患者と、従来治療群で治癒したウイルス感染患者が含まれることを特徴とする請求項またはに記載の応用。
【請求項7】
前記間葉系幹細胞が人体の酸化ストレス状態の改善に応用される場合、前記応用のステップには、
間葉系幹細胞製剤を調製するステップS1と、
具体的な実施には、シングルセルシークエンシング方法を使用して調製された間葉系幹細胞を検出すること、および前記間葉系幹細胞の複数の抗酸化ストレス遺伝子の発現状況を分析することが含まれる、シングルセルシークエンシング方法を使用して、ステップS1で調製した間葉系幹細胞を検出し、間葉系幹細胞における抗酸化ストレス遺伝子の発現状況を分析するステップS2と、
具体的な実施には、まず調製した間葉系幹細胞を従来の条件と異なる濃度の酸化ストレス刺激下で培養し、次に異なる条件と異なる期間の下で間葉系幹細胞における抗酸化ストレス因子の分泌状況を検出および分析することが含まれる、ステップS1で調製した間葉系幹細胞を異なる酸化ストレス刺激条件下でそれぞれ培養し、培養した間葉系幹細胞における抗酸化ストレス因子の分泌状況を検出するステップS3と、
を含むことを特徴とする請求項に記載の応用。
【請求項8】
前記間葉系幹細胞製剤の調製方法は、
臍帯を集めてペトリ皿に入れ、臍帯組織を生理食塩水で洗浄するステップS11と、
洗浄した臍帯組織を小さな組織片に切り、ペトリ皿に植えて培養するステップS12と、
ペトリ皿の培養液を取り除き、生理食塩水で洗浄し、トリプシンを加えてペトリ皿の細胞が消化完了するまで消化をし、消化完了すると、停止液を加えて消化を止め、細胞懸濁液を遠心分離管に移して遠心分離し、上澄み液を廃棄し、次に、適切な量の培養液で細胞を再懸濁してカウントし、最後に、カウント結果に従って新しいペトリ皿に細胞懸濁液を植えて培養するステップS13と、
ステップS13における新しいペトリ皿の培養液を取り除き、生理食塩水で洗浄してトリプシンを加えてペトリ皿の細胞が消化完了するまで消化をし、消化完了すると、停止液を加えて消化を止め、次に、セルストレーナーで濾過し、濾過した細胞懸濁液を遠心分離管に移してカウントし、遠心分離して上澄み液を廃棄し、次に、細胞調製懸濁液を調製し、細胞調製懸濁液を追加して細胞を再懸濁し、最後に、細胞懸濁液をトランスファーバッグに移し、低温環境に置いて取りに備え、そうすると間葉系幹細胞製剤の調製が完了となるステップS14と、
ステップS14で調製された間葉系幹細胞製剤が合格であるかを検査するステップS15と、
を含むことを特徴とする請求項4、5及び7のいずれか一項に記載の応用。
【請求項9】
ウイルス感染患者における最終分化細胞遺伝子発現、単球遺伝子発現を調節する、または人体の酸化ストレス状態を改善するための方法であって、
間葉系幹細胞製剤を調製するステップ1)と、
末梢静脈注入による間葉系幹細胞製剤治療を含む、ウイルス感染患者の併用治療のために間葉系幹細胞製剤を、従来の治療プログラムに組み込むステップ2)と、を含む方法。
【請求項10】
前記間葉系幹細胞製剤の注入量は、体重1キログラムあたり(0.8~1)×10個細胞であり、前記間葉系幹細胞製剤の末梢静脈注入の回数は3回であり、二つの注入は3dおきに行われることを特徴とする請求項に記載の方法。