(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022050353
(43)【公開日】2022-03-30
(54)【発明の名称】ゴム配合用変性ポリイソブチレン重合体及びこれを含むゴム組成物
(51)【国際特許分類】
C08F 8/30 20060101AFI20220323BHJP
C08F 8/46 20060101ALI20220323BHJP
C08F 8/42 20060101ALI20220323BHJP
C08L 15/00 20060101ALI20220323BHJP
C08L 21/00 20060101ALI20220323BHJP
【FI】
C08F8/30
C08F8/46
C08F8/42
C08L15/00
C08L21/00
【審査請求】有
【請求項の数】17
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021150386
(22)【出願日】2021-09-15
(31)【優先権主張番号】10-2020-0119692
(32)【優先日】2020-09-17
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(71)【出願人】
【識別番号】521319568
【氏名又は名称】ディーエル ケミカル カンパニー リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(74)【代理人】
【識別番号】100135079
【弁理士】
【氏名又は名称】宮崎 修
(72)【発明者】
【氏名】パク ミンソプ
(72)【発明者】
【氏名】イ セヒョン
(72)【発明者】
【氏名】リュ スンビン
(72)【発明者】
【氏名】キム ミョンソク
【テーマコード(参考)】
4J002
4J100
【Fターム(参考)】
4J002AC03X
4J002AC07X
4J002AC08X
4J002AC09X
4J002AC11W
4J002BB15X
4J002BB18X
4J002BB24X
4J002BB27X
4J002BF03X
4J002CD18X
4J002CK05X
4J002CP03X
4J002DA036
4J002DJ017
4J002FD016
4J002FD017
4J002GN01
4J100AA06P
4J100BA34H
4J100BA77H
4J100BC55H
4J100CA01
4J100CA31
4J100DA01
4J100DA04
4J100DA09
4J100DA28
4J100DA29
4J100FA03
4J100FA19
4J100HA44
4J100HA57
4J100HA61
4J100HC30
4J100HC43
4J100HC78
4J100JA29
(57)【要約】 (修正有)
【課題】ゴム配合用変性ポリイソブチレン重合体をゴムの添加剤として適用するとき、ゴムの加工性を高めるとともに充填剤の分散性を大幅に向上させ、高いグリップ性能及び転がり抵抗を同時に改善する、ゴム配合用変性ポリイソブチレン重合体を提供する。
【解決手段】ゴム配合用変性ポリイソブチレン重合体は、主鎖がイソブチレンであるポリイソブチレン;不飽和ジカルボン酸無水物;及びアミノ基含有シラン化合物を含む反応物を反応させて製造され、ジアミド(diamide)構造を含む。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
主鎖がイソブチレンであるポリイソブチレン;不飽和ジカルボン酸無水物;及びアミノ基含有シラン化合物;を含む反応物を反応させて製造され、
ジアミド(diamide)構造を含むことを特徴とする、ゴム配合用変性ポリイソブチレン重合体。
【請求項2】
前記ゴム配合用変性ポリイソブチレン重合体は、
ポリイソブチレンと不飽和ジカルボン酸無水物とを反応させて製造された誘導体と;アミノ基含有シラン化合物と;を反応させて製造されたものである、請求項1に記載のゴム配合用変性ポリイソブチレン重合体。
【請求項3】
前記ポリイソブチレン:不飽和ジカルボン酸無水物のモル比は1:0.7~2であり、前記誘導体:アミノ基含有シラン化合物のモル比は1:2~5である、請求項2に記載のゴム配合用変性ポリイソブチレン重合体。
【請求項4】
前記ポリイソブチレンは、数平均分子量が200~10,000g/molである、請求項1に記載のゴム配合用変性ポリイソブチレン重合体。
【請求項5】
前記ポリイソブチレンの分子量分布は1~5である、請求項1に記載のゴム配合用変性ポリイソブチレン重合体。
【請求項6】
前記不飽和ジカルボン酸無水物は、マレイン酸無水物(maleic anhydride)、イタコン酸無水物(itaconic anhydride)、シトラコン酸無水物(citraconic anhydride)、プロフェニルコハク酸無水物(propenyl succinic anhydride)及び2-ペンテン二酸無水物(2-pentendionic anhydride)よりなる群から選ばれるいずれか1種または2種以上である、請求項1に記載のゴム配合用変性ポリイソブチレン重合体。
【請求項7】
前記アミノ基含有シラン化合物は、下記化学式1を満足するものである、請求項1に記載のゴム配合用変性ポリイソブチレン重合体。
(化学式1)
【化5】
(式中、
R
1及びR
2は、互いに独立して(C1-C5)アルキレン、(C1-C5)アミノアルキレン、カルボニレン及び(C1-C5)アルキルカルボニレンから選択され、
R
3、R
4及びR
5は、互いに独立して水素、ヒドロキシ、(C1-C20)アルキル、(C1-C12)シクロアルキル、(C2-C14)アシルオキシ、(C4-C20)アリールオキシ、(C5-C30)アラルオキシ、(C1-C20)アミン及び(C1-C12)アルコキシから選択され、
Aはメチレン、S
nまたは((R
6)NR
7)
nであり、この際、R
6は水素または(C1-C5)アルキルであり、R
7は(C1-C5)アルキレンであり、nは1~10の整数である。)
【請求項8】
前記アミノ基含有シラン化合物は、3-アミノプロピルトリメトキシシラン、3-アミノプロピルトリエトキシシラン、3-アミノプロピルメチルジメトキシシラン、3-アミノプロピルメチルジエトキシシラン、3-(2-アミノエチルアミノ)プロピルトリメトキシシラン、3-(2-アミノエチルアミノ)プロピルトリエトキシシラン、N-(2-アミノエチル)-3-アミノプロピルトリメトキシシラン、N-(2-アミノエチル)-3-アミノプロピルトリエトキシシラン、3-アミノプロピルシラントリオール、(3-(2-アミノエチルアミノ)プロピルメチルジメトキシシラン)、2-エタンジアミンN-(2-アミノエチル)-N’-[3-(トリメトキシシリル)プロピル]-1、1-[3-(トリメトキシシリル)プロピル]尿素及び1-[3-(トリエトキシシリル)プロピル)]尿素よりなる群から選ばれるいずれか1種または2種以上である、請求項7に記載のゴム配合用変性ポリイソブチレン重合体。
【請求項9】
前記ゴム配合用変性ポリイソブチレン重合体は、下記化学式2を満足するジアミド(diamide)構造の末端基を含むものである、請求項1に記載のゴム配合用変性ポリイソブチレン重合体。
(化学式2)
【化6】
(式中、
L
1及びL
2は、互いに独立して直鎖状または分岐状の(C1-C5)アルキレンであり、
R
1及びR
2は、互いに独立して(C1-C5)アルキレン、(C1-C5)アミノアルキレン、カルボニレン及び(C1-C5)アルキルカルボニレンから選択され、
R
3、R
4及びR
5は、互いに独立して水素、ヒドロキシ、(C1-C20)アルキル、(C1-C12)シクロアルキル、(C2-C14)アシルオキシ、(C4-C20)アリールオキシ、(C5-C30)アラルオキシ、(C1-C20)アミン及び(C1-C12)アルコキシから選択され、
Aはメチレン、S
nまたは((R
6)NR
7)
nであり、ここで、R
6は水素または(C1-C5)アルキルであり、R
7は(C1-C5)アルキレンであり、nは1~10の整数であり、
*は、ポリイソブチレンとの連結部である。)
【請求項10】
前記ゴム配合用変性ポリイソブチレン重合体は、X線蛍光分析の結果、Si含有量が0.03~10質量%である、請求項1に記載のゴム配合用変性ポリイソブチレン重合体。
【請求項11】
前記ゴム配合用変性ポリイソブチレン重合体は、150℃での粘度が1~15,000cPである、請求項1に記載のゴム配合用変性ポリイソブチレン重合体。
【請求項12】
前記ゴム配合用変性ポリイソブチレン重合体は、数平均分子量が800~10,000g/molである、請求項1に記載のゴム配合用変性ポリイソブチレン重合体。
【請求項13】
前記ゴム配合用変性ポリイソブチレン重合体の分子量分布は1~5である、請求項1に記載のゴム配合用変性ポリイソブチレン重合体。
【請求項14】
請求項1乃至13のいずれか一項に記載のゴム配合用変性ポリイソブチレン重合体;
ゴムベース;及び
充填剤;を含むゴム組成物。
【請求項15】
前記充填剤はシリカ、カーボンブラック及びこれらの混合物である、請求項14に記載のゴム組成物。
【請求項16】
前記ゴムベースは、ブタジエンゴム、ブチルゴム、乳化重合スチレンブタジエンゴム(E-SBR)、溶液重合スチレンブタジエンゴム(S-SBR)、エピクロロヒドリンゴム、ニトリルゴム、水素化ニトリルゴム、臭素化ポリイソブチルイソプレン-co-パラメチルスチレン(brominated polyisobutyl isoprene-co-paramethyl styrene;BIMS)ゴム、ウレタンゴム、フッ素ゴム、シリコーンゴム、スチレンエチレンブタジエンスチレン共重合体ゴム、エチレンプロピレンゴム、エチレンプロピレンジエンモノマーゴム、ハイパロンゴム、クロロプレンゴム、エチレン酢酸ビニルゴム及びアクリルゴムよりなる群から選ばれるいずれか1種または二種以上を含む、請求項14に記載のゴム組成物。
【請求項17】
前記ゴム組成物は、ゴムベース100重量部に対して50~150重量部のシリカ、5~20重量部のカーボンブラック及び2~40重量部のゴム配合用変性ポリイソブチレン重合体を含む、請求項14に記載のゴム組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ゴム配合用変性ポリイソブチレン重合体及びこれを含むゴム組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
ポリイソブチレンは、一般に、ナフサの分解過程から派生する炭素数4(C4)のオレフィン成分をフリーデル-・クラフツ型触媒(Friedel-Craft type catalyst)を用いて重合したものであり、約300~10,000の数平均分子量(Mn)を有する。
【0003】
C4原料中の1,3-ブタジエンを抽出して残ったものをC4残渣油-1(C4 raffinate-1)とし、ここにはイソブタン(iso-butane)、n-ブタン(normal-butane)のパラフィン類と1-ブテン(1-butene)、2-ブテン(2-butene)、イソブテン(isobutene)などのオレフィンが含まれており、これらの中でも、イソブテンの含有量は約30~50重量%である。前記C4残渣油-1は、オクタン価向上剤であるメチル-t-ブチルエーテル(methylt-butylether:MTBE)またはポリイソブチレンの製造に主に使用され、C4残渣油-1のオレフィン成分の中でも特にイソブテンの反応性が最も高いので、生成されたポリイソブチレンは、主にイソブチレン単位で構成される。ポリイソブチレンは、分子量の増加に伴って粘度が高まるが、100℃で約4~40000cSt(centi-stokes)の粘度を有する。
【0004】
特許文献1には、高反応性ポリイソブチレンを用いてタイヤトレッドのグリップ性能を改善させる方法が開示されている。また、特許文献2には、カルボキシル化液状イソプレンゴムを用いて摩耗性能、燃費性能及び制動性能を改善させる方法が開示されている。このようにゴム、特にタイヤトレッドに制動性能と燃費性能を高めるための努力が行われている。
【0005】
グリップ力の向上に関連して、特許文献3には、スチレン-ブタジエンゴムにセサミ樹脂、サンフラワー樹脂、ココナッツ樹脂などのペレット型植物系樹脂を添加したマスターバッチを使用することにより、高速条件の下で優れたグリップ性能と耐摩耗性能を示す組成物が開示されている。前述したように、グリップ力は、タイヤの表面が路面によく密着するようにする技術であって、できる限りタイヤの弾性に優れたものが有利である。しかし、回転抵抗と一緒に考慮する場合、回転抵抗は、路面に対する密着力が低いほど有利であって、タイヤの回転抵抗とグリップ力は互いに相反する特性を有する。つまり、回転抵抗が低いタイヤは、燃費効率性の面では有利であるが、道路が濡れているときに道路との密着性が弱いことがある。このため、最近、タイヤの開発は、回転抵抗またはグリップ力を高める一次元的な方式から外れ、その両方を同時に調節しようとする方式で進められている。
【0006】
例えば、特許文献4及び特許文献5には、シリカと一緒に高軟化点を有する改質されたテルペンフェノール樹脂を適用することにより、フェノールが合成ゴムとの相溶性を高めて樹脂の流動性を減少させることで、回転抵抗性能の低下なしに濡れた路面でのグリップ性能を向上させることができると開示されている。また、特許文献6には、Tgが-50~-40℃であり、ムーニー粘度が60~80であり、エポキシ化度が5~50%であるエポキシ化天然ゴム20~50重量部を含むことにより、タイヤの濡れた路面制動力を改善することができ、かつ、耐摩耗性能の低下なしに低回転抵抗性能または燃費性能とともに耐久性能をバランスよく向上させることができるゴム組成物が開示されている。このように様々な試みにも拘らず、タイヤの回転抵抗とグリップ力を同時に満足すべき数値を有する技術が求められる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】韓国公開特許第10-2011-0072253号公報
【特許文献2】韓国公開特許第10-2007-0096748号公報
【特許文献3】韓国公開特許第10-2016-0002044号公報
【特許文献4】韓国公開特許第10-2015-0024701号公報
【特許文献5】米国特許第8,637,606号明細書
【特許文献6】韓国登録特許第10-1591276号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明の目的は、加工性を改善させるとともに、充填剤との混合時の分散性に優れるうえ、グリップ性能及び転がり抵抗に優れたゴム組成物の製造が可能なゴム配合用変性ポリイソブチレン重合体を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の一態様は、主鎖がイソブチレンであるポリイソブチレン;不飽和ジカルボン酸無水物;及びアミノ基含有シラン化合物を含む反応物を反応させて製造され、ジアミド(diamide)構造を含むことを特徴とする、ゴム配合用変性ポリイソブチレン重合体に関する。
【0010】
前記一態様において、前記ゴム配合用ジアミド形態の変性ポリイソブチレン重合体は、ポリイソブチレンと不飽和ジカルボン酸無水物とを反応させて製造された誘導体と;アミノ基含有シラン化合物と;を反応させて製造されたものであることができる。
【0011】
前記一態様において、前記ポリイソブチレン:不飽和ジカルボン酸無水物のモル比は1:0.7~2であり、前記誘導体:アミノ基含有シラン化合物のモル比は1:2~5であることができる。
【0012】
前記一態様において、前記ポリイソブチレンは、数平均分子量が200~10,000g/molであることができ、前記ポリイソブチレンの分子量分布は、1~5であることができる。
【0013】
前記一態様において、前記不飽和ジカルボン酸無水物は、マレイン酸無水物(maleic anhydride)、イタコン酸無水物(itaconic anhydride)、シトラコン酸無水物(citraconic anhydride)、プロフェニルコハク酸無水物(propenyl succinic anhydride)及び2-ペンテン二酸無水物(2-pentendionic anhydride)よりなる群から選ばれるいずれか1種または2種以上であることができる。
【0014】
前記一態様において、前記アミノ基含有シラン化合物は、下記化学式1を満足するものであることができる。
(化学式1)
【0015】
【化1】
(式中、
R
1及びR
2は、互いに独立して(C1-C5)アルキレン、(C1-C5)アミノアルキレン、カルボニレン及び(C1-C5)アルキルカルボニレンから選択され、
R
3、R
4及びR
5は、互いに独立して水素、ヒドロキシ、(C1-C20)アルキル、(C1-C12)シクロアルキル、(C2-C14)アシルオキシ、(C4-C20)アリールオキシ、(C5-C30)アラルオキシ、(C1-C20)アミン及び(C1-C12)アルコキシから選択され、
Aはメチレン、S
nまたは((R
6)NR
7)
nであり、この際、R
6は水素または(C1-C5)アルキルであり、R
7は(C1-C5)アルキレンであり、nは1~10の整数である。)
前記一態様において、前記アミノ基含有シラン化合物は、3-アミノプロピルトリメトキシシラン、3-アミノプロピルトリエトキシシラン、3-アミノプロピルメチルジメトキシシラン、3-アミノプロピルメチルジエトキシシラン、3-(2-アミノエチルアミノ)プロピルトリメトキシシラン、3-(2-アミノエチルアミノ)プロピルトリエトキシシラン、N-(2-アミノエチル)-3-アミノプロピルトリメトキシシラン、N-(2-アミノエチル)-3-アミノプロピルトリエトキシシラン、3-アミノプロピルシラントリオール、(3-(2-アミノエチルアミノ)プロピルメチルジメトキシシラン)、2-エタンジアミンN-(2-アミノエチル)-N’-[3-(トリメトキシシリル)プロピル]-1、1-[3-(トリメトキシシリル)プロピル]尿素及び1-[3-(トリエトキシシリル)プロピル)]尿素よりなる群から選ばれるいずれか1種または2種以上であることができる。
【0016】
前記一態様において、前記ゴム配合用変性ポリイソブチレン重合体は、下記化学式2を満足するジアミド(diamide)構造の末端基を含むものであることができる。
(化学式2)
【0017】
【化2】
(式中、
L
1及びL
2は、互いに独立して直鎖状または分岐状の(C1-C5)アルキレンであり、
R
1及びR
2は、互いに独立して(C1-C5)アルキレン、(C1-C5)アミノアルキレン、カルボニレン及び(C1-C5)アルキルカルボニレンから選択され、
R
3、R
4及びR
5は、互いに独立して水素、ヒドロキシ、(C1-C20)アルキル、(C1-C12)シクロアルキル、(C2-C14)アシルオキシ、(C4-C20)アリールオキシ、(C5-C30)アラルオキシ、(C1-C20)アミン及び(C1-C12)アルコキシから選択され、
Aはメチレン、S
nまたは((R
6)NR
7)
nであり、ここで、R
6は水素または(C1-C5)アルキルであり、R
7は(C1-C5)アルキレンであり、nは1~10の整数であり、
*は、ポリイソブチレンとの連結部である。)
前記一態様において、前記ゴム配合用変性ポリイソブチレン重合体は、X線蛍光分析の結果、Si含有量が0.03~10質量%であることができる。
【0018】
前記一態様において、前記ゴム配合用変性ポリイソブチレン重合体は、150℃での粘度が1~15,000cPであることができる。
【0019】
前記一態様において、前記ゴム配合用変性ポリイソブチレン重合体は、数平均分子量が800~10,000g/molであることができ、前記ゴム配合用変性ポリイソブチレン重合体の分子量分布は、1~5であることができる。
【0020】
また、本発明の他の一態様は、前述したゴム配合用変性ポリイソブチレン重合体;ゴムベース;及び充填剤;を含むゴム組成物に関する。
【0021】
前記他の一態様において、前記充填剤は、シリカ、カーボンブラック及びこれらの混合物であることができる。
【0022】
前記他の一態様において、前記ゴムベースは、ブタジエンゴム、ブチルゴム、乳化重合スチレンブタジエンゴム(E-SBR)、溶液重合スチレンブタジエンゴム(S-SBR)、エピクロロヒドリンゴム、ニトリルゴム、水素化ニトリルゴム、臭素化ポリイソブチルイソプレン-co-パラメチルスチレン(brominated polyisobutyl isoprene-co-paramethyl styrene;BIMS)ゴム、ウレタンゴム、フッ素ゴム、シリコーンゴム、スチレンエチレンブタジエンスチレン共重合体ゴム、エチレンプロピレンゴム、エチレンプロピレンジエンモノマーゴム、ハイパロンゴム、クロロプレンゴム、エチレン酢酸ビニルゴム及びアクリルゴムよりなる群から選ばれるいずれか1種または二種以上であることができる。
【0023】
前記他の一態様において、前記ゴム組成物は、ゴムベース100重量部に対して50~150重量部のシリカ、5~20重量部のカーボンブラック及び2~40重量部のゴム配合用変性ポリイソブチレン重合体を含むことができる。
【発明の効果】
【0024】
本発明によるゴム配合用変性ポリイソブチレン重合体は、ポリイソブチレンと不飽和ジカルボン酸無水物とを反応させて製造された誘導体と、アミノ基含有シラン化合物とを反応させて製造されることを特徴とし、これをゴム組成物に適用するとき、加工性を改善させるとともに充填剤の分散性を大幅に向上させ、高いグリップ性能及び低い転がり抵抗を示す特徴がある。
【0025】
本発明によるゴム配合用変性ポリイソブチレン重合体は、二つのアミド基を含むジアミド構造を含み、各アミド基の末端に存在するシラン元素位置でゴム配合組成物内のカップリング剤、末端変性ゴム、シリカ充填剤などとの反応を介してシリカ充填剤の分散性の改善及びゴム配合物の物性改善効果を発現する特徴がある。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【
図1】イミド(imide)構造の変性ポリイソブチレン重合体の
1H NMR(溶媒:クロロホルム(Chloroform、CDCl
3)である。
【
図2】ジアミド(diamide)構造の変性ポリイソブチレン重合体の
1H NMR(溶媒:クロロホルム(Chloroform、CDCl
3)である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
本発明の実施例に対する利点、特徴及びそれらの達成方法は、添付図面と共に、詳細に後述されている実施例を参照すると明確になるだろう。しかし、本発明は、以下で開示される実施例に限定されるものではなく、互いに異なる多様な形態に実現できる。但し、本実施例は、本発明の開示を完全たるものとし、本発明の属する技術分野における通常の知識を有する者に発明の範疇を完全に知らせるために提供されるものである。本発明は請求項の範疇によって定義されるだけである。明細書全体にわたって、同じ参照符号は同じ構成要素を示す。
【0028】
本発明の実施例を説明するにあたり、公知の機能または構成についての具体的な説明が本発明の要旨を無駄に不明確にするおそれがあると判断された場合には、その詳細な説明を省略する。そして、後述する用語は、本発明の実施例における機能を考慮して定義された用語であって、これは使用者や運用者の意図または慣例によって変わり得る。よって、その定義は本明細書全般にわたっての内容に基づいて下されるべきである。
【0029】
本発明の一態様は、主鎖がイソブチレンであるポリイソブチレン;不飽和ジカルボン酸無水物;及びアミノ基含有シラン化合物を含む反応物を反応させて製造され、ジアミド(diamide)構造を含むことを特徴とする、ゴム配合用変性ポリイソブチレン重合体に関する。
【0030】
前記ゴム配合用変性ポリイソブチレン重合体をゴム組成物に適用するとき、加工性を改善するとともに充填剤の分散性を大幅に向上させ、高いグリップ性能及び低い転がり抵抗を示す特徴がある。
【0031】
また、前記ゴム配合用変性ポリイソブチレン重合体は、前述したように、二つのアミド基を含むジアミド構造を含み、各アミド基の末端に存在するシラン元素の位置でゴム配合組成物内のカップリング剤、末端変性ゴム、シリカ充填剤などとの反応を介してシリカ充填剤の分散性の改善及びゴム配合物の物性改善効果を発現する特徴を持っている。
【0032】
より具体的には、本発明の一例による前記ゴム配合用変性ポリイソブチレン重合体は、X線蛍光分析の結果、Si含有量が0.03~10質量%であることができ、より好ましくは0.05~5質量%、更に好ましくは0.05~3質量%であることができる。上述した範囲を満足することにより、追ってゴムベース及び充填剤と混合してゴム組成物を製造する際に、加工性の向上及び充填剤の分散性の向上を図ることができる。
【0033】
また、本発明の一例による前記ゴム配合用変性ポリイソブチレンは、150℃でブルックフィールド粘度計によって測定した粘度が1~15,000cP、好ましくは5~10,000cPであることができる。上述した粘度範囲を満足することにより、追ってゴムベース及び充填剤との混合時にPayne効果(Payne effect)によるΔG’値が2.5以下、好ましくは2.0以下と低いことを確認することができ、これを基に、充填剤が均等に分散されることを確認することができる。このとき、前記ΔG’は、延伸率が0.02%と20%であるときに測定した貯蔵モジュラスの差G’20%-G’0.02%を意味する。
【0034】
また、本発明の一例による前記ゴム配合用変性ポリイソブチレン重合体は、800~10,000g/molの数平均分子量、及び1~5の分子量分布を有することができる。分子量分布が5よりも大きい場合には、追ってゴム組成物に適用するときに物性偏差が大きいという問題点があり、数平均分子量が800g/mol未満である場合には、低分子量重合体(Light Polymer、LP)が多量に発生して生産性が低下し、数平均分子量が10,000g/molを超える場合には、粘度の上昇により、工場に負荷がかかって生産が容易でないという欠点がある。このような範囲で、追ってゴムベース及び充填剤との混合で製造されるゴムの0℃基準の動的損失係数が0.64以上の値を有するとともに、60℃基準の動的損失係数が0.112以下の値を有することができる。このとき、0℃基準の動的損失係数は、グリップ性能(Wet grip)を示す指標であることができ、0℃基準の動的損失係数が高いほどグリップ性能に優れることを意味し、60℃基準の動的損失係数は、転がり抵抗(Rolling Resistance)を示す指標であって、数値が低いほど優れた転がり抵抗を示すことを意味する。つまり、本発明の一例によるゴム配合用変性ポリイソブチレン重合体をゴムに適用する場合、従来達成し難かったグリップ性能及び転がり抵抗の同時改善を達成することができるという利点がある。
【0035】
一方、前述したように、前記ゴム配合用変性ポリイソブチレン重合体は、主鎖がイソブチレンであるポリイソブチレン;不飽和ジカルボン酸無水物;及びアミノ基含有シラン化合物を含む反応物を反応させて製造されたもので、ポリイソブチレンと不飽和ジカルボン酸無水物とを反応させて製造された誘導体と;アミノ基含有シラン化合物とを反応させて製造されたものであることができる。
【0036】
具体的な一例として、前記ゴム配合用変性ポリイソブチレン重合体は、下記化学式2を満足するジアミド(diamide)構造の末端基を含むものであることができる。
(化学式2)
【0037】
【化3】
(式中、
L
1及びL
2は、互いに独立して直鎖状または分岐状の(C1-C5)アルキレンであり、
R
1及びR
2は、互いに独立して(C1-C5)アルキレン、(C1-C5)アミノアルキレン、カルボニレン及び(C1-C5)アルキルカルボニレンから選択され、
R
3、R
4及びR
5は、互いに独立して水素、ヒドロキシ、(C1-C20)アルキル、(C1-C12)シクロアルキル、(C2-C14)アシルオキシ、(C4-C20)アリールオキシ、(C5-C30)アラルオキシ、(C1-C20)アミン及び(C1-C12)アルコキシから選択され、
Aはメチレン、S
nまたは((R
6)NR
7)
nであり、ここで、R
6は水素または(C1-C5)アルキルであり、R
7は(C1-C5)アルキレンであり、nは1~10の整数であり、
*は、ポリイソブチレンとの連結部である。)
このようなジアミド形態の変性ポリイソブチレン重合体は、二つのアミド基を含むジアミド構造を含み、各アミド基の末端に存在するシラン元素の位置でゴム配合組成物内のカップリング剤、末端変性ゴム、シリカ充填剤などとの反応を介してシリカ充填剤の分散性の改善及びゴム配合物の物性改善効果を発現する特徴を持っている。
【0038】
より詳細には、本発明で目標するゴム配合用変性ポリイソブチレン重合体を製造するためには、使用する各化合物のモル比が非常に重要であるが、具体的な一例として、前記ポリイソブチレン:不飽和ジカルボン酸無水物のモル比は1:0.7~2であり、前記誘導体:アミノ基含有シラン化合物のモル比は1:2~5であることができる。より好ましくは、前記ポリイソブチレン:不飽和ジカルボン酸無水物のモル比は1:1~1.5であり、前記誘導体:アミノ基含有シラン化合物のモル比は1:2.1~3であることができる。このような範囲で最終的に得られた変性ポリイソブチレン重合体内のジアミド形態の変性ポリイソブチレンの含有量が30モル%以上、好ましく35~95モル%であることができる。このように、最終的に得られた変性ポリイソブチレン重合体内のジアミド形態の変性ポリイソブチレンの含有量が30モル%以上である場合には、追ってゴムベース及び充填剤との混合で製造されるゴムのΔG’の値が2.5以下、好ましくは2.0以下であることができる。また、0℃基準の動的損失係数が0.64以上の値を有すると同時に、60℃基準の動的損失係数が0.112以下の値を有することができ、好ましくは0℃基準の動的損失係数が0.6422以上の値を有すると同時に、60℃基準の動的損失係数が0.1117以下の値を有することができる。
【0039】
この時、前記ジアミド形態の変性ポリイソブチレン重合体のジアミド構造及び含有量は、
図1及び
図2にそれぞれ示された
1H NMR分析によって確認することができる。
【0040】
図1は前記アミノ基含有シラン化合物中の3-アミノプロピルトリエトキシシランを反応させて通常の方法で合成したイミド(imide)構造の変性ポリイソブチレン重合体の
1H NMRであり、
図2は同様の3-アミノプロピルトリエトキシシランを用いて合成したジアミド(diamide)構造のポリイソブチレン重合体の
1H NMRである。
【0041】
図1のイミド構造の変性ポリイソブチレン重合体において、aプロトンは、化学的移動1.58ppmの位置で現れるという特徴がある。しかし、本発明のジアミド構造のポリイソブチレン重合体は、電子密度の高いコハク酸が開環されてジアミド構造をしているので、シールド(shielding)が起こってa’プロトンが化学的に移動して1.52ppmの位置でピークが現れる。このように、前記二つの変性ポリイソブチレン重合体は、aプロトンとa’プロトンの
1H NMR位置が異なることにより、
1H NMR分析によって本発明のジアミド構造のポリイソブチレン重合体が合成されたことを確認することができる。
【0042】
また、1H NMR内のaプロトンのピーク積分値(Ia)とa’プロトンのピーク積分値(Ia」)の比を用いて、下記式1を介して、ジアミド構造を持つ変性ポリイソブチレン重合体の比率を算出することができる。例えば、Ia:Ia’の比が1:2である場合、最終的に得られた変性ポリイソブチレン重合体内のジアミド構造の変性ポリイソブチレン重合体の含有量は、50モル%と判断することができる。
【0043】
[式1]
ジアミド構造の比率(モル%)={0.5×Ia’/(Ia+0.5×Ia’)}×100
一方、本発明の一例において、前記ポリイソブチレンは、数平均分子量が200g/mol乃至10,000g/mol、分子量分布が1~5、末端ビニリデンの含有量が13C-NMRを基準に80モル%以上のものであることができ、より好ましくは、数平均分子量が300g/mol乃至6,000g/mol、分子量分布が1~3、末端ビニリデンの含有量が13C-NMRを基準に85~95モル%のものであることができる。特に、ポリイソブチレンの末端ビニリデンの含有量が高いほど、変性ポリイソブチレン重合体の製造時の反応物内の反応転換率と有効成分の含有量を高めることができるという利点がある。前記ポリイソブチレンの数平均分子量が200g/mol未満である場合は、製造される変性ポリイソブチレン重合体から低分子量の重合体が多量発生することができ、前記ポリイソブチレンの数平均分子量が10,000g/molを超える場合は、製造された変性ポリイソブチレン重合体の粘度が過度に高くなるという問題点がある。また、前記分子量分布が1~5を満足することにより、均一な分子量を有する変性ポリイソブチレン重合体の製造が可能であり、これにより、物性のバラツキを減らすことができるという利点がある。
【0044】
本発明の一例において、前記不飽和ジカルボン酸無水物は、マレイン酸無水物(maleic anhydride)、イタコン酸無水物(itaconic anhydride)、シトラコン酸無水物(citraconic anhydride)、プロフェニルコハク酸無水物(propenyl succinic anhydride)及び2-ペンテン二酸無水物(2-pentendionic anhydride)などよりなる群から選ばれるいずれか1種または2種以上の混合物であることができる。
【0045】
本発明の一例において、前記アミノ基含有シラン化合物は、下記化学式1を満足するものであることができる。
(化学式1)
【0046】
【化4】
(式中、
R
1及びR
2は、互いに独立して(C1-C5)アルキレン、(C1-C5)アミノアルキレン、カルボニレン及び(C1-C5)アルキルカルボニレンから選択され、
R
3、R
4及びR
5は、互いに独立して水素、ヒドロキシ、(C1-C20)アルキル、(C1-C12)シクロアルキル、(C2-C14)アシルオキシ、(C4-C20)アリールオキシ、(C5-C30)アラルオキシ、(C1-C20)アミン及び(C1-C12)アルコキシから選択され、
Aはメチレン、S
nまたは((R
6)NR
7)
nであり、この際、R
6は水素または(C1-C5)アルキルであり、R
7は(C1-C5)アルキレンであり、nは1~10の整数である。)
さらに好ましくは、R
1及びR
2は互いに独立して(C1-C3)アルキレンであり、
R
3、R
4及びR
5は互いに独立して水素、ヒドロキシ、(C1-C5)アルキルまたは(C1-C5)アルコキシであり、
Aはメチレン、S
nまたは((R
6)NR
7)
nであり、ここで、R
6は水素または(C1-C5)アルキルであり、R
7は(C1-C4)アルキレンであり、nは2~5の整数である。
【0047】
上述した範囲を満足するアミノ基含有シラン化合物を混合してジアミド形態の変性ポリイソブチレン重合体を製造し、これを追ってゴムベース及び充填剤と混合してゴムを製造するときの充填剤の分散性をさらに向上させることができるという利点がある。
【0048】
具体的な一例として、前記アミノ基含有シラン化合物は、3-アミノプロピルトリメトキシシラン、3-アミノプロピルトリエトキシシラン、3-アミノプロピルメチルジメトキシシラン、3-アミノプロピルメチルジエトキシシラン、3-(2-アミノエチルアミノ)プロピルトリメトキシシラン、3-(2-アミノエチルアミノ)プロピルトリエトキシシラン、N-(2-アミノエチル)-3-アミノプロピルトリメトキシシラン、N-(2-アミノエチル)-3-アミノプロピルトリエトキシシラン、3-アミノプロピルシラントリオール、(3-(2-アミノエチルアミノ)プロピルメチルジメトキシシラン)、2-エタンジアミンN-(2-アミノエチル)-N’-[3-(トリメトキシシリル)プロピル]-1、1-[3-(トリメトキシシリル)プロピル]尿素及び1-[3-(トリエトキシシリル)プロピル)]尿素よりなる群から選ばれるいずれか1種または2種以上であることができる。
【0049】
さらに、本発明は、前述したジアミド構造のゴム配合用変性ポリイソブチレン重合体を含むゴム組成物を提供する。
【0050】
より具体的には、本発明によるゴム組成物は、前述したゴム配合用変性ポリイソブチレン重合体;ゴムベース;及び充填剤;を含む。
【0051】
上述したように、本発明の一例によるゴム組成物は、前記ジアミド構造のゴム配合用変性ポリイソブチレン重合体を混合することにより、加工性を増大させることができ、前記充填剤が均一に分散できるため、グリップ性能及び転がり抵抗を同時に改善することができるという利点がある。
【0052】
本発明の一例によるゴム組成物において、前記ゴムベースは、ブタジエンゴム、ブチルゴム、乳化重合スチレンブタジエンゴム(E-SBR)、溶液重合スチレンブタジエンゴム(S-SBR)、エピクロロヒドリンゴム、ニトリルゴム、水素化ニトリルゴム、臭素化ポリイソブチルイソプレン-co-パラメチルスチレン(brominated polyisobutyl isoprene-co-paramethyl styrene;BIMS)ゴム、ウレタンゴム、フッ素ゴム、シリコーンゴム、スチレンエチレンブタジエンスチレン共重合体ゴム、エチレンプロピレンゴム、エチレンプロピレンジエンモノマーゴム、ハイパロンゴム、クロロプレンゴム、エチレン酢酸ビニルゴム及びアクリルゴム等よりなる群から選ばれるいずれか1種または2種以上を含むことができ、さらに好ましくは、前記ゴムベースは、ブタジエンゴム、スチレンブタジエンゴム及びブチルゴムから選ばれる1種または2種以上であることができる。
【0053】
さらに好ましくは、前記ゴムベースは、スチレンブタジエンゴムを含むことができ、この時、前記スチレンブタジエンゴムは、スチレン含有量が9~19%、ビニル基含有量がブタジエン中の10~54%であるもの、スチレン含有量が20~28%、ビニル含有量がブタジエン中の40~72%であるもの、またはスチレン含量が30~42%、ビニル含有量がブタジエン中の20~70%であるものを使用することができる。
【0054】
本発明の一例によるゴム組成物において、前記充填剤は、通常、ゴム組成物、好ましくはタイヤトレッド用ゴム組成物に用いられる充填剤である場合、制限なく利用可能であり、本発明は、これに限定されるものではない。具体的で非限定的な一例として、前記充填剤は、シリカ、カーボンブラック及びこれらの混合物であることができる。
【0055】
この時、前記シリカは、ゴム、好ましくはタイヤトレッド用ゴムなどに用いられるシリカ粒子である場合、制限なく利用可能である。具体的には、前記シリカは、比表面積(CTAB)が80~300m2/g、好ましくは110~220m2/g、より好ましくは150~180m2/g、最も好ましくは165m2/gであることができる。比表面積が上述の範囲よりも低い場合、補強性が低下して強度低下の問題が発生するおそれがあり、比表面積が上述の範囲よりも広い場合、ゴムの配合時に粘度が増加して分散を阻害する問題が発生するおそれがある。
【0056】
また、前記カーボンブラックも、タイヤトレッド用ゴムなどに通常用いられるカーボンブラックである場合、制限なく利用可能であり、好ましくは、等級500~600のものを用いることができる。具体的で非限定的な一例として、N110、N121、N134、N220、N231、N234、N242、N293、N299、S315、N326、N330、N332、N339、N343、N347、N351、N358、N375、N539、N550、N582、N630、N642、N650、N660、N683、N754、N762、N765、N774、N787、N907、N908、N990またはN991などの商用カーボンブラックを用いることができ、本発明は、これに限定されるものではない。
【0057】
さらに、本発明の一例によるゴム組成物は、シランカップリング剤をさらに含むことができ、この時、シランカップリング剤は、Si-69などの商用製品を用いるか、或いは、ビス-(3-トリエトキシシリルプロピル)-テトラスルファン(Bis-(3-triethoxysilylpropyl)-tetrasulfane;TESPT)、(ビス-3(-エトキシシリルプロピル)ジスルファン(Bis-(3-ethoxysilylpropyl)disulfane;ESPD)またはN-[2(ビニルベンジルアミノ)-3-アミノプロピルトリメトキシシラン(N-[2(vinylbenzylamino)-aminopropyltrimethoxysilane)などの公知の物質を用いることができ、本発明は、これに限定されるものではない。
【0058】
本発明の一例によるゴム組成物は、ゴムベース100重量部に対して、50~150重量部のシリカ、5~20重量部のカーボンブラック及び2~40重量部のゴム配合用変性ポリイソブチレン重合体を含むことができ、好ましくは、ゴムベース100重量部に対して、60~120重量部のシリカ、10~15重量部のカーボンブラック及び5~15重量部のゴム配合用変性ポリイソブチレン重合体を含むことができる。
【0059】
前記シランカップリング剤がゴム組成物にさらに含まれる場合、シランカップリング剤は、ゴムベース100重量部に対して2~15重量部、好ましくは3~10重量部で添加できる。
【0060】
また、本発明の一例によるゴム組成物は、ゴム組成物に通常用いられる添加剤をさらに含むことができる。具体的で非限定的な一例として、前記ゴム組成物は、酸化防止剤、活性化剤、加硫剤、加硫促進剤などの添加物をさらに含むことができ、各添加剤の添加量は、添加剤の種類、製造されるゴムの用途などによって異なるが、具体的で非限定的な一例として、前記ゴムベース100重量部に対してそれぞれ0.5~5重量部の添加剤を添加することができるが、本発明は、これに限定されるものではない。
【0061】
具体的で非限定的な一例として、前記加硫剤は、硫黄、モルホリンジスルフィドなどを用いることができ、前記加硫促進剤は、スルフェンアミド系、チアゾール系、チウラム系、チオ尿素系、グアニジン系、ジチオカルバミン酸系、アルデヒド-アミン系またはアルデヒド-アンモニア系、イミダゾリン系及びキサンテート系加硫促進剤から選ばれる1種または2種以上を用いることができる。
【0062】
具体的な一例として、前記スルフェンアミド系としては、例えば、CBS(N-シクロヘキシル-2-ベンゾチアジルスルフェンアミド)、TBBS(N-tert-ブチル-2-ベンゾチアジルスルフェンアミド)、N,N-ジシクロヘキシル-2-ベンゾチアジルスルフェンアミド、N-オキシジエチレン-2-ベンゾチアジルスルフェンアミド及びN,N-ジイソプロピル-2-ベンゾチアゾールスルフェンアミドなどから選ばれる1種または2種以上のスルフェンアミド系化合物などを使用することができ、前記チアゾール系としては、例えばMBT(2-メルカプトベンゾチアゾール)、MBTS(ジベンゾチアジルジスルフィド)、2-メルカプトベンゾチアゾールのナトリウム塩、亜鉛塩、銅塩、シクロヘキシルアミン塩、2-(2,4-ジニトロフェニル)メルカプトベンゾチアゾール及び2-(2,6-ジエチル-4-モルホリノチオ)ベンゾチアゾールなどから選ばれる1種または2種以上のチアゾール系化合物などを使用することができ、前記チウラム系としては、TMTD(テトラメチルチウラムジスルフィド)、テトラエチルチウラムジスルフィド、テトラメチルチウラムモノスルフィド、ジペンタメチレンチウラムジスルフィド、ジペンタメチレンチウラムモノスルフィド、ジペンタメチレンチウラムテトラスルフィド、ジペンタメチレンチウラムヘキサスルフィド、テトラブチルチウラムジスルフィド及びペンタメチレンチウラムテトラスルフィドなどから選ばれる1種または2種以上のチウラム系化合物を使用することができ、前記チオ尿素系としては、例えば、チオカルバミド、ジエチルチオ尿素、ジブチルチオ尿素、トリメチルチオ尿素及びジオルトトリルチオ尿素などのチオ尿素化合物などから選ばれる1種または2種以上を使用することができ、前記グアニジン系としては、例えば、ジフェニルグアニジン、ジオルトトリルグアニジン、トリフェニルグアニジン、オルトトリルビグアニド及びジフェニルグアニジンフタレートなどから選ばれる1種または2種以上のグアニジン系化合物を使用することができるが、本発明は、これに限定されるものではない。
【0063】
本発明は、また、前述したゴム組成物を含むタイヤトレッドを提供する。本発明によるタイヤトレッドは、上述したように、グリップ性能及び転がり抵抗に優れるため、同一条件の他のタイヤトレッドに比べて優れた燃費を示すことができるという利点がある。このとき、タイヤトレッドは、具体的に乗用車用、SUV用、バス用、トラック用または電気自動車などに用いられるタイヤトレッドであることができるが、本発明は、これに限定されるものではない。
【0064】
以下、本発明を下記の実施例及び比較例を介して具体的に説明する。下記の実施例は本発明の理解を助けるためのものに過ぎず、本発明の範囲はこれに限定されるものではない。
【0065】
[製造例1]
<ポリイソブチレンコハク酸無水物(PIBSA-1)の製造>
1Lのオートクレーブにポリイソブチレン(Mn300g/mol、PD=1.2、α-ビニリデン80.6モル%、粘度6cSt@40℃、500g、1.67mol)と無水マレイン酸(172g、1.75mol)を仕込み、メカニカルスターラー(MECHANICAL STIRRER)によって200℃で12時間反応させる。未反応の無水マレイン酸を除去するために、窒素バブリングを2時間行うことにより、ポリイソブチレンコハク酸無水物(POLYISOBUTYLENE SUCCINIC ANHYDRIDE[PIBSA-1])を得た。カラムクロマトグラフィーによって転換率86.1%を確認した。
【0066】
<ジアミド形態の変性ポリイソブチレン重合体の製造(MPIB-DA1)>
ディーン・スターク装置(dean-stark apparatus)の下で3-アミノプロピルトリエトキシシラン(3-aminopropyl triethoxysilane、815.5g、3.69mol)を反応器に仕込み、前記製造されたPIBSA-1(500g、1.23mol)を500mLのトルエンに希釈して120℃で投入する。その後、120℃で4時間反応させる。反応終了後、未反応の化合物と溶媒を除去して変性ポリイソブチレン642gを得た。1H NMRを用いて測定した結果、重合された変性ポリイソブチレン中のジアミド形態は約88モル%であり、数平均分子量912g/mol、重量平均分子量1,632g/mol、分子量分布1.8と確認された。ブルックフィールド粘度は10cP@150℃であり、XRFを用いてSi含有量を確認した結果、Si1.4質量%と測定した。
【0067】
[製造例2]
<ポリイソブチレンコハク酸無水物(PIBSA-2)の製造>
1Lのオートクレーブにポリイソブチレン(Mn5,199g/mol、PD=1.8、α-ビニリデン87.0モル%、粘度11,322cSt@100℃、500g、0.1mol)と無水マレイン酸(10.0g、0.1mol)を仕込み、メカニカルスターラーによって230℃で12時間反応させる。未反応の無水マレイン酸を除去するために窒素バブリングを2時間行うことにより、ポリイソブチレンコハク酸無水物(PIBSA-2)を得た。カラムクロマトグラフィーによって転換率70.4%を確認した。
【0068】
<ジアミド形態の変性ポリイソブチレン重合体(MPIB-DA2)の製造>
ディーン・スターク装置の下で3-アミノプロピルトリエトキシシラン(40g、0.18mol)を反応器に仕込み、前記製造されたPIBSA-2(300g、0.06mol)を500mLのトルエンに希釈して120℃で投入する。その後、120℃で4時間反応させる。反応終了後、未反応の化合物と溶媒を除去して変性ポリイソブチレン362gを得た。1H NMRを用いて測定した結果、重合された変性ポリイソブチレンのジアミド形態は、約80モル%であり、数平均分子量7,978g/mol、重量平均分子量32,510g/mol、分子量分布4.1と確認された。ブルックフィールド粘度は9,200cP@150℃であり、XRFを用いてSi含有量を確認した結果、Si0.05質量%と測定された。
【0069】
[製造例3]
<ポリイソブチレンコハク酸無水物(PIBSA-3)の製造>
1Lのオートクレーブにポリイソブチレン(製品名-DAELIM HRPB1000、Mn992g/mol、PD=1.4、α-ビニリデン88.3モル%、粘度193cSt@100℃、500g、0.5mol)と無水マレイン酸(52g、0.5mol)を仕込み、メカニカルスターラーによって230℃で12時間反応させる。未反応の無水マレイン酸を除去するために窒素バブリングを2時間行うことにより、PIBSA-3を得た。カラムクロマトグラフィーによって転換率78.4%を確認した。
【0070】
<ジアミド形態の変性ポリイソブチレン重合体(MPIB-DA3)の製造>
ディーン・スターク装置の下で3-アミノプロピルトリエトキシシラン(139g、0.63mol)を反応器に仕込み、前記製造されたPIBSA-3(300g、0.21mol)を500mLのトルエンに希釈して120℃で投入する。その後、120℃で4時間反応させる。反応終了後、未反応の化合物と溶媒を除去して変性ポリイソブチレン372gを得た。1H NMRを用いて測定した結果、重合された変性ポリイソブチレン中のジアミド形態は、約85モル%であり、数平均分子量1,112g/mol、重量平均分子量2,190g/mol、分子量分布2.0と確認された。ブルックフィールド粘度は250cP@150℃であり、XRFを用いてSi含有量を確認した結果、Si1.6質量%と測定された。
【0071】
[製造例4]
<ジアミド形態の変性ポリイソブチレン重合体(MPIB-DA4)の製造>
ディーン・スターク装置の下で3-アミノプロピルトリエトキシシラン(121g、0.55mol)を反応器に仕込み、前記製造されたPIBSA-3(300g、0.21mol)を500mLのトルエンに希釈して120℃で投入する。その後、120℃で4時間反応させる。反応終了後、未反応の化合物と溶媒を除去して変性ポリイソブチレン365gを得た。1H NMRを用いて測定した結果、重合された変性ポリイソブチレン中のジアミド形態は、約61モル%であり、数平均分子量1,201g/mol、重量平均分子量3,280g/mol、分子量分布2.7と確認された。ブルックフィールド粘度は320cP@150℃であり、XRFを用いてSi含有量を確認した結果、Si1.7質量%と測定された。
【0072】
[製造例5]
<ジアミド形態の変性ポリイソブチレン重合体(MPIB-DA5)の製造>
ディーン・スターク装置の下で3-アミノプロピルトリエトキシシラン(102g、0.46mol)を反応器に仕込み、前記製造されたPIBSA-3(300g、0.21mol)を500mLのトルエンに希釈して120℃で投入する。その後、120℃で4時間反応させる。反応終了後、未反応の化合物と溶媒を除去して変性ポリイソブチレン360gを得た。1H NMRを用いて測定した結果、重合された変性ポリイソブチレン中のジアミド形態は、約38モル%であり、数平均分子量1,530g/mol、重量平均分子量4,120g/mol、分子量分布3.6と確認された。ブルックフィールド粘度は380cP@150℃であり、XRFを用いてSi含有量を確認した結果、Si1.6質量%と測定された。
【0073】
[製造例6]
<ジアミド形態の変性ポリイソブチレン重合体(MPIB-DA6)の製造>
ディーン・スターク装置の下で前記製造されたPIBSA-3(300g、0.21mol)を500mLのトルエンに希釈して反応器に仕込み、3-アミノプロピルトリエトキシシラン(60.3g、0.27mol)を60mlのトルエンに希釈して常温(25~30℃)で投入する。その後、塩化亜鉛(12.3g、0.09mol)を反応器に仕込んだ。反応器を80℃に昇温した後、ヘキサメチルジシラザン(14.7g、0.09mol)を50mlのトルエンに希釈してゆっくりと投入する。その後、80℃で4時間反応させる。反応を終了した後、空隙サイズ0.5μm以下のフィルターを用いて濾過した後、未反応の化合物と溶媒を除去して変性ポリイソブチレン336gを得た。1H NMRを用いて測定した結果、重合された変性ポリイソブチレン中のジアミド形態は、約20モル%であり、数平均分子量1,936g/mol、重量平均分子量7,602g/mol、分子量分布3.9と確認された。ブルックフィールド粘度は420cP@150℃であり、XRFを用いてSi含有量を確認した結果、Si1.4質量%と測定された。
【0074】
[製造例7]
<イミド形態の変性ポリイソブチレン重合体(MPIB-Imide)の製造>
ディーン・スターク装置の下で前記製造されたPIBSA-3(300g、0.21mol)を500mLのトルエンに希釈して反応器に仕込み、3-アミノプロピルトリエトキシシラン(60.3g、0.27mol)を60mlのトルエンに希釈して常温(25~30℃)で投入する。その後、塩化亜鉛(Zinc chloride、37g、0.27mol)を反応器に仕込んだ。反応器を80℃に昇温した後、ヘキサメチルジシラザン(Hexamethyldisilazane、44.02g、0.27mol)を50mlのトルエンに希釈してゆっくりと投入する。その後、80℃で4時間反応させる。反応を終了した後、空隙サイズ0.5μm以下のフィルターを用いて濾過した後、未反応の化合物と溶媒を除去して変性ポリイソブチレン340gを得た。重合された変性ポリイソブチレンは、数平均分子量1,362g/mol、重量平均分子量2039g/mol、分子量分布1.5と確認された。ブルックフィールド粘度は230cP@150℃であり、XRFを用いてSi含有量を確認した結果、Si1.8質量%と測定された。
【0075】
前記製造例1~7でそれぞれ製造された変性ポリイソブチレン重合体の物性は、下記表1の通りである。
【0076】
【表1】
ゴム組成物の製造(実施例1~5及び比較例1~4)
[実施例1]
スチレンブタジエンゴム1(スチレン33%、ビニル48%、TDAE37.5phr、SBR1)82.5重量部及びスチレンブタジエンゴム2(スチレン15%、ビニル30%(in BD)、SBR2)40.0重量部を混合してゴムベースを準備し、このゴムベース100重量部に対して、カーボンブラック10重量部、シリカ80重量部(US7000GR、Evonik、CTAB165m
2/g)、ゴム配合(TDAE、Treated Distillate Aromatic Extracted)オイル13.5重量部、シリカカップリング剤としてのSI-696.4重量部、酸化亜鉛3.0重量部、ステアリン酸2.0重量部、加硫剤としての硫黄(ミウォン化学製)1.6重量部、加硫促進剤としてのCBS(N-シクロヘキシル-2-ベンゾチアジルスルフェンアミド)1.6重量部、DPG(1,3-ジフェニルグアニジン)2.0重量部、及び前記製造例1の変性ポリイソブチレン重合体(MPIB-DA1)10.0重量部を密閉式バンバリーミキサーで混合してマスターバッチを製造した後、開放型2軸ロールミルで混合ゴムを製造し、165℃で10分間加硫してゴムを製造した。ゴム組成物の組成は、表2に示した。
【0077】
[実施例2]
前記製造例1のMPIB-DA1の代わりに製造例2のMPIB-DA2を用いた以外は、実施例1と同様にして行った。
【0078】
[実施例3]
前記製造例1のMPIB-DA1の代わりに製造例3のMPIB-DA3を用いた以外は、実施例1と同様にして行った。
【0079】
[実施例4]
前記製造例1のMPIB-DA1の代わりに製造例4のMPIB-DA4を用いた以外は、実施例1と同様にして行った。
【0080】
[実施例5]
前記製造例1のMPIB-DA1の代わりに製造例5のMPIB-DA5を用いた以外は、実施例1と同様にして行った。
【0081】
[比較例1]
実施例1と同様の方法でゴム組成物を製造するが、ゴム組成物の製造時に製造例1のMPIB-DA1を入れずに、TDAEオイルを23.5重量部混合してゴムを製造した。
【0082】
[比較例2]
実施例1と同様の方法でゴム組成物を製造するが、ゴム組成物の製造時に製造例1のMPIB-DA1を入れずに、テルペン樹脂(Terpene Phenol resin、ヤスハラケミカルT160)10重量部を混合してゴムを製造した。
【0083】
[比較例3]
前記製造例1のMPIB-DA1の代わりに製造例6のMPIB-DA6を用いた以外は、実施例1と同様にして行った。
【0084】
[比較例4]
前記製造例1のMPIB-DA1の代わりに製造例7のMPIB-Imideを用いた以外は、実施例1と同様にして行った。
【0085】
具体的なゴム組成物の配合組成は、下記表2及び表3のとおりである。
【0086】
【0087】
【表3】
各製造されたゴム組成物の物性は、次の方法で測定するが、周囲の環境条件に応じてゴム組成物の物性値が一部変わり得ることを考慮して、同じ日付で同じ条件の下で測定した結果を表4に示した。
【0088】
Payne効果(Payne Effect)の確認
Payne効果は、延伸率が0.02%と20%であるときに測定した貯蔵モジュラス(storage modulus)であって、変化幅が小さいほどシリカの分散性に優れるため、回転抵抗が優秀になり、全般的なゴム物性が向上できるが、実施例及び比較例で製造されたゴムを対象に、ALPHA Technologies社製のRPA2000を用い、試験片重量7g以上を用いて、60℃で1Hzの速度にて0.02~20%歪み掃引(strain sweep)でペイン効果値を測定し、延伸率が0.02%と20%であるときに測定した貯蔵モジュラスの差(ΔG’=G’20%-G’0.02%)を表4に示した。
【0089】
動的損失係数を用いたグリップ性能及び転がり抵抗の測定
0℃でのTanδ値は接地力に対応し、この値が大きいほど接地力に優れるが、これに対し、60℃でのTanδ値は回転抵抗に対応し、この値が小さいほど回転抵抗に優れるということを意味する[M.J.Wang、Rubber.Chem.Technol.,71,520(1998)]。実施例及び比較例で製造されたゴムを対象に、DMTS(Dynamic mechanical thermal spectrometry;GABO、EPLEXOR 500N)を用いて0℃基準、60℃基準の動的損失係数及びガラス転移温度(Tg)を測定し、その結果を表4に示した。測定時の試験条件は、周波数(Frequency):10Hz、歪み(Strain)(静的歪み(Static strain):3%、動的歪み(Dynamic strain):0.25%)、温度(Temperature):-60~70℃とした。
【0090】
【表4】
表4を参照すると、実施例1~5の場合は、ΔG’の値が2.0以下の低い値を示したが、比較例1~4の場合は、2.1以上のより高いΔG’の値を示し、ジアミド(diamide)形態が30モル%以上である製造例1~5の変性ポリイソブチレン重合体をゴム組成物に添加するとき、カーボンブラック及びシリカなどの充填剤がゴム組成物内によく分散されることが分かった。
【0091】
また、実施例1~5の場合は、数値が大きいほど優れたグリップ性能を示すTanδ@0℃は0.64以上と高く、数値が小さいほど優れた回転抵抗を示すTanδ@60℃は0.112以下と低く測定され、比較例1に比べてグリップ性能及び転がり抵抗性能の両方とも改善されたことを確認することができた。
【0092】
一方、比較例1の場合は、ゴム配合油であるTDAEが添加されることにより、Tanδ@0℃は0.5550と著しく低いため、制動性能が大幅に低下することを確認することができた。
【0093】
比較例2の場合は、接地力向上添加剤であるテルペン樹脂が添加されることにより、0.67以上の高いTanδ@0℃の値を示したが、Tanδ@60℃は、0.13以上とあまり高いため、転がり抵抗性能は大幅に低下し、これにより燃費改善効果が低下することを確認することができた。
【0094】
一方、イミド(imide)形態が70モル%超過と支配的な製造例6または7の変性ポリイソブチレン重合体が添加された比較例3と4の場合は、比較例1に比べて制動性能と燃費性能が改善されたが、その程度が微々たるものであった。