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特開2022-50357冷却装置を備える鉄道用電気モータ及びそれに関連する鉄道車両
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  • 特開-冷却装置を備える鉄道用電気モータ及びそれに関連する鉄道車両 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022050357
(43)【公開日】2022-03-30
(54)【発明の名称】冷却装置を備える鉄道用電気モータ及びそれに関連する鉄道車両
(51)【国際特許分類】
   H02K 9/02 20060101AFI20220323BHJP
【FI】
H02K9/02 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2021151041
(22)【出願日】2021-09-16
(31)【優先権主張番号】2009420
(32)【優先日】2020-09-17
(33)【優先権主張国・地域又は機関】FR
(71)【出願人】
【識別番号】313011906
【氏名又は名称】アルストム トランスポート テクノロジーズ
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【弁理士】
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【弁理士】
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【弁理士】
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】マティアス・ファカム・テチャクオウエ
(72)【発明者】
【氏名】モハメド-ライド・ソウ
(72)【発明者】
【氏名】ミシェル・シュレ
(72)【発明者】
【氏名】ピエール-ニコラ・マルノー
【テーマコード(参考)】
5H609
【Fターム(参考)】
5H609BB01
5H609BB18
5H609PP02
5H609PP05
5H609PP06
5H609PP07
5H609PP10
5H609QQ02
5H609QQ08
5H609QQ12
5H609QQ23
(57)【要約】
【課題】本発明は、冷却がより効率的なモータに関する。
【解決手段】回転子(32)、固定子(34)、冷却装置(36)及びフレーム(30)を備える電気モータ(22)において、回転子(32)が、回転子(32)の回転軸(R)に対して全体に平行に延在している少なくとも1つの管状貫通穴(90)を備え、冷却装置(36)が、少なくとも1つの管状貫通穴(90)に挿入された少なくとも1つの中実円筒(92)であって、回転子(32)の一方の端部(32A)からもう一方の端部(32B)まで冷却要素(60,62)の2つの固定壁(64,66)の間に挟まれて延在している中実円筒を備える。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
回転子(32)、固定子(34)、冷却装置(36)、及びフレーム(30)を具備する電気モータ(22)であって、
前記フレーム(30)が、前記回転子(32)、前記固定子(34)、及び前記冷却装置(36)を収容する内部空間(E1)を形成しており、前記フレーム(30)が、前記内部空間(E1)と前記フレーム(30)の外部空間(E2)とを連通させている少なくとも1つの冷却穴(50,52)を備えており、前記回転子(32)が、前記回転子(32)の回転軸(R)に沿って相対する2つの端部(32A,32B)を備えており、
前記冷却装置(36)が、前記回転子(32)の前記端部(32A,32B)それぞれに配置された少なくとも1つの冷却要素(60,62)であって、前記回転子(32)と一体で回転する前記回転子(32)に対する固定壁(64,66)をそれぞれ備える冷却要素と、前記回転子(32)の前記回転軸(R)に沿って前記固定壁(64,66)から前記冷却要素(60,62)の自由端(70,72)に至るまで延在している冷却壁(74,76)とを備えており、前記冷却壁(74,76)が、前記冷却壁(74,76)によって少なくとも部分的に囲まれている内部容積(79)の境界を形成していると共に、冷却穴(50,52)と対向する内面(74A,76A)であって、冷却穴(50,52)を通り抜ける空気流と接することができる内面と、前記内面(74A,76A)の反対側で前記固定子(34)と対向する外面(74B,76B)とを備えており、前記内面及び前記外面が、前記固定壁(64,66)から前記自由端(70,72)に至るまで延在している、前記電気モータにおいて、
前記回転子(32)が、前記回転子(32)の前記回転軸(R)に対して全体に平行に延在している少なくとも1つの管状貫通穴(90)を備えており、及び前記冷却装置(36)が、少なくとも1つの管状貫通穴(90)に挿入された少なくとも1つの中実円筒(92)であって、前記回転子(32)の一方の端部(32A)から他方の端部(32B)に至るまで前記冷却要素(60,62)の2つの前記固定壁(64,66)の間に挟まれて延在している中実円筒を備えていることを特徴とする電気モータ(22)。
【請求項2】
前記中実円筒(92)それぞれが、240Wm-1-1超の熱伝導率を有する材料で製作される、請求項1に記載の電気モータ(22)。
【請求項3】
前記回転子(32)が前記回転子(32)の前記回転軸(R)に対して全体に平行に延在している少なくとも複数の管状貫通穴(90)を備え、前記冷却装置(36)が、いずれか1つの管状貫通穴(90)に挿入された少なくとも1つの中空円筒(94)であって、前記回転子(32)の一方の端部(32A)からもう一方の端部(32B)まで前記冷却要素(60,62)の2つの前記固定壁(64,66)の間に挟まれて延在している中空円筒を備える、請求項1又は2に記載の電気モータ(22)。
【請求項4】
前記回転子(32)の前記管状貫通穴(90)それぞれが、中実(92)又は中空(94)であるそれぞれの円筒によって塞がれる、請求項1から3のいずれか一項に記載の電気モータ(22)。
【請求項5】
前記回転子(32)の前記回転軸(R)に沿って前記回転子(32)の両側からシャフト(54)を囲い込む少なくとも2つの軸受(56,57)を備え、前記軸受(56,57)それぞれが、前記冷却壁(74,76)それぞれの内部容積(79)内に配置される、請求項1から4のいずれか一項に記載の電気モータ(22)。
【請求項6】
前記フレーム(30)が、前記回転子(32)の前記回転軸(R)に対して全体に垂直に延在している相対する2つの側方外壁(40,42)と、前記回転子(32)の前記回転軸(R)の周りに延在している少なくとも1つの長手方向外周壁(44)と、前記回転子(32)の前記回転軸(R)に対して全体に垂直に延在している相対する2つの側方内壁(46,48)と、前記回転子(32)の前記回転軸(R)の周りに延在している少なくとも1つの長手方向内周壁(49)とを備え、前記側方外壁(40,42)及び前記長手方向外周壁(44)が、前記側方内壁(46,48)及び前記長手方向内周壁(49)と共に少なくとも1つの冷却流路(53)を形成する、請求項1から5のいずれか一項に記載の電気モータ(22)。
【請求項7】
前記冷却要素(62)のうち少なくとも1つが、前記フレーム(30)のそれぞれの前記側方外壁(42)に対向して配置された自由端(73)と、それぞれの前記側方内壁(48)に対向する自由端(72)とを備え、前記側方内壁(48)に対向する前記自由端(72)と前記側方外壁(42)に対向する前記自由端(73)とが、少なくとも1つの冷却流路(75)をその間に形成する、請求項6に記載の電気モータ(22)。
【請求項8】
前記側方内壁(48)に対向する前記自由端(72)と前記側方外壁(42)に対向する前記自由端(73)とが、薄板(75A)で隔てられた複数の冷却流路(75)をその間に形成する、請求項7に記載の電気モータ(22)。
【請求項9】
前記回転子(32)の前記回転軸(R)に沿って前記回転子(32)と反対側に小さな底辺が来るように、また前記回転子(32)側に大きな底辺が来るように、前記薄板(75A)に斜角が付けられる、請求項8に記載の電気モータ(22)。
【請求項10】
請求項1から9のいずれか一項に記載の電気モータ(22)を少なくとも1つ備える鉄道車両(10)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、冷却装置を備える電気モータ、及びその電気モータを装備した鉄道車両に関する。
【背景技術】
【0002】
電気モータ、とりわけ鉄道車両用電気モータの分野では、モータの回転子及び/又は固定子を冷却するために、モータ外部の空気など、外部の流体をモータ内に循環させる冷却装置を使用することが知られている。
【0003】
特にEP3599707により、冷却装置を備える電気モータが知られている。冷却装置は、各々が回転子の両端それぞれに配置されて各々が低温壁を形成する2つの冷却要素を備えており、モータのフレームは各々の冷却要素のために少なくともそれぞれ1つの冷却口を備える。
【0004】
しかし、このような装置は完全な満足を与えるものではない。実際、回転子の締付けプレートにねじ留めされた低温壁では、回転子の中心から熱量を抽出することは難しい。回転子と低温壁との間の熱交換は、基本的に回転子に対する低温壁の固定プレートによって行われる。その後、その熱量は対流によって壁から周囲の環境中に排出される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】EP3599707
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の目的の1つは、冷却がより効率的なモータを提案することによって上述の難点を改善することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
そこで、本発明は、回転子、固定子、冷却装置及びフレームを備える電気モータであって、
フレームは、回転子、固定子及び冷却装置を収容する内部空間を形成し、フレームは、その内部空間とフレームの外部空間とを連通させている少なくとも1つの冷却穴を備え、回転子は、回転子の回転軸に沿って相対する2つの端部を備え、
冷却装置は、回転子の各々の端部に配置された少なくとも1つの冷却要素であって、回転子と一体で回転する回転子への固定壁を備える冷却要素と、回転子の回転軸に沿って固定壁から冷却要素の自由端まで延在している冷却壁とを備え、冷却壁は、少なくとも部分的に冷却壁がその周りを囲む内部容積の境界をなすと共に、唯一又はいずれか1つの冷却穴と対向する内面であって、冷却穴を通り抜ける空気流と接することができる内面と、その内面の反対側で固定子と対向する外面とを備え、内面及び外面は固定壁から自由端まで延在している、電気モータにおいて、
回転子が、回転子の回転軸に対して全体に平行に延在している少なくとも1つの管状貫通穴を備えること、及び冷却装置が、いずれか1つの管状貫通穴に挿入された少なくとも1つの中実円筒であって、回転子の一方の端部からもう一方の端部まで冷却要素の2つの固定壁の間に挟まれて延在している中実円筒を備えることを特徴とする、電気モータを提案する。
【0008】
本発明の装置により、熱量は回転子の全長にわたって排出される。熱量は伝導によって排出される。
【0009】
具体的な実施形態によれば、本発明は、以下の特徴の1つ又は複数を単独又は技術的に企図可能なあらゆる組合せで有する。
- 各々の中実円筒は、240Wm-1-1超の熱伝導率を有する材料で製作される。
- 回転子は、回転子の回転軸に対して全体に平行に延在している複数の管状貫通穴を備え、冷却装置が、いずれか1つの管状貫通穴に挿入された少なくとも1つの中空円筒であって、回転子の一方の端部からもう一方の端部まで冷却要素の2つの固定壁の間に挟まれて延在している中空円筒を備える。
- 回転子の各々の管状貫通穴は、中実又は中空であるそれぞれの円筒によって塞がれる。
- モータは、回転子の回転軸に沿って回転子の両側からシャフトを囲い込む少なくとも2つの軸受を備え、各々の軸受はそれぞれの冷却壁の内部容積内に配置される。
- フレームは、回転子の回転軸に対して全体に垂直に延在している相対する2つの側方外壁と、回転子の回転軸の周りに延在している少なくとも1つの長手方向外周壁と、回転子の回転軸に対して全体に垂直に延在している相対する2つの側方内壁と、回転子の回転軸の周りに延在している少なくとも1つの長手方向内周壁とを備え、そこで、側方外壁及び長手方向外周壁が、側方内壁及び長手方向内周壁と共に少なくとも1つの冷却流路を形成する。
- 冷却要素のうち少なくとも1つは、フレームのそれぞれの側方外壁に対向して配置された自由端と、それぞれの側方内壁に対向する自由端とを備え、側方内壁に対向する自由端と側方外壁に対向する自由端とは、少なくとも1つの冷却流路をその間に形成する。
- 側方内壁に対向する自由端と側方外壁に対向する自由端とは、薄板で隔てられた複数の冷却流路をその間に形成する。
- 回転子の回転軸に沿って回転子と反対側に小さな底辺が来るように、また回転子側に大きな底辺が来るように、薄板に斜角が付けられる。
【0010】
本発明は、上に説明したような電気モータを少なくとも1つ備える鉄道車両もまたその対象とする。
【0011】
本発明については、添付の図面を参照しながら、もっぱら例として示す以下の説明を読むことによってよりよく理解されよう。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本発明の実施形態による電気モータを各々が装備した2つの台車を備える鉄道車両の部分概略図である。
図2図1の電気モータの一部分の第1の面による断面図であって、モータは固定子、回転子及び冷却装置を備え、第1の面が、モータの回転子の回転軸と平行な第1の方向X-X′と第1の方向X-X′に対して垂直な第2の方向Y-Y′とによって定義される、断面図である。
図3図1の電気モータの冷却装置の斜視図である。
図4図1の電気モータの回転子の斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
図1には、複数の電車、とりわけ図1に見られるような少なくとも2つの電車12、14を備える鉄道車両10が示されている。
【0014】
図1で、電車12は制御動力車であり、電車14は付随車である。
【0015】
電車12は、第1の専用台車16と、電車12及び電車14を同時に保持する第2の台車18とによって保持される。
【0016】
図1の例では、各々の台車16,18は、2つの車軸20と、台車16,18の車軸20の一方又は両方を駆動することのできる電気モータ22とを備える。
【0017】
変形では、すべての台車が動力化されるわけではなく、電気モータ22を備えるのは、鉄道車両10の台車16,18の一部だけである。
【0018】
図2では、簡単のため、電気モータ22の半分だけを示しているが、もう半分は図示されている半分と方向X-X′に関してほぼ対称形をなす。
【0019】
電気モータ22は、公称回転数が毎分3000回転超、例えば毎分3500回転から毎分4500回転に到達するものとなるように構成される。
【0020】
公称回転数とは、鉄道車両10が2つの駅の間を巡航速度で運行するときの通常の走行回転数をいう。
【0021】
電気モータ22は、モータ22の内部空間E1を形成するフレーム30又はケーシングと、内部空間E1内に収められた回転子32、固定子34及び冷却装置36とを備える。
【0022】
フレーム30は、回転子32の回転軸Rに相当する方向X-X′に対して全体に垂直に延在している2つの対向する側方外壁40,42と、軸Rの周りに延在している長手方向外周壁44とを備える。
【0023】
フレーム30は、方向X-X′に対して全体に垂直に延在している2つの相対する側方内壁46,48と、軸Rの周りに延在している長手方向内周壁49とを備える。
【0024】
フレーム30は、例えば、円筒形、平行六面体又はその他技術的に企図可能なあらゆる形状を有する。
【0025】
側方外壁40,42及び長手方向外壁44は内部空間E1を形成する。
【0026】
各々の側方外壁40,42は、内部空間E1をフレーム30の外部空間E2と接続する少なくとも1つの、好ましくは複数の冷却穴50,52を備える。
【0027】
とりわけ、電気モータ22の回転シャフト54の突出部と反対側の側方外壁42は、回転子32の回転軸Rに対して全体に垂直であり、穴52は、全体に円板形の表面に分散して配置される。
【0028】
回転シャフト54の突出部と反対側の側方外壁42は、この先で詳しく説明するように、モータ22内への空気の入口側である。
【0029】
とりわけ、回転シャフト54がフレーム30の外に突き出る側の側方外壁40は、シャフト54の周りに円錐台形をなす部分を含み、その側方外壁40は、円錐台形部分の両側で回転子32の回転軸Rに対して全体に垂直をなす。
【0030】
穴50は、側方外壁40の円錐台形部分に分散して配置されることが好ましい。
【0031】
回転シャフト54がフレーム30の外に突き出る側の側方外壁40は、この先で詳しく説明するように、モータ22からの空気の出口側である。
【0032】
各々の冷却穴50,52の直径は、例えば5mmから10mmの間である。
【0033】
側方外壁40,42及び長手方向外壁44は、側方内壁46,48及び長手方向内壁49と共に少なくとも1つの冷却流路53を形成する。
【0034】
有利には、側方外壁40,42及び長手方向外壁44は、側方内壁46,48及び長手方向内壁49と共に径方向の隔壁によって隔てられた複数の冷却流路53を形成する。
【0035】
回転子32は、回転シャフト54と一体で回転するように取り付けられ、固定子34に対しては回転軸Rの周りに回転可能に取り付けられる。
【0036】
回転子32は、回転子32の回転軸Rに沿って相対する2つの端部32A,32Bを形成する。
【0037】
固定子34は、フレーム30内で回転軸Rと平行に回転子32を取り囲み、回転子32と同軸をなす。
【0038】
固定子34は、回転子32を取り囲むコイル55を備える。
【0039】
コイル55は、各々が回転子32の相対する端部32A,32Bの一方を取り囲む2つのヘッド55A,55Bを備え、回転子32の回転軸Rに沿って回転子32の端部32A,32Bの先まで延在している。
【0040】
モータ22は、回転子32の回転軸Rに沿って回転子32の両側でシャフト54を取り囲む少なくとも2つの軸受56,57を備える。
【0041】
回転子32及び固定子34は、従来どおり、電気エネルギーを機械エネルギーに変換することができ、その機械エネルギーを回転子32のシャフト54によって供給することで車軸20を駆動する。
【0042】
回転シャフト54は、フレーム30の一方の側から突き出る。
【0043】
冷却装置36は、回転子32の端部32A,32Bの一方に配置された少なくとも1つの冷却要素60,62を備える。
【0044】
有利には、図2に示すように、冷却装置は、各々が回転子32の端部32A,32Bのそれぞれに配置された2つの冷却要素60,62を備える。
【0045】
各々の冷却要素60,62は、回転子32に対する固定壁64,66であって、とりわけ回転子32の対応する端部32A,32Bに対する固定壁64,66を備える。
【0046】
各々の固定壁64,66は、回転子32と一体で回転し、回転軸Rに対して径方向に延在している。
【0047】
各々の固定壁64,66は、回転子32に対して径方向に面一となる径方向端部68,69を、回転子32の回転軸Rに対して前記径方向に備える。径方向端部68,69は、固定子34に対向して、かつ固定子34に近接して、すなわち、例えば径方向に沿って測って5mm未満、好ましくは3mm未満、例えば1.5mmから3mmの距離となるように配置される。各々の冷却要素60,62は、回転子32の回転軸Rに沿って回転子32の反対側に位置する自由端70,72をさらに備える。
【0048】
好ましくは、各々の固定壁64,66は、溶接、ろう付け、焼きばめなどによって気密性が得られるように回転子32と組み立てられる。
【0049】
各々の冷却要素60,62は、回転子32の回転軸Rに沿って固定壁64,66から冷却要素の自由端70,72まで延在している冷却壁74,76をさらに備える。
【0050】
各々の自由端70,72は、フレーム30の側方内壁46,48の1つと対向して配置される。
【0051】
また、回転シャフト54の突出部と反対側の冷却要素62は、フレーム30の側方外壁42と対向して配置された自由端73を有する。
【0052】
回転シャフト54の突出部と反対側の冷却要素62の側方内壁48と対向する自由端72と、側方外壁42と対向する自由端73とは、少なくとも1つの冷却流路75、有利には薄板75Aで隔てられた複数の冷却流路75をその間に形成する。
【0053】
薄板75Aには、有利には、回転子の回転軸Rに沿って回転子と反対側に小さな底辺が来るように、また回転子32側に大きな底辺が来るように、斜角が付けられる。
【0054】
薄板75Aは、冷却要素60,62が回転することで、コイル55の周りの内部空間E1内の空気の移動を可能にする。
【0055】
各々の側方内壁46,48は、回転子32の回転軸Rに沿って延びて軸受56,57を取り囲む、有利には円筒形の、内部部位77,78を具備する。内部部位は、回転子32の回転軸Rに対して全体に平行に軸受56,57を取り囲む。
【0056】
各々の冷却壁74,76は、内部容積79を形成し、部分的にそれを取り囲む。各々の冷却壁は、内部容積79を部分的に取り囲み、全体に回転子32の回転軸Rにセンタリングされた状態でそれを形成する。
【0057】
「内部容積79を形成する」とは、冷却壁74,76がそれ自体、閉じられており、例えば円錐台形又は円筒形をなすことをいう。
【0058】
各々の冷却壁74,76は、冷却穴50,52と対向する、特にそれぞれがその一部をなす冷却要素と連係する各々の冷却穴50,52と対向する内面74A,76Aを備える。各々の冷却壁74,76は、それぞれがその一部をなす冷却要素と連係する各々の冷却穴50,52を通過する空気流と接するのに適する。
【0059】
各々の冷却壁74,76は、内面74A,76Aと反対側の外面74B,76Bであって、固定子34と対向する外面をさらに備える。
【0060】
内面74A,76A及び外面74B,76Bは、固定壁64,66から自由端70,72まで延在している。
【0061】
各々の冷却壁74,76は、内部空間E1を、冷却穴50,52と空気力学的に連結された外部空気取入れのためのそれぞれの一次空間80A,82Aと、それぞれの二次空間80B,82Bとに分割する。
【0062】
各々の一次空間80A,82Aに含まれる空気は、対応する内面74A,76Aと接し、さらに、フレーム30の側方外壁40,42及び長手方向外壁44ならびに側方内壁46,48及び長手方向内壁49によって形成される唯一又は各々の冷却流路53と接する。
【0063】
各々の二次空間80B,82Bに含まれる空気は、対応する外面74B,76B及び回転子34と接する。
【0064】
つまり、各々の冷却壁74,76は、一次空間80A,82A内の空気を二次空間80B,82B内の空気から全体に隔離する。
【0065】
モータ22は、回転子32が回転するとき、対応する側方外壁42の唯一又は各々の穴52からシャフト54の突出部と反対側の内部空間E1に、とりわけ対応する一次空間82Aに入り込んだ空気が、唯一又は各々の冷却流路75へ、次いで側方外壁40,42及び長手方向外壁44によって、フレーム30の側方内壁46,48及び長手方向内壁49と共に形成される唯一又は各々の冷却流路53へと導かれ、モータシャフト54がフレーム30の外に突き出る側から、対応する側方外壁40の唯一又は各々の穴50を通して再び外に出るように構成される。
【0066】
内面74A,76A及び外面74B,76Bは、全体に平滑で突起要素がなく、有利には全体に平滑で突起物のない線織面である。
【0067】
線織面とは、面内のどの点であっても、そこを通る母線と呼ばれる直線が面内に含まれる面のことをいう。
【0068】
平滑で突起要素のない面とは、凸凹も不連続もない面をいう。
【0069】
冷却壁74,76と同様、内面74A,76A及び外面74B,76Bは、回転子32の回転軸Rに沿って延在している円錐台形又は円筒形をなすことが有利である。
【0070】
有利には、図2に示すように、各々の冷却壁74,76は、したがってその各々の内面74A,76A及び各々の外面74B,76Bは、小さな底面が回転子32側に来て、大きな底面が回転子の回転軸Rに沿って回転子と反対側に来る円錐台形である。そのため、各々の冷却壁74,76は、回転子の回転軸Rに対して傾斜しており、回転子の回転軸との間に20°から70°の間、好ましくは25°から55°の間の角度をなす。
【0071】
有利には、冷却壁74,76は、熱伝導性の材料、好ましくは金属で製作される。
【0072】
「熱伝導性の材料」とは、熱伝導率が240Wm-1-1超のものをいう。
【0073】
とりわけ、冷却壁74,76は、アルミニウムで製作される。
【0074】
また、回転子32には、少なくとも1つの管状貫通穴90が空けられる。
【0075】
回転子32の管状貫通穴90は、全体に回転子32の回転軸Rと心合せされ、好ましくは、回転子32の一方の端部32Aからもう一方の端部32Bまで一定の直径をなす。
【0076】
好ましくは、回転子32には、回転子32の軸Rから同じ径方向距離に配置された複数の管状貫通穴90が空けられる。
【0077】
例えば、回転子32には、2から20の穴90、好ましくは6から16の穴90、とりわけ10の穴90が空けられる。
【0078】
冷却装置36は、回転子32のいずれか1つの管状貫通穴90に挿入された少なくとも1つの中実円筒92であって、回転子32の一方の端部32Aからもう一方の端部32Bまで延在している中実円筒を備える。
【0079】
好ましくは、冷却装置36は、回転子32の複数の管状貫通穴90に挿入された複数の中実円筒92であって、回転子32の一方の端部32Aからもう一方の端部32Bまで延在している中実円筒を備える。
【0080】
各々の中実円筒92は、冷却要素60,62の2つの固定壁64,66の間に挟まれる。
【0081】
冷却要素60,62及び各々の中実円筒92は、溶接、ろう付け、焼きばめなどによって気密となるように組み立てられる。
【0082】
各々の中実円筒92は、穴90の内径とほぼ同じ外径を有する。中実円筒92と、それがはまる穴90との間にはごくわずかな遊びが存在することは理解されるところであり、その遊びは特に0.02mmから0.08mmの間である。
【0083】
例えば、中実円筒92の外径は、15mmから30mmの間である。
【0084】
各々の中実円筒92の直径は、熱膨張を考慮に入れて事前に計算される。
【0085】
各々の中実円筒92は、熱伝導性の材料で製作される。例えば、各々の中実円筒92は、金属、とりわけアルミニウム、もしくは銅、又はそれら2つの合金で製作される。
【0086】
このような構成により、回転する回転子32から放出される熱量は、各々の中実円筒92から冷却要素60,62の固定壁64,66の方へ概ね伝導によって循環する。
【0087】
各々の中実円筒92は、回転子32の全長にわたって熱量を取り出すことができる。
【0088】
有利には、冷却装置36は、そのほか少なくとも1つの中空円筒94を備える。
【0089】
好ましくは、冷却装置36は、回転子32の管状貫通穴90に挿入された複数の中空円筒94であって、回転子32の一方の端部32Aからもう一方の端部32Bまで延在している中空円筒を備える。
【0090】
各々の中空円筒94は、冷却要素60,62の2つの固定壁64,66の間に挟まれる。
【0091】
冷却要素60,62及び各々の中空円筒94は、溶接、ろう付け、焼きばめなどによって気密となるように組み立てられる。
【0092】
各々の中空円筒94は、穴90の内径をやや下回る外径を有する。中空円筒94と、それがはまる穴90との間にはごくわずかな遊びが存在することは理解されるところであり、その遊びは特に0.02mmから0.08mmの間である。
【0093】
例えば、中空円筒94の外径は、15mmから30mmの間である。
【0094】
各々の中空円筒94の直径は、熱膨張を考慮に入れて事前に計算される。
【0095】
各々の中空円筒94は、熱伝導性の材料で製作される。例えば、各々の中空円筒94は、金属、とりわけアルミニウム、もしくは銅、又はそれら2つの合金で製作される。
【0096】
このような構成により、回転する回転子32から放出される熱量は、各々の中空円筒94から冷却要素60,62の固定壁64,66の方へ概ね伝導によって循環する。
【0097】
各々の中空円筒94は、回転子32の全長にわたって熱量を取り出すことができ、中実円筒92よりも軽量である。
【0098】
好ましくは、各々の管状貫通穴90は、中実92又は中空94の円筒によって塞がれる。
【0099】
さらに好ましくは、各々の中実円筒92は、回転子32の軸Rの周りを中空円筒94と交番する。
【0100】
有利には、各々の軸受56,57は、冷却穴50,52に空気力学的に連結された外部空気取入れのためのそれぞれの一次空間80A,82A内に配置される。それにより、モータ22のフレーム30内にもたらされる熱量を制限し、軸受56,57を保護することができる。
【0101】
モータ22の動作、とりわけモータ22の冷却の動作について、図2を参照しながら以下に説明する。
【0102】
鉄道車両10が移動中で、電気モータ22が動作中のとき、各々のモータ22の回転子32は、台車16,18の車軸20を動かすために回転する。すると、各々の電気モータ22では、回転子32及び固定子34が熱を発生させ、その熱が過大なときには、軸受56,57を摩耗させることなどにより、電気モータ22の性能に影響を及ぼす可能性がある。
【0103】
しかし、回転子32と一体の冷却装置36があることで、固定子32の熱量は、回転子32から唯一又は各々の管92,94へ、さらに各々の管92,94から冷却要素60,62へと伝導によって排出される。
【0104】
また、回転子32が回転すると、内部空間E1内の空気は冷却され、それにより、回転子32及び固定子34は、対流によって冷却される。
【0105】
より詳細には、冷却要素60,62が回転し、したがって冷却壁74,76が回転すると、それによって空気の循環が起こる。空気の循環は、シャフト54がフレーム50から突き出る側と反対側の冷却穴52を通して、外部空間E2から内部空間E1へ、特に一次空間82Aへ、次いで、内部空間E1、特に一次空間82Aから冷却要素76によって形成される冷却流路75へ、次いで、側方外壁40,42及び長手方向外壁44によってフレーム30の側方内壁46,48及び長手方向内壁49と共に形成される唯一又は各々の冷却流路53へ、次いで、シャフト54がフレーム30の外に突き出る側の冷却穴50へ、次いで冷却穴50から外部空間E2へと行われる。
【0106】
したがって、2つの冷却壁74,76及び唯一又は各々の管92,94は、モータ22の両方の側で熱量を排出することができる均一なアセンブリをなす。
【0107】
これにより、閉鎖型モータであるモータ22内部の熱の抽出及び排出は改善する。
【0108】
この機能を果たすのは、駆動モータの回転部位の内部に配置された熱伝導性の円筒である。
【0109】
冷却装置36は熱量を抽出し、それを、内部空間E1と外部空間E2とを隔てる2つの冷却壁74,76に伝導によって伝達することができる。続いて、熱量は外部空間E2へ、好ましくはモータ22を貫いて通り抜ける空気流により、対流によって排出される。
【0110】
こうして、回転子32及び固定子34の温度上昇は、電気モータ22の最適な動作が可能な温度範囲に保たれる。
【0111】
さらに、本発明は、構造的に単純であり、実施のためのコストがかさまないという利点を有する。実際、冷却装置36の構造は、比較的単純である。
【0112】
上述のように企図される実施形態及び変形形態は、互いに組み合わせることで本発明の他の実施形態をもたらすことができる。
【符号の説明】
【0113】
10 鉄道車両
12 電車、制御動力車
14 電車、付随車
16 台車
18 台車
20 車軸
22 電気モータ
30 フレーム
32 回転子
32A 端部
32B 端部
34 固定子
36 冷却装置
40 側方外壁
42 側方外壁
44 長手方向外周壁
46 側方内壁
48 側方内壁
49 長手方向内周壁
50 冷却穴
52 冷却穴
53 冷却流路
54 回転シャフト
55 コイル
55A ヘッド
55B ヘッド
56 軸受
57 軸受
60 冷却要素
62 冷却要素
64 固定壁
66 固定壁
68 径方向端部
69 径方向端部
70 自由端
72 自由端
73 自由端
74 冷却壁
74A 内面
74B 外面
75 冷却流路
75A 薄板
76A 内面
76B 外面
76 冷却壁
77 内部部位
78 内部部位
79 内部容積
80A 一次空間
80B 二次空間
82A 一次空間
82B 二次空間
90 管状貫通穴
92 中実円筒
94 中空円筒
E1 内部空間
E2 外部空間
R 回転軸
図1
図2
図3
図4
【外国語明細書】