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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022050388
(43)【公開日】2022-03-30
(54)【発明の名称】ヒトCD38に対する抗体
(51)【国際特許分類】
   C12N 15/13 20060101AFI20220323BHJP
   C12N 15/62 20060101ALI20220323BHJP
   C12N 15/63 20060101ALI20220323BHJP
   C07K 16/28 20060101ALI20220323BHJP
   C07K 16/46 20060101ALI20220323BHJP
   C07K 19/00 20060101ALI20220323BHJP
   C12P 21/08 20060101ALI20220323BHJP
   C12N 1/15 20060101ALI20220323BHJP
   C12N 1/19 20060101ALI20220323BHJP
   C12N 1/21 20060101ALI20220323BHJP
   C12N 5/10 20060101ALI20220323BHJP
   C12N 5/071 20100101ALI20220323BHJP
   C12Q 1/02 20060101ALI20220323BHJP
   A61K 38/05 20060101ALI20220323BHJP
   A61K 39/395 20060101ALI20220323BHJP
   A61K 51/10 20060101ALI20220323BHJP
   A61K 35/76 20150101ALI20220323BHJP
   A61P 35/00 20060101ALI20220323BHJP
   A61P 19/02 20060101ALI20220323BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20220323BHJP
   A61K 45/00 20060101ALI20220323BHJP
   A61K 47/68 20170101ALI20220323BHJP
   A61P 35/02 20060101ALI20220323BHJP
   A61P 25/00 20060101ALI20220323BHJP
   A61K 48/00 20060101ALI20220323BHJP
   G01N 33/53 20060101ALI20220323BHJP
   G01N 33/574 20060101ALI20220323BHJP
   G01N 33/50 20060101ALI20220323BHJP
【FI】
C12N15/13 ZNA
C12N15/62 Z
C12N15/63 Z
C07K16/28
C07K16/46
C07K19/00
C12P21/08
C12N1/15
C12N1/19
C12N1/21
C12N5/10
C12N5/071
C12Q1/02
A61K38/05
A61K39/395 Y
A61K51/10 100
A61K35/76
A61P35/00
A61P19/02
A61K51/10 200
A61P43/00 105
A61K45/00
A61P43/00 121
A61K47/68
A61P35/02
A61P25/00
A61K48/00
G01N33/53 D
G01N33/574 A
G01N33/50 T
【審査請求】有
【請求項の数】39
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021195161
(22)【出願日】2021-12-01
(62)【分割の表示】P 2019195490の分割
【原出願日】2011-06-08
(31)【優先権主張番号】61/353,082
(32)【優先日】2010-06-09
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】PA201000498
(32)【優先日】2010-06-09
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DK
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.TWEEN
2.TRITON
(71)【出願人】
【識別番号】507316398
【氏名又は名称】ゲンマブ エー/エス
(74)【代理人】
【識別番号】100102978
【弁理士】
【氏名又は名称】清水 初志
(74)【代理人】
【識別番号】100102118
【弁理士】
【氏名又は名称】春名 雅夫
(74)【代理人】
【識別番号】100160923
【弁理士】
【氏名又は名称】山口 裕孝
(74)【代理人】
【識別番号】100119507
【弁理士】
【氏名又は名称】刑部 俊
(74)【代理人】
【識別番号】100142929
【弁理士】
【氏名又は名称】井上 隆一
(74)【代理人】
【識別番号】100148699
【弁理士】
【氏名又は名称】佐藤 利光
(74)【代理人】
【識別番号】100128048
【弁理士】
【氏名又は名称】新見 浩一
(74)【代理人】
【識別番号】100129506
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 智彦
(74)【代理人】
【識別番号】100205707
【弁理士】
【氏名又は名称】小寺 秀紀
(74)【代理人】
【識別番号】100114340
【弁理士】
【氏名又は名称】大関 雅人
(74)【代理人】
【識別番号】100121072
【弁理士】
【氏名又は名称】川本 和弥
(72)【発明者】
【氏名】ヴェールス ミシェル デ
(72)【発明者】
【氏名】ウォルセス ティム
(72)【発明者】
【氏名】ウィンケル ヤン ヴァン デ
(72)【発明者】
【氏名】フィンク トム
(72)【発明者】
【氏名】パレン パウル
(57)【要約】
【課題】自己免疫及び(慢性)炎症性疾患、例えば1型及び2型糖尿病、甲状腺炎、グレーブス病、関節炎、神経炎症及び喘息を含む疾病の処置に有用な、ヒトCD38に結合する単離されたモノクローナル抗体の提供。
【解決手段】アミノ酸配列の特定の位置のAspがGlyで置換されている、ヒトCD38に結合する抗体。
【効果】ヒトCD38に結合する抗体は、ヒトCD38変異体には、野生型ヒトCD38に結合するのと同程度には結合しない抗体であり、CD38のcADPRヒドロラーゼ活性に対して強い刺激効果を及ぼしてcADPRのレベル低下を招き、塩基交換反応を介するニコチン酸アデニンジヌクレオチド2’-リン酸(NAADP)の形成を触媒するCD38の能力を阻害する。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ヒトCD38(SEQ ID NO:52)に結合する抗体であって、202位のAspがGlyで置換されているヒトCD38の変異体には、ヒトCD38に結合するのと同じ程度には結合しない、抗体。
【請求項2】
202位のAspがGlyで置換されているヒトCD38の変異体への抗体の結合のEC50が、ヒトCD38への該抗体の結合のEC50の50%未満、例えば10%未満、5%未満または1%未満である、請求項1記載の抗体。
【請求項3】
272位のGlnがArgで置換されているヒトCD38の変異体には、ヒトCD38に結合するのと同じ程度に結合する、前記請求項のいずれか一項記載の抗体。
【請求項4】
272位のGlnがArgで置換されているヒトCD38の変異体への抗体の結合のEC50が、ヒトCD38への該抗体の結合のEC50の少なくとも80%、例えば少なくとも90%、例えば少なくとも95%、例えば少なくとも98%である、請求項3記載の抗体。
【請求項5】
274位のSerがPheで置換されているヒトCD38の変異体には、ヒトCD38に結合するのと同じ程度に結合する、前記請求項のいずれか一項記載の抗体。
【請求項6】
ヒトCD38の変異体への抗体の結合のEC50が、ヒトCD38への該抗体の結合のEC50の少なくとも75%、例えば少なくとも80%、例えば少なくとも90%、例えば少なくとも95%、例えば少なくとも98%である、請求項5記載の抗体。
【請求項7】
(i)202位のAspがGlyで置換されているヒトCD38の変異体には、ヒトCD38に結合するのと同じ程度には結合せず、(ii)272位のGlnがArgで置換されているヒトCD38の変異体には、ヒトCD38に結合するのと同じ程度に結合し、(iii)274位のSerがPheで置換されているヒトCD38の変異体には、ヒトCD38に結合するのと同じ程度に結合するという結合特性を有する、前記請求項のいずれか一項記載の抗体。
【請求項8】
実施例8のアッセイにおいて計測した場合、ヒトCD38に結合し、かつCD38シクラーゼ活性に対する阻害効果およびCD38ヒドロラーゼ活性に対する刺激効果を有する、前記請求項のいずれか一項記載の抗体。
【請求項9】
阻害効果が、抗体の非存在下におけるCD38シクラーゼ活性に対する阻害効果に比べて少なくとも50~66%である、請求項8記載の抗体。
【請求項10】
SEQ ID NO:1、6、11、16または21に記載されるヌクレオチド配列をその可変領域中に含むヒト重鎖核酸およびSEQ ID NO:26、31、36、41または46に記載されるヌクレオチド配列をその可変領域中に含むヒト軽鎖核酸によってコードされる、ヒトCD38に結合する抗体。
【請求項11】
SEQ ID NO:1および26、6および31、11および36、16および41、または21および46に記載されるヌクレオチド配列をその可変領域中にそれぞれ含むヒト重鎖核酸およびヒト軽鎖核酸によってコードされる、請求項10記載の抗体。
【請求項12】
c)SEQ ID NO:5、10、15、20、もしくは25に記載される配列、または
d)該配列の変異体、例えば多くて一つ、二つ、もしくは三つのアミノ酸修飾、好ましくは置換、例えば保存的置換を有する変異体
を含むVH CDR3を含む、ヒトCD38に結合する抗体。
【請求項13】
SEQ ID NO:5、10、15、20または25に記載される配列を有するVH CDR3およびSEQ ID NO:30、35、40、45または50に記載される配列を有するVL CDR3を含む、ヒトCD38に結合する抗体。
【請求項14】
SEQ ID NO:5およびSEQ ID NO:30またはSEQ ID NO:10およびSEQ ID NO:35またはSEQ ID NO:15およびSEQ ID NO:40またはSEQ ID NO:20およびSEQ ID NO:45またはSEQ ID NO:25およびSEQ ID NO:50をそれぞれVH CDR3およびVL CDR3として含む、ヒトCD38に結合する抗体。
【請求項15】
(i)SEQ ID NO:3、8、13、18および23のいずれかに記載される配列を有するVH CDR1、SEQ ID NO:4、9、14、19および24のいずれかに記載される配列を有するVH CDR2、SEQ ID NO:5、10、15、20および25のいずれかに記載される配列を有するVH CDR3、SEQ ID NO:28、33、38、43および48のいずれかに記載される配列を有するVL CDR1、SEQ ID NO:29、34、39、44および49のいずれかに記載される配列を有するVL CDR2、SEQ ID NO:30、35、40、45および50のいずれかに記載される配列を有するVL CDR3、
(ii)SEQ ID NO:3に記載される配列を有するVH CDR1、SEQ ID NO:34に記載される配列を有するVH CDR2、SEQ ID NO:5に記載される配列を有するVH CDR3、SEQ ID NO:28に記載される配列を有するVL CDR1、SEQ ID NO:29に記載される配列を有するVL CDR2、SEQ ID NO:30に記載される配列を有するVL CDR3、
(iii)SEQ ID NO:8に記載される配列を有するVH CDR1、SEQ ID NO:9に記載される配列を有するVH CDR2、SEQ ID NO:10に記載される配列を有するVH CDR3、SEQ ID NO:33に記載される配列を有するVL CDR1、SEQ ID NO:34に記載される配列を有するVL CDR2、SEQ ID NO:35に記載される配列を有するVL CDR3、
(iv)SEQ ID NO:13に記載される配列を有するVH CDR1、SEQ ID NO:14に記載される配列を有するVH CDR2、SEQ ID NO:15に記載される配列を有するVH CDR3、SEQ ID NO:38に記載される配列を有するVL CDR1、SEQ ID NO:39に記載される配列を有するVL CDR2、SEQ ID NO:40に記載される配列を有するVL CDR3、
(v)SEQ ID NO:18に記載される配列を有するVH CDR1、SEQ ID NO:19に記載される配列を有するVH CDR2、SEQ ID NO:20に記載される配列を有するVH CDR3、SEQ ID NO:43に記載される配列を有するVL CDR1、SEQ ID NO:44に記載される配列を有するVL CDR2、SEQ ID NO:45に記載される配列を有するVL CDR3、
(vi)SEQ ID NO:23に記載される配列を有するVH CDR1、SEQ ID NO:24に記載される配列を有するVH CDR2、SEQ ID NO:25に記載される配列を有するVH CDR3、SEQ ID NO:48に記載される配列を有するVL CDR1、SEQ ID NO:49に記載される配列を有するVL CDR2、SEQ ID NO:50に記載される配列を有するVL CDR3、または
(vii)好ましくは多くて一つ、二つまたは三つのアミノ酸修飾、より好ましくはアミノ酸置換、例えば保存的アミノ酸置換を該配列の一つまたは複数の中に有する、前記のいずれかの抗体の変異体
を含む、CD38に結合する抗体。
【請求項16】
(i)SEQ ID NO:2、7、12、17または22の配列を含むか、または
(ii)SEQ ID NO:2、7、12、17または22に記載されたVH領域配列と少なくとも80%の同一性、例えば90%または95%または97%または98%または99%または100%の同一性を有する
VH領域を含む、CD38に結合する抗体。
【請求項17】
(i)SEQ ID NO:27、32、37、42または47の配列を含むか、または
(ii)SEQ ID NO:27、32、37、42または47からなる群より選択されるVL領域配列と少なくとも80%の同一性、例えば90%または95%または97%または98%または99%または100%の同一性を有する
VL領域を含む、CD38に結合する抗体。
【請求項18】
SEQ ID NO:2、7、12、17および22の配列のいずれかを含むVH領域と、SEQ ID NO:27、32、37、42および47の配列のいずれかを含むVL領域とを含む、CD38に結合する抗体。
【請求項19】
(i)SEQ ID NO:2に記載される配列を含むVH領域およびSEQ ID NO:27に記載される配列を含むVL領域、
(ii)SEQ ID NO:7に記載される配列を含むVH領域およびSEQ ID NO:32に記載される配列を含むVL領域、
(iii)SEQ ID NO:12に記載される配列を含むVH領域およびSEQ ID NO:37に記載される配列を含むVL領域、
(iv)SEQ ID NO:17に記載される配列を含むVH領域およびSEQ ID NO:42に記載される配列を含むVL領域、または
(v)SEQ ID NO:22に記載される配列を含むVH領域およびSEQ ID NO:47に記載される配列を含むVL領域
を含む、CD38に結合する抗体。
【請求項20】
請求項1~9のいずれか一項記載の結合特性を有する、請求項10~19のいずれか一項記載の抗CD38抗体。
【請求項21】
前記請求項のいずれか一項記載の抗CD38抗体と同じCD38上のエピトープに結合する、抗CD38抗体。
【請求項22】
請求項1~19のいずれか一項記載の抗体と、ヒトCD38への結合に関して実質的に同じ特異的結合特性を有する抗体。
【請求項23】
本明細書の実施例6に記載する方法によって測定した場合、好ましくは5nM以下、例えば1nM以下、例えば0.2nM以下のEC50値で、例えばDaudi細胞において抗体依存性細胞傷害性(ADCC)を誘発することができる、前記請求項のいずれか一項記載の抗CD38抗体。
【請求項24】
本明細書の実施例6に記載する方法にしたがって、Daudi細胞においてADCCを誘発することができない、請求項1~22のいずれか一項記載の抗CD38抗体。
【請求項25】
CHO-CD38細胞において補体依存性細胞傷害性(CDC)を誘発することができない、前記請求項のいずれか一項記載の抗CD38抗体。
【請求項26】
10-8M以下のKD、好ましくは10-9M以下のKDでヒトCD38に結合する、前記請求項のいずれか一項記載の抗CD38抗体。
【請求項27】
ヒト一価抗体である、前記請求項のいずれか一項記載の抗CD38抗体。
【請求項28】
完全長IgG1、IgG2、IgG3、IgG4、IgD、IgA、IgEまたはIgM抗体、例えばIgG1抗体、好ましくはIgG1,κ抗体またはIgM抗体、好ましくはIgM,κ抗体であることを特徴とする、前記請求項のいずれか一項記載の抗体。
【請求項29】
抗体フラグメントまたは単鎖抗体である、請求項1~27のいずれか一項記載の抗CD38抗体。
【請求項30】
エフェクタ機能欠損抗体である、請求項1~22または24~29のいずれか一項記載の抗CD38抗体。
【請求項31】
エフェクタ機能欠損抗CD38抗体が安定化ヒトIgG4抗体である、請求項30記載の抗CD38抗体。
【請求項32】
安定化IgG4抗体が、ヒトIgG4の重鎖定常領域中の409位のアルギニンがリジン、トレオニン、メチオニンまたはロイシン、好ましくはリジンで置換されている抗体である、請求項31記載の抗CD38抗体。
【請求項33】
前記409位に対応する位置にLys残基を含むか、またはCH3領域がヒトIgG1、ヒトIgG2、もしくはヒトIgG3のCH3領域によって置換されている、請求項32記載の抗CD38抗体。
【請求項34】
ヒンジ領域中にCys-Pro-Pro-Cys配列を含まない、請求項32~33のいずれか一項記載の抗CD38抗体。
【請求項35】
ヒンジ領域中にCys-Pro-Pro-Cys配列を含む、請求項32~33のいずれか一項記載の抗CD38抗体。
【請求項36】
一価抗体である、請求項1~35のいずれか一項記載の抗CD38抗体。
【請求項37】
一価抗体が、
i)該一価抗体の軽鎖をコードする核酸コンストラクトを提供する段階であって、該コンストラクトが、SEQ ID NO:27、32、37、42または47のVL領域をコードするヌクレオチド配列およびIgの定常CL領域をコードするヌクレオチド配列を含み、選択された抗原特異的抗体のVL領域をコードする該ヌクレオチド配列およびIgの該CL領域をコードする該ヌクレオチド配列が、機能的に連結され、IgG1サブタイプの場合、該CL領域が、ポリクローナルヒトIgGの存在下または動物もしくはヒトに投与されたとき、該CL領域の同一のアミノ酸配列を含む他のペプチドとジスルフィド結合または共有結合を形成することができるいかなるアミノ酸も含まないように、該CL領域をコードする該ヌクレオチド配列が改変されている、段階、
ii)該一価抗体の重鎖をコードする核酸コンストラクトを提供する段階であって、該コンストラクトが、SEQ ID NO:2、7、12、17または22のVH領域をコードするヌクレオチド配列およびヒトIgの定常CH領域をコードするヌクレオチド配列を含み、ヒンジ領域に対応する領域と、Igサブタイプによって求められる場合、該CH領域の他の領域、例えばCH3領域とが、ポリクローナルヒトIgGの存在下または動物もしくはヒトに投与されたとき、該ヒトIgの該CH領域の同一のアミノ酸配列を含む他のペプチドとのジスルフィド結合または共有結合的もしくは安定な非共有結合的重鎖間結合の形成に関与するいかなるアミノ酸残基も含まないように、該CH領域をコードする該ヌクレオチド配列が改変されており、選択された抗原特異的抗体の該VH領域をコードする該ヌクレオチド配列および該Igの該CH領域をコードする該ヌクレオチド配列が機能的に連結されている、段階、
iii)該一価抗体を産生するための細胞発現系を提供する段階、
iv)(iii)の細胞発現系の細胞中に(i)および(ii)の該核酸コンストラクトを同時発現させることによって該一価抗体を産生する段階
を含む方法によって構築される、請求項36記載の抗CD38抗体。
【請求項38】
CH2およびCH3領域を含むCH領域が、ヒンジ領域に対応する領域と、免疫グロブリンがIgG4サブタイプではないならば、該CH領域の他の領域、例えばCH3領域とが、ポリクローナルヒトIgGの存在下、同一のCH領域とのジスルフィド結合または同一のCH領域との他の共有結合的もしくは安定な非共有結合的重鎖間結合を形成することができるいかなるアミノ酸残基も含まないように、修飾されている、請求項36~37のいずれか一項記載の抗CD38抗体。
【請求項39】
一価抗体がIgG4サブタイプであるが、CH3領域が、以下のアミノ酸置換の一つまたは複数が加えられるように修飾されている、請求項36~38のいずれか一項記載の抗CD38抗体:
366位のThr(T)がAla(A)によって置換されている;368位のLeu(L)がAla(A)によって置換されている;368位のLeu(L)がVal(V)によって置換されている;405位のPhe(F)がAla(A)によって置換されている;405位のPhe(F)がLeu(L)によって置換されている;407位のTyr(Y)がAla(A)によって置換されている;409位のArg(R)がAla(A)によって置換されている。
【請求項40】
ヒンジ全体が欠失するように重鎖が修飾されている、請求項36~39のいずれか一項記載の抗CD38抗体。
【請求項41】
一価抗体の配列が、N結合グリコシル化のための任意の受容部位を含まないように修飾されている、請求項36~40のいずれか一項記載の抗CD38抗体。
【請求項42】
3μg/mlの濃度で90分後、本明細書の実施例8に記載されている分光光度法によって測定された場合、cGDPRのCD38触媒合成を少なくとも25%、例えば少なくとも30%阻害する、前記請求項のいずれか一項記載の抗体。
【請求項43】
3μg/mlの濃度で90分後、Munshi et al., J. Biol. Chem. 275, 21566-21571 (2000)に記載されているHPLC法によって測定した場合、cADPRのCD38触媒合成を少なくとも25%、例えば少なくとも30%阻害する、前記請求項のいずれか一項記載の抗体。
【請求項44】
CD38のヒドロラーゼ活性を少なくとも25%刺激する、前記請求項のいずれか一項記載の抗体。
【請求項45】
CD38のNADヒドロラーゼ活性を少なくとも25%刺激する、前記請求項のいずれか一項記載の抗体。
【請求項46】
CD38のcADPRヒドロラーゼ活性を少なくとも25%刺激する、前記請求項のいずれか一項記載の抗体。
【請求項47】
本明細書の実施例8に記載する方法によって、塩基交換反応によるNAADPの形成を触媒するCD38の能力を0.5μg/mL未満、例えば0.2μg/mL未満のIC50で阻害する、前記請求項のいずれか一項記載の抗体。
【請求項48】
抗体が、細胞傷害剤、放射性同位体、または薬物にコンジュゲートされている、前記請求項のいずれか一項記載の抗体を含む抗体薬物コンジュゲート。
【請求項49】
抗体が、リンカーを介してアウリスタチンまたはその機能性ペプチド類似物もしくは誘導体にコンジュゲートされている、請求項48記載の抗体薬物コンジュゲート。
【請求項50】
請求項1~49のいずれか一項記載の抗体と、ヒトエフェクタ細胞または癌抗原に対する第二の結合特異性とを含む、二重特異性抗体。
【請求項51】
第二の結合特異性が、ヒトFc受容体またはT細胞受容体、例えばCD3に対するものである、請求項50記載の抗体を含む二重特異性分子。
【請求項52】
前記請求項のいずれか一項記載の抗体をコードする単離された核酸。
【請求項53】
請求項10~19のいずれか一項記載のアミノ酸配列の一つまたは複数をコードするヌクレオチド配列を含む、発現ベクター。
【請求項54】
ヒト抗体の軽鎖、重鎖、または軽鎖および重鎖両方の定常領域をコードするヌクレオチド配列をさらに含む、請求項53記載の発現ベクター。
【請求項55】
請求項1~47のいずれか一項記載の抗体を産生する組換え真核生物または原核生物宿主細胞。
【請求項56】
請求項1~47のいずれか一項記載の抗体、請求項48~49のいずれか一項記載のイムノコンジュゲート、請求項50~51のいずれか一項記載の二重特異性抗体、または請求項53~54のいずれか一項記載の発現ベクターと、薬学的に許容可能な担体とを含む、薬学的組成物。
【請求項57】
医薬として使用するための、請求項1~47のいずれか一項記載の抗体。
【請求項58】
CD38を発現する腫瘍細胞の成長および/もしくは増殖、遊走を阻害する、またはCD38を発現する腫瘍細胞のファゴサイトーシスを誘発することに使用するための、請求項1~47のいずれか一項記載の抗体。
【請求項59】
関節リウマチの処置に使用するための、請求項1~47のいずれか一項記載の抗体。
【請求項60】
慢性リンパ性白血病(CLL)、急性リンパ芽球性白血病(ALL)、急性骨髄性白血病(成人)(AML)、マントル細胞リンパ腫、ろ胞性リンパ腫、およびびまん性大細胞型B細胞リンパ腫から選択される障害の処置に使用するための、請求項1~47のいずれか一項記載の抗体。
【請求項61】
多発性骨髄腫の処置に使用するための、請求項1~47のいずれか一項記載の抗体。
【請求項62】
a)請求項55記載の宿主細胞を培養する段階、および
b)培地から抗CD38抗体を精製する段階
を含む、請求項1~47のいずれか一項記載の抗CD38抗体を産生するための方法。
【請求項63】
請求項1~47のいずれか一項記載の抗体を含む、診断用組成物。
【請求項64】
サンプルを、請求項1~47のいずれか一項記載の抗CD38抗体と、該抗体または二重特異性分子とCD38との間の複合体の形成を可能にする条件下で、接触させる段階、および
複合体が形成されたかどうかを分析する段階
を含む、サンプル中のCD38抗原、すなわちCD38を発現する細胞の存在を検出するための方法。
【請求項65】
サンプル中のCD38抗原、すなわちCD38を発現する細胞の存在を検出するためのキットであって、請求項1~47のいずれか一項記載の抗CD38抗体およびキットの使用に関する取り扱い指示を含む、キット。
【請求項66】
請求項1~47のいずれか一項記載の抗CD38抗体に結合する、抗イディオタイプ抗体。
【請求項67】
CD38を発現する細胞の成長および/もしくは増殖、遊走またはファゴサイトーシスが阻害されるように、請求項1~47のいずれか一項記載の抗体、請求項48~49のいずれか一項記載のイムノコンジュゲート、請求項50~51のいずれか一項記載の二重特異性抗体、請求項53~54のいずれか一項記載の発現ベクター、または請求項56記載の薬学的組成物の投与
を含む、CD38を発現する細胞の成長および/もしくは増殖、遊走を阻害する、またはCD38を発現する細胞のファゴサイトーシスを誘発する方法。
【請求項68】
請求項1~47のいずれか一項記載の抗体、請求項48~49のいずれか一項記載のイムノコンジュゲート、請求項50~51のいずれか一項記載の二重特異性抗体、請求項53~54のいずれか一項記載の発現ベクター、または請求項56記載の薬学的組成物を、それを必要とする対象に投与する段階
を含む、対象においてCD38を発現する細胞が関与する疾病または障害を処置する方法。
【請求項69】
疾病または障害が関節リウマチである、請求項67~68のいずれか一項記載の方法。
【請求項70】
疾病または障害が、慢性リンパ性白血病(CLL)、急性リンパ芽球性白血病(ALL)、急性骨髄性白血病(成人)(AML)、マントル細胞リンパ腫、ろ胞性リンパ腫、およびびまん性大細胞型B細胞リンパ腫から選択される、請求項67~68のいずれか一項記載の方法。
【請求項71】
疾病または障害が多発性骨髄腫である、請求項67~68のいずれか一項記載の方法。
【請求項72】
一つまたは複数のさらなる治療剤の対象への投与を含む、請求項67~71のいずれか一項記載の方法。
【請求項73】
一つまたは複数のさらなる治療剤が、化学療法剤、抗炎症剤、または免疫抑制剤および/もしくは免疫調節剤から選択される、請求項72記載の方法。
【請求項74】
一つまたは複数のさらなる治療剤が、シスプラチン、ゲフィチニブ、セツキシマブ、リツキシマブ、オファツムマブ、ベバシズマブ、エルロチニブ、ボルテゾミブ、サリドマイド、パミドロネート、ゾレドロン酸、クロドロネート、リセドロネート、イバンドロネート、エチドロネート、アレンドロネート、チルドロネート、三酸化ヒ素、レナリドミド、デキサメタゾン、プレドニゾロン、フィルグラスチム、ペグフィルグラスチム、サルグラモスチム、スベロイルアニリドヒドロキサム酸、およびSCIO-469からなる群より選択される、請求項73記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
発明の分野
本発明は、ヒトCD38に対する抗体および特に治療用途におけるそのような抗体の使用に関する。
【背景技術】
【0002】
発明の背景
CD38は、通常は造血細胞および固形組織中に見られるタイプII膜貫通糖タンパク質である。造血細胞に関して、髄質胸腺細胞の大多数はCD38+であり、休止および循環TおよびB細胞はCD38-であり、活性化細胞はCD38+である。CD38はまた、休止NK細胞および単球の約80%ならびにリンパ節胚中心リンパ芽球、形質B細胞および一部の卵胞内細胞上に発現する。CD38はまた、樹状細胞によって発現することもできる。正常な骨髄細胞の有意な割合である特定の前駆細胞がCD38を発現する。加えて、臍帯血細胞の50~80%がCD38+であり、ヒト血液中、生後2~3年間はそのようなままである。リンパ系前駆細胞に加えて、CD38はまた、赤血球および血小板上にも発現する。固形組織に関して、CD38は、腸内の上皮内細胞および固有層リンパ球、脳内のプルキニエ細胞および神経原線維濃縮体、前立腺内の上皮細胞、膵臓内のβ細胞、骨内の破骨細胞、眼内の網膜細胞ならびに平滑筋および横紋筋の筋細胞膜によって発現する。
【0003】
CD38はまた、多発性骨髄腫、B細胞性慢性リンパ性白血病、B細胞性急性リンパ性白血病、ワルデンストレームマクログロブリン血症、原発性全身性アミロイドーシス、マントル細胞リンパ腫、前リンパ球性/骨髄球性白血病、急性骨髄性白血病、慢性骨髄性白血病、ろ胞性リンパ腫、NK細胞白血病および形質細胞性白血病を含む多様な悪性血液学的疾患においても発現する。前立腺の腺上皮、膵臓の膵島細胞、耳下腺を含む腺の管上皮、気管支上皮細胞、精巣および卵巣内の細胞ならびに結腸直腸腺癌の腫瘍上皮を含む様々な起源の上皮/内皮細胞におけるCD38の発現が記載されている。CD38発現が関与するおそれのある他の疾病は、例えば、肺の気管支上皮癌、乳癌(乳房の管および小葉中の上皮ライニングの悪性増殖から発生する)、B細胞から発生する膵腫瘍(インスリノーマ)、腸内の上皮から発生する腫瘍(例えば腺癌および扁平上皮癌)、前立腺の癌腫、精巣の精上皮腫および卵巣癌を含む。CNSにおいては、神経芽細胞腫がCD38を発現する。
【0004】
他の開示もまた、グレーブス病および甲状腺炎(Antonelli A, et al., Clin. Exp. Immunol. 126, 426-431, 2001(非特許文献1))ならびに1型および2型糖尿病(Mallone R and Perin PC, Diabetes Metab Res Rev 2006; 22: 284-294(非特許文献2))のような自己免疫病ならびに喘息中の気道平滑筋細胞の炎症(Desphande et al. 2004 am J Respir Cell Mol Biol 31: 36-42(非特許文献3))におけるCD38の役割を示唆している。
【0005】
CD38は多機能タンパク質である。CD38に帰される機能は、接着およびシグナル伝達インベントにおける受容体媒介ならびに(エクト)酵素活性の両方を含む。エクト酵素として、CD38は、環式ADPリボース(cADPR)およびADPRならびにニコチンアミドおよびニコチン酸アデニンジヌクレオチドリン酸(NAADP)の形成のための基質としてNAD+を使用する。cADPRは、小胞体からのCa2+動員のための第二のメッセンジャとして働くことが示されている。CD38/環式ADPリボース系は、1)肺において、細胞内Ca2+のアゴニスト誘発上昇に対するその効果を通して気道平滑筋緊張および応答性に寄与し(Desphande et al. 2005 Am J physiol Lung cell Mol Physiol 288: L773-L788(非特許文献4))、2)バクテリア化学誘引物質への好中球走化性の移動、血液から末梢部位へのDC前駆体の移動および炎症部位からリンパ節への成熟DCの移動を調節し(Partida-Sanchez et al. Nat Med 7: 1209-121, 2001(非特許文献5)、Morita et al. 2008 J Pharmacol Sci. 2008 Mar;106(3):492-504(非特許文献6)、Partida-Sanchez et al. Immunity 20: 279-291, 2004(非特許文献7))、3)神経炎症およびHIV-1関連痴呆と密接な関係を有する星状細胞カルシウムシグナル伝達に関与し(Banerjee S. et. al., J. Neurimmune Pharmacol., 3, 154-164 (2008)(非特許文献8))、4)ネズミマクロファージにおけるFcγR媒介ファゴサイトーシスを調節し(Song E., et. al., Biochem. and Biophys. Res. Comm., 367, 156-161, (2008)(非特許文献9))、5)インスリン分泌に関連し(Okamoto, Molecular and Cellular Biochemistry, 193, 115-118, 1999(非特許文献10))、6)神経ペプチド放出ならびに母性および社会行動の調節において所要な役割を演じる(Jin D et al. Nature 446: 41-45, 2007(非特許文献11))。Ca2+を介してシグナル伝達することに加え、CD38シグナル伝達は、TおよびB細胞上の抗原-受容体複合体または他のタイプの受容体複合、例えばMHC分子とのクロストークを介して起こり、このようにして、いくつかの細胞応答ならびにIgG1のスイッチおよび分泌に関与する。
【0006】
いくつかの抗CD38抗体が文献、例えばLande R, et al., Cell Immunol. 220(1), 30-8 (2002)(非特許文献12)、Ausiello CM, et al., Tissue Antigens. 56(6), 539-47 (2000)(非特許文献13)およびCotner T, et al., Int J Immunopharmacol. 3(3), 255-68 (1981)(非特許文献14)に記載されている。CD38に結合する抗体は、CD38の機能に対して様々な効果を及ぼすことができる。例えば、マウス抗CD38抗体IB4は、ジャーカット細胞におけるCa2+動員によって示されるようなT細胞活性化を誘発し(Zubiaur M, et al., J Immunol. 159(1), 193-205 (1997)(非特許文献15))、末梢血単核細胞(PBMC)の有意な増殖を誘発し、有意なIL-6レベルの放出を誘発し、検出可能なIFN-γレベルの放出を誘発する(上記Lande, Zubiaur Morra, Ansiello)ことが示されている。Hara-Yokoyama et al. Int Immunopharmacol 8, 59-70 (2008)(非特許文献16)は、CD38のNAD+グリコヒドロラーゼ活性を阻害する一つの抗マウスCD38抗体(CS/2)およびCD38の単離された細胞外ドメインのNAD+グリコヒドロラーゼ活性を刺激するが、細胞表面CD38のNAD+グリコヒドロラーゼ活性にはほとんど影響しない別の抗マウスCD38抗体(クローン90)を記載した。以下に提示されるデータから見てとれるように、本発明の抗体は、CD38陽性細胞の表面における活性を提供する。
【0007】
WO2006099875(Genmab)(特許文献1)は、003および005を含むいくつかのヒト抗CD38抗体を記載している。抗体005は、CD38によるNGD+からのcGDPRの産生を阻害することが示された。
【0008】
ヒトCD38の多数の機能を考慮すると、CD38の特定の機能をより具体的に変調させる新たな治療用抗体の必要性がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】WO2006099875
【非特許文献】
【0010】
【非特許文献1】Antonelli A, et al., Clin. Exp. Immunol. 126, 426-431, 2001
【非特許文献2】Mallone R and Perin PC, Diabetes Metab Res Rev 2006; 22: 284-294
【非特許文献3】Desphande et al. 2004 am J Respir Cell Mol Biol 31: 36-42
【非特許文献4】Desphande et al. 2005 Am J physiol Lung cell Mol Physiol 288: L773-L788
【非特許文献5】Partida-Sanchez et al. Nat Med 7: 1209-121, 2001
【非特許文献6】Morita et al. 2008 J Pharmacol Sci. 2008 Mar;106(3):492-504
【非特許文献7】Partida-Sanchez et al. Immunity 20: 279-291, 2004
【非特許文献8】Banerjee S. et. al., J. Neurimmune Pharmacol., 3, 154-164 (2008)
【非特許文献9】Song E., et. al., Biochem. and Biophys. Res. Comm., 367, 156-161, (2008)
【非特許文献10】Okamoto, Molecular and Cellular Biochemistry, 193, 115-118, 1999
【非特許文献11】Jin D et al. Nature 446: 41-45, 2007
【非特許文献12】Lande R, et al., Cell Immunol. 220(1), 30-8 (2002)
【非特許文献13】Ausiello CM, et al., Tissue Antigens. 56(6), 539-47 (2000)
【非特許文献14】Cotner T, et al., Int J Immunopharmacol. 3(3), 255-68 (1981)
【非特許文献15】Zubiaur M, et al., J Immunol. 159(1), 193-205 (1997)
【非特許文献16】Hara-Yokoyama et al. Int Immunopharmacol 8, 59-70 (2008)
【発明の概要】
【0011】
本発明は、ヒトCD38の特定のアミノ酸との相互作用を通してCD38のcADPRヒドロラーゼ活性に対して強い刺激効果を及ぼしてcADPRのレベル低下を招く新たなクラスの抗CD38抗体を提供する。さらに、抗CD38抗体は、塩基交換反応を介するニコチン酸アデニンジヌクレオチド2'-リン酸(NAADP)の形成を触媒するCD38の能力を阻害する。
【0012】
これらの抗体は、自己免疫および(慢性)炎症性疾患、例えば1型および2型糖尿病、甲状腺炎、グレーブス病、関節炎、神経炎症および喘息を含むいくつかの疾病の処置に有用である。
【0013】
最近の科学的研究は、CD38によって細胞外的に合成されるcADPRが、ヌクレオシド輸送体を介して細胞中に輸送されたのち、FK506結合タンパク質依存性プロセスを介してCa(2+)を動員する場合があることを示している。このプロセスは、ヒト好中球におけるfMLP誘発細胞内Ca(2+)シグナル伝達および移動(Morita et al. 2008 J Pharmacol Sci. 2008 Mar;106(3):492-504)、血液から末梢部位へのDC前駆体の移動ならびに炎症部位からリンパ節への成熟DCの移動(Partida-Sanchez et al. Immunity 20: 279-291, 2004)に関与する場合がある。したがって、特定の理論にとらわれることなく、本発明の抗体を用いる処置によって得られるcADPRレベルの低下は、好中球および樹状細胞の遊走を減らし、抗炎症効果を有する場合がある。したがって、本発明の抗体は、数多くの目的に役立つ場合があるが、CD38上の特定の部位における結合によるCD38の酵素活性に対する特有の効果のおかげで、例えば自己免疫疾患と関連する炎症の処置に特に有用である場合がある。
[本発明1001]
ヒトCD38(SEQ ID NO:52)に結合する抗体であって、202位のAspがGlyで置換されているヒトCD38の変異体には、ヒトCD38に結合するのと同じ程度には結合しない、抗体。
[本発明1002]
202位のAspがGlyで置換されているヒトCD38の変異体への抗体の結合のEC50が、ヒトCD38への該抗体の結合のEC50の50%未満、例えば10%未満、5%未満または1%未満である、本発明1001の抗体。
[本発明1003]
272位のGlnがArgで置換されているヒトCD38の変異体には、ヒトCD38に結合するのと同じ程度に結合する、前記本発明のいずれかの抗体。
[本発明1004]
272位のGlnがArgで置換されているヒトCD38の変異体への抗体の結合のEC50が、ヒトCD38への該抗体の結合のEC50の少なくとも80%、例えば少なくとも90%、例えば少なくとも95%、例えば少なくとも98%である、本発明1003の抗体。
[本発明1005]
274位のSerがPheで置換されているヒトCD38の変異体には、ヒトCD38に結合するのと同じ程度に結合する、前記本発明のいずれかの抗体。
[本発明1006]
ヒトCD38の変異体への抗体の結合のEC50が、ヒトCD38への該抗体の結合のEC50の少なくとも75%、例えば少なくとも80%、例えば少なくとも90%、例えば少なくとも95%、例えば少なくとも98%である、本発明1005の抗体。
[本発明1007]
(i)202位のAspがGlyで置換されているヒトCD38の変異体には、ヒトCD38に結合するのと同じ程度には結合せず、(ii)272位のGlnがArgで置換されているヒトCD38の変異体には、ヒトCD38に結合するのと同じ程度に結合し、(iii)274位のSerがPheで置換されているヒトCD38の変異体には、ヒトCD38に結合するのと同じ程度に結合するという結合特性を有する、前記本発明のいずれかの抗体。
[本発明1008]
実施例8のアッセイにおいて計測した場合、ヒトCD38に結合し、かつCD38シクラーゼ活性に対する阻害効果およびCD38ヒドロラーゼ活性に対する刺激効果を有する、前記本発明のいずれかの抗体。
[本発明1009]
阻害効果が、抗体の非存在下におけるCD38シクラーゼ活性に対する阻害効果に比べて少なくとも50~66%である、本発明1008の抗体。
[本発明1010]
SEQ ID NO:1、6、11、16または21に記載されるヌクレオチド配列をその可変領域中に含むヒト重鎖核酸およびSEQ ID NO:26、31、36、41または46に記載されるヌクレオチド配列をその可変領域中に含むヒト軽鎖核酸によってコードされる、ヒトCD38に結合する抗体。
[本発明1011]
SEQ ID NO:1および26、6および31、11および36、16および41、または21および46に記載されるヌクレオチド配列をその可変領域中にそれぞれ含むヒト重鎖核酸およびヒト軽鎖核酸によってコードされる、本発明1010の抗体。
[本発明1012]
c)SEQ ID NO:5、10、15、20、もしくは25に記載される配列、または
d)該配列の変異体、例えば多くて一つ、二つ、もしくは三つのアミノ酸修飾、好ましくは置換、例えば保存的置換を有する変異体
を含むVH CDR3を含む、ヒトCD38に結合する抗体。
[本発明1013]
SEQ ID NO:5、10、15、20または25に記載される配列を有するVH CDR3およびSEQ ID NO:30、35、40、45または50に記載される配列を有するVL CDR3を含む、ヒトCD38に結合する抗体。
[本発明1014]
SEQ ID NO:5およびSEQ ID NO:30またはSEQ ID NO:10およびSEQ ID NO:35またはSEQ ID NO:15およびSEQ ID NO:40またはSEQ ID NO:20およびSEQ ID NO:45またはSEQ ID NO:25およびSEQ ID NO:50をそれぞれVH CDR3およびVL CDR3として含む、ヒトCD38に結合する抗体。
[本発明1015]
(i)SEQ ID NO:3、8、13、18および23のいずれかに記載される配列を有するVH CDR1、SEQ ID NO:4、9、14、19および24のいずれかに記載される配列を有するVH CDR2、SEQ ID NO:5、10、15、20および25のいずれかに記載される配列を有するVH CDR3、SEQ ID NO:28、33、38、43および48のいずれかに記載される配列を有するVL CDR1、SEQ ID NO:29、34、39、44および49のいずれかに記載される配列を有するVL CDR2、SEQ ID NO:30、35、40、45および50のいずれかに記載される配列を有するVL CDR3、
(ii)SEQ ID NO:3に記載される配列を有するVH CDR1、SEQ ID NO:34に記載される配列を有するVH CDR2、SEQ ID NO:5に記載される配列を有するVH CDR3、SEQ ID NO:28に記載される配列を有するVL CDR1、SEQ ID NO:29に記載される配列を有するVL CDR2、SEQ ID NO:30に記載される配列を有するVL CDR3、
(iii)SEQ ID NO:8に記載される配列を有するVH CDR1、SEQ ID NO:9に記載される配列を有するVH CDR2、SEQ ID NO:10に記載される配列を有するVH CDR3、SEQ ID NO:33に記載される配列を有するVL CDR1、SEQ ID NO:34に記載される配列を有するVL CDR2、SEQ ID NO:35に記載される配列を有するVL CDR3、
(iv)SEQ ID NO:13に記載される配列を有するVH CDR1、SEQ ID NO:14に記載される配列を有するVH CDR2、SEQ ID NO:15に記載される配列を有するVH CDR3、SEQ ID NO:38に記載される配列を有するVL CDR1、SEQ ID NO:39に記載される配列を有するVL CDR2、SEQ ID NO:40に記載される配列を有するVL CDR3、
(v)SEQ ID NO:18に記載される配列を有するVH CDR1、SEQ ID NO:19に記載される配列を有するVH CDR2、SEQ ID NO:20に記載される配列を有するVH CDR3、SEQ ID NO:43に記載される配列を有するVL CDR1、SEQ ID NO:44に記載される配列を有するVL CDR2、SEQ ID NO:45に記載される配列を有するVL CDR3、
(vi)SEQ ID NO:23に記載される配列を有するVH CDR1、SEQ ID NO:24に記載される配列を有するVH CDR2、SEQ ID NO:25に記載される配列を有するVH CDR3、SEQ ID NO:48に記載される配列を有するVL CDR1、SEQ ID NO:49に記載される配列を有するVL CDR2、SEQ ID NO:50に記載される配列を有するVL CDR3、または
(vii)好ましくは多くて一つ、二つまたは三つのアミノ酸修飾、より好ましくはアミノ酸置換、例えば保存的アミノ酸置換を該配列の一つまたは複数の中に有する、前記のいずれかの抗体の変異体
を含む、CD38に結合する抗体。
[本発明1016]
(i)SEQ ID NO:2、7、12、17または22の配列を含むか、または
(ii)SEQ ID NO:2、7、12、17または22に記載されたVH領域配列と少なくとも80%の同一性、例えば90%または95%または97%または98%または99%または100%の同一性を有する
VH領域を含む、CD38に結合する抗体。
[本発明1017]
(i)SEQ ID NO:27、32、37、42または47の配列を含むか、または
(ii)SEQ ID NO:27、32、37、42または47からなる群より選択されるVL領域配列と少なくとも80%の同一性、例えば90%または95%または97%または98%または99%または100%の同一性を有する
VL領域を含む、CD38に結合する抗体。
[本発明1018]
SEQ ID NO:2、7、12、17および22の配列のいずれかを含むVH領域と、SEQ ID NO:27、32、37、42および47の配列のいずれかを含むVL領域とを含む、CD38に結合する抗体。
[本発明1019]
(i)SEQ ID NO:2に記載される配列を含むVH領域およびSEQ ID NO:27に記載される配列を含むVL領域、
(ii)SEQ ID NO:7に記載される配列を含むVH領域およびSEQ ID NO:32に記載される配列を含むVL領域、
(iii)SEQ ID NO:12に記載される配列を含むVH領域およびSEQ ID NO:37に記載される配列を含むVL領域、
(iv)SEQ ID NO:17に記載される配列を含むVH領域およびSEQ ID NO:42に記載される配列を含むVL領域、または
(v)SEQ ID NO:22に記載される配列を含むVH領域およびSEQ ID NO:47に記載される配列を含むVL領域
を含む、CD38に結合する抗体。
[本発明1020]
本発明1001~1009のいずれかの結合特性を有する、本発明1010~1019のいずれかの抗CD38抗体。
[本発明1021]
前記本発明のいずれかの抗CD38抗体と同じCD38上のエピトープに結合する、抗CD38抗体。
[本発明1022]
本発明1001~1019のいずれかの抗体と、ヒトCD38への結合に関して実質的に同じ特異的結合特性を有する抗体。
[本発明1023]
本明細書の実施例6に記載する方法によって測定した場合、好ましくは5nM以下、例えば1nM以下、例えば0.2nM以下のEC50値で、例えばDaudi細胞において抗体依存性細胞傷害性(ADCC)を誘発することができる、前記本発明のいずれかの抗CD38抗体。
[本発明1024]
本明細書の実施例6に記載する方法にしたがって、Daudi細胞においてADCCを誘発することができない、本発明1001~1022のいずれかの抗CD38抗体。
[本発明1025]
CHO-CD38細胞において補体依存性細胞傷害性(CDC)を誘発することができない、前記本発明のいずれかの抗CD38抗体。
[本発明1026]
10-8M以下のKD、好ましくは10-9M以下のKDでヒトCD38に結合する、前記本発明のいずれかの抗CD38抗体。
[本発明1027]
ヒト一価抗体である、前記本発明のいずれかの抗CD38抗体。
[本発明1028]
完全長IgG1、IgG2、IgG3、IgG4、IgD、IgA、IgEまたはIgM抗体、例えばIgG1抗体、好ましくはIgG1,κ抗体またはIgM抗体、好ましくはIgM,κ抗体であることを特徴とする、前記本発明のいずれかの抗体。
[本発明1029]
抗体フラグメントまたは単鎖抗体である、本発明1001~1027のいずれかの抗CD38抗体。
[本発明1030]
エフェクタ機能欠損抗体である、本発明1001~1022または1024~1029のいずれかの抗CD38抗体。
[本発明1031]
エフェクタ機能欠損抗CD38抗体が安定化ヒトIgG4抗体である、本発明1030の抗CD38抗体。
[本発明1032]
安定化IgG4抗体が、ヒトIgG4の重鎖定常領域中の409位のアルギニンがリジン、トレオニン、メチオニンまたはロイシン、好ましくはリジンで置換されている抗体である、本発明1031の抗CD38抗体。
[本発明1033]
前記409位に対応する位置にLys残基を含むか、またはCH3領域がヒトIgG1、ヒトIgG2、もしくはヒトIgG3のCH3領域によって置換されている、本発明1032の抗CD38抗体。
[本発明1034]
ヒンジ領域中にCys-Pro-Pro-Cys配列を含まない、本発明1032~1033のいずれかの抗CD38抗体。
[本発明1035]
ヒンジ領域中にCys-Pro-Pro-Cys配列を含む、本発明1032~1033のいずれかの抗CD38抗体。
[本発明1036]
一価抗体である、本発明1001~1035のいずれかの抗CD38抗体。
[本発明1037]
一価抗体が、
i)該一価抗体の軽鎖をコードする核酸コンストラクトを提供する段階であって、該コンストラクトが、SEQ ID NO:27、32、37、42または47のVL領域をコードするヌクレオチド配列およびIgの定常CL領域をコードするヌクレオチド配列を含み、選択された抗原特異的抗体のVL領域をコードする該ヌクレオチド配列およびIgの該CL領域をコードする該ヌクレオチド配列が、機能的に連結され、IgG1サブタイプの場合、該CL領域が、ポリクローナルヒトIgGの存在下または動物もしくはヒトに投与されたとき、該CL領域の同一のアミノ酸配列を含む他のペプチドとジスルフィド結合または共有結合を形成することができるいかなるアミノ酸も含まないように、該CL領域をコードする該ヌクレオチド配列が改変されている、段階、
ii)該一価抗体の重鎖をコードする核酸コンストラクトを提供する段階であって、該コンストラクトが、SEQ ID NO:2、7、12、17または22のVH領域をコードするヌクレオチド配列およびヒトIgの定常CH領域をコードするヌクレオチド配列を含み、ヒンジ領域に対応する領域と、Igサブタイプによって求められる場合、該CH領域の他の領域、例えばCH3領域とが、ポリクローナルヒトIgGの存在下または動物もしくはヒトに投与されたとき、該ヒトIgの該CH領域の同一のアミノ酸配列を含む他のペプチドとのジスルフィド結合または共有結合的もしくは安定な非共有結合的重鎖間結合の形成に関与するいかなるアミノ酸残基も含まないように、該CH領域をコードする該ヌクレオチド配列が改変されており、選択された抗原特異的抗体の該VH領域をコードする該ヌクレオチド配列および該Igの該CH領域をコードする該ヌクレオチド配列が機能的に連結されている、段階、
iii)該一価抗体を産生するための細胞発現系を提供する段階、
iv)(iii)の細胞発現系の細胞中に(i)および(ii)の該核酸コンストラクトを同時発現させることによって該一価抗体を産生する段階
を含む方法によって構築される、本発明1036の抗CD38抗体。
[本発明1038]
CH2およびCH3領域を含むCH領域が、ヒンジ領域に対応する領域と、免疫グロブリンがIgG4サブタイプではないならば、該CH領域の他の領域、例えばCH3領域とが、ポリクローナルヒトIgGの存在下、同一のCH領域とのジスルフィド結合または同一のCH領域との他の共有結合的もしくは安定な非共有結合的重鎖間結合を形成することができるいかなるアミノ酸残基も含まないように、修飾されている、本発明1036~1037のいずれかの抗CD38抗体。
[本発明1039]
一価抗体がIgG4サブタイプであるが、CH3領域が、以下のアミノ酸置換の一つまたは複数が加えられるように修飾されている、本発明1036~1038のいずれかの抗CD38抗体:
366位のThr(T)がAla(A)によって置換されている;368位のLeu(L)がAla(A)によって置換されている;368位のLeu(L)がVal(V)によって置換されている;405位のPhe(F)がAla(A)によって置換されている;405位のPhe(F)がLeu(L)によって置換されている;407位のTyr(Y)がAla(A)によって置換されている;409位のArg(R)がAla(A)によって置換されている。
[本発明1040]
ヒンジ全体が欠失するように重鎖が修飾されている、本発明1036~1039のいずれかの抗CD38抗体。
[本発明1041]
一価抗体の配列が、N結合グリコシル化のための任意の受容部位を含まないように修飾されている、本発明1036~1040のいずれかの抗CD38抗体。
[本発明1042]
3μg/mlの濃度で90分後、本明細書の実施例8に記載されている分光光度法によって測定された場合、cGDPRのCD38触媒合成を少なくとも25%、例えば少なくとも30%阻害する、前記本発明のいずれかの抗体。
[本発明1043]
3μg/mlの濃度で90分後、Munshi et al., J. Biol. Chem. 275, 21566-21571 (2000)に記載されているHPLC法によって測定した場合、cADPRのCD38触媒合成を少なくとも25%、例えば少なくとも30%阻害する、前記本発明のいずれかの抗体。
[本発明1044]
CD38のヒドロラーゼ活性を少なくとも25%刺激する、前記本発明のいずれかの抗体。
[本発明1045]
CD38のNADヒドロラーゼ活性を少なくとも25%刺激する、前記本発明のいずれかの抗体。
[本発明1046]
CD38のcADPRヒドロラーゼ活性を少なくとも25%刺激する、前記本発明のいずれかの抗体。
[本発明1047]
本明細書の実施例8に記載する方法によって、塩基交換反応によるNAADPの形成を触媒するCD38の能力を0.5μg/mL未満、例えば0.2μg/mL未満のIC50で阻害する、前記本発明のいずれかの抗体。
[本発明1048]
抗体が、細胞傷害剤、放射性同位体、または薬物にコンジュゲートされている、前記本発明のいずれかの抗体を含む抗体薬物コンジュゲート。
[本発明1049]
抗体が、リンカーを介してアウリスタチンまたはその機能性ペプチド類似物もしくは誘導体にコンジュゲートされている、本発明1048の抗体薬物コンジュゲート。
[本発明1050]
本発明1001~1049のいずれかの抗体と、ヒトエフェクタ細胞または癌抗原に対する第二の結合特異性とを含む、二重特異性抗体。
[本発明1051]
第二の結合特異性が、ヒトFc受容体またはT細胞受容体、例えばCD3に対するものである、本発明1050の抗体を含む二重特異性分子。
[本発明1052]
前記本発明のいずれかの抗体をコードする単離された核酸。
[本発明1053]
本発明1010~1019のいずれかのアミノ酸配列の一つまたは複数をコードするヌクレオチド配列を含む、発現ベクター。
[本発明1054]
ヒト抗体の軽鎖、重鎖、または軽鎖および重鎖両方の定常領域をコードするヌクレオチド配列をさらに含む、本発明1053の発現ベクター。
[本発明1055]
本発明1001~1047のいずれかの抗体を産生する組換え真核生物または原核生物宿主細胞。
[本発明1056]
本発明1001~1047のいずれかの抗体、本発明1048~1049のいずれかのイムノコンジュゲート、本発明1050~1051のいずれかの二重特異性抗体、または本発明1053~1054のいずれかの発現ベクターと、薬学的に許容可能な担体とを含む、薬学的組成物。
[本発明1057]
医薬として使用するための、本発明1001~1047のいずれかの抗体。
[本発明1058]
CD38を発現する腫瘍細胞の成長および/もしくは増殖、遊走を阻害する、またはCD38を発現する腫瘍細胞のファゴサイトーシスを誘発することに使用するための、本発明1001~1047のいずれかの抗体。
[本発明1059]
関節リウマチの処置に使用するための、本発明1001~1047のいずれかの抗体。
[本発明1060]
慢性リンパ性白血病(CLL)、急性リンパ芽球性白血病(ALL)、急性骨髄性白血病(成人)(AML)、マントル細胞リンパ腫、ろ胞性リンパ腫、およびびまん性大細胞型B細胞リンパ腫から選択される障害の処置に使用するための、本発明1001~1047のいずれかの抗体。
[本発明1061]
多発性骨髄腫の処置に使用するための、本発明1001~1047のいずれかの抗体。
[本発明1062]
a)本発明1055の宿主細胞を培養する段階、および
b)培地から抗CD38抗体を精製する段階
を含む、本発明1001~1047のいずれかの抗CD38抗体を産生するための方法。
[本発明1063]
本発明1001~1047のいずれかの抗体を含む、診断用組成物。
[本発明1064]
サンプルを、本発明1001~1047のいずれかの抗CD38抗体と、該抗体または二重特異性分子とCD38との間の複合体の形成を可能にする条件下で、接触させる段階、および
複合体が形成されたかどうかを分析する段階
を含む、サンプル中のCD38抗原、すなわちCD38を発現する細胞の存在を検出するための方法。
[本発明1065]
サンプル中のCD38抗原、すなわちCD38を発現する細胞の存在を検出するためのキットであって、本発明1001~1047のいずれかの抗CD38抗体およびキットの使用に関する取り扱い指示を含む、キット。
[本発明1066]
本発明1001~1047のいずれかの抗CD38抗体に結合する、抗イディオタイプ抗体。
[本発明1067]
CD38を発現する細胞の成長および/もしくは増殖、遊走またはファゴサイトーシスが阻害されるように、本発明1001~1047のいずれかの抗体、本発明1048~1049のいずれかのイムノコンジュゲート、本発明1050~1051のいずれかの二重特異性抗体、本発明1053~1054のいずれかの発現ベクター、または本発明1056の薬学的組成物の投与
を含む、CD38を発現する細胞の成長および/もしくは増殖、遊走を阻害する、またはCD38を発現する細胞のファゴサイトーシスを誘発する方法。
[本発明1068]
本発明1001~1047のいずれかの抗体、本発明1048~1049のいずれかのイムノコンジュゲート、本発明1050~1051のいずれかの二重特異性抗体、本発明1053~1054のいずれかの発現ベクター、または本発明1056の薬学的組成物を、それを必要とする対象に投与する段階
を含む、対象においてCD38を発現する細胞が関与する疾病または障害を処置する方法。
[本発明1069]
疾病または障害が関節リウマチである、本発明1067~1068のいずれかの方法。
[本発明1070]
疾病または障害が、慢性リンパ性白血病(CLL)、急性リンパ芽球性白血病(ALL)、急性骨髄性白血病(成人)(AML)、マントル細胞リンパ腫、ろ胞性リンパ腫、およびびまん性大細胞型B細胞リンパ腫から選択される、本発明1067~1068のいずれかの方法。
[本発明1071]
疾病または障害が多発性骨髄腫である、本発明1067~1068のいずれかの方法。
[本発明1072]
一つまたは複数のさらなる治療剤の対象への投与を含む、本発明1067~1071のいずれかの方法。
[本発明1073]
一つまたは複数のさらなる治療剤が、化学療法剤、抗炎症剤、または免疫抑制剤および/もしくは免疫調節剤から選択される、本発明1072の方法。
[本発明1074]
一つまたは複数のさらなる治療剤が、シスプラチン、ゲフィチニブ、セツキシマブ、リツキシマブ、オファツムマブ、ベバシズマブ、エルロチニブ、ボルテゾミブ、サリドマイド、パミドロネート、ゾレドロン酸、クロドロネート、リセドロネート、イバンドロネート、エチドロネート、アレンドロネート、チルドロネート、三酸化ヒ素、レナリドミド、デキサメタゾン、プレドニゾロン、フィルグラスチム、ペグフィルグラスチム、サルグラモスチム、スベロイルアニリドヒドロキサム酸、およびSCIO-469からなる群より選択される、本発明1073の方法。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】本発明の抗体のクロスブロック試験を示す。より具体的には、この図は、過剰量の非標識CD38特異的抗体025、026、028、049および056で処置されたCHO-CD38細胞への005-FITCの結合を示す。
図2-01】wtおよび突然変異CD38への本発明の抗CD38抗体の結合を示す。図2(A)は、野生型(WT)および突然変異(T237A、Q272RおよびS274F)CD38への抗CD38抗体025、026、028および049の結合を示す。
図2-02】図2-01の続きを示す図である。
図2-03】wtおよび突然変異CD38への本発明の抗CD38抗体の結合を示す。図2(B)は、野生型(WT)および突然変異(D202G)CD38への抗CD38抗体025、028および049の結合を示す。
図2-04】図2-03の続きを示す図である。
図3-01】Daudi-luc細胞およびCHO-CD38細胞への本発明の抗体の結合を示す。
図3-02】図3-01の続きを示す図である。
図3-03】図3-02の続きを示す図である。
図3-04】図3-03の続きを示す図である。
図4-01】本発明の抗CD38抗体およびアイソタイプ対照としての抗KLH抗体(HuMab-KLH)によって生じるDaudi-luc細胞のADCC媒介溶解を示す。
図4-02】図4-01の続きを示す図である。
図5】本発明の抗CD38抗体によって生じるCHO-CD38細胞のCDC媒介溶解を示す。
図6A】本発明の抗CD38抗体の存在における、His標識CD38タンパク質および細胞発現CD38によるcGDPR産生の阻害を示す。図6(A)は、CD38特異的抗体025、026、028、049および056(3μg/mL)の存在におけるcGDPR産生(組換えヒトCD38タンパク質による)の阻害率を示す。
図6B】本発明の抗CD38抗体の存在における、His標識CD38タンパク質および細胞発現CD38によるcGDPR産生の阻害を示す。図6(B)は、cGDPR産生に対する抗CD38抗体の効果を経時的に示す。抗CD38抗体は10μg/mlの最終濃度で使用した。
図6C】本発明の抗CD38抗体の存在における、His標識CD38タンパク質および細胞発現CD38によるcGDPR産生の阻害を示す。図6(C)は、028またはアイソタイプ対照HuMab-KLHの連続希釈物(0.01~30μg/mL)を使用する、cGDPR産生に対する抗CD38抗体の効果を示す。
図6D】本発明の抗CD38抗体の存在における、His標識CD38タンパク質および細胞発現CD38によるcGDPR産生の阻害を示す。図6(D)は、028またはIgG1アイソタイプ対照HuMab-KLHの連続希釈物(0.01~30μg/mL)の存在におけるcGDPR産生(細胞発現CD38(CHO-CD38細胞)による)の阻害率を示す。
図7】8NH2-cADPR産生に対する本発明の抗体028の効果を示す。各反応の生成物をHPLCによって分析した。図7(A)は生成物および基質の溶出位置を示す。図7(B)は、8NH2-cADPR産生に対する抗体濃度依存性を示す。HuMab-KLH(○)、mAb-028(●)。
図8A】cADPRヒドロラーゼおよびNADアーゼ活性に対する本発明の抗体028の効果、より具体的にはcADPRヒドロラーゼ(図A、上の図、BおよびC)およびNADase(図A、下の図)活性に対するmAb-028の効果を示す。図8(A)は、10μg HuMab-KLH(CD38+10μg HuMab-KLH)の存在、10μg Ab028(CD38+10μg Ab028)の存在または抗体の非存在下(CD38対照)においてCD38組換えタンパク質をcADPRまたはNADとともにインキュベートした結果を示す。各反応の生成物をHPLCによって分析した。
図8B】cADPRヒドロラーゼおよびNADアーゼ活性に対する本発明の抗体028の効果、より具体的にはcADPRヒドロラーゼ(図A、上の図、BおよびC)およびNADase(図A、下の図)活性に対するmAb-028の効果を示す。図8(B)は、HPLCによって分析されたcADPRヒドロラーゼ活性に対する様々な濃度でのCD38抗体価を示す。HuMab-KLH(○)、mAb-028(●)。
図8C】cADPRヒドロラーゼおよびNADアーゼ活性に対する本発明の抗体028の効果、より具体的にはcADPRヒドロラーゼ(図A、上の図、BおよびC)およびNADase(図A、下の図)活性に対するmAb-028の効果を示す。図8(C)は、mAb-003、mAb-028、ダラツムマブ(005)またはHuMab-KLHの存在においてCD38組換えタンパク質を32P-cADPRとともにインキュベートした結果を示す。生成物を薄層クロマトグラフィーによって分析した。HuMab-KLH(○)、mAb-028(●)。
図9A】CD38の塩基交換活性に対する本発明の抗CD38抗体の効果を示す。図9(A)は、表示濃度におけるNAADP産生に対する抗体の効果を示す。
図9B】CD38の塩基交換活性に対する本発明の抗CD38抗体の効果を示す。図9(B)は、NAADP形成速度に対するmAb-028価の効果を示す。
【発明を実施するための形態】
【0015】
発明の詳細な説明
定義
用語「ヒトCD38」は、本明細書において使用される場合、細胞によって自然に発現する、またはヒトCD38遺伝子をトランスフェクトされた細胞上に発現する、ヒトCD38(Swiss-Prot:座CD38_HUMAN、アクセッション番号P28907)の任意の変異体、アイソフォームおよび種ホモログを含む。
【0016】
用語「免疫グロブリン」は、一対の軽(L)低分子量鎖および一対の重(H)鎖の二対のポリペプチド鎖からなり、四つの鎖すべてがジスルフィド結合によって相互接続されている構造的に関連した糖タンパク質のクラスをいう。免疫グロブリンの構造は十分に特徴づけされている。例えばFundamental Immunology Ch. 7(Paul, W., ed., 2nd ed. Raven Press, N.Y. (1989))を参照されたい。簡潔にいうと、各重鎖は一般に重鎖可変領域(本明細書においてはVHまたはVHと略す)および重鎖定常領域で構成されている。重鎖定常領域は一般に、三つのドメインCH1、CH2およびCH3で構成されている。各軽鎖は一般に軽鎖可変領域(本明細書においてはVLまたはVLと略す)および軽鎖定常領域で構成されている。軽鎖定常領域は一般に一つのドメインCLで構成されている。VHおよびVL領域はさらに、フレームワーク領域(FR)と呼ばれる、より保存された領域の間に散在する、相補性決定領域(CDR)とも呼ばれる超可変性の領域(または構造的に画定されたループの配列および/または形態において超可変性である場合がある超可変性領域)に細分される場合もある。各VHおよびVLは一般に、アミノ末端からカルボキシ末端まで順序FR1、CDR1、FR2、CDR2、FR3、CDR3、FR4で配置された三つのCDRおよび四つのFRで構成されている(また、Chothia and Lesk J. Mol. Biol. 196, 901-917 (1987)を参照されたい)。一般に、この領域におけるアミノ酸残基のナンバリングは、Kabat et al., Sequences of Proteins of Immunological Interest, 5th Ed. Public Health Service, National Institutes of Health, Bethesda, MD. (1991)に記載されている方法によって実施される(本明細書における、Kabatにおけるような、またはKabatによる可変ドメイン残基ナンバリングのような語句は、重鎖可変ドメインまたは軽鎖可変ドメインのためのこのナンバリングシステムをいう)。このナンバリングシステムを使用して、ペプチドの実際の線形アミノ酸配列は、可変ドメインのFRまたはCDRの短縮またはそれらへの挿入に対応して、より少ないまたはさらなるアミノ酸を含む場合がある。例えば、重鎖可変ドメインは、VH CDR2の残基52の後に一つのアミノ酸挿入(Kabatによると残基52a)を含み、重鎖FR残基82の後に挿入残基(例えば、Kabatによると残基82a、82bおよび82cなど)を含む場合がある。残基のKabatナンバリングは、抗体の配列と「標準的な」Kabatナンバリングされた配列との相同性の領域におけるアラインメントにより、所与の抗体に関して決定される場合がある。
【0017】
本発明に関連する用語「抗体」(Ab)とは、一般的な生理学的条件下で、有意な期間、例えば少なくとも約30分、少なくとも約45分、少なくとも約1時間、少なくとも約2時間、少なくとも約4時間、少なくとも約8時間、少なくとも約12時間、約24時間以上、約48時間以上、約3、4、5、6、7またはより多くの日数など、または任意の他の関連する機能的に画定された期間(例えば、抗原への抗体結合に関する生理学的応答を誘発、促進、増強および/または変調するのに十分な期間および/または抗体がFc媒介エフェクタ活性を動員するのに十分な時間)の半減期で抗原に特異的に結合する能力を有する免疫グロブリン分子、免疫グロブリン分子のフラグメントまたはそれらいずれかの誘導体をいう。免疫グロブリン分子の重鎖および軽鎖の可変領域は、抗原と相互作用する結合ドメインを含む。抗体(Ab)の定常領域は、免疫系の様々な細胞(例えばエフェクタ細胞)および補体系の成分、例えば補体活性化の古典経路中の第一成分であるC1qを含む宿主組織または因子への免疫グロブリンの結合を媒介することもできる。抗CD38抗体はまた、二重特異性抗体、ダイアボディまたは類似分子であることもできる(例えば、ダイアボディの説明に関してはPNAS USA 90(14), 6444-8 (1993)を参照されたい)。実際、本発明によって提供される二重特異性抗体、ダイアボディなどは、CD38の部分に加えて、任意の適当な標的と結合することもできる。上述したように、本明細書における抗体という用語は、別段指定されない、または文脈と明らかに矛盾しない限り、抗原に特異的に結合する能力を保持する抗体のフラグメントを含む。抗体の抗原結合機能は、完全長抗体のフラグメントによって実施され得ることが示された。用語「抗体」に包含される結合フラグメントの例は、(i)Fab'またはFabフラグメント、VL、VH、CLおよびCH1ドメインからなる一価フラグメントまたはWO2007059782(Genmab)に記載されている一価抗体、(ii)ヒンジ領域におけるジスルフィド架橋によって連結された二つのFabフラグメントを含む二価フラグメントであるF(ab')2フラグメント、(iii)本質的にVHおよびCH1ドメインからなるFdフラグメント、(iv)本質的に抗体の一つのアームのVLおよびVHドメインからなるFvフラグメント、(v)本質的にVHドメインからなり、ドメイン抗体とも呼ばれる(Holt et al; Trends Biotechnol. 2003 Nov;21(11):484-90)dAbフラグメント(Ward et al., Nature 341, 544-546 (1989))、(vi)カメリド類またはナノボディ(Revets et al; Expert Opin Biol Ther. 2005 Jan;5(1):111-24)および(vii)単離された相補性決定領域(CDR)を含む。さらには、Fvフラグメントの二つのドメインVLおよびVHは別々の遺伝子によってコードされるが、組換え法を使用して、VLおよびVH領域が対になって一価分子を形成する一つのタンパク質鎖としてそれらを作ることを可能にする合成リンカーにより、それらを合わせることもできる(単鎖抗体または単鎖Fv(scFv)として知られる。例えばBird et al., Science 242, 423-426 (1988)およびHuston et al., PNAS USA 85, 5879-5883 (1988)を参照されたい)。そのような単鎖抗体は、別段記されない、または文脈によって明確に示されない限り、抗体という用語に包含される。そのようなフラグメントは一般に抗体の意味に含まれるが、それらは、集合的に、またそれぞれ独立して、様々な生物学的性質および効用を示す、本発明に固有の特徴である。本発明に関連するこれらおよび他の有用な抗体フラグメントは本明細書においてさらに詳述される。また、抗体という用語は、別段指定されない限り、任意の公知の技術、例えば酵素的切断、ペプチド合成および組換え技術によって提供される、ポリクローナル抗体、モノクローナル抗体(mAb)、抗体様ポリペプチド、例えばキメラ抗体およびヒト化抗体ならびに抗原に特異的に結合する能力を保持する抗体フラグメント(抗原結合フラグメント)も含むということが理解されよう。生成された抗体は任意のアイソタイプを有することができる。本明細書において使用される「アイソタイプ」とは、重鎖定常領域遺伝子によってコードされる免疫グロブリンのクラス(例えばIgG1、IgG2、IgG3、IgG4、IgD、IgA、IgEまたはIgM)をいう。「抗CD38抗体」とは、抗原CD38に結合する抗体である。
【0018】
本明細書において使用される用語「ヒト抗体」は、ヒト生殖系列免疫グロブリン配列に由来する可変および定常領域を有する抗体を含むものと解釈される。本発明のヒト抗体は、ヒト生殖系列免疫グロブリン配列によってコードされないアミノ酸残基を含むこともできる(例えば、インビトロでランダムまたは部位特異的突然変異誘発によって、またはインビボで体細胞突然変異によって誘発された突然変異)。しかし、本明細書において使用される用語「ヒト抗体」は、別の哺乳動物種、例えばマウスの生殖系列に由来するCDR配列がヒトフレームワーク配列に移植された抗体を含むものとは解釈されない。
【0019】
好ましい態様において、本発明の抗体は単離されている。本明細書において使用される「単離された抗体」は、異なる抗原特異性を有する他の抗体を実質的に含まない抗体をいうものと解釈される(例えば、CD38に特異的に結合する単離された抗体は、CD38以外の抗原に特異的に結合する抗体を実質的に含まない)。しかし、ヒトCD38のエピトープ、アイソフォームまたは変異体に特異的に結合する単離された抗体は、例えば他の種(例えばCD38種のホモログ)からの他の関連の抗原に対する交差反応性を有する場合がある。そのうえ、単離された抗体は、他の細胞物質および/または化学物質を実質的に含まない場合がある。本発明の一つの態様において、様々な特異性を有する「単離された」モノクローナル抗体の組み合わせが、十分に画定された組成において組み合わされる。
【0020】
本明細書において使用される用語「モノクローナル抗体」または「モノクローナル抗体組成物」は、一つの分子組成の抗体分子の調製物をいう。モノクローナル抗体組成物は、特定のエピトープに対する一つの結合特異性および親和性を示す。したがって、用語「ヒトモノクローナル抗体」は、ヒト生殖系列免疫グロブリン配列に由来する可変および定常領域を有する、一つの結合特異性を示す抗体をいう。ヒトモノクローナル抗体は、不死化細胞に融合したヒト重鎖導入遺伝子および軽鎖導入遺伝子を含むゲノムを有する遺伝子導入または染色体導入非ヒト動物、例えば遺伝子導入マウスから得られるB細胞を含むハイブリドーマによって生成される場合がある。
【0021】
所定の抗原への抗体の結合に関連して、本明細書において使用される用語「結合」は、一般に、例えば表面プラズモン共鳴(SPR)技術により、BIAcore 3000計器中、抗原をリガンドとして使用し、抗体を分析対象物として使用して決定される場合で約10-7M以下、例えば約10-8M以下、例えば約10-9M以下、約10-10M以下または約10-11M以下のKDに対応する親和力の結合であり、所定の抗原または近い関係の抗原以外の非特異的抗原(例えばBSA、カゼイン)への結合の親和力より少なくとも10倍低い、例えば少なくとも100倍低い、例えば少なくとも1,000倍低い、例えば少なくとも10,000倍低い、例えば少なくとも100,000倍低いKDに対応する親和力で所定の抗原に結合する。親和力がより低い分の量は、抗体のKDに依存し、したがって、抗体のKDが非常に低い(すなわち、抗体が非常に特異性である)場合、抗原に対する親和力が非特異的抗原に対する親和力よりも低い分の量は少なくとも10,000倍である場合がある。
【0022】
本明細書において使用される用語「kd」(秒-1)は、特定の抗体抗原相互作用の解離定数をいう。該値はまた、koff値とも呼ばれる。
【0023】
本明細書において使用される用語「ka」(M-1×秒-1)は、特定の抗体抗原相互作用の解離定数をいう。
【0024】
本明細書において使用される用語「KD」(M)は、特定の抗体抗原相互作用の解離平衡定数をいう。
【0025】
本明細書において使用される用語「KA」(M-1)は、特定の抗体抗原相互作用の解離平衡定数をいい、kaをkdで割ることによって得られる。
【0026】
本発明の抗体は、実施例部分に記載するように、酵素系に対して効果を及ぼす。抗体は、様々なパラメータにおける刺激効果または阻害効果によって説明される。刺激および阻害効果は、本明細書の実施例において開示されているように計測することもできる。
【0027】
本明細書において記載され、特許請求される抗体はまた、本明細書に記載する特定の抗体のいずれかの機能的変異体であることもできる。そのような変異抗体は、例えば一つの変異抗体中の定常ドメインおよび/または可変ドメイン(またはそれらの任意の一つまたは複数のCDR)における一つまたは複数の適当なアミノ酸残基変更、すなわち、置換、欠失、挿入または末端配列付加によって本明細書に記載する特定の抗体とは異なる抗体である。抗CD38抗体に関連して使用されるVL、VHまたはCDR領域の機能的変異体が、抗体が親抗体の親和力/結合力および/または特異度/選択度の少なくとも実質的割合(少なくとも約50%、60%、70%、80%、90%、95%またはより多く)を保持することを可能にし、場合によっては、そのような抗CD38抗体は、親抗体よりも大きな親和力、選択度および/または特異度で会合することもできる。
【0028】
そのような機能的変異体は一般に、親抗体との有意な配列同一性を保持する。二つの配列の間の同一性の割合は、二つの配列の最適なアラインメントのために導入される必要があるギャップの数および各ギャップの長さを考慮に入れて、それらの配列によって共有される同一位置の数の関数である(すなわち、相同性の割合(%)=同一位置の数/位置の総数×100)。配列の比較および二つの配列の間の同一性の割合の決定は、以下の非限定的実施例に記載するように、数学的アルゴリズムを使用して達成することもできる。
【0029】
二つのヌクレオチド配列の間の同一性の割合は、GCGソフトウェアパッケージ(http://www.gcg.comで入手可能)中のGAPプログラムを使用し、NWSgapdna.CMPマトリックスおよび40、50、60、70または80のギャップ加重および1、2、3、4、5または6の長さ加重を使用して決定することもできる。二つのヌクレオチドまたはアミノ酸配列の間の同一性の割合はまた、ALIGNプログラム(バージョン2.0)に組み入れられたE. Meyers and W. Miller, Comput. Appl. Biosci 4, 11-17 (1988)のアルゴリズムを使用し、PAM120加重残基表、12のギャップ長ペナルティーおよび4のギャップペナルティーを使用して決定することもできる。加えて、二つのアミノ酸配列の間の同一性%は、GCGソフトウェアパッケージ(http://www.gcg.comで入手可能)中のGAPプログラムに組み入れられたNeedleman and Wunsch, J. Mol. Biol. 48, 444-453 (1970)アルゴリズムを使用して、Blossum 62マトリックスまたはPAM250マトリックスならびに16、14、12、10、8、6または4のギャップ加重および1、2、3、4、5または6の長さ加重を使用して決定することもできる。
【0030】
CDR変異体の配列は、主として保存的置換によって親抗体配列のCDRの配列とは異なる場合がある。例えば、変異体における置換の少なくとも約35%、約50%以上、約60%以上、約70%以上、約75%以上、約80%以上、約85%以上、約90%以上、約95%以上(例えば約65~99%)が保存的アミノ酸残基置換である。本発明に関連して、保存的置換は、以下の三つの表の一つまたは複数に反映されるアミノ酸のクラス内の置換によって定義してもよい。
【0031】
保存的置換のアミノ酸残基クラス
【0032】
代替の保存的アミノ酸残基置換クラス
【0033】
アミノ酸残基の代替の物理的および機能的分類
【0034】
より保存的な置換の群は、バリン-ロイシン-イソロイシン、フェニルアラニン-チロシン、リジン-アルギニン、アラニン-バリンおよびアスパラギン-グルタミンを含む。
【0035】
また、例えばCreighton (1984) Proteins: Structure and Molecular Properties (2d Ed. 1993), W. H. Freeman and Companyに記載されている原理を使用して、アミノ酸のさらなる群を配合することもできる。
【0036】
上述したように、一般的に、アミノ酸配列変更は、望ましくは、親配列の構造的特徴を実質的に変化させないが(例えば、置換アミノ酸は、親配列の機能を特徴づける二次構造を崩壊させる傾向を有するべきではない)、抗体の機能的または薬物動態学的性質を変化させる、例えば半減期を増す、免疫原性を変化させる、別の分子への共有結合または非共有結合のための部位を提供する、タンパク質分解に対する感受性を減らす、酸化に対する感受性を減らす、またはグリコシル化パターンを変化させるような有利な性質と関連する場合がある。
【0037】
従来技術の抗体に比較して本発明の変異抗CD38抗体において変更または保持される場合がある抗体の機能的性質の例は、例えば、
(1)CD38への高親和結合および/または
(2)CD38を発現するトランスフェクトされた細胞、例えばCHOまたはHEK293細胞への結合および/または
(3)CDCの誘発および/または
(4)ADCCの誘発および/または
(5)酵素活性の変化および/または
(6)二次架橋後のアポトーシスの誘発および/または
(7)ファゴサイトーシス
である。
【0038】
用語「エピトープ」は、抗体への特異的結合が可能なタンパク質決定基をいう。エピトープは通常、アミノ酸または糖側鎖のような分子の表面集団からなり、通常、特異的な三次元構造的特徴および特異的な電荷特性を有する。立体構造的エピトープと非立体構造的エピトープとは、変性溶媒の存在下、前者への結合は失われるが、後者への結合は失われないという点で区別される。エピトープは、結合に直接的に関与するアミノ酸残基(エピトープの免疫優性成分とも呼ばれる)および結合に直接は関与しない他のアミノ酸残基、例えば特異的に抗原に結合するペプチドによって効果的に遮断されるアミノ酸残基を含むこともできる(換言するならば、アミノ酸残基は、特異的に抗原に結合するペプチドのフットプリント内にある)。
【0039】
本明細書において使用されるように、ヒト抗体は、その抗体が、系から、ヒト免疫グロブリン配列を使用して、例えばヒト免疫グロブリン遺伝子を有する遺伝子導入マウスを免疫化することによって、またはヒト免疫グロブリン遺伝子ライブラリをスクリーニングすることによって得られるならば、特定の生殖系列配列に「由来」し、選択されたヒト抗体は、生殖系列免疫グロブリン遺伝子によってコードされるアミノ酸配列とアミノ酸配列において少なくとも90%、例えば少なくとも95%、例えば少なくとも96%、例えば少なくとも97%、例えば少なくとも98%または例えば少なくとも99%同一である。一般に、重鎖CDR3の外では、特定のヒト生殖系列配列に由来するヒト抗体は、生殖系列免疫グロブリン遺伝子によってコードされるアミノ酸配列とアミノ酸20個以下の違い、例えばアミノ酸10個以下の違い、例えばアミノ酸5個以下、例えばアミノ酸4、3、2または1個以下の違いを示す。
【0040】
本明細書において使用される用語「増殖を阻害する」(例えば、腫瘍細胞のような細胞に関して)は、抗CD38抗体と接触しない細胞の増殖と比較して、抗CD38抗体と接触した場合の同じ細胞の増殖におけるかなりの低下、例えば少なくとも約10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、99%または100%の細胞培養物の増殖の阻害を含むものと解釈される。細胞増殖におけるそのような低下は、多様な機構、例えばエフェクタ細胞ファゴサイトーシス、ADCC、CDCおよび/またはアポトーシスによって起こることができる。
【0041】
用語「二重特異性抗体」は、二つの異なる結合特異性を有する任意の抗体を含むものと解釈される。用語「二重特異性抗体」はまた、ダイアボディを含む(例えばHolliger, P. et al., PNAS USA 90, 6444-6448 (1993)、Poljak, R.J . et al., Structure 2, 1121-1123 (1994)を参照されたい)。
【0042】
「エフェクタ機能を欠く抗体」または「エフェクタ機能欠損抗体」とは、一つまたは複数の免疫エフェクタ機構、例えば補体活性化またはFc受容体結合を活性化する能力が有意に低下している、またはそのような能力を有しない抗体をいう。したがって、エフェクタ機能欠損抗体は、抗体依存性細胞媒介細胞傷害性(ADCC)および/または補体依存性細胞傷害性(CDC)を媒介する能力が有意に低下している、またはそのような能力を有しない。
【0043】
本発明に関連して、用語「一価抗体」は、抗体分子が一つの抗原分子にしか結合することができず、したがって、抗原の架橋が不可能であることをいう。
【0044】
本明細書に関連して、用語「エフェクタ細胞」は、免疫応答の認知および活性化段階ではなく免疫応答のエフェクタ段階に関与する免疫細胞をいう。例示的な免疫細胞は、骨髄またはリンパ起源の細胞、例えばリンパ球(例えば細胞溶解性T細胞(CTL)を含むB細胞およびT細胞)、キラー細胞、ナチュラルキラー細胞、マクロファージ、単球、好酸球、多核白血球、例えば好中球、顆粒球、マスト細胞および好塩基球を含む。いくつかのエフェクタ細胞は、特異的Fc受容体を発現し、特定の免疫機能を実行する。いくつかの態様において、エフェクタ細胞、例えばナチュラルキラー細胞は、抗体依存性細胞傷害性(ADCC)を誘発することができる。例えば、FcRを発現する単球、マクロファージは、標的細胞の特異的死滅および免疫系の他の成分への抗原の提示または抗原を提示する細胞への結合に関与する。いくつかの態様において、エフェクタ細胞は、標的抗原または標的細胞を貧食することもできる。
【0045】
本明細書において使用される用語「ベクター」は、それが結合している別の核酸を輸送することができる核酸分子をいうものと解釈される。様々なタイプのベクターが当技術分野において周知である。一つのタイプのベクターがプラスミドである。
【0046】
本明細書において使用される用語「組換え宿主細胞」(または単に「宿主細胞」)は、発現ベクターが導入されている細胞をいうものと解釈される。そのような用語は、特定の対象細胞を指すだけでなく、そのような細胞の後代をも指すものと解釈される。突然変異または環境的影響によって後続世代において特定の変化が起こる場合があるため、そのような後代は、実際、親細胞と同一ではない場合があるが、それでもなお、本明細書において使用される用語「宿主細胞」の範囲に含まれる。組換え宿主細胞は、例えば、トランスフェクトーマ、例えばCHO細胞、HEK293細胞、NS/0細胞およびリンパ球性細胞を含む。
【0047】
用語「遺伝子導入非ヒト動物」とは、一つまたは複数のヒト重鎖および/または軽鎖導入遺伝子または導入染色体(動物の天然ゲノムDNAに組み込まれている、または組み込まれていない)を含むゲノムを有し、ヒト抗体を完全に発現することができる非ヒト動物をいう。例えば、遺伝子導入マウスは、ヒト軽鎖導入遺伝子およびヒト重鎖導入遺伝子またはヒト重鎖導入染色体を有して、CD38抗原および/またはCD38発現細胞で免疫化された場合、ヒト抗CD38抗体を産生することができる。ヒト重鎖導入遺伝子は、遺伝子導入マウス、例えばHuMAbマウス、例えばHCo7もしくはHCol2マウスの場合のようにマウスの染色体DNAに組み込まれてもよく、またはWO02/43478に記載されているように、染色体導入KMマウスの場合のように染色体外に維持されてもよい。このような遺伝子導入マウスおよび染色体導入マウス(本明細書において集合的に「遺伝子導入マウス」と呼ぶ)は、V-D-J組換えおよびアイソタイプスイッチを受けることによって、所与の抗原に対するヒトモノクローナル抗体の複数のアイソタイプ(例えばIgG、IgA、IgM、IgD、および/またはIgE)を産生することができる。遺伝子導入非ヒト動物はまた、このような特異的抗体をコードする遺伝子を導入することによって、例えば、これらの遺伝子を、動物の乳の中に発現する遺伝子に操作的に結合させることによって、ある特定の抗原に対する抗体の産生に使用することもできる。
【0048】
本発明に関連して、用語「B細胞新生物」または「成熟B細胞新生物」は、小リンパ球性リンパ腫、B細胞前リンパ球性リンパ腫、B細胞性慢性リンパ性白血病、マントル細胞リンパ腫、バーキットリンパ腫、ろ胞性リンパ腫、びまん性大細胞型B細胞リンパ腫、多発性骨髄腫、リンパ形質細胞性リンパ腫、脾臓辺縁帯リンパ腫、形質細胞新生物、例えば形質細胞性骨髄腫、形質細胞腫、モノクローナル免疫グロブリン沈着症、重鎖病、MALTリンパ腫、節性辺縁帯B細胞リンパ腫、血管内大B細胞リンパ腫、原発性滲出性リンパ腫、リンパ腫様肉芽腫症、非ホジキンリンパ腫、ホジキンリンパ腫、ヘアリー細胞白血病、原発性滲出性リンパ腫およびAIDS関連非ホジキンリンパ腫を含む。
【0049】
「処置」とは、症状または疾病状態を和らげる、改善する、抑制する、または根絶(治癒)する目的をもって有効量の本発明の治療的活性化合物を投与することをいう。
【0050】
「有効量」とは、必要な投与量および期間で所望の治療結果を達成するのに有効な量をいう。抗CD38抗体の治療的に有効な量は、個人の疾病状態、年齢、性別および体重ならびに個人において所望の応答を誘発する抗CD38抗体の能力のような要因にしたがって異なる場合がある。治療的に有効な量はまた、抗体または抗体部分の任意の毒性または有害効果よりも治療的に有益な効果が勝る量である。
【0051】
「抗イディオタイプ」(Id)抗体とは、抗体の抗原結合部位と一般に関連する特有の決定因子を認識する抗体である。
【0052】
本発明の抗体
本発明は、ヒトCD38(SEQ ID NO:52)に結合する抗体であって、202位のAspがGlyで置換されているヒトCD38の変異体には、ヒトCD38に結合するのと同じ程度には結合しない抗体に関する。一つの態様において、202位のAspがGlyで置換されているヒトCD38の変異体への抗体の結合のEC50は、ヒトCD38への抗体の結合のEC50の50%未満、例えば10%未満、5%未満または1%未満である。
【0053】
一つの態様において、上記抗体は、272位のGlnがArgで置換されているヒトCD38の変異体には、ヒトCD38に結合するのと同じ程度に結合する。一つの態様において、272位のGlnがArgで置換されているヒトCD38の変異体への抗体の結合のEC50は、ヒトCD38への抗体の結合のEC50の少なくとも80%、例えば少なくとも90%、例えば少なくとも95%、例えば少なくとも98%である。
【0054】
一つの態様において、上記態様のいずれかに記載した抗体は、274位のSerがPheで置換されているヒトCD38の変異体には、ヒトCD38に結合するのと同じ程度に結合する。一つの態様において、ヒトCD38の変異体への抗体の結合のEC50は、ヒトCD38への抗体の結合のEC50の少なくとも75%、例えば少なくとも80%、例えば少なくとも90%、例えば少なくとも95%、例えば少なくとも98%である。
【0055】
一つの態様において、上記抗体は、以下の結合特性を有する:(i)202位のAspがGlyで置換されているヒトCD38の変異体には、ヒトCD38に結合するのと同じ程度には結合せず、(ii)272位のGlnがArgで置換されているヒトCD38の変異体には、ヒトCD38に結合するのと同じ程度に結合し、(iii)274位のSerがPheで置換されているヒトCD38の変異体には、ヒトCD38に結合するのと同じ程度に結合する。
【0056】
一つの態様において、上記態様のいずれかに記載した抗体は、実施例8のアッセイにおいて計測した場合、ヒトCD38に結合し、CD38シクラーゼ活性に対する阻害効果およびCD38ヒドロラーゼ活性に対する刺激効果を有し、その阻害効果は、抗体の非存在下におけるCD38シクラーゼ活性に対する阻害効果に比べて少なくとも50~66%である。
【0057】
一つの態様において、上記態様のいずれかに記載した抗体は、SEQ ID NO:1、6、11、16または21に記載されるヌクレオチド配列をその可変領域中に含むヒト重鎖核酸と、SEQ ID NO:26、31、36、41または46に記載されるヌクレオチド配列をその可変領域中に含むヒト軽鎖核酸とによってコードされる。
【0058】
一つの態様において、上記態様のいずれかに記載した抗体は、SEQ ID NO:1および26、6および31、11および36、16および41、または21および46に記載されるヌクレオチド配列をその可変領域中にそれぞれ含むヒト重鎖核酸およびヒト軽鎖核酸によってコードされる。
【0059】
一つの態様において、上記態様のいずれかに記載した抗体は、
a)SEQ ID NO:5、10、15、20または25に記載される配列、または
b)例えば多くて一つ、二つまたは三つのアミノ酸修飾、好ましくは置換、例えば保存的置換を有する、該配列の変異体
を含むVH CDR3を含む。
【0060】
一つの態様において、上記態様のいずれかに記載した抗体は、SEQ ID NO:5、10、15、20または25に記載される配列を有するVH CDR3およびSEQ ID NO:30、35、40、45または50に記載される配列を有するVL CDR3を含む。
【0061】
一つの態様において、上記態様のいずれかに記載した抗体は、SEQ ID NO:5およびSEQ ID NO:30またはSEQ ID NO:10およびSEQ ID NO:35またはSEQ ID NO:15およびSEQ ID NO:40またはSEQ ID NO:20およびSEQ ID NO:45またはSEQ ID NO:25およびSEQ ID NO:50をそれぞれVH CDR3およびVL CDR3として含む。
【0062】
一つの態様において、上記態様のいずれかに記載した抗体は、以下を含む:
(i)SEQ ID NO:3、8、13、18および23のいずれかに記載される配列を有するVH CDR1、SEQ ID NO:4、9、14、19および24のいずれかに記載される配列を有するVH CDR2、SEQ ID NO:5、10、15、20および25のいずれかに記載される配列を有するVH CDR3、SEQ ID NO:28、33、38、43および48のいずれかに記載される配列を有するVL CDR1、SEQ ID NO:29、34、39、44および49のいずれかに記載される配列を有するVL CDR2、SEQ ID NO:30、35、40、45および50のいずれかに記載される配列を有するVL CDR3、
(ii)SEQ ID NO:3に記載される配列を有するVH CDR1、SEQ ID NO:4に記載される配列を有するVH CDR2、SEQ ID NO:5に記載される配列を有するVH CDR3、SEQ ID NO:28に記載される配列を有するVL CDR1、SEQ ID NO:29に記載される配列を有するVL CDR2、SEQ ID NO:30に記載される配列を有するVL CDR3、
(iii)SEQ ID NO:8に記載される配列を有するVH CDR1、SEQ ID NO:9に記載される配列を有するVH CDR2、SEQ ID NO:10に記載される配列を有するVH CDR3、SEQ ID NO:33に記載される配列を有するVL CDR1、SEQ ID NO:34に記載される配列を有するVL CDR2、SEQ ID NO:35に記載される配列を有するVL CDR3、
(iv)SEQ ID NO:13に記載される配列を有するVH CDR1、SEQ ID NO:14に記載される配列を有するVH CDR2、SEQ ID NO:15に記載される配列を有するVH CDR3、SEQ ID NO:38に記載される配列を有するVL CDR1、SEQ ID NO:39に記載される配列を有するVL CDR2、SEQ ID NO:40に記載される配列を有するVL CDR3、
(v)SEQ ID NO:18に記載される配列を有するVH CDR1、SEQ ID NO:19に記載される配列を有するVH CDR2、SEQ ID NO:20に記載される配列を有するVH CDR3、SEQ ID NO:43に記載される配列を有するVL CDR1、SEQ ID NO:44に記載される配列を有するVL CDR2、SEQ ID NO:45に記載される配列を有するVL CDR3、
(vi)SEQ ID NO:23に記載される配列を有するVH CDR1、SEQ ID NO:24に記載される配列を有するVH CDR2、SEQ ID NO:25に記載される配列を有するVH CDR3、SEQ ID NO:48に記載される配列を有するVL CDR1、SEQ ID NO:49に記載される配列を有するVL CDR2、SEQ ID NO:50に記載される配列を有するVL CDR3、または
(vii)好ましくは多くて一つ、二つまたは三つのアミノ酸修飾、より好ましくはアミノ酸置換、例えば保存的アミノ酸置換を該配列の一つまたは複数の中に有する、前記のいずれかの抗体の変異体。
【0063】
一つの態様において、上記態様のいずれかに記載した抗体は、
(i)SEQ ID NO:2、7、12、17または22の配列を含む、または
(ii)SEQ ID NO:2、7、12、17または22に記載されたVH領域配列と少なくとも80%、例えば90%または95%または97%または98%または99%または100%の同一性を有する
VH領域を含む。
【0064】
一つの態様において、上記態様のいずれかに記載した抗体は、
(i)SEQ ID NO:27、32、37、42または47の配列を含む、または
(ii)SEQ ID NO:27、32、37、42または47からなる群より選択されるVL領域配列と少なくとも80%、例えば90%または95%または97%または98%または99%または100%の同一性を有する
VL領域を含む。
【0065】
一つの態様において、上記態様のいずれかに記載した抗体は、SEQ ID NO:2、7、12、17および22の配列のいずれかを含むVH領域ならびにSEQ ID NO:27、32、37、42および47の配列のいずれかを含むVL領域を含む。
【0066】
一つの態様において、上記態様のいずれかに記載した抗体は、以下を含む:
(i)SEQ ID NO:2に記載される配列を含むVH領域およびSEQ ID NO:27に記載される配列を含むVL領域、
(ii)SEQ ID NO:7に記載される配列を含むVH領域およびSEQ ID NO:32に記載される配列を含むVL領域、
(iii)SEQ ID NO:12に記載される配列を含むVH領域およびSEQ ID NO:37に記載される配列を含むVL領域、
(iv)SEQ ID NO:17に記載される配列を含むVH領域およびSEQ ID NO:42に記載される配列を含むVL領域、または
(v)SEQ ID NO:22に記載される配列を含むVH領域およびSEQ ID NO:47に記載される配列を含むVL領域。
【0067】
一つの態様において、本発明は、上記態様のいずれか一つに記載した抗CD38抗体と同じCD38上のエピトープに結合する抗CD38抗体に関する。
【0068】
一つの態様において、本発明は、上記態様のいずれか一つに記載した抗体と実質的に同じヒトCD38への特異的結合特性を有する抗CD38抗体に関する。
【0069】
一つの態様において、上記態様のいずれかに記載した抗体は、本明細書の実施例6に記載する方法によって測定された場合、好ましくは5nM以下、例えば1nM以下、例えば0.2nM以下のEC50値で、例えばDaudi細胞において抗体依存性細胞傷害性(ADCC)を誘発することができる。
【0070】
一つの態様において、上記態様のいずれかに記載した抗体は、本明細書の実施例6に記載する方法にしたがって、Daudi細胞においてADCCを誘発することができない。
【0071】
一つの態様において、上記態様のいずれかに記載した抗体は、CHO-CD38細胞において補体依存性細胞傷害性(CDC)を誘発することができない。
【0072】
一つの態様において、上記態様のいずれかに記載した抗体は、10-8M以下のKD、好ましくは10-9M以下のKDでヒトCD38に結合する。
【0073】
一つの態様において、上記態様のいずれかに記載した抗体はヒト一価抗体である。
【0074】
一つの態様において、上記態様のいずれかに記載した抗体は、完全長IgG1、IgG2、IgG3、IgG4、IgD、IgA、IgEまたはIgM抗体、例えばIgG1抗体、好ましくはIgG1,κ抗体またはIgM抗体、好ましくはIgM,κ抗体である。
【0075】
一つの態様において、上記態様のいずれかに記載した抗体は抗体フラグメントまたは単鎖抗体である。
【0076】
一つの態様において、上記態様のいずれかに記載した抗体はエフェクタ機能欠損抗体、例えば安定化ヒトIgG4抗体である。
【0077】
一つの態様において、そのような安定化IgG4抗体は、ヒトIgG4の重鎖定常領域の409位のアルギニンがリジン、トレオニン、メチオニンまたはロイシン、好ましくはリジンで置換されている抗体である。一つの態様において、そのような抗体は、前記409位に対応する位置にLys残基を含む、または抗体のCH3領域がヒトIgG1、ヒトIgG2またはヒトIgG3のCH3領域によって置換されている。一つの態様において、そのような抗体は、ヒンジ領域中にCys-Pro-Pro-Cys配列を含まない。別の態様において、そのような抗体は、ヒンジ領域中にCys-Pro-Pro-Cys配列を含む。
【0078】
一つの態様において、上記態様のいずれかに記載した抗体は一価抗体である。
【0079】
一つの態様において、そのような一価抗体は、
i)該一価抗体の軽鎖をコードする核酸コンストラクトを提供する段階であって、該コンストラクトが、SEQ ID NO:27、32、37、42または47のVL領域をコードするヌクレオチド配列およびIgの定常CL領域をコードするヌクレオチド配列を含み、選択された抗原特異的抗体のVL領域をコードする該ヌクレオチド配列およびIgのCL領域をコードする該ヌクレオチド配列が機能的に連結され、IgG1サブタイプの場合、CL領域をコードするヌクレオチド配列が、そのCL領域が、ポリクローナルヒトIgGの存在下または動物もしくはヒトに投与されたとき、CL領域の同一のアミノ酸配列を含む他のペプチドとジスルフィド結合または共有結合を形成することができるいかなるアミノ酸も含まないように改変されている、段階、
ii)該一価抗体の重鎖をコードする核酸コンストラクトを提供する段階であって、該コンストラクトが、SEQ ID NO:2、7、12、17または22のVH領域をコードするヌクレオチド配列およびヒトIgの定常CH領域をコードするヌクレオチド配列を含み、CH領域をコードするヌクレオチド配列が、ヒンジ領域に対応する領域と、Igサブタイプによって求められる場合、CH領域の他の領域、例えばCH3領域とが、ポリクローナルヒトIgGの存在下または動物もしくはヒトに投与されたとき、ヒトIgのCH領域の同一のアミノ酸配列を含む他のペプチドとのジスルフィド結合または共有結合的もしくは安定な非共有結合的重鎖間結合の形成に関与するいかなるアミノ酸残基も含まないように改変されており、選択された抗原特異的抗体のVH領域をコードする該ヌクレオチド配列および該IgのCH領域をコードする該ヌクレオチド配列が機能的に連結されている、段階、
iii)該一価抗体を産生するための細胞発現系を提供する段階、
iv)(iii)の細胞発現系の細胞中に(i)および(ii)の核酸コンストラクトを同時発現させることによって該一価抗体を産生する段階
を含む方法によって構築される。
【0080】
一つの態様において、CH2およびCH3領域を含むCH領域は、ヒンジ領域に対応する領域と、免疫グロブリンがIgG4サブタイプではないならば、CH領域の他の領域、例えばCH3領域とが、ポリクローナルヒトIgGの存在下、同一のCH領域とのジスルフィド結合または同一のCH領域との他の共有結合的もしくは安定な非共有結合的重鎖間結合を形成することができるいかなるアミノ酸残基も含まないように修飾されている。
【0081】
一つの態様において、そのような一価抗体はIgG4サブタイプであるが、CH3領域は、以下のアミノ酸置換の一つまたは複数が加えられるように修飾されている:366位のThr(T)がAla(A)によって置換されている、368位のLeu(L)がAla(A)によって置換されている、368位のLeu(L)がVal(V)によって置換されている、405位のPhe(F)がAla(A)によって置換されている、405位のPhe(F)がLeu(L)によって置換されている、407位のTyr(Y)がAla(A)によって置換されている、409位のArg(R)がAla(A)によって置換されている。
【0082】
一つの態様において、そのような一価抗体の重鎖は、ヒンジ全体が欠失するように修飾されている。
【0083】
一つの態様において、該一価抗体の配列は、N結合グリコシル化のための任意の受容部位を含まないように修飾されている。
【0084】
一つの態様において、上記態様のいずれかに記載した抗体は、3μg/mlの濃度で90分後、本明細書の実施例8に記載する分光光度法によって測定した場合、cGDPRのCD38触媒合成を少なくとも25%、例えば少なくとも30%阻害する。
【0085】
一つの態様において、上記態様のいずれかに記載した抗体は、3μg/mlの濃度で90分後、Munshi et al., J. Biol. Chem. 275, 21566-21571 (2000)に記載されているHPLC法によって測定した場合、cADPRのCD38触媒合成を少なくとも25%、例えば少なくとも30%阻害する。
【0086】
一つの態様において、抗体は、CD38のヒドロラーゼ活性を少なくとも25%刺激する。
【0087】
一つの態様において、抗体は、CD38のNADヒドロラーゼ活性を少なくとも25%刺激する。
【0088】
一つの態様において、上記態様のいずれかに記載した抗体は、CD38のcADPRヒドロラーゼ活性を少なくとも25%刺激する。
【0089】
一つの態様において、上記態様のいずれかに記載した抗体は、本明細書の実施例8に記載する方法によって、塩基交換反応によるNAADPの形成を触媒するCD38の能力を0.5μg/mL未満、例えば0.2μg/mL未満のIC50で阻害する。
【0090】
一つの態様において、本発明は、細胞傷害剤、放射性同位体、または薬物にコンジュゲートされている、上記態様のいずれかに記載した抗体を含む抗体薬物コンジュゲートに関する。一つの態様において、抗体は、リンカーを介してアウリスタチンまたはその機能的ペプチド類似物もしくは誘導体にコンジュゲートされている。
【0091】
一つの態様において、本発明は、上記態様のいずれかに記載した抗体およびヒトエフェクタ細胞または癌抗原に対する第二の結合特異性を含む二重特異性抗体に関する。一つの態様において、第二の結合特異性は、ヒトFc受容体またはT細胞受容体、例えばCD3に対するものである。
【0092】
一つの態様において、本発明は、上記態様のいずれかに記載した抗体をコードする単離された核酸に関する。
【0093】
一つの態様において、本発明は、上記態様のいずれかに記載したアミノ酸配列の一つまたは複数をコードするヌクレオチド配列を含む発現ベクターに関する。
【0094】
一つの態様において、発現ベクターはさらに、ヒト抗体の軽鎖、重鎖、または軽鎖および重鎖両方の定常領域をコードするヌクレオチド配列を含む。
【0095】
一つの態様において、本発明は、上記態様のいずれかに記載した抗体を産生する組換え真核生物または原核生物宿主細胞に関する。
【0096】
一つの態様において、本発明は、上記態様のいずれかに記載した抗体、イムノコンジュゲート、二重特異性抗体、または発現ベクターと、薬学的に許容可能な担体とを含む薬学的組成物に関する。
【0097】
一つの態様において、本発明は、医薬として使用するための、上記態様のいずれかに記載した抗体に関する。
【0098】
一つの態様において、本発明は、CD38を発現する腫瘍細胞の成長および/もしくは増殖、遊走を阻害する、またはCD38を発現する腫瘍細胞のファゴサイトーシスを誘発することに使用するための、上記態様のいずれかに記載した抗体に関する。
【0099】
一つの態様において、本発明は、関節リウマチの処置に使用するための、上記態様のいずれかに記載した抗体に関する。
【0100】
一つの態様において、本発明は、慢性リンパ性白血病(CLL)、急性リンパ芽球性白血病(ALL)、急性骨髄性白血病(成人)(AML)、マントル細胞リンパ腫、ろ胞性リンパ腫およびびまん性大細胞型B細胞リンパ腫から選択される障害の処置に使用するための、上記態様のいずれかに記載した抗体に関する。
【0101】
一つの態様において、本発明は、多発性骨髄腫の処置に使用するための、上記態様のいずれかに記載した抗体に関する。
【0102】
一つの態様において、本発明は、以下の段階を含む、上記態様のいずれかに記載した抗CD38抗体を産生する方法に関する:
a)上記態様のいずれかに記載した宿主細胞を培養する段階、および
b)培地から抗CD38抗体を精製する段階。
【0103】
一つの態様において、本発明は、上記態様のいずれかに記載した抗体を含む診断用組成物に関する。
【0104】
一つの態様において、本発明は、以下の段階を含む、サンプル中のCD38抗原、すなわちCD38を発現する細胞の存在を検出する方法に関する:
サンプルを、上記態様のいずれかに記載した抗CD38抗体と、抗体または二重特異性分子とCD38との間の複合体の形成を可能にする条件下で、接触させる段階、および
複合体が形成されたかどうかを分析する段階。
【0105】
一つの態様において、本発明は、サンプル中のCD38抗原、すなわちCD38を発現する細胞の存在を検出するためのキットに関し、本キットは、上記態様のいずれかに記載した抗CD38抗体およびキットの使用に関する取り扱い指示を含む。
【0106】
一つの態様において、本発明は、上記態様のいずれかに記載した抗CD38抗体に結合する抗イディオタイプ抗体に関する。
【0107】
一つの態様において、本発明は、CD38を発現する細胞の成長および/もしくは増殖、遊走を阻害する、またはCD38を発現する細胞のファゴサイトーシスを誘発する方法に関し、本方法は、細胞の成長および/もしくは増殖、遊走、またはファゴサイトーシスが阻害されるように上記態様のいずれかに記載した抗体、イムノコンジュゲート、二重特異性抗体、発現ベクター、または薬学的組成物の投与を含む。
【0108】
一つの態様において、本発明は、対象においてCD38を発現する細胞が関与する疾病または障害を処置する方法に関し、本方法は、上記態様のいずれかに記載した抗体、イムノコンジュゲート、二重特異性抗体、発現ベクターまたは薬学的組成物を、処置を必要とする対象に投与する段階を含む。
【0109】
一つの態様において、疾病または障害は関節リウマチである。
【0110】
別の態様において、疾病または障害は、慢性リンパ性白血病(CLL)、急性リンパ芽球性白血病(ALL)、急性骨髄性白血病(成人)(AML)、マントル細胞リンパ腫、ろ胞性リンパ腫およびびまん性大細胞型B細胞リンパ腫から選択される。
【0111】
さらに別の態様において、疾病または障害は多発性骨髄腫である。
【0112】
一つの態様において、上記態様のいずれかに記載した方法は、一つまたは複数のさらなる治療剤、例えば化学療法剤、抗炎症剤、または免疫抑制剤および/もしくは免疫調節剤から選択される一つまたは複数のさらなる治療剤の対象への投与を含む。一つの態様において、一つまたは複数のさらなる治療剤は、シスプラチン、ゲフィチニブ、セツキシマブ、リツキシマブ、オファツムマブ、ベバシズマブ、エルロチニブ、ボルテゾミブ、サリドマイド、パミドロネート、ゾレドロン酸、クロドロネート、リセドロネート、イバンドロネート、エチドロネート、アレンドロネート、チルドロネート、三酸化ヒ素、レナリドミド、デキサメタゾン、プレドニゾロン、フィルグラスチム、ペグフィルグラスチム、サルグラモスチム、スベロイルアニリドヒドロキサム酸、およびSCIO-469からなる群より選択される。
【0113】
本発明の態様は、ヒトCD38に結合するが、202位のAspがGlyで置換されているCD38の変異体には結合しない抗体を提供する。
【0114】
本発明の態様は、ヒトCD38の変異体への抗体の結合のEC50が、ヒトCD38へのペプチドの結合のEC50の50%未満、例えば10%未満、5%未満または1%未満である、上記態様の抗体を提供する。
【0115】
本発明の態様は、272位のGlnがArgで置換されているヒトCD38の変異体には、ヒトCD38に結合するのと同じ程度に結合する、上記態様のいずれかの抗体を提供する。
【0116】
本発明の態様は、ヒトCD38の変異体への抗体の結合のEC50が、ヒトCD38へのペプチドの結合のEC50の少なくとも80%、例えば少なくとも90%、例えば少なくとも95%、例えば少なくとも98%である、上記態様のいずれかの抗体を提供する。
【0117】
本発明の態様は、274位のSerがPheで置換されているヒトCD38の変異体には、ヒトCD38に結合するのと同じ程度に結合する、上記態様のいずれかの抗体を提供する。
【0118】
本発明の態様は、ヒトCD38の変異体への抗体の結合のEC50が、ヒトCD38へのペプチドの結合のEC50の少なくとも75%、例えば少なくとも80%、例えば少なくとも90%、例えば少なくとも95%、例えば少なくとも98%である、上記態様の抗体を提供する。
【0119】
本発明の態様は、以下の結合特性を有する、上記態様のいずれかの抗体を提供する:(i)202位のAspがGlyで置換されているヒトCD38の変異体には、ヒトCD38に結合するのと同じ程度には結合せず、(ii)272位のGlnがArgで置換されているヒトCD38の変異体には、ヒトCD38に結合するのと同じ程度に結合し、(iii)274位のSerがPheで置換されているヒトCD38の変異体には、ヒトCD38に結合するのと同じ程度に結合する。
【0120】
本発明の態様は、実施例8のアッセイにおいて計測した場合、ヒトCD38に結合し、CD38シクラーゼ活性に対する阻害効果およびCD38ヒドロラーゼ活性に対する刺激効果を有する、上記態様のいずれかの抗体を提供する。
【0121】
本発明の態様は、阻害効果がCD38のみに比べて少なくとも50~66%である、上記態様の抗体を提供する。本発明の態様は、SEQ ID NO:1、6、11、16または21に記載されるヌクレオチド配列をその可変領域中に含むヒト重鎖核酸およびSEQ ID NO:26、31、36、41または46に記載されるヌクレオチド配列をその可変領域中に含むヒト軽鎖によってコードされ、上記配列の保存的な配列の改変を含む、ヒトCD38に結合する抗体を提供する。
【0122】
本発明の態様は、SEQ ID NO:1および26、6および31、11および36、16および41、または21および46に記載されるヌクレオチド配列をその可変領域中にそれぞれ含むヒト重鎖核酸およびヒト軽鎖核酸によってコードされ、上記配列の保存的な配列の改変を含む、上記態様の抗体を提供する。
【0123】
本発明の態様は、
a)SEQ ID NO:5、10、15、20または25、30に記載される配列、または
b)例えば多くて一つ、二つまたは三つのアミノ酸修飾、好ましくは置換、例えば保存的置換を有する、該配列の変異体
を有するVH CDR3領域を含む、ヒトCD38に結合する抗体を提供する。
【0124】
本発明の態様は、SEQ ID NO:5、10、15、20、25または30に記載される配列を有するVH CDR3領域およびSEQ ID NO:30、35、40、45または50に記載される配列を有するVL CDR3領域を含む、ヒトCD38に結合する抗体を提供する。
【0125】
本発明の態様は、SEQ ID NO:5に記載される配列を有するVH CDR3領域ならびにSEQ ID NO:30またはSEQ ID NO:10およびSEQ ID NO:35またはSEQ ID NO:15およびSEQ ID NO:40またはSEQ ID NO:20およびSEQ ID NO:45またはSEQ ID NO:25およびSEQ ID NO:45またはSEQ ID NO:30およびSEQ ID NO:50を含むVL CDR3領域を、それぞれVH CDR3領域およびVL CDR3領域として含む、ヒトCD38に結合する抗体を提供する。
【0126】
本発明の態様は、SEQ ID NO:3、8、13、18または23のいずれかに記載される配列を有するVH CDR1領域、SEQ ID NO:4、9、14、19または24のいずれかに記載される配列を有するVH CDR2領域、SEQ ID NO:30、35、40、45または50のいずれかに記載される配列を有するVL CDR3領域、およびSEQ ID NO:5、10、15、20または25に記載される配列を有するVH CDR3領域を含む、上記態様のいずれかの抗CD38抗体を提供する。
【0127】
本発明の態様は、以下を提供する:
SEQ ID NO:3、8、13、18または23のいずれかに記載される配列を有するVH CDR1領域、SEQ ID NO:4、9、14、19または24のいずれかに記載される配列を有するVH CDR2領域、SEQ ID NO:5、10、15、20または25に記載される配列を有するVH CDR3領域、SEQ ID NO:28、33、38、43または48に記載されるVL CDR1領域、SEQ ID NO:29、34、39、44または49に記載されるVL CDR2領域、SEQ ID NO:30、35、40、45または50のいずれかに記載される配列を有するVL CDR3領域
を含む、CD38に結合する抗体、または
好ましくは多くて一つ、二つまたは三つのアミノ酸修飾、より好ましくはアミノ酸置換、例えば保存的アミノ酸置換を該配列中に有する、該抗体の変異体。
【0128】
本発明の態様は、SEQ ID NO:3、8、13、18または23のいずれかに記載される配列を有するVH CDR1領域、SEQ ID NO:4、9、14、19または24のいずれかに記載される配列を有するVH CDR2領域、SEQ ID NO:5、10、15、20または25に記載される配列を有するVH CDR3領域、SEQ ID NO:28、33、38、43または48に記載されるVL CDR1領域、SEQ ID NO:29、34、39、44または49に記載されるVL CDR2領域、SEQ ID NO:30、35、40、45または50のいずれかに記載される配列を有するVL CDR3領域を含む、CD38に結合する抗体を提供する。
【0129】
本発明の態様は、SEQ ID NO:2、7、12、17または22に記載されるVH領域配列と少なくとも80%の同一性、例えば90%または95%または97%または98%または99%または100%の同一性を有するVHを含む、上記態様のいずれかの抗CD38抗体を提供する。
【0130】
本発明の態様は、SEQ ID NO:27、32、37、42または47からなる群より選択されるVL領域配列と少なくとも80%の同一性、例えば90%または95%または97%または98%または99%または100%の同一性を有するVLを含む、上記態様のいずれかの抗CD38抗体を提供する。
【0131】
本発明の態様は、SEQ ID NO:2、7、12、17または22の配列を含むVH領域およびSEQ ID NO:27、32、37、42または47の配列を含むVL領域を含む、上記態様のいずれかの抗CD38抗体を提供する。
【0132】
本発明の態様は、CD38への結合に関して上記態様のいずれかの抗体と競合する抗体を提供する。
【0133】
本発明の態様は、CD38結合に関して、SEQ ID NO:2、7、12、17または22の配列のいずれかを含むVH領域とSEQ ID NO:27、32、37、42または47の配列のいずれかを含むVL領域とを含む抗CD38抗体と競合する、抗CD38抗体を提供する。
【0134】
本発明の態様は、上記態様のいずれかに記載した抗CD38抗体と同じCD38上のエピトープに結合する、上記態様のいずれかの抗CD38抗体を提供する。
【0135】
本発明の態様は、ヒトCD38への結合に関して上記態様のいずれかの抗体と実質的に同じ特異的結合特性を有する抗体を提供する。
【0136】
本発明の態様は、CHO-CD38細胞において補体依存性細胞傷害性(CDC)を誘発することができる、上記態様のいずれかの抗CD38抗体を提供する。
【0137】
本発明の態様は、抗体依存性細胞傷害性(ADCC)を誘発することができる、上記態様のいずれかの抗CD38抗体を提供する。
【0138】
本発明の態様は、本明細書の実施例6に記載する方法によって測定した場合、好ましくは5nM以下、例えば1nM以下、例えば0.2nM以下のEC50値で、Daudi細胞においてADCCを誘発する、請求項25記載の抗CD38抗体を提供する。
【0139】
本発明の態様は、ADCCを誘発することができない、上記態様のいずれかの抗CD38抗体を提供する。
【0140】
本発明の態様は、補体依存性細胞傷害性(CDC)を誘発することができない、上記態様のいずれかの抗CD38抗体を提供する。
【0141】
本発明の態様は、10-8M以下のKD、好ましくは10-9M以下のKDでヒトCD38に結合する、上記態様のいずれかの抗CD38抗体を提供する。
【0142】
本発明の態様は、
IGHV1-69*04および/またはIGHJ3*02からなる群より選択されるヒト生殖系列VH配列に由来する重鎖可変領域
IGKV1D-16*01および/またはIGKJ4*01からなる群より選択されるヒト生殖系列VK配列に由来する軽鎖可変領域
を含む、上記態様のいずれかの抗CD38抗体を提供する。
【0143】
本発明の態様は、ヒト抗体である、上記態様のいずれかの抗CD38抗体を提供する。
【0144】
本発明の態様は、完全長IgG1、IgG2、IgG3、IgG4、IgD、IgA、IgEまたはIgM抗体、例えばIgG1抗体、好ましくはIgG1,κ抗体またはIgM抗体、好ましくはIgM,κ抗体であることを特徴とする、上記態様のいずれかの抗体を提供する。
【0145】
本発明の態様は、抗体フラグメントまたは単鎖抗体である、上記態様のいずれかの抗CD38抗体を提供する。
【0146】
本発明の態様は、別の部分、例えば細胞傷害性部分、放射性同位体または薬物にコンジュゲートされている、上記態様のいずれかの抗CD38抗体を提供する。
【0147】
本発明の態様は、エフェクタ機能欠損抗体である、上記態様のいずれかの抗CD38抗体を提供する。
【0148】
本発明の態様は、エフェクタ機能欠損抗CD38抗体が安定化ヒトIgG4抗体である、上記態様の抗CD38抗体を提供する。
【0149】
本発明の態様は、安定化ヒトIgG4抗体が、ヒトIgG4の重鎖定常領域中の409位のアルギニンがリジン、トレオニン、メチオニンまたはロイシン、好ましくはリジンで置換されている抗体である、上記態様の抗CD38抗体を提供する。
【0150】
本発明の態様は、該抗体が、前記409位に対応する位置にLys残基を含む、または抗体のCH3領域がヒトIgG1、ヒトIgG2またはヒトIgG3のCH3領域によって置換されている、上記態様の抗CD38抗体を提供する。
【0151】
本発明の態様は、ヒンジ領域中にCys-Pro-Pro-Cys配列を含まない、上記態様の抗CD38抗体を提供する。
【0152】
本発明の態様は、ヒンジ領域中にCys-Pro-Pro-Cys配列を含む、上記態様の抗CD38抗体を提供する。
【0153】
本発明の態様は、一価抗体である、上記態様のいずれかの抗CD38抗体を提供する。
【0154】
本発明の態様は、該一価抗体が、
i)該一価抗体の軽鎖をコードする核酸コンストラクトを提供する段階であって、該コンストラクトが、選択された抗原特異的抗体のVL領域をコードするヌクレオチド配列およびIgの定常CL領域をコードするヌクレオチド配列を含み、選択された抗原特異的抗体のVL領域をコードする該ヌクレオチド配列およびIgのCL領域をコードする該ヌクレオチド配列が機能的に連結され、IgG1サブタイプの場合、CL領域をコードするヌクレオチド配列が、そのCL領域が、ポリクローナルヒトIgGの存在下または動物もしくはヒトに投与されたとき、CL領域の同一のアミノ酸配列を含む他のペプチドとジスルフィド結合または共有結合を形成することができるいかなるアミノ酸も含まないように改変されている、段階、
ii)該一価抗体の重鎖をコードする核酸コンストラクトを提供する段階であって、該コンストラクトが、選択された抗原特異的抗体のVH領域をコードするヌクレオチド配列およびヒトIgの定常CH領域をコードするヌクレオチド配列を含み、CH領域をコードするヌクレオチド配列が、ヒンジ領域に対応する領域と、Igサブタイプによって求められる場合、CH領域の他の領域、例えばCH3領域とが、ポリクローナルヒトIgGの存在下または動物もしくはヒトに投与されたとき、ヒトIgのCH領域の同一のアミノ酸配列を含む他のペプチドとのジスルフィド結合または共有結合的もしくは安定な非共有結合的重鎖間結合の形成に関与するいかなるアミノ酸残基も含まないように改変されており、選択された抗原特異的抗体のVH領域をコードする該ヌクレオチド配列および該IgのCH領域をコードする該ヌクレオチド配列が機能的に連結されている、段階、
iii)該一価抗体を産生するための細胞発現系を提供する段階、
iv)(iii)の細胞発現系の細胞中に(i)および(ii)の核酸コンストラクトを同時発現させることによって該一価抗体を産生する段階
を含む方法によって構築される、上記態様の抗CD38抗体を提供する。
【0155】
本発明の態様は、一価抗体が、
(i)上記態様のいずれかの抗体の可変領域または該領域の抗原結合部分、および
(ii)免疫グロブリンのCH領域またはCH2およびCH3領域を含むそのフラグメントであって、ヒンジ領域に対応する領域と、免疫グロブリンがIgG4サブタイプではないならば、CH領域の他の領域、例えばCH3領域とが、ポリクローナルヒトIgGの存在下、同一のCH領域とのジスルフィド結合または同一のCH領域との他の共有結合的もしくは安定な非共有結合的重鎖間結合を形成することができるいかなるアミノ酸残基も含まないように修飾されている、CH領域またはそのフラグメント
を含む、上記態様の抗CD38抗体を提供する。
【0156】
本発明の態様は、該一価抗体がIgG4サブタイプであるが、CH3領域が、以下のアミノ酸置換の一つまたは複数が加えられるように修飾されている、上記態様の抗CD38抗体を提供する:366位のThr(T)がAla(A)によって置換されている、368位のLeu(L)がAla(A)によって置換されている、368位のLeu(L)がVal(V)によって置換されている、405位のPhe(F)がAla(A)によって置換されている、405位のPhe(F)がLeu(L)によって置換されている、407位のTyr(Y)がAla(A)によって置換されている、409位のArg(R)がAla(A)によって置換されている。
【0157】
本発明の態様は、ヒンジ全体が欠失するように重鎖が修飾されている、上記態様のいずれかの抗CD38抗体を提供する。
【0158】
本発明の態様は、該一価抗体の配列が、N結合グリコシル化のための任意の受容部位を含まないように修飾されている、上記態様のいずれかの抗CD38抗体を提供する。
【0159】
本発明の態様は、90分後、本明細書の実施例8に記載する分光光度法によって測定した場合、cGDPRの合成を少なくとも25%、例えば少なくとも30%阻害する、上記態様のいずれかの抗体を提供する。
【0160】
本発明の態様は、3μg/mlの濃度で90分後、Munshi et al., J. Biol. Chem. 275, 21566-21571 (2000)に記載されているHPLC法によって測定した場合、cADPRの合成を少なくとも25%、例えば少なくとも30%阻害する、上記態様のいずれかの抗体を提供する。
【0161】
本発明の態様は、CD38のヒドロラーゼ活性を少なくとも25%刺激する、上記態様のいずれかの抗体を提供する。
【0162】
本発明の態様は、NADヒドロラーゼ活性を少なくとも25%刺激する、上記態様のいずれかの抗体を提供する。
【0163】
本発明の態様は、cADPRヒドロラーゼ活性を少なくとも25%刺激する、上記態様のいずれかの抗体を提供する。
【0164】
本発明の態様は、上記態様のいずれかのペプチドをコードする単離された核酸を提供する。
【0165】
本発明の態様は、上記態様のいずれかのアミノ酸配列の一つまたは複数をコードするヌクレオチド配列を含む発現ベクターを提供する。
【0166】
本発明の態様は、ヒト抗体の軽鎖、重鎖、または軽鎖および重鎖両方の定常領域をコードするヌクレオチド配列をさらに含む、上記態様の発現ベクターを提供する。
【0167】
本発明の態様は、上記態様のいずれかに記載した抗体を産生する組換え真核生物または原核生物宿主細胞を提供する。
【0168】
本発明の態様は、上記態様のいずれかに記載した抗体を産生するハイブリドーマを提供する。
【0169】
本発明の態様は、上記態様のいずれかに記載した抗体と薬学的に許容可能な担体とを含む薬学的組成物を提供する。
【0170】
本発明の態様は、医薬として使用するための、上記態様のいずれかに記載した抗体を提供する。
【0171】
本発明の態様は、CD38を発現する腫瘍細胞の成長および/もしくは増殖、遊走を阻害する、またはCD38を発現する腫瘍細胞のファゴサイトーシスを誘発することに使用するための、上記態様のいずれかに記載した抗体を提供する。
【0172】
本発明の態様は、関節リウマチの処置に使用するための、上記態様のいずれかに記載した抗体を提供する。
【0173】
本発明の態様は、多発性骨髄腫の処置に使用するための、上記態様のいずれかに記載した抗体を提供する。
【0174】
本発明の態様は、多発性硬化症の処置に使用するための、上記態様のいずれかに記載した抗体を提供する。
【0175】
本発明の態様は、小リンパ球性リンパ腫、B細胞前リンパ球性リンパ腫、B細胞性慢性リンパ性白血病、マントル細胞リンパ腫、バーキットリンパ腫、ろ胞性リンパ腫、びまん性大細胞型B細胞リンパ腫、多発性骨髄腫、リンパ形質細胞性リンパ腫、脾臓辺縁帯リンパ腫、形質細胞新生物、例えば形質細胞性骨髄腫、形質細胞腫、モノクローナル免疫グロブリン沈着症、重鎖病、MALTリンパ腫、節性辺縁帯B細胞リンパ腫、血管内大B細胞リンパ腫、原発性滲出性リンパ腫、リンパ腫様肉芽腫症、非ホジキンリンパ腫、ホジキンリンパ腫、ヘアリー細胞白血病、原発性滲出性リンパ腫またはAIDS関連非ホジキンリンパ腫のいずれか一つのようなB細胞新生物の処置に使用するための、上記態様のいずれかに記載した抗体を提供する。
【0176】
本発明の態様は、CD38を発現する腫瘍細胞の成長および/もしくは増殖、遊走を阻害する、またはCD38を発現する腫瘍細胞のファゴサイトーシスを誘発する方法を提供し、本方法は、上記態様のいずれかの抗体を、それを必要とする個人に投与することを含む。
【0177】
本発明の態様は、以下の段階を含む、上記態様のいずれかの抗CD38抗体を産生する方法を提供する:
a)請求項52記載の宿主細胞または上記態様のハイブリドーマを培養する段階、および
b)培地から抗CD38抗体を精製する段階。
【0178】
本発明の態様は、上記態様のいずれかに記載した抗体を含む診断用組成物を提供する。
【0179】
本発明の態様は、以下の段階を含む、サンプル中のCD38抗原、すなわちCD38を発現する細胞の存在を検出する方法を提供する:
サンプルを、上記態様のいずれかの抗CD38抗体と、抗体または二重特異性分子とCD38との間の複合体の形成を可能にする条件下で、接触させる段階、および
複合体が形成されたかどうかを分析する段階。
【0180】
本発明の態様は、以下を含む、サンプル中のCD38抗原、すなわちCD38を発現する細胞の存在を検出するためのキットを提供する:
上記態様のいずれかの抗CD38抗体、および
キットの使用に関する取り扱い指示。
【0181】
本発明の態様は、上記態様のいずれかの抗CD38抗体に結合する抗イディオタイプ抗体を提供する。
【0182】
本発明の態様は、CD38を発現する細胞の成長および/または増殖を阻害する方法に関し、本方法は、細胞の成長および/または増殖、遊走、またはファゴサイトーシスが阻害されるように上記態様のいずれかのペプチド、上記態様のイムノコンジュゲート、上記態様の薬学的組成物、または上記態様において挙げられた発現ベクターを投与することを含む。
【0183】
本発明の態様は、対象においてCD38を発現する細胞が関与する疾病または障害を処置する方法を提供し、本方法は、上記態様のいずれかのペプチド、上記態様のイムノコンジュゲート、上記態様の薬学的組成物、または上記態様のいずれか一つの発現ベクターを、処置を必要とする対象に投与することを含む。
【0184】
本発明の態様は、対象においてCD38を発現する細胞が関与する疾病または障害を予防する方法を提供し、本方法は、上記態様のいずれかのペプチド、上記態様のイムノコンジュゲート、上記態様の薬学的組成物または上記態様のいずれか一つの発現ベクターを、処置を必要とする対象に投与することを含む。
【0185】
本発明の態様は、疾病または障害が関節リウマチである、上記態様の方法を提供する。
【0186】
本発明の態様は、疾病または障害が、小リンパ球性リンパ腫、B細胞前リンパ球性リンパ腫、B細胞性慢性リンパ性白血病、マントル細胞リンパ腫、バーキットリンパ腫、ろ胞性リンパ腫、びまん性大細胞型B細胞リンパ腫、多発性骨髄腫、リンパ形質細胞性リンパ腫、脾臓辺縁帯リンパ腫、形質細胞新生物、例えば形質細胞性骨髄腫、形質細胞腫、モノクローナル免疫グロブリン沈着症、重鎖病、MALTリンパ腫、節性辺縁帯B細胞リンパ腫、血管内大B細胞リンパ腫、原発性滲出性リンパ腫、リンパ腫様肉芽腫症、非ホジキンリンパ腫、ホジキンリンパ腫、ヘアリー細胞白血病、原発性滲出性リンパ腫およびAIDS関連非ホジキンリンパ腫のいずれか一つのようなB細胞新生物である、上記態様の方法を提供する。
【0187】
本発明の態様は、疾病または障害が多発性骨髄腫である、上記態様の方法を提供する。
【0188】
本発明の態様は、疾病または障害が自己免疫疾患である、上記態様の方法を提供する。
【0189】
本発明の態様は、疾病または障害が糖尿病である、上記態様の方法を提供する。
【0190】
本発明の態様は、疾病または障害が多発性硬化症である、上記態様の方法を提供する。
【0191】
本発明の態様は、疾病または障害がグレーブス病である、上記態様の方法を提供する。
【0192】
本発明の態様は、疾病または障害が神経炎症である、上記態様の方法を提供する。
【0193】
本発明の態様は、疾病または障害が喘息中の気道平滑筋の炎症である、上記態様の方法を提供する。
【0194】
本発明の態様は、一つまたは複数のさらなる治療剤の対象への投与を含む、上記態様の方法を提供する。
【0195】
本発明の態様は、一つまたは複数のさらなる治療剤が、化学療法剤、抗炎症剤、または免疫抑制剤および/または免疫調節剤から選択される、上記態様の方法を提供する。
【0196】
本発明の態様は、一つまたは複数のさらなる治療剤が、シスプラチン、ゲフィチニブ、セツキシマブ、リツキシマブ、ベバシズマブ、エルロチニブ、ボルテゾミブ、サリドマイド、パミドロネート、ゾレドロン酸、クロドロネート、リセドロネート、イバンドロネート、エチドロネート、アレンドロネート、チルドロネート、三酸化ヒ素、レナリドミド、フィルグラスチム、ペグフィルグラスチム、サルグラモスチム、スベロイルアニリドヒドロキサム酸、およびSCIO-469からなる群より選択される、上記態様の方法を提供する。
【0197】
本発明のモノクローナル抗体は、例えば、Kohler et al., Nature 256, 495 (1975)によってはじめて記載されたハイブリドーマ法によって産生してもよく、または組換えDNA法によって産生してもよい。モノクローナル抗体はまた、例えばClackson et al., Nature 352, 624-628 (1991)およびMarks et al., J. Mol. Biol. 222, 581-597(1991)に記載されている技術を使用して、ファージ抗体ライブラリから単離することもできる。モノクローナル抗体は、適当な供給源から得ることもできる。したがって、例えば、モノクローナル抗体は、例えば表面上に抗原を発現する細胞の形態にある関心対象の抗原または関心対象の抗原をコードする核酸で免疫化されたマウスから得られるネズミ脾臓B細胞から調製されたハイブリドーマから得ることもできる。
【0198】
一つの態様において、本発明の抗体はヒト抗体である。CD38に対するヒトモノクローナル抗体は、マウス免疫系ではなくヒト免疫系の一部を有する遺伝子導入または染色体導入マウスを使用して生成することもできる。そのような遺伝子導入および染色体導入マウスは、本明細書においてそれぞれHuMAbマウスおよびKMマウスと呼ばれるマウスを含み、本明細書においては集合的に「遺伝子導入マウス」と呼ばれる。
【0199】
HuMAbマウスは、再配置されていないヒト重(μおよびγ)鎖およびκ軽鎖免疫グロブリン配列をコードするヒト免疫グロブリン遺伝子小座を、内在性のμおよびκ鎖座を不活性化する標的化突然変異とともに含む(Lonberg, N. et al., Nature 368, 856-859 (1994))。したがって、マウスはマウスIgMまたはκの発現の低下を示し、免疫化に応答して、導入されたヒト重鎖および軽鎖導入遺伝子は、クラススイッチおよび体細胞突然変異を受けて高親和性ヒトIgG,κモノクローナル抗体を生成する(Lonberg, N. et al. (1994)、上記、Lonberg, N. Handbook of Experimental Pharmacology 113, 49-101 (1994)、Lonberg, N. and Huszar, D., Intern. Rev. Immunol. Vol. 13 65-93(1995)およびHarding, F. and Lonberg, N. Ann. N.Y. Acad. Sci 764 536-546(1995)において考察)。HuMAbマウスの調製は、Taylor, L. et al., Nucleic Acids Research 20, 6287-6295 (1992)、Chen, J. et al., International Immunology 5, 647-656 (1993)、Tuaillon et al., J. Immunol. 152, 2912-2920 (1994)、Taylor, L. et al., International Immunology 6, 579-591 (1994)、Fishwild, D. et al., Nature Biotechnology 14, 845-851 (1996)に詳細に記載されている。また、US5,545,806、US5,569,825、US5,625,126、US5,633,425、US5,789,650、US5,877,397、US5,661,016、US5,814,318、US5,874,299、US5,770,429、US5,545,807、WO98/24884、WO94/25585、WO93/1227、WO92/22645、WO92/03918およびWO01/09187号を参照されたい。
【0200】
HCo7マウスは、それらの内在性軽鎖(κ)遺伝子中にJKD破壊を有し(Chen et al., ENBO J. 12, 821-830 (1993)に記載)、それらの内在性重鎖遺伝子中にCMD破壊を有し(WO01/14424の実施例1に記載)、KCo5ヒトκ軽鎖導入遺伝子を有し(Fishwild et al., Nature Biotechnology 14, 845-851 (1996)に記載)、かつHCo7ヒト重鎖導入遺伝子を有する(US5,770,429に記載)。
【0201】
HCo12マウスは、それらの内在性軽鎖(κ)遺伝子中にJKD破壊を有し(Chen et al., ENBO J. 12, 821-830 (1993)に記載)、それらの内在性重鎖遺伝子中にCMD破壊を有し(WO01/14424の実施例1に記載)、KCo5ヒトκ軽鎖導入遺伝子を有し(Fishwild et al., Nature Biotechnology 14, 845-851 (1996)に記載)、HCo12ヒト重鎖導入遺伝子を有する(WO01/14424の実施例2に記載)。
【0202】
KMマウス系統において、内在性マウスκ軽鎖遺伝子は、Chen et al., ENBO J. 12, 811-820 (1993)に記載されているようにホモ接合的に破壊され、内在性マウス重鎖遺伝子は、WO01/01987の実施例1に記載されているようにホモ接合的に破壊されている。このマウス系統は、Fishwild et al., Nature Biotechnology 14, 845-851 (1996)に記載されているように、ヒトκ軽鎖導入遺伝子KCo5を有する。このマウス系統はまた、WO02/43478に記載されているように、14番染色体フラグメントhCF(SC20)で構成されたヒト重鎖導入染色体を有する。
【0203】
これらの遺伝子導入マウスからの脾細胞を使用して、周知の技術にしたがって、ヒトモノクローナル抗体を分泌するハイブリドーマを生成することもできる。
【0204】
本発明のヒトモノクローナルもしくはポリクローナル抗体または他の種に由来する本発明の抗体はまた、対象の免疫グロブリン重鎖および軽鎖配列に関して導入遺伝子を有する別の非ヒト哺乳動物または植物の生成ならびにそれから回収可能な形態における抗体の産生によって、遺伝子導入的に生成することもできる。哺乳動物における遺伝子導入的産生に関して、抗体は、ヤギ、ウシまたは他の哺乳動物の乳中に産生し、それらから回収することもできる。例えばUS5,827,690、US5,756,687、US5,750,172およびUS5,741,957を参照されたい。
【0205】
さらに、本発明のヒト抗体または他の種からの本発明の抗体は、当技術分野において周知の技術を使用して、ファージディスプレイ、レトロウイルスディスプレイ、リボソームディスプレイ、および他の技術を非限定的に含むディスプレイタイプ技術によって生成し、同定することもでき、得られた分子を、当技術分野において周知であるようなさらなる成熟、例えばアフィニティー成熟に供することもできる(例えばHoogenboom et al., J. Mol. Biol. 227, 381 (1991)(ファージディスプレイ)、Vaughan et al., Nature Biotech 14, 309 (1996)(ファージディスプレイ)、Hanes and Plucthau, PNAS USA 94, 4937-4942 (1997)(リボソームディスプレイ)、Parmley and Smith, Gene 73, 305-318 (1988)(ファージディスプレイ)、Scott TIBS 17, 241-245 (1992)、Cwirla et al., PNAS USA 87, 6378-6382 (1990)、Russel et al., Nucl. Acids Research 21, 1081-1085 (1993)、Hoogenboom et al., Immunol. Reviews 130, 43-68 (1992)、Chiswell and McCafferty TIBTECH 10, 80-84 (1992)およびUS5,733,743を参照されたい)。ディスプレイ技術を利用して、ヒトではない抗体を産生する場合、そのような抗体をヒト化することもできる。
【0206】
二つ以上の抗CD38抗体によるCD38またはCD38の部分への結合についての競合を、任意の適当な技術によって決定することもできる。本発明の文脈において競合とは、特定の分子が、特定の結合相手に結合する別の分子の存在下において、その特定の結合相手に結合する性質の検出可能に有意な低下をいう。一般に、競合とは、十分な量の二つ以上の競合する抗CD38抗体と、CD38分子とを使用して、例えばELISA分析またはFACS分析(実施例部分に記載)によって測定される、ある抗CD38抗体と、
(a)CD38の形態(例えば「プロセッシングされた」、「成熟した」、「プロセッシングされていない」または「未成熟の」CD38)、
(b)遊離CD38の形態(例えば、インビボプロセッシングによって産生されるCD38フラグメント)、
(c)CD38と会合した別のペプチド、例えばCD38と会合したCD31で構成されたヘテロ二量体ペプチド、
(d)CD38と一つまたは複数の基質、例えばcAMP、NAD+および/またはcADPRとの複合体、
(e)可溶性リガンド、例えばCD31と二量体化、会合および/またはプロセッシングされたCD38の二量体、または
(f)CD38の部分
との間の結合の、別の抗CD38抗体の存在によって生じる、少なくとも約10%の低下、例えば少なくとも約15%、または少なくとも約20%の低下をいう。また、例えばCD38の特定の領域の抗体結合性がそのフラグメントにおいて保持される状況、例えば、様々な試験されるフラグメント中に位置する十分に提示された線形エピトープまたは十分に大きなCD38フラグメントおよびCD38において提示される立体配座エピトープの場合には、CD38の二つ以上の形態および/またはCD38の部分に関して抗CD38抗体同士の間に競合が存在するということが当てはまる場合もある。
【0207】
競合の評価は一般に、第一の量の第一の分子、第二の量の第二の分子、および第三の量の第三の分子(または、実際の同時発生データの代用として、第一および第二の分子に関する新たな結合データと妥当に比較することができる、結合実験によって決定される標準)を使用する相対阻害結合の評価を含み、その場合、第一、第二および第三の量はすべて、存在する他の分子に対する問題の分子の選択性および/または特異性に関する情報を与える比較を実施するのに十分である。第一、第二および第三の量は、抗CD38抗体およびそのための問題の潜在的標的の性質とともに異なってもよい。例えば、ELISA評価の場合、実施例部分に記載するものと同様に、競合が存在するかどうかを評価するためには約5~50μg(例えば約10~50μg、約20~50μg、約5~20μg、約10~20μgなど)の抗CD38抗体および/またはCD38標的が必要である。また、条件が結合に適しているべきである。典型的に、抗CD38抗体:CD38結合には、生理学的または近生理学的条件(例えば約20~40℃の温度、約7~8のpHなど)が適している。多くの場合、競合は、ELISAおよび/またはFACS分析によって測定された場合、約5%を有意に超える相対阻害によって顕著に示される。より高い相対阻害しきい値を、特定の状況における適当な競合レベルであるところの基準/決定因子として設定することが望ましい場合もある(例えば、CD38に結合する別のペプチドまたは分子(例えば、CD38の天然の結合相手、例えばCD31抗原とも呼ばれるCD31、EndoCAM、GPIIA'、PECAM-1、血小板/内皮細胞接着分子または天然の抗CD38抗体)の結合を阻止する所期の機能を有するように設計された新たな抗体を選択またはスクリーニングするために競合分析を使用する場合)。したがって、例えば、抗体が十分に競合的であると見なす前に、少なくとも約10%の相対阻害が検出される、少なくとも約15%の相対阻害が検出される、または少なくとも約20%の相対阻害が検出されるといった競合性の基準を設定することが可能である。競合する抗体に属するエピトープが抗原中に密接して位置する場合、競合は、約40%よりも高いCD38結合の相対阻害(例えば、少なくとも約45%阻害、例えば少なくとも約50%阻害、例えば少なくとも約55%阻害、例えば少なくとも約60%阻害、例えば少なくとも約65%阻害、例えば少なくとも約70%阻害、例えば少なくとも約75%阻害、例えば少なくとも約80%阻害、例えば少なくとも約85%阻害、例えば少なくとも約90%阻害、例えば少なくとも約95%阻害またはより高いレベルの相対阻害)によって顕著に示される場合もある。
【0208】
競合は、分子と二つの潜在的結合相手との間の交差反応性の逆数と見なすこともできる。特定の態様において、本発明の抗CD38抗体は、CD38中の一つまたは複数の残基または領域に特異的に結合するが、他のペプチド、ペプチド領域または分子とは交差反応しない。例えば、本発明は、CD38への相同性を有するタンパク質、例えばBST-1(骨髄間質細胞抗原1)およびCD157とも呼ばれるMo5とは交差反応しない抗CD38抗体、または正常な組織、例えば多発性骨髄腫に関連しない組織に関してはCD38と交差反応しない抗CD38抗体を提供する。典型的に、交差反応性の欠如とは、適当なアッセイ条件下で、十分な量の分子を使用するELISAおよび/またはFACS分析によって評価した場合、分子間の約5%未満の相対競合阻害をいう。
【0209】
一つの態様において、本発明は、CD38またはその部分への結合に関して、SEQ ID NO:27のVL配列およびSEQ ID NO:2のVH配列を有する抗体、例えば抗体028と競合する、抗CD38抗体を提供する。
【0210】
一つの態様において、本発明は、CD38またはその部分への結合に関して、SEQ ID NO:32のVL配列およびSEQ ID NO:7のVH配列を有する抗体、例えば抗体025と競合する、抗CD38抗体を提供する。
【0211】
一つの態様において、本発明は、CD38またはその部分への結合に関して、SEQ ID NO:37のVL配列およびSEQ ID NO:12のVH配列を有する抗体、例えば抗体026と競合する、抗CD38抗体を提供する。
【0212】
一つの態様において、本発明は、CD38またはその部分への結合に関して、SEQ ID NO:42のVL配列およびSEQ ID NO:17のVH配列を有する抗体、例えば抗体049と競合する、抗CD38抗体を提供する。
【0213】
一つの態様において、本発明は、CD38またはその部分への結合に関して、SEQ ID NO:47のVL配列およびSEQ ID NO:22のVH配列を有する抗体、例えば抗体056と競合する、抗CD38抗体を提供する。
【0214】
本明細書の他の部分で詳述するように、別段の記述がない限り、または文脈と明らかに矛盾しない限り、CD38への抗CD38抗体の結合とは、適当な状況、例えばCD38の構造が存在する立体配座状況または線形エピトープ状況における結合をいうものと解釈される。当然、そのような状況の限られたサブセットにおける結合が、本発明によって提供される任意の抗CD38抗体に関して重要な特徴である場合もある。
【0215】
競合的阻害によって抗CD38抗体特異性を測定するためのさらなる方法は、例えばHarlow et al., Antibodies: A Laboratory Manual, Cold Spring Harbor Laboratory Press, Cold Spring Harbor, N. Y., (1988)、Colligan et al., eds., Current Protocols in Immunology, Greene Publishing Assoc. and Wiley InterScience N. Y., (1992, 1993)およびMuller, Meth. Enzymol. 92, 589-601 (1983)に見出され得る。
【0216】
ヒトCD38は、以下を含むこともできる多数の異なるエピトープを含む:(1)ヒトCD38内のペプチド単鎖内に含まれるペプチド抗原決定基、(2)特定の鎖上の一つまたは複数の非隣接アミノ酸および/または空間的に隣接するが離れているペプチド鎖上に存在するアミノ酸からなる、立体配座抗原決定基(典型的に、鎖のそれぞれのアミノ酸配列は、ヒトCD38ポリペプチド配列に沿ってばらばらに位置している)、(3)ヒトCD38に共有結合した分子構造から完全にまたは部分的になる翻訳後抗原決定基、例えば炭水化物基、あるいは(4)(1)~(3)の組み合わせ。
【0217】
本発明に関連するエピトープは、免疫グロブリンに特異的に結合することができる任意のペプチドまたはペプチド誘導体決定基を含む。エピトープは、任意の適当な位置(CD38の線形配列に対する)、配向(フォールディングされたCD38またはそのフラグメントに対する)、アミノ酸組成(および、ひいては、少なくとも部分的に電荷)にある、任意の適当な数のアミノ酸を含むこともできる。したがって、例えば、エピトープは、CD38の一次配列に対して一つまたは複数の隣接または非隣接位置にある、約3~10のアミノ酸、一般的には3~8のアミノ酸で構成されてもよい(例えば、エピトープは、CD38の中の一つ、二つ、三つ、四つまたは五つの非隣接位置に分布した二つ、三つ、四つ、五つ、六つ、七つまたは八つのアミノ酸残基から本質的になっていてもよい)。または、例えば、エピトープは、CD38の中の約5~40の隣接するアミノ酸残基(例えば、約7~30アミノの酸残基、約5~20のアミノ酸残基または約3~15アミノの酸残基)の領域によって画定されると見なすこともできる(単独で、または隣接するCD38ドメインの部分と合わさって)。いくつかのエピトープにおいては、一つのアミノ酸残基またはわずかいくつかのアミノ酸残基がCDRまたはCDR認識にとってきわめて重要である(そして、それにより、抗CD38抗体:CD38抗原親和性および結合活性にとって非常に重要である)場合がある。そのようなものとして、他の残基はエピトープに対してより少ない寄与しか成し得ないという認識をもって、そのようなきわめて重要な残基の一つまたは複数に基づいてエピトープを特徴づけることもできる。アミノ酸の領域によって画定されるエピトープの場合、領域中の一つまたは複数のアミノ酸が抗体結合に対して小さな寄与または無視しうる程度の寄与しかせず、それに特異的な少なくともいくつかの抗CD38抗体に対するエピトープの「損失」をもたらすことなく、残基が適当な異なる残基による置換を受けうる場合もある。
【0218】
ある態様において、本発明は、抗CD38抗体、例えば、SEQ ID NO:27のVL配列およびSEQ ID NO:2のVH配列を有する抗体(例えば抗体028)またはSEQ ID NO:32のVL配列およびSEQ ID NO:7のVH配列を有する抗体(例えば抗体025)またはSEQ ID NO:37のVL配列およびSEQ ID NO:12のVH配列を有する抗体(例えば抗体026)またはSEQ ID NO:42のVL配列およびSEQ ID NO:17のVH配列を有する抗体(例えば抗体049)またはSEQ ID NO:47のVL配列およびSEQ ID NO:22のVH配列を有する抗体(例えば抗体056)によって特異的に拘束されるCD38エピトープに特異的に結合する抗CD38抗体を提供する。
【0219】
SEQ ID NO:27のVL配列およびSEQ ID NO:2のVH配列を有する抗体のCDRまたはSEQ ID NO:32のVL配列およびSEQ ID NO:7のVH配列を有する抗体のCDRまたはSEQ ID NO:37のVL配列およびSEQ ID NO:12のVH配列を有する抗体のCDRまたはSEQ ID NO:42のVL配列およびSEQ ID NO:17のVH配列を有する抗体のCDRまたはSEQ ID NO:47のVL配列およびSEQ ID NO:22のVH配列を有する抗体のCDRとは異なる一つまたは複数のCDRを有する抗CD38抗体がさらに、それぞれSEQ ID NO:27のVL配列およびSEQ ID NO:2のVH配列を有する抗体のCDRまたはSEQ ID NO:32のVL配列およびSEQ ID NO:7のVH配列を有する抗体のCDRまたはSEQ ID NO:37のVL配列およびSEQ ID NO:12のVH配列を有する抗体のCDRまたはSEQ ID NO:42のVL配列およびSEQ ID NO:17のVH配列を有する抗体のCDRまたはSEQ ID NO:47のVL配列およびSEQ ID NO:22のVH配列を有する抗体のCDRを有する抗体と同じエピトープに特異的であるということが可能である。そのような場合において、問題の抗CD38抗体は、それぞれSEQ ID NO:27のVL配列およびSEQ ID NO:2のVH配列を有する抗体のCDRまたはSEQ ID NO:32のVL配列およびSEQ ID NO:7のVH配列を有する抗体のCDRまたはSEQ ID NO:37のVL配列およびSEQ ID NO:12のVH配列を有する抗体のCDRまたはSEQ ID NO:42のVL配列およびSEQ ID NO:17のVH配列を有する抗体のCDRまたはSEQ ID NO:47のVL配列およびSEQ ID NO:22のVH配列を有する抗体のCDRを有する抗体よりも、エピトープの特定の構造または領域を認識するか、または、それらに対して特異的/選択的であることもできる。
【0220】
SEQ ID NO:27のVL配列およびSEQ ID NO:2のVH配列を有する抗体(例えば抗体028)またはSEQ ID NO:32のVL配列およびSEQ ID NO:7のVH配列を有する抗体(例えば抗体025)またはSEQ ID NO:37のVL配列およびSEQ ID NO:12のVH配列を有する抗体(例えば抗体026)またはSEQ ID NO:42のVL配列およびSEQ ID NO:17のVH配列を有する抗体(例えば抗体049)またはSEQ ID NO:47のVL配列およびSEQ ID NO:22のVH配列を有する抗体(例えば抗体056)によって拘束されるCD38エピトープは、標準的なマッピングおよび特徴づけ技術によって同定することもでき、そのさらなる精密化分子構造を、数多くの例が当業者に利用可能である任意の適当な技術によって識別することもできる。
【0221】
これらの技術はまた、一般的に抗CD38抗体に対するエピトープを同定および/または特徴づけするために使用することもできる。そのようなマッピング/特徴づけ法の一例として、CD38タンパク質中の露出したアミン/カルボキシルの化学修飾を使用するエピトープ「フットプリンティング」により、抗CD38抗体に対するエピトープを決定することもできる。そのようなフットプリンティング技術の一つの具体例が、HXMS(質量分析法によって検出される水素-重水素交換)の使用であり、この方法において受容体およびリガンドのタンパク質アミドプロトンの水素/重水素交換、結合、および逆交換が生じ、ここでタンパク質結合に関与する主鎖アミド基は、逆交換から保護され、したがって重水素化されたままとどまる。この点において、ペプシンタンパク質分解、高速マイクロボア高速液体クロマトグラフィー分離、および/またはエレクトロスプレーイオン化質量分析法によって関連領域を識別することもできる。例えばEhring H, Analytical Biochemistry, 267(2) 252-259 (1999)および/またはEngen, J.R. and Smith, D.L. (2001) Anal. Chem. 73, 256A-265Aを参照されたい。適当なエピトープ同定技術の別の例が、典型的に遊離抗原および抗原結合ペプチド、例えば抗体と複合体化した抗原の二次元NMRスペクトル中のシグナルの位置を比較する、核磁気共鳴(NMR)エピトープマッピングである。抗原は典型的に、NMRスペクトル中に、抗原に対応するシグナルのみが見られ、抗原結合ペプチドからのシグナルは見られないよう、選択的に15Nで同位体的に標識される。典型的に、抗原結合ペプチドとの相互作用に関与するアミノ酸から生じる抗原シグナルが、遊離抗原のスペクトルに比べて複合体のスペクトルにおける位置を移動させ、結合に関与するアミノ酸がそのように同定すされ得る。例えばErnst Schering Res Found Workshop. (44), 149-67 (2004)、Huang et al., Journal of Molecular Biology 281(1), 61-67 (1998)およびSaito and Patterson, Methods. 9(3), 516-24 (1996)を参照されたい。
【0222】
エピトープマッピング/特徴づけはまた、質量分析法を使用して実施することもできる。例えばDownward, J Mass Spectrom. 35(4), 493-503 (2000)およびKiselar and Downard, Anal Chem. 71(9), 1792-801 (1999)を参照されたい。
【0223】
プロテアーゼ消化技術もまた、エピトープマッピングおよび同定に関連して役立つ場合がある。例えば、トリプシンをCD38に対して約1:50の比で37℃およびpH7~8で終夜(O/N)使用するプロテアーゼ消化ののち、ペプチド同定のための質量分析法(MS)分析によって抗原決定基関連の領域/配列を決定することもできる。その後、トリプシン消化に供されたサンプルと、CD38BPとともにインキュベートされた後に例えばトリプシンによる消化(それによって結合剤のためのフットプリントを明らかにする)に供されたサンプルとの比較により、CD38BPによってトリプシン切断から保護されたペプチドを同定することもできる。追加的または代替的に、キモトリプシン、ペプシンなどのような他の酵素を同様なエピトープ特徴づけ法において使用することもできる。
【0224】
これらの計測において、SEQ ID NO:27のVL配列およびSEQ ID NO:2のVH配列を有する抗体(例えば抗体028)またはSEQ ID NO:32のVL配列およびSEQ ID NO:7のVH配列を有する抗体(例えば抗体025)またはSEQ ID NO:37のVL配列およびSEQ ID NO:12のVH配列を有する抗体(例えば抗体026)またはSEQ ID NO:42のVL配列およびSEQ ID NO:17のVH配列を有する抗体(例えば抗体049)またはSEQ ID NO:47のVL配列およびSEQ ID NO:22のVH配列を有する抗体(例えば抗体056)と有意に同じ結果を出す抗CD38抗体が、それぞれ、SEQ ID NO:27のVL配列およびSEQ ID NO:2のVH配列を有する抗体(例えば抗体028)またはSEQ ID NO:32のVL配列およびSEQ ID NO:7のVH配列を有する抗体(例えば抗体025)またはSEQ ID NO:37のVL配列およびSEQ ID NO:12のVH配列を有する抗体(例えば抗体026)またはSEQ ID NO:42のVL配列およびSEQ ID NO:17のVH配列を有する抗体(例えば抗体049)またはSEQ ID NO:47のVL配列およびSEQ ID NO:22のVH配列を有する抗体(例えば抗体056)と同じエピトープに結合する抗体であると見なされる。同様な技術の詳細な説明に関しては、例えばManca, Ann Ist Super Sanita. 27(1), 15-9 (1991)を参照されたい。
【0225】
一方がビオチン化される二つの抗体によるCD38への競合的結合によるエピトープマッピングが、関連する抗原決定基領域を識別するための別の方法である。PEPSCANベースの酵素結合イムノアッセイによるCD38の線形およびループ状ペプチドへの抗体の結合が、関連する抗原決定基領域を識別するための別の方法である。例えばSlootstra-JW et al., Mol-Divers. 1, 87-96 (1996)を参照されたい。
【0226】
部位特異的突然変異誘発が、関連する抗原決定基領域を識別するための別の方法である。例えばPolyak and Deans, Blood 99, 3956-3962 (2002)を参照されたい。また、様々なファージディスプレイ技術を使用してエピトープを同定することもできる。例えばWang and Yu, Curr Drug Targets. 5(1), 1-15 (2004)、Burton, Immnotechnology. 1(2), 87-94 (1995 Aug)、Cortese et al., Immunotechnology. 1(2), 87-94 (1995)およびIrving et al., Curr Opin Chem Biol. 5(3), 314-24 (2001)を参照されたい。また、改良されたファージディスプレイ関連技術によってコンセンサスエピトープを同定することもできる(詳細な説明に関しては、http://www.cs.montana.edu/~mumey/papers/jcb03.pdfを参照されたい)。
【0227】
エピトープのマッピングに潜在的に役立つ他の方法は、結晶学的技術、X線回折技術(例えば、1970~1980年代にPoljakらによって開発されたX線回折/配列研究技術)およびマルチピンペプチド合成技術の応用を含む。また、配列解析ならびに三次元構造解析およびドッキングのようなコンピュータベースの方法を使用して抗原決定基を識別することもできる。例えば、エピトープはまた、個々のモノクローナル抗体のFabフラグメントの構造のドッキングとともにCD38の構造を使用する分子モデリングによって決定することもできる。これらのおよび他のマッピング法は、Epitope Mapping A Practical Approach (Westwood and Hay Eds.) 2001 Oxford University Pressに詳述されている。
【0228】
一つの態様において、本発明は、SEQ ID NO:27のVL配列およびSEQ ID NO:2のVH配列を有する抗体(例えば抗体028)またはSEQ ID NO:32のVL配列およびSEQ ID NO:7のVH配列を有する抗体(例えば抗体025)またはSEQ ID NO:37のVL配列およびSEQ ID NO:12のVH配列を有する抗体(例えば抗体026)またはSEQ ID NO:42のVL配列およびSEQ ID NO:17のVH配列を有する抗体(例えば抗体049)またはSEQ ID NO:47のVL配列およびSEQ ID NO:22のVH配列を有する抗体(例えば抗体056)から選択される一つまたは複数のmAbの実質的に同じ特異的CD38結合特性を有する抗CD38抗体を提供する。
【0229】
マッピング実験により、ヒトCD38に対して産生されたいくつかのモノクローナル抗体がCD38のC末端領域(220~296)のエピトープに結合することが示された(Hoshino et al.およびFerrero et al.)。この領域内で、ヒトCD38配列とカニクイザルCD38配列の間に三つのアミノ酸差異が見いだされた:ヒトのT237、Q272、およびS274は、カニクイザルのA238、R273、およびF275に対応する。限られた数のアミノ酸差異が、ヒトCD38配列とサルCD38配列との間に、例えばタンパク質へのカルボキシ末端部に存在する。例えば、以下の三つのアミノ酸差異がヒトCD38配列とカニクイザルCD38配列との間に存在する:ヒトCD38のT237、Q272、およびS274は、カニクイザルCD38のA238、R273、およびF275に対応する(SEQ ID NO:21とSEQ ID NO:22とを比較すること)。
【0230】
本発明の抗体は、202位のアスパラギン酸がグリシンで置換されているヒトCD38突然変異体には、ヒトCD38に結合するのと同じ程度には結合しない。本発明は、ヒトCD38に結合し、274位のセリン残基がフェニルアラニン残基で置換されている突然変異ヒトCD38に結合する抗体を提供する。本発明の抗体はまた、272位のグルタミンがアルギニンで置換されているヒトCD38突然変異体にも結合する。本発明の抗体はまた、237位のトレオニンがアラニンで置換されているヒトCD38突然変異体にも結合する。
【0231】
用語「同じ程度には結合しない」とは、突然変異ヒトCD38への抗体の結合が野生型ヒトCD38への抗体の結合よりも有意に低いという意味に解釈されるべきである。用語「同じ程度に結合する」とは、突然変異ヒトCD38への抗体の結合が野生型ヒトCD38への抗体の結合と実質的に同じ程度であるという意味に解釈されるべきである。CD38分子(野生型および突然変異体)へのペプチドの結合は、いくつかの方法で決定することもでき、突然変異への結合が野生型への結合よりも「有意に低い」かどうかを決定することは当業者の一般的知識の範囲内である。あるペプチドの別のペプチドへの結合を決定するための数多くの様々な技術、例えばELISA、ラジオイムノアッセイ、BIAcore、またはフローサイトメトリーが当業者に利用可能である。
【0232】
結合を決定する一つの方法は、突然変異タンパク質および野生型タンパク質への抗体の結合のEC50を決定したのち、得られた値を比較することによる方法である。結合を決定する別の方法は、飽和濃度における結合の大きさ(例えば、結合シグナルのプラトー)を試験することによる方法、または反応速度定数KonおよびKoffを例えばBIAcoreによって決定することによる方法である。
【0233】
一つ態様において、CD38タンパク質(突然変異または野生型)への問題の抗体の結合は、実施例4に記載するようなELISAの使用によるものである。
【0234】
さらなる態様において、本発明の抗体は、
SEQ ID NO:5、10、15、20および25からなる群より選択されるアミノ酸配列、または
好ましくは保存的アミノ酸置換を有するのみである、該配列のいずれかの変異体
を含むヒト重鎖可変領域(VH)CDR3配列を含む。
【0235】
一つの態様において、該変異体は、SEQ ID NO:5、10、15、20および25のいずれか一つの配列と少なくとも約50%、例えば少なくとも60%、例えば少なくとも約70%、例えば少なくとも約75%、例えば少なくとも約80%、例えば少なくとも約85%、例えば少なくとも約90%、例えば少なくとも約95%のアミノ酸配列同一性を有する配列から本質的になる。
【0236】
さらなる態様において、該変異体は、該配列に比較して、多くて一つ、二つまたは三つのアミノ酸修飾、例えばアミノ酸置換、好ましくは保存的置換を有する。
【0237】
好ましい態様において、該抗体は、SEQ ID NO:5、10、15、20および25からなる群より選択されるアミノ酸配列を含むヒト重鎖可変領域CDR3配列を含む。
【0238】
なおさらなる態様において、本発明の抗体は、以下を含む:
SEQ ID NO:3、4および5のCDR1、2および3配列を含むVH領域、または
SEQ ID NO:8、9および10のCDR1、2および3配列を含むVH領域、または
SEQ ID NO:13、14および15のCDR1、2および3配列を含むVH領域、または
SEQ ID NO:18、19および20のCDR1、2および3配列を含むVH領域、または
SEQ ID NO:23、24および25のCDR1、2および3配列を含むVH領域、または
好ましくは保存的アミノ酸置換を有するのみである、前記のいずれかのVH領域の変異体。
【0239】
一つの態様において、該変異体は、SEQ ID NO:3、8、13、18または23のいずれか一つの配列と少なくとも約50%、例えば少なくとも60%、例えば少なくとも約70%、例えば少なくとも約75%、例えば少なくとも約80%、例えば少なくとも約85%、例えば少なくとも約90%、例えば少なくとも約95%のアミノ酸配列同一性を有する配列から本質的になるVH CDR1を含む。
【0240】
一つの態様において、該変異体は、SEQ ID NO:4、9、14、19または24のいずれか一つの配列と少なくとも約50%、例えば少なくとも60%、例えば少なくとも約70%、例えば少なくとも約75%、例えば少なくとも約80%、例えば少なくとも約85%、例えば少なくとも約90%、例えば少なくとも約95%のアミノ酸配列同一性を有する配列から本質的になるVH CDR2を含む。
【0241】
一つの態様において、該変異体は、SEQ ID NO:5、10、15、20または25のいずれか一つの配列と少なくとも約50%、例えば少なくとも60%、例えば少なくとも約70%、例えば少なくとも約75%、例えば少なくとも約80%、例えば少なくとも約85%、例えば少なくとも約90%、例えば少なくとも約95%のアミノ酸配列同一性を有する配列から本質的になるVH CDR3を含む。
【0242】
別の態様において、該抗体は、
a)SEQ ID NO:30に記載される配列を有するVL CDR3領域およびSEQ ID NO:5からなる群より選択される配列を有するVH CDR3領域、
b)SEQ ID NO:35に記載される配列を有するVL CDR3領域およびSEQ ID NO:10に記載される配列を有するVH CDR3領域、
c)SEQ ID NO:40に記載される配列を有するVL CDR3領域およびSEQ ID NO:15に記載される配列を有するVH CDR3領域、
d)SEQ ID NO:45に記載される配列を有するVL CDR3領域およびSEQ ID NO:20に記載される配列を有するVH CDR3領域、
e)SEQ ID NO:50に記載される配列を有するVL CDR3領域およびSEQ ID NO:25に記載される配列を有するVH CDR3領域、
f)好ましくは該配列中に保存的置換を有するのみである、前記のいずれかの変異体
を含む。
【0243】
一つの態様において、該変異体は、SEQ ID NO:5、10、15、20または25のいずれか一つの配列と少なくとも約50%、例えば少なくとも60%、例えば少なくとも約70%、例えば少なくとも約75%、例えば少なくとも約80%、例えば少なくとも約85%、例えば少なくとも約90%、例えば少なくとも約95%のアミノ酸配列同一性を有する配列から本質的になるVH CDR3を含む。一つの態様において、該変異体は、SEQ ID NO:30、35、40、45または50のいずれか一つの配列と少なくとも約50%、例えば少なくとも60%、例えば少なくとも約70%、例えば少なくとも約75%、例えば少なくとも約80%、例えば少なくとも約85%、例えば少なくとも約90%、例えば少なくとも約95%のアミノ酸配列同一性を有する配列から本質的になるVL CDR3を含む。
【0244】
さらなる態様において、本発明の抗体は、以下を含む:
SEQ ID NO:3、4および5のCDR1、2および3配列を含むVH領域ならびにSEQ ID NO:30のCDR3配列を含むVL領域、または
SEQ ID NO:8、9および10のCDR1、2および3配列を含むVH領域ならびにSEQ ID NO:35のCDR3配列を含むVL領域、または
SEQ ID NO:13、14および15のCDR1、2および3配列を含むVH領域ならびにSEQ ID NO:40のCDR3配列を含むVL領域、または
SEQ ID NO:18、19および20のCDR1、2および3配列を含むVH領域ならびにSEQ ID NO:45のCDR3配列を含むVL領域、または
SEQ ID NO:23、24および25のCDR1、2および3配列を含むVH領域ならびにSEQ ID NO:50のCDR3配列を含むVL領域、または
好ましくは該配列中に保存的アミノ酸置換を有するのみである、前記のいずれかの抗体の変異体。
【0245】
一つの態様において、該変異体は、SEQ ID NO:3、8、13、18または23のいずれか一つの配列と少なくとも約50%、例えば少なくとも60%、例えば少なくとも約70%、例えば少なくとも約75%、例えば少なくとも約80%、例えば少なくとも約85%、例えば少なくとも約90%、例えば少なくとも約95%のアミノ酸配列同一性を有する配列から本質的になるVH CDR1を含む。
【0246】
一つの態様において、該変異体は、SEQ ID NO:4、9、14、19または24のいずれか一つの配列と少なくとも約50%、例えば少なくとも60%、例えば少なくとも約70%、例えば少なくとも約75%、例えば少なくとも約80%、例えば少なくとも約85%、例えば少なくとも約90%、例えば少なくとも約95%のアミノ酸配列同一性を有する配列から本質的になるVH CDR2を含む。
【0247】
一つの態様において、該変異体は、SEQ ID NO:5、10、15、20または25のいずれか一つの配列と少なくとも約50%、例えば少なくとも60%、例えば少なくとも約70%、例えば少なくとも約75%、例えば少なくとも約80%、例えば少なくとも約85%、例えば少なくとも約90%、例えば少なくとも約95%のアミノ酸配列同一性を有する配列から本質的になるVH CDR3を含む。
【0248】
一つの態様において、該変異体は、SEQ ID NO:28、33、38、43または48のいずれか一つの配列と少なくとも約50%、例えば少なくとも60%、例えば少なくとも約70%、例えば少なくとも約75%、例えば少なくとも約80%、例えば少なくとも約85%、例えば少なくとも約90%、例えば少なくとも約95%のアミノ酸配列同一性を有する配列から本質的になるVL CDR1を含む。
【0249】
一つの態様において、該変異体は、SEQ ID NO:29、34、39、44または49のいずれか一つの配列と少なくとも約50%、例えば少なくとも60%、例えば少なくとも約70%、例えば少なくとも約75%、例えば少なくとも約80%、例えば少なくとも約85%、例えば少なくとも約90%、例えば少なくとも約95%のアミノ酸配列同一性を有する配列から本質的になるVL CDR2を含む。
【0250】
一つの態様において、該変異体は、SEQ ID NO:30、35、40、45または50のいずれか一つの配列と少なくとも約50%、例えば少なくとも60%、例えば少なくとも約70%、例えば少なくとも約75%、例えば少なくとも約80%、例えば少なくとも約85%、例えば少なくとも約90%、例えば少なくとも約95%のアミノ酸配列同一性を有する配列から本質的になるVL CDR3を含む。
【0251】
さらなる態様において、本発明の抗体は、以下を含む:
SEQ ID NO:3、4および5のCDR1、2および3配列を含むVH領域ならびにSEQ ID NO:28、29および30のCDR1、2および3配列を含むVL領域、または
SEQ ID NO:8、9および10のCDR1、2および3配列を含むVH領域ならびにSEQ ID NO:33、34および35のCDR1、2および3配列を含むVL領域、または
SEQ ID NO:13、14および15のCDR1、2および3配列を含むVH領域ならびにSEQ ID NO:38、39および40のCDR1、2および3配列を含むVL領域、または
SEQ ID NO:18、19および20のCDR1、2および3配列を含むVH領域ならびにSEQ ID NO:43、44および45のCDR1、2および3配列を含むVL領域、または
SEQ ID NO:23、24および25のCDR1、2および3配列を含むVH領域ならびにSEQ ID NO:48、49および50のCDR1、2および3配列を含むVL領域、または
好ましくは該配列中に保存的アミノ酸修飾を有するのみである、前記のいずれかの抗体の変異体。
【0252】
一つの態様において、該変異体は、SEQ ID NO:3、8、13、18または23のいずれか一つの配列と少なくとも約50%、例えば少なくとも60%、例えば少なくとも約70%、例えば少なくとも約75%、例えば少なくとも約80%、例えば少なくとも約85%、例えば少なくとも約90%、例えば少なくとも約95%のアミノ酸配列同一性を有する配列から本質的になるVH CDR1を含む。
【0253】
一つの態様において、該変異体は、SEQ ID NO:4、9、14、19または24のいずれか一つの配列と少なくとも約50%、例えば少なくとも60%、例えば少なくとも約70%、例えば少なくとも約75%、例えば少なくとも約80%、例えば少なくとも約85%、例えば少なくとも約90%、例えば少なくとも約95%のアミノ酸配列同一性を有する配列から本質的になるVH CDR2を含む。
【0254】
一つの態様において、該変異体は、SEQ ID NO:5、10、15、20または25のいずれか一つの配列と少なくとも約50%、例えば少なくとも60%、例えば少なくとも約70%、例えば少なくとも約75%、例えば少なくとも約80%、例えば少なくとも約85%、例えば少なくとも約90%、例えば少なくとも約95%のアミノ酸配列同一性を有する配列から本質的になるVH CDR3を含む。
【0255】
一つの態様において、該変異体は、SEQ ID NO:28、33、38、43または48のいずれか一つの配列と少なくとも約50%、例えば少なくとも60%、例えば少なくとも約70%、例えば少なくとも約75%、例えば少なくとも約80%、例えば少なくとも約85%、例えば少なくとも約90%、例えば少なくとも約95%のアミノ酸配列同一性を有する配列から本質的になるVL CDR1を含む。
【0256】
一つの態様において、該変異体は、SEQ ID NO:29、34、39、44または49のいずれか一つの配列と少なくとも約50%、例えば少なくとも60%、例えば少なくとも約70%、例えば少なくとも約75%、例えば少なくとも約80%、例えば少なくとも約85%、例えば少なくとも約90%、例えば少なくとも約95%のアミノ酸配列同一性を有する配列から本質的になるVL CDR2を含む。
【0257】
一つの態様において、該変異体は、SEQ ID NO:30、35、40、45または50のいずれか一つの配列と少なくとも約50%、例えば少なくとも60%、例えば少なくとも約70%、例えば少なくとも約75%、例えば少なくとも約80%、例えば少なくとも約85%、例えば少なくとも約90%、例えば少なくとも約95%のアミノ酸配列同一性を有する配列から本質的になるVL CDR3を含む。
【0258】
なおさらなる態様において、本発明の抗体は、以下を含む:
SEQ ID NO:2の配列を含むVH領域およびSEQ ID NO:27の配列を含むVL領域、または
SEQ ID NO:7の配列を含むVH領域およびSEQ ID NO:32の配列を含むVL領域、または
SEQ ID NO:12の配列を含むVH領域およびSEQ ID NO:37の配列を含むVL領域、または
SEQ ID NO:17の配列を含むVH領域およびSEQ ID NO:42の配列を含むVL領域、または
SEQ ID NO:22の配列を含むVH領域およびSEQ ID NO:47の配列を含むVL領域、または
好ましくは保存的修飾を有するのみである、前記のいずれかの変異体。
【0259】
一つの態様において、該変異体は、SEQ ID NO:2、7、12、17または22のいずれか一つの配列と少なくとも約50%、例えば少なくとも60%、例えば少なくとも約70%、例えば少なくとも約75%、例えば少なくとも約80%、例えば少なくとも約85%、例えば少なくとも約90%、例えば少なくとも約95%のアミノ酸配列同一性を有する配列から本質的になるVH領域を含む。
【0260】
一つの態様において、該変異体は、SEQ ID NO:27、32、37、42または47のいずれか一つの配列と少なくとも約50%、例えば少なくとも60%、例えば少なくとも約70%、例えば少なくとも約75%、例えば少なくとも約80%、例えば少なくとも約85%、例えば少なくとも約90%、例えば少なくとも約95%のアミノ酸配列同一性を有する配列から本質的になるVL領域を含む。
【0261】
さらなる態様において、本発明の抗体は、SEQ ID NO:2、7、12、17または22からなる群より選択されるVH領域配列と少なくとも80%の同一性、例えば90%または95%または97%または98%または99%の同一性を有するVHを含む。
【0262】
さらなる態様において、本発明の抗体は、SEQ ID NO:27、32、37、42または47からなる群より選択されるVL領域配列と少なくとも80%の同一性、例えば90%または95%または97%または98%または99%の同一性を有するVLを含む。
【0263】
なおさらなる態様において、本発明の抗体は、SEQ ID NO:2、7、12、17または22からなる群より選択されるVH領域を含む。
【0264】
なおさらなる態様において、本発明の抗体は、SEQ ID NO:27、32、37、42または47からなる群より選択されるVL領域を含む。
【0265】
なおさらなる態様において、本発明の抗体は、以下を含む:
SEQ ID NO:2の配列を含むVH領域およびSEQ ID NO:27の配列を含むVL領域、または
SEQ ID NO:7の配列を含むVH領域およびSEQ ID NO:32の配列を含むVL領域、または
SEQ ID NO:12の配列を含むVH領域およびSEQ ID NO:37の配列を含むVL領域、または
SEQ ID NO:17の配列を含むVH領域およびSEQ ID NO:42の配列を含むVL領域、または
SEQ ID NO:22の配列を含むVH領域およびSEQ ID NO:47の配列を含むVL領域。
【0266】
本発明はまた、一つの局面において、
SEQ ID NO:2の配列を含むVH領域およびSEQ ID NO:27の配列を含むVL領域、または
SEQ ID NO:7の配列を含むVH領域およびSEQ ID NO:32の配列を含むVL領域、または
SEQ ID NO:12の配列を含むVH領域およびSEQ ID NO:37の配列を含むVL領域、または
SEQ ID NO:17の配列を含むVH領域およびSEQ ID NO:42の配列を含むVL領域、または
SEQ ID NO:22の配列を含むVH領域およびSEQ ID NO:47の配列を含むVL領域
を有する抗体と競合する能力に関して特徴づけられる抗CD38抗体を提供する。
【0267】
本発明はまた、
SEQ ID NO:2の配列を含むVH領域およびSEQ ID NO:27の配列を含むVL領域、または
SEQ ID NO:7の配列を含むVH領域およびSEQ ID NO:32の配列を含むVL領域、または
SEQ ID NO:12の配列を含むVH領域およびSEQ ID NO:37の配列を含むVL領域、または
SEQ ID NO:17の配列を含むVH領域およびSEQ ID NO:42の配列を含むVL領域、または
SEQ ID NO:22の配列を含むVH領域およびSEQ ID NO:47の配列を含むVL領域
を有する抗体と同じエピトープに結合する抗CD38抗体に関する。
【0268】
本発明の抗体は任意のアイソタイプであってもよい。アイソタイプの選択は典型的に、ADCC誘発のような所望のエフェクタ機能によって指示される。例示的なアイソタイプはIgG1、IgG2、IgG3およびIgG4である。ヒト軽鎖定常領域κまたはλのいずれを使用してもよい。必要に応じて、本発明の抗CD38抗体のクラスを公知の方法によってスイッチしてもよい。例えば、もともとはIgMであった本発明の抗体を本発明のIgG抗体にクラススイッチしてもよい。さらに、クラススイッチ技術を使用して、一つのIgGサブクラスを別のIgGサブクラスに、例えばIgG1をIgG2に転換することもできる。したがって、様々な治療用途のために、本発明の抗体のエフェクタ機能を、アイソタイプスイッチにより、例えばIgG1、IgG2、IgG3、IgG4、IgD、IgA、IgE、またはIgM抗体に変更することもできる。一つの態様において、本発明の抗体はIgG1抗体、例えばIgG1κである。
【0269】
一つの態様において、本発明の抗体は完全長抗体である。別の態様において、本発明の抗体は抗体フラグメントまたは単鎖抗体である。
【0270】
抗体フラグメントは、例えば、従来の技術を使用するフラグメント化によって得ることもでき、そのフラグメントを、完全な抗体に関して本明細書に記載する同じやり方で、用途に関してスクリーニングすることもできる。例えば、抗体をペプシンで処理することによってF(ab')2フラグメントを生成することもできる。得られたF(ab')2フラグメントを処理してジスルフィド架橋を還元して、Fab'フラグメントを産生することもできる。IgG抗体をパパインで処理することによってFabフラグメントを得ることもでき、IgG抗体のペプシン消化によってFab'フラグメントを得ることもできる。また、下に記載するFab'をチオエーテル結合またはジスルフィド結合によって結合させることによってF(ab')フラグメントを産生することもできる。Fab'フラグメントは、F(ab')2のヒンジ領域のジスルフィド結合を切断することによって得られる抗体フラグメントである。Fab'フラグメントは、F(ab')2フラグメントをジチオトレイトールのような還元剤で処理することによって得ることもできる。また、抗体フラグメントは、組換え細胞中のそのようなフラグメントをコードする核酸の発現によって生成することもできる(例えばEvans et al., J. Immunol. Meth. 184, 123-38 (1995)を参照されたい)。例えば、F(ab')2フラグメントの部分をコードするキメラ遺伝子は、H鎖のCH1ドメインおよびヒンジ領域をコードするDNA配列に続いて、そのようなトランケートされた抗体フラグメント分子を生じさせる翻訳終止コドンを含むこともできる。
【0271】
一つの態様において、抗CD38抗体は、一価抗体、好ましくはWO2007059782(Genmab)(参照により本明細書に組み入れられる)に記載されている一価抗体である。したがって、一つの態様において、抗体は一価抗体であり、該抗CD38抗体は、
i)該一価抗体の軽鎖をコードする核酸コンストラクトを提供する段階であって、該コンストラクトが、選択された抗原特異的抗CD38抗体のVL領域をコードするヌクレオチド配列およびIgの定常CL領域をコードするヌクレオチド配列を含み、選択された抗原特異的抗体のVL領域をコードする該ヌクレオチド配列およびIgのCL領域をコードする該ヌクレオチド配列が機能的に連結され、IgG1サブタイプの場合、CL領域をコードするヌクレオチド配列が、そのCL領域が、ポリクローナルヒトIgGの存在下または動物もしくはヒトに投与されたとき、CL領域の同一のアミノ酸配列を含む他のペプチドとジスルフィド結合または共有結合を形成することができるいかなるアミノ酸も含まないように修飾されている、段階、
ii)該一価抗体の重鎖をコードする核酸コンストラクトを提供する段階であって、該コンストラクトが、選択された抗原特異的抗体のVH領域をコードするヌクレオチド配列およびヒトIgの定常CH領域をコードするヌクレオチド配列を含み、CH領域をコードするヌクレオチド配列が、ヒンジ領域に対応する領域と、Igサブタイプによって求められる場合、CH領域の他の領域、例えばCH3領域とが、ポリクローナルヒトIgGの存在下または動物もしくはヒトに投与されたとき、ヒトIgのCH領域の同一のアミノ酸配列を含む他のペプチドとジスルフィド結合または共有結合的もしくは安定な非共有結合的重鎖間結合の形成に関与するいかなるアミノ酸残基も含まないように修飾されており、選択された抗原特異的抗体のVH領域をコードする該ヌクレオチド配列および該IgのCH領域をコードする該ヌクレオチド配列が機能的に連結されている、段階、
iii)該一価抗体を産生するための細胞発現系を提供する段階、
iv)(iii)の細胞発現系の細胞中に(i)および(ii)の核酸コンストラクトを同時発現させることによって該一価抗体を産生する段階
を含む方法によって構築される。
【0272】
同様に、一つの態様において、抗CD38抗体は、
(i)本明細書に記載する本発明の抗体の可変領域または該領域の抗原結合部分、および
(ii)免疫グロブリンのCH領域またはCH2およびCH3領域を含むそのフラグメントであって、ヒンジ領域に対応する領域と、免疫グロブリンがIgG4サブタイプではないならば、CH領域の他の領域、例えばCH3領域とが、ポリクローナルヒトIgGの存在下、同一のCH領域とのジスルフィド結合または同一のCH領域との他の共有結合的もしくは安定な非共有結合的重鎖間結合を形成することができるいかなるアミノ酸残基も含まないように修飾されている、CH領域またはそのフラグメント
を含む一価抗体である。
【0273】
さらなる態様において、一価抗CD38抗体の重鎖は、ヒンジ全体が欠失するように修飾されている。
【0274】
さらなる態様において、該一価抗体はIgG4サブタイプであるが、CH3領域は、以下のアミノ酸置換の一つまたは複数が加えられるように修飾されている:366位のThr(T)がAla(A)によって置換されている、368位のLeu(L)がAla(A)によって置換されている、368位のLeu(L)がVal(V)によって置換されている、405位のPhe(F)がAla(A)によって置換されている、405位のPhe(F)がLeu(L)によって置換されている、407位のTyr(Y)がAla(A)によって置換されている、409位のArg(R)がAla(A)によって置換されている。
【0275】
別のさらなる態様において、該一価抗体の配列は、N結合グリコシル化のための任意の受容部位を含まないように修飾されている。
【0276】
また、本発明の抗CD38抗体は単鎖抗体を含む。単鎖抗体とは、重鎖および軽鎖のFv領域が接続されているペプチドである。一つの態様において、本発明は、本発明の抗CD38抗体のFv中の重鎖および軽鎖がフレキシブルなペプチドリンカー(一般に約10、12、15またはより多くのアミノ酸残基の)によって一つのペプチド鎖に連結されている単鎖Fv(scFv)を提供する。そのような抗体を産生する方法は、例えばUS4,946,778、Pluckthun in The Pharmacology of Monoclonal Antibodies, vol. 113, Rosenburg and Moore eds. Springer-Verlag, New York, pp. 269-315 (1994)、Bird et al., Science 242, 423-426 (1988)、Huston et al., PNAS USA 85, 5879-5883 (1988)およびMcCafferty et al., Nature 348, 552-554 (1990)に記載されている。単鎖抗体は、一つのVHおよびVLだけが使用されるならば一価であってもよく、二つのVHおよびVLが使用されるならば二価であってもよく、三つ以上のVHおよびVLが使用されるならば多価であってもよい。
【0277】
一つの態様において、本発明の抗CD38抗体はエフェクタ機能欠損抗体である。そのような抗体は、CD38の阻害効果の遮断による免疫系の刺激および減衰に使用される場合に特に有用である。そのような用途の場合、望ましくない細胞傷害性を招く場合があるため、抗体が、ADCCのようなエフェクタ機能を有しないことが有利である場合もある。
【0278】
一つの態様において、エフェクタ機能欠損抗CD38抗体は、安定化IgG4抗体である。適当な安定化IgG4抗体の例は、KabatらのEUインデックスに示される、ヒトIgG4の重鎖定常領域中の409位のアルギニンがリジン、トレオニン、メチオニン、またはロイシン、好ましくはリジンで置換されている抗体である(WO2006033386(Kirin)に記載)。好ましくは該抗体は、前記409位に対応する位置にLysまたはAla残基を含む、または抗体のCH3領域がヒトIgG1、ヒトIgG2、またはヒトIgG3のCH3領域によって置換されている。
【0279】
さらなる態様において、安定化IgG4抗CD38抗体は、重鎖および軽鎖を含むIgG4抗体であり、該重鎖は、409位に対応する位置にLys、Ala、Thr、Met、およびLeuからなる群より選択される残基および/または405位に対応する位置にAla、Val、Gly、IleおよびLeuからなる群より選択される残基を有するヒトIgG4定常領域を含み、該抗体は、場合によっては、一つまたは複数のさらなる置換、欠失、および/または挿入を含むが、ヒンジ領域中にCys-Pro-Pro-Cys配列を含まない。好ましくは、該抗体は、409位に対応する位置にLysまたはAla残基を含む、または抗体のCH3領域がヒトIgG1、ヒトIgG2、またはヒトIgG3のCH3領域によって置換されている。
【0280】
なおさらなる態様において、安定化IgG4抗CD38抗体は、重鎖および軽鎖を含むIgG4抗体であり、該重鎖は、409位に対応する位置にLys、Ala、Thr、Met、およびLeuからなる群より選択される残基および/または405位に対応する位置にAla、Val、Gly、Ile、およびLeuからなる群より選択される残基を有するヒトIgG4定常領域を含み、該抗体は、場合によっては、一つまたは複数のさらなる置換、欠失、および/または挿入を含み、ヒンジ領域中にCys-Pro-Pro-Cys配列を含む。好ましくは、該抗体は、409位に対応する位置にLysまたはAla残基を含む、または抗体のCH3領域がヒトIgG1、ヒトIgG2またはヒトIgG3のCH3領域によって置換されている。
【0281】
さらなる態様において、エフェクタ機能欠損抗CD38抗体は、ADCCのようなエフェクタ機能を媒介する能力が低下するかまたは失われるように突然変異した非IgG4タイプ、例えばIgG1、IgG2、またはIgG3の抗体である。そのような突然変異の例は、Dall'Acqua WF et al., J Immunol. 177(2):1129-1138 (2006)およびHezareh M, J Virol.;75(24):12161-12168 (2001)に記載されている。
【0282】
コンジュゲート
さらなる態様において、本発明の抗体は、別の部分、例えば細胞傷害性部分、放射性同位体、または薬物にコンジュゲートされている。
【0283】
そのような抗体は、抗CD38抗体またはそのフラグメント(例えば、抗CD38抗体H鎖、L鎖、またはその抗CD38特異的/選択的フラグメント)のN末端側またはC末端側に、他の部分を化学的にコンジュゲートすることによって産生することもできる(例えばAntibody Engineering Handbook, edited by Osamu Kanemitsu, published by Chijin Shokan (1994)を参照されたい)。そのようなコンジュゲートされた抗体誘導体はまた、適宜、内部残基または糖におけるコンジュゲートによって生成することもできる。
【0284】
本明細書に記載する抗CD38抗体はまた、任意の適した数の修飾アミノ酸を含めることによって修飾してもよい。これに関して適しているとは典型的に、誘導体化されていない親抗CD38抗体と関連するCD38選択性および/または特異性を少なくとも実質的に保持する能力によって決まる。一つまたは複数の修飾アミノ酸の包含は、例えば、ポリペプチド血清半減期を増す、ポリペプチド抗原性を低下させる、またはポリペプチド貯蔵安定性を高めるのに有利である場合がある。アミノ酸は、組換え産生中、例えば、翻訳と同時もしくは翻訳後に修飾される(例えば、哺乳動物細胞内での発現過程におけるN-X-S/TモチーフにおけるN結合グリコシル化)か、または合成手段によって修飾される。修飾アミノ酸の非限定的な例は、グリコシル化アミノ酸、硫酸化アミノ酸、プレニル化(例えばファルネシル化、ゲラニルゲラニル化)アミノ酸、アセチル化アミノ酸、アシル化アミノ酸、PEG化アミノ酸、ビオチン化アミノ酸、カルボキシル化アミノ酸、リン酸化アミノ酸などを含む。アミノ酸修飾の当業者の手引きとして、適切な参考文献が豊富にある。例示的なプロトコルが、Walker (1998) Protein Protocols On Cd-Rom, Humana Press, Towata, NJに見られる。
【0285】
抗CD38抗体はまた、例えばそれらの循環半減期を増すために、ポリマーへの共有結合的コンジュゲートによって化学的に修飾してもよい。例示的なポリマーおよびそれらをペプチドに結合させる方法が、例えばUS4,766,106、US4,179,337、US4,495,285およびUS4,609,546に示されている。
【0286】
一つの態様において、本発明は、放射性核種、酵素、酵素基質、補因子、蛍光マーカー、化学発光マーカー、ペプチドタグ、または磁性粒子から選択される第二の分子にコンジュゲートされている抗CD38抗体を提供する。一つの態様において、抗CD38抗体は、一つまたは複数の抗体フラグメント、核酸(オリゴヌクレオチド)、ヌクレアーゼ、ホルモン、免疫調節剤、キレート剤、ホウ素化合物、光活性剤、色素などにコンジュゲートしてもよい。これらおよび他の適当な薬剤は、本発明の抗CD38抗体と直接結合してもよく、または間接的に結合してもよい。第二の薬剤の間接的結合の一例が、スペーサ部分による結合である。
【0287】
一つの態様においては、一つまたは複数の放射能標識されたアミノ酸を含む抗CD38抗体が提供される。放射能標識された抗CD38抗体は、診断目的に使用してもよく、または治療目的に使用してもよい(放射能標識された分子へのコンジュゲートが別の考えられる特徴である)。ポリペプチドのための標識の非限定的な例は、3H、14C、15N、35S、90Y、99Tcおよび125I、131Iおよび186Reを含むが、これらに限定されない。放射能標識されたアミノ酸および関連のペプチド誘導体を調製する方法は当技術分野において公知である(例えばJunghans et al., in Cancer Chemotherapy and Biotherapy 655-686 (2d edition, Chafner and Longo, eds., Lippincott Raven (1996))ならびにUS4,681,581、US4,735,210、US5,101,827、US5,102,990(USRE35,500)、US5,648,471およびUS5,697,902を参照されたい)。
【0288】
一つの態様において、本発明の抗CD38抗体は、放射性同位体または放射性同位体含有キレートにコンジュゲートされる。例えば抗CD38抗体を、抗CD38抗体が放射性同位体と錯体化することを可能にするキレート剤リンカー、例えばDOTA、DTPA、またはチウキセタンにコンジュゲートしてもよい。抗CD38抗体は、追加的または代替的に、一つまたは複数の放射能標識されたアミノ酸または他の放射能標識された分子を含むか、またはそれらにコンジュゲートされてもよい。放射能標識された抗CD38抗体は、診断目的に使用してもよく、または治療目的に使用してもよい。放射性同位体の非限定的な例は、3H、14C、15N、35S、90Y、99Tc、125I、111In、131I、186Re、213Bs、225Acおよび227Thを含む。
【0289】
一つの態様において、本発明の抗CD38抗体は、アウリスタチンまたはアウリスタチンペプチド類似物および誘導体にコンジュゲートされている(US5635483、US5780588)。アウリスタチンは、微小管の動き、GTP加水分解、ならびに核分裂および細胞分裂を妨げ(Woyke et al (2001) Antimicrob. Agents and Chemother. 45(12):3580-3584)、抗がん性を有し(US5663149)、抗真菌性を有する(Pettit et al., (1998) Antimicrob. Agents and Chemother. 42:2961-2965)ことが示されている。アウリスタチン薬物部分は、リンカーにより、ペプチド薬物部分のN(アミノ)末端またはC(末端)を介して抗体に結合させることもできる。
【0290】
例示的なアウリスタチン態様は、2004年3月28日に提示されたSenter et al., Proceedings of the American Association for Cancer Research. Volume 45, abstract number 623に開示され、US2005/0238648に記載されているN末端結合モノメチルアウリスタチン薬物部分DEおよびDFを含む。
【0291】
例示的なアウリスタチン態様はMMAE(モノメチルアウリスタチンE)であり、式中、波線は、抗体薬物コンジュゲートのリンカー(L)への共有結合を示す。
【0292】
別の例示的なアウリスタチン態様はMMAF(モノメチルアウリスタチンF)であり、式中、波線は、抗体薬物コンジュゲートのリンカー(L)への共有結合を示す(US2005/0238649)。
【0293】
本発明の抗CD38抗体薬物コンジュゲートは、細胞増殖抑制薬単位と抗体単位との間にリンカー単位を含む。いくつかの態様において、リンカーは、細胞内条件下で、リンカーの切断が薬物単位を抗体から細胞内環境中に放出するように切断可能である。さらに別の態様において、リンカー単位は切断不可能であり、薬物は例えば抗体分解によって放出される。いくつかの態様において、リンカーは、細胞内環境中(例えば、リソソームまたはエンドソームまたはカベオラ内)に存在する切断剤によって切断可能である。リンカーは、例えば、リソソームまたはエンドソームプロテアーゼをはじめとする細胞内ペプチダーゼまたはプロテアーゼ酵素によって切断されるペプチジルリンカーであることができる。いくつかの態様において、ペプチジルリンカーは、少なくとも二つのアミノ酸または少なくとも三つのアミノ酸の長さである。切断剤は、カテプシンBおよびDならびにプラスミンを含むことができ、これらはすべて、ジペプチド薬物誘導体を加水分解して、標的細胞内で活性薬物の放出を生じさせることが知られている(例えばDubowchik and Walker, 1999, Pharm. Therapeutics 83:67-123を参照されたい)。特定の態様において、細胞内プロテアーゼによって切断可能なペプチジルリンカーはVal-Cit(バリン-シトルリン)リンカーまたはPhe-Lys(フェニルアラニン-リジン)リンカーである(例えば、Val-Citリンカーによるドキソルビシンの合成を記載するUS6,214,345を参照されたい)。治療剤の細胞内タンパク分解放出を使用する一つの利点は、コンジュゲートされるとその薬剤が一般に弱毒化され、コンジュゲートの血清安定性が一般に高いということである。
【0294】
さらに別の態様において、リンカー単位は切断不可能であり、薬物は抗体分解によって放出される(US2005/0238649を参照されたい)。一般に、そのようなリンカーは細胞外環境に対して実質的に感受性ではない。本明細書においてリンカーに関して使用される「細胞外環境に対して実質的に感受性ではない」とは、抗体薬物コンジュゲート化合物が細胞外環境(例えば血漿)中に存在するとき、抗体薬物コンジュゲート化合物のサンプル中のリンカーの20%以下、一般には約15%以下、より一般的には約10%以下、さらに一般的には約5%以下、約3%以下または約1%以下しか切断されないことを意味する。リンカーが細胞外環境に対して実質的に感受性ではないかどうかは、例えば、抗体薬物コンジュゲート化合物を血漿とともに所定の期間(例えば2、4、8、16または24時間)インキュベートしたのち、血漿中に存在する遊離薬物の量を定量化することによって決定することができる。
【0295】
MMAEまたはMMAFおよび様々なリンカー成分を含むさらなる例示的態様は以下の構造を有する(式中、Abは抗体を指し、薬物負荷(または1分子あたり細胞増殖抑制薬物の平均数)を表すpは1~約8である)。
【0296】
切断可能なリンカーがアウリスタチンと合わされる例はvcMMAFおよびvcMMAEを含む(vcはVal-Cit(バリン-シトルリン)系リンカーの略号である)。
【0297】
他の例は、切断不可能なリンカーと合わされたアウリスタチン、例えばmcMMAFを含む(mcはマレイミドカプロイルの略号である)。
【0298】
細胞増殖抑制薬物負荷はpによって表され、分子中の1抗体あたり細胞増殖抑制薬物部分の平均数である(薬物/抗体比DARとも呼ばれる)。細胞増殖抑制薬物負荷は、1抗体あたり薬物部分1~20の範囲であることもでき、リジンまたはシステインにおけるように、アミノまたはスルフヒドリル基をはじめとする有用な官能基を有するアミノ酸上で生じることもできる。
【0299】
コンジュゲートの方法に依存して、pは、例えば本発明におけるように結合がシステインチオールである場合、抗体上の結合部位の数によって制限される場合がある。一般に、抗体中の大部分のシステインチオール残基はジスルフィド架橋として存在するため、抗体は、薬物部分に結合することもできる多くの遊離反応性システインチオール基を含まない。したがって、特定の態様において、抗体は、部分的または完全に還元性の条件下で、ジチオトレイトール(DTT)またはトリカルボニルエチルホスフィン(TCEP)のような還元剤で還元されて、反応性システインチオール基を生成することもできる。特定の態様において、抗体の(部分的)還元後、最大八つの遊離システインチオール基が利用可能になるため(鎖間ジスルフィド結合に関与する八つのシステインがある)、本発明のADCの薬物負荷は1~約8の範囲である。
【0300】
一つの態様において、薬物リンカー部分はvcMMAEである。vcMMAE薬物リンカー部分およびコンジュゲート法はWO2004010957、US7659241、US7829531、US7851437およびUS11/833,028(Seattle Genetics, Inc.)(参照により本明細書に組み入れられる)に開示され、vcMMAE薬物リンカー部分は、本明細書に開示される方法と同様な方法を使用して、システインにおいて抗CD38抗体に結合される。
【0301】
一つの態様において、薬物リンカー部分はmcMMAFである。mcMMAF薬物リンカー部分およびコンジュゲート法はUS7498298、US11/833,954およびWO2005081711(Seattle Genetics, Inc.)(参照により本明細書に組み入れられる)に開示され、mcMMAF薬物リンカー部分は、本明細書に開示される方法と同様な方法を使用して、システインにおいて抗CD38抗体に結合される。
【0302】
抗CD38抗体薬物コンジュゲートを精製したならば、周知の薬学的担体または賦形剤を使用して、それらを薬学的組成物に製剤化することもできる。
【0303】
一つの態様において、抗CD38抗体は機能性核酸分子にコンジュゲートされている。機能性核酸は、アンチセンス分子、干渉性核酸分子(例えばsiRNA分子)、アプタマー、リボザイム、三重鎖形成分子および外部ガイド配列を含む。外部ガイド配列(EGS)は、標的核酸分子に結合して、その標的分子を切断するRNasePによって認識される複合体を形成する分子である。機能性核酸分子は、標的分子によって所有される特定の活性の作動因子、阻害因子、調節因子、および刺激因子として作用する場合もあり、または他の分子から独立して新たな活性を所有する場合もある。アンチセンス分子の設計および使用を支援する方法および技術の代表例は、以下の非限定的な米国特許のリストに見ることもできる。US5,135,917、US5,294,533、US5,627,158、US5,641,754、US5,691,317、US5,780,607、US5,786,138、US5,849,903、US5,856,103、US5,919,772、US5,955,590、US5,990,088、US5,994,320、US5,998,602、US6,005,095、US6,007,995、US6,013,522、US6,017,898、US6,018,042、US6,025,198、US6,033,910、US6,040,296、US6,046,004、US6,046,319およびUS6,057,437。
【0304】
Hunter et al., Nature 144, 945 (1962)、David et al., Biochemistry 13, 1014 (1974)、Pain et al., J. Immunol. Meth. 40, 219 (1981)およびNygren, J. Histchem. and Cytochem. 30, 407 (1982)によって記載されている方法を含む、コンジュゲートされる分子、例えば上記分子に抗CD38抗体をコンジュゲートするための当技術分野において公知の方法を用いてもよい。結合/コンジュゲートは適当な方法で実施することもできる。例えば、共有結合はジスルフィド結合の形態をとることもできる(必要かつ適当ならば、余分なシステインコドンを含むように抗CD38抗体を操作することもできる)。修飾された抗CD38抗体のシステインと反応するスルフヒドリル基で誘導体化された毒素分子が、抗CD38抗体とともにイムノコンジュゲートを形成することもできる。または、固相ポリペプチド技術を使用して、スルフヒドリル基を直接、抗CD38抗体に導入してもよい。例えば、ペプチドへのスルフヒドリル基の導入は、Hiskey, Peptides 3, 137 (1981)に記載されている。タンパク質へのスルフヒドリル基の導入は、Maasen et al., Eur. J. Biochem. 134, 32 (1983)に記載されている。
【0305】
数多くのタイプの細胞傷害性化合物を、細胞傷害性化合物上の反応基の使用または架橋剤の使用により、タンパク質に結合することもできる。インビボでアミンとの安定な共有結合を形成する一般的な反応基はイソチオシアネートである(Means et al., Chemical modifications of proteins (Holden-Day, San Francisco 1971) pp. 105-110)。この基はリジンのε-アミン基と優先的に反応する。マレイミドが、システイン上のスルフヒドリル基と安定なインビボ共有結合を形成するために一般に使用される反応基である(Ji., Methods Enzymol 91, 580-609 (1983))。モノクローナル抗体は一般に、放射性金属イオンと共有結合を形成することはできないが、抗体に共有結合しているキレート化剤の使用を通じて間接的に抗体に結合させることはできる。キレート化剤は、アミノ酸残基のアミン(Meares et al., Anal. Biochem. 142, 68-78 (1984))およびスルフヒドラル基(Koyama, Chem. Abstr. 120, 217262t (1994))ならびに炭水化物基(Rodwell et al., PNAS USA 83, 2632-2636 (1986)、Quadri et al., Nucl. Med. Biol. 20, 559-570 (1993))を介して結合させることもできる。追加的または代替的に、ジスルフィド結合形成を介して、治療剤または診断剤を、還元された抗体成分のヒンジ領域に結合させることもできる。
【0306】
一つの態様において、本発明は、治療性部分、例えば細胞毒素、化学療法薬、免疫抑制剤または放射性同位体にコンジュゲートされた抗CD38抗体、例えばヒト抗CD38抗体をを提供する。そのようなコンジュゲートは本明細書において「イムノコンジュゲート」と呼ばれる。一つまたは複数の細胞毒素を含むイムノコンジュゲートは「イムノトキシン」と呼ばれる。細胞毒素または細胞傷害性薬剤は、細胞に有害である(例えば細胞を死滅させる)任意の薬剤を含む。当技術分野において周知であるこれらのクラスの薬物およびそれらの作用機序の説明に関しては、Goodman et al., Goodman and Gilman's The Pharmacological Basis Of Therapeutics, 8th Ed., Macmillan Publishing Co., 1990を参照されたい。抗体イムノトキシンの調製に関するさらなる技術が、例えばVietta, Immunol. Today 14, 252 (1993)およびUS5,194,594に提供されている。
【0307】
本発明のイムノコンジュゲートを形成するのに適した治療剤は、タキソール、サイトカラシンB、グラミシジンD、エチジウムブロマイド、エメチン、マイトマイシン、エトポシド、テノポシド、ビンクリスチン、ビンブラスチン、コルヒチン、ドキソルビシン、ダウノルビシン、ジヒドロキシアントラシンジオン、ミトキサントロン、ミトラマイシン、アクチノマイシンD、1-デヒドロテストステロン、グルココルチコイド、プロカイン、テトラカイン、リドカイン、プロプラノロールおよびピューロマイシン、代謝拮抗剤(例えばメトトレキサート、6-メルカプトプリン、6-チオグアニン、シタラビン、フルダラビン、5-フルオロウラシル、デカルバジン、ヒドロキシウレア、アスパラギナーゼ、ゲムシタビン、クラドリビン)、アルキル化剤(例えばメクロレタミン、チオエパ、クロラムブシル、メルファラン、カルムスチン(BSNU)、ロムスチン(CCNU)、シクロホスファミド、ブスルファン、ジブロモマンニトール、ストレプトゾトシン、ダカルバジン(DTIC)、プロカルバジン、マイトマイシンC、シスプラチンおよび他の白金誘導体、例えばカルボプラチン)、抗生物質(例えばダクチノマイシン(以前はアクチノマイシン)、ブレオマイシン、ダウノルビシン(以前はダウノマイシン)、ドキソルビシン、イダルビシン、ミトラマイシン、マイトマイシン、ミトキサントロン、プリカマイシン、アントラマイシン(AMC))、ジフテリア毒素および関連分子(例えばジフテリアA鎖およびその活性フラグメントならびにハイブリッド分子)、リシン毒素(例えばリシンAまたは脱グリコシル化リシンA鎖毒素)、コレラ毒素、志賀様毒素(SLT-I、SLT-II、SLT-IIV)、LT毒素、C3毒素、志賀毒素、百日咳毒素、破傷風毒素、大豆ボーマン・バークプロテアーゼ阻害剤、緑膿菌外毒素、アロリン、サポリン、モデクシン、ゼラニン、アブリンA鎖、モデクシンA鎖、αサルシン、Aleurites fordiiタンパク質、ジアンチンタンパク質、Phytolacca americanaタンパク質(PAPI、PAPIIおよびPAP-S)、momordica charantia阻害剤、クルシン、クロチン、sapaonaria officinalis阻害剤、ゼロニン、マイトジェリン、レストリクトシン、フェノマイシン、エノマイシン毒素、カリケアマイシンおよびズオカルマイシンを含む。本明細書の他の部分に記載されているような、本発明の抗CD38抗体と組み合わせて投与することもできる治療剤もまた、本発明の抗CD38抗体へのコンジュゲートに有用な治療部分の候補である場合がある。
【0308】
上記のように、薬物部分は、古典的な化学的治療剤に限定されるものと解釈される必要はない。例えば、薬物部分は、所望の生物学的活性を所有するタンパク質またはポリペプチドであることもできる。一つの態様において、本発明の抗CD38抗体は、抗体が放射性同位体にコンジュゲートされることを可能にするキレート剤リンカー、例えばチウキセタンに結合される。
【0309】
二重特異性抗体
さらなる局面において、本発明は、本明細書において上述したような本発明の抗CD38抗体からの第一の抗原結合部位および異なる結合特異性、例えばヒトエフェクタ細胞、ヒトFc受容体、T細胞受容体、B細胞受容体またはCD38の非重複エピトープに対する結合特異性を有する第二の抗原結合部位を含む二重特異性分子、すなわち、例えば実施例3に記載するように試験された場合、第一および第二の抗原結合部位がCD38への結合に関して互いにクロスブロックしない二重特異性抗体に関する。
【0310】
本発明の例示的な二重特異性抗体分子は、(i)一つがCD38に対する特異性を有し、もう一つが第二の標的に対する特異性を有する、いっしょにコンジュゲートされている二つの抗体、(ii)CD38に特異的な一つの鎖またはアームおよび第二の分子に特異的な第二の鎖またはアームを有する単一抗体、(iii)CD38に対して特異性を有し、例えば余分なペプチドリンカーによって直列に結合された二つのscFvを介して第二の分子に対しても特異性を有する単鎖抗体、(iv)軽鎖および重鎖それぞれが短いペプチド結合を介して二つの可変ドメインを直列に含む二重可変ドメイン抗体(DVD-Ig)(Wu et al., Generation and Characterization of a Dual Variable Domain Immunoglobulin (DVD-Ig(商標)) Molecule, In: Antibody Engineering, Springer Berlin Heidelberg (2010))、(v)化学的に結合した二重特異性(Fab')2フラグメント、(vi)標的抗原それぞれに二つの結合部位を有する四価二重特異性抗体を生じさせる、二つの単鎖ダイアボディの融合体であるTandAb、(vii)多価分子を生じさせる、scFvとダイアボディとの組み合わせであるフレキシボディ、(viii)Fabに適用されると、異なるFabフラグメントに結合された二つの同一Fabフラグメントからなる三価二重特異性結合タンパク質を生成することができる、プロテインキナーゼAにおける「二量体化およびドッキングドメイン」に基づくいわゆる「ドック・アンド・ロック」分子、(ix)例えばヒトFc領域の両末端に融合した二つのscFvを含む、いわゆるスコルピオン分子、および(x)ダイアボディを含む。一つの態様において、本発明の二重特異性抗体は、本発明に記載するような制御されたFabアーム交換を経て得られるダイアボディ、クロスボディまたは二重特異性抗体である。
【0311】
二重特異性抗体を調製するのに有用なプラットフォームの例は、BiTE(Micromet)、DART(MacroGenics)、FcabおよびMab2(F-star)、Fc操作IgG1(Xencor)またはDuoBody(Fabアーム交換に基づく。Genmab、本出願)を含むが、これらに限定されない。
【0312】
二重特異性抗体の様々なクラスの例は、
・分子の一方の側が少なくとも一つの抗体のFab領域またはFab領域の一部を含み、分子の他方の側が少なくとも一つの他の抗体のFab領域またはFab領域の一部を含む非対称IgG様分子(このクラスにおいては、Fc領域の非対称性が存在し、分子の二つの部分の特異的結合のために使用され得る)、
・分子の二つの側それぞれが少なくとも二つの異なる抗体のFab領域またはFab領域の一部を含む対称IgG様分子、
・完全長IgG抗体が余分なFab領域またはFab領域の一部に融合しているIgG融合分子、
・単鎖Fv分子または安定化したダイアボディがFcγ領域またはその一部に融合しているFc融合分子、
・異なるFabフラグメントがいっしょに融合しているFab融合分子、
・異なる単鎖Fv分子または異なるダイアボディが互いまたは別のタンパク質もしくは担体分子に融合しているScFvおよびダイアボディベースの分子
を含むが、これらに限定されない。
【0313】
非対称IgG様分子の例は、Triomab/Quadroma(Trion Pharma/Fresenius Biotech)、Knobs-into-Holes(Genentech)、CrossMAbs(Roche)および静電マッチングされた(Amgen)、LUZ-Y(Genentech)、Strand Exchange Engineered Domain body(EMD Serono)、Biclonic(Merus)およびDuoBody(Genmab A/S)を含むが、これらに限定されない。
【0314】
対称IgG様分子の例は、Dual Targeting(DT)-Ig(GSK/Domantis)、Two-in-one Antibody(Genentech)、Cross-linked Mabs(Karmanos Cancer Center)、mAb2(F-Star)およびCovX-body(CovX/Pfizer)を含むが、これらに限定されない。
【0315】
IgG融合分子の例は、Dual Variable Domain(DVD)-Ig(Abbott)、IgG-like Bispecific(ImClone/Eli Lilly)、Ts2Ab(MedImmune/AZ)およびBsAb(Zymogenetics)、HERCULES(Biogen Idec)およびTvAb(Roche)を含むが、これらに限定されない。
【0316】
Fc融合分子の例は、ScFv/Fc Fusions(Academic Institution)、SCORPION(Emergent BioSolutions/Trubion, Zymogenetics/BMS)、Dual Affinity Retargeting Technology(Fc-DART)(MacroGenics)およびDual(ScFv)2-Fab(National Research Center for Antibody Medicine - China)を含むが、これらに限定されない。
【0317】
クラスV二重特異性抗体の例は、F(ab)2(Medarex/Amgen)、Dual-Action or Bis-Fab(Genentech)、Dock-and-Lock(DNL)(ImmunoMedics)、Bivalent Bispecific(Biotecnol)およびFab-Fv(UCB-Celltech)を含むが、これらに限定されない。
【0318】
ScFvおよびダイアボディベースの分子の例は、Bispecific T Cell Engager(BiTE)(Micromet9、Tandem Diabody(Tandab)(Affimed)、Dual Affinity Retargeting Technology(DART)(MacroGenics)、Single-chain Diabody(Academic)、TCR-like Antibodies(AIT, ReceptorLogics)、Human Serum Albumin ScFv Fusion(Merrimack)およびCOMBODY(Epigen Biotech)を含むが、これらに限定されない。
【0319】
さらなる局面において、本発明は、本明細書において上述した本発明の抗CD38抗体および第二の結合特異性、例えばヒトサイトカインに対する結合特異性を含む二重特異性分子に関する。一つの態様において、該サイトカインは抗炎症性サイトカイン、例えばIL-1ra、IL-4、IL-6、IL-10、IL-11、IL-13、IL-16、IFN-αおよびTGF-βである。別の態様において、該サイトカインは炎症誘発性サイトカイン、例えばIL-1α、IL-1βおよびIL-6である。ある態様において、結合特異性は、ヒトエフェクタ細胞、ヒトFc受容体またはT細胞受容体に対する結合特異性である。一つの態様において、該T細胞受容体はCD3である。別の態様において、該ヒトFc受容体はヒトFcγRI(CD64)、ヒトFcγRII(CD32)、FcγRIII(CD16)またはヒトFcα受容体(CD89)である。本発明の二重特異性分子はさらに、抗CD38結合特異性およびヒトエフェクタ細胞、ヒトFc受容体またはT細胞受容体に対する結合特異性に加えて、第三の結合特異性を含むこともできる。
【0320】
本発明の例示的な二重特異性抗体分子は、(i)一つがCD38に対する特異性を有し、もう一つが第二の標的に対する特異性を有する、いっしょにコンジュゲートされている二つの抗体、(ii)CD38に特異的な一つの鎖および第二の分子に特異的な第二の鎖を有する単一抗体、および(iii)CD38および第二の分子に対して特異性を有する単鎖抗体を含む。一つの態様において、第二の分子は、癌抗原/腫瘍関連抗原、例えばCD20、癌胎児性抗原(CEA)、前立腺特異性抗原(PSA)、RAGE(腎抗原)、αフェトタンパク質、CAMEL(メラノーマにおけるCTL認識抗原)、CT抗原(例えばMAGE-B5、-B6、-C2、-C3およびD、Mage-12、CT10、NY-ESO-1、SSX-2、GAGE、BAGE、MAGEおよびSAGE)、ムチン抗原(例えばMUC1、ムチンCA125など)、ガングリオシド抗原、チロシナーゼ、gp75、C-myc、Mart1、MelanA、MUM-1、MUM-2、MUM-3、HLA-B7およびEp-CAMである。一つの態様において、第二の分子は癌関連インテグリン、例えばα5β3インテグリンである。一つの態様において、第二の分子は、血管形成因子または他の癌関連成長因子、例えば血管内皮成長因子(VEGF)、線維芽細胞成長因子(FGF)、上皮成長因子(EGF)、上皮成長因子受容体(EGFR)、アンジオジェニンおよびその受容体、特に癌進行と関連する受容体(例えばHER1~HER4受容体の一つ)である。また、本明細書において詳述される他の癌進行関連タンパク質が適当な第二の分子である場合もある。
【0321】
本発明の態様において、抗体は、202位にアスパラギン酸を含む、本明細書に記載されたCD38エピトープに特異的な一つの鎖および202位のアスパラギン酸を含まない、CD38特異的エピトープに特異的な第二の鎖を有する単一抗体(非競合性抗体)である。このような抗体は例えばWO2006099875において抗体003として記載されている。
【0322】
一つの態様において、本発明の二重特異性抗体はダイアボディである。
【0323】
2-MEA誘発Fabアーム交換による二重特異性抗体の生成
二重特異性抗体を産生するためのインビトロ法がWO2008119353(Genmab)に記載され、van der Neut-Kolfschotenらによって報告されている(Science. 2007 Sep 14;317(5844): 1554-7)。その中で、二重特異性抗体は、穏やかな還元性条件下でのインキュベートにより、二つの単一特異性IgG4またはIgG4様抗体の間の「Fabアーム」または「半分子」交換(重鎖と結合した軽鎖との交換)によって形成されている。このFabアーム交換反応は、単一特異的抗体のヒンジ領域中の重鎖間ジスルフィド結合が還元され、得られる遊離システインが、異なる特異性を有する別の抗体分子のシステイン残基と新たな重鎖間ジスルフィド結合を形成するジスルフィド結合異性化反応の結果である。得られる産物は、異なる配列の二つのFabアームを有する二重特異性抗体である。
【0324】
新規な発明においては、この自然なIgG4 Fabアーム交換の知識を応用して安定なIgG1ベースの二重特異性抗体を産生するための方法を作製する。以下に説明するこの方法によって生成された二重特異性抗体産物はもはやIgG4 Fabアーム交換には関与しない。この方法の基礎は、特定のアッセイ条件下でヘテロ二量体の形成を促進する相補的CH3ドメインの使用である。この方法による二重特異性抗体の産生を可能にするために、他の親IgG1抗体K409R突然変異中の親IgG1抗体T350I、K370TおよびF405L突然変異の一つにおいて、CH3ドメイン中に特定の突然変異を有するIgG1分子を生成した。
【0325】
二重特異性抗体を生成するために、これら二つの親抗体を、総量100μLのTE中、それぞれ0.5mg/mLの最終濃度(当モル濃度)で、25mM 2-メルカプトエチルアミンHCl(2-MEA)とともに37℃で90分間インキュベートした。製造者のプロトコルにしたがって、スピンカラム(Microcon遠心フィルタ、30k、Millipore)を使用して還元剤2-MEAを除去すると、還元反応は停止する。この方法により、以下の二重特異性抗体を生成することもできる。
抗CD38抗体が025、026、028、049または056であり、第二の結合部分が抗CD3抗体である二重特異性抗体。
抗CD38抗体が025、026、028、049または056であり、第二の結合部分が抗CD20抗体、例えばオファツムマブである二重特異性抗体。
抗CD38抗体が025、026、028、049または056であり、第二の結合部分が抗CD16抗体である二重特異性抗体。
抗CD38抗体が025、026、028、049または056であり、第二の結合部分が抗CD32抗体である二重特異性抗体。
抗CD38抗体が025、026、028、049または056であり、第二の結合部分が抗CD64抗体である二重特異性抗体。
【0326】
本発明の核酸、ベクター、宿主細胞、および抗体を産生する方法
さらなる局面において、本発明は、本発明の抗体(の一部)をコードする核酸およびそのような核酸を含む発現ベクターに関する。
【0327】
一つの態様において、本発明の発現ベクターは、SEQ ID NO:1およびSEQ ID NO:5からなる群より選択されるアミノ酸配列の一つまたは複数をコードするヌクレオチド配列を含む。
【0328】
さらなる態様において、本発現ベクターはさらに、抗体、例えばヒト抗体の軽鎖、重鎖、または軽鎖および重鎖両方の定常領域をコードするヌクレオチド配列を含む。
【0329】
そのような発現ベクターは、本発明の抗体の組換え産生のために使用することもできる。
【0330】
本発明に関する発現ベクターは、染色体ベクター、非染色体ベクターおよび合成核酸ベクター(適当なセットの発現制御要素を含む核酸配列)を含む任意の適当なベクターであることもできる。そのようなベクターの例は、SV40の誘導体、細菌プラスミド、ファージDNA、バキュロウイルス、酵母プラスミド、プラスミドとファージDNAとの組み合わせに由来するベクターおよびウイルス核酸(RNAまたはDNA)ベクターを含む。一つの態様において、抗CD38抗体をコードする核酸は、例えば、線形の発現要素(例えばSykes and Johnston, Nat Biotech 17, 355-59 (1997)に記載されているもの)、コンパクトな核酸ベクター(例えばUS6,077,835および/またはWO00/70087に記載されているもの)、pBR322、pUC19/18またはpUC118/119のようなプラスミドベクター、「ミッジ」最小サイズの核酸ベクター(例えばSchakowski et al., Mol Thr 3, 793-800 (2001)に記載されているもの)を含む、裸のDNAまたはRNAベクターに含まれる、または沈殿核酸ベクターコンストラクト、例えばCaPO4沈殿コンストラクト(例えばWO00/46147、Benvenisty and Reshef, PNAS USA 83, 9551-55 (1986)、Wigler et al., Cell 14, 725 (1978)およびCoraro and Pearson, Somatic Cell Genetics 7, 603 (1981)に記載されているもの)として含まれる。そのような核酸ベクターおよびその用途は当技術分野において周知である(例えばUS5,589,466およびUS5,973,972を参照されたい)。
【0331】
一つの態様において、ベクターは細菌細胞中の抗CD38抗体の発現に適している。別の態様において、発現ベクターは、酵母系中の発現に適したベクターであることもできる。もっとも一般的には、ベクターは、哺乳動物細胞、例えばCHO、HEKまたはPER.C6(登録商標)細胞(DSM and Crucell N.V., the Netherlandsによって開発されたヒト細胞株)中の本発明の抗体の発現に適したベクターである。別の適当なベクター系は、Lonza Biologicsによって開発されたグルタミンシンセターゼ(GS)ベクター系である(例えばEP216846、US5981216、WO8704462、EP323997、US5591639、US5658759、EP338841、US5879936およびUS5891693を参照されたい)。
【0332】
本発明の発現ベクターにおいて、抗CD38抗体をコードする核酸は、任意の適当なプロモータ、エンハンサおよび他の発現を容易にする要素を含んでもよく、またはそれらと関連していてもよい。そのような要素の例は、強力な発現プロモータ(例えばヒトCMV IEプロモータ/エンハンサならびにRSV、SV40、SL3-3、MMTVおよびHIV LTRプロモータ)、効果的なポリ(A)終結配列、大腸菌中のプラスミド産物の複製の起点、選択可能マーカーとしての抗生物質耐性遺伝子および/または好都合なクローニング部位(例えばポリリンカー)を含む。核酸はまた、CMV IEのような構成的プロモータとは逆に、誘導性プロモータを含むこともできる。
【0333】
一つの態様において、抗CD38抗体をコードする発現ベクターは、ウイルスベクターを介して、宿主細胞または宿主動物中に配置してもよく、および/またはそれに送達してもよい。
【0334】
なおさらなる局面において、本発明は、本明細書に記載する本発明の抗体を産生する、トランスフェクトーマのような組換え真核生物または原核生物宿主細胞に関する。宿主細胞の例は、酵母、細菌および哺乳動物細胞、例えばCHO、HEKまたはPER.C6(登録商標)細胞を含む。例えば、一つの態様において、本発明は、本発明の抗CD38抗体の発現のための配列コーディングを含む、細胞ゲノム中に安定に組み込まれた核酸を含む細胞を提供する。別の態様において、本発明は、本発明の抗CD38抗体の発現のための配列コーディングを含む非組み込み核酸、例えばプラスミド、コスミド、ファージミドまたは線形発現要素を含む細胞を提供する。
【0335】
さらなる局面において、本発明は、本明細書に記載する本発明の抗体を産生するハイブリドーマに関する。なおさらなる局面において、本発明は、ヒト重鎖およびヒト軽鎖をコードする核酸を含む遺伝子導入非ヒト動物に関し、動物または植物が本発明の抗体を産生する。そのようなハイブリドーマおよび遺伝子導入動物の生成は上述されている。
【0336】
さらなる局面において、本発明は、以下の段階を含む、本発明の抗CD38抗体を産生する方法に関する:
a)本明細書において上述された本発明のハイブリドーマまたは宿主細胞を培養する段階、および
b)培地から本発明の抗体を精製する段階。
【0337】
薬学的組成物
なおさらなる局面において、本発明は、
本明細書に記載される抗CD38抗体、および
薬学的に許容可能な担体
を含む薬学的組成物に関する。
【0338】
薬学的組成物は、Remington: The Science and Practice of Pharmacy, 19th Edition, Gennaro, Ed., Mack Publishing Co., Easton, PA, 1995に開示されているような従来の技術にしたがって、薬学的に許容可能な担体または希釈剤ならびに他の公知のアジュバントおよび賦形剤と製剤化することもできる。本発明の薬学的組成物はまた、希釈剤、増量剤、塩、緩衝剤、界面活性剤(例えば、Tween-20またはTween-80のような非イオン性界面活性剤)、安定化剤(例えば糖または無タンパク質アミノ酸)、防腐剤、組織固定剤、可溶化剤および/または薬学的組成物への包含に適した他の材料を含むこともできる。
【0339】
薬学的に許容可能な担体または希釈剤ならびに他の公知のアジュバントおよび賦形剤は、選択された本発明の化合物および選択された投与形態に適しているべきである。薬学的組成物の担体および他の成分の適性は、選択された本発明の化合物または薬学的組成物の所望の生物学的性質に対する有意なマイナスの効果の欠如(例えば、抗原結合に対する実質的未満の効果(相対阻害率10%以下、相対阻害率5%以下など))に基づいて決定される。
【0340】
本発明の薬学的組成物中の有効成分の実際の投与レベルは、患者に対して毒になることなく、特定の患者、組成物および投与形態に関して所望の治療応答を達成するのに効果的である有効成分の量が得られるように変更することもできる。選択される投与レベルは、使用される本発明の特定の組成物またはそのアミドの活性、投与経路、投与時間、使用される特定の化合物の排出速度、処置の持続期間、使用される特定の組成物と併用される他の薬物、化合物および/または物質、処置を受ける患者の年齢、性別、体重、病態、全体的健康状態および既往歴ならびに医療技術分野において周知の同様な要因を含む、多様な薬物動態学的因子に依存する。
【0341】
薬学的組成物は、任意の適当な経路および形態によって投与することもできる。本発明の化合物をインビボおよびインビトロで投与する適当な経路は当技術分野において周知であり、当業者が選択することもできる。
【0342】
一つの態様において、本発明の薬学的組成物は非経口的に投与される。
【0343】
本明細書において使用される語句「非経口投与」および「非経口的に投与される」は、通常は注射による、腸内投与および局所投与以外の投与形態を意味し、上皮、静脈内、筋肉内、動脈内、髄膜内、嚢内、眼窩内、心腔内、皮内、腹腔内、腱内、経気管、皮下、表皮下、関節内、嚢下、くも膜下、髄腔内、頭蓋内、胸腔内、硬膜外および胸骨内の注射および注入を含む。
【0344】
一つの態様において、本薬学的組成物は静脈内または皮下注射または注入によって投与される。
【0345】
一つの態様において、本発明の化合物は結晶形態で皮下注射によって投与される。Yang et al., PNAS USA, 100(12), 6934-6939 (2003) を参照されたい。
【0346】
薬学的に許容可能な担体は、本発明の化合物と生理学的に適合性であるすべての適当な溶媒、分散媒体、コーティング剤、抗菌剤および抗真菌剤、等張化剤、酸化防止剤ならびに吸収遅延剤などを含む。
【0347】
本発明の薬学的組成物において用いられる場合がある適当な水性および非水性の担体の例は、水、生理食塩水、リン酸緩衝生理食塩水、エタノール、デキストロース、ポリオール類(例えばグリセロール、プロピレングリコール、ポリエチレングリコールなど)およびそれらの適当な混合物、植物油、カルボキシメチルセルロース、コロイド溶液、トラガカントゴムならびに注射可能な有機エステル、例えばオレイン酸エチルおよび/または様々な緩衝剤を含む。他の担体は薬学の技術分野において周知である。
【0348】
本発明の薬学的組成物はまた、薬学的に許容可能な酸化防止剤、例えば(1)水溶性酸化防止剤、例えばアスコルビン酸、塩酸システイン、重硫酸ナトリウム、メタ重亜硫酸ナトリウム、重亜硫酸ナトリウムなど、(2)油溶性酸化防止剤、例えばパルミチン酸アスコルビル、ブチル化ヒドロキシアニソール(BHA)、ブチル化ヒドロキシトルエン(BHT)、レシチン、没食子酸プロピル、α-トコフェロールなど、および(3)金属キレート化剤、例えばクエン酸、エチレンジアミン四酢酸(EDTA)、ソルビトール、酒石酸、リン酸などを含むこともできる。
【0349】
本発明の薬学的組成物はまた、等張化剤、例えば糖、ポリアルコール類、例えばマンニトール、ソルビトール、グリセロールまたは塩化ナトリウムを含むこともできる。
【0350】
本発明の薬学的組成物はまた、薬学的組成物の貯蔵寿命または有効期限を増す場合がある、選択された投与経路に適切な一つまたは複数のアジュバント、例えば防腐剤、湿潤剤、乳化剤、分散剤、防腐剤または緩衝剤を含むこともできる。本発明の化合物は、インプラント、経皮パッチおよびマイクロカプセル化送達系を含む徐放性製剤のように、急速な放出から化合物を保護する担体を用いて調製することもできる。そのような製剤の調製のための方法は一般に当業者に公知である。例えばSustained and Controlled Release Drug Delivery Systems, J. R. Robinson, ed., Marcel Dekker, Inc., New York, 1978を参照されたい。
【0351】
本発明の薬学的組成物は、本発明の抗体を一つ含んでもよく、または本発明の抗体二つ以上を組み合わせて含んでもよい。
【0352】
治療用途
別の局面において、本発明は、医薬として使用するための、本明細書に記載する本発明の抗体に関する。
【0353】
本発明の抗CD38抗体は、CD38を発現する細胞が関与する障害の処置を含む数多くの治療用途を有する。例えば、本抗体は、多様な障害を処置または予防するために、培養中の細胞に例えばインビトロまたはエクスビボで投与してもよく、またはヒト対象に例えばインビボで投与してもよい。本明細書において使用される用語「対象」は、本抗体に応答するヒトおよび非ヒト動物を含むものと解釈される。対象は、CD38機能、例えば酵素活性、シグナル伝達、サイトカイン発現の誘導、増殖もしくは分化の誘導および/または溶解の誘導および/またはCD38発現細胞の消去/その数の減少を変調させることによって矯正または改善される場合がある障害を有するヒト患者を含むこともできる。
【0354】
例えば、抗CD38抗体を使用して、インビボまたはインビトロで一つまたは複数の以下の生物学的活性を誘発することもできる。CD38機能(例えば酵素活性、シグナル伝達、サイトカイン発現の誘発、増殖もしくは分化の誘発および/または溶解の誘発)の変調、CD38発現細胞の死滅、ヒトエフェクタ細胞の存在下、CD38発現細胞のファゴサイトーシスまたはADCCの媒介ならびに補体の存在下、CD38発現細胞のCDCの媒介またはアポトーシスによるCD38発現細胞の死滅。
【0355】
本発明は、対象においてCD38を発現する細胞が関与する障害を処置または予防する方法を提供し、本方法は、治療的に有効な量の本発明の抗CD38抗体を、処置を必要とする対象に投与することを含む。このような方法は、障害を処置または予防するのに有効な量の本発明の抗CD38抗体を対象に投与することを含む。
【0356】
本発明の一つの態様において、CD38を発現する細胞が関与する障害は、癌、すなわち、CD38を発現する腫瘍細胞の存在を特徴とする障害のような腫瘍形成性障害、例えばB細胞リンパ腫、形質細胞悪性疾患、T/NK細胞リンパ腫および骨髄性悪性疾患であることもできる。
【0357】
そのような腫瘍形成性疾患の例は、前駆体B細胞リンパ芽球性白血病/リンパ腫およびB細胞非ホジキンリンパ腫を含むB細胞リンパ腫/白血病、急性前骨髄球性白血病、急性リンパ芽球性白血病および成熟B細胞新生物、例えばB細胞性慢性リンパ性白血病(CLL)/小リンパ球性リンパ腫(SLL)、B細胞性急性リンパ性白血病、B細胞性前リンパ球性白血病、リンパ形質細胞性リンパ腫、マントル細胞リンパ腫(MCL)、低悪性度、中悪性度および高悪性度のものを含むろ胞性リンパ腫(FL)、皮膚ろ胞中心リンパ腫、辺縁帯B細胞リンパ腫(MALT型、結節および脾臓型)、ヘアリー細胞白血病、びまん性大B細胞リンパ腫、バーキットリンパ腫、形質細胞腫、形質細胞骨髄腫、形質細胞白血病、移植後リンパ増殖性障害、ヴァルデンストレームマクログロブリン血症、形質細胞白血病ならびに未分化大細胞リンパ腫(ALCL)を含む。
【0358】
一つの態様において、CD38を発現する細胞が関与する障害は多発性骨髄腫である。
【0359】
一つの態様において、CD38を発現する細胞が関与する障害は、慢性リンパ性白血病(CLL)、急性リンパ芽球性白血病(ALL)、急性骨髄性白血病(成人)(AML)、マントル細胞リンパ腫、ろ胞性リンパ腫およびびまん性大細胞型B細胞リンパ腫から選択される。
【0360】
一つの態様において、CD38を発現する細胞が関与する障害は非小細胞肺癌(NSCLC)である。
【0361】
B細胞非ホジキンリンパ腫の例は、リンパ腫様肉芽腫症、原発性滲出性リンパ腫、血管内大B細胞リンパ腫、縦隔大B細胞リンパ腫、重鎖疾患(γ、μおよびα病を含む)、免疫抑制剤治療によって誘発されるリンパ腫、例えばシクロスポリン誘発リンパ腫およびメトトレキサート誘発リンパ腫である。
【0362】
本発明の一つの態様において、CD38を発現する細胞が関与する障害はホジキンリンパ腫である。
【0363】
CD38を発現する細胞が関与する障害の他の例は、TおよびNK細胞に由来する悪性疾患、例えば、T細胞前リンパ球性白血病、T細胞大顆粒リンパ球性白血病、攻撃性NK細胞白血病、成人T細胞白血病/リンパ腫、節外NK/T細胞リンパ腫、鼻型、腸疾患関連T細胞リンパ腫、肝脾T細胞リンパ腫、皮下脂肪織炎様T細胞リンパ腫、芽球性NK細胞リンパ腫、菌状息肉症/セザリー症候群、原発性皮膚CD30陽性T細胞リンパ増殖性障害(原発性皮膚未分化大細胞リンパ腫C-ALCL、リンパ腫様丘疹症、境界病変)、血管免疫芽球性Tリンパ腫、不特定の末梢T細胞リンパ腫および未分化大細胞リンパ腫を含む成熟T細胞およびNK細胞新生物を含む。
【0364】
骨髄細胞に由来する悪性疾患の例は、急性前骨髄球性白血病を含む急性骨髄性白血病および慢性骨髄性白血病を含む慢性骨髄増殖性疾患を含む。
【0365】
本発明の別の態様において、CD38を発現する細胞が関与する障害は、CD38発現B細胞、マクロファージ、形質細胞、単球およびT細胞が関与する免疫障害、例えば炎症性および/または自己免疫疾患である。CD38発現B細胞、形質細胞、単球およびT細胞が関与する免疫性障害の例は、自己免疫性障害、例えば乾癬、乾癬性関節炎、皮膚炎、全身性強皮症および硬化症、炎症性腸疾患(IBD)、クローン病、潰瘍性大腸炎、呼吸窮迫症候群、髄膜炎、脳炎、ブドウ膜炎、糸球体腎炎、湿疹、喘息、アテローム性動脈硬化症、白血球接着不全症、多発性硬化症、レイノー症候群、シェーグレン症候群、若年発症糖尿病、ライター病、ベーチェット病、免疫複合体性腎炎、IgA腎症、IgM多発神経障害、免疫性血小板減少症、例えば急性特発性血小板減少性紫斑病および慢性特発性血小板減少性紫斑病、溶血性貧血、筋無力症、狼瘡性腎炎、全身性エリテマトーデス、関節リウマチ(RA)、アトピー性皮膚炎、天疱瘡、グレーブス病、橋本甲状腺炎、ウェゲナー肉芽腫症、オーメン症候群、慢性腎不全、急性感染性単核球症、多発性硬化症、HIVならびにヘルペスウイルス関連疾患を含む。さらなる例は、重症急性呼吸窮迫症候群および脈絡網膜炎である。さらには、エプスタイン・バーウイルス(EBV)のようなウイルスによるB細胞の感染によって生じる、または媒介されるような他の疾病および障害が含まれる。
【0366】
一つの態様において、CD38を発現する細胞が関与する障害は関節リウマチである。
【0367】
本発明にしたがって処置することもできる、自己抗体および/または過剰なBおよびTリンパ球活性が顕著になる炎症性、免疫性および/または自己免疫性障害のさらなる例は、脈管炎および他の血管障害、例えば顕微鏡的多発性脈管炎、チャーグ・ストラウス症候群および他のANCA関連脈管炎、結節性多発性動脈炎、本態性クリオグロブリン血症性脈管炎、皮膚白血球破砕性血管炎、川崎病、高安動脈炎、巨細胞性動脈炎、ヘノッホ・シェーンライン紫斑病、原発性または孤立性脳血管炎、結節性紅斑、閉塞性血栓動脈炎、血栓性血小板減少性紫斑病(溶血性尿毒症候群を含む)ならびに続発性脈管炎、例えば皮膚白血球破砕性脈管炎(例えばB型肝炎、C型肝炎、ヴァルデンストレームマクログロブリン血症、B細胞新生物形成、関節リウマチ、シェーグレン症候群または全身性エリテマトーデスに続発する)を含む。さらなる例は、結節性紅斑、アレルギー性脈管炎、脂肪織炎、ウェーバー・クリスチャン病、高グロブリン血症性紫斑病およびバージャー病、皮膚障害、例えば接触性皮膚炎、線状IgA皮膚病、白斑、壊疽性膿皮症、後天性表皮水疱症、尋常性天疱瘡(瘢痕性類天疱瘡および水疱性類天疱瘡を含む)、円形脱毛症(全身性脱毛症および完全脱毛症を含む)、疱疹状皮膚炎、多形性紅斑および慢性自己免疫性じんましん(血管神経性浮腫およびじんましん様血管炎を含む)、免疫性血球減少症、例えば自己免疫性好中球減少症および赤芽球ろう、結合組織障害、例えばCNS狼瘡、円盤状紅斑性狼瘡、CREST症候群、混合型結合組織疾患、多発性筋炎/皮膚筋炎、封入体筋炎、続発性アミロイドーシス、クリオグロブリン血症I型およびII型、線維筋痛、リン脂質抗体症候群、続発性血友病、再発性多発性軟骨炎、サルコイドーシス、スティフマン症候群ならびにリウマチ熱である。さらなる例は、好酸球性筋膜炎、関節炎、例えば強直性脊椎炎、若年性慢性関節炎、成人性スチル病およびSAPHO症候群である。さらなる例は、仙腸骨炎、反応性関節炎、スチル病および痛風、血液障害、例えば再生不良性貧血、原発性溶血性貧血(寒冷凝集素症候群を含む)、CLLまたは全身性エリテマトーデスに続発する溶血性貧血、POEMS症候群、悪性貧血およびヴァルデンストレーム高グロブリン血症性紫斑病である。さらなる例は、無顆粒球症、自己免疫性好中球減少症、フランクリン病、セリグマン病、γ重鎖病、胸腺腫およびリンパ腫に続発する新生物随伴症候群、胸腺腫およびリンパ腫に続発する新生物随伴症候群ならびに第VIII因子阻害剤形成、内分泌障害、例えば多発性内分泌障害ならびにアジソン病である。さらなる例は、自己免疫性低血糖症、自己免疫性甲状腺機能低下症、自己免疫性インスリン症候群、ドケルバン甲状腺炎およびインスリン受容体抗体媒介性インスリン耐性、肝胃腸障害、例えばセリアック病、ウィップル病、原発性胆汁性肝硬変、慢性活動性肝炎および原発性硬化性胆管炎である。さらなる例は、自己免疫性胃炎、腎障害、例えば急速進行性糸球体腎炎、連鎖球菌感染後腎炎、グッドパスチャー症候群、膜性糸球体腎炎およびクリオグロブリン血症性腎炎である。さらなる例は、微小変化疾患、神経障害、例えば自己免疫性神経障害、多発単神経炎、ランバート・イートン筋無力症候群、シデナム舞踏病、脊髄癆およびギラン・バレー症候群である。さらなる例は、脊髄症/熱帯性痙性不全対麻痺、重症筋無力症、急性炎症性脱髄性多発神経障害および慢性炎症性脱髄性多発神経障害、多発性硬化症、心臓および肺の障害、例えばCOPD、線維化性肺胞炎、閉塞性細気管支炎、アレルギー性アスペルギルス症、嚢胞性線維症、レフラー症候群、心筋炎および心膜炎である。さらなる例は、過敏性肺炎および肺癌に続発する新生物随伴性症候群、アレルギー性障害、例えば気管支喘息および高IgE症候群である。さらなる例は、一過性黒内障、眼科的障害、例えば特発性脈絡網膜炎、感染症、例えば、パルボウイルスB感染疾(hands-and-socks症候群を含む)、産婦人科的障害、例えば再発性流産、再発性胎児消失および子宮内発育遅延である。さらなる例は、婦人科新生物に続発する新生物随伴性症候群、男性生殖器障害、例えば精巣新生物に続発する新生物随伴性症候群ならびに移植由来の障害、例えば同種移植片および異種移植片拒絶ならびに移植片対宿主病である。
【0368】
上記処置および使用の方法における投与レジメンは、最適な所望の反応(例えば治療的応答)を提供するように調節される。例えば治療状況の危急性によって指示されるように、単回ボーラスを投与してもよく、いくつかの分割用量を時間とともに投与してもよく、または用量を比例的に増減してもよい。
【0369】
本抗CD38抗体の有効投与量および投与レジメンは、処置される疾病または病態に依存し、当業者が決定することもできる。本発明の化合物の治療的に有効な量の例示的な非限定的範囲は、約0.005~100mg/kg、例えば0.05~100mg/kgまたは1~100mg/kg、例えば約0.1~50mg/kg、例えば約0.1~20mg/kg、例えば約0.1~10mg/kg、例えば約0.1、0.3、約0.5、約1、2、3、4、8、16または24mg/kgである。
【0370】
投与は、例えば、静脈内投与、筋肉内投与、腹腔内投与または皮下投与であることもでき、例えば、標的の部位に近接して投与することもできる。必要に応じて、薬学的組成物の有効1日量は、1日を通して適切な間隔で別々に投与される二つ、三つ、四つ、五つ、六つまたはより多くの部分用量として、場合によっては単位剤形で投与することもできる。
【0371】
一つの態様において、本抗CD38抗体は、注入により、10~500mg/m2、例えば200~400mg/m2の週投与量で投与することもできる。そのような投与を例えば1~8回、例えば3~5回繰り返すこともできる。投与は、2~24時間、例えば2~12時間の連続的注入によって実施することもできる。
【0372】
一つの態様において、本抗CD38抗体は、毒性の副作用を減らすために、緩徐な連続注入により、長い期間、例えば24時間超にわたって投与することもできる。
【0373】
一つの態様において、本抗CD38抗体は、250mg~2000mg、例えば300mg、500mg、700mg、1000mg、1500mgまたは2000mgの週投与量で、8回まで、例えば4~6回投与することもできる。投与は、連続注入により、2~24時間、例えば2~12時間の期間にわたって実施することもできる。そのようなレジメンは、例えば、必要に応じて1回または複数回、例えば6ヶ月または12ヶ月後に繰り返すこともできる。
【0374】
一つの態様において、本抗CD38抗体は、維持療法により、例えば6ヶ月以上の期間、週1回で投与することもできる。
【0375】
別の態様において、本抗CD38抗体は、本発明の抗CD38抗体の1回の注入、次いで放射性同位体にコンジュゲートした本発明の抗CD38抗体の注入を含むレジメンによって投与することもできる。このレジメンを例えば7~9日後に繰り返すこともできる。
【0376】
非限定的な例として、本発明の処置は、1日あたり約0.1~100mg/kg、例えば0.5、0.9、1.0、1.1、1.5、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、40、45、50、60、70、80、90または100mg/kgの本発明の化合物の1日投与量として、処置の開始後1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、35、36、37、38、39もしくは40日目の少なくとも1日または処置の開始後1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19もしくは20週目の少なくとも1週またはそれらの任意の組み合わせに、24、12、8、6、4もしくは2時間毎の単一もしくは分割用量またはそれらの任意の組み合わせを使用して提供することもできる。
【0377】
また、疾病の進行を安定化するその能力によって腫瘍治療の「有効量」を計測することもできる。化合物が癌を抑制する能力は、ヒト腫瘍における効能を予測する動物モデル系において評価することもできる。または、組成物のこの性質は、細胞増殖を阻害する、またはアポトーシスを誘導する化合物の能力を当業者に公知のインビトロアッセイによって試験することによって評価することもできる。治療的に有効な量の治療化合物は、腫瘍サイズを減少させる、または他のやり方で患者における症状を改善する場合がある。
【0378】
関節リウマチの場合の「治療的に有効な量」は、患者において少なくともACR20の予備寛解定義、例えば少なくともACR50の予備寛解定義、例えば少なくともACR70の予備寛解定義をもたらすこともできる。
【0379】
ACR20の予備寛解定義は以下のように定義される。
圧痛関節数(TJC)および腫張関節数(SJC)における≧20%寛解ならびに以下の五つの評価の三つにおける≧20%寛解:患者疼痛評価(VAS)、患者全般評価(VAS)、医師全般評価(VAS)、患者自己評価障害(HAQ)、急性期反応体(CRPまたはESR)。ACR50およびACR70は、それぞれ≧50%寛解および≧70%寛解と同じように定義される。さらなる詳細に関しては、Felson et al., American College of Rheumatology Preliminary Definition of Improvement in Rheumatoid Arthritis; Arthritis Rheumatism 38, 727-735 (1995)を参照されたい。
【0380】
または、関節リウマチの場合の治療的に有効な量は、EULARによって定義されているような、DAS28および/またはDAS56を含むDAS(疾患活動性スコア)によって計測することができる。
【0381】
また、抗CD38抗体は、癌を発症するリスクを低下させる、癌進行中には事象の発生の開始を遅らせる、および/または癌が緩解状態にある場合には再発のリスクを低下させるために、予防的に投与することもできる。これは、存在することが知られている腫瘍を見つけることが他の生物学的要因のせいで困難である患者において特に役立つ場合がある。
【0382】
併用療法
本発明の抗CD38抗体はまた、併用療法において、すなわち処置される疾病または病態に関連する他の治療剤と組み合わせて投与することもできる。そのような投与は、同時であってもよく、別個であってもよく、または順次であってもよい。同時投与の場合、薬剤は、適宜、一つの組成物として投与してもよく、または別々の組成物として投与してもよい。
【0383】
したがって、本発明は、上記のようなCD38を発現する細胞が関与する障害を処置する方法を提供し、本方法は、以下に記す一つまたは複数のさらなる治療剤と組み合わせた本発明の抗CD38抗体の投与を含む。
【0384】
本発明の態様において、本発明の抗体は、他の抗CD38抗体と組み合わせて投与される。そのような抗体は本発明および従来技術に記載されている。具体的には、抗体はWO2006099875に記載されている。より具体的には、本抗CD38抗体と、非クロスブロック性である抗CD38抗体、例えばWO2006099875に記載されている抗体003との組み合わせが本発明の態様である。
【0385】
一つの態様において、併用療法は、少なくとも一つの細胞傷害性剤、少なくとも一つの化学療法剤、少なくとも一つの血管新生阻害剤、少なくとも一つの抗炎症剤および/または少なくとも一つの免疫抑制剤および/または免疫調節剤との本発明の組成物の投与を含むこともできる。
【0386】
一つの態様において、本発明は、対象においてCD38を発現する細胞が関与する障害、例えば癌を処置する方法を提供し、本方法は、治療的に有効な量の本発明の抗CD38抗体および少なくとも一つの化学療法剤を、処置を必要とする対象に投与することを含む。
【0387】
一つの態様において、本発明は、多発性骨髄腫を処置する方法を提供し、本方法は、治療的に有効な量の本発明の抗CD38抗体および少なくとも一つの化学療法剤を、処置を必要とする対象に投与することを含む。
【0388】
一つの態様において、そのような化学療法剤は、代謝拮抗剤、例えばメトトレキサート、6-メルカプトプリン、6-チオグアニン、シタラビン、フルダラビン、5-フルオロウラシル、デカルバジン、ヒドロキシウレア、アスパラギナーゼ、ゲムシタビン、クラドリビンおよび同種の薬剤から選択することもできる。
【0389】
一つの態様において、そのような化学療法剤は、アルキル化剤、例えばメクロレタミン、チオエパ、クロラムブシル、メルファラン、カルムスチン(BSNU)、ロムスチン(CCNU)、シクロホスファミド、ブスルファン、ジブロモマンニトール、ストレプトゾトシン、ダカルバジン(DTIC)、プロカルバジン、マイトマイシンC、シスプラチンおよび他の白金誘導体、例えばカルボプラチンならびに同種の薬剤から選択することもできる。
【0390】
一つの態様において、そのような化学療法剤は、抗生物質、例えばダクチノマイシン(以前はアクチノマイシン)、ブレオマイシン、ダウノルビシン(以前はダウノマイシン)、ドキソルビシン、イダルビシン、ミトラマイシン、マイトマイシン、ミトキサントロン、プリカマイシン、アントラマイシン(AMC)および同種の薬剤から選択することもできる。
【0391】
一つの態様において、そのような化学療法剤は、有糸分裂阻害剤、例えばタキサン類、例えばドセタキセルおよびパクリタキセルならびにビンカアルカロイド類、例えばビンデシン、ビンクリスチン、ビンブラスチンおよびビノレルビンから選択することもできる。
【0392】
一つの態様において、そのような化学療法剤は、トポイソメラーゼ阻害剤、例えばトポテカンから選択することもできる。
【0393】
一つの態様において、そのような化学療法剤は、成長因子阻害剤、例えばErbB1(EGFR)の阻害剤(例えばゲフィニチブ(イレッサ(登録商標))、セツキシマブ(エルビタックス(登録商標))、エルロチニブ(タルセバ(登録商標))、HuMax-EGFr(ザルツムマブ、WO2002/100348に開示されている2F8)および同種の薬剤)、ErbB2(Her2/neu)の阻害剤(例えばトラスツズマブ(ハーセプチン(登録商標))および同種の薬剤)ならびに同種の薬剤から選択することもできる。一つの態様において、そのような成長因子阻害剤は、ファルネシルトランスフェラーゼ阻害剤、例えばSCH-66336およびR115777であることもできる。一つの態様において、そのような成長因子阻害剤は、血管内皮成長因子(VEGF)阻害剤、例えばベバシズマブ(アバスチン(登録商標))であることもできる。
【0394】
一つの態様において、そのような化学療法剤は、チロシンキナーゼ阻害剤、例えばイマニチブ(グリベック、グリーベックSTI571)、ラパチニブ、PTK787/ZK222584および同種の薬剤であることもできる。
【0395】
一つの態様において、そのような化学療法剤はヒストン脱アセチル化酵素阻害剤であることもできる。そのようなヒストン脱アセチル化酵素阻害剤の例は、ヒドロキサム酸系ハイブリッド極性化合物、例えばSAHA(スベロイルアニリドヒドロキサム酸)を含む。
【0396】
一つの態様において、そのような化学療法剤は、P38a MAPキナーゼ阻害剤、例えばSCIO-469であることもできる。
【0397】
一つの態様において、本発明は、対象においてCD38を発現する細胞が関与する障害を処置する方法を提供し、本方法は、治療的に有効な量の本発明の抗CD38抗体および少なくとも一つの血管形成、新血管新生および/または他の血管新生の阻害剤を、処置を必要とする対象に投与することを含む。
【0398】
一つの態様において、本発明は、多発性骨髄腫を処置する方法を提供し、本方法は、治療的に有効な量の本発明の抗CD38抗体および少なくとも一つの血管形成、新血管新生および/または他の血管新生の阻害剤を、処置を必要とする対象に投与することを含む。
【0399】
そのような血管形成阻害剤の例は、ウロキナーゼ阻害剤、マトリックスメタロプロテアーゼ阻害剤(例えばマリマスタット、ネオバスタット、BAY 12-9566、AG 3340、BMS-275291および同種の薬剤)、内皮細胞移動および増殖の阻害剤(例えばTNP-470、スクアラミン、2-メトキシエストラジオール、コンブレタスタチン、エンドスタチン、アンジオスタチン、ペニシルアミン、SCH66336(Schering-Plough Corp, Madison, NJ)、R115777(Janssen Pharmaceutica Inc, Titusville, NJ)および同種の薬剤)、血管形成成長因子の拮抗剤(例えばZD6474、SU6668、血管形成因子および/またはそれらの受容体に対する抗体(例えばVEGF、bFGFおよびアンジオポイエチン-1)、サリドマイド(サロミド(登録商標))、サリドマイド類似物(例えばCC-5013(レナリドマイド、レブリミド(商標))およびCC4047(アクチミド(商標))、Sugen 5416、SU5402、抗血管形成リボザイム(例えばアンジオザイム)、インターフェロンα(例えばインターフェロンα2a)、スラミンおよび同種の薬剤)、VEGF-Rキナーゼ阻害剤および他の抗血管形成チロシンキナーゼ阻害剤(例えばSU011248)、内皮特異的インテグリン/生存シグナル伝達の阻害剤(例えばビタキシンおよび同種の薬剤)、銅拮抗剤/キレート剤(例えばテトラチオモリブデート、カプトプリルおよび同種の薬剤)、カルボキシアミドトリアゾール(CAI)、ABT-627、CM101、インターロイキン-12(IL-12)、IM862、PNU145156Eならびに血管形成を阻害するヌクレオチド分子(例えばアンチセンスVEGF-cDNA、アンジオスタチンをコードするcDNA、p53をコードするcDNAおよび欠損VEGF受容体-2をコードするcDNA)ならびに同種の薬剤を含む。
【0400】
血管形成、新血管新生および/または他の血管新生のそのような阻害剤の他の例は、抗血管形成ヘパリン誘導体および関連分子(例えばヘパリナーゼIII)、テモゾロマイド、NK4、マクロファージ遊走阻止因子(MIF)、シクロオキシゲナーゼ-2阻害剤、低酸素誘導因子1の阻害剤、抗血管形成大豆イソフラボン、オルチプラズ、フマジリンおよびその類似物、ソマトスタチン類似物、ポリ硫酸ペントサン、テコガランナトリウム、ダルテパリン、ツムスタチン、トロンボスポンジン、NM-3、コンブレスタチン、カンスタチン、アバスタチン、他の関連標的に対する抗体(例えば抗α-v/β-3インテグリンおよび抗キニノスタチンmAb)ならびに同種の薬剤である。
【0401】
一つの態様において、本発明は、サリドマイド(サロミド(登録商標))、サリドマイド類似物(例えばCC-5013(レナリドマイド、レブリミド(商標))および/またはCC4047(アクチミド(商標))とともに投与される薬学的組成物の調製のための本発明の抗CD38抗体の使用を提供する。さらなる態様において、本発明は、サリドマイドとともに投与される薬学的組成物の調製のための本発明の抗CD38抗体の使用を提供する。
【0402】
一つの態様において、本発明は、抗CD20抗体、例えばリツキシマブ(リツキサン(登録商標)、マブテラ(登録商標))、WO2004/035607に開示されているヒトモノクローナル抗CD20抗体、例えば11B8、2F2(オファツムマブ、アルゼラ(登録商標))または7D8とともに投与される薬学的組成物の調製のための本発明の抗CD38抗体の使用を提供する。
【0403】
一つの態様において、上記のような障害を処置するために本発明の抗CD38抗体と併用するための治療剤はプロテオソーム阻害剤、例えばボルテゾミブ(ベルケード(登録商標))であることもできる。
【0404】
一つの態様において、上記のような障害を処置するために本発明の抗CD38抗体と併用するための治療剤はコルチコステロイド、例えばプレドニゾン、プレドニゾロン、デキサメタゾンなどであることもできる。
【0405】
一つの態様において、本発明の抗CD38抗体は、上記のような障害、例えば多発性骨髄腫、例えば再発した多発性骨髄腫を処置するためにレナリドミドおよびデキサメタゾンと併用される。
【0406】
一つの態様において、本発明の抗CD38抗体は、上記のような障害、例えば多発性骨髄腫、例えば再発した多発性骨髄腫を処置するためにボルテゾミブおよびデキサメタゾンと併用される。
【0407】
一つの態様において、本発明の抗CD38抗体は、上記のような障害、例えば多発性骨髄腫、例えば再発した多発性骨髄腫を処置するためにボルテゾミブおよびプレドニゾロンと併用される。
【0408】
一つの態様において、上記のような障害を処置するために本発明の抗CD38抗体と併用される治療剤は、抗癌免疫原、例えば癌抗原/腫瘍関連抗原(例えば上皮細胞接着分子(EpCAM/TACSTD1)、ムチン1(MUC1)、腫瘍胎児性抗原(CEA)、腫瘍関連糖タンパク質72(TAG-72)、gp100、Melan-A、MART-1、KDR、RCAS1、MDA7、癌関連ウイルスワクチン(例えばヒトパピローマウイルスワクチン)、腫瘍由来熱ショックタンパク質および同種の薬剤であることもできる。追加的または代替的に、本明細書の他の部分に記載された多数の他の適当な癌抗原/腫瘍関連抗原および当技術分野において公知の同種の分子をそのような態様において使用することもできる。抗癌免疫原性ペプチドはまた、抗イディオタイプ「ワクチン」、例えばBEC2抗イディオタイプ抗体、ミツモマブ、CeaVacおよび関連の抗イディオタイプ抗体、MG7抗体に対する抗イディオタイプ抗体ならびに他の抗癌抗イディオタイプ抗体を含む(例えばBirebent et al., Vaccine. 21(15), 1601-12 (2003)、Li et al., Chin Med J. (Engl). 114(9), 962-6 (2001)、Schmitt et al., Hydridoma. 13(5), 389-96 (1994)、Maloney et al., Hybridoma. 4(3), 191-209 (1985)、Raychardhuri et al., J Immunol. 137(5), 1743-9 (1986)、Pohl et al., Int J Cancer. 50(6), 958-67 (1992)、Bohlen et al., Cytokines Mol Ther. 2(4), 231-8 (1996)およびMaruyama, J Immunol Methodd. 264(1-2), 121-33 (2002)を参照されたい)。そのような抗イディオタイプ抗体は、場合によっては、合成(通常は不活性)分子担体、タンパク質(例えばキーホールリンペットヘモシアニン(KLH))(例えばOchi et al., Eur J Immunol. 17(11), 1645-8 (1987)を参照されたい)、または細胞(例えば赤血球。例えばWi et al., J Immunol Methods. 122(2), 227-34 (1989)を参照されたい)であり得る担体とコンジュゲートしてもよい。
【0409】
一つの態様において、上記のような障害を処置するために本発明の抗CD38抗体と併用するための治療剤はビスホスホネート類であることもできる。潜在的に適当なビスホスホネート類の例は、パミドロネート(アレジカ(登録商標))、ゾレドロン酸(ゾメタ(登録商標))、クロドロネート(ボネフォス(登録商標))、リセドロネート(アクトネル(登録商標))、イバンドロネート(ボニバ(登録商標))、エチドロネート(ジドロネル(登録商標))、アレンドロネート(フォサマックス(登録商標))、チルドロネート(スケリド(登録商標))、インカドロネート(Yamanouchi Pharmaceutical)およびミノドロネート(YM529、Yamanouchi)である。
【0410】
一つの態様において、上記のような障害を処置するために本発明の抗CD38抗体と併用するための治療剤はコロニー刺激因子であることもできる。適当なコロニー刺激因子の例は、顆粒球コロニー刺激因子(G-CSF)、例えばフィルグラスチム(ニューポジェン(登録商標))およびペグフィルグラスチム(ニューラスタ(登録商標))ならびに顆粒球マクロファージコロニー刺激因子(GM-CSF)、例えばサルグラモスチム(リューカイン(登録商標))である。
【0411】
一つの態様において、上記のような障害を処置するために本発明の抗CD38抗体と併用するための治療剤は赤血球生成剤であることもできる。適当な赤血球生成剤の例は、エリスロポイエチン(EPO)、例えばエポエチンα(例えばプロクリット(登録商標)、エポジェン(登録商標)およびエプレックス(登録商標))およびエポエチンβ(例えばネオレコルモン(登録商標))ならびに赤血球生成刺激タンパク質(例えばアラネスプ(登録商標))である。
【0412】
一つの態様において、上記のような障害を処置するために本発明の抗CD38抗体と併用するための治療剤は、抗癌サイトカイン、ケモカインまたはそれらの組み合わせであることもできる。適当なサイトカインおよび成長因子の例は、IFNγ、IL-2、IL-4、IL-6、IL-7、IL-10、IL-12、IL-13、IL-15、IL-18、IL-23、IL-24、IL-27、IL-28a、IL-28b、IL-29、KGF、IFNα(例えばIFNα2b)、IFNβ、GM-CSF、CD40L、Flt3リガンド、幹細胞因子、アンセスチムおよびTNFαを含む。適当なケモカインは、Glu-Leu-Arg(ELR)陰性ケモカイン、例えばヒトCXCおよびC-CケモカインファミリーのIP-10、MCP-3、MIGおよびSDF-1αを含むこともできる。適当なサイトカインは、サイトカイン誘導体、サイトカイン変異体、サイトカインフラグメントおよびサイトカイン融合タンパク質を含む。代替的または追加的に、本明細書における天然のペプチドコード核酸を伴うこれらのおよび他の方法または使用は、US5,968,502、US6,063,630およびUS6,187,305ならびにEP0505500に記載されているような「遺伝子活性化」および相同組換え遺伝子上方制御技術によって実施することもできる。
【0413】
一つの態様において、上記のような障害を処置するために本発明の抗CD38抗体と併用するための治療剤は、FcαまたはFcγ受容体の発現または活性を変調、例えば増強または阻害する薬剤であることもできる。この用途に適した薬剤の例は、インターロイキン-1(IL-1)、インターロイキン-2(IL-2)、インターロイキン-6(IL-6)、顆粒球コロニー刺激因子(G-CSF)、例えばフィルグラスチム(ニューポジェン(登録商標))およびペグフィルグラスチム(ニューラスタ(登録商標))ならびに顆粒球マクロファージコロニー刺激因子(GM-CSF)、例えばサルグラモスチム(リューカイン(登録商標))、インターフェロン-γ(IFN-γ)ならびに腫瘍壊死因子(TNF)を含む。
【0414】
一つの態様において、上記のような障害を処置するために本発明の抗CD38抗体と併用するための治療剤は、細胞周期制御/アポトーシス調節因子(または「調節剤」)であることもできる。細胞周期制御/アポトーシス調節因子は、(i)細胞周期制御/アポトーシス調節因子、例えばcdc-25を標的化し、変調する分子(例えばNSC 663284)、(ii)細胞周期を過剰刺激するサイクリン依存性キナーゼ(例えばフラボピリドル(L868275、HMR1275)、7-ヒドロキシスタウロスポリン(UCN-01、KW-2401)およびロスコビチン(R-ロスコビチン、CYC202))ならびに(iii)テロメラーゼ変調因子(例えばBIBR1532、SOT-095、GRN163ならびに例えばUS6,440,735およびUS6,713,055に記載されている組成物)を含むこともできる。アポトーシス経路に干渉する分子の非限定的な例は、TNF関連アポトーシス誘発性リガンド(TRAIL)/アポトーシス-2リガンド(Apo-2L)、IL-6産生の阻害をもたらすNF-κB遮断を誘発する薬剤、TRAIL受容体を活性化する抗体、IFN、アンチセンスBcl-2およびAs2O3(三酸化ヒ素、トリセノックス(登録商標))を含む。
【0415】
一つの態様において、上記のような障害を処置するために本発明の抗CD38抗体と併用するための治療剤は、ホルモン調節剤、例えば抗アンドロゲンおよび抗エストロゲン治療に有用な薬剤であることもできる。そのようなホルモン調節剤の例は、タモキシフェン、イドキシフェン、フルベストラント、ドロロキシフェン、トレミフェン、ラロキシフェン、ジエチルスチルベストロール、エチニルエストラジオール/エスチニル、抗アンドロゲン物質(例えばフルタミド/オイレキシン)、プロゲスチン(例えばカプロン酸ヒドロキシプロゲステロン、メドロキシプロゲステロン/プロベラ、メゲストールアセペート/メゲース)、副腎皮質ステロイド(例えばヒドロコルチゾン、プレドニゾン)、黄体ホルモン放出ホルモン(およびその類似物ならびに他のLHRH拮抗剤、例えばブセレリンおよびゴセレリン)、アロマターゼ阻害剤(例えばアナストラゾール/アリミデックス、アミノグルテチミド/シトラデン、エキセメスタン)、ホルモン阻害剤(例えばオクトレオチド/サンドスタチン)ならびに同種の薬剤である。
【0416】
一つの態様において、上記のような障害を処置するために本発明の抗CD38抗体と併用するための治療剤は、抗アレルギー剤(例えば、腫瘍および癌抗原に対する寛容性を弱める小分子化合物、タンパク質、糖タンパク質または抗体)であることもできる。そのような化合物の例は、CTLA-4の活性を遮断する分子、例えばMDX-010(Phan et al., PNAS USA 100, 8372 (2003))である。
【0417】
一つの態様において、上記のような障害を処置するために本発明の抗CD38抗体と併用するための治療剤は、腫瘍抑圧遺伝子を含む核酸もしくはベクター、例えばヒト組換え野生型p53/SCH58500をコードする複製欠損アデノウイルスなど、癌遺伝子、突然変異遺伝子もしくは調節解除された遺伝子に標的化されたアンチセンス核酸または突然変異遺伝子もしくは調節解除された遺伝子に標的化されたsiRNAであることもできる。腫瘍抑圧因子標的の例は、例えばBRCA1、RB1、BRCA2、DPC4(Smad4)、MSH2、MLH1およびDCCを含む。
【0418】
一つの態様において、上記のような障害を処置するために本発明の抗CD38抗体と併用するための治療剤は、抗癌核酸、例えばジーナセンス(オーグメロセン)/G3139)、LY900003(ISIS 3521)、ISIS 2503、OGX-011(ISIS 112989)、LE-AON/LEraf-AON(リポソーム封入c-rafアンチセンスオリゴヌクレオチド/ISIS-5132)、MG98およびPKCα、クラステリン、IGFBP、タンパク質キナーゼA、サイクリンD1またはBcl-2hを標的化する他のアンチセンス核酸であることもできる。
【0419】
一つの態様において、上記のような障害を処置するために本発明の抗CD38抗体と併用するための治療剤は抗癌阻害RNA分子であることもできる(例えばLin et al., Curr Cancer Drug Targets. 1(3), 241-7 (2001)、Erratum in: Curr Cancer Drug Targets. 3(3), 237 (2003)、Lima et al., Cancer Gene Ther. 11(5), 309-16 (2004)、Grzmil et al., Int J Oncol. 4(1), 97-105 (2004)、Collis et al., Int J Radiat Oncol Biol Phys. 57(2 Suppl), S144 (2003)、Yang et al., Oncogene. 22(36), 5694-701 (2003)およびZhang et al., Biochem Biophys Res Commun. 303(4), 1169-78 (2003)を参照されたい)。
【0420】
本発明の組成物および併用投与法はまた、そのような癌抗原/腫瘍関連抗原をコードする核酸ワクチン、例えば裸のDNAワクチンの投与を含む(例えばUS5,589,466、US5,593,972、US5,703,057、US5,879,687、US6,235,523およびUS6,387,888を参照されたい)。一つの態様において、併用投与法および/または組み合わせ組成物は自己由来のワクチン組成物を含む。一つの態様において、組み合わせ組成物および/または併用投与法は、全細胞ワクチンまたはサイトカイン発現細胞(例えば組換えIL-2発現線維芽細胞、組換えサイトカイン発現樹状細胞など)を含む(例えばKowalczyk et al., Acta Biochim Pol. 50(3), 613-24 (2003)、Reilly et al., Methods Mol Med. 69, 233-57 (2002)およびTirapu et al., Curr Gene Ther. 2(1), 79-89 (2002)を参照されたい)。本発明の併用法において役立つ場合があるそのような自己由来細胞手法の別の例がMyVax(登録商標)個別化免疫療法(以前はGTOP-99と呼ばれた)(Genitope Corporation-Redwood City, CA, USA)である。
【0421】
一つの態様において、本発明は、抗CD38抗体を腫瘍崩壊性ウイルスと組み合わせる、または同時投与する組み合わせ組成物および併用投与法を提供する。
【0422】
本発明の組み合わせ組成物および併用投与法はまた、「全細胞」および「養子」免疫療法を含むこともできる。例えば、そのような方法は、免疫系細胞(例えば腫瘍浸潤リンパ球(TIL)、例えばCD4+および/またはCD8+ T細胞(例えば、腫瘍特異的抗原および/または遺伝的増強によって拡大したT細胞)、抗体発現B細胞または他の抗体産生/提示細胞、樹状細胞(例えば抗サイトカイン発現組換え樹状細胞、DC拡大剤、例えばGM-CSFおよび/またはFlt3-Lとともに培養された樹状細胞および/または腫瘍関連抗原を添加された樹状細胞)、抗腫瘍NK細胞、いわゆるハイブリッド細胞またはそれらの組み合わせの注入または再注入を含むこともできる。また、細胞溶解物が、そのような方法および組成物において役立つ場合がある。そのような局面において役立つ場合がある治験における細胞「ワクチン」は、カンバキシン(商標)、APC-8015(Dendreon)、HSPPC-96(Antigenics)およびメラシン(登録商標)細胞溶解物を含む。また、場合によってはミョウバンのようなアジュバントと混和した、癌細胞から放出される抗原およびそれらの混合物(例えばBystryn et al., Clinical Cancer Research Vol. 7, 1882-1887, July 2001を参照されたい)が、そのような方法および組み合わせ組成物における成分であることもできる。
【0423】
一つの態様において、本発明の抗CD38抗体は、内部ワクチン接種法の適用と組み合わせて患者に送達することもできる。内部ワクチン接種とは、(a)分泌されるタンパク質、糖タンパク質もしくは他の産物、(b)膜関連タンパク質もしくは糖タンパク質または膜と関連した、または膜に挿入された他の成分、および/または(c)細胞内タンパク質または他の細胞内成分を含む(i)全体としての腫瘍細胞または(ii)腫瘍細胞の一部に対する免疫応答の顕在化を一般に生じさせる、患者における誘発された腫瘍または癌細胞死、例えば薬物誘発または放射線誘発された腫瘍細胞死をいう。内部ワクチン接種によって誘発される免疫応答は、体液性(すなわち抗体、補体媒介性)であってもよく、または、細胞媒介性(例えば、内部で死滅した腫瘍細胞またはその一部を認識する内在性細胞傷害性Tリンパ球の発生および/または増加)であってもよい。放射線療法に加えて、該腫瘍細胞死および内部ワクチン接種を誘発するために使用される場合がある薬剤の非限定的な例は、従来の化学療法剤、細胞周期阻害剤、抗血管形成薬、モノクローナル抗体、アポトーシス誘発剤およびシグナル伝達阻害剤である。
【0424】
上記のような障害を処置するために本発明の抗CD38抗体と併用するための治療剤として妥当である場合がある他の抗癌剤の例は、分化誘発剤、レチノイン酸およびレチノイン酸類似物(例えば全トランス型レチノイン酸、13-cisレチノイン酸および同種の薬剤)、ビタミンD類似物(例えばセオカルシトールおよび同種の薬剤)、ErbB3、ErbB4、IGF-IR、インスリン受容体、PDGFRa、PDGFRβ、Flk2、Flt4、FGFR1、FGFR2、FGFR3、FGFR4、TRKA、TRKC、c-met、Ron、Sea、Tie、Tie2、Eph、Ret、Ros、Alk、LTK、PTK7の阻害剤ならびに同種の薬剤である。
【0425】
上記のような障害を処置するために本発明の抗CD38抗体と併用するための治療剤として妥当である場合がある他の抗癌剤の例は、カテプシンB、カテプシンDデヒドロゲナーゼ活性の変調剤、グルタチオン-S-トランスフェラーゼ(例えばグルタシルシステインシンターゼおよび乳酸デヒドロゲナーゼ)、エストラムスチン、エピルビシン、HSP90阻害剤、例えば17-アリルアミノゲルダナマイシン、PSA、CA125、KSAなどのような腫瘍抗原に対する抗体、インテグリン、例えばインテグリンβ1、VCAMの阻害剤および同種の薬剤である。
【0426】
上記のような障害を処置するために本発明の抗CD38抗体と併用するための治療剤として妥当である場合がある他の抗癌剤の例は、カルシニューリン阻害剤(例えばバルスポダール、PSC 833および他のMDR-1またはp糖タンパク質阻害剤)、TOR阻害剤(例えばシロリムス、エベロリムスおよびラパマイシン)および「リンパ球帰巣」機構の阻害剤(例えばFTY720)および細胞シグナル伝達に効果を及ぼす薬剤、例えば接着分子阻害剤(例えば抗LFAなど)である。
【0427】
一つの態様において、本発明は、対象においてCD38を発現する細胞が関与する障害、例えば癌を処置する方法を提供し、本方法は、治療的に有効な量の本発明の抗CD38抗体および放射線療法を、処置を必要とする対象に投与することを含む。
【0428】
一つの態様において、本発明は、多発性骨髄腫を処置する方法を提供し、本方法は、治療的に有効な量の本発明の抗CD38抗体および放射線療法を、処置を必要とする対象に投与することを含む。
【0429】
放射線療法は放射線または放射性医薬の患者への関連の投与を含む場合がある。放射線源は、処置を受ける患者に対して外部にあってもよく、または内部にあってもよい(放射線処置は、例えば外照射療法(EBRT)、近接照射療法(BT)または骨格標的化放射線療法の形態であることもできる)。そのような方法を実施するのに使用される場合がある放射性元素は、例えばラジウム、セシウム137、イリジウム192、アメリシウム241、金198、コバルト57、銅67、テクネチウム99、ヨウ素123、ヨウ素131およびインジウム111を含む。
【0430】
一つの態様において、本発明は、対象においてCD38を発現する細胞が関与する障害を処置する方法を提供し、本方法は、治療的に有効な量の本発明の抗CD38抗体を、自己由来の末梢幹細胞または骨髄移植と組み合わせて、処置を必要とする対象に投与することを含む。
【0431】
一つの態様において、本発明は、多発性骨髄腫を処置する方法を提供し、本方法は、治療的に有効な量の本発明の抗CD38抗体を、自己由来の末梢幹細胞または骨髄移植と組み合わせて、処置を必要とする対象に投与することを含む。
【0432】
一つの態様において、本発明は、対象においてCD38を発現する細胞が関与する障害を処置する方法を提供し、本方法は、治療的に有効な量の本発明の抗CD38抗体を、整形外科的介入と組み合わせて、処置を必要とする対象に投与することを含む。
【0433】
一つの態様において、本発明は、対象においてCD38を発現する細胞が関与する障害を処置する方法を提供し、本方法は、治療的に有効な量の本発明の抗CD38抗体および少なくとも一つの抗炎症剤を、処置を必要とする対象に投与することを含む。
【0434】
一つの態様において、そのような抗炎症剤は、ステロイド薬およびNSAID(非ステロイド性抗炎症薬)から選択することもできる。
【0435】
一つの態様において、そのような抗炎症剤は、アスピリンおよび他のサリチル酸、Cox-2阻害剤(例えばロフェコキシブおよびセレコキシブ)、NSAID(例えばイブプロフェン、フェノプロフェン、ナプロキセン、スリンダック、ジクロフェナック、ピロキシカム、ケトプロフェン、ジフルニサル、ナブメトン、エトドラック、オキサプロジンおよびインドメタシン)、抗IL6R抗体、抗IL8抗体(例えば、WO2004058797に記載されている抗体、例えば10F8)、抗IL15抗体(例えば、WO03017935およびWO2004076620に記載されている抗体)、抗IL15R抗体、抗CD4抗体(例えばザノリムマブ)、抗CD11a抗体(例えばエファリズマブ)、抗α4/β1インテグリン(VLA4)抗体(例えばナタリズマブ)、炎症性疾患処置のためのCTL4-Ig、プレドニゾロン、プレドニゾン、疾患修飾性抗リウマチ薬(DMARD)、例えばメトトレキサート、ヒドロキシクロロキン、スルファサラジン、ピリミジン合成阻害剤(例えばレフルノミド)、IL-1受容体遮断剤(例えばアナキンラ)、TNF-α遮断剤(例えばエタネルセプト、インフリキシマブおよびアダリムマブ)および同種の薬剤から選択することもできる。
【0436】
一つの態様において、本発明は、対象においてCD38を発現する細胞が関与する障害を処置する方法を提供し、本方法は、治療的に有効な量の本発明の抗CD38抗体ならびに少なくとも一つの免疫抑制剤および/または免疫調節剤を、処置を必要とする対象に投与することを含む。
【0437】
一つの態様において、そのような免疫抑制剤および/または免疫調節剤は、シクロスポリン、アザチオプリン、マイコフェノール酸、マイコフェノレートモフェチル、コルチコステロイド、例えばプレドニゾン、メトトレキサート、金塩、スルファサラジン、抗マラリア薬、ブレキナール、レフルノミド、ミゾリビン、15-デオキシスペルグアリン、6-メルカプトプリン、シクロホスファミド、ラパマイシン、タクロリムス(FK-506)、OKT3、抗胸腺細胞グロブリン、チモペンチン、チモシン-αおよび同種の薬剤から選択することもできる。
【0438】
一つの態様において、そのような免疫抑制剤および/または免疫調節剤は、免疫抑制抗体、例えばIL-2受容体のp75に結合する抗体または例えばMHC、CD2、CD3、CD4、CD7、CD28、B7、CD40、CD45、IFNγ、TNF-α、IL-4、IL-5、IL-6R、IL-6、IGF、IGFR1、IL-7、IL-8、IL-10、CD11aもしくはCD58に結合する抗体またはそれらのリガンドに結合する抗体から選択することもできる。
【0439】
一つの態様において、そのような免疫抑制剤および/または免疫調節剤は、可溶性IL-15R、IL-10、B7分子(B7-1、B7-2、それらの変異体およびそれらのフラグメント)、ICOSおよびOX40、陰性T細胞調節因子の阻害剤(例えばCTLA4に対する抗体)および同種の薬剤から選択することもできる。
【0440】
一つの態様において、本発明の抗CD38抗体は、二つ以上の免疫抑制剤および/または免疫調節剤と組み合わせて、例えばプレドニゾンおよびシクロスポリンと組み合わせて、プレドニゾン、シクロスポリンおよびアザチオプリンと組み合わせて、またはプレドニゾン、シクロスポリンおよびマイコフェノレートモフェチルと組み合わせて、投与することもできる。
【0441】
一つの態様において、本発明は、対象においてCD38を発現する細胞が関与する障害を処置する方法を提供し、本方法は、治療的に有効な量の本発明の抗CD38抗体および抗C3b(i)抗体を、処置を必要とする対象に投与することを含む。
【0442】
一つの態様において、本発明は、対象においてCD38を発現する細胞が関与する障害を処置する方法を提供し、本方法は、治療的に有効な量の本発明の抗CD38抗体および抗C32b抗体を、処置を必要とする対象に投与することを含む。本発明の一つの態様において、抗C32b抗体は、すべてWO2009/083009に開示されているHuMab-016、-020、-022、-024、026、028、-034、-038、または-053から選択される。
【0443】
一つの態様において、上記のような障害を処置するために本発明の抗CD38抗体と併用するための治療剤は、ヒストン脱アセチル化酵素阻害剤(例えばフェニルブチレート)および/またはDNA修復剤(例えばDNA修復酵素および関連組成物、例えばジメリシン)から選択することもできる。
【0444】
治療的に有効な量の本発明の抗CD38抗体の投与を含む、上記のような障害を処置する本発明の方法はまた、光力学的抗癌療法(例えば、場合によっては光増感剤を使用して実施することもできるレーザー抗癌療法。例えばZhang et al., J Control Release. 93(2), 141-50 (2003)を参照されたい)、音波および衝撃波抗癌療法(例えばKambe et al., Hum Cell. 10(1), 87-94 (1997)を参照されたい)および/または栄養補助的抗癌療法(例えばRoudebush et al., Vet Clin North Am Small Anim Pract. 34(1), 249-69, viii (2004)およびRafi, Nutrition. 20(1), 78-82 (2004)を参照されたい)を含むこともできる。同様に、本発明の抗CD38抗体は、光力学的抗癌療法(例えば、場合によっては光増感剤を使用して実施することもできるレーザー抗癌療法)音波および衝撃波抗癌療法および/または栄養補助的抗癌療法とともに投与される、上記のような障害を処置するための薬学的組成物の調製のために使用することもできる。
【0445】
さらなる態様において、本発明の抗CD38抗体は補体とともに投与される。
【0446】
上記のように、本発明の薬学的組成物は、併用療法において、すなわち、別々の薬学的組成物として、処置される疾病または病態に妥当な一つまたは複数の薬剤と組み合わせて投与してもよく、または上記のような一つまたは複数のさらなる治療剤とともに製剤化された本発明の化合物として投与してもよい。そのような併用療法は、本発明の化合物および/または併用投与される薬剤の投与量をより少なくして、したがって様々な単剤療法に関連して生じうる毒性または合併症を回避する場合がある。
【0447】
一つの態様において、本発明は、対象においてCD38を発現する細胞が関与する障害を処置する方法を提供し、本方法は、治療的に有効な量の本発明の抗CD38抗体ならびに少なくとも一つの免疫抑制剤および/または免疫調節剤を、処置を必要とする対象に投与することを含む。
【0448】
診断用途
本発明の抗CD38抗体はまた、診断目的に使用することもできる。したがって、さらなる局面において、本発明は、本明細書に記載する抗CD38抗体を含む診断用組成物に関する。
【0449】
一つの態様において、本発明の抗CD38抗体は、CD38のレベルまたは膜表面にCD38を含む細胞のレベルを検出することによって、CD38を発現する活性化細胞が病因に積極的な役割を演じる疾病を診断するために、インビボまたはインビトロで使用することもできる。これは、例えば、抗体とCD38との間の複合体の形成を可能にする条件下で、試験するサンプルを、場合によっては対照サンプルとともに、抗CD38抗体と接触させることによって達成することもできる。そして、複合体形成を検出する(例えばELISAを使用する)。対照サンプルを試験サンプルとともに使用する場合、複合体は両サンプル中に検出され、サンプル間の複合体形成の統計的に有意な差が試験サンプル中のCD38の存在を示す。
【0450】
したがって、さらなる局面において、本発明は、以下の段階を含む、サンプル中のCD38抗原、すなわちCD38を発現する細胞の存在を検出する方法に関する:
サンプルを、本発明の抗CD38抗体または本発明の二重特異性分子と、抗体とCD38との間の複合体の形成を可能にする条件下で、接触させる段階、および
複合体が形成されたかどうかを分析する段階。
【0451】
一つの態様において、方法はインビトロで実施される。
【0452】
より具体的には、本発明は、侵襲性細胞および組織ならびに本発明の抗CD38抗体によって標的化される他の細胞の識別および診断のための方法ならびに治療的処置の進捗、処置後の状態、発癌のリスク、癌の進行などのモニタリングのための方法を提供する。
【0453】
そのような診断アッセイの一例において、本発明は、組織中の侵襲性細胞のレベルを診断する方法を提供し、本方法は、抗CD38抗体と潜在的なCD38含有組織との間で免疫複合体を形成させる段階、および組織中の侵襲性細胞の存在と相関する免疫複合体の形成を検出する段階を含む。接触は、標識された単離された抗体および標準的画像化技術を使用してインビボで実施してもよく、または組織サンプルに対してインビトロで実施してもよい。
【0454】
本発明によって提供される従来のイムノアッセイの例は、非限定的に、抗CD38抗体を使用する、ELISA、RIA、FACSアッセイ、プラズモン共鳴アッセイ、クロマトグラフィーアッセイ、免疫組織化学染色、ウェスタンブロットおよび/または免疫沈降を含む。そのような技術において使用される抗CD38抗体および/または二次抗体に適した標識は、非限定的に、様々な酵素、補欠分子族、蛍光材料、発光材料および放射性材料を含む。
【0455】
抗CD38抗体は、腫瘍のインビボ画像化において特に有用である。CD38と関連する腫瘍のインビボ画像化は任意の適当な技術によって実施することもできる。例えば99Tc標識または別のγ線放出同位体による標識を使用して、腫瘍中の抗CD38抗体または腫瘍からの二次的に標識された(例えばFITC標識された)抗CD38抗体:CD38複合体を標識し、ガンマシンチレーションカメラ(例えばElscint Apex 409ECT装置)により、一般的には低エネルギー高解像度コリメータまたは低エネルギー汎用コリメータを使用して画像化することもできる。その後、染色された組織を、腫瘍中のCD38関連ペプチドの量の指標としての放射能カウント数に関して評価することもできる。例えば侵襲性癌細胞の存在に関するバイオマーカとしてCD38またはCD38フラグメントを使用することに関して、そのような技術の使用によって得られた画像を使用して、患者、哺乳動物または組織中のCD38の生体分布を評価することもできる。この技術に対する変形は、ガンマカメラ技術よりも画像化を改善するための磁気共鳴画像法(MRI)の使用を含むこともできる。同様なイムノシンチグラフィー法および原理が、例えばSrivastava (ed.), Radiolabeled Monoclonal Antibodies For Imaging And Therapy (Plenum Press 1988)、Remington's Pharmaceutical Sciences, 18th Edition, Gennaro et al., (ed.), pp. 624-652(Mack Publishing Co., 1990)の中のChase, "Medical Applications of Radioisotopes"およびBiotechnology And Pharmacy 227-49, Pezzuto et al., (ed.)(Chapman & Hall 1993)の中のBrown, "Clinical Use of Monoclonal Antibodies"に記載されている。
【0456】
さらなる局面において、本発明は、以下を含む、サンプル中のCD38抗原、すなわちCD38を発現する細胞の存在を検出するためのキットに関する:
本発明の抗CD38抗体または本発明の二重特異性分子、および
キットの使用に関する取り扱い指示。
【0457】
一つの態様において、本発明は、抗CD38抗体を含む容器およびCD38ペプチドへの抗CD38抗体の結合を検出するための一つまたは複数の試薬を含む、癌の診断のためのキットを提供する。試薬は、例えば蛍光タグ、酵素タグまたは他の検出可能なタグを含むこともできる。試薬はまた、二次もしくは三次抗体または酵素反応のための試薬を含むこともでき、酵素反応が、可視化することもできる産物を生成する。一つの態様において、本発明は、適当な容器中の標識された、または標識されていない形態の一つまたは複数の本発明の抗CD38抗体、間接的アッセイのためのインキュベートのための試薬、および、標識の性質に依存して、そのようなアッセイにおける検出のための基質または誘導体化剤を含む診断キットを提供する。また、対照試薬が含まれる場合もある。
【0458】
さらなる局面において、本発明は、本明細書に記載する本発明の抗CD38抗体に結合する抗イディオタイプ抗体に関する。
【0459】
抗イディオタイプ(Id)抗体とは、一般に抗体の抗原結合部位と関連する特有の決定基を認識する抗体である。Id抗体は、抗CD38 mAbの根源と同じ種および遺伝子型の動物を、抗Idが調製されるmAbで免疫化することによって調製することもできる。免疫化された動物は一般に、免疫化抗体のイディオタイプ決定基を認識することができ、それらのイディオタイプ決定基に対する抗体(抗Id抗体)を産生することにより、それに応答することができる。そのような抗体は例えばUS4,699,880に記載されている。
【0460】
また、抗Id抗体を、さらに別の動物において免疫応答を誘発するための「免疫原」として使用して、いわゆる抗抗Id抗体を産生することもできる。抗抗Id抗体は、抗Idを誘発した元のmAbとエピトープ的に同一であることもできる。したがって、mAbのイディオタイプ決定基に対する抗体を使用することにより、同一の特異性の抗体を発現する他のクローンを識別することが可能である。抗Id抗体は、任意の適当な技術、例えば本発明の抗CD38抗体に関して本明細書の他の部分に記載された技術によって変異(それによって抗Id抗体変異体を産生する)および/または誘導体化することもできる。
【0461】
さらに限定的であると解釈されるべきではない以下の実施例によって本発明をさらに説明する。
【実施例0462】
実施例1
抗体の生成
HCo12マウスを、20μg精製HA-CD38とNIH-3T3-CD38トランスフェクト細胞とで、2週間ごとに交互に免疫化した。最初の免疫化は、100μl CFAと混合した100μl PBS中の5×106個の細胞を用いて腹腔内で実施し、2回目以降の免疫化は、100μl IFAと混合した100μl PBSの存在下、HA-CD38を用いて皮下で実施した。トランスフェクト細胞によるその後の免疫化は200μl PBSの存在下で実施した。力価発生後、PBA中20μg HA-CD38によってマウスを静脈内でブーストした。
【0463】
これらのマウスから脾臓を採取し、脾細胞を単離し、標準的プロトコルに基づいてPEGによってマウス骨髄腫細胞株に融合させた。そして、得られたハイブリドーマを、ヒト抗体産生に関してELISAによってスクリーニングし、CD38特異性に関して、ヒトCD38トランスフェクトNS/0細胞を使用してFACS分析によってスクリーニングし、組換えHA-CD38タンパク質結合に関してELISAによってスクリーニングした。
【0464】
抗CD38 HuMab可変ドメインの配列解析および発現ベクターへのクローニング
SMART RACE cDNA増幅キット(Clontech)を製造者の取り扱い指示にしたがって使用して、5×106個のハイブリドーマ細胞から抗CD38 HuMabの全RNAを調製し、100ng全RNAから5'-RACE相補的DNA(cDNA)を調製した。
【0465】
VHおよびVLコーディング領域をPCRによって増幅し、Zero Blunt PCRクローニングキット(Invitrogen)を使用してpCR-Blunt II-TOPOベクター(Invitrogen)中にクローニングした。HuMabごとに、16種のVLクローンおよび8種のVHクローンを配列決定した。
【0466】
VLおよびVHコード領域をpκおよびpG1fベクター中にクローニングした。
【0467】
CDR領域はIMGTに準じて示されている。
(http://imgt.cines.fr/IMGT_vquest/vquest?livret=0&Option=humanIg)
【0468】
以下のIgG1,κヒトモノクローナル抗体を同定した。
【0469】
実施例2
抗CD38抗体のエレクトロスプレーイオン化四重極飛行時間型質量分析
Q-TOF質量分析装置上、ナノスプレーエレクトロスプレーMSを使用して、抗CD38抗体025、057(抗体026と同じアミノ酸配列)、028、049および056の完全な分子量データを得た。C4マイクロタップカートリッジを使用して各抗体サンプルのアリコットをオフラインで脱塩し、プロパノール/トリフルオロ酢酸溶媒中に溶出させた。glu-フィブリノペプチドフラグメントイオンをMS/MSモードで使用して、計器を較正した。MassLynx 4.0ソフトウェアを使用して、得られた多価データを逆重畳積分した。
【0470】
上記のようなジチオトレイトールを使用する還元および分析ののち、これらの抗体の軽鎖成分および重鎖成分の分子量に関する情報を得た。
【0471】
(表1)CD38抗体の質量(ダルトン単位)
【0472】
実施例3
FACSを使用するクロスブロック実験
CHO-CD38細胞を過剰量の非標識CD38特異的抗体とともにインキュベートした(4℃、15分)。そして、細胞をFITC標識005抗体(濃度はEC90に近い。4℃、45分)とともにインキュベートした(005はWO2006099875に開示されている)。PBS-BSAで細胞を2回洗浄したのち、フローサイトメトリーによって蛍光を計測した。005-FITC標識抗体結合は過剰量の非標識抗体025、026、028、049および056によって遮断され、これらの抗体が重複エピトープを有することが示された。005-FITCの結合は過剰量の非標識003(WO2006099875に開示されている)によって遮断されず、異なるエピトープへの結合の証拠が得られた。
【0473】
ELISAを使用するクロスブロック実験
可溶性ヒトCD38をELISAプレートの表面にコートした。コートされたCD38を過剰量の非標識CD38特異的抗体とともに約15分間インキュベートし、その後、ビオチン化CD38特異的抗体を加えた(濃度はEC90に近い。室温、1時間)。PBS/Tweenで3回洗浄したのち、西洋ワサビペルオキシダーゼ(HRP)コンジュゲートしたストレプトアビジンを加え、その混合物を室温で1時間インキュベートした。ABTS溶液の添加によって複合体を検出し、ELISAリーダを使用してOD405nmでHRP媒介基質変換を計測した。
【0474】
サンドイッチELISAを使用するクロスブロック実験
抗CD38抗体をELISAプレートの表面にコートした。プレートに結合した抗体を、流体相中、過剰量の抗CD38抗体の存在下、ビオチン化可溶性CD38とともにインキュベートした。PBS/Tweenで洗浄したのち、結合したビオチン化CD38を、HRPコンジュゲートしたストレプトアビジンによって室温で1時間検出した。ABTS溶液の添加によってこの複合体を検出し(PBS/Tweenで洗浄したのち)、ELISAリーダを使用してOD405nmでHRP媒介基質変換を計測した。
【0475】
実施例4
エピトープマッピング
HA-CD38およびHis-CD38発現ベクターの構築
PCRを使用して、制限部位、理想的なコザック配列(GCCGCCACC)、ならびにシグナルペプチドおよびN末端HAタグ(ypydvpdya)をコードする配列を導入して、ヒトCD38の細胞外ドメインのコード配列(GenbankエントリAAA68482からのアミノ酸45~300と同一)をプラスミドpCIpuroCD38(Tenovus Research Laboratory, Southampton General Hospital(Southampton, UK)のProf. M. Glennieから入手)から増幅した。このコンストラクトを哺乳動物発現ベクターpEE13.4(Lonza Biologies)中にクローニングした。このコンストラクトをpEE13.4HACD38と命名した。
【0476】
同様のコンストラクトを合成し、HAタグコード部分をHisタグ(HHHHHH)コード部分で置換して完全にコドン最適化した(GeneArt, Regensburg, Germany)。このコンストラクトをpEE13.4中にクローニングし、pEE13.4HisCD38と命名した。
【0477】
部位特異的突然変異誘発
CD38分子上の推定抗体結合部位にいくつかの突然変異を導入した。
【0478】
QuickChange II XL部位特異的突然変異誘発キット(Stratagene, Amsterdam, The Netherlands)を使用して、T237A、Q272R、またはS274Fアミノ酸置換に通じるDNA置換を、pEE13.4HACD38ベクター中に生成した。同様にして、D202Gコード置換をpEE13.4HisCD38ベクター中に導入した。
【0479】
HEK-293F細胞における一過性発現
Freestyle(商標)293-F(懸濁培養および化学的に規定されたFreestyle培地に適応したHEK-293サブクローン(HEK-293F))細胞をInvitrogenから入手し、製造者のプロトコルにしたがって293フェクチン(Invitrogen)を使用して、pEE13.4HACD38、pEE13.4HisCD38、または突然変異を有する四つコンストラクトをトランスフェクトした。トランスフェクトされた細胞の培養上清を、抗CD38結合実験のためのELISAにおいて使用した。
【0480】
抗CD38抗体結合
突然変異T237A、Q272R、およびS274F:ELISAプレート(Greiner、#655092)を、1μg抗HA抗体(Sigma、#H-9658)で4℃で終夜コートしたのち、2%ニワトリ血清でブロッキングした。トランスフェクトされたHEK293F細胞の培養上清を希釈し、ELISAプレートにアプライし、室温で1時間インキュベートした。洗浄後、抗CD38抗体の連続希釈物を加え、室温で1時間インキュベートした。結合した抗体を、HRPコンジュゲートしたヤギ抗ヒトIgG抗体で検出した。アッセイをABTS(Roche、#1112597)で発色させ、分光光度計を使用して405nmで吸光度を計測した。
【0481】
突然変異D202G:ELISAプレート(Greiner、#655092)を、1μgペンタHis(Qiagen #34660)で4℃で終夜コートしたのち、2%PBS/BSAでブロッキングした。トランスフェクトされたHEK293F細胞の培養上清を希釈し、ELISAプレートにアプライし、室温で2時間インキュベートした。洗浄後、抗CD38抗体の連続希釈物を加え、室温で1時間インキュベートした。結合した抗体を、HRPコンジュゲートしたヤギ抗ヒトIgG抗体で検出した。アッセイをABTS(Roche、#1112597)で発色させ、分光光度計を使用して405nmで吸光度を計測した。
【0482】
この実験は、025、026、028および049の結合が突然変異T237A、Q272R、S274FおよびA199Tに対して感受性ではなく、D202G(025、028、049)によってひどく影響を受けることを明らかにした(図2)。
【0483】
実施例5
CD38トランスフェクトされたCHO(CHO-CD38)細胞およびDaudi-luc細胞への抗CD38抗体の結合
採取および計数ののち、Daudi-luc細胞、CD38をトランスフェクトされたCHO細胞、および対照CHO細胞をPBSに再懸濁させた(1×106個/mL)。細胞を96ウェルV底プレートに移し(100μL/ウェル)、PBS-BSA(0.1% BSAおよび0.02%アジ化Naで補足したPBS)中で2回洗浄した。PBS-BSA中50μL抗体を0.3~30μg/mLの範囲の三倍希釈物として加えた(4℃、30分)。PBS-BSA中で3回洗浄したのち、PBS-BSA中ウサギ抗ヒトIgG-FITC 50μL(1:400希釈)を加えた(暗所で4℃、30分)。細胞を3回洗浄し、CHO-CD38およびDaudi-luc細胞へのCD38抗体の特異的結合をフローサイトメトリーによって検出した。
【0484】
図3は、025、026、028、049および056がCHO-CD38細胞およびDaudi-luc細胞に結合することを示す。
【0485】
実施例6
抗体依存性細胞傷害性(ADCC)
以下に説明するように、Daudi-luc細胞のADCCを作用させる抗CD38抗体の能力を測定した。エフェクタ細胞として、健康なボランティアからの末梢血単核細胞(UMC Utrecht, The Netherlands)を使用した。
【0486】
Daudi-luc細胞をRPMI++(10% cosmicウシ血清で補足したRPMI 1640培地(HyClone, Logan, UT, USA))中に捕集し(5×106個)、それに100μCi 51Cr(クロム51、Amersham Biosciences, Europe GmbH, Roosendaal, The Netherlands)を加え、その混合物を37℃の水浴中1時間インキュベートした。細胞の洗浄(PBS中で2回、1500rpm、5分)ののち、細胞をRPMI++中に再懸濁させ、トリパンブルー排除によってカウントした。細胞を1×105個/mLの濃度にした。
【0487】
エフェクタ細胞の調製
製造者の取り扱い指示にしたがってFicoll(Bio Whittaker、リンパ球分離媒体、cat 17-829E)によってヘパリン血40mlから新鮮な末梢血単核細胞(健康なボランティア、UMC Utrecht, Utrecht, The Netherlands)を単離した。細胞をRPMI++中に再懸濁させたのち、細胞をトリパンブルー排除によってカウントし、1×107個/mlの濃度にした。
【0488】
ADCCセットアップ
51Cr標識された標的細胞50μlを96ウェルプレートにピペットで移し、抗体50μlを加え、RPMI++中に希釈した(最終濃度10、1、0.1、0.01μg/ml)。細胞をインキュベートし(室温、15分)、50μlエフェクタ細胞を加えて、100:1のエフェクタ:標的比を生じさせた(最大溶解の決定の場合には、エフェクタ細胞に代えて100μl 5% Triton-X100を加え、自然溶解の決定の場合には、50μL標的細胞および100μL RPMI++を使用した)。細胞を遠心沈殿させ(500rpm、5分)、インキュベートした(37℃、5% CO2、4時間)。細胞を遠心沈殿させたのち(1500rpm、5分)、上清100μLをマイクロニックチューブ中に採取し、ガンマカウンタでカウントした。特異的溶解率を以下のように計算した。
(cpm試料-cpm標的細胞のみ)/(cpm最大溶解-cpm標的細胞のみ)
式中、cpmは毎分カウント値である。
【0489】
025、026、028、049および056はDaudi細胞においてADCC媒介溶解を誘発した(図4)。
【0490】
実施例7
補体依存性細胞傷害性(CDC)
Daudi-luc細胞の採取および計数ののち、細胞の生存率は≧90%であるはずである。洗浄(PBS)後、細胞をRPMI-B(1% BSAで補足したRPMI)中に2.0×106個/mlで再懸濁させる。その後、細胞を1×105個/ウェル(50μL/ウェル)で96ウェル丸底プレートに載せる。次いで、50μL抗体をウェルに加える(最終濃度範囲0~100μg/ml(RPMI-B中、三倍希釈))。インキュベート(室温、15分)ののち、プールしたヒト血清(18名の健康なドナーのプール)11μLを各ウェルに加えた(37℃、45分)。ウェルを一度再懸濁させ、120μLをFACSチューブ(Greiner)に移した。次いで、10μLヨウ化プロピジウム(PI、Sigma-Aldrich Chemie B. V.)(10μg/ml溶液)をこの懸濁液に加えた。フローサイトメトリー(FACScalibur(商標)、Becton Dickinson, San Diego, CA, USA)により、死細胞の(PI陽性細胞に対応する)割合の計測によって溶解を検出した。
【0491】
図5は、抗CD38抗体025、026、028、049および056によって生じるCDC媒介CHO-CD38細胞溶解を示す。これらの抗CD38抗体はDaudi-luc細胞のCDCを誘発することができなかった。
【0492】
実施例8
酵素活性
CD38の酵素活性に対する抗CD38抗体の効果を測定した。CD38は、NADをサイクリックADPリボース(cADPR)に変換するシクラーゼ反応、NADまたはcADPRをADPリボースに変換するヒドロラーゼ反応、およびニコチン酸アデニンジヌクレオチド2'-リン酸(NAADP)を生成する塩基交換反応を含む、様々な酵素反応を触媒することが知られている。
【0493】
シクラーゼ活性
NGDアッセイ
本質的にGraeff et al., J. Biol. Chem. 269, 30260-30267 (1994)に記載されているアッセイにおいて、NGDを基質として使用して、CD38のシクラーゼ活性に干渉する抗CD38抗体の能力を計測した。
【0494】
簡潔にいうと、基質NGD+(80μM)をCD38(ヒトCD38のHis標識細胞外ドメイン0.6μg/ml。20mMトリスHClを含むバッファpH7.0中、His-CD38の精製に関してはWO2006099875の実施例3を参照されたい)とともにインキュベートした。cGDPRの産生は、410nmの発光波長(300nmで励起)で分光光度計測によってモニタすることができる。この実施例においては、340±60nmの励起フィルタおよび430±8nmの発光フィルタを使用した。
【0495】
CD38の酵素活性に対する025、026、028、049および056の効果を試験するために、基質NGD+を加える前に組換えHis-CD38タンパク質を抗体3μg/mlとともに室温で15分間プレインキュベートした。90分後にサイクリックGDPリボース(cGDPR)の産生を記録した。
【0496】
図6Aは、抗体025、026、028、049および056がcGDPRの産生に対して顕著な阻害効果を及ぼすことを示す。90分後、抗体(025、026、028、049または056)3μg/mlがcGDPR産生の53~66%の低下を生じさせた。時間経過実験において、HuMab-KLHの存在下または未処理のCD38対照でのcGDPR産生と比較して、CD38特異的抗体mAb028で処理されたサンプルにおけるcGDPR産生の速度が低下することが示された(図6B)。図6Cは、抗体028に関する用量応答曲線(0.01~30μg/ml)を示す。この実験においては、cGDPR産生の最大41%の低下が認められた。
【0497】
細胞発現CD38の酵素活性に対する028の効果を試験するために、CHO-CDC38細胞を028の連続希釈物(0.01~30μg/ml)とともに室温で30分間プレインキュベートしたのち、基質NGD+を加えた。90分後、サイクリックGDPリボース(cGDPR)の産生を記録した。図6Dに示すように、抗体028はcGDPRの産生を濃度依存的に阻害する。
【0498】
逆シクラーゼ反応
CD38によるNADからのcADPR産生に対するmAb028の効果を、逆シクラーゼ反応によって測定した。このアッセイは、CD38によって触媒される反応の可逆性に基づく。高濃度のニコチンアミドおよびcADPRの存在下で、ADPリボシルシクラーゼはNADを産生することができる。抗体を20mMトリスHCl、0.01%(v/v)BSA、pH7.2(トリス/BSA)中、10μg/mlに希釈した。ヒト組換えCD38をトリス/BSAによって2μg/mlに希釈した。等量(50μL)の希釈抗体を希釈CD38と混合することにより、抗体をCD38とともに10分間プレインキュベートした。プレインキュベートは室温で実施した。1mM cADPRおよび10mMニコチンアミドを含有する溶液25μLにCD38/抗体混合物25μLを移すことにより、反応を開始した。反応を室温で1~20分間進行させ、適当な時点で、サンプル全体をMillipore MultiScreen-IP Filter 96ウェルプレートに通してろ過してタンパク質を除去することによって反応を停止させた。産生されたNADをGraeff and Leeの方法(1)によって計測した。cADPRなしでニコチンアミドを含有する対照を試験して、試薬を汚染するNADの量を推定した。これらの実験において、汚染性NADは検出不可能であった。
【0499】
表2は、1μg/ml mAb-028が、NADからのcADPR産生を67%減らすことを示す。mAb-KLHは、NADからのcADPR産生に対して効果を及ぼさなかった。
【0500】
(表2)NADからのcADPR産生に対する抗体028の効果
【0501】
8-アミノ-NAD(8NH2-NAD)アッセイ
cADPR産生は、CD38によってNADから生成される産物の約1%しか占めないため(ADPRが残りを占める)、8-アミノ-NAD(8NH2-NAD)を基質として使用してリボシルシクラーゼ活性を同様に評価した。NADとは違い、8NH2-NAD基質のかなり多めの量(約8%)が8-アミノ-cADPR(8NH2-cADPR)に環化され、HPLC分析によって検出可能である。簡潔にいうと、抗体を20mMトリスHCl、0.01%(v/v)BSA、pH7.2(トリス/BSA)中、10μg/mLに希釈した。ヒト組換えCD38をトリス/BSAで2μg/mlに希釈した。等量(50μL)の希釈抗体を希釈CD38と混合することにより、抗体をCD38とともに10分間プレインキュベートした。プレインキュベートを室温で実施した。CD38/抗体混合物25μLを0.5mM 8NH2-NAD 75μLに移すことによって反応を開始した。反応を室温で10分間進行させ、適当な時点で、サンプル全体をMillipore MultiScreen-IP Filter 96ウェルプレートに通してろ過してタンパク質を除去することによって反応を停止させた。以下のように逆相HPLCによって反応生成物(8NH2-cADPRおよび8NH2-ADPR)を分析した。カラムは、Supelcoからの0.46×15cmのLC18-T逆相カラムであった。溶媒Aは、20mM KH2P04、5mMリン酸テトラブチルアンモニウムpH6からなり、溶媒Bは50%Aおよび50%メタノールからなるものであった。流量は1mL/分であり、溶媒の初期組成は15%Bであった。以下の勾配を使用して基質と生成物との分離を達成した。0~3.5分(15%B)、3.5~5.5分(15~32.5%B)、5.5~9分(32.5~40%B)、9~11.5分(40~50%B)、および16~18分(50~15%B)勾配を使用して、基質および生成物を溶離させた。溶媒A400μLをろ過サンプル100μLに加えることによって、サンプルを調製した。サンプル全部を注入した。Beckman 125 HPLCポンプおよびSystem Goldソフトウェアによって流量およびバッファ組成を制御し、Beckman 166 UV検出器によってピークを検出した。8NH2-NAD、8NH2-cADPR、および8NH2-ADPRピークの面積を使用して、アッセイにおいて産生された8NH2-cADPRの量を計算した。HPLCシステムは、Schweitzer et al.(2)によって記載されたシステムに基づくものであった。
【0502】
図7Aは、mAb-028が8NH2-cADPRを78%阻害することを示す。mAb-028は8NH2-cADPR産生を濃度依存的に阻害する(図7B)。
【0503】
したがって、mAb-028は、三つの異なる方法によってアッセイされた場合、CD38のADPリボシルシクラーゼ反応を阻害する。
【0504】
ヒドロラーゼ活性
HPLCによるヒドロラーゼ活性分析
cADPRまたはNADから産生されるADPRの量をHPLCによって測定することによって、ヒドロラーゼ活性を計測した。抗体を、20mMトリスHCl、0.01%(v/v)BSA、pH7.2(トリス/BSA)中、10μg/mLに希釈または滴定した。ヒト組換えCD38を、トリス/BSAによって2μg/mLに希釈した。等量(50μL)の希釈抗体を希釈CD38と混合することにより、抗体をCD38とともに10分間プレインキュベートした。プレインキュベートは室温で実施した。HPLCベースの方法の場合、CD38/抗体混合物40μLを4.3mM cADPR 10μLに移すことによってcADPRヒドロラーゼ反応を開始し、CD38/抗体混合物40μLを1mM NAD 10μLに移すことによってNADアーゼ反応を開始した。反応を室温で進行させ、適当な時点で1M HCl 25μLを加えることによって反応を停止させた。サンプル全体をMillipore MultiScreen-IP Filter 96ウェルプレートに通してろ過することによってタンパク質を除去した。2Mトリス塩基15μLを加えることによって各ろ液を中和し、HPLCによって分析するまで氷上に維持した。ヒドロラーゼ活性の分析は、Lee and Aarhus(3)によって開発されたHPLCアッセイに基づくものであった。サンプルを、AG MP-1(トリフルオロ酢酸形態)の0.5×5cmカラム上、トリフルオロ酢酸(TFA)の0~150mM 凹型上向き勾配で、3mL/分で10分間溶離させて分析した。Beckman 125 HPLCポンプおよびSystem Goldソフトウェアによって流量およびバッファ組成を制御し、Beckman 166 UV検出器によってピークを検出した。NAD、cADPRおよびADPRの面積を使用して、アッセイにおいて産生されたADPRの量を計算した。
【0505】
10μg/mLの濃度で、mAb-028は、CD38対照に比べ、cADPRヒドロラーゼ活性を62%刺激し、NADヒドロラーゼ活性を37%刺激したが、mAb-KLHは刺激しなかった(図8A)。図8Bは、mAb-028がcADPR加水分解を用量依存的に刺激したことを示す。30μg/mLの濃度では、mAb-028はヒドロラーゼ活性を78%刺激した。
【0506】
薄層クロマトグラフィー(TLC)によるヒドロラーゼ活性分析
32P-cADPRから産生される32P-ADPRの量を薄層クロマトグラフィーによって計測することによって、ヒドロラーゼ活性を計測した(4)。CD38/抗体混合物(上記)20μLを、0.5mM cADPRおよび約0.1μCiの32P-cADPRを含む混合物5μLに加えることにより、32PベースのcADPRヒドロラーゼ反応を開始した。反応を室温で進行させ、適当な時点で、反応物5μLを150mM TFA 5μLに加えて反応を停止させた。反応物をPEIセルロース薄層クロマトグラフィー(TLC)によって分析した。各停止した反応サンプル1μLをPEIセルロースTLCプレート(10×20cm)の始点に配置した。30%(v/v)エタノール中0.2M NaClでプレートを展開した。プレートを乾燥させ、ホスホイメージスクリーンに曝露した。スクリーンをPackard Cyclone Phosphorimager上で分析して、産生された32P-ADPRの量を測定した。
【0507】
図8Cは、mAb-028が32P-cADPR加水分解を用量依存的に刺激したことを示す。これらの結果は、HPLCによって計測されたcADPRヒドロラーゼ活性に類似していた(図8Bを参照されたい)。
【0508】
塩基交換活性
CD38の塩基交換活性によるニコチン酸アデニンジヌクレオチド2'-リン酸(NAADP)合成に対するCD38抗体の効果を評価した。抗体(mAb-KLHおよび028)を、20mM Hepes、pH7.3、0.01%(v/v)BSA(Hepes/BSA)中、40μg/mLに希釈した。ヒト組換えCD38を、Hepes/BSAで2μg/mLに希釈した。等量(90μL)の希釈抗体を希釈CD38と混合することにより、抗体をCD38とともに10分間プレインキュベートした。プレインキュベートは室温で実施した。200mM酢酸ナトリウム、pH4.0、25mMニコチン酸、および2mMニコチンアミドアデニンジヌクレオチド2'-リン酸(NADP)を含有する反応混合物50μLにCD38/抗体混合物50μLを移すことによって、塩基交換反応を開始した。反応は室温で30分間進行させ、サンプル全体をMillipore MultiScreen-IP Filter 96ウェルプレートに通してろ過してタンパク質を除去することによって停止した。ろ液中の反応生成物を、AG MP-1(トリフルオロ酢酸形態)の0.5×5cmカラム上、アニオン交換HPLCにより、トリフルオロ酢酸(TFA)の0~150mM 凹型上向き勾配で、1mL/分で30分間溶離させて測定した(5)。注入の直前に、2Mトリス塩基5μLを加えることによってろ液(50μL)を中和した。Beckman 125 HPLCポンプおよびSystem Goldソフトウェアによって流量およびバッファ組成を制御し、Beckman 166 UV検出器によってピークを検出した。NADP、NAADP(塩基交換生成物)、およびアデノシンジホスホリボース2'-リン酸(ADPR-P、加水分解生成物)ピークの面積を使用して、NAADP合成およびNADP加水分解の速度を計算した。
【0509】
図9は、mAb-028が、NAADPの形成を触媒するCD38の能力を阻害することを示す。mAb-028によるNAADP産生の阻害は濃度依存性であり(図9B)、IC50は0.14μg/mLである。
【0510】
参考文献一覧
【0511】
【0512】
CDR領域はIMGTに準じて示されている。
【0513】
ヒトCD38の配列は配列52に記載されている。274位においてSがFに変異しているヒトCD38の突然変異は、WO2006099875においてSEQ ID NO:34として記載され、272位においてQがRに変異している突然変異は、WO2006099875においてSEQ ID NO:33として記載されている。202位においてDがGに変異しているヒトCD38の突然変異は、SEQ ID NO:51として上に記載されている。
図1
図2-01】
図2-02】
図2-03】
図2-04】
図3-01】
図3-02】
図3-03】
図3-04】
図4-01】
図4-02】
図5
図6A
図6B
図6C
図6D
図7
図8A
図8B
図8C
図9A
図9B
【配列表】
2022050388000001.app
【手続補正書】
【提出日】2021-12-27
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ヒトCD38(SEQ ID NO:52)に結合する抗体であって、202位のAspがGlyで置換されているヒトCD38の変異体には、ヒトCD38に結合するのと同じ程度には結合しない、抗体。
【請求項2】
202位のAspがGlyで置換されているヒトCD38の変異体への抗体の結合のEC50が、ヒトCD38への該抗体の結合のEC50の50%未満、例えば10%未満、5%未満または1%未満である、請求項1記載の抗体。
【請求項3】
前記抗体が、272位のGlnがArgで置換されているヒトCD38の変異体には、ヒトCD38に結合するのと同じ程度に結合任意で、272位のGlnがArgで置換されているヒトCD38の変異体への抗体の結合のEC 50 が、ヒトCD38への該抗体の結合のEC 50 の少なくとも80%、例えば少なくとも90%、例えば少なくとも95%、例えば少なくとも98%である、請求項1または2記載の抗体。
【請求項4】
前記抗体が、274位のSerがPheで置換されているヒトCD38の変異体には、ヒトCD38に結合するのと同じ程度に結合任意で、ヒトCD38の変異体への抗体の結合のEC 50 が、ヒトCD38への該抗体の結合のEC 50 の少なくとも75%、例えば少なくとも80%、例えば少なくとも90%、例えば少なくとも95%、例えば少なくとも98%である、請求項1~3のいずれか一項記載の抗体。
【請求項5】
(i)202位のAspがGlyで置換されているヒトCD38の変異体には、ヒトCD38に結合するのと同じ程度には結合せず、(ii)272位のGlnがArgで置換されているヒトCD38の変異体には、ヒトCD38に結合するのと同じ程度に結合し、(iii)274位のSerがPheで置換されているヒトCD38の変異体には、ヒトCD38に結合するのと同じ程度に結合するという結合特性を有する、請求項1~4のいずれか一項記載の抗体。
【請求項6】
前記抗体が、実施例8のアッセイにおいて計測した場合、ヒトCD38に結合し、かつCD38シクラーゼ活性に対する阻害効果およびCD38ヒドロラーゼ活性に対する刺激効果を有任意で、阻害効果が、抗体の非存在下におけるCD38シクラーゼ活性に対する阻害効果に比べて少なくとも50~66%である、請求項1~5のいずれか一項記載の抗体。
【請求項7】
SEQ ID NO:1、6、11、16または21に記載されるヌクレオチド配列をその可変領域中に含むヒト重鎖核酸およびSEQ ID NO:26、31、36、41または46に記載されるヌクレオチド配列をその可変領域中に含むヒト軽鎖核酸によってコードされ、任意で、SEQ ID NO:1および26、6および31、11および36、16および41、または21および46に記載されるヌクレオチド配列をその可変領域中にそれぞれ含むヒト重鎖核酸およびヒト軽鎖核酸によってコードされる、ヒトCD38に結合する抗体。
【請求項8】
a)SEQ ID NO:5、10、15、20、もしくは25に記載される配列、または
b)該配列の変異体、例えば多くて一つ、二つ、もしくは三つのアミノ酸修飾、好ましくは置換、例えば保存的置換を有する変異体
を含むVH CDR3を含む、ヒトCD38に結合する抗体。
【請求項9】
SEQ ID NO:5、10、15、20または25に記載される配列を有するVH CDR3およびSEQ ID NO:30、35、40、45または50に記載される配列を有するVL CDR3を含む、ヒトCD38に結合する抗体。
【請求項10】
SEQ ID NO:5およびSEQ ID NO:30またはSEQ ID NO:10およびSEQ ID NO:35またはSEQ ID NO:15およびSEQ ID NO:40またはSEQ ID NO:20およびSEQ ID NO:45またはSEQ ID NO:25およびSEQ ID NO:50をそれぞれVH CDR3およびVL CDR3として含む、ヒトCD38に結合する抗体。
【請求項11】
(i)SEQ ID NO:3、8、13、18および23のいずれかに記載される配列を有するVH CDR1、SEQ ID NO:4、9、14、19および24のいずれかに記載される配列を有するVH CDR2、SEQ ID NO:5、10、15、20および25のいずれかに記載される配列を有するVH CDR3、SEQ ID NO:28、33、38、43および48のいずれかに記載される配列を有するVL CDR1、SEQ ID NO:29、34、39、44および49のいずれかに記載される配列を有するVL CDR2、SEQ ID NO:30、35、40、45および50のいずれかに記載される配列を有するVL CDR3、
(ii)SEQ ID NO:3に記載される配列を有するVH CDR1、SEQ ID NO:34に記載される配列を有するVH CDR2、SEQ ID NO:5に記載される配列を有するVH CDR3、SEQ ID NO:28に記載される配列を有するVL CDR1、SEQ ID NO:29に記載される配列を有するVL CDR2、SEQ ID NO:30に記載される配列を有するVL CDR3、
(iii)SEQ ID NO:8に記載される配列を有するVH CDR1、SEQ ID NO:9に記載される配列を有するVH CDR2、SEQ ID NO:10に記載される配列を有するVH CDR3、SEQ ID NO:33に記載される配列を有するVL CDR1、SEQ ID NO:34に記載される配列を有するVL CDR2、SEQ ID NO:35に記載される配列を有するVL CDR3、
(iv)SEQ ID NO:13に記載される配列を有するVH CDR1、SEQ ID NO:14に記載される配列を有するVH CDR2、SEQ ID NO:15に記載される配列を有するVH CDR3、SEQ ID NO:38に記載される配列を有するVL CDR1、SEQ ID NO:39に記載される配列を有するVL CDR2、SEQ ID NO:40に記載される配列を有するVL CDR3、
(v)SEQ ID NO:18に記載される配列を有するVH CDR1、SEQ ID NO:19に記載される配列を有するVH CDR2、SEQ ID NO:20に記載される配列を有するVH CDR3、SEQ ID NO:43に記載される配列を有するVL CDR1、SEQ ID NO:44に記載される配列を有するVL CDR2、SEQ ID NO:45に記載される配列を有するVL CDR3、
(vi)SEQ ID NO:23に記載される配列を有するVH CDR1、SEQ ID NO:24に記載される配列を有するVH CDR2、SEQ ID NO:25に記載される配列を有するVH CDR3、SEQ ID NO:48に記載される配列を有するVL CDR1、SEQ ID NO:49に記載される配列を有するVL CDR2、SEQ ID NO:50に記載される配列を有するVL CDR3、または
(vii)好ましくは多くて一つ、二つまたは三つのアミノ酸修飾、より好ましくはアミノ酸置換、例えば保存的アミノ酸置換を該配列の一つまたは複数の中に有する、前記のいずれかの抗体の変異体
を含む、CD38に結合する抗体。
【請求項12】
(i)SEQ ID NO:2、7、12、17または22の配列を含むか、または
(ii)SEQ ID NO:2、7、12、17または22に記載されたVH領域配列と少なくとも80%の同一性、例えば90%または95%または97%または98%または99%または100%の同一性を有する
VH領域を含む、CD38に結合する抗体。
【請求項13】
(i)SEQ ID NO:27、32、37、42または47の配列を含むか、または
(ii)SEQ ID NO:27、32、37、42または47からなる群より選択されるVL領域配列と少なくとも80%の同一性、例えば90%または95%または97%または98%または99%または100%の同一性を有する
VL領域を含む、CD38に結合する抗体。
【請求項14】
SEQ ID NO:2、7、12、17および22の配列のいずれかを含むVH領域と、SEQ ID NO:27、32、37、42および47の配列のいずれかを含むVL領域とを含む、CD38に結合する抗体。
【請求項15】
(i)SEQ ID NO:2に記載される配列を含むVH領域およびSEQ ID NO:27に記載される配列を含むVL領域、
(ii)SEQ ID NO:7に記載される配列を含むVH領域およびSEQ ID NO:32に記載される配列を含むVL領域、
(iii)SEQ ID NO:12に記載される配列を含むVH領域およびSEQ ID NO:37に記載される配列を含むVL領域、
(iv)SEQ ID NO:17に記載される配列を含むVH領域およびSEQ ID NO:42に記載される配列を含むVL領域、または
(v)SEQ ID NO:22に記載される配列を含むVH領域およびSEQ ID NO:47に記載される配列を含むVL領域
を含む、CD38に結合する抗体。
【請求項16】
請求項1~6のいずれか一項記載の結合特性を有する、請求項715のいずれか一項記載の抗CD38抗体。
【請求項17】
(a)本明細書の実施例6に記載する方法によって測定した場合、好ましくは5nM以下、例えば1nM以下、例えば0.2nM以下のEC50値で、例えばDaudi細胞において抗体依存性細胞傷害性(ADCC)を誘発することができる、または
(b)本明細書の実施例6に記載する方法にしたがって、Daudi細胞においてADCCを誘発することができない、
請求項1~16のいずれか一項記載の抗CD38抗体。
【請求項18】
(a)CHO-CD38細胞において補体依存性細胞傷害性(CDC)を誘発することができない、および/または
(b)10 -8 M以下のK D 、好ましくは10 -9 M以下のK D でヒトCD38に結合する、
請求項1~17のいずれか一項記載の抗CD38抗体。
【請求項19】
ヒト一価抗体である、請求項1~18のいずれか一項記載の抗CD38抗体。
【請求項20】
完全長IgG1、IgG2、IgG3、IgG4、IgD、IgA、IgEまたはIgM抗体、例えばIgG1抗体、好ましくはIgG1,κ抗体またはIgM抗体、好ましくはIgM,κ抗体であることを特徴とする、請求項1~19のいずれか一項記載の抗体。
【請求項21】
抗体フラグメントまたは単鎖抗体である、請求項1~19のいずれか一項記載の抗CD38抗体。
【請求項22】
一価抗体である、請求項1~21のいずれか一項記載の抗CD38抗体。
【請求項23】
(a)3μg/mlの濃度で90分後、本明細書の実施例8に記載されている分光光度法によって測定された場合、cGDPRのCD38触媒合成を少なくとも25%、例えば少なくとも30%阻害する、
(b)3μg/mlの濃度で90分後、Munshi et al., J. Biol. Chem. 275, 21566-21571 (2000)に記載されているHPLC法によって測定した場合、cADPRのCD38触媒合成を少なくとも25%、例えば少なくとも30%阻害する、
(c)CD38のヒドロラーゼ活性を少なくとも25%刺激する、
(d)CD38のNADヒドロラーゼ活性を少なくとも25%刺激する、
(e)CD38のcADPRヒドロラーゼ活性を少なくとも25%刺激する、および/または
(f)本明細書の実施例8に記載する方法によって、塩基交換反応によるNAADPの形成を触媒するCD38の能力を0.5μg/mL未満、例えば0.2μg/mL未満のIC50で阻害する、
請求項1~22のいずれか一項記載の抗体。
【請求項24】
抗体が、細胞傷害剤、放射性同位体、または薬物にコンジュゲートされており任意で、抗体が、リンカーを介してアウリスタチンまたはその機能性ペプチド類似物もしくは誘導体にコンジュゲートされている、請求項1~23のいずれか一項記載の抗体を含む抗体薬物コンジュゲート。
【請求項25】
請求項1~23のいずれか一項記載の抗体と、ヒトエフェクタ細胞または癌抗原に対する第二の結合特異性とを含む、二重特異性抗体であって、任意で、第二の結合特異性が、ヒトFc受容体またはT細胞受容体、例えばCD3に対するものである、二重特異性抗体
【請求項26】
請求項1~23および25のいずれか一項記載の抗体をコードする単離された核酸。
【請求項27】
請求項715のいずれか一項記載のアミノ酸配列の一つまたは複数をコードするヌクレオチド配列を含任意で、ヒト抗体の軽鎖、重鎖、または軽鎖および重鎖両方の定常領域をコードするヌクレオチド配列をさらに含む、発現ベクター。
【請求項28】
請求項1~23のいずれか一項記載の抗体を産生する組換え真核生物または原核生物宿主細胞。
【請求項29】
請求項1~23のいずれか一項記載の抗体、請求項24記載の抗体薬物コンジュゲート、請求項25記載の二重特異性抗体、または請求項27記載の発現ベクターと、薬学的に許容可能な担体とを含む、薬学的組成物。
【請求項30】
(a)医薬として使用するための、
(b)CD38を発現する腫瘍細胞の成長および/もしくは増殖、遊走を阻害する、またはCD38を発現する腫瘍細胞のファゴサイトーシスを誘発することに使用するための、
(c)関節リウマチの処置に使用するための、
(d)慢性リンパ性白血病(CLL)、急性リンパ芽球性白血病(ALL)、急性骨髄性白血病(成人)(AML)、マントル細胞リンパ腫、ろ胞性リンパ腫、およびびまん性大細胞型B細胞リンパ腫から選択される障害の処置に使用するための、あるいは
(e)多発性骨髄腫の処置に使用するための、
請求項1~23のいずれか一項記載の抗体。
【請求項31】
a)請求項28記載の宿主細胞を培養する段階、および
b)培地から抗CD38抗体を精製する段階
を含む、請求項1~23のいずれか一項記載の抗CD38抗体を産生するための方法。
【請求項32】
請求項1~23のいずれか一項記載の抗体を含む、診断用組成物。
【請求項33】
サンプルを、請求項1~23のいずれか一項記載の抗CD38抗体と、該抗体または二重特異性分子とCD38との間の複合体の形成を可能にする条件下で、接触させる段階、および
複合体が形成されたかどうかを分析する段階
を含む、サンプル中のCD38抗原、すなわちCD38を発現する細胞の存在を検出するための方法。
【請求項34】
サンプル中のCD38抗原、すなわちCD38を発現する細胞の存在を検出するためのキットであって、請求項1~23のいずれか一項記載の抗CD38抗体およびキットの使用に関する取り扱い指示を含む、キット。
【請求項35】
請求項1~23のいずれか一項記載の抗CD38抗体に結合する、抗イディオタイプ抗体。
【請求項36】
求項1~23のいずれか一項記載の抗体、請求項24記載の抗体薬物コンジュゲート、請求項25記載の二重特異性抗体、請求項27記載の発現ベクター、または請求項29記載の薬学的組成物
含む、CD38を発現する細胞の成長および/もしくは増殖、遊走を阻害する、またはCD38を発現する細胞のファゴサイトーシスを誘発するための医薬
【請求項37】
請求項1~23のいずれか一項記載の抗体、請求項24記載の抗体薬物コンジュゲート、請求項25記載の二重特異性抗体、請求項27記載の発現ベクター、または請求項29記載の薬学的組成物
含む、対象においてCD38を発現する細胞が関与する疾病または障害を処置するための医薬
【請求項38】
疾病または障害が
(a)関節リウマチである、
(b)慢性リンパ性白血病(CLL)、急性リンパ芽球性白血病(ALL)、急性骨髄性白血病(成人)(AML)、マントル細胞リンパ腫、ろ胞性リンパ腫、およびびまん性大細胞型B細胞リンパ腫から選択される、または
(c)多発性骨髄腫である、
請求項37記載の医薬
【請求項39】
前記医薬が、一つまたは複数のさらなる治療剤と組み合わせて用いられることを特徴とし、任意で、一つまたは複数のさらなる治療剤が、化学療法剤、抗炎症剤、または免疫抑制剤および/もしくは免疫調節剤から選択され、例えば、一つまたは複数のさらなる治療剤が、シスプラチン、ゲフィチニブ、セツキシマブ、リツキシマブ、オファツムマブ、ベバシズマブ、エルロチニブ、ボルテゾミブ、サリドマイド、パミドロネート、ゾレドロン酸、クロドロネート、リセドロネート、イバンドロネート、エチドロネート、アレンドロネート、チルドロネート、三酸化ヒ素、レナリドミド、デキサメタゾン、プレドニゾロン、フィルグラスチム、ペグフィルグラスチム、サルグラモスチム、スベロイルアニリドヒドロキサム酸、およびSCIO-469からなる群より選択される、
請求項36~38のいずれか一項記載の医薬