(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022050401
(43)【公開日】2022-03-30
(54)【発明の名称】弾性用途におけるクリープ性能を改善するための方法およびシステム
(51)【国際特許分類】
B05D 1/26 20060101AFI20220323BHJP
B05D 7/24 20060101ALI20220323BHJP
B05D 3/12 20060101ALI20220323BHJP
B05D 7/20 20060101ALI20220323BHJP
B05D 3/00 20060101ALI20220323BHJP
B05C 5/00 20060101ALI20220323BHJP
B05C 13/02 20060101ALI20220323BHJP
C09J 123/00 20060101ALI20220323BHJP
C09J 5/06 20060101ALI20220323BHJP
A61F 13/49 20060101ALI20220323BHJP
【FI】
B05D1/26 Z
B05D7/24 302G
B05D7/24 301P
B05D3/12 C
B05D7/20
B05D3/00 D
B05C5/00 101
B05C13/02
C09J123/00
C09J5/06
A61F13/49 315A
【審査請求】有
【請求項の数】14
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021200158
(22)【出願日】2021-12-09
(62)【分割の表示】P 2018558117の分割
【原出願日】2017-05-04
(31)【優先権主張番号】62/332,819
(32)【優先日】2016-05-06
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(71)【出願人】
【識別番号】313011456
【氏名又は名称】ボスティック,インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100114775
【弁理士】
【氏名又は名称】高岡 亮一
(74)【代理人】
【識別番号】100121511
【弁理士】
【氏名又は名称】小田 直
(74)【代理人】
【識別番号】100202751
【弁理士】
【氏名又は名称】岩堀 明代
(74)【代理人】
【識別番号】100191086
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 香元
(72)【発明者】
【氏名】シークリスト,キンバリー イー.
(72)【発明者】
【氏名】グラフ,ロナルド エフ.
(57)【要約】 (修正有)
【課題】別の基材に接着された弾性ストランドのクリープ性能を改善する、ポリオレフィン系熱溶融性接着剤を用いる方法およびシステムを提供する。
【解決手段】中立的に位置付けられた塗布機14の軸に垂直な線と、その塗布機から延在する弾性ストランド12とにより画定される出口角αの、1°よりも大きい、いくらかの偏向が導入される。好ましくは、入口角βの偏向も導入され、頭部傾斜角も提供される。偏向の使用は、クリープ性能を改善するか、あるいは、同じかまたは同様のクリープ性能を実現するのに用いられる低減された量の接着剤を可能にする。弾性ストランドは、おむつ等のパーソナルケア製品において脚袖口を形成するのに用いることができ、それらが適用される基材は、ポリエチレンフィルムまたは不織材料であり得るだろう。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
明細書および/または図面に記載の発明。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願に対する相互参照
この出願は、2016年5月6日に出願された米国特許出願第62/332,819号に対して、合衆国法典第35編第119条に基づく優先権を主張する。
【0002】
発明の分野
本発明は、弾性ストランドを基材に接合するべくポリオレフィン系接着剤を用いるための方法に関する。より具体的には、その発明は、乳児用おむつ、成人用失禁物品、および女性用衛生パッド等の、様々な使い捨て不織衛生製品を製造する際に度々見られる不織材料または熱可塑性フィルムに接着された弾性ストランドのクリープ性能を改善する際に特に有利である。
【背景技術】
【0003】
本発明の背景
熱溶融性接着剤は、典型的には周囲温度で固体塊として存在し、熱の適用により流動可能な液体に転換され得る。こうした接着剤は、様々な基材の接合が度々必要である様々な使い捨ての品物を製造する際に特に有用である。具体的な用途は、集合的に使い捨て不織衛生製品として知られている、使い捨ておむつ、病院用パッド、女性用生理用ナプキン、パンティシールド、外科用ドレープおよび成人用失禁製品を含む。他の多様化した用途は、紙製品、包装用材料、自動車用天井材、電気器具、テープおよびラベルに関与している。こうした用途のほとんどにおいて、熱溶融性接着剤はその溶融状態に加熱され、その後、度々一次基材として命名される基材に塗布される。その後、度々二次基材として命名される第2の基材が、直ちに第1のものと接触されてそれに対して圧縮される。その接着剤は冷却時に固まり、強い接合を形成する。熱溶融性接着剤の主要な利点は、水または溶媒系接着剤の場合であればそうであるように液体担体の不存在であり、それにより、溶媒除去と関連する費用のかかる工程を排除する。
【0004】
多くの用途のために、熱溶融性接着剤は、度々、ピストンまたは歯車ポンプ設備を用いることにより、薄いフィルムまたは溶球の形態で基材上に直接押し出される。この場合においては、その基材は、圧力下で熱間ダイと緊密接触される。そのダイの温度は、溶融した熱溶融性材料が塗布ノズルを通じて円滑に流れることを可能にするように、接着剤の融点よりも十分に高く維持しなければならない。ほとんどの用途、特に食品包装および使い捨て不織衛生物品の製造の際に遭遇するもののために、薄肉プラスチックフィルム等の、繊細かつ感熱性の基材の接合が度々関与している。これは、熱溶融性接着剤の用途のための塗工温度に上限を課す。今日の商業用熱溶融物は、基材の焼けまたは歪みを回避するために、200℃よりも低い、好ましくは150℃よりも低い塗工温度を有するように典型的に調合される。直接塗工の他にも、それを通じて遠くから基材上への圧縮された空気を活用して熱溶融性接着剤を噴霧塗工することができる、いくつかの間接または非接触塗工法も開発されている。こうした非接触塗工技術は、従来の螺旋噴霧、Omega(商標)、Surewrap(商標)および様々な形態の溶融吹き込み法を含む。しかしながら、間接法は、容認可能な塗工パターンを得るために塗布温度において、接着剤の粘性が十分に低く、通常は500乃至30,000mPa.sの範囲内に、好ましくは500乃至15,000mPa.sの範囲内になければならないことを要求する。そのようなシステムは、接着剤が乏しい凝集強度を呈することに繋がる低重合体レベルつまり低分子量を有する重合体の使用を要求するため、そのようなシステムにおいて噴霧可能性を維持するのに要求される低粘度は低下した性能に繋がる。多くの他の物理的要因、特に接着剤の流動学的特性は、熱溶融物の噴霧可能性を決定することに関わる。商業用熱溶融性製品の大多数は、噴霧用途には適していない。噴霧可能性を予測する容認された理論的な模範または指針は全くなく、塗布設備を用いて経験的にそれを決定しなければならない。
【0005】
熱溶融性接着剤は、重合体、可塑剤、粘着付与樹脂および酸化防止包装から典型的に成る有機材料である。蝋、充填剤、着色剤およびUV吸収剤等の他の原料も、接着特性を改質するのにまたは特殊属性を提供するのに用いることができる。こうした有機原料は、接着剤の塗工条件下で熱分解を生じやすい。例えば、スチレン-イソプレン-スチレン(SIS)トリブロック共重合体を基礎とする、広く用いられている商業用熱溶融性接着剤は、24時間にわたり175℃にさらされるときに、その本来の値から約50パーセントの粘性降下を被り得る。スチレン-ブタジエン-スチレン(SBS)系熱溶融物は、同様の条件下で架橋結合による問題を引き起こし得る。架橋結合は、粘性における劇的な増加を結果的にもたらすことができ、最終的に三次元重合体網目の形成により接着剤を流動不能にすることができる。粘性変化は、度々、溶融した材料の頂部上での炭化、ゲル化、および薄皮の形成を伴う。その分解は、接着特性および性能の悪化に必然的に繋がることになる。加えて、それらは設備の損傷も引き起こし得る。分解速度は温度依存性であり、より高い温度をもって、分解速度は増加する。そのため、接着剤の塗工温度を低減させることは、分解を鈍化させることができる。
【0006】
増加したライン速度を可能にする直接ストランド塗工工程に切り替える要望が業界内にあり、加えて、スチレンブロック共重合体(SBC)型調合物から離れて、ポリオレフィン熱溶融系等の、より少ない臭気を伴いかつ/またはより熱的に安定する材料に切り替える必要性が存在する。しかしながら、直接ストランド塗工工程のための既知の塗工機構成下で稼働するときに、現在のポリオレフィン型材料は、不十分かつ一貫性のない最終性能を度々示している。クリープ保持率―少なくとも1つの不織基材または重合体フィルムに弾性ストランドを保持する接着剤の能力―は、ポリオレフィン含有調合物の長期経時の最中に特に低下される。
【発明の概要】
【0007】
本発明の概要
本発明は、一貫して高いレベルのクリープ性能を提供しつつ、高い生産ライン速度で塗布することができ、熱および剪断に対する向上した安定性を呈する熱溶融性接着剤の必要性に対処する。本発明は、接着剤を弾性ストランドに直接塗布するときの最大のクリープ性能を改善する最適化された工程構成を記載している。本明細書において概説されている方法は、ポリオレフィン含有接着剤調合物を使用することを対象としている。本発明は、調合物を変化させる必要なく、工程および基材の変化と共に十分な最終性能基準を維持するという問題を解決する。最も注目すべきは、本発明は、性能を失うことなく用いられる接着剤のより少ない量を可能にする。より少ないアドオンを可能にすることは、潜在的に、消費者により薄い基材を用いることを可能にし得る。
【0008】
本発明は、直接弾性ストランド塗工の工程に属する。具体的には、本発明は、塗布機頭部、アイドラ、ローラ、およびストランドガイドの賢明な配置を通じて弾性ストランドの経路を注意深く制御する方法を開示している。全体では、その工程は、接着剤の塗布の地点で弾性ストランド上に下方の力を創出するように設計されており、この下方の力は、単独かまたは入口角を伴うかの何れかで出口角を形成し、それらの両方は、ポリオレフィンまたはその混合物を基礎とする熱溶融性接着剤調合物を用いて最終使用性能を最適化するべく個々に調節することができる。
【0009】
本発明の一実施形態によれば、ポリオレフィン系熱溶融性接着剤を用いる方法は、溶融状態にある接着剤を塗布機で弾性ストランドを備える一次基材に塗布するステップであって、そこで、中立的に位置付けられた塗布機の軸に垂直な線と、塗布機から下流移動方向に延在する弾性ストランドとにより画定される出口角は、少なくとも1°であるステップと、二次基材を接着剤と接触させることにより、二次基材を一次基材に接合するステップと、を備える。随意に、本発明の方法は、塗布するステップの最中に、少なくとも1°である、中立的に位置付けられた塗布機の軸に垂直な線と、塗布機から上流移動方向に延在する弾性ストランドとにより画定される入口角を提供することをさらに備える。本発明のさらなる一実施形態によれば、塗布するステップの最中に、ストランドおよび塗布機先端の接点に対して正接の線と、接着剤が塗布機を出る際の移動方向に沿って延在する軸線とにより画定される頭部傾斜角は、60°および89°の間、または91°および120°の間の範囲にわたり提供される。
【0010】
本発明の別の実施形態によれば、ポリオレフィン系熱溶融性接着剤を弾性ストランドに塗布するためのシステムは、塗布機先端と、塗布機先端の垂直位置よりも上に配置された引出しローラまたはアイドラとを有する塗布機を備える。その塗布機先端は、弾性ストランドを備える直線的に動く一次基材に接触するように適合され、かつ、接着剤を一次基材に塗布するように適合される。引出しローラまたはアイドラは、少なくとも1°の、中立的に位置付けられた塗布機の軸に垂直な線と、塗布機から下流移動方向に延在する弾性ストランドとにより画定される出口角を提供するように配置される。本発明のシステムは、少なくとも1°の、中立的に位置付けられた塗布機の軸に垂直な線と、塗布機から上流移動方向に延在する弾性ストランドとにより画定される入口角を提供するように、塗布機先端の垂直位置よりも上に構成された引入れローラまたはアイドラをさらに備え得る。その塗布機は、60°および89°の間、または91°および120°の間の、ストランドおよび塗布機先端の接点に対して正接の線と、接着剤が塗布機を出る際の移動方向に沿って延在する軸線とにより画定される頭部傾斜角を提供するように構成され得る。
【0011】
本発明の一実施形態は、塗布物中に含有される(本明細書に記載されているとおりの)ポリオレフィン系熱溶融性接着剤を伴う発明のシステムも含む。
【0012】
本発明の一実施形態によれば、ポリオレフィン系熱溶融性接着剤は、単一部位触媒(SSC)を用いて生産されたプロピレン重合体と、高分子量の本質的に非晶質のポリプロピレン重合体(HMW SSC-PP重合体)と、低分子量の半結晶性のポリプロピレン共重合体(LMW SSC-PP重合体)とのポリオレフィン混合物である重合体成分を備える。特徴的な分子量の成分重合体は、二峰性の分子量分布を有する重合体混合物を生じる。分子量における差異の他にも、混合物中のSSC-PP重合体は、重合体の結晶性の間接的な尺度である、溶融エンタルピーにおいても異なる。本発明の目的のために、LMWの半結晶性のSSC-PP重合体は、100,000g/モル以下の重量平均分子量(Mw)と、DSC曲線上の特徴的な融点と、材料のグラム当たり30ジュール(J/g)を上回る溶融エンタルピーとを有するプロピレンの単独または共重合体として定義される。HMWの本質的に非晶質のSSC-PP重合体は、100,000g/モルを上回る重量平均分子量(Mw)を有し、材料のグラム当たり30ジュール(J/g)を下回る溶融エンタルピーを伴うDSC曲線上の小さいが顕著な融点により特徴付けられるごく一部の残留物の結晶性を含有するプロピレンの単独または共重合体として定義される。前記HMW本質的非晶質SSC-PP重合体は、完全に非晶質であり、そのDSC曲線上で溶融ピークを全く示さないこともある。その組成物は、粘着付与剤成分、可塑剤成分、酸化防止包装、および随意に、蝋、充填剤、着色剤、UV吸収剤、および別の重合体等の他の添加物も含む。その組成物は、様々な直接および間接的な塗工法を用いる用途に十分に適しており、低塗工温度、広い塗工温度範囲、低表面エネルギーのプラスチック基材への優れた接着、高凝集強度、高剪断抵抗、高ストランド保持特性、低粘性、低融点および上質の熱安定性を含む特性の新規な組み合わせを有する。本発明の組成物は、食品包装、製品組み立てに、かつ、ポリエチレンおよびポリプロピレンフィルム、不織布および弾性ストランドの互いに対するかまたはそれら自体に対する接合のための使い捨て不織物品の組み立てに特に有用である。
【0013】
本明細書において用いられる際に、SSCは、α-オレフィン重合のための単一部位触媒を指す。
【0014】
本明細書において用いられる際に、Mwは、重合体の重量平均分子量を指す。
【0015】
本発明の目的のために、本質的に非晶質という用語は、ポリプロピレン系(PP)重合体が0J/gから約30J/gまでの溶融エンタルピーを呈する状態を指すのに用いられる。
【0016】
本発明の目的のために、半結晶性という用語は、PP系重合体が30J/gを上回る溶融エンタルピーを呈する状態を指すのに用いられる。
【0017】
本明細書において用いられる際に、HMW SSC-PPは、約100,000g/モルよりも大きいMwを有する、単一部位触媒を用いることにより生産された、高分子量の本質的に非晶質のプロピレンの単独重合体または共重合体の分類を指す。前記重合体は完全に非晶質であり、DSC曲線上で溶融ピークを全く示さないことがあるが、それらは、材料のグラム当たり30ジュール(J/g)以下、すなわち、0J/gから約30J/gまでの関連する溶融エンタルピーを伴う、一つまたは複数の小さいが顕著な溶融ピークをDSC曲線上で生じるごく一部の結晶を有することもある。
【0018】
本明細書において用いられる際に、DSC曲線は、示差走査熱量測定(DSC)計器を用いることにより得られた熱流または熱容量対温度のプロットを指す。こうした値を決定するのに用いられた試験法は、ASTM E793-01「示差走査熱量測定による融合および結晶化エンタルピーに関する標準試験法」である。
【0019】
本明細書において用いられる際に、LMW SSC-PPは、約100,000g/モル以下の重量平均分子量(Mw)と、材料のグラム当たり30ジュール(J/g)以上、すなわち、典型的に約30J/gから約100J/gまでの関連する溶融エンタルピーを伴う、DSC曲線上の一つまたは複数の特徴的な溶融ピークとを有する、低分子量の半結晶性のプロピレンの単独重合体または共重合体の分類を指す。「溶融エンタルピー」、「融合エンタルピー」、「融合熱」および「溶融熱」という用語は、交換可能なものとして用いられる。
【0020】
本明細書において用いられる際に、SSC-PP混合物は、少なくとも1種のHMW SSC-PP重合体および少なくとも1種のLMW SSC-PP重合体から成る重合体混合物を指す。
【0021】
本発明と関連して用いられる熱溶融性接着剤組成物は、半結晶性のLMW SSC-PP重合体および本質的に非晶質のHMW SSC-PP重合体を、前記LMW材料の前記HMW材料に対する比が9:1から1:9重量部まで及ぶ状態で含有するポリプロピレン重合体混合物を備え得る。その接着剤組成物は、前記SSC-PP混合物に加え、粘着付与樹脂、可塑剤および酸化防止系を一次原料として備える。本発明の組成物は、半結晶性のLMW SSC-PP重合体と、本質的に非晶質のHMW SSC-PP重合体との間の相補特性を利用しており、先行技術のポリオレフィン系熱溶融性接着剤の短所を克服している。本発明の組成物は、引張強度、靭性、柔軟性および接着の十分に均整のとれた特性を提供する。それは、低密度ポリエチレン(LDPE)およびアイソタクチックポリプロピレン(iPP)フィルム等の様々な低表面エネルギー基材に対する高接合強度、一定の緊張下で弾性材料を保持する高凝集強度、優れた熱安定性、良好な湿潤特性、広範な塗布温度範囲、長い開口時間、良好な未乾燥の接合強度、低粘度、設置されるときの少ないかまたは全くない残留する粘着、および本質的に全ての既知の熱溶融塗工法を用いる適切性を呈する。特に、本発明は、例えば、螺旋噴霧、Omega(商標)、Surewrap(商標)、溶融吹き込み、Control Coat(登録商標)、および同様のもの等の様々な噴霧塗工塗布技術、および、例えば、スロット塗工、V-slot(商標)、Allegro(商標)および同様のもの等の非噴霧塗工塗布技術に十分に適している接着剤組成物に繋がり、こうした塗工技術は当業者に十分に知られており、本発明の議論の対象ではない。
【0022】
従って、本発明は、少なくとも1種の半結晶性のLMW SSC-PP共重合体および少なくとも1種の本質的に非晶質のHMW SSC-PP共重合体を含有する重合体混合物を備える熱溶融性接着剤組成物と共に用いることができ、それらの両方は、プロピレンの単独重合体、または、単一部位触媒(SSC)を用いて生産されたアルファ-オレフィン共単量体とのプロピレンの共重合体の何れかであり、重合体鎖に沿って統計的に乱雑な共単量体分布を有する。混合物中の半結晶性のLMW SSC-PP重合体の本質的に非晶質のHMW SSC-PP重合体に対する重量比は、9:1から1:9まで及び、本発明の組成物中の重合体混合物の総量は、20重量%から80重量%まで、好ましくは30重量%から60重量%まで、最も好ましくは30重量%から50重量%までである。
【0023】
本願発明は、可塑剤、相溶可能な粘着付与剤および酸化防止剤と組み合わせて、上記で言及されている本明細書における重合体混合物を含有する熱溶融性接着剤組成物と共に用いることができる。その組成物は、蝋、官能化重合体、着色剤、UV吸収剤、および充填剤を含むが、それらに限定されない随意の添加物を含有し得る。
【0024】
本発明と共に用いられる熱溶融性組成物は、177℃にて500mPa.sから35,000mPa.sまで、好ましくは1000mPa.sから20,000mPa.sまで、最も好ましくは2,000mPa.sから15,000mPa.sまで及ぶ低粘度を有する重合体混合物を備え得る。低粘度は、様々な噴霧塗工法を伴う用途にとって必須である。
【0025】
本発明と共に用いられる熱溶融性接着剤組成物は、不織弾性取り付け用途に関して、少なくとも80%以上のクリープ保持率を提供することができ、80%という値は、一般に、使い捨て不織衛生物品業界により容認可能な最小値である。
【0026】
別の目的は、様々な熱溶融塗工法を用いることにより本発明の熱溶融性組成物を塗布する技術を教示し、最初に前記熱溶融物を第1の基材に塗布し、後続して前記第1の基材を二次つまり追加の基材に貼り合わせることにより、2つ以上の基材を接合または積層する方法を提供することである。
【0027】
本発明の別の目的は、乳児用おむつ、用便しつけ用パンツ、成人用失禁物品、女性用パッド、パンティライナー、外科用ガウンおよび鳥肉用吸収パッドを含むが、それらに限定されない不織衛生吸収物品の製造の際の様々な用途に特に有用である熱溶融性接着剤組成物を用いる方法を提供することであり、前記組成物は、引張強度、靭性、柔軟性および接着の十分に均整のとれた特性を有する。それは、LDPEおよびiPPフィルム等の様々な低表面エネルギー基材に対する高接合強度、一定の緊張下で弾性材料を保持する高凝集強度、優れた熱安定性、良好な湿潤特性、広範な塗布温度範囲、長い開口時間、良好な未乾燥の接合強度、低粘度、設置されるときの少ないかまたは全くない残留する粘着、および本質的に全ての既知の熱溶融塗工法を用いる適切性を呈する。
【0028】
本発明の実施形態は、54.4℃に保持された初期クリープおよび4週間経時後クリープの値の両方に関する偏向を全く伴わない、同じ基材、調合および試験条件に関するクリープ保持率の値について、10%、より好ましくは20%、最も好ましくは30%のクリープ保持率の改善を提供するのに効果的な(非零出口角、非零入口角、非90度頭部傾斜角、またはそれらの任意の組み合わせの何れかを通じる)任意の偏向を提供することを含む。
【0029】
図面の簡潔な記載
本発明は、添付の図面と関連して読まれるときに、以下の詳細な記載から最良に理解される。図面に含まれているのは、下記に特定されている図である。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【
図1】1°よりも大きい種々の入口および出口角を有する、本発明によるシステムを示す概略図面である。
【
図2a】入口および出口角の偏向を全く有しない、先行技術によるシステムを示す概略図面である。
【
図2b】1°よりも大きい入口および出口角を有する、本発明によるシステムを示す概略図面である。
【
図2c】1°よりも大きい入口および出口角と、塗布機の前方の頭部傾斜とを有する、本発明によるシステムを示す概略図面である。
【
図3a】1°よりも大きい入口角を有するが出口角を全く有しない、本発明によるシステムを示す概略図面である。
【
図3b】1°よりも大きい出口角を有するが入口角を全く有しない、本発明によるシステムを示す概略図面である。
【発明を実施するための形態】
【0031】
本発明の詳細な記載
本発明は、例解目的のために選択された本発明の例示的な実施形態を示す、添付の図面の図と関連して読まれるときに、以下の詳細な記載から最良に理解される。本発明は、図を参照して例解されることになる。そのような図は、制限的ではなく例解的であるように意図されており、本発明の説明を容易にするべく本明細書と共に含まれている。
【0032】
図1は、引入れストランドガイドから塗布機頭部までの入口角と、塗布機頭部から第1の引出しアイドラ/ローラまでの出口角とを創出するべく弾性ストランドを下方に追いやる塗布機頭部(つまり先端)を示す、適切な設置の選択肢の概略図面を描写している。システムはガイド(つまりアイドラ)およびローラの様々な構成を有し得るものの、本明細書において論じられている引入れガイドまたはローラは、入口側上の塗布機先端に最も近いものであり、本明細書において論じられている引出しガイドまたはローラは、出口側上の塗布機先端に最も近いガイドまたはローラである。アイドラおよびガイドは、本明細書において同義的に用いられている。入口および出口角は、中立的に位置付けられた塗布機の軸に垂直な線から図中に示されているように上方に(つまり塗布機に向かって)延在することから正である。
【0033】
より具体的には、
図1は、1°よりも大きい種々の入口および出口角を有する、ポリオレフィン系熱溶融性接着剤を弾性ストランド12を備える一次基材に塗布するための塗布機システム10を示している。システム10は、塗布機先端16を有する塗布機14を備える。塗布機14は溶融状態にある接着剤を包含し、それにより、それを弾性ストランド12に搬送し、その後既知の方法で冷却時に硬化させることができる。塗布機14は、図中に示されているように左から右へ、稼働中に直線的に動いている弾性ストランド12に接触するように適合された塗布機先端16を有する。先端16は、接着剤を直接一次基材に塗布するように適合される。システム10は、少なくとも1°の、塗布機14の軸に垂直な線N1と、塗布機から下流移動方向に延在する弾性ストランドとにより画定される出口角αを提供するように、塗布機先端16の垂直位置よりも上に配置された引出しローラまたはアイドラ18をさらに備える。より具体的には、先端16の垂直位置は、塗布機先端が弾性ストランド12に接触する地点により画定され、引出しローラまたはアイドラ18の垂直位置は、弾性ストランド12との最上接点により画定される。出口角αは、
図1において、塗布機先端16の弾性ストランド12との接点から水平に延在する線N1に沿って示されている。
【0034】
本システムは、接着剤が、一般に、使用中に塗布機14から下方に(任意の頭部傾斜の不存在下で)流れるように配向されるため、線N1は、
図1においては水平に延在している。本明細書において用いられているとおり、入口および出口角は、それぞれ、ストランドが塗布機先端に入るかまたは出る際のそれと、中立的に位置付けられた塗布機の軸に垂直な線とにより画定される。中立的に位置付けられた塗布機は、
図1に示されているような、その軸が入口または出口角を全く有しない弾性ストランドにより形成される線(すなわち、
図1に示されている線N1またはN2)から90°であるものである。図中に示されているもの以外のシステムは、その中立位置に配置された塗布機に対してある角度でのつまり横向きの塗布のように、本発明に従って使用することができるだろう。例えば、中立的に位置付けられた塗布機が接着剤を横向きに(すなわち、水平に)塗布するシステムにおいては、そのとき、線N1およびN2は垂直に延在することになるだろう。「下流移動方向」は、弾性ストランド12がシステム10の稼働中に移動している方向、すなわち、図中に示されているような左から右を意味するように意図されている。
【0035】
システム10は、少なくとも1°の、塗布機の軸に垂直な線N2と、塗布機から上流移動方向に延在する弾性ストランド12とにより画定される入口角βを提供するように、塗布機先端16の垂直位置よりも上に構成された引入れローラまたはアイドラ20をさらに備える。より具体的には、塗布機先端16の垂直位置は、塗布機先端が弾性ストランド12に接触する地点により画定され、引入れローラまたはアイドラ20の垂直位置は、弾性ストランド12との最上接点により画定される。入口角βは、
図1において、塗布機先端16の弾性ストランド12との接点から水平に延在する線N2に沿って示されている。「上流移動方向」は、弾性ストランド12がシステム10の稼働中に移動しているのとは反対の方向、すなわち、図中に示されているような左から右を意味するように意図されている。
【0036】
そのようにするための、接着剤を弾性ストランドに塗布するための商業的に入手可能な塗布機システムおよび塗布機先端、またはノズルは、Allegro(商標)の塗布機先端を有するNordson(商標)のZero-Cavity熱溶融塗工モジュールと、ITW DynatecのUltra(商標)ストランド塗工システム(SCS)とを含む、Nordson CorporationおよびITW Dynatecにより作られるシステムおよび製品を含む。
【0037】
システム10の様々な構成要素は、入口角αおよび出口角βを修正するように構成することができる。2つの角度の特定の値は、既知の要因の中でもとりわけ、選択される接着剤調合物、用いられる弾性材料、接着剤の所望のアドオン重量、ライン速度、所望のクリープ保持率、ノズル構成、および処理条件を含む、いくつかの要因に応じて最適化することができる。本発明の教示を考慮しかつ既知のパラメータ内において、出口角αは、1°および20°、2°および10°、または2.5°および7.5°の間にあり得る。同様に、入口角βは、1°および20°、2°および10°、または2.5°および7.5°の間にあり得る。本明細書においては範囲が与えられているが、各下限は任意の開示されている上限まで及ぶことがあり、それにより、入口または出口角の何れも、例として、1°から7.5°まで、または2.5°乃至20°に及び得る。さらに、本発明は、出口角のみを利用し、入口側上に全く偏向を有しないこと(例えば、0°の入口角β)を企図している。代替的に、本発明は、入口角のみを利用し、出口側上に全く偏向を有しないこと(例えば、0°の出口角α)を企図している。
【0038】
図2aは、引入れローラまたはアイドラ40aおよび引出しローラまたはアイドラ38aが塗布機先端36aと同じ垂直位置にある、先行技術のシステムによる実施形態を示している。より具体的には、2つのローラまたはアイドラが弾性ストランド32aに接触するところの最上部分は、塗布機先端36aが弾性ストランド32aに接触する地点と同じ垂直位置にある。従って、弾性ストランド32aは、全く偏向を伴わずに、引入れローラまたはアイドラ40aから引出しローラまたはアイドラ38aまで本質的に水平な線を形成する。この水平な線は、塗布機の軸に対して垂直である。別の言い方をすれば、入口および出口角の両方は0°である。この実施形態においては、塗布機先端36aは弾性ストランド32aに接触しているが、いかなる下方の力も及ぼしていない。この概略図は、塗布機先端が弾性ストランドと接触しない間接接触を表すことができるだろう。
【0039】
本発明の代替的な実施形態が、
図3b乃至4bに示されている。
図2bに示される実施形態においては、システム30bの構成要素は、出口角αおよび入口角βが同一であるように構成される。特に、引入れローラまたはアイドラ40bおよび引出しローラまたはアイドラ38bは、塗布機先端36bに対して同じ距離および同じ垂直高さにある。他の実施形態でのように、垂直高さに言及するときには、ローラまたはアイドラが弾性ストランド32bに接触するところの最上部分について言及がなされている。同様に、言及される塗布機先端36bの特定の地点は、塗布機先端が弾性ストランド32bに接触するところである。この実施形態による代替的な手法においては、2つのローラは、塗布機先端36bに対して同じ垂直高さおよび距離にないかもしれないだろうが、それらは、出口角αが入口角βと同等であるように配置されることになるだろう。例えば、引出しローラまたはアイドラ38bは、引出しローラまたはアイドラが弾性ストランド32bに接触するところの最上部分が、
図2bに示される弾性ストランド32bにより形成される線に沿っており、それにより、出口角αが同じであることになるだろう限りにおいて、より低い垂直高さにあり、かつ塗布機先端36bにより近くにあり得るだろう。
【0040】
図2cに示される実施形態においては、システム30cの構成要素は、少なくとも1°の出口角αおよび入口角βを有することに加え、89°よりも小さい「頭部傾斜角」γが存在するように構成される。既知の調節用構成要素を、塗布機34cの頭部傾斜を調節するのに用いることができる。頭部傾斜角は、(塗布機先端36cが弾性ストランド32cに接触する地点から延在する)ストランドおよび塗布機先端の接点に対して正接の線と、接着剤が塗布機先端36cを出る際の移動方向に沿って延在する軸線Aとにより画定される。(線Aは、塗布機の軸と同じ線でもある。)ストランドおよび塗布機先端の接点に対して正接の線は、その実施形態に応じて変化することになる。例えば、この線は、
図2bでのように、入口角が全くない場合においては、塗布機の引入れ側にてストランドにより形成される線と合同である。同様に、この線は、
図2aでのように、出口角が全くない場合においては、塗布機の引出し側にてストランドにより形成される線と合同である。入口および出口角の両方がある場合においては、この線は、
図2cに示されているようにN1またはN2であることになるだろう。様々なシステムにおいては、この線は種々の方向に延在することになるだろう。例えば、(頭部傾斜の不存在下で)塗布が横向きに行われるシステムにおいては、そのとき、ストランドおよび塗布機先端の接点に対して正接の線は垂直な線であることになるだろう。
【0041】
「前方」頭部傾斜は、頭部が弾性ストランド32cの下流移動方向に向かって傾斜していることから、頭部傾斜角が89°よりも小さいことを意味する。代替的な一実施形態においては、頭部傾斜角が91°よりも大きいことを意味する、「後方」頭部傾斜を利用することができる。本発明の代替的な実施形態においては、頭部傾斜角は60°および89°の間にあるか、または91°および120°の間にある。好ましくは、頭部傾斜角は70°および88°の間、より好ましくは、80°および88°の間にある。本明細書においては範囲が与えられているが、各下限は(別個に、前方および後方頭部傾斜についての)任意の開示されている上限まで及ぶことがあり、それにより、頭部傾斜角は、一例として、70°から89°まで及び得る。本発明は、入口または出口角の何れの偏向も全く伴わないか、両方の偏向を伴うか、または入口または出口角の何れの偏向も伴う頭部傾斜角の使用を企図している。好ましくは、そのシステムは、頭部傾斜が75°乃至90°の間にある状態で、0.0°乃至2.5°の間の入口角に1.0°乃至5.0°の間の出口角を提供するように構成される。別の実施形態によれば、90°よりも大きい頭部傾斜は、2.5°よりも大きい出口角を提供される。
【0042】
本発明のさらなる一実施形態によれば、ポリオレフィン系熱溶融性接着剤は、弾性ストランドまたは他のエラストマー成分のクリープ抵抗を改善するべく1つ以上の基材に塗布される。本発明の一実施形態による方法は、溶融状態にある接着剤を塗布機で弾性ストランドを備える一次基材に塗布することを備え、そこで、中立的に位置付けられた塗布機の軸に垂直な線と、塗布機から下流移動方向に延在する弾性ストランドとにより画定される出口角は、少なくとも1°である。その方法は、二次基材を接着剤と接触させることにより、二次基材を一次基材に接合することを備える。塗布するステップの最中に、少なくとも1°の、中立的に位置付けられた塗布機の軸に垂直な線と、塗布機から上流移動方向に延在する弾性ストランドとにより画定される入口角が形成される。そのような入口角は、少なくとも1°の出口角の代替として、またはそれに加えて用いることができる。また塗布するステップの最中に、60°および89°の間、または91°および120°の間の頭部傾斜角が、ストランドおよび塗布機先端の接点に対して正接の線と、接着剤が塗布機を出る際の移動方向に沿って延在する軸線とにより画定される。そのような頭部傾斜角は、非零入口または出口角の何れかまたは両方に加えて、あるいは両方の代替として用いることができる。システムに関連して上記で論じられている好適な範囲は、方法に等しく当てはまる。
【0043】
本発明の一実施形態においては、積層物を作る方法は、(1)非零入口または出口角あるいは90°に等しくない頭部傾斜角のうち1つを用いて、溶融状態にある本発明の熱溶融性接着剤組成物を一次基材に塗布するステップと、(2)二次基材を接着剤組成物と接触させることにより、二次基材を一次基材に接合するステップとを備える。その一次基材は、おむつの脚袖口の一部として用いられる弾性ストランド等のおむつの弾性部分であり得る。そのような弾性ストランド(またはバンド)、およびおむつの脚袖口の一部としてのそれらの用途は、参照により本明細書に組み込まれている米国特許第5,190,606号に示されている。その二次基材は、SMS不織布ポリエチレンフィルム等の不織材料またはフィルムを備え得、本方法は、二次基材を弾性ストランドに巻き付けることを含み得る。このようにして、二次基材のみが、脚袖口の一つまたは複数のストランドを被包する基材としての役割を果たすことができる。代替的な一実施形態においては、三次基材が用いられ、二次および三次基材は、弾性ストランドの向かい合う側面上の弾性ストランドに貼り合わせることができる。そのような実施形態においては、二次基材はポリエチレンフィルムであり得、三次基材は不織材料のフィルムであり得、逆もまた然りである。さらに、不織布に接合されたポリオレフィンフィルムから成る合成おむつ用裏面シートも、上記で述べられている二次および三次基材として用いることができる。
【0044】
上記で示されているように、本接着剤は、重合体成分、可塑剤、粘着付与樹脂および酸化防止包装を備え、その重合体成分はポリオレフィンを備える。そのため、本発明の接着剤は、49重量%よりも少ない、より好ましくは25重量%よりも少ない、より好ましくは10重量%よりも少ない、最も好ましくは5重量%よりも少ない等の、少量の非ポリオレフィン成分を除外しないが、これはポリオレフィン系である。好ましくは、その重合体成分は、ポリオレフィンの少なくとも50重量%、より好ましくは51重量%、より好ましくは75重量%、一層より好ましくは90重量%、なおより好ましくは95重量%、最も好ましくは全てのまたは実質的に全てのポリオレフィンを備える。その重合体成分は、ポリオレフィンまたはポリオレフィン類の混合物を備え得るか、あるいは本質的にポリオレフィンまたはポリオレフィン類の混合物から成り得るか、あるいはポリオレフィンまたはポリオレフィン類の混合物から成り得る。本発明と関連する使用にとって適切ないくつかの例示的なポリオレフィン系接着剤は、参照により本明細書に組み込まれている、US 2015/0024649 A1(米国特許出願公開第2015/0024649号)に開示されているものを含む。好ましくは、その重合体成分は、特等のポリプロピレン(PP)衝撃用共重合体を代表する―RAHECOと称されている―Borealisの乱雑不均質相共重合体等の不均質相ポリオレフィンである。こうした材料は、一般的な商業用の衝撃用共重合体と同様の化学組成および相構造を有するが、結晶性PP母体相とゴム相との間の改善された相溶可能性を持っている。それらの独特な生産工程に起因して、RAHECOの等級は、典型的な商業用の衝撃用共重合体(ICP)系よりも広い範囲にわたり調節することができる、結晶性PP母体中の「柔らかい」がより結晶性のある、より高融点のゴム相から成ることを提唱されている。加えて、その重合体は、LyondellBasellから入手可能なポリプロピレン衝撃用共重合体であり得る。不均質相重合体は、連続または不連続重合体相の両方を含有する、多相重合体として定義することができる。その連続相は母体相とも称されることがあり、その不連続相はゴムまたはエラストマー相として知られている。2016年1月14日に出願された、米国特許出願第62/278,747号に記載されているポリオレフィン混合物は、本発明との使用に特別に十分に適しており、それの態様は本明細書に記載されている。
【0045】
本明細書の実施形態によれば、そのポリオレフィン成分は、ポリプロピレン単独重合体、ポリプロピレン共重合体、非晶質ポリアルファ-オレフィン(APAO)、オレフィンブロック共重合体、(プロピレン系であり得る)乱雑不均質相共重合体、エチレンアルファ-オレフィン共重合体、およびエチレン酢酸ビニル等のエチレン共重合体から成る群から選択することができる。
【0046】
本発明と共に用いられる熱溶融性接着剤中で用いられる相溶可能な粘着付与樹脂つまり粘着付与剤は、粘着特性を拡張して特定の接着を改善するものである。本明細書において用いられる際に、「粘着付与樹脂」という用語は、以下のものを含む:
(a)ASTM法E28-58Tにより決定される際に、10℃から150℃までの環球軟化点を有する脂肪族または脂環式の石油炭化水素樹脂であって、後者の樹脂は、主に、脂肪族および/または脂環式オレフィンおよびジオレフィンから成る単量体の重合から生じ、また含まれるのは、水素化脂肪族および脂環式石油炭化水素樹脂であり、この種類のC5オレフィン画分を基礎とするそのような商業的に入手可能な樹脂の例は、Eastman Chemicalsにより販売されているPiccotac 95の粘着付与樹脂、およびExxonMobil Chemical Companyにより販売されているEscorez 1310LCであり、シクロペンタジエンを基礎とする水素化脂環式石油炭化水素樹脂の例はExxonmobilからのEscorez 5400、およびResinall CorporationからのResinall R1095Sであるもの、
(b)芳香族石油炭化水素樹脂およびその水素化誘導体であって、水素化芳香族炭化水素樹脂の一例は、Arakawa Chemicals(荒川化学)からのArkon(アルコン)P-115であるもの、
(c)脂肪族/芳香族石油由来炭化水素樹脂およびその水素化誘導体、
(d)芳香族改質脂環式樹脂およびその水素化誘導体、
(e)約10℃から約140℃までの軟化点を有するポリテルペン樹脂であって、後者のポリテルペン樹脂は、一般に、中程度に低い温度にてフリーデル・クラフツ触媒の存在下で、ピネンとして知られているモノテルペン等のテルペン炭化水素の重合から生じ、また含まれるのは水素化ポリテルペン樹脂であるもの、
(f)天然テルペンの共重合体および三元重合体、例えば、スチレン/テルペン、α-エチルスチレン/テルペンおよびビニルトルエン/テルペン、
(g)例えば、ガムロジン、木ロジン、トール油ロジン、蒸留ロジン、水素化ロジン、二量体化ロジンおよび重合体化ロジン等の天然および改質ロジン
(h)例えば、薄色木ロジンのグリセロールエステル、水素化ロジンのグリセロールエステル、重合体化ロジンのグリセロールエステル、薄色木ロジンのペンタエリスリトールエステル、水素化ロジンのペンタエリスリトールエステル、トール油ロジンのペンタエリスリトールエステル、およびロジンのフェノール改質ペンタエリスリトールエステル等の、天然および改質ロジンのグリセロールおよびペンタエリスリトールエステル、および
(i)例えば、テルペンおよびフェノールの酸性媒質中での濃縮から生じる樹脂生成物等のフェノール改質テルペン樹脂。
【0047】
上記に記載されている粘着付与樹脂のうち2種以上の混合物が、いくつかの調合物に必要とされ得る。約15重量%乃至約75重量%の範囲の粘着付与樹脂を用いることができるが、その好適な量は、約30重量%から約60重量%までである。本発明にとって有用である粘着付与樹脂は、恐らく極性粘着付与樹脂を含み得る。しかしながら、入手可能な極性粘着付与樹脂の選択範囲は、極性樹脂の多くが部分的にのみポリオレフィンと相溶可能と思われるという事実に鑑みれば限定される。
【0048】
上記で特筆されているように、本発明の範囲内で有用である粘着付与樹脂は、その組成物の、約15重量%乃至約75重量%、好ましくは約30重量%乃至約60重量%を備える。好ましくは、その粘着付与樹脂は、商業的に入手可能である、無極性の種類の何れかから選択することができる。好適な樹脂は、脂肪族石油炭化水素樹脂であり、最も好適なのは、水素化ジシクロペンタジエン(HDCPD)、または70℃を上回る軟化点を有するその芳香族改質誘導体等の無極性の生成物である。そのような樹脂の例は、ExxonMobil Chemical Companyにより販売されているEscorez 5400およびEscorez 5600である。
【0049】
所望の粘度制御を提供しかつ柔軟性を与えるために、約1重量%乃至約35重量%、好ましくは約2重量%乃至約20重量%の量で本発明と共に用いられる組成物中には、可塑剤が存在し得る。適切な可塑剤は、鉱油等の通常の可塑化油を、しかしオレフィン寡量体および低分子量重合体、ならびに植物および動物油およびそれらの誘導体も含む群から選択することができる。使用することができる石油由来の油は、ほんの僅かな割合の芳香族炭化水素を含有する相対的に高沸点の材料である。この点について、その芳香族炭化水素は、芳香族炭素原子の画分により測定される際に、好ましくは油の30%より少なく、より格別には15%より少なくあるべきである。より好適には、その油は本質的に非芳香性であり得る。その寡量体は、ポリプロピレン、ポリブテン、水素化ポリイソプレン、水素化ポリブタジエン、または、約350g/モルおよび約10,000g/モルの間の平均分子量を有する同様のものであり得る。適切な植物および動物油は、通常の脂肪酸のグリセロールエステルおよびその重合生成物を含む。他の有用な可塑剤は、従来の二安息香酸、リン酸、フタル酸エステル、ならびにモノまたはポリグリコールのエステルの系統群内で見つけることができる。そのような可塑剤の例は、二安息香酸ジプロピレングリコール、四安息香酸ペンタエリスリトール、リン酸2-エチルヘキシルジフェニル、4-ジ-2-エチルヘキサン酸ポリエチレングリコール、フタル酸ブチルベンジル、フタル酸ジブチルおよびフタル酸ジオクチルを含むが、それらに限定されない。本発明において有用性を見出す可塑剤は、いくつもの種々の可塑剤であり得るが、発明者は、5,000よりも少ない平均分子量を有する鉱油および液体ポリブテンが特に有利であることを発見している。認識されることになるように、典型的に、可塑剤は、接着剤の接着強度および/または使用温度を実質的に減少させることなく、ならびに、開口時間を拡張して接着剤の柔軟性を改善するために、接着剤組成物全体の粘性を下げるのに用いられてきた。
【0050】
蝋は、熱溶融性接着剤組成物の溶融粘度を低減させるのに用いることができる。約0重量%から約20重量%まで変動する量を本発明の組成物において用いることができるが、その好適な量は、約0重量%乃至約15重量%の間にある。こうした蝋は、設置時間および接着剤の軟化点に影響することもある。有用な蝋の中には、以下のものがある:
1.ASTM法D-1321により決定される際に、約0.1から120までの硬度値を有し、約65℃から140℃までのASTM軟化点を有する、低分子量、すなわち、500~6000g/モルに等しい数平均分子量(Mn)のポリエチレン、
2.約50℃から80℃までの融点を有するパラフィン蝋、および約55℃から100℃までの融点を有する微結晶蝋等の石油蝋であって、後者の融点はASTM法D127-60により決定されるもの、
3.フィッシャー・トロプシュ蝋等の、一酸化炭素および水素を重合することにより作られる合成蝋、および
4.ポリオレフィン蝋。本明細書において用いられる際に、「ポリオレフィン蝋」という用語は、オレフィン単量体単位から成るそうした重合または長鎖実体を指す。この種類の材料は、「Epolene」という商品名指定の下で、テキサス州、ヒューストン、2801 ポスト・オーク大通りのWestlake Chemical Corporationから、および、「A-C」という商品名指定の下で、ニュージャージー州、モリスタウン、101 コロンビア通りのHoneywell Corporationから商業的に入手可能である。本発明の組成物における使用のために好適である材料は、約100℃から170℃までの環球軟化点を有する。理解されるはずであるように、こうした蝋の希釈剤のそれぞれは室温で固体である。
【0051】
水素化された獣脂、豚脂、大豆油、綿実油、ヒマシ油、メンヘーデン油、タラ肝油、および同等のもの等の、水素化された動物、魚および植物の脂肪および油を含み、かつそれらが水素化されているために室温で固体である他の物質も、蝋の希釈剤の同等物として機能することに関しては有用である。こうした水素化材料は、接着剤業界では度々「動物または植物蝋」と称されている。
【0052】
本発明と共に用いられる接着剤は、約0.1重量%から約3重量%までの量にある安定剤を含み得る。好ましくは、約0.2重量%から1重量%までの安定剤が組成物中に組み込まれる。本発明の熱溶融性接着剤組成物において有用である安定剤は、上記に特筆されている重合体を、それにより接着剤系全体を、通常は、接着剤の製造および塗布の最中、ならびに最終製品の周囲環境への通常の曝露中に起こる、熱および酸化分解の影響から保護するのを助けるべく組み込まれる。適用可能な安定剤の中には、硫黄及び亜リン酸含有フェノール等の、高分子量ヒンダードフェノールおよび多官能性フェノールがある。ヒンダードフェノールは、当業者に十分に知られており、そのフェノール性ヒドロキシル基に近接近して立体的に嵩高いラジカルも包含するフェノール化合物として特徴付けられることがある。具体的には、三級ブチル基は、一般に、フェノール性ヒドロキシル基に対するオルト位のうち少なくとも1つにあるベンゼン環上に置換される。ヒドロキシル基の近傍におけるこうした立体的に嵩高い置換されたラジカルの存在は、その伸縮振動数および相応してその反応性を抑制する役割を果たし、そのため、この立体障害は、フェノール化合物にその安定化特性を提供する。代表的なヒンダードフェノールは、以下のものを含む:
1,3,5-トリメチル-2,4,6-トリス(3-5-ジ-三級ブチル-4-ヒドロキシベンジル)ベンゼン、
テトラキス-3(3,5-ジ-三級ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオン酸ペンタエリスリトール、
プロピオン酸n-オクタデシル-3(3,5-ジ-三級ブチル-4-ヒドロキシフェニル)、
4,4’-メチレンビス(4-メチル-6-三級ブチルフェノール)、
2,6-ジ-三級ブチルフェノール、
6-(4-ヒドロキシフェノキシ)-2,4-ビス(n-オクチルチオ)-1,3,5-トリアジン、
2,3,6-トリス(4-ヒドロキシ-3,5-ジ-三級ブチル-フェノキシ)-1,3,5-トリアジン、
ホスホン酸ジ-n-オクタデシル-3,5-ジ-三級ブチル-4-ヒドロキシベンジル、
2-(n-オクチルチオ)エチル-3,5-ジ-三級ブチル-4-ヒドロキシ安息香酸塩、および
プロピオン酸ヘキサ-3(3,5-ジ-三級ブチル-4-ヒドロキシ-フェニル)ソルビトール。
【0053】
こうした安定剤の性能は、それと併せて、(1)例えば、チオジプロピオン酸エステルおよび亜リン酸塩等の共力剤、および(2)例えば、エチレンジアミン四酢酸、その塩、およびジサリチラールプロピレンジイミンのようなキレート化剤および金属不活性化剤を利用することにより、さらに向上させることができる。
【0054】
特定の物理的特性を改質するために、他の随意の添加物を本発明と共に用いられる接着剤組成物に組み込むことができることを理解されたい。これらは、例えば、不活性着色剤(例えば、二酸化チタン)、充填剤、蛍光剤、UV吸収剤、界面活性剤、他の種類の重合体等の材料を含み得る。典型的な充填剤は、滑石、炭酸カルシウム、粘土シリカ、雲母、珪灰石、長石、ケイ酸アルミニウム、アルミナ、水和アルミナ、ガラス微小球、セラミック微小球、熱可塑性微小球、重晶石および木粉を含む。界面活性剤は、例えば、おむつ芯に塗布された接着剤の表面張力を劇的に低減させ、それにより、その芯による尿のより迅速な輸送および後続の吸収を可能にすることができるため、衛生用使い捨て不織物において特に重要である。追加の適切な添加物は、核化剤および/または清澄剤を含む。
【0055】
本発明の接着剤組成物は、例えば、使い捨て不織衛生物品、紙加工、柔軟包装、木工作業、カートンおよび容器の封止、ラベル付けおよび他の組み立て用途において等の、いくつかの用途において多目的の熱溶融性接着剤として用いることができる。特に好適な用途は、不織使い捨ておむつおよび女性用生理用ナプキンの構築、おむつおよび成人用失禁ブリーフの弾性取り付け、おむつおよびナプキンの芯の安定化、おむつ用裏面シートの積層、工業用充填剤材料の加工、外科用ガウンおよび外科用ドレープの組み立てなどを含む。
【0056】
その後、結果として得られる熱溶融性接着剤は、様々な塗布技術を用いて基材に塗布することができる。例は、熱溶融グルーガン、熱溶融スロットダイ塗工、熱溶融ホイール塗工、熱溶融ローラ塗工、溶融吹き込み塗工、螺旋噴霧、Omega(商標)、Surewrap(商標)、V-slot(商標)およびAllegro(商標)法という銘柄の接触または非接触ストランド塗工、および同様のものを含む。好適な一実施形態においては、その熱溶融性接着剤は、おむつおよび成人用失禁物品の製造における弾性取り付けのための好適な技術であるストランド塗工法を用いて弾性ストランド上に直接塗布される。1つの例においては、本発明の熱溶融性組成物は、乳児用おむつ、用便しつけ用パンツおよび成人用失禁物品上の伸縮性脚部、脚袖口および胴締めのために用いられる弾性ストランド上に連続する接着剤の接合線を形成するべく、Allegro(商標)のノズルを用いて塗工される。様々な技術の完全な記載を与えることは本発明の意図ではなく、その詳細は、文献中またはノズル製造業者のウェブサイト(www.nordson.comまたはwww.itw.com)上で見つけることができる。
【0057】
本発明を要約すると、塗布機先端つまり頭部は、ポリオレフィン系調合物を走らせるときに、塗工工程の最中に弾性ストランド内まで下げられる。背景的情報として、直接ストランド塗布中の頭部頂上は、典型的に、SBc系接着剤を使用して弾性ストランドにすれすれに接触するように走らされる。これは、全く接触を伴わない走行がストランドに当たらない接着剤を結果的にもたらす一方で、深度係合を用いることがストランドを通じて下の基材上に「パラパラ降る」接着剤を結果的にもたらすという観測結果に起因する。理想的には、弾性ストランドはストランドガイドを通り抜け、塗布機頭部から弾性ストランドに入り込んで入口角(塗布機頭部に対するストランドガイド)を創出する下方の力を経験する。アイドラまたはローラを塗布機よりも上の垂直位置にて塗布機頭部のさらなる下流に位置付けることにより、追加の角度が形成される。この角度―ここでは出口角として定義される―は、塗布機頭部と第1のアイドラ/ローラとの間にあり得る。入口および出口角は、互いに対して塗工設備の距離を調節することによりさらに調整することができる。
【0058】
顧客は、弾性用途に用いられる不織および/または重合体フィルムを薄くする努力を続けているため、高アドオンレベルにある接着剤の熱エネルギーは、基材中の望ましくない焼け焦がしにより繋がりやすい。(最終製品を傷付ける)基材への損傷を回避するために、クリープ性能における著しい降下に繋がり得る、より少ない量の接着剤が要求される。本発明は、十分なクリープ性能を維持しつつより低いアドオンレベルを用いることを可能にし、そのため、その工程を低坪量の基材にとってより適切にする。ポリオレフィン系接着剤に塗布される際の本発明による偏向の使用の影響は、特に、スチレンブロック共重合体を基礎とする接着剤に対する偏向の影響と比較したときに、驚くべきものであることが分かった。後者の接着剤においては、偏向の使用を通じてはクリープ保持率における改善はほとんどまたは全く実現されなかった、つまり、その接着剤は、偏向時に凝集して基材を不均等に塗工する傾向があった。この驚くべき影響は、下記に明記されている本発明の実施例を比較実施例1および2と比較することにより示されている。
【0059】
いかなる理論にも束縛されることなく、弾性ストランドが、本明細書において定義されている「偏向された」塗工配置下で利用されるときに当てはまるような塗布ノズルと緊密に係合される条件下で、進歩的な熱溶融性接着剤がより高い流動を呈することが提唱されている。この能力は、急冷冷却時にゆっくりとのみ現れる剛性(貯蔵弾性率、G’)をもって流動(tan dの高値、G”/G’値)を維持することを可能にする、進歩的な調合物中で用いられるポリオレフィンの半結晶性の特質に起因すると思われる。比較すると、スチレンブロック共重合体(SBc)を基礎とするもの等の「ガラス質」系は、急速冷却時に急速にガラス化すると知られている。こうした比較的硬く、より流動性のない材料は、塗布地点にて激しいストランドの係合(「偏向」)にそれほど容易に耐えることはできないことが提唱されている。極端な場合においては、これは、SBc系接着剤が偏向されたストランドにより「分割」され、弾性成分の目標接合領域から乱暴に排出されることに繋がる。急速に冷却されつつ相対的に柔らかいつまりゲル状状態に留まること(例えば、tan d値>1を呈すること)により、進歩的な熱溶融性接着剤系は、本明細書において定義されている条件下でそれらをより均等に塗布することを可能にし、同様に、改善された初期および経時後クリープ保持率に繋がる、より高い度合いの偏向に耐えると提唱されている。
【0060】
本発明の実施形態によれば、(1)好ましくは少なくとも1°の非零出口角、または本明細書に開示されている他の出口角の何れかを提供すること、(2)好ましくは少なくとも1°の非零入口角、または本明細書に開示されている他の入口角の何れかを提供すること、(3)好ましくは60°および89°の間、または91°および120°の間の非90度頭部傾斜角を提供すること、または(4)前述のものの何れかの任意の組み合わせ等により、54.4℃に保持された初期クリープおよび4週間経時後の値の両方に関する偏向を全く伴わない、同じ基材、調合および試験条件に関するクリープ保持率の値について、10%、より好ましくは20%、最も好ましくは30%のクリープ保持率の改善を実現するのに効果的な、少なくともいくらかの偏向が導入される。
【0061】
上記に記載されている方法は、任意の特定のステップまたは一連のステップに限定されないことを理解されたい。
【0062】
本発明の態様
本発明は、以下の態様をさらに含む。
【0063】
1.ポリオレフィン系熱溶融性接着剤を用いる方法であって、
溶融状態にある接着剤を塗布機で弾性ストランドを備える一次基材に塗布するステップであって、中立的に位置付けられた塗布機の軸に垂直な線と、前記塗布機から下流移動方向に延在する弾性ストランドとにより画定される出口角は、少なくとも1°であるステップと、
二次基材を前記接着剤と接触させることにより、前記二次基材を前記一次基材に接合するステップと、
を備える、方法。
【0064】
2.前記出口角が、1°および20°の間、2°および10°の間、または2.5°および7.5°の間にある、態様1に記載の方法。
【0065】
3.前記塗布するステップの最中に、中立的に位置付けられた塗布機の軸に垂直な線と、前記塗布機から上流移動方向に延在する弾性ストランドとにより画定される入口角が、少なくとも1°である、態様1または2の何れかに記載の方法。
【0066】
4.前記入口角が、1°および20°の間、2°および10°の間、または2.5°および7.5°の間にある、態様3に記載の方法。
【0067】
5.前記塗布するステップの最中に、前記ストランドおよび塗布機先端の接点に対して正接の線と、前記接着剤が前記塗布機を出る際の移動方向に沿って延在する軸線とにより画定される頭部傾斜角が、1°および30°の間、または91°および120°の間にある、態様1乃至4の何れかに記載の方法。
【0068】
6.前記頭部傾斜角が、70°および88°の間、または80°および88°の間にある、態様5に記載の方法。
【0069】
7.前記接着剤が、重合体成分、可塑剤、粘着付与樹脂および酸化防止包装を備え、前記重合体成分はポリオレフィンを備える、態様1乃至6の何れかに記載の方法。
【0070】
8.前記重合体成分は、前記ポリオレフィンの少なくとも50重量%を備える、態様7に記載の方法。
【0071】
9.前記接着剤が、重合体成分、可塑剤、粘着付与樹脂および酸化防止包装を備え、前記重合体成分は、本質的にポリオレフィンまたはポリオレフィン類の混合物から成る、態様1乃至6に記載の方法。
【0072】
10.10%、より好ましくは20%、最も好ましくは30%のクリープ保持率の改善が、54.4℃に保持された初期クリープ値および4週間経時後値の両方に関する偏向を全く伴わない、同じ基材、調合および試験条件に関するクリープ保持率の値について実現される、態様1乃至9に記載の方法。
【0073】
11.ポリオレフィン系熱溶融性接着剤を、弾性ストランドを備える一次基材に塗布するためのシステムであって、
弾性ストランドを備える直線的に動く一次基材に接触するように適合され、かつ前記接着剤を前記一次基材に塗布するように適合された塗布機先端を有する塗布機と、
少なくとも1°の、中立的に位置付けられた塗布機の軸に垂直な線と、前記塗布機から下流移動方向に延在する弾性ストランドとにより画定される出口角を提供するように、前記塗布機先端の垂直位置よりも上に配置された引出しローラまたはアイドラと、
を備える、システム。
【0074】
12.前記出口角が、1°および20°の間、2°および10°の間、または2.5°および7.5°の間にある、態様11に記載のシステム。
【0075】
13.少なくとも1°の、中立的に位置付けられた塗布機の軸に垂直な線と、前記塗布機から上流移動方向に延在する弾性ストランドとにより画定される入口角を提供するように、前記塗布機先端の垂直位置よりも上に構成された引入れローラまたはアイドラをさらに備える、態様11または12の何れかに記載のシステム。
【0076】
14.前記入口角が、1°および20°の間、2°および10°の間、または2.5°および7.5°の間にある、態様13に記載のシステム。
【0077】
15.前記塗布機が、60°および89°の間、または91°および120°の間の、前記ストランドおよび前記塗布機先端の接点に対して正接の線と、前記接着剤が前記塗布機を出る際の移動方向に沿って延在する軸線とにより画定される頭部傾斜角を提供するように構成される、態様11乃至14に記載のシステム。
【0078】
16.塗布機が、70°および88°の間、または80°および88°の間の頭部傾斜角を提供するように構成される、態様15に記載のシステム。
【0079】
17.10%、より好ましくは20%、最も好ましくは30%のクリープ保持率の改善が、54.4℃に保持された初期クリープおよび4週間経時後の値の両方に関する偏向を全く伴わない、同じ基材、調合および試験条件に関するクリープ保持率の値について実現される、態様11乃至16に記載のシステム。
【実施例0080】
実施例
クリープ試験用の標本が、Surewrap(商標)、Allegro(商標)およびスロットダイの先端を収容するように設計されている、Nordson(商標)のZero-Cavity熱溶融塗工モジュールを装備された特注の塗工機/積層機を用いて調製される。本発明に関しては、Allegro(商標)の先端が、680デシテックス(dtex)の繊度を有するInvista(商標)の弾性ストランドに本組成物を直接塗布するのに用いられる。その先端は、3つの弾性ストランドを同時に塗工することができる5mm離れた3つの別個の接着剤ノズルまたは開口部を有する。
【0081】
本明細書において用いられる際に、デシテックス(dtexと省略される)は、10,000メートルの繊維長さ当たりのグラムにおける質量を指す。それは、織物業界における繊維繊度の尺度である。
【0082】
クリープ保持率試験は、表2乃至表4に記載されているように、積層された標本を用いて行われた。約350mmの積層された標本の一部が完全に伸張され、剛性のPolyglass板の一片にしっかりと取り付けられる。300mmの長さが標示され、弾性ストランドがその標示にて切断される。その後、その標本は、37.8℃(100°F)にある空気循環式オーブンに入れられる。こうした条件下で、伸張下の弾性ストランドは特定の距離まで引っ込むことができる。前記弾性ストランドの端部間の距離は、4時間後に測定される。クリープ保持率として定義されかつ百分率(%)において表現される、最終長さの初期長さに対する比は、弾性ストランドを保持する接着剤の能力の尺度である(より大きい数が好適である)。同様に、経時後クリープ保持率試験は経時により行われ、54.4℃(130°F)にて設定された時期(1週間、2週間、4週間など)にわたり積層された。指定された量の時間の後に、クリープ保持率試験が行われる前に、標本が少なくとも12時間にわたり室温にもってこられる。さらに、グリーン・クリープは、積層物が直ちに塗工機ラインから離れて試験されることを指す。弾性ストランドは同様に切断されるが、30分にわたり室温に置かれる。その時点で、ストランド移動の長さが測定および記録される(より小さい数が好適である)。
【0083】
本実施例において用いられているのは、以下のようなものである:
【0084】
Nyflex 222Bは、テキサス州、ヒューストン、スイート 540、840 ゲスナー通りのNynas USA Inc.から購入される鉱油可塑剤である。
【0085】
Sukorez SU-210は、Kolon Chemicalsにより生産されている水素化炭化水素粘着付与樹脂である。
【0086】
Escorez 5615は、118℃の軟化点を有する水素化芳香族改質脂環式炭化水素樹脂である。それは、ExxonMobil Chemicalから入手可能である。
【0087】
L-MODU S901は、Idemitsu(出光)から入手可能な低弾性率の、制御された立体規則性のポリプロピレンである。
【0088】
Vestoplast EP NC 702は、Evonikから入手可能なプロピレン豊富な共重合体である。
【0089】
Irganox 1010の酸化防止剤は、BASFから入手可能なテトラキス(3-(3,5-ジ-三級ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオン酸)ペンタエリスリトールである。
【0090】
Clopay BR134は、オハイオ州、メイソン、8585 デューク大通りのClopay Plastic Product Co.,Inc.からの通気性PEフィルムである。
【0091】
SQN SB 15 gsmは、ペンシルベニア州、マケルハッタン、121 N通りのFirst Quality Nonwovens Inc.から購入されるスパンボンド不織布である。
【0092】
Irganox 1010は、ニュージャージー州、フローラム、100 パーク街のBASF Corporationから購入されるヒンダードフェノール酸化防止剤である。
【0093】
実施例1
下記の表1は、下記で論じられている偏向研究において用いられた2種類のポリオレフィン系調合物、すなわちAPAOおよび不均質相の例を与えている。
【表1】
【0094】
表1における組成物は、合計100パーセントに等しい重量パーセントを表している。
【0095】
表2は、40psiの挟み圧縮を用いて0.15秒の開口時間にて35mg接着剤/mストランドの塗工重量を伴う500m/分のライン速度での調合物Ex1の走行の初期および経時後クリープ保持性能を要約している。製作の最中に利用される基材は、二次基材としての通気性ポリエチレンフィルム、680dtexのInvistaの弾性ストランド(塗布の最中に300%に引き延ばされて5mm離間している3つのストランド)、および二次基材としての15gsmの不織物を含む。引入れストランドガイドから塗布機頭部までの距離は、塗布機頭部から第1の引出しアイドラまでと同じであり、3.5インチに等しかった。この場合においては、入口角(引入れストランドガイドから塗布機頭部まで)および出口角(塗布機頭部から第1の引出しアイドラまで)の両方に関する値が同一である。全ての角度は、M-D Building Products,Inc.から入手可能なデジタル角度センサを用いて測定された。
【表2】
【0096】
表2は、増加した偏向角が標本のライフサイクルの最中に本質的に毎回クリープ保持率を改善することを実証している。グリーン・クリープ性能は、主に、弾性ストランドを保持するのに十分に迅速に弾性率を設定して伸ばす接着剤の能力により支配されると以前は考えられたため、これは驚くべき発見であった。改善されたクリープ保持率は、54.4℃にて4週間経時工程の全体にわたり維持される。
【0097】
実施例2
上記に記載されているように、偏向は、塗布機頭部を下げることにより増加させることができる。塗布機頭部に繋がることに対して、ストランドガイドおよびアイドラの距離を調節することも、入口および出口偏向角の両方を独立して制御するのに使用することができる。下記の例は、入口角(引入れストランドガイドから塗布機頭部まで)および出口角(塗布機頭部から第1の出口アイドラまで)の両方に関する偏向に言及して記載している。実施例2の追加の研究は、入口および出口角が同一でなかったときの偏向の影響を調査するべく行われた。表3は、調合物Ex1を使用するこうした研究の結果を要約している。走行は、上記に記載されているとおりに、しかし1200フィート/分のライン速度にて行われた。特筆されている場合を除いて、引入れストランドガイドから塗布機頭部までの距離は、塗布機頭部から第1の引出しアイドラまでと同じであり、3.5インチに等しかった。塗布重量は、35mg接着剤/mストランドであった。
【表3】
【0098】
表3は、非零出口角の重要性をさらに実証している。入口角が5.0°まで上げられ、出口角が0°に置かれたときに、クリープ性能は、試験された特定の調合物について全くもって偏向角を有しないことよりも悪かった。加えて、ストランドガイドから塗布機頭部までの距離を大いに増加させること(弾性ストランドを支持されていない状態に置き、ストランド振動を潜在的に増加させること)は、出口角偏向が維持される(非零)限りにおいて、クリープ性能に悪影響を及ぼさなかった。
【0099】
実施例3
実施例3は、上記に記載されている条件および500m/分のライン速度下で走らされるEx2調合物のクリープ保持性能を評価するべく行われた。引入れストランドガイドから塗布機頭部までの距離は、塗布機頭部から第1の引出しアイドラまでの距離と同じであり、3.5インチにおおよそ等しかった。他に特筆されている場合を除いて、塗布重量は、35mg接着剤/mストランドであった。表4は、実施例3の結果を要約している。
【表4】
【0100】
実施例4.
実施例4は、APAO系調合物の増加された偏向のクリープ保持率を評価するべく行われた。Ex1の不均質相ポリオレフィン接着剤調合物に関するクリープ保持率における最も激烈な改善を与えつつ、増加された偏向は、標準偏差値を最小化し、APAO系調合物中で用いられるより少ない塗工重量を容易にするようにも示された。引入れストランドガイドから塗布機頭部までの距離は、塗布機頭部から第1の引出しアイドラまでの距離と同じであり、3.5インチにおおよそ等しかった。他に特筆されている場合を除いて、塗布重量は、35mg接着剤/mストランドであった。
【表5】
【0101】
表5は、1200フィート/分にてストランド当たり30mg/mのEx3調合物を用いる多数の設置条件にまたがって、クリープ保持率の標準偏差における減少を示している。第1の組の条件は、変動する偏向レベルを伴う90°の塗布機頭部傾斜を呈する。非偏向条件は、最小のクリープ保持率ならびに高い標準偏差を示した。調合物Ex3中で偏向(2.5°)を導入し始めるときに、まずクリープ保持率が(非偏向条件にわたり)増加する。偏向の度合いが増加する際に(5.0°)、クリープ保持率は増加し続け、標準偏差は減少し、より一貫性のある製品に繋がる。75°の塗布機頭部傾斜における条件値についても同じことが言える(表5)。
【0102】
不均質相ポリオレフィン系調合物つまりAPAO優勢調合物を扱うかどうかにかかわらず、Nordson Corpから入手可能なAllegro(商標)のノズル等の塗布機を用いるときに、偏向角(入口および出口)を考慮するのは肝要である。本発明は、ライン構成に対する小さい調節が、調合物へのいかなる調節も伴わずに接着剤組成物の最終性能を激烈に増加させることができることを実証している。それは、さらに、走行工程の最中により少ない標準偏差を可能にし、最終性能を低下させることなくより少ない塗工重量を用いることを容易にすることができる。
【0103】
SBcからポリオレフィン系調合物、特に不均質相ポリオレフィンを基礎とするものに切り替えるときに、接着剤が下方の力をもって弾性ストランド上に十分に塗工するだけでなく(偏向)、この構成における変化が最終クリープ性能および全体の一貫性を激烈に改善することができることが分かった。上記に記載されているように、いくつかの調合物が、この重要な所見を完全に捉えるべく設定された偏向値にて試験された。
【0104】
比較実施例1
比較実施例1は、SBc系調合物に対する偏向の影響を評価するべく行われた。そのSBc系調合物は、40psiの挟み圧縮を用いて0.15秒の開口時間にて25mg接着剤/mストランドの塗工重量を伴う500m/分のライン速度で走らされた。製作の最中に利用される基材は、一次基材としての通気性ポリエチレンフィルム、680dtexのInvistaの弾性ストランド(塗布の最中に300%に引き延ばされて5mm離間している3つのストランド)、および二次基材としての15gsmの不織物を含む。引入れストランドガイドから塗布機頭部までの距離は、塗布機頭部から第1の引出しアイドラまでの距離と同じであり、3.5インチにおおよそ等しかった。この場合においては、入口角(引入れストランドガイドから塗布機頭部まで)および出口角(塗布機頭部から第1の引出しアイドラまで)の両方に関する値が同一である。
【表6】
【0105】
表6における上記のデータは、SBc系調合物、特に、SBS(スチレン-ブタジエン-スチレン)ブロック共重合体を含有するものを用いるときの結果を表している。その調合物は、少なくとも1種の粘着付与樹脂、可塑剤、および酸化防止剤をさらに含有する。クリープ保持率値は偏向により僅かに全体に改善すると思われるが、基材上に形成された接着剤のパターンは予測不能である傾向がある。特に、このSBc系調合物と共に用いられた偏向は、接着剤が積層物に沿って凝集することを結果的にもたらし、不均等な塗工を提供した。より高濃度の接着剤を有するこうした領域は、不均等なパターン外観にもかかわらず、改善されたクリープ保持率に繋がり得る。そのうえ、そのような不均等な噴霧および接着パターンは、商業規模では容認不可能であることになるだろう。
【0106】
比較実施例2.
比較実施例2は、別のSBc系調合物に対する偏向の影響を評価するべく行われた。そのSBc系調合物は、40psiの挟み圧縮を用いて0.15秒の開口時間にて30mg接着剤/mストランドの塗工重量を伴う900フィート/分のライン速度で走らされた。製作の最中に利用される基材は、二次基材としての非通気性ポリエチレンフィルム、680dtexのInvistaの弾性ストランド(塗布の最中に300%に引き延ばされて5mm離間している3つのストランド)、および二次基材としての15gsmの不織物を含む。引入れストランドガイドから塗布機頭部までの距離は、塗布機頭部から第1の引出しアイドラまでの距離と同じであり、3.5インチにおおよそ等しかった。この場合においては、入口角(引入れストランドガイドから塗布機頭部まで)および出口角(塗布機頭部から第1の引出しアイドラまで)の両方に関する値が同一である。
【表7】
【0107】
表7における上記のデータは、SBc系調合物、特に、スチレン-イソプレン-スチレン(SIS)トリブロック/スチレン-イソプレン(SI)ジブロック共重合体混合物を含有するものを用いるときの結果を表している。その調合物は、少なくとも1種の粘着付与樹脂、可塑剤、および酸化防止剤をさらに含有する。この比較実施例2においては、SBc系調合物のクリープ保持性能は、偏向に依存するようには示されなかった。例えば、いかなる偏向も受けない調合物の4週間クリープ保持率データは、2.5°または5.0°の出口および入口角を受ける調合物と同じかまたはより良好に機能した。
【0108】
本明細書中においては、実施形態が明確かつ簡潔な明細書を書くことを可能にするように記載されてきたが、実施形態は、本発明から離れることなく様々に組み合わせるかまたは分離することができることが意図されかつ認識されることになる。例えば、本明細書に記載されている全ての好適な特徴は、本明細書に記載されている発明の全ての態様に適用可能であることが認識されることになる。