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特開2022-50472活性成分を含むマイクロニードルアレイ
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022050472
(43)【公開日】2022-03-30
(54)【発明の名称】活性成分を含むマイクロニードルアレイ
(51)【国際特許分類】
   A61M 37/00 20060101AFI20220323BHJP
【FI】
A61M37/00 530
A61M37/00 505
【審査請求】有
【請求項の数】15
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2021210143
(22)【出願日】2021-12-24
(62)【分割の表示】P 2019544653の分割
【原出願日】2018-02-16
(31)【優先権主張番号】62/460,261
(32)【優先日】2017-02-17
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.TWEEN
(71)【出願人】
【識別番号】591018268
【氏名又は名称】アラーガン、インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】ALLERGAN,INCORPORATED
(74)【代理人】
【識別番号】110000855
【氏名又は名称】特許業務法人浅村特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】リウ,フーティェン
(72)【発明者】
【氏名】ユー、シャオジェ
(72)【発明者】
【氏名】ルー、グァン ウェイ
(72)【発明者】
【氏名】ヒューズ、パトリック エム.
(72)【発明者】
【氏名】ニールバンナン、セシャ
(72)【発明者】
【氏名】スチュワード、ランス イー.
(57)【要約】      (修正有)
【課題】マイクロニードルアレイ、並びにマイクロニードルアレイを製造及び使用する方法を提供する。
【解決手段】被験体の皮膚表面を通して活性成分を導入するためのマイクロニードルアレイ10は、ベース層14、ベース層から突出する複数のマイクロニードル12、及び活性成分を含むことができる。マイクロニードルのそれぞれは、近位部分18及び遠位部分16を有する細長い本体を含み、ここで近位部分はベース層に取り付けられている。マイクロニードルのそれぞれが、少なくとも1つの溶解性ポリマーを含む。活性成分は細長い本体に組み込まれ、活性成分は遠位部分にのみ及び少なくとも遠位部分の内部に存在する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ベース層、
ベース層から突出する複数のマイクロニードルであって、
各マイクロニードルは、近位部分及び遠位部分を有する細長い本体を含み、近位部分はベース層に取り付けられ、かつ各マイクロニードルは少なくとも1つの溶解性ポリマーを含む、上記マイクロニードル、並びに
細長い本体に組み込まれた活性成分であって、活性成分は、遠位部分にのみ及び少なくとも遠位部分の内部に存在する、上記活性成分
を含む、
上記マイクロニードルアレイ。
【請求項2】
活性成分が神経毒を含む、請求項1に記載のマイクロニードルアレイ。
【請求項3】
神経毒がボツリヌス毒素を含む、請求項2に記載のマイクロニードルアレイ。
【請求項4】
ボツリヌス毒素がA、B、C、D又はE型である、請求項3に記載のマイクロニードルアレイ。
【請求項5】
ボツリヌス毒素が、ボツリヌス毒素血清型A(BoNT/A)、ボツリヌス毒素血清型B(BoNT/B)、ボツリヌス毒素血清型C1(BoNT/C1)、ボツリヌス毒素血清型D(BoNT/D)、ボツリヌス毒素血清型E(BoNT/E)、ボツリヌス毒素血清型F(BoNT/F)、ボツリヌス毒素血清型G(BoNT/G)、ボツリヌス毒素血清型H(BoNT/H)、ボツリヌス毒素血清型X(BoNT/X)、モザイクボツリヌス毒素及び/又はその多様体からなる群から選択される、請求項3のマイクロニードルアレイ。
【請求項6】
各マイクロニードルの少なくとも1つの溶解性ポリマーが第1の溶解性ポリマーを含み、遠位部分及び近位部分が両方とも第1の溶解性ポリマーを含む、請求項1~5のいずれか一項に記載のマイクロニードルアレイ。
【請求項7】
ベース層が第1の溶解性ポリマーを含む、請求項6に記載のマイクロニードルアレイ。
【請求項8】
遠位部分が第1の溶解性ポリマーを含み、近位部分が第2の溶解性ポリマーを含み、第1の溶解性ポリマーと第2の溶解性ポリマーとが互いに異なる、請求項1~5のいずれか一項に記載のマイクロニードルアレイ。
【請求項9】
ベース層が第2の溶解性ポリマーを含む、請求項8に記載のマイクロニードルアレイ。
【請求項10】
近位部分及びベース層が、活性成分を欠いている、請求項1~9のいずれかに記載のマイクロニードルアレイ。
【請求項11】
近位部分及びベース層が、少なくとも1つの溶解性ポリマーからなる、請求項10に記載のマイクロニードルアレイ。
【請求項12】
各溶解性ポリマーが、約10℃~約50℃の範囲の温度で約6.8~約7.8の範囲のpHを有するリン酸緩衝生理食塩水(PBS)に溶解するポリマー材料から独立して選択される、請求項1~11のいずれか一項に記載のマイクロニードルアレイ。
【請求項13】
少なくとも1つの溶解性ポリマーが、ヒアルロン酸、架橋ヒアルロン酸、疎水性修飾ヒアルロン酸、又はそれらの任意の組み合わせを含む、請求項1~12のいずれか一項に記載のマイクロニードルアレイ。
【請求項14】
少なくとも1つの溶解性ポリマーが、グリコサミノグリカン、多糖類、コラーゲン、エラスチン、フィブロイン、デンプン、グルコマンナン、ヒアルロン酸、架橋ヒアルロン酸、疎水性修飾ヒアルロン酸又はそれらの任意の組み合わせの少なくとも1つを含む、請求項1~13のいずれか一項に記載のマイクロニードルアレイ。
【請求項15】
活性成分が、遠位部分の少なくとも1つの溶解性ポリマーのマトリックス中に分散している、請求項1~14のいずれか一項に記載のマイクロニードルアレイ。
【請求項16】
各マイクロニードルが、約25ミクロン~約3000ミクロンの範囲の長さを有する、請求項1~15のいずれか一項に記載のマイクロニードルアレイ。
【請求項17】
各マイクロニードルが実質的に同じ長さを有する、請求項1~16のいずれか一項に記載のマイクロニードルアレイ。
【請求項18】
各マイクロニードルが円錐形又はピラミッド形の幾何学形状を有する、請求項1~17のいずれか一項に記載のマイクロニードルアレイ。
【請求項19】
各マイクロニードルが約1ミクロン~約30ミクロンの範囲の先端幅を有する、請求項1~18のいずれか一項に記載のマイクロニードルアレイ。
【請求項20】
マイクロニードルアレイ内のマイクロニードルの密度が、約5マイクロニードル/cm~約1000マイクロニードル/cmの範囲である、請求項1~19のいずれか一項に記載のマイクロニードルアレイ。
【請求項21】
活性成分が、遠位部分に均一に配置される、請求項1~20のいずれか一項に記載のマイクロニードルアレイ。
【請求項22】
活性成分が、遠位部分に勾配で存在する、請求項1~21のいずれか一項に記載のマイクロニードルアレイ。
【請求項23】
マイクロニードルアレイを形成する方法であって、
複数の細長いウェルを含むマイクロニードルアレイモールドを提供することであって、細長いウェルのそれぞれは下方部分と上方部分とを含むこと、
細長いウェルのそれぞれの下方部分を、第1の溶解性ポリマー及び活性成分を含む第1の流体で充填することであって、細長いウェルのそれぞれは、部分的にのみ充填され、細長いウェルのそれぞれの上方部分は充填されないままにすること、
細長いウェルのそれぞれの下方部分を充填した後、細長いウェルのそれぞれの未充填の上方部分を第2の流体で過剰充填することであって、第2の流体は第2の溶解性ポリマーを含み、活性成分を欠いていること、及び
モールドを加熱するか、又はモールドにおける第1及び第2の流体を室温で乾燥させて、複数のマイクロニードルが突出したベース層を含むマイクロニードルアレイを形成すること
を含む、上記方法。
【請求項24】
キャスティングプロセスを使用して、第1の流体及び第2の流体のうちの少なくとも1つを細長いウェルのそれぞれに配置する、請求項23に記載の方法。
【請求項25】
細長いウェルのそれぞれの下方部分を充填することが、細長いウェルのそれぞれの下方部分に第1の流体をキャスティングすることを含む、請求項24に記載の方法。
【請求項26】
細長いウェルのそれぞれの上方部分を過剰充填することが、細長いウェルのそれぞれの上方部分に第2の流体をキャスティングすることを含む、請求項25に記載の方法。
【請求項27】
細長いウェルのそれぞれの上方部分を過剰充填することが、第1の流体及び第2の流体を細長いウェルのそれぞれにキャスティングすることを含む、請求項24に記載の方法。
【請求項28】
第2の流体の少なくとも一部が、モールドの過剰充填された部分又はベース部分に配置され、第2の流体が、マイクロニードルアレイのベース層を画定するモールドの過剰充填部分に配置される、請求項23~27のいずれか一項に記載の方法。
【請求項29】
方法が、マイクロニードルアレイをマイクロニードルアレイモールドから分離することをさらに含む、請求項23~28のいずれか一項に記載の方法。
【請求項30】
第1の流体が第2の流体よりも高い粘度を有する、請求項23~29のいずれか一項に記載の方法。
【請求項31】
第1のキャスティングプロセスを利用して、細長いウェルのそれぞれの未充填の上方部分に第2の流体を過剰充填する前に、マイクロニードルアレイモールドに第1の流体を堆積させる、請求項23~30のいずれか一項に記載の方法。
【請求項32】
第2のキャスティングプロセスを利用して、マイクロニードルアレイモールドにおける第1の流体上に第2の流体を堆積させる、請求項31に記載の方法。
【請求項33】
活性成分が神経毒を含む、請求項23~32のいずれか一項に記載の方法。
【請求項34】
神経毒がボツリヌス毒素を含む、請求項33に記載の方法。
【請求項35】
ボツリヌス毒素がA、B、C、D又はE型である、請求項34に記載の方法。
【請求項36】
第1の溶解性ポリマー及び第2の溶解性ポリマーが同じである、請求項23~35のいずれか一項に記載の方法。
【請求項37】
第1の溶解性ポリマー及び第2の溶解性ポリマーが、ヒアルロン酸、架橋ヒアルロン酸、疎水性修飾ヒアルロン酸、又はそれらの任意の組み合わせの少なくとも1つを含む、請求項23~36のいずれか一項に記載の方法。
【請求項38】
第1の溶解性ポリマー及び第2の溶解性ポリマーが、グリコサミノグリカン、多糖類、コラーゲン、エラスチン、フィブロイン、デンプン、グルコマンナン、ヒアルロン酸、架橋ヒアルロン酸、疎水性修飾ヒアルロン酸、又はそれらの任意の組み合わせの少なくとも1つを含む、請求項23~37のいずれか一項に記載の方法。
【請求項39】
被験体を処置する方法であって、
ベース層、
ベース層から突出する複数のマイクロニードルであって、各マイクロニードルは近位部分及び遠位部分を有する細長い本体を含み、近位部分はベース層に取り付けられ、各マイクロニードルは少なくとも1つの溶解性ポリマーを含む、上記マイクロニードル、及び
細長い本体に組み込まれた活性成分であって、遠位部分にのみ及び少なくとも遠位部分の内部に存在する上記活性成分
を含む、マイクロニードルアレイを提供すること、並びに
皮膚表面に複数のマイクロニードルを埋め込むために被験体の皮膚表面にマイクロニードルアレイを適用すること
を含む、上記方法。
【請求項40】
複数のマイクロニードルが皮膚表面に埋め込まれている間に少なくとも1つの溶解性ポリマーが溶解して、被験体に活性成分を放出する、請求項39に記載の方法。
【請求項41】
少なくとも1つの溶解性ポリマーが溶解した後、被験体の皮膚表面からベース層を取り除くことをさらに含む、請求項39又は40に記載の方法。
【請求項42】
活性成分が神経毒を含む、請求項39~41のいずれか一項に記載の方法。
【請求項43】
神経毒がボツリヌス毒素を含む、請求項42に記載の方法。
【請求項44】
マイクロニードルのそれぞれの少なくとも1つの溶解性ポリマーが第1の溶解性ポリマーを含み、遠位部分及び近位部分の両方が第1の溶解性ポリマーを含む、請求項39~43のいずれか一項に記載の方法。
【請求項45】
ベース層が第1の溶解性ポリマーを含む、請求項44に記載の方法。
【請求項46】
少なくとも1つの溶解性ポリマーが、ヒアルロン酸、架橋ヒアルロン酸、疎水性修飾ヒアルロン酸、又はそれらの任意の組み合わせを含む、請求項39~45のいずれか一項に記載の方法。
【請求項47】
少なくとも1つの溶解性ポリマーが、グリコサミノグリカン、多糖類、コラーゲン、エラスチン、フィブロイン、デンプン、グルコマンナン、ヒアルロン酸、架橋ヒアルロン酸、疎水性修飾ヒアルロン酸又はそれらの任意の組み合わせの少なくとも1つを含む、請求項39~45のいずれか一項に記載の方法。
【請求項48】
マイクロニードルアレイを使用して、前額のしわ、目じりの小じわ、眉間のしわ、小じわ、多汗症、瘢痕、乾癬、炎症性皮膚病を処置する、請求項39~47のいずれか一項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
この出願は、2017年2月17日に出願された米国仮出願第62/460,261号の利益及び優先権を主張し、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【0002】
本開示は、一般に、マイクロニードルアレイ、並びにマイクロニードルアレイを製造及び使用する方法に関し、より詳細には、マイクロニードルアレイ、及び活性成分を各マイクロニードルの遠位端に局在化させる関連方法に関する。
【背景技術】
【0003】
皮膚への又は皮膚を通る薬物送達は、局所送達中に多くの薬物が治療的に適切な割合で角質層を貫通することができないため、制限される可能性がある。皮膚を通る薬物透過性を改善するために取られてきた1つのアプローチは、薬物分子が通過するのに十分な大きさの複数の開口部を可逆的に作成することである。この目的のために、例えば、化学的透過増強、イオン導入、エレクトロポレーション、超音波圧力波発生、及び高周波及び/又は熱アブレーションを含むいくつかの技術が採用されてきた。これらのアプローチは、最も一般的には生成された開口部サイズが小さいために、場合によっては問題となる可能性がある。例えば、生物学的実体などのより大きな薬物分子は、これらの技術を使用して作成された開口部を通過するには大きすぎることが多い。生物学的実体はサイズが大きいため、皮下注射で投与されることが多く、これは被験体にとっては痛みを伴い、場合によっては特定の皮膚表面領域の処置には望ましくないことがある。
【0004】
皮膚に開口部を作成するための代替アプローチは、マイクロニードルアレイを利用する。被験体の皮膚表面にマイクロニードルアレイを適用すると、複数の皮膚貫通が発生し、薬物分子が通過できるようになる。マイクロニードルで作成された開口部は、個々のマイクロニードルの断面サイズによって決定され、これは通常、幅が数ミクロンである。そのため、マイクロニードルで作成された開口部により、治療機能を実行するために、抗原、抗体、毒素などのより大きな薬物分子を皮膚を通して導入することができる。マイクロニードルアレイは、サイズが小さく、貫通深度が制限されているため、皮下注射とは異なり、一般に被験体に大きな痛みを引き起こさない。
【0005】
マイクロニードルアレイは、皮膚を通して薬物分子を送達する多くの方法で利用できる。「ポークアンドパッチ」アプローチでは、マイクロニードルアレイを皮膚に適用し、次いで取り除いて開口部を作成し、次いで作成した開口部にわたって薬物又は薬物パッチを局所的に適用する。開口部の迅速な治癒が、このアプローチの有効性を制限する可能性がある。「コートアンドポーク」アプローチでは、開口部の作成及び皮膚を通した薬物分子の送達の両方に、薬物でコーティングされたマイクロニードルが使用される。このアプローチでは、薬物分子のマイクロニードルへの制限された不均一なコーティングが問題になる可能性がある。「ポークアンドフロー」アプローチでは、中空のマイクロニードルを使用して皮膚を貫通し、次いでマイクロニードルを所定の位置に残して、皮膚を通して液体薬剤を送達するための導管として機能させる。
【発明の概要】
【0006】
本出願は、マイクロニードルアレイを開示し、いくつかの実施形態では、「ポークアンドリリース」薬物送達用途に使用できるマイクロニードルアレイを開示し、ここで薬物分子が装填された分解性マイクロニードルが皮膚を貫通するために使用され、その後、この薬物を装填したマイクロニードルは、基材から外れ、皮膚に保持される。いくつかの実施形態によれば、薬物分子又は他の活性成分は、「ポークアンドパッチ」、「コートアンドポーク」又は「ポークアンドフロー」薬物送達用途が意図する従来のマイクロニードルアレイよりも、本明細書の開示の態様を利用することにより、この「ポークアンドリリース」送達モチーフでより効率的に利用できる。
【0007】
本明細書に開示されるマイクロニードルアレイのいくつかの実施形態は、アレイによって運ばれる活性成分の本質的に全体が被験体に送達可能であり、「ポークアンドパッチ」、「コートアンドポーク」又は「ポークアンドフロー」薬物送達用途が意図する従来のマイクロニードルアレイよりも、高い活性成分装填が達成できる方法で、活性成分を組み込む。さらに、本明細書で議論されるマイクロニードルアレイのいくつかの実施形態は、様々な状態の処置に利用でき、毒素などの生物学的実体を被験体に送達するのに特に効果的であることができる。
【0008】
本明細書に開示されるいくつかの実施形態によれば、マイクロニードルが突出するベース層に対して各マイクロニードルの少なくとも内部に及び各マイクロニードルの遠位部分にのみ組み込まれた活性成分を含むマイクロニードルアレイを提供することができる。例えば、実施形態によれば、各マイクロニードルを画定するベース層及び細長い本体の少なくとも一部は、活性成分を欠いている。活性成分は、各マイクロニードルの遠位部分に均一に、又は各マイクロニードルの遠位部分に濃度勾配で配置できる。例えば、活性成分の濃度勾配は、各マイクロニードルの遠位部分に向かって、濃度を増加又は減少させるか、濃度を増加及び減少させる両方で、異なる濃度の層を介して提供することができる。マイクロニードルアレイのベース層に取り付けられた各マイクロニードルの近位部分は、活性成分を欠いている。このように、被験体の皮膚表面への適用後にマイクロニードルがベース層から分離すると、ベース層が後に皮膚表面から取り除かれるときに、活性成分が無駄に失われることがない。各マイクロニードルは比較的小さく、少量の活性成分のみを保持しているが、マイクロニードルが集合的に溶解又は分解すると、治療有効量の活性成分を送達できる。
【0009】
いくつかの実施形態では、マイクロニードルは、生理学的条件下で溶解又は分解できる溶解性ポリマーから形成される。いくつかの実施形態では、溶解性ポリマーは、水性媒体に溶解するポリマー材料を含む。いくつかの実施形態では、水性媒体はリン酸緩衝生理食塩水(PBS)である。いくつかの実施形態では、PBSは、約4.0~約10.0、約4.5~約9.5、約5~約8、約5.5~約7.5、約6~約8、約6.5~約7.5、約6.8~約7.8、又は約7.0~約7.8の範囲のpHを有する。いくつかの実施形態では、溶解性ポリマーは、pH7.4のPBSに溶解するポリマー材料を含む。いくつかの実施形態では、ポリマー材料は、約10℃~約50℃、約15℃~約45℃、約20℃~約40℃、約25℃~約45℃、約30℃~約40℃、約35℃~約45℃、又は約35℃~約40℃の範囲の温度で、pH7.4のPBSに溶解する。
【0010】
上記で議論されたマイクロニードルアレイのいくつかの実施形態を製造するために、複数の細長いウェルを有するマイクロニードルモールドは、細長いウェルが部分的にのみ、具体的にはそれらの下方部分において充填され、それによって細長いウェルのそれぞれの上方部分が充填されずに残るように、第1の溶解性ポリマー及び活性成分を含む第1の流体と接触させることができる。細長いウェルのそれぞれの下方部分を第1の流体で部分的に充填した後、第2の溶解性ポリマーを含むが、第1の流体の活性成分又は他の活性成分を欠く第2の流体をモールドに適用でき、各マイクロニードルのベース層及び細長い本体の製造を完了する。いくつかの実施形態では、粘性効果により、第1の流体と第2の流体との混合を防止でき、それにより、マイクロニードルのそれぞれの遠位部分に活性成分を局在化させる。いくつかの実施形態において、第1の溶解性ポリマー及び第2の溶解性ポリマーは同じであることができ、こうして、活性成分が組み込まれるマイクロニードルの遠位部分を除いて、マイクロニードルアレイは組成的に均質である。他の実施形態では、第1の溶解性ポリマーと第2の溶解性ポリマーとは異なることができる。さらに、いくつかの実施形態では、異なる濃度の活性成分を有する第1の溶解性ポリマーのアリコートを連続的に堆積し、次いで細長いウェルの上方部分に第2の溶解性ポリマーを過剰充填することにより、活性成分の勾配分布をマイクロニードルに組み込むことができる。
【0011】
本明細書に開示されるいくつかの実施形態は、活性成分が、マイクロニードルのそれぞれを画定する細長い本体の遠位部分にのみ配置され、活性成分が少なくとも遠位部分での細長い本体内部に、具体的には溶解性ポリマーによって画定されるマトリックス内部に組み込まれるように構成することができる。活性成分をマイクロニードル内部に組み込むことにより、多くの点で、従来の「コートアンドポーク」薬物送達アプローチで使用される先端コーティングされたマイクロニードルに比べて大きな利点が得られる。
【0012】
したがって、マイクロニードルアレイのいくつかの実施形態は、ベース層と、ベース層から突出する複数のマイクロニードルとを含むことができる。マイクロニードルのそれぞれは、近位部分及び遠位部分を有する細長い本体を含み、近位部分はベース層に取り付けられている。マイクロニードル及びベース層は溶解可能であることができる。例えば、マイクロニードル及びベース層は、少なくとも1つの溶解性ポリマーを含むことができる。活性成分は各マイクロニードルの細長い本体に組み込むことができ、活性成分は各細長い本体の遠位部分にのみ及び少なくとも遠位部分の内部に存在する。活性成分は、遠位部分に均一に、又は遠位部分に勾配で配置できる。
【0013】
いくつかの実施形態において、マイクロニードルアレイに存在する活性成分は、薬物分子又は生体分子(すなわち、生物学的実体)を含む。いくつかの実施形態では、活性成分は、抗原、抗体、又は毒素を含む。さらにいくつかの実施形態では、活性成分は、例えば、ボツリヌス毒素などの神経毒である。A、B、C、D、及び/又はE型のボツリヌス毒素がマイクロニードルアレイに存在できる。いくつかの実施形態では、ボツリヌス毒素は、ボツリヌス毒素血清型A(BoNT/A)、ボツリヌス毒素血清型B(BoNT/B)、ボツリヌス毒素血清型C1(BoNT/C1)、ボツリヌス毒素血清型D(BoNT/D)、ボツリヌス毒素血清型E(BoNT/E)、ボツリヌス毒素血清型F(BoNT/F)、ボツリヌス毒素血清型G(BoNT/G)、ボツリヌス毒素血清型H(BoNT/H)、ボツリヌス毒素血清型X(BoNT/X)、ボツリヌス毒素血清型J(BoNT/J)、並びにモザイクボツリヌス毒素及び/又はその多様体からなる群から選択される。モザイク毒素の例には、BoNT/DC、BoNT/CD、及びBoNT/FAが含まれる。いくつかの実施形態では、ボツリヌス毒素は、前述の任意のボツリヌス毒素のサブタイプであることができる。
【0014】
いくつかの実施形態では、各マイクロニードルの少なくとも1つの溶解性ポリマーは第1の溶解性ポリマーを含むことができ、ここで各マイクロニードルの遠位部分及び近位部分は両方とも第1の溶解性ポリマーを含む。いくつかの実施形態では、ベース層も、第1の溶解性ポリマーを含む。いくつかの実施形態では、ベース層及び近位部分は両方とも、第1の溶解性ポリマーを含み、活性成分又は他の活性成分を欠いている。いくつかの実施形態では、ベース層及び近位部分の両方が第1の溶解性ポリマーからなり、活性成分を欠くことができ、代わりに活性成分は、各細長い本体の遠位部分における第1の溶解性ポリマーのマトリックスに組み込まれることができる。
【0015】
いくつかの実施形態では、アレイの1つ以上のマイクロニードルは、第1及び第2の溶解性ポリマーなどの複数の溶解性ポリマーを含むことができる。例えば、各細長い本体の遠位部分は、第1の溶解性ポリマーを含むことができ、各細長い本体の近位部分は、第2の溶解性ポリマーを含むことができる。ベース層は、同様に、第2の溶解性ポリマーを含むか、又はそれからなることができる。いくつかの実施形態では、第1の溶解性ポリマー及び/又は第2の溶解性ポリマーは、複数の溶解性ポリマーを含むことができる。いくつかの実施形態では、第2の溶解性ポリマーは、第1の溶解性ポリマーよりも速く溶解し易い可能性がある。より速く分解する第2の溶解性ポリマーは、ベース層からのマイクロニードルの放出を促進することができる。異なる溶解性ポリマーはまた、例えば、マイクロニードルの機械的特性の調整を促進することもできる。
【0016】
いくつかの実施形態では、少なくとも1つの溶解性ポリマーは、ヒアルロン酸、架橋ヒアルロン酸、疎水性修飾ヒアルロン酸、又はそれらの任意の組み合わせを含む。
【0017】
いくつかの実施形態では、少なくとも1つの溶解性ポリマーは、グリコサミノグリカン、多糖類、コラーゲン、エラスチン、フィブロイン、デンプン、グルコマンナン、ヒアルロン酸、架橋ヒアルロン酸、疎水性修飾ヒアルロン酸、又はそれらの任意の組み合わせのうちの少なくとも1つを含む。
【0018】
マイクロニードルアレイを形成する方法のいくつかの実施形態も本明細書に開示されている。いくつかの実施形態では、下方部分及び上方部分を有する複数の細長いウェルを含み、細長いウェルのそれぞれの下方部分を第1の溶解性ポリマー及び活性成分を含む第1の流体で充填し、細長いウェルのそれぞれが部分的にのみ充填され、細長いウェルのそれぞれの上方部分が充填されないままとされる、マイクロニードルアレイモールドを提供することができる。細長いウェルのそれぞれの下方部分を充填した後、細長いウェルのそれぞれの充填されていない上方部分は、第2の溶解性ポリマーを含み、活性成分を欠く第2の流体で過剰充填できる。その後、モールドを加熱するか、第1及び第2の流体を室温で乾燥又は蒸発させて、複数のマイクロニードルが突出したベース層を含むマイクロニードルアレイを形成することができる。さらに、マイクロニードルアレイは、マイクロニードルアレイモールドから分離することができる。タンパク質又は他の生体分子などの敏感な活性成分が第1の流体に組み込まれている場合、室温で第1及び第2の流体を乾燥又は蒸発させることが望ましい場合がある。
【0019】
使用される溶解性ポリマーの性質に応じて、第1の流体及び/又は第2の流体はかなり粘稠であることができる。したがって、いくつかの実施形態では、キャスティングプロセスを使用して、モールド内の所望の位置への流体の分配を促進することができる。キャスティングプロセスは、各細長いウェルの下方部分又は底部への第1の流体の分配に役立ち、結果として生じるマイクロニードルの形成を促進することができる。
【0020】
いくつかの実施形態では、細長いウェルのそれぞれの下方部分を充填することは、細長いウェルのそれぞれの下方部分に第1の流体を堆積、移動、又はキャスティングすることを含むことができる。同様に、細長いウェルのそれぞれの上方部分を過剰充填することは、第2の流体を堆積、移動、又はキャスティングすることを含むことができる。いくつかの実施形態では、第2の流体は、第1の流体の上方でモールドの中に、及び/又はそれぞれの細長いウェル内にキャスティングできる。第2の流体は、第1の流体上に直接適用することができ、したがって第2の流体が、細長いウェルのそれぞれの下方部分内又はより深い部分に第1の流体を堆積、移動、又はキャスティングするのに役立ち得る。
【0021】
いくつかの実施形態では、第2の流体の少なくとも一部は、細長いウェルのそれぞれと流体接触する又は相互接続するモールドの部分などのモールドの過剰充填された部分又はベース部分に配置される。いくつかの実施形態では、モールドの過剰充填部分に配置された過剰充填された第2の流体の少なくとも一部は、マイクロニードルアレイのベース層を画定又は形成することができる。
【0022】
マイクロニードルアレイを使用して被験体を処置する方法のいくつかの実施形態も本明細書に開示されている。これらの方法は、被験体の皮膚表面を通る活性成分の「ポークアンドリリース」送達を伴い得る。より具体的には、このような方法は、マイクロニードルアレイを提供すること、及びマイクロニードルアレイを被験体の皮膚表面に適用して、皮膚表面に複数のマイクロニードルを埋め込むことを含む。マイクロニードルアレイは、ベース層、ベース層から突出する複数のマイクロニードル、及び活性成分を含む。マイクロニードルのそれぞれは、近位部分と遠位部分とを有する細長い本体を含むことができ、近位部分はベース層に取り付けられている。マイクロニードル及びベース層は、少なくとも1つの溶解性ポリマーを含む。活性成分は各マイクロニードルの細長い本体に組み込まれ、活性成分は各細長い本体の遠位部分にのみ及び少なくとも遠位部分の内部に存在する。
【0023】
被験体の皮膚表面に埋め込まれると、少なくとも1つの溶解性ポリマーは生理的条件下で経時的に溶解又は分解して、被験体に活性成分を放出することができる。
【0024】
少なくとも1つの溶解性ポリマーが溶解又は分解し、それによりベース層からマイクロニードルが放出された後、ベース層を被験体の皮膚表面から取り除くことができる。マイクロニードル及びそれらに組み込まれた活性成分は、その後、被験体内に留まり、所望の効果を提供することができる。
【0025】
主題技術の追加の特徴及び利点は、以下の説明に記載されており、一部は説明から明らかになるか、又は主題技術の実施によって習得され得る。主題技術の利点は、本明細書の記述及び実施形態並びに添付の図面で特に指摘された構造によって実現及び達成される。
【0026】
前述の一般的な説明及び以下の詳細な説明の両方が例示的及び説明的であり、主題技術のさらなる説明を提供することを意図していることが理解されるべきである。
【0027】
本開示の例示的な実施形態の様々な特徴は、図面を参照して以下に説明される。例示された実施形態は、本開示を例示することを意図したものであり、限定することを意図したものではない。図面には次の図が含まれる
【図面の簡単な説明】
【0028】
図1】いくつかの実施形態による、マイクロニードルアレイの側面図を提供する。
【0029】
図2】いくつかの実施形態による、マイクロニードルアレイの上面図を提供する。
【0030】
図3】いくつかの実施形態による、マイクロニードルアレイが製造される側面図から観察されるような例示的なプロセス概略図を示す。
【0031】
図4】いくつかの実施形態による、本開示のマイクロニードルアレイが被験体を処置するためにどのように使用されるかを示す例示的な概略図を示す。
【0032】
図5】いくつかの実施形態による、マイクロニードルアレイの走査電子顕微鏡(SEM)画像を示す。
【0033】
図6】いくつかの実施形態による、マイクロニードルアレイのX線マイクロコンピュータ断層撮影(CT)画像を示す。
【0034】
図7】いくつかの実施形態による、マイクロニードルの遠位部分内にトリパンブルーを組み込んだマイクロニードルアレイの画像を示す。
【0035】
図8】いくつかの実施形態による、Shiseidoから得られた市販のマイクロニードルアレイと比較した、本明細書に開示される実施形態におけるヒアルロン酸マイクロニードルアレイの力応答対プローブ移動距離のプロットを示す。
【0036】
図9A】いくつかの実施形態による、本明細書に記載の染料標識マイクロニードルアレイで処置された皮膚サンプルの写真を示す。
【0037】
図9B】いくつかの実施形態による、皮膚サンプルの貫通の前に撮影された例示的なマイクロニードルアレイの顕微鏡写真を示す。
【0038】
図9C】いくつかの実施形態による、皮膚サンプルの5分間の貫通後に撮影された図9Bのマイクロニードルアレイの顕微鏡写真を示す。
【0039】
図10】いくつかの実施形態による、ヒトの死体の皮膚を通る免疫グロブリンG(IgG)の皮膚透過を伴う研究の結果を示す。
【発明を実施するための形態】
【0040】
以下の詳細な説明では、主題技術の完全な理解を提供するために、多数の特定の詳細が示されている。これらの特定の詳細の一部がなくても、主題技術は実施され得ることが理解されるべきである。他の例では、主題技術を不明瞭にしないために、よく知られている構造及び技術は詳細に示されていない。本説明は、様々な実施形態の特定の詳細を説明しているが、説明は例示にすぎず、決して限定するものとして解釈されるべきではないことが理解される。さらに、そのような実施形態の様々な応用及びそれに対する変更は、当業者に思い浮かぶ可能性があり、本明細書で説明される一般的な概念によっても包含される。
【0041】
本開示は、「ポークアンドパッチ」、「コートアンドポーク」又は「ポークアンドフロー」薬物送達用途での使用を意図した従来のマイクロニードルアレイに関連するいくつかの課題に対処する。具体的には、マイクロニードルアレイのいくつかの実施形態は、マイクロニードル内に活性成分を局所的に組み込むことができ、同時に少なくとも各マイクロニードル内部に活性成分を配置できる。これらの特徴により、マイクロニードルコーティングアプローチに関連する問題を回避しながら同時に、活性成分をより効率的に使用できる。さらに有利なことに、マイクロニードルアレイのいくつかの実施形態は、神経毒などの潜在的に危険な活性成分の廃棄物処理問題を回避することができる。
【0042】
本開示のいくつかの態様を例示するために、ここで、いくつかの実施形態と一致するマイクロニードルアレイをさらに詳細に説明する。図1は、ベース層14から突出する複数のマイクロニードル12を含むマイクロニードルアレイ10の側面図を提供する。図2は、マイクロニードルアレイ10の対応する上面図の概略図を提供する。図2には8×8アレイが描かれているが、特定の用途要件に合わせてアレイの次元を変更できることが認識されるべきである。さらに、図2に示すように、配列の次元は必ずしも同じ数の行及び列を有する必要はない。一般に、アレイ10は、所与の意図された用途に適した行及び列の任意の組み合わせを含むことができる。さらに、マイクロニードルアレイは、図2に示すように、長方形の構成に限定されない。他の例示的なマイクロニードルアレイの形状には、例えば、平面構成又は三次元構成にかかわらず、円形、卵形、楕円形、三日月形、又はさらには不規則な形状が含まれ得る。例えば、いくつかの実施形態を使用して、顔又は身体の他の領域の処置での使用を促進する外形を提供することができる。
【0043】
さらに図1を参照すると、マイクロニードル12のそれぞれは、遠位部分16及び近位部分18を含む細長い本体を含む。近位部分18は、ベース層14に取り付けられるか、又はそれに隣接し、遠位部分16は、近位部分18を介してベース層14から離間している。近位部分18及び遠位部分16の相対的な長さは、広範囲にわたって変動でき、図1に示される特定の配置は、例示的及び非限定的であると見なされるべきである。
【0044】
本開示のいくつかの実施形態によれば、活性成分は、マイクロニードルのそれぞれの遠位部分16においてのみマイクロニードル12内に組み込むことができる。そのようなものとして、いくつかの実施形態では、活性成分はベース層14から離間でき、そこには存在せず、細長い本体の少なくとも一部は活性成分を欠くことができる。活性成分は、遠位部分16に均一に又は勾配状に配置できる。例えば、いくつかの実施形態において、活性成分の勾配分布は、異なる活性成分濃度のアリコートを連続的に堆積させてマイクロニードル12を形成することにより作成することができる。
【0045】
いくつかの実施形態では、マイクロニードル12のそれぞれの細長い本体を画定する遠位部分16及び近位部分18の配置は、相対的な長さの範囲にわたって変動できる。一般に、近位部分18は、マイクロニードル12のそれぞれを画定する細長い本体の長さの少なくとも1%~約99%を構成でき、長さのバランスは遠位部分16によって画定される。いくつかの実施形態では、近位部分18は、マイクロニードル12のそれぞれを画定する細長い本体の長さの約1%~約10%、又は細長い本体の長さの約10%~約20%、又は細長い本体の長さの約20%~約30%、又は細長い本体の長さの約30%~約40%、又は細長い本体の長さの約40%~約50%、又は細長い本体の長さの約50%~約60%、又は細長い本体の長さの約60%~約70%、又は細長い本体の長さの約70%~約80%、又は細長い本体の長さの約80%~約90%を構成できる。各場合において、遠位部分16は、全長のバランスを埋める。
【0046】
いくつかの実施形態では、マイクロニードル12のそれぞれは、約25ミクロン~約3000ミクロンの範囲の長さを有することができる。いくつかの実施形態では、マイクロニードル12のそれぞれは、約25ミクロン~約1000ミクロンの範囲の長さを有することができる。いくつかの実施形態では、すべてのマイクロニードル12は実質的に同じ長さを有することができる。前述の範囲内のマイクロニードルの長さは、本明細書でさらに議論されるように、被験体の皮膚表面を貫通し、活性成分を真皮に送達するのに効果的であることができる。真皮への活性成分の送達は、皮膚の質を改善し、化粧品及び臨床の両方で皮膚に影響を与える様々な状態を処置することができる。
【0047】
いくつかの実施形態では、マイクロニードル12のそれぞれは、皮膚を穿孔するのに適した円錐形又は角錐形の幾何学形状を有することができる。円錐形又は角錐形の幾何学形状は、マイクロニードル12が、皮膚を穿孔するのに適したポイント又は先端まで先細になるよう、その形状に関連するピッチ角を有する。
【0048】
いくつかの実施形態では、マイクロニードル12は、約1ミクロン~約30ミクロンの範囲の先端幅を有することができる。いくつかの実施形態では、マイクロニードル12は、約4ミクロン~約25ミクロンの範囲の先端幅を有することができる。前述のマイクロニードルの幅は、マイクロニードルの最遠位端又はポイントで、又はいくつかの実施形態ではマイクロニードル12がポイントに先細りになると、近位部分18がベース層14から突出する位置に関して測定することができる。前述のサイズ範囲内のマイクロニードル先端幅は、生体分子を含む広いサイズ範囲にわたって変動する活性成分を送達するために、皮膚に適切なサイズの開口部を生成することができる。
【0049】
上記で示したように、マイクロニードルアレイ10内のマイクロニードル12の数、次元、長さ、幅及び幾何学的形状は、特に限定されるとは考えられない。同様に、いくつかの実施形態では、マイクロニードルアレイ10内のマイクロニードル12の密度は、約5マイクロニードル/cm~約1000マイクロニードル/cm以上の範囲であることができる。
【0050】
本開示のいくつかの実施形態によれば、マイクロニードル12及びベース層14は、マイクロニードル12がベース層14に隣接し、そこから突出するように、溶解性ポリマーから形成することができる。したがって、いくつかの実施形態では、マイクロニードル12とベース層14との間に構造的な不連続性はない。いくつかの実施形態では、マイクロニードル12の溶解性ポリマーは、ベース層14の溶解性ポリマーにブレンドされる。
【0051】
上述のように、マイクロニードル12を画定する細長い本体の長さの少なくとも一部は、活性成分がベース層14にも存在しないように、活性成分を欠くことができる。いくつかの実施形態では、ベース層14は、場合によりマイクロニードル12に存在する同じ及び/又は異なる溶解性ポリマーを含むことができる。
【0052】
いくつかの実施形態では、マイクロニードル12は、近位部分18及び遠位部分16の両方が第1の溶解性ポリマーを含むように、第1の溶解性ポリマーを含むことができる。いくつかの実施形態では、活性成分は、遠位部分16内の第1の溶解性ポリマーのマトリックス内にのみ組み込むことができる。いくつかの実施形態では、ベース層14はまた、第1の溶解性ポリマーを含むことができる。あるいは、ベース層14は、マイクロニードル12を含む第1の溶解性ポリマーとは異なる第2の溶解性ポリマーを含むことができる。
【0053】
いくつかの実施形態では、マイクロニードル12及び/又はベース層14はそれぞれ、溶解性ポリマーを含むことができる1つ、2つ、3つ、又はそれ以上のポリマー又は層を含むことができる。例えば、マイクロニードル12は、遠位部分16が第1の溶解性ポリマーを含み、近位部分18が第2の溶解性ポリマーを含むように、第1の溶解性ポリマー及び第2の溶解性ポリマーを含むことができる。したがって、そのような実施形態では、活性成分は、第1の溶解性ポリマーのマトリックス内の遠位部分16に組み込まれることができ、さらに、いくつかの実施形態では、近位部分18内の第2の溶解性ポリマーには実質的に活性成分は存在し得ない。いくつかの実施形態では、ベース層14は、第1の溶解性ポリマー及び/又は第2の溶解性ポリマーを含むことができる。いくつかの実施形態では、ベース層14は、第2の溶解性ポリマーのみを含む。あるいは、ベース層14は、マイクロニードル12を含む第1の溶解性ポリマー及び/又は第2の溶解性ポリマーとは異なる第3の溶解性ポリマーを含むことができる。溶解性ポリマーの特定の組み合わせは、例えば、所望の放出プロファイル、混合プロファイル、及び/又は機械的強度を提供するなど、所望の用途のためにマイクロニードル特性を調整するように選択することができる。例えば、より迅速に分解する溶解性ポリマーをマイクロニードル12の近位部分に存在させて、マイクロニードル12の遠位部分をベース層14から放出して、アレイ10が取り除かれたときにマイクロニードル12の遠位部分の活性成分が患者に留まることを確実にできる。
【0054】
場合により、マイクロニードル12及びベース層14の両方は、同じタイプの溶解性ポリマーを含む。マイクロニードル12とベース層14との両方に同じ溶解性ポリマーを存在させることにより、異なる特性を有する溶解性ポリマー間の潜在的な不相溶性を回避することができる。例えば、マイクロニードル12及びベース層14が同じ溶解性ポリマーから形成されるようにマイクロニードルアレイ10を構成することにより、層間剥離によるマイクロニードル12の早期の放出を回避又は排除することができる。しかし、いくつかの実施形態では、異なる溶解性ポリマーが望ましく、本開示の文脈内のいくつかの用途を含むいくつかの用途に有利に使用できる。
【0055】
いくつかの実施形態では、デバイスは、処置されるべき皮膚の第1の部分を覆うサイズ及び/又は形状の第1領域と、第1の領域に隣接し、接続される第2領域を含んでいてもよく、この第2領域は、処置されるべき皮膚の第2の部分を覆うサイズ及び/又は形状である。いくつかの実施形態では、第1領域は、基材から突出し第1長さを有する第1マイクロニードルを含み、第2領域は、基材から突出し、第1長さとは異なる第2長さを有し、第1領域から突出する第2マイクロニードルを含み、第2マイクロニードルは、第1高さとは異なる第2高さを有し、第2領域から突出する。いくつかの実施形態では、第1長さは、第2長さよりも少なくとも約1%長い。
【0056】
例えば、いくつかの実施形態では、第1長さは、第2長さよりも、少なくとも約5%、少なくとも約10%、少なくとも約20%、少なくとも約30%、少なくとも約40%、少なくとも約50%、少なくとも約60%、少なくとも約70%、少なくとも約80%、少なくとも約90%、少なくとも約100%、少なくとも約150%、少なくとも約200%、少なくとも約300%、少なくとも約500%、少なくとも約800%、又は少なくとも約1000%長い。いくつかの実施形態では、第1のマイクロニードルは、第2のマイクロニードルの長さよりも少なくとも約10%~約200%長い長さを有していてもよい。例えば、第1のマイクロニードルは、第2のマイクロニードルの長さより、約30%、又は約40%、又は約50%、又は約60%、又は約70%、又は約80%、又は約90%、又は約100%、又は約110%、又は約120%、又は約130%、又は約140%、又は約150%、又は約160%、又は約170%、又は約180%、又は約190%、又は約200%又はそれ以上長い長さを有する。
【0057】
いくつかの実施形態では、第1のアレイは第1の長さを有するマイクロニードルを含み、第2のアレイは第1の長さとは異なる第2の長さを有するマイクロニードルを含む。他の実施形態では、第1のアレイは第1の間隔を有するマイクロニードルを含み、第2のアレイは第1の間隔とは異なる第2の間隔を有するマイクロニードルを含む。
【0058】
マイクロニードル12が被験体の皮膚表面に効果的に貫通するために、少なくとも1つの溶解性ポリマーの十分な機械的強度が望ましい。それらの比較的良好な機械的特性により、本開示のいくつかの実施形態で利用するのに適した溶解性ポリマーには、例えば、グリコサミノグリカン、多糖類、コラーゲン、エラスチン、フィブロイン、デンプン、グルコマンナン、ヒアルロン酸、架橋ヒアルロン酸、疎水性修飾ヒアルロン酸、又はそれらの任意の組み合わせが含まれる。他のタイプの溶解性ポリマーも適切であり得、場合により単独で又は前述の溶解性ポリマーと組み合わせて使用することができる。例えば、カルボキシメチルセルロース、カルボキシエチルセルロース、及びポリビニルアルコールは、本開示で利用できる他のタイプの溶解性ポリマーである。特定の実施形態では、ヒアルロン酸は、任意の前述の溶解性ポリマーとブレンドすることができる。
【0059】
いくつかの実施形態では、少なくとも1つの溶解性ポリマーは、ヒアルロン酸、架橋ヒアルロン酸、疎水性修飾ヒアルロン酸、又はそれらの任意の組み合わせを含むことができる。ヒアルロン酸、架橋ヒアルロン酸、又は疎水性修飾ヒアルロン酸の様々な特性を調整して、マイクロニードルアレイ10を被験体の皮膚表面に適用する際、マイクロニードル12からの活性成分の放出プロファイルを調整することができる。これらの特性をさらに調整するために、他の溶解性ポリマーもヒアルロン酸とブレンドできる。いくつかの実施形態によれば、様々な活性成分を組み込む能力に加えて、ヒアルロン酸及び修飾ヒアルロン酸は、被験体の皮膚にそれら自体の有益な特性を伝えることができる。
【0060】
いくつかの実施形態では、ヒアルロン酸、架橋ヒアルロン酸、又は疎水性修飾ヒアルロン酸は、約10kDa~約6000kDaの範囲の分子量を有することができる。いくつかの実施形態では、少なくとも1つの溶解性ポリマーは、約100kDa~約6000kDaの範囲の分子量を有するヒアルロン酸、架橋ヒアルロン酸、又は疎水性修飾ヒアルロン酸を含む。
【0061】
いくつかの実施形態では、架橋ヒアルロン酸は、約100Pa~約3000Paの貯蔵弾性率(G’)を有することができる。架橋ヒアルロン酸を形成するための適切な架橋剤には、例えば、エポキシ架橋剤、例えば1,4-ブタンジオールジグリシジルエーテル(BDDE)、ジビニルスルホン(DVS)、又は少なくとも2つのアミン基を含む分子が含まれる。いくつかの実施形態において、架橋ヒアルロン酸は、チオール-マイケル付加反応を介して形成できる。例えば、チオール化ヒアルロン酸は、マレイミド、ビニルスルホン、又は(メタ)アクリラートで修飾されたヒアルロン酸で架橋できる。活性成分の存在下でのポリマー架橋は、本明細書に開示されるいくつかの実施形態で使用するためのよく混合された第1の流体をもたらす。
【0062】
いくつかの実施形態では、疎水性修飾ヒアルロン酸は、アルキル又はアシル基、特にアルキル基で官能化されたヒアルロン酸を含むことができる。疎水性修飾ヒアルロン酸を形成するのに適したアルキル基には、例えば、エチル基、プロピル基、ベンジル基、及びオクチル基が含まれ、これらは直鎖又は分岐鎖であることができる。
【0063】
いくつかの実施形態において、疎水性修飾ヒアルロン酸は、リン酸緩衝生理食塩水(PBS)又はジメチルスルホキシド(DMSO)の存在下で膨潤できる。他のヒアルロン酸化合物は、様々な実施形態で使用するために同様に膨潤させることができる。
【0064】
マイクロニードルアレイを形成するのに十分な機械的強度を有する溶解性ポリマーは、溶媒中に配置される又は溶媒と混合されると非常に粘稠な流体を生成する可能性がある。高い流体粘度は、本開示のマイクロニードルアレイを形成するためのマイクロニードルアレイモールドへの困難な導入をもたらし得る。マイクロニードルアレイを形成する場合の過度の流体粘度に対処するための適切な方法は、以下により詳細に議論される。したがって、本開示のマイクロニードルアレイは、広範囲の溶解性ポリマーを組み込むことができる。加えて、本開示は、ある範囲の活性材料と適合性があり、その例示的な例は以下で議論される。
【0065】
本明細書で使用される場合、「活性成分」という用語は、皮膚を通して被験体に投与される場合に治療上望ましい効果を有する任意の物質を指す。いくつかの実施形態では、マイクロニードルアレイにおける活性成分は、マイクロニードルアレイに存在する溶解性ポリマーとは異なり得る。特定の実施形態では、本開示のマイクロニードルアレイ内に組み込むのに適した活性材料には、抗原、抗体、及び毒素が含まれる。本開示のマイクロニードルアレイは、ベース層に活性材料を欠いているため、本開示のマイクロニードルアレイにこれらの生物学的実体を組み込む場合、潜在的な生物学的有害廃棄物処理の問題を回避することができる。
【0066】
神経毒、特にボツリヌス毒素は、本明細書に開示されるマイクロニードルアレイのいくつかの実施形態内に組み込むために特に望ましい可能性がある。任意のボツリヌス毒素タイプA、B、C、D、E又はそれらの任意の組み合わせを、本開示のマイクロニードルアレイ内に組み込むことができる。いくつかの実施形態では、ボツリヌス毒素は、ボツリヌス毒素血清型A(BoNT/A)、ボツリヌス毒素血清型B(BoNT/B)、ボツリヌス毒素血清型C1(BoNT/C1)、ボツリヌス毒素血清型D(BoNT/D)、ボツリヌス毒素血清型E(BoNT/E)、ボツリヌス毒素血清型F(BoNT/F)、ボツリヌス毒素血清型G(BoNT/G)、ボツリヌス毒素血清型H(BoNT/H)、ボツリヌス毒素血清型X(BoNT/X)、ボツリヌス毒素血清型J(BoNT/J)、並びにモザイクボツリヌス毒素及び/又はその多様体からなる群から選択される。モザイク毒素の例には、BoNT/DC、BoNT/CD、及びBoNT/FAが含まれる。いくつかの実施形態では、ボツリヌス毒素は、前述の任意のボツリヌス毒素のサブタイプであることができる。
【0067】
マイクロニードルアレイに組み込まれる活性成分の量は変動でき、活性成分の種類、意図する適用分野、実施されている処置の種類、送達されるべき用量及びデバイスからホストに活性成分を送達する効率を含むがこれらに限定されないいくつかの要因に依存し得る。いくつかの実施形態では、マイクロニードルアレイは、マイクロニードルアレイ全体の、0.001重量%~約15重量%、約0.001重量%~約10重量%、約0.001重量%~約3重量%、約0.001重量%~約1重量%、約0.001重量%~約0.5重量%、又は0.001重量%~約0.1重量%の活性成分を含むことができる。
【0068】
いくつかの実施形態において、活性成分は、マイクロニードルアレイのマイクロニードルのそれぞれの遠位部分のみに存在する。そのような構成では、マイクロニードルのそれぞれの遠位部分は、遠位部分の、0.001重量%~約15重量%、約0.001重量%~約10重量%、約0.001重量%~約3重量%、約0.001重量%~約1重量%、約0.001重量%~約0.5重量%、又は0.001重量%~約0.1重量%の活性成分を含むことができる。
【0069】
いくつかの実施形態では、マイクロニードルアレイは、活性成分の送達のためのパッチに構成することができる。いくつかの実施形態では、パッチは有効量の活性成分を送達するように構成される。
【0070】
投与量の送達は、平方センチメートルあたりの単位(U)で測定できる。毒物学では、所与の毒素の単位は、試験集団の半分を死滅するのに必要な用量である毒素のLD50によって決定できる。いくつかの実施形態では、パッチは、約0.01~約100U/cm、約0.05~約95U/cm、約0.10~約90U/cm、約0.20~約85U/cm、約0.25~約80U/cm、約0.50~約75U/cm、約0.75~約70U/cm、約1.0~約65U/cm、約2.0~約60U/cm、約3.0~約55U/cm、約4.0~約50U/cm、約5.0~約45U/cm、約5.0~約40U/cm、約5.0~約35U/cm、約5.0~約30U/cm 、約5.0~約25U/cm、約0.01~約20U/cm、約0.01~約15U/cm、約0.01~約10U/cm、約0.01~約5U/cm、約0.10~約15U/cm、約0.10~約10U/cm、約0.05~約10U/cm、約0.01~約3.0U/cm、約0.10~約3.0U/cm、又は約0.05~約3.0U/cm の量の毒素を送達するように構成される。
【0071】
いくつかの実施形態では、活性成分は、非効率的な送達を補填するために意図された送達用量を超える装填濃度を有する。例えば、送達効率(被験体に送達される組成物に含まれる総薬物のパーセント)が0.1%である0.1U/cmの用量を送達するように構成された組成物の場合、装填濃度は約10U/cmになる。いくつかの実施形態において、装填濃度は、約0.01~約100,000U/cm、約0.10~約80,000U/cm、約0.50~約50,000U/cm、約1.0~約25,000U/cm、約2.0~約15,000U/cm、約0.10~約20,000U/cm、約0.10~約15,000U/cm、約0.10~約10,000U/cm、約0.10~約8,000U/cm、約0.10~約5,000U/cm、約0.10~約1,000U/cm、約5.0~約1,000U/cm、約5.0~約10,000U/cm、約10~約100,000U/cm、約10~約90,000U/cm、約10~約75,000U/cm、約10~約50,000U/cm、約10~約25,000U/cm、約10~約10,000U/cm、約10~約1,000U/cm、約10~約500U/cm 、約10~約250U/cm、約10~約100U/cm、又は約10~約50U/cmの範囲である。
【0072】
本明細書に開示されるマイクロニードルアレイのいくつかの実施形態の利点は、様々な生物学的実体又は他の活性成分の皮膚透過性を高め、局所的又は全身的拡散からの合併症を軽減しながらゆっくりとした治療放出を可能にし、単一部位注射に比べて大きな処置領域を提供し、及び活性材料の皮下投与と比較して被験体の痛みを軽減することを含む。いくつかの実施形態では、マイクロニードルアレイは、場合により1つ以上の賦形剤と共にヒアルロン酸を含むことができる。適切な分子量(例えば150kDa~6000kDa)のヒアルロン酸は、マイクロニードルの一体性を維持するためのベース材料として機能するが、賦形剤、例えばスクロース、マルトース、ポリエチレングリコール、又は低分子量ポリマー(例えば分子量<100kDaを有するヒアルロン酸)は、皮膚で素早く溶解し、活性成分のより良い送達を促進できる。いくつかの実施形態では、賦形剤は、約5kDa、約10kDa、約15kDa、約20kDa、約25kDa、約30kDa、約35kDa、約40kDa、約45kDa、約50kDa、約55kDa、約60kDa、約65kDa、約70kDa、約75kDa、約80kDa、約85kDa、約90kDa、又は約95kDaの分子量を有する低分子量ヒアルロン酸であることができる。
【0073】
上記で議論したマイクロニードルアレイを製造するための簡単な方法も本明細書に記載されている。図3は、側面図から観察されるように、マイクロニードルの遠位部分のみに活性成分が配置されたマイクロニードルアレイを製造することができる例示的なプロセスを示す。図3に示すように、マイクロニードルアレイ110を製造する方法は、最初に、複数の細長いウェル122を含むマイクロニードルアレイモールド120を提供することを含む。細長いウェル122のそれぞれは、下方部分124と上方部分126とを含むことができる。
【0074】
図3を引き続き参照すると、第1の溶解性ポリマー及び活性成分を含む第1の流体が次いで調製又は提供される。次いで、第1の流体を使用して、細長いウェル122のそれぞれを部分的に充填する。具体的には、第1の流体は、細長いウェル122のそれぞれの下方部分124を充填し、それにより、上方部分126は充填されないままになる。必要に応じて、キャスティング又は堆積プロセスを利用して、第1の流体を細長いウェル122の底部に堆積させることができる。沈降は、キャスティングプロセス中に発生する可能性がある。必要に応じて、さらに進む前に、細長いウェル122内に収容された第1の流体から溶媒を追い出すことができる。いずれの場合でも、活性成分は、細長いウェル122のそれぞれの下方部分124内の第1の溶解性ポリマーのマトリックス全体に組み込まれたままである。ポリマーをキャスティングする適切な方法は、米国特許出願公開第2016/0279401号明細書に記載されており、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。さらに、米国特許出願公開第2016/0279401号明細書は、本明細書の開示の1つ以上の特徴と組み合わせることができるマイクロニードルアレイの追加の特徴についても議論している。
【0075】
例えば、本明細書に開示される任意の薬物分子又は他の活性成分を、マイクロニードルアレイのポリマーマトリックスの全体に均一に埋め込むか又は組み込むことができる。均一な組み込みは、アレイの基部からそこから延びる各マイクロニードルの先端まで、マイクロニードルアレイの全体にわたって見出すことができる。ポリマーマトリックスに均一に組み込まれた薬物又は他の活性剤でマイクロニードルを形成することにより、薬物又は活性剤の放出割合を慎重に制御することができる。加えて、薬物又は活性剤の組み込みは、薬物又は活性剤が表面にコーティングされているニードルには見られない均一性のさらなる利点を提供し得る。さらに、組み込みにより、マイクロニードルの表面からの剥離による活性剤の損失を防ぐことができる。
【0076】
引き続き図3を参照すると、第2の溶解性ポリマーを含むが、第1の流体の活性成分又は他の活性成分を欠く第2の流体が調製又は提供される。いくつかの実施形態では、第2の流体は、溶媒と混合された第2の溶解性ポリマーからなるか、又は本質的になることができる。意図する結果に応じて、第1の溶解性ポリマーと第2の溶解性ポリマーとは互いに同じでも異なっていてもよい。次いで、第2の流体を使用して、細長いウェル122の残り、具体的には細長いウェル122のそれぞれの上方部分126を充填する。
【0077】
マイクロニードルアレイ110内のマイクロニードル112間の接続性を達成するために、細長いウェル122に第2の流体を過剰充填することができる。それにより、過剰充填された第2の流体は、合体して、マイクロニードルアレイモールド120内の細長いウェル122の上方に単一の連続層130になることができる。第2の流体は、必要に応じて、第2のキャスティング又は堆積プロセスを利用して沈殿させて、第2の流体を細長いウェル122内により深く堆積させることができる。沈降力は、第2の流体から第1の流体にさらに伝達され、細長いウェル122のさらなる堆積又は充填、及び/又はマイクロニードル112の緻密化をもたらすことができる。その後、連続層130は、固化するとベース層114になることができ、そこで、第2の流体中の溶解性ポリマーがベース層114を続いて画定する。最後に、固化後、ベース層114及びマイクロニードルアレイ110の残りは、マイクロニードルアレイモールド120から放出又は除去することができる。
【0078】
第1の流体及び第2の流体がマイクロニードルアレイモールド120内に配置されると、モールド120及びマイクロニードルアレイ110を加熱して流体を乾燥させる又は溶媒を追い出してマイクロニードルアレイ110を形成し、第1及び第2の溶解性ポリマーと活性成分とを残すことができる。あるいは、第1及び第2の流体を室温で蒸発又は乾燥させて、マイクロニードルアレイ110の形態の第1及び第2の溶解性ポリマー及び活性成分を残すことができる。形成後、マイクロニードルアレイ110は、ベース層114及びそこから突出する複数のマイクロニードル112を含む。マイクロニードルアレイモールド120からの放出に続いて、マイクロニードルアレイ110はさらなる使用の準備ができている。
【0079】
なおも図3を参照し、さらに図1を参照すると、マイクロニードル112及びベース層114は互いに隣接していることが分かる。例えば、マイクロニードル112とベース層114との間に滑らかな界面が存在することができ、2つの間に構造的な不連続性はない。具体的には、近位部分116及びベース層114は互いに隣接している。いくつかの実施形態において、近位部分116及びベース層114は、実質的に同じ組成である。図1に関して上述したように、近位部分116及びベース層114の両方は、活性成分又は他の活性成分を欠くことができる。対照的に、マイクロニードル112の遠位部分118は、溶解性ポリマーのマトリックス全体に組み込まれた活性成分を含むことができる。溶解性ポリマー及び活性成分は、マイクロニードル112を形成する前に第1の流体に混合されるため、活性成分は、遠位部分118の内部及び遠位部分118の表面の外部の両方に配置できる。いくつかの実施形態では、活性成分の一部でさえ、遠位部分118の表面上に外部に配置され、第1の流体中の分解性ポリマーと活性成分との密接な混合によるコーティングアプローチによって達成されるよりも堅牢及び均一にマイクロニードル112に接着できる。いくつかの実施形態では、第1の流体又は複数の第1の流体(例えば、第1、第2、第3、又はそれ以上の流体)をモールド120に導入して、活性成分の濃度勾配、溶解又は分解勾配、又は他の化学的又は機械的特性を遠位部分118に導入できる。
【0080】
本明細書に開示されるマイクロニードルアレイのいくつかの実施形態を製造する際に使用されるマイクロニードルアレイモールドは、任意の様々なサイズ、形状、ウェルの深さ又は寸法、又は組成を有することができる。いくつかの実施形態では、モールドは、シリコーンモールドであり得、これは、製造後のマイクロニードルアレイの放出を促進し得る。他の材料も、マイクロニードルアレイモールドからのマイクロニードルアレイの放出を促進することができ、本明細書の開示で適切に使用することができる。例えば、いくつかの実施形態では、マイクロニードルアレイモールドは、シリコーンコーティング又はポリテトラフルオロエチレンでコーティングして、マイクロニードルアレイモールドからの放出を促進することができる。
【0081】
一般に、マイクロニードルアレイモールドは、所望の特性を有するマイクロニードルアレイの形成を促進するために、所望の寸法及び数の細長いウェルを含むことができる。加えて、マイクロニードルアレイモールドは、細長いウェルを過剰充填したときに第2の流体を収容するための領域を含む。例えば、いくつかの実施形態では、マイクロニードルアレイモールドの周りにリップを設けて、細長いウェルの上の連続層として、過剰充填された量の第2の流体を収容又はプールすることができる。本明細書で議論されるように、マイクロニードルアレイモールド内の第2の流体の過剰充填された量又は一部は、マイクロニードルアレイを形成する際にベース層に変換できる。
【0082】
第1の流体及び第2の流体をマイクロニードルアレイモールドの細長いウェルに導入するために、任意の適切な技術を使用することができる。特定の溶解性ポリマー、特にヒアルロン酸又は架橋ヒアルロン酸は、第1の流体及び/又は第2の流体に顕著な粘度を付与し得るため、第1の流体及び/又は第2の流体をマイクロニードルアレイモールド内の細長いウェルに導入することが困難な場合がある。したがって、本明細書で開示される方法のいくつかの実施形態では、キャスティングプロセスは、マイクロニードルアレイモールドと接触する場合に、第1の流体、第2の流体、又は両方に適用され得る。例示的な実施形態では、キャスティングプロセスは、振動機構又はキャスティング機構を利用して、マイクロニードルアレイモールド内の細長いウェルへのより深い流体浸透を促進することができる。
【0083】
例えば、いくつかの実施形態では、第1の流体は粘稠ペーストの形態であることができ、第2の流体は溶液などの粘稠性の低い形態であることができる。粘稠ペーストの第1の流体をマイクロニードルアレイモールドの表面に適用し、次いで粘稠ペーストが細長いウェルのそれぞれに接触するように広げることができる。次いで、マイクロニードルアレイモールドの細長いウェルへの第1の流体の浸透を促進するために、第1のキャスティングプロセスを適用することができる。
【0084】
より低い粘度の第1又は第2の流体の場合、キャスティングプロセスは、遠心力又は同様の技術を利用して、第1の流体又は第2の流体をマイクロニードルアレイモールド内の細長いウェルにより深く押し込むことができる。他のタイプのキャスティングプロセスも同様に利用して、モールドへの流体の完全な浸透を促進することができる。
【0085】
第1及び第2の流体をマイクロニードルアレイモールドに導入した後、第1及び第2の流体を室温で加熱、乾燥、及び/又は蒸発させてそこから溶媒を追い出し、モールド内で第1のポリマー及び第2のポリマーを固化させ、マイクロニードルアレイを形成できる。モールドを加熱するための技術は、例えば、直接放射加熱、抵抗加熱、加熱空気循環、マイクロ波加熱、他の適切な技術、又はそれらの任意の組み合わせを含むことができる。
【0086】
本開示のマイクロニードルアレイは、様々な処置方法で使用することができる。一般に、処置方法は、本開示のマイクロニードルアレイを被験体の皮膚表面に適用して、皮膚表面に複数のマイクロニードルを埋め込むことを含むことができる。皮膚表面に埋め込まれると、マイクロニードルは表皮を貫通して真皮に入ることができる。マイクロニードルアレイは、活性成分の少なくとも一部がマイクロニードルから真皮に放出されるのに十分な時間皮膚表面に適用されたままであることができる。
【0087】
いくつかの実施形態では、マイクロニードルアレイは、十分な溶解性ポリマーが溶解してベース層からのマイクロニードルの放出に影響を与えるまで皮膚表面に適用されたままであることができ、したがって、皮膚表面からベース層を取り除いた後にマイクロニードルが真皮に残る。マイクロニードルアレイが皮膚表面から取り除かれるまでにそれらが完全に分解していない場合、マイクロニードルはマイクロニードルに沿った弱いポイントでベース層から破断し、活性材料を被験体に放出するために皮膚に留まり、経時的に分解することができる。
【0088】
本開示のマイクロニードルアレイで処置することができる状態には、前額のしわ、目じりの小じわ、眉間のしわ、小じわ、多汗症、瘢痕、乾癬、炎症性皮膚病などが含まれるが、これらに限定されない。
【0089】
例えば、図4は、本開示のマイクロニードルアレイが被験体を処置するためにどのように使用されるかを示す例示的な概略図を示す。示されるように、マイクロニードルアレイ200は、被験体の皮膚表面202に適用できる。皮膚表面202は、表皮204及び真皮206を含む。皮膚表面202に適用されると、マイクロニードル212は表皮204を貫通し、マイクロニードル212のそれぞれの遠位部分218は少なくとも部分的に真皮206に入る。図4に示す構成では、各マイクロニードル212の遠位部分218は真皮206に完全に入る。この時点で、マイクロニードルアレイ200は、マイクロニードル212が溶解を開始し及び/又はベース層214から分離するのに少なくとも十分な時間、皮膚表面202上の所定の位置に留まることができる。図4に示すように、マイクロニードル212は、ベース層214を取り除く前に、皮膚表面202、真皮206、又は表皮204で及び/又はその内部で完全に溶解することができる。ただし、ポリマーの完全な分解又は溶解は必要ではない。マイクロニードル212が分解すると、活性成分220は、治療機能を実行するために真皮206に放出される。
【0090】
例1:500kDaの分子量を有する乾燥ヒアルロン酸繊維をリン酸緩衝生理食塩水で水和することにより、ヒアルロン酸の高粘稠流体を調製した。粘稠流体を1mLシリンジに移し、4000rpmで10分間遠心分離して気泡を除去した。この例では、活性成分は使用しなかった。
【0091】
気泡を除去した後、0.20gの粘稠流体をネガティブシリコーンマイクロニードルモールドに配置した。適用された流体は薄いフィルムにキャスティングした。流体をキャスティングした後、湿ったフィルム及びモールドをオーブンに入れ、40℃で2.5時間加熱した。加熱後、ピンセットを使用して、自立型マイクロニードルアレイをモールドから取り外した。ベース層の厚さは、異なる量の粘稠流体をモールドにキャスティングすることにより調整した。
【0092】
図5及び図6は、例1に関して上記で議論したものを含む、本明細書の製造方法のいくつかの実施形態を使用して製造された典型的なマイクロニードルアレイの画像を示す。図5は、マイクロニードルアレイの走査電子顕微鏡(SEM)画像を示し、図6は、マイクロニードルアレイのx線マイクロコンピュータ断層撮影(CT)画像を示す。
【0093】
例2:ヒアルロン酸の代わりに架橋ヒアルロン酸を使用したことを除いて、例1と同様の様式でマイクロニードルアレイを調製した。具体的には、Juvederm Ultra Plusゲルを凍結乾燥し、ヒアルロン酸濃度が120mg/mLの濃厚な流体に再構成した。ヒアルロン酸とコラーゲンとの混合物又はヒアルロン酸とフィブロインとの混合物も同様に使用した。この例では、活性成分は使用しなかった。
【0094】
例3:疎水性修飾ヒアルロン酸を使用したことを除いて、例1と同様の方法でマイクロニードルアレイを調製した。具体的には、80%のベンジル化度を有するベンジル化ヒアルロン酸をジメチルスルホキシドと混合して、20重量%のヒアルロン酸を含有する粘稠なペーストを形成した。この場合、乾燥はオーブン中、45℃で24時間行われた。この例では、活性成分は使用しなかった。
【0095】
例4:この例では、マイクロニードルアレイを形成する際にヒアルロン酸と共に配合するためのモデル活性成分としてトリパンブルー(MW=873)を使用した。トリパンブルー及びヒアルロン酸をPBSに溶解して、粘稠なペーストを形成した。次いで、粘稠ペーストをシリコーンモールドにキャスティングした。トリパンブルー/ヒアルロン酸をモールドにキャスティングした後、同様にヒアルロン酸を含むが、トリパンブルーを欠く同様のペーストを、モールドに最初に置いたペーストの上にキャスティングした。続いて、45℃で2.5時間加熱した。
【0096】
マイクロニードルの遠位部分内に優先的に装填されたトリパンブルーを有するマイクロニードルアレイが得られた。図7は、マイクロニードルの遠位部分内にトリパンブルーの優先的な装填を有するマイクロニードルアレイの画像を示す。
【0097】
例5:例4と同様の方法で、トリパンブルーの代わりにフルオレセインイソチオシアナート(FITC)/ヒト血清アルブミン(HSA)を用いるマイクロニードルアレイを形成した。
【0098】
例6:例4と同様の方法で、トリパンブルーの代わりにボツリヌス毒素A型(BoNT/A)を使用するマイクロニードルアレイも形成した。
【0099】
例7:例1のマイクロニードルアレイの機械的特性は、Stable Microsystemテクスチャアナライザーを使用して測定された。これらの測定を実行する際、マイクロニードルアレイを測定面に配置し、マイクロニードルを上向きにした。テクスチャアナライザーからのプローブをマイクロニードルと接触させ、マイクロニードルに対して軸方向に動かした。次いで、プローブの移動距離の関数としての力応答を記録した。図8は、Shiseidoから得られた市販のマイクロニードルアレイと比較した、ヒアルロン酸マイクロニードルアレイの力応答対プローブ移動距離のプロットを示す。図8に示すように、ヒアルロン酸マイクロニードルアレイの機械的強度ははるかに高かった。
【0100】
例8:ヒトの死体の皮膚及び例5のマイクロニードルアレイを使用して、皮膚穿孔試験を実施した。マイクロニードルが下向きになるようにマイクロニードルアレイを皮膚に置き、約1分間2kgの重りで手動で圧力をかけた。次いで、190gの重りをマイクロニードルアレイ上のアプリケーターに置き、その重りを60分間保持した。次いで、皮膚に対して外側に引っ張ることにより、重り及びアプリケーターを取り外した。次いで、皮膚に残っているマイクロニードルの共焦点画像分析を実施した。共焦点画像分析は、皮膚内の約100μmの深さへの貫通を示したが、これはいくつかの表面的な用途に適している可能性がある。
【0101】
皮膚透過試験も、Franz-Cell Assayを使用して実施した。皮膚貫通試験は、例1~6に記載のものと同様の方法で調製された免疫グロブリンG(IgG)装填ヒアルロンマイクロニードルパッチを使用して実施された。パッチには、2.8(±0.24)μgのIgG/パッチが含まれていた。
【0102】
Franzセル(Logan Instruments)を、室温で磁気撹拌しながら、PBS中の5mLの5%ウシ血清アルブミン(BSA)ビヒクルで一晩前処理した。翌日、5mLのビヒクルを、1xプロテイナーゼ阻害剤を含有し、32℃に予熱したPBS中の5mLの1%BSAで置き換えた。ヒトの死体の皮膚を室温の水で1時間解凍し、1つのマイクロニードルパッチに合うように細かく切り、次いでピンでプラスチックのフォームに固定した。皮膚は引き伸ばされて、張った平らな表面を作り、皮膚上の水分を取り除くために拭き取られた。アプリケーターを使用してパッチを皮膚に1分間適用し、次いで300gの重りをパッチの上に置き、4分間放置した(5分間の研究)。同様に、第2の皮膚サンプルを30分間放置した。角質層が上向きになるように、皮膚サンプルをFranzセルに適用した。次いで、1%BSAビヒクルをサンプル全体に拡散させ、Franzセルの受容アームから0.4mLのアリコートを選択した間隔で採取した。アリコートを採取するたびに、1xプロテイナーゼ阻害剤を含む0.4mLの新鮮な1%BSAビヒクルをセルに添加した。
【0103】
次いで収集したアリコートを収集し、酵素結合免疫吸着検定法(ELISA)を使用して研究した。皮膚サンプルから残留IgGを回収するために、各皮膚サンプルを計量し、小片に切断した。この小片を、1xプロテイナーゼ阻害剤を含む1%BSA(PBS中)1mLあたり50mgの皮膚の懸濁液中で4℃で少なくとも4時間インキュベートした。その後、組織をホモジナイズし、ロッカーにて5℃で一晩回転させた後、4700×g、5℃で15分間遠心分離を行い、上清を収集した。次いで、上清をELISAを使用して分析した。皮膚サンプルを介したIgG浸透の時間依存の結果を図10に示す。この約14~17ngのIgGが、70時間後、ヒトの死体の皮膚に浸透した。
【0104】
例11:0.46mg/ml(効力4.70E+7(u/mg))の濃度を有するBoNT/A(900kDa)、160kDaのヒアルロン酸、及びpH6.0の20mMヒスチジンの緩衝液を用いて毒素(900kDa)装填HAマイクロニードルパッチを調製した。36μLの毒素溶液を100mLの20mMのヒスチジン緩衝液に添加した。希釈後の濃度は0.000166μg/μlであった。次いで、109mgのHA繊維(160kDa)を5mLのNorm-Ject HSWシリンジに添加することによって、HA毒素ゲル(12重量%)を調製した。803.14mgの毒素溶液を第2の5mLのNorm-Ject HSWシリンジに添加した。次いで、2つのシリンジをメス-メスシリンジコネクタを使用して接続し、HA繊維を含むシリンジに穏やかに毒素溶液を注入した。混合物を10サイクルで前後に混合し、この混合を5分ごとに繰り返して合計7回行った。バッキング層(ベース)を作成するために、第2のゲルを調製した。400mgの160kDaのHAを1000mgのpH6.0の20mMヒスチジン緩衝液と混合した。最終的なHA濃度は28.57重量%であった。
【0105】
次いで、毒素を装填したマイクロニードルアレイパッチを調製した。18.2mgのHA-毒素ゲル(12重量%のHA;毒素濃度0.1458ng/mg)をシリコーンマイクロニードルモールドに計量した。125mgのHAゲル(20mMのヒスチジン緩衝液中28.57重量%のHA)を別個に計量し、テフロン(登録商標)シートを使用して湿ったペーストにプレスした。次いで、HAペーストを、シリコーンマイクロニードルモールド上にあるHa毒素溶液上にキャスティングした。上記で記載の手順と同様に、第2の毒素(150kDa)を装填したHAマイクロニードルパッチを調製した。毒素(900kDa)を装填したHAマイクロニードル及び毒素(150kDa)を装填したマイクロニードルパッチを、質量回収率、セルベース効力アッセイ(CBPA)、及び軽鎖(LC)活性アッセイでさらに分析した。
【0106】
捕捉抗体としてF12-3-8モノクローナル抗体、検出抗体としてポリクローナル検出抗体を用いたELISAアッセイを使用して、質量回収率を決定した。合計5つのパッチを分析した結果、毒素の質量回収率は80(±11.9)%であることが分かった。
【0107】
本明細書に記載のマイクロニードルアレイにおける150/900kDaのBoNT/A複合体の効力を評価するためにCBPA研究も実施した。
【0108】
分化:神経芽細胞腫細胞は、神経毒取り込みに対する細胞の感受性を高めるために、トリシアロガングリオシド及びニューロンサプリメントの存在下で約72時間培養した。
【0109】
薬物処置:細胞を薬物と共に24時間インキュベートし、その間に神経毒が細胞表面受容体に結合し、内部移行し、軽鎖エンドペプチダーゼドメインがサイトゾルに移動し、ここでアミノ酸197~198でSNAP25206を切断した。
【0110】
切断されたSNAP25197の蓄積:細胞をさらに72時間インキュベートして、SNAP25197の蓄積を可能にした。
【0111】
電気化学発光法(ECL)-ELISAによるSNAP25197の定量化:細胞溶解物を収集し、SNAP25197をSNAP25 ECL-ELISAで定量化した。相対光単位での参照標準のECL-ELISA信号を処置濃度に対してプロットし、試験サンプルの効力を標準曲線の式から外挿した。
【0112】
上記の手順では、参照標準はBotox標準016(3u/mL-0.0938U/mL)である。実験対照は、パッチの作成に使用されたDS2 900kDa原薬ロット(2U/mL)であった。この研究の結果は、平均回収率が69.3(±5.96)%であることを示した。
【0113】
900kDaのBoNT/A毒素装填ヒアルロン酸パッチの評価も、軽鎖活性高速液体クロマトグラフィ(LCA-HPLC)アッセイを使用して行った。これらの研究は、下記で記載される軽鎖活性HPLCアッセイを使用して、溶解ヒアルロン酸パッチから900kDaのBoNT/A毒素の回収率を決定するために実施した。
【0114】
4つのパッチが評価された。各パッチを5mLのEppendorf Protein LoBindチューブに入れた。4mL体積のDigestion Buffer(0.5mMの酢酸亜鉛、0.05%のTween20、50mMのHEPES中の2mMのDTT、pH7.4)を各チューブに添加した。パッチを周囲室温で1.5時間溶解した。1.5時間の間、チューブをシェーカー(200rpm)に置いた。各パッチ溶解チューブからの3つの350μL体積を、試験のために0.6mLのAxygenチューブに移した。
【0115】
HAパッチの調製に使用した900kDaのBoNT/A毒素の同じ材料を使用して、0.05、0.1、0.5、及び1ng/mLの標準曲線濃度を調製した。標準曲線はDigestion Bufferで調製した。各標準曲線濃度の3つの350μL体積を、試験のために0.6mLのAxygenチューブに移した。
【0116】
サンプルの還元を促進するために、サンプルを37℃で30分間インキュベートした。50μL体積のSNAPtide基質を各サンプルチューブに添加した。サンプルチューブを室温で72時間インキュベートして、基質を切断させた。72時間後、25μL体積の5%トリフルオロ酢酸(TFA)を各サンプルチューブに添加して、基質の切断を停止した。次いで、各チューブの内容物を分析のためにHPLCバイアルに移した。蛍光標識切断産物を分離し、Waters2695XE Separations Module(Waters Symmetry300 C18,3.5μm,4.6×150mmカラム)及びWaters2475Multiλ蛍光検出器を使用したRP-HPLC方法で検出した。データは、Waters Empower Proソフトウェアを介して収集及び分析された。BoNT/A標準曲線濃度(x軸)対BoNT/A切断生成物のピーク面積(y軸)をプロットすることにより、標準曲線を作成した。パッチ濃度は曲線から外挿した。各パッチに含まれるBoNT/Aの濃度は、BoNT/Aパッチ濃度に4(希釈倍率)を掛けて決定した。
【0117】
得られた試験データを表1に示す。平均毒素回収率は2.48±0.77ng/パッチであった。毒素パッチの平均効力は、パッチあたり116.6単位に相当する。
【表1】
【0118】
さらなる考慮事項
いくつかの実施形態では、本明細書の条項のいずれかは、独立条項のいずれか1つ、又は従属条項のいずれか1つに従属してもよい。一態様では、任意の条項(例えば、従属又は独立条項)を他の任意の1つ以上の条項(例えば、従属又は独立条項)と組み合わせてもよい。一態様では、請求項は、節、文、句、又は段落で列挙された単語の一部又はすべて(例えば、工程、操作、手段、又は構成要素)を含んでいてもよい。一態様では、請求項は、1つ以上の節、文、句又は段落で列挙された単語の一部又はすべてを含んでいてもよい。一態様では、各節、文、句、又は段落の一部の単語が削除されてもよい。一態様では、追加の単語又は要素を節、文、句、又は段落に追加してもよい。一態様では、主題技術は、本明細書で説明される構成要素、要素、機能、又は動作の一部を利用することなく実装され得る。一態様では、主題技術は、追加の構成要素、要素、機能、又は操作を利用して実装されてもよい。
【0119】
主題技術は、例えば、以下で説明される様々な態様に従って示されている。主題技術の態様の様々な例は、便宜上、番号付きの条項(1、2、3など)として説明されている。これらは例として提供されており、主題技術を限定するものではない。任意の従属条項は、任意の組み合わせで組み合わせて、それぞれの独立条項、例えば、条項1又は条項20に入れてもよいことに留意する。他の条項も同様の方法で提示できる。
【0120】
条項1.ベース層と、ベース層から突出する複数のマイクロニードルであって、マイクロニードルのそれぞれは近位部分及び遠位部分を有する細長い本体を含み、近位部分はベース層に取り付けられ、マイクロニードルのそれぞれは少なくとも1つの溶解性ポリマーを含む、マイクロニードルと、細長い本体に組み込まれた活性成分であって、活性成分は、遠位部分にのみ及び少なくとも遠位部分の内部に存在する活性成分とを含む、マイクロニードルアレイ。
【0121】
条項2.活性成分が神経毒を含む、条項1のマイクロニードルアレイ。
【0122】
条項3.神経毒がボツリヌス毒素を含む、条項2のマイクロニードルアレイ。
【0123】
条項4.ボツリヌス毒素がA、B、C、D又はE型である、条項3のマイクロニードルアレイ。
【0124】
条項5.ボツリヌス毒素が、ボツリヌス毒素血清型A(BoNT/A)、ボツリヌス毒素血清型B(BoNT/B)、ボツリヌス毒素血清型C1(BoNT/C1)、ボツリヌス毒素血清型D(BoNT/D)、ボツリヌス毒素血清型E(BoNT/E)、ボツリヌス毒素血清型F(BoNT/F)、ボツリヌス毒素血清型G(BoNT/G)、ボツリヌス毒素血清型H(BoNT/H)、ボツリヌス毒素血清型X(BoNT/X)、モザイクボツリヌス毒素及び/又はその多様体からなる群から選択される、条項3のマイクロニードルアレイ。
【0125】
条項6.各マイクロニードルの少なくとも1つの溶解性ポリマーが第1の溶解性ポリマーを含み、遠位部分及び近位部分が両方とも第1の溶解性ポリマーを含む、先行する条項のいずれか1つのマイクロニードルアレイ。
【0126】
条項7.ベース層が第1の溶解性ポリマーを含む、条項6のマイクロニードルアレイ。
【0127】
条項8.遠位部分が第1の溶解性ポリマーを含み、近位部分が第2の溶解性ポリマーを含み、第1の溶解性ポリマーと第2の溶解性ポリマーが互いに異なる、条項1~5のいずれか1つのマイクロニードルアレイ。
【0128】
条項9.ベース層が第2の溶解性ポリマーを含む、条項8のマイクロニードルアレイ。
【0129】
条項10.近位部分及びベース層が活性成分を欠いている、先行する条項のいずれかのマイクロニードルアレイ。
【0130】
条項11.近位部分及びベース層が少なくとも1つの溶解性ポリマーからなる、条項10のマイクロニードルアレイ。
【0131】
条項12.各溶解性ポリマーが、約10℃~約50℃の範囲の温度で約6.8~約7.8の範囲のpHを有するリン酸緩衝生理食塩水(PBS)に溶解するポリマー材料から独立して選択される、先行する条項のいずれか1つのマイクロニードルアレイ。
【0132】
条項13.少なくとも1つの溶解性ポリマーが、ヒアルロン酸、架橋ヒアルロン酸、疎水性修飾ヒアルロン酸、又はそれらの任意の組み合わせを含む、先行する条項のいずれか1つのマイクロニードルアレイ。
【0133】
条項14.少なくとも1つの溶解性ポリマーが、グリコサミノグリカン、多糖類、コラーゲン、エラスチン、フィブロイン、デンプン、グルコマンナン、ヒアルロン酸、架橋ヒアルロン酸、疎水性修飾ヒアルロン酸又はそれらの任意の組み合わせの少なくとも1つを含む、先行する条項のいずれか1つのマイクロニードルアレイ。
【0134】
条項15.活性成分が、遠位部分の少なくとも1つの溶解性ポリマーのマトリックス中に分散している、先行する条項のいずれか1つのマイクロニードルアレイ。
【0135】
条項16.各マイクロニードルが約25ミクロン~約3000ミクロンの範囲の長さを有する、先行する条項のいずれか1つのマイクロニードルアレイ。
【0136】
条項17.各マイクロニードルが実質的に同じ長さを有する、先行する条項のいずれか1つのマイクロニードルアレイ。
【0137】
条項18.各マイクロニードルが円錐形又はピラミッド形の形状を有する、先行する条項のいずれか1つのマイクロニードルアレイ。
【0138】
条項19.各マイクロニードルが約1ミクロン~約30ミクロンの範囲の先端幅を有する、先行する条項のいずれか1つのマイクロニードルアレイ。
【0139】
条項20.マイクロニードルアレイ内のマイクロニードルの密度が、約5マイクロニードル/cm~約1000マイクロニードル/cmの範囲である、先行する条項のいずれか1つのマイクロニードルアレイ。
【0140】
条項21:活性成分が遠位部分に均一に配置されている、先行する条項のいずれか1つのマイクロニードルアレイ。
【0141】
条項22:活性成分が遠位部分に勾配で存在する、先行する条項のいずれか1つのマイクロニードルアレイ。
【0142】
条項23.マイクロニードルアレイを形成する方法であって、複数の細長いウェルを含むマイクロニードルアレイモールドを提供することであって、細長いウェルのそれぞれは下方部分と上方部分とを含むこと、細長いウェルのそれぞれの下方部分を、第1の溶解性ポリマー及び活性成分を含む第1の流体で充填することであって、細長いウェルのそれぞれは、部分的にのみ充填され、細長いウェルのそれぞれの上方部分は充填されないままにすること、細長いウェルのそれぞれの下方部分を充填した後、細長いウェルのそれぞれの未充填の上方部分を第2の流体で過剰充填することであって、第2の流体は第2の溶解性ポリマーを含み、活性成分を欠いていること、モールドを加熱するか、又はモールドにおける第1及び第2の流体を室温で乾燥させて、複数のマイクロニードルが突出したベース層を含むマイクロニードルアレイを形成することを含む方法。
【0143】
条項24.キャスティングプロセスを使用して、細長いウェルのそれぞれに第1の流体及び第2の流体の少なくとも一方を配置する、条項23の方法。
【0144】
条項25.細長いウェルのそれぞれの下方部分を充填することが、細長いウェルのそれぞれの下方部分に第1の流体をキャスティングすることを含む、条項24の方法。
【0145】
条項26.細長いウェルのそれぞれの上方部分を過剰充填することが、細長いウェルのそれぞれの上方部分に第2の流体をキャスティングすることを含む、条項25の方法。
【0146】
条項27.細長いウェルのそれぞれの上方部分を過剰充填することが、第1の流体及び第2の流体を細長いウェルのそれぞれにキャスティングすることを含む、条項24の方法。
【0147】
条項28.第2の流体の少なくとも一部は、モールドの過剰充填された部分又はベース部分に配置され、第2の流体は、マイクロニードルアレイのベース層を画定するモールドの過剰充填部分に配置される、条項23~27のいずれか1つの方法。
【0148】
条項29.方法が、マイクロニードルアレイをマイクロニードルアレイモールドから分離することをさらに含む、条項23~28のいずれか1つの方法。
【0149】
条項30.第1の流体が第2の流体よりも高い粘度を有する、条項23~29のいずれか1つの方法。
【0150】
条項31.第1のキャスティングプロセスを利用して、細長いウェルのそれぞれの未充填の上方部分に第2の流体を過剰充填する前に、マイクロニードルアレイモールドに第1の流体を堆積させる、条項23~30のいずれか1つの方法。
【0151】
条項32.第2のキャスティングプロセスを利用して、マイクロニードルアレイモールドにおける第1の流体上に第2の流体を堆積させる、条項31の方法。
【0152】
条項33.活性成分が神経毒を含む、条項23~32のいずれか1つの方法。
【0153】
条項34.神経毒がボツリヌス毒素を含む、条項33の方法。
【0154】
条項35.ボツリヌス毒素がA、B、C、D又はE型である、条項34の方法。
【0155】
条項36.第1の溶解性ポリマー及び第2の溶解性ポリマーが同じである、条項23~35のいずれか1つの方法。
【0156】
条項37.第1の溶解性ポリマー及び第2の溶解性ポリマーが、ヒアルロン酸、架橋ヒアルロン酸、疎水性修飾ヒアルロン酸、又はそれらの任意の組み合わせのうちの少なくとも1つを含む、条項23~36のいずれか1つの方法。
【0157】
条項38.第1の溶解性ポリマー及び第2の溶解性ポリマーが、グリコサミノグリカン、多糖類、コラーゲン、エラスチン、フィブロイン、デンプン、グルコマンナン、ヒアルロン酸、架橋ヒアルロン酸、疎水性修飾ヒアルロン酸又はそれらの任意の組み合わせの少なくとも1つを含む、条項23~37のいずれか1つの方法。
【0158】
条項39.被験体を処置する方法であって、ベース層と、ベース層から突出する複数のマイクロニードルであって、マイクロニードルのそれぞれは近位部分及び遠位部分を有する細長い本体を含み、近位部分はベース層に取り付けられ、マイクロニードルのそれぞれは少なくとも1つの溶解性ポリマーを含む、マイクロニードルと、細長い本体に組み込まれた活性成分であって、この活性成分は、遠位部分にのみ及び少なくとも遠位部分の内部に存在する、活性成分とを含むマイクロニードルアレイを提供すること、皮膚表面に複数のマイクロニードルを埋め込むために被験体の皮膚表面にマイクロニードルアレイを適用することを含む、方法。
【0159】
条項40.複数のマイクロニードルが皮膚表面に埋め込まれている間に少なくとも1つの溶解性ポリマーが溶解して、被験体に活性成分を放出する、条項39の方法。
【0160】
条項41.少なくとも1つの溶解性ポリマーが溶解した後、被験体の皮膚表面からベース層を取り除くことをさらに含む、条項39又は40の方法。
【0161】
条項42.活性成分が神経毒を含む、条項39~41のいずれか1つの方法。
【0162】
条項43.神経毒がボツリヌス毒素を含む、条項42の方法。
【0163】
条項44.マイクロニードルのそれぞれの少なくとも1つの溶解性ポリマーが第1の溶解性ポリマーを含み、遠位部分及び近位部分が両方とも第1の溶解性ポリマーを含む、条項39~43のいずれか1つの方法。
【0164】
条項45.ベース層が第1の溶解性ポリマーを含む、条項44の方法。
【0165】
条項46.少なくとも1つの溶解性ポリマーが、ヒアルロン酸、架橋ヒアルロン酸、疎水性修飾ヒアルロン酸、又はそれらの任意の組み合わせを含む、条項39~45のいずれか1つの方法。
【0166】
条項47.少なくとも1つの溶解性ポリマーが、グリコサミノグリカン、多糖類、コラーゲン、エラスチン、フィブロイン、デンプン、グルコマンナン、ヒアルロン酸、架橋ヒアルロン酸、疎水性修飾ヒアルロン酸又はそれらの任意の組み合わせの少なくとも1つを含む、条項39~45のいずれか1つの方法。
【0167】
条項48.マイクロニードルアレイを使用して、前額のしわ、目じりの小じわ、眉間のしわ、小じわ、多汗症、瘢痕、乾癬、炎症性皮膚病を処置する、条項39~47のいずれか1つの方法。
【0168】
前述の説明は、当業者が本明細書で説明される様々な構成を実施できるようにするために提供される。主題技術は、様々な図及び構成を参照して特に説明されているが、これらは例示のみを目的とするものであり、主題技術の範囲を限定するものとして解釈されるべきではないことが理解されるべきである。
【0169】
主題技術を実行するための他の多くの方法が存在し得る。本明細書で説明される様々な機能及び要素は、主題技術の範囲から逸脱することなく、示されるものとは異なるように区分され得る。これらの構成に対する様々な変更は、当業者には容易に明らかであり、本明細書で定義される一般的な原理は、他の構成に適用されてもよい。したがって、主題技術の範囲から逸脱することなく、当業者によって主題技術に多くの変形及び変更を加えてもよい。
【0170】
開示されたプロセスにおける工程の特定の順序又は階層は、例示的なアプローチの例示であることが理解される。設計の優先傾向に基づいて、プロセスにおける工程の特定の順序又は階層が再配置され得ることが理解される。一部の工程は同時に実行されてもよい。添付の方法の請求項は、サンプル順序で様々な工程の要素を提示し、提示された特定の順序又は階層に限定されることを意図していない。
【0171】
本明細書で使用される場合、任意の各項目を分けるために「及び(and)」又は「又は(or)」という用語と共に一連の項目の前にある「少なくとも1つ」という語句は、リストの各メンバーではなく、リスト全体を修飾する(すなわち、各項目)。「少なくとも1つ」という語句は、列挙されている各項目の少なくとも1つを選択する必要はない;むしろ、この語句は、項目の任意の1つの少なくとも1つ、及び/又は項目の任意の組み合わせの少なくとも1つ、及び/又は項目のそれぞれの少なくとも1つを含む意味を可能にする。例として、「A、B、及びCの少なくとも1つ」又は「A、B、又はCの少なくとも1つ」という語句は、それぞれAのみ、Bのみ、又はCのみ;A、B、及びCの任意の組み合わせ;及び/又はA、B、Cのそれぞれの少なくとも1つを指す。
【0172】
本開示で使用される「上部」、「底部」、「前部」、「後部」などの用語は、通常の重力の基準枠ではなく、任意の基準枠を指すと理解されるべきである。したがって、上面、底面、前面、及び後面は、重力の基準枠内で上向き、下向き、斜め方向、又は水平方向に延びていてもよい。
【0173】
さらに、「含む(include)」、「有する(have)」などの用語が説明又は特許請求の範囲で使用される限り、そのような用語は、「含む(comprise)」が特許請求の範囲における移行語として使用される場合に理解されるように、「含む(comprise)」という用語も同様の方法で包括的であることを意図している。
【0174】
「例示的」という用語は、本明細書では「例、事例、又は実例として役立つ」ことを意味するために使用される。本明細書で「例示的」として説明される実施形態は、必ずしもいくつかの実施形態よりも好ましい又は有利であると解釈されるべきではない。
【0175】
単数形の要素への言及は、具体的に明記しない限り「1つだけ」を意味するものではなく、「1つ以上」を意味する。男性の代名詞(例えば彼の)には、女性及び中性の性別(例えば彼女及びその)が含まれ、逆もまた同様である。「一部」という用語は、1つ以上を指す。下線及び/又はイタリック体の見出し及び小見出しは、便宜上のみ使用され、主題技術を制限せず、主題技術の説明の解釈に関連して言及されない。当業者に知られている、又は後に当業者に知られるようになる本開示を通して説明される様々な構成の要素に対するすべての構造的及び機能的同等物は、参照により本明細書に明示的に組み込まれ、主題技術に包含されることが意図される。さらに、本明細書で開示されるものは、そのような開示が上記の説明で明示的に列挙されているかどうかにかかわらず、公衆に提供されていることを意図していない。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9A
図9B
図9C
図10
【手続補正書】
【提出日】2022-01-20
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ベース層、及び
ベース層から突出する複数のマイクロニードルを含むマイクロニードルアレイであって、
各マイクロニードルは、
近位部分と、
第1の溶解性ポリマーと第1の溶解性ポリマーのマトリックス内に組み込まれた活性成分とを含む遠位部分
を有する細長い本体を含み、
該第1の溶解性ポリマーが架橋ヒアルロン酸(HA)を含む、
上記マイクロニードルアレイ。
【請求項2】
活性成分が神経毒を含む、請求項1に記載のマイクロニードルアレイ。
【請求項3】
神経毒がボツリヌス毒素を含む、請求項2に記載のマイクロニードルアレイ。
【請求項4】
第1の溶解性ポリマーが、約10℃~約50℃の範囲の温度で約6.8~約7.8の範囲のpHを有するリン酸緩衝生理食塩水(PBS)溶液に溶解するポリマー材料から選択される、請求項1~3のいずれか一項に記載のマイクロニードルアレイ。
【請求項5】
各マイクロニードルが円錐形又はピラミッド形の幾何学形状を有する、請求項1~のいずれか一項に記載のマイクロニードルアレイ。
【請求項6】
活性成分が、遠位部分に均一に配置される、請求項1~のいずれか一項に記載のマイクロニードルアレイ。
【請求項7】
活性成分が、遠位部分に勾配で存在する、請求項1~のいずれか一項に記載のマイクロニードルアレイ。
【請求項8】
近位層及びベース層は組成的に均質である、請求項1~7のいずれか一項に記載のマイクロニードルアレイ。
【請求項9】
第1の溶解性ポリマーを含むベース層と、
ベース層から突出する複数のマイクロニードルであって、
各マイクロニードルが、第1の溶解性ポリマーを含む近位部分と、第1の溶解性ポリマー及びその中に組み込まれた活性成分を含む遠位部分とを有する細長い本体を含む、上記マイクロニードルと
を含むマイクロニードルアレイであって、
遠位部分における活性成分の濃度が複数のマイクロニードルの長さに応じて変化する、、
上記マイクロニードルアレイ。
【請求項10】
各マイクロニードルが約25ミクロン~約3000ミクロンの範囲の長さを有する、請求項9に記載のマイクロニードルアレイ。
【請求項11】
遠位部分が、近位部分に隣接した第1の遠位部分と第1の遠位部分のそばの近位部分から縦方向に分かれた第2の遠位部分とを含み、かつ
第1の遠位部分が均質に組み込まれた活性成分の第1の量を含み、第2の遠位部分が均質に組み込まれた活性成分の第2の量を含み、該第2の量が該第1の量と異なる、請求項9又は10に記載のマイクロニードルアレイ。
【請求項12】
近位部分は、細長い本体の長さの1%~99%の範囲の長さを有する、請求項9~11のいずれか一項に記載のマイクロニードルアレイ。
【請求項13】
近位層及びベース層は組成的に均質である、請求項9~12のいずれか一項に記載のマイクロニードルアレイ。
【請求項14】
細長い本体が近位部分から遠位部分にかけて縦方向に先細となり、遠位部分が1μm~30μmの範囲の幅を有する先端で終わる、請求項9~13のいずれか一項に記載のマイクロニードルアレイ。
【請求項15】
ベース層、及び
ベース層から突出する複数のマイクロニードル
を含むマイクロニードルアレイであって、
マイクロニードルは、
近位部分と、
第1の溶解性ポリマーと第1の溶解性ポリマーのマトリックス内に組み込まれた活性成分とを含む遠位部分と
を有する細長い本体を含み、
マイクロニードルアレイは、第1長さを有するマイクロニードルの第1の領域と、第1長さとは異なる第2長さを有するマイクロニードルの第2領域とを有する、
上記マイクロニードルアレイ。
【外国語明細書】