(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022050481
(43)【公開日】2022-03-30
(54)【発明の名称】アンモニア媒介二酸化炭素(CO2)隔離方法及びシステム
(51)【国際特許分類】
B01D 53/14 20060101AFI20220323BHJP
B01D 53/62 20060101ALI20220323BHJP
B01D 53/72 20060101ALI20220323BHJP
B01D 53/73 20060101ALI20220323BHJP
C01B 32/50 20170101ALI20220323BHJP
【FI】
B01D53/14 210
B01D53/14 220
B01D53/62 ZAB
B01D53/72 200
B01D53/73
C01B32/50
【審査請求】有
【請求項の数】13
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021210961
(22)【出願日】2021-12-24
(62)【分割の表示】P 2018550446の分割
【原出願日】2017-03-24
(31)【優先権主張番号】62/313,613
(32)【優先日】2016-03-25
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】62/451,506
(32)【優先日】2017-01-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(71)【出願人】
【識別番号】515061156
【氏名又は名称】ブルー プラネット システムズ コーポレーション
(74)【代理人】
【識別番号】100114557
【弁理士】
【氏名又は名称】河野 英仁
(74)【代理人】
【識別番号】100078868
【弁理士】
【氏名又は名称】河野 登夫
(72)【発明者】
【氏名】コンスタンツ,ブレント アール.
(72)【発明者】
【氏名】シュナイダー,ヤコブ
(72)【発明者】
【氏名】ベーヴァーニッツ,マーク
(57)【要約】 (修正有)
【課題】大規模で、実現可能で、費用対効果が高い二酸化炭素回収隔離の方法およびシステムを提供する。
【解決手段】二酸化炭素(CO
2)の隔離方法が提供される。本方法の態様は、炭酸アンモニウム水溶液を生成させるために十分な条件下で、回収用アンモニア水溶液をガス状CO
2源と接触させることを含む102。次いで、CO
2隔離用固体炭酸塩とアンモニウム塩水溶液とを生成させるために十分な条件下で、炭酸アンモニウム水溶液がカチオン源と混合される104。次いで、アンモニウム塩水溶液から回収用アンモニア水溶液が再生される106。また、本方法を実施するように構成されたシステムも提供される。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ガス状CO2源由来のCO2の隔離方法であって、
a)炭酸アンモニウム水溶液を生成させるために十分な条件下で、回収用アンモニア水溶液をガス状CO2源と接触させることと、
b)CO2隔離用炭酸塩とアンモニウム塩水溶液とを生成させるために十分な条件下で、カチオン源と前記炭酸アンモニウム水溶液とを混合することと、
c)前記アンモニウム塩水溶液から前記回収用アンモニア水溶液を再生させることと
を含み、
前記再生させることは、無機アルカリ成分源の存在下で前記アンモニウム塩水溶液を加熱することによる蒸留を含んでおり、
前記ガス状CO2源由来のCO2を隔離する、方法。
【請求項2】
前記ガス状CO2源は多成分ガス流である、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記ガス状CO2源は煙道ガスである、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
膜接触器を用いて前記ガス状CO2源を前記回収用アンモニア水溶液と接触させる、請求項1~3のいずれかに記載の方法。
【請求項5】
前記蒸留が大気圧より低い圧力で実施される、請求項1~4のいずれかに記載の方法。
【請求項6】
前記蒸留は、煙道ガス、工程(a)によって発生する吸収熱、及び冷却液、ならびにそれらの組み合わせからなる群より選択される供給源から供給される排熱を用いる、請求項1~5のいずれかに記載の方法。
【請求項7】
炭酸アンモニウム水溶液を生成させるために十分な条件下で、再生された回収用アンモニア水溶液をガス状CO2源と接触させることを更に含む、請求項1~6のいずれかに記載の方法。
【請求項8】
前記カチオン源はアルカリ土類金属の2価カチオンを含む、請求項1~7のいずれかに記載の方法。
【請求項9】
前記アルカリ土類金属の2価カチオンは、Ca2+及びMg2+、ならびにそれらの組み合わせからなる群より選択される、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記混合する工程(b)は、流動している炭酸アンモニウム水溶液中に、CO2隔離用の非スラリーで固体の炭酸塩を前記流動している炭酸アンモニウム水溶液中に生成させるために十分な条件下で、前記カチオン源を導入することを含む、請求項1~9のいずれかに記載の方法。
【請求項11】
前記CO2隔離用の固体の炭酸塩は粒子状組成物である、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
CO2ガス/回収用アンモニア水溶液モジュールと、
前記CO2ガス/回収用アンモニア水溶液モジュールに作動可能に結合された固体炭酸塩生成モジュールと、
回収用アンモニア水溶液を生成するように構成され、前記固体炭酸塩生成モジュール及び前記CO2ガス/回収用アンモニア水溶液モジュールに作動可能に結合された回収用アンモニア水溶液再生モジュールと
を備えており、
前記回収用アンモニア水溶液の生成は、無機アルカリ成分源の存在下でアンモニウム塩水溶液を加熱することを含む蒸留を含んでいる、
ガス状CO2源由来のCO2の隔離システム。
【請求項13】
再生回収用アンモニア水溶液を前記CO2ガス/回収用アンモニア水溶液モジュールへとリサイクルさせるように構成される、請求項12に記載の隔離システム。
【発明の詳細な説明】
【背景技術】
【0001】
二酸化炭素(CO2)は地球の大気中にガスとして存在する天然起源の化合物である。大気中のCO2の発生源は多様であり、呼吸の過程でCO2を生成するヒト及び他の生物、ならびに火山、温泉、及び間欠泉などの他の天然起源の発生源が挙げられる。
【0002】
大気中のCO2の更なる主要な発生源としては工業プラントが挙げられる。(セメントプラント、製油所、製鉄所、及び発電所を含む)多くの種類の工業プラントは、化石燃料及び合成ガスなどの種々の炭素系燃料を燃焼させる。使用する化石燃料としては、石炭、天然ガス、石油、石油コークス、及びバイオ燃料が挙げられる。燃料には、タールサンド、油母頁岩、石炭液化物、ならびに石炭ガス化及び合成ガスを経由して製造されるバイオ燃料由来のものもある。
【0003】
CO2の環境への影響は重要な関心事である。CO2は一般に温室効果ガスと見なされている。産業革命以来の人間の活動によって急速に大気中のCO2の濃度が増加してきたために、人為起源のCO2は、地球温暖化及び気候変動のみならず、海洋の重炭酸塩濃度の増加にも関与している。化石燃料CO2の海洋への取り込みは現在、毎時約100万トンのCO2で進行中である。
【0004】
人為起源の気候変動及び海洋酸性化に対する懸念により、大規模で実現可能で、費用対効果が高い炭素回収隔離(CCS)の方法を見出すことを急がれている。一般的には、CCSの方法は、多数の成分を含む煙道流から純CO2を分離し、この精製したCO2を圧縮し、最終的にこれを地下の含塩水層(saline reservoir)に注入して地質学的隔離を行う。これらの多数のステップは非常にエネルギー及び資本集約的である。
【発明の概要】
【0005】
二酸化炭素(CO2)の隔離方法が提供される。本方法の態様は、炭酸アンモニウム水溶液を生成させるために十分な条件下で、回収用アンモニア水溶液をガス状CO2源と接触させることを含む。次いで、CO2隔離用固体炭酸塩とアンモニウム塩水溶液とを生成させるために十分な条件下で、上記炭酸アンモニウム水溶液がカチオン源と混合される。次いで、上記アンモニウム塩水溶液から上記回収用アンモニア水溶液が再生される。また、本方法を実施するように構成されたシステムも提供される。
【図面の簡単な説明】
【0006】
【
図1】本発明の一実施形態に係るシステムの概略図である。
【
図2】アンモニア再生が大気圧より低い圧力で実施され、全ての熱が排熱源によって供給される、本発明の一実施形態に係るシステムの概略図である。
【
図3】後述の実施例に記載されるように、0.5MのNH
3溶液を用い、CO
2が5~50%(残余分として空気を補った)の範囲のCO
2ガス濃度、及び1基の中空繊維膜接触器(表面積1.4m
2)の単回通過で、ガス容量(分当たりの標準リットル、SLPM)に依存する、二酸化炭素吸収率(%)のグラフである。
【
図4】後述の実施例に記載されるアンモニア改質の検討結果のグラフである。
【
図5】後述の実施例に記載されるアンモニア改質の検討結果のグラフである。
【
図6】後述の実施例に記載されるアンモニア改質の検討結果のグラフである。
【
図7】後述の実施例に記載されるアンモニア改質の検討結果のグラフである。
【
図8】後述の実施例に記載されるアンモニア改質の検討結果のグラフである。
【
図9】後述の実施例に記載されるアンモニア改質の検討結果のグラフである。
【
図10】2MW石炭火力発電所での使用に好適な、本発明の一実施形態に係るシステムの図である。
【
図11A】2MW石炭火力発電所での使用に好適な、本発明の種々の実施形態に係るシステムの図である。
【
図11B】2MW石炭火力発電所での使用に好適な、本発明の種々の実施形態に係るシステムの図である。
【
図11C】2MW石炭火力発電所での使用に好適な、本発明の種々の実施形態に係るシステムの図である。
【
図12】10MW石炭火力発電所での使用に好適な、本発明の一実施形態に係るシステムの図である。
【
図13】アンモニア再生器が排熱を用いて減圧/低温度で運転される、10MW石炭火力発電所での使用に好適な、本発明の一実施形態に係るシステムの図である。
【発明を実施するための形態】
【0007】
二酸化炭素(CO2)の隔離方法が提供される。本方法の態様は、炭酸アンモニウム水溶液を生成させるために十分な条件下で、回収用アンモニア水溶液をガス状CO2源と接触させることを含む。次いで、CO2隔離用固体炭酸塩とアンモニウム塩水溶液とを生成させるために十分な条件下で、上記炭酸アンモニウム水溶液がカチオン源と混合される。次いで、上記アンモニウム塩水溶液から上記回収用アンモニア水溶液が再生される。また、本方法を実施するように構成されたシステムも提供される。
【0008】
本発明をより詳細に説明する前に、本発明は、説明する特定の実施形態に限定されず、したがって、当然のことながら、変化する場合があることを理解されたい。本発明の範囲は添付の特許請求の範囲によってのみ限定されることとなることから、本明細書で用いる用語は特定の実施形態を説明することのみを目的とし、限定することを意図するものではないことも理解されたい。
【0009】
ある範囲の値が提示される場合、文脈により明確に別段の指示がなされない限り、当該範囲の上限と下限との間の、下限の単位の10分の1までの、間にある各値、及び当該記載された範囲中の任意の他の記載された値または間にある値は、本発明内に包含されるものと理解されたい。これらのより小さい範囲の上限及び下限は、独立に当該のより小さい範囲に含まれていてもよく、上記記載された範囲中の任意の限界が具体的に排除されることを条件として、本発明内にも含まれる。上記記載された範囲が上記限界の一方または両方を含む場合、これらの含まれる限界のいずれか一方または両方を含まない範囲も、本発明に含まれる。
【0010】
特定の範囲が、数値の前に用語「約」が付されて本明細書で提示される。本明細書では、用語「約」は、「約」の後に来る正確な数、ならびに該用語の後に来る数に近いかまたはそれにほぼ等しい数に対する文字上の裏付けを与えるために用いられる。ある数が具体的に記載された数に近いかまたはそれにほぼ等しいかを判定するに当たり、当該近いまたはほぼ等しい記載されていない数は、当該の数が示されている文脈において、上記具体的に記載された数と実質的に等価な数であってよい。
【0011】
別段の定義がなされない限り、本明細書で用いられる全ての技術用語及び科学用語は、本発明が属する技術分野の当業者によって一般的に理解されるものと同様の意味を有する。本明細書に記載された方法及び物質と類似するまたは均等な任意の方法及び物質も、本開示の実施形態の実施または試験において使用することができるが、代表的な例示のための方法及び物質を以下に記載する。
【0012】
本明細書に引用される全ての刊行物及び特許は、それぞれ個々の刊行物または特許が、具体的且つ個別に参照により援用されると示されているのと同様に、参照により本明細書に援用され、方法及び/または物質であって、それらと関連して当該刊行物が引用される上記方法及び/または物質を開示し且つ説明するために、参照により本明細書に援用される。いずれの刊行物の引用も、当該刊行物の開示が本出願の出願日よりも前であることを示すためのものであり、先行発明との理由で、本発明がかかる刊行物に先行する資格をもたないことを自認するものと解釈されるべきでものでない。更に、提示された刊行日は実際の刊行日と異なる場合があり、この実際の刊行日は自ら確認する必要がある場合がある。
【0013】
本明細書及び添付の特許請求の範囲では、単数形「a」、「an」、及び「the」は、文脈により明確に別段の指示がなされない限り、複数の指示対象を包含することに留意されたい。特許請求の範囲はいずれの任意選択の要素も除外するように作成されてもよいことに更に留意されたい。したがって、この記述は、特許請求の範囲の要素の列挙に関連した「単独で」、「~のみ」などのような排他的な用語の使用、または「否定的な」限定の使用に対する先行する根拠(antecedent basis)としての役割を果たすことを意図している。
【0014】
本開示を読めば当業者には明らかであろうが、本明細書に記載され図示される個々の実施形態のそれぞれは、本発明の範囲または趣旨から逸脱することなく、容易に他のいくつかの実施形態のいずれかの特徴から分離することができる、または上記特徴と組み合わせることができる別個の要素及び特徴を有する。いずれの記載された方法も、記載された事象の順序で、または論理的に可能な任意の他の順序で実施することができる。
【0015】
方法
上記に要約したように、本発明の態様はガス状CO2源由来のCO2の隔離方法を含む。したがって、本発明の態様は、CO2隔離プロセス、すなわちCO2を隔離するプロセス(方法、プロトコル等)を含む。「CO2の隔離」とは、地球の大気または工業プラントで発生する排ガス流などの、環境由来のある量のCO2の除去または隔離であって、当該CO2が除去された当該環境中にはCO2の一部または全てがもはや存在しないような上記CO2の除去または隔離を意味する。本発明のCO2の隔離方法は、ある量のCO2から、当該CO2が隔離されるような、実質的に純粋な地下注入可能なCO2生成物ガス及び貯留安定性がある固体のCO2隔離用製品を製造することによって、CO2を隔離する。上記貯留安定性がある固体のCO2隔離用製品は、ある量のCO2を、地上での貯留安定性がある形態または水中での貯留安定性がある形態などの貯留安定性がある形態中に組み入れ、当該CO2がもはや大気中のガスとして存在しないまたは大気中のガスであることができないような貯留安定性がある組成物である。本発明の方法に係るCO2の隔離によって、CO2ガスが大気中に入り込むことが防止され、且つCO2が大気の一部になることがないような形態で長期にわたるCO2の貯留が可能になる。
【0016】
上記に要約したように、本方法の態様は、a)炭酸アンモニウム水溶液を生成させるために十分な条件下で、回収用アンモニア水溶液をガス状CO2源と接触させることと、b)CO2隔離用固体炭酸塩とアンモニウム塩水溶液とを生成させるために十分な条件下で、カチオン源と前記炭酸アンモニウム水溶液とを混合することと、c)例えば、更なるアンモニア媒介CO2隔離に引き続き使用するために、前記アンモニウム塩水溶液から前記回収用アンモニア水溶液を再生させることとを含む。本方法のこれらの態様のそれぞれについて、以下により詳細に更に説明する。
【0017】
CO2の回収
本方法の実施形態は、炭酸アンモニウム水溶液を生成させるために十分な条件下で、回収用アンモニア水溶液をガス状CO2源(すなわち、CO2含有ガス)と接触させることを含む。CO2含有ガスは純CO2であってもよく、または供給源に応じて、1種または複数種の他のガス及び/または粒子成分との混合物であってもよく、例えば、多成分ガス(すなわち、多成分ガス流)であってもよい。特定の実施形態において、CO2含有ガスは工業プラントから、例えば当該CO2含有ガスが工業プラント由来の排ガス供給流である場合に得られる。工業プラントであって、そこから、CO2含有ガスを、例えば当該工業プラント由来の排ガス供給流として得ることができる工業プラントは様々なプラントであってよい。対象となる工業プラントとしては、発電所及び、化学及び機械加工プラント、製油所、セメントプラント、製鉄所等、ならびに、燃料燃焼または他の加工工程(セメントプラントによる焼成など)の副産物としてCO2を発生する他の工業プラントなどの、但しこれらに限定されない工業製品製造プラントが挙げられるが、これらに限定はされない。対象となる供給流としては、工業プラントで発生する、例えば、当該工業プラントによって実施されるプロセスの副次的または偶発的な生成物としてのガス流が挙げられる。
【0018】
特定の実施形態において、化石燃料、例えば、石炭、石油、天然ガス、ならびに、タールサンド、重質油、油母頁岩などの天然起源の有機燃料堆積物の人造燃料製品を燃焼させる工業プラントによって産出される排ガス流が対象となる。特定の実施形態において、発電所は、微粉炭発電所、超臨界石炭発電所、マス-石炭混焼発電所(mass burn coal power plants)、流動床石炭発電所、ガスまたは石油燃焼ボイラ及び蒸気タービン発電所、ガスまたは石油燃焼ボイラ単純サイクルガスタービン発電所、及びガスまたは石油燃焼ボイラ複合サイクルガスタービン発電所である。特定の実施形態において、合成ガス、すなわち、石炭、バイオマスなどの有機物のガス化によって製造されるガスを燃焼させる発電所によって産出される排ガス流が対象となり、例えば、特定の実施形態において、かかる発電所はガス化複合発電(IGCC)所である。特定の実施形態において、排熱回収ボイラ(HRSG)プラントによって産出される排ガス流が対象である。対象となる排ガス流としてはまた、セメントプラントで発生する排ガス流も挙げられる。セメントプラントであって、その排ガス流が本発明の方法に使用することができるセメントプラントとしては、湿式プロセス及び乾式プロセスのプラントの両方が含まれ、これらのプラントはシャフトキルンまたはロータリーキルンを用いていてもよく、予備焼成装置を備えていてもよい。これらの形式の工業プラントのそれぞれは、単一種の燃料を燃焼させもよく、または2種以上の燃料を逐次的にまたは同時に燃焼させてもよい。対象となる排ガス流は工業プラントの排ガス、例えば煙道ガスである。「煙道ガス」とは、化石燃料またはバイオマス燃料を燃焼させることによる燃焼生成物から得られ、次いで煙突(工業プラントの煙道としても知られる)へと導かれるガスを意味する。
【0019】
セメントプラントで発生した排ガス流も、本発明のシステム及び方法に好適である。セメントプラントの排ガス流には、湿式プロセスのプラント及び乾式プロセスのプラントの両方由来の排ガス流が含まれ、これらのプラントはシャフトキルンまたはロータリーキルンを用いていてもよく、予備焼成装置を備えていてもよい。これらの工業プラントはそれぞれ、単一種の燃料を燃焼させてもよく、または2種以上の燃料を逐次的にまたは同時に燃焼させてもよい。製錬所及び製油所などの他の工業プラントも、二酸化炭素を含む排ガス流の有用な供給源である。
【0020】
産業排ガス流は、主要な空気以外に由来する成分として二酸化炭素を含む場合があり、または、特に石炭火力発電所の場合、更なる成分(総称して非CO2汚染物質と呼ぶ場合がある)、例えば、窒素酸化物(NOx)、イオウ酸化物(SOx)、及び1種もしくは複数種の更なるガスを含む場合がある。更なるガス及び他の成分としては、CO、水銀及び他の重金属、ならびに塵埃粒子(例えば、焼成及び燃焼プロセス由来)を挙げることができる。上記ガス流中の更なる非CO2汚染物質成分としてはまた、塩化水素及びフッ化水素などのハロゲン化物、フライアッシュ、塵埃、及びヒ素、ベリリウム、ホウ素、カドミウム、クロム、クロムVI、コバルト、鉛、マンガン、水銀、モリブデン、セレン、ストロンチウム、タリウム、及びバナジウムを含む金属などの粒子状物質、ならびに炭化水素、ダイオキシン、PAH化合物などの有機物も挙げることができる。いくつかの実施形態において、処理することができる好適な排ガス流は、200ppm~1,000、000ppm、または200ppm~500,000ppm、または200ppm~100,000ppm、または200ppm~10,000ppm、または200ppm~5,000ppm、または200ppm~2000ppm、または200ppm~1000ppm、または200~500ppm、または500ppm~1,000,000ppm、または500ppm~500,000ppm、または500ppm~100,000ppm、または500ppm~10,000ppm、または500ppm~5,000ppm、または500ppm~2000ppm、または500ppm~1000ppm、または1000ppm~1,000,000ppm、または1000ppm~500,000ppm、または1000ppm~100,000ppm、または1000ppm~10,000ppm、または1000ppm~5,000ppm、または1000ppm~2000ppm、または2000ppm~1,000,000ppm、または2000ppm~500,000ppm、または2000ppm~100,000ppm、または2000ppm~10,000ppm、または2000ppm~5,000ppm、または2000ppm~3000ppm、または5000ppm~1,000,000ppm、または5000ppm~500,000ppm、または5000ppm~100,000ppm、または5000ppm~10,000ppm、または10,000ppm~1,000,000ppm、または10,00ppm~500,000ppm、または10,000ppm~100,000ppm、または50,000ppm~1,000,000ppm、または50,000ppm~500,000ppm、または50,000ppm~100,000ppm、または100,000ppm~1,000,000ppm、または100,000ppm~500,000ppm、または200,000ppm~2000ppmを含む200,000ppm~1000ppm、例えば180,000ppm~2000ppm、または180,000ppm~10,000ppmも含む180,000ppm~5000ppmの量で存在するCO2を有する。
【0021】
排ガス流、特に種々の燃焼ガスの排ガス流は、1種または複数種の更なる非CO2成分、単に例として、水、NOx(酸化一窒素:NO及びNO2)、SOx(酸化一イオウ:SO、SO2、及びSO3)、VOC(揮発性有機化合物)、水銀などの、但しこれに限定されない重金属、及び粒子状物質(ガス中に懸濁した固体または液体粒子)を含んでいてもよい。煙道ガスの温度も多様であってよい。いくつかの実施形態において、CO2を含む煙道ガスの温度は、0℃~2000℃、または0℃~1000℃、または0℃~500℃、または0℃~100℃、または0℃~50℃、または10℃~2000℃、または10℃~1000℃、または10℃~500℃、または10℃~100℃、または10℃~50℃、または50℃~2000℃、または50℃~1000℃、または50℃~500℃、または50℃~100℃、または100℃~2000℃、または100℃~1000℃、または100℃~500℃、または500℃~2000℃、または500℃~1000℃、または500℃~800℃、または60℃~700℃など、及び100℃~400℃を含んでいる。
【0022】
上記に要約したように、炭酸アンモニウム水溶液を生成させるために十分な条件下で、回収用アンモニア水溶液をガス状CO2源と接触させる。回収用アンモニア水溶液中のアンモニアの濃度は様々であってよく、いくつかの場合において、回収用アンモニア水溶液はアンモニア(NH3)を0.1~20.0M、いくつかの場合において、0.1~5.0M、例えば0.1~4.0Mの範囲の濃度、例えば4.0Mで含む一方で、他の場合には2~20M、例えば4~20Mの範囲の濃度で含む。回収用アンモニア水溶液は任意且つ適宜の水を含んでいてもよい。回収用アンモニア水溶液を構成してもよい対象となる水は、淡水、海水、塩水、生成水、及び排水が挙げられるが、これらに限定はされない。回収用アンモニア水溶液のpHは様々であってよく、いくつかの場合において、10.0~13.5、例えば、10.5~12.5を含む10.0~13.0の範囲である。
【0023】
CO2含有ガスは、例えば上述したように、任意且つ適宜のプロトコルを用いて回収用アンモニア水溶液と接触させてもよい。例えば、対象となる接触プロトコルとしては、直接接触プロトコル、例えば、ある容積の水性媒体を通してガスをバブリングすること、並流接触プロトコル、すなわち一方向に流れる気相流と液相流との間の接触、向流プロトコルすなわち、反対方向に流れる気相流と液相流との間の接触などが挙げられるが、これらに限定はされない。接触は、適当である場合には、注入器、バブラー、流動ベンチュリ反応器、スパージャ、ガスフィルター、スプレー、トレー、または充填塔反応器などを用いることによって行われてもよい。このプロセスは回分式プロセスまたは連続プロセスであってもよい。
【0024】
いくつかの場合において、微多孔膜接触器を用いてガス状CO2源を液体と接触させる。対象となる微多孔膜接触器は、適宜の筐体中に存在する微多孔膜を備え、この筐体はガスの入口及び液体の入口に加えて、ガスの出口及び液体の出口を備える。この接触器は、微多孔膜の細孔を介して分子がガスから液体に溶解するような形態で、気体と液体とがこの膜の反対側に接触するように構成される。この膜は任意且つ適宜の形式で構成することができ、いくつかの場合において、この膜は中空繊維形式で構成される。用いてもよい中空繊維膜反応器の形式としては、米国特許第7,264,725号、第6,872,240号、及び第5,695,545号に記載されるものが挙げられるが、これらに限定はされず、この特許の開示は参照により本明細書に援用される。いくつかの場合において、用いられる微多孔中空繊維膜接触器は、Liqui-Cel(登録商標)中空繊維膜接触器(Membrana,Charlotte,NC)であり、膜接触器としては、ポリプロピレン膜接触器及びポリオレフィン膜接触器が挙げられる。
【0025】
回収用液体とCO2含有ガスとの間の接触は、CO2含有ガス中に存在するCO2の実質的な部分が溶液中に移り、例えば重炭酸イオンを生成するような条件下で行われる。実質的な部分とは、10%以上、例えば80%以上を含む50%以上を意味する。
【0026】
CO2含有ガスと接触する回収用液体の温度は様々であってよい。いくつかの場合において、この温度は20~80℃などの且つ40~70℃を含む-1.4~100℃の範囲である。いくつかの場合において、この温度は-1.4~50℃以上、例えば-1.1~45℃以上の範囲であってもよい。いくつかの場合において、より低い温度が用いられ、かかる温度は-1.4~4℃、例えば-1.1~0℃の範囲であってもよい。いくつかの場合において、より高い温度が用いられる。例えば、いくつかの場合において、回収用液体の温度は25℃以上、例えば30℃以上であってよく、いくつかの実施形態において、25~50℃、例えば30~40℃の範囲であってもよい。
【0027】
CO2含有ガス及び回収用液体を、所望のCO2が充填された液体を生成させるために適した圧力で接触させる。いくつかの場合において、接触条件の圧力は、CO2の吸収が最適となるように選択され、かかる圧力は1気圧~100気圧、例えば1~50気圧、例えば20~30気圧または1気圧~10気圧の範囲であってもよい。自然な状態の1気圧の場所で接触を行う場合、任意且つ適宜のプロトコルを用いて、圧力を所望の圧力まで上昇させてもよい。いくつかの場合において、最適な圧力が存在する場所、例えば、大洋または海などの水塊の表面下の場所で接触を行う。いくつかの場合において、CO2含有ガスとアルカリ性水性媒体との接触は、当該の水面(例えば、大洋の海面)下のある深さで行われ、この深さは、いくつかの場合において、10~1000メートル、例えば10~100メートルの範囲であってよい。いくつかの場合において、CO2含有ガスとCO2回収用液体との接触は、CO2含有ガス中の他のガス、例えばN2などに対して、CO2含有ガスから選択的にCO2が吸収される圧力で行われる。これらの場合には、CO2含有ガスと回収用液体とが接触する圧力は様々であってよく、1~100気圧(atm)、例えば1~10気圧、且つ20~50気圧を含む。
【0028】
ガス状CO2源は、炭酸アンモニウム水溶液を生成するために十分な形態で回収用アンモニア水溶液と接触させる。炭酸アンモニウム水溶液は多様であってよく、いくつかの場合において、炭酸アンモニウム水溶液は、炭酸アンモニウム及び重炭酸アンモニウムの少なくとも一方を含み、いくつかの場合において、炭酸アンモニウム及び重炭酸アンモニウムの両方を含む。重炭酸アンモニウム水溶液はDIC含有液体との見方もできる。したがって、回収用アンモニア水溶液にCO2を飽和させる際には、CO2回収用液体中に溶解無機炭素(DIC)を生成させるために十分な、すなわち、DIC含有液体を生成させるために十分な条件下で、CO2含有ガスをCO2回収用液体と接触させてもよい。DICは、式DIC=[CO2
*]+[HCO3
-]+[CO3
2-](式中、[CO2
*]は溶液中の二酸化炭素([CO2])濃度と炭酸([H2CO3])濃度の合計であり、[HCO3
-]は重炭酸塩濃度(重炭酸アンモニウムを含む)であり、[CO3
2-]は炭酸塩濃度(炭酸アンモニウムを含む)である。)で表される、無機炭素種の濃度の合計である。この水性媒体のDICは多様であってよく、いくつかの場合において、5,000ppm以上、例えば、15,000ppm以上を含む10,000ppm以上であってもよい。いくつかの場合において、この水性媒体のDICは5,000~20,000ppm、例えば、8,000~12,000ppmを含む7,500~15,000ppmの範囲であってもよい。液体中に溶解したCO2は多様であってよく、いくつかの場合において、0.05~40mM、例えば、25~30mMを含む1~35mMの範囲である。得られるDIC含有液体のpHは様々であってよく、いくつかの場合において、4~12、例えば7~10、例えば8~8.5を含む6~11の範囲であってよい。
【0029】
ガス状CO2源が多成分ガス流であるいくつかの場合において、接触はCO2がCO2吸収水性媒体によって選択的に吸収されるような形態で行われる。選択的に吸収されるとは、CO2分子が、N2、O2、Ar、CO、H2、CH4などの、多成分ガス流中の他の分子に対して優先的に溶液中に移ることを意味する。
【0030】
所望の場合には、CO2の重炭酸塩への転化を媒介する触媒(すなわち、本質的に不均一系または均一系である吸収触媒)の存在下で、CO2含有ガスを回収用液体と接触させる。吸収触媒としては、8~10の範囲のpHレベルにおいて、溶解したCO2からの重炭酸イオンの生成速度を増加させる触媒が対象となる。(例えば、当該触媒が存在しない対照と比較した)速度増加の大きさは様々であってよく、いくつかの場合において、適宜の対照と比較して、2倍以上、例えば5倍以上、例えば10倍以上である。かかる実施形態のための好適な触媒の例に関する更なる詳細は、米国特許出願第14/636,043号に記載され、その開示は参照により本明細書に援用される。
【0031】
いくつかの実施形態において、得られた炭酸アンモニウム水溶液は、バルク液体、例えばバルク溶液中に液体凝縮相(LCP)の液滴を含む二相液体である。「液体凝縮相」すなわち「LCP」とは、重炭酸イオンを含む液体溶液の相であって、LCP相における重炭酸イオンの濃度が周囲のバルク液体における濃度よりも高い、上述したような相を意味する。LCP液滴は、重炭酸イオンがバルク溶液の凝縮濃度を超える凝縮濃度に会合し、非晶質の溶液状態で存在する、準安定な重炭酸塩に富む液体前駆体相の存在を特徴とする。このLCPは、界面の外側のバルク溶液に存在する成分の全てを含有する。但し、重炭酸イオンの濃度はバルク溶液中よりも高い。LCP液滴が存在するこれらの状況においては、LCP及びバルク溶液は、それぞれイオン対及び核生成前クラスタ(pre-nucleation cluster)(PNC)を含有する場合がある。このイオンは、存在する場合、溶液中のイオン対及びPNCと比較して、当該イオンのそれぞれの相に長時間留まる。LCP含有液体に関する更なる詳細は、米国特許出願第14/636,043号に記載されており、その開示は参照により本明細書に援用される。
【0032】
CO2隔離用固体炭酸塩の生成
例えば上述のような炭酸アンモニウム水溶液の生成に続いて、この炭酸アンモニウム水溶液は、CO2隔離用固体炭酸塩とアンモニウム塩水溶液とを生成させるために十分な条件下で、カチオン源と混合される。異なる価数の陽イオンが、固体炭酸塩組成物(例えば、炭酸塩鉱物の形態で)を形成することができる。いくつかの場合において、1価のカチオン、例えばナトリウム及びカリウムカチオンを用いてもよい。他の場合において、アルカリ土類金属カチオン、例えば、カルシウム及びマグネシウムカチオンなどの2価カチオンを用いてもよい。炭酸アンモニウム水溶液にカチオンが添加されると、2価カチオンがCa2+を含む場合の非晶質炭酸カルシウムのような、炭酸塩固体の沈殿が、カチオン当たり1の炭酸塩種イオンの化学量論比で生成し得る。
【0033】
かかる場合においては、任意且つ適宜のカチオン源を用いてもよい。対象となるカチオン源としては、カチオン含有量が高い溶液の濃縮流を生成する、海水淡水化プラント、汽水淡水化プラント、地下水回収設備、排水設備などの水処理設備由来の塩水が挙げられるが、これに限定はされない。天然の海水及び地質学的塩水などの、但しこれらに限定されない天然起源の供給源もまた、陽イオン源として対象となり、これらは種々のカチオン濃度を有する場合があり、炭酸アンモニウム水溶液からの炭酸塩固体の生成を誘発する手近なカチオン源を提供することもできる。いくつかの場合において、カチオン源は、当該プロセスの別の工程の排出物、例えば、アンモニウム水溶液塩からのアンモニアの再生の際に生成されるカルシウム塩(CaCl2など)であってもよい。
【0034】
製品である炭酸塩組成物は非常に多様であってよい。沈殿生成物は、明確に識別できない、非晶質炭酸塩化合物を含む、1種または複数種の異なる炭酸塩化合物、例えば2種以上の異なる炭酸塩化合物、例えば3種以上の異なる炭酸塩化合物、5種以上の異なる炭酸塩化合物を含んでいてもよい。本発明の沈殿生成物である炭酸塩化合物は分子式Xm(CO3)nを有する化合物であってよく、式中、Xは炭酸基または複数の炭酸基と化学結合することができる元素または元素の組み合わせであり、特定の実施形態において、アルカリ土類金属であってアルカリ金属ではなく、m及びnは化学量論的な正の整数である。これらの炭酸塩化合物は、Xm(CO3)n・H2Oの分子式を有していてもよく、分子式中に1または複数の構造水が存在する。生成物中の炭酸塩の量は、電量滴定として記載されたプロトコルを用いた電量測定法によって測定されたものとして、40%以上、例えば80%以上を含む70%以上であってよい。
【0035】
沈殿した製品である炭酸塩化合物は、カルシウム、マグネシウム、ナトリウム、カリウム、イオウ、ホウ素、ケイ素、ストロンチウム、及びそれらの組み合わせのイオン種などの、多くの異なるカチオンを含んでいてもよい。2価の金属カチオンの炭酸塩化合物、例えば炭酸カルシウム化合物及び炭酸マグネシウム化合物が対象となる。対象となる特定の炭酸塩化合物としては、炭酸カルシウム鉱物、炭酸マグネシウム鉱物、及び炭酸カルシウムマグネシウム鉱物が挙げられるが、これらに限定はされない。対象となる炭酸カルシウム鉱物としては、カルサイト(CaCO3)、アラゴナイト(CaCO3)、バテライト(CaCO3)、イカイト(CaCO3・6H2O)、及び非晶質炭酸カルシウム(CaCO3)が挙げられるが、これらに限定はされない。対象となる炭酸マグネシウム鉱物としては、マグネサイト(MgCO3)、バリントンナイト(MgCO3・2H2O)、ネスケホナイト(MgCO3・3H2O)、ランフォルダイト(MgCO3・5H2O)、ハイドロマグネサイト、及び非晶質炭酸マグネシウムカルシウム(MgCO3)が挙げられる。対象となる炭酸カルシウムマグネシウム鉱物としては、ドロマイト(CaMg)(CO3)2)、ハンタイト(Mg3Ca(CO3)4)、及びセルギーバイト(sergeevite)(Ca2Mg11(CO3)13・H2O)が挙げられるが、これらに限定はされない。製品の炭酸塩化合物は、1または複数の水和水を含んでいてもよく、または無水物であってもよい。いくつかの場合において、沈殿物中の炭酸マグネシウム化合物の重量で表した量は、沈殿物中の炭酸カルシウム化合物の重量で表した量を超える。例えば、沈殿物中の炭酸マグネシウム化合物重量で表した量は、沈殿物中の炭酸カルシウム化合物の重量を、5%以上、例えば10%以上、15%以上、20%以上、25%以上、30%以上超えてもよい。いくつかの場合において、沈殿物中の炭酸カルシウム化合物に対する炭酸マグネシウム化合物の重量比は、1.5~5対1、例えば2~3対1を含む2~4対1の範囲である。いくつかの場合において、沈殿物は、例えば2価金属イオン水酸化物、例えば、水酸化カルシウム及び/または水酸化マグネシウムなどの水酸化物を含んでいてもよい。
【0036】
炭酸塩の製造及びそれによって製造された炭酸塩の使用方法に関する更なる詳細は、米国出願第14/112,495号、第14/204,994号、第14/214,129号、第14/214,130号、第14/636,043号、及び第14/861,996号、並びにPCT出願第US2015/054547号に提示され、これらの開示は参照により本明細書に援用される。
【0037】
いくつかの場合において、炭酸塩の製造は、連続式の形態、例えば、米国出願第14/877,766号に記載されているようにして実施され、この特許出願の開示は参照により本明細書に援用される。いくつかのかかる場合において、炭酸塩の製造は、種構造体の存在下で実施されてもよい。種構造体とは、流動している液体であって、例えば、材料生成区域中であり、液体中に2価のカチオンが導入される前の液体中に存在する固体構造または固体材料を意味する。「~の助けにより」とは、材料が、種構造体の少なくとも1の凹部、例えば細孔、間隙などの表面上または凹部中で生成することを意味する。かかる場合には、炭酸塩材料と種構造体との複合構造体が生成する。いくつかの場合において、製品である炭酸塩材料は、種構造体の表面の、全てではないにしても一部分を覆う。いくつかの場合において、製品である炭酸塩材料は、種構造体の凹部、例えば、細孔、間隙、亀裂等を充填する。
【0038】
種構造体は、所望に応じて、広く多様であってよい。用語「種構造体」とは任意の物体であって、その上で及び/またはその中で、製品である炭酸塩材料が形成される物体を表すために用いられる。種構造体は、所望に応じて、単一の物体から粒子状組成物に及んでいてもよい。種構造体が単一の物体である場合には、この種構造体は定形であっても異形であってもよい様々な異なる形状、及び様々な異なる寸法を有していてもよい。対象となる形状としては、棒状、メッシュ状、塊状などが挙げられるが、これらに限定はされない。複数の粒子からなる粒子状組成物、例えば顆粒状組成物も対象となる。種構造体が粒子状組成物である場合、粒子の寸法は様々であってよく、いくつかの場合において、0.01~1,000,000μm、例えば0.1~100,000μmの範囲である。
【0039】
種構造体は、任意且つ適宜の材料または複数の材料で構成されていてもよい。対象となる材料としては、上述したような炭酸塩材料と非炭酸塩材料との両方が挙げられる。種構造体は天然起源、例えば、天然起源の砂、カキ殻由来の貝殻片、もしくは他の炭酸塩骨格アロケム、砂利などであってもよく、または人工物、例えば、粉砕岩石、粉砕高炉スラグ、フライアッシュ、セメントキルンダスト、赤泥などであってもよい。例えば、種構造体は粒子状組成物、例えば白色の炭酸塩材料または着色した炭酸塩材料などの、上述した、プロセスの間に炭酸塩材料で被覆された砂などの、顆粒状組成物であってもよい。
【0040】
いくつかの場合において、種構造体は、例えば、強度が低くコンクリートの骨材として機能することはできない、熱帯地域(例えば、フロリダ)から得られるような、砕けやすい更新世サンゴ岩などの粗骨材であってもよい。この場合には、砕けやすいサンゴ岩を種として使用することができ、CO2隔離用固体炭酸塩鉱物が内部細孔中に沈着し、これによって粗骨材は、ロサンゼルスRattler摩耗試験に合格することができ、コンクリートに使用するために好適となる。軽量骨材が所望される場合には、外面のみに沈着物溶液を浸透させ、内側のコアを相対的に「中空の」ままとすることによって、軽量コンクリートに使用するための軽量骨材となる。
【0041】
CO2隔離用炭酸塩製品からの材料の製造
製品である炭酸塩材料を更に使用し、操作し、及び/または他の組成物と混合して、様々な最終用途向けの材料を製造してもよい。特定の実施形態において、製品である炭酸塩組成物は、何らかの形態で精緻化(すなわち処理)される。精緻化としては種々の異なるプロトコルが挙げられる。特定の実施形態において、所望の物性、例えば粒径などを有する製品を得るために、製品は機械的な精緻化、例えば粉砕に供される。特定の実施形態において、製品は、例えば砂、砂利、骨材などとして水硬性セメントと混合され、例えば最終製品、例えばコンクリートまたはモルタルが製造される。
【0042】
また、形成された建材も対象となる。本発明の形成された建材は非常に多様であってよい。「形成された」とは、人工の構造が画定された物理的形状、すなわち構成に賦形された、例えば、成型された、鋳造された、切断された、または他の方法で製造されたことを意味する。形成された建材は、無定形の建材、例えば画定され安定した形状を有するのではなく、建材を保持する容器、例えばバッグまたは他の容器の形状に従う粒子状(例えば粉末)組成物とは異なる。例示的な形成された建材としては、レンガ、板、導管、梁、洗面台、柱、乾式工法の壁などが挙げられるが、これらに限定はされない。形成された建材に関する更なる例及び詳細としては、米国出願公開第2011/0290156号に記載されているものが挙げられ、この出願公開の開示は参照により本明細書に援用される。
【0043】
また、本発明の製品を構成成分として含む非セメント製造品も対象となる。本発明の非セメント製造品は非常に多様であってよい。非セメントとは、当該組成物が水硬性セメントではないことを意味する。したがって、組成物は、水などの硬化用流体と混合したときに硬化して、安定した製品をつくり出す、乾燥した組成物ではない。例示的な組成物としては、紙製品、ポリマー製品、潤滑剤、アスファルト製品、塗料、化粧品、練り歯磨き、防臭剤、石けん、及びシャンプーなどのパーソナルケア製品、液体及び固体の両方を含むヒト摂取用製品、土壌改良用製品及び動物用飼料などの農業用製品などが挙げられるが、これらに限定はされない。非セメント製造品の更なる例及び詳細としては、米国特許第7,829,053号に記載されるものが挙げられ、この特許の開示は参照により本明細書に援用される。
【0044】
骨材
上記に要約したように、本発明の方法及びシステムは、例えばコンクリート及び他の用途向けの、炭酸塩被覆骨材を製造するために用いてもよい。炭酸塩被覆骨材は従来の骨材または軽量骨材であってよい。
【0045】
本発明の態様はCO2隔離用骨材組成物を含む。CO2隔離用骨材組成物は、コアと、コアの表面の少なくとも一部の上にCO2隔離用炭酸塩被膜を有する骨材粒子を含む。CO2隔離用炭酸塩被膜は、例えば上述したような、CO2隔離用炭酸塩材料からなる。本主題の骨材組成物の被覆粒子の被膜中に存在するCO2隔離用炭酸塩材料は様々であってよい。いくつかの場合において、骨材のコアの同位体プロファイルは、骨材が第1の同位体プロファイルを有する炭酸塩被膜と、第1の同位体プロファイルと異なる第2の同位体プロファイルを有するコアとを有するように、骨材の炭酸塩被膜とは異なる。
【0046】
いくつかの場合において、炭酸塩材料は高反射性である微結晶/非晶質炭酸塩材料である。本発明の被膜中に存在する微結晶/非晶質材料は高反射性であることができる。材料が高反射性であることができることから、この材料を含む被膜の全表面反射率(TSR)値は高くなることができる。TSRは、ASTM E1918 Standard Test Method for Measuring Solar Reflectance of Horizontal and Low-Sloped Surfaces in the Fieldなどの任意且つ適宜のプロトコルを用いて測定することができる(R. Levinson, H. Akbari, P. Berdahl, Measuring solar reflectance - Part II: review of practical methods, LBNL 2010も参照されたい)。いくつかの場合において、バックシートは、例えば、上記に引用したプロトコルを用いて測定した、Rg;0=0.0~Rg;0,=1.0、例えば、Rg;0,=0.40~Rg;0,=0.98を含むRg;0,=0.25~Rg;0,=0.99の範囲のTSR値を示す。
【0047】
いくつかの場合において、炭酸塩材料を含む被膜は、近赤外(NIR)光に対して高反射性であり、いくつかの場合において、10~99%、例えば50~99%である。NIR光とは、700ナノメートル(nm)~2.5mmの範囲の波長を有する光を意味する。NIR反射率は、ASTM C1371-04a(2010)e1 Standard Test Method for Determination of Emittance of Materials Near Room Temperature Using Portable Emissometers (http://www.astm.org/Standards/ C1371.htm)またはASTM G173-03(2012) Standard Tables for Reference Solar Spectral Irradiances: Direct Normal and Hemispherical on 37° Tilted Surface (http://rredc.nrel.gov/solar/spectra/am1.5/ASTMG173/ASTMG173.html)などの、任意且つ適宜のプロトコルを用いて測定することができる。いくつかの場合において、被膜は、例えば、上記に引用したプロトコルを用いて測定した、Rg;0=0.0~Rg;0=1.0、例えば、Rg;0=0.40~Rg;0=0.98を含むRg;0=0.25~Rg;0=0.99の範囲のNIR反射率値を示す。
【0048】
いくつかの場合において、炭酸塩被膜は、紫外(UV)光に対して高反射性であり、いくつかの場合において、10~99%、例えば50~99%である。UV光とは400nm~10nmの範囲の波長を有する光を意味する。UV反射率は、ASTM G173-03(2012) Standard Tables for Reference Solar Spectral Irradiances: Direct Normal and Hemispherical on 37° Tilted Surfaceなどの、任意且つ適宜のプロトコルを用いて測定することができる。いくつかの場合において、材料は、例えば、上記に引用したプロトコルを用いて測定した、Rg;0=0.0~Rg;0=1.0、例えば、Rg;0=0.4~Rg;0=0.98を含むRg;0=0.25~Rg;0=0.99の範囲のUV値を示す。
【0049】
いくつかの場合において、被膜は可視光に対して高反射性であり、可視光の反射率は様々であってよく、いくつかの場合において、10~99%、例えば10~90%の範囲である。可視光とは380nm~740nmの範囲の波長を有する光を意味する。可視光反射特性は、ASTM G173-03(2012) Standard Tables for Reference Solar Spectral Irradiances: Direct Normal and Hemispherical on 37° Tilted Surfaceなどの、任意且つ適宜のプロトコルを用いて測定することができる。いくつかの場合において、被膜は、例えば、上記に引用したプロトコルを用いて測定した、Rg;0=0.0~Rg;0=1.0、例えば、Rg;0=0.4~Rg;0=0.98を含むRg;0=0.25~Rg;0=0.99の範囲の可視光反射特性を示す。
【0050】
炭酸塩成分を構成する材料は、いくつかの場合において、非晶質または微結晶である。材料が微結晶である場合、例えばX線回折パターンのFWHMに適用されるシェラーの式を用いて測定される結晶径は小さく、いくつかの場合において、直径で1000ミクロン以下、例えば、直径で10ミクロン以下を含む直径で100ミクロン以下である。いくつかの場合において、結晶径は、直径で1000μm~0.001μm、例えば1~0.001μmを含む10~0.001μmの範囲である。いくつかの場合において、結晶径は、反射すべき光の波長(複数可)を考慮して選択される。例えば、可視スペクトル中の光が反射されるべきである場合、材料の結晶径の範囲は、フォトニックバンドギャップを生じさせるように、「反射されるべき」範囲の2分の1未満となるように選択されてもよい。例えば、光の反射されるべき波長の範囲が100~1000nmである場合、材料の結晶径は、50nm以下、例えば1~50nm、例えば5~25nmの範囲となるように選択されてもよい。いくつかの実施形態において、本発明の方法によって製造された材料は、棒状結晶及び非晶質固体を含んでいてもよい。棒状結晶は、構造が様々であってよく、特定の実施形態において、直径に対する長さの比が500~1、例えば10~1の範囲である。特定の実施形態において、結晶の長さは、約0.5μm~約500μm、例えば5μm~100μmの範囲である。更に他の実施形態において、実質的に完全に非晶質の固体が生成する。
【0051】
被覆材料の密度、気孔率、及び浸透率は用途に応じて様々であってよい。密度に関し、当該材料の密度は様々であってもよいが、いくつかの場合において、密度は5g/cm3~0.01g/cm3、例えば2.7g/cm3~0.4g/cm3を含む3g/cm3~0.3g/cm3の範囲である。BET法(Brown Emmett Teller (例えば、http://en.wikipedia.org/wiki/BET_theory, S. Brunauer, P. H. Emmett and E. Teller, J. Am. Chem. Soc., 1938, 60, 309. doi:10.1021/ja01269a023に記載される)によって測定される気体表面吸着によって測定される気孔率に関し、気孔率は、いくつかの場合において、100m2/g~0.1m2/g、例えば、40m2/g~1.5m2/gを含む60m2/g~1m2/gの範囲であってよい。浸透率に関し、いくつかの場合において、材料の浸透率は、(例えば、H. Darcy, Les Fontaines Publiques de la Ville de Dijon, Dalmont, Paris (1856)に記載されるプロトコルを用いて測定される)0.1~100ダルシー、例えば、1~5ダルシーを含む1~10ダルシーの範囲であってよい。浸透性はまた、材料の吸水率を評価することによってもキャラクタライズすることができる。吸水率プロトコルによって測定されるように、例えば、材料の吸水率は、いくつかの実施形態において、0~25%、例えば2~9%を含む1~15%の範囲である。
【0052】
材料の硬度も様々であってよい。いくつかの場合において、材料は、(例えば、American Federation of Mineralogical Societies. “Mohs Scale of Mineral Hardness”に記載されるプロトコルを用いて測定される)3モース以上、例えば、6モース以上を含む5モース以上を示し、硬度は、いくつかの場合には、3~8モース、例えば、5~6モースを含む4~7モースの範囲である。硬度は、例えば、ASTM C1167に記載されるプロトコルを用いて測定した引張強さの観点から表すこともできる。かかる場合には、材料は、100~3000N、例えば、500~1800Nを含む400~2000Nの圧縮強度を示してもよい。
【0053】
いくつかの実施形態において、炭酸塩材料は、1種または複数種の汚染物質を含むが、この汚染物質は、Toxicity Characteristic Leaching Procedure, Extraction Procedure Toxicity Test, Synthetic Precipitation Leaching Procedure, California Waste Extraction Test, Soluble Threshold Limit Concentration, American Society for Testing and Materials Extraction Test,及びMultiple Extraction Procedureからなる群より選択される1種または複数種の試験によって、環境に浸出しないと予測される。試験及び試験の組み合わせは、当該組成物の可能性がある汚染物質及び貯蔵条件に応じて選択してもよい。例えば、いくつかの実施形態において、組成物は、As、Cd、Cr、Hg、及びPb(またはそれらの生成物)を含んでいてもよく、これらのそれぞれは石炭火力発電所の排ガス流中に存在する場合がある。As、Ba、Cd、Cr、Pb、Hg、Se、及びAgに関するTCLP試験は、本明細書に記載の骨材に関して適切な試験になり得る。いくつかの実施形態において、本発明の炭酸塩組成物はAsを含み、この組成物はAsを環境中に浸出しないと予測される。例えば、この組成物のTCLP抽出物のAsは5.0mg/L未満であってもよく、これは、この組成物がAsに関して有害ではないことを示す。いくつかの実施形態において、本発明の炭酸塩組成物は、Cdを含み、この組成物はCdを環境中に浸出しないと予測される。例えば、この組成物のTCLP抽出物のCdは1.0mg/L未満であってもよく、これは、この組成物がCdに関して有害ではないことを示す。いくつかの実施形態において、本発明の炭酸塩組成物はCrを含み、この組成物はCrを環境中に浸出しないと予測される。例えば、この組成物のTCLP抽出物のCrは5.0mg/L未満であってもよく、これは、この組成物がCrに関して有害ではないことを示す。いくつか実施形態において、本発明の炭酸塩組成物はHgを含み、この組成物はHgを環境中に浸出しないと予測される。例えば、この組成物のTCLP抽出物のHgは0.2mg/L未満であってもよく、これは、この組成物がHgに関して有害ではないことを示す。いくつか実施形態において、本発明の炭酸塩組成物はPbを含み、この組成物はPbを環境中に浸出しないと予測される。例えば、この組成物のTCLP抽出物のPbは5.0mg/L未満であってもよく、これは、この組成物がPbに関して有害ではないことを示す。いくつかの実施形態において、本発明の炭酸塩組成物及び骨材は、所与の試験において、異なる汚染物質の組合せに関して有害でなくてもよい。例えば、この炭酸塩組成物は、所与の試験において、全ての金属汚染物質に関して有害でなくてもよい。組成物のTCLP抽出物は、例えば、Asで5.0mg/L未満、Baで100.0mg/L未満、Cdで1.0mg/L未満、Crで5.0mg/mL未満、Pbで5.0mg/L未満、Hgで0.2mg/L未満、Seで1.0mg/L、及びAgで5.0mg/L未満であってもよい。実際には、本発明の組成物に対するTCLP分析において、試験する金属の、全てではないにしても、その大部分は検出限界以下であってよい。いくつかの実施形態において、本発明の炭酸塩組成物は、所与の試験において全ての(例えば、無機、有機等の)汚染物質に関して有害でなくてもよい。いくつかの実施形態において、本発明の炭酸塩組成物は、Toxicity Characteristic Leaching Procedure, Extraction Procedure Toxicity Test, Synthetic Precipitation Leaching Procedure, California Waste Extraction Test, Soluble Threshold Limit Concentration, American Society for Testing and Materials Extraction Test,及びMultiple Extraction Procedureからなる群より選択される試験の任意の組み合わせにおいて、全ての汚染物質に関して有害でなくてもよい。したがって、本発明の炭酸塩組成物及び骨材は、環境中に放出された場合に汚染物質となる可能性がある、排ガス流、2価カチオンの産業廃棄物源、プロトン除去剤の産業廃棄物源、またはこれらの組み合わせ由来の種々の化学種(またはそれらの副産物)と共に、CO2を(例えば、炭酸塩、重炭酸塩、またはそれらの組み合わせとして)効果的に隔離することができる。本発明の組成物は、環境汚染物質(例えば、Hg、Ag、As、Ba、Be、Cd、Co、Cr、Cu、Mn、Mo、Ni、Pb、Sb、Se、Tl、V、Zn、またはこれらの組み合わせなどの金属及び金属の副産物)を非浸出性形態で取り込む。
【0054】
本発明の骨材組成物は、コア領域と、コアの表面の少なくとも一部の上のCO2隔離用炭酸塩被膜を有する粒子を含む。被膜は、コアの表面の10%以上、20%以上、30%以上、40%以上、50%以上、60%以上、70%以上、80%以上、95%以上を含む90%以上を被覆していてもよい。炭酸塩層の厚さは、所望に応じて様々であってよい。いくつかの場合には、この厚さは、0.1μm~10mm、例えば、10μm~500μmを含む1μm~1000μmの範囲であってよい。
【0055】
本明細書に記載の骨材組成物の被覆粒子のコアは広く多様であってよい。コアは任意且つ適宜の骨材から構成されていてもよい。好適な骨材の例としては、天然鉱物骨材、例えば、炭酸塩岩石、砂(例えば、天然珪砂)、砂岩、砂利、花崗岩、閃緑岩、斑れい岩、玄武岩など、及び工業的副生成物骨材などの合成骨材、例えば、高炉スラグ、フライアッシュ、都市廃棄物、及びリサイクルコンクリートなどが挙げられるが、これらに限定はされない。いくつかの場合において、コアは炭酸塩被膜とは異なる材料を含む。
【0056】
いくつかの場合において、骨材は軽量骨材である。かかる場合において、本明細書に記載の骨材組成物の被覆粒子のコアは、コアが被覆されており、所望の軽量骨材組成物を与える限り、広く多様であってよい。コアは任意且つ適宜の材料で構成されていてもよい。好適な骨材の例としては、従来の軽量骨材、例えば、軽石、岩さい、または凝灰岩などの破砕火山岩のような天然起源の軽量骨材、及び熱処理したクレー、頁岩、スレート、ケイソウ土、パーライト、バーミキュライト、高炉スラグ、及びフライアッシュなどの合成材料、ならびに非従来型の多孔質材料、例えば、破砕サンゴ、ポリマー、及び低密度ポリマー材料のような合成材料、木材などのリサイクル廃棄物、繊維状材料、セメントキルンダスト残留物、リサイクルガラス、種々の火山性鉱物、花崗岩、シリカ含有鉱物、鉱くずなどが挙げられるが、これらに限定はされない。
【0057】
骨材組成物の被覆粒子の物性は様々であってよい。本発明の骨材の密度は、骨材が用いられることとなる用途に対して、例えば、骨材が用いられる建材に対してこの骨材が所望の特性を与える限り、様々であってよい。特定の場合において、骨材粒子の密度は、1.1~5gm/cc、例えば、1.8gm/cc~2.7gm/ccを含む1.3gm/cc~3.15gm/ccの範囲である。本発明の実施形態における他の粒子密度は、例えば、軽量骨材の場合、1.1~2.2gm/cc、例えば1.2~2.0g/ccまたは1.4~1.8g/ccの範囲であってよい。いくつかの実施形態において、本発明は、嵩密度(単位重量)が、50lb/ft3~200lb/ft3、または75lb/ft3~175lb/ft3、または50lb/ft3~100lb/ft3、または75lb/ft3~125lb/ft3、またはlb/ft3~115lb/ft3、または100lb/ft3~200lb/ft3、または125lb/ft3~lb/ft3、または140lb/ft3~160lb/ft3、または50lb/ft3~200lb/ft3の範囲である骨材を提供する。本発明のいくつかの実施形態は、軽量骨材、例えば、嵩密度(単位重量)が75lb/ft3~125lb/ft3、例えば90lb/ft3~115lb/ft3の骨材を提供する。いくつかの場合において、軽量骨材の重量は、50~1200kg/m3、例えば80~11kg/m3の範囲である。
【0058】
本発明の骨材組成物を構成する骨材粒子の硬度も様々であってよく、特定の場合において、モース硬度で表される硬度は、1.0~9、例えば、1~6または1~5を含む1~7の範囲である。いくつかの実施形態において、本発明の骨材のモース硬度は2~5、または2~4の範囲である。いくつかの実施形態において、モース硬度は2~6の範囲である。ロックウェル硬度、ビッカース硬度、またはブリネル硬度などの他の硬度もまた、本発明の骨材をキャラクタライズするために用いてもよく、モース硬度の値と等価の値を本発明の骨材をキャラクタライズするために用いてもよい。例えば、250のビッカース硬さ等級はモース等級3に相当する。スケール間の換算は本技術分野で公知である。
【0059】
骨材の耐磨耗性も、例えば、表面の研磨を防止するために高い耐摩耗性の骨材が有用である、道路表面における使用に対して重要な場合がある。耐摩耗性は硬度と関連があるが同一ではない。本発明の骨材は、例えば、ASTM C131-03などの本技術分野で受け入れられた方法によって測定して、耐磨耗性が天然の石灰岩の耐摩耗性と類似する骨材、または耐摩耗性が天然の石灰岩よりも優れる骨材、ならびに耐摩耗性が天然の石灰岩よりも低い骨材を含む。いくつかの実施形態において、本発明の骨材の耐摩耗性は、ASTM C131-03によって測定して、50%未満、または40%未満、または35%未満、または30%未満、または25%未満、または20%未満、または15%未満、または10%未満である。
【0060】
本発明の骨材の気孔率も特定の範囲内であってよい。当業者であれば理解するであろうように、いくつかの場合において、気孔率が高い骨材が望ましく、他の場合においては、気孔率が中程度である骨材が望ましく、他の場合においては、気孔率が低いまたは多孔性がない骨材が望ましい。オーブン乾燥に続いて60分間完全に浸漬した後の水の取り込みによって測定し、乾燥重量に対する%で表した、本発明のいくつかの実施形態の骨材の気孔率は、1~40%、例えば2~20%、または2~10%更には3~9%を含む2~15%の範囲であってもよい。
【0061】
骨材粒子の寸法は様々であってよい。本発明の骨材組成物は、いくつかの実施形態において、微細粒または粗粒として分類されてもよい粒子状組成物である。本発明の実施形態に係る微細骨材は、第4の篩(ASTM C125及びASTM C33)をほぼ完全に通過する粒子状組成物である。本発明の実施形態に係る微細骨材組成物の平均粒径は、10μm~4.75mm、例えば、75μm~2.0mmを含む50μm~3.0mmの範囲である。本発明の粗骨材は、大部分が第4の篩(ASTM C125及びASTM C33)上に残る組成物である。本発明の実施形態に係る粗骨材組成物は、平均粒径が4.75mm~200mm、例えば、5~100mmを含む4.75~150mmの範囲の組成物である。本明細書では、「骨材」はまた、いくつかの実施形態において、3インチ~12インチもしくは更には3インチ~24インチ、またはそれ以上、例えば12インチ~48インチ、または48インチを超える大きさも包含してよい。
【0062】
コンクリート乾燥複合物
また、(後述するものなどの)適宜の硬化液と混合することにより、コンクリートまたはモルタルへと硬化する硬化性組成物を生成するコンクリート乾燥複合物も提供される。本明細書に記載のコンクリート乾燥複合物は、(例えば上述した)ある量の骨材と、水硬性セメントなどのセメントを含む。用語「水硬性セメント」とは、その従来の意味において用いられ、水または溶媒が水である溶液、例えば混合溶液と混合した後に硬化する組成物をいう。本発明のコンクリート乾燥複合物を水性液体と混合することによって生成する生成物の硬化は、水との反応の際にセメントから形成される水和物の生成に起因し、この水和物は本質的に水に不溶である。
【0063】
本発明の骨材は、純粋なポルトランドセメントと混合される場合に、従来のコンクリートに使用される従来の天然岩骨材の代わりに用いられる。特定の実施形態において、対象となる他の水硬性セメントには混合ポルトランドセメントがある。語句「混合ポルトランドセメント」とは、ポルトランドセメント成分及び有意な量の非ポルトランドセメント成分を含む水硬性セメント組成物を含む。本発明のセメントが混合ポルトランドセメントであるとき、このセメントはポルトランドセメント成分を含む。ポルトランドセメント成分は任意且つ適宜のポルトランドセメントであってよい。本技術分野で公知であるように、ポルトランドセメントは、ポルトランドセメントクリンカー(90%以上)と、硬化時間を制御する限定された量の硫酸カルシウムと、(種々の基準によって許容される)最大5%の微量成分とを粉砕して製造される粉末組成物である。前述した反応に二酸化炭素を供給するために用いられる排ガスがSOxを含む場合、沈殿した物質中に十分な硫酸塩が硫酸カルシウムとして存在する場合があり、セメントまたは骨材のいずれかとして硫酸カルシウムを追加する必要がなくなる。欧州規格EN197.1によって定義されているように、「ポルトランドセメントクリンカーは、質量で少なくとも2/3のケイ酸カルシウム(3CaO・SiO2及び2CaO・SiO2)と、アルミニウム及び鉄含有クリンカー相ならびに他の化合物からなる残部とから構成されなければならない水硬性材料である。SiO2に対するCaOの比は2.0未満でなければならない。マグネシウム含有量(MgO)は5.0質量%を超えてはならない。」MgOに関する懸念事項は、硬化反応の後期に水酸化マグネシウム、ブルサイトが形成され、セメントの変形及び強度低下及び亀裂に繋がる場合があることである。ブルサイトはMgOによって形成される場合があることから、炭酸マグネシウム含有セメントの場合はブルサイトが形成されないこととなる。特定の実施形態において、本発明のポルトランドセメント成分は、ASTM規格及び米国試験材料協会のC150(I~VIII型)の仕様(ASTM C150-ポルトランドセメントの標準仕様)を満たす、任意のポルトランドセメントである。ASTM C150は8種の型のポルトランドセメントをその範囲に含み、それぞれの型は異なる特性を有し、それらの特性によって特異的に用いられる。
【0064】
水硬性セメントとして、炭酸塩含有水硬性セメントも対象となる。かかる炭酸塩含有水硬性セメント、その製造方法及び使用方法は、米国特許第7,735,274号に記載され、この出願の開示は参照により本明細書に援用される。
【0065】
特定の実施形態において、水硬性セメントは、ポルトランドセメント、炭酸塩含有水硬性セメントなどの2種以上の異なる種類の水硬性セメントの混合物であってもよい。特定の実施形態において、上記混合物中の第1のセメント、例えばポルトランドセメントの量は、10~90%(w/w)、例えば、40~60%(w/w)を含む30~70%(w/w)の範囲であり、例えば、80%のOPC(普通ポルトランドセメント)と20%の炭酸塩水硬性セメントとの混合物である。
【0066】
いくつかの場合において、コンクリート乾燥複合組成物、ならびにこの組成物から製造されたコンクリートのCarbonStar等級(CSR)は、本発明の骨材を含まない対照組成物のCSRよりも低い。CarbonStar等級(CSR)は、製品の生産そのものの炭素集度と比較して(すなわちCO2の発生の点から)、任意の製品に関して(CaCO3の形態で)体化した炭素をキャラクタライズする値である。CSRは、コンクリートの単位での、CO2の体化した質量に基づく計量である。コンクリート中の3種の成分、すなわち、水、セメント、及び骨材の中で、セメントは、質量で概略1:1の(1トンのセメントが概略1トンのCO2を発生させる)、CO2の排出に対して圧倒的に寄与する最も重要な因子である。したがって、1立方ヤードのコンクリートが600ポンドのセメントを使用するとすれば、そのCSRは600である。1立方ヤードの本発明の実施形態に係るコンクリートであって、600ポンドのセメントを含み、且つコンクリート中において、骨材の少なくとも一部が、例えば上述の、炭酸塩で被覆された骨材であるコンクリートは、600未満のCSRを有することとなり、CSRは、例えば、550以下、例えば400以下を含む500以下、例えば250以下、例えば100以下であってもよく、いくつかの場合において、CSRは負の値、例えば-100以下、例えば-1000以下を含む-500以下であってもよく、いくつかの場合において、600ポンドのセメントを有する1立方ヤードのコンクリートのCSRは、例えば500~-5000、例えば、-500~-3000を含む-100~-4000の範囲であってもよい。1立方ヤードの、本発明の炭酸塩で被覆された骨材を含む所与のコンクリートのCSRを決定するためには、1立方ヤードの当該コンクリートのセメント成分の生産に対して発生するCO2の初期値を決定する。例えば、1立方ヤードの当該コンクリートが600ポンドのセメントを含む場合、600の初期値が1立方ヤードのコンクリートに割り当てられる。次に1立方ヤードのコンクリート中の炭酸塩被膜の量が決定される。炭酸塩の分子量は100任意単位であり、炭酸塩の44%はCO2であることから、1立方ヤードの上記コンクリート中に存在する炭酸塩被膜の量に0.44を乗じ、得られた値を初期値から減じて、1立方ヤードのコンクリートに対するCSRを得る。例えば、1立方ヤードの所与のコンクリート混合物が、600ポンドのセメント、300ポンドの水、1429ポンドの微細骨材及び1739ポンドの粗骨材からなる場合、1立方ヤードのコンクリートの重量は4068ポンドであり、CSRは600である。この混合物中の骨材の総質量の10%が、(例えば上述の)炭酸塩被膜で置換された場合、1立方ヤードの変更したコンクリート中に存在する炭酸塩の量は317ポンドになる。この値に0.44を乗じると139.5となる。この数値を600から減じると460.5のCSRが得られる。
【0067】
硬化性組成物
コンクリート及びモルタルなどの本発明の硬化性組成物は、水硬性セメントを、ある量の骨材(モルタルには微細骨材、例えば砂、コンクリートには微細骨材を含むもしくは含まない粗骨材)、及び水性液体、例えば水と同時に混合することによって、またはセメントを骨材と予備混合し、次いで得られた乾燥成分を水と混合することによって製造される。本発明のセメント組成物を用いたコンクリート混合物向けに選択される粗骨材の最小の大きさは約3/8インチであってよく、この骨材の大きさは最小値から1インチまたはそれ以上まで、これらの限度の間の粒度配列を含んで、様々であってよい。微粒化骨材は大きさが3/8インチ未満であり、ここでも200メッシュの篩の大きさ程度までのより細かい大きさに段階化されていてもよい。微細骨材は本発明のモルタル及びコンクリートの両方に存在してもよい。セメントの乾燥成分中の骨材に対するセメントの重量比は様々であってよく、特定の実施形態において、1:10~4:10、例えば2:10~5:10及び55:1000~70:100を含む範囲である。
【0068】
硬化性組成物、例えばコンクリートを生成させるために、乾燥成分を混合する相手である液相、例えば水性流体は、純水から、所望に応じて1種または複数種の溶質、添加剤、共溶媒等を含む水まで、様々であってよい。硬化性組成物の調製において混合される液体相に対する乾燥成分の比は様々であってよく、特定の実施形態において、2:10~7:10、例えば、4:10~6:10を含む3:10~6:10の範囲である。
【0069】
特定の実施形態において、セメントは、1種または複数種の混和剤と共に用いてもよい。混和剤は、基本的なコンクリート混合物では得ることができない望ましい特性をコンクリートに付与するために、あるいは当該コンクリートの特性を改変して、コンクリートをより容易に使用できるように、または特定の目的に対してもしくはコスト低減に対してより適したものとするために、コンクリートに添加される組成物である。本技術分野で公知であるように、混和剤は、水硬性セメント、骨材、及び水以外の任意の材料または組成物であり、コンクリートまたはモルタルの何らかの特性を向上させる、またはそれらのコストを低減するための、コンクリートまたはモルタルの成分として用いられる。用いられる混和剤の量は、当該混和剤の性質に応じて様々であってよい。特定の実施形態において、これらの成分の量は、1~50%w/w、例えば2~10%w/wの範囲である。
【0070】
対象となる混和剤としては、セメント質材料、ポゾラン、ポゾラン質且つセメント質材料、及び名目上不活性な材料などの微粒化鉱物質混和剤が挙げられる。ポゾランとしては、珪藻土、乳白色チャート、クレー、頁岩、フライアッシュ、シリカヒューム、凝灰岩が挙げられ、軽石はよく知られたポゾランの一部である。特定の粉砕高炉水砕スラグ及び高カルシウムフライアッシュは、ポゾラン質及びセメント質の両方の特性を有する。名目上不活性な材料としては、微粒化石英原石、ドロマイト、石灰岩、大理石、花崗岩などを挙げることもできる。フライアッシュはASTM C618で定義されている。
【0071】
対象となる他の種類の混和剤としては、可塑剤、促進剤、遅延剤、空気混入剤(air-entrainer)、発泡剤、減水剤、腐食防止剤、及び顔料が挙げられる。
【0072】
このように、対象となる混和剤としては、硬化促進剤、硬化遅延剤、空気混入剤(air-entraining agent)、消泡剤、アルカリ反応性低下剤、結合混和剤、分散剤、着色剤、腐食防止剤、防湿剤、ガス発生剤、浸透性低下剤、圧送助剤、収縮補償剤、殺真菌剤、殺菌剤、殺虫剤、粘弾性改良剤、微粒化鉱物質混和剤、ポゾラン、骨材、湿潤剤、強度向上剤、撥水剤、及び任意の他のコンクリートもしくはモルタル混和剤または添加剤が挙げられるが、これらに限定はされない。混和剤は本技術分野において周知であり、上述した種類または任意の他の所望の種類の、任意且つ適宜の混和剤を用いてもよい。例えば、米国特許第7,735,274号を参照されたく、この特許は参照によりその全体が本明細書に援用される。
【0073】
いくつかの場合において、硬化性組成物は、例えば、米国出願公開第2014/0234946号として公開されている米国特許出願第14/112,495号(その開示は参照により本明細書に援用される)に記載されるように、ある量の、液体または固体の形態であってよい重炭酸塩に富む生成物(BRP)の混和剤を用いて製造される。
【0074】
特定の実施形態において、例えば、繊維強化コンクリートを所望の場合には、本発明の硬化性組成物は、繊維と共に用いたセメントを含む。繊維は、ジルコニア含有材料、鋼鉄、炭素、ガラス繊維、もしくは合成材料、例えば、ポリプロピレン、ナイロン、ポリエチレン、ポリエステル、レーヨン、高強度アラミド(すなわちケブラー(登録商標))、またはそれらの混合物からなるものであってよい。
【0075】
硬化性組成物の成分は、任意且つ適宜のプロトコルを用いて混合することができる。各材料は作業時に混合してもよいし、または材料の一部もしくは全てを予め混合しておいてもよい。あるいは、材料の一部を、高性能減水剤などの混和剤を含むかまたは含まない水と混合し、次いで残余の材料をこれに混合してもよい。混合装置としては、任意の従来の装置を用いることができる。例えば、ホバートミキサー、斜円筒型混合機、オムニミキサー、ヘンシェルミキサー、V型ミキサー、及びナウターミキサーを用いることができる。
【0076】
硬化性組成物(例えばコンクリート)を生成させるための成分の混合に続いて、硬化性組成物は、いくつかの場合において、当初流動性がある組成物であったものが、その後所定の時間後に硬化する。硬化時間は様々であってよく、特定の実施形態において、30分~48時間、例えば、1時間~4時間を含む30分~24時間の範囲である。
【0077】
硬化生成物の強度も様々であってよい。特定の実施形態において、硬化したセメントの強度は、5MPa~70MPa、例えば、20MPa~40MPaを含む10MPa~50MPaの範囲であってもよい。特定の実施形態において、本発明のセメントから生じる硬化生成物は、例えばASTM C1157に記載される試験法を用いて測定して、極めて耐久性がある。
【0078】
構造物
本発明の態様は、本発明の骨材及び硬化性組成物から製造される構造物を更に含む。したがって、更なる実施形態は、本発明の骨材を含む人工構造物及びそれらの製造方法を含む。したがって、いくつかの実施形態において、本発明は、本明細書に記載の1種または複数種の骨材を含む人工構造物を提供する。この人工構造物は、建物、ダム、堤防、道路、または骨材もしくは岩石を組み込んだ任意の他の人工構造物などの、骨材を用いる場合がある任意の構造物であってよい。いくつかの実施形態において、本発明は、本発明の骨材を含む人工構造物、例えば建物、ダム、または道路を提供し、いくつかの場合において、この骨材は、例えば上述した化石燃料源由来のCO2を含んでいてもよい。いくつかの実施形態において、本発明は、本発明の骨材を提供することを含む、構造物の製造方法を提供する。
【0079】
アルベド向上用途
いくつかの場合において、固体炭酸塩生成物は、アルベド向上用途に用いられてもよい。アルベド、すなわち反射係数とは、表面の拡散反射率または反射能をいう。アルベドは、表面上への入射放射に対する当該表面からの反射放射の比として定義される。アルベドは無次元の比であり、比または百分率として表してもよい。アルベドは、完全に黒い表面の反射能をもたない場合に対するゼロから、白い表面の完全反射に対する1までのスケールで測定される。アルベドは放射の周波数に依存するが、本明細書ではアルベドは特定の波長に言及することなく示され、したがって、可視光のスペクトル、すなわち約380~約740nmの全体にわたる平均値をいう。
【0080】
これらの実施形態の方法は、表面のアルベドの向上方法であることから、いくつかの場合において、本方法によって、0.05以上、例えば0.1以上、0.2以上、0.3以上、0.4以上、0.5以上、0.6以上、0.7以上、0.8以上、最大で1.0を含む0.95以上を含む0.9以上の(適宜の対照、例えば、本発明の方法に供していない同一の表面のアルベドと比較した)幅のアルベドの増加が生じる。したがって、本方法の態様は、表面のアルベドを、0.1以上、例えば0.2以上、例えば0.3以上、0.4以上、0.5以上、0.6以上、0.7以上、0.8以上、0.9以上、0.975以上を含む0.95以上、且つ最大で約1.0の幅で増加させることを含む。
【0081】
本方法の態様は、対象となる表面を、上記に列挙した幅のような所望の幅で表面のアルベドを向上させるために有効な量の、例えば上述した高反射性の微結晶または非晶質の材料組成物と結合させることを含む。この材料組成物を、任意且つ適宜のプロトコルを用いて対象となる表面に結合させてもよい。したがって、改質すべき表面を有する対象物の材料中に材料を組み入れることによって、材料組成物を、対象となる表面に結合させてもよい。例えば、対象となる表面が屋根瓦またはコンクリート混合物などの建材の表面である場合、材料組成物を、材料組成物が対象物の対象となる表面上に存在するように、材料の組成物中に混合してもよい。あるいは、例えば、対象となる表面を組成物で被覆することによって、対象となる表面の少なくとも一部の上に材料組成物を配置してもよい。表面が材料組成物で被覆されている場合、表面上に形成された被膜の厚さは様々であってよく、いくつかの場合において、0.1mm~25mm、例えば、5mm~10mmを含む2mm~20mmの範囲であってもよい。塗料及び太陽光発電パネルなどの他の被覆剤中の高反射性顔料としての使用での用途も対象となる。
【0082】
種々の表面のアルベドを向上させてもよい。対象となる表面としては、人工の対象物及び天然起源の対象物の両方の、少なくとも部分的に空の方向に面した表面が挙げられる。対象となる人工の表面としては、道路、歩道、建物及びその構成要素、例えば、屋根及びその構成部材(屋根板、屋根用グラニュールなど)及び側壁、滑走路、ならびに他の人工構造物、例えば、壁、ダム、記念建造物、装飾物などが挙げられるが、これらに限定はされない。対象となる天然起源の表面としては、森林地域及び非森林地域の両方、非植生地域、水面、例えば、湖面、大洋の表面及び海面などに存在する植物の表面が挙げられるが、これらに限定はされない。
【0083】
例えば、着色屋根用グラニュールの表面上に炭酸塩層を生成する、本明細書に記載の方法を用いて、着色グラニュールのアルベドを容易に増加させることができる。着色屋根用グラニュールの表面に存在する炭酸塩材料の層の厚さは様々であってよいが、いくつかの場合において、厚さは0.1~200μm、例えば、5~100μmを含む1~150μmの範囲である。種々の異なる種類の着色グラニュールを上述したように被覆して、例えば、着色グラニュールの色を、仮に多少あったとしても、実質的には減退させることなく、着色グラニュールの反射率を向上させることができる。本明細書に記載の炭酸塩層で被覆してもよいグラニュールの種類の例としては、屋根用グラニュールが挙げられる。
【0084】
屋根用グラニュールであって、炭酸塩層で被覆して、例えば、着色グラニュールの色を、仮に多少あったとしても、実質的には減退させることなく、着色グラニュールの反射率を向上させることができる屋根用グラニュールは、粉砕し篩分けした鉱物材料から形成されたコアを含んでいてもよく、コアはその後、適宜の金属酸化物などの1種または複数種の着色顔料が分散した、結合剤を含む1層または複数層の着色被膜層で被覆される。無機結合剤を用いてもよい。結合剤は可溶性のアルカリ性ケイ酸塩であってもよく、アルカリ性ケイ酸塩はその後、熱によってまたは化学反応によって、例えば、酸性物質とアルカリ性ケイ酸塩との間の反応によって不溶化され、鉱物粒子上に不溶性の着色被膜が生じる。本発明の屋根用グラニュールを調製するプロセスにおいて用いられるベース粒子はいくつかの形態を取ることができる。ベース粒子は不活性なコア粒子であってよい。コア粒子は、不活性な鉱物粒子、中実もしくは中空のガラスまたはセラミック球体、あるいは発泡ガラスまたはセラミック粒子などの、化学的に不活性な材料であってよい。好適な鉱物粒子は、一連の採石、粉砕、及び篩分け操作によって製造することができ、一般には砂と砂利との中間の大きさ(すなわち、米国メッシュ番号約8と米国メッシュ番号70との間)である。上記コア粒子の平均粒径は、約0.2mm~約3mm、例えば、約0.4mm~約2.4mmである。特に、タルク、火山岩さい、花崗岩、珪砂、緑石、安山岩、斑岩、大理石、閃長岩、流紋岩、輝緑岩、グレーストーン、石英、粘板岩、トラップ岩、玄武岩、及び海産貝殻などの天然起源の物質の適宜の大きさの粒子、ならびにセラミック耐火粘土及びプロパントなどの加工材料、及び粉砕した煉瓦、コンクリート、磁器、耐火粘土などのリサイクル加工材料を使用することができる。中実及び中空のガラス球は、例えば、Potters Industries Inc., P.O. Box 840, Valley Forge, Pa. 19482-0840から、SPHERIGLASS(登録商標)固体「A」ガラス球製品 平均粒径0.203mmを有するグレード1922、平均径0.59mmを有する製品コード602578、BALLOTTINI衝撃ビーズ 600~850マイクロメートル(米国篩径20~30)の径の範囲を有する製品グレードA、及びQCEL中空球、0.090mmの平均粒子径を有する製品コード300などが入手可能である。所望であれば、内部被覆組成物の結合剤に対する接着を良好にするために、ガラス球を適宜のカップリング剤で被覆または処理することができる。グラニュールにおいて、粒子は、結合剤及び顔料を含む被覆組成物で被覆することができる。被覆結合剤は、金属ケイ酸塩結合剤などの無機材料、例えば、ケイ酸ナトリウムなどのアルカリ金属ケイ酸塩であってもよい。
【0085】
使用してもよい被覆顔料としては、PC-9415イエロー、PC-9416イエロー、PC-9158オータムゴールド、PC-9189ブライトゴールデンイエロー、V-9186無鉄チェストナッツブラウン、V-780ブラック、V0797 IRブラック、V-9248ブルー、PC-9250ブライトブルー、PC-5686ターコイズ、V-13810レッド、V-12600カモフラージュグリーン、V12560 IRグリーン、V-778 IRブラック、及びV-799ブラックが挙げられるが、これらに限定はされない。
【0086】
本明細書に記載の方法はまた、フラックサンドを製造するために用いてもよい。フラクサンドは、石油及びガス回収産業において、地質学的破壊の完全性を維持するように、破壊された地質学的構造における多孔質の空所を維持するために使用される。本明細書に記載の方法を用いて、流体流中において砂の浮力に寄与することができる、目的に応じて調整可能な表面被膜を有する被覆基材及び加工した砂を製造してもよい。本明細書に記載の方法を用いて、フラッキング流体が非常に高圧下で地質学的破壊部位中に圧送されている際に、流体の流れの中で平均を超える浮力を維持するように砂の表面を効果的に設計した、綿密に規則的なパターン形式または不規則なパターン形式の炭酸塩材料(結晶性または非晶質)を有する基材を製造してもよい。いくつかの場合において、本方法は、第2の媒体と接触すると、材料が膨張性のセメントとして反応し、周囲の地質学的構造からガス及び流体を流すための空隙を与えるような、結晶性または非晶質であり、但し未反応のセメント質の被覆化合物を含む生成物を生成する。この広範な特性は、流体またはガスの密接な接触、持続的な流体の接触、または地質学的表面から供給される他の磁気または音波による活性化によって活性化することができる。
【0087】
アルベド向上用途を含む、上述の様々な用途における本明細書に記載の炭酸塩沈殿化合物の使用方法、ならびにそれによって製造された組成物は、米国出願第14/112,495号及び第14/214,129号に更に記載され、それらの出願の開示は参照により本明細書に援用される。
【0088】
アンモニア再生
上述したように、カチオン源を炭酸アンモニウム水溶液と混合することによって、CO2隔離用固体炭酸塩とアンモニウム塩水溶液とが生成する。生成したアンモニウム塩水溶液は、アンモニウム塩のアニオンの性質に対して様々であってよく、アンモニウム塩水溶液中に存在してもよい特定のアンモニウム塩としては、塩化アンモニウム、酢酸アンモニウム、硫酸アンモニウム、硝酸アンモニウムなどが挙げられるが、これらに限定はされない。
【0089】
本発明の態様は、炭酸塩の生成に加えて、上述したように、アンモニウム塩水溶液から回収用アンモニア水溶液を、例えば上述したようにして再生することを更に含んでいてもよい。回収用アンモニア水溶液の再生とは、アンモニウム塩水溶液からある量のアンモニアを発生させるために十分な方法で、アンモニウム塩水溶液を処理することを意味する。この再生ステップの間にアンモニアへと転化される投入したアンモニウム塩の割合は様々であってよく、いくつかの場合において、20~80%、例えば35~55%の範囲であってもよい。
【0090】
アンモニアは、任意且つ適宜の再生プロトコルを用いて、本再生ステップにおいてアンモニウム塩水溶液から再生してもよい。いくつかの場合において、蒸留プロトコルが用いられる。任意且つ適宜の蒸留プロトコルを用いてもよいが、いくつかの実施形態において、用いる蒸留プロトコルは、アルカリ成分源の存在下で当該アンモニウム塩水溶液を加熱して、ガス状のアンモニア/水生成物を生成させ、ついでこれを凝縮させて液体の回収用アンモニア水溶液を生成させることを含む。
【0091】
アルカリ成分源は、当該アンモニウム塩水溶液中のアンモニウムをアンモニアに転化させるために十分である限り、様々であってよい。任意且つ適宜のアルカリ成分源を用いてもよい。
【0092】
この再生ステップにおいて用いてもよいアルカリ成分源としては化学薬剤が挙げられる。アルカリ成分源として用いてもよい化学薬剤としては、水酸化物、有機塩基、超塩基、酸化物、及び炭酸塩が挙げられるが、これらに限定はされない。水酸化物としては、水酸化ナトリウム(NaOH)、水酸化カリウム(KOH)、水酸化カルシウム(Ca(OH)2)、または水酸化マグネシウム(Mg(OH)2)を含む、溶液中で水酸アニオンを与える化学種が挙げられる。有機塩基は、一般的に、メチルアミンなどの第一級アミン、ジイソプロピルアミンなどの第二級アミン、ジイソプロピルエチルアミンなどの第三級アミン、アニリンなどの芳香族アミン、ピリジン、イミダゾール、及びベンズイミダゾールなどの複素環式芳香族化合物、ならびにそれらの様々な形態を含む、窒素含有塩基である炭素含有分子である。プロトン除去剤として用いるために好適な超塩基としては、ナトリウムエトキシド、ナトリウムアミド(NaNH2)、水素化ナトリウム(NaH)、ブチルリチウム、リチウムジイソプロピルアミド、リチウムジエチルアミド、及びリチウムビス(トリメチルシリル)アミドが挙げられる。例えば、酸化カルシウム(CaO)、酸化マグネシウム(MgO)、酸化ストロンチウム(SrO)、酸化ベリリウム(BeO)、及び酸化バリウム(BaO)を含む酸化物も、用いてもよい好適なプロトン除去剤である。
【0093】
シリカ源もアルカリ成分源としての対象となる。シリカ源は純シリカであってもよく、または、シリカ源が所望のアルカリ性を付与するために十分である限り、他の化合物、例えば無機物との組み合わせでシリカを含む組成物であってもよい。いくつかの場合において、シリカ源は天然起源のシリカ源である。天然起源のシリカ源としては、砂またはより大きな岩石の形態であってもよいシリカを含有する岩石が挙げられる。シリカ源がより大きな岩石である場合、いくつかの場合において、この岩石は破砕されており、その大きさが低下し、表面積が増加する。最長の寸法が0.01mm~1メートル、例えば1mm~100cm、例えば1mm~50cmを含む0.1mm~500cmの範囲である成分からなるシリカ源が対象である。シリカ源は、所望ならば、シリカ源の表面積を増加させるために表面処理されていてもよい。種々の異なる天然起源のシリカ源を用いてもよい。対象となる天然起源のケイ素源としては、コマチアイト、ピクライト質玄武岩、キンバレー岩、ランプロアイト、かんらん岩などの超苦鉄質岩、玄武岩、輝緑岩(粗粒玄武岩)、及び斑れい岩などの苦鉄質岩、安山岩及び閃緑岩などの中性岩、石英安山岩及び花こう閃緑岩などの中性ケイ長質岩、ならびに流紋岩、アプライト・ペグマタイト、花こう岩などのケイ長質岩を含む火成岩が挙げられるが、これらに限定はされない。人工のシリカ源も対象となる。人工のシリカ源としては、鉱業廃棄物、化石燃料燃焼灰、スラグ、例えば鉄スラグ、リンスラグ、セメントキルン廃棄物、製油所/石油化学プラント廃棄物、例えば油田及びメタン層塩水、石炭層廃棄物、例えばガス産出塩水及び炭層塩水、紙加工廃棄物、軟水化、例えばイオン交換廃塩水、ケイ素加工廃棄物。農業廃棄物、金属仕上げ廃棄物、高pH繊維廃棄物、ならびに苛性スラッジが挙げられるが、これらに限定はされない。鉱業廃棄物としては、地球由来の金属または別の貴重なもしくは有用な無機物の抽出に由来する廃棄物が挙げられる。対象となる廃棄物としては、バイヤーアルミニウム抽出プロセス由来の赤泥を含む、pHを高めるために用いる採鉱由来の廃棄物;例えば、カリフォルニア州モスランディングにおける海水に対するマグネシウム抽出由来の廃棄物;及び浸出を伴う他の採鉱プロセス由来の廃棄物が挙げられる。石炭火力発電所などの化石燃料を燃焼させるプロセスにおいては、多くの場合、シリカに富む灰が発生する。いくつかの実施形態において、化石燃料の燃焼、例えば石炭火力発電所に由来する灰、例えば、フライアッシュ、例えば、煙突から排出される灰、及びボトムアッシュがシリカ源として提供される。シリカ源及びその使用に関する更なる詳細が、2013年10月17日出願の米国仮出願第14/112,495号に記載されており、その開示は参照により本明細書に援用される。
【0094】
本発明の実施形態において、灰はアルカリ成分源として用いられる。特定の実施形態において、灰として石炭灰を用いることも対象となる。本発明において用いられる石炭灰とは、発電所のボイラまたは石炭燃焼炉、例えば、チェーン火格子ボイラ、サイクロンボイラ、及び流動床ボイラにおいて、粉砕無煙炭、亜炭、れき青炭、または亜れき青炭の燃焼から生成する残渣をいう。かかる石炭灰としては、排ガスまたは煙道ガスによって炉から運ばれる、微粒化石炭灰であるフライアッシュ、及び炉の底部に凝集塊として集積するボトムアッシュが挙げられる。
【0095】
フライアッシュは一般に非常に不均一であり、石英、ムル石、及び種々の酸化鉄などの様々な識別可能な結晶相を有するガラス状粒子の混合物を含む。対象となるフライアッシュとしてはF型及びC型フライアッシュが挙げられる。言及したF型及びC型フライアッシュはCSA規格A23.5及びASTM C618によって規定される。これらの分類間の主な違いは、灰中のカルシウム、シリカ、アルミナ、及び鉄の含有量である。フライアッシュの化学的特性は、燃焼させる石炭(すなわち、無煙炭、れき青炭、及び亜炭)の化学成分に大きく影響される。対象となるフライアッシュには、相当量のシリカ(二酸化ケイ素、SiO2)(非晶質及び結晶性の両方)及び石灰(酸化カルシウム、CaO、酸化マグネシウム、MgO)が含まれる。
【0096】
より硬く、年代が古い無煙炭及びれき青炭を燃焼させると、一般的にはF型フライアッシュが生成する。F型フライアッシュは本質的にポゾランの性質を有し、石灰(CaO)の含有量は10%未満である。年代が新しい亜炭または亜れき青炭の燃焼によって生成したフライアッシュは、ポゾランの特性を有することに加えて、ある程度の自己接着性をも有する。水の存在下では、C型フライアッシュは経時的に硬くなり強度を得る。C型フライアッシュの石灰(CaO)の含有量は一般的に20%以上である。アルカリ及び硫酸根(SO4)の含有量は、一般的にC型フライアッシュにおいてより高い。
【0097】
フライアッシュ材料は、排ガス中に懸濁している間に凝固し、種々の方法、例えば、静電集じん装置またはフィルタバッグを用いて回収される。粒子は排ガス中に懸濁している間に凝固するので、フライアッシュ粒子は一般に球形であり、大きさは0.5μm~100μmの範囲である。対象となるフライアッシュとしては、少なくとも約80重量%が45ミクロン未満の粒子を含むものが挙げられる。本発明の特定の実施形態において、高アルカリ性の流動床燃焼器(FBC)フライアッシュの使用も対象となる。
【0098】
本発明の実施形態において、ボトムアッシュの使用も対象となる。ボトムアッシュは、石炭の燃焼から、石炭燃焼ボイラ中に凝集塊として形成される。かかる燃焼ボイラは湿式ボイラまたは乾式ボイラであってよい。ボトムアッシュは、湿式または乾式ボイラで生成する場合、水中で急冷される。この急冷により、90%が0.1mm~20mmの粒径範囲内の大きさの凝集塊を生じ、ボトムアッシュ凝集塊は、この範囲内で凝集塊の大きさが広い分布を有する。ボトムアッシュの主たる化学成分はシリカ及びアルミナであり、少量のFe、Ca、Mg、Mn、Na、及びKの酸化物ならびにイオウ及び炭素を含む。
【0099】
特定の実施形態において、灰として火山灰を使用することも対象となる。火山灰は、小さなテフラ、すなわち、直径2ミリメートル未満の火山噴火によって生じた粉砕された岩石及びガラスの小片からなる。
【0100】
本発明の一実施形態において、セメントキルンダスト(CKD)がアルカリ成分源として使用される。灰及び/またはCKDが由来する燃料の性質、及び燃料の燃焼手段が得られる灰及び/またはCKDの化学組成に影響を与えることとなる。したがって、灰及び/またはCKDの化学組成に基づいて、この灰及び/またはCKDを、pHを調整するための手段の一部、または唯一の手段として用いてもよく、且つ種々の他の成分を、特定の灰及び/またはCKDと共に用いてもよい。
【0101】
本発明の特定の実施形態において、スラグがアルカリ成分源として使用される。上記スラグを、単独のpH調整剤として、または灰などの1種または複数種の更なるpH調整剤と併せて用いてもよい。スラグは金属の加工から発生し、カルシウム及びマグネシウム酸化物ならびに鉄、ケイ素、及びアルミニウム化合物を含有する場合がある。特定の実施形態において、pH調整物質としてスラグを使用することにより、上記沈殿生成物に反応性のケイ素及びアルミナを導入することを通じて、更なる利点が生じる。対象となるスラグとしては、鉄精錬由来の高炉スラグ、鋼の電気アークまたは高炉処理由来のスラグ、銅スラグ、ニッケルスラグ、及びリンスラグが挙げられるが、これらに限定はされない。
【0102】
上述したように、特定の実施形態において、水のpHを所望のレベルに調製する唯一の方法として、灰(または、特定の実施形態においてスラグ)が用いられる。更に他の実施形態において、1種または複数種の更なるpH調製プロトコルが、灰の使用と併せて用いられる。
【0103】
特定の実施形態において、アルカリ成分源として、他の廃棄物、例えば、解体されたもしくはリサイクルされたコンクリートまたはモルタルを使用することも対象となる。用いる場合、コンクリートは溶解し、砂及び骨材を放出し、所望ならばこれらを本プロセスの炭酸塩生成部分にリサイクルしてもよい。
【0104】
特定の実施形態において、無機アルカリ成分源も対象となる。かかる場合において、アンモニウム塩水溶液と接触する無機アルカリ成分源は様々であってよく、対象となる無機アルカリ成分源としては、例えば上述したケイ酸塩、炭酸塩、フライアッシュ、スラグ、石灰、セメントキルンダストなどが挙げられるが、これらに限定はされない。いくつかの場合において、無機アルカリ成分源は、例えば上述した岩石を含む。
【0105】
これらの実施形態において、アンモニウム塩水溶液が加熱される温度は様々であってよいが、いくつかの場合において、温度は25~200℃、例えば25~185℃の範囲である。所望の温度を与えるために用いられる熱は、蒸気、煙道ガス排熱などの排熱源を含む任意且つ適宜の供給源から得てもよい。
【0106】
蒸留は任意の圧力で実施してもよい。蒸留が大気圧で実施される場合、蒸留が実施される温度は様々であってよく、いくつかの場合において50~120℃、例えば60~100、例えば70~90℃の範囲である。いくつかの場合において、蒸留は大気圧より低い圧力で実施される。かかる実施形態における圧力は様々であってよいが、いくつかの場合において、大気圧より低い圧力は1~14psig、例えば2~6psigの範囲である。蒸留が大気圧より低い圧力で実施される場合、蒸留は、大気圧で実施される実施形態と比較して低い温度で行うことができる。かかる場合においては、温度は所望に応じて様々であってよいが、大気圧より低い圧力が用いられるいくつかの実施形態において、温度は15~60℃、例えば25~50℃の範囲である。大気圧より低い圧力の実施形態において、蒸留中に使用される熱の、全てではないにしても、一部に排熱を使用することも対象となる。かかる場合に用いてもよい排熱源としては、煙道ガス、CO2回収及び結果としての炭酸アンモニウムの生成よって発生する吸収熱、ならびに(例えば上述の、発電プラント、工場等の同一の立地のCO2含有ガスの供給源由来のものなどの)冷却液、及びそれらの組み合わせが挙げられるが、これらに限定はされない。
【0107】
回収用アンモニア水溶液の再生はまた、直流電流をアンモニウム塩水溶液中に導入してアンモニアを再生する、電気分解媒介プロトコルを用いて実施してもよい。任意且つ適宜の電気分解プロトコルを用いてもよい。アンモニウム塩水溶液からのアンモニアの再生に適合させることができる電気分解プロトコルの例は、米国出願公開第2006/0185985号及び第2008/0248350号、ならびにPCT出願公開第WO2008/018928号(この出願の開示は、本記載により援用される)に記載される電気分解システム由来の1種または複数種の構成要素を用いてもよい。
【0108】
得られた再生回収用アンモニア水は、例えば、用いられる特定の再生プロトコルに応じて様々であってよい。いくつかの場合において、再生回収用アンモニア水は、4~20M、例えば12.0~16.0Mの範囲の濃度のアンモニア(NH3)を含む。回収用アンモニア水のpHは様々であってよく、いくつかの場合において10.0~13.0、例えば10.0~12.5の範囲である。
【0109】
いくつかの場合において、本方法は、炭酸アンモニウム水溶液を生成するために十分な条件下で、再生回収用アンモニア水を、例えば上述したガス状CO2源と接触させることを更に含む。換言すれば、本方法は、再生アンモニアを当該プロセスにリサイクルすることを含んでいてもよい。かかる場合において、再生回収用アンモニア水は、唯一の回収用液体として用いてもよいし、または別の液体、例えば補給水と混合して、CO2回収用液体としての使用に適した回収用アンモニア水を生成させてもよい。再生アンモニア水を追加の水と混合する場合には、任意且つ適宜の水を使用してもよい。回収用アンモニア水を生成させることができる対象となる水は、淡水、海水、塩水、生成水、及び排水が挙げられるが、これらに限定はされない。
【0110】
リサイクル
いくつかの場合において、本方法は、1種または複数種の反応成分を当該プロセスの1段階からこのプロセスの別の段階に再循環させることを含んでいてもよい。例えば、上述したように、再生アンモニア水溶液をCO2回収段階にリサイクルしてもよい。アンモニア再生中に生成する陽イオン塩及び/または骨材を、炭酸塩生成段階にリサイクルしてもよい。1つの段階、例えばCO2回収で発生した排熱は、別の段階、例えば上述したアンモニア再生で使用されてもよい。これはリサイクルが実施される実施形態の非限定的な例である。
【0111】
純CO2ガスの製造
本方法の1または複数の段階によって、CO2の生成をもたらしてもよい。例えば、炭酸アンモニウム水溶液から固体炭酸塩を生成させる間に、2モルの重炭酸アンモニウム毎に最大で1モルのCO2が生成してもよい。あるいはまたはそれに加えて、アンモニア再生ステップによって、排CO2が生成してもよい。かかる場合には、CO2が生成する場合があるが、全体的なプロセスとしては炭酸塩化合物中の正味量のCO2が隔離される。生成したCO2はいずれも実質的に純粋なCO2生成物ガスであってよく、このガスは、より詳細に後述するように、地質学的な表面下の場所への注入によって隔離されてもよい。したがって、このプロセスは有効なCO2隔離プロセスである。語句「実質的に純粋な」とは、当該製品ガスが純CO2であるか、または他の非CO2成分の量が限られているCO2含有ガスであることを意味する。
【0112】
係る実施形態におけるCO2製品ガスの製造に続いて、本発明の態様は、製品CO2ガスを地質学的な表面下の場所へ注入して、CO2を隔離することを含んでいてもよい。注入とは、CO2製品ガスを地質学的な表面下の場所へ導入または配置することを意味する。地質学的な表面下の場所は様々であってよく、地下の場所及び深海の場所の両方を包含する。対象となる地下の場所としては、化石燃料貯留層、例えば、油田、ガス田、及び採掘不能な炭層、塩水貯留層、例えば、含塩層及び塩充填玄武岩層、深度帯水層、部分的にまたは完全に枯渇した油層またはガス層などの多孔質地層、岩塩空どう、イオウ空どう、及びサルファードームなど、様々な異なる地下の地層が挙げられる。
【0113】
いくつかの場合において、地質学的な表面下の場所への注入に先立って、CO2製品ガスを加圧してもよい。かかる加圧を行うために、ガス状CO2を1段または多段で圧縮し、所望であればその後に随伴する水を冷却し且つ凝縮させてもよい。次いで、適度に加圧されたCO2を、所望であればモレキュラーシーブの使用によるなどの従来の方法によって更に乾燥し、CO2を冷却及び液化するCO2凝縮器に送ってもよい。次いで、このCO2を、CO2注入が望ましい地層内の深度または深海へCO2を送り込むために必要な圧力まで、最小の出力で効率的に圧送してもよい。あるいは、CO2を、一連の段階を経て圧縮し、地層または深海への注入に必要な圧力に匹敵する圧力の超臨界流体として吐出させてもよい。所望ならば、CO2を、例えば、パイプライン、鉄道、トラック、または他の適宜のプロトコルによって、生産場所から表面下の地層に輸送してもよい。
【0114】
いくつかの場合において、CO2製品ガスは、原油増進回収法(EOR)プロトコルにおいて使用される。原油増進回収法(略してEOR)は、油田から抽出できる原油の量を増加させる技法の総称である。原油増進回収法は、改良型採収法または三次回収法とも呼ばれる。EORプロトコルにおいては、CO2製品ガスを地下の原油溜まりすなわち貯留層に注入する。
【0115】
CO2ガスの生産及びその隔離は、米国出願第14/861,996号に更に記載されており、その開示は参照により本明細書に援用される。
【0116】
アルカリ富化
いくつかの場合において、本方法は、炭酸アンモニウム水溶液をアルカリ富化プロトコル、例えば、第1及び第2の液体を膜の反対側に接触させることを含むものなどの、膜媒介プロトコルに供する工程を更に含む。かかる場合においては、膜はカチオン膜またはアニオン膜であってもよい。膜媒介アルカリ富化プロトコルなどのアルカリ富化プロトコルに関する更なる詳細が、米国特許出願第14/636,043号に記載され、その開示は参照により本明細書に援用される。いくつかのかかる場合において、本方法は、回収用アンモニア水溶液をガス状CO2源と、回収とアルカリ富化とを組み合わせた反応器中で接触させることを含み、反応器は、、例えば複数の中空繊維膜を有する、コアである中空繊維膜構成要素と、中空繊維膜構成要素を取り囲み、且つ中空繊維膜構成要素が存在する第1の液体流路を画成するアルカリ富化膜構成要素と、アルカリ富化膜構成要素及び中空繊維膜構成要素を収納するように構成された筐体であって、アルカリ富化膜構成要素と筐体の内面との間に第2の液体流路を画成するように構成された筐体とを備える。かかる場合において、アルカリ富化膜構成要素は筒状物として構成されてもよく、中空繊維膜構成要素は筒状物内に軸方向に配置される。かかる場合において、筐体は、筐体とアルカリ富化膜構成要素とが中心軸を共有する筒状物として構成されてもよい。
【0117】
システム
本発明の態様は更に、上述したようなプロトコルによって、ガス状CO2源からCO2を隔離するためのシステムを含む。システムは、例えば上述した本発明の方法を実施するために十分な形態で作動可能に結合された、例えば上述したような機能性モジュールまたは反応器を備える装置である。かかるシステムの態様は、CO2ガス/回収用アンモニア水溶液モジュールと、炭酸塩生成モジュールと、回収用アンモニア水溶液再生モジュールとを備える。
【0118】
いくつかの場合において、CO2ガス/回収用アンモニア水溶液モジュールは中空繊維膜を備える。いくつかの場合において、本システムはガス状CO2源に作動可能に結合されている。上述したように、ガス状CO2源は煙道ガスなどの多成分ガス流であってもよい。
【0119】
炭酸塩生成モジュールがCO2ガス/回収用アンモニア水溶液モジュールに作動可能に結合されている。いくつかのモジュールの実施形態は、CO2隔離用炭酸塩材料を生成するように構成された連続式反応器を備える。本システムが連続式反応器(すなわち、流通式反応器)を備えている場合には、本システムは、反応器であって、反応器中を流動している流れの中に材料が保持される反応器を備え、反応剤(例えば、2価カチオン、重炭酸塩に富む水性液体など)が連続的に反応器に供給され、生成物の連続流となって出て来る。したがって、本システムの連続式反応器構成要素は回分式反応器ではない。所与のシステムは、例えば本明細書に記載の連続式反応器を、より詳細には後述する1種または複数種の更なる構成要素との組み合わせで備えていてもよい。
【0120】
いくつかの実施形態において、本システムの連続式反応器は、流動している水性液体、例えば、炭酸アンモニウム水溶液と、2価カチオン導入装置であって、導入位置で2価カチオンを流動している水性液体中に導入するように構成された導入装置と、2価カチオン導入装置から距離をおいて配置された、非スラリーで固相のCO2隔離用炭酸塩材料を生成する部位とを備える。流動している水性液体は、任意かつ適宜に構成されていてもよい連続式反応器中に存在していてもよい、移動している、例えば上述の水性液体の流れである。対象となる連続式反応器は、液体の入口と排液の出口とを備え、この入口及び出口は、反応器中へもしくは反応器外へ液体が連続的に移動するまたは流れるように互いに対して配置される。反応器は任意かつ適宜の構造を有していてもよく、いくつかの場合において、反応器の長さであって、液体がそれに沿って流動する長さは、反応器の任意の所与の断面の寸法よりも長くてもよく、入口は反応器の第1の端部にあり、出口は反応器の第2の端部にある。反応器の容積は様々であってよく、いくつかの場合において、10L~1,000,000L、例えば1,000L~100,000Lの範囲である。
【0121】
対象となる連続式反応器は、2価カチオン導入装置であって、導入位置で2価カチオンを流動している水性液体中に導入するように構成された導入装置を更に備える。任意且つ適宜の導入装置を用いてもよく、この導入装置は、2価カチオン源の性質に応じて液相型導入装置または固相型導入装置であってよい。いくつかの場合において、この導入装置は、重炭酸塩に富む生成物を含有する液体用の入口と、完全に同一ではないにしても実質的に同一の位置に配置されてもよい。あるいは、この導入装置は、入口から下流に距離をおいて配置されてもよい。かかる場合において、入口と導入装置との間の距離は様々であってよく、いくつかの実施形態において、1cm~10m、例えば10cm~1mの範囲である。この導入装置は2価カチオン源または貯蔵器に動作可能に結合されてもよい。
【0122】
対象となる連続式反応器はまた、非スラリーで固相のCO2隔離用炭酸塩材料を生成する部位も備える。この部位は、2価カチオンと重炭酸塩に富む生成物を含有する液体の重炭酸イオンとの反応の結果として非スラリーで固相のCO2隔離用炭酸塩材料が生成する連続式反応器の区域または領域である。この反応器は、生成部位において上述した任意の非スラリーで固相のCO2隔離用炭酸塩材料を生成するように構成されていてもよい。いくつかの場合において、生成部位は、2価カチオン導入位置から距離をおいて配置される。この距離は様々であってよいが、2価カチオン導入装置と材料生成部位との距離は、いくつかの場合において、1cm~10m、例えば10cm~1mの範囲である。
【0123】
生成部位は、上述したもののような種構造体(複数可)を備えていてもよい。かかる場合において、反応器は、上述したように、浸漬したまたは浸漬していない形式で種構造体を接触させるように構成されてもよい。浸漬していない形式では、流動している液体は、種構造体の表面上に、例えば様々な厚さの層として存在してもよいが、ガス、例えば空気は、種構造体の少なくとも2の部分、例えば、2種の異なる粒子であって、液体中に浸漬されないような粒子を分離する。
【0124】
本システムの実施形態において、炭酸塩生成モジュールとして用いてもよい係る反応器に関する更なる詳細は、米国出願第14/877,766号に記載され、その開示は参照により本明細書に援用される。
【0125】
回収用アンモニア水溶液再生モジュールは、例えば、上述したような蒸留または電気分解によって、アンモニウム塩水溶液からアンモニアを生成させるように構成される限り、様々であってよい。いくつかの場合において、再生モジュールは、上述のように、大気圧よりも低い圧力を生み出すように構成されることとなり、その結果、このモジュールは、1種または複数種の、大気圧よりも低い圧力を生み出すための構成要素、例えばポンプなどを備えることとなる。いくつかの場合において、再生モジュールは、熱の発生源、例えば蒸気、及び/または、例えば上述したような、1もしくは複数の排熱源に動作可能に結合される。いくつかの実施形態において、再生モジュールは、例えば上述した無機アルカリ源などのアルカリ成分源を備える。
【0126】
いくつかの場合において、本システムは、再生回収用アンモニア水溶液を、例えば上述したように、CO2ガス/回収用アンモニア水溶液モジュールにリサイクルするように構成される。
【0127】
いくつかの場合において、本システム及び本システムのモジュールは工業規模のシステムであり、工業規模のシステムとは、当該システムが、工業規模の量/容積の入力された組成物(例えば、ガス、液体など)を処理するように構成されることを意味する。例えば、本システム及び本システムのモジュール、例えば、CO2接触器モジュール、炭酸塩生成モジュール、アンモニア再生モジュール等は、例えば、1,000ガロン/日以上、例えば、25,000ガロン/日以上を含む10,000ガロン/日以上の工業規模の量の液体を処理するように構成されており、いくつかの場合において、本システム及び本システムのモジュールは、1,000,000,000ガロン/日以下、例えば500,000,000ガロン/日以下を処理するように構成されている。同様に、本システム及び本システムのモジュール、例えば、CO2接触器モジュール等は、例えば、25,000立方フィート/時以上、例えば、250,000立方フィート/時以上を含む100,000立方フィート/時以上といった25,000立方フィート/時以上の工業規模の量のガスを処理するように構成されており、いくつかの場合において、本システム及び本システムのモジュールは、500,000,000立方フィート/時以下、例えば100,000,000立方フィート/時以下を処理するように構成されている。
【0128】
いくつかの実施形態において、システムは、水性媒体源、例えば、天然起源または人工の水性媒体源と流体連結し、CO2隔離プロトコルが実施される場所と同一の立地で合ってもよい。本システムは陸上または海上に存在してもよい。システムは、例えば、海水源に近い沿岸地域にある、または水が塩水源、例えば海洋から本システムへと配管で送られれば内陸の場所にあってもよい、陸系システムであってよい。あるいは、システムは水系システム、すなわち、水上または水中に存在するシステムであってもよい。かかるシステムは、所望ならば、船上、海洋プラットフォーム上などに存在してもよい。特定の実施形態において、システムは、任意且つ適宜の場所に、工業プラント、例えば発電所と同一の場所に配置されてもよい。
【0129】
図1は、本発明の一実施形態に係るシステムの概略図を示す。
図1に示すように、システム100は、CO
2ガス/回収用アンモニア水溶液モジュール102と、炭酸塩生成モジュール104と、回収用アンモニア水溶液再生モジュール106とを備える。システム100は、炭酸アンモニウム水溶液110が生成するように、供給源109(例えば、同一の立地の発電プラントの煙道ガス)由来のCO
2含有ガス108が、CO
2ガス/回収用アンモニア水溶液モジュール102中でアンモニア水溶液回収液と混合され、次いで炭酸アンモニウム水溶液110が流体工学的に結合された炭酸塩生成モジュール104に搬送されるように構成される。炭酸塩生成モジュール104において、CO
2隔離用固体炭酸塩114とアンモニウム塩水溶液116とを生成するために十分な条件下で、炭酸アンモニウム水溶液110が、カチオン源112と混合される。次いでアンモニウム塩水溶液116は、流体工学的に結合された回収用アンモニア水溶液再生モジュール106に搬送され、そこで、無機アルカリ成分源118の存在下で、例えば、蒸気源120由来の蒸気によって加熱される。次いで再生アンモニア水溶液122は、流体工学的に結合されたCO
2ガス/回収用アンモニア水溶液モジュール102に搬送される。
【0130】
図2は、アンモニア再生が大気圧よりも低い圧力で実施され、全ての熱が排熱源によって賄われる、本発明の一実施形態に係るシステムの概略図を示す。
図2に示すように、システム200は、CO
2ガス/回収用アンモニア水溶液モジュール202と、炭酸塩生成モジュール204と、回収用アンモニア水溶液再生モジュール206とを備える。システム200は、炭酸アンモニウム水溶液210が生成するように、供給源208(例えば、発電所の煙道)由来のCO
2含有ガスが、CO
2ガス/回収用アンモニア水溶液モジュール202中でアンモニア水溶液回収液と混合され、次いで炭酸アンモニウム水溶液210が流体工学的に結合された炭酸塩生成モジュール204に搬送されるように構成される。炭酸塩生成モジュール204において、CO
2隔離用固体炭酸塩214とアンモニウム塩水溶液216とを生成するために十分な条件下で、炭酸アンモニウム水溶液210が、カチオン源212と混合される。次いでアンモニウム塩水溶液216は、流体工学的に結合された回収用アンモニア水溶液再生モジュール206に搬送され、そこで、無機アルカリ成分源218の存在下で加熱される。同一の立地の発電プラント220の排熱冷却システム、煙道ガス208、及びCO
2ガス/回収用アンモニア水溶液モジュール202が、再生モジュール206のための熱源として用いられる。次いで再生アンモニア水溶液222は、流体工学的に結合されたCO
2ガス/回収用アンモニア水溶液モジュール202に搬送される。
【0131】
いくつかの場合において、CO2ガス/回収用アンモニア水溶液モジュールは、回収とアルカリ富化とを組み合わせた反応器を備え、反応器は、コアである中空繊維膜構成要素(例えば、複数の中空繊維膜を備える上記構成要素)と、コアである中空繊維膜構成要素を取り囲み、且つコアである中空繊維膜構成要素が存在する第1の液体流路を画成するアルカリ富化膜構成要素と、記アルカリ富化膜構成要素及びコアである中空繊維膜構成要素を収納するように構成された筐体であって、アルカリ富化膜構成要素と筐体の内面との間に第2の液体流路を画成するように構成された筐体とを備える。いくつかの場合において、アルカリ富化膜構成要素は筒状物として構成され、中空繊維膜構成要素は筒状物内に軸方向に配置される。いくつかの場合において、筐体は、筐体とアルカリ富化膜構成要素とが中心軸を共有する筒状物として構成される。本発明の態様は、例えば、上述したような、回収とアルカリ富化とを組み合わせた反応器を更に含む。
【0132】
いくつかの場合において、上述したプロトコルは、例えばPCT出願第US2016/024338号(その開示は参照により本明細書に援用される)に記載される、CO2の隔離に使用するように構成された1または複数の出荷可能なモジュラーユニットのシステムを用いて実行される。ユニットの態様は、CO2ガス/液体接触器サブユニット、炭酸塩生成サブユニット、アルカリ富化サブユニット、軟水化サブユニット、カチオン回収サブユニット、熱交換サブユニット、逆浸透サブユニット、ナノろ過サブユニット、精密ろ過サブユニット、限外ろ過サブユニット、及び精製CO2回収サブユニットの1種または複数種が付随している、筐体または基部などの支持体を備える。本発明に使用するように構成されたモジュラーユニットは、例えば上述したような、アンモニア再生ユニットを備えていてもよい。1または複数のかかるモジュラーユニットで構成されるシステムも提供される。本明細書中に開示されるシステムは、個々のモジュラーユニットが、1のみのまたは複数の所与のサブユニット、例えばCO2ガス/液体接触器サブユニット、炭酸塩生成サブユニット、アルカリ富化サブユニット、軟水化サブユニット、カチオン回収サブユニット、熱交換サブユニット、逆浸透サブユニット、ナノろ過サブユニット、精密ろ過サブユニット、限外ろ過サブユニット、及び精製CO2回収サブユニットを収納する、生産量の大きなシステムを含む。本発明の態様は、結合され、且つCO2ガス/液体接触器サブユニット、炭酸塩生成サブユニット、アルカリ富化サブユニット、軟水化サブユニット、カチオン回収サブユニット、熱交換サブユニット、逆浸透サブユニット、ナノろ過サブユニット、精密ろ過サブユニット、限外ろ過サブユニット、及び精製CO2回収サブユニットを含む1または多数の個々のモジュラーユニットを有していてもよい多数の個々のモジュラーユニットのより大きな集合体を含む。また、CO2隔離プロトコルにおけるユニット/システムの使用方法も提供される。
【0133】
以下の実施例は、例示のために提供されるものであり、限定するものではない。
【実施例0134】
I.アンモニア水溶液によるCO2の回収
A.材料及び方法
実験は、単一(1基)の2.5×8 Liqui-Cel膜接触器(1.4m2の膜表面積)内で、約25ガロンの0.5MのNH3(約1wt%のNH3)回収用溶液を合成煙道ガスに接触させるバッチで実施した。25psigの背圧を印加し、0.5g/分(gpm)(1.9L/分(lpm))の流速で、この回収用溶液を接触器の気相側(容積=0.15L)を通して圧送した。合成煙道ガスを接触器の液相側(容積=0.40L)を通る向流で流した。ガス入口濃度は5~50%のCO2(残余分は空気を補充)の範囲であり、入口容積は10~40slpm(空気+CO2)であり、入口圧力は2~20psigであった。データ収集中は、回収用溶液を膜接触器に1回のみ通して流し、CO2濃度(%、入口及び出口)、O2濃度(%、入口及び出口)、ガス容積(slpm、空気及びCO2)、ガス圧力(psig、入口及び出口)、液体流量(gpm、入口)、液体圧力(psig、入口及び出口)、液体pH(出口)、液体温度(℃、出口)、液体導電率(mS/cm、出口)を記録した。
【0135】
出口液(合成煙道ガスとの接触後)を別のタンクに回収し、一つにまとめた。一つにまとめた出口液を新たな入口回収用溶液として用いて実験を繰り返し、これにより、異なるpHの回収用溶液の検証が可能になる。
【0136】
B.結果
図3中のプロットは合成煙道ガスからのCO
2吸収を実証し、このCO
2吸収は、0.5MのNH
3(約1wt%のNH
3)回収用溶液のpH及び単一(1基)の2.5×8 Liqui-Cel膜接触器に入るガス容積に依存する。より大きな膜接触器(より大きな表面積、より長い滞留時間等)を用いることにより、CO
2吸収の割合が顕著に増加するであろうことが予想される。
【0137】
II.鉱物形成
以下は、重炭酸アンモニウム溶液が、硬水(カチオン源)と接触する際の炭酸塩鉱物の形成において、炭素含有液として用いることができることを示す。
【0138】
A.材料及び方法
200mlのACS試薬グレードの重炭酸アンモニウムを200mlのACS試薬グレードのCaCl2と混合し(0.5M)、複分解反応を行った。この溶液を大気開放にてスターラーで静かに撹拌しながら反応させた。5分後にこの溶液をブフナーロートでろ過し、得られた沈殿を回収し、75℃で終夜乾燥させた。
【0139】
得られた物質を走査型電子顕微鏡(SEM)ならびにフーリエ変換赤外分析(FTIR)によって観測した。FTIRスペクトルは、HeNeレーザー及び高速回復性重水素化トリグリシン硫酸(DTGS)検出器を備えたThermo-Fisher製Nicolet IS-10を用いて記録した。走査は、解像度16、光学速度0.4747で、ゲルマニウムATR結晶上で収集した。SEM画像は、Hitatchi TM-3030ベンチトップモデルを用いて記録した。
【0140】
B.結果
上述した反応によって沈殿が生じ、これを上清から分離し、晶癖(
図4A)ならびにフーリエ変換赤外分析の両方によって方解石(ピーク識別子 871cm
-1、714cm
-1)と同定した。更に、この上清を塩化アンモニウム(ピーク識別子 NH
3として1100cm
-1、NH
4Clとして1450cm
-1)と同定した。
【0141】
更に実験を繰り返し、ケイ砂の存在下でNH4HCO3溶液中にCaCl2溶液を滴定した。この反応により、炭素含有反応剤としてNaHCO3を用いて生成させた被膜と類似する別個の被膜が得られた。
【0142】
III.被覆プロセス
A.材料及び方法
0.25MのCaCl2を、等容量の0.5MのNaHCO3または0.5MのNa2CO3のいずれかに対して複分解反応形式で添加し、混合直後に分析した。その結果は、炭酸カルシウム形成に向かう2種の別個の経路、すなわち、反応2と名付けたよく知られた経路(高pHでCaCl2(水溶液)及びNa2CO3(水溶液)から、炭酸塩経路)、ならびに反応1と名付けた別の経路(中性のpHでCaCl2(水溶液)をNaHCO3(水溶液)中に、重炭酸塩経路)が存在することを示している。
【0143】
FTIRスペクトルは、HeNeレーザー及び高速回復性重水素化トリグリシン硫酸(DTGS)検出器を備えたThermo-Fisher製Nicolet IS-10を用いて記録した。走査は、解像度16、光学速度0.4747で、ゲルマニウムATR結晶上で収集した。FTIR用試料は、0.25MのCaCl2(Sigma、ロット番号BCBL2738及び脱イオン水)を0.5MのNaHCO3(Aqua Solutions、ロット番号319302及びイオン水)に添加することによって調製した。20μlをピペットでATR結晶上にとり、Omnic 9.2ソフトウェアに適用したマクロを用いて、時間分解の形式で反応を記録した。スペクトルは、0、10、20、1800秒の時点で記録した。
【0144】
pHは、Orion 8157BNUMD Ross Ultra pH/ATCプローブを備えたOrionStar A215 pHメーターを用い、時間分解の形式で記録した。0.25のMCaCl2溶液(Sigma、ロット番号BCBL2738及び脱イオン水)を0.5MのNaHCO3溶液(AquaSolutions、ロット番号319302及び脱イオン水)及び0.5MのNa2CO3(Sigma、ロット番号SLBD98664)に添加しつつ、3秒毎にサンプリングして、StarCom 1.0を用いてデータを記録した。
【0145】
溶液及び固体の炭酸塩試料の溶解無機炭素(DIC)含有量を、CM150炭素分析システム(UIC,Inc.)を用いた酸滴定及び電量測定によって測定した。一般的には試料を2NのH2PO4(Sigma Aldrich)で滴定した。但し、CaCl2(Sigma Aldrich)とNaHCO3(Aqua Solutions)との反応で発生したCO2を検出するためには、試料をH2PO4で滴定するとCaCO3からCO2が遊離するために、H2PO4では滴定せず、CaCl2の溶液をNaHCO3の溶液で滴定した。これにより、電量測定によってCO2を定量することができ、次いで、反応で生成したいずれの固体も単離し、乾燥させ、FTIRにより分析して、その組成がCaCO3であることを確認した。CM150システムを用いた全ての分析は40℃で行った。
【0146】
B.結果
混合後0秒、10秒、30秒、30分の時点における反応1の時間分解フーリエ変換赤外スペクトル(FTIR)は、方解石の赤外活性振動モードのv3(1400cm-1)、v1(1087cm-1)、v2(877cm-1)、及びv4(714cm-1)を示す。炭酸塩結合の非対称C-O伸縮振動であるv3は二座によってシフトしているのが見られ、特徴的な方解石ピークを生じ、これは炭酸カルシウムが天然での形成に対して提案されたものと同様の重炭酸塩経路を介して形成していることを示唆する。対称炭酸塩振動モードであるv1は、構造中で利用可能な遊離炭酸塩に関係する。面外変角振動である、v2、及び面内変角振動であるv4は、それぞれ877cm-1及び714cm-1によって識別される。FTIRスペクトルが、LCP反応1及び反応2によって形成されたCaCO3(方解石)だということを同定していることが判る。両経路の最終生成物は同一であると思われる。0.25MのNaHCO3のナノ粒子トラッキング解析法(NTA)の静止画像には、重炭酸塩に富む液体凝縮相の液滴が見られる。混合直後の反応1のNTAの静止画像は、part Aの時間分解形式で測定したもの、すなわち、従来の高pHでの反応(反応2)に対するLCPに駆動される低pHでの反応(反応1)の化学経路を視覚化している。反応2に対する反応1の、DIC分析によって測定した、CaCO3及びCO2に関して測定した収率。この結果は、(反応1に対して予想される)CO2の発生という違いによって、反応1と反応2とは経路が異なることを補強する。反応1のダンプ反応の時間分解法によるpH応答はpHが初期に低下することを示し、これはおそらく重炭酸塩の除去に起因する。反応1のダンプ反応の時間分解法によるpH応答はpHの低下をほとんど示さず、これは炭酸塩が鉱物形成中に消費され、炭酸塩が重炭酸塩によって緩衝されることを示唆している。炭酸塩形成の反応の間に、カルシウムイオンの存在下で液体凝縮相(LCP)が発生し、これが核となってCaCO3を形成する。CaCO3沈殿が進行し、δO-H振動ピークの低下によって判るように、反応生成物の脱水が起こる。FTIRスペクトルによれば、この構造は、既報のように、当初水和され且つ非晶質であり、観測した範囲にブロードなピークを示した。しかしながら、反応が進行するにつれて鋭いピークが徐々に現れることは、1400cm-1(v3、非対称CO3)、1087cm-1(v1、対称CO3)、877cm-1(v2、CO3の面外バンド)、及び714cm-1(v4、CO3の面内バンド)の増加で判るように、炭酸塩多形の結晶構造の発達に関係し、方解石相の形成を示している。この特定の反応を主報告書において反応1と呼び、従来のCaCO3沈殿経路である反応2と比較した。
反応1:
CaCl2(水溶液)+2NaHCO3(水溶液)⇔
CaCO3(固体)+2NaCl(水溶液)+H2O(液体)+CO2(気体)
反応2:
CaCl2(水溶液)+Na2CO3(水溶液)⇔
CaCO3(固体)+2NaCl(水溶液)
反応1及び反応2の結果としての生成物は同一である。CO2及びCaCO3の収率はそれぞれ90%及び80%であり、反応1の化学量論及び化学経路を確認した。pHも時間分解形式で測定し、反応1は、従来の反応2に比較して、より低いpHで起こることが示唆された。これは、Ca2+がHCO3
-と相互作用する傾向があり、中性のpHで沈殿反応が起こることが可能になることから、LCP形成機構と直接関係する。いずれの場合も、初期段階のpHはCaCO3の沈殿開始により多少低下する。
【0147】
IV.硬水の処理
上述した被覆プロセスにおける硬水として用いるための、高濃度の2価イオン、例えばカルシウム(Ca2+)、マグネシウム(Mg2+)などを有する溶液が、既存の水処理技術、例えばナノろ過(NF)または逆浸透(RO)を用いて、海水または他の塩水(saline)もしくは塩水(brine)源から製造されている。
【0148】
A.材料及び方法
現在の海水(28,500ppm TDS)、塩化カルシウム(CaCl2、5,500ppm TDS)等を、種々の市販のNF及びRO膜エレメントの直径4インチ(12.57平方インチ)の小片で処理した。膜透過流束(ガロン/ft2・日、GFD)は平板試験システムの濃縮流における弁によって調節した。透過物の試料をイオンクロマトグラフィー及び/または電導率プローブによって分析して、所与の膜のイオン排除率を測定した。スクリーニング中のシステム圧力(psig)も記録した。
【0149】
B.結果
本発明者らは、人工海水を供給溶液として用い、市販のNF膜を使用して、1価イオンの透過及び2価イオンの排除を良好に検証することができた。本発明者らは、CaCl2溶液では、80%を超えるカルシウムイオン排除を達成することができる市販のNF膜(例えば、TS40(TriSep)及びESNA1-LF2(Hydranautics))が存在することを検証した。
【0150】
V.ジオマス(geomass)によるアンモニア改質
A.アンモニア改質
異なる種類のジオマス、例えば、高表面積炭酸塩または固体ケイ酸塩、フライアッシュ、スラグ、ボトムアッシュ、エコノマイザーアッシュ、赤泥等の廃棄物を、アンモニウム塩を含有するバックエンドプロセス水の存在下で加熱して、アンモニウム塩(NH4
+)からアンモニアガス(NH3)を再生する。これは、工業的に開発されたSolvayプロセスにおいて使用されているものと同様の回収塔中で実施される。
【0151】
アンモニア改質は、煙道ガスとの接触用の反応性回収用溶液を再生し、最終的に水溶液中でガス状CO2を吸収して重炭酸イオン(HCO3
-)に転化させる。アンモニア(NH3)は上述したCO2回収プロセスにおいてアンモニウム(NH4
+)に転化する一方、NH4
+は上述したアンモニア改質プロセスにおいてNH3に転化して戻る。換言すれば、NH3は上述したプロセスのいずれの部分においても消費されない。NH3は、単にガス状CO2の水溶液中のHCO3
-への隔離を促進し、次いでHCO3
-は、上述した被覆プロセスにおいて炭酸塩(CO3
2-)へと鉱物形成する。
【0152】
アンモニア(NH
3)は、ジオマス微粉、例えば、石灰石、フライアッシュ、スラグ、玄武岩等の存在下で、アンモニウム塩水溶液、例えば塩化アンモニウム(NH
4Cl)、酢酸アンモニウム(NH
4OAc)等を加熱することによって再生され、例えば
図1に示す炭素回収及び鉱物形成プロトコルのフロントエンドでのCO
2吸収プロセスで再利用される。
【0153】
1.材料及び方法
5~20mLのアンモニウム塩溶液(0.5M、飽和)を、ジオマス微粉(2~10g)が入った試料容器に添加し、この容器を30~150℃に15~126分間加熱した。加熱中に、低流量の空気(8MのKOH溶液で予備洗浄したもの)を懸濁液に通した。揮発したアンモニアガス(NH3)は全て酸スクラバー(5mLの1M HCl)中でアンモニウム(NH4
+)として捕捉した。次いで、酸スクラバー中のNH4+をイオンクロマトグラフィーによって定量し、以下の図中の「NH3改質収率(%)」は、NH3の理論収量(ジオマス微粉に加えたアンモニウム塩の量及び濃度に基づく)で除したイオンクロマトグラフィーからのNH4
+の測定量を表す。
【0154】
2.結果
アンモニウム塩からのアンモニア(NH
3)の再生を、ジオマス微粉、アンモニウム塩及びそれらの濃度、反応温度、及び反応時間を変化させた多くのシステムにおいて検証した。
図4に更に示すように、わずか30分間加熱した後、75℃という低い温度で、40%を超えるアンモニア改質収率が認められた。
【0155】
図4に示すように、アンモニア(NH
3)改質は、異なる種類のジオマス、例えば、フライアッシュ、CaCO
3、玄武岩等を、アンモニウム(NH
4
+)塩溶液、例えば塩化アンモニウム(NH
4Cl)、酢酸アンモニウム(NH
4OAc)、硝酸アンモニウム(NH
4NO
3)等の存在下で加熱することによって実施する。棒グラフ(左側の縦軸)は、NH
3改質の実験上の収率を示し、一方、折れ線グラフ(右側の縦軸)は改質された溶液中の回収されたNH
3の濃度を示す。これらの2組のデータが示していることは、NH
3改質収率が低い場合はあるが(例えばCaCO
3ジオマスについては10%)、その同一のシステムで回収されるNH
3の濃度は非常に高くなることができ(例えば415mM)、煙道ガスからCO
2を除去するための有効なCO
2回収用溶液が生み出されている。
【0156】
図5に示すように、いずれのジオマスも存在しない場合のNH
3改質収率は比較的に大幅に低い。例外は重炭酸アンモニウム(NH
4HCO
3)であり、この場合は熱の存在下で30%のNH
3が生成するが、望ましくないCO
2もこのシステムから発生する。要するに、このグラフは、NH
3改質プロセスを進行させる上での、ジオマスの利点を示している。
図6は、種々の種類のジオマスの存在下での、75℃におけるNH
4ClからのNH
3改質を検証するデータを示す。この結果は、NH
3改質が、一般的な種類のジオマス、例えばフライアッシュ、CaCO
3、及び玄武岩の存在下では、低温で起こり得ることを実証する。
【0157】
B.種々の種類のジオマスを用いた更なる検討
1.リサイクルコンクリート/モルタルの、アンモニア改質用のアルカリ成分ジオマス源として作用する能力を評価するための検討を実施した。
図7は、種々の玄武岩及びリサイクルコンクリート/モルタルジオマスに関する「時間(分)に対するジオマスアルカリ成分(mmol)」のプロットを示し、1MのHClを、pH3.30が維持されるまで、70℃の飽和塩化アンモニウム溶液中の0.25gのジオマスの懸濁液中に滴定した。このデータは、新しい塩化アンモニウム溶液に接触した際の、ジオマスからのアルカリ成分の放出速度を表す。
【0158】
2.他の材料に加えて、リサイクルコンクリート/モルタルの、アンモニア改質用のアルカリ成分ジオマス源として作用する能力を評価するための検討を実施した。
図8の棒グラフは、種々のジオマス材料を2Mの塩化アンモニウム溶液と室温で10分間混合した際に、これらの材料から浸出したナトリウム(Na
+)、カリウム(K
+)、カルシウム(Ca
2+)、及びマグネシウム(Mg
2+)に関する「改質液中のイオン濃度(mmol/L)を示し、ここでCKD=セメントキルンダスト、CCR=石炭燃焼残渣である。残った固体をろ過により分離し、ろ液すなわち「改質液」をイオンクロマトグラフィーにより分析した。これらのデータは、種々の材料の、固体炭酸塩材料を製造するためのCa
2+源として作用する能力を実証している。
【0159】
C.真空蒸留によるアンモニア改質
大気圧より低い圧力のアンモニア改質に及ぼす影響を評価するための検討を実施した。
図9のグラフは、アーク炉製鋼スラグの存在下で改質された後の改質器液中の、イオンクロマトグラフィー及び酸滴定によってそれぞれ測定したカルシウム及びアルカリ成分の濃度(mol/L)を示す。真空を用いた試験の改質器液中には、真空を用いない試験(「55℃、真空なし」と表示)と比較して、より高いカルシウムイオン濃度及びより低いアルカリ成分濃度が認められる。対照試験である「55℃、スラグなし」及び「55℃、水」は最小限の反応を示した。
【0160】
VI.種々の代表的システム
A.2MW石炭火力発電所
図7は、2MW石炭火力発電所での使用に適した本発明の一実施形態に係るシステムの図である。このプロセスダイアグラムに略述した特定のパラメータはCO
2回収率に基づいている。50%回収の場合、これは時間当たり約2,250ポンドのCO
2または分当たり約390モルのCO
2に相当する。例えば、米国EPAは、米国における石炭火力発電所からの平均的なCO
2排出量は、MW当たり時間当たり2,249ポンドのCO
2であると報告している(「www.」を「epa.gov/energy」の前に付したアドレスのウェブサイトを参照されたい)。1日24時間、週7日稼働及び50%のCO
2回収を仮定すると以下のようになる。
【0161】
【0162】
換言すれば、図中の流れに対するパラメータ、例えば、温度、濃度、容積、流量等は、2MW実証発電所による、おおよそ時間当たり2,250ポンドのCO2の処理に対応する。
【0163】
図10に示すシステム中で実施される関連する化学経路は以下の通りである。
ステップ1:
CO
2+NH
3+H
2O→NH
4HCO
3
ステップ2:
2NH
4HCO
3+CaCl
2→CaCO
3+2NH
4Cl+H
2CO
3
ステップ3:
NH
4Cl+ジオマス(粘土系アルカリ鉱物、すなわち、CaO、CaOH
2、
CaCO
3、MgO、MgOH
2等)→NH
3+硬水
【0164】
B.更なる2MW石炭火力発電所システム
図11A、
図11B、及び
図11Cは、3種の異なる2MW石炭火力発電所に対するシステムダイアグラムを示す。
概括的には、
・プロセスの変更は、ジオマスによる改質器及びそのフロントエンドのCO
2回収区画への出力の周辺が中心となっている。
・温度は特定の場合について示している。
・リサイクルのためのオプション付きの、半連続式で稼働する貯蔵タンク付きのオープンシステムも冷却負荷を最小限に抑制する。
・全体を通して反応剤の濃度をより高くすると、改質器における加熱負荷が最小限に抑制される。
個別には、
・
図11Aは、改質器から来るNH
3の濃度を増加させ、これによって今度は水蒸気の容積及び加熱に必要なエネルギーが減少する。
・
図11Bは、改質器から来るNH
3ガスを吸収するための二次接触器区画を再導入する。
・
図11Cは、改質器からのNH
3ガスをスリップストリームからの煙道ガスと、CO
2吸収のための接触器に入る前に予混合することを提示する。
【0165】
C.10MW石炭火力発電所
図12は、10MW石炭火力発電所での使用に適した本発明の一実施形態に係るシステムの例を示す。石炭火力発電所の煙道ガスの10MWスリップストリーム由来の二酸化炭素の50%を除去しているプロセスの、推定のマスフローバランスを示す。合計14,643kg/hrの低圧蒸気及び3176ガロン/分の冷却水が使用される。冷却水の入口温度と出口温度との差は10℃である。煙道ガスは、12wt%の二酸化炭素であり、約105°Fで入ってくると仮定する。
【0166】
D.減圧アンモニア改質器をもつ10MW石炭火力発電改質器
図13は、3種の提案する所内動力、冷却水低減技法を組み込んだシステムの全体のマスフローダイアグラムを示す。
図13に示すように、改質器を真空で連続的に運転し、したがって改質器の運転温度を低下させ(この例では約70°F)、且つ改質器の電気ポンプ負荷が増加することによって、煙道ガスの熱(H1)、吸収熱(H2)、及びこの例における石炭発電所用の再循環水の熱(H3)を利用することができる。これは、改質を行う真空度を高めることによって、改質器が用いることができる温度がより低くなることに起因する。この構成によって、蒸気必要量(このケースでは
図12に対してゼロに)及び冷却水必要量(このケースでは
図12に対して約33%減)が顕著に低減/排除される。更に、この石炭火力発電所における再循環水は、改質器温度に近い温度まで温度が低くなってもよい。このことによって、改質に必要な熱がプロセスに供給され、蒸気必要量が低下し、再循環水の温度が下がって、母体である石炭火力発電所が再循環水を更に使用できるようになることが同時に起こる。
【0167】
添付の請求項にもかかわらず、本明細書に記載される開示は、以下の付記によっても定義される。
1.ガス状CO2源由来のCO2の隔離方法であって、
a)炭酸アンモニウム水溶液を生成させるために十分な条件下で、回収用アンモニア水溶液をガス状CO2源と接触させることと、
b)CO2隔離用炭酸塩とアンモニウム塩水溶液とを生成させるために十分な条件下で、カチオン源と前記炭酸アンモニウム水溶液とを混合することと、
c)前記アンモニウム塩水溶液から前記回収用アンモニア水溶液を再生させることと
を含み、
前記ガス状CO2源由来のCO2を隔離する、CO2の隔離方法。
2.前記回収用アンモニア水溶液は4.0~20.0Mの範囲の濃度のアンモニアを含む、付記1に記載の方法。
3.前記ガス状CO2源は多成分ガス流である、付記1または2に記載の方法。
4.前記ガス状CO2源は煙道ガスである、付記3に記載の方法。
5.前記煙道ガスが工業的供給源から得られる、付記4に記載の方法。
【0168】
6.膜接触器を用いて前記ガス状CO2源を前記回収用アンモニア水溶液と接触させる、付記1~5のいずれかに記載の方法。
7.前記膜接触器は中空繊維膜接触器である、付記6に記載の方法。
8.前記炭酸アンモニウム水溶液は炭酸アンモニウム及び重炭酸アンモニウムの少なくとも一方を含む、付記1~7のいずれかに記載の方法。
9.前記炭酸アンモニウム水溶液は炭酸アンモニウム及び重炭酸アンモニウムの両方を含む、付記1~8のいずれかに記載の方法。
10.前記アンモニウム塩水溶液から前記回収用アンモニア水溶液を再生させることが蒸留を含む、付記1~9のいずれかに記載の方法。
【0169】
11.前記蒸留が大気圧より低い圧力で実施される、付記10に記載の方法。
12.前記大気圧より低い圧力は1~14psigの範囲である、付記11に記載の方法。
13.前記蒸留は、無機アルカリ成分源の存在下で前記アンモニウム塩水溶液を加熱することを含む、付記10~12のいずれかに記載の方法。
14.前記無機アルカリ成分源は、ケイ酸塩、炭酸塩、フライアッシュ、スラグ、石灰、またはセメントキルンダストを含む、付記13に記載の方法。
15.前記無機アルカリ成分源は岩石を含む、付記13に記載の方法。
【0170】
16.前記蒸留は排熱を用いる、付記10~15のいずれかに記載の方法。
17.前記排熱は、煙道ガス、工程(a)によって発生する吸収熱、及び冷却液、ならびにそれらの組み合わせからなる群より選択される供給源から供給される、付記16に記載の方法。
18.前記アンモニウム塩水溶液から前記回収用アンモニア水溶液を再生させることが電気分解を含む、付記1~9のいずれかに記載の方法。
19.炭酸アンモニウム水溶液を生成させるために十分な条件下で、再生された回収用アンモニア水溶液をガス状CO2源と接触させることを更に含む、付記1~18のいずれかに記載の方法。
20.前記カチオン源はアルカリ土類金属カチオンを含む、付記1~19のいずれかに記載の方法。
【0171】
21.前記カチオン源は2価カチオン源である、付記20に記載の方法。
22.前記2価カチオンはアルカリ土類金属カチオンを含む、付記21に記載の方法。
23.前記2価のアルカリ土類金属カチオンは、Ca2+及びMg2+、ならびにそれらの組み合わせからなる群より選択される、付記22に記載の方法。
24.前記混合する工程(b)は、流動している炭酸アンモニウム水溶液中に、CO2隔離用の非スラリーで固体の炭酸塩を前記流動している炭酸アンモニウム水溶液中に生成させるために十分な条件下で、前記カチオン源を導入することを含む、付記20~23のいずれかに記載の方法。
25.前記CO2隔離用固体炭酸塩は粒子状組成物である、付記24に記載の方法。
【0172】
26.種構造体の助けにより前記CO2隔離用固体炭酸塩を生成させることを含む、付記24に記載の方法。
27.前記CO2隔離用固体炭酸塩は、前記種構造体の表面上または凹部中の少なくとも一方で生成する、付記26に記載の方法。
28.前記CO2隔離用固体炭酸塩の材料から建材を製造することを更に含む、付記1~27のいずれかに記載の方法。
29.前記建材は骨材を含む、付記28に記載の方法。
30.前記種構造体は、前記種構造体と比較して、多孔性がより低くて、より高密度でらる固体骨材を製造するために、前記CO2隔離用固体炭酸塩によって充填されることとなる、多孔質、浸透性の骨材である、付記29に記載の方法。
【0173】
31.前記充填された骨材が、外側の縁部において内部よりもより大きな程度で充填され、新たな骨材を、前記外側の縁部と比較して前記内部の領域においてより低密度として軽量骨材を製造する、付記30に記載の方法。
32.前記建材は屋根用グラニュールを含む、付記28に記載の方法。
33.CO2ガス/回収用アンモニア水溶液モジュールと、
炭酸塩生成モジュールと、
回収用アンモニア水溶液再生モジュールと
を備える、ガス状CO2源由来のCO2の隔離システム。
34.前記CO2ガス/回収用アンモニア水溶液モジュールは中空繊維膜を備える、付記33に記載のシステム。
35.ガス状CO2源に作動可能に結合される、付記33または34に記載のシステム。
【0174】
36.前記ガス状CO2源は多成分ガス流である、付記33~35のいずれかに記載のシステム。
37.前記ガス状CO2源は煙道ガスである、付記36に記載のシステム。
38.前記回収用アンモニア水溶液再生モジュールが、蒸留によって回収用アンモニア水溶液を生成させるように構成された、付記33~37のいずれかに記載のシステム。
39.前記回収用アンモニア水溶液再生モジュールが、大気圧よりも低い圧力での蒸留によって回収用アンモニアを生成させるように構成された、付記38に記載のシステム。
40.前記回収用アンモニア水溶液再生モジュールが排熱源に作動可能に結合される、付記38または39に記載のシステム。
【0175】
41.前記回収用アンモニア水溶液再生モジュールは無機アルカリ源を備える、付記38~40のいずれかに記載のシステム。
42.前記回収用アンモニア水溶液再生モジュールが電気分解によって回収用アンモニア水溶液を生成させるように構成される、付記33~37のいずれかに記載のシステム。
43.再生回収用アンモニア水溶液を前記CO2ガス/回収用アンモニア水溶液モジュールへとリサイクルさせるように構成される、付記33~42のいずれかに記載のシステム。
【0176】
上述した発明は、理解を明確にするために、図解及び実施例によってある程度詳細に記載してきたが、当業者には、本開示の教示に照らして、添付の特許請求の範囲の趣旨または範囲から逸脱することなく、これらに対して特定の変更及び改変を行い得ることが容易に明らかである。
【0177】
したがって、前述した内容は、単に本発明の原理を例示しているに過ぎない。当業者であれば、本明細書に明示的に記載されてはいないまたは示されてはいないが、本発明の原理を具体化し、その趣旨及び範囲内に含まれる種々の構成を案出できるであろうことが理解されよう。更に、本明細書に記載される全ての実施例及び条件を表す文言は、主として、読者が、本発明者らによる本技術分野の前進に対する貢献である本発明の原理及び概念を理解することを補助することを意図し、かかる具体的に詳述された実施例及び条件に限定されないと解釈されたい。更に、本発明の原理、態様、及び実施形態、ならびにその具体的な実施例の全ての記述は、それらの構造的均等物及び機能的均等物の両方を包含することを意図している。
【0178】
更に、かかる均等物は、現在知られている均等物及び将来開発される均等物、すなわち、構造に拘わらず同様の機能を果たす任意の開発される要素の両方を含むことが意図される。したがって、本発明の範囲は、本明細書に示され且つ記載された例示的な実施形態に限定されることを意図するものではない。正しくは、本発明の範囲及び趣旨は、添付の特許請求の範囲によって具象化される。
【0179】
関連出願の相互参照
本出願は、米国特許法第119条(e)に準じて、2016年3月25日出願の米国仮出願第62/313,613号及び2017年1月27日出願の米国仮出願第62/451,506号の優先権を主張し、これらの出願の開示は参照により本明細書に援用される。