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特開2022-50545敗血症を処置するための方法および組成物
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022050545
(43)【公開日】2022-03-30
(54)【発明の名称】敗血症を処置するための方法および組成物
(51)【国際特許分類】
   A61K 31/4245 20060101AFI20220323BHJP
   A61K 9/10 20060101ALI20220323BHJP
   A61K 9/107 20060101ALI20220323BHJP
   A61K 9/127 20060101ALI20220323BHJP
   A61K 47/04 20060101ALI20220323BHJP
   A61K 47/06 20060101ALI20220323BHJP
   A61K 47/10 20060101ALI20220323BHJP
   A61K 47/12 20060101ALI20220323BHJP
   A61K 47/14 20060101ALI20220323BHJP
   A61K 47/24 20060101ALI20220323BHJP
   A61K 47/38 20060101ALI20220323BHJP
   A61K 47/44 20170101ALI20220323BHJP
   A61K 45/00 20060101ALI20220323BHJP
   A61P 31/04 20060101ALI20220323BHJP
   A61P 31/12 20060101ALI20220323BHJP
【FI】
A61K31/4245
A61K9/10
A61K9/107
A61K9/127
A61K47/04
A61K47/06
A61K47/10
A61K47/12
A61K47/14
A61K47/24
A61K47/38
A61K47/44
A61K45/00
A61P31/04
A61P31/12
【審査請求】有
【請求項の数】7
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2022001260
(22)【出願日】2022-01-06
(62)【分割の表示】P 2019163255の分割
【原出願日】2014-11-10
(31)【優先権主張番号】62/061,391
(32)【優先日】2014-10-08
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】61/901,656
(32)【優先日】2013-11-08
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(71)【出願人】
【識別番号】516134095
【氏名又は名称】アンチウイルス セラピューティクス
(74)【代理人】
【識別番号】110001896
【氏名又は名称】特許業務法人朝日奈特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】グマステ、アナンド
(72)【発明者】
【氏名】バイロン、デイビッド エー
(57)【要約】      (修正有)
【課題】敗血症を処置するための組成物を提供する。
【解決手段】プレコナリル(3-{3,5-ジメチル-4-[3-(3-メチルイソオキサゾール-5-イル)プロポキシ]フェニル}-5-(トリフルオロメチル)-1,2,4-オキサジアゾール)および薬学的に許容可能なオイル、薬学的に許容可能なエステル混合物、飽和脂肪酸、ヒドロフルオロカーボン、および/またはそれらの組合せを含むプレコナリルの経口処方を含む組成物とする。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
プレコナリルの改良された処方を含む組成物。
【請求項2】
請求項1記載の組成物であって、薬学的に許容可能なオイル、薬学的に許容可能なエステル混合物、飽和脂肪酸、ヒドロフルオロカーボン、および/またはそれらの組合せを含むプレコナリルの経口処方を含む組成物。
【請求項3】
請求項1記載の組成物であって、前記処方が、プレコナリルのナノエマルションを含み、および、前記プレコナリルの粒子サイズが、50~500nm、50~400nm、50~300nm、100~200nmまたは100nmを含む組成物。
【請求項4】
請求項1記載の組成物であって、プレコナリルを含む前記組成物が、高分子リン脂質ミセル中に組み込まれており、前記高分子リン脂質ミセルが、PEG、疎水性ジアシルリン脂質と共役したPEG、ホスファチジルコリン、または卵ホスファチジルコリンを含み、前記高分子リン脂質ミセルの粒子の大きさが、5~100nm、5~80nm、10~50nmまたは10nmを含む組成物。
【請求項5】
請求項1記載の組成物であって、プレコナリルを含む前記組成物が、経口処方を含み、前記経口処方が、任意には担体粒子と組み合わされた、プレコナリルのコロイド粒子を含み、前記担体粒子が、シリカ粒子、PEG、またはヒドロキシメチルプロピルメチルセルロースを含む組成物。
【請求項6】
請求項1記載の組成物であって、プレコナリルを含む前記組成物が、経口処方を含み、前記経口処方が、環状オリゴ糖中に組み入れられたプレコナリルの粒子を含み、前記環状オリゴ糖が、2-ヒドロキシプロピル-β-シクロデキストリン、メチル-β-シクロデキストリン、またはスルホブチル-β-シクロデキストリンを含む組成物。
【請求項7】
請求項1記載の組成物であって、プレコナリルを含む前記組成物が、経口処方を含み、前記経口処方が、水中油型マイクロエマルションを含み、前記水中油型マイクロエマルションにおけるオイルが、中鎖脂肪酸トリグリセリド、水素化された薬学的に許容可能なオイル、またはエチルアルコールを含み、前記マイクロエマルションの粒子サイズが、1~100nm、5~90nm、5~50nm、または8~12nmである組成物。
【請求項8】
請求項1記載の組成物であって、プレコナリルを含む前記組成物が、経口処方を含み、前記経口処方が、消化され得るオイルと組み合わされた、プレコナリルの噴霧乾燥されたエマルションを含む組成物。
【請求項9】
請求項1~8のいずれか1項に記載の組成物であって、プレコナリルの薬学的に許容可能な塩をさらに含む組成物。
【請求項10】
請求項1~9のいずれか1項に記載の組成物であって、前記処方が、経口投与、経皮投与、吸入による投与、鼻腔内投与、局所投与、膣内投与、点眼、耳内投与、脳内投与、経直腸投与、経舌下投与、口腔内投与、および非経口投与、注射による投与、静脈内投与、動脈内投与、筋肉内投与、または心臓内皮下投与を介したデリバリーのためにデザインされており、および、プレコナリルを含む前記組成物が、任意には持続放出性組成物中に組み込まれている組成物。
【請求項11】
請求項1~10のいずれか1項に記載の組成物であって、前記処方が、アバカビル、アシクロビル、アシクロビル、アデホビル、アマンタジン、アンプレナビル、アンプリゲン、アルビドール、アタザナビル、アトリプラ、バラビル、ボセプレビル、シドフォビル、コンビビル、ドルテグラビル、ダルナビル、デラビルジン、ジダノシン、ドコサノール、エドズジン、エファビレンツ、エムトリシタビン、エンフビルチド、エンテカビル、エコリバー、ファムシクロビル、ホミビルセン、ホスアンプレナビル、ホスカルネット、ホスホネット、融合阻害剤、ガンシクロビル、イバシタビン、イムノビル、イドクスウリジン、イミキモド、インジナビル、イノシン、インテグラーゼ阻害剤、インターフェロンIII型、インターフェロンII型、インターフェロンI型、インターフェロン、ラミブジン、ロピナビル、ロビリド、マラビロク、モロキシジン、メチサゾン、ネルフィナビル、ネビラピン、ネキサビル、ヌクレオシドアナログ、オセルタミビル(タミフル(登録商標))、ペグインターフェロンα-2a、ペンシクロビル、ペラミビル、ポドフィロトキシン、プロテアーゼ阻害剤、ラルテグラビル、逆転写酵素阻害剤、リバビリン、リマンタジン、リトナビル、ピラミジン、サキナビル、ソホスブビル、スタブジン、相乗的エンハンサー(抗レトロウイルス剤)、テラプレビル、テノホビル、テノホビルジソプロキシル、チプラナビル、トリフルリジン、トリジビル、トロマンタジン、ツルバダ、トラポルベッド、バラシクロビル(バルトレックス(登録商標))、バルガンシクロビル、ビクリビロク、ビダラビン、ビラミジン、ザルシタビン、ザナミビル(リレンザ(登録商標))、またはジドブジンを含む一つまたはそれ以上の追加の抗ウイルス剤をさらに含む組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
[関連出願]
本出願は、2013年11月8日に出願された、出願番号第61/901,656号の米国仮出願の利益を主張し、その出願の開示内容は、それら全体を参照することによって本明細書に組み込まれ、そして、2014年10月8日に出願された、出願番号第62/061,391号の米国仮出願の利益を主張し、その出願の開示内容は、それら全体を参照することによって本明細書に組み込まれる。
【背景技術】
【0002】
敗血症は、生命にかかわる恐れのある、感染症の合併症である。敗血症は、感染により誘引される全身性の炎症反応に対して非常に強い免疫応答を呈する場合に起こる。この炎症は、複数の臓器系に損傷を及ぼし得る連続的な変化を誘引し得、それらを機能不全に陥らせる。敗血症が敗血症性ショックまで進んだ場合、血圧が劇的に低下し、これは死へと通じ得る。誰もが敗血症を発症する可能性があるが、高齢者、幼い子供、または免疫システムが弱っている者において最も多く、かつ最も脅威となる。早期の敗血症治療、通常これは抗生物質および大量の静脈内輸液を用いて行われるが、これは生存のチャンスを高めるかもしれない。
【0003】
多くの医者が敗血症を、敗血症から始まり、そして重症敗血症へと進み敗血症性ショックへと至る、三段階の症候とみなしている。目標は、敗血症を軽い段階のあいだに、より重篤なものとなる前に治療することである。敗血症と診断されるには、患者は、以下の症状のうちの少なくとも2つを示していなければならない:体温の変化、心拍数の上昇、呼吸数の増大、または確からしいもしくは確認された感染症。重症敗血症の診断は、患者が、一つの臓器が不全になりつつあるかもしれないことを示している以下の兆候または症状のうちの少なくとも1つを示している場合に行われる:尿量の顕著な減少、精神状態の急激な変化、血小板数の減少、呼吸困難、心臓の拍動機能の異常、腹痛。敗血症性ショックと診断されるためには、患者は、重篤な敗血症の兆候および症状に加えて初期の輸液蘇生に対してほとんど反応しない極度の低血圧を示していなければならない。
【0004】
バクテリア、ウイルスまたは真菌性のいかなる種類の感染も敗血症を引き起こし得るが、最も可能性の高い種類としては、肺炎、腹腔内感染症、腎感染症、血流感染(菌血症)などが挙げられる。
【0005】
新生児敗血症は、4週齢より小さい乳児におこる敗血症であり、典型的には、バクテリアによって、しかししばしばウイルスによって起きる。新生児は未成熟な免疫システムしかもっていないため、感染症に特に罹りやすい。新生児敗血症の重篤な予後は髄膜炎である。
【0006】
敗血症はまた、生後最初の2、3ヶ月のあいだにおける主な死因であり、そして、全ての新生児死亡のうちのおよそ13~15%が新生児敗血症の結果である。新生児敗血症の死亡率は、治療されなかったまたは治療が速やかに開始されなかった幼児においては50%の高さであり得る。敗血症が疑われるやいなや直ちに新生児は、培養結果が戻ってくるまでに抗生物質療法が開始される。残念なことに、抗生物質はウイルス感染によって起きた敗血症には機能しない。
【0007】
エンテロウイルス(EV)(ピコルナウイルス科、エンテロウイルス属)は、ヒトに感染する最も一般的なウイルスの一つである。新生児は、その免疫応答機構の未熟さゆえに、EV感染に起因するより高い感染および重篤な臨床症状の危険性にあると考えられている。新生児における、とりわけ夏から秋にかけてのあいだのEV感染は一般的であり、そして、軽度の熱性疾患から重篤な、死に至る可能性のある敗血症、例えば多臓器不全を伴う症状など、「エンテロウイルスによる新生児敗血症(neonatal enteroviral sepsis)」と称される様々な症状を引き起こす。細菌性髄膜炎とともに、エンテロウイルス髄膜炎は、疾患の重篤な症状である。現在のところ、患者には、サポート療法が提供されるが、ウイルス感染によって引き起こされた敗血症に対する特定の抗ウイルス治療は存在しない。
【0008】
重篤な結果は、全身性のエンテロウイルス感染に起因し得、例えば、髄膜脳炎、心血管虚脱、心筋炎または肝炎などが挙げられる。心筋炎または肝炎は高い死亡率をもたらす。心筋炎のみを発症している新生児における死亡率は30~50%であると報告されている。重症肝不全が発生すると、そのような患者の80%以上が、積極的な医療管理にもかかわらず症状の徴候から1~3週間以内に死亡するであろう。
【0009】
敗血症は、非常に若いまたは非常に年老いた個体、易感染性の免疫システムをもつ個体、既に重病であって、しばしば病院の集中治療室にいる個体、創傷または怪我、例えば火傷などを負っている個体、および/または侵襲的装置、例えば静脈内カテーテルまたは呼吸チューブなどを装着している個体に、より起こりやすくそしてより脅威となる。
【0010】
敗血症は重篤でないものから、より重篤であるものまで多岐にわたる。敗血症が悪化すると、重要臓器、例えば脳、心臓および腎臓などへの血流が損なわれる。敗血症はまた、臓器中、および腕、脚、指およびつま先中に血栓を形成させ、様々な程度の臓器不全および組織死(壊疽)を引き起こす。
【0011】
ほとんどの人々が重篤でない敗血症から回復するが、敗血症ショックにおける死亡率は、ほぼ50%である。また、重篤な敗血症のエピソードは、将来の感染のより高いリスクへと個体をさらすことになるかもしれない。
【0012】
敗血症を診断することは、その兆候および症状が他の疾患によって起き得るため困難であり得る。医師らはしばしば、根底にある感染を正確に指摘しようとするための一連の検査を要求する。典型的には、血液検査が様々な要因、例えば感染の証拠、凝固に関連する問題、肝臓または腎臓の異常な機能、酸素利用性不全、および/または電解質平衡障害などについて検査するため行われる。
【0013】
他の臨床検査としては、例えば、尿検査(バクテリアの徴候のため)、創傷分泌物(創傷が感染していることが明らかとなれば、創傷の分泌物のサンプルを検査することは、どのような種類の抗生物質が最も良く機能するかということを示す助けとなり得る)、または気道分泌物(患者が粘液(痰)を吐き出している場合、どのような種類の細菌が感染を引き起こしているのかを決定するためにそれが検査され得る)のサンプルが挙げられる。
【0014】
感染部位が明らかでないような状況においては、医師は、一またはそれ以上の以下の画像検査を要求するかもしれない:X線(X線は、肺における問題を可視化するために良好である)、コンピューター断層撮影(CT)(虫垂、すい臓または腸における感染はCTスキャン上においてはより容易に見ることができる。この技術は、様々な角度からのX線を取り、そして、身体の内部構造の断面スライスを示すために結合する)、超音波(すなわち、例えば胆嚢または子宮などの臓器における感染を確認するために有益である)、磁気共鳴画像(MRI)(MRIは、例えば脊椎内の膿瘍などの軟組織感染を同定するのに有用であり得る)。
【0015】
早期のかつ積極的な治療が敗血症から生存するチャンスを押し上げる。重篤な敗血症を患っている人々は、病院の集中治療室における厳重なモニタリングおよび治療を必要とする。患者が重症敗血症または敗血症性ショックを患っている場合、救命処置として、呼吸および心臓機能を安定化させることが必要とされ得る。
【0016】
処置のために入手可能な薬としては、例えば、抗生物質および昇圧薬などが挙げられる。抗生物質を用いた処置は、直ちに、通常感染症の薬剤が同定される前でさえ、開始される。最初は、患者は、様々なバクテリアに対して効果のある薬効範囲の広い抗生物質を投与される。そして通常、抗生物質は静脈内に(IV)投与される。静脈内輸液が投与された後でさえも血圧が依然として低いままである場合、患者は、血管を収縮させ、そして、血圧を上昇させることを助ける昇圧薬を投与され得る。投与され得る他の薬としては、例えば、低用量のコルチコステロイド、安定な血糖レベルを維持することを助けるためのインシュリン、免疫システム応答を改変する薬剤、および鎮痛剤または鎮静剤などが挙げられる。
【0017】
上記で記載されているように、エンテロウイルスは、敗血症の発生にしばしば関与している。エンテロウイルスとしては、コクサッキーウイルスA1~A21、A24、およびB1~B6、エコーウイルス(Enteric cytopathic human orphan viruses)1~7、9、11~21、24~27、および29~33、エンテロウイルス68~71、73~91、および100~101、ならびにポリオウイルス1~3型などが挙げられる。
【0018】
エンテロウイルス、ならびにライノウイルスおよびヒトパレコウイルスは、ピコルナウイルス(ピコ、または小さい、RNAウイルス)である。ヒトパレコウイルス1および2型は、以前はエコーウイルス22および23と命名されていたが、現在再分類されている。全てのエンテロウイルスは、抗原性において多様性であり、および地理的に広範に分布している。
【0019】
エンテロウイルスは、気道分泌物および糞便中に含まれており、ならびに、ときに感染した患者の絵血液およびCSF中に存在する。感染は、通常、気道分泌物や糞便との直接的な接触によって伝染されるが、汚染された環境源(例えば水など)によっても伝染され得る。米国におけるエンテロウイルス疾患または流行は夏および秋に起こる。分娩中の母親によって伝染される感染は、深刻な汎発性の新生児感染を起こし、これらの例としては例えば、肝炎もしくは肝壊死、髄膜脳炎、心筋炎、またはそれらの合併などが挙げられる。
【0020】
健全な体液性免疫およびB細胞機能が、エンテロウイルス性疾患の制御のために必要とされる。重篤なエンテロウイルス感染(しばしばゆっくりとした進行の髄膜脳炎として顕在化される)は、無ガンマグロブリン血症にり患している患者において起きるが、通常、他の免疫不全をもつ患者においては起こらない。
【0021】
エンテロウイルスは、様々な症状を起こす:伝染性の胸膜痛、手足口病、ヘルパンギーナなど、そして、急性灰白髄炎はほぼもっぱらエンテロウイルスによって起きる。他の障害(例えば、無菌性髄膜炎、心筋心膜炎など)は、エンテロウイルスまたは他の生物によって起き得る。
【0022】
無菌性髄膜炎は、幼児および子供のあいだで最も一般的である。幼児および幼い子供において、その原因は、多くの場合、コクサッキーウイルスA群およびB群、エコーウイルス、またはヒトパレコウイルスである。より年齢の高い子供および大人においては、他のエンテロウイルスおよび他のウイルスによって無菌性髄膜炎が起き得る。
【0023】
心筋心膜炎は、どの年齢でも起こり得る心感染症であるが、大部分の患者は、20~39歳である。患者は、胸部痛、不整脈、心不全、または突然死を示し得る。回復は通常、完全なものであるが、患者のうちの一部は、拡張型心筋症を発症する。診断は、心筋組織の逆転写酵素(RT)-PCRを必要とするかもしれない。新生児心筋炎(誕生時における心感染症)は、コクサッキーウイルスB群、数種のエコーウイルス、およびヒトパレコウイルスによって起こる。これは、発熱および心不全を起こさせ、および高い死亡率をもつ。
【0024】
エンテロウイルスは、しばしば、発疹に関与している。ある種のコクサッキーウイルス、エコーウイルス、およびヒトパレコウイルスが、しばしば感染の間、発疹を起こす。発疹は通常、非掻痒性であり、落屑せず、そして、顔、首、胸および四肢に起こる。それらはともすると斑丘疹様または麻疹様であるが、時々出血性、点状出血性、または、小水疱性である。発熱は一般によくあることである。無菌性髄膜炎が同時に発症するかもしれない。
【0025】
エンテロウイルスにより起きる呼吸器感染症は、発熱、鼻感冒、咽頭炎、などを含む症状、および、幼児および子供においては、嘔吐および下痢などの症状を示す。気管支炎および間質性肺炎が大人および子供に時々起こる。
【0026】
エンテロウイルスが関連している他の感染症としては、骨髄移植に関連するもの、慢性エンテロウイルス髄膜脳炎および無ガンマグロブリン血症または低ガンマグロブリン血症(CEMA)、ならびにライノウイルス肺炎などが挙げられる。
【0027】
新生児敗血症を含む敗血症の生理学および病態生理学の理解における進歩に関わらず、敗血症の治療において効能のある、有効である、そして同時に安全である化合物は依然として不足している。これらの必要性および他の必要性が本願発明によって満たされる。
【発明の概要】
【0028】
本明細書において、それを必要とする個体において敗血症を処置するための方法および組成物が開示され、該方法は、プレコナリルを含む組成物を個体に投与する工程を含む。ある態様において、敗血症は、感染によって、エンテロウイルスによって起こされ、および/または、ある態様において、敗血症は、新生児敗血症である。
【0029】
本明細書において、それを必要とする個体において敗血症を処置するための方法および組成物が開示され、該方法は、プレコナリルを含む組成物を個体に投与する工程であって、プレコナリルが経口投与、経皮投与、吸入による投与、鼻腔内投与、局所投与および当業者にとって公知の他の投与方法を介して投与される工程を含む。
【0030】
本明細書において、それを必要とする個体において敗血症を処置するための方法および組成物が開示され、プレコナリルを含む組成物は、薬学的に許容可能なオイル、薬学的に許容可能なエステル混合物、飽和脂肪酸、ヒドロフルオロカーボンおよび/またはそれらの組合せを含む、プレコナリルの非経口処方を含む。
【0031】
本明細書において、それを必要とする個体において敗血症を処置するための方法および組成物が開示され、プレコナリルを含む組成物は、プレコナリルのナノエマルションを含む。
【0032】
本明細書において、それを必要とする個体において敗血症を処置するための方法および組成物が開示され、プレコナリルを含む組成物は、高分子リン脂質ミセルに組み込まれている。
【0033】
本明細書において、それを必要とする個体において敗血症を処置するための方法および組成物が開示され、プレコナリルを含む組成物は、経口処方を含み、ここで経口処方は、任意には担体粒子と組み合わされた、プレコナリルのコロイド粒子を含む。
【0034】
本明細書において、それを必要とする個体において敗血症を処置するための方法および組成物が開示され、プレコナリルを含む組成物は、経口処方を含み、ここで経口処方は、環状オリゴ糖に組み入れられた、プレコナリルの粒子を含む。
【0035】
本明細書において、それを必要とする個体において敗血症を処置するための方法および組成物が開示され、プレコナリルを含む組成物は、経口処方を含み、ここで経口処方は、水中油型マイクロエマルションを含む。
【0036】
本明細書において、それを必要とする個体において敗血症を処置するための方法および組成物が開示され、プレコナリルを含む組成物は、経口処方を含み、ここで経口処方は、消化され得るオイルと組み合わされたプレコナリルの噴霧乾燥されたエマルションを含む。
【0037】
本明細書において、それを必要とする個体において敗血症を処置するための方法および組成物が開示され、該方法は、持続放出性組成物中に組み込まれているプレコナリルを含む組成物を個体に投与する工程を含む。
【0038】
本明細書において、それを必要とする個体において敗血症を処置するための方法および組成物が開示され、該方法は、プレコナリルを含む組成物であって、薬学的に許容可能な担体をさらに含む組成物を個体に投与する工程を含む。
【0039】
本明細書において、それを必要とする個体において敗血症を処置するための方法および組成物が開示され、該方法は、プレコナリルを含む組成物を、危険な状態にあると考えられる個体に投与する工程を含む。ある態様において、危険な状態にある個体とは、幼児、65歳以上の個人、易感染性の状態にある個人、または移植手術を受ける個人を含む。
【0040】
本明細書に組み入れられ、そしてその一部を構成する添付の図面は、いくつかの態様を表しており、そして、本明細書の記載とともに本発明の原則を説明するために供される。
【図面の簡単な説明】
【0041】
図1】新生児エンテロウイルス感染のための抗ウイルス治療としてのプレコナリルの有効性を調べるための、研究(実施例1)に登録された個体の母親および新生児の特徴を示す表である。
図1a】新生児エンテロウイルス感染のための抗ウイルス治療としてのプレコナリルの有効性を調べるための、研究(実施例1)に登録された個体の母親および新生児の特徴を示す表である。
図2】エンテロウイルスが確認された個体におけるウイルス培養結果を示す図である。
図3】任意の部位からの培養物が陽性であった処置群のうちの19人の被験者およびプラセボ群のうちの7人の被験者間での、全ての解剖学的部位(中咽頭、直腸、尿、および血清)について培養物が陰性となるまでの時間を示す図である。被験者は、その日にサンプリングされた全ての部位からの培養物アッセイが陰性であった時に初めて、その特定の検査日に培養陰性であると見なされた。
【発明を実施するための形態】
【0042】
本発明のさらなる利点は、部分的には後述の記載において明らかであり、および、部分的には記載から明白であるかまたは本発明の実施によって認識され得るであろう。本発明の利点は、添付のクレーム中に具体的に記載されている要素および組合せによって認識され、および獲得されるであろう。前述の一般的な記載および後述の詳細な説明の両方はともに、典型的および説明的なものに過ぎず、そして、発明をクレームどおりに制限するものではないことが理解されるべきである。
【0043】
敗血症は、生命を危うくする可能性のある、感染症の合併症であり、感染に対する身体の非常に強い免疫応答の結果として起こる。その結果としての炎症が、複数の臓器系に損傷を及ぼし得る連続的な変化を誘引し得、それらを機能不全に陥らせる。未処置のまま放置されたり、または進行を許してしまうと、敗血症は、死をもたらすかもしれない敗血症性ショックを患者にもたらし得る。敗血症は誰にでも起こり得るが、高齢者または免疫システムが弱っている者において最も多く、かつ最も脅威となる。敗血症はまた、新生児に対しても懸念される。すなわち、典型的には生後90日までの新生児に起こる新生児敗血症性血液感染症である。
【0044】
敗血症の発生率は米国において増加傾向にある。この増加をもたらしている原因としては、例えば、高齢化する人口(アメリカ人はより長生きとなり、これは最もリスクの高い年齢集団、65歳より高齢である人口の階層を増大させている)、薬剤耐性バクテリア(多くの種類のバクテリアがかつてそれらを殺菌していた抗生物質の効果に対して抵抗性となり、これらの抗生物質耐性菌がしばしば敗血症を誘引する感染の根本的な原因となる)、衰えた免疫系(より多くのアメリカ人が、HIV、がんの治療または移植のための薬剤によって起きる弱まった免疫システムで生きている)が挙げられる。
【0045】
コクサッキーウイルスAおよびBによって構成されるポリオウイルスではないエンテロウイルス(EVs)、エコーウイルス、およびより新しい、番号付けられているEVsは、ストレプトコッカス アガラクチア(Streptococcus agalactiae)、単純ヘルペスウイルス(HSV)によって起きる病気および症候性サイトメガウイルス感染の発生率とほぼ同じかまたはそれらを超える発生率をもつ敗血症、新生児の病気および新生児敗血症などの数多くの疾患の重要な原因である。エンテロウイルスは、しばしば胸膜痛、手足口病、ヘルパンギーナに関連しており、および急性灰白髄炎はほぼエンテロウイルスによって起きる、他の障害(例えば無菌性髄膜炎、心筋心膜炎など)は、エンテロウイルスまたは他の生物によって起こるかもしれない。
【0046】
感染した新生児のある集団は、肝炎、凝固障害、心筋炎、間質性肺炎、および/または髄膜脳炎によって顕在化される重篤な疾患を発症する。生まれてから初めの数日で発病する疾患をもつ幼児、血清型特異的な経胎盤性で獲得される中和抗体を有していない幼児、および未熟児である新生児は、重篤な病気の高いリスクにある。凝固障害および心筋炎を伴う肝炎は、それぞれ、24~83%の高さである死亡率、および30~50%の高さである死亡率と関連している。持続性の肝機能および心機能の障害ならびに神経発達不全を含む長期の病的状態が生存者において起こり得る(1~5)。
【0047】
現在までに、新生児EV感染のための抗ウイルス療法は利用可能ではなかった。治療の中枢は、サポート療法であって、これは、重篤な感染のための集中的な心肺および血液製剤でのサポートを含む。小規模な研究は、免疫グロブリン静注(IVIG)の潜在的な効果を提案しているが、しかしながら、その有効性はまだ証明されていない(6)。
【0048】
プレコナリル(3-{3,5-ジメチル-4-[3-(3-メチルイソオキサゾール-5-イル)プロポキシ]フェニル}-5-(トリフルオロメチル)-1,2,4-オキサジアゾール)は、ピコルナウイルスによって起きる感染を処置するためにデザインされた抗ウイルス剤の最初の新規種類のものを構成していた。プレコナリルは、薬剤/ウイルス複合体の原子分解による構造、構造活性相関の分析、肝ミクロソームにおける代謝安定性のためのスクリーニング、および広範囲にわたる非臨床的安全性試験をもとに論理的にデザインされた。プレコナリルは、経口剤形(ViroPharma)の臨床試験のあいだに示されたように、ヒト呼吸器に関連するピコルナウイルスに対して広範な活性を示した。しかしながら、この薬剤の200~400mgの用量レベルでの経口投与は、全身性の暴露をもたらし、そしてCYP3Aの誘導を含む副作用を引き起こし、これはこれらに限定される訳ではないが例えば、テオフィリンの定常状態血漿濃度における上昇、および経口避妊薬を使用している女性における月経不順の発生の増加などを含む有害な合併症をもたらした。
【0049】
現在までに、プレコナリルのデリバリーに問題が多いことがまた証明されている。その当初の形状において、鼻腔内のチキソトロピック製剤(ViroPharma IND Report, 2004)を用いたプレコナリルのデリバリーは、一日当たり12mg(鼻腔内スプレー)が、重篤な全身性の暴露なしに、400mgの経口製剤とほぼ同様の臨床的/抗ウイルス性効果を生み出すかもしれないことが示された。チキソトロピック製剤は攪拌によって流体となるが、せん断がシステムに適用されない場合、製剤の粘性が増大し、通例の薬学的使用に供され得ない。残念ながら、プレコナリルの鼻腔内デリバリーの開発の成功を制限するいくつかの課題が存在する。最も重要なことは、プレコナリルは実質的に水に不溶であり(水中での溶解度は25℃で20ng/mL未満)、そしてそのため、ウイルスが存在している関連するバイオ空間中では低い平衡濃度および遅い拡散速度の両方しか有さない。前頭鼻甲介および咽頭扁桃腺における薬剤の滞留時間は、漏出および粘膜毛様体によるクリアランスにより鼻腔内スプレーでは比較的短く、一方詰まった鼻孔または鼻漏のある鼻へのスプレーは吸収をさらに妨げ、そしてくしゃみがまた、薬剤は排出してしまうかもしれない。上記の制限の結果、その治療上の可能性にも関わらず、プレコナリルの効果的なデリバリーは現在までまだ把握されていない。
【0050】
本発明の発明者らは、本明細書において、プレコナリルの当初の処方に関連する課題(望ましくない全身性の暴露、有害な副作用、不十分なデリバリーなど)を、粒子デザイン、処方およびデリバリーを理想化する薬剤デザイン方法を開発しそして実行することによって解決した。ある態様において、発明者らは、デリバリーされる粒子のサイズ(およそ1~50、5~40、10~35、および30ミクロンより大きい、であるサブミクロン範囲のプレコナリル粒子の潜在的には二または三峰性分配)によって、または、敗血症が起きる最も高い可能性をもつ感染箇所である標的エリアへのデリバリーのための新規なデリバリー装置の使用によって、制御されるプレコナリルの部位特異的デリバリーを可能にした。本発明は、顕著に減少されたプレコナリル粒子のサイズを含む、向上された治療学的活性に有利なドラッグデリバリーを開示し、ここで、90%の粒子は、1~100ミクロン、1~50ミクロン、1~10ミクロン、または1ミクロン未満であって増大された溶解特性、向上された治療活性および低下された薬剤用量を有するナノ懸濁液を構成しているが、これらの粒子の無差別なデリバリーは防ぐような様式で製剤されている。より具体的には、本明細書において、このような懸濁液が、全身性の副作用の低減のために他のデリバリー方法(例えばマイクロ微粒子デリバリーなど)による治療的応答と同じ程度の応答を達成するために必要であるであろうレベルよりもより低い用量レベルを可能にすることが発見された。
【0051】
本明細書において、それを必要とする個体において敗血症を処置するための方法が開示され、該方法は、プレコナリルを含む組成物を個体に投与する工程を含む。ある態様において、敗血症はエンテロウイルスによって起こされ、他の態様において、敗血症は新生児敗血症である。個体における敗血症は、感染、無菌性髄膜炎、骨髄移植、エンテロウイルス性心筋炎、慢性のエンテロウイルス髄膜脳炎、無ガンマグロブリン血症または低ガンマグロブリン血症(CEMA)を患っている個体に関連しているかもしれない。関連する症状としては、これらに限定される訳ではないが例えば、体温上昇(例えば、99Fより高い、100F、101Fまたは97Fより低い、96.8F,96Fなど)、心拍数上昇(例えば、一分当たり80~95の拍動数より早い)、尿量の減少、精神状態の急激な変化、血小板数の減少、呼吸困難、心臓の拍動機能の異常、腹痛、低血圧などが挙げられる。これらの測定は当該技術分野における当業者にとって公知なものである。いくつかの態様において、敗血症の症状としては、うっ血性心不全、慢性心筋炎または拡張型心筋症を含む。
【0052】
本明細書において、それを必要とする個体において敗血症を処置するための方法が開示され、該方法は、プレコナリルを含む組成物を個体に投与する工程であって、プレコナリルが経口投与、経皮投与、吸入による投与、鼻腔内投与、局所投与、膣内投与、点眼、耳内投与、脳内投与、経直腸投与、経舌下投与、口腔内投与、および非経口投与、注射による投与、静脈内投与、動脈内投与、筋肉内投与、または心臓内皮下投与を介して投与される工程を含む。
【0053】
ある態様において、プレコナリルを含む組成物は、薬学的に許容可能なオイル、薬学的に許容可能なエステル混合物、および/またはそれらの組合せを含むプレコナリルの経口処方を含む。
【0054】
ある態様において、プレコナリルを含む組成物は、プレコナリルのナノエマルションを含むプレコナリルの経口処方を含み、そして、ここでプレコナリルの粒子サイズとしては、50~500nm、50~400nm、50~300nm、100~200nmまたは100nmが含まれる。追加の態様において、組成物はさらに、薬学的に許容可能な界面活性剤を含む。
【0055】
本明細書において、それを必要とする個体において敗血症を処置するための方法が開示され、該方法は、高分子リン脂質ミセルに組み込まれているプレコナリルを含む組成物を個体に投与する工程を含む。いくつかの態様において、高分子リン脂質ミセルは、PEG、疎水性ジアシルリン脂質と共役したPEG、ホスファチジルコリン、または卵ホスファチジルコリンを含む。高分子リン脂質ミセルの粒子の大きさとしては、5~100nm、5~80nm、10~50nmまたは10nmが含まれる。
【0056】
本明細書において、それを必要とする個体において敗血症を処置するための方法が開示され、該方法は、プレコナリルを含む組成物を個体に投与する工程を含み、ここでプレコナリルは経口処方を含み、そして経口処方は、任意には担体粒子と組み合わされた、プレコナリルのコロイド粒子を含む。いくつかの態様において、担体粒子は、シリカ粒子、PEG、またはヒドロキシメチルプロピルメチルセルロースを含む。ある態様において、本明細書において記載されるプレコナリルの経口処方は、長期間にわたって個体を処置するために使用され得、抗ウイルス剤または抗ウイルス剤および薬学的に許容可能なその塩の組み合わせを含み、ここで処方は、水性環境への暴露にともなって抗ウイルス剤または複数の抗ウイルス剤をコロイド粒子として遊離して、向上された拡散速度および生物学的利用能を結果としてもたらす固体分散物を含む。ある態様において、分散物は、薬剤および担体を溶融状態まで加熱し、そして冷却することによって再固化させることによって、または、成分を適切な溶媒系に溶解させそして続いて溶媒を蒸発乾固させることによって作製され得る。
【0057】
本明細書において、それを必要とする個体において敗血症を処置するための方法が開示され、該方法は、プレコナリルを含む組成物を個体に投与する工程を含み、ここでプレコナリルは経口処方を含み、そして経口処方は、環状オリゴ糖中に組み入れられたプレコナリルの粒子を含む。環状オリゴ糖としては、2-ヒドロキシプロピル-β-シクロデキストリン、メチル-β-シクロデキストリン、スルホブチル-β-シクロデキストリンが含まれ得る。ある態様において、本明細書において記載される、長期間にわたって個体を処置するための経口処方は、プレコナリルまたは抗ウイルス剤および薬学的に許容可能なその塩の組み合わせを含み、ここで処方は、抗ウイルス剤(複数の抗ウイルス剤)をその疎水性キャビティー内部に組み入れるために、分子封入剤として環状オリゴ糖を使用する。
【0058】
本明細書において、それを必要とする個体において敗血症を処置するための方法が開示され、該方法は、プレコナリルを含む組成物を個体に投与する工程を含み、ここでプレコナリルは経口処方を含み、ここで経口処方は、水中油型マイクロエマルションを含む。ある態様において、水中油型マイクロエマルションにおけるオイルとしては、中鎖脂肪酸トリグリセリド、水素化された薬学的に許容可能なオイル、エチルアルコールが含まれる。いくつかの態様において、マイクロエマルションは、自己マイクロ乳化(self-microemulsifying)する処方である。いくつかの態様において、マイクロエマルションの粒子サイズは、1~100nm、5~90nm、5~50nm、または8~12nmである。
【0059】
本明細書において、それを必要とする個体において敗血症を処置するための方法が開示され、該方法は、プレコナリルを含む組成物を個体に投与する工程を含み、ここでプレコナリルは経口処方を含み、ここで経口処方は、消化され得るオイルと組み合わされたプレコナリルの噴霧乾燥されたエマルションを含む。ある態様において、消化可能なオイルとしては、大豆油、ごま油、綿実油、サフラワー油、トコフェノールを含むオイル、および/またはトコトリエノールを含むオイルが含まれる。別の態様において、組成物はレシチンをさらに含む。
【0060】
本明細書において、それを必要とする個体において敗血症を処置するための方法が開示され、該方法は、プレコナリルを含む組成物を個体に投与する工程を含み、ここでプレコナリルは持続放出性組成物中に組み込まれる。ある態様において、組成物は、生物分解性のゲル中に組み込まれる。別の態様において、生物分解性のゲルは生物分解性のサーマルゲルである。ある態様において、生物分解性のゲルは、乳酸、グリコール酸、PEG1000または1450を含む。ある態様において、処置は生物分解性のサーマルゲル中に、プレコナリルおよび薬学的に許容可能なその塩を組み入れることによって持続され得、ここでゲルとしては当該技術分野における当業者にとって公知である材料、例えば乳酸、グリコール酸、PEG1000または1450など、が使用される。ひとたび注入されたサーマルゲルは1~6週間のあいだ治療を提供する徐放性製剤となり、そして、溶解度を200~1000倍上昇させる。
【0061】
本明細書において、それを必要とする個体において敗血症を処置するための方法が開示され、該方法は、プレコナリルを含む組成物であって、薬学的に許容可能な担体をさらに含む組成物を個体に投与する工程を含む。ある態様において、プレコナリルを含む組成物は、1~600mg、1~500mg、1~300mg、5~200mg、10~100mg、10~40mgのプレコナリルを含む。
【0062】
本明細書において、それを必要とする個体において敗血症を処置するための方法が開示され、該方法は、プレコナリルを含む組成物を、危険な状態にあると考えられる個体に投与する工程を含む。ある態様において、危険な状態にある個体としては、幼児、65歳以上の個人、易感染性の状態にある個人、または移植手術を受ける個人が含まれる。ある態様において、危険な状態にある個体はライノウイルス肺炎を患っている。
【0063】
本明細書において、プレコナリルの改良された処方を含む組成物が開示される。ある態様において、組成物は、薬学的に許容可能なオイル、薬学的に許容可能なエステル混合物、飽和脂肪酸、およびそれらの組合せを含むプレコナリルの非経口処方を含む。ある態様において、処方は、プレコナリルのナノエマルションを含み、そして、ここでプレコナリルの粒子サイズとしては、50~500nm、50~400nm、50~300nm、100~200nmまたは100nmが含まれる。別の態様において、組成物はさらに、薬学的に許容可能な界面活性剤を含む。
【0064】
本明細書において、プレコナリルの改良された処方を含む組成物が開示され、ここでプレコナリルを含む組成物は、高分子リン脂質ミセルに組み込まれている。ある態様において、高分子リン脂質ミセルとしては、PEG、疎水性ジアシルリン脂質と共役したPEG、ホスファチジルコリン、または卵ホスファチジルコリンなどが含まれる。別の態様において、高分子リン脂質ミセルの粒子の大きさとしては、5~100nm、5~80nm、10~50nmまたは10nmが含まれる。
【0065】
本明細書において、プレコナリルの改良された処方を含む組成物が開示され、ここでプレコナリルを含む組成物は、経口処方を含み、そして経口処方は、任意には担体粒子と組み合わされたプレコナリルのコロイド粒子を含む。ある態様において、担体粒子としては、シリカ粒子、PEG、またはヒドロキシメチルプロピルメチルセルロースが含まれる。
【0066】
本明細書において、プレコナリルの改良された処方を含む組成物が開示され、ここでプレコナリルを含む組成物は、環状オリゴ糖中に組み入れられたプレコナリルの粒子を含む。ある態様において、環状オリゴ糖としては、2-ヒドロキシプロピル-β-シクロデキストリン、メチル-β-シクロデキストリン、スルホブチル-β-シクロデキストリンが含まれる。
【0067】
本明細書において、プレコナリルの改良された処方を含む組成物が開示され、ここでプレコナリルを含む組成物は、水中油型マイクロエマルションを含む。ある態様において、水中油型マイクロエマルションにおけるオイルとしては、中鎖脂肪酸トリグリセリド、水素化された薬学的に許容可能なオイル、エチルアルコールが含まれる。別の態様において、マイクロエマルションは、自己マイクロ乳化する処方である。ある態様において、マイクロエマルションの粒子サイズは、1~100nm、5~90nm、5~50nm、または8~12nmである。
【0068】
本明細書において、プレコナリルの改良された処方を含む組成物が開示され、ここでプレコナリルを含む組成物は、経口処方を含み、ここで経口処方は、消化され得るオイルと組み合わされたプレコナリルの噴霧乾燥されたエマルションを含む。ある態様において、消化可能なオイルとしては、大豆油、ごま油、綿実油、サフラワー油、トコフェノールを含むオイル、および/またはトコトリエノールを含むオイルを含む。追加の態様において、組成物はレシチンをさらに含む。
【0069】
本明細書において、プレコナリルの改良された処方を含む組成物が開示され、ここでプレコナリルを含む組成物は、持続放出性組成物中に組み込まれる。ある態様において、プレコナリルを含む組成物は、生物分解性のゲル中に組み込まれる。ある態様において、生物分解性のゲルとしては、乳酸、グリコール酸、PEG1000または1450が含まれる。
【0070】
本明細書において、プレコナリルの改良された処方を含む組成物が開示され、ここでプレコナリルを含む組成物は、薬学的に許容可能な担体をさらに含む。いくつかの態様において、プレコナリルを含む組成物は、1用量あたり1~600mg、1~500mg、1~300mg、5~200mg、10~100mg、10~40mgのプレコナリルを含み、そして、当該技術分野における当業者にとって公知である方法およびプロトコールにしたがって、例えば所定の期間または敗血症の症状が緩和されるまで一日に一回、二回、三回、などで投与される。本明細書において開示される組成物は、プレコナリルの薬学的な塩をさらに含む。加えて、本明細書において開示される組成物は、抗ウイルス剤のCYP誘導を低減する。
【0071】
本明細書において、プレコナリルの改良された処方を含む組成物が開示され、ここでプレコナリルを含む組成物は、これらに限定される訳ではないが、例えば、アバカビル(Abacavir)、アシクロビル(Aciclovir)、アシクロビル(Acyclovir)、アデホビル(Adefovir)、アマンタジン(Amantadine)、アンプレナビル(Aprenavir)、アンプリゲン(Ampligen)、アルビドール(Arbidol)、アタザナビル(Atazanavir)、アトリプラ(Atripla)、バラビル(Balavir)、ボセプレビル(Boceprevirertet)、シドフォビル(cidofovir)、コンビビル(Combivir)、ドルテグラビル(Dolutegravir)、ダルナビル(Darunavir)、デラビルジン(Dleavirdine)、ジダノシン(Didanosine)、ドコサノール(Docosanol)、エドズジン(Edozudine)、エファビレンツ(Efavirenz)、エムトリシタビン(Emtricitabine)、エンフビルチド(Efuvirtide)、エンテカビル(Entecavir)、エコリバー(Ecoliver)、ファムシクロビル(Famciclovir)、ホミビルセン(Fomivirsen)、ホスアンプレナビル(Fosamprenavir)、ホスカルネット(Foscarnet)、ホスホネット(Fosfonet)、融合阻害剤(Fusion Inhibitors)、ガンシクロビル(Ganciclovir)、イバシタビン(Ibacitabine)、イムノビル(Imunovir)、イドクスウリジン(Idoxuridine)、イミキモド(Imiquimod)、インジナビル(Indinavir)、イノシン(Inosine)、インテグラーゼ阻害剤(Integrase inhibitor)、インターフェロンIII型(Interferon type III)、インターフェロンII型(Interferon type II)、インターフェロンI型(Interferon type I)、インターフェロン(Interferon)、ラミブジン(Lamivudine)、ロピナビル(Lopinavir)、ロビリド(Loviride)、マラビロク(Maraviroc)、モロキシジン(Moroxydine)、メチサゾン(Methisazone)、ネルフィナビル(Nelfinavir)、ネビラピン(Nevirapine)、ネキサビル(Nexavir)、ヌクレオシドアナログ(Nucleoside analogues)、オセルタミビル(Oseltamivir)(タミフル(登録商標))、ペグインターフェロンα-2a(Peginterferon alfa-2a)、ペンシクロビル(Penciclovir)、ペラミビル(Peramivir)、ポドフィロトキシン(Podophyllotoxin)、プロテアーゼ阻害剤(Protease inhibitors)、ラルテグラビル(Raltegravir)、逆転写酵素阻害剤(Reverse transcriptase inhibitor)、リバビリン(Ribavirin)、リマンタジン(Rimantadine)、リトナビル(Ritonavir)、ピラミジン(Pyramidine)、サキナビル(Saquinavir)、ソホスブビル(Sofosbuvir)、スタブジン(Stavudine)、相乗的エンハンサー(Synergistic enhancer)(抗レトロウイルス剤)、テラプレビル(Telaprevir)、テノホビル(Tenofovir)、テノホビルジソプロキシル(Tenofovir disoproxil)、チプラナビル(Tipranavir)、トリフルリジン(Trifluridine)、トリジビル(Trizivir)、トロマンタジン(Tromantadine)、ツルバダ(Truvada)、トラポルベッド(traporved)、バラシクロビル(Valaciclovir)(バルトレックス(登録商標))、バルガンシクロビル(Valganciclovir)、ビクリビロク(Vicriviroc)、ビダラビン(Vidarabine)、ビラミジン(Viramidine)、ザルシタビン(Zalcitabine)、ザナミビル(Zanamivir)(リレンザ(登録商標))、またはジドブジン(Zidovudine)などを含む一またはそれ以上の追加の抗ウイルス剤をさらに含む。
【0072】
本明細書においてまた、敗血症の処置のための新規の治療上のアプローチの探求の一部として、例えばネコ、イヌ、ウサギ、サル、ラット、およびマウスなどの実験動物における評価のためのin vitroおよびin vivo試験系の開発および規格化における調査および/または研究ツールとしての開示された組成物の使用が開示される。
【0073】
定義
他に明確に記載されていない限り、本明細書において規定される方法または態様が、その工程が特定の順序で行われることを必要としていると解釈されることは全く意図されていない。したがって、方法のクレームが、工程は特定の順序に制限されるべきであるとクレームまたは発明の詳細な説明中で特に言及していない場合、いかなる点においても順序が暗示することは全く意図されていない。これは、例えば工程または操作フローの配置に関する論理的な事項、文法上の構成または区切りから導かれる単純な意味、または明細書中に記載される態様の数もしくは種類などを含む他の可能な明示していない解釈の基礎についても同様である。
【0074】
本明細書および添付のクレームにおいて使用されているように、単数形である「一つの(a)」、「一つの(an)」、および「その(the)」は、文章が明確にそうではないことを規定していない限り複数の提示を含む。
【0075】
本明細書において使用される用語「または(or)」は、特定のリストのうちの任意の一つを意味しており、そして、そのリストの一部の任意の組み合わせを含む。
【0076】
本明細書において範囲は「約(about)」一つの特定の値から、および/または「約」別の特定の値までとして表され得る。このような範囲が記載されている場合、さらなる態様は、ある特定の値からおよび/または他の特定の値までを含む。同様に、数値が先行詞「約(about)」の使用によって、近似値として示されている場合、特定の値がさらなる態様において形成されることが理解されるべきである。それぞれの範囲のエンドポイントは他のエンドポイントに関連して、および他のエンドポイントとは独立しての両方の場合においてともに重要であることがさらに理解されるであろう。本明細書には多くの値が開示されており、そして、そのそれぞれの値がまた本明細書において、その値に加えて「約」特定の値として開示されていることがまた理解されるべきである。例えば、値「10」が開示されている場合、「約10」もまた開示されている。2つの個々のユニットの間のそれぞれのユニットがまた開示されていることもまた理解されるべきである。例えば、10および15が開示されている場合、11、12、13、および14もまた開示されている。
【0077】
組成物中の特定の要素または成分の重量部に関する明細書および最後のクレーム中の言及は、要素または成分と組成物または重量部が記載されている記載中の他の要素または成分とのあいだの重量関係を示している。したがって、2重量部の成分Xおよび5重量部の成分Yを含む化合物においては、XおよびYは重量比2:5で存在しており、そして、追加の成分が化合物中に含まれているか否かに関係なくそのような比で含まれている。
【0078】
成分の重量パーセント(wt.%)は、そうではないと特に言及されていない限り、成分が含まれている処方または組成物の全重量を基礎としている。
【0079】
本明細書において使用されるように、用語「任意(optional)」または「任意には(optionally)」は、後述される事象または状況が起こり得るまたは起こり得ないこと、そして、記載がその事象または状況が起こる場合および起こらない場合を含んでいることを意味している。
【0080】
本明細書において使用されるように、用語「個体(subject)」は、投与の対象、例えば動物などを意味する。したがって、本明細書において開示されている方法における個体は、例えば哺乳類、魚類、鳥類、爬虫類、または両生類などの脊椎動物であり得る。代替的に、本明細書で開示されている方法における個体は、ヒト、ヒト以外の霊長目の動物、ウマ、ブタ、ウサギ、イヌ、ヒツジ、ヤギ、ウシ、ネコ、モルモット、また齧歯動物であり得る。用語は特定の年齢または性別を意味していない。したがって、大人および新生児個体、ならびに胎児が、オスまたはメスのどちらであっても、含まれていることが意図される。ある態様において、個体は哺乳類である。患者とは、疾患または障害を患っている個体を意味する。用語「患者(patient)」は、ヒトおよび動物の個体を含む。開示されている方法のいくつかの態様において、個体は、投与工程に先立って、例えば、心臓虚血/再灌流事象などの心機能不全に関する処置を必要とすることが診断されていた。
【0081】
本明細書において使用されているように、用語「処置(treatment)」とは、疾患、病的状態または障害、例えば負傷した心筋などを治療する、改善する、安定させる、または予防する意図をもった個体または患者の医学的管理を意味する。この用語は、積極的な処置、すなわち、疾患、病的状態または障害の改善に特に向けられた処置、および、原因処置、すなわち、疾患、病的状態または障害に関連した原因の除去に向けられる処置も含む。加えて、この用語は、緩和処置、すなわち、疾患、病的状態または障害の治療よりもむしろ症状の緩和のためにデザインされている処置、予防処置、すなわち、関連する疾患、病的状態または障害の進行を最小とするまたは部分的にもしくは完全に阻害することを目的とする処置、および、支持処置、すなわち、関連する疾患、病的状態または障害の改善に向けた補足の別の特定の療法に使用される処置を含む。様々な態様において、用語は、哺乳類(例えばヒト)を含む個体の任意の処置を包含し、そして、(i)疾患に罹患し得るがまだ罹患しているとは診断されていない個体に疾患が起こること予防する、(ii)疾患を阻害する、すなわちその進行を停止させる、または(iii)疾患を緩和する、すなわち、疾患の退縮を起こす、ことを含む。ある態様において、疾患、病的状態または障害は、心不全、例えば心臓虚血/再灌流事象などである。
【0082】
本明細書において使用されるように、用語「予防(prevent)または「予防すること(preventing)」は、特に前もっての行動により、あることが起こることを妨げる(precluding)、防ぐ(averting)、予防する(obviating)、未然に防ぐ(forestalling)、止める(stopping)、邪魔する(hindering)ことを意味する。低減(reduce)、阻害(inhibit)または予防(prevent)が本明細書で使用されている場合、そうではないと特に示されていない限り、他の2つの単語の使用もまた明確に開示されていることが理解されるべきである。
【0083】
本明細書において使用されるように、用語「診断される(diagnosed)」とは、技術をもつ人間、例えば医師などによって身体的検査に付され、そして、本明細書中に開示されている組成物または方法によって診断され得るまたは処置され得る症状をもっていることが判明したことを意味している。例えば、「敗血症と診断された(diagnosed with sepsis)」とは、技術をもつ人間、例えば医師などによって身体的検査に付され、そして、敗血症を緩和するまたは改善する化合物または組成物によって診断されまたは処置され得る症状をもっていると判明したことを意味している。このような診断は、本明細書中で記載されるように例えば敗血症などの障害に関連し得る。
【0084】
本明細書において使用されるように、「障害の治療が必要であると確認される(identified to be in need of treatment for a disorder)」などのフレーズは、障害の処置の必要性に応じた個体の選択を意味する。例えば、個体は、技術をもつ人間によるより初期の診断を基に障害(例えば敗血症または新生児敗血症に関連した障害など)の治療の必要性があると確認され、そしてその後障害のための処置に付され得る。確認は、ある態様において、診断を下す人間とは異なる人間によって行われ得ると考えられる。また、さらなる態様において、投与は、続いて投与を実行した人によって行われ得ることが考えられる。
【0085】
本明細書において使用されるように、用語「投与する(administering)」および「投与(administration)」は、個体に薬学的な調製物を提供するための任意の方法を意味する。そのような方法は当該技術分野における当業者にとって公知であり、これらに限定される訳ではないが例えば、心臓内投与、経口投与、経皮投与、吸入による投与、鼻腔内投与、局所投与、膣内投与、点眼、耳内投与、脳内投与、経直腸投与、経舌下投与、口腔内投与、および、注射可能な、例えば、静脈内投与、動脈内投与、筋肉内投与、および皮下投与などの非経口投与などが挙げられる。投与は、持続性であってもよく、また断続的であってもよい。様々な態様において、調製物は、薬学的に投与され得る;すなわち、現存する疾患または症状を処置するために投与される。さらなる様々な態様において、調製物は、予防的に投与され得る;すなわち、疾患または症状の予防のために投与される。
【0086】
本明細書において使用される用語「接触させる(contacting)」とは、開示された化合物および細胞、標的受容体、または他の生物学的物体を、化合物が標的(例えば受容体、転写因子、細胞など)の活性に、直接的に(すなわち、標的それ自体と相互作用することにより)または間接的に(すなわち、別の分子、補因子、または標的の活性が依存しているタンパク質などと相互作用することにより)、影響し得るような様式で、一緒にすることを意味する。
【0087】
本明細書において使用されるように、用語「決定する(determining)」とは、エンテロウイルスに関連する例えばヌクレオチドまたは転写物またはポリペプチドなどの発現および/または活性レベルの量(quantity)または量(amount)または変化を測定または確認することを意味し得る。例えば、本明細書において使用されるようなサンプル中の開示されているエンテロウイルスの転写物またはポリペプチドの量を決定することは、サンプル中の転写物またはポリペプチドのなんらかの定量可能な値を測定または確認するために当業者が取り得る工程を意味し得る。技術者であれば、開示されているヌクレオチド、転写物、ポリペプチドなどの量を測定するための方法に精通している。
【0088】
本明細書中で使用されるように、用語「レベル(level)」とは、例えば個体からのサンプルなどのサンプル中の標的分子の量を意味する。分子の量は、当該技術分野において公知である任意の方法によって決定され得、そして、ある程度、分子の種類(すなわち、遺伝子、mRNA、cDNA、タンパク質、酵素など)に依存するであろう。技術者であれば、ヌクレオチド(例えば遺伝子、cDNA、mRNAなど)およびタンパク質、ポリペプチド、酵素などのための定量方法について精通している。サンプル中の分子の量またはレベルは絶対値として測定される必要はなく、相対値として決定され得る(例えば、対照または偽または未処理のサンプルと比較する場合など)ことが理解されるべきである。
【0089】
本明細書において使用されるように、「有効量(effective amount)」および「有効である量(amount effective)」とは、所望の結果を達成するまたは望ましくない症状に効果を及ぼすのに充分な量を意味する。例えば、「治療上有効な量(therapeutically effective amount)」とは、所望の治療上の結果を達成するまたは望ましくない症状に効果を及ぼすのに充分であるが、有害な副作用を引き起こすには一般的に不十分である量を意味する。任意の特定の患者にとっての特定の治療上の有効用量レベルは、処置される障害および障害の深刻さ;適用される特定の組成物;患者の年齢、体重、精神健康、性別、食事;投与の時間;投与の経路;適用される特定の化合物の排出速度;処置の期間;適応される特定の化合物組み合わせて使用されるまたは同時に使用される薬剤などの様々な因子ならびに医薬分野において公知の因子などに依存するであろう。
【0090】
「調節(modulate)」によっては、増加または減少によって変化することが意味される。本明細書において使用されるように、「調節物(modulator)」とは、遺伝子または例えばペプチドなどの遺伝子産物の発現レベルまたは活性レベルを増大または減少させることのできる組成物を意味し得る。発現または活性における調節は、完全である必要はない。例えば、発現または活性は、遺伝子または遺伝子産物の発現または活性が組成物によって調節されていない対照の細胞と比較して、約10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、95%、99%、100%またはこれらの間の任意のパーセンテージで調節され得る。
【0091】
本明細書において使用されるように、「抗ウイルス剤(antiviral agents)」とは例えば、しかしこれらに限られる訳ではないが、当該技術分野における当業者にとって公知の抗ウイルス剤、例えば、アバカビル(Abacavir)、アシクロビル(Aciclovir)、アシクロビル(Acyclovir)、アデホビル(Adefovir)、アマンタジン(Amantadine)、アンプレナビル(Aprenavir)、アンプリゲン(Ampligen)、アルビドール(Arbidol)、アタザナビル(Atazanavir)、アトリプラ(Atripla)、バラビル(Balavir)、ボセプレビル(Boceprevirertet)、シドフォビル(cidofovir)、コンビビル(Combivir)、ドルテグラビル(Dolutegravir)、ダルナビル(Darunavir)、デラビルジン(Dleavirdine)、ジダノシン(Didanosine)、ドコサノール(Docosanol)、エドズジン(Edozudine)、エファビレンツ(Efavirenz)、エムトリシタビン(Emtricitabine)、エンフビルチド(Efuvirtide)、エンテカビル(Entecavir)、エコリバー(Ecoliver)、ファムシクロビル(Famciclovir)、ホミビルセン(Fomivirsen)、ホスアンプレナビル(Fosamprenavir)、ホスカルネット(Foscarnet)、ホスホネット(Fosfonet)、融合阻害剤(Fusion Inhibitors)、ガンシクロビル(Ganciclovir)、イバシタビン(Ibacitabine)、イムノビル(Imunovir)、イドクスウリジン(Idoxuridine)、イミキモド(Imiquimod)、インジナビル(Indinavir)、イノシン(Inosine)、インテグラーゼ阻害剤(Integrase inhibitor)、インターフェロンIII型(Interferon type III)、インターフェロンII型(Interferon type II)、インターフェロンI型(Interferon type I)、インターフェロン(Interferon)、ラミブジン(Lamivudine)、ロピナビル(Lopinavir)、ロビリド(Loviride)、マラビロク(Maraviroc)、モロキシジン(Moroxydine)、メチサゾン(Methisazone)、ネルフィナビル(Nelfinavir)、ネビラピン(Nevirapine)、ネキサビル(Nexavir)、ヌクレオシドアナログ(Nucleoside analogues)、オセルタミビル(Oseltamivir)(タミフル(登録商標))、ペグインターフェロンα-2a(Peginterferon alfa-2a)、ペンシクロビル(Penciclovir)、ペラミビル(Peramivir)、ポドフィロトキシン(Podophyllotoxin)、プロテアーゼ阻害剤(Protease inhibitors)(薬理学)、ラルテグラビル(Raltegravir)、逆転写酵素阻害剤(Reverse transcriptase inhibitor)、リバビリン(Ribavirin)、リマンタジン(Rimantadine)、リトナビル(Ritonavir)、ピラミジン(Pyramidine)、サキナビル(Saquinavir)、ソホスブビル(Sofosbuvir)、スタブジン(Stavudine)、相乗的エンハンサー(Synergistic enhancer)(抗レトロウイルス剤)、チャノキ油(tea tree oil)、テラプレビル(Telaprevir)、テノホビル(Tenofovir)、テノホビルジソプロキシル(Tenofovir disoproxil)、チプラナビル(Tipranavir)、トリフルリジン(Trifluridine)、トリジビル(Trizivir)、トロマンタジン(Tromantadine)、ツルバダ(Truvada)、トラポルベッド(traporved)、バラシクロビル(Valaciclovir)(バルトレックス(登録商標))、バルガンシクロビル(Valganciclovir)、ビクリビロク(Vicriviroc)、ビダラビン(Vidarabine)、ビラミジン(Viramidine)、ザルシタビン(Zalcitabine)、ザナミビル(Zanamivir)(リレンザ(登録商標))、およびジドブジン(Zidovudine)を含む。
【0092】
本明細書において使用されるように、「EC50」とは、生物学的プロセスまたはプロセスの要素、例えばタンパク質、サブユニット、オルガネラ、リボ核タンパク質などの50%の増大または活性化のために必要である物質(例えば化合物または薬剤など)の濃度または用量を意味することが意図されている。EC50はまた、さらに本明細書の他の箇所でさらに定義されるように、in vivoでの50%の増大または活性化のために必要である物質の濃度または用量を意味している。代替的には、EC50は、ベースラインと最大の応答とのあいだの中間の応答を引き起こす化合物の濃度または用量を意味し得る。応答は、興味の対象である生物学的応答に好都合かつ適切であるようなin vitroまたはin vivo系において測定され得る。例えば、応答は、培養された内皮細胞を用いたin vitroで、または、単離細胞を用いたex vivoでの器官培養において、測定され得る。代替的には、応答は、例えばマウスおよびラットなどを含む例えば齧歯動物などの適切な研究モデルを用いてin vivoで測定され得る。マウスまたはラットは、例えば敗血症に感受性であるなどの興味の対象である表現型の特徴をもつ近交系であり得る。適切である場合、応答は、疾患プロセスを再現させるために適切に遺伝子または複数の遺伝子が導入されているまたはノックアウトされている、トランスジェニックまたはノックアウトマウスまたはラットにおいて測定され得る。
【0093】
本明細書において使用されるように、「IC50」とは、生物学的プロセスまたはプロセスの要素、例えばタンパク質、サブユニット、オルガネラ、リボ核タンパク質などの50%の阻害または減少のために必要である物質(例えば化合物または薬剤など)の濃度または用量を意味している。IC50はまた、さらに本明細書の他の箇所でさらに定義されるように、in vivoでの50%の阻害または減少のために必要である物質の濃度または用量を意味している。代替的には、IC50はまた、物質の阻害濃度(IC)または阻害用量の最大値の半値(50%)を意味している。応答は、興味の対象である生物学的応答に好都合かつ適切であるようなin vitroまたはin vivo系において測定され得る。例えば、応答は、例えば心筋心膜炎などの障害については、培養された心細胞を用いてin vitroで、または、単離された心細胞(例えば、心筋細胞、血管平滑筋細胞、上皮細胞など)を用いたex vivoでの器官培養系において、測定され得る。代替的には、応答は、例えばマウスおよびラットなどを含む例えば齧歯動物などの適切な研究モデルを用いてin vivoで測定され得る。マウスまたはラットは、例えば敗血症に感受性であるなどの興味の対象である表現型の特徴をもつ近交系であり得る。適切である場合、応答は、疾患プロセスを再現させるために適切に遺伝子または複数の遺伝子が導入されているまたはノックアウトされている、トランスジェニックまたはノックアウトマウスまたはラットにおいて測定され得る。
【0094】
用語「薬学的に許容可能な(pharmaceutically acceptable)」とは、生物学的にまたはそうでなくても望ましくないものではない、すなわち、容認できないレベルの望ましくない生物学的効果または有害な様式での相互作用を引き起こすことのない材料を指す。本明細書において使用されるように、用語「薬学的に許容され得る担体(pharmaceutically acceptable carrier)」とは、無菌の水溶液もしくは非水溶液、分散液、懸濁液、またはエマルション、および使用の直前の無菌の注射可能な溶液または分散液への再構成のための無菌の粉末を意味する。適切な水性または非水性溶液の担体、希釈液、溶媒またはビヒクルの例としては例えば、水、エタノール、ポリオール(例えばグリセロール、プロピレングリコール、ポリエチレングリコールなど)、カルボキシメチルセルロース、およびそれらの適切な混合物、植物油(例えばオリーブオイルなど)および注射可能な例えばオレイン酸エチルなどの有機エステルなどが挙げられる。適切な流動性は、例えば、レシチンなどのコーティング材料の使用によって、分散液の場合には必要とされる粒子サイズの維持によって、および界面活性剤の使用によって維持され得る。これらの組成物はまた、例えば防腐剤、湿潤剤、乳化剤および分散化剤などの補助剤を含んでいてもよい。微生物の作用の予防は、例えば、パラベン、クロロブタノール、フェノール、ソルビン酸などの様々な抗菌および抗真菌剤の含有によって確実なものとされ得る。例えば糖、塩化ナトリウムなどの等張化剤を含むことがまた望ましいかもしれない。注射可能な剤形の遅延性吸収は、例えば吸収を遅延させるモノステアリン酸アルミニウムおよびゼラチンなどの薬剤の包含によって、もたらされ得る。注射可能なデポー剤は、例えばポリラクチド-ポリグリコリド、ポリオルトエステルおよびポリ無水物などの生分解性ポリマー中に薬剤のマイクロカプセル化マトリックスを形成することによって作製され得る。ポリマーに対する薬剤の割合および適用される特定のポリマーの特性に依存して、薬剤遊離の速度が制御され得る。注射可能なデポー製剤はまた、身体の組織に適合性であるリポソームまたはマイクロエマルション中に薬剤を閉じ込めることによって調製される。注射可能な処方は、例えば、バクテリアを捕捉するフィルターを通すろ過によって、または、使用直前に滅菌水もしくは他の滅菌された注射可能な媒体中に溶解され得るもしくは分散され得る滅菌された個体組成物の形状で滅菌薬剤を組み入れることなどによって、滅菌され得る。適切な不活性な担体としては、例えば乳糖などの糖類が挙げられ得る。好ましくは、活性成分の粒子の少なくとも95重量%が、0.01~10μmの範囲にある有効粒子サイズを有している。
【0095】
本発明の組成物を調製するために使用される化合物および本明細書において開示される方法において使用される組成物自身が開示される。これらおよび他の材料は本明細中に記載されており、そして、これらの化合物のそれぞれの様々な個々のおよび集合的な組み合わせおよび置換への具体的な言及が明示的には開示されていないとしても、これらの材料の組み合わせ、部分的集合、相互作用、群などが開示に含まれていること、それぞれが具体的に考慮されており、そして本明細書中に記載されているということが理解されるべきである。例えば、特定の化合物が開示され、および説明されており、そして前記化合物を含む多くの分子へと行われ得る多くの修飾が説明されている場合、化合物の各々の組み合わせおよび置換ならびに、具体的にそうではないことが示されていない限り可能である修飾が明確に考慮に含まれている。したがって、A、BおよびCの種類の分子が開示されており、同様に、D、EおよびFの種類の分子および分子の組み合わせA-Dの例が開示されていた場合、もしそれぞれが個々に列挙されていなくても、それぞれが個々におよび集合的に考慮される、すなわち、組合せ、A-E、A-F、B-D、B-E、B-F、C-D、C-E、およびC-Fが開示されていると考えられる。同様に、これらの任意の部分集合または組合せもまた開示されている。したがって、例えば、A-E、B-FおよびC-Eの部分集合も開示されていると考えられるであろう。この概念は、本出願の全ての態様について適用され、これらに限定される訳ではないが、例えば、本発明の組成物を作製するおよび使用する方法における工程などにも適用される。したがって、実行され得る様々な追加の工程が存在する場合、これらの追加の工程のそれぞれが、本発明の方法の任意の特定の実施態様または実施態様の組み合わせとともに実行され得るということが理解されるべきである。
【0096】
本発明は、以下の本発明の詳細な説明および本明細書中に含まれる実施例を参照することによって、より容易に理解され得るであろう。
【0097】
本明細書において記載される全ての文献は、文献が言及している事項と関連する方法および/または材料を開示および記載するために参考によって本明細書中に組み入れられる。本明細書中で記載される文献は、本願出願日前のその開示のためのみに提供されている。本明細書におけるどの事項も、本発明が先の発明によってそのような文献に先行する権利を有していないということへの承認と解釈されるべきではない。さらに、本明細書中に提供される刊行の日は、実際の刊行日とは異なっているかもしれず、個々の確認が必要であり得る。
【実施例0098】
以下の例は、当該技術分野における当業者に、本明細書中でクレームされる化合物、組成物、物品、装置および/または方法がどのように作製され、および評価されるかに関する完全な開示および記載を提供するために記載されているものであり、そして、純粋に本発明の例示であることを意図するものであり、決して本発明者らが本発明とみなすものの範囲を限定する意図はない。しかしながら、当業者であれば、本発明の開示に照らして、本発明の精神および範囲から外れることなく、多くの変化が、開示されている特定の実施態様に行われ得、そしてその場合でも同様のまたは類似の結果が得られ得ることを理解すべきである。
【0099】
数字に関して(例えば量、温度など)正確を期するための努力がなされているが、いくつかの誤りおよび逸脱が含まれているかもしれない。そうではないことが示されていない限り、部は重量部であり、温度は℃で表されているかまたは周囲温度であり、そして、圧力は大気圧または大気圧周辺である。
【0100】
実施例1 新生児エンテロウイルス感染のための抗ウイルス治療としてのプレコナリルの有効性を調べるための研究のデザインおよび実行
1.研究の個体群
61人の被験者が登録された:43人が無作為に処置群へ、および18人がプラセボ群へと登録された(図1)。これらのうち、43人(70%)、すなわち処置群のうちの31人、およびプラセボ群のうちの12人がEV陽性と確認された。研究は研究試薬の失効により登録数を満たす前に終了した。治療の早期中断およびプロトコールの中断の頻度には、研究群のあいだで違いは見られなかった(それぞれ、9%対28%、p=0.11、および56%対72%、p=0.27);しかしながら、プロトコールの中断に対する理由には違いが見られた(p=0.04):処置群中で43人中10人(23%)の被験者が死亡対プラセボ群中で18人中8人(44%)が死亡、ならびに、処置群中で43人中9人(21%)の被験者が追跡不能例対プラセボ群中で18人中1人(6%)が追跡不能例。EV敗血症(肝炎、凝固障害、および/または心筋炎)が疑われる新生児が1999年6月~2010年12月にかけて19のセンターにおいて登録された。
【0101】
2.研究デザイン
ブロックサイズを無作為に変えた、2:1の治験薬:プラセボ無作為化が用いられた。無作為化のコードは、コーディネイトセンターの生物統計学者のみに利用可能であった。被験者は、初め、40mg/mLのプレコナリルの液体製剤(ViroPharma, Inc.: Exton, PA)の5.0mg/kg/dose、または、組成物と活性な治験薬を含んでいないこと以外全く同一な対応プラセボを受け取った。液体製剤は2002年5月31日に有効期限が切れ、その後処方は、製造者によって40mg/mLの懸濁液へと変えられた。被験者は、プレコナリル懸濁液の8.5mg/kg/dose(プレコナリル液剤の5.0mg/kg/doseと類似の薬剤暴露を提供することが示されている)または対応プラセボを受け取った。プレコナリル処方および対応プラセボの両方が、8時間毎×7日間、1.0mLの母乳または人工乳において経口または経口胃のチューブによって投与され、そしてそうでなければNPOである被験者に与えられた。被験者は、抗生物質、アシクロビル、向心臓薬、およびIVIGを受けることが許可された。登録後にEV感染以外の病気の病因学が実証された被験者においては、治験薬/プラセボが中断された。
【0102】
3.サンプルサイズおよび統計学的分析
およそ67%の登録された被験者がEV感染であると確認されるであろうという期待値に即して、EV疾患であると確認された45人の被験者である標的のサンプルサイズが、
中咽頭から脱落してくるウイルスの5日目における96%~70%の減少を検出するための充分な能力を提供するために選択された。EVが確認された被験者(培養-またはPCR-陽性)は、ウイルス学的および臨床的有効性分析に加えられ、全ての登録された被験者は、安全性試験に加えられ、そして、薬物動態データが得られたプレコナリル受容者(EV感染性かどうかに関わらず)は、薬物動態学的分析に加えられた。生存分析は、全ての登録された群についておよびEVが確認された被験者について行われた。
【0103】
フィッシャーの正確確率検定(Fisher's Exact Test)がカテゴリー因子の比較に使用され、クラスカル・ウォリス(Kruskal-Wallis)検定およびマン・ホイットニー(Mann Whitney)検定が連続因子のために使用され、中央値および範囲が示された。カプラン・マイヤー(Kaplan-Meier)曲線およびログランク(log-rank)統計学が試験群間の培養期間およびPCR陽性および生存率における違いを評価するために使用された。毒性の程度におけるベースラインからの変化および副作用の発生率がカイ二乗(chi-square)試験によって比較された。
【0104】
実施例2 プレコナリルのウイルス学的有効性
処置群のうちの19人の被験者およびプラセボ群のうちの7人の被験者が、処置期間において任意の部位において培養陽性であり、そして、処置群のうちの31人の被験者およびプラセボ群のうちの12人が処置期間において任意の部位においてPCR陽性であった。すべての培養陽性被験者はまた、PCR陽性でもあった。処置群における24人のEVが確認された被験者のうち6人(25%)およびプラセボ群の10人のうちの3人(30%)が1日目において中咽頭からの培養が陽性であり、そして、どの被験者も5日目においては中咽頭から培養可能なウイルスを放出しなかった(図2)。中咽頭の培養物が陰性のままとなる中央値は、処理群およびプラセボ群の両方において3.0日であった。任意の部位からの培養が陽性である被験者のうち、処置群中の者は、プラセボ群中の者よりも全ての部位においてより速く培養陰性となった(傾向差が見られた(p=0.008)):処置群中の培養陽性被験者間での培養陰性までの時間の中央値は、4.0日であり、対して、プラセボ群においては7.0日であった(図3)。類似のパターンが尿においても観察された(それぞれ、培養が陰性のままとなるまでの時間の中央値=4.0日に対し7.0日;p=0.005;図3)が、他の個々の部位では見られなかった。
【0105】
実施例3 プレコナリルの臨床学的有効性
全ての登録された被験者のうち、処置群の43人のうちの10人(23%)およびプラセボ群の18人のうちの8人(44%)が死亡し、2か月以上の累積的な生存は、処置群においてより大きかった(p=0.02)。EV確認された被験者のうち、処置群の31人のうちの7人(23%)およびプラセボ群の12人のうちの5人が死亡し、累積的な生存の傾向は処置群において高い。処置群における累積的な生存は、18か月以上にわたってプラセボ群のものを超え続けた(全ての被験者間でp=0.07、およびEV確認された被験者かんでp=0.23)。
【0106】
1.材料および方法
EV培養および核酸増幅法(PCR)のための標本は、中咽頭、直腸、尿、および血清から1~5、7、10、14日目に得られた。薬学動態的分析のための血漿は、1日目(治験薬投与後2、4および8時間)ならびに3日目および7日目(投与前、および投与後2および4時間)に得た。血液学的および化学的検査が治験1、3、5、7、10および14日目、および尿分析が1および7日目に行われた。持続性の異常は、2、6、12、18、および24か月後における受診で対処された。副作用が各評価のたびに記録され、そして、治験の処置との関係が部位担当医師によって決定された。
【0107】
初期のエンドポイントは、治験薬の開始後5日目の中咽頭からの陽性のウイルス培養をもつ患者の割合であった。二番目のエンドポイントは、中咽頭、直腸、尿、および血清からの培養物陽性の期間;EV疾患または薬剤毒性の消散または進行を反映する臨床検査値における変化;入院の期間;器官の異常性の消散までの時間;生存率;およびプレコナリルの薬物動態学、を含んでいた。第3のエンドポイントは、血液産物(新たに凍結した血漿、パックされた赤血球細胞、血小板、他の産物)および変力性のサポートの期間を含んでいた。
【0108】
実施例4 プレコナリルの安全性分析
処置群に登録された被験者の86%およびプラセボ群の94%が副作用を経験し、そのうちそれぞれ3%および18%のみが処置に関連している可能性のある/おそらく関連していると判定された事象を経験していた。事象/被験者の数および深刻性の分布は、群の間で同様であった。ただ一人の被験者(プラセボ群)のみが処置に関連している可能性のある/おそらく関連していると考えられる深刻な副作用を経験した。病気の原因として(3人)または死亡の原因として(5人)の単純ヘルペスウイルスの同定以外に、副作用に起因して処置から撤退した被験者はいなかった。
【0109】
上記の実施例において示されるように、ウイルス培養は、予想できないほど低い収率であった。潜在的なウイルス学的有効性の指標は陽性であり、全ての部位を合わせた培養物の陰性までの時間はプレコナリル群においてより短く、そして、OPからのPCR陽性の持続はプレコナリル群において短かった。加えて、生存率における違いは、潜在的な臨床学的有効性を示唆している。群のあいだの類似のAEプロファイルおよび治験処置に帰するAEsがほとんどないことは、安全性を示している。プレコナリル濃度はD1後にIC90を超えていた:D1における濃度が41%とIC90より小さかったことは、ローディング用量の必要性を示唆している。有効性のシグナルおよび安全性における懸念の非存在は、新生児EV疾患の処置のためのプレコナリルの有効性を示している。
【0110】
図1
図1a
図2
図3
【手続補正書】
【提出日】2022-02-07
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
プレコナリルの処方を含む組成物であって、
前記組成物が、エンテロウイルスによって引き起こされる新生児敗血症の処置のための鼻腔内投与用組成物であり、
前記プレコナリルが粒子を含み、90%の前記プレコナリルの粒子が、20ミクロン未満であり、50%の前記プレコナリルの粒子が、10ミクロン未満であり、10%の前記プレコナリルの粒子が、5ミクロン未満であり、および、
前記処方がプレコナリルのナノエマルションを含み、および、前記プレコナリルの粒子サイズが、50~500nm、50~400nm、50~300nm、100~200nmまたは100nmを含む組成物
【請求項2】
請求項1記載の組成物であって、薬学的に許容可能なオイル、薬学的に許容可能なエステル混合物、飽和脂肪酸、ヒドロフルオロカーボン、および/またはそれらの組合せを含むプレコナリルの処方を含む組成物。
【請求項3】
請求項1記載の組成物であって、プレコナリルを含む前記組成物が、高分子リン脂質ミセル中に組み込まれており、前記高分子リン脂質ミセルが、PEG、疎水性ジアシルリン脂質と共役したPEG、ホスファチジルコリン、または卵ホスファチジルコリンを含み、前記高分子リン脂質ミセルの粒子の大きさが、5~100nm、5~80nm、10~50nmまたは10nmを含む組成物。
【請求項4】
請求項1記載の組成物であって、プレコナリルを含む前記組成物が、環状オリゴ糖中に組み入れられたプレコナリルの粒子を含み、前記環状オリゴ糖が、2-ヒドロキシプロピル-β-シクロデキストリン、メチル-β-シクロデキストリン、またはスルホブチル-β-シクロデキストリンを含む組成物。
【請求項5】
請求項1記載の組成物であって、プレコナリルを含む前記組成物が、水中油型マイクロエマルションを含み、前記水中油型マイクロエマルションにおけるオイルが、中鎖脂肪酸トリグリセリド、水素化された薬学的に許容可能なオイル、またはエチルアルコールを含み、前記マイクロエマルションの粒子サイズが、1~100nm、5~90nm、5~50nm、または8~12nmである組成物。
【請求項6】
請求項1~のいずれか1項に記載の組成物であって、プレコナリルの薬学的に許容可能な塩をさらに含む組成物。
【請求項7】
請求項1~のいずれか1項に記載の組成物であって、前記処方が、アバカビル、アシクロビル、アシクロビル、アデホビル、アマンタジン、アンプレナビル、アンプリゲン、アルビドール、アタザナビル、アトリプラ、バラビル、ボセプレビル、シドフォビル、コンビビル、ドルテグラビル、ダルナビル、デラビルジン、ジダノシン、ドコサノール、エドズジン、エファビレンツ、エムトリシタビン、エンフビルチド、エンテカビル、エコリバー、ファムシクロビル、ホミビルセン、ホスアンプレナビル、ホスカルネット、ホスホネット、融合阻害剤、ガンシクロビル、イバシタビン、イムノビル、イドクスウリジン、イミキモド、インジナビル、イノシン、インテグラーゼ阻害剤、インターフェロンIII型、インターフェロンII型、インターフェロンI型、インターフェロン、ラミブジン、ロピナビル、ロビリド、マラビロク、モロキシジン、メチサゾン、ネルフィナビル、ネビラピン、ネキサビル、ヌクレオシドアナログ、オセルタミビル(タミフル(登録商標))、ペグインターフェロンα-2a、ペンシクロビル、ペラミビル、ポドフィロトキシン、プロテアーゼ阻害剤、ラルテグラビル、逆転写酵素阻害剤、リバビリン、リマンタジン、リトナビル、ピラミジン、サキナビル、ソホスブビル、スタブジン、相乗的エンハンサー(抗レトロウイルス剤)、テラプレビル、テノホビル、テノホビルジソプロキシル、チプラナビル、トリフルリジン、トリジビル、トロマンタジン、ツルバダ、トラポルベッド、バラシクロビル(バルトレックス(登録商標))、バルガンシクロビル、ビクリビロク、ビダラビン、ビラミジン、ザルシタビン、ザナミビル(リレンザ(登録商標))、またはジドブジンを含む一つまたはそれ以上の追加の抗ウイルス剤をさらに含む組成物。
【外国語明細書】