(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022050560
(43)【公開日】2022-03-30
(54)【発明の名称】防水紙およびその製造方法
(51)【国際特許分類】
D21H 19/20 20060101AFI20220323BHJP
D21H 19/18 20060101ALI20220323BHJP
D21H 21/16 20060101ALI20220323BHJP
【FI】
D21H19/20
D21H19/18
D21H21/16
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022001526
(22)【出願日】2022-01-07
(62)【分割の表示】P 2021559343の分割
【原出願日】2021-06-28
(31)【優先権主張番号】P 2020115602
(32)【優先日】2020-07-03
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000183484
【氏名又は名称】日本製紙株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100118902
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 修
(74)【代理人】
【識別番号】100126985
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 充利
(74)【代理人】
【識別番号】100141265
【弁理士】
【氏名又は名称】小笠原 有紀
(74)【代理人】
【識別番号】100129311
【弁理士】
【氏名又は名称】新井 規之
(72)【発明者】
【氏名】川真田 友紀
(72)【発明者】
【氏名】畠山 知也
(72)【発明者】
【氏名】奥村 寛之
(57)【要約】 (修正有)
【課題】本発明の課題は、防湿性と防水性を備えた紙を製造する技術を開発することである。
【解決手段】本発明によって、120秒コッブ吸水度が5~25g/m2、紙パルプ試験方法No.68に規定する撥水度がR4以上である紙基材上に、スチレン系樹脂、アクリル系樹脂、ポリオレフィン樹脂の少なくとも1つおよびワックスを有する防水剤を含有する塗工層を設けた防水紙が提供される。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
120秒コッブ吸水度が5~25g/m2、紙パルプ試験方法No.68に規定する撥水度がR4以上である紙基材上に防水剤を塗工した防水紙であって、
防水剤が、スチレン系樹脂、アクリル系樹脂、ポリオレフィン樹脂の少なくとも1つおよびワックスを含有する、防水紙。
【請求項2】
前記塗工層の塗工量が4~20g/m2である、請求項1に記載の防水紙。
【請求項3】
透湿度が50g/m2・24h以下である、請求項1または2に記載の防水紙。
【請求項4】
前記紙基材のコッブ吸水度が、120秒で3g/m2以下であるか、30分で25g/m2以下である、請求項1~3のいずれかに記載の防水紙。
【請求項5】
前記紙基材の透湿度が1500g/m2・24h以上である、請求項1~4のいずれかに記載の防水紙。
【請求項6】
前記紙基材の王研式平滑度が13秒以上である、請求項1~5のいずれかに記載の防水紙。
【請求項7】
前記紙基材の少なくとも片面に撥水剤が塗布されている、請求項1~6のいずれかに記載の防水紙。
【請求項8】
紙基材が、多層抄きの板紙である、請求項1~7のいずれかに記載の防水紙。
【請求項9】
防水紙のコッブ吸水度が、120秒で3g/m2以下であるか、30分で25g/m2以下である、請求項1~8のいずれかに記載の防水紙。
【請求項10】
120秒コッブ吸水度が5~25g/m2、紙パルプ試験方法No.68に規定する撥水度がR4以上である紙基材上に防水剤を塗工することを含む、防水紙の製造方法であって、
防水剤が、スチレン系樹脂、アクリル系樹脂、ポリオレフィン樹脂の少なくとも1つおよびワックスを含有する、上記方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、防水紙とその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、種々の物品を包装するために、紙基材を用いた種々の形態からなる紙製容器や梱包材等が使用されている。一般に、紙製の容器や梱包材は、紙基材をベース素材とすることから、水蒸気等の透過が極めて容易であり、包装している物品から発生する湿気による強度低下を来すことがある。また、包装、梱包の対象となる物品によっては、外部から侵入する水蒸気等を著しく嫌うものがある。更に、チルド製品等のように氷を一緒に入れて輸送する場合、紙製の容器や梱包材が防水性を具備する必要がある。
【0003】
このため、紙基材の表面に、撥水性を有するワックス組成物を塗工してワックス層を形成する方法、ポリエチレンフィルム、ポリプロピレンフィルム等をラミネートして樹脂被膜を形成する方法が提案されている。例えば、特許文献1には、紙の少なくとも片面に、ワックスエマルジョンおよび水不溶性合成樹脂エマルジョンと共に界面活性剤を加えた混合液を塗布後、加熱処理を施して、最外層に界面活性剤の層を形成した防湿紙が記載されている。また、特許文献2には、基紙の少なくとも片面に、少なくとも2層の塗工層を有し、最表面に位置する塗工層はワックスを封入したマイクロカプセルを含有し、塗工量が固形分換算0.5g/m2以上2.5g/m2以下であり、この最表面の塗工層と基紙との間に位置する塗工層はアクリル系共重合体および/またはスチレン系共重合体を含有する防湿ライナが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平10-266096号公報
【特許文献2】特開2011-162899号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
脱プラスチックの流れの中で発泡スチロールを代替する紙製容器が要求されており、そのような容器を製造するために耐水撥水ライナが注目されている。
【0006】
しかし、特許文献1のワックス層を形成する方法では、単にワックス組成物を1層塗工しても、透湿度を十分に抑制することは困難であり、透湿度を十分に抑制するためにはワックス組成物を多数回塗工することが必要となり、製造工程が著しく煩雑になる。また、特許文献2のような樹脂被膜でラミネートする方法では、ラミネート加工のため製造工程が煩雑となることに加え、樹脂被膜でラミネートした紙または板紙は、使用後に古紙として回収使用する際の離解性が著しく悪く、再利用化が困難であった。
【0007】
また、単なる防湿紙では、防水性が充分でなく、例えば、チルド製品等のように氷を入れて輸送する容器や梱包材としての使用が困難である。従来から存在する、最外層に界面活性剤の層を形成しただけの防湿紙や、少なくとも2層の塗工層を設けただけの防湿ライナは、十分な防水性を備えるものではなかった。
【0008】
さらに、紙基材に防水性を付与するためには防水塗料を塗工する必要があるが、特に撥水ライナのような撥水性を有する紙基材に防水塗料を塗工しようとしても、従来から開示されている技術では防水塗料の溶媒が水滴状になりやすく、均一に防水塗料を塗布することができなかった。
【0009】
本発明はこのような事情に鑑みてなされたもので、本発明の課題は、防湿性と防水性を兼ね備える防水紙とその製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者らは、上記課題について鋭意検討したところ、コッブ吸水度が低い紙基材に対して、スチレン・アクリル系樹脂等の防水剤を塗工すると塗料が水滴状になりにくく、塗料を紙基材上に均一に分布させることに成功した。本発明によれば、ワックス系撥水剤を塗工しているため撥水性を有する紙基材においても、特定の防水剤を選択的に用いることにより、紙基材上に均一に防水剤を塗工することが可能となるため、紙の防水性を高めることが可能となる。
【0011】
以下に限定されるものではないが、本発明は、下記の態様を包含する。
[1] 120秒コッブ吸水度が5~25g/m2、紙パルプ試験方法No.68に規定する撥水度がR4以上である紙基材上に防水剤を塗工した防水紙であって、防水剤が、スチレン系樹脂、アクリル系樹脂、ポリオレフィン樹脂の少なくとも1つの成分およびワックスを含有する、上記防水紙。
[2] 前記塗工層の塗工量が4~20g/m2である、[1]に記載の防水紙。
[3] 透湿度が50g/m2・24h以下である、[1]または[2]に記載の防水紙。
[4] 前記紙基材のコッブ吸水度が、120秒で3g/m2以下であるか、30分で25g/m2以下である、[1]~[3]のいずれかに記載の防水紙。
[5] 前記紙基材の透湿度が1500g/m2・24h以上である、[1]~[4]のいずれかに記載の防水紙。
[6] 前記紙基材の王研式平滑度が13秒以上である、[1]~[5]のいずれかに記載の防水紙。
[7] 前記紙基材の少なくとも片面に撥水剤が塗布されている、[1]~[6]のいずれかに記載の防水紙。
[8] 紙基材が、多層抄きの板紙である、[1]~[7]のいずれかに記載の防水紙。
[9] 防水紙のコッブ吸水度が、120秒で3g/m2以下であるか、30分で25g/m2以下である、[1]~[8]のいずれかに記載の防水紙。
[10] 120秒コッブ吸水度が5~25g/m2、紙パルプ試験方法No.68に規定する撥水度がR4以上である紙基材上に防水剤を塗工することを含む、防水紙の製造方法であって、防水剤が、スチレン系樹脂、アクリル系樹脂、ポリオレフィン樹脂の少なくとも1つの成分およびワックスを含有する、上記方法。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、防湿性とともに防水性を備えた紙の製造が可能である。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】防水性を評価する際に作製した紙容器の外観写真である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明は、防水紙に関する。本発明において防水紙とは、長時間水にさらしても水が浸みこまない機能を有する紙のことを指す。また、本発明の好ましい態様において本発明に係る防水紙は、紙容器に水を入れて3週間放置しても水の浸み出しが発生せず容器の形状が変形しない、あるいは、若干変形はみられるが容器形状が維持されるものをいう。
【0015】
本発明に係る防水紙の用途には特に制限はなく、例えば、段ボール箱、鮮魚や野菜を始めとした食料品などを収容したり、洗剤等の吸湿性のあるものを内容物とする包装個箱等として用いることができる。本発明に係る防水紙の坪量は特に制限されないが、例えば、30~800g/m2とすることができる。紙基材が単層紙である場合、防水紙の坪量は、例えば、30~350g/m2や50~300g/m2とすることができる。また、紙基材が2層以上の紙層を有する多層抄き板紙である場合、防水紙の坪量は75~800g/m2や100~700g/m2、さらには200~600g/m2とすることができる。
【0016】
本発明の防水紙は、好ましい態様において、表面の120秒コッブ吸水度が3g/m2以下であり、2g/m2以下がより好ましく、1g/m2以下であってよい。なお、120秒コッブ吸水度を測定した際に1g/m2未満(吸水せず測定限界値未満の場合も含む)である紙においては、好ましい態様において、表面の30分コッブ吸水度が25g/m2以下であり、20g/m2以下がより好ましく、10g/m2以下であってよい。本発明においてコッブ吸水度は、JIS P8140に規定されたコッブ法に準拠して、100mlの蒸留水を塗工層に接触させ、規定時間後に吸収された水の単位面積あたりの重量を測定する。測定時間を伸ばした条件下でもコッブ吸水度が低いほど、塗工層の吸水性が低いものとなる。
【0017】
本発明の防水紙は、防湿性にも優れており、好ましい態様において、透湿度は100g/m2・24h以下であり、より好ましくは75g/m2・24h以下、さらに好ましくは50g/m2・24h以下である。ここで、紙の透湿度は、JIS Z 0208に準拠して防水紙の塗工層側から測定することができ、数値が小さいほど、防湿性が高いことを意味する。
【0018】
本発明の防水紙は、耐油性にも優れており、好ましい態様において、塗工層側のはつ油度がキットナンバー7以上であることが好ましく、8以上であることがより好ましく、9以上であることがさらに好ましい。ここで、防水紙のはつ油度は、「紙及び板紙-はつ油度試験方法-キット法」(JAPAN TAPPI 紙パルプ試験方法 No.41)に準拠して防水紙の塗工層側から測定することができ、キットナンバーの値が大きい程、耐油性が高いことを意味する。また、好ましい態様において、塗工層側の点滴吸油度が500秒以上であり、より好ましくは550秒以上、さらに好ましくは600秒以上である。この点滴吸油度の秒数が長いほど耐油性が高いことを意味する。なお防水紙の吸油度は、注射針H5号を備えたマイクロシリンジを用いて、動粘性係数が3cStに調整した軽油1号をサンプル表面に1滴滴下し、表面の光沢がみえなくなるまでの時間によって評価することができる。
【0019】
本発明の防水紙は、塗工面の王研式平滑度が15秒以上であることが好ましく、20秒以上がより好ましく、25秒以上がさらに好ましい。防水紙の塗工層の表面の平滑度が上記の範囲であることにより、塗工層の表面において高い光沢が得られ、より美粧性に優れた防水紙が得られる。
【0020】
紙基材
本発明に係る防水紙は、紙基材と、紙基材の少なくとも一方の面に設けられた防水塗工層と、を少なくとも有している。本発明において紙基材の坪量は特に制限されず、例えば、10~800g/m2とすることができる。紙基材が単層紙である場合、坪量は10~300g/m2の範囲で適宜設定することができ、例えば、紙基材がクラフト紙の場合、坪量を30~250g/m2の範囲で設定することができる。また、紙基材が2層以上の紙層を有する多層抄き板紙である場合、その坪量は70~800g/m2の範囲で適宜設定することができ、例えば、段ボールのライナの場合、坪量を80~600g/m2の範囲で設定することができる。
【0021】
本発明に用いる紙基材は、防水塗工層を設ける面の120秒コッブ吸水度が25g/m2以下、好ましくは20g/m2以下、より好ましくは15g/m2以下の範囲である。また、本発明に用いる紙基材は、120秒コッブ吸水度が5g/m2以上であり、好ましくは7g/m2以上、より好ましくは10g/m2以上である。本発明においては、ワックスなどの撥水剤や、樹脂を含むニス等の防水性を有しないコーティング剤(目止め剤)等を塗工するなどして紙基材の120秒コッブ吸水度を調整することができるが、紙基材の120秒コッブ吸水度が上記の範囲であることにより、防水塗料の溶媒中に含まれた水分の過剰な浸透による紙力低下防止と、防水塗料中の固形分が紙層表面へ滞留することにより確実な被覆が行われ防水性と防湿性の向上を両立させることができる。
【0022】
本発明に用いる紙基材は、好ましい態様において、JAPAN TAPPI 紙パルプ試験方法 No.68「紙及び板紙-はっ水性試験方法」に準拠して測定した撥水度がR4以上であり、R6以上であることがより好ましく、R8以上であることがさらに好ましい。紙基材の撥水度がR4以上であると、防水剤を塗工する際、塗工液に含まれる水分が紙基材へ過剰に浸透することがなく、紙の強度低下を抑制することができる。
【0023】
本発明に用いる紙基材は、好ましい態様において防水塗工層を設ける面の点滴吸油度が5秒以上であり、より好ましくは7秒以上、さらに好ましくは10秒以上である。上限は特に限定されないが、好ましくは80秒以下、より好ましくは75秒以下、さらに好ましくは70秒以下である。吸油度が上記の範囲であることにより、防水剤に含まれるワックスが紙表面にとどまり紙層に浸み込みにくくなることから、紙基材の防水性および防湿性を向上させることができる。紙基材の吸油度は、注射針H5号を備えたマイクロシリンジを用いて、動粘性係数が3cStに調整した軽油1号をサンプル表面に1滴滴下し、表面の光沢がみえなくなるまでの時間によって評価することができる。
【0024】
紙基材の物性は特に制限されず、防水紙の用途に応じて適宜設定することができる。本発明においては、例えば、縦伸びが1.0~15.0%、横伸びが2.0~12.0%、比圧縮強度が100~350N・m2/g、比破裂強度が2.80~5.00kPa・m2/gとなるように設定することができる。
【0025】
本発明に用いる紙基材は、好ましい態様において、塗工層を設ける面の王研式平滑度が13秒以上であり、より好ましくは15秒以上であり、さらに好ましくは17秒以上である。上限は特に限定しないが、好ましくは100秒以下であり、より好ましくは90秒以下、さらに好ましくは80秒以下、最も好ましくは70秒以下である。防水塗工層を設ける面の平滑度が上記の範囲であることにより、紙基材を均一に被覆する防水塗工層を設けることができ、防水性および防湿性が向上する。
【0026】
本発明に用いる紙基材は、好ましい態様において、防水塗工層を設ける側より測定した透湿度が1500g/m2・24h以上であり、より好ましくは1750g/m2・24h以上、さらに好ましくは2000g/m2・24h以上である。透湿度の上限は特に限定されないが、好ましい態様において、5000g/m2・24h以下であり、より好ましくは4500g/m2・24h以下、さらに好ましくは4000g/m2・24h以下である。防水塗工層を設ける面の透湿度が上記の範囲であることにより、塗工後の乾燥工程において効率よく塗工剤中の水分を紙層側へ蒸発させることから、均一に被覆する防水塗工層を設けることができ、防水性および防湿性が向上しやすくなる。
【0027】
本発明に用いる紙基材は、好ましい態様において、防水塗工層を設ける面の水接触角が75度以上であり、77度以上であることがより好ましい。水接触角が上記の範囲であることにより、塗工液中に含まれる水分が紙基材へ過剰に浸透することを防ぎ、紙基材の強度低下を防ぐことができる。
【0028】
紙基材の原料パルプとしては、特に制限なく公知のものを使用することができる。具体的には、例えば、針葉樹晒クラフトパルプ(NBKP)、広葉樹晒クラフトパルプ(LBKP)、針葉樹未晒クラフトパルプ(NUKP)、広葉樹未晒クラフトパルプ(LUKP)、砕木パルプ(GP)、リファイナーグラウンドパルプ(RGP)、ケミカルパルプ(CP)、サーモメカニカルパルプ(TMP)、ケミサーモメカニカルパルプ(CTMP)などの木材由来の各種パルプ、ケナフ、バガス、竹、麻、ワラなどから得られた非木材パルプを挙げることができる。
【0029】
紙基材は、古紙パルプを含有するものであってもよく、また、古紙パルプを含有しないものであってもよい。古紙パルプを含有する場合であって、例えば、紙基材が単層紙である場合、好ましくは全パルプに占める古紙パルプの配合率は10質量%以上、より好ましくは25質量%以上、さらに好ましくは50質量%以上、最も好ましくは70質量%以上とすることができ、また、100質量%(古紙由来のパルプのみからなる)とすることができる。また、古紙パルプ以外のパルプとしてクラフトパルプを配合してもよく、全量クラフトパルプとしてもよい。また、紙基材が2層以上の紙層を有する多層抄き板紙である場合、1層あたりの古紙パルプ配合率を上記の通りとすることができ、各層における古紙パルプ配合率が異なるものであってもよい。
【0030】
古紙パルプとしては、段ボール古紙、上白、特白、中白、白損などの未印刷古紙を離解した古紙パルプ、上質紙、上質コート紙、中質紙、中質コート紙、更紙などに印刷された古紙、および筆記された古紙、廃棄機密文書等の紙類、雑誌古紙、新聞古紙を離解後脱墨したパルプ(DIP)などを使用することができる。
【0031】
また、紙基材の抄造では、サイズ剤や撥水剤を内添または外添させることができ、さらに、強度を向上させるために紙力増強剤を内添させることができる。サイズ剤としては、例えば、ロジン系サイズ剤、ロジンエマルジョン系サイズ剤、α-カルボキシルメチル飽和脂肪酸など、また、中性ロジン系サイズ剤、アルキルケテンダイマー(AKD)、アルケニル無水コハク酸(ASA)、カチオンポリマー系サイズ剤などが挙げられる。また、撥水剤としては、フッ素系樹脂、ポリアミド系樹脂、ワックスなどが挙げられる。また、紙力増強剤としては、ポリアクリルアミド(PAM)や変性でん粉などの従来から使用されている紙力増強剤が挙げられる。本発明においては、ワックスを含む撥水剤を、防水層を設ける側に外添させることが好ましく、パラフィン系ワックスを含む撥水剤を外添させることがより好ましい。撥水剤と外添する場合の塗工量は、3g/m2以下が好ましく、2g/m2以下がより好ましい。
【0032】
また、必要に応じて紙基材に公知の填料を内添させることができ、無機填料や有機填料を制限なく使用することができる。無機填料としては、例えば、カオリン、焼成カオリン、デラミネーティッドカオリン、クレー、焼成クレー、デラミネーティッドクレー、イライト、重質炭酸カルシウム、軽質炭酸カルシウム、軽質炭酸カルシウム-シリカ複合物、炭酸マグネシウム、炭酸バリウム、二酸化チタン、酸化亜鉛、酸化珪素、非晶質シリカ、水酸化アルミニウム、水酸化カルシウム、水酸化マグネシウム、水酸化亜鉛などが挙げられ、有機填料としては、例えば、尿素-ホルマリン樹脂、ポリスチレン樹脂、フェノール樹脂などが挙げられる。
【0033】
さらに、紙基材の品質に影響のない範囲で、硫酸バンド、塩化アルミニウム、アルミン酸ソーダ、塩基性アルミニウム化合物、水溶性アルミニウム化合物、多価金属化合物、シリカゾルなどを内添して使用してもよい。
【0034】
紙基材は、公知の抄紙方法で製造することができる。例えば、長網抄紙機、ギャップフォーマー型抄紙機、ハイブリッドフォーマー型抄紙機、オントップフォーマー型抄紙機、丸網抄紙機などを用いて行うことができるが、これらに限定されない。
【0035】
また、本発明の紙基材の平滑度を調整するため、必要に応じ平滑化処理を行ってもよい。平滑化処理には、通常のカレンダ、スーパーカレンダ、グロスカレンダ、ソフトカレンダ、熱カレンダ、シューカレンダなどの平滑化処理装置を用いることができる。平滑化処理装置は、加圧装置の形態、加圧ニップの数、加温、線圧などを適宜調整してよい。
【0036】
防水塗工層
本発明に係る防水紙は、紙基材上に設けられた防水塗工層を有しており、本発明において防水塗工層は、合成樹脂およびワックスを含有する。合成樹脂は、スチレン系樹脂、アクリル系樹脂、ポリオレフィン系樹脂の少なくとも1種類を含有することが好適である。特に、合成樹脂がスチレン系樹脂および/またはアクリル系樹脂であることが好適である。
【0037】
本発明を構成する防水塗工層が含有することのできるスチレン系樹脂としては、構造中にスチレン骨格を有するスチレン系単量体の共重合割合が50質量%以上であることが好ましく、スチレン系単量体の重合体のみからなるものであってもよい。
【0038】
スチレン系単量体としては、例えば、スチレン、o-メチルスチレン、m-メチルスチレン、p-メチルスチレン、2,4-ジメチルスチレン、エチルスチレン、p-tert-ブチルスチレン、α-メチルスチレン、α-メチル-p-メチルスチレンなどが挙げられる。
【0039】
また、スチレン単量体と共重合可能な単量体として、例えば、メチルメタクリレート、シクロヘキシルメタクリレート、メチルフェニルメタクリレートなどのアルキルメタクリレート、メチルアクリレート、エチルアクリレート、ブチルアクリレート、シクロヘキシルアクリレートなどのアルキルアクリレート、メタクリル酸、アクリル酸などの不飽和カルボン酸、マレイン酸、イタコン酸などの無水物である不飽和ジカルボン酸無水物、アクリロニトリル、メタクリロニトリルなどの不飽和ニトリル、1,3-ブタジエン、2-メチル-1,3-ブタジエンなどの共役ジエンなどが挙げられる。これらは1種単独、あるいは、2種以上の組み合わせで用いることができる。
【0040】
本発明を構成する防水塗工層が含有することのできるアクリル系樹脂とは、アクリル酸、メタクリル酸及びこれらの誘導体であるアクリル系単量体の共重合割合が50質量%以上である樹脂であり、アクリル系単量体の重合体のみからなるものであってもよい。
【0041】
アクリル系単量体としては、例えば、メタクリル酸シクロヘキシル、メタクリル酸t-ブチルシクロヘキシル、メタクリル酸メチルなどのメタクリル酸エステル、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸ブチル、アクリル酸イソプロピルなどのアクリル酸エステルなどを挙げることができ、アクリル系樹脂は、これらのアクリル系単量体から選ばれる1種以上の単量体を重合したものであってよい。
【0042】
また、アクリル系単量体と共重合可能な単量体としては、スチレン、o-メチルスチレン、p-メチルスチレン、2,4-ジメチルスチレン、エチルスチレン、p-tert-ブチルスチレン、α-メチルスチレン、α-メチル-p-メチルスチレンなどの芳香族ビニル化合物、アクリロニトリル、メタクリロニトリルなどの不飽和ニトリル、N-フェニルマレイミド、N-シクロヘキシルマレイミドなどのマレイミド、無水マレイン酸などの不飽和ジカルボン酸無水物、メタクリル酸、アクリル酸などの不飽和カルボン酸などが挙げられる。これらは1種単独、あるいは、2種以上の組み合わせで用いることができる。
【0043】
本発明においては、防水塗工層にワックスが含有されている。防水塗工層が含有するワックスとしては、例えば、ポリエチレン系ワックス、フィッシャートロプシュワックス、油脂系合成ワックス(脂肪酸エステル系、脂肪酸アミド、ケトン・アミン類)、水素硬化油などの合成ワックス、蜜蝋、木蝋、パラフィン系ワックス、マイクロクリスタリンワックスなどの天然ワックスなどを挙げることができる。これらのワックスは、1種単独、あるいは、2種以上の組み合わせで使用することができ、特に、パラフィンを含む炭化水素系ワックスが好適である。
【0044】
本発明では、白色度を向上させることなどを目的として、防水性を損なわない範囲で防水塗工層に顔料を含有させてもよい。この場合、顔料を含有させることで防水塗工層の表面の白色度が、紙基材の白色度と比較して1%以上高くなっていることが好ましい。このような顔料としては、炭酸カルシウム、酸化チタン、カオリン、クレー、エンジニアードカオリン、デラミネーティッドクレー、タルク、硫酸バリウム、硫酸カルシウム、酸化亜鉛、珪酸、珪酸塩、コロイダルシリカ、サチンホワイト、マイカ、モンモリトナイトなどの無機顔料を挙げることができ、これらの顔料を1種単独、あるいは、2種以上の組み合わせで使用することができる。これらの顔料の中で、特に、粒子が扁平な形状であるカオリンや炭酸カルシウムもしくはマイカは、防水性を阻害しにくいため特に好適である。このような扁平形状の無機顔料は、アスペクト比が10以上であることが好ましい。防水塗工層における顔料の含有量は、5~40質量%以下が好ましく、10質量%~35質量%以下がより好ましい。顔料の含有量が顔料の含有量が5質量%未満であると、白色度の向上効果が十分に得られず、40質量%を超えると、合成樹脂成分が有する防水塗工層の防湿性、防水性の機能が十分発揮できないことがあるので好ましくない。また、その他の塗工剤として、例えば、バインダー、安定剤、消泡剤、粘性改良剤、保水剤、防腐剤、着色剤などを含有させてもよい。
【0045】
本発明において防水塗工層は、上記のような成分を含有する塗工剤を紙基材上に塗工して乾燥することにより形成することができる。防水塗工層の塗工量は、4~20g/m2とすることが好ましく、5~15g/m2とすることがより好ましい。20g/m2を超えると、防水性のさらなる向上は望めない一方で、製造コストの増大を来すことがある。
【0046】
本発明の防水紙に設けられた防水塗工層は、好ましい態様において、平均の厚みが5.5~20μmであり、5.6~15μmがより好ましく、5.7~12.5μmがさらに好ましい。ここで、塗工層の平均厚みは、サンプルを短冊状に切断し、その断面を任意の10箇所において電子顕微鏡を用いた観察により測定した防水塗工層の厚みの平均値である。
【0047】
また、本発明に係る防水紙は、防水塗工層の単位厚さ当たりの透湿度が15(g/m2・24h)/μm以下が好ましく、10(g/m2・24h)/μm以下がより好ましく、7(g/m2・24h)/μm以下がさらに望ましい。ここで、防水塗工層の単位厚さ当たりの透湿度は、防水紙の塗工層側からJIS Z 0208に準拠して測定した透湿度を平均塗工層厚みで除して算出する。
【0048】
本発明の防水紙は、紙基材の少なくとも一方の面に、防水剤を塗工し、塗工した防水剤を乾燥することによって製造することができる。防水塗工層の形成は、公知の塗工方式を使用して塗工剤を塗工して行うことができ、例えば、エアナイフ塗工、カーテン塗工、ブレード塗工、ゲートロール塗工、ダイ塗工などの塗工方式を用いることができる。また、塗工層は、単層であっても複数層であってもよく、複数の塗工層を順次塗工してもよく、カーテン塗工などにより2層以上を同時に塗工してもよい。また複数の塗工層を設ける場合は、少なくとも1層が防水性を有する塗工層であればよく、最外の塗工層として防水剤を塗工することが好ましい。塗工層を乾燥する際、好ましくは、乾燥工程出口の塗工層温度が120℃未満となるように調整する。塗工剤を塗工する際の塗工速度は、塗工剤の粘度、目標塗工量を考慮して適宜設定することができる。
【0049】
好ましい態様として、紙基材への塗工剤の塗工を、エアナイフ塗工やカーテン塗工といった輪郭塗工方式により行うことにより、紙基材表面への塗工剤の塗工量が均一となり、したがって塗膜厚みが均一となり、後工程である乾燥工程において塗工層におけるブリスターの発生を抑制することができる。また、接触塗工方式に比べて塗工剤の使用量を低減することができ、製造コストを抑えることができる。
【0050】
紙基材に塗工された塗工剤を乾燥して塗工層とするが、この乾燥工程では、出口での塗工層温度が120℃未満とすることが好ましく、100℃以下となるように調整してもよい。出口での塗工層温度が120℃以上であると、塗工層におけるブリスターの発生率が高くなることがあり、また、塗工層が形成された後に巻き取られた防水紙にブロッキングが発生することがある。一方、出口での塗工層温度は、60℃以上が好ましく、70℃がより好ましく、80℃以上とすることもできる。出口での塗工層温度が60℃未満であると、場合によって、塗工層が形成された後に巻き取られた防水紙にブロッキングが発生することがあるだけでなく、塗工層の乾燥が不十分であるため防水、防湿性能を十分に発現できないことがある。
【0051】
乾燥工程出口での塗工層温度の設定は、紙基材の坪量および紙厚を考慮して設定することができる。例えば、紙基材が多層抄き板紙であって坪量および紙厚の大きい段ボールのライナの場合、単層紙であって坪量および紙厚が相対的に小さいクラフト紙に比べて塗工層の表面にブリスターが発生し易い傾向にある。その理由は限定されないが、段ボールのライナの場合、クラフト紙に比べて坪量および紙厚が大きいと共に透気性が低いことが多く、クラフト紙と同じ紙中水分値であっても、乾燥工程において紙基材内部で気化した多くの水分が十分に逃げきれないため、塗工層の表面にブリスターが発生し易くなると考えられる。このため、紙基材の坪量および紙厚が大きいほど、乾燥工程出口での塗工層温度を、上記の範囲内で低目に調整することが好ましい。
【0052】
ここで、乾燥工程の出口とは、乾燥工程における乾燥ゾーンが1個の場合、当該乾燥ゾーンの出口であり、乾燥工程における乾燥ゾーンが複数個の場合、最も下流側の乾燥ゾーンの出口である。
【0053】
乾燥工程出口での塗工層温度の調整は、乾燥時間、乾燥ゾーンの温度の調節により行うことができる。乾燥時間は、紙基材の送り速度、乾燥ゾーンの個数、長さ、乾燥ゾーンの機器能力(風量、赤外線出力)などで決定される。また、乾燥方式としては、公知の乾燥方式を用いることができ、例えば、蒸気シリンダ加熱乾燥方式、熱風乾燥方式、ガス式赤外線乾燥方式、電気式赤外線乾燥方式などを挙げることができ、これらのいずれか1種、あるいは、2種以上の組み合わせで使用することができる。
【実施例0054】
以下に、具体例によって本発明をより詳細に説明するが、本発明は下記の具体例によって限定されるものではない。なお、本明細書において、特に記載しない限り、濃度などは重量基準であり、数値範囲はその端点を含むものとする。
【0055】
防水紙の製造
<サンプル1>
段古紙パルプ100%からなる裏層、古紙パルプ100%からなる中層、未晒クラフトパルプ70%および段古紙パルプ30%からなる表層を裏層:中層:表層=25:60:15の重量比で抄き合わせ、ドライヤにて乾燥後、パラフィン系ワックスおよびロジンを含む撥水剤を表層側に片面塗工し、再度ドライヤにて乾燥後、カレンダを用いて平滑化処理を行い、紙基材Aを製造した(坪量:約280g/m2、表面の120秒コッブ吸水度:13g/m2)。次いで、紙基材の表層側にエアナイフを用いてスチレン・アクリル系樹脂とワックスを含有する防水剤(マイケルマン VaporCoat2200)を10.0g/m2塗布し、乾燥工程出口における塗工層の温度が80℃となるよう熱風乾燥してライナサンプルを得た。
【0056】
<サンプル2>
防水剤の塗工量を7.8g/m2とした以外は、サンプル1と同様にしてライナサンプルを得た。
【0057】
<サンプル3>
防水剤の塗工量を11.3g/m2とした以外は、サンプル1と同様にしてライナサンプルを得た。
【0058】
<サンプル4>
段古紙パルプ100%からなる裏層、古紙パルプ100%からなる中層、未晒クラフトパルプ35%および段古紙パルプ65%からなる表層を裏層:中層:表層=25:60:15の重量比で抄き合わせ、ドライヤにて乾燥後、パラフィン系ワックスおよびロジンを含む撥水剤を表層側に片面塗工、再度ドライヤにて乾燥後、カレンダを用いて平滑化処理を行い、紙基材Bを製造した(坪量:約280g/m2、表面の120秒コッブ吸水度:16g/m2)。次いで、紙基材の表層側にエアナイフを用いてスチレン・アクリル系樹脂とワックスを含有する防水剤(マイケルマン VaporCoat2200)を10.5g/m2塗布し、乾燥工程出口における塗工層の温度が80℃となるよう熱風乾燥してライナサンプルを得た。
【0059】
<サンプル5>
防水剤の塗工量を7.9g/m2とした以外はサンプル4と同様にしてライナサンプルを得た。
【0060】
<サンプル6(比較例)>
段古紙パルプ100%からなる裏層、古紙パルプ100%からなる中層、未晒クラフトパルプ25%および段古紙パルプ75%からなる表層を裏層:中層:表層=25:65:10の重量比で抄き合わせ、ドライヤにて乾燥後、カレンダを用いて平滑化処理を行い、紙基材Cを製造した(坪量:約260g/m2、表面の120秒コッブ吸水度:28g/m2)。次いで、紙基材の表層側にエアナイフを用いてスチレン・アクリル系樹脂とワックスを含有する防水剤(マイケルマン VaporCoat2200)を8.9g/m2塗布し、乾燥工程出口における塗工層の温度が80℃となるよう熱風乾燥してライナサンプルを得た。
【0061】
<サンプル7(比較例)>
防水剤の塗工を行わなかった以外は、サンプル1と同様にしてライナサンプルを製造した(坪量:約280g/m2)。
【0062】
<サンプル8(比較例)>
防水剤の塗工を行わなかった以外は、サンプル4と同様にしてライナサンプルを製造した(坪量:約280g/m2)。
【0063】
<サンプル9(比較例)>
防水剤の塗工を行わなかった以外は、サンプル6と同様にしてライナサンプルを製造した(坪量:約260g/m2)。
【0064】
【0065】
防水紙の評価
それぞれのサンプルについて、下記の手順により、紙質および防水性を評価した。
(坪量) JIS P 8124に準拠して測定した。
(紙厚) JIS P 8118及びJIS P 8124に準拠して測定した。
(防水層の平均塗工層厚み) サンプルを短冊状に切断し、その断面を任意の10箇所において電子顕微鏡を用いた観察により塗工層の厚みを測定し、平均値を算出して平均塗工層厚みとした。
【0066】
(平滑度) JIS P 8155に準拠し、デジタル型王研式透気度平滑度試験機(旭精工)を用いて塗工層側(表層側)の王研式平滑度を測定した。
(撥水度) JAPAN TAPPI 紙パルプ試験方法 No.68「紙及び板紙-はっ水性試験方法」に準拠し、塗工層側(表層側)を測定した。
(透湿度) JIS Z 0208に準拠し、塗工層側(表層側)から測定した。
(コッブ吸水度) JIS P 8140に準拠し、塗工層側(表層側)からコッブ法により測定を行った。すなわち、100mlの蒸留水を塗工層(表層)に接触させ、規定時間後に吸収された水の単位面積あたりの重量を測定した。なお、測定時間は、通常の規定時間である120秒(2分間)に加え、30分でも測定を行った。
【0067】
(接触角) 蒸留水をサンプル表面に1滴(50μl)滴下してから1秒後の接触角を接触角測定装置(DAT1100 FIBRO System AB製)により測定した。
(点滴吸油度) 注射針H5号を備えたマイクロシリンジを用いて、動粘性係数が3cStに調整した軽油1号をサンプル表面に1滴滴下し、表面の光沢がみえなくなるまでの時間を測定した。ただし、測定時間は600秒(10分)で打ち切り、600秒経過しても表面に光沢が見えた場合は「600秒以上」と評価した。
(はつ油度) JAPAN TAPPI 紙パルプ試験方法 No.41「紙及び板紙-はつ油度試験方法-キット法」に準拠し、塗工層側(表層側)を測定した。
【0068】
(防水性) 上記サンプルから
図1に示すような紙容器(縦28cm×横22cm×深さ13cm、塗工層は内面側に位置する)を作製し、この紙容器に1.0Lの水を入れ、温度40℃、湿度80%の環境下で放置した。1週間、2週間、3週間放置後の水の浸み出し状況および箱の形状を目視で観察して、下記の基準に基づいて防水性を判定した。
○:水が容器外面や水面より上の容器内面に浸み出しておらず、箱の形状を維持できている
△:水が容器外面には浸み出してなく、箱の形状は維持できている(ただし、容器内面に水が浸み込んでいる)
×:水が容器外面に浸み出していて、箱の形状を維持できていない
【0069】
【0070】
表に示した結果より明らかなように、コッブ吸水度が小さく撥水度の高い紙基材にスチレン・アクリル系樹脂の防水塗工層を設けたサンプル1~4は、防湿性と防水性を併せ持ち、3週間と長期にわたり水を入れた状態で放置しても漏れが発生しなかった。一方、サンプル7~9は、1日後または6時間後の段階で、箱の形状を維持できない程に水が浸み出していた。
【0071】
上記の実験結果から、本発明の防水紙は、特に液体を対象とする包装材として好適に使用できることがわかった。