(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022050674
(43)【公開日】2022-03-30
(54)【発明の名称】燃料電池用加湿器
(51)【国際特許分類】
H01M 8/04 20160101AFI20220323BHJP
H01M 8/04119 20160101ALI20220323BHJP
H01M 8/04291 20160101ALI20220323BHJP
H01M 8/10 20160101ALN20220323BHJP
【FI】
H01M8/04 N
H01M8/04119
H01M8/04291
H01M8/10 101
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022008824
(22)【出願日】2022-01-24
(62)【分割の表示】P 2020127895の分割
【原出願日】2020-07-29
(31)【優先権主張番号】10-2019-0099411
(32)【優先日】2019-08-14
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(71)【出願人】
【識別番号】518215493
【氏名又は名称】コーロン インダストリーズ インク
(74)【代理人】
【識別番号】100083138
【弁理士】
【氏名又は名称】相田 伸二
(74)【代理人】
【識別番号】100189625
【弁理士】
【氏名又は名称】鄭 元基
(74)【代理人】
【識別番号】100196139
【弁理士】
【氏名又は名称】相田 京子
(72)【発明者】
【氏名】キム ヒュンヨ
(72)【発明者】
【氏名】アン ウンジョン
(72)【発明者】
【氏名】オ ヨンソク
(72)【発明者】
【氏名】キム キョンジュ
(57)【要約】 (修正有)
【課題】本発明は、燃料電池の運転条件に従って加湿器の加湿量及び差圧を調節できる燃料電池用加湿器を提供する。
【解決手段】一側には燃料電池スタック200から湿潤空気が供給される湿潤空気供給口112が形成され、他の一側には湿潤空気排出口114が形成されているハウジング110と、ハウジングの内部に備えられ、内部に沿って乾燥空気が流動する加湿膜140と、を含み、ハウジングの内部には湿潤空気供給口に供給された湿潤空気中の一部を、加湿膜を通らずに湿潤空気排出口に常時(always)バイパスさせるバイパス流路111が形成された加湿器100。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
一側には燃料電池スタックから湿潤空気が供給される湿潤空気供給口が形成され、他の一側には湿潤空気排出口が形成されているハウジングと、前記ハウジングの内部に備えられ、内部に沿って乾燥空気が流動する加湿膜と、を含み、前記ハウジングの内部には、前記湿潤空気供給口に供給された前記湿潤空気中の一部を、前記加湿膜を通らずに前記湿潤空気排出口に常時(always)バイパスさせるバイパス流路が形成されている燃料電池用加湿器。
【請求項2】
前記ハウジングは、前記加湿膜が内部に収容され、且つ、前記加湿膜の上部に配置される第1流路壁が形成されているハウジング本体と、前記第1流路壁の上部に離隔して配置される第2流路壁が形成され、前記ハウジング本体の上部に結合されるハウジングキャップと、を含み、前記第1流路壁及び前記第2流路壁は、互いに協力して前記バイパス流路を形成する、請求項1に記載の燃料電池用加湿器。
【請求項3】
前記バイパス流路は、選択的に断面積が可変される、請求項2に記載の燃料電池用加湿器。
【請求項4】
前記ハウジングキャップは、前記第1流路壁に対して第1高さに配置される前記第2流路壁が形成され、前記ハウジング本体に結合される第1キャップ部材と、前記第1高さと異なる第2高さに配置される前記第2流路壁が形成され、前記ハウジング本体に結合される第2キャップ部材と、を含み、前記第1キャップ部材及び前記第2キャップ部材のうち何れか一つを前記ハウジング本体に結合して前記バイパス流路の断面積を可変する、請求項3に記載の燃料電池用加湿器。
【請求項5】
第1サイズを有するように形成され、前記バイパス流路を部分的に遮断する第1隔壁部材と、前記第1サイズと異なる第2サイズを有するように形成され、前記バイパス流路を部分的に遮断する第2隔壁部材と、を含み、前記第1隔壁部材及び前記第2隔壁部材のうち何れか一つを前記バイパス流路の内部に配置して前記バイパス流路の断面積を可変する、請求項3に記載の燃料電池用加湿器。
【請求項6】
前記第1流路壁及び前記第2流路壁のうち何れか一つには、前記第1隔壁部材又は前記第2隔壁部材が結合される結合溝が形成される、請求項5に記載の燃料電池用加湿器。
【請求項7】
前記バイパス流路を部分的に開閉する遮断部材と、前記燃料電池スタックの湿度に対応して前記遮断部材の開閉を制御する制御部と、を含み、前記遮断部材を開閉して前記バイパス流路の断面積を可変する、請求項3に記載の燃料電池用加湿器。
【請求項8】
前記遮断部材は、前記第2流路壁に昇降可能に結合され、前記遮断部材を選択的に昇降させる昇降部を含み、且つ、前記制御部は、前記燃料電池スタックの湿度に対応して前記昇降部を制御する、請求項7に記載の燃料電池用加湿器。
【請求項9】
前記制御部は、前記燃料電池スタックの湿度が目標湿度の範囲より低ければ、前記遮断部材を下降させて前記バイパス流路の断面積を縮小し、前記燃料電池スタックの湿度が目標湿度の範囲より高ければ、前記遮断部材を上昇させて前記バイパス流路の断面積を拡張する、請求項8に記載の燃料電池用加湿器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、燃料電池用加湿器に関し、より具体的には、燃料電池の運転条件に従って加湿器の加湿量及び差圧を調節することができる燃料電池用加湿器に関する。
【背景技術】
【0002】
燃料電池システムは、連続的に供給される燃料の化学的な反応により電気エネルギーを継続的に生産するシステムであって、地球環境の問題を解決できる代案として継続的な研究と開発が行われている。
【0003】
燃料電池システムは、用いられる電解質の種類によってリン酸型燃料電池(PAFC;phosphoric acid fuel cell)、溶融炭酸塩型燃料電池(MCFC;molten carbonate fuel cell)、固体酸化物型燃料電池(SOFC;solid oxide fuel cell)、高分子電解質型燃料電池(PEMFC;polymer electrolyte membrane fuel cell)、アルカリ型燃料電池(AFC;alkaline fuel cell)及び直接メタノール燃料電池(DMFC)等に分類でき、用いられる燃料の種類とともに作動温度、出力の範囲等によって移動電源用、輸送用、分散発電用等の多様な応用分野に適用され得る。
【0004】
このうち、高分子電解質型燃料電池は、内燃機関を代替するように開発されている水素自動車(水素燃料電池の自動車)の分野に適用されている。
【0005】
水素自動車は、水素と酸素の化学反応を介して自体電気を生産し、モーターを駆動して走行するようになっている。より具体的には、水素自動車は、水素(H2)が貯蔵される水素タンク(H2 Tank)、水素と酸素(O2)の酸化還元反応を介して電気を生産する燃料電池、生成された水を排水するための各種装置、燃料電池で生産された電気を貯蔵するバッテリー、生産された電気を変換及び制御するコントローラー、駆動力を発生させるモーター等を含む。
【0006】
一方、燃料電池が正常に動作するためには、膜電極接合体の電解質膜が一定の湿度以上に維持されなければならないため、流入ガスは、燃料電池に流入される前に加湿器により加湿されてよい。
【0007】
最近は、燃料電池から排出される湿潤空気を用いて加湿器を通る流入ガス(乾燥空気)を加湿する方式が提示されている。
【0008】
また、燃料電池に流入される流入ガスの加湿程度(加湿量)は、燃料電池の運転条件(又は湿度状態)によって調節できなければならない。
【0009】
しかし、従来は、加湿器の外部に別途のバイパス流路を形成し、流入ガスが加湿器を経て(加湿された状態)燃料電池に流入されるか、加湿器を通らずに加湿器外部のバイパス流路を介して燃料電池に直ちに流入されるようにして燃料電池の湿度を調節しなければならないため、構造が複雑で、設計自由度及び空間活用性が低下するという問題点があり、燃電池の運転条件に従って流入ガスの加湿量を正確に調節しにくいという問題点があった。
【0010】
また、加湿器の加湿性能が改善されるほど流入ガスの加湿量は増加し得るが、従来は、流入ガスの加湿量の増加に伴って加湿器の差圧(加湿器の入口と出口の圧力差)が増加するため、エネルギー効率が低下(電力消耗量の増加)するという問題点があった。
【0011】
さらに、従来は、過度に加湿された流入ガスが燃料電池に継続して供給されるに伴い、燃料電池の内部にフラッディング(flooding)現象が発生するという問題点があった。
【0012】
これにより、最近は、燃料電池スタックの運転条件に従って流入ガスの加湿量を調節しながら加湿器の差圧を調節するための多様な研究がなされているが、まだ不十分なため、これに対する開発が要求されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
本発明は、燃料電池の運転条件に従って加湿器の加湿量及び差圧を調節できる燃料電池用加湿器を提供することを目的とする。
【0014】
特に、本発明は、加湿器の差圧の増加によるエネルギー効率の低下を最小化できるようにすることを目的とする。
【0015】
また、本発明は、過度な加湿による燃料電池内のフラッディング現象を抑制できるようにすることを目的とする。
【0016】
また、本発明は、構造を簡素化し、設計自由度及び空間活用性を向上させることができるようにすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0017】
前述した本発明の目的を達成するための本発明の好ましい実施形態によれば、燃料電池用加湿器は、一側には燃料電池スタックから湿潤空気が供給される湿潤空気供給口が形成され、他の一側には湿潤空気排出口が形成されているハウジングと、ハウジングの内部に備えられ、内部に沿って乾燥空気が流動する加湿膜と、を含み、ハウジングの内部には、湿潤空気供給口に供給された湿潤空気中の一部を、加湿膜を通らずに湿潤空気排出口に常時(always)バイパスさせるバイパス流路が形成される。
【0018】
これは、燃料電池の運転条件に従って加湿器の加湿量及び差圧を調節するためである。
【0019】
すなわち、従来は、加湿器による流入ガスの加湿量が増加することによって加湿器の差圧(加湿器の入口と出口の圧力の差)が増加するため、エネルギー効率が低下(電力消耗量の増加)するという問題点があった。
【0020】
また、過度に加湿された流入ガスが燃料電池(例えば、燃料電池の低出力運転時)に継続して供給されることによって、燃料電池の内部にフラッディング(flooding)現象が発生するという問題点があった。
【0021】
しかし、本発明は、湿潤空気供給口を介してハウジングの内部に供給された湿潤空気中の一部が加湿膜を通らずに湿潤空気排出口に常時(always)バイパスされるようにすることで、加湿器の差圧が過度に増加することを抑制し、加湿器の差圧の増加によるエネルギー効率の低下を最小化するという有利な効果が得られる。
【0022】
また、ハウジングの内部に供給された湿潤空気中の一部が加湿膜を通らずに湿潤空気排出口にバイパスされるようにすることで乾燥空気の加湿量を低減させることができるので、燃料電池スタックの低出力運転時に過度な加湿によるフラッディング(flooding)現象を防止するという有利な効果が得られる。
【0023】
より具体的には、ハウジングは、加湿膜が内部に収容され、且つ、加湿膜の上部に配置される第1流路壁が形成されているハウジング本体と、第1流路壁の上部に離隔して配置される第2流路壁が形成され、ハウジング本体の上部に結合されるハウジングキャップと、を含み、第1流路壁及び第2流路壁は互いに協力してバイパス流路を形成する。
【0024】
好ましくは、バイパス流路は、選択的に断面積が可変するようになっている。このように、バイパス流路の断面積が選択的に可変するようにすることによって、ハウジングに供給された湿潤空気中、バイパス流路を介してバイパスされる湿潤空気のバイパス流量を選択的に調節できるので、燃料電池スタックの運転条件(又は湿度状態)に従って加湿空気の加湿量と加湿器の差圧を調節するのが可能である。
【0025】
バイパス流路の断面積は、要求される条件及び設計仕様によって多様な方式に可変し得る。
【0026】
例えば、ハウジングキャップは、第1流路壁に対して第1高さ(H1)に配置される第2流路壁が形成され、ハウジング本体に結合される第1キャップ部材と、第1高さ(H1)と異なる第2高さに(H2)に配置される第2流路壁が形成され、ハウジング本体に結合される第2キャップ部材と、を含み、第1キャップ部材及び第2キャップ部材のうち何れか一つをハウジング本体に結合してバイパス流路の断面積を可変させることができる。
【0027】
他の一例として、燃料電池用加湿器は、第1サイズ(L1)を有するように形成され、バイパス流路を部分的に遮断する第1隔壁部材と、第1サイズ(L1)と異なる第2サイズ(L2)を有するように形成され、バイパス流路を部分的に遮断する第2隔壁部材と、を含み、第1隔壁部材及び第2隔壁部材のうち何れか一つをバイパス流路の内部に配置してバイパス流路の断面積を可変させることができる。
【0028】
また他の一例として、燃料電池用加湿器は、バイパス流路を部分的に開閉する遮断部材と、燃料電池スタックの湿度に対応して遮断部材の開閉を制御する制御部と、を含み、遮断部材を開閉してバイパス流路の断面積を可変させることができる。
【0029】
例えば、遮断部材は、第2流路壁に昇降可能に結合され、遮断部材を選択的に昇降させる昇降部を含んでよく、制御部は、燃料電池スタックの湿度に対応して昇降部を制御する。
【0030】
好ましくは、制御部は、燃料電池スタックの湿度が目標湿度の範囲より低ければ、遮断部材を下降させてバイパス流路の断面積を縮小し、燃料電池スタックの湿度が目標湿度の範囲より高ければ、遮断部材を上昇させてバイパス流路の断面積を拡張し得る。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【
図1】本発明による燃料電池用加湿器が適用された燃料電池システムを説明するための図である。
【
図2】本発明の第1実施形態による燃料電池用加湿器を説明するための図である。
【
図3】本発明の第1実施形態による燃料電池用加湿器を説明するための図である。
【
図4】本発明の第2実施形態による燃料電池用加湿器を説明するための図である。
【
図5】本発明の第2実施形態による燃料電池用加湿器を説明するための図である。
【
図6】本発明の第3実施形態による燃料電池用加湿器を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0032】
以下、図を参照しつつ、本発明の好ましい実施形態を詳細に説明する。ただし、本発明が実施形態によって制限されるか又は限定されるのではない。ちなみに、本説明において同一の番号は実質的に同一の要素を指し、このような規則に基づき他の図に記載されている内容を引用して説明することができ、当業者に明らかであると思われるか繰り返される内容は省略されてよい。
【0033】
図1は、本発明によ
る燃料電池用加湿器が適用された燃料電池システムを説明するための図である。また、
図2及び
図3は、本発明の第1実施形態による燃料電池用加湿器を説明するための図である。
図4及び
図5は、本発明の第2実施形態による燃料電池用加湿器を説明するための図である。
図6は、本発明の第3実施形態による燃料電池用加湿器を説明するための図である。
【0034】
図1から
図6に示す通り、本発明による燃料電池用加湿器100は、一側には燃料電池スタック200から湿潤空気が供給される湿潤空気供給口112が形成され、他の一側には湿潤空気排出口114が形成されているハウジング110と、ハウジング110の内部に備えられ、内部に沿って乾燥空気が流動する加湿膜140と、を含み、ハウジング110の内部には、湿潤空気供給口112に供給された湿潤空気中の一部を、加湿膜140を通らずに湿潤空気排出口114に常時(always)バイパスさせるバイパス流路111が形成される。
【0035】
本発明による燃料電池用加湿器100は、燃料電池スタック200に流入される流入ガス(例えば、空気)を加湿するために設けられる。
【0036】
ちなみに、燃料電池スタック200は、燃料(例えば、水素)と酸化剤(例えば、空気)の酸化還元反応を介して電気を生産できる多様な構造で形成されてよい。
【0037】
例えば、燃料電池スタック200は、水素イオンが移動する電解質膜を中心に膜の両方に電気化学反応が起こる触媒電極層が付着された膜電極接合体(MEA:Membrane Electrode Assembly)(図示省略)、反応気体を均一に分布させて発生した電気エネルギーを伝達する役割を担う気体拡散層(GDL:Gas Diffusion Layer)(図示省略)、反応気体及び冷却水の気密性と適正な締結圧を維持するためのガスケット及び締結具(図示省略)、そして、反応気体及び冷却水を移動させる分離板(bipolar plate)(図示省略)を含む。
【0038】
より具体的には、燃料電池スタック200において、燃料である水素と酸化剤である空気(酸素)が分離板の流路を介して膜電極接合体のアノード(anode)とカソード(cathode)にそれぞれ供給され、この際、水素はアノードに供給され、空気はカソードに供給される。
【0039】
アノードに供給された水素は、電解質膜の両方に成されている電極層の触媒によって水素イオン(proton)と電子(electron)に分解され、このうち水素イオンだけが選択的に陽イオン交換膜である電解質膜を通過してカソードに伝達され、同時に電子は導体である気体拡散層と分離板を介してカソードに伝達される。
【0040】
カソードでは、電解質膜を介して供給された水素イオンと分離板を介して伝達された電子が、空気供給装置によりカソードに供給された空気中の酸素と接して水を生成する反応を起こす。この時に起こる水素イオンの移動に起因して外部導線を通じた電子の流れが発生し、このような電子の流れにより電流が生成される。
【0041】
ハウジング110は、内部に所定の収容空間を有するように設けられる。ハウジング110の形状及び構造は、要求される条件及び設計仕様によって多様に変更されてよく、ハウジング110の形状及び構造により本発明が制限されるか限定されるのではない。例えば、ハウジング110は、内部に収容空間を有する四角形の箱状に形成されてよい。
【0042】
ハウジング110の一側には乾燥空気が供給される乾燥空気供給口(図示省略)が形成され、ハウジング110の他の一側には乾燥空気が排出される乾燥空気排出口(図示省略)が形成される。
【0043】
例えば、
図1を基準に、ハウジング110の右側端には乾燥空気が供給される乾燥空気供給口(図示省略)が形成され、ハウジング110の左側端には乾燥空気排出口(図示省略)が形成される。
【0044】
ちなみに、乾燥空気供給口に供給された乾燥空気は、加湿膜140の通過中に加湿されてよく、乾燥空気排出口を介して排出された加湿空気(加湿処理された乾燥空気)は燃料電池スタック200に供給されてよい。
【0045】
また、ハウジング110の一側(例えば、
図1を基準に左上端)には湿潤空気供給口112が形成され、ハウジング110の他の一側(例えば、
図1を基準に右上端)には湿潤空気排出口114が形成される。
【0046】
燃料電池スタック200から排出される湿潤空気(又は生成された水)は、燃料電池スタック200とハウジング110の湿潤空気供給口112を連結する連結流路(図示省略)に沿ってハウジング110の内部に流入されてよく、ハウジング110の内部では多湿な湿潤空気を用いて加湿膜140に沿って流動する乾燥空気を加湿させてよい。
【0047】
加湿膜140は、ハウジング110の内部に備えられ、内部に沿って乾燥空気が流動するようになっている。
【0048】
例えば、加湿膜140は、内部に沿って乾燥空気が流動可能なチューブ状の中空糸膜(Hollow fiber membrane)に形成され、ハウジング110の内部で加湿膜140の一端(入口端)及び他端(出口端)はポッティング材142によって固定される。
【0049】
ちなみに、加湿膜140は中空糸膜に形成されるため、ハウジング110の内部に供給された水分(例えば、湿潤空気の水分)は、加湿膜140の外部から加湿膜140の内部に透過して乾燥空気に伝達できるが、乾燥空気は、加湿膜140の内部から加湿膜140の外部に透過できない。
【0050】
また、ハウジング110の内部には、湿潤空気供給口112に供給された湿潤空気中の一部を、加湿膜140を通らずに湿潤空気排出口114に常時(always)バイパスさせるバイパス流路111が形成される。
【0051】
このように、ハウジング110の内部に供給された湿潤空気中の一部が湿潤空気排出口114に常時バイパスされるようにすることで、加湿器100の差圧が過度に増加することを抑制し、差圧の増加による電力の消耗量を低減させるという有利な効果が得られる。
【0052】
また、ハウジング110の内部に供給された湿潤空気中の一部が加湿膜140を通らずに湿潤空気排出口114にバイパスされるようにすることで乾燥空気の加湿量を低減させることができるので、燃料電池スタック200の低出力運転時に過度な加湿によるフラッディング(flooding)現象を防止するという有利な効果が得られる。
【0053】
より具体的には、ハウジング110は、加湿膜140が内部に収容され、且つ、加湿膜140の上部に配置される第1流路壁122が形成されているハウジング本体120と、第1流路壁122の上部に離隔して配置される第2流路壁132が形成され、ハウジング本体120の上部に結合されるハウジングキャップ130と、を含み、第1流路壁122及び第2流路壁132は互いに協力してバイパス流路111を形成する。
【0054】
ここで、第1流路壁122及び第2流路壁132が互いに協力してバイパス流路111を形成するというのは、バイパス流路111の一部の壁面が第1流路壁122によって形成され、バイパス流路111の他の壁面が第2流路壁132によって形成されるものであると定義する。
【0055】
例えば、バイパス流路111の底面は第1流路壁122によって形成されてよく、バイパス流路111の天井面は第2流路壁132によって形成されてよい。本発明の他の実施形態によれば、第1流路壁の側端部に上部へ折り曲げられた第1延長壁(図示省略)を形成し、第2流路壁の側端部に下部へ折り曲げられた第2延長壁(図示省略)を形成し、第1延長壁及び第2延長壁によってバイパス流路の両側面が形成されるように構成することも可能である。
【0056】
ちなみに、湿潤空気供給口112を介してハウジング110の内部に流入された湿潤空気中の一部は、バイパス流路111に沿って流動された後、直ちに湿潤空気排出口114を介してハウジング110の外部に排出され、湿潤空気供給口112を介してハウジング110の内部に流入された湿潤空気中の残りは、加湿膜140を経る(通過する)加湿流路(
図1を基準にバイパス流路の下部空間)(図示省略)に沿って流動された後、湿潤空気排出口114を介してハウジング110の外部に排出される。
【0057】
好ましくは、バイパス流路111は、選択的に断面積が可変されるようになっている。
【0058】
このように、バイパス流路111の断面積が選択的に可変されるようにすることで、ハウジング110に供給された湿潤空気中、バイパス流路111を介してバイパスされる湿潤空気のバイパス流量を選択的に調節することができるので、燃料電池スタック200の運転条件(又は湿度状態)に従って加湿空気の加湿量と加湿器100の差圧を調節するのが可能である。
【0059】
これは、バイパス流路111を介してバイパスされる湿潤空気のバイパス流量を制御することにより、加湿空気の加湿量と加湿器100の差圧を調節できるということに起因したものである。
【0060】
例えば、バイパス流路111の断面積を低減(縮小)させるほど、バイパス流路111を介してバイパスされる湿潤空気のバイパス流量は少なくなる一方、加湿流路に沿って流動する湿潤空気の流量は増加するようになる。
【0061】
加湿流路に沿って流動する湿潤空気の流量が増加すれば、加湿空気の加湿量が増加して燃料電池スタック200の性能は向上されるが、加湿器100の差圧(ハウジング110の入口と出口の圧力差)が高くなるので、電力の消費が高くなる。
【0062】
逆に、バイパス流路111の断面積を増加(拡張)させるほど、バイパス流路111を介してバイパスされる湿潤空気のバイパス流量は増加し、加湿流路に沿って流動する湿潤空気の流量は減少するようになる。
【0063】
加湿流路に沿って流動する湿潤空気の流量が減少すれば、加湿器100の差圧が低くなるため電力の消費は低くなるが、加湿空気の加湿量が減少して燃料電池スタック200の性能が低下する。
【0064】
したがって、バイパス流路111の断面積を選択的に可変することで、燃料電池スタック200の運転条件(又は湿度状態)に従って加湿空気の加湿量と加湿器100の差圧を調節するのが可能である。
【0065】
バイパス流路111の断面積は、要求される条件及び設計仕様によって多様な方式に可変し得る。
【0066】
例えば、ハウジングキャップ130は、互いに異なる高さに第2流路壁132が形成されている複数のキャップ部材を含んでよく、キャップ部材を交替することによりバイパス流路111の断面積を可変させることができる。
【0067】
より具体的には、
図2及び
図3に示す通り、ハウジングキャップ130は、第1流路壁122に対して第1高さ(H1)に配置される第2流路壁132が形成され、ハウジング本体120に結合される第1キャップ部材130’と、第1高さ(H1)と異なる第2高さに(H2)に配置される第2流路壁132が形成され、ハウジング本体120に結合される第2キャップ部材130’’と、を含み、第1キャップ部材130’及び第2キャップ部材130’’のうち何れか一つをハウジング本体120に結合してバイパス流路111の断面積を可変させることができる。
【0068】
より具体的には、
図2に示す通り、第1キャップ部材130’には第2流路壁132が第1流路壁122に対して第1高さ(H1)に配置されるように形成され、バイパス流路111の断面積(CS1)は、第1高さ(H1)に配置される第2流路壁132及び第1流路壁122によって決定されてよい。
【0069】
図3に示す通り、第2キャップ部材130’’には第2流路壁132が第1高さ(H1)より高い第2高さ(H2)に配置されるように形成され、バイパス流路111の断面積(CS2)は、第2高さ(H2)に配置される第2流路壁132及び第1流路壁122によって決定されてよい。
【0070】
再び
図2及び
図3に示す通り、ハウジング本体120に第2キャップ部材130’’を結合すれば、ハウジング本体120に第1キャップ部材130’が結合された場合よりバイパス
流路111の断面積が拡張(CS2>CS1)される。逆に、ハウジング本体120に第1キャップ部材130’を結合すれば、ハウジング本体120に第2キャップ部材130’’が結合された場合よりバイパス流路111の断面積が縮小(CS1<CS2)される。
【0071】
前述及び図示した本発明の実施形態では、互いに異なる高さに第2流路壁132が形成されている2つのキャップ部材を用いてバイパス流路111の断面積を可変する例を挙げて説明しているが、本発明の他の実施形態によれば、互いに異なる高さに第2流路壁が形成されている3つ以上のキャップ部材を用いてバイパス流路の断面積を可変することも可能である。
【0072】
他の一例として、燃料電池用加湿器100は、互いに異なるサイズを有し、バイパス流路111を部分的に遮断する複数の隔壁部材を含んでよく、隔壁部材を交替することによりバイパス流路111の断面積を可変させることができる。
【0073】
より具体的には、
図4及び
図5に示す通り、燃料電池用加湿器100は、第1サイズ(L1)を有するように形成され、バイパス流路111を部分的に遮断する第1隔壁部材150と、第1サイズ(L1)と異なる第2サイズ(L2)を有するように形成され、バイパス流路111を部分的に遮断する第2隔壁部材150’と、を含み、第1隔壁部材150及び第2隔壁部材150’のうち何れか一つをバイパス流路111の内部に配置してバイパス流路111の断面積を可変させることができる。
【0074】
ちなみに、本発明において第1隔壁部材150と第2隔壁部材150’が互いに異なるサイズを有するというのは、第1隔壁部材150と第2隔壁部材150’の長さ、幅、高さ、面積のうち何れか一つ以上が互いに異なるものであると定義される。
【0075】
より具体的には、
図4に示す通り、第1隔壁部材150は第1サイズ(L1)を有するように形成され、バイパス流路111を部分的に遮断するようにバイパス流路111の内部に配置され、バイパス流路111の断面積(CS1)は第1サイズ(L1)を有する第1隔壁部材150と第1流路壁122(又は第2流路壁)によって決定されてよい。例えば、第2流路壁132の内面には結合溝134が形成されてよく、第1隔壁部材150は結合溝134に結合されバイパス流路111を部分的に遮断することができる。
【0076】
図5に示す通り、第2隔壁部材150’は第1サイズ(L1)より大きい第2サイズ(L2)を有するように形成され、バイパス流路111の断面積(CS2)は第2隔壁部材150’と第1流路壁122(又は第2流路壁)によって決定されてよい。例えば、第2流路壁132の内面には結合溝134が形成されてよく、第2隔壁部材150’は結合溝134に結合されバイパス流路111を部分的に遮断することができる。
【0077】
再び
図4及び
図5に示す通り、第2流路壁132に第2隔壁部材150’を結合すれは、第2流路壁132に第1隔壁部材150が結合された場合よりバイパス流路111の断面積が拡張(CS2>CS1)される。逆に、第2流路壁132に第1隔壁部材150を結合すれば、第2流路壁132に第2隔壁部材150’が結合された場合よりバイパス流路111の断面積が縮小(CS1<CS2)される。
【0078】
前述及び図示した本発明の実施形態では、互いに異なるサイズを有する2つの隔壁部材を用いてバイパス流路111の断面積を可変する例を挙げて説明しているが、本発明の他の実施形態によれば、互いに異なるサイズを有する3つ以上の隔壁部材を用いてバイパス流路の断面積を可変することも可能である。
【0079】
また他の一例として、燃料電池用加湿器100は、バイパス流路111を部分的に開閉する遮断部材160を含んでよく、遮断部材160を開閉することによってバイパス流路111の断面積を可変させることができる。
【0080】
より具体的には、
図6に示す通り、燃料電池用加湿器100は、バイパス流路111を部分的に開閉する遮断部材160と、燃料電池スタック200の湿度に対応して遮断部材160の開閉を制御する制御部180と、を含み、遮断部材160を開閉してバイパス流路111の断面積(ΔCS)を可変させることができる。
【0081】
例えば、遮断部材160は第2流路壁132に昇降可能に結合され、遮断部材160を選択的に昇降させる昇降部170を含んでよく、制御部180は燃料電池スタック200の湿度に対応して昇降部170を制御する。
【0082】
遮断部材160は、第2流路壁132に昇降可能に結合され、遮断部材160が昇降しつつ第2流路壁132の内面に突出(開閉)する程度によってバイパス流路111が部分的に遮断され得る。
【0083】
昇降部170は、遮断部材160を昇降させることができる多様な構造に形成されてよく、昇降部170の構造及び昇降の方式によって本発明が制限されるか限定されるのではない。例えば、昇降部170は、モーターによって回転するリードスクリューにより遮断部材160を昇降させるようになされてよい。本発明の他の実施形態によれば、昇降部がリニアモーター又はソレノイド等を用いて遮断部材を昇降させるようになることも可能である。
【0084】
制御部180は、燃料電池スタック200の湿度に対応して昇降部170を制御するように設けられ、制御部180によって遮断部材160の昇降の可否及び昇降の高さが制御され得る。
【0085】
例えば、制御部180は、燃料電池スタック200の湿度が目標湿度の範囲より低ければ(低加湿状態)、遮断部材160を下降させてバイパス流路111の断面積を縮小し、燃料電池スタック200の湿度が目標湿度の範囲より高ければ(過度な加湿状態)、遮断部材160を上昇させてバイパス流路111の断面積を拡張し得る。さらに、燃料電池スタック200の湿度が目標湿度の範囲にあれば、遮断部材160の昇降が停止され得る。
【0086】
前述及び図示した本発明の実施形態で、遮断部材160が昇降されつつバイパス流路111の断面積を可変させる例を挙げて説明しているが、本発明の他の実施形態によれば、遮断部材がカメラの絞り方式でバイパス流路を部分的に開閉するか、引き戸方式でバイパス流路を部分的に開閉しつつ、バイパス流路の断面積を可変させることも可能である。
【0087】
前述した通り、本発明の好ましい実施形態を参照して説明したが、当該技術分野の熟練した当業者であれば、特許請求の範囲に記載されている本発明の思想及び領域から外れない範囲内で、本発明を多様に修正及び変更し得ることが理解できるはずである。
【0088】
前述した通り、本発明によれば、燃料電池の運転条件に従って加湿器の加湿量及び差圧を調節するという有利な効果が得られる。
【0089】
特に、本発明によれば、加湿器の差圧の増加によるエネルギー効率の低下を最小化するという有利な効果が得られる。
【0090】
また、本発明によれば、過度な加湿による燃料電池内のフラッディング現象を抑制するという有利な効果が得られる。
【0091】
また、本発明によれば、構造を簡素化し、設計自由度及び空間活用性を向上させるという有利な効果が得られる。
【符号の説明】
【0092】
100:加湿器110:ハウジング111:バイパス流路112:湿潤空気供給口114:湿潤空気排出口120:ハウジング本体122:第1流路壁130:ハウジングキャップ130’:第1キャップ部材130’’:第2キャップ部材132:第2流路壁134:結合溝140:加湿膜150:第1隔壁部材150’:第2隔壁部材160:遮断部材170:昇降部180:制御部200:燃料電池スタック