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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022050691
(43)【公開日】2022-03-30
(54)【発明の名称】結合金具
(51)【国際特許分類】
   F16L 37/086 20060101AFI20220323BHJP
【FI】
F16L37/086
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022010325
(22)【出願日】2022-01-26
(62)【分割の表示】P 2020122094の分割
【原出願日】2020-07-16
(71)【出願人】
【識別番号】391001169
【氏名又は名称】櫻護謨株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001737
【氏名又は名称】特許業務法人スズエ国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】小堺 剛
(57)【要約】
【課題】 受け金具と差し金具の意図せぬ離脱を効果的に抑制する。
【解決手段】 押し輪と係合部が設けられた差し金具と爪が設けられた受け金具とを備える差込式の結合金具において、押し輪は、爪を押し上げるための先端部と、軸方向において先端部の反対側に位置する後端部とを有している。差し口は、軸方向において係合部の反対側に位置する差し金具の端部と後端部との間に半径方向に突出する突出部を有している。
【選択図】 図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
差し口が備える差し金具を受け口が備える受け金具に挿入することにより、前記差し金具の外周面に設けられた係合部と、前記受け金具に設けられ前記受け金具の軸に向けて付勢された爪とが前記軸と平行な軸方向に係合し、前記外周面に対し前記軸方向にスライド可能に設けられた押し輪を前記爪と前記外周面の間に移動させて前記軸を中心とした半径方向に前記爪を押し上げることにより前記係合部と前記爪の係合が解除される結合金具であって、
前記押し輪は、前記爪を押し上げるための先端部と、前記軸方向において前記先端部の反対側に位置する後端部と、を有し、
前記差し口は、前記軸方向において前記係合部の反対側に位置する前記差し金具の端部と前記後端部との間に前記半径方向に突出する突出部を有する、
結合金具。
【請求項2】
前記突出部の外径は、前記後端部の外径よりも大きい、
請求項1に記載の結合金具。
【請求項3】
前記軸方向において、前記突出部と前記後端部との間には、すき間が形成される、
請求項1または2に記載の結合金具。
【請求項4】
前記差し金具は、前記端部と前記後端部との間にホースと接続される装着部を有し、
前記差し口は、前記軸方向において前記装着部と前記後端部との間に前記受け金具からの前記差し金具の誤脱を防止する誤脱防止具をさらに備え、
前記誤脱防止具は、円筒部と、前記円筒部に設けられた前記突出部とを有する、
請求項1乃至3のいずれか1項に記載の結合金具。
【請求項5】
前記差し金具は、前記端部と前記後端部との間にホースと接続される装着部を有し、
前記差し口は、前記装着部に接続された前記ホースを保持するための押え具と、前記受け金具からの前記差し金具の誤脱を防止する誤脱防止具と、をさらに備え、
前記誤脱防止具は、円筒部と、前記円筒部に設けられた前記突出部とを有し、
前記装着部に前記ホースが接続されている状態において、前記円筒部は前記半径方向において前記装着部と前記押え具との間に位置するとともに、前記突出部は前記軸方向において前記押え具と前記後端部との間に位置する、
請求項1乃至3のいずれか1項に記載の結合金具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、差し金具を受け金具に差し込むことにより両金具が結合される差込式の結合金具に関する。
【背景技術】
【0002】
消防用ホース同士を接続するための金具として、雄金具である差し金具と、雌金具である受け金具とを備えた差込式の結合金具が知られている(例えば特許文献1,2参照)。この結合金具においては、差し金具の先端に設けられた環状の係合部と、受け金具に設けられ当該金具の内側に向けて付勢された複数の爪とを係合させることにより、差し金具が受け金具に対して抜け止めされる。
【0003】
各爪は受け金具の軸を中心とした半径方向に移動可能であり、結合時においては差し金具の外周面に接触している。また、差し金具にはその外周面に沿ってスライド可能な押し輪が装着されている。この押し輪により各爪を半径方向に押し上げることで各爪と係合部の係合が解除され、差し金具を受け金具から抜き出すことが可能となる。
【0004】
実際の消火活動においては結合金具が現場の障害物などに接触した際に押し輪が押され、差し金具と受け金具が離脱する虞がある。この点に関し、特許文献1,2においては意図せぬ離脱を抑制するための結合金具の構造が提案されている。
【0005】
特許文献1に開示された結合金具においては、差し金具の外周面および押し輪の内周面に滑り止め溝が形成され、かつこれら外周面と内周面の間に隙間が設けられている。これにより、障害物によって押し輪に不均等な力が加わった場合には押し輪の先端の一部が差し金具の外周面から浮き上がるとともに他の部分が当該外周面に当接する。この当接した部分において差し金具の外周面と押し輪の内周面の溝が係合するために押し輪の移動が規制され、押し輪の先端が爪に到達しない。
【0006】
特許文献2に開示された結合金具においては、軸線方向に延びる保護枠が受け金具の周囲に設けられ、結合時には保護枠が押し輪(解除部材)のフランジ部よりも受け金具側に位置している。さらに保護枠は弾性を有しており、障害物が押し輪に接触した場合でも保護枠の内縁を弾性変形させてフランジ部を受け口側に移動させる十分な力が加わらない限り、押し輪の先端が爪に到達しない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2016-14477号公報
【特許文献2】特開2018-31464号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
上記特許文献1,2に開示された結合金具を踏まえても、受け金具と差し金具の意図せぬ離脱を抑制するための構造に関しては未だに種々の改善の余地がある。例えば、特許文献1,2のいずれに開示された結合金具においても、押し輪が障害物により押される角度や力の程度によっては離脱を十分に抑制できない。
【0009】
そこで、本発明は、受け金具と差し金具の意図せぬ離脱をより効果的に抑制することが可能な改善された結合金具を提供することを目的の一つとする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の一態様に係る結合金具においては、差し口が備える差し金具を受け口が備える受け金具に挿入することにより、前記差し金具の外周面に設けられた係合部と、前記受け金具に設けられ前記受け金具の軸に向けて付勢された爪とが前記軸と平行な軸方向に係合し、前記外周面に対し前記軸方向にスライド可能に設けられた押し輪を前記爪と前記外周面の間に移動させて前記軸を中心とした半径方向に前記爪を押し上げることにより前記係合部と前記爪の係合が解除される。前記押し輪は、前記爪を押し上げるための先端部と、前記軸方向において前記先端部の反対側に位置する後端部と、を有している。前記差し口は、前記軸方向において前記係合部の反対側に位置する前記差し金具の端部と前記後端部との間に前記半径方向に突出する突出部を有している。
【0011】
前記突出部の外径は、前記後端部の外径よりも大きくてもよい。前記軸方向において、前記突出部と前記後端部との間には、すき間が形成されてもよい。前記差し金具は、前記端部と前記後端部との間にホースと接続される装着部を有し、前記差し口は、前記軸方向において前記装着部と前記後端部との間に前記受け金具からの前記差し金具の誤脱を防止する誤脱防止具をさらに備え、前記誤脱防止具は、円筒部と、前記円筒部に設けられた前記突出部とを有してもよい。
【0012】
前記差し金具は、前記端部と前記後端部との間にホースと接続される装着部を有し、前記差し口は、前記装着部に接続された前記ホースを保持するための押え具と、前記受け金具からの前記差し金具の誤脱を防止する誤脱防止具と、をさらに備え、前記誤脱防止具は、円筒部と、前記円筒部に設けられた前記突出部とを有し、前記装着部に前記ホースが接続されている状態において、前記円筒部は前記半径方向において前記装着部と前記押え具との間に位置するとともに、前記突出部は前記軸方向において前記押え具と前記後端部との間に位置してもよい。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、受け金具と差し金具の意図せぬ離脱を効果的に抑制することが可能な改善された結合金具を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1図1は、第1実施形態に係る結合金具の部分断面図である。
図2図2は、第1実施形態に係る受け口と差し口が連結された状態における結合金具の部分断面図である。
図3図3は、第1実施形態に係る結合金具の比較例である。
図4図4は、消火活動の現場における図3に示した結合金具の状態を示した図である。
図5図5は、消火活動の現場における第1実施形態に係る結合金具の状態を示した図である。
図6図6は、第2実施形態に係る差し口の部分断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明のいくつかの実施形態につき図面を参照しながら説明する。
[第1実施形態]
本実施形態においては、主に消防分野での使用が想定される差込式の結合金具を例示する。ただし、当該結合金具は、消防分野以外にも工業用や農業用の流路の結合など種々の用途で利用できる。
【0016】
図1は、第1実施形態に係る結合金具C1の部分断面図である。結合金具C1は、受け口F1と、差し口M1とを備えている。受け口F1は、軸AX1を中心とした円筒状の受け金具1(雌金具)を備えている。差し口M1は、軸AX2を中心とした円筒状の差し金具2(雄金具)を備えている。
【0017】
図1において、受け金具1と差し金具2は、軸AX1,AX2が一致した状態で並んでいる。この状態において軸AX1,AX2と平行な方向を軸方向Dxと定義する。軸AX1,AX2を中心として軸AX1,AX2から離れる方向を半径方向Drと定義する。また、図1に示すように軸AX1,AX2を中心とした周方向Dθを定義する。
【0018】
受け金具1は、軸方向Dxにおいて第1端部1aおよび第2端部1bを有している。受け金具1の内部には、第1流路10が形成されている。受け金具1は、消防用ホースの端部と接続される装着部11を第1端部1a側に有するとともに、装着部11よりも外径が大きい拡径部12を第2端部1b側に有している。図1に示す例においては、装着部11の外周面には消防用ホースを抜け止めするための軸方向Dxに並ぶ複数の環状の段差が形成されている。装着部11の形状は、図1に示す例に限られない。装着部11と消防用ホースの端部は種々の形式で接続される。
【0019】
例えば、消防用ホースの端部に装着部11を挿入し、消防用ホースの外側から円筒状の押し具や金属線(ワイヤー)により消防用ホースを装着部11に対し締め付けることで、消防用ホースは装着部11に固定される。また、他の例として受け金具1の第1端部1a側の内部に装着部11を有している場合、装着部11に消防用ホースの外面を挿入し、さらに消防用ホースの内側に押え具を挿入し、押え具を消防用ホースの内側で拡大することで、消防用ホースは装着部11に固定される。受け金具1の第2端部1bは、周方向Dθの全体において軸AX1に向けて突出している。
【0020】
受け口F1は、拡径部12に連結された環状のしめ輪3と、しめ輪3の外周面に装着された環状の保護部材4とをさらに備えている。しめ輪3は金属材料で形成され、例えば複数のねじによって拡径部12に連結されている。しめ輪3は、第2端部1bと軸方向Dxに対向する円環部31を有している。円環部31は、周方向Dθの全体において軸AX1に向けて突出している。保護部材4は例えばゴムで形成され、その外周面は受け口F1において最も半径方向Drに突出している。保護部材4は、例えばタイヤやバンドなどとも呼ばれる。
【0021】
受け口F1は、しめ輪3に外側から覆われた複数の爪5と、拡径部12の内側に配置されたシール材6と、複数の爪5を保持する爪座7とをさらに備えている。複数の爪5は、周方向Dθに沿った円弧状であり、均等な間隔で周方向Dθに並んでいる。シール材6は、例えば環状のゴムパッキンである。爪座7は、しめ輪3によって受け金具1に固定されており、第2端部1bと円環部31の間に配置されている。複数の爪5は、爪座7と第2端部1bの間において、半径方向Drに移動可能である。複数の爪5は、例えば板ばねである弾性部材50によって軸AX1に向けて付勢されている。
【0022】
差し金具2は、軸方向Dxにおいて第1端部2aおよび第2端部2bを有している。差し金具2の内部には、第2流路20が形成されている。差し金具2は、受け金具1側の消防用ホースとは異なる他の消防用ホースの端部と接続される装着部21を第1端部2a側に有するとともに、周囲よりも半径方向Drにやや突出した環状の係合部22を第2端部2b側に有している。装着部21の外周面には、装着部11と同じく複数の環状の段差が形成されている。装着部21と消防用ホースの端部は、上述した装着部11における場合と同様、種々の形式で接続される。
【0023】
差し口M1は、装着部21と係合部22の間における差し金具2の外周面2cに固定された環状の第1止め輪81および第2止め輪82を備えている。軸方向Dxにおいて、第1止め輪81は第2端部2b側に設けられ、第2止め輪82は第1端部2a側に設けられている。差し口M1は、係合部22と第1止め輪81の間に設けられた押し輪9と、第1止め輪81と第2止め輪82の間に設けられ受け金具1からの差し金具2の誤脱を防止する誤脱防止具9aとをさらに備えている。誤脱とは、受け金具1と差し金具2とが意図せずに離脱することをいう。第1止め輪81および第2止め輪82は、例えば外周面2cに設けられた環状の溝に装着された金属線であり、少なくとも一部が外周面2cよりも半径方向Drに突出している。
【0024】
押し輪9は、外周面2cを囲う円筒状である。押し輪9は、後述する係合部22と爪5が係合している状態において爪5を押し上げるための先端部91を第2端部2b側に有し、軸方向Dxにおいて先端部91の反対側に後端部92を有している。装着部21は、第1端部2aと押し輪9の後端部92との間に位置しているといえる。図1に示すように後端部92には、例えば周方向Dθの全体において半径方向Drに突出しているフランジ部が設けられている。後端部92の外周面は、押し輪9において半径方向Drに最も突出している。また、押し輪9は、軸方向Dxにおいて後端部92の第1端部2a側に端面93を有している。
【0025】
係合部22および第1止め輪81により、押し輪9が差し金具2に対し抜け止めされている。押し輪9は、差し金具2の外周面2cに対して固定されておらず、係合部22と第1止め輪81の間において外周面2cに対し軸方向Dxにスライド可能である。また、押し輪9は、差し口M1と受け口F1が結合されていない状態および差し口M1と受け口F1が結合された状態の双方において、外周面2cに対し周方向Dθに回動可能である。差し口M1は、軸方向Dxにおいて装着部21と押し輪9の後端部92との間に誤脱防止具9aを備えているといえる。
【0026】
誤脱防止具9aは、外周面2cを囲う円筒部91aと、円筒部91aに設けられた突出部92aとを有している。誤脱防止具9aは、例えば金属材料で形成される。図1に示す例においては、突出部92aは円筒部91aの第1端部2a側の端部に設けられている。差し口M1は、軸方向Dxにおいて係合部22の反対側に位置する第1端部2aと後端部92との間に突出部92aを有しているといえる。ただし、突出部92aが設けられる位置は、図1に示す例に限られない。突出部92aは、周方向Dθの全体において半径方向Drに突出している。軸方向Dxにおいて、突出部92aの幅は円筒部91aの幅よりも小さくてもよい。
【0027】
突出部92aは、軸方向Dxにおいて第1端部2a側の端面93aと、第2端部2b側の端面94aとを有している。突出部92aの外周面は、誤脱防止具9aにおいて半径方向Drに最も突出している。図1に示す例においては、突出部92aの外周面よりも保護部材4の外周面のほうが半径方向Drに突出している。すなわち、保護部材4の外周面は、受け口F1および差し口M1において最も半径方向Drに突出しているといえる。
【0028】
第1止め輪81および第2止め輪82により、誤脱防止具9aが差し金具2に対し抜け止めされている。誤脱防止具9aは、第1止め輪81および第2止め輪82により軸方向Dxにスライドしない。誤脱防止具9aは、軸方向Dxにスライドしないが、外周面2cに対し周方向Dθに回動可能に取り付けられてもよい。誤脱防止具9aは、外周面2cに対し周方向Dθに回動しないように固定されてもよい。
【0029】
次に、押し輪9と誤脱防止具9aとの関係について説明する。誤脱防止具9aの突出部92aの外径φ2は、押し輪9の後端部92の外径φ1よりも大きいことが望ましい。外径φ1は軸AX1,AX2から後端部92の外周面までの距離に相当し、外径φ2は軸AX1,AX2から突出部92aの外周面までの距離に相当する。図1に示す例においては、突出部92aの外径φ2は後端部92の外径φ1よりも大きい。突出部92aの外径φ2と後端部92の外径φ1は等しくてもよい。誤脱防止具9aの軸方向Dxの長さは、押し輪9の軸方向Dxの長さよりも長くてもよいし、短くてもよい。
【0030】
軸方向Dxにおいて、突出部92aと後端部92との間には、周方向Dθの全体にわたり、すき間Gが形成されている。具体的にはすき間Gは、差し口M1において突出部92aの端面94aと後端部92の端面93との間に形成されている。すなわち、すき間Gの軸方向Dxの幅は、端面94aから端面93までの距離と等しいといえる。図1に示すように押し輪9の後端部92が第1止め輪81に接触している状態において、すき間Gの軸方向Dxの幅は、消防隊員などの作業者が作業をするのに必要な長さが確保されていればよい。例えば、押し輪9の後端部92が第1止め輪81に接触している状態において、すき間Gの軸方向Dxの幅は、作業者の親指が入る程度の長さであればよい。作業に必要なすき間Gが確保されていれば、差し口M1と受け口F1が結合された状態において、作業者は、すき間Gを介して後端部92の端面93を両手の親指などで押すことができる。
【0031】
さらに突出部92aには、軸方向Dxにおいて端面93a側と端面94a側とを連通する連通部が形成されてもよい。突出部92aが連通部を有していれば、すき間Gの軸方向Dxの幅が十分に確保されていない場合であっても、作業者は連通部を介して軸方向Dxにおいて端面93a側から後端部92の端面93に到達することができる。連通部は例えば突出部92aの外周面から軸AX2に向かって形成された切り欠きである。当該切り欠きは周方向Dθにおいて突出部92aに等間隔に複数配置されてもよい。
【0032】
図2は、第1実施形態に係る受け口F1と差し口M1が連結された状態における結合金具C1の部分断面図である。図2においては、差し金具2が受け金具1に挿入され且つ係合部22と爪5が係合している。受け口F1と差し口M1が連結された状態においては、軸AX1,AX2が一致する。
【0033】
まず、差し金具2を受け金具1に挿入し係合部22と爪5が係合するまでの流れを説明する。受け口F1と差し口M1を連結する際には、まず、しめ輪3の開口を通じて差し金具2の第2端部2bを受け金具1の拡径部12に挿入する。このとき、係合部22が弾性部材50の付勢力に抗して爪5を半径方向Drに押し上げる。これにより、図2に示すように第2端部2bが拡径部12の内面に接触する位置まで差し金具2が受け金具1に差し込まれる。
【0034】
第2端部2bが拡径部12の内面に接触した状態においては、受け金具1の内部に形成された第1流路10と、差し金具2の内部に形成された第2流路20とが接続される。このとき、シール材6のリップが係合部22の外周面22aに接触し、受け金具1と差し金具2の隙間が液密に保たれる。さらに、爪5が弾性部材50の付勢力により差し金具2の外周面2cに接触する。この状態においては、爪5の一部が係合部22と軸方向Dxに対向し、係合部22と爪5が軸方向Dxに係合する。この状態においては、受け金具1と差し金具2を離脱させることができない。
【0035】
次に、差し金具2が受け金具1に挿入された状態から係合部22と爪5の係合が解除されるまでの流れを説明する。受け金具1と差し金具2を離脱させる際には、押し輪9を用いて係合部22と爪5の係合を解除する。具体的には、図2の矢印Aで示すように押し輪9が爪5に向けて押されると、押し輪9が差し金具2の外周面2cに対し軸方向Dxにスライドする。例えば、作業者が後端部92の端面93を矢印Aで示す向きに両手の親指などで押すことで、押し輪9をスライドさせることができる。このとき、押し輪9の先端部91は、しめ輪3の円環部31と外周面2cの隙間および爪座7と外周面2cの隙間を通じて爪5に向かい、やがて爪5に接触する。さらに、押し輪9が矢印Aに示す向きに押し込まれると、爪5が弾性部材50の付勢力に抗して半径方向Drに押し上げられ、係合部22と爪5の係合が解除される。そして、受け金具1と差し金具2を離脱させることが可能となる。
【0036】
受け口F1と差し口M1が連結された状態における誤脱防止具9aについて説明する。押し輪9を軸方向Dxにスライドさせるためには、矢印Aに示す向きで後端部92の端面93に力を加える必要がある。誤脱防止具9aは軸方向Dxにおいて装着部21と押し輪9の後端部92との間に位置している。そのため、差し口M1が誤脱防止具9aを備えている場合、誤脱防止具9aは、障害物などが第1端部2a側から後端部92の端面93に到達することを抑制する。さらに、誤脱防止具9aの突出部92aの外径φ2が押し輪9の後端部92の外径φ1よりも大きい場合には、誤脱防止具9aは、障害物などが第1端部2a側から後端部92の端面93に到達することを効果的に抑制することができる。つまり、後端部92の端面93に到達するためには半径方向Drにおいて外側から後端部92の端面93に到達しなければならないため、後端部92の端面93には第1端部2a側から障害物などが当たりにくい。作業者が結合金具C1の押し輪9を軸方向Dxにスライドさせる場合には、作業者はすき間Gを介して後端部92の端面93に到達することができる。
【0037】
図3は、第1実施形態に係る結合金具C1の比較例である。図3に示した結合金具C2は、差し口M2が誤脱防止具を備えていない点で図1および図2に示した結合金具C1と相違する。差し口M2が誤脱防止具を備えていない場合、障害物などは第1端部2a側から後端部92の端面93に到達することができる。そのため、後端部92の端面93は、消火活動の現場において障害物などと当たる可能性がある。
【0038】
例えば、階段の段差などに後端部92の端面93が引っ掛かり、押し輪9が受け口F1側に向かって押され、押し輪9がスライドする可能性がある。これは、消火活動の現場において受け金具1と差し金具2とが意図せずに離脱(誤脱)する原因となり得る。
【0039】
図4は、消火活動の現場における図3に示した結合金具C2の状態を示した図である。図5は、消火活動の現場における第1実施形態に係る結合金具C1の状態を示した図である。図4および図5においては、結合金具C1,C2が階段S上に位置している。消火活動の現場における障害物としては、階段S以外にも柱や壁などの種々の障害物が想定され得る。
【0040】
図4の結合金具C2は誤脱防止具を備えていない差し口M2を備え、図5の結合金具C1は誤脱防止具9aを備えている差し口M1を備えている。受け金具1が有する装着部11と、差し金具2が有する装着部21は、消防用ホースH1,H2とそれぞれ接続されている。消防用ホースH1の受け金具1と接続された端部H1aとは反対側の端部には消防隊員Tが配置され、消防用ホースH2の差し金具2と接続された端部H2aとは反対側の端部にはポンプPが配置されている。図4および図5に示す例においては、矢印Bに示すように力が加えられている状況を想定する。すなわち、消防用ホースH2がポンプP側から引っ張られている。
【0041】
図4においては、階段Sの段差の角部SLが押し輪9の後端部92の端面93側に位置している。消防用ホースH2がポンプP側から引っ張られ矢印Bに示すように力が加わると、後端部92の端面93が角部SLに引っ掛かる。そして、後端部92の端面93が角部SLに引っ掛かった状態で矢印Bに示すように力が加わると、後端部92の端面93が角部SLに押され、押し輪9が軸方向Dxにおいて受け口F1側に向けてスライドする。さらに、矢印Bに示すように力が加わると、端面93が角部SLに押され、押し輪9がスライドし受け口F1側に押し込まれる。その結果、図2を用いて説明したように係合部22と爪5の係合が解除される。
【0042】
このように結合金具C2の場合、角部SLは軸方向Dxにおいて端部H2a側から後端部92の端面93に到達することができる。結合金具C2で結合された消防用ホースH1,H2を用いた消火活動では、結合金具C2が階段Sなどの障害物に当たると、押し輪9が意図せず押されて差し金具2と受け金具1が離脱する可能性がある。
【0043】
図5においては、階段Sの段差の角部SLが誤脱防止具9aの突出部92aの端面93a側に位置している。消防用ホースH2がポンプP側から引っ張られ矢印Bに示すように力が加わると、誤脱防止具9aの突出部92aの端面93aが角部SLに引っ掛かる。そのため、図4に示した例とは異なり、角部SLは軸方向Dxにおいて端部H2a側から後端部92の端面93に到達することができない。突出部92aの端面93aが角部SLに引っ掛かった状態で矢印Bに示すように力が加わると、突出部92aの端面93aに力が加わるが後端部92の端面93は角部SLに押されることはないため、押し輪9は軸方向Dxにスライドすることはない。そのため、係合部22と爪5の係合が解除されることはない。
【0044】
以上説明した第1実施形態によれば、受け金具1と差し金具2の意図せぬ離脱を効果的に抑制することが可能な結合金具C1を提供することができる。つまり、差し口M1が誤脱防止具9aを備えている場合、消火活動の現場において障害物などが第1端部2a側から後端部92の端面93に到達することを抑制できる。言い換えると、誤脱防止具9aが押し輪9を保護する役割を果たしている。
【0045】
図4で説明したように結合金具C2で結合された消防用ホースH1,H2を用いた消火活動では、結合金具C2が何らかの障害物に当たると、押し輪9が意図せず押されて差し金具2と受け金具1が離脱する可能性がある。このような離脱は、消火活動の重大な遅延に繋がりかねない。また、消防用ホースH1,H2内に圧力を保持した状態で結合金具C2が離脱するとけがなどの重大事故につながる可能性がある。
【0046】
これに対し第1実施形態に係る結合金具C1で結合された消防用ホースH1,H2であれば、差し口M1が誤脱防止具9aを備えているため、障害物などが第1端部2a側から後端部92の端面93に到達することはない。さらに、誤脱防止具9aの突出部92aの外径φ2が押し輪9の後端部92の外径φ1よりも大きい場合には、誤脱防止具9aは障害物などが第1端部2a側から後端部92の端面93に到達することを効果的に抑制することができる。
【0047】
差し口M1が誤脱防止具9aを備えていても、作業者はすき間Gを介して押し輪9に到達し、後端部92の端面93を両手の親指などで押すことができる。そのため、作業者による押し輪9を軸方向Dxにスライドさせる操作(離脱操作)は誤脱防止具9aにより妨げられることはない。
【0048】
[第2実施形態]
第2実施形態について説明する。第1実施形態と同様の構成要素には同一の符号を付し、説明を適宜省略する。
【0049】
図6は、第2実施形態に係る差し口M3の部分断面図である。差し口M3は、第1実施形態と同様、図示しない受け口F1と連結することが可能である。第2実施形態において、差し口M3は、装着部21に接続された消防用ホースH3を保持するための押え具Kと、受け金具1からの差し金具2の誤脱を防止する誤脱防止具9bとを備えている。差し口M3の装着部21には、図6に示すように半径方向Drにおいて軸AX2側から消防用ホースH3、消防用ホースH3を保護するための円筒状の保護布J、誤脱防止具9b、および押え具Kが装着されている。
【0050】
押え具Kは、例えば円筒状であって、金属材料で形成される。消防用ホースH3に装着部21が挿入され、外側から押え具Kにより誤脱防止具9bを介して保護布Jとともに装着部21に対して締め付けられることで、消防用ホースH3は装着部21に接続されている。押え具Kは、金属線(ワイヤー)などであってもよい。
【0051】
誤脱防止具9bは、外周面2cを囲う円筒部91bと、円筒部91bに設けられた突出部92bとを有している。誤脱防止具9bは、例えば樹脂材料で形成される。図6に示す例においては、突出部92bは円筒部91bの第2端部2b側の端部に設けられている。差し口M3は、軸方向Dxにおいて係合部22の反対側に位置する第1端部2aと後端部92との間に突出部92bを有しているといえる。第2実施形態においては、円筒部91bに対して突出部92bが設けられている位置が第1実施形態とは相違する。ただし、突出部92bが設けられる位置は、図6に示す例に限られない。突出部92bは、周方向Dθの全体において半径方向Drに突出している。軸方向Dxにおいて、突出部92bの幅は円筒部91bの幅よりも小さくてもよい。
【0052】
突出部92bは、軸方向Dxにおいて第1端部2a側の端面93bと、第2端部2b側の端面94bとを有している。突出部92bの外周面は、誤脱防止具9bにおいて半径方向Drに最も突出している。第1実施形態と同様、突出部92bの外周面よりも図示しない受け口F1が備える保護部材4の外周面のほうが半径方向Drに突出している。すなわち、保護部材4の外周面は、受け口F1および差し口M3において最も半径方向Drに突出しているといえる。
【0053】
装着部21に消防用ホースH3が接続されている状態において、誤脱防止具9bの円筒部91bは、半径方向Drにおいて装着部21と押え具Kとの間に位置している。一方、突出部92bは軸方向Dxにおいて押え具Kと後端部92との間に位置している。すわなち、円筒部91bが押え具Kにより装着部21に対して締め付けられている。図6に示す例においては、円筒部91bが押え具Kと保護布Jとの間に位置しているが、円筒部91bは保護布Jと消防用ホースH3との間に位置してもよいし、消防用ホースH3と装着部21との間に位置してもよい。誤脱防止具9bは、円筒部91bが装着部21と押え具Kとの間に位置することで差し金具2に対し抜け止めされている。誤脱防止具9bは、軸方向Dxにスライドしない。
【0054】
次に、押し輪9と誤脱防止具9bとの関係について説明する。誤脱防止具9bの突出部92bの外径φ3は、押し輪9の後端部92の外径φ1よりも大きいことが望ましい。外径φ3は軸AX2から突出部92bの外周面までの距離に相当する。図6に示す例においては、突出部92bの外径φ3は後端部92の外径φ1よりも大きい。突出部92bの外径φ3と後端部92の外径φ1は等しくてもよい。誤脱防止具9bの円筒部91bの軸方向Dxの長さは、装着部21の軸方向Dxの長さよりも長くてもよいし、短くてもよい。また、誤脱防止具9bの軸方向Dxの長さは、押し輪9の軸方向Dxの長さよりも長くてもよいし、短くてもよい。
【0055】
軸方向Dxにおいて、突出部92bと後端部92との間には、周方向Dθの全体にわたり、すき間Gが形成されている。具体的にはすき間Gは、差し口M3において突出部92bの端面94bと後端部92の端面93との間に形成されている。すなわち、すき間Gの軸方向Dxの幅は、端面94bから端面93までの距離と等しいといえる。図6に示すように押し輪9の後端部92が第1止め輪81に接触している状態において、すき間Gの軸方向Dxの幅は、消防隊員などの作業者が作業をするのに必要な長さが確保されていればよい。例えば、押し輪9の後端部92が第1止め輪81に接触している状態において、すき間Gの軸方向Dxの幅は、作業者の親指が入る程度の長さであればよい。作業に必要なすき間Gが確保されていれば、差し口M3と受け口F1が結合された状態において、作業者は、すき間Gを介して後端部92の端面93を両手の親指などで押すことができる。
【0056】
さらに突出部92bには、軸方向Dxにおいて端面93b側と端面94b側とを連通する連通部が形成されてもよい。突出部92bが連通部を有していれば、すき間Gの軸方向Dxの幅が十分に確保されていない場合であっても、作業者は連通部を介して軸方向Dxにおいて端面93b側から後端部92の端面93に到達することができる。連通部は例えば突出部92bの外周面から軸AX2に向かって形成された切り欠きである。当該切り欠きは周方向Dθにおいて突出部92bに等間隔に複数配置されてもよい。
【0057】
第2実施形態に係る差し口M3を備える結合金具であれば、第1実施形態に係る結合金具C1と同様に受け金具1と差し金具2の意図せぬ離脱を効果的に抑制することができる。差し口M3が備える誤脱防止具9bは、第1実施形態に係る誤脱防止具9aとは異なり、樹脂材料で形成されている。そのため、押え具Kは、誤脱防止具9bを介して装着部21に対して消防用ホースH3や保護布Jを締め付けることができる。また、図4に示した差し口M2のように誤脱防止具を備えない差し口であっても、消防用ホースを接続する際に装着部21と押え具Kとの間に誤脱防止具9bを配置することで、誤脱防止具9bを備える差し口M3に変更することができる。
【0058】
以上の実施形態は、本発明の範囲を各実施形態にて開示した構成に限定するものではない。その他にも、用途に応じた種々の構造を結合金具に適用できる。例えば、上記実施形態においては消防用ホースが受け口および差し口の双方に接続される結合金具を例示したが、受け口および差し口の少なくとも一方が消火栓や消防車両などの構造物に設けられてもよい。
【符号の説明】
【0059】
C1,C2…結合金具、F1…受け口、M1,M2,M3…差し口、1…受け金具、2…差し金具、3…しめ輪、4…保護部材、5…爪、6…シール材、7…爪座、81…第1止め輪,82…第2止め輪、9…押し輪、91…先端部、92…後端部、9a,9b…誤脱防止具、91a,91b…円筒部、92a,92b…突出部、H1,H2,H3…消防用ホース、J…保護布、K…押え具。
図1
図2
図3
図4
図5
図6