(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022050713
(43)【公開日】2022-03-30
(54)【発明の名称】施術支援システム、施術支援方法及び施術支援プログラム
(51)【国際特許分類】
A61C 13/36 20060101AFI20220323BHJP
【FI】
A61C13/36
【審査請求】有
【請求項の数】1
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022012739
(22)【出願日】2022-01-31
(62)【分割の表示】P 2018550096の分割
【原出願日】2017-10-18
(31)【優先権主張番号】P 2016218000
(32)【優先日】2016-11-08
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】519024474
【氏名又は名称】Safe Approach Medical株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100166006
【弁理士】
【氏名又は名称】泉 通博
(72)【発明者】
【氏名】チョ ビョンヒョン
(72)【発明者】
【氏名】大内田 理一
(72)【発明者】
【氏名】橋爪 誠
(72)【発明者】
【氏名】小栗 晋
(57)【要約】 (修正有)
【課題】インプラントを埋設する適正な位置を直観的で且つリアルタイムに把握して設計情報を作成する施術支援システムを提供する。
【解決手段】歯の基準位置を示す基準マーカ11と共にCT画像で撮像するCT装置12と、基準マーカとの相対位置が固定された第1の位置マーカ13と、操作部15の位置及び方向を特定する第2の位置マーカ16と、CT画像に基づいた3次元モデル情報と、操作部の長手方向に対して垂直方向に装着される仮想のインプラントの3次元モデル情報とを記憶する3次元モデル記憶部と、3つのマーカ11、13、16の位置情報から位置合わせをして3次元モデル情報を操作部及び被施術者の動きに応じて表示する表示制御部と、仮想のインプラントの3次元モデルが所望の位置及び角度で表示された状態となった時に、位置及び角度を設計情報として記憶するキャプチャ部とを備えた構成とする。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
被施術者の歯を基準位置を示す基準マーカと共にCT画像で撮像するCT撮像手段と、
前記被施術者に装着され、前記基準マーカとの相対位置が予め固定された位置を示す第1の位置マーカと、
施術者が操作する操作部に装着され、当該操作部の位置及び方向を特定する第2の位置マーカと、
少なくとも前記CT画像に基づいて生成された3次元モデル情報と、前記操作部の先端部分に当該操作部の長手方向に対して垂直方向に装着される仮想のインプラントの3次元モデル情報とを記憶する3次元モデル情報記憶手段と、
前記基準マーカ、前記第1の位置マーカ及び前記第2の位置マーカの位置情報から、前記CT画像の位置と前記仮想のインプラントとの位置合わせをし、前記3次元モデル情報を前記操作部及び前記被施術者の動きに応じて表示する表示制御手段と、
前記仮想のインプラントの3次元モデルが所望の位置及び角度で表示された状態となった時に、当該位置及び角度を設計情報として記憶するキャプチャ手段とを備えることを特徴とする施術支援システム。
【請求項2】
請求項1に記載の施術支援システムにおいて、
前記操作部の先端部分に当該操作部の長手方向に対して垂直方向に弾性力を生じる弾性体を有することを特徴とする施術支援システム。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の施術支援システムにおいて、
前記3次元処理手段が、前記操作部の先端部分に当該操作部の長手方向に対して垂直方向に取り付けられ、施術において使用されるドリル又はインプラントの3次元モデルを生成し、
前記表示制御手段が、前記CT画像の3次元モデル及び前記仮想インプラントの3次元モデルを表示した状態で、前記ドリル又は前記インプラントの3次元モデルを前記操作部及び前記被施術者の動きに応じて重畳させて表示することを特徴とする施術支援システム。
【請求項4】
請求項3に記載の施術支援システムにおいて、
前記表示制御手段が、施術開始前において、前記キャプチャ手段にて記憶された前記設計情報を表示すると共に、前記ドリル又は前記インプラントの先端部分を開始点とする仮想の前記ドリル又は前記インプラントの3次元モデルを表示し、施術開始後から所定の深さまで前記ドリル又は前記インプラントを進行した時点で、仮想の前記ドリル又は前記インプラントの3次元モデルを消去し、現実の前記ドリル又は前記インプラントの3次元モデルを位置合わせして表示切り替えすることを特徴とする施術支援システム。
【請求項5】
請求項1ないし4のいずれかに記載の施術支援システムにおいて、
前記基準マーカが、
前記被施術者の任意の一の歯の位置に固定される箇所から所定の長さを有する支持部と、
前記支持部に連接し、任意の他の歯に着接しない位置に配設されるマーカ部とを有することを特徴とする施術支援システム。
【請求項6】
コンピュータが、
被施術者の歯を基準位置を示す基準マーカと共に撮像されたCT画像と、施術者が操作する操作部の先端部分に当該操作部の長手方向に対して垂直方向に装着される仮想のインプラントとを3次元モデル化する3次元処理ステップと、
前記基準マーカと、前記被施術者に装着され、前記基準マーカとの相対位置が予め固定
された位置を示す第1の位置マーカと、前記操作部に装着され、当該操作部の位置及び方向を特定する第2の位置マーカとの位置情報から、前記CT画像の位置と前記仮想のインプラントとの位置合わせをし、前記3次元モデルを前記操作部及び前記被施術者の動きに応じて表示する表示制御ステップと、
前記仮想のインプラントの3次元モデルが所望の位置及び角度で表示された状態となった時に、操作者の指示に基づいて、前記位置及び角度を設計情報として記憶するキャプチャステップとを実行することを特徴とする施術支援方法。
【請求項7】
被施術者の歯を基準位置を示す基準マーカと共に撮像されたCT画像と、施術者が操作する操作部の先端部分に当該操作部の長手方向に対して垂直方向に装着される仮想のインプラントとを3次元モデル化する3次元処理手段、
前記基準マーカと、前記被施術者に装着され、前記基準マーカとの相対位置が予め固定された位置を示す第1の位置マーカと、前記操作部に装着され、当該操作部の位置及び方向を特定する第2の位置マーカとの位置情報から、前記CT画像の位置と前記仮想のインプラントとの位置合わせをし、前記3次元モデルを前記操作部及び前記被施術者の動きに応じて表示する表示制御手段、
前記仮想のインプラントの3次元モデルが所望の位置及び角度で表示された状態となった時に、操作者の指示に基づいて、前記位置及び角度を設計情報として記憶するキャプチャ手段としてコンピュータを機能させることを特徴とする施術支援プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、歯のインプラント施術を支援する施術支援システム等に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の歯科インプラントは、インプラントの位置を目視で確認し、手術用のドリルを利用して顎に穴を穿けていた。しかしながら、この方法は医師の経験に依存するため、未熟な医師が施術した場合に問題が起こり得る。
【0003】
そこで、石膏模型とサージカルガイドを用いてインプラントの位置を正確に誘導する技術が広がっている。また、他の方法として、口腔内の状態を3次元で表現し、映像を見ながらインプラントの設計したり施術することも行われている。
【0004】
しかしながら、サージカルガイドを用いた場合は、正確な位置にインプラントを挿入することが可能であるが、サージカルガイド自体に厚みがあり、さらにドリルの深さを考慮すると、患者の顎の大きさによっては奥深くの位置を施術することができないという問題がある。また、3次元映像を見ながらのインプラントの設計、施術では、目視に比べて口腔内の状態を把握しやすいものの、直観的な3次元映像でリアルタイムに施術状態を把握するのが難しいという問題がある。
【0005】
歯科施術や歯科インプラント方法に関する技術として、例えば、特許文献1~3に示す技術が開示されている。特許文献1に示す技術は、所定の位置マーカ1、3を設置した歯顎模型2、治療器具4と、この歯顎模型2と治療器具4の3次元データからそれらの任意の断面または斜視の再構成画像を生成する画像再構成手段5と、位置マーカ1、3を検知することによって歯顎模型2と治療器具4との3次元的な位置と傾きを測定する位置測定手段6と、位置測定手段6によって得られたデータから算出した歯顎模型2と治療器具4との3次元的な相対関係にしたがって、歯顎模型2の再構成画像と治療器具4の再構成画像とを重畳して表示する画像表示手段7とを用い、画像表示手段7に表示された画像によって歯科実習を行うものである。
【0006】
特許文献2に示す技術は、走査線を利用した検査により得られた上顎又は下顎の一部を少なくとも含んだ3D画像情報を入力する3D画像情報入力手段20と、口腔内表面の形状・位置を認識する認識手段30と、認識手段30により認識された形状・位置と前記3D画像情報とに基づいて、両者を位置決めする位置決め手段40と、該位置決めされた3D画像情報の全部又は一部を、網膜操作ディスプレイ80に出力する出力手段50と、を備えるものである。
【0007】
特許文献3に示す技術は、患者の口腔内の粘膜に接着させるマーカーであって、当該マーカーは、X線非透過物質を含み、前記患者の口腔内の粘膜に接着する接着面を有し、口腔内計測器での計測の際、前記患者の口腔内の粘膜と区別できる素材で作製されており、(1)患者の口腔内の粘膜に当該マーカーが接着された状態での、X線CT機器によるCT撮影によって、当該患者の顎骨と当該マーカーとを含んだCT3次元データを取得でき、(2)患者の口腔内の粘膜に当該マーカーが接着された状態での、口腔内計測器による計測によって、当該患者の口腔内の粘膜と当該マーカーとを含んだ口腔内計測器3次元データを取得できる構成とするものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2001-51593号公報
【特許文献2】特開2011-212367号公報
【特許文献3】特開2013-322号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
特許文献1に示す技術は、歯顎模型と治療器具との位置合わせをし、3次元的な相対関係にしたがって3次元画像を重畳して表示するものであるが、歯科インプラントの設計段階において、インプラントを埋設する適正な位置を直観的で且つリアルタイムに把握して設計情報として作成できるものではない。
【0010】
また、特許文献2、3においても同様に、3次元画像を用いて施術のシミュレーション等を行うことが可能であるが、歯科インプラントの設計段階において、インプラントを埋設する適正な位置を直観的で且つリアルタイムに把握して設計情報として作成できるものではない。
【0011】
本発明は、簡単な操作のみで仮想的に3次元表示されたインプラントをキャプチャして保存することで、インプラントを埋設する適正な位置を直観的で且つリアルタイムに把握して設計情報を作成する施術支援システム等を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明に係る施術支援システムは、被施術者の歯を基準位置を示す基準マーカと共にCT画像で撮像するCT撮像手段と、前記被施術者に装着され、前記基準マーカとの相対位置が予め固定された位置を示す第1の位置マーカと、施術者が操作する操作部に装着され、当該操作部の位置及び方向を特定する第2の位置マーカと、少なくとも前記CT画像に基づいて生成された3次元モデル情報と、前記操作部の先端部分に当該操作部の長手方向に対して垂直方向に装着される仮想のインプラントの3次元モデル情報とを記憶する3次元モデル情報記憶手段と、前記基準マーカ、前記第1の位置マーカ及び前記第2の位置マーカの位置情報から、前記CT画像の位置と前記仮想のインプラントとの位置合わせをし、前記3次元モデル情報を前記操作部及び前記被施術者の動きに応じて表示する表示制御手段と、前記仮想のインプラントの3次元モデルが所望の位置及び角度で表示された状態となった時に、当該位置及び角度を設計情報として記憶するキャプチャ手段とを備えるも
のである。
【0013】
このように、本発明に係る施術支援システムにおいては、被施術者のCT画像と施術者が操作する操作部とを第1及び第2の位置マーカで位置合わせし、施術時に操作部に装着されるインプラントの仮想的な3次元モデル情報をCT画像と共に表示し、仮想のインプラントの3次元モデルが所望の位置及び角度で表示された状態となった時に、当該位置及び角度を設計情報として記憶するため、歯科インプラント施術の設計段階において、インプラントを埋設する適正な位置を直観的で且つリアルタイムに把握しながら設計情報を作成することができるという効果を奏する。
【0014】
本発明に係る施術支援システムは、前記操作部の先端部分に当該操作部の長手方向に対して垂直方向に弾性力を生じる弾性体を有するものである。
【0015】
このように、本発明に係る施術支援システムにおいては、操作部の先端部分に当該操作部の長手方向に対して垂直方向に弾性力を生じる弾性体を有するため、被施術者の歯茎又は当該被施術者のCT画像を元に作成された歯模型の施術位置に、弾性体の先端部分をある程度固定させて安定した状態で、この弾性体の弾性力を利用して仮想のインプラントの位置及び角度を自由に変化させつつ、適正な位置を視覚的に認識することで、操作性を格段に向上させると共に、インプラントの位置を正確に設計することができるという効果を奏する。
【0016】
また、弾性体の弾性力が操作部の押し込み動作をある程度吸収することで、例えば、歯茎に厚みがあるような被施術者であっても、位置合わせの情報のみで仮想のインプラントを正確な位置まで押し込んだ3次元表示を行うことが可能になる。
【0017】
本発明に係る施術支援システムは、前記3次元処理手段が、前記操作部の先端部分に当該操作部の長手方向に対して垂直方向に取り付けられ、施術において使用されるドリル又はインプラントの3次元モデルを生成し、前記表示制御手段が、前記CT画像の3次元モデル及び前記仮想インプラントの3次元モデルを表示した状態で、前記ドリル又は前記インプラントの3次元モデルを前記操作部及び前記被施術者の動きに応じて重畳させて表示するものである。
【0018】
このように、本発明に係る施術支援システムにおいては、操作部の先端部分に当該操作部の長手方向に対して垂直方向に取り付けられ、施術において使用されるドリル又はインプラントの3次元モデルを生成し、前記CT画像の3次元モデル及び前記仮想インプラントの3次元モデルを表示した状態で、前記ドリル又は前記インプラントの3次元モデルを前記操作部及び前記被施術者の動きに応じて重畳させて表示するため、視覚的な情報を利用して直観的で且つリアルタイムに操作を行うことができるという効果を奏する。
【0019】
本発明に係る施術支援システムは、前記表示制御手段が、施術開始前において、前記キャプチャ手段にて記憶された前記設計情報を表示すると共に、前記ドリル又は前記インプラントの先端部分を開始点とする仮想の前記ドリル又は前記インプラントの3次元モデルを表示し、施術開始後から所定の深さまで前記ドリル又は前記インプラントを進行した時点で、仮想の前記ドリル又は前記インプラントの3次元モデルを消去し、現実の前記ドリル又は前記インプラントの3次元モデルを位置合わせして表示切り替えするものである。
【0020】
このように、本発明に係る施術支援システムにおいては、施術開始前において、前記キャプチャ手段にて記憶された前記設計情報を表示すると共に、前記ドリル又は前記インプラントの先端部分を開始点とする仮想の前記ドリル又は前記インプラントの3次元モデルを表示し、施術開始後から所定の深さまで前記ドリル又は前記インプラントを進行した時
点で、仮想の前記ドリル又は前記インプラントの3次元モデルを消去し、現実の前記ドリル又は前記インプラントの3次元モデルを位置合わせして表示切り替えするため、被施術者は、表示されている設計情報にドリル又はインプラントの3次元モデルを合わせる動作を行うだけで、正確にインプラントの施術を行うことが可能になるという効果を奏する。
【0021】
本発明に係る施術支援システムは、前記基準マーカが、前記被施術者の任意の一の歯の位置に固定される箇所から所定の長さを有する支持部と、前記支持部に連接し、任意の他の歯に着接しない位置に配設されるマーカ部とを有するものである。
【0022】
このように、本発明に係る施術支援システムにおいては、基準マーカが、前記被施術者の任意の一の歯の位置に固定される箇所から所定の長さを有する支持部と、前記支持部に連接し、任意の他の歯に着接しない位置に配設されるマーカ部とを有するため、被施術者のいずれの歯に装着した場合であっても、マーカ部を被施療者の舌上付近に配置することが可能となり、CT撮像において銀歯などで起こり得るハレーション等のアーチファクトを避けて、マーカを明瞭に撮像して正確な基準位置を特定することが可能になるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【
図1】第1の実施形態に係る施術支援システムのシステム構成図である。
【
図2】基準マーカ及び第1の位置マーカの構造を示す第1の図である。
【
図3】基準マーカ及び第1の位置マーカの構造を示す第2の図である。
【
図4】基準マーカ及び第1の位置マーカを前歯以外の歯に固定した場合の状態を示す図である。
【
図8】設計用部品の押し込み前の状態と押し込み後の状態とを示す図である。
【
図9】第1の実施形態に係る施術支援システムにおける施療支援装置のハードウェア構成図である。
【
図10】第1の実施形態に係る施術支援システムにおける施療支援装置の構成を示す機能ブロック図である。
【
図11】施療時における表示態様の変化を示す図である。
【
図12】第1の実施形態に係る施療支援システムの動作を示すフローチャートである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0024】
以下、本発明の実施の形態を説明する。また、本実施形態の全体を通して同じ要素には同じ符号を付けている。
【0025】
(本発明の第1の実施形態)
本実施形態に係る施術支援システムについて、
図1ないし
図11を用いて説明する。本実施形態に係る施術支援システムは、歯科インプラントの施術に関するものであり、3次元インターフェースを用いて施術者の支援を行うものである。
【0026】
図1は、本実施形態に係る施術支援システムのシステム構成図である。施術支援システム1は、被施療者の歯に固定され、当該被施療者の歯の位置を特定するための基準位置となる基準マーカ11と、基準マーカ11を装着した状態で被施療者の上顎から下顎の全体又は一部を断層撮影するCT装置12と、被施療者の歯に固定され、基準マーカ11との相対位置を特定するための赤外線マーカである第1の位置マーカ13と、当該第1の位置マーカ13を赤外線で撮像する第1の撮像部14と、施療者が操作する操作部15に装着され、当該操作部15の位置及び方向を第1の位置マーカ13との関係で特定するための
赤外線マーカである第2の位置マーカ16と、当該第2のマーカ16を赤外線で撮像する第2の撮像部17と、第1の撮像部14及び第2の撮像部17から取得した位置情報に基づいて、被施術者の3次元CT画像、操作部15の少なくとも先端部分及びドリル等の施術部品を位置合わせして、3次元モデルでディスプレイ18に表示する施術支援装置19とを備える。
【0027】
施術者は、ディスプレイ18に表示された3次元画像を見ながら、インプラントの設計や施術を行うことで、3次元で直観的に操作することが可能となる。
【0028】
図2及び
図3は、基準マーカ11及び第1の位置マーカ13の構造を示す第1及び第2の図である。ここで、
図2においては、被施療者の歯に固定される固定部21に対して、基準マーカ11と第1の位置マーカ13とが連結して一体となっている構造を示している。これに対して
図3に示すように、実際に使用する際には、CT撮像時には、第1の位置マーカ13が排除された状態で使用され(
図3(A))、設計及び施術時には、基準マーカ11が排除された状態で使用される(
図3(B))。
【0029】
CT撮像時において、固定部21が被施療者の歯に装着される。固定部21は、被施療者の歯に合わせて予め作成されているものである。CT撮像時においては、固定部21に基準マーカ11のみが固着されており、被施療者の下顎から上顎にかけて全体又は一部がCTスキャンによりCT画像が撮像される。基準マーカ11は、固定部21から所定の長さを有する支持部22が歯の内側方向に延在しており、この支持部22に金属片が挿入されたマーカ部23が連接している。
図2においては、支持部22は被施療者の前歯部分に固定され、そこから歯の内側方向に延在しているが、
図4に示すように、支持部22は前歯以外のいずれの歯の部分にも固定することが可能であり、その固定された箇所から歯の内側方向に延在することで、マーカ部23を舌上近傍に配置することが可能となっている。
【0030】
基準マーカ11は正確な位置を決めをするために、極めて明確にCT画像に撮像される必要がある。
図2においては、マーカ部23に金属片が挿入されているため、CTスキャンをした際に、この金属片が明瞭に撮像されて、基準位置とすることが可能となる。また、いずれの歯を施療する場合であっても、支持部22を自由な位置に固定することが可能であるため、施術の邪魔にならない位置に支持部22を固定した状態で金属片の基準位置を明確に取得することが可能となっている。さらに、被施療者に銀歯などの金属が装着されている場合には、マーカ部23が常に舌上近傍に配置されることで、ハレーション等のアーチファクトを避けて、金属片を明瞭に撮像することが可能となる。
【0031】
CT画像の撮像が完了すると、マーカ部23は不要となるため除去される。なお、マーカ部23は支持部22に対して着脱可能にて配設されてもよいし、CTスキャン後に曲折して除去するようにしてもよい。そして、マーカ部23が排除されると第1の位置マーカ13が連結部24に装着されて
図3(B)の状態となる。第1の位置マーカ13は、連結部24に連結する第1支持部25と、当該第1支持部25に対してヨー軸を回転軸とする第1ヒンジ部26と、当該第1ヒンジ部26に接続する第2支持部27と、当該第2支持部26に対してピッチ軸を回転軸とする第2ヒンジ部28と、当該第2ヒンジ部28に接続する第3支持部29と、位置情報を特定するために配設される少なくとも3個以上の赤外線マーカ30とを備える。この赤外線マーカ30は、3次元座標上での位置を特定するために、3個以上のマーカが非直線上で同一平面に配置されている。
【0032】
第1の位置マーカ13における可動箇所は、第1ヒンジ部26及び第2ヒンジ部28のみであり、それ以外は可動できないように位置が固定されている。第1ヒンジ部26及び第2ヒンジ部28には、それぞれ回転角度を示すメモリが表示されており、各メモリに応
じて基準マーカ11との位置関係が予め特定されてデータ化されている。すなわち、赤外線マーカ30の座標を特定することで、CT画像上の座標に容易に変換することが可能となる。
【0033】
図5は、施療者が施術する際に使用する操作部15、すなわちハンドピースの構造を示す図である。ハンドピース31自体は、施療者が一般的に使用するものであるが、持手部32近傍に、ハンドピース31の位置及び角度を特定するために3個以上の赤外線マーカ33を備える。ハンドピース31の先端部34には、当該ハンドピース31の長手方向に垂直な方向を軸として回転しながら、施療者の歯茎や骨を切削するドリル35が装着される。
【0034】
なお、歯茎や骨を切削する際には、ドリル35が装着されるが、人工歯根を埋め込む際にはその人口歯根が装着される。すなわち、先端部34に装着される部品は、着脱可能となっている。
【0035】
ハンドピース31に対して赤外線マーカ33は固定された位置に配設されており、赤外線マーカ33の位置が特定されれば、先端部34及びそこに装着されたドリル35等の部品の位置を正確に特定することが可能となる。したがって、ハンドピース31に配設されている赤外線マーカ33と第1の位置マーカ13に配設されている赤外線マーカ30との相対的な位置関係が特定されると、ドリル35等の部品の位置と施療者の歯顎の位置とを位置合わせすることが可能となる。
【0036】
なお、本実施形態においては、このハンドピース31を使ってインプラントの設計作業を行う。設計作業では、被施療者の歯顎を模った石膏模型を利用してもよいし、被施療者の歯顎そのものを利用するようにしてもよい。また、設計作業においては、先端部34にドリル35ではなく設計用の部品を装着する。
図6は、設計時に用いる設計用部品の構造を示す図である。
【0037】
設計用部品40は、ハンドピース31の先端部34に連結部41を嵌合させて取り付けられる。設計用部品40の先端部分は被施療者の歯もしくは歯茎又は石膏模型の歯に当接させて固定する固定部42を有しており、施療者は、固定部42が被施療者の歯もしくは歯茎又は石膏模型の歯に当接した状態でハンドピース31の方向や角度を調整する。また、設計用部品40の中間位置には、当該設計用部品40の長手方向に弾性力を有する弾性体43が配設されており、ハンドピース31を押し込むことができるようになっている。
【0038】
図7は、具体的な設計方法を示す図である。
図7(A)に示すように、設計用部品40先端の固定部42を石膏模型の歯に当接させた状態でハンドピース31の方向や角度を調整する。上記で説明した位置合わせの処理等が施術支援装置19により実行されて(施術支援装置19の処理については、詳細を後述する)、ディスプレイ18に
図7(B)に示すような3次元モデルが表示される。
【0039】
図7(B)において、設計が終わり3次元モデル上で既に埋め込まれている仮想人工歯根(a)、設計用の仮想人工歯根(b)、設計用部品40(ドリル)(c)が表示されており、施術者(又は設計者)は、この表示内容に基づいて、設計用の仮想人工歯根(b)をハンドピース31の操作で動かし、それに伴って設計用の仮想人工歯根(b)の位置や角度の表示が変化し、ディスプレイ18上で人工歯根が所望の位置に配置されたら画面をキャプチャする。このとき、人工歯根を歯茎のより奥深くに配置したい場合には、ハンドピース31を深さ方向に押し込むことで設計用部品40の弾性体43が収縮し、人工歯根を奥深くに表示することが可能となる(
図8を参照)。キャプチャした画像は設計情報として記憶される。人工歯根を埋め込む箇所(a)について、全ての箇所で所望の位置に仮
想人工歯根が表示されたキャプチャ画像を取得したら設計作業を終了する。
【0040】
次に、施療支援装置19について説明する。
図9は、施療支援装置のハードウェア構成図である。施療支援装置19は、一般的なコンピュータで実現することが可能である。施療支援装置19は、CPU61、RAM62、ROM63、ハードディスク(HDとする)64、通信I/F65、及び入出力I/F66を備える。ROM63やHD64には、オペレーティングシステム、プログラム、3次元モデルデータ等が格納されており、必要に応じてプログラムがRAM62に読み出され、CPU61により実行される。
【0041】
通信I/F65は、装置間の通信を行うためのインタフェースである。入出力I/F66は、タッチパネル、キーボード、マウス、カメラ等の入力機器からの入力を受け付けたり、プリンタやディスプレイ等にデータを出力するためのインタフェースである。この入出力I/F66は、必要に応じて外付けのデバイス等を接続することができる。各処理部はバスを介して接続され、情報のやり取りを行う。なお、上記ハードウェアの構成はあくまで一例であり、必要に応じて変更可能である。
【0042】
図10は、施療支援装置の構成を示す機能ブロック図である。施療支援装置19は、CT装置12で撮像されたCT画像を取得して記憶するCT画像記憶部71と、CT画像記憶部71に記憶されているCT画像を3次元モデル化する3次元処理部72と、CT画像、ドリル35、ハンドピース31及び人工歯根等のディスプレイ18に表示される3次元モデル化されたオブジェクトを記憶する3次元モデル記憶部73と、第1撮像部14で撮像された第1のマーカ13の位置情報、及び、第2撮像部17で撮像された第2のマーカ16の位置情報を取得する位置情報取得部74と、第1のマーカ13の位置情報と第2のマーカ16の位置情報とから、CT画像、ドリル35、ハンドピース31及び人工歯根等の位置合わせを行う位置合わせ部75と、施療者の操作に基づいて、ディスプレイ18に表示されている人工歯根の位置をキャプチャし、設計情報として取得するキャプチャ部76と、キャプチャされた設計情報を記憶する設計情報記憶部77と、位置合わせした情報に基づいて、CT画像、ドリル35、ハンドピース31及び人工歯根等の3次元モデルをディスプレイ18に表示すると共に、必要に応じて設計情報記憶部77に記憶されている設計情報をディスプレイ18に表示する表示制御部78とを備える。
【0043】
図7において説明したように、設計時にはCT画像、設計用部品40、ハンドピース31及び仮想の人工歯根の3次元モデルを位置合わせ部75で位置合わせして表示し、施療者がハンドピース31の方向や角度を調整し、所望の位置及び角度で仮想の人工歯根が表示された状態でキャプチャ部76が被施療者の操作に基づいてキャプチャ処理を行う。キャプチャされた画像は設計情報として設計情報記憶部77に記憶される。全てのインプラントについて設計情報が記憶されると設計処理を終了する。
【0044】
施療時においては、CT画像、ドリル35、ハンドピース31及び人工歯根の3次元モデルを位置合わせ部75で位置合わせして表示し、さらに、設計情報記憶部77に記憶されている設計情報を重ねて表示する。
図11は、施療時における表示態様の変化を示す図である。
図11(A)に示すように、施療開始時には、ドリル35の先端部分にさらに人工歯根が仮想的に配置された状態の3次元モデルが表示される。当然、このとき、実際にはドリル35の先端に人工歯根などは配置されておらず、表示上加工しているだけである。施療者は、
図11(B)に示すように、仮想的に配置されている人工歯根を設計情報の人工歯根と重なるようにハンドピース31を操作する。つまり、この状態でドリル35での切削を行うことで、施術を設計情報に正確に適合させることが可能となる。
【0045】
施術開始後は、ドリル35での切削作業を進めることで、ディスプレイ18上では仮想の人工歯根が次第に設計情報としての人工歯根とズレを生じ、仮想の人工歯根のみが奥深
くに入り込む形となる(
図11(C))。このとき、実際の施療においては、ドリル35が人工歯根を埋め込む位置の途中まで切削を進めている状態である。そして、実際の施療において、ドリル35が所定の深さ(例えば、人工歯根を埋め込む最深位置の1/3~半分程度の位置)まで切削したら、表示制御部78が
図11(D)に示すように表示を切り替える。すなわち、仮想的に表示していた人工歯根を削除し、実際のドリル35の位置に当該ドリル35(又はディスプレイ18上は人工歯根でもよい(
図11においては人工歯根を表示))の3次元モデルを表示する。つまり、ある程度の深さまで切削したら、実際の施療状態を表示状態が一致するため、それ以降の施療は設計情報に合わせるように進めることで、施療を設計に正確に適合させることが可能となる(
図11(E))。
【0046】
以上のように、実際の施療作業において、施療者は、ドリル35による切削前の段階で仮想の人工歯根が設計情報として人工歯根に合致するようにハンドピース31の操作を行えばよく、また、切削段階にあっても、ある程度切削が進んだ段階で表示状態と施療状態が一致するため、表示されている人工歯根又はドリル35が、設計情報としての人工歯根の位置に合致するようにハンドピース31の操作を行えばよく、施療者の負担を軽減しつつ正確な施療を行うことが可能になる。
【0047】
なお、ドリル35による切削が完了した後、実際に人工歯根を埋め込む施療においても、同様の作業で本実施形態に係る施療支援システムを適用することが可能である。
【0048】
次に、本実施形態に係る施療支援システムの動作について説明する。
図12は、本実施形態に係る施療支援システムの動作を示すフローチャートである。まず、被施療者の歯に基準マーカ11が装着される(S1)。その状態でCT装置12により被施療者の施療箇所のCT画像が基準マーカ11と共に撮像される(S2)。撮像されたCT画像はCT画像記憶部71に記憶され、3次元処理部72により3次元モデル化される(S3)。3次元モデル化された情報は3次元モデル記憶部73に記憶される。このとき、ディスプレイ18に表示される他のオブジェクト(例えば、人工歯根、ドリル、ハンドピース等)についても、予め3次元モデル化された情報が3次元モデル記憶部73に記憶されている。
【0049】
なお、CT画像の3次元モデル化は、必ずしも施療支援装置19にて行う必要はなく、CT装置12側で3次元モデル化した情報を施療支援装置19が取得するようにしてもよい。
【0050】
CTの撮像が終了すると、基準マーカ11を取り外すと共に第1の位置マーカ13が取り付けられる。第1の撮像部14が、第1の位置マーカ13を撮像してその位置情報を取得し、また、第2の撮像部17が、操作部15に装着された第2の位置マーカ16を撮像してその位置情報を取得する(S4)。取得した位置情報に基づいて、位置合わせ部75が、CT画像における歯の位置と操作部15におけるドリル35や人工歯根の位置合わせを行い(S5)、表示制御部78が、位置合わせされた状態で3次元モデルをディスプレイ18に表示する(S6)。なお、ここまでの処理は、設計時でも施療時でも共通の表示処理である。以降、設計時の処理及び施療時の処理について説明する。
【0051】
位置合わせされた3次元モデルがディスプレイ18に表示された状態で、設計作業が開始される。設計作業において、
図7に示すように、石膏模型又は施療者に対して、ハンドピース31を操作して人工歯根を埋め込む適正な位置を捜索する。このとき、表示制御部78が、ハンドピース31の操作にマッチングするように人工歯根の3次元モデルを表示する(S7)。人工歯根が適正な位置となるようにハンドピース31が操作されると、施療者からの操作でキャプチャ部76が人工歯根のキャプチャ画像を取得する(S8)。取得したキャプチャ画像は設計情報として設計情報記憶部77に記憶される(S9)。全ての施療箇所について設計情報がキャプチャされると設計処理を終了する。
【0052】
そして、次に実際の施療が行われる。施療作業において、
図11に示すように、表示制御部78が、ドリル35の先端部分に仮想の人工歯根を表示する(S10)。また、同時に、設計情報記憶部77に記憶されている設計情報の人工歯根をCT画像に重ねて表示する(S11)。施療者は、仮想の人工歯根と設計情報の人工歯根との位置や方向が一致するようにハンドピース31を操作し、施術を開始する(S12)。ハンドピース31の先端部に取り付けられたドリル35が所定の深さまで切削したかどうかを判定し(S13)、所定の深さまで切削している場合は、仮想の人工歯根を削除すると共に、ドリル35の3次元モデル又は人工歯根の3次元モデルを実際のドリル35の位置(ハンドピース31の先端部の位置)に表示するように表示態様を切り替える(S14)。表示が切り替わったら設計情報の人工歯根とハンドピース31の先端部に表示されているドリル35又は人工歯根の3次元モデルとが合致するように施療を進め(S15)、合致した時点でドリル35での切削又は人工歯根の埋め込みを終了する。
【0053】
以上のように、本実施形態に係る施療支援システムにおいては、歯科インプラント施術の設計段階において、インプラントを埋設する適正な位置を直観的で且つリアルタイムに把握しながら設計情報を作成することができる。また、施術開始後から所定の深さまでドリル又はインプラントを進行した時点で、仮想のドリル又はインプラントの3次元モデルを消去し、現実のドリル又はインプラントの3次元モデルを位置合わせして表示切り替えするため、被施術者は、表示されている設計情報にドリル又はインプラントの3次元モデルを合わせる動作を行うだけで、正確にインプラントの施術を行うことが可能になる。
【符号の説明】
【0054】
1 施療支援システム
11 基準マーカ
12 CT装置
13 第1の位置マーカ
14 第1の撮像部
15 操作部
16 第2の位置マーカ
17 第2の撮像部
18 ディスプレイ
19 施術支援装置
21 固定部
22 支持部
23 マーカ部
24 連結部
25 第1支持部
26 第1ヒンジ部
27 第2支持部
28 第2ヒンジ部
29 第3支持部
30 赤外線マーカ
31 ハンドピース
32 持手部
33 赤外線マーカ
34 先端部
35 ドリル
40 設計用部品
41 連結部
42 固定部
43 弾性体
61 CPU
62 RAM
63 ROM
64 ハードディスク
65 通信I/F
66 入出力I/F
71 CT画像記憶部
72 3次元処理部
73 3次元モデル記憶部
74 位置情報取得部
75 位置合わせ部
76 キャプチャ部
77 設計情報記憶部
78 表示制御部
【手続補正書】
【提出日】2022-01-31
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
施術支援システム。