(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022050732
(43)【公開日】2022-03-31
(54)【発明の名称】搬送物検出装置
(51)【国際特許分類】
B65G 43/08 20060101AFI20220324BHJP
G06K 7/10 20060101ALI20220324BHJP
【FI】
B65G43/08 F
B65G43/08 C
G06K7/10 276
【審査請求】未請求
【請求項の数】1
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020156826
(22)【出願日】2020-09-18
(71)【出願人】
【識別番号】000186566
【氏名又は名称】小林クリエイト株式会社
(72)【発明者】
【氏名】山内 望由季
(72)【発明者】
【氏名】川▲崎▼ 智太
(72)【発明者】
【氏名】原田 泰忠
【テーマコード(参考)】
3F027
【Fターム(参考)】
3F027AA03
3F027CA01
3F027EA09
3F027FA18
(57)【要約】
【課題】識別情報を有する無線タグが添付された搬送物の位置を精度よく検出できる搬送物検出システムを提案する。
【解決手段】搬送経路の進行上に設けられた受信手段によって、搬送物に添付された無線タグの固有の識別情報が受信されると、搬送物検出装置は、受信した該搬送物に添付された無線タグの固有の識別情報を、所定の条件によりフィルタリングし、条件を満たした固有の識別情報で搬送物の検出判定をする。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
識別情報を有する無線タグが添付された搬送物の進行経路上で前記無線タグから識別情報を受信する受信手段と、該受信手段により前記識別情報を受信したことを契機として、該識別情報を有する前記無線タグが添付された搬送物が前記受信手段に対応する所定の位置に到達したことを検出する検出手段と、を備える搬送物検出装置において、
搬送物が検出されるべき状況を示す情報を、当該搬送物に添付された無線タグが保持する識別情報に対応付けて取得する搬送物検出情報取得手段と、
前記検出手段により、前記搬送物が所定の位置に到達したことを示す情報と、前記搬送物検出情報取得手段により取得される当該搬送物が検出されるべき状況を示す情報と、が一致するか否かを評価する評価手段と、
当該評価手段による評価に基づいて、前記所定の条件を設定する設定手段と、
前記受信手段が前記識別情報を受信した場合の通信状況を取得する状況取得手段と、
該状況取得手段により取得された通信状況が前記設定手段により設定された前記所定の条件を満たすことを条件として、前記受信手段により取得された前記識別情報を採用するフィルタリング手段と、を備え、
前記検出手段は、前記受信手段により受信された前記識別情報が前記フィルタリング手段により採用されることを条件として、前記搬送物が前記所定の位置に到達したことを検出するものであることを特徴とする搬送物検出装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、無線タグを利用して搬送物の通過を検出する技術に関し、特には、誤検知を抑制する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
RFID(Radio Frequency Identifier、以下「RFID」と称す)タグ等の無線タグを貼付した搬送物を搬送経路に流し、搬送経路上に設けたアンテナでRFIDタグから識別情報を受信することで、搬送物の通過を検出することが行われている。RFIDタグの識別情報は、夫々固有のものであるので、搬送物を個体ごとに区別して搬送経路における通過を検出することができる。例えば特許文献1は、搬送物のRFIDタグ情報において、ゲート周囲にあるRFIDタグを予め読み取っておくことで、ゲートを通過した搬送物のRFIDタグ情報を区別する技術が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許公開公報第2014-131934号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、アンテナの通信可能範囲(アンテナを起点とし、アンテナがRFIDタグとの通信に成功する最大範囲をいう。)の縁部付近に所望の搬送経路とは別の搬送経路がある場合には、当該別の搬送経路上の搬送物を検出してしまう虞があった。また、搬送経路に沿って移動する搬送物をアンテナに近接する順に検出を所望する場合にも、アンテナの通信可能範囲内に複数の搬送物がある間は、アンテナの最近傍にある搬送物より先に別の搬送物を検出してしまう虞があった。前記課題の解決方法として、搬送物の検出とみなすための所定の条件を設定しフィルタリングすることにより、精度よく搬送物を検出する方法が挙げられるが、搬送物の検出とみなす所定の条件は、搬送物を検出する環境の遮蔽物や、アンテナの受信感度等により多種多様である。したがって、検出とみなす所定の条件を普遍的に決定することができないため、搬送物を検出する環境によって、搬送物を検出する所定の条件を容易に変更できることが求められる。このような事情から、移動する搬送物を当該搬送物に添付されたRFIDタグとの通信を利用して搬送物を検出・管理しようとする場合においては、搬送物の正確な検出が難しいとの問題があった。
【0005】
前述したような問題点に大抵は、電波を遮蔽し得る部材によってアンテナの通信可能範囲を限定することも提案されるが、そうした部材は比較的高価であって導入が難しく、部材を設けた場合にも搬送経路上で搬送物を取り扱う作業性が低下するとの問題がある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本願に係る発明は、上述した問題点等を解決するためになされたものであり、本発明の搬送物検出装置は、識別情報を有する無線タグが添付された搬送物の進行経路上で前記無線タグから識別情報を受信する受信手段と、該受信手段により前記識別情報を受信したことを契機として、該識別情報を有する前記無線タグが添付された搬送物が前記受信手段に対応する所定の位置に到達したことを検出する検出手段と、を備え、搬送物が検出されるべき状況を示す情報を、当該搬送物に添付された無線タグが保持する識別情報に対応付けて取得する搬送物検出情報取得手段と、前記検出手段により、前記搬送物が所定の位置に到達したことを示す情報と、前記搬送物検出情報取得手段により取得される当該搬送物が検出されるべき状況を示す情報と、が一致するか否かを評価する評価手段と、当該評価手段による評価に基づいて、前記所定の条件を設定する設定手段と、前記受信手段が前記識別情報を受信した場合の通信状況を取得する状況取得手段と、該状況取得手段により取得された通信状況が前記設定手段により設定された前記所定の条件を満たすことを条件として、前記受信手段により取得された前記識別情報を採用するフィルタリング手段と、を備え、前記検出手段は、前記受信手段により受信された前記識別情報が前記フィルタリング手段により採用されることを条件として、前記搬送物が前記所定の位置に到達したことを検出するものであることを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
本発明の搬送物検出装置によれば、搬送物の進行経路上に受信手段が設けられ、前記受信手段により前記搬送物に添付された無線タグの識別情報が受信され、検出手段により前記受信手段に対応する所定の位置に到達したことが検出される。前記搬送物が検出されるべき状況を示す情報を、当該搬送物に添付された無線タグが保持する識別情報に対応付けた搬送物検出情報が、搬送物検出情報取得手段により取得され、搬送物が所定の位置に到達したことが検出された場合、検出された状況を示す情報と、前記搬送物情報取得手段により取得された搬送物の検出されるべき状況を示す情報と、が一致しているか否かが評価手段により評価され、前記評価手段に基づき、設定手段により所定の条件が設定される。
【0008】
そして、前記受信手段によって受信の際の通信状況が状況取得手段によって取得され、状況取得手段によって取得された通信状況が所定の条件を満たす場合に、前記受信手段によって受信された識別情報が採用される。換言すれば、通信状況が所定の条件を満たさない場合、フィルタリング手段によって受信手段によって受信した識別情報が所定の条件にて破棄される。フィルタリング手段によって識別情報が採用されることを条件として、当該識別情報によって特定される搬送物が受信手段に滞欧した搬送経路を経過したことが前記検出手段によって検出される。従って、所定の条件を考慮する必要がなく、容易に所定の条件を設定することができ、フィルタリング手段によって選別された精度の高い情報に基づいて、搬送物が通過した搬送経路を精度よく検出することができるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】(a)物品検知システム1を表す模式図である。(b)搬送物30を表す模式図である。
【
図2】搬送状態におけるアンテナ40aおよび搬送物30を表す模式図である。
【
図3】(a)PC10および関連装置の電気的構成を示す模式図である。(b)PC10がアンテナ40a~41bから受信するデータを例示する表である。
【
図4】管理プログラム11が備える通常モード11aとして実行される検出処理S100のフローチャートである。
【
図5】管理プログラム11が備える調整モード11bとして実行される調整処理S200のフローチャートである。
【
図6】調整処理S200における正解データ読込処理S205にて読み込まれる正解データを例示する表である。
【
図7】調整処理S200におけるマトリクス生成処理S215にて生成されるデータ構造を例示する表である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明の実施例として、物品検知システム1を説明する。物品検知システム1は、レーン20またはレーン21を通過する物品30を検知するための情報処理システムであり、PC10およびアンテナ40a,40b,41a,41bで構成される。
図1(a)は、物品検知システム1の構成を表す模式図である。
【0011】
レーン20およびレーン21は、物品30を移送するための経路であり、上面上を物品30が滑動するよう、ローラー等が設けられている。作業者90が物品30をレーン20またはレーン21の端部に置くと、矢印Xで示す方向に物品30が移送される。
【0012】
レーン20には、その経路上にアンテナ40aおよび40bが設置される。アンテナ40a,40bは、後述するRFIDタグ31との通信により該RFIDタグ31が保持する物品ID101を受信可能に構成される。また、アンテナ40a,40bは、PC10に電気的に接続されており、受信した物品ID101等の情報をPC10に入力可能に構成される。詳しくは後述するが、PC10においては、アンテナ40aおよびアンテナ40bを同一のレーン20に対応する「アンテナグループ40」として認識する。
【0013】
レーン21にも、レーン20と同様に、アンテナ41aおよび41bが設置される。アンテナ41a,41bの構成や機能については、前述したアンテナ40a,40bと同様であり、PC10においては、アンテナ41aおよびアンテナ41bを同一のレーン21に対応する「アンテナグループ41」として認識する。
【0014】
図1(b)は、物品30の態様を示した模式図である。物品30はRFIDタグ31を備える。RFIDタグ31は、無線の方式により所定の情報を保持および送信可能な公知の情報記憶媒体であり、詳しい説明は省略する。本実施例におけるRFIDタグ31は、物品30の個体ごとに一意に割り当てられた物品ID101を保持する。物品ID101は、前述した通り、アンテナ40a,40b,41a,41bによって受信可能である。
【0015】
図2に、例として、レーン20上を物品30が移送される場合において、アンテナ40aが物品ID101を受信する様子を表す。アンテナ40aは、PC10からの制御によって極めて短い時間間隔でRFIDタグ31との通信を試みるように構成されている。アンテナ40aの近傍に複数のRFIDタグ31が存在する場合、アンテナ40aはそれぞれRFIDタグ31について通信を試みる。
【0016】
物品30が矢印Xの方向に移動することで物品30のRFIDタグ31とアンテナ40aとが近接すると、アンテナ40aとRFIDタグ31との通信が成立し、当該通信により、RFIDタグ31が保持する物品ID101がアンテナ40aによって受信される。詳しくは後述するが、アンテナ40aは、物品ID101を受信すると、その物品ID101等の情報を一部とする受信データ100(
図3(b)参照)をPC10に入力するように構成される。
【0017】
ここでは、例として、レーン20上のアンテナ40aについてRFIDタグ31との通信および物品ID101の取得の流れを説明したが、アンテナ40b,レーン21上の41a,41bについても同様である。
【0018】
次に
図3(a)を参照して、本実施例における電気的な構成を説明する。PC10は、CPU(中央演算装置)等を備えるコンピューターであり、後述する情報処理を行うものである。PC10には、前述した通り、アンテナ40a,40b,41a,41b(以下「アンテナ40a等」と称す)が接続される。
【0019】
前述した通り、アンテナ40a等は、RFIDタグ31から受信した物品ID101をPC10に入力するよう構成される。アンテナ40a等がPC10に入力する情報の態様については、
図3(b)を参照して後述する。
【0020】
PC10は、ハードディスク上に管理プログラム11と、強度閾値12と、経過閾値13と、を備える。管理プログラム11は、PC10のCPUによって実行されるコンピュータープログラムであり、PC10の使用者等が選択可能な動作モードとして、通常モード11aと調整モード11bとを含む。通常モード11aは、作業者90が通常実施する作業において物品30の検出のために用いる動作モードである。調整モード11bは、物品検出システム1を使用環境等に適合させる場合に用いる動作モードであり、後述する強度閾値12および経過閾値13を更新するためのものである。
【0021】
強度閾値12と経過閾値13とは、通常モード11aを実行する場合に、物品30の検出を判定するための条件となる情報(値)である。強度閾値12は、アンテナ40a等とRFIDタグ31との通信における電波の強度を意味する値であり、より具体的には、公知のRSSI値(単位:dBm)を用いる。
【0022】
経過閾値13は、アンテナ40a等がRFIDタグ31と通信可能であった時間の長さ(以下「通信可能時間」と称す)を示す情報(値)である。より詳しくは、アンテナグループ40,41を構成するアンテナを単位として、一のRFIDタグ31について通信可能であった時間の長さである。例えば、アンテナグループ40を構成するアンテナ40aおよび40bについて、RFIDタグ31についてアンテナ40aまたは40bの少なくとも1つによって通信可能である期間であり、その期間を「通信可能時間」と見なす。本実施例においては、通信可能時間として、アンテナ40a等からPC10に同一の物品ID101が入力された回数(単位:回)を用いる。前述した通り、アンテナ40aは、極めて短い時間間隔でRFIDタグ31との通信を試行し、当該通信に成功する都度、受信した物品ID101をPC10に入力するよう構成されている。従って、PC10においては、物品ID101が入力された回数を、アンテナ40a等とRFIDタグ31とが通信可能であった時間の長さと見なしても問題は生じない。
【0023】
また、同一のアンテナグループ40,41に属する複数のアンテナにおいて、重複して通信可能となる状態があり、その間、複数のアンテナから同一の物品ID101が重複してPC10に入力されうるが、本実施例にあっては、属する各アンテナの通信可能時間の積算をアンテナグループ40,41のそれぞれについての通信可能時間と見なすものとする。
【0024】
図3(b)に、アンテナ40a等からPC10に入力される情報(以下「受信データ100」と称す)の構成を示す。受信データ100は、物品ID101と、電波強度102と、アンテナグループ識別子103と、で構成される。電波強度102は、アンテナ40a等が物品ID101を受信した際のアンテナ40a等とRFIDタグ31との通信の強度を表す値であり、前述した強度閾値12と同様の単位で表される。
【0025】
アンテナグループ識別子103は、受信データ100を入力したアンテナ40a等が、アンテナグループ40または41のいずれに属するものかを示す情報である。なお、アンテナグループ識別子103は、受信データ100を送信する際にアンテナ40a等が自ら付与するものの他、PC10が入力を受け付けた際の通信経路(入力ポート)等に基づいて判定することにより事後的に付与するものであってもよい。
【0026】
次に、管理プログラム11が備える通常モード11aを説明する。通常モード11aは、管理プログラム11が実行される際に作業者90等によって選択される、管理プログラム11に基づくPC10の挙動の1つである。前述した通り、通常モード11aは、作業者90が通常実施する作業において物品30の検出のために用いる処理である。
図4に示すフローチャートに従って、通常モード11aとして実行される検出処理S100を説明する。通常モード11aにおいては、アンテナ41a等からPC10に受信データ10が入力されるたびに検出処理S100が実行される。
【0027】
通常モード11aでは、まずアンテナ41a等から送信された受信データ100を取得する(S105)。次に、取得した受信データ100の電波強度102の値と、PC10上で設定された強度閾値12の値と、を比較する(S110)。取得した受信データ100の電波強度102の値が、PC10上で設定された強度閾値12の値以下である場合(S110:No)、検出処理S100を終了する。S110のステップにおいてNoと判断することは、換言すれば、当該受信データ100を処理せずに検出処理S100を終了することを意味する。RFIDタグ31とアンテナ41a等との通信の品質が著しく悪い場合、本来は受信できないはずの物品ID101が取得された可能性が考えられるが、S110の判断を行うことによって、信頼できない受信データ100による誤検出を抑制することができる。
【0028】
一方、取得した受信データ100の電波強度102の値が、PC10上で設定された強度閾値12の値より大きい場合(S110:Yes)、アンテナグループ識別子103により識別されるアンテナグループ40又は41における回数として、物品ID101ごとに受信回数をカウントする(S115)。次に、S115のステップにおいてカウントした受信回数と、PC10上で設定された経過閾値13の値と、を比較する(S120)。受信回数が経過閾値13の値より大きい場合(S120:Yes)、アンテナグループ識別子103によって識別されるアンテナグループ40又は41において物品ID101を検出したものと判断し、所定の処理(例えば、他の情報処理システムに対して通知電文を送信する等)を行う(S125)。
【0029】
なお、アンテナグループ40又は41が識別されるということは、換言すれば、レーン20又は21のいずれかが識別されるということでもある。従って、S125のステップにおいて物品ID101を検出したものとするということは、レーン20又は21のいずれかにおいて、物品ID101により特定される物品30を検出したことと同義である。
【0030】
一方、S120の判断において受信回数が経過閾値13の値以下の場合(S120:No)、今回の検出処理S100では物品ID101を検出するに至らないものとして、検出処理S100を終了する。受信回数が経過閾値13の値以下の場合、取得した物品ID101についてはノイズによる取得や、未だ遠方に存在する場合の取得であることが考えらえる。物品ID101の検出(S125のステップの実行)を、受信回数が所定の回数に達するまで(換言すれば、物品ID101の取得可能期間が所定の長さに達するまで)遅延させることで、物品ID101の誤検出を抑制することができる。
【0031】
本実施例の物品検知システム1による物品30の精度を確かめるために、発明者らは実際に物品検知システム1を構成し、9つの物品30をレーン20又はレーン21のいずれかに投入する実験を10回行った。本実験では、
図4に示す検出処理S100を部分的に変更したときに、物品30の通過順序および検出されたレーン(レーン20又はレーン21)の実際に投入した順序およびレーンに対する誤り率(試行回数に対して実際とは異なる検出が行われた割合、以下同様)を評価した。この評価の結果を表1に示す。表1は、フィルタリング条件ごとの誤り率を示す表である。
【0032】
【0033】
まず、フィルタリングを何ら行わない場合、すなわち、
図4に示すS110およびS120の判定を省略した場合、順序についての誤り率は2.2%であり、レーンについての誤り率は17.8%であった。次に、電波強度102のみをフィルタリングの条件とした場合、すなわち、
図4に示すS120の判定のみを省略した場合、順序についての誤り率は4.4%であり、レーンについての誤り率は0%であった。次に、受信回数のみをフィルタリング条件とした場合、すなわち、
図4に示すS110の判定のみを省略した場合は、順序についての誤り率は4.4%であり、レーンについての誤り率は3.3%であった。最後に、完全な通常モード11a、すなわち、S110およびS120のいずれの判定も省略しない場合、順序およびレーンのいずれについても誤り率は0.0%であった。
【0034】
以上説明した実験の結果が示す通り、電波強度102または受信回数のいずれか一方またはいずれもフィルタリングの条件としない場合に比べて、電波強度102および受信回数をともにフィルタリングの条件とした場合の方が、物品30を精度よく検出することができた。したがって、本実施例の通常モード11aのS110、S120の判定のように、電波強度閾値102および受信回数をもってフィルタリングを行うことは、RFIDタグ31を用いて物品30を検出する目的において、特に顕著な効果を奏するといえる。
【0035】
次に、管理プログラム11が備える調整モード11bを説明する。調整モード11bとは、最適な強度閾値12および経過閾値13を決定するための動作モードである。
図5は、調整モード11bにおける調整処理S200のフローチャートである。
【0036】
調整モード11bでは、まず作業者90等が試験運転を実施する上で必要な搬送情報を示すデータ(以下「正解データ200」と称す)を読み込む(S205)。
図6に示す通り、正解データ200は、物品ID101と、アンテナグループ識別子103、順序情報104と、の要素で構成される。ここで、順序情報104とは、物品ID101について、受信されるべき順序を示す値を意味する。
【0037】
より詳しくは、正解データ200は、物品ID101によって識別される物品30ごとに、レーン20又は21のいずれを搬送されるものかをアンテナグループ識別子103によって示すものであり、また、該物品30ごとにいかなる順序で搬送されるものかを順序情報104によって示すものである。
【0038】
図5に戻り、調整処理S200を説明する。正解データ200が読み込まれると(S205)、次に、作業者90等が正解データ200の内容に一致するように、実際にアンテナグループ識別子103に従ってレーン20又は21に、順序情報104に従った順序で、物品30を投入する「試験運転」を実施する。試験運転の間、PC10は管理プログラム11に基づいて、アンテナ40a等から受信する受信データ100を記録する(S210)。
【0039】
次に、記録した受信データ100に基づいて
図7に示すマトリクス300を生成する(S215)。マトリクス300は、行と列とで構成される表様のデータ構造であり、PC10のRAM上のデータ領域に後述する演算によって生成される。
【0040】
マトリクス300は、
図7に示す通り、列方向に受信回数301を、行方向に電波強度302をもつ。S215の処理では、列(受信回数301)および行(電波強度302)のすべての組み合わせについて、それらの値を夫々経過閾値13および強度閾値12に設定したと仮定して前述の通常モード11a(検出処理S100)を実行した場合に、S205の処理で読み込んだ正解データ200の内容と一致するか否かを検証し、一致する場合は当該列および行で示される位置に「○」を、そうでない場合に「×」を設定する。なお、「○」および「×」は説明のために便宜的に用いた表現であり、実際の制御においてはビット値のON/OFFで区別すれば足りる。
【0041】
ここで、「S205の処理で読み込んだ正解データ200の内容と一致する」とは、S210の処理で記録した受信データに含まれる物品ID101夫々について、検出(
図4のS125の処理)された際のアンテナグループ識別子103が正解データ200で示されるアンテナグループ識別子103と同一であり、且つ、検出された順序が正解データ200で示される順序情報104に合致することを意味する。すなわち、物品ID101により識別される物品30が、レーン20又は21のいずれか正しい方に、正しい順序で投入されたと検出されたことを意味する。
【0042】
図5に戻り調整処理S200を説明する。マトリクス300が生成されると(S215)、そのマトリクス300に基づいて強度閾値12および経過閾値13の決定を行う(S220)。詳しくは、マトリクス300(
図7)の左上の位置より下方向(行方向)へと走査し「○」の位置を探し出す。走査が下端まで到達した場合は、次列の上端に戻り、再び行方向の走査を繰り返す。
【0043】
最初に発見した「○」の位置に対応する受信回数(列)および電波強度(行)をそれぞれ、経過閾値13および強度閾値12として設定する(S225)。S220において行方向の走査を優先することで、受信回数ができるだけ少ない値での「○」が発見され、S225において経過閾値13として最小の値が設定される。経過閾値13は前述した通り、物品30を検出するまでに要する時間に相当するものであるため、経過閾値13を最小とすることで、できるだけ早期に物品30を検出できるようになり、利便性が高いとの効果がある。
【0044】
以上説明した調整モード11bを利用することで、PC10の利用者等は容易に強度閾値12および経過閾値13を設定することができる。機材や電波などに詳しくない者が本システムを利用する場合であっても、調整モード11bを1度実行させるだけで通常モード11aの実行を開始させることができ、至便である。
【0045】
以上、実施例に基づいて発明を説明したが、本願発明の趣旨を逸脱しない範囲において種々の変更が可能であることは言うまでもない。例えば、本実施例では物品30がレーン20またはレーン21を通過することを説明したが、レーンの数は本構成のみならず、単体もしくは3つ以上のレーンでの構成においても同様の効果が得られる。
【0046】
また、本実施例では、レーン20には、その経路上にアンテナ40aおよび40bが設置されることを説明したが、設置するアンテナの数は本構成のみならず、単体もしくは3つ以上の構成としてもよい。
【0047】
また、本実施例では、受信データ100は、物品ID101と、電波強度102と、アンテナグループ識別子103と、で構成されることを説明したが、受信データ100に含まれる情報は本構成以外にあってもよい。例えば電波受信時刻を構成することにより、電波受信時刻順にソートしてフィルタリングを行っても良い。また、アンテナグループ識別子ではなく、受信したアンテナ情報に代えてもよい。
【0048】
また、本実施例では、PC10の使用者等が選択可能な動作モードとして、通常モード11aと調整モード12bとを含むことを説明したが、調整モード12bを含まない構成とすることもできる。この場合、強度閾値12と経過閾値13を手動による設定を行う構成となる。
【符号の説明】
【0049】
1 物品検知システム
10 PC(搬送物受信装置の一部)
11 管理プログラム
11a 通常モード
11b 調整モード
12 強度閾値
13 経過閾値
20,21 レーン(進行経路)
30 物品(搬送物)
31 RFIDタグ(無線タグ)
40a,40b,41a,41b アンテナ(受信手段、受信装置)
40,41 アンテナグループ
90 作業者
100 受信データ
101 物品ID
102 電波強度
103 アンテナグループ
104 順序情報
200 正解データ
300 マトリクス
S100 検出処理(フィルタリング手段)
S200 調整処理