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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022050735
(43)【公開日】2022-03-31
(54)【発明の名称】吊り足場
(51)【国際特許分類】
   E01D 21/00 20060101AFI20220324BHJP
   E04G 3/28 20060101ALI20220324BHJP
【FI】
E01D21/00 A
E04G3/28 301L
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020156833
(22)【出願日】2020-09-18
(71)【出願人】
【識別番号】000140384
【氏名又は名称】株式会社横河ブリッジホールディングス
(71)【出願人】
【識別番号】518208978
【氏名又は名称】極東メタリコン工業株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】000227146
【氏名又は名称】日綜産業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100122323
【弁理士】
【氏名又は名称】石川 憲
(72)【発明者】
【氏名】八木 孝介
(72)【発明者】
【氏名】小寺 健史
(72)【発明者】
【氏名】渡邊 暁伸
【テーマコード(参考)】
2D059
2E003
【Fターム(参考)】
2D059DD13
2D059GG39
2E003EB01
(57)【要約】
【課題】
本発明は、道路利用者に対する不利益を最小限にしつつ、作業効率を向上させることができる吊り足場の提供を目的とする。
【解決手段】
対向する一対の橋桁10,10に吊り下げ支持される吊り足場1において、橋桁10の下端と対向する位置に橋桁10の橋長方向を横切る横断方向に配置される床板2と、床板2を昇降可能な昇降装置とを備え、昇降装置によって床板2を上下方向へ移動させて橋桁10に対して遠近させることができることを特徴とする。
【選択図】 図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
対向する一対の橋桁に吊り下げ支持される吊り足場において、
前記橋桁の下端と対向する位置に前記橋桁の橋長方向を横切る横断方向に配置される床板と、
前記床板を昇降可能な昇降装置とを備える
ことを特徴とする吊り足場。
【請求項2】
前記各橋桁を前記横断方向で挟む位置に配置されて足場板と前記足場板を吊り下げる吊り部材を有する一対の足場装置を備え、
前記床板は前記足場装置間に架け渡されており、
前記昇降装置は前記足場装置を昇降させることで前記床板を昇降させている
ことを特徴とする請求項1に記載の吊り足場。
【請求項3】
前記各橋桁に固定されて前記橋桁の橋長方向に沿って配置される支持ロッドを有する支持部材を備え、
前記吊り部材には、前記支持ロッドに引っ掛かると前記床板上での作業者の作業を可能とする作業位置に前記床板を位置決めする上フックと、前記支持ロッドに引っ掛かると前記橋桁の直近である収納位置に前記床板を位置決めする下フックとが上下に並べて設けられており、
前記下フックは、前記吊り部材に上下方向に回転可能に連結されて前記橋桁側へ突出するとともに、前記橋桁側へ突出する突出位置にて下方からの押し上げに対して回転が規制され、上方からの押し下げに対しては回転が許容される
ことを特徴とする請求項2に記載の吊り足場。
【請求項4】
前記支持部材は、
前記橋桁の上方に橋長方向に沿うように一体的に設けられた手摺に固定される固定装置と、
前記固定装置に設けられて前記支持ロッドを保持する一対の保持片と、
前記足場装置と前記橋桁の間に配置されて前記吊り部材に当接するガイド片とを備え、
前記吊り部材は前記一対の保持片間に挿入される
ことを特徴とする請求項3に記載の吊り足場。
【請求項5】
前記各足場装置の下端に前記橋桁の橋長方向に沿うように設けられて互いに対向するとともに前記床板が架け渡される一対の横架材と、
前記床板の下端の前記各横架材と対向する位置にそれぞれ設けられて前記横架材に引っ掛かる床用フックとを有し、
前記床用フックは、前記横架材の軸方向から見て前記横架材の横方向の移動を許容する
ことを特徴とする請求項2から4のいずれか一項に記載の吊り足場。
【請求項6】
前記吊り部材は、一対の縦支柱と、前記一対の縦支柱間に所定の間隔で架け渡される複数の横材とを有して、梯子状に形成される
ことを特徴とする請求項2から5のいずれか一項に記載の吊り足場。
【請求項7】
前記昇降装置がレバーホイスト又はチェーンブロックであって、
前記レバーホイスト又は前記チェーンブロックの一端は前記橋桁に取付けられ、
前記レバーホイスト又は前記チェーンブロックの他端は前記足場装置に取付けられる
ことを特徴とする請求項2から6のいずれか一項に記載の吊り足場。
【請求項8】
前記レバーホイスト又は前記チェーンブロックの他端は前記足場装置の前記橋桁から離間した位置に取付けられている
ことを特徴とする請求項7に記載の吊り足場。
【請求項9】
前記床板に着脱自在に固定される一つあるいは複数の手摺支柱と、
伸縮可能であって前記吊り部材と前記手摺支柱の間または隣り合う前記手摺支柱同士の間に架け渡される複数の手摺ロッドとを有する
ことを特徴とする請求項2から8のいずれか一項に記載の吊り足場。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、吊り足場に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、橋梁の橋桁の点検や補修作業等の保守作業を行う際には、橋桁に吊り下げ支持される吊り足場が用いられている。
【0003】
例えば、吊り足場は、橋梁の橋桁の下面に一端側が固定された吊りチェーンや吊りワイヤ等の吊り下げ部材と、吊り下げ部材によって吊り下げられる床板とを備えている(例えば、特許文献1)。このような吊り足場では、作業者は床板上で橋桁の保守作業を行うことができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】実開2018-025060号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、下方に道路が敷設されている橋梁の橋桁に従来の吊り足場を利用する場合、橋桁と床板の間に十分な作業スペースを取ろうとすると、道路から床板までの高さが低くなって、車両が道路を走行できなくなってしまう場合がある。
【0006】
そのため、下方に道路が敷設されている橋梁の橋桁の保守作業を従来の吊り足場によって行う場合には、床板を橋桁に近づけて作業スペースを小さくするか、または、作業期間中、道路を通行止めしておく必要がある。
【0007】
ところが、床板と橋桁の間の作業スペースが小さくなると、作業者は作業しづらくなるので、作業効率の低下や、補修漏れを生じさせてしまう恐れがある。また、作業期間中、道路を通行止めするとなると、道路の利用ができず、道路利用者の利便性を損ねてしまう。
【0008】
そこで、本発明は、道路利用者に対する不利益を最小限にしつつ、作業効率を向上させることができる吊り足場の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記の目的を達成させるため、本発明の吊り足場は、対向する一対の橋桁に吊り下げ支持される吊り足場において、前記橋桁の下端と対向する位置に前記橋桁の橋長方向を横切る横断方向に配置される床板と、前記床板を昇降可能な昇降装置とを備えることを特徴とする。この構成によると、昇降装置によって床板を橋桁に対して遠近させることができる。
【0010】
また、本発明の吊り足場は、前記各橋桁を前記横断方向で挟む位置に配置されて足場板と前記足場板を吊り下げる吊り部材を有する一対の足場装置を備え、前記床板は前記足場装置間に架け渡されており、前記昇降装置は前記足場装置を昇降させることで前記床板を昇降させていてもよい。この構成によると、作業者が足場装置の足場板の上から橋桁の側面に対する作業を行うことができるとともに、作業者が足場板を通って床板へ安全に移動することができる。
【0011】
また、本発明の吊り足場は、前記各橋桁に固定されて前記橋桁の橋長方向に沿って配置される支持ロッドを有する支持部材を備え、前記吊り部材には前記支持ロッドに引っ掛かると前記床板上での作業者の作業を可能とする作業位置に前記床板を位置決めする上フックと前記支持ロッドに引っ掛かると前記橋桁の直近である収納位置に前記床板を位置決めする下フックとが上下に並べて設けられており、前記下フックは、前記吊り部材に上下方向に回転可能に連結されて前記橋桁側へ突出するとともに、前記橋桁側へ突出する突出位置にて下方からの押し上げに対して回転が規制され、上方からの押し下げに対しては回転が許容されるようにされてもよい。この構成によると、床板を作業位置から収納位置へ上昇させる際に、下フックを支持ロッドに容易に引っ掛けることができるので、作業位置にある床板を収納位置へ容易に位置決めできる。
【0012】
また、本発明の吊り足場では、前記支持部材は、前記橋桁の上方に橋長方向に沿うように一体的に設けられた手摺に固定される固定装置と、前記固定装置に設けられて前記支持ロッドを保持する一対の保持片と、前記足場装置と前記橋桁の間に配置されて前記吊り部材に当接するガイド片とを備え、前記吊り部材は前記一対の保持片間に挿入さていてもよい。この構成によると、足場装置を手摺の内側から安全に取付けできるとともに、足場装置の昇降時に足場装置が橋桁に干渉するのを防止できる。
【0013】
また、本発明の吊り足場は、前記各足場装置の下端に前記橋桁の橋長方向に沿うように設けられて互いに対向するとともに前記床板が架け渡される一対の横架材と、前記床板の下端の前記各横架材と対向する位置にそれぞれ設けられて前記横架材に引っ掛かる床用フックとを有し、前記床用フックは、前記横架材の軸方向から見て前記横架材の横方向の移動を許容するようにしてもよい。この構成によると、足場装置を片方ずつ昇降させることができるので、床板の昇降作業が容易となる。
【0014】
また、本発明の吊り足場では、前記吊り部材は、一対の縦支柱と、前記一対の縦支柱間に所定の間隔で架け渡される複数の横材とを有して、梯子状に形成されてもよい。この構成によると、吊り部材を梯子として利用できるので、床板へ下りるための梯子が不要となる。
【0015】
また、本発明の吊り足場では、前記昇降装置がレバーホイスト又はチェーンブロックであって、前記レバーホイスト又は前記チェーンブロックの一端は前記橋桁に取付けられ、前記レバーホイスト又は前記チェーンブロックの他端は前記足場装置に取付けられていてもよい。この構成によると、レバーホイスト又はチェーンブロックの一端は橋桁に取付けられているため、万一支持部材が橋桁から外れてしまったとしても、レバーホイスト又はチェーンブロックで吊り足場を支持することができる。
【0016】
また、本発明の吊り足場では、前記レバーホイスト又は前記チェーンブロックの他端は前記足場装置の前記橋桁から離間した位置に取付けられていてもよい。この構成によると、足場装置間に架け渡された床板の横断方向の揺れを抑制できる。
【0017】
また、本発明の吊り足場は、前記床板に着脱自在に固定される一つあるいは複数の手摺支柱と、伸縮可能であって前記吊り部材と前記手摺支柱の間または隣り合う前記手摺支柱同士の間に架け渡される複数の手摺ロッドとを有してもよい。この構成によると、手摺ロッドを伸縮させることで、手摺ロッドの軸方向長さを調整できるので、橋梁の横断方向の長さに応じて、手摺ロッドの軸方向長さを調整できる。
【発明の効果】
【0018】
本発明の吊り足場によれば、道路利用者に対する不利益を最小限にしつつ、作業効率を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】橋桁に設置された本実施の形態の吊り足場を示す正面図である。
図2図1に示す吊り足場の側面図である。
図3図1の一部拡大正面図である。
図4】(A)は本実施の形態の吊り足場の足場装置に設けられた上フックの拡大正面図である。(B)は図4(A)を側方から見て、一部を切欠いて示す側面図である。
図5】(A)は本実施の形態の吊り足場の足場装置に設けられた下フックの拡大正面図である。(B)は図5(B)を側方から見て、一部を切欠いて示す側面図である。
図6】(A)は手摺に支持部材を固定した状態を示す正面図である。(B)は支持部材に足場装置を取付けた状態を示す正面図である。(C)は足場装置の横架材間に床板を架け渡すとともに床板上に手摺支柱と手摺ロッドを取付けた状態を示す正面図である。
図7】(A)は一方の足場装置を上昇させた状態を示す吊り足場の正面図である。(B)両方の足場装置を上昇させ床板を収納位置に配置した状態を示す吊り足場の正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下に、図面を参照しながら本実施の形態について説明する。いくつかの図面を通して付された同じ符号は同じ部品を示す。
【0021】
本実施の形態の吊り足場1は、橋梁Bの橋桁10の点検や補修作業等の保守作業に利用される。橋梁Bは、図1に示すように、複数の橋脚(図示せず)と、隣り合う橋脚間に架け渡されるとともに対向する図中左右一対の橋桁10,10と、各橋桁10の上方に橋桁10の延長方向である橋長方向に沿うように一体的に設けられる手摺Hと、一対の橋桁10,10間に架け渡されて固定される床Fとを備える。
【0022】
詳細には、本実施の形態の橋桁10は、図1に示すように、橋長方向に沿って延びるウェブ10aと、ウェブ10aの上端と下端にそれぞれ連結されてウェブ10aに沿って延びる水平板状のフランジ部10b,10cとを有する断面I型の形鋼で構成されている。
【0023】
また、本実施の形態の手摺Hは、図1図2に示すように、橋桁10から垂直に立ち上がり橋長方向に沿って所定の間隔で配置される複数の支柱Haと、支柱Haの上端に架け渡され橋長方向に沿って延びる断面矩形の横桟Hbとを備え、橋桁10に一体的に連結されて設けられている。
【0024】
そして、本実施の形態の吊り足場1は、図1に示すように、橋桁10の下端と対向する位置に橋桁10の橋長方向を横切る方向(以下、「横断方向」とする)に配置される床板2と、床板2を昇降可能な昇降装置を備える。よって、本実施の形態の吊り足場1は、昇降装置によって床板2を図中上下方向へ移動させて橋桁10に対して遠近させることができる。
【0025】
以下、本実施の形態の吊り足場1の各構成について詳細に説明する。本実施の形態の吊り足場1は、図1に示すように、各橋桁10に一体的に設けられる手摺Hに固定される支持部材4と、各支持部材4に支持されて各橋桁10を橋桁10の橋長方向を横切る横断方向で挟む位置に配置される一対の足場装置5,5を備え、床板2は一対の足場装置5,5間に架け渡されている。
【0026】
本実施の形態の支持部材4は、橋桁10の橋長方向に沿って配置される支持ロッド4aと、支持ロッド4aを手摺Hに固定する固定装置4bとを備える。具体的には、固定装置4bは、図1図3に示すように、手摺Hの横桟Hbの内側(他方の手摺H側)に対向する対向片4cと、手摺Hの横桟Hbの外側に対向するガイド片4dと、対向片4cとガイド片4dの図中上端同士を接続する接続片4eと、対向片4cを貫通し対向片4cに対して軸方向移動可能に螺合されるボルト軸4fと、ガイド片4dの対向片4c側に固定されるスペーサ4gとを有する。そして、ボルト軸4fとスペーサ4gとの間に横桟Hbを配置した状態で、ボルト軸4fを回転させて、ボルト軸4fを送り螺子の要領でガイド片4d側に移動させると、横桟Hbはボルト軸4fとスペーサ4gとで挟持されるので、固定装置4bが手摺Hに固定される。
【0027】
また、図2図3に示すように、接続片4eの上端のガイド片4d側には、接続片4eの上端から起立して横桟Hbの延長方向で互いに対向する一対の保持片4h,4hが設けられている。各保持片4hはプレート状であって、一対の保持片4h,4h間には、支持ロッド4aが架け渡されている。なお、本実施の形態の支持ロッド4aは、円柱状に形成されているが、支持ロッド4aの形状は一例であって、例えば、四角柱状に形成されてもよい。
【0028】
このようにして、本実施の形態の支持ロッド4aは、固定装置4bによって手摺Hを介して橋桁10に固定されて、橋桁10の橋長方向に沿うように配置されている。ただし、上述した固定装置4bの構成は、一例であって、支持ロッド4aを橋桁10に固定できるようになっていれば、上述した構成には限定されない。
【0029】
つづいて、足場装置5について詳細に説明する。本実施の形態の足場装置5は、図1図2に示すように、橋桁10の橋長方向で互いに対向するように配置されて支持ロッド4aに支持される一対の吊り部材6,6と、一対の吊り部材6,6の下端同士の間に架け渡されて吊り部材6によって吊り下げ支持される足場板7とを備える。
【0030】
具体的には、吊り部材6は、図1に示すように、橋桁10の横断方向で互いに対向する一対の縦支柱6a,6bと、一対の縦支柱6a,6b間に上下に所定の間隔で架け渡される横材6cとで、梯子状に構成されている。このようにすると、作業者が足場板7まで移動する際に、吊り部材6を梯子として利用できるため、梯子の設置を省略できる。なお、本実施の形態では、縦支柱6a,6bと横材6cは断面四角状に形成されているが、円筒状に形成されてもよい。
【0031】
また、一対の縦支柱6a,6bの内、橋桁10側に配置される縦支柱6a(以下、「橋桁側縦支柱6a」とする)には、橋桁10側に向けて突出し支持ロッド4aに引っ掛けられる上フック8が設けられている。
【0032】
詳細には、本実施の形態の上フック8は、図4(A)に示すように、橋桁側縦支柱6aに沿って延びるとともに橋桁側縦支柱6aに固定される矩形板状の固定片8aと、固定片8aの橋桁10側側端から下向きに突出する略L字状のフック片8bとを有する。
【0033】
また、本実施の形態の固定片8aは、図4(B)に示すように、橋桁側縦支柱6aを横材6cと交差する方向に貫通する上下一対の孔6d,6dと固定片8aに設けられた上下一対の孔(図示せず)とに挿入されるボルト11と、ボルト11に螺合されるナット12によって橋桁側縦支柱6aに固定されている。
【0034】
ここで、前述した支持部材4は、図2に示すように、一対の吊り部材6,6が配置される間隔と同じ間隔で、各手摺Hの横桟Hbに設置されている。そのため、足場装置5は、各上フック8のフック片8bを各支持部材4の支持ロッド4aに引っ掛けることによって、支持ロッド4aに支持されている。
【0035】
この際、上フック8が支持ロッド4aに引っ掛けられると、橋桁側縦支柱6aが保持片4h,4h間に挿入されるため、保持片4hによって足場装置5の橋桁10の橋長方向への移動が規制される。したがって、本実施の形態では、上フック8が支持ロッド4aに引っ掛けられた状態では、足場装置5が風に煽られるなどしても、足場装置5の保持片4hによって、橋桁10の橋長方向への移動が規制され、足場装置5の支持部材4からの脱落が防止される。
【0036】
また、図3に示すように、各橋桁側縦支柱6aは、手摺Hの横桟Hbの外側に対向するガイド片4dに当接している。ここで、本実施の形態のガイド片4dは、橋桁10の各フランジ部10b,10cの外側端よりも足場装置5側に配置されている。よって、足場装置5はガイド片4dのみに当接し、橋桁10には接触しないようになっている。
【0037】
なお、本実施の形態の上フック8の構造は、一例であって、支持ロッド4aに引っ掛け可能であれば、特に限定されない。また、上フック8の固定片8aはボルトナット結合以外の方法で橋桁側縦支柱6aに固定されてもよい。
【0038】
また、各橋桁側縦支柱6aには、図1図3に示すように、上フック8の下方に配置されて支持ロッド4aに引っ掛け可能な下フック9が設けられている。本実施の形態の下フック9は、図5(A)に実線で示すように、橋桁側縦支柱6aに沿って延び上端が橋桁側縦支柱6aに対して上下方向に回転可能に連結される本体部9aと、本体部9aの上端から橋桁10側に向けて斜め下方に突出し下側にU字状の溝9cを有するフック部9bとを備える。
【0039】
詳細には、下フック9は、図5(B)に示すように、橋桁側縦支柱6aを横材6cと交差する方向に貫通する孔6eと本体部9aの上端に設けられた孔(図示せず)とに挿入される支持軸13と、支持軸13に螺合されるナット14によって、橋桁側縦支柱6aに対して上下方向に回転可能に連結されている。これにより、本実施の形態の下フック9は、支持軸13を支点として回転できるようになっている。
【0040】
また、本実施の形態の下フック9は、図5(B)に示すように、本体部9aの下端の反フック部側縁から橋桁側縦支柱6a側へ向けて垂直に起立する板状のストッパ部9dを備えている。
【0041】
さらに、下フック9は、重力のみが作用している自然状態で、図5(A)中実線で示すように、フック部9bが橋桁10側に突出する姿勢をとる。
【0042】
図3に示すように、下フック9が支持ロッド4aよりも下方に配置されている状態で、足場装置5を上方へ移動させると、支持ロッド4aによって下フック9が押されて回転して橋桁側縦支柱6a側へ引っ込むため、足場装置5の上方への移動に際して下フック9が邪魔をしない。そして、下フック9が支持ロッド4aよりも上方に来てから足場装置5を下方へ移動させると、下フック9が支持ロッド4aに引っ掛かり、ストッパ部9dが橋桁側縦支柱6aの反橋桁側側面に当接して、下フック9の回転が規制される。
【0043】
また、図5(B)に示すように、本体部9aの下端側と橋桁側縦支柱6aには、下フック9が自然状態にあるときに互いに対向するピン孔6f,9eがそれぞれ設けられており、各ピン孔6f,9eにL字状のロックピン15を挿入することで、下フック9を突出位置で回り止めできるようになっている。また、ロックピン15の先端には、抜け止め用のピン16がヒンジ結合されており、ロックピン15が各ピン孔6f,9eから抜けないようになっている。
【0044】
戻って、足場板7の各端部には、吊り部材6の横材6cに引っ掛け可能なフック(図示せず)が設けられており、任意の対向する横材6c,6c間に架け渡すことができるようになっている。そして、本実施の形態では、図1に示すように、当該フックを吊り部材6の最下段の横材6c,6c間に足場板7を引っ掛けることで、作業足場として機能する足場板7が一対の吊り部材6,6の下端同士の間に架け渡されている。
【0045】
なお、本実施の形態では、図1に示すように、吊り部材6の上から二段目の横材6c,6c間にも足場板7と同様の構成の補強用足場板7Aが架け渡されているが、この補強用足場板7Aは作業足場としてではなく、足場装置5の上端側を繋ぐ補強材として機能する。つまり、上方に配置される横材6c,6c間に補強用足場板7Aを架け渡すと、足場装置5が全体として箱型となるため、足場装置5の強度が高くなる。また、図示しないが、補強用足場板7Aにはハッチ扉が設けられているため、上方に配置される横材6c,6c間に補強用足場板7Aを架け渡していても、作業者はハッチ扉を開くことで、最下段の横材6c,6c間に架け渡される足場板7へ移動できるようになっている。
【0046】
なお、足場板7の数や位置は、特に限定されず、例えば、橋桁10の側面に対して保守作業を行う場合、作業を行う位置に合わせて足場板7を設置するようにしてもよい。
【0047】
また、詳細には説明しないが、吊り部材6には、各足場板7,7Aの橋桁10側を除く外周を囲うように巾木17が設置されており、足場板7,7A上から工具等が落下するのを防止している。さらに、図2に示すように、一対の吊り部材6,6における、一対の縦支柱6a,6bの内、反橋桁側に配置される各縦支柱6b,6bの間には、足場装置5を補強するトラス状の補強フレーム18が上下に並べて取付けられている。
【0048】
また、詳細には説明しないが、図1に示すように、橋桁側縦支柱6aの橋桁10の下側フランジ部10cと対向する位置には、クランプ19が着脱自在に連結されている。そして、このクランプ19で下側フランジ部10cを挟持することで、足場装置5の下端側を橋桁10に固定している。
【0049】
また、図1図2に示すように、各足場装置5における互いに対向する橋桁側縦支柱6aの下端には、橋桁10の橋長方向に沿うように横架材20が架け渡されている。そのため、各足場装置5に設けられた横架材20は、橋桁10の横断方向で互いに対向するように配置される。そして、横架材20,20間には、後述する床板2が架け渡されている。
【0050】
具体的には、各橋桁側縦支柱6aの下端には、図1に示すように、下側に向けて開口する断面C字状の抱持金具21が設けられている。そして、橋桁10の橋長方向で対向する各抱持金具21の内部にパイプ材からなる横架材20を挿入した状態で、抱持金具21と横架材20を横方向に貫通するようにボルト(符示せず)を挿入し、当該ボルトにナット(符示せず)を螺合して締め付けることで、横架材20は橋桁10の橋長方向で対向する各橋桁側縦支柱6a,6aの下端に掛け渡されている。
【0051】
なお、本実施の形態における橋桁10の橋長方向で対向する各橋桁側縦支柱6a,6aの下端に横架材20を架け渡す構成は、一例であって、上述した構成には限定されない。また、本実施の形態では、横架材20は、パイプ材で構成されているが、一例であって、パイプ材でなくともよい。例えば、横架材20は、中実であってもよいし、断面四角状で形成されていてもよい。
【0052】
つづいて、本実施の形態の床板2について説明する。図1に示すように、本実施の形態の床板2は、横架材20,20間の幅よりも幅長の板材である。また、床板2の下端には、床板2が横架材20,20間に架け渡される際に各横架材20と対向する位置毎に、橋桁10の橋長方向に沿うように複数の床用フック22が並べて設けられている。そして、各横架材20に床用フック22を引っ掛けることで、床板2は横架材20,20間に架け渡されている。
【0053】
また、本実施の形態の床用フック22は、図1に示すように、橋桁の横断方向で互いに対向する一対の垂直片22a,22aと、各垂直片22a,22aの図中上端同士を接続するとともに床板2の下端に連結される底片22bとを備えて、断面コ字状に形成されている。また、各垂直片22a,22a間の距離は、横架材20の直径よりも長くなるように設定されている。そのため、本実施の形態の床用フック22は、床板2が横架材20,20間に架け渡された状態において、横架材20の軸方向から見て横方向の移動が許容されている。
【0054】
また、本実施の形態では、床用フック22を横架材20に引っ掛けた状態で、対向する各垂直片22a,22aの先端(図1中下端)を貫通するピン23を挿入することで、床板2の浮き上がりと吊り部材6からの脱落が防止されている。
【0055】
また、本実施の形態では、複数の床用フック22が、橋桁10の橋長方向に沿うように並べて設けられているが、床用フック22は橋桁10の橋長方向に沿って連続して延びる一つの部材で構成されてもよい。なお、本実施の形態の床用フック22の構造は、一例であって、前述した構成には限定されない。
【0056】
戻って、図1に示すように、橋桁10の橋長方向から見て、床板2の正面側端と背面側端の中央には、それぞれ、手摺支柱30が着脱自在に挿入される有底筒状の支柱ブラケット31が設けられている。さらに、手摺支柱30と各足場装置5の橋桁側縦支柱6a間には、それぞれ伸縮可能な手摺ロッド32が上下に並べて架け渡されている。したがって、本実施の形態では、床板2の全周を手摺ロッドと足場装置5によって囲うことができるため、作業者は床板2上で安全に作業を行うことができる。
【0057】
また、本実施の形態の手摺ロッド32は、筒状の一方側ロッド32aと、一方側ロッド32a内に摺動自在に挿入される筒状の他方側ロッド32bとを備えるテレスコピック構造となっている。そのため、手摺ロッド32は、他方側ロッド32bを一方側ロッド32a内で軸方向にスライドさせることで、伸縮できるようになっている。
【0058】
また、一方側ロッド32aの先端外周には、手摺支柱30に着脱自在に取付け可能なL字状の第一ブラケット33が設けられている。他方、他方側ロッド32bの先端には、橋桁側縦支柱6aに着脱自在に取付け可能な第二ブラケット34が設けられている。そして、図1に示すように、図中右側の手摺ロッド32は第一ブラケット33が上向きになるように配置され、図中左側の手摺ロッド32は第一ブラケット33が下向きになるように配置されている。このようにすると、同じ高さの図中右側の手摺ロッド32と図中左側の手摺ロッド32が、一本の手摺支柱30に左右両側から連結されても、図中右側の手摺ロッド32の第一ブラケット33と図中左側の手摺ロッド32の第一ブラケット33が干渉しない。よって、本実施の形態では、図中右側の手摺ロッド32と図中左側の手摺ロッド32を、同じ高さ位置に設置できるようになっている。
【0059】
また、詳細には説明しないが、図1に示すように、床板2の上端には、手摺支柱30の下端と各橋桁側縦支柱6aの下端との間に架け渡される巾木35が着脱自在に連結されており、床板2上から工具等が落下するのを防止している。また、本実施の形態の巾木35は、テレスコピック構造に形成されて伸縮可能となっているため、橋桁側縦支柱6a,6a間の距離に応じて、巾木35の長さを調整できる。
【0060】
つづいて、本実施の形態の昇降装置について詳細に説明する。本実施の形態では、図1に示すように、昇降装置として、手動で操作レバーを操作することでチェーン3aの巻上げおよび巻下げを行える公知のレバーホイスト3が利用されており、各橋桁10と各足場装置5の間にそれぞれレバーホイスト3を設置している。したがって、本実施の形態では、各足場装置5は、レバーホイスト3によって、昇降可能に吊り下げ支持されている。
【0061】
詳細には、レバーホイスト3は、チェーン3aが巻き回されたギヤを保持するとともに上端側フック3bを有する保持ブロック3cと、チェーン3aの先端に設けられる下端側フック3dとを備えている。そして、橋桁10に一体的に連結された手摺Hの横桟Hbに掛けられた吊りワイヤ40にレバーホイスト3の一端である上端に設けられる上端側フック3bを引っ掛け、足場装置5の吊り部材6における横材6cに取付けられた取付片41にレバーホイスト3の他端である下端に設けられる下端側フック3dを引っ掛けることで、足場装置5は、レバーホイスト3によって昇降可能に吊り下げ支持される。そのため、レバーホイスト3によって各足場装置5を昇降させると、各足場装置5,5間に架け渡された床板2も足場装置5とともに昇降する。
【0062】
なお、本実施の形態では、レバーホイスト3の一端は、橋桁10に一体的に連結された手摺Hに取付けられているが、手摺Hに固定される支持部材4に取付けられてもよい。ただし、レバーホイスト3の一端を手摺Hに取付けた場合には、万一支持部材4が手摺Hから外れてしまったとしても、レバーホイスト3によって吊り足場1を吊り下げ支持できるので、吊り足場1の落下を防止できる。
【0063】
また、本実施の形態では、取付片41は、図1に示すように、横材6cの橋桁10から離間した位置に取付けられているため、レバーホイスト3は、図中下端が橋桁10から離間する向きで斜めに設置されている。すると、レバーホイスト3は、足場装置5を斜め方向に引っ張る力を発揮する。そして、レバーホイスト3の引っ張る力を分解すると、足場装置5には、上方向の力と橋桁10側へ引き付ける横方向の力が作用する。
【0064】
したがって、このようにレバーホイスト3を斜めに設置すると、足場装置5に対して橋桁10側へ引き付ける横方向の力も作用するため、足場装置5,5間に架け渡された床板2の横断方向の振れが抑制される。ただし、レバーホイスト3は、鉛直方向に設置されてもよい。
【0065】
なお、昇降装置は、レバーホイスト3には限定されず、チェーンブロックやウィンチあるいはクレーン等の重機であってもよい。ただし、昇降装置としてレバーホイストやチェーンブロックを利用する場合には、人力で作業ができるため、電源を用意する必要がない。
【0066】
つづいて、本実施の形態の吊り足場1の設置方法について、詳細に説明する。まず、作業者は、図6(A)に示すように、支持ロッド4aを橋桁10の外側に向けた状態で、固定装置4bに手摺Hの横桟Hbを挟持させて、支持部材4を各手摺Hの横桟Hbに二つずつ並べて固定する。すると、支持ロッド4aは、手摺Hの外側に突出した状態で、橋桁10の橋長方向に沿うように配置される。
【0067】
次に、作業者は、予め組み立てておいた足場装置5を持ち上げて、足場装置5の上フック8を支持ロッド4aに引っ掛ける。すると、足場装置5は、図6(B)に示すように、各橋桁10を横断方向で挟む位置に配置された状態で、支持部材4に対して仮固定される。
【0068】
さらに、作業者は、高所作業車を利用して、橋梁Bの下方から各足場装置5にクランプ19を取付けるとともに、このクランプ19に橋桁10の下側フランジ部10cを挟持させて、各足場装置5の下側を橋桁10に連結させる。そして、作業者は、高所作業車上から横架材20,20間に床板2を架け渡し、床用フック22の各垂直片22aの先端を貫通するようにピン23を挿入する。さらに、図6(C)に示すように、床板2の上に手摺支柱30、手摺ロッド32、巾木35を設置する。
【0069】
最後に、作業者は、各手摺Hの横桟Hbに吊りワイヤ40を掛け回してから、レバーホイスト3の上端側フック3bを吊りワイヤ40に引っ掛け、レバーホイスト3の下端側フック3dを足場装置5の取付片41に引っ掛ける。すると、図1に示すように、各橋桁10に一体的に設けられた手摺Hと各足場装置5との間にレバーホイスト3がそれぞれ設置される。
【0070】
このように吊り足場1が、各足場装置5の上フック8を各支持部材4の支持ロッド4aに引っ掛けた状態で一対の橋桁10,10に設置されていると、床板2は床板2上での作業者の作業を可能とする位置(以下、「作業位置」とする)に位置決めされる。なお、作業位置に配置される床板2と橋桁10の下端との間の距離は、床板2と橋桁10の間に十分な作業スペースを確保できる限りにおいて任意に設定されればよい。
【0071】
つづいて、図1に示すように、床板2が作業位置に設置された状態の吊り足場1において、各足場装置5を昇降装置としてのレバーホイスト3で上昇させて、床板2を橋桁10の直下まで近接させる手順について説明する。
【0072】
まず、作業者は、高所作業車上から、床板2上に取付けられた手摺支柱30、手摺ロッド32、巾木35及びクランプ19を取り外す。その後、作業者は、図7(A)に示すように、図中右側にある一方のレバーホイスト3の操作レバーを操作して、チェーン3aの巻き上げを行う。すると、図7(A)中右側の足場装置5は、ガイド片4dに当接しながら上昇し、上フック8が支持ロッド4aから外れて、代わりに下フック9が支持ロッド4aに引っ掛かる。
【0073】
詳細には、足場装置5を上昇させていくと、下フック9のフック部9bの上端に支持ロッド4aが当接し、下フック9が支持ロッド4aによって上方から押される。すると、下フック9は支持ロッド4aによって押し下げられて、下フック9は、突出位置(図5(A)に実線で示す位置)からフック部9bが橋桁10側へ突出しない非突出位置(図5(A)に破線で示す位置)まで揺動するので、下フック9は支持ロッド4aの上方へ移動できる。
【0074】
その後、自然状態で自動的に元の突出位置に戻った下フック9を支持ロッド4aに引っ掛ける。この際、下フック9は、ストッパ部9dが橋桁側縦支柱6aに当接して回転が規制されるので、下フック9は下側から押し上げる力が作用しても、支持ロッド4aから外れることはない。さらに、この状態で、下フック9のピン孔9eと橋桁側縦支柱6aのピン孔6fにロックピン15を挿入することで、下フック9は突出位置でロックされる。
【0075】
また、図7(A)に示すように、図中右側の足場装置5を上昇させていくと、図中右側の横架材20の位置が図中左側の横架材20の位置よりも高くなる。ここで、横架材20,20間の距離は、各横架材20の高さが同じときよりも、各横架材20の高さが異なる方が長くなるが、本実施の形態の床用フック22は、横架材20の軸方向から見て横架材20の横方向の移動を許容する幅を備えている。
【0076】
よって、各横架材20は各床用フック22内での幅方向(垂直片22a,22aの対向する方向)の移動が許容されているので、図7(A)に示すように、図中右側の足場装置5のみを上昇させて、横架材20、20間の距離が長くなっても、床板2を横架材20,20間に架け渡したままでも足場装置5を片方ずつ上昇させることができる。
【0077】
次に、図中左側の足場装置5も、図中右側の足場装置5と同様の手順で上昇させて、下フック9を支持ロッド4aに引っ掛ける。すると、図7(B)に示すように、両方の足場装置5が同じ高さ位置まで上昇し、床板2は橋桁10の直近の位置(以下、「収納位置」とする)に位置決めされる。ここでいう橋桁10の直近とは、橋桁10に接触しない程度に近接する位置を指し、橋桁10との距離は特に限定されない。
【0078】
また、図示しないが、収納位置に配置された床板2を作業位置へ下降させる場合には、足場装置5を下フック9が支持ロッド4aから外れる程度に持ち上げて、下フック9を回転させて橋桁側縦支柱6a側へ押し込んで、支持ロッド4aと下フック9とが干渉しないようにしてから、レバーホイスト3で足場装置5を下降させればよい。なお、各足場装置5を上昇させる順序は特に限定されず、図中左側の足場装置5を上昇させてから、図中右側の足場装置5を上昇させるようにしてもよい。
【0079】
前述したように、本実施の形態の吊り足場は、対向する一対の橋桁10,10に吊り下げ支持される吊り足場1において、橋桁10の下端と対向する位置に橋桁10の橋長方向を横切る横断方向に配置される床板2と、床板2を昇降可能な昇降装置(レバーホイスト3)とを備えている。
【0080】
この構成によると、昇降装置によって床板2を昇降させることで、床板2を橋桁10に対して遠近させることができる。そのため、作業中は床板2を下ろして橋桁10から遠ざけておけば、床板2と橋桁10との間に十分な作業スペースを確保することができるので、作業効率が向上する。他方、作業をしていない間は、床板2を上昇させて橋桁10に近づけておけば、橋桁10の下方に道路が敷設されている場合であっても、道路を通行止めする必要がない。
【0081】
つまり、本実施の形態では、作業中のみ道路を通行止めし、作業中以外の時間は道路の通行止めを解除できる。そのため、例えば、交通量の少ない時間帯に床板2を下ろして作業を行い、交通量の多い時間帯には床板2を上昇させて道路の通行止めを解除すれば、道路利用者に対する不利益を最小限にすることができる。
【0082】
よって、本実施の形態の吊り足場1によれば、道路利用者に対する不利益を最小限にしつつ、作業効率を向上させることができる。
【0083】
なお、橋桁10の横断方向とは、橋桁10の橋長方向に対して直交する方向には限られず、橋桁10の橋長方向に対して、斜めに横切る方向も含む。
【0084】
また、本実施の形態の吊り足場1は、各橋桁10を横断方向で挟む位置に配置されて足場板7と足場板7を吊り下げる吊り部材6を有する一対の足場装置5,5を備えており、床板2は足場装置5,5間に架け渡されており、昇降装置は足場装置5を昇降させることで床板2を昇降させている。
【0085】
この構成によると、作業者が足場装置5の足場板7の上に立って橋桁10の側面に対する作業を行うことができるとともに、作業者が足場板7を通って床板2へ安全に移動することができる。ただし、足場装置5を省略して、昇降装置で床板2を直接昇降させるようにしてもよい。
【0086】
また、本実施の形態の吊り足場1は、各橋桁10に固定されて橋桁10の橋長方向に沿って配置される支持ロッド4aを有する支持部材4を備え、吊り部材6には、支持ロッド4aに引っ掛かると床板2上での作業者の作業を可能とする作業位置に床板2を位置決めする上フック8と、支持ロッド4aに引っ掛かると橋桁10の直近である収納位置に床板2を位置決めする下フック9とが上下に並べて設けられており、下フック9は、吊り部材6に上下方向に回転可能に連結されて橋桁10側へ突出するとともに、橋桁10側へ突出する突出位置にて下方からの押し上げに対して回転が規制され、上方からの押し下げに対しては回転が許容されるようになっている。
【0087】
この構成によると、昇降装置によって床板2を作業位置から収納位置へ上昇させる際に、下フック9が支持ロッド4aによって上方から押されると突出位置から回転して、支持ロッド4aの下フック9の下側への通過を許容する。その後、下フック9は自動的に突出位置に戻るため、下フック9を支持ロッド4aに引っ掛けることができる。この際、突出位置に配置される下フック9は下方からの押し上げに対して回転が規制されるため、下フック9は、支持ロッド4aに引っ掛かった状態では回転せず、支持ロッド4aから外れない。
【0088】
したがって、本実施の形態では、床板2を作業位置から収納位置へ上昇させる際に、下フック9を支持ロッド4aに容易に引っ掛けることができるので、作業位置にある床板2を収納位置へ容易に位置決めできる。
【0089】
なお、図5に示す本実施の形態の下フック9の構造は一例であって、橋桁10側へ突出する突出位置にて下方からの押し上げに対して回転が規制され、上方からの押し下げに対しては回転が許容されるようになっていれば、構造は特に限定されない。また、本実施の形態では、下フック9は自然状態で自動的に突出位置に戻るようになっているが、手動で突出位置と非突出位置を切換えられるようにされてもよい。
【0090】
また、本実施の形態の吊り足場1では、支持部材4は、橋桁10の上方に橋長方向に沿うように一体的に設けられた手摺Hに固定される固定装置4bと、固定装置4bに設けられて支持ロッドを保持する一対の保持片4h,4hと、足場装置5と橋桁10の間に配置されて吊り部材6に当接するガイド片4dとを備え、吊り部材6は一対の保持片4h,4h間に挿入されている。
【0091】
この構成によると、足場装置5を支持する支持ロッド4aを有する支持部材4が手摺Hに固定されているので、作業者は足場装置5を手摺Hの内側から安全に取付けできる。さらに、橋桁10と足場装置5の間にガイド片4dが配置されているので、足場装置5の昇降時に足場装置5が橋桁10に干渉するの防止できる。
【0092】
加えて、保持片4h,4h間に吊り部材6が挿入されているので、足場装置5の橋長方向への移動が規制される。よって、吊り部材6は足場装置5の昇降時に常にガイド片4dに当接する。さらに、足場装置5の橋長方向への移動が規制されるので、足場装置5の支持部材4からの脱落が防止される。
【0093】
なお、本実施の形態では、支持部材4は、橋桁10に一体的に設けられた手摺Hを介して橋桁10に固定されているが、橋桁10に直接固定されていてもよい。
【0094】
また、本実施の形態の吊り足場1では、各足場装置5の下端に橋桁10の橋長方向に沿うように設けられて互いに対向するとともに床板2が架け渡される一対の横架材20と、床板2の下端の各横架材20と対向する位置にそれぞれ設けられて横架材20に引っ掛かる床用フック22とを有し、床用フック22は横架材20の軸方向から見て横架材20の横方向の移動を許容している。
【0095】
この構成によると、各横架材20は各床用フック22内での幅方向の移動が許容されているので、一方の足場装置5のみを昇降させて、横架材20,20間の距離が長くなっても、床板2を横架材20,20間に架け渡したままでも足場装置5を片方ずつ昇降させることができる。したがって、本実施の形態の吊り足場1では、両方の足場装置5,5を同時に昇降させる必要がないため、床板2の昇降作業が容易となる。
【0096】
また、本実施の形態の吊り足場1では、吊り部材6は、一対の縦支柱6a,6bと、一対の縦支柱6a,6b間に所定の間隔で架け渡される複数の横材6cとを有して、梯子状に形成されている。この構成によると、吊り部材6を梯子として利用できるので、床板2へ下りるための梯子が不要となる。
【0097】
また、本実施の形態の吊り足場1では、昇降装置がレバーホイスト3であって、レバーホイスト3の一端は橋桁10に取付けられ、レバーホイスト3の他端は足場装置5に取付けられている。この構成によると、レバーホイスト3の一端は橋桁10に取付けられているため、万一支持部材4が橋桁10から外れてしまったとしても、レバーホイスト3で吊り足場1を支持することができる。また、レバーホイスト3は、人力で作業ができるため、電源を用意する必要がない。なお、昇降装置をレバーホイスト3に代えてチェーンブロックとしてもよく、チェーンブロックとした場合であっても、人力で作業ができるため、電源を用意する必要がない。
【0098】
また、本実施の形態の吊り足場1では、レバーホイスト3の他端は足場装置5の橋桁10から離間した位置に取付けられている。この構成によると、レバーホイスト3によって足場装置5に対して上方向の力と橋桁10側へ引き付ける横方向の力が作用するため、足場装置5,5間に架け渡された床板2の横断方向の振れを抑制できる。なお、昇降装置をレバーホイスト3に代えてチェーンブロックとした場合であっても、同様に床板2の横断方向の振れを抑制できる。
【0099】
また、本実施の形態の吊り足場1は、床板2に着脱自在に固定される手摺支柱30と伸縮可能であって吊り部材6と手摺支柱30の間に架け渡される複数の手摺ロッド32とを有している。この構成によると、手摺ロッド32を伸縮させることで、手摺ロッド32の軸方向長さを調整できるので、橋梁Bの横断方向の長さに応じて、手摺ロッド32の軸方向長さを調整できる。なお、本実施の形態では、手摺支柱30の数は一つとされているが、複数であってもよく、手摺支柱30の数を複数とする場合には、手摺支柱30,30同士の間にも手摺ロッド32が架け渡される。
【0100】
以上、本発明の好ましい実施の形態を詳細に説明したが、特許請求の範囲から逸脱なく改造、変形及び変更ができるのは当然である。
【符号の説明】
【0101】
1・・・吊り足場、2・・・床板、3・・・レバーホイスト(昇降装置)、4・・・支持部材、4a・・・支持ロッド、4b・・・固定装置、4d・・・ガイド片、4h・・・保持片、5・・・足場装置、6・・・吊り部材、6a,6b・・・縦支柱、6c・・・横材、8・・・上フック、9・・・下フック、10・・・橋桁、20・・・横架材、22・・・床用フック、30・・・手摺支柱、32・・・手摺ロッド
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7