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特開2022-50761孔開け加工システム及び孔開け加工方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022050761
(43)【公開日】2022-03-31
(54)【発明の名称】孔開け加工システム及び孔開け加工方法
(51)【国際特許分類】
   B21D 28/28 20060101AFI20220324BHJP
【FI】
B21D28/28
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020156866
(22)【出願日】2020-09-18
(71)【出願人】
【識別番号】000116976
【氏名又は名称】旭精機工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100112472
【弁理士】
【氏名又は名称】松浦 弘
(74)【代理人】
【識別番号】100202223
【弁理士】
【氏名又は名称】軸見 可奈子
(72)【発明者】
【氏名】川村 治男
(72)【発明者】
【氏名】岩田 武也
【テーマコード(参考)】
4E048
【Fターム(参考)】
4E048KA02
4E048KA04
(57)【要約】
【課題】ワークにおける貫通孔同士の間隔のばらつきを低減することが可能な孔開け加工システム及び孔開け加工方法の提供を目的とする。
【解決手段】本実施形態の孔開け加工システム10は、水平移動可能且つ移動基準軸J3を中心に回転可能な把持ツール70を有する。把持ツール70は、移動基準軸J3の回りに複数の把持部材74を有し、複数の把持部材74を円筒形のワーク90の側面に押し付けて把持してワーク90の中心軸を移動基準軸J3と一致するように芯出しする。そして、ワーク90をダイ23に嵌合させて把持ツール70がワーク90を把持した状態で、パンチ31にてワーク90に貫通孔92を打ち抜いてから把持ツール70と共にワーク90を移動基準軸J3を中心に回転させて再度パンチ31にて貫通孔92を打ち抜く回転打抜動作を行い、ワーク90の周方向の複数位置に貫通孔92を形成する。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
円筒形のワークの周方向の複数位置に貫通孔を打ち抜き加工する孔開け加工システムであって、
基端部を固定され、先端側から前記ワークが外側に嵌合されるダイと、
前記ダイの側面に開口する打抜孔に対して進退するパンチと、
未加工のワークを支持する未加工ワーク支持部と、
移動基準軸の回りに複数の把持部材を有し、それら複数の把持部材を前記ワークの側面に押し付けて前記ワークを把持しかつ前記ワークの中心軸を前記移動基準軸と一致するように芯出しする把持ツールと、
前記把持ツールを移動しかつ前記移動基準軸を中心に回転させるツール移動機構と、を備え、
前記未加工ワーク支持部の前記ワークを前記把持ツールで把持して前記ダイに嵌合させる位置まで移動し、前記把持ツールが前記ワークを把持した状態で前記パンチにて前記ワークに前記貫通孔を打ち抜いてから前記把持ツールと共に前記ワークを前記移動基準軸を中心に回転させて再度前記パンチにて前記ワークに前記貫通孔を打ち抜く回転打抜動作を行って前記ワークの周方向の複数位置に貫通孔を打ち抜き加工する孔開け加工システム。
【請求項2】
前記ダイは、円筒形又は円柱形をなし、
前記未加工ワーク支持部は、前記ダイの中心軸であるダイ基準軸と平行な原点軸に前記ワークを芯出しして支持し、
前記ツール移動機構は、前記移動基準軸が前記原点軸と一致する第1芯出し位置と、前記移動基準軸が前記ダイ基準軸と一致する第2芯出し位置とに前記把持ツールを位置決め制御可能であると共に、前記第1芯出し位置及び前記第2芯出し位置で前記移動基準軸の軸方向に前記把持ツールを移動可能に構成している請求項1に記載の孔開け加工システム。
【請求項3】
前記ダイ基準軸及び前記原点軸及び前記移動基準軸は、上下方向と平行に配置され、
前記ツール移動機構としてのスカラー型のロボット本体に前記把持ツールを組み付けてなるロボットを備え、
前記ロボット本体は、固定ベースに基端部を回転可能に支持されて鉛直軸を中心に回転駆動される第1アームと、前記第1アームの先端部に基端部を回転可能に支持されて鉛直軸を中心に回転駆動されると共に先端部を前記移動基準軸が貫通する第2アームと、前記第2アームの先端部に回転可能かつ直線移動可能に支持されて前記移動基準軸を中心に回転駆動されかつ前記移動基準軸の軸方向にスライド駆動される下向きの出力テーブルと、を有し、
前記把持ツールは、前記複数の把持部材を下面に放射状に配置して備えると共に上面に駆動源を有する駆動源付チャックであって、前記出力テーブルの下面に固定されている請求項2に記載の孔開け加工システム。
【請求項4】
前記ダイ基準軸及び前記原点軸及び前記移動基準軸は、上下方向と平行に配置され、
ベルトコンベアの上方に前記ベルトコンベアと平行の延びる1対のガイドレールを備えて、前記1対のガイドレールの間に複数の前記ワークを起立した状態で一列に並べて前記未加工ワーク支持部に向けて搬送可能なワーク搬送装置と、
前記未加工ワーク支持部に設けられ、前記ワーク搬送装置に搬送されてくるワークの側面に当接して前記ワークを前記原点軸に芯出しする芯出し当接面と、を有する請求項2又は3に記載の孔開け加工システム。
【請求項5】
前記ワーク搬送装置のうち前記未加工ワーク支持部の手前位置に設けられて、前記ベルトコンベア上のワーク移動領域に進退し、先頭から2番目のワークを堰き止めて、先頭のワークを前記2番目のワークから離して前記未加工ワーク支持部へと移動させる第1堰止部材を備え、
前記第1堰止部材は、前記先頭のワークが前記未加工ワーク支持部から除去されて前記2番目のワークが新たな先頭のワークになったら後退し、前記新たな先頭のワークを通過させてから前進して新たな2番目のワークを堰き止める請求項4に記載の孔開け加工システム。
【請求項6】
前記第1堰止部材は、進退方向に対して傾斜した傾斜当接面を有し、前記未加工ワーク支持部に支持された前記ワークに前記傾斜当接面を押し付けて前記ワークを前記未加工ワーク支持部の前記芯出し当接面に押し付ける請求項5に記載の孔開け加工システム。
【請求項7】
前記ワーク搬送装置のうち前記第1堰止部材より手前位置に設けられて、前記ワーク移動領域に進退し、前記先頭から2番目のワークが前記第1堰止部材に堰き止められているときに先頭から3番目のワークを堰き止める第2堰止部材を備え、
前記2番目のワークが新たな先頭のワークになって前記第1堰止部材が一度後退して前進した後、前記第2堰止部材が後退し、新たな2番目のワークを通過させてから前記第2堰止部材が前進して新たな3番目以降のワークを堰き止める請求項5又は6に記載の孔開け加工システム。
【請求項8】
円筒形のワークの周方向の複数位置に貫通孔を打ち抜き加工する孔開け加工方法であって、
前記ワークを把持して移動及び回転させることが可能なロボットと、先端側から前記ワークが外側に嵌合されるダイと、前記ダイの側面に開口する打抜孔に進退するパンチとを使用して、
前記ロボットにより前記ワークを把持して前記ダイに嵌合させる位置まで移動し、前記ワークを把持したままの状態で前記パンチにて前記ワークに前記貫通孔を打ち抜いてから前記ワークを回転させて再度前記パンチにて前記ワークに前記貫通孔を打ち抜く回転打抜動作を行って前記ワークの周方向の複数位置に貫通孔を打ち抜き加工する孔開け加工方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、円筒形のワークの周方向の複数位置に貫通孔を打ち抜き加工する孔開け加工システム及び孔開け加工方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、この種の孔開け加工システムとして、複数のダイ及びパンチを備え、ワークを複数のダイに順次移動して孔開け加工を行うものが知られている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2003-191098号公報(図4図9図10
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上述した従来の孔開け加工システムでは、ダイから別のダイに移動する際に各ダイに対するワークの位置がばらつき、それが原因となってワークにおける貫通孔同士の間隔がばらつくことが問題になっていた。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決するためになされた請求項1の発明は、円筒形のワークの周方向の複数位置に貫通孔を打ち抜き加工する孔開け加工システムであって、基端部を固定され、先端側から前記ワークが外側に嵌合されるダイと、前記ダイの側面に開口する打抜孔に対して進退するパンチと、未加工のワークを支持する未加工ワーク支持部と、移動基準軸の回りに複数の把持部材を有し、それら複数の把持部材を前記ワークの側面に押し付けて前記ワークを把持しかつ前記ワークの中心軸を前記移動基準軸と一致するように芯出しする把持ツールと、前記把持ツールを移動しかつ前記移動基準軸を中心に回転させるツール移動機構と、を備え、前記未加工ワーク支持部の前記ワークを前記把持ツールで把持して前記ダイに嵌合させる位置まで移動し、前記把持ツールが前記ワークを把持した状態で前記パンチにて前記ワークに前記貫通孔を打ち抜いてから前記把持ツールと共に前記ワークを前記移動基準軸を中心に回転させて再度前記パンチにて前記ワークに前記貫通孔を打ち抜く回転打抜動作を行って前記ワークの周方向の複数位置に貫通孔を打ち抜き加工する孔開け加工システムである。
【0006】
請求項2の発明は、前記ダイは、円筒形又は円柱形をなし、前記未加工ワーク支持部は、前記ダイの中心軸であるダイ基準軸と平行な原点軸に前記ワークを芯出しして支持し、前記ツール移動機構は、前記移動基準軸が前記原点軸と一致する第1芯出し位置と、前記移動基準軸が前記ダイ基準軸と一致する第2芯出し位置とに前記把持ツールを位置決め制御可能であると共に、前記第1芯出し位置及び前記第2芯出し位置で前記移動基準軸の軸方向に前記把持ツールを移動可能に構成している請求項1に記載の孔開け加工システムである。
【0007】
請求項3の発明は、前記ダイ基準軸及び前記原点軸及び前記移動基準軸は、上下方向と平行に配置され、前記ツール移動機構としてのスカラー型のロボット本体に前記把持ツールを組み付けてなるロボットを備え、前記ロボット本体は、固定ベースに基端部を回転可能に支持されて鉛直軸を中心に回転駆動される第1アームと、前記第1アームの先端部に基端部を回転可能に支持されて鉛直軸を中心に回転駆動されると共に先端部を前記移動基準軸が貫通する第2アームと、前記第2アームの先端部に回転可能かつ直線移動可能に支持されて前記移動基準軸を中心に回転駆動されかつ前記移動基準軸の軸方向にスライド駆動される下向きの出力テーブルと、を有し、前記把持ツールは、前記複数の把持部材を下面に放射状に配置して備えると共に上面に駆動源を有する駆動源付チャックであって、前記出力テーブルの下面に固定されている請求項2に記載の孔開け加工システムである。
【0008】
請求項4の発明は、前記ダイ基準軸及び前記原点軸及び前記移動基準軸は、上下方向と平行に配置され、ベルトコンベアの上方に前記ベルトコンベアと平行の延びる1対のガイドレールを備えて、前記1対のガイドレールの間に複数の前記ワークを起立した状態で一列に並べて前記未加工ワーク支持部に向けて搬送可能なワーク搬送装置と、前記未加工ワーク支持部に設けられ、前記ワーク搬送装置に搬送されてくるワークの側面に当接して前記ワークを前記原点軸に芯出しする芯出し当接面と、を有する請求項2又は3に記載の孔開け加工システムである。
【0009】
請求項5の発明は、前記ワーク搬送装置のうち前記未加工ワーク支持部の手前位置に設けられて、前記ベルトコンベア上のワーク移動領域に進退し、先頭から2番目のワークを堰き止めて、先頭のワークを前記2番目のワークから離して前記未加工ワーク支持部へと移動させる第1堰止部材を備え、前記第1堰止部材は、前記先頭のワークが前記未加工ワーク支持部から除去されて前記2番目のワークが新たな先頭のワークになったら後退し、前記新たな先頭のワークを通過させてから前進して新たな2番目のワークを堰き止める請求項4に記載の孔開け加工システムである。
【0010】
請求項6の発明は、前記第1堰止部材は、進退方向に対して傾斜した傾斜当接面を有し、前記未加工ワーク支持部に支持された前記ワークに前記傾斜当接面を押し付けて前記ワークを前記未加工ワーク支持部の前記芯出し当接面に押し付ける請求項5に記載の孔開け加工システムである。
【0011】
請求項7の発明は、前記ワーク搬送装置のうち前記第1堰止部材より手前位置に設けられて、前記ワーク移動領域に進退し、前記先頭から2番目のワークが前記第1堰止部材に堰き止められているときに先頭から3番目のワークを堰き止める第2堰止部材を備え、前記2番目のワークが新たな先頭のワークになって前記第1堰止部材が一度後退して前進した後、前記第2堰止部材が後退し、新たな2番目のワークを通過させてから前記第2堰止部材が前進して新たな3番目以降のワークを堰き止める請求項5又は6に記載の孔開け加工システムである。
【0012】
請求項8の発明は、円筒形のワークの周方向の複数位置に貫通孔を打ち抜き加工する孔開け加工方であって、前記ワークを把持して移動及び回転させることが可能なロボットと、先端側から前記ワークが外側に嵌合されるダイと、前記ダイの側面に開口する打抜孔に進退するパンチとを使用して、前記ロボットにより前記ワークを把持して前記ダイに嵌合させる位置まで移動し、前記ワークを把持したままの状態で前記パンチにて前記ワークに前記貫通孔を打ち抜いてから前記ワークを回転させて再度前記パンチにて前記ワークに前記貫通孔を打ち抜く回転打抜動作を行って前記ワークの周方向の複数位置に貫通孔を打ち抜き加工する孔開け加工方法である。
【発明の効果】
【0013】
請求項1及び8の孔開け加工システム及び孔開け加工方法によれば、把持ツール又はロボットがワークを把持した状態で、そのワークにパンチにて貫通孔を打ち抜いてからワークを回転させて再度パンチにてワークに貫通孔を打ち抜いてワークの周方向の複数位置に貫通孔を加工するので、ワークにおける貫通孔同士の間隔のばらつきが従来より抑えられる。また、同じダイ及びパンチを使用してワークの周方向の複数位置に貫通孔を打ち抜き加工するので、ワークの周方向で異なる位置に打ち抜かれる貫通孔毎にダイ及びパンチを備えた従来のものに比べて、ダイ及びパンチの有効利用が図られる。
【0014】
また、ダイは、例えば、断面が半円形又は扇形の柱状をなしてもよいが、請求項2の構成のようにダイが円筒形又は円柱形をなしていれば、孔開け加工時にワークが把持ツールとダイとにより内外の両方から支持されて安定し、加工精度が向上する。また、未加工ワーク支持部は、ダイ基準軸と平行な原点軸にワークを芯出しして支持し、ツール移動機構は、移動基準軸が原点軸と一致する第1芯出し位置と、移動基準軸がダイ基準軸と一致する第2芯出し位置とに把持ツールを位置決め制御可能であると共に、第1芯出し位置及び第2芯出し位置で移動基準軸の軸方向に把持ツールを移動可能に構成しているので、ワークとダイとの相対的な嵌合位置が安定し、ワークをスムーズにダイの外側に嵌合させることができると共に、ワークに打ち抜き加工される貫通孔の位置が安定する。
【0015】
請求項3の構成では、ダイ基準軸及び原点軸及び移動基準軸は、上下方向と平行に配置され、ツール移動機構としてのスカラー型のロボット本体に把持ツールを組み付けてなるロボットを使用することで、ロボットのティーチングプレイバック機能を利用してワークの形状変更等に容易に対応することができる。また、スカラー型のロボット本体として汎用のものを使用すれば、コストを抑えることができる。
【0016】
請求項4の孔開け加工システムでは、複数のワークを一列に並べてスムーズに未加工ワーク支持部に供給することでき、生産効率を上げることが可能になる。
【0017】
請求項5の構成によれば、一列に並んで搬送される複数のワークのうち先頭のワークが2番目以降のワークから離されて未加工ワーク支持部に支持されるので、未加工ワーク支持部のワークを把持ツールで把持する際に、把持ツールの2番目以降のワークとの非干渉の範囲が広くなり、把持ツールの形状や移動経路の自由度や高くなる。
【0018】
請求項6の構成によれば、未加工ワーク支持部によるワークの芯出し精度を高くすることができる。
【0019】
請求項7の構成によれば、複数のワークを順次スムーズに他のワークから離して未加工ワーク支持部へと供給することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】第1実施形態の加工済みワークの側面図
図2】孔開け加工システム全体の斜視図
図3】孔開け加工機の断面図
図4】ガイド付きダイの平断面図
図5】孔開け加工機及びパーツフィーダーの斜視図
図6】把持ツールの斜視図
図7】パーツフィーダーの平面図
図8】パーツフィーダーの斜視図
図9】第1堰止部材及び第2堰止部材の動作を説明するための平面図
図10】孔開け加工システムのブロック図
図11】第2実施形態の加工済みのワークの側面図
図12】変形例に係る第1堰止部材及び第2堰止部材の平面図
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、図1図10を参照して一実施形態に係る孔開け加工システム10について説明する。図1には、本実施形態の孔開け加工システム10の加工対象であるワーク90が示されている。このワーク90は、円筒壁91の上端を底壁93で閉塞した構造をなし、その上下方向の中間部を周方向で複数等分(例えば、9等分)する位置に貫通孔92が孔開け加工システム10によって打ち抜き加工される。
【0022】
図2に示すように、本実施形態の孔開け加工システム10は、孔開け加工機20、ロボット60、パーツフィーダー40等を支持盤11上に備えてなる。支持盤11は、横長の長方形状になっている。以下、支持盤11の長辺方向を「横方向H1」といい、支持盤11の短辺方向を「前後方向H2」といい、さらには、横方向H1の一端側を単に「左側」、その反対側を単に「右側」といい、前後方向H2の一端側を単に「前側」、その反対側を単に「後側」ということとする。
【0023】
支持盤11の上面のうち横方向H1の中央より左側には、第1支持台13と第2支持台14とが前後に並べて固定されている。また、後側の第2支持台14は、前側の第1支持台13より高く、その第2支持台14の上面にロボット60が固定され、第1支持台13の上面に孔開け加工機20のダイホルダ21が固定されている。
【0024】
ダイホルダ21は、外形が直方体状をなし、その内部に図3に示したガイド付きダイ22が保持されている。ガイド付きダイ22は、ダイ23とガイドスリーブ24とからなる。ダイ23は、平面形状が長方形をなしたベース部23Aの上面中央から円筒部23Bが起立した構造をなしている。円筒部23Bの下端部には、段付き状に拡径された大径部23Cが備えられている。また、円筒部23Bの中心孔23Hは、ベース部23Aの下面まで延びている。
【0025】
ガイドスリーブ24は、図4(A)に示すように、平面形状がベース部23Aと同一の長方形をなした角柱体の中央部を断面円形の中央孔24Aが上下に貫通し、図3に示すように、上面からは中央孔24Aと同心のボス24Bが段付き状に突出した構造をなしている。また、中央孔24Aの下端部には、段付き状に拡径した大径部24Cが備えられ、ガイドスリーブ24の下面には高さ調整突部24Gが備えられている。
【0026】
そして、ガイドスリーブ24の中央孔24Aに、ダイ23の円筒部23Bが挿入されて、両者の大径部23C,24C同士の嵌合当接により両者が芯出しされ、両者間に筒状のワーク受容空間22Wが形成されている。また、高さ調整突部24Gとベース部23Aとの当接によりダイ23に対してガイドスリーブ24が上下方向で位置決めされ、ダイ23と上面とガイドスリーブ24の上面とが面一に配置されている。なお、高さ調整突部24Gは、必要に応じて研削されてガイドスリーブ24のダイ23に対する高さ調整が行われる。
【0027】
ガイド付きダイ22は、ダイホルダ21に形成された断面長方形の受容孔21Zに嵌合されて回り止めされ、ダイホルダ21の上面壁21Wを貫通する貫通孔21Kに、ガイド付きダイ22のボス24Bが嵌合されてダイホルダ21の上面とガイド付きダイ22の上面とが面一に配置されている。また、ダイホルダ21にダイ23の中心孔23Hから下方に延びる排出孔21Hが形成されると共に、第1支持台13に排出孔13Hが形成され、これら排出孔13H,21Hが支持盤11に形成された図示しない貫通孔を貫通して回収ボックスに臨んでいる。
【0028】
ガイド付きダイ22の上端寄り位置には、ダイ23とガイドスリーブ24とを径方向に貫通して前後方向に延びる打抜孔22Hが形成されている。また、ダイホルダ21のうちガイド付きダイ22より前側部分には、打抜孔22Hの同軸延長線上に打抜孔22Hより内径が大きなパンチガイド孔21Gが形成され、そこにパンチ31が受容されている。
【0029】
パンチ31は、パンチガイド孔21Gに丁度嵌合されて直線移動可能に支持されている丸棒体の先端部を、打抜孔22Hに丁度嵌合される大きさに縮径する一方、基端部を段付き状に拡径した形状をなしている。そして、パンチ31の基端部が、孔開け加工機20のパンチ駆動装置30に保持されている。
【0030】
図5に示すように、パンチ駆動装置30は、第1支持台13の上面のうちダイホルダ21より前側位置に固定されたスライド支持部34に、前後方向H2に延びるスライダ33の一端部をスライド可能に支持して備える。また、スライダ33の他端部は、第1支持台13より前方に張り出し、その下面に固定された係合ブロック33Gが、第1支持台13の前面から張り出す上側支持片35Aの上面に重ねられている。そして、例えば、係合ブロック33Gの下面に形成された図示しないカム溝に、上側支持片35Aに回転可能に支持されて偏心回転する図示しないカムが係合し、そのカムが上側支持片35Aの下方の下側支持梁35Bに支持されたサーボモータ30Mにて回転駆動されるようになっている。これにより、パンチ31がスライダ33と共に前後方向H2に往復直線移動し、ダイ23の打抜孔22Hに進退する。詳細には、パンチ31は、図3に示すように、ダイ23の打抜孔22Hから退避してパンチ31の先端面31Sがガイドスリーブ24の打抜孔22H内に位置する退避位置と、ダイ23の打抜孔22Hに突入してパンチ31の先端面31Sがダイ23の中心孔23H内に位置する突入位置との間を往復移動する(図4(A)参照)。
【0031】
図2に示すように、ロボット60は、汎用的なスカラー型のロボット本体60Hに把持ツール70を取り付けてなる。ロボット本体60Hは、前述の第2支持台14の上面に固定される固定ベース61と、固定ベース61に連結されてその連結部分から水平に延び、固定ベース61に対して鉛直軸を中心にして回転駆動される第1アーム62と、第1アーム62の先端部に連結されてその連結部分から水平に延び、第1アーム62に対して鉛直軸を中心にして回転駆動される第2アーム63と、第2アーム63の先端部を上下に貫通するシャフト部64の下端に配置されて、シャフト部64と共に第2アーム63に対して上下に直線移動されかつ任意の高さで回転駆動される出力テーブル65とを備えてなる。
【0032】
以下、ロボット60の駆動部を説明する際には、固定ベース61に対して第1アーム62を回転駆動する駆動軸を「第1回転駆動軸」、第1アーム62に対して第2アーム63を回転駆動する駆動軸を「第2回転駆動軸」、第2アーム63に対して出力テーブル65を回転駆動する駆動軸を「第3回転駆動軸」、第2アーム63に対して出力テーブル65を上下に昇降させる駆動軸を「直線駆動軸」ということとする。
【0033】
図6に示すように、把持ツール70は、汎用的なチャック71の上面に減速機72Gとサーボモータ72とを重ねて組み付けてなり、ブラケット79を介してロボット本体60Hの出力テーブル65に取り付けられている。
【0034】
具体的には、チャック71は、例えば、円盤状のチャックベース71Aの下面の中心軸回りに、複数(例えば、3つ)の把持部材74を放射状に配置して備える。そして、これら把持部材74がサーボモータ72から動力を受けて均等にチャックベース71Aの中心軸に対して接近及び離間する。これにより、チャック71の中央部に配置されたワーク90が複数の把持部材74により把持されると共に、ワーク90の中心軸がチャック71の中心軸と一致するように芯出しされる。以下、複数の把持部材74をチャックベース71Aの中心軸側に移動することを「チャック71を閉じる」といい、その反対側に移動することを「チャック71を開く」という。
【0035】
ブラケット79は、L字形に屈曲した平板状をなし、その一方の片がサーボモータ72の一側面に重ねて固定され、他方の片が、サーボモータ72、減速機72Gを挟んでチャック71に対して上方から対向するように取り付けられている。そして、ブラケット79の他方の片がロボット本体60Hの出力テーブル65の下面に重ねられ、前述のチャックベース71Aの中心軸と出力テーブル65の中心軸とが一致するように位置決めされて固定されている。そして、これらチャック71及び出力テーブル65に共通する中心軸が、特許請求の範囲における移動基準軸J3になっている。また、前述したダイ23の中心軸は、特許請求の範囲におけるダイ基準軸J2をなしている。そして、例えば、ダイホルダ21に備えた図示しない姿勢調整機構により、移動基準軸J3とダイ基準軸J2とが平行になるようにダイ23の姿勢が調整されている。
【0036】
図5示すように、パーツフィーダー40は、孔開け加工機20の右側方に配置され、横方向H1に水平に延びるベルトコンベア41を備えて孔開け加工機20へと複数のワーク90を搬送する。そのベルトコンベア41は、幅方向(前後方向H2)の両側に1対のサイドバー41Bを有し、それらの間に差し渡された複数の図示しないローラを覆うようにベルト41Aが張られている。そして、ベルトコンベア41は,1対のサイドバー41Bの一端部を第1支持台13の上面に固定されると共に、1対のサイドバー41Bの長手方向の複数位置を、複数の支持スタンド41Cに支持されている。それら複数の支持スタンド41Cは、支持盤11又は支持盤11から側方に張り出す延長板11Eから起立している。
【0037】
ベルト41Aの上方には、1対のガイドレール42が備えられている。1対のガイドレール42は、横方向H1に延びる帯板状をなして、長手方向の複数位置を複数の支持ブラケット45によって支持され、ワーク90の外径と略同一の間隔を空けて前後方向H2で対向している。そして、ベルト41A上に起立した状態で搬送される複数のワーク90が、1対のガイドレール42の間のワーク移動領域R1を移動することで、一列に整列されて孔開け加工機20側へと移動する。
【0038】
なお、各支持ブラケット45は、1対のサイドバー41Bに固定されてそれらの上方に突出する1対の支持ブロック44から1対の支持パイプ43が互いに接近するように延びた構図をなし、それら支持パイプ43の先端に1対のガイドレール42が固定されている。また、1対のガイドレール42は、ベルト41A上で起立するワーク90より低くなっている。
【0039】
ベルト41Aにおける左側(孔開け加工機20側の端部)の上方には、特許請求の範囲の「未加工ワーク支持部」に相当するワークストッパー50が設けられている。ワークストッパー50は、1対のサイドバー41Bの間に架け渡されて、ガイドレール42と略同一の高さとなる位置に配置されている。そして、図7に示すように、1対のガイドレール42がワークストッパー50に側方から突き合われ、ワークストッパー50のうちワーク移動領域R1の延長上には、ワーク位置決凹部51が形成されている。
【0040】
ワーク位置決凹部51の内面は、その奥側に位置してワーク90の外径と略同一の内径の半円状をなした芯出し当接面51Aと、芯出し当接面51Aの両端からワーク位置決凹部51の開口に向かうに従って互い僅かに離れるように横方向H1に対して傾斜した1対の第2ガイド面51Bと、さらに1対の第2ガイド面51Bからワーク位置決凹部51の開口に向かうに従って急な勾配で互い僅かに離れるように横方向H1に対して傾斜した1対の第1ガイド面51Cとからなる。そして、芯出し当接面51Aの中心軸が特許請求の範囲の原点軸J1をなし、ワーク90が芯出し当接面51Aに押し付けられることで、ワーク90の中心軸が原点軸J1と一致するように芯出しされる。なお、ワークストッパー50には、ワーク位置決凹部51内にワーク90が位置するか否かを検出するためのセンサ50Sが備えられている。
【0041】
図8に示すように、1対のガイドレール42に案内されて一列に並べられてワーク位置決凹部51に向かう複数のワーク90から先頭のワーク90だけを離してワーク位置決凹部51に受容するために、ベルトコンベア41のうちワークストッパー50より手前位置には、第1堰止部材52が設けられ、その第1堰止部材52より更に手前位置には、第2堰止部材55が設けられている。
【0042】
第1堰止部材52は、ベルトコンベア41の前側に配置されたエアーアクチュエータ58のスライダ58Sに取り付けられてワーク移動領域R1に対して前側から進退し、第2堰止部材55は、ベルトコンベア41の後側に配置されたエアーアクチュエータ59のスライダ59Sに取り付けられて、ワーク移動領域R1に対して後側から進退する。なお、エアーアクチュエータ58,59は、前側のサイドバー41Bの側面と、後側のサイドバー41Bの側面とに分けられて固定されている。
【0043】
第1堰止部材52及び第2堰止部材55は、前後方向H2に延びる同一の帯板形状になっていて、ワークストッパー50及びガイドレール42の僅かに上方に位置してワーク移動領域R1に進退する。また、図7に示すように、第1堰止部材52及び第2堰止部材55のうちワーク移動領域R1側となる先端部には、幅方向の中央にV形凹部53が形成され、そのV形凹部53の1対の内側斜面53A,53Bから折り返されるようにV形凹部53の両側に1対の外側斜面54A,54Bが形成され、全体が左右対称な形状になっている。なお、V形凹部53の1対の内側斜面53A,53Bの開き角は90度で、V形凹部53の内側斜面53A(53B)と隣合う外側斜面54A(54B)との間の交差角も90度になっている。
【0044】
ベルトコンベア41は、その前面に備えた電源ボックス41Z(図2参照)のスイッチにてオンオフされ、孔開け加工システム10の運転中は、ベルトコンベア41がオンされてベルト41Aが一定速度でワーク90を送給し続ける。また、第1堰止部材52及び第2堰止部材55を保持するエアーアクチュエータ58,59は、後述するコントローラ80に備えたサブ制御部82によって以下のように制御される。
【0045】
孔開け加工システム10が動作を開始する前の初期状態では、例えば、図7に示すように、第1堰止部材52及び第2堰止部材55が共にワーク移動領域R1側に突入していて、第1堰止部材52の一方の外側斜面54Aが、ワーク位置決凹部51内に位置する先頭のワーク90に当接すると共に、他方の外側斜面54Bが先頭から2番目のワーク90に当接する。また、第2堰止部材55の外側斜面54Aと内側斜面53A,53Bと外側斜面54Bとは、2番目、3番目、4番目のワーク90に当接する。
【0046】
この初期状態で、孔開け加工システム10が動作を開始し、図9(A)に示すように、ワーク位置決凹部51からワーク90が抜き取られると、そのことがセンサ50S(図7参照)によって検出され、その検出結果に基づき、図9(B)に示すように、第1堰止部材52がワーク移動領域R1から後退して、新たに先頭になったワーク90がワーク位置決凹部51内までベルトコンベア41によって前進する。その間、新たな2番目以降のワーク90は、第2堰止部材55によって堰き止められている。
【0047】
そして、その新たな先頭のワーク90がワーク位置決凹部51に受容されたことがセンサ50Sによって検出されると、図9(C)に示すように、第1堰止部材52がワーク移動領域R1に突入してワーク位置決凹部51内のワーク90に一方の外側斜面54Aを押し付け、その後、第2堰止部材55が後退する。すると、新たな2番目のワーク90がベルトコンベア41によって前進して第1堰止部材52の外側斜面54Bに当接する。それと略同時又はその後に、第2堰止部材55が前進し、初期状態に戻る。そして、この動作が繰り返されることで、前述の通り、一列に並んだ複数のワーク90のうち先頭のワーク90が後続のワーク90から離されてワーク位置決凹部51に受容される。
【0048】
図5に示すように、パーツフィーダー40の後方には、加工済みのワーク90を回収するためのシュート12が設けられている。シュート12は、板金を角溝構造に折り曲げてなり、横方向H1に傾斜して延び、第1支持台13側の方が高くなっている。また、シュート12の下端は、他端部が支持盤11に形成された開口を通して図示しないワーク収容ボックスに斜め上方から臨んでいる。
【0049】
図10には、孔開け加工システム10の制御部80が示されている。この制御部80には、ロボット本体60H、把持ツール70、孔開け加工機20の各サーボモータの制御を行うメイン制御部81と、エアーアクチュエータ58,59に圧縮エアーを供給するエアー供給回路に含まれるバルブの制御等を行うサブ制御部82とを備える。また、メイン制御部81及びサブ制御部82には、センサ50Sの検出信号が取り込まれるようになっている。
【0050】
また、メイン制御部81のメモリ83には、孔開け加工システム10に以下の動作を繰り返して行わせる基本動作プログラムが記憶されている。その基本動作プログラムは、一般的なティーチングによって作成される。即ち、ロボット60をマニュアル操作で動かし、次述する第1位置~第13位置を含む複数の位置(ティーチングポイント)で各サーボモータの位置データを記憶させながら、ロボット60に実行させるコマンドを書き込むというティーチング作業によって基本動作プログラムが作成される。そして、基本動作プログラムをプレイバック(ティーチングプレイバック)することで、孔開け加工システム10が以下のように動作する。
【0051】
基本動作プログラムが実行されると、ロボット60は、チャック71を開いた状態にしてワークストッパー50の上方に配置し、移動基準軸J3と原点軸J1とが一致した第1位置に位置決めする。そして、ワーク位置決凹部51にワーク90があることがセンサ50Sによって検出されると、ロボット60は、直線駆動軸のみを動作させて第1位置から第2位置へとチャック71を降下させて、ワーク位置決凹部51のワーク90をチャック71の中央部に受け入れる。そして、チャック71を閉じてワーク90を把持してから前述の第1位置に戻す。なお、第1位置及び第2位置が、特許請求の範囲の「第1芯出し位置」に相当する。
【0052】
そこから、ロボット60は、第1回転駆動軸及び第2回転駆動軸を動作させて、移動基準軸J3とダイ基準軸J2とが一致した第3位置にワーク90を移動する。このとき、孔開け加工機20では、パンチ31が、ダイ23の打抜孔22Hから抜け出た退避位置に配置されている。そして、ロボット60が、直線駆動軸のみを動作させてチャック71を第3位置から第4位置まで降下して、ワーク90をダイ23の外側に嵌合させる。
【0053】
すると、パンチ31がダイ23の打抜孔22Hに突入した突入位置まで移動してから退避位置に戻る。これにより、把持ツール70に把持された状態のワーク90に貫通孔92が打ち抜き加工される。そして、ロボット60が、第3回転駆動軸のみが動作してワーク90をチャック71と共に第4位置から360/n[DEG](nは、ワーク90に形成される貫通孔92の数)だけ離れた第5位置まで回転させる。すると、パンチ31が再度突入位置と退避位置との間を往復移動してワーク90に貫通孔92が打ち抜き加工される。
【0054】
このような打ち抜き加工動作をn回(例えば、9回)繰り返したら、ロボット60は、直線駆動軸を動作させてチャック71を前述の第3位置に戻し、第1回転駆動軸及び第2回転駆動軸を動作させて、チャック71がシュート12の上端部の上方の第13位置まで移動されたらチャック71が開かれワーク90がシュート12へと排出される。そして、チャック71が第1位置に戻る。以上の動作が基本動作プログラムをプレイバックによって繰り返して行われる。なお、第3位置~第12位置が、特許請求の範囲の「第2芯出し位置」に相当する。
【0055】
本実施形態の孔開け加工システム10の構成に関する説明は以上である。本実施形態の孔開け加工システム10及びそれを用いた孔開け加工方法によれば、ロボット60がワーク90を把持したままの状態で、そのワーク90にパンチ31にて貫通孔92を打ち抜き、ロボット60でワーク90を回転させて再度パンチ31にてワーク90に貫通孔92を打ち抜いて、ワーク90の周方向の複数位置に貫通孔92を加工するので、ワーク90における貫通孔92同士の間隔のばらつきが従来より抑えられる。また、同じダイ23及びパンチ31を使用してワーク90の周方向の複数位置に貫通孔92を打ち抜き加工するので、周方向の位置が異なる貫通孔92毎にダイ23及びパンチ31を設けていた従来のものに比べてダイ23及びパンチ31の有効利用が図られる。
【0056】
また、本実施形態では、ダイ23が円筒形をなしているので、孔開け加工時にワーク90が把持ツール70とダイ23とにより内外の両方から支持されて安定し、加工精度が向上する。また、ワークストッパー50は、ダイ基準軸J2と平行な原点軸J1にワーク90を芯出しして支持し、ロボット60は、把持ツール70を、移動基準軸J3が原点軸J1と一致する位置と、移動基準軸J3がダイ基準軸J2と一致する位置とに位置決め制御可能であると共に、それらの位置で移動基準軸J3の軸方向に移動可能に構成されているので、ワーク90とダイ23との相対的な嵌合位置が安定し、ワーク90をスムーズにダイ23の外側に嵌合させることができると共に、ワーク90に打ち抜き加工される貫通孔92の位置が安定する。
【0057】
本実施形態では、パーツフィーダー40に1対のガイドレール42を備え、複数のワーク90を一列に並べてスムーズにワークストッパー50に供給することでき、生産効率を上げることが可能になる。また、第1堰止部材52によって、一列に並んで搬送される複数のワーク90のうち先頭のワーク90が2番目以降のワーク90から離されてワークストッパー50に支持されるので、ワークストッパー50のワーク90を把持ツール70で把持する際に、把持ツール70と2番目以降のワーク90との非干渉の範囲が広くなり、把持ツール70の形状や移動経路の自由度や高くなる。さらに、第1堰止部材52の一方の外側斜面54Aをワークストッパー50のワーク90の側面に押し付けるので、ワークストッパー50によるワーク90の芯出し精度を高くすることができる。
【0058】
[第2実施形態]
図11には、前記第1実施形態とは別の加工対象であるワーク90Vが示されている。このワーク90Vは、周方向を複数等分(例えば、9等分)する貫通孔92が円筒壁91の複数位置に設けられており、第1実施形態と孔開け加工方法のみが異なる。本実施形態では、ロボット60が、第1実施形態と同様に、チャック71を第3位置から第4位置まで降下してワーク90をダイ23の外側に嵌合させ、パンチ31にてワーク90Vに貫通孔92が打ち抜き加工された後、ロボット60が、直線駆動軸のみを動作させて把持ツール70を直動させ、ダイ23に対するワーク90Vの嵌合深さを変更し、再度パンチ31にてワーク90Vにて貫通孔92を打ち抜く。そして、この動作を繰り返して同じ縦列の貫通孔92を打ち抜くと、ロボット60が、第3回転駆動軸を動作させてワーク90Vをチャック71と共に回転させ、その後、直動駆動軸を動作させてワーク90Vを降下させる。そして、このような打ち抜き加工動作を繰り返し行った後、第1実施形態と同様にワーク90をシュート12へと排出する。この孔開け加工方法によっても、前記第1実施形態と同様の効果を奏する。
【0059】
なお、ワーク90Vの孔開け加工方法は、上述した方法に限らず、例えば、ワーク90Vの最上段の貫通孔92を全て打ち抜き加工した後、中段の貫通孔92を打ち抜き加工する孔開け加工方法であってもよい。この場合においても、同様の効果を奏する。
【0060】
[他の実施形態]
(1)上記実施形態では、特許請求の範囲の「ツール移動機構」としてスカラー型のロボット60を用いたが、例えば、レール上を移動可能な把持ツール70を昇降可能且つ移動基準軸J3を中心に回転可能に備えた装置を使用してもよい。なお、汎用的なスカラー型のロボット60を使用すれば、コストを抑えることができる。
【0061】
(2)上記実施形態では、ワークストッパー50のワーク位置決凹部51にワーク90を供給し、ロボット60がワーク位置決凹部51内のワーク90を把持する構成であったが、例えば、コンテナに複数の未加工のワーク90を隙間を空けた状態に収容し、ロボット60側のワーク90を把持する位置を順次変更して、予め決められた順番でコンテナ内のワーク90を把持させる構成であってもよい。
【0062】
(3)上記実施形態では、ダイ23は円筒形をなしていたが、例えば、断面半月状又は扇状をなしていてもよい。
【0063】
(4)上記実施形態では、ワーク90をダイ23に嵌合した状態で回転させていたが、ワーク90を一旦、ダイ23から外して空中で回転させた後、再びダイ23に嵌合して打ち抜き加工する構成であってもよい。
【0064】
(5)上記実施形態では、第1堰止部材52及び第2堰止部材55を備えていたが、備えない構成であってよい。
【0065】
(6)上記実施形態では、第1堰止部材52が帯板状をなし、第1堰止部材52が先頭から2番目のワーク90とワークストッパー50に支持されたワーク90の両方に当接する構成となっていたが、例えば、図12(A)に示すように、第1堰止部材52が棒状をなし、ワークストッパー50に支持されたワーク90と隙間を空けて配置された状態で配置され、先頭から2番目のワーク90のみに当接する構成であってもよい。
【0066】
また、上記実施形態の第1堰止部材52は、幅方向の中央にV字状の溝部53を備え、その両角部に傾斜当接面54A、54Bを備えていたが、例えば、図12(B)に示すように、溝部53を備えず、傾斜当接面54A、54Bが交差するように延びた先細り形状であってもよい。
【0067】
(7)上記実施形態では、ワークストッパー50のワーク位置決凹部51がU字状をなしていたが、ダイ基準軸J2と平行な原点軸J1に芯出し可能であれば、例えば、V字状をなしていてもよい。
【符号の説明】
【0068】
10 孔開け加工システム
20 孔開け加工機
23 ダイ
31 パンチ
40 パーツフィーダー
50 ワークストッパー
51 ワーク位置決凹部
51A 芯出し当接面
52 第1堰止部材
55 第2堰止部材
60 ロボット
70 把持ツール
90,90V ワーク
J1 原点軸
J2 ダイ基準軸
J3 移動基準軸
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12