(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022050787
(43)【公開日】2022-03-31
(54)【発明の名称】耐熱性架橋ポリオレフィン発泡体及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
C08J 9/04 20060101AFI20220324BHJP
【FI】
C08J9/04 101
C08J9/04 CES
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020156901
(22)【出願日】2020-09-18
(71)【出願人】
【識別番号】000177380
【氏名又は名称】三和化工株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】514168843
【氏名又は名称】地方独立行政法人京都市産業技術研究所
(74)【代理人】
【識別番号】100085338
【弁理士】
【氏名又は名称】赤澤 一博
(74)【代理人】
【識別番号】100148910
【弁理士】
【氏名又は名称】宮澤 岳志
(72)【発明者】
【氏名】吉村 浩司
(72)【発明者】
【氏名】倉田 誠一
(72)【発明者】
【氏名】仙波 健
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 彰浩
【テーマコード(参考)】
4F074
【Fターム(参考)】
4F074AA18
4F074AA22
4F074AA24
4F074AA98
4F074AB03
4F074AC21
4F074AD10
4F074BA13
4F074BB02
4F074CA24
4F074CC06X
4F074CC06Y
4F074DA02
(57)【要約】 (修正有)
【課題】耐熱性の高くない樹脂を主原料とする製品の製造ラインをそのまま利用できるようにすべく、発泡に先立つ混練工程を比較的低温で行うことができる耐熱性架橋ポリオレフィン発泡体の製造方法を提供する。
【解決手段】主原料である融点が120℃未満のポリオレフィン樹脂中に融点が120℃以上の樹脂により形成された添加物の粉末を添加して発泡前混合物を生成する工程、発泡前混合物に発泡剤及び架橋剤を添加する工程、120℃以上かつ前記添加物の融点よりも低い温度で混練して前記粉末を発泡前混合物内で分散させる工程、及び発泡前混合物を前記添加物が溶融可能な温度に加熱して発泡させる工程を含む。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
主原料である融点が120℃未満のポリオレフィン樹脂中に融点が120℃以上の樹脂により形成された添加物の粉末を添加して発泡前混合物を生成する工程、
発泡前混合物に発泡剤及び架橋剤を添加する工程、
120℃以上かつ前記添加物の融点よりも低い温度で混練して前記添加物の粉末を発泡前混合物内で分散させる工程、
及び発泡前混合物を前記添加物が溶融可能な温度に加熱して発泡させる工程
を含む耐熱性架橋ポリオレフィン発泡体の製造方法。
【請求項2】
前記ポリオレフィン樹脂が低密度ポリエチレン又はエチレン-酢酸ビニル共重合体である請求項1記載の耐熱性架橋ポリオレフィン発泡体の製造方法。
【請求項3】
前記添加物が高密度ポリエチレン又はポリプロピレンである請求項1又は2記載の耐熱性架橋ポリオレフィン発泡体の製造方法。
【請求項4】
主原料である融点が120℃未満のポリオレフィン樹脂と、融点が120℃以上の樹脂により形成された添加物が融解しフィブリル化したものとが含まれている耐熱性架橋ポリオレフィン発泡体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、耐熱性を有する架橋ポリオレフィン系発泡体及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ポリオレフィン系樹脂に発泡剤及び架橋剤を添加して混練することにより架橋性発泡性組成物を得、その組成物を加熱し発泡させて発泡体を作製することは広く行われている。
【0003】
低密度ポリエチレン(LDPE)のような融点が低く耐熱性の高くない樹脂を主原料とする発泡体は、熱が加わることで大きく収縮する。
【0004】
高温下における発泡体の収縮を抑制するためには、より耐熱性の高い樹脂、例えば高密度ポリエチレン(HDPE)等を原料に用いることが考えられる。しかしながら、発泡体の風合いが変化し、また製造工程も変更する必要が生じる。
【0005】
そこで、耐熱性の高くない樹脂を主原料としつつ高温下における収縮が少ない架橋ポリオレフィン発泡体の製造方法が求められている。その一つとして、ポリエチレン樹脂中にポリブチレンテレフタラートをフィブリル化させたペレットを得、このペレットに発泡剤及び架橋剤を添加・混練し、発泡させるものが知られている(例えば、特許文献1を参照)。
【0006】
しかしながら、前記特許文献1記載の方法では、ポリエチレン樹脂中にポリブチレンテレフタラートをフィブリル化させたペレットを得る際に200℃という高い温度で混練する必要があり、融点が低く耐熱性の高くない樹脂を主原料とする製品の製造ラインをそのまま利用しにくいという問題がある。
【0007】
その他、耐熱性を付与すべく融点が低く耐熱性の高くない樹脂により融点が高く耐熱性の高い樹脂を混練させる方法も考えられるが、融点が高い樹脂を溶融させて混練すると、混練工程中に発泡反応や架橋反応が進み、良好な形状を有する発泡体を形成するのが困難であるという問題が存在する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、耐熱性架橋ポリオレフィン発泡体を製造するにあたって、融点が低く耐熱性の高くない樹脂を主原料とする製品の製造ラインをそのまま利用できるようにすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
請求項1の発明に係る耐熱性架橋ポリオレフィン発泡体の製造方法は、主原料である融点が120℃未満のポリオレフィン樹脂中に融点が120℃以上の樹脂により形成された添加物の粉末を添加して発泡前混合物を生成する工程、発泡前混合物に発泡剤及び架橋剤を添加する工程、120℃以上かつ前記添加物の融点よりも低い温度で混練して前記添加物の粉末を発泡前混合物内で分散させる工程、及び発泡前混合物を前記添加物が溶融可能な温度に加熱して発泡させる工程を含む。
【0011】
このような製造方法によれば、主原料であるポリオレフィン樹脂の融点よりも高く添加物の融点よりも低い温度で混練することにより添加物の粉末を分散させた後、添加物が溶融可能な温度に加熱して発泡させることにより、発泡工程中に添加物の粉末が融解した上でフィブリル化し、架橋ポリオレフィン発泡体に耐熱性を付与させることができる。従って、主原料であるポリオレフィン樹脂の融点に対応させた比較的低温で混練工程を行うことができるので、主原料であるポリオレフィン樹脂に対応する設備をそのまま利用して耐熱性架橋ポリオレフィン発泡体を製造できる。
【0012】
なお、本発明において、「添加物が溶融可能な温度」とは、添加物の融点以上の温度または融点を下回る場合であっても融点との差が10℃以下である温度を示す概念である。発泡工程中では発泡剤と主原料とが反応する際に発熱するので、発泡工程中の原料の温度は加熱温度より5~10℃程度高く、従って加熱する温度が融点を下回る場合であっても、融点との差が10℃以下であれば添加物の粉末を発泡工程中に溶融させることが可能である。
【0013】
このような製造方法に用いられる融点が低いポリオレフィン樹脂の例として、低密度ポリエチレン又はエチレン-酢酸ビニル共重合体が挙げられる。
【0014】
このような製造方法に用いられる添加物の粉末の成分の例として、高密度ポリエチレン又はポリプロピレンが挙げられる。
【0015】
請求項4の発明に係る耐熱性架橋ポリオレフィン発泡体は、主原料である融点が120℃未満のポリオレフィン樹脂と、融点が120℃以上の樹脂により形成された添加物が融解しフィブリル化したものとが含まれている。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、発泡に先立つ混練工程を比較的低温で行うことができるので、融点が低く耐熱性の高くない樹脂を主原料とする製品の製造ラインをそのまま利用して耐熱性を有する架橋ポリオレフィン発泡体を製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】本発明の一実施形態に係る耐熱性架橋ポリオレフィン発泡体の発泡工程前のFT-IRスペクトル強度を示す図。
【
図2】同実施形態に係る耐熱性架橋ポリオレフィン発泡体の発泡工程後のFT-IRスペクトル強度を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の実施の形態を説明する。本実施形態では、主原料である融点が120℃未満のポリオレフィン樹脂に融点が120℃以上の樹脂により形成された添加物、具体的にはポリプロピレン又は高密度ポリエチレンの粉末を添加することで高い耐熱性を有するポリオレフィン系発泡体を製造する。この発泡体は、ポリオレフィン樹脂に発泡剤、架橋剤及びポリプロピレン又は高密度ポリエチレンの粉末を添加して混練することにより架橋性発泡性組成物を得、その組成物を加熱して発泡させたものである。
【0019】
発泡体の主原料となるポリオレフィン系樹脂の具体例としては、低密度ポリエチレン(LDPE)、エチレン-酢酸ビニル共重合体(EVA)等、融点が120℃未満のものを挙げることができる。
【0020】
発泡材の具体例としては、アゾ系化合物であるアゾジカルボンアミドやバリウムアゾジカルボキシレート等、ニトロソ系化合物であるジニトロソペンタメチレンテトラミンやトリニトロトリメチルトリアミン等、ヒドラジッド系化合物であるp,p’-オキシビスベンゼンスルホニルヒドラジッド等、スルホニルセミカルバジッド系化合物であるp,p’-オキシビスベンゼンスルホニルセミカルバジッドやトルエンスルホニルセミカルバジッド等の有機化学発泡体を挙げできる。尤も、重曹のような無機発泡剤を用いることもできる。
【0021】
架橋剤は、ポリオレフィン系樹脂中において少なくともポリオレフィン樹脂の流動開始温度以上の分解温度を有するものであって、加熱により分解され、遊離ラジカルを発生してその分子間もしくは分子内に架橋結合を生じせしめるラジカル発生剤であるところの有機過酸化物である。その具体例としては、ジクミルパーオキサイド、n-ブチル4,4-ビス(t-ブチルパーオキシ)バレレート、1,1-ジターシャリーブチルパーオキサイ
ド、1,1-ジターシャリーブチルパーオキシー3,3,5-トリメチルシクロヘキサン、2,5-ジメチルー2,5-ジターシャリーブチルパーオキシヘキサン、2,5-ジメチルー2,5-ジターシャリーブチルパーオキシヘキシン、α,α―ジターシャリーブチルパーオキシイソプロピルベンゼン、ターシャリーブチルパーオキシケトン、ターシャリーブチルパーオキシベンゾエート等を挙げることができる。但し、原料の樹脂に応じて、最適な有機過酸化物を選択する必要がある。
【0022】
添加物であるポリプロピレン又は高密度ポリエチレンの粉末は、本実施形態では平均粒径が10μm~100μmのものである。。
【0023】
なお、架橋性発泡性組成物の物性の改良または価格の低下を目的として、架橋結合に著しい悪影響を与えない配合剤(充填剤)、例えば酸化亜鉛、酸化チタン、酸化カルシウム、酸化マグネシウム、酸化ケイ素等の金属酸化物や、炭酸マグネシウム、炭酸カルシウム等の炭酸塩、各種染料、顔料並びに蛍光物質、その他常用のゴム及びプラスチック配合剤等を必要に応じて添加することができる。
【0024】
加えて、発泡剤の種類に応じた発泡助剤を添加しても構わない。発泡助剤の具体例としては、尿素を主成分とした化合物、酸化亜鉛、酸化鉛等の金属酸化物の他、サリチル酸、ステアリン酸等を主成分とする化合物、換言すれば高級脂肪酸あるいは高級脂肪酸の金属化合物等を挙げることができる。
【0025】
本実施形態における発泡体の製造の手順は、主原料となるポリオレフィン系樹脂にポリプロピレン又は高密度ポリエチレンの粉末を添加する点を除き、基本的に既存の発泡体の製造におけるそれと同様である。即ち、ポリオレフィン系樹脂に発泡剤、架橋剤及びポリプロピレン又は高密度ポリエチレンの粉末を添加して混練した後、これを加熱し発泡させて発泡体を得るのである。
【0026】
なお、混練工程は主原料となる第1のポリオレフィン系樹脂の融点以上で添加物であるポリプロピレン又は高密度ポリエチレンの融点を下回る温度、望ましくは90~120℃で行うようにしている。混練工程の温度が120℃を上回る場合、混練工程中に発泡剤や架橋剤が主原料と反応してしまう不具合が生じうる。
【0027】
一方、発泡工程はポリプロピレン又は高密度ポリエチレン粉末が発泡工程中に融解可能な温度、例えば160℃で行うようにしている。なお、発泡工程の際の加熱温度は添加物の融点を上回っていることが望ましいが、添加物の融点を下回っている場合であっても添加物の融点との差が10℃以内であれば発泡剤と主原料とが反応する際の発熱により実際の温度が添加物の融点以上に上昇するので添加物を融解させることが可能である。
【0028】
表1に、本実施形態の具体的な実施例を示す。なお、本発明は下記実施例に限定されるものではないことは言うまでもない。また、表2に、本実施形態の比較例を示す。
【0029】
【0030】
【0031】
<実施例1>エチレン-酢酸ビニル共重合体(EVA、商品名:ノバテックEVA L
V-440、融点89℃、密度0.938g/cm3、日本ポリエチレン株式会社製)1
00重量部、高密度ポリエチレン(添加物)(商品名:フロービーズ HE-3040、融点130℃、粒径11μm、粘度303.6Pa・s、住友精化株式会社製)30重量部、アゾジカルボンアミド(ADCA、発泡剤)4重量部、酸化亜鉛(ZnO、発泡助剤)2重量部、「ステアリン酸亜鉛(Zn-St、発泡助剤)0.5重量部、及びジクミルパーオキサイド(DCP、架橋剤)0.6重量部からなる組成物を100℃に加熱して混練し、その練和物を160℃に加熱したプレス内の金型に充填して50分間加圧下で加熱することで、発泡剤及び架橋剤を分解して発泡させた。出来上がった発泡体の見かけ上の密度は、89kg/m3となった。
【0032】
<実施例2>エチレン-酢酸ビニル共重合体(EVA、商品名:ノバテックEVA L
V-440、融点89℃、密度0.938g/cm3、日本ポリエチレン株式会社製)1
00重量部、ポリプロピレン(添加物)(商品名:PPW-5J、融点143℃、粒径10μm未満、粘度0.456Pa・s、株式会社セイシン企業製)30重量部、アゾジカルボンアミド(ADCA、発泡剤)4重量部、酸化亜鉛(ZnO、発泡助剤)2重量部、「ステアリン酸亜鉛(Zn-St、発泡助剤)0.5重量部、及びジクミルパーオキサイド(DCP、架橋剤)0.6重量部からなる組成物を100℃に加熱して混練し、その練和物を160℃に加熱したプレス内の金型に充填して50分間加圧下で加熱することで、発泡剤及び架橋剤を分解して発泡させた。出来上がった発泡体の見かけ上の密度は、79kg/m3となった。
【0033】
<実施例3>エチレン-酢酸ビニル共重合体(EVA、商品名:ノバテックEVA L
V-440、融点89℃、密度0.938g/cm3、日本ポリエチレン株式会社製)1
00重量部、ポリプロピレン(添加物)(商品名:フロービーズ RP-2050、融点146℃、粒径10μm、粘度629.4Pa・s、住友精化株式会社製)30重量部、アゾジカルボンアミド(ADCA、発泡剤)4重量部、酸化亜鉛(ZnO、発泡助剤)2重量部、「ステアリン酸亜鉛(Zn-St、発泡助剤)0.5重量部、及びジクミルパーオキサイド(DCP、架橋剤)0.6重量部からなる組成物を100℃に加熱して混練し、その練和物を160℃に加熱したプレス内の金型に充填して50分間加圧下で加熱することで、発泡剤及び架橋剤を分解して発泡させた。出来上がった発泡体の見かけ上の密度は、88kg/m3となった。
【0034】
<実施例4>エチレン-酢酸ビニル共重合体(EVA、商品名:ノバテックEVA L
V-440、融点89℃、密度0.938g/cm3、日本ポリエチレン株式会社製)1
00重量部、ポリプロピレン(添加物)(商品名:トーヨタック H-1000P、融点150℃、粒径100μm以上、粘度140.3Pa・s、東洋紡株式会社製)30重量部、アゾジカルボンアミド(ADCA、発泡剤)4重量部、酸化亜鉛(ZnO、発泡助剤)2重量部、「ステアリン酸亜鉛(Zn-St、発泡助剤)0.5重量部、及びジクミルパーオキサイド(DCP、架橋剤)0.6重量部からなる組成物を100℃に加熱して混練し、その練和物を160℃に加熱したプレス内の金型に充填して50分間加圧下で加熱することで、発泡剤及び架橋剤を分解して発泡させた。出来上がった発泡体の見かけ上の密度は、82kg/m3となった。
【0035】
<実施例5>エチレン-酢酸ビニル共重合体(EVA、商品名:ノバテックEVA L
V-440、融点89℃、密度0.938g/cm3、日本ポリエチレン株式会社製)1
00重量部、ポリプロピレン(添加物)(商品名:MA04A、融点165℃、粒径20μm、粘度813.3Pa・s、日本ポリプロ株式会社製)30重量部、アゾジカルボンアミド(ADCA、発泡剤)4重量部、酸化亜鉛(ZnO、発泡助剤)2重量部、「ステアリン酸亜鉛(Zn-St、発泡助剤)0.5重量部、及びジクミルパーオキサイド(DCP、架橋剤)0.6重量部からなる組成物を100℃に加熱して混練し、その練和物を160℃に加熱したプレス内の金型に充填して50分間加圧下で加熱することで、発泡剤及び架橋剤を分解して発泡させた。出来上がった発泡体の見かけ上の密度は、73kg/m3となった。
【0036】
<実施例6>エチレン-酢酸ビニル共重合体(EVA、商品名:ノバテックEVA L
V-440、融点89℃、密度0.938g/cm3、日本ポリエチレン株式会社製)1
00重量部、ポリプロピレン(添加物)(商品名:MA4AHB、融点165℃、粒径20μm、粘度2686Pa・s、日本ポリプロ株式会社製)30重量部、アゾジカルボンアミド(ADCA、発泡剤)4重量部、酸化亜鉛(ZnO、発泡助剤)2重量部、「ステアリン酸亜鉛(Zn-St、発泡助剤)0.5重量部、及びジクミルパーオキサイド(DCP、架橋剤)0.6重量部からなる組成物を100℃に加熱して混練し、その練和物を160℃に加熱したプレス内の金型に充填して50分間加圧下で加熱することで、発泡剤及び架橋剤を分解して発泡させた。出来上がった発泡体の見かけ上の密度は、81kg/m3となった。
【0037】
<比較例1>エチレン-酢酸ビニル共重合体(EVA、商品名:ノバテックEVA L
V-440、融点89℃、密度0.938g/cm3、日本ポリエチレン株式会社製)1
00重量部、アゾジカルボンアミド(ADCA、発泡剤)4重量部、酸化亜鉛(ZnO、発泡助剤)2重量部、「ステアリン酸亜鉛(Zn-St、発泡助剤)0.5重量部、及びジクミルパーオキサイド(DCP、架橋剤)0.6重量部からなる組成物を100℃に加熱して混練し、その練和物を160℃に加熱したプレス内の金型に充填して50分間加圧下で加熱することで、発泡剤及び架橋剤を分解して発泡させた。出来上がった発泡体の見かけ上の密度は、86kg/m3となった。
【0038】
<比較例2>エチレン-酢酸ビニル共重合体(EVA、商品名:ノバテックEVA L
V-440、融点89℃、密度0.938g/cm3、日本ポリエチレン株式会社製)1
00重量部、PA6(添加物)(商品名:A1020LP、融点225℃、粒径100μm、粘度75.20Pa・s、ユニチカ株式会社製)30重量部、アゾジカルボンアミド(ADCA、発泡剤)4重量部、酸化亜鉛(ZnO、発泡助剤)2重量部、「ステアリン酸亜鉛(Zn-St、発泡助剤)0.5重量部、及びジクミルパーオキサイド(DCP、架橋剤)0.6重量部からなる組成物を100℃に加熱して混練し、その練和物を160℃に加熱したプレス内の金型に充填して50分間加圧下で加熱することで、発泡剤及び架橋剤を分解して発泡させた。出来上がった発泡体の見かけ上の密度は、97kg/m3と
なった。
【0039】
<比較例3>エチレン-酢酸ビニル共重合体(EVA、商品名:ノバテックEVA L
V-440、融点89℃、密度0.938g/cm3、日本ポリエチレン株式会社製)1
00重量部、PA11(添加物)(商品名:Rilsan D30、融点186℃、粒径24μm、粘度316.0Pa・s、アルケマ株式会社製)30重量部、アゾジカルボンアミド(ADCA、発泡剤)4重量部、酸化亜鉛(ZnO、発泡助剤)2重量部、「ステアリン酸亜鉛(Zn-St、発泡助剤)0.5重量部、及びジクミルパーオキサイド(DCP、架橋剤)0.6重量部からなる組成物を100℃に加熱して混練し、その練和物を160℃に加熱したプレス内の金型に充填して50分間加圧下で加熱することで、発泡剤及び架橋剤を分解して発泡させた。出来上がった発泡体の見かけ上の密度は、108kg/m3となった。
【0040】
<比較例4>エチレン-酢酸ビニル共重合体(EVA、商品名:ノバテックEVA L
V-440、融点89℃、密度0.938g/cm3、日本ポリエチレン株式会社製)1
00重量部、PA12(添加物)(商品名:VESTOSINT 2159、融点184℃、粒径10μm、粘度126.0Pa・s、ダイセル・エボニック株式会社製)30重量部、アゾジカルボンアミド(ADCA、発泡剤)4重量部、酸化亜鉛(ZnO、発泡助剤)2重量部、「ステアリン酸亜鉛(Zn-St、発泡助剤)0.5重量部、及びジクミルパーオキサイド(DCP、架橋剤)0.6重量部からなる組成物を100℃に加熱して混練し、その練和物を160℃に加熱したプレス内の金型に充填して50分間加圧下で加熱することで、発泡剤及び架橋剤を分解して発泡させた。出来上がった発泡体の見かけ上の密度は、101kg/m3となった。
【0041】
なお、添加物に用いられる樹脂の上述した粘度は、高密度ポリエチレン及びポリプロピレンについては170℃、1Hzの条件下で、PA6については240℃、1Hzの条件下で、PA11及びPA12については200℃、1Hzの条件下でそれぞれ測定したものである。
【0042】
添加物を添加していない比較例1の発泡体は、これを100℃の室内に22時間置いておくとその体積が48.2%収縮する。このように、低密度ポリエチレンを主原料とする従来の発泡体は耐熱性が低く、低密度ポリエチレンの融点に近い温度環境下で大きく収縮してしまう。
【0043】
これに対し、融点130℃、粒径11μm、粘度303.6Pa・sの高密度ポリエチレンパウダーを添加した実施例1の発泡体は、100℃の室内に22時間置いておくとその体積が7.0%収縮する。融点143℃、粒径10μm未満、粘度0.456Pa・sのポリプロピレンパウダーを添加した実施例2の発泡体は、100℃の室内に22時間置いておくとその体積が2.5%収縮する。融点146℃、粒径10μm、粘度629.400Pa・sのポリプロピレンパウダーを添加した実施例3の発泡体は、100℃の室内に22時間置いておくとその体積が20.0%収縮する。並びに、融点150℃、粒径100μm以上、粘度140.300Pa・sのポリプロピレンパウダーを添加した実施例4の発泡体は、100℃の室内に22時間置いておくとその体積が8.5%収縮する。融点165℃、粒径20μm、粘度813.300Pa・sのポリプロピレンパウダーを添加した比較例5の発泡体は、100℃の室内に22時間置いておくとその体積が17.5%収縮する。融点165℃、粒径20μm、粘度2686.000Pa・sのポリプロピレンパウダーを添加した比較例6の発泡体は、100℃の室内に22時間置いておくとその体積が32.8%収縮する。
【0044】
図1及び
図2に、添加物としてポリプロピレンを付加した混合物におけるFT-IRスペクトルのポリプロピレンのピーク(2947cm
-1)強度を示している。
図1は発泡工程前のものであり、
図2は発泡工程後のものである。また、ポリプロピレンの存在箇所は、各図の矢印の先にある一点鎖線で囲われた領域内の色が濃い箇所として示している。発泡工程前においては、
図1に示すように、ポリプロピレンのピークの縦横比は1:1に近く、ポリプロピレンは粉末状態で存在している。これに対し、発泡工程後においては、
図2に示すように、ポリプロピレンのピークの縦横比は1:1と大きく異なっている。このことから、添加物としてポリプロピレンを付加した発泡体では、添加物が融解しフィブリル化した状態となっている。
【0045】
ここで、樹脂の粒径が小さいものほど、また、樹脂の粘度が小さいものほど体積の収縮が少ない、すなわち耐熱性に優れているという傾向がある。但し、例えば上述した実施例3と実施例5のように粒径及び粘度の差が大きくない場合は、より融点が高い添加物が発泡工程中で融解してフィブリル化するため、粒径及び粘度が大きい添加物を用いたものの方が発泡体の耐熱性がより高くなる(熱収縮率が低くなる)ことがある。
【0046】
一方、融点225℃、粒径100μmのPA6樹脂パウダーを添加した比較例2の発泡体は、100℃の室内に22時間置いておくとその体積が49.7%収縮する。融点186℃、粒径24μmのPA11樹脂パウダーを添加した比較例3の発泡体は、100℃の室内に22時間置いておくとその体積が42.4%収縮する。並びに、融点184℃、粒径10μmのPA12樹脂パウダーを添加した比較例4の発泡体は、100℃の室内に22時間置いておくとその体積が41.4%収縮する。
【0047】
上述した比較例2~4では、実施例と異なり、添加物の融点が混練温度(160℃)より10℃以上高いので、発泡体中では粉末のままである。
【0048】
このように、融点がエチレン-酢酸ビニル共重合体より高く発泡工程中に溶融可能な添加物であるポリオレフィン粉末を添加し、ポリオレフィン粉末の融点より低い温度で混練した後発泡させることで、ポリオレフィン粉末が分散して発泡工程中にフィブリル化することによって発泡体の樹脂骨格の収縮を抑制し、高温環境下での収縮率を小さくすることができる。つまり、発泡体の耐熱性を大きく改善することができる。さらに、本実施形態では、100℃で混練し、160℃で発泡工程を行うようにしているので、従来の融点が低いポリオレフィン系樹脂を成分とする発泡体を製造するための設備をそのまま利用して耐熱性を有する発泡体を得ることができる。
【0049】
なお、本発明は以上に詳述した実施形態に限られるものではない。
【0050】
例えば、上述した実施例1~4に係るエチレン-酢酸ビニル共重合体に限らず、低密度ポリエチレン等、融点が120℃未満である樹脂であれば本発明に係る発泡体の主原料として用いることができる。
【0051】
また、上述した実施例1~4で利用したものに限らず、融点が120℃以上で発泡工程中に融解可能であり粉末状に加工された樹脂であれば、本発明に係る発泡体の添加物として用いることができる。その場合、粒径が小さく、また粘度が低いものであればより望ましい。
【0052】
さらに、160℃を上回る温度で発泡工程を行ってもかまわない。その際、生成した発泡体の耐熱性そのものは160℃で発泡工程を行った場合と大きく変わらないが、発泡工程を例えば200℃で行った場合、融点が205~210℃程度までの樹脂を添加物として用いることができる。
【0053】
その他、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々変形が可能である。