(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022050793
(43)【公開日】2022-03-31
(54)【発明の名称】電磁駆動ポンプ
(51)【国際特許分類】
F04B 53/16 20060101AFI20220324BHJP
F04B 17/04 20060101ALI20220324BHJP
【FI】
F04B53/16 C
F04B17/04
【審査請求】未請求
【請求項の数】2
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020156913
(22)【出願日】2020-09-18
(71)【出願人】
【識別番号】000005197
【氏名又は名称】株式会社不二越
(74)【代理人】
【識別番号】100120400
【弁理士】
【氏名又は名称】飛田 高介
(74)【代理人】
【識別番号】100124110
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 大介
(72)【発明者】
【氏名】吉田 雅雄
(72)【発明者】
【氏名】荒井 一剛
【テーマコード(参考)】
3H069
3H071
【Fターム(参考)】
3H069AA02
3H069BB02
3H069CC04
3H069DD21
3H069DD42
3H069EE47
3H071AA01
3H071BB01
3H071CC02
3H071CC34
3H071CC44
3H071DD08
3H071DD82
3H071EE09
(57)【要約】
【課題】装置を複雑化することなく、流体の体積膨張による構成部品の破損を好適に防ぐことが可能な電磁駆動ポンプを提供することを目的とする。
【解決手段】本発明にかかる電磁駆動ポンプ100の構成は、ハウジング110と、ハウジング110内に配置された電磁コイル120と、電磁コイル120の内側に配置された固定鉄心130と、電磁コイル120の内側に配置されハウジング110内を移動可能な可動鉄心140と、可動鉄心140内に流体を吸い込む吸込弁150と、可動鉄心内の流体を吐き出す吐出弁160と、吐出弁160と連通する吐出口172を有し、可動鉄心140を摺動させるガイド142の一端を封止する吐出口本体170と、を備え、吐出口本体170は、ポンプ室112の容積変化に応じて流体が膨張する方向に弾性変形可能な樹脂製であることを特徴とする。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ハウジングと、
前記ハウジング内に配置された電磁コイルと、
電磁コイルの内側に配置された固定鉄心と、
前記電磁コイルの内側に配置され前記ハウジング内を移動可能な可動鉄心と、
前記可動鉄心内に流体を吸い込む吸込弁と、
前記可動鉄心内の流体を吐き出す吐出弁と、
前記吐出弁と連通する吐出口を有し、前記可動鉄心を摺動させるガイドの一端を封止する吐出口本体と、
を備え、
前記吐出口本体は、ポンプ室の容積変化に応じて流体が膨張する方向に弾性変形可能な樹脂製であることを特徴とする電磁駆動ポンプ。
【請求項2】
前記吐出口本体には、膨張による変形方向の表面にバネ鋼で形成されたリングを備え、
前記リングは、前記吐出口本体の変形方向に弾性変形可能であることを特徴とする請求項1に記載の電磁駆動ポンプ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電磁コイルを動力として用いる電磁駆動ポンプに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、流体を移送するポンプとして、電磁コイルを動力に用いる電磁駆動ポンプが知られている。電磁駆動ポンプは、ハウジングの内部をプランジャーが往復することにより、流体を移送する。ここで電磁駆動ポンプは、停止時にはポンプ室内に流体が残存した状態となる。この流体が特に水であった場合、冬季には水が凍結する。すると、水の体積が膨張し、ハウジング等の構成部品が破損してしまうことがある。
【0003】
水の凍結によるハウジングの破損を防ぐ手段としては、冬季、電磁駆動ポンプを使用しない間は予め水抜きをしておく方法がある。しかしながら、この方法であると、水抜き作業を行わなくてはならないため、手間が生じ、時間も要する。そこで例えば特許文献1の定容積型電磁ポンプでは、流体の体積が膨張すると、アッパストッパが上方に移動することによりポンプ室の容積を拡大している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1の技術によれば、水抜き作業を行わなくても、流体の膨張による破損を防ぐことができると考えられる。しかしながら、それはアッパストッパが上方に移動可能である場合であり、仮にアッパストッパの上方の空間に残存している流体が先に凍結すると、アッパストッパが上方に移動できなくなる。すると、破損を防ぐ効果は得られない。また特許文献1のように別途部品を必要とする構成であると、装置構成が複雑化する上に、装置コストの増大を招いてしまう。
【0006】
本発明は、このような課題に鑑み、装置を複雑化することなく、流体の体積膨張による構成部品の破損を好適に防ぐことが可能な電磁駆動ポンプを提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために本発明にかかる電磁駆動ポンプの代表的な構成は、ハウジングと、ハウジング内に配置された電磁コイルと、電磁コイルの内側に配置された固定鉄心と、電磁コイルの内側に配置されハウジング内を移動可能な可動鉄心と、可動鉄心内に流体を吸い込む吸込弁と、可動鉄心内の流体を吐き出す吐出弁と、吐出弁と連通する吐出口を有し、可動鉄心を摺動させるガイドの一端を封止する吐出口本体と、を備え、吐出口本体は、ポンプ室の容積変化に応じて流体が膨張する方向に弾性変形可能な樹脂製であることを特徴とする。
【0008】
上記構成によれば、流体、例えば水が凍結して体積が膨張すると、可動鉄心が通常の可動範囲を超えて移動し、その可動鉄心に押されて吐出口本体が弾性変形する。このように吐出口本体が流体の膨張に追従して変形可能であることにより、電磁駆動ポンプの構成部品の損傷を好適に防止することができる。また別途追加する部品が不要であるため、装置構成を複雑化させることなく、上述した効果を得ることが可能である。
【0009】
上記吐出口本体には、膨張による変形方向の表面にバネ鋼で形成されたリングを備え、リングは、吐出口本体の変形方向に弾性変形可能であるとよい。凍結した流体は、溶解すると体積が元に戻る。これに伴い、弾性変形した吐出口本体は、変形前の形状に戻ろうとする。しかしながら、樹脂もある程度の弾性を有するものの、長時間変形した状態であると、外力が除去された後も元の形状に戻りづらくなる。そこで、吐出口本体の表面にバネ鋼で形成されたリングを配置する。これにより、リングが弾性変形することで樹脂製の吐出口本体が元の形状に戻ることを補助することが可能となる。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、装置を複雑化することなく、流体の体積膨張による構成部品の破損を好適に防ぐことが可能な電磁駆動ポンプを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】本実施形態にかかる電磁駆動ポンプを説明する図である。
【
図2】本実施形態にかかる電磁駆動ポンプを説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下に添付図面を参照しながら、本発明の好適な実施形態について詳細に説明する。かかる実施形態に示す寸法、材料、その他具体的な数値などは、発明の理解を容易とするための例示に過ぎず、特に断る場合を除き、本発明を限定するものではない。なお、本明細書及び図面において、実質的に同一の機能、構成を有する要素については、同一の符号を付することにより重複説明を省略し、また本発明に直接関係のない要素は図示または説明を省略する。
【0013】
図1および
図2は、本実施形態にかかる電磁駆動ポンプ100を説明する図である。
図1は、通常状態の電磁駆動ポンプ100を示している。
図2は、流体が膨張した状態の電磁駆動ポンプ100を示している。
【0014】
図1および
図2に示すように、本実施形態の100は、ハウジング110の内に電磁コイル120が配置されている。電磁コイル120の内側には固定鉄心130、シリンダー状のガイド142、およびガイド142に案内される可動鉄心140が配置されている。固定鉄心130はハウジング110と一体に成型されていて、電磁コイル120の内側に配置されている。可動鉄心140はガイド142に案内されてハウジング110内を移動可能である。
【0015】
図1に示すように、固定鉄心130の内部には吸込弁150が配置されていて、可動鉄心140の内部には吐出弁160が配置されている。電磁コイル120への電流のON/OFFを交互運転することにより、可動鉄心140が110内を往復駆動する。これにより、可動鉄心140が駆動したとき(図示下方向に移動したとき)にはポンプ室112内の流体(例えば水)が吐出弁160から吐き出される。
【0016】
可動鉄心140がスプリング144によって戻るとき(図示上方向に移動したとき)には吸込弁150からポンプ室112内に流体が吸い込まれる。吐出弁160は、吐出口本体170の吐出口172と連通していて、シリンダー状のガイド142の一端(吐出弁160側の一端)を封止している。これにより、吐出弁160から吐出された流体は、吐出口172を通じて電磁駆動ポンプ100の外部に移送される。
【0017】
ここで電磁駆動ポンプ100は、停止時にはハウジング110のポンプ室112内に流体が残存した状態となる。この流体が特に水であった場合、冬季には流体が凍結する。すると流体の体積が膨張し、ハウジング110等の構成部品が破損してしまうことがある。流体の凍結による構成部品の破損を防ぐ手段としては、冬季、電磁駆動ポンプを使用しない間は予め水抜きをしておく方法がある。しかしながら、この方法であると、水抜き作業や、100を再運転する際に水張り作業を行わなくてはならないため、手間が生じ、時間も要する。
【0018】
そこで本実施形態では、吐出口本体170を、ポンプ室112の容積変化に応じて流体が膨張する方向Aに弾性変形可能な樹脂製としている。上記したように吐出口本体170はガイド142の一端を封止しているから、可動鉄心140が当接してこれに押される位置関係にある。したがって、流体、例えば水が凍結して体積が膨張し、ポンプ室112の容積が拡大して可動鉄心140が通常の可動範囲を超えて移動すると、その可動鉄心140に押されて、
図2に示すように吐出口本体170が弾性変形する。このように吐出口本体170が流体に追従して弾性変形可能であることにより、電磁駆動ポンプ100の構成部品の損傷を好適に防止することができる。また別途追加する部品が不要であるため、装置構成を複雑化させることなく、上述した効果を得ることが可能である。
【0019】
また本実施形態の電磁駆動ポンプ100によれば、水抜き作業が不要であることから、再度の水張り作業も不要である。したがって、それらの作業にかかる手間や時間を軽減することができる。更に従来では、水抜きして長期間停止するとポンプ内部が乾燥する。すると、水に溶け込んでいた不純物が乾燥しポンプ部品が固着して、ポンプ機能が失われることがあった。これに対し、本実施形態の電磁駆動ポンプ100では水抜き作業が不要となったため、不純物の固着を防止することが可能となる。
【0020】
吐出口本体170を構成する樹脂としては、例えばPPS(Polyphenylenesulfide:ポリフェニレンスルファイド)を好適に用いることができる。PPSは、低溶出性(純水へ成分溶出を防ぐため)、低吸水率(高温高湿下での寸法変化を抑えるため)、高耐食性、高靭性の条件を満たすことが可能である。ただし、これに限定するものではなく、それらの条件を満たす材質であれば他の樹脂を用いてもよい。
【0021】
凍結した流体は、溶解すると体積が元に戻る。これに伴い、
図2に示すよう弾性変形した吐出口本体170は、変形前の形状に戻ろうとする。しかしながら、樹脂はある程度の弾性を有するものの、長時間(例えば数ヶ月)変形した状態であると、外力が除去された後も元の形状に戻りづらくなる(クリープ変形によってひずみが残った状態となる)。
【0022】
そこで本実施形態の電磁駆動ポンプ100では、吐出口本体170の膨張による変形方向(矢印A方向)の表面にバネ鋼で形成されたリング180を設けている。かかるリング180は、吐出口本体170が変形する方向(矢印A方向)に弾性変形可能であり、逆方向(矢印B方向)と同じ矢印C方向に復元力を生じる。これにより、樹脂製の吐出口本体170が元の形状に戻ることを補助することが可能となる。
【0023】
また吐出口本体170には、可動鉄心140と当接する位置に金属製の(例えばステンレス製の)口金190が取り付けられている。金属製の口金190を配置したことにより、可動鉄心140の繰り返し衝突によって樹脂製の吐出口本体170が損耗することを防止することができる。
【0024】
金属製の口金190は樹脂製の吐出口本体170よりも硬い材質であるため、凍結時に吐出口本体170が弾性変形しても、口金190は変形しない。したがって口金190はガイド142に対して単純に離接する方向(図の上下方向)に移動する。すると、吐出口172の部分の移動(変形)にも単純に離接する方向の指向性を持たせやすい。
【0025】
以上、添付図面を参照しながら本発明の好適な実施例について説明したが、本発明は係る例に限定されないことは言うまでもない。当業者であれば、特許請求の範囲に記載された範疇内において、各種の変更例または修正例に想到し得ることは明らかであり、それらについても当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。
【産業上の利用可能性】
【0026】
本発明は、電磁コイルを動力として用いる電磁駆動ポンプに利用することができる。
【符号の説明】
【0027】
100…電磁駆動ポンプ、110…ハウジング、112…ポンプ室、120…電磁コイル、130…固定鉄心、140…可動鉄心、142…ガイド、144…スプリング、150…吸込弁、160…吐出弁、170…吐出口本体、172…吐出口、180…リング、190…口金