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特開2022-50818蒸着マスク、蒸着マスクの製造方法、および、表示装置の製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022050818
(43)【公開日】2022-03-31
(54)【発明の名称】蒸着マスク、蒸着マスクの製造方法、および、表示装置の製造方法
(51)【国際特許分類】
   C23C 14/04 20060101AFI20220324BHJP
   H01L 51/50 20060101ALI20220324BHJP
   H05B 33/10 20060101ALI20220324BHJP
   H01L 27/32 20060101ALI20220324BHJP
   G09F 9/00 20060101ALI20220324BHJP
【FI】
C23C14/04 A
H05B33/14 A
H05B33/10
H01L27/32
G09F9/00 342
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020156956
(22)【出願日】2020-09-18
(71)【出願人】
【識別番号】000003193
【氏名又は名称】凸版印刷株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 博宣
(72)【発明者】
【氏名】橋本 有史
【テーマコード(参考)】
3K107
4K029
5G435
【Fターム(参考)】
3K107AA01
3K107BB01
3K107CC45
3K107GG04
3K107GG33
4K029HA02
4K029HA03
5G435AA01
5G435BB05
5G435KK05
(57)【要約】
【課題】フレームにおける撓みと重量の増大とを抑制可能とした蒸着マスクを提供する。
【解決手段】蒸着マスクは、複数の開口11Aを囲む格子状を有し、全ての開口11Aを含む領域を囲む外周部11B1を有したフレーム11と、1つの開口11Aを1つのマスク板によって覆うようにフレーム11に取り付けられた複数のマスク板であって、各マスク板が複数のマスク孔を備える複数のマスク板とを備える。フレーム11は、表面11S1と、フレーム11の厚さ方向において表面11S1と対向する裏面11S2と、外周部11B1が囲む領域内において表面11S1から突き出たリブ11Rを備える。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の開口を囲む格子状を有し、全ての前記開口を含む領域を囲む外周部を有したフレームと、
1つの前記開口を1つのマスク板によって覆うように前記フレームに取り付けられた複数のマスク板であって、各マスク板が複数のマスク孔を備える前記複数のマスク板と、を備える蒸着マスクであって、
前記フレームは、第1面と、前記フレームの厚さ方向において前記第1面と対向する第2面と、前記外周部が囲む領域内において前記第1面から突き出たリブを備える
蒸着マスク。
【請求項2】
前記マスク板は、前記第2面に取り付けられた表面と、前記マスク板の厚さ方向において前記表面と対向する裏面とを備え、
前記マスク孔は、前記表面に位置する表面開口と、前記裏面に位置する裏面開口とを備え、前記表面と対向する視点から見て、前記表面開口は前記裏面開口よりも大きい
請求項1に記載の蒸着マスク。
【請求項3】
前記第1面と前記第2面との間の距離が、前記フレームの厚さであり、
前記リブの高さは、前記フレームの厚さよりも大きい
請求項1または2に記載の蒸着マスク。
【請求項4】
前記第1面と対向する視点から見て、前記リブが延びる方向と直交する方向における前記リブの長さが前記リブの幅であり、
前記リブの高さは、前記リブの幅よりも大きい
請求項1から3のいずれか一項に記載の蒸着マスク。
【請求項5】
前記リブは、前記第1面と対向する視点から見て、2つの前記開口の間に位置する
請求項1から4のいずれか一項に記載の蒸着マスク。
【請求項6】
複数の前記リブを備え、
前記複数のリブは、前記第1面と対向する視点から見て、少なくとも1つの前記開口を囲む格子状を形成するように前記第1面に位置している
請求項1から4のいずれか一項に記載の蒸着マスク。
【請求項7】
複数の開口を囲む格子状を有し、全ての前記開口を含む領域を囲む外周部を有したフレームを準備すること、および、
1つの前記開口を1つのマスク板によって覆うように前記フレームに複数の前記マスク板を取り付けること、を含み、
前記フレームを準備することは、第1面と、前記フレームの厚さ方向において前記第1面と対向する第2面と、前記外周部が囲む領域内において前記第1面から突き出たリブを備えた前記フレームを準備する
蒸着マスクの製造方法。
【請求項8】
請求項7に記載の蒸着マスクの製造方法によって製造された蒸着マスクを用いて蒸着対象にパターンを形成することを含む
表示装置の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、蒸着マスク、蒸着マスクの製造方法、および、表示装置の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
有機ELデバイスが備える表示素子の形成には、真空蒸着法が用いられている。真空蒸着法によって表示素子を形成する際には、複数のマスク孔を備える蒸着マスクが用いられる。蒸着マスクの一例は、複数の開口を有したフレームと、開口と同数のマスク板とを備えている。マスク板は、複数のマスク孔を有したマスク領域と、マスク領域を取り囲む周辺領域とを備えている。マスク板は、周辺領域においてフレームに取り付けられている。蒸着マスクは、蒸着マスクを支持する支持部に取り付けられることによってマスク装置を形成する。マスク装置が蒸着装置に搭載されることによって、マスク板が有するマスク孔の形状に応じた蒸着パターンが、成膜対象に形成される(例えば、特許文献1を参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第6575730号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、蒸着マスクが備えるフレームは数十μm程度の厚さしか有しないことから、マスク装置が蒸着装置に搭載された状態において、フレームに撓みが生じることがある。フレームに生じた撓みは、成膜対象に形成される蒸着パターンの形状および位置における精度の低下を生じさせるから、フレームの撓みを抑えることが望まれる。この点で、フレームの厚さを厚くすることによって、フレームの撓みを抑えることは可能ではある。しかしながら、成膜対象が、1辺の長さが1mを超える四角形状を有する場合には、撓みを抑えることが可能な程度に厚いフレームは、実用が困難な程度の重量を有してしまう。
【0005】
本発明は、フレームにおける撓みと重量の増大とを抑制可能とした蒸着マスク、蒸着マスクの製造方法、および、表示装置の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するための蒸着マスクは、複数の開口を囲む格子状を有し、全ての前記開口を含む領域を囲む外周部を有したフレームと、1つの前記開口を1つのマスク板によって覆うように前記フレームに取り付けられた複数のマスク板であって、各マスク板が複数のマスク孔を備える前記複数のマスク板と、を備える蒸着マスクであって、前記フレームは、第1面と、前記フレームの厚さ方向において前記第1面と対向する第2面と、前記外周部が囲む領域内において前記第1面から突き出たリブを備える。
【0007】
上記課題を解決するための蒸着マスクの製造方法は、複数の開口を囲む格子状を有し、全ての前記開口を含む領域を囲む外周部を有したフレームを準備すること、および、1つの前記開口を1つのマスク板によって覆うように前記フレームに複数の前記マスク板を取り付けること、を含み、前記フレームを準備することは、第1面と、前記フレームの厚さ方向において前記第1面と対向する第2面と、前記外周部が囲む領域内において前記第1面から突き出たリブを備えた前記フレームを準備する。
【0008】
上記課題を解決するための表示装置の製造方法は、上記蒸着マスクの製造方法によって製造された蒸着マスクを用いて蒸着対象にパターンを形成することを含む。
上記蒸着マスク、蒸着マスクの製造方法、および、表示装置の製造方法によれば、フレームがリブを備えるから、リブによってフレームの剛性を高めることによりフレームの撓みを抑えることが可能である。また、フレームの全体に対してリブの高さ分だけ厚みが加算される場合に比べて、フレームにおける重量の増大が抑えられる。
【0009】
上記蒸着マスクにおいて、前記マスク板は、前記第2面に取り付けられた表面と、前記マスク板の厚さ方向において前記表面と対向する裏面とを備え、前記マスク孔は、前記表面に位置する表面開口と、前記裏面に位置する裏面開口とを備え、前記表面と対向する視点から見て、前記表面開口は前記裏面開口よりも大きくてもよい。
【0010】
上記蒸着マスクによれば、蒸着マスクは、マスク板の表面開口が蒸着源に対向するように蒸着装置に搭載される。上記蒸着マスクによれば、リブが、マスク板が取り付けられた第2面に対向する第1面に位置するから、マスク板に向けて斜め方向から飛行する蒸着物質がマスク板に入射することが、リブによって抑えられる。これにより、斜め方向から入射する蒸着物質に起因した蒸着パターンのにじみが、成膜対象において抑えられる。
【0011】
上記蒸着マスクにおいて、前記第1面と前記第2面との間の距離が、前記フレームの厚さであり、前記リブの高さは、前記フレームの厚さよりも大きくてもよい。この蒸着マスクによれば、リブの高さがフレームの厚さよりも小さい場合に比べて、フレームの剛性を高めることが可能である。
【0012】
上記蒸着マスクにおいて、前記第1面と対向する視点から見て、前記リブが延びる方向と直交する方向における前記リブの長さが前記リブの幅であり、前記リブの高さは、前記リブの幅よりも大きくてもよい。
【0013】
上記蒸着マスクによれば、リブの幅がリブの高さよりも大きい場合に比べて、リブの高さが高い分だけ、フレームの図心をリブ寄りに位置させることが可能である。これにより、フレームのうち、第1面と第2面とに挟まれる部分において撓みを生じにくくすることができる。
【0014】
上記蒸着マスクにおいて、前記リブは、前記第1面と対向する視点から見て、2つの前記開口の間に位置してもよい。この蒸着マスクによれば、フレームのうちで、リブが位置する部分は2つの開口によって挟まれているから、当該部分において撓みが生じやすい。この点、上記蒸着マスクによれば、撓みが生じやすい部分にリブが位置しているから、リブにより撓みを抑える効果が顕著に得られやすい。
【0015】
上記蒸着マスクにおいて、複数の前記リブを備え、前記複数のリブは、前記第1面と対向する視点から見て、少なくとも1つの前記開口を囲む格子状を形成するように前記第1面に位置していてもよい。この蒸着マスクによれば、フレームのうち、リブに取り囲まれた開口の全周において剛性を高めることが可能であるから、開口の全周において撓みを抑えることが可能である。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、フレームにおける撓みと重量の増大とを抑えることができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】一実施形態の蒸着マスクが備えるフレームの構造を示す斜視図。
図2】フレームの構造を示す断面図。
図3】蒸着マスクの構造を示す斜視図。
図4】蒸着マスクが備えるマスク板の構造を示す断面図。
図5】蒸着マスクの製造方法を説明するための工程図。
図6】蒸着マスクの製造方法を説明するための工程図。
図7】蒸着マスクの製造方法を説明するための工程図。
図8】蒸着マスクの製造方法を説明するための工程図。
図9】蒸着マスクの製造方法を説明するための工程図。
図10】蒸着マスクの製造方法を説明するための工程図。
図11】蒸着マスクの製造方法を説明するための工程図。
図12】蒸着マスクの製造方法を説明するための工程図。
図13】蒸着マスクの製造方法を説明するための工程図。
図14】蒸着装置の構成を蒸着対象とともに模式的に示す装置構成図。
図15】フレームにおける重量と撓み量との関係を示すグラフ。
図16】変更例におけるマスク板の構造を示す断面図。
【発明を実施するための形態】
【0018】
図1から図15を参照して、蒸着マスクの一実施形態を説明する。以下では、蒸着マスク、および、試験例を順に説明する。
【0019】
[蒸着マスク]
図1から図4を参照して、蒸着マスクを説明する。なお、図1は、説明の便宜上、蒸着マスクが備えるフレームのみが図示されている。
【0020】
図1が示すように、フレーム11は、複数の開口11Aを囲む格子状を有し、全ての開口11Aを囲む外周部11B1を有している。フレーム11は、第1面の一例である表面11S1と、第2面の一例である裏面11S2とを備えている。裏面11S2は、フレーム11の厚さ方向において表面11S1と対向している。フレーム11は、外周部11B1が囲む領域内において表面11S1から突き出たリブ11Rを備えている。本実施形態では、フレーム11は複数のリブ11Rを備えているが、フレーム11は1以上のリブ11Rを備えていればよい。
【0021】
フレーム11がリブ11Rを備えるから、リブ11Rによってフレーム11の剛性を高めることによりフレーム11の撓みを抑えることが可能である。また、フレーム11の全体に対してリブ11Rの高さ分だけ厚みが加算される場合に比べて、フレーム11における重量の増大が抑えられる。
【0022】
本実施形態では、複数のリブ11Rには、表面11S1と対向する視点から見て、2つの開口の間に位置するリブ11Rが含まれる。フレーム11のうちで、リブ11Rが位置する部分は2つの開口11Aによって挟まれているから、当該部分において撓みが生じやすい。この点、上記蒸着マスクによれば、撓みが生じやすい部分にリブ11Rが位置しているから、リブ11Rにより撓みを抑える効果が顕著に得られやすい。
【0023】
さらに本実施形態では、複数のリブ11Rは、表面11S1と対向する視点から見て、少なくとも1つの開口11Aを囲む格子状を形成するように表面11S1に位置している。これにより、フレーム11のうち、リブ11Rに取り囲まれた開口11Aの全周において剛性を高めることが可能であるから、当該開口11Aの全周において撓みを抑えることが可能である。
【0024】
本実施形態において、フレーム11は格子状を有し、フレーム11の外形は四角形状を有している。フレーム11は、X方向と、X方向に直交するY方向とによって規定される平面に沿って広がる四角形状を有している。フレーム11は、フレーム本体11Bと、フレーム本体11Bから突き出た複数のリブ11Rとを備えている。フレーム本体11Bは、上述した外周部11B1と、外周部11B1内に位置する複数の梁部11B2とを備えている。外周部11B1は、矩形環状を有している。複数の梁部11B2には、X方向に沿って延びる線状を有した梁部11B2と、Y方向に沿って延びる線状を有した梁部11B2が含まれる。
【0025】
各リブ11Rは、互いに異なる梁部11B2上に位置している。そのため、複数のリブ11Rには、X方向に沿って延びる線状を有するリブ11Rと、Y方向に沿って延びる線状を有するリブ11Rとが含まれる。各リブ11Rは、当該リブ11Rが位置する梁部11B2の全体に位置し、かつ、リブ11Rが延びる方向における両端部は、外周部11B1に位置している。なお、各リブ11Rは、当該リブ11Rは、梁部11B2の全体にわたる長さを有することが好ましい。すなわち、外周部11B1には、リブ11Rの一部が位置しなくてもよい。
【0026】
本実施形態では、フレーム11が、X方向に沿って並ぶ3本の梁部11B2と、Y方向に沿って並ぶ2本の梁部11B2とを備えている。そのため、複数のリブ11Rには、X方向に沿って並ぶ3本のリブ11Rと、Y方向に沿って並ぶ2本のリブ11Rとが含まれる。複数のリブ11Rは、表面11S1と対向する視点から見て、2つの開口11Aを囲む格子状を有している。
【0027】
図2は、フレーム11の表面11S1に直交し、かつ、リブ11Rが延びる方向に直交する面に沿うリブ11Rの断面構造を示している。
図2が示すように、フレーム11において、表面11S1と裏面11S2との間の距離が、フレーム11の厚さTである。フレーム11において、表面11S1を基準とするリブ11Rの突出量が、リブ11Rの高さHである。表面11S1と対向する視点から見て、リブ11Rが延びる方向と直交する方向におけるリブ11Rの長さが、リブ11Rの幅Wである。すなわち、X方向に沿って延びるリブ11Rにおいて、Y方向に沿うリブ11Rの長さが、当該リブ11Rの幅Wである。これに対して、Y方向に沿って延びるリブ11Rにおいて、X方向に沿うリブ11Rの長さが、当該リブ11Rの幅Wである。
【0028】
例えば、リブ11Rの高さは、フレーム11の厚さTよりも大きくてよい。この場合には、リブ11Rの高さHがフレーム11の厚さTよりも小さい場合に比べて、フレーム11の剛性を高めることが可能である。また例えば、リブ11Rの高さHは、リブ11Rの幅Wよりも大きくてよい。この場合には、リブ11Rの幅Wがリブ11Rの高さHよりも大きい場合に比べて、リブ11Rの高さHが高い分だけ、フレーム11の図心をリブ11R寄りに位置させることが可能である。これにより、フレーム11のうち、フレーム本体11Bにおいて撓みを生じにくくすることができる。
【0029】
フレーム11の形成材料は、金属である。金属は、例えば、ステンレス鋼、および、鉄‐ニッケル合金などであってよい。鉄‐ニッケル合金は、36質量%のニッケルを含んでよい。すなわち、鉄‐ニッケル合金は、インバーであってよい。フレーム11の厚さTは、例えば1mm以上10mm以下であってよい。リブ11Rの高さHは、例えば10mm以上200mm以下であってよい。リブ11Rの幅Wは、例えば1mm以上10mm以下であってよい。
【0030】
なお、複数のリブ11Rでは、全てのリブ11Rにおいて高さHが等しくてもよいし、第1の高さを有したリブ11Rと、第1の高さとは異なる第2の高さを有したリブ11Rが含まれてよい。また、複数のリブ11Rでは、全てのリブ11Rにおいて幅Wが等しくてもよいし、第1の幅を有したリブ11Rと、第1の幅とは異なる第2の幅を有したリブ11Rが含まれてよい。また、X方向に沿って延びるリブ11Rには、X方向において第1の長さを有したリブ11Rと、第1の長さとは異なる第2の長さを有したリブ11Rが含まれてよい。一方、Y方向に沿って延びるリブ11Rには、Y方向において第1の長さを有したリブ11Rと、第1の長さとは異なる第2の長さを有したリブ11Rが含まれてよい。
【0031】
図3は、フレーム11の裏面11S2と対向する視点から見た蒸着マスクの斜視構造を示している。
図3が示すように、蒸着マスク10は、複数のマスク板12を備えている。複数のマスク板12は、1つの開口11Aを1つのマスク板12によって覆うようにフレーム11に取り付けられている。各マスク板12は、複数のマスク孔12Hを備えている。すなわち、蒸着マスク10は、フレーム11が有する開口11Aと同数のマスク板12を備えている。各マスク板12は、フレーム11の裏面11S2に取り付けられている。
【0032】
各マスク板12は、マスク領域12Aと周辺領域12Bとを備えている。マスク領域12Aには、上述したマスク孔12Hが形成されている。マスク孔12Hは、蒸着マスク10を用いた蒸着が行われた場合に、蒸着材料が通る通路である。周辺領域12Bは、マスク領域12Aを取り囲む環状を有している。周辺領域12Bには、マスク孔12Hが形成されていない。各マスク板12は、周辺領域12Bにおいてフレーム11に取り付けられている。これによって、複数のマスク孔12Hは、開口11A内に位置している。各マスク板12は、接着剤によってフレーム11に接着されてもよい。あるいは、各マスク板12は、溶着によってフレーム11に接合されてもよい。
【0033】
図4は、フレーム11の表面11S1に直交し、かつ、Y方向に沿う平面に沿うマスク板12の断面構造を示している。
図4が示すように、マスク板12は、フレーム11の裏面11S2に取り付けられた表面12S1と、マスク板12の厚さ方向において表面12S1と対向する裏面12S2とを備えている。マスク孔12Hは、表面12S1に位置する表面開口12H1と、裏面12S2に位置する裏面開口12H2とを備えている。マスク板12の表面12S1と対向する視点から見て、表面開口12H1は裏面開口12H2よりも大きい。
【0034】
蒸着マスク10は、マスク板12の表面開口12H1が蒸着源に対向するように蒸着装置に搭載される。蒸着マスク10によれば、リブ11Rが、マスク板12が取り付けられた裏面11S2に対向する表面11S1に位置するから、マスク板12に向けて斜め方向から飛行する蒸着物質がマスク板12に入射することが、リブ11Rによって抑えられる。これにより、斜め方向から入射する蒸着物質に起因した蒸着パターンのにじみが、成膜対象において抑えられる。
【0035】
[蒸着マスクの製造方法]
図5から図13を参照して、蒸着マスク10の製造方法を説明する。
蒸着マスク10の製造方法は、複数の開口11Aを囲む格子状を有し、全ての開口11Aを含む領域を囲む外周部11B1を有したフレーム11を準備すること、および、1つの開口11Aを1つのマスク板12によって覆うようにフレーム11に複数のマスク板12を取り付けることを含む。フレーム11を準備することは、表面11S1、裏面11S2、および、外周部11B1が囲む領域内において表面11S1から突き出たリブ11Rを備えたフレーム11を準備する。以下、図面を参照して、蒸着マスク10の製造方法をより詳しく説明する。
【0036】
図5から図10が示すように、蒸着マスク10の製造方法では、まず、マスク板12を形成するための基材20が準備される(図5参照)。マスク板12の基材20は、マスク板12を形成するための金属板21と、金属板21を支持するための支持体22とを備えている。支持体22は、樹脂層22aおよびガラス基板22bから形成されている。基材20において、樹脂層22aが、金属板21とガラス基板22bとに挟まれている。
【0037】
次いで、金属板21を表面21Fからエッチングすることによって、金属板21の厚さを薄くする。例えば、金属板21の厚さをエッチング前の金属板21の厚さの1/2以下の厚さまで減らすことが可能である(図6参照)。そして、金属板21の表面21Fにレジスト層PRが形成される(図7参照)。レジスト層PRに対する露光、および、現像が行われることによって、表面21FにレジストマスクRMが形成される(図8参照)。
【0038】
次に、レジストマスクRMを用いて金属板21が表面21Fからウェットエッチングされる。これによって、金属板21に複数のマスク孔12Hが形成される(図9参照)。金属板21のウェットエッチングでは、表面開口12H1が表面21Fに形成され、その後に、表面開口12H1よりも小さい裏面開口12H2が裏面21Rに形成される。次いで、レジストマスクRMが表面21Fから除去されることによって、マスク板12が製造される(図10参照)。なお、金属板21の表面21Fが、マスク板12の表面12S1に対応し、金属板21の裏面21Rが、マスク板12の裏面12S2に対応する。
【0039】
基材20を準備する工程には、金属板21とガラス基板22bとの間に樹脂層22aを挟み、樹脂層22aを介して金属板21とガラス基板22bとを接合する工程が含まれる。金属板21、樹脂層22a、および、ガラス基板22bが接合されるときには、まず、金属板21およびガラス基板22bの各々が有する面のなかで、少なくとも樹脂層22aと接する面にCB(Chemical bonding)処理が行われる。金属板21およびガラス基板22bにおいてCB処理が行われる面が対象面である。CB処理では、例えば、対象面に薬液が塗布されることによって、樹脂層22aに対して反応性を有する官能基などが対象面に付与される。CB処理では、例えばSi系化合物などが対象面に付与される。
【0040】
そして、金属板21、樹脂層22a、および、ガラス基板22bを記載の順に重ねた後に、これらを熱圧着する。この際に、金属板21の対象面と、ガラス基板22bの対象面とを、樹脂層22aに接触させる。これにより、対象面に付与された官能基と、樹脂層22aの表面に位置する官能基とが反応することによって、金属板21と樹脂層22aとが接合され、かつ、ガラス基板22bと樹脂層22aとが接合される。樹脂層22aの形成材料は、例えばポリイミドであってよい。
【0041】
金属板21を製造する方法には、電解または圧延が用いられる。これらの方法によって得られた金属板21の後処理として、研磨やアニールなどが適宜用いられる。金属板21の製造に電解が用いられる場合には、電解に用いられる電極の表面に金属板21が形成される。その後、電極の表面から金属板21が離型される。これにより、金属板21が製造される。金属板21の製造に圧延が用いられる場合には、金属板21を製造するための母材が圧延される。その後、圧延された母材がアニールされることによって、金属板21が得られる。
【0042】
金属板21にレジストマスクRMを形成する前に金属板21の厚さを減らす薄板化工程では、ウェットエッチングを用いることができる。金属板21の厚さを減らす工程は、省略することができる。金属板がインバーから形成される場合には、薄板化工程では、インバーをエッチングすることが可能なエッチング液、すなわち酸性のエッチング液を用いることができる。酸性のエッチング液は、例えば、過塩素酸第二鉄液、および、過塩素酸第二鉄液と塩化第二鉄液との混合液のいずれかに対して、過塩素酸、塩酸、硫酸、蟻酸、および、酢酸のいずれかを混合した溶液であってよい。表面21Fをエッチングする方式には、ディップ式、スプレー式、および、スピン式のいずれかを用いることができる。
【0043】
金属板21に複数のマスク孔12Hを形成するためのエッチングでは、エッチング液として酸性のエッチング液を用いることができる。金属板21がインバーから形成されるときには、エッチング液には、上述した薄板化工程で用いることが可能なエッチング液のいずれかを用いることができる。マスク孔12Hを形成するためのエッチングの方式にも、薄板化工程で用いることが可能な方式のいずれかを用いることができる。
【0044】
なお、基材20を準備する工程は、金属板21、樹脂層22a、および、ガラス基板22bを互いに接合する前に、金属板21における1つの面から金属板21を薄板化する工程を含むことができる。金属板21の第1面と第2面との両方をエッチングすることによって、第1面と第2面との両方から金属板21の残留応力を調節することが可能である。これにより、一方の面のみをエッチングする場合に比べて、エッチング後における21の残留応力に偏りが生じることが抑えられる。そのため、金属板21から得られたマスク板12をフレーム11に接合した場合に、マスク板12にしわが生じることが抑えられる。
【0045】
図11から図13が示すように、フレーム11の一部とマスク板12の一部とが接合される(図11参照)。この際に、各マスク板12が開口11Aを1つずつ覆うように、複数のマスク板12と単一のフレーム11とが接合される。そして、樹脂層22aからガラス基板22bが剥離される(図12参照)。次いで、各マスク板12から樹脂層22aが剥離される(図13参照)。これにより、上述した蒸着マスク10が得られる。
【0046】
フレーム11の一部にマスク板12の一部を接合する工程では、フレーム11が準備される。フレーム11を形成する際には、金属製の板部材を準備する。板部材は、上述したように、例えば、インバーおよびステンレス鋼などによって形成されてよい。金属製の板部材を準備する際には、フレーム本体11B用の板部材と、リブ11R用の板部材とを個別に準備する。なお、フレーム本体11B用の板部材における形成材料は、リブ11R用の板部材における形成材利用と同一であることが好ましいが、異なる材料であってもよい。
【0047】
次いで、フレーム本体11B用の板部材に複数の開口11Aを形成する。開口11Aの形成は、ウェットエッチングによって行ってもよいし、レーザー光線の照射による断裁によって行ってもよい。これにより、格子状を有したフレーム本体11Bが形成される。そして、リブ11R用の板部材から所定の形状を有したリブ11Rを形成し、形成したリブ11Rをフレーム本体11Bに取り付ける。なお、フレーム本体11Bに対するリブ11Rの取付は、例えば、ねじ止め、接着剤による接着、および、溶着のいずれかによって行われてよい。
【0048】
マスク板12の一部をフレーム11の一部に接合する工程では、マスク板12の表面12S1がフレーム11に接合される。マスク板12をフレーム11に接合する方法には、レーザー溶接を用いることができる。ガラス基板22bと樹脂層22aとを通じて、マスク板12のうち、接合部10Aaが位置する部分にレーザー光線Lが照射される。この際に、開口11Aの縁に沿って間欠的にレーザー光線Lが照射されることによって、間欠的な接合部が形成される。一方で、開口11Aの縁に沿って連続的にレーザー光線Lが照射され続けることによって、連続的な接合部が形成される。これにより、マスク板12がフレーム11に溶着される。
【0049】
支持体22をマスク板12から剥離する工程は、第1工程と第2工程とを含んでいる。第1工程では、樹脂層22aとガラス基板22bとの界面に、ガラス基板22bによって透過され、かつ、樹脂層22aによって吸収される波長を有したレーザー光線Lを照射する。これによって、樹脂層22aからガラス基板22bを剥離する。第1工程では、樹脂層22aとガラス基板22bとの界面にレーザー光線Lを照射することによって、レーザー光線Lによる熱エネルギーを樹脂層22aに吸収させる。これにより、樹脂層22aが加熱されることによって、樹脂層22aとガラス基板22bとの間における化学的な結合の強度を低くする。そして、ガラス基板22bを樹脂層22aから剥離させる。
【0050】
第2工程では、第1工程の後に、薬液LMを用いて樹脂層22aを溶解することによって、マスク板12から樹脂層22aを剥離する。薬液LMには、樹脂層22aを形成する材料を溶解することができる液体であって、かつ、マスク板12を形成する材料に対する反応性を有しない液体を用いることができる。薬液LMには、例えばアルカリ性の溶液を用いることができる。アルカリ性の溶液は、例えば水酸化ナトリウム水溶液であってよい。なお、図13では、樹脂層22aと薬液LMとを接触させる方式としてスプレー式を例示しているが、樹脂層22aと薬液LMとを接触させる方式には、ディップ式およびスピン式を用いることも可能である。
【0051】
[表示装置の製造方法]
図14を参照して、表示装置の製造方法を説明する。
表示装置の製造方法は、蒸着マスク10の製造方法によって製造された蒸着マスク10を用いて蒸着対象Sにパターンを形成することを含んでいる。以下、図面を参照して、蒸着装置の一例とともに、パターンを形成する工程を説明する。
【0052】
図14が示すように、蒸着装置30は、蒸着マスク10と、蒸着対象Sとを収容する収容槽31を備えている。収容槽31は、蒸着対象Sと蒸着マスク10とを収容槽31内における所定の位置に保持するように構成されている。収容槽31内には、蒸着材料Mvdを保持する保持部32と、蒸着材料Mvdを加熱する加熱部33とが位置している。保持部32に保持される蒸着材料Mvdは、例えば有機発光材料である。収容槽31は、蒸着対象Sと蒸着マスク10とを、蒸着対象Sと保持部32との間に蒸着マスク10が位置し、かつ、蒸着マスク10と保持部32とが対向するように、収容槽31内に位置させる。蒸着マスク10は、マスク板12の裏面12S2が蒸着対象Sに密着した状態で、収容槽31内に配置される。
【0053】
パターンを形成する工程では、蒸着材料Mvdが加熱部33によって加熱されることにより、蒸着材料Mvdが気化または昇華する。気化または昇華した蒸着材料Mvdは、蒸着マスク10マスク板12が備えるマスク孔12Hを通過して蒸着対象Sに付着する。これにより、例えば、蒸着材料Mvdが有機EL素子の有機層を形成するための材料である場合には、蒸着マスク10が有するマスク孔12Hの形状および位置に対応した形状を有する有機層が、蒸着対象Sに形成される。なお、蒸着材料Mvdは、表示層の画素回路が備える画素電極を形成するための金属材料などであってもよい。
【0054】
[試験例]
図15を参照して、試験例を説明する。なお以下では、解析シミュレーションソフト(Femtet、ムラタソフトウェア(株)製)(Femtetは登録商標)を用いたシミュレーションによって得られたフレームの重量と撓み量との関係を説明する。なお、以下に説明する撓み量の大きさは、各フレームにおいて生じる撓み量の最大値である。撓み量は、基準面であるXY平面にフレームの裏面を位置させる場合に、当該XY平面とフレームのなかでXY平面から最も離れた位置との間の距離である。
【0055】
[フレームの厚さ]
リブを有しないフレームにおいて、フレームの厚さを変更した場合の重量(kg)と撓み量(mm)とを算出した。なお、第1フレームと第2フレームとの各々について、重量と撓み量とを算出した。すなわち、X方向において3つの開口が並び、かつ、Y方向において2つの開口が並ぶ格子状を有した構造を第1フレームに設定した.また、X方向において4つの開口が並び、かつ、Y方向において3つの開口が並ぶ格子状を有した構造を第2フレームに設定した。
【0056】
第1フレームおよび第2フレームの各々について、フレームの厚さを1mm、3mm、5mm、7mm、10mm、15mm、30mm、50mm、および、100mmに設定した場合の重量および撓み量を算出した。各フレームにおける算出結果は、図15が示す通りであった。なお、図15において、第1フレームの算出結果が黒丸で示され、かつ、第2フレームの算出結果が白丸で示されている。
【0057】
なお、第1フレームおよび第2フレームの各々の形成材料を、36質量%のニッケルを含む鉄‐ニッケル合金、すなわちインバーに設定した。そのため、重量および撓み量の算出に際し、ヤング率を140GPaに設定し、ポアソン比を0.22に設定し、かつ、密度を8g/cmに設定した。また、第1フレームおよび第2フレームにおける各部の寸法を以下のように設定した。なお、各フレームが備える開口の大きさを、縦横比が4:3である21インチサイズのPCモニターを想定した大きさに設定した。
【0058】
[第1フレーム]
・外形:X方向の長さ 1700mm
・外形:Y方向の長さ 1100mm
・開口:X方向の長さ 471.0mm
・開口:Y方向の長さ 355.0mm
・X方向における開口間の距離 18.5mm
・Y方向における開口間の距離 165.0mm
【0059】
[第2フレーム]
・外形:X方向の長さ 2360mm
・外形:Y方向の長さ 1430mm
・開口:X方向の長さ 471.0mm
・開口:Y方向の長さ 355.0mm
・X方向における開口間の距離 75.3mm
・Y方向における開口間の距離 70.0mm
【0060】
図15が示すように、フレームは、フレームが有する重量が大きいほど撓み量が小さくなる傾向を有することが認められた。ただし、リブを有しないフレームでは、例えば、0.01mm以下の撓み量を達成するためには、第1フレームが700kg程度の重量を有する必要があり、第2フレームが1000kg以上の重量を有する必要があることが認められた。このように、リブを有しないフレームでは、蒸着マスクの実用上好ましい範囲にフレームの撓み量を抑える上で、蒸着マスクに過剰な重量が必要とされることが認められた。
【0061】
[リブの本数]
第1フレームおよび第2フレームの各々について、X方向に沿って並ぶリブの本数、および、Y方向に沿って並ぶリブの本数を変更した場合における重量および撓み量を算出した。この際に、各フレームの厚さを7mmに設定し、リブの高さを30mmに設定し、かつ、リブの幅を7mmに設定した。重量および撓み量を算出した結果は、表1に示す通りであった。
【0062】
なお、表1において、試験例1‐1から試験例1‐3は、第1フレーム対する試験例である。一方で、表1において、試験例1‐4から試験例1‐6は、第2フレームに対する試験例である。また、試験例1‐2および試験例1‐5のフレームは、梁部に沿って延びるリブを有する一方で、外周部に沿って延びるリブを有しない。これに対して、試験例1‐3および試験例1‐6のフレームは、梁部に沿って延びるリブと、外周部に沿って延びるリブとの両方を有する。
【0063】
【表1】
【0064】
試験例1‐1から試験例1‐3での算出結果の比較から明らかなように、第1フレームでは、リブの本数を増やすほど、フレームに生じる撓み量が小さくなることが認められた。また、第2フレームでは、試験例1‐4から試験例1‐6での算出結果の比較から明らかなように、第2フレームでは、リブの本数を増やすほど、フレームに生じる撓み量が小さくなることが認められた。
【0065】
なお、先に参照した図15、および、表1から明らかなように、第1フレームでは、リブを備える場合であっても、リブを有さず、かつ、30mmの厚さを有した第1フレームよりも軽いことが認められた。また、図15および表1から明らかなように、第2フレームでは、リブを備える場合であっても、リブを有さず、かつ、30mmの厚さを有した第2フレームよりも軽いことが認められた。
【0066】
[リブの幅]
第1フレームおよび第2フレームの各々について、各リブの幅を変更した場合における重量および撓み量を算出した。この際に、各フレームが備えるリブの本数を、第1フレームでは試験例1‐3と同一の本数に設定し、かつ、第2フレームでは試験例1‐6と同一の本数に設定した。また、各フレームの厚さを7mmに設定し、かつ、リブの高さを30mmに設定した。重量および撓み量を算出した結果は、表2に示す通りであった。
【0067】
なお、表2において、試験例2‐1から試験例2‐6は、第1フレームに対する試験例である。一方で、表2において、試験例2‐7から試験例2‐15は、第2フレームに対する試験例である。
【0068】
【表2】
【0069】
試験例2‐1から試験例2‐6での算出結果の比較から明らかなように、第1フレームでは、リブの幅を太くするほど、フレームに生じる撓み量が小さくなることが認められた。また、試験例2‐7から試験例2‐15での算出結果の比較から明らかなように、第2フレームでは、リブの幅が30mm以下である場合には、リブの幅を太くするほど、フレームに生じる撓み量が小さくなることが認められた。これに対して、リブの幅が50mm以上である場合には、フレームの幅が30mmである場合に比べて、フレームに生じる撓み量が大きくなることが認められた。
【0070】
なお、先に参照した図15、および、表2から明らかなように、リブを有する第1フレームは、リブを有さず、かつ、30mmの厚さを有した第1フレームよりも軽いことが認められた。また、図15および表2から明らかなように、リブの幅が50mm以下の範囲では、リブを有する第2フレームは、リブを有さず、かつ、30mmの厚さを有した第2フレームよりも軽いことが認められた。これに対して、図15および表2から明らかなように、リブの幅が70mmである場合には、リブを有する第2フレームは、リブを有さず、かつ、30mmの厚さを有した第2フレームと同等の重量を有することが認められた。
【0071】
[リブの高さ]
第1フレームおよび第2フレームの各々について、各リブの高さを変更した場合における重量および撓み量を算出した。この際に、各フレームが備えるリブの本数を、第1フレームでは試験例1‐3と同一の本数に設定し、かつ、第2フレームでは試験例1‐6と同一の本数に設定した。また、各フレームの厚さを7mmに設定し、かつ、リブの幅を10mmに設定した。重量および撓み量を算出した結果は、表3に示す通りであった。
【0072】
なお、表3において、試験例3‐1から試験例3‐6は、第1フレームに対する試験例である。一方で、表3において、試験例3‐7から試験例3‐12は、第2フレームに対する試験例である。
【0073】
【表3】
【0074】
試験例3‐1から試験例3‐6での算出結果の比較から明らかなように、第1フレームでは、リブの高さが高くなるほど、フレームに生じる撓み量が小さくなることが認められた。また、試験例3‐7から試験例3‐12での算出結果の比較から明らかなように、第2フレームでは、リブの高さが高くなるほど、フレームに生じる撓み量が小さくなることが認められた。
【0075】
なお、先に参照した図15、および、表3から明らかなように、リブの高さが100mm以下である場合に、リブを有する第1フレームは、リブを有さず、かつ、リブと同一の厚さを有した第1フレームよりも軽いことが認められた。また、図15および表3から明らかなように、リブの高さが100mm以下である場合に、リブを有する第2フレームは、リブを有さず、かつ、リブと同一の厚さを有した第2フレームよりも軽いことが認められた。
【0076】
また、試験例3‐6においてリブの幅を複数の値に変更して、第1フレームの重量および撓み量を算出した。一方で、試験例3‐12においてリブの幅を複数の値に変更して、第2フレームの重量および撓み量を算出した。すなわち、各フレームの厚さを7mm、リブの高さを200mmに設定した。重量および撓み量の算出結果は、表4が示す通りであった。なお、以下に示す試験例4‐1は試験例3‐6と同一のフレームであり、試験例4‐6は試験例3‐12と同一のフレームである。
【0077】
【表4】
【0078】
試験例4‐1から試験例4‐5での算出結果の比較から明らかなように、第1フレームでは、リブの幅が小さくなるほど、フレームに生じる撓み量が大きくなることが認められた。ただし、いずれの試験例においても、フレームに生じる撓み量が、10μm以下であることが認められた。また、試験例4‐6から試験例4‐10での算出結果の比較から明らかなように、第2フレームでは、リブの幅が小さくなるほど、フレームに生じる撓み量が大きくなることが認められた。ただし、試験例4‐6および試験例4‐7の算出結果によるように、リブの幅が7mm以上である場合には、フレームに生じる撓み量が10μm以下であることが認められた。また、試験例4‐8から試験例4‐10の算出結果によるように、リブの幅が7mm未満である場合でも、フレームに生じる撓み量が10μm程度に抑えられることが認められた。
【0079】
[フレームの厚さ]
第1フレームおよび第2フレームの各々について、フレームの厚さを変更した場合における重量および撓み量を算出した。この際に、第1フレームが備えるリブの条件を試験例4‐4に同一の条件、すなわち、リブの高さを200mmに設定し、リブの幅を3mmに設定する一方で、第1フレームの厚さを複数の値に変更した。また、第2フレームが備えるリブの条件を試験例4‐9と同一の条件、すなわち、リブの高さを200mmに設定し、リブの幅を4.5mmに設定する一方で、第2フレームの厚さを複数の値に変更した。
【0080】
なお、以下に示す試験例5‐1から試験例5‐5は、第1フレームに対する試験例である。試験例5‐2は、試験例4‐4と同一のフレームである。また、試験例5‐6から試験例5‐12は、第2フレームに対する試験例である。試験例5‐7は、試験例4‐9と同一のフレームである。
【0081】
【表5】
【0082】
試験例5‐1から試験例5‐5での算出結果の比較から明らかなように、第1フレームでは、フレームの厚さが7mmである場合に、フレームに生じる撓み量が極小値を有することが認められた。また、試験例5‐6から試験例5‐12での算出結果の比較から明らかなように、第2フレームでは、フレームの厚さが3mmである場合に、フレームに生じる撓み量が極小値を有することが認められた。
【0083】
すなわち、試験例5‐1から試験例5‐12の算出結果によれば、フレームに生じる撓み量を抑える観点では、フレームの厚さを特定の値に設定する必要があることが認められた。これに対して、上述したように、フレームが備えるリブにおいて、本数、幅、および、高さの各々において、複数の値にてフレームに生じる撓み量を抑えることが可能であるから、フレームに生じる撓み量を抑える手段としてリブを用いることによって、フレームにおける設計の自由度を高めることが可能である。しかも、フレームの重量が過剰に大きくなることを抑えることも可能である。
【0084】
以上説明したように、蒸着マスクの一実施形態によれば、以下に記載の効果を得ることができる。
(1)フレーム11がリブ11Rを備えるから、リブ11Rによってフレーム11の剛性を高めることによりフレーム11の撓みを抑えることが可能である。また、フレーム11の全体に対してリブ11Rの高さ分だけ厚みが加算される場合に比べて、フレーム11における重量の増大が抑えられる。
【0085】
(2)フレーム11のうちで、リブ11Rが位置する部分は2つの開口11Aによって挟まれているから、撓みが生じやすい部分にリブ11Rが位置することが可能である。これにより、リブ11Rにより撓みを抑える効果が顕著に得られやすい。
【0086】
(3)フレーム11のうち、リブ11Rに取り囲まれた開口11Aの全周において剛性を高めることが可能であるから、当該開口11Aの全周において撓みを抑えることが可能である。
【0087】
(4)リブ11Rの高さHがフレーム11の厚さTよりも小さい場合に比べて、フレーム11の剛性を高めることが可能である。
(5)リブ11Rの幅Wがリブ11Rの高さHよりも大きい場合に比べて、リブ11Rの高さHが高い分だけ、フレーム11の図心をリブ11R寄りに位置させることが可能である。これにより、フレーム11のうち、フレーム本体11Bにおいて撓みを生じにくくすることができる。
【0088】
なお、上述した実施形態は以下のように変更して実施することができる。
[フレーム]
・試験例において上述したように、フレーム11は、外周部11B1に位置するリブ11Rを備えてもよい。外周部11B1にリブ11Rが位置する場合には、外周部11B1における剛性をさらに高めることが可能である。
【0089】
[マスク板]
・マスク板12は、図16が示す形状を有したマスク孔を備えてもよい。
図16が示す例では、マスク領域12Aには、複数のマスク孔12Hが位置している。各マスク孔12Hは、大孔12HLと小孔12HSとを備えている。マスク板12の表面12S1から裏面12S2に向かう途中において、大孔12HLが小孔12HSに接続されている。大孔12HLは、表面12S1から裏面12S2に向かう方向に沿って先細る形状を有している。小孔12HSは、裏面12S2から表面12S1に向かう方向に沿って先細る形状を有している。大孔12HLは、表面12S1に開口し、大孔12HLの開口が表面開口12H1である。小孔12HSは、裏面12S2に開口し、小孔12HSの開口が裏面開口12H2である。
【0090】
なお、マスク板12が大孔12HLと小孔12HSとを有する場合には、例えば、金属板に対して小孔12HSを形成するためのエッチングを行った後に、大孔12HLを形成するためのエッチングを行う。この際、金属板から複数のマスク板12を形成することが可能なように、金属板に対して複数のマスク領域を形成する。そして、1つのマスク板が1つのマスク領域を含むように金属板を断裁することによって、複数のマスク板を形成する。
【0091】
各マスク板12をフレーム11に取り付けることによって、蒸着マスク10を形成する。この際に、各マスク板12を例えばガラス製の支持板によって支持した状態で、マスク板12をフレーム11に溶着してもよい。あるいは、接着剤によって、マスク板12をフレーム11に取り付けてもよい。
【0092】
・各マスク板12は、複数のマスク領域12Aを備えてもよい。すなわち、マスク板12は、周辺領域12Bによって分断された複数のマスク領域12Aを備えてもよい。
【符号の説明】
【0093】
10…蒸着マスク
11…フレーム
11B1…外周部
11R…リブ
11S1,12S1…表面
11S2,12S2…裏面
12…マスク板
12H…マスク孔
12H1…表面開口
12H2…裏面開口
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16