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  • 特開-シート給送装置 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022050872
(43)【公開日】2022-03-31
(54)【発明の名称】シート給送装置
(51)【国際特許分類】
   B65H 3/52 20060101AFI20220324BHJP
【FI】
B65H3/52 310Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】1
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020157042
(22)【出願日】2020-09-18
(71)【出願人】
【識別番号】000250502
【氏名又は名称】理想科学工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100083806
【弁理士】
【氏名又は名称】三好 秀和
(74)【代理人】
【識別番号】100101247
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 俊一
(74)【代理人】
【識別番号】100095500
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 正和
(72)【発明者】
【氏名】飯村 直行
【テーマコード(参考)】
3F343
【Fターム(参考)】
3F343FA02
3F343FB04
3F343FC01
3F343FC28
3F343GA01
3F343GB01
3F343GC01
3F343HA34
3F343JD08
3F343KB05
3F343KB06
3F343LC27
3F343LD06
3F343MC13
(57)【要約】
【課題】シートにダメージを与えることなく、シートの捌き時に発生するビビリ音を低減する。
【解決手段】重なったシートPをピックアップロール12bと捌き部材13との圧接部19を通過する際に分離させて、圧接部19の下流側にシートPを1枚ずつ給送するシート給送装置2において、圧接部19を通過したシートPに、シートPの給送方向における下流側から、シートPを捌き部材13から離反させる向きのエア24を吹き付けるエア吹き付け部23を備える。
【選択図】図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
重なったシートをピックアップロールと捌き部材との圧接部を通過する際に分離させて、前記圧接部の下流側に前記シートを1枚ずつ給送するシート給送装置において、
前記圧接部を通過した前記シートに、前記シートの給送方向における下流側から、前記シートを前記捌き部材から離反させる向きのエアを吹き付けるエア吹き付け部を備える、
シート給送装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シートを給送するシート給送装置に関する。
【背景技術】
【0002】
積載された用紙をスクレーパロール及びピックアップロールで搬送しつつ、ピックアップロールと捌き部材で一枚ずつに捌いていく給紙装置が広く用いられている。このような給紙装置では、捌き部材で用紙を捌く際に用紙がスリップして捌き部材が振動し、この振動が伝わった用紙が振動を増幅させてビビリ音を発生させやすい。
【0003】
従来、上記の問題を解決するものとして、捌き部材の振動を抑えるための部材を追加して音を抑える方法が知られている。このような方法を用いることで振動が幾分か抑えられるものの、捌き部材の振動は発生し、十分な効果を得ることが難しかった(例えば、特許文献1,2)。
【0004】
また、ニップ部を通過した用紙を給紙ローラ側に屈曲させるガイドを設けて用紙の共振を抑える方法も開示されている。しかし、このような方法では用紙の傷、折れ、皺等の用紙のダメージが発生しやすいという課題があった(例えば、特許文献3)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2000-168981号公報
【特許文献2】特開平7-1330335号公報
【特許文献3】特開2012-126525号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、上記の課題を解決し、用紙等のシートにダメージを与えることなく、シートの捌き時に発生するビビリ音を低減することができるシート給送装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために、本発明の一つの態様によるシート給送装置は、
重なったシートをピックアップロールと捌き部材との圧接部を通過する際に分離させて、前記圧接部の下流側に前記シートを1枚ずつ給送するシート給送装置において、
前記圧接部を通過した前記シートに、前記シートの給送方向における下流側から、前記シートを前記捌き部材から離反させる向きのエアを吹き付けるエア吹き付け部を備える。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、用紙等のシートにダメージを与えることなく、シートの捌き時に発生するビビリ音を低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1図1は、本発明の一実施形態に係るシート給送装置を備える印刷装置の概略構成を示す説明図である。
図2図2は、図1の印刷装置における制御系の構成を示すブロック図である。
図3図3は、図1の給紙部の概略構成を示す説明図である。
図4図4は、図3のピックアップロールと捌き部材との圧接部を拡大して示す説明図である。
図5図5は、図4の圧接部の平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照して説明する。各図面を通じて同一もしくは同等の部位や構成要素には、同一もしくは同等の符号を付している。ただし、図面は模式的なものであり、現実のものとは異なることに留意すべきである。また、図面相互間においても互いの寸法の関係や比率が異なる部分が含まれていることはもちろんである。
【0011】
また、以下に示す実施の形態は、この発明の技術的思想を具体化するための装置等を例示するものであって、この発明の技術的思想は、各構成部品の配置等を下記のものに特定するものでない。この発明の技術的思想は、特許請求の範囲において、種々の変更を加えることができる。
【0012】
図1は本発明の一実施形態に係るシート給送装置を備える印刷装置の概略構成を示す説明図、図2図1に示す印刷装置の制御系の構成を示すブロック図である。以下の説明において、ユーザが位置する図1の紙面表方向を前方とする。また、図1に示すように、ユーザから視て、上下左右を上下左右方向とする。また、図1において太線で示す経路が、印刷媒体である用紙Pが搬送される搬送経路Rである。以下の説明における上流、下流は、搬送経路Rにおける用紙Pの搬送方向Yの上流、下流を意味する。
【0013】
図1に示すように、印刷装置1は、給紙部2と、印刷部3とを備えている。また、図2に示すように、印刷装置1は、給紙部2及び印刷部3の動作を制御する制御部4をさらに備えている。
【0014】
シート給送装置としての給紙部2は、印刷部3に用紙Pを給紙する。給紙部2は、図1に示すように、給紙台11と、給紙ローラ12と、中間搬送ローラ15と、レジストローラ17とを備えている。また、図2に示すように、給紙部2は、給紙モータ14と、中間搬送モータ16と、レジストモータ18とをさらに備えている。
【0015】
図1に示す給紙台11は、印刷に用いられる用紙Pが積載されるものであり、その上側に給紙ローラ12が配置されている。図3は給紙部2の概略構成を示す説明図である。なお、図3では、搬送経路Rの中間搬送ローラ15の部分の図示を省略している。
【0016】
図3に示すように、給紙ローラ12は、スクレーパロール12aとピックアップロール12bとを有している。スクレーパロール12aは、給紙台11に積載された用紙Pの最上部に接触し、回転して用紙Pを給紙台11から送り出す。ピックアップロール12bは、捌き部材としての捌き板13と圧接している。
【0017】
スクレーパロール12aが給紙台11から送り出した用紙Pが2枚以上重送された場合は、ピックアップロール12bと捌き板13との圧接部19において、ピックアップロール12bに接触する1枚目の用紙Pだけが、圧接部19よりも下流側に送り出される。ピックアップロール12bに接触しない2枚目以降の用紙Pは、捌き板13との接触で生じる摩擦力により、圧接部19よりも下流側への移動が規制される。このため、用紙Pは1枚ずつ圧接部19を通過し、圧接部19よりも下流側の搬送経路Rに送り込まれる。
【0018】
給紙ローラ12は、図2の給紙モータ14により回転される。詳しくは、給紙モータ14は、軸間にタイミングベルト(図示せず)が架け渡された図3のスクレーパロール12a及びピックアップロール12bを同期して回転させる。
【0019】
給紙モータ14は、図示しないワンウェイクラッチによりスクレーパロール12a及びピックアップロール12bに接続されている。このワンウェイクラッチは、用紙Pを搬送経路R側に送り出す方向の回転だけを、給紙モータ14からスクレーパロール12aやピックアップロール12bに伝達する。
【0020】
図1に示す中間搬送ローラ15は、圧接部19よりも下流側の搬送経路R上に一対配置されている。両中間搬送ローラ15は、圧接部19を1枚ずつ通過した用紙Pをニップして、搬送経路Rの下流側に送り出す。これにより、用紙Pは搬送経路Rにおいて搬送方向Yに搬送される。中間搬送ローラ15の一方は、図2の中間搬送モータ16により回転される。
【0021】
なお、本実施形態では説明を容易にするために、給紙部2が、給紙台11、給紙ローラ12、捌き板13及び中間搬送ローラ15を1組有している場合について説明する。しかし、本発明は、給紙部2が、給紙台11、給紙ローラ12、捌き板13及び中間搬送ローラ15を複数組有している場合にも適用可能である。
【0022】
レジストローラ17は、中間搬送ローラ15よりも下流側の搬送経路R上に一対配置されている。レジストローラ17は、中間搬送ローラ15により搬送されてきた用紙Pの先端を一旦止めて斜行を補正した後、用紙Pの先端をニップして印刷部3へ送り出す。図2のレジストモータ18は、図1のレジストローラ17を駆動させる。
【0023】
印刷部3は、レジストローラ17よりも下流側の搬送経路R上において、給紙部2により給紙された用紙Pを搬送しつつ、用紙Pに印刷を行う。印刷部3は、本実施形態では、ベルト搬送部21と、インクジェットヘッド部22とを備える。
【0024】
ベルト搬送部21は、レジストローラ17により搬送されてきた用紙Pをベルト上に吸着保持して搬送する。ベルト搬送部21のベルトが掛け渡されたローラが図示しないモータにより駆動されることにより、ベルトが回転し、ベルト上の用紙Pが搬送される。
【0025】
インクジェットヘッド部22は、ベルト搬送部21の上方に配置されている。インクジェットヘッド部22は、用紙Pの搬送方向Yと略直交する方向(前後方向)に複数のノズルが配列されたラインタイプの複数のインクジェットヘッドを有する。インクジェットヘッド部22は、ベルト搬送部21により搬送される用紙Pに各インクジェットヘッドのノズルからインクを吐出して画像を印刷する。
【0026】
制御部4は、印刷装置1の各部の動作を制御する。制御部4は、CPU、RAM、ROM等を備えて構成される。
【0027】
具体的には、制御部4は、給紙部2の給紙部2により用紙Pを印刷部3へ給紙し、印刷部3においてベルト搬送部21により用紙Pを搬送しつつ、インクジェットヘッド部22によりインクを吐出して用紙Pに印刷を行うよう制御を行う。
【0028】
制御部4は、中間搬送ローラ15が搬送する用紙Pの先端がレジストローラ17に突き当たると、その後、中間搬送ローラ15が搬送を続ける用紙Pの先端側に規定たるみ量のたるみが形成されるまで、レジストローラ17を停止させたままとする。用紙Pの先端側に規定たるみ量のたるみが形成されると、制御部4は、中間搬送ローラ15を減速、停止させた後、レジストローラ17を駆動させる。
【0029】
ところで、給紙部2において、ピックアップロール12bにより1枚ずつ送り出される用紙Pは、捌き板13との圧接部19を通過する際に、捌き板13の表面上を擦りながら移動する。この移動により、捌き板13が用紙Pに対して接触、離間を繰り返すスティックスリップ現象が起こり、捌き板13が自励振動してその振動が用紙Pに伝わる。圧接部19を通過し自由端となった用紙Pの先端では、捌き板13から伝わった自励振動が共振により増幅し、ビビリ音と呼ばれる振動音が生じる。
【0030】
つまり、給紙部2では、給紙ローラ12が用紙Pを搬送する度に、圧接部19を通過する用紙Pが大きいビビリ音を発して騒音が生じる。
【0031】
そこで、本実施形態の印刷装置1では、図4に示すファン23により、圧接部19を通過した用紙Pの裏面にエア24を吹き付ける。具体的には、捌き板13に接触する用紙Pの圧接部19を通過した部分の裏面に、用紙Pの搬送方向Yにおける下流側から上流側に向けて、ファン23からのエア24を吹き付ける。ファン23は、図2に示すファンモータ25によって駆動される。ファンモータ25の駆動は、制御部4によって制御される。
【0032】
図4のファン23は、図5に示すように、スクレーパロール12aが送り出した用紙Pを圧接部19に案内する2つのガイド板26の間に配置されている。各ガイド板26は、用紙Pの搬送方向Yと略直交する方向(前後方向)における圧接部19の両脇にそれぞれ配置されている。ファン23からのエア24は、圧接部19を通過した用紙Pの裏面部分に吹き付けられる。
【0033】
圧接部19を通過した用紙Pは、ファン23からのエア24によりピックアップロール12b側に押し付けられる。このため、圧接部19を通過した用紙Pは捌き板13から離間し、捌き板13との接触領域が減少する。したがって、圧接部19を通過する用紙Pが捌き板13の表面上を擦りながら移動する区間が減り、捌き板13が自励振動を起こしにくくなる。よって、捌き板13から伝わる振動で用紙Pに生じるビビリ音が抑制され、給紙部2の給紙ローラ12が用紙Pを搬送する際の騒音を抑制することができる。
【0034】
なお、圧接部19を通過した用紙Pに物理的に接触させたガイド部材により用紙Pの向きを変えて、捌き板13から用紙Pを離間させると、ガイド部材との接触で用紙Pが屈曲等のダメージを受ける可能性がある。
【0035】
また、用紙Pにジャムが発生したときに、印刷部3側よりも比較的アプローチしやすい給紙台11側からジャムした用紙Pを回収することが考えられる。その際にも、ガイド部材がピックアップロール12bの周面に近付けて配置されることから、ガイド部材に引っかかって用紙Pが回収できなくなる可能性がある。
【0036】
これに対し、本実施形態の印刷装置1では、ファン23からのエア24で捌き板13から用紙Pを離間させることから、ガイド部材を使って用紙Pをピックアップロール12b側に屈曲させるよりも、傷、俺、皺等のダメージを用紙Pに与えにくくすることができる。
【0037】
以上に説明した本実施形態の印刷装置1によれば、給紙台11から用紙Pを1枚ずつ送り出す圧接部19の捌き板13に接触する用紙Pの裏面に、ファン23からのエア24を吹き付けて、用紙Pを捌き板13から離間させる構成とした。このため、用紙Pにダメージを与えることなく、用紙捌き時に発生するビビリ音を低減することができる。
【0038】
なお、本実施形態では、給紙ローラ12がスクレーパロール12aとピックアップロール12bとを有している場合について説明したが、単一のローラで給紙ローラ12が構成されている場合にも本発明は適用可能である。
【0039】
また、本実施形態では、給紙部2が給紙ローラ12と中間搬送ローラ15とを有している場合について説明したが、中間搬送ローラ15を省略する構成のシート給送装置でも、本発明は適用可能である。その場合は、給紙ローラ12が中間搬送ローラ15を兼ねて、レジストローラ17に到達した用紙Pの先端にたるみが形成されるまで、用紙Pを搬送することになる。
【0040】
さらに、本実施形態では、印刷装置1をインクジェット方式の印刷装置として説明したが、これに限定されず、給紙台に積載した用紙を1枚ずつ供給するシート給送装置であれば、方式が異なる印刷装置にも本発明を適用することができる。例えば、電子写真方式や孔版印刷方式、熱転写式等、インクジェット方式の印刷装置のシート給送装置にも、本発明は適用可能である。
【0041】
また、本実施形態では、印刷装置内に一体に組み込まれたシート給送装置を例に取って説明したが、本発明は、印刷装置から独立したシート給送装置にも適用可能である。さらに、シート給送装置によって給送するシートは、ウェブ状のシートであればよく、本実施形態の用紙Pに限られない。
【0042】
このように、本発明は上記の実施形態のままに限定されるものではなく、実施段階ではその要旨を逸脱しない範囲で構成要素を変形して具体化できる。また、上記の実施形態に開示されている複数の構成要素の適宜な組み合せにより、種々の発明を形成できる。例えば、実施形態に示される全構成要素から幾つかの構成要素を削除してもよい。
[付記]
以上に説明した実施形態によって、以下に示す態様の発明が開示される。
【0043】
即ち、一つの態様の発明として、
重なったシートをピックアップロールと捌き部材との圧接部を通過する際に分離させて、前記圧接部の下流側に前記シートを1枚ずつ給送するシート給送装置において、
前記圧接部を通過した前記シートに、前記シートの給送方向における下流側から、前記シートを前記捌き部材から離反させる向きのエアを吹き付けるエア吹き付け部を備える、
シート給送装置が開示される。
【0044】
そして、上記態様による発明によれば、用紙等のシートにダメージを与えることなく、シートの捌き時に発生するビビリ音を低減することができる。
【符号の説明】
【0045】
1 印刷装置
2 給紙部(シート給送装置)
3 印刷部
4 制御部
11 給紙台
12 給紙ローラ
12a スクレーパロール
12b ピックアップロール
13 捌き板(捌き部材)
14 給紙モータ
15 中間搬送ローラ
16 中間搬送モータ
17 レジストローラ
18 レジストモータ
19 圧接部
21 ベルト搬送部
22 インクジェットヘッド部
23 ファン(エア吹き付け部)
24 エア
25 ファンモータ
26 ガイド板
P 用紙(シート)
R 搬送経路
Y 搬送方向
図1
図2
図3
図4
図5