(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022050912
(43)【公開日】2022-03-31
(54)【発明の名称】鎮痛消炎貼付剤
(51)【国際特許分類】
A61K 9/70 20060101AFI20220324BHJP
A61K 47/32 20060101ALI20220324BHJP
A61K 45/00 20060101ALI20220324BHJP
A61P 29/00 20060101ALI20220324BHJP
A61K 47/12 20060101ALI20220324BHJP
A61K 47/14 20060101ALI20220324BHJP
A61K 47/06 20060101ALI20220324BHJP
A61K 31/192 20060101ALI20220324BHJP
【FI】
A61K9/70 401
A61K47/32
A61K45/00
A61P29/00
A61K47/12
A61K47/14
A61K47/06
A61K31/192
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020157102
(22)【出願日】2020-09-18
(71)【出願人】
【識別番号】000004020
【氏名又は名称】ニチバン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100140501
【弁理士】
【氏名又は名称】有我 栄一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100072604
【弁理士】
【氏名又は名称】有我 軍一郎
(72)【発明者】
【氏名】中並 秀太
(72)【発明者】
【氏名】中尾 賢一
(72)【発明者】
【氏名】丹羽 勝久
【テーマコード(参考)】
4C076
4C084
4C206
【Fターム(参考)】
4C076AA72
4C076AA74
4C076BB31
4C076CC04
4C076DD34
4C076DD41
4C076DD45
4C076EE04A
4C076FF34
4C084AA17
4C084MA32
4C084MA63
4C084NA08
4C084NA11
4C084ZB11
4C206AA01
4C206AA02
4C206DA23
4C206MA02
4C206MA03
4C206MA05
4C206MA52
4C206MA83
4C206NA08
4C206NA11
4C206ZB11
(57)【要約】
【課題】貼付時の作業性(貼り易さ)に優れ、貼付時に違和感なく貼ることができる鎮痛消炎貼付剤を提供すること。
【解決手段】支持体、主基材成分としてゴム系エラストマーと有効成分として非ステロイド系鎮痛消炎薬とを含む膏体層、および剥離ライナーからなる鎮痛消炎貼付剤において、支持体がポリエステル編布からなり、支持体の厚さが600~800μmであり、且つその20%伸張時張力[横]が1.5N以上3.5N以下である鎮痛消炎貼付剤は貼付時の作業性(貼り易さ)に優れ、貼付時に違和感なく貼ることができる。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
支持体、主基剤成分としてゴム系エラストマーと有効成分として非ステロイド系鎮痛消炎薬とを含む膏体層、および剥離ライナーからなる鎮痛消炎貼付剤において、
前記支持体がポリエステル編布からなり、支持体の厚さが600~800μmであり、且つその20%伸張時張力[横]が1.5N以上3.5N以下である鎮痛消炎貼付剤。
【請求項2】
前記支持体の20%伸張時張力[縦]が3.0N以上5.0N以下である請求項1に記載の鎮痛消炎貼付剤。
【請求項3】
前記ポリエステル編布の糸の太さが60デニール以上80デニール以下である請求項1または請求項2に記載の鎮痛消炎貼付剤。
【請求項4】
前記ポリエステル編布の剛軟度[横]が8mm以上14mm以下である請求項1~3のいずれか1項に記載の鎮痛消炎貼付剤。
【請求項5】
前記ゴム系エラストマーが、スチレン-イソプレン-スチレンブロック共重合体と、粘度平均分子量が10,000~100,000である低分子量ポリイソブチレンとを含む請求項1~4のいずれか1項に記載の鎮痛消炎貼付剤。
【請求項6】
前記膏体層が、実質的に水を含まず、有機酸、粘着付与樹脂および可塑剤を含有する請求項1~5のいずれか1項に記載の鎮痛消炎貼付剤。
【請求項7】
前記非ステロイド系鎮痛消炎薬が、ロキソプロフェンナトリウムである、請求項1~6のいずれか1項に記載の鎮痛消炎貼付剤。
【請求項8】
剥離ライナーの縦方向にスリットが一つ以上入っている請求項1~7のいずれか1項に記載の鎮痛消炎貼付剤。
【請求項9】
支持体、主基剤成分としてゴム系エラストマーと有効成分として非ステロイド系鎮痛消炎薬とを含む膏体層、および剥離ライナーからなる鎮痛消炎貼付剤において、
前記ゴム系エラストマーが、スチレン-イソプレン-スチレンブロック共重合体と、粘度平均分子量が10,000~100,000である低分子量ポリイソブチレンとを含む、鎮痛消炎貼付剤。
【請求項10】
前記膏体層が、実質的に水を含まず、有機酸、粘着付与樹脂および可塑剤を含有する請求項9に記載の鎮痛消炎貼付剤。
【請求項11】
前記非ステロイド系鎮痛消炎薬が、ロキソプロフェンナトリウムである請求項9または10に記載の鎮痛消炎貼付剤。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はゴム系エラストマーを主基剤成分として含む膏体層中に非ステロイド系鎮痛消炎薬を含有する非水系の鎮痛消炎貼付剤に関する。本発明の鎮痛消炎貼付剤は、非ステロイド系鎮痛消炎薬、例えばその一種であるロキソプロフェンナトリウムを経皮的に皮膚透過性良く局所組織内に投与することができ、貼付時の作業性に優れ、貼付時に違和感なく貼ることができ、さらには、皮膚刺激が少ない鎮痛消炎貼付剤に関するものである。
【背景技術】
【0002】
ゴム系エラストマーを主基剤成分として配合させた膏体としては、有機溶剤を使用しないカレンダー法やホットメルト法が広く用いられており、皮膚刺激の少ない、有機溶剤を使用しない膏体を用いた貼付剤が知られている(特許文献1)。また、貼付時の作業性(貼り易さ)を改善するために、貼付剤の剥離ライナーの縦方向にスリットを2本入れ、2本のスリットの間の剥離ライナーの部分を最初に剥がして貼付し、それから両サイドの剥離ライナーの部分を剥がして貼付する貼付剤も知られている(特許文献2、特許文献3)。しかし、それでも貼付剤を肩や背中に貼付するときには、目視で確認しながら貼ることができないため、きれいに貼ることが難しく、シワになったり、膏体面同士が付着して貼付に失敗したりするなどの不都合が生じることがあった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許5365964号公報
【特許文献2】実開昭63-014530号公報
【特許文献3】特開2014-73210号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、上記問題点を解決するものであり、ゴム系エラストマーを主基剤成分として含む膏体層中に非ステロイド系鎮痛消炎薬を含有する鎮痛消炎貼付剤において、貼付時の作業性(貼り易さ)に優れ、貼付時に違和感なく貼ることができ、さらには、皮膚刺激が少ない鎮痛消炎貼付剤を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者らは、前記課題を解決するために鋭意研究を行った結果、支持体、主基剤成分としてゴム系エラストマーと有効成分として非ステロイド系鎮痛消炎薬とを含む膏体層、および剥離ライナーからなる鎮痛消炎貼付剤において、支持体の厚さおよび伸張時張力を一定の範囲内にすることにより、貼付時の作業性(貼り易さ)に優れ、貼付時に違和感なく貼ることができ、また、ゴム系エラストマーとして、スチレン-イソプレン-スチレンブロック共重合体と、低分子量ポリイソブチレンとを含む混合物を膏体層として用いることにより、さらには、皮膚刺激が少なくなり、上記課題を解決できることを見出し、本発明を完成した。
【0006】
すなわち、本発明は、支持体、膏体層および剥離ライナーからなり、該膏体層中に有効成分として非ステロイド系鎮痛消炎薬を含み、該膏体層の主基剤成分としてゴム系エラストマーを含有する鎮痛消炎貼付剤であって、前記支持体がポリエステル編布からなり、支持体の厚さが600~800μmであり、且つその20%伸張時張力[横]が1.5N以上3.5N以下である鎮痛消炎貼付剤に関する。ここで、前記ゴム系エラストマーは、スチレン-イソプレン-スチレンブロック共重合体と、粘度平均分子量が10,000~100,000である低分子量ポリイソブチレンとを含むものが好ましい。
【0007】
本発明によれば、以下の実施態様が提供される。
[1]支持体、主基剤成分としてゴム系エラストマーと有効成分として非ステロイド系鎮痛消炎薬とを含む膏体層、および剥離ライナーからなる鎮痛消炎貼付剤において、
前記支持体がポリエステル編布からなり、支持体の厚さが600~800μmであり、且つその20%伸張時張力[横]が1.5N以上3.5N以下である鎮痛消炎貼付剤。
[2]前記支持体の20%伸張時張力[縦]が3.0N以上5.0N以下である[1]に記載の鎮痛消炎貼付剤。
[3]前記ポリエステル編布の糸の太さが60デニール以上80デニール以下である[1]または[2]に記載の鎮痛消炎貼付剤。
[4]前記ポリエステル編布の剛軟度[横]が8mm以上14mm以下である[1]~[3]のいずれかに記載の鎮痛消炎貼付剤。
[5]前記ゴム系エラストマーが、スチレン-イソプレン-スチレンブロック共重合体と、粘度平均分子量が10,000~100,000である低分子量ポリイソブチレンとを含む[1]~[4]のいずれかに記載の鎮痛消炎貼付剤。
[6]前記膏体層が、実質的に水を含まず、有機酸、粘着付与樹脂および可塑剤を含有する[1]~[5]のいずれかに記載の鎮痛消炎貼付剤。
[7]前記非ステロイド系鎮痛消炎薬が、ロキソプロフェンナトリウムである、[1]~[6]のいずれかに記載の鎮痛消炎貼付剤。
[8]剥離ライナーの縦方向にスリットが一つ以上入っている[1]~[7]のいずれかに記載の鎮痛消炎貼付剤。
[9]支持体、主基剤成分としてゴム系エラストマーと有効成分として非ステロイド系鎮痛消炎薬とを含む膏体層、および剥離ライナーからなる鎮痛消炎貼付剤において、
前記ゴム系エラストマーが、スチレン-イソプレン-スチレンブロック共重合体と、粘度平均分子量が10,000~100,000である低分子量ポリイソブチレンとを含む、鎮痛消炎貼付剤。
[10]前記膏体層が、実質的に水を含まず、有機酸、粘着付与樹脂、および可塑剤を含有する[9]に記載の鎮痛消炎貼付剤。
[11]前記非ステロイド系鎮痛消炎薬が、ロキソプロフェンナトリウムである[9]または[10]に記載の鎮痛消炎貼付剤。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、ゴム系エラストマーを主基剤成分として含む膏体層中に非ステロイド系鎮痛消炎薬を含有する鎮痛消炎貼付剤において、貼付時の作業性(貼り易さ)に優れ、貼付時に違和感なく貼ることができ、さらには、皮膚刺激が少ない鎮痛消炎貼付剤を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】本発明における一つの実施態様の鎮痛消炎貼付剤の斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明の鎮痛消炎貼付剤は、支持体、主基剤成分としてゴム系エラストマーと有効成分として非ステロイド系鎮痛消炎薬とを含む膏体層、および剥離ライナーからなる。たとえば、
図1に示すように、本発明の鎮痛消炎貼付剤1は、支持体4、膏体層3、および剥離ライナー2からなり、剥離ライナーには、貼り易さの観点から、スリット5及び6が入っている。
以下に、本発明の鎮痛消炎貼付剤について、詳細に説明する。
【0011】
[非ステロイド系鎮痛消炎薬]
本発明の鎮痛消炎貼付剤において、膏体層中に有効成分として含まれる非ステロイド系鎮痛消炎薬としては種々のものが挙げられるが、特にロキソプロフェンナトリウムを用いることが好ましい。ロキソプロフェンナトリウムの含有量は、特に制限されるものではないが、膏体層を構成する全成分を基準として、好ましくは0.1~20質量%、より好ましくは0.5~10質量%である。
【0012】
なお、本発明において、「膏体層を構成する全成分を基準とする」とは、鎮痛消炎貼付剤の膏体層に含まれる非ステロイド系鎮痛消炎薬、基剤成分を構成するゴム系エラストマー、さらには、例えば、有機酸、粘着付与樹脂及び可塑剤、並びに酸化防止剤や温感刺激成分などその他の添加剤を含む膏体層の全質量に基づいて算定される質量割合を意味する。
【0013】
[有機酸]
本発明が対象とする鎮痛消炎貼付剤の膏体層には、有効成分である上記非ステロイド系鎮痛消炎薬の皮膚透過性および安定性を改善する目的で、有機酸を配合することが好ましい。該有機酸は、実質的に水を含まない常温(20℃)で固体の有機酸であれば特に制約はないが、膏体層に用いられる他の成分との相溶性があり、非ステロイド系鎮痛消炎薬の分解物抑制に効果がある点において、アジピン酸、コハク酸およびリンゴ酸からなる群から選ばれた1種または2種以上を組み合わせて使用されるが、就中アジピン酸を使用することが望ましい。
【0014】
該有機酸の含有量としては、前記鎮痛消炎貼付剤の膏体層を構成する全成分を基準として、0.1~10質量%が好ましく、より好ましくは0.3~5質量%であることが好ましい。該有機酸の含有量が鎮痛消炎貼付剤の膏体層を構成する全成分を基準として、0.1質量%未満では非ステロイド系鎮痛消炎薬の経皮吸収性を改善する効果が低い問題があり、10質量%を超える含有量では、有機酸に由来する皮膚刺激が発生する等の問題があり、好ましくない。
そして、本発明においては、鎮痛消炎貼付剤の製造時に、平滑でスクラッチ等の欠陥が無い塗工表面を容易に達成できるという観点から、アジピン酸を含有する膏体層において、該アジピン酸を、前記膏体層を構成する全成分を基準として、0.1乃至10質量%の量で、好ましくは0.1乃至5質量%の量で、さらに好ましくは0.3乃至5質量%の量で、特に1乃至3質量%の量で配合することが好ましい。
ここで、「実質的に水を含まない」とは、意図的に水を添加することがないことをいい、製造条件及び環境等に由来して不可避的に混入する微量の水が含有されている場合は該当しない。
【0015】
[ゴム系エラストマー]
また、本発明の鎮痛消炎貼付剤の膏体層は、主基剤成分として、物性および品質の制御の容易さ、並びに環境保護の面を考慮してカレンダー法またはホットメルト法で製造可能な、ゴム系エラストマーが用いられる。該ゴム系エラストマーとしては、スチレン-イソプレン-スチレンブロック共重合体と、低分子量ポリイソブチレンと液状ゴムとを含む混合物を使用できる。
【0016】
前記スチレン-イソプレン-スチレンブロック共重合体は、膏体層に粘着性を付与するとともに、各成分を膏体層中に保持し、他成分を溶解または分散させる役割を担うものである。スチレン-イソプレン-スチレンブロック共重合体の含有量は、特に制限はないが、膏体層を構成する全成分を基準として、好ましくは10~30質量%、より好ましくは15~25質量%である。
なお、本発明で使用するスチレン-イソプレン-スチレンブロック共重合体(SIS)は、該SIS共重合体に含まれるスチレン-イソプレンジブロック共重合体(SI)成分の含有量、すなわち、スチレン-イソプレンのジブロック含有率が10~20%である低ジブロック率共重合体と、同70~80%である高ジブロック率共重合体とを組み合わせることにより、より効率的に多成分を保持、溶解または分散することができる。スチレン-イソプレン-スチレンブロック共重合体において、低ジブロック率共重合体と高ジブロック率共重合体の重合比率は、0/100~50/50であることが好ましく、より好ましくは10/90~50/50、さらに好ましくは15/85~50/50である。
本発明においては市販のスチレン-イソプレン-スチレンブロック共重合体を使用し得、たとえば高ジブロック率共重合体の具体例としては、クインタック3520(日本ゼオン(株))、低ジブロック率共重合体の具体例としてはJSR SIS 5002(JSR(株))を挙げることができる。
【0017】
本発明においては、特に、前記ゴム系エラストマーとしては、スチレン-イソプレン-スチレンブロック共重合体と、低分子量ポリイソブチレンとを用いるのが、鎮痛消炎貼付剤の皮膚刺激が少なくなるので好ましい。
前記低分子量ポリイソブチレンは、粘度平均分子量:Mvが10,000~100,000であることが好ましく、より好ましくは30,000~100,000、さらに好ましくは50,000~100,000である。なお、ここで用いる粘度平均分子量は、フローリー法によるものである。
【0018】
前記低分子量ポリイソブチレンの含有量は、膏体層を構成する全成分を基準として1~8質量%、より好ましくは3~8質量%である。
低分子量ポリイソブチレンの配合量が、上記の数値範囲を下回ると、粘着力が弱くなりすぎて使用時に脱落が起こる虞があり、また、上記数値範囲を上回ると粘着力が強くなりすぎて剥離時に痛みを生ずる虞があり、皮膚刺激が大きくなるため好ましくない。
本発明においては市販のポリイソブチレンを使用し得、たとえば、低分子量ポリイソブチレンとしては、オパノールB-10,同B-12、同B-15、同B-15SFN(以上、BASFジャパン(株))、ビスタネックスLM-MS、同LM-MH、同LM-H(以上、エクソン社)、ハイモール4H、同5H、同5.5H、同6H、テトラックス3T、同4T、同5T、同6T(以上、JX日鉱日石エネルギー(株))等を挙げることができる。
【0019】
前記液状ゴムは、基剤成分中のスチレン-イソプレン-スチレンブロック共重合体と低分子量ポリイソブチレンとの相溶性を改善するものである。液状ゴムとしては、例えば、ポリブテン、ハイシスポリイソプレンゴム、液状ポリイソプレンゴム等が挙げられる。これら液状ゴムの中でもハイシスポリイソプレンゴムまたは液状ポリイソプレンゴムが好ましい。また、これらの液状ゴムは1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。これら液状ゴムの含有量は、添加される場合には、膏体層を構成する全成分を基準として0.1~5質量%、より好ましくは0.3~3質量%である。
【0020】
[その他の基剤成分]
本発明の鎮痛消炎貼付剤は、基剤成分としてさらに粘着付与樹脂、可塑剤を含有することができる。
前記粘着付与樹脂としては、特に制限はないが、ロジン系樹脂、テルペン系樹脂、クマロン-インデン樹脂、石油系樹脂、フェノール系樹脂等が挙げられる。これら粘着付与樹脂の中でもロジン系樹脂、テルペン系樹脂、石油系樹脂が好ましく、特にロジン系樹脂が好ましい。また、これらの粘着付与樹脂は1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。これら粘着付与樹脂の含有量は、特に制限はないが、膏体層を構成する全成分を基準として、好ましくは5~35質量%、より好ましくは10~25質量%である。
粘着付与樹脂の含有量が少なすぎると、長時間の貼付を可能とする十分な粘着力が得られず、他方、粘着付与樹脂の含有量が多すぎると、剥離時の痛みが発生し、皮膚のかぶれが発生し易くなる傾向にある。
【0021】
前記可塑剤としては、薬物の吸収促進剤としての作用ではなく、膏体層の軟化作用を担う役割を果たすものである。可塑剤としては、特に限定されず、例えば、石油系オイル(パラフィン系プロセスオイル、ナフテン系プロセスオイル、芳香族系プロセスオイル等)、スクワラン、スクワレン、植物系オイル、シリコーンオイル、液状脂肪酸エステル等が挙げられる。これら可塑剤の中でも流動パラフィンが好ましい。また、これらの可塑剤は1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。これら可塑剤の含有量は、特に制限はないが、膏体層を構成する全成分を基準として、好ましくは10~60質量%、より好ましくは30~50質量%である。
【0022】
また、本発明の鎮痛消炎貼付剤は、基剤成分としてさらに酸化防止剤を含んでいてもよい。前記酸化防止剤としては、トコフェロールおよびこれらのエステル誘導体、アスコルビン酸、ジブチルヒドロキシトルエン、ジブチルヒドロキシアニソール、亜硫酸ナトリウム、1,2,3-ベンゾトリアゾール、没食子酸n-プロピル、2-メルカプトイミダゾール等が挙げられる。これら酸化防止剤を使用する場合の含有量は、特に制限はないが、膏体層を構成する全成分を基準として、好ましくは0.1~5質量%、より好ましくは0.3~3質量%である。
【0023】
さらに本発明の鎮痛消炎貼付剤は、基剤成分として温感刺激成分を含んでいてもよい。前記温感刺激成分としては、例えば、ノニル酸ワニリルアミドおよびカプサイシン等が挙げられる。これら温感刺激成分を使用する場合の含有量は、特に制限はないが、膏体層を構成する全成分を基準として、0.001~0.05質量%が好ましい。
【0024】
上記成分のほか、必要に応じて充填剤、安定化剤、吸収促進剤等を適宜配合することができる。
充填剤としては、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、ケイ酸塩(例えば、ケイ酸アルミニウム、ケイ酸マグネシウム等)、ケイ酸、硫酸バリウム、硫酸カルシウム、亜鉛酸カルシウム、酸化亜鉛、酸化チタン等が好ましい。
吸収促進剤としては、d-リモネン等のテルペン油、グリセリンモノラウレート、グリセリンモノオレート、セバシン酸ジエチル等の脂肪酸エステル、エイゾン、ピロチオデカン、オレイン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸等の脂肪酸またはその誘導体等が挙げられる。
【0025】
本発明の鎮痛消炎貼付剤に用いる支持体は、ポリエステル編布であり、ポリエステル編布は、フィルムとのラミネート複合体等の柔軟性を有する支持体であってもよい。ポリエステル編布の支持体は、皮膚に密着することができ、かつ、皮膚の動きに追随することができる程度の柔軟な材質が好ましい。ポリエステル編布の支持体の材質としては、例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート等のポリエステルを必須成分とするものが挙げられる。支持体としては、ポリエチレンテレフタレート編布が好ましく、特に、ポリエチレンテレフタレート編布の丸編が好ましい。
【0026】
本発明の鎮痛消炎貼付剤における支持体の厚さは、600~800μmであり、600~750μmが好ましく、600~700μmがさらに好ましい。支持体の厚さが、このような範囲内であることにより、本発明の鎮痛消炎貼付剤の貼付け時の作業性(貼り易さ)が優れ、貼付時の違和感もないものとなる。
【0027】
本発明の鎮痛消炎貼付剤における支持体の20%伸張時張力[横]は、1.5N以上3.5N以下であり、2.0N以上3.0N以下が好ましい。支持体の20%伸張時張力[横]が、このような範囲内であることにより、本発明の鎮痛消炎貼付剤の貼付け時の作業性(貼り易さ)が優れ、貼付時の違和感もないものとなる。ここで横とは長辺方向を意味し、以下に記載する伸張時張力[縦]の縦とは短辺方向を指す。ただし、剥離ライナーにスリットが入っている場合、スリットの入っている方向を縦方向とする。
【0028】
本発明の鎮痛消炎貼付剤における支持体の20%伸張時張力[縦]は、3.0N以上5.0N以下が好ましく、3.0N以上4.0N以下がさらに好ましい。また、支持体の50%伸張時張力[横]は、4.0N以上9.0N以下が好ましく、5.0N以上8.0N以下がより好ましく、5.5N以上7.5N以下がさらに好ましい。支持体の50%伸張時張力[縦]は、10.0N以上20.0N以下が好ましく、12.0N以上19.0N以下がより好ましく、14.0N以上18.0N以下がさらに好ましい。支持体の20%伸張時張力[縦]、50%伸張時張力[横]および50%伸張時張力[縦]が、このような範囲内であることにより、本発明の鎮痛消炎貼付剤の貼付け時の作業性(貼り易さ)がより優れ、貼付時の違和感もないものとなる。
【0029】
ここで、前記した伸張時張力は、JIS B7721に規定する引張試験機を用いて測定した値である。
【0030】
本発明の鎮痛消炎貼付剤における支持体の剛軟度[横]は、8mm以上14mm以下が好ましく、10mm以上14mm以下がより好ましく、11mm以上13mm以下がさらに好ましい。また、支持体の剛軟度[縦]は、15mm以上32mm以下が好ましく、20mm以上32mm以下がさらに好ましい。支持体の剛軟度が、このような範囲内であることにより、本発明の鎮痛消炎貼付剤の貼付け時の作業性(貼り易さ)がより優れたものとなり、貼付時の違和感もよりないものとなる。ここで、伸張時張力の場合と同様に、剛軟度[横]の横とは長辺方向を意味し、剛軟度[縦]の縦とは短辺方向を指す。ただし、剥離ライナーにスリットが入っている場合、スリットの入っている方向を縦方向とする。剛軟度は、JIS L1096 8.21.4 D法(ハートループ法)に準じて測定した値である。
【0031】
本発明の鎮痛消炎貼付剤における支持体であるポリエステル編布の糸の太さは、60デニール以上80デニール以下が好ましく、70デニール以上80デニール以下がさらに好ましい。また、ポリエステル編布の目付は、140g/m2以上210g/m2以下が好ましく、140g/m2以上160g/m2以下がさらに好ましい。このような範囲内であることにより、本発明の鎮痛消炎貼付剤の貼付け時の作業性(貼り易さ)がより優れたものとなり、貼付時の違和感もよりないものとなる。
【0032】
また、本発明の鎮痛消炎貼付剤に用いる剥離ライナーとしては、薬物が吸収・吸着しにくい材質であることが好ましく、たとえばシリコーン処理したポリエステルフィルム、シリコーン処理したポリエチレンラミネート上質紙、シリコーン処理したグラシン紙などが挙げられる。前記剥離ライナーは縦方向にスリットが1本以上入っていることが好ましく、より好ましくはスリットが2本入っていることが好ましい。
たとえば、
図1に示すように、本発明の鎮痛消炎貼付剤における剥離ライナーの中央部分に縦方向のスリットが2本入っているのが好ましい。この場合には、2本のスリットの間の剥離ライナーの部分を最初に剥がして貼付し、それから両サイドの剥離ライナーの部分を剥がして貼付することにより、効率良く貼り付けることができる。スリットの形状は直線に限定されず、曲線でもよく、
図1に示すように波状でもよい。スリットの間隔は特に限定されないが、10mm~30mmが好ましく、さらには20mm~25mmが好ましい。
【0033】
本発明の鎮痛消炎貼付剤は、一般的な鎮痛消炎貼付剤の製造方法であるカレンダー法やホットメルト法などにより作製することができるが、製造方法としてはこれらに限定されるものではない。
【実施例0034】
以下に実施例を挙げて、本発明をさらに詳しく説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。
【0035】
[実施例1]
先ずは、以下に示す配合組成の膏体を製造した。すなわち、以下に示す具体的な配合組成で、スチレン-イソプレン-スチレンブロック共重合体、ポリイソブチレン、流動パラフィン及び水添ロジンエステル樹脂を加熱撹拌して混合した後、アジピン酸、L-メントール及びロキソプロフェンナトリウムを加え、加熱混合して均一な溶融物(粘着剤組成物)として、膏体を得た。
次いで、この溶融物を、シリコーン処理した剥離ライナー(ポリエステルフィルム 厚さ75μm)上に、10μmの厚さに展延して、膏体層を形成した。
この膏体層の上に、支持体として、以下に示す特性を有する基材のポリエステル編布をラミネートした。これを縦7cm×10cmに裁断し、
図1に示すように縦方向に2本のスリットを剥離ライナーに入れ、本発明の鎮痛消炎貼付剤のサンプルを作製した。
【0036】
〈膏体の配合組成〉
・ロキソプロフェンナトリウム 8.1質量%
・スチレン-イソプレン-スチレンブロック共重合体 4.3質量%
商品名:SIS 5002(ジブロック率:15%、JSR(株))
・スチレン-イソプレン-スチレンブロック共重合体 17.1質量%
商品名:Quintac 3520(ジブロック率:78%、日本ゼオン(株))
・ポリイソブチレン 6.0質量%
商品名:オパノールB15SFN(BASFジャパン(株))
(粘度平均分子量:85,000)
・水添ロジンエステル樹脂 17.0質量%
商品名:パインクリスタルKE-311(荒川化学工業(株))
・ジブチルヒドロキシトルエン 1.0質量%
商品名:BHT(精工化学(株))
・流動パラフィン 43.5質量%
商品名:ハイコールM-352、(カネダ(株))
・アジピン酸 1.4質量%
商品名:アジピン酸(和光純薬工業(株))
・L-メントール 3.0質量%
〔商品名:L-メントール、小城製薬(株)〕
(以上の質量%はすべて、膏体層を構成する全成分を基準とする質量%である)
【0037】
<支持体の基材の特性>
基材材質:ポリエチレンテレフタレート(PET)編布(丸編)
糸の太さ:75デニール
基材厚さ:600μm
基材目付:140g/m2
20%伸張時張力[縦]:3.4N
20%伸張時張力[横]:2.2N
50%伸張時張力[縦]:14.4N
50%伸張時張力[横]:5.7N
剛軟度[縦]:21.3mm
剛軟度[横]:10.7mm
【0038】
[実施例2]
以下に示した基材特性を有する支持体を用いる以外は、実施例1と同様の方法により、本発明の鎮痛消炎貼付剤のサンプルを作製した。
【0039】
<支持体の基材特性>
基材材質:ポリエチレンテレフタレート(PET)編布(丸編)
糸の太さ:75デニール
基材厚さ:650μm
基材目付:150g/m2
20%伸張時張力[縦]:3.7N
20%伸張時張力[横]:2.6N
50%伸張時張力[縦]:15.8N
50%伸張時張力[横]:6.6N
剛軟度[縦]:26.5mm
剛軟度[横]:12.0mm
【0040】
[実施例3]
以下に示した基材特性を有する支持体を用いる以外は、実施例1と同様の方法により、本発明の鎮痛消炎貼付剤のサンプルを作製した。
【0041】
<支持体の基材の特性>
基材材質:ポリエチレンテレフタレート(PET)編布(丸編)
糸の太さ:75デニール
基材厚さ:700μm
基材目付:160g/m2
20%伸張時張力[縦]:4.0N
20%伸張時張力[横]:3.0N
50%伸張時張力[縦]:17.2N
50%伸張時張力[横]:7.5N
剛軟度[縦]:31.7mm
剛軟度[横]:13.3mm
【0042】
[比較例1]
以下に示した基材特性を有する支持体を用いる以外は、実施例1と同様の方法により、鎮痛消炎貼付剤のサンプルを作製した。
【0043】
<支持体の基材の特性>
基材材質:ポリエチレンテレフタレート(PET)編布(丸編)
糸の太さ:50デニール
基材厚さ:550μm
基材目付:107g/m2
20%伸張時張力[縦]:3.7N
20%伸張時張力[横]:1.4N
50%伸張時張力[縦]:11.9N
50%伸張時張力[横]:3.2N
剛軟度[縦]:25.0mm
剛軟度[横]:15.0mm
【0044】
[比較例2]
以下に示した基材特性を有する支持体を用いる以外は、実施例1と同様の方法により、鎮痛消炎貼付剤のサンプルを作製した。
【0045】
<支持体の基材の特性>
基材材質:ポリエチレンテレフタレート(PET)編布(丸編)
糸の太さ:75デニール
基材厚さ:840μm
基材目付:210g/m2
20%伸張時張力[縦]:3.0N
20%伸張時張力[横]:6.5N
50%伸張時張力[縦]:15.0N
50%伸張時張力[横]:20.0N
剛軟度[縦]:31.0mm
剛軟度[横]:28.0mm
【0046】
[比較例3]
以下に示した基材特性を有する支持体を用いる以外は、実施例1と同様の方法により、鎮痛消炎貼付剤のサンプルを作製した。
【0047】
<支持体の基材の特性>
基材材質:ポリエチレンテレフタレート(PET)編布(丸編)
糸の太さ:30デニール
基材厚さ:460μm
基材目付:90g/m2
20%伸張時張力[縦]:2.7N
20%伸張時張力[横]:1.9N
50%伸張時張力[縦]:15.8N
50%伸張時張力[横]:6.6N
剛軟度[縦]:8.5mm
剛軟度[横]:7.1mm
【0048】
1.基材特性の測定方法
実施例1~3及び比較例1~3に記載した各基材特性は以下の方法により測定した。
<伸張時張力の測定方法>
JIS B7721に規定する引張試験機を用いて、以下の条件で、20%伸張時張力と50%伸張時張力を測定した。
試験片の幅:50mm
つかみ間隔:200mm
引張速度:300mm/分
試験回数:5回(5回の平均値をとった。)
【0049】
<剛軟度の測定方法>
JIS L1096 8.21.4 D法(ハートループ法)に準じて、以下の条件で、測定した。
試験回数:5回(5回の平均値をとった。)
【0050】
2.鎮痛消炎貼付剤の性能評価
実施例1~3及び比較例1~3で得られた鎮痛消炎貼付剤のサンプルの実用性能(貼り易さ、貼付時の違和感、皮膚刺激)を評価した。
すなわち、被験者24名の肩に、7cm×10cmの寸法に調製した各鎮痛消炎貼付剤サンプルを約6時間貼付し、貼り易さ、貼付時の違和感、皮膚刺激について、下記の基準(4段階)で評価した。
【0051】
(貼り易さ)
A:被験者の75%以上がシワなくきれいに貼れた。
B:被験者の75%未満50%以上がシワなくきれいに貼れた。
C:被験者の50%未満30%以上がシワなくきれいに貼れた。
D:被験者の30%未満がシワなくきれいに貼れた。
【0052】
(貼付時の違和感)
A:被験者の50%以上が全くないと回答した。
B:被験者の50%未満40%以上が全くないと回答した。
C:被験者の40%未満30%以上が全くないと回答した。
D:被験者の30%未満が全くないと回答した。
【0053】
(皮膚刺激)
A:被験者の95%以上が剥離1時間後の発赤が全くない。
B:被験者の95%未満80%以上が剥離1時間後の発赤が全くない。
C:被験者の80%未満50%以上が剥離1時間後の発赤が全くない。
D:被験者の50%未満が剥離1時間後の発赤が全くない。
【0054】
3.実用性能評価の結果
得られた実用性能評価の結果を表1に示す。また、表1には、各鎮痛消炎貼付剤サンプルで用いた支持体の基材特性も併せて示す。
【0055】
【0056】
表1に示した結果から明らかなとおり、支持体がポリエチレンテレフタレート(PET)編布(丸編)からなり、支持体の厚さが600~800μmであり、且つその20%伸張時張力[横]が1.5N以上3.5N以下である実施例1~実施例3の鎮痛消炎貼付剤サンプルは、すべての項目でA評価の良好な結果を得、貼付時の作業性(貼り易さ)に優れ、貼付時の違和感もなく、さらには、皮膚刺激もないことが明らかになった。
【0057】
これに対し、支持体の厚さが550μmで、20%伸張時張力[横]が1.4Nである比較例1は貼り易さがC評価となった。支持体の厚さが840μmで、20%伸張時張力[横]が6.5Nである比較例2は貼付時の違和感がC評価となった。支持体の厚さが460μmで、20%伸張時張力[横]が1.9Nである比較例3は貼り易さがC評価となった。
【0058】
皮膚刺激は実施例1~3、比較例1~3ともにA評価となっていることから、膏体層の基剤成分としてゴム系エラストマーが、スチレン-イソプレン-スチレンブロック共重合体と、粘度平均分子量が10,000~100,000である低分子量ポリイソブチレンとを含む鎮痛消炎貼付剤は、支持体によらず皮膚刺激が抑えられる良好な結果となった。
以上に詳細に説明したとおり、本発明によれば、支持体、主基剤成分としてゴム系エラストマーと有効成分として非ステロイド系鎮痛消炎薬とを含む膏体層、および剥離ライナーからなる鎮痛消炎貼付剤において、支持体の厚さおよび伸張時張力を一定の範囲内にすることにより、貼付時の作業性(貼り易さ)に優れ、貼付時に違和感なく貼ることができる鎮痛消炎貼付剤が得られる。また、ゴム系エラストマーとして、スチレン-イソプレン-スチレンブロック共重合体と、低分子量ポリイソブチレンとを含む混合物を膏体層として用いることにより、さらには、皮膚刺激が少ない優れた鎮痛消炎貼付剤を得ることができる。