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  • 特開-構造物の切断装置及び切断方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022050977
(43)【公開日】2022-03-31
(54)【発明の名称】構造物の切断装置及び切断方法
(51)【国際特許分類】
   B26F 3/06 20060101AFI20220324BHJP
   E04G 23/08 20060101ALI20220324BHJP
【FI】
B26F3/06
E04G23/08 H
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020157195
(22)【出願日】2020-09-18
(71)【出願人】
【識別番号】000166432
【氏名又は名称】戸田建設株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】000150981
【氏名又は名称】日酸TANAKA株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】000122689
【氏名又は名称】岡谷酸素株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001014
【氏名又は名称】特許業務法人東京アルパ特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】石丸 達朗
(72)【発明者】
【氏名】山崎 輝士
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 信也
(72)【発明者】
【氏名】下坂 賢二
(72)【発明者】
【氏名】成田 修英
(72)【発明者】
【氏名】井戸 康浩
(72)【発明者】
【氏名】右田 周平
(72)【発明者】
【氏名】小阪 宏之
(72)【発明者】
【氏名】馬場 朝之
(72)【発明者】
【氏名】田中 高広
(72)【発明者】
【氏名】工藤 真温
(72)【発明者】
【氏名】武田 隆志
(72)【発明者】
【氏名】狩野 智也
(72)【発明者】
【氏名】前田 健作
(72)【発明者】
【氏名】石井 幸二
(72)【発明者】
【氏名】松田 晴夫
(72)【発明者】
【氏名】鈴置 宗夫
(72)【発明者】
【氏名】相場 一憲
(72)【発明者】
【氏名】小林 英亮
【テーマコード(参考)】
2E176
3C060
【Fターム(参考)】
2E176AA01
2E176DD52
3C060AA14
3C060CF14
(57)【要約】
【課題】鉄筋コンクリート造の大断面躯体等を効率的に解体するための、燃料ガスを用いた構造物の切断装置を提供する。
【解決手段】構造物の切断装置11は、構造物を切断するための手で把持して使用可能な切断トーチ12と、切断トーチに接続され切断トーチの火炎口12a側に燃料ガス、酸素、パウダー、及び冷却水を供給するための供給ホース13とを備えたことである。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
構造物を切断するための手で把持して使用可能な切断トーチと、
該切断トーチに接続され該切断トーチの火炎口側に燃料ガス、酸素、パウダー、及び冷却水を供給するための供給ホースと、を少なくとも備えたこと
を特徴とする構造物の切断装置。
【請求項2】
前記切断トーチには、火口受けが取り付けられていると共に、燃料ガス供給管、酸素供給管、パウダー供給管、及び冷却水供給管が設けられていること
を特徴とする請求項1に記載の構造物の切断装置。
【請求項3】
請求項1の切断装置を使用した構造物の切断方法であって、
前記切断トーチを手で把持した状態で使用し、
前記構造物の外周部近傍に位置する鋼材の一部又は全部を切断してから、
前記構造物を解体手段で解体すること
を特徴とする構造物の切断方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、鉄筋コンクリート造、鉄骨鉄筋コンクリート造、及びコンクリート充填鋼管造などの大断面躯体等を効率的に解体するための、燃料ガスを用いた構造物の切断装置及び切断方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
この種の燃料ガスを用いた構造物の切断装置及び切断方法としては、出願人は次のような構成の切断装置を提案している。この切断装置は、非金属構造物に対して連続的に移動可能な切断トーチと、切断トーチを連続的に移動させるためのハンドリング装置と、ハンドリング装置を設置する移動台車と、切断トーチに燃料ガス等を供給する供給ホースと、切断トーチに供給する燃料ガス等を収納する調整器とを備えている(特許文献1参照)。
【0003】
また、出願人が提案している切断方法は、切断トーチの火炎口を非金属構造物に対して連続的に移動させて、火炎口の火炎によって非金属構造物に裂開部を形成し、さらに裂開部に対して火炎口を連続的に移動させると共に、徐々に挿入して裂開部を深化させて非金属構造物を切断する方法であり、マスコン等の大型な構造物を切断できる(特許文献1参照)。
【0004】
一方、従来のコンクリート構造物の切断装置としては、特開昭49-71731号公報に開示されたコンクリート構造物を溶断する方法および装置が知られている(特許文献2、図4参照)。
【0005】
このコンクリート構造物の切断装置は、ボンベや金属粉末供給装置を収容し車輪で走行するケーシングと、ケーシングに連設され作業員により操作するフォークリフトと、フォークリフトに設けられるノズルフォルダーと、ノズルフォルダーの先端部に設けられる火炎ノズルとを備えている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2020-138303号公報
【特許文献2】特開昭49-71731号公報(図4参照)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
これら従来の切断装置においては、ハンドリング装置や移動台車、あるいは、ケーシングやフォークリフトが必要であり、いずれも装置が大掛かりになって重量が嵩み、手で把持して操作できる機動的な装置ではないという問題点を有している。
【0008】
また、従来の切断方法においては、切断トーチで非金属構造物に裂開部を形成し、さらに裂開部を深化させて切断するものであり、このため、非金属構造物を全て切断すると、解体に時間とコストが掛かり、効率的ではないという問題点を有している。
【0009】
従って、従来の切断装置においては、手で把持して操作できる軽量で機動的な構造にすることと、非金属構造物を効率的に切断、解体することとに解決しなければならない課題を有している。
【課題を解決するための手段】
【0010】
前記従来例の課題を解決するための本発明の要旨は、構造物を切断するための手で把持して使用可能な切断トーチと、該切断トーチに接続され該切断トーチの火炎口側に燃料ガス、酸素、パウダー、及び冷却水を供給するための供給ホースと、を少なくとも備えたことである。
【0011】
また、前記切断トーチには、火口受けが取り付けられていると共に、燃料ガス供給管、酸素供給管、パウダー供給管、及び冷却水供給管が設けられていること、;
を含むものである。
【0012】
前記従来例の課題を解決するための本発明の要旨は、請求項1の切断装置を使用した構造物の切断方法であって、前記切断トーチを手で把持した状態で使用し、前記構造物の外周部近傍に位置する鋼材の一部又は全部を切断してから、前記構造物を解体手段で解体することである。
【発明の効果】
【0013】
本発明に係る構造物の切断装置によれば、ハンドリング装置や移動台車等の大掛かりな装置が必要なく、軽量で機動的な構造であり、手で把持して簡易に操作できるという優れた効果を奏する。
【0014】
切断トーチには、火口受けが取り付けられていると共に、燃料ガス供給管、酸素供給管、パウダー供給管、及び冷却水供給管が設けられていることによって、コンパクトな構造であるだけでなく、切断トーチを冷却するための冷却水供給管が設けられているので、切断作業時に切断トーチを冷却することができるという優れた効果を奏する。
【0015】
本発明に係る構造物の切断方法によれば、切断トーチを手で把持した状態で使用し、構造物の外周部近傍に位置する鋼材の一部又は全部を切削してから、構造物を解体手段で解体するので、解体時間が短縮され、作業コストを抑えられ、効率的に切断、解体を行うことができるという優れた効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】本発明に係る構造物の切断装置の正面図である。
図2】(a)は切断トーチの先端部近傍を分離して説明する正面図である。 (b)は(a)のA-A線断面図である。
図3】(c)は図2(a)の切断トーチを長手方向を軸にして90度回転させた正面図である。 (d)は(c)のB-B線断面図である。
図4】火口受けの上半を破断して示す正面図である。
図5】切断トーチを把持してコンクリート構造物を切断する現場の斜視図である。
図6】破砕時間比較実験に使用した基準梁の説明図である。
図7】基準梁において梁全断面切断の場合の梁の説明図である。
図8】基準梁において梁鉄筋切断の場合の梁の説明図である。
図9】基準梁部分解体所要時間をグラフにして示す説明図である。
図10】作業員が基準梁を切断する作業手順の一例を示す説明図である。
図11】作業員が基準梁を切断する作業手順の一例を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
次に、本発明の実施の形態について図面を参照しながら説明する。まず、図1において、符号11は構造物の切断装置を示し、この切断装置11は、構造物を切断するための手で把持して使用可能な切断トーチ12と、切断トーチ12に接続され該切断トーチ12の火炎口12a側に燃料ガス、酸素、パウダー、及び冷却水を供給するための供給ホース13とから構成される。
【0018】
切断対象物の構造物は、具体的には鉄筋コンクリート造、鉄骨鉄筋コンクリート造、及びコンクリート充填鋼管造などの大断面躯体等であり、例えば建築物の梁である。また、それら以外にも様々な大形又は小形の構造物が含まれる。
【0019】
切断トーチ12の全長、外径寸法、あるいは重量は、作業員が手で把持して機動的に作業が行える程度の全長、外径寸法、及び重量である。
【0020】
切断トーチ12には、火口受け14が取り付けられていると共に、燃料ガス供給管15、酸素供給管16、パウダー供給管17、及び冷却水供給管18が設けられている(図2(a)(b)及び図3(c)(d)参照)。
酸素供給管16は、切断酸素16aと、余熱酸素16bとを備え、冷却水供給管18は、冷却水OUT18aと、冷却水IN18bとを備えている。
【0021】
火口受け14は、図3(c)に示すように、切断トーチ12の先端部近傍に取り付けられており、また、図4に示すように、外部火口19と、中間外部20と、内管21と、内部芯棒22と、当たりブランク23とを有する。
【0022】
このように切断トーチ12は、コンパクトな構造で、切断装置11を小形で軽量に形成できるので、機動的であり、手で把持して簡易に操作することができる。
また、切断トーチ12を冷却するための冷却水供給管18が設けられていることによって、切断作業時に切断トーチ12を冷却することができる。
【0023】
供給ホース13は、別途に備えている燃料ガス、酸素、パウダー、及び冷却水をそれぞれ切断トーチ12に供給するためのゴム製又は樹脂製等のホースである。
【0024】
以上のように構成される構造物の切断装置11は、手で把持して使用することが可能であり、従来例で述べたハンドリング装置や移動台車等の大掛かりな装置が必要なく、軽量で機動的な構造である。
従って、図5に示すように、作業員24が切断トーチ12を手で把持した状態で操作して、コンクリート構造物25を切断することができる。
【0025】
次に、構造物の切断装置11を使用した構造物の切断方法について説明する。まず、切断トーチ12を手で把持した状態で使用し、構造物の外周部近傍に位置する鉄筋31あるいは主筋、腹筋を切断してから(図10及び図11参照)、構造物を圧砕等の所定の解体手段で解体する。この場合、解体時間が短縮され、作業コストを抑えられ、効率的に切断、解体を行うことができることとなる。
【0026】
次に、破砕時間比較実験に付いて説明する。図6は、破砕時間比較実験に使用した基準梁26を示し、基準梁26の規格は次の通りである。
FG2(端部)、B×D:950×1970、上主筋:6-D25、下主筋:12-D25、STR:4-D13@200、腹筋:8-D13、幅止め筋:D13@1000
【0027】
図7は、基準梁26において梁全断面切断の梁27を示し、着色した部分が切断部分29を示す。また、図8は、基準梁26において梁鉄筋切断の梁28を示し、着色した部分が切断部分30を示す。
【0028】
図9は、基準梁26と、梁全断面切断の梁27と、梁鉄筋切断の梁28とをそれぞれ解体した場合の「基準梁部分解体所要時間」をグラフにして示した説明図であり、梁鉄筋切断の梁28(図8参照)は、基準梁26(図6参照)と比較して、35%程度解体時間が短縮されることが示される。
【0029】
図10及び図11は、具体的に作業員24が基準梁26を切断する作業手順の一例を示しており、まず、作業員24が基準梁26の側部に立って、上部の外周部近傍に位置する鉄筋31を切断し(図10、矢印32参照)、次に、作業員24が基準梁26の上部に立って、側部の外周部近傍に位置する鉄筋31を切断し(図11、矢印33参照)、更に、反対側の側部の外周部近傍に位置する鉄筋31を切断する(図11、矢印34参照)。
その後に、圧砕等の所定の解体手段で解体することにより、図9の「基準梁部分解体所要時間」をグラフにして示した説明図の通り、解体時間が短縮され、作業コストを抑えられ、効率的に切断、解体を行うことができる。
【符号の説明】
【0030】
11 構造物の切断装置
12 切断トーチ
12a火炎口
13 供給ホース
14 火口受け
15 燃料ガス供給管
16 酸素供給管
17 パウダー供給管
18 冷却水供給管
19 外部火口
20 中間外部
21 内管
22 内部芯棒
23 当たりブランク
24 作業員
25 コンクリート構造物
26 基準梁
27 梁全断面切断の場合の梁
28 梁鉄筋切断の場合の梁
29、30 切断部分
31 外周部近傍に位置する鉄筋
32、33、34 鉄筋の切断位置を示す矢印
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11