(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022050978
(43)【公開日】2022-03-31
(54)【発明の名称】軌道面測定機
(51)【国際特許分類】
G01B 5/02 20060101AFI20220324BHJP
B24B 49/02 20060101ALI20220324BHJP
【FI】
G01B5/02
B24B49/02 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】2
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020157197
(22)【出願日】2020-09-18
(71)【出願人】
【識別番号】000005197
【氏名又は名称】株式会社不二越
(74)【代理人】
【識別番号】100120400
【弁理士】
【氏名又は名称】飛田 高介
(74)【代理人】
【識別番号】100124110
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 大介
(72)【発明者】
【氏名】阿閉 克彦
(72)【発明者】
【氏名】坂下 和幸
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 仁
(72)【発明者】
【氏名】嘉戸 成介
(72)【発明者】
【氏名】境 信之
【テーマコード(参考)】
2F062
3C034
【Fターム(参考)】
2F062AA26
2F062AA38
2F062BB03
2F062BB09
2F062BB11
2F062BB14
2F062BC38
2F062BC56
2F062CC02
2F062CC22
2F062CC23
2F062CC27
2F062DD23
2F062EE07
2F062EE63
2F062GG51
2F062HH13
2F062HH22
2F062HH33
2F062NN03
3C034AA13
3C034CA03
3C034CA13
3C034DD01
(57)【要約】
【課題】ワークの両側に形成された溝の距離を精度よく測定できる軌道面測定機を提供する。
【解決手段】軌道面測定機110は、ワーク102の両側面156、158に形成された転動体の軌道面となる溝160、162の距離を測定する測定機であって、測定子136、138を支持してワークの溝に押し当てるアーム132、134と、アームの途中に配置された平バネ168、170、172、174とを備え、平バネは、ワークの溝の幅方向には弾性変形可能であり、溝の深さ方向には弾性変形しない異方性を有する。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ワークの両側に形成された転動体の軌道面となる溝の距離を測定する軌道面測定機であって、
測定子を支持して前記ワークの溝に押し当てるアームと、
前記アームの途中に配置された弾性部とを備え、
前記弾性部は、前記ワークの溝の幅方向には弾性変形可能であり、該溝の深さ方向には弾性変形しない異方性を有することを特徴とする軌道面測定機。
【請求項2】
前記ワークの溝は、ゴシックアーチ形状またはV溝形状となっていることを特徴とする請求項1に記載の軌道面測定機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ワークの両側に形成された転動体の軌道面となる溝の距離を測定する軌道面測定機に関する。
【背景技術】
【0002】
被加工物であるワークを砥石などで研削加工して、ワークにレールの軌道面などを形成する研磨機が知られている(例えば特許文献1)。特許文献1には、ワークを研削することでリニア案内レールを製造する複合研磨機が開示されている。
【0003】
この複合研磨機は、ワークが載置されるワークテーブルと、門型コラムと、一対の総形砥石車を有する第一研削手段と、1個の総形砥石車を有する第二研削手段とを備える。ワークテーブルは、長尺状ベース上に設けられていて、駆動手段によって長尺状ベース上で左右方向に往復移動可能なテーブルである。門型コラムは、長尺状ベースを前後に跨いで立架した一対のコラムと、一対のコラム間に水平方向に設けられた梁とを有する。
【0004】
第一研削手段の一対の総形砥石車は、門型コラムの左側前正面に設けたクロスレールに対して左右方向移動可能におよび上下方向昇降可能に設けられた砥石軸に軸支されている。第二研削手段の1個の総形砥石車は、門型コラムの背後面に設けたクロスレールに対して前後方向移動可能におよび上下方向昇降可能に設けた砥石軸に軸支されている。
【0005】
この複合研磨機では、ワークテーブルにワークを載置して、ワークテーブルを移動させながら、第一研削手段の一対の総形砥石車によってワークの両側を研削加工し、同時に、第二研削手段の1個の総形砥石車によってワークの頭頂部を研削加工している。そして特許文献1では、ワークの頭頂部と両側部を同時に研削加工できるので、ワークの研削加工時間を短縮できる、としている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかし特許文献1の複合研磨機は、ワークの研削加工時間を短縮するものに過ぎず、ワークの両側に形成されたレールやブロックの転動体の軌道面となる溝の距離を測定する手法については記載がない。従来は一般的には幅ゲージなどを用いて作業員が手作業で軌道幅(溝の距離)を測定しては、所定の寸法まで研削加工することを繰り返していた。これを自動化(機械化)することを考えたとき、一例として、ワークの両側に形成された溝の距離を自動的に測定する測定機を複合研磨機に単に追加する構成を採用しても、測定機の測定子をワークの溝に押し当てたとき、測定子が溝の中心からずれるなどして、ワークの両側に形成された溝の距離を精度よく測定することは困難である。
【0008】
本発明は、このような課題に鑑み、ワークの両側に形成された溝の距離を精度よく測定できる軌道面測定機を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するために、本発明にかかる軌道面測定機の代表的な構成は、ワークの両側に形成された転動体の軌道面となる溝の距離を測定する軌道面測定機であって、測定子を支持してワークの溝に押し当てるアームと、アームの途中に配置された弾性部とを備え、弾性部は、ワークの溝の幅方向には弾性変形可能であり、溝の深さ方向には弾性変形しない異方性を有することを特徴とする。
【0010】
両側というのは、断面が矩形(長方形)のワークの両側面(両外面)であってもよいし、断面がコの字のワークの両内面であってもよい。上記構成では、測定子を支持するアームの途中に弾性部を配置している。そして弾性部は、ワークの溝の幅方向に弾性変形可能であり、溝の深さ方向には弾性変形しないという異方性を有している。このため、アームが測定子をワークの溝に押し当てたとき、測定子が溝の中心からずれて溝に接触しても、測定子は、弾性部の弾性変形によって溝の幅方向に移動できる。このとき、測定子は、ワークの溝の接触点から求心力を受けて、溝の中心に確実に位置することができる。
【0011】
したがって上記構成の軌道面測定機によれば、測定子がワークの溝の接触点から求心力を受けて溝の中心に倣うため、ワークの両側に形成された溝の距離を精度よく測定できる。
【0012】
なおアームは、ワークの両側に形成された溝に測定子をそれぞれ押し当てるものであるから、ワークのそれぞれの溝に対向するように測定子を支持する一対のものである。つまり上記構成では、このような一対のアームの途中に上記の異方性を有する弾性部を配置している。このため、ワークと測定子の相対的な位置がピッチング(X軸回転)により溝の幅方向(上下)にずれても、弾性部の弾性変形により測定誤差を吸収できる。またワークと測定子の相対的な位置がローリング(Z軸回転)により溝の深さ方向にずれていても、一対のアームが片方ずつ独立して測定子を溝に押し当てる(移動する)ことで測定誤差を吸収できる。なおワークと測定子の相対的な位置がヨーイング(U軸回転)によりワークの上下方向を軸とする軸周りの方向にずれても、測定に対する影響が極めて小さいので無視できる。
【0013】
上記のワークの溝は、ゴシックアーチ形状またはV溝形状となっているとよい。このように、ワークの溝は、中心の異なる2つの円弧を組み合わせたゴシックアーチ形状またはV溝形状なので、全体でひとつの円弧ではなく中心Gが尖った紡錘形あるいは砲弾型となっている。このため、測定子の接触角が大きくなるため、求心力が大きく得られる。また、溝の中心では2点で当接して両方から求心力が作用するため、測定子は、溝の中心で位置が安定する。このため、測定子は、ワークの両側に形成された溝の距離を精度よく測定できる。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、ワークの両側に形成された溝の距離を精度よく測定できる軌道面測定機を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】本発明の実施形態における軌道面測定機が適用される軌道面研削盤を例示する図である。
【
図2】
図1の測定機およびその周辺の構造を例示する図である。
【
図4】
図3のワークが各軸周りに回転したときの測定の様子を示す図である。
【
図5】ワークの溝から測定子に求心力が作用する原理について説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下に添付図面を参照しながら、本発明の好適な実施形態について詳細に説明する。かかる実施形態に示す寸法、材料、その他具体的な数値などは、発明の理解を容易とするための例示に過ぎず、特に断る場合を除き、本発明を限定するものではない。なお、本明細書および図面において、実質的に同一の機能、構成を有する要素については、同一の符号を付することにより重複説明を省略し、また本発明に直接関係のない要素は図示を省略する。
【0017】
図1は、本発明の実施形態における軌道面測定機(以下、測定機)が適用される軌道面研削盤(以下、研削装置)を例示する図である。
図1(a)は、研削装置100の全体を示す図である。研削装置100は、被加工物であるワーク102の寸法を自動的に測定し、ワーク102を研削加工する装置であり、テーブル104と、コラム106と、研削機108と、測定機110と、マスターワーク112とを備える。なお
図1(b)、
図1(c)は、
図1(a)の研削装置100の研削機108側、測定機110側をそれぞれ示している。
【0018】
テーブル104は、ベース114に設けられ、ベース114上で
図1(a)に示す矢印A方向に移動可能に構成されていて、その上部にはワーク102が取り付けられている。コラム106は、ベース114に設けられ、
図1(b)および
図1(c)に示すように門型に形成されていて、ワーク102およびテーブル104を上方から囲うように配置されている。
【0019】
研削機108は、
図1(b)に示すように門型のコラム106の前面側に設置されていて、一対の砥石車116、118を有する。研削機108は、移動するテーブル104に取り付けられたワーク102を一対の砥石車116、118によって研削加工して、ワーク102にレールやブロックの転動体(例えば玉)の軌道面を形成する。測定機110は、
図1(c)に示すように門型のコラム106の背面側に設置されていて、ワーク102およびマスターワーク112の寸法を測定する。
【0020】
マスターワーク112は、研削加工後のワーク102の理想的な形状を有するものであり、測定室120に設置されている。測定室120では、測定機110によってマスターワーク112の寸法を測定したり、マスターワーク112をエアブローで清掃したりする。また測定室120は、
図1(c)に示すように、研削機108によってワーク102が研削加工される加工室(研削室122)の近傍に設置されている。このため、マスターワーク112は、ワーク102の加工位置近傍に設置されることになり、ワーク102と近い環境下(主に温度環境)にある。
【0021】
図2は、
図1の測定機110およびその周辺の構造を例示する図である。
図2(a)は、
図1(c)の研削装置100の一部を拡大しさらに詳細に示す図である。
図2(b)は、
図2(a)の一部を拡大して示す図である。
【0022】
研削装置100は、
図2(a)に示すように測定室120および研削室122に加え、測定室120に隣接する洗浄室124によって区画されている。測定室120と洗浄室124は、隔壁126、128、130、天面140によって区画されている。なお天面140も隔壁のひとつである。
【0023】
測定機110は、
図2(b)に示すように一対のアーム132、134と、アーム132、134によって支持される一対の測定子136、138とを有する。測定子136、138は、ワーク102の寸法およびマスターワーク112の寸法を測定するときに、アーム132、134によってワーク102およびマスターワーク112に押し当てられる。
図2(a)では、アーム132、134が測定子136、138をワーク102に押し当てて、ワーク102の寸法を測定している状態を例示している。
【0024】
測定機110は、
図2(a)の矢印B、Cに示すようにコラム106に対して上下方向、水平方向にそれぞれ移動可能に構成されている。また、洗浄室124および測定室120の天面140には、開閉自在のシャッター142が設けられている。このため、測定機110は、例えば
図2(a)に示す研削室122に進入した状態から上昇して、さらに水平方向に移動して、洗浄室124や測定室120の上方で待機し、シャッター142が開くと下降することにより、洗浄室124や測定室120に進入することができる。
【0025】
また測定機110はさらに、
図2(b)に示す一対のエアブローノズル144、146を有する。エアブローノズル144、146は、アーム132、134に支持された測定子136、138およびその周辺に向けられている。測定機110は、洗浄室124に進入した状態で、エアブローノズル144、146によって測定子136、138をエアブローで清掃する。また測定機110は、測定室120に進入した状態で、エアブローノズル144、146によってマスターワーク112をエアブローで清掃し、研削室122に進入した状態で、エアブローノズル144、146によってワーク102をエアブローで清掃する。
【0026】
研削装置100はさらに、研削室122に一対のエアブローノズル148、150および一対のクーラント洗浄ノズル152、154を備える。エアブローノズル148、150は、ワーク102に向けられていて、ワーク102をエアブローで清掃する。クーラント洗浄ノズル152、154は、ワーク102に向けられていて、ワーク102をクーラントで洗浄する。また洗浄室124には、エアブローノズル151およびクーラント洗浄ノズル155が備えられていて、測定子136、138を洗浄する。
【0027】
図3は、
図2の測定機110の詳細を示す図である。
図3(a)は、測定機110のアーム132、134およびその周辺の構造を例示する図である。
図3(b)は、
図3(a)のアーム132をX軸に沿った方向から見た状態を示す図である。
【0028】
ワーク102は、
図3(a)に示すように、その両側面156、158(両側)に転動体(例えば玉)の軌道面となる溝160、162が形成されることで、レールとして使用される。アーム132、134は、測定子136、138を支持していて、
図3(a)の矢印D、Eに示す方向(X軸に沿った左右方向)に所定の距離(測定ストローク)、移動可能である。アーム132、134は、矢印D、Eに示す方向に沿ってワーク102を挟むように移動することにより、測定子136、138をワーク102の溝160、162に接近させて押し当てる。
【0029】
ここで測定機110は、ワーク102の溝160、162の距離(ピッチ)を測定するものである。このため、アーム132、134が測定子136、138をワーク102の溝160、162に押し当てたとき、測定子136、138が溝160、162の中心G(
図5(a)参照)からずれて接触した状態のままでは、測定機110は、溝160、162の距離を精度よく測定することが困難となる。
【0030】
そこで測定機110では、測定子136、138が溝160、162の中心Gからずれた状態で溝160、162に接触しても、測定子136、138が求心力(後述)によって溝160、162の幅方向(
図3のU軸に沿った上下方向)に移動して、溝160、162の中心Gに確実に位置できる構成を採用した。
【0031】
すなわち測定機110は、
図3(a)に示すように、アーム132、134の途中に配置された弾性部としての平バネ168、170、172、174を有する。アーム132、134は、基部176、178と、基部176、178に連結された連結部180、182と、中間部184、186と、支持部188、190とを有する。
【0032】
アーム132の中間部184は、
図3(b)に示すように上端192が連結部180に連結されていて、Z軸に沿った水平方向に延びる下端194の上下に平バネ168、170が対向するように固定されている。平バネ168、170は、Z軸に沿った水平方向に延びている。また中間部184は、
図3(b)に示すように上端192と下端194の間において、上端192からZ軸に沿った水平方向に延びさらに下方に屈曲して下端194に至る屈曲した形状を有している。また、アーム134の中間部186も中間部184と同様の構成を有し、連結部182に上端が連結され、下端の上下に平バネ172、174が対向するように固定されている。
【0033】
またアーム132の支持部188は、
図3(b)に示すようにZ軸に沿った水平方向に延びていて、端部196の上下に平バネ168、170が対向するように固定されている。さらに支持部188は、
図3(a)に示すように締付ネジ198によって測定子136が取り付けられていて、測定子136を支持している。また、アーム134の支持部190も支持部188と同様の構成を有し、端部の上下に平バネ172、174が対向するように固定されていて、締付ネジ199によって測定子138が取り付けられこれを支持している。
【0034】
このようにアーム132は、その途中すなわち中間部184と支持部188の間が平バネ168、170によってつながれている。平バネ168、170は、
図3(b)の矢印Hに示すように面がほぼ水平に沿った姿勢で配置されているため、ワーク102の溝160の幅方向(U軸に沿った上下方向)だけに弾性変形可能であり、溝160の深さ方向(X軸に沿った左右方向)には弾性変形しないという異方性を有している。このため、アーム132では、異方性を有する平バネ168、170の弾性変形に応じて、支持部188に支持された測定子136が中間部184の下端194を支点にしてワーク102の溝160の幅方向に移動することができる。
【0035】
また平バネ172、174も同様に、ワーク102の溝162の幅方向だけに弾性変形可能であり、溝162の深さ方向には弾性変形しないという異方性を有している。このため、アーム134でも、中間部186と支持部190をつなぐ異方性を有する平バネ172、174の弾性変形に応じて、支持部190に支持された測定子138が中間部186の下端を支点にしてワーク102の溝162の幅方向に移動することができる。
【0036】
このように、測定機110では、異方性を有する平バネ168、170、172、174の弾性変形により、
図3(b)に示すU軸とZ軸で規定されるUZ平面で測定子136、138がフローティング可能となっている。このため、測定機110では、測定対象であるワーク102がU軸に平行(すなわち上下方向であって溝160、162の幅方向)に位置ずれしても、フローティングにより測定誤差を吸収できる。なおワーク102がZ軸に平行(すなわち水平方向)に位置ずれしても、
図3(a)に示すワーク102の溝160、162と、測定子136、138との相対的な位置が変化しないため、測定に影響がない。
【0037】
また測定機110のアーム132、134は、上記したように
図3(a)の矢印D、Eに示すX軸に平行な方向に測定ストロークを有している。このため、測定機110では、ワーク102がX軸に平行(すなわち左右方向であって溝160、162の深さ方向)に位置ずれしても、測定ストロークにより、測定子136、138を溝160、162に押し当てることができるので、測定誤差を吸収できる。
【0038】
図4は、
図3のワーク102が各軸周りに回転したとき(姿勢に狂いが生じたとき)の測定の様子を示す図である。測定機110では、
図4(a)の矢印Iに示すワーク102のローリング(Z軸回転)により、ワーク102と測定子136、138の相対的な位置が溝160、162の深さ方向にずれていても、アーム132、134の測定ストロークにより測定誤差を吸収でき、溝160、162の幅方向にずれても、測定子136、138のフローティングにより測定誤差を吸収できる。
【0039】
また測定機110では、
図4(b)の矢印Jに示すワーク102のピッチング(X軸回転)により、ワーク102と測定子136、138の相対的な位置が溝160、162の幅方向にずれても、測定子136、138のフローティングにより測定誤差を吸収できる。
【0040】
さらに測定機110では、
図4(c)の矢印Kに示すワーク102のヨーイング(U軸回転)により、ワーク102と測定子136、138の相対的な位置がずれても、測定に対する影響が極めて小さいので無視できる。
【0041】
図5は、ワーク102の溝160から測定子136に求心力Pが作用する原理について説明する図である。なお図示を省略するが、ワーク102の溝162から測定子138に対しても同様の原理で求心力Pが作用する。
【0042】
ワーク102の溝160は、ゴシックアーチ形状であり、
図5(a)に示す異なる中心Oa、Obを有する半径Rの2つの円弧L、Mを組み合わせた形状となっている。このため、ワーク102の溝160は、円弧ではなく中心Gが滑らかではない尖った紡錘形あるいは砲弾型となっている。一方、測定子136は、中心Oを有する半径rの円形としている。
【0043】
ここで
図5(b)に示すワーク102の溝160の中心Gからずれた点Aに、測定子136がアーム132によって測定力Fで押し当てられ接触した場合について説明する。すなわち溝160の点Aは、測定子136との接触点である。なお測定子136の中心Oと溝160の中心Gとを通る直線Nと、測定子136の中心Oと溝160の点Aとを通る直線Qとが成す角度を接触角θとする。
【0044】
まず、測定力Fは、点Aにおける接線方向の力F1(=F・sinθ)と、点Aにおける法線方向の力F2(=F・cosθ)とにベクトル分解できる。また、点Aには、力F2を垂直抗力とする摩擦力(=F2・μ)が力F1とは逆方向に作用する。このため、測定力Fにより点Aにおける接線方向には力P1(=F1-F2・μ)が作用する。
【0045】
そして
図5(b)に示す力P1の垂直方向成分の力P(=P1・cosθ)が、溝160の点Aから測定子136に作用する求心力である。測定子136は、ワーク102の溝160の点Aから求心力Pを受けて、溝160の中心Gまで落ち込むことができ、溝160の中心Gに確実に位置することができる。
【0046】
このように測定機110では、測定子136、138を支持するアーム132、134の途中に異方性を有する平バネ168、170、172、174を配置している。このため、アーム132、134が測定子136、138をワーク102の溝160、162に押し当てたとき、測定子136、138が溝160、162の中心Gからずれて溝160、162の点Aに接触しても、測定子136、138は、平バネ168、170、172、174の弾性変形によって溝160、162の幅方向に移動できる。
【0047】
このとき、測定機110では、測定子136、138がワーク102の溝160、162の点Aから求心力Pを受けて溝160、162の中心Gに倣う。したがって測定機110によれば、ワーク102の両側面156、158に形成された溝160、162の距離を精度よく測定できる。
【0048】
またワーク102の溝160、162はゴシックアーチ形状またはV溝形状なので、溝160、162の中心Gにおいて、測定子136、138は、異なる中心Oa、Obを有する2つの円弧L、M(
図5(a)参照)に当接して、両方から求心力Pが作用する。このため、測定子136、138は、溝160、162の中心Gで位置が安定する。また、ワーク102の溝160、162がゴシックアーチ形状またはV溝形状であれば、測定子136、138は、溝160、162の点Aとの接触角θが大きくなる傾向にあるため、溝160、162の点Aから求心力Pが大きく得られ、溝160、162の中心Gに確実に位置することができる。
【0049】
なお研削装置100では、測定機110がワーク102の寸法を測定する前に、ワーク102と近い環境下にあるマスターワーク112を測定するようにすれば、測定機110を校正することができる。このような場合、研削装置100によれば、測定機110が校正後すなわち測定の信頼性を高めた状態でワーク102の寸法を測定するため、ワーク102の寸法を精度よく測定でき、さらにワーク102が所定の寸法になるまで研削加工を繰り返すようにすれば、寸法精度の高い研削加工を行うことができる。
【0050】
図6は他の実施形態を説明する図である。
図1-
図5ではワーク102の両側面(両外面)の溝160,162を測定する場合について説明した。
図6に示すワーク102bは、その両側(両内面)に軌道面となる溝160b、162bが形成されることで、レールを走行するブロックとして使用される。この場合において、測定子136、138は支持部188、190に対して外側に向くように取り付けられる。このように、ワークの両内面にある溝を測定する場合についても本発明を適用することができる。
【0051】
また
図6に示す溝160b、162bは、ゴシックアーチ形状またはV溝形状となっている。この場合においても本発明を好適に適用することができることは明らかである。
【0052】
以上、添付図面を参照しながら本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明はかかる例に限定されないことは言うまでもない。当業者であれば、特許請求の範囲に記載された範疇内において、各種の変更例または修正例に想到し得ることは明らかであり、それらについても当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。
【産業上の利用可能性】
【0053】
本発明は、ワークの両側面に形成された軌道面となる溝の距離を測定する軌道面測定機として利用することができる。
【符号の説明】
【0054】
100…研削装置、102、102b…ワーク、104…テーブル、106…コラム、108…研削機、110…測定機、112…マスターワーク、114…ベース、116、118…砥石車、120…測定室、122…研削室、124…洗浄室、126、128、130…隔壁、132、134…アーム、136、138…測定子、140…天面、142…シャッター、144、146、148、150、151…エアブローノズル、152、154、155…クーラント洗浄ノズル、156、158…ワークの側面、160、162、160b、162b…溝、168、170、172、174…平バネ、176、178…基部、180、182…連結部、184、186…中間部、188、190…支持部、192…中間部の上端、194…中間部の下端、196…支持部の端部、198、199…締付ネジ