(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022051004
(43)【公開日】2022-03-31
(54)【発明の名称】靴用中敷き、靴用中敷き製作のための足寸法の測定治具及びその測定方法
(51)【国際特許分類】
A43D 1/02 20060101AFI20220324BHJP
A43B 17/00 20060101ALI20220324BHJP
【FI】
A43D1/02
A43B17/00 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020157241
(22)【出願日】2020-09-18
(71)【出願人】
【識別番号】508323078
【氏名又は名称】板東 憲司
(74)【代理人】
【識別番号】100167416
【弁理士】
【氏名又は名称】下田 佳男
(72)【発明者】
【氏名】板東 憲司
【テーマコード(参考)】
4F050
【Fターム(参考)】
4F050EA01
4F050HA85
4F050NA87
4F050NA89
(57)【要約】 (修正有)
【課題】千差万別の人の足の形状から足の寸法を容易に把握できる治具を開発するとともに、人の体温で軟化し、かつ、履物着用者の足圧によって足に合わせて成形でき、その後常温で固化する発泡体をコア素材に採用することにより、履いた人の足の形にフィットする靴の中敷きを提供する。
【解決手段】被測定者の足の踵部、母指球部、五指球部のそれぞれの支点の位置から被測定者の足の寸法を計測する足寸法計測治具であって、一端が単端、他端が二股端でいずれの端部は楕円形状であり、お互いの端部を結ぶ曲線は内向きにゆるくカーブした緩曲線である略骨形状とした。
【選択図】
図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
被測定者の足の踵部、母指球部、五指球部のそれぞれの支点の位置から被測定者の足の寸法を計測する足寸法計測治具であって、
一端が単端、他端が二股端でいずれの端部は楕円形状であり、お互いの端部を結ぶ曲線は内向きにゆるくカーブした緩曲線である略骨形状とした、靴用中敷き用の足寸法計測治具。
【請求項2】
被測定者の足の踵部、母指球部、五指球部のそれぞれの支点の位置から被測定者の足の寸法を計測する足寸法計測治具であって、一端が単端、他端が二股端でいずれの端部は楕円形状であり、お互いの端部を結ぶ曲線は内向きにゆるくカーブした緩曲線である略骨形状とした、靴用中敷き用の足寸法計測治具において、予め、足の複数の寸法に合わせた複数の前記足寸法計測治具を作製し、前記単端は前記被測定者の踵部の位置に配置し、前記二股端の各端は前記母指球部、前記五指球部の位置に配置することにより、前記予め作製した複数の足寸法計測治具の中から、前記3点の距離の関係から最も近い前記足寸法計測治具を選択することにより被測定者の足の寸法を把握する中敷き用の足寸法計測方法。
【請求項3】
請求項1の足寸法計測治具を用いて計測し、被測定者の足裏を把握した上で作製された靴用中敷きであって、発泡体の上面に表皮材を貼り付けてなり、前記発泡体は、靴を履いた被測定者の体温により前記発泡体の形状が変化する形状記憶樹脂材からなることを特徴とする靴用中敷き。
【請求項4】
請求項2の足寸法計測方法を用いて前記被測定者の足の寸法を計測して作製された靴用中敷きであって、発泡体の上面に表皮材を貼り付けてなり、前記発泡体は、靴を履いた被測定者の体温により前記発泡体の形状が変化する形状記憶樹脂材からなることを特徴とする靴用中敷き。
【請求項5】
前記形状記憶樹脂は、トランス-1,4-ポリイソプレンを主成分とすることを特徴とする請求項3又は4に記載の靴用中敷き。
【請求項6】
採型用スポンジを用意し、使用者の足裏を計測する工程と、
前記採型用スポンジの型の凹みに石膏を流し込み、前記使用者の足裏の陽性モデルを得る工程と、
前記使用者の足裏の陽性モデルに対して、予め準備した複数の足寸法測定治具から最も近い寸法の足寸法測定治具を決定する工程と、
前記決定した足寸法測定治具に合致する、予め設計済みの抜き型で発泡体を裁断する工程と、
前記裁断した発泡体を、設計したデータに基づき、前記使用者の足のアーチの位置合わせ及び薄さ等の補正をして加熱する工程と、
前記加熱した発泡体を中敷き本体に貼り付けて専用の押圧型で上から押圧整形し、自然冷却する工程と、
さらに、前記発泡体が貼り付けられた前記中敷き本体に衝撃吸収材、表皮を順に貼り付ける工程と、
を備えることを特徴とする靴用中敷きの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、靴用中敷き、特に、使用者の体温により熱変形して装着者の足裏形状にフィットする靴用中敷き、靴用中敷き製作のための足の寸法の測定治具及びその測定方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、靴用中敷きとしてはポリエチレン発泡体、ポリウレタン発泡体にクロスメッシュやEVA等のクッション材を貼り付けた物があるが、これらは歩行時の衝撃を緩和することを目的としたもので足へのフィット性は考慮されていない。
【0003】
使用者の足にフィットさせる中敷きとしては、靴用中敷きを構成する材料を、歩行時の衝撃性緩和と履き心地を考慮したものとして剛性、弾性力を有する材料から選定したものや、フィット性を考慮したものとして足の裏に形状を合わせた物等があり、種々の発明や考案が提案されている。
特許文献1ないし5においては、熱可塑性を有する樹脂素材から成り、加熱によって軟化された状態で使用者の足を押圧して成型される熱成型靴用インソールが提案されている。これらの熱成型靴用インソールは、装着者の足型に沿った形状に成型され、その形状を記憶することができるので、足のバランスをニュートラルに保つことができるとしている。
特許文献6においては、発泡体の上面に表皮材を貼り付け、下面にクッション材を貼り付けた靴の中敷きにおいて、発泡体を形状記憶樹脂材にて構成すると共に、形状記憶樹脂材のガラス転移点(Tg)を、体温付近に設定することにより、靴を履いた人間の体温に反応し硬さが変化し、且つ、軟化した時、履いた人間の其々の足の形にフィットすると共に、着装時での使用感、快適性および耐久性を高めた靴用中敷きを提案している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平5-42005号公報
【特許文献2】特開平5-199906号公報
【特許文献3】特開平8-289805号公報
【特許文献4】特開2000-33002号公報
【特許文献5】特開2000-312603号公報
【特許文献6】特開2006-158600
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1乃至6に示された靴用インソールは、熱成型によって使用者の足型を記憶することができ、足の保持性が向上し、クッション性、快適性が増すものの、足と中敷き、及び中敷きと靴の間の横ズレや、足にかかる衝撃を減少させることができない。
【0006】
そもそも、人の足の形状はそれぞれ異なり、千差万別である。そして、人が立っているとき、足裏の踵部、母指球部、五指球部の3点で体重のほとんどを支え、この3点に体重が集中してかかることになるが、各人足の形状と上記3点で体重を支えている点を考慮しなければ、結局のところ、靴の操作性や、足の疲労に問題が残ることになる。
このような観点から、使用者の足の型を採って個別に中敷きを制作するオーダーメイドがある。オーダーメイドの場合、個別の使用者に合わせて中敷きが制作されるため、市販の量産品では得られないフィット感を提供することができる。しかし、オーダーメイドの場合、陽性モデル(型の凹みに石膏や樹脂を流し込んで作る足の模型)を作り、熟練した作業者が一つずつハンドメイドで制作するため顧客に届けられるまでに時間がかかり、費用も高価なものとならざるを得ない。
【0007】
本発明は、千差万別の人の足の形状から足の寸法を容易に把握できる治具を開発するとともに、人の体温で軟化し、かつ、履物着用者の足圧によって足に合わせて成形でき、その後常温で固化する発泡体をコア素材に採用することにより、履いた人の足の形にフィットする靴の中敷きを適正価格で短期間に提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するため、本発明は、被測定者の足の踵部、母指球部、五指球部のそれぞれの支点の位置から被測定者の足の寸法を計測する足寸法計測治具であって、一端が単端、他端が二股端でいずれの端部は楕円形状であり、お互いの端部を結ぶ曲線は内向きにゆるくカーブした緩曲線である略骨形状としたものであることを特徴とする。
【0009】
また、本発明は、前述の足寸法計測治具について、予め、足の複数の寸法に合わせた複数の足寸法計測治具を作製し、単端は被測定者の踵部の位置に配置し、二股端の各端は前記母指球部、五指球部の位置に配置することにより、予め作製した複数の足寸法計測治具の中から、3点の距離の関係から最も近い足寸法計測治具を選択することにより被測定者の足の寸法を把握することを特徴とする。
【0010】
さらに、本発明に係る靴用中敷きは、上記足裏計測治具を用いて計測し、被測定者の足裏を把握した上で作製された靴用中敷きであって、発泡体の上面に表皮材を貼り付けてなり、発泡体は、靴を履いた被測定者の体温により発泡体の形状が変化する形状記憶樹脂材からなることを特徴とする。またさらに、本発明に係る靴用中敷きは、上記足裏計測方法を用いて計測し、被測定者の足裏を把握した上で作製された靴用中敷きであって、発泡体の上面に表皮材を貼り付けてなり、発泡体は、靴を履いた被測定者の体温により発泡体の形状が変化する形状記憶樹脂材からなることを特徴とする。なお、形状記憶樹脂は、トランス-1,4-ポリイソプレンを主成分とすると好適である。
【0011】
またさらに、本発明は、採型用スポンジを用意し、使用者の足裏を計測する工程と、該採型用スポンジの型の凹みに石膏を流し込み、使用者の足裏の陽性モデルを得る工程と、使用者の足裏の陽性モデルに対して、予め準備した複数の足寸法測定治具から最も近い寸法の足寸法測定治具を決定する工程と、決定した足寸法測定治具に合致する、予め設計済みの抜き型で発泡体を裁断する工程と、裁断した発泡体を、設計したデータに基づき、使用者の足のアーチの位置合わせ及び薄さ等の補正をして加熱する工程と、加熱した発泡体を中敷き本体に貼り付けて専用の押圧型で上から押圧整形し、自然冷却する工程と、さらに、発泡体が貼り付けられた前記中敷き本体に衝撃吸収材、表皮を順に貼り付ける工程と、を備えることを特徴とする靴用中敷きの製造方法である。
【発明の効果】
【0012】
本発明に係る靴用中敷きは、中足と足根骨をサポートすることで足裏のアーチを支え、さらに踵周りを安定させることで重心を正しい位置に導くため、足のぐらつきを抑えることができる。また、長時間の立ち作業や立ち姿勢による足の負担を軽減させることができる。さらに、本発明に係る靴用中敷きは、快適な履き心地を求める人はもちろんのこと、スポーツをする人、フットケアや健康に対する意識の高い人、足が疲れやすい人、姿勢を良くしたい人、足にタコや魚の目ができやすい人等、広く利用してもらうことができる。顧客も適正価格で短期間に入手でき、既存の靴に装着して使うことができるため気軽にオーダーメイドすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】足の骨の構成と足裏の構成を説明する図である。
【
図2】本発明に係る足寸法測定治具の一例を示す図である。
【
図3】本発明に係る足寸法測手治具を人の足裏に当接した状態を示す図である。
【
図4】本発明に係る靴用中敷きの製造工程を示すフロー図である。
【
図5】本発明に係る靴用中敷きの製造工程において、被測定者の足裏の状態を考慮して型抜きされた発泡体を示す図である。
【
図6】
図5に示す発泡体を中敷本体に貼り付けた状態を示す図である。
【
図7】
図6に示す発泡体を整形した状態を示す図である。
【
図8】本発明に係る靴用中敷きの構造を模式的に示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づき詳細に説明する。各図において、同一部分には同一番号を付し、重複する説明は省略する。また、図面は、本発明を理解するために誇張して表現している場合もあり、必ずしも縮尺どおり精緻に表したものではないことに留意されたい。なお、本発明は下記に示される実施の形態に限定されるものではない。
【実施例0015】
実施例1を図面を参照して詳細に説明する。
【0016】
図1を参照して、あらかじめ人の足の骨と足裏の構成を簡単に説明する。
図1(a)に示すように、人の足は、踵骨、足根骨、中足骨、指節骨、脛骨、腓骨、距骨等から構成されている。そして、
図1(b)に示すとおり、人の足裏には、踵と、拇指の付け根の拇指球と第五指の付け根の五指球が存在し、この3点を結んだ領域は土踏まずとなっていて、普通立っているときには、踵、母指球、五指球の3点が地面等に接し、これら3点で体重のほとんどを支える。すなわち、人の足の裏(土踏まず)に対応する骨格部分には、踵の支点と、親指の根元部分の支点と、小指の根元部分の支点の各支点があって、これらの支点の3点支持により体重の支持が行われているのである。踵の支点と拇指球の支点を結ぶ線を線aとし、拇指球の支点と五指球の支点を結ぶ線を線bとし、五指球の支点と踵の支点を結ぶ線を線cとすると、足の高さ方向には、側面方向から見てほぼ線aに沿った方向に内側縦のアーチが形成され、側面方向から見てほぼ線cに沿った方向に外側縦のアーチが形成され、前後方向後ろ側から見てほぼ線bに沿った方向に横のアーチが形成されるといった3箇所のアーチ形状の部分があり、それぞれ、前後方向、左右方向、水平回転方向の姿勢制御を容易にする機能を果たしている。このアーチ形状がバネのように作用することで、足にかかる衝撃を緩和させる役割もあり、この3つのアーチにより歩行動作ができるのである。したがって、このような足のアーチ構造を考慮して、個人にあった中敷きの形状あるいは構造を設計することができる。
【0017】
図2及び3を参照して、詳細に説明する。
図2は、本発明に係る足寸法測定治具10の一例を示す図で、右足の足裏用の治具である。左足の足裏用の治具は、右足の足裏用と左右対称であり、ここでは説明を省略する。
図3は、本発明に係る足寸法測手治具を人の足裏に当接した状態を示す図である。
図2に示すとおり、被測定者の足の踵、拇指球、五指球のそれぞれの支点、3点の距離から非測定者の足の寸法を把握する足寸法計測治具10であって、一端が単端、他端が二股端でいずれの端部は楕円形状であり、お互いの端部を結ぶ曲線は内向きにゆるくカーブした緩曲線である略骨形状としたものである。
図2及び3に示すとおり、足寸法計測治具10は、被測定者の右足の足裏の踵の位置に対応する踵当接部11と、拇指球の位置に対応する拇指球当接部12と、五指球に対応する五指球当接部13と、これら三箇所をつなぐ架橋部14とからなる。
【0018】
ここで、足寸法測定治具10の必要性を説明する。
後述する靴用中敷きの製造工程のS06で、「加熱した発泡体2を中敷き本体3に貼り付けて専用の押圧型で上から押圧整形し、自然冷却する」としているが、このとき使用する「専用の押圧型」は、靴用中敷きのサイズ毎に複数用意される。例えば、22cm~28cmのサイズに対して、0.5cmごとに押圧型が制作されているのである。つまり、24.5cmの足のサイズの使用者には、24.5cmの専用の押圧型が用意されているということになる。したがって、足寸法測定治具10のサイズのバリエーションは、専用の押圧型のバリエーションに対応するために創作されたといえる。
このように、足寸法測定治具10により使用者の足寸法が把握できれば、靴用中敷きの製造工程において短期間で靴中敷きを製作できるのである。
なお、足寸法測定治具10の素材は、厚紙等の紙で作成するとよいが、特に限定されることはなく、木材、樹脂、金属等で作成しても良い。
靴用中敷き1の使用者は、靴を履いた時、足の裏が靴用中敷き1に直接接触した状態で使用する。発泡体2の形状記憶樹脂材をトランス-1,4-ポリイソプレンを主成分とすると、形状記憶樹脂材のガラス転移点(Tg)を人の標準体温である33℃~40℃の温度範囲に設定しているので、使用者が靴を履いた時、使用者の体温により弾性率が急激に低下してゴム状態を呈し、使用者の体重により原成型形状から自然に変形し、各使用者の足の形にしっかりとフィットする。
以上、本発明の靴の中敷き、靴用中敷き製作のための足寸法の測定治具及びその測定方法における好ましい実施形態を図示して説明してきたが、本発明の技術的範囲を逸脱することなく種々の変更が可能であることは理解されるであろう。