(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022051043
(43)【公開日】2022-03-31
(54)【発明の名称】磁気記憶装置及び磁気記憶装置の製造方法
(51)【国際特許分類】
H01L 21/8239 20060101AFI20220324BHJP
H01L 29/82 20060101ALI20220324BHJP
H01L 43/08 20060101ALI20220324BHJP
H01L 45/00 20060101ALI20220324BHJP
H01L 49/00 20060101ALI20220324BHJP
H01L 21/3065 20060101ALI20220324BHJP
【FI】
H01L27/105 447
H01L29/82 Z
H01L43/08 Z
H01L27/105 448
H01L45/00 Z
H01L49/00 Z
H01L21/302 105A
【審査請求】未請求
【請求項の数】18
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020157296
(22)【出願日】2020-09-18
(71)【出願人】
【識別番号】318010018
【氏名又は名称】キオクシア株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100108855
【弁理士】
【氏名又は名称】蔵田 昌俊
(74)【代理人】
【識別番号】100103034
【弁理士】
【氏名又は名称】野河 信久
(74)【代理人】
【識別番号】100075672
【弁理士】
【氏名又は名称】峰 隆司
(74)【代理人】
【識別番号】100153051
【弁理士】
【氏名又は名称】河野 直樹
(74)【代理人】
【識別番号】100162570
【弁理士】
【氏名又は名称】金子 早苗
(72)【発明者】
【氏名】落合 隆夫
(72)【発明者】
【氏名】吉野 健一
(72)【発明者】
【氏名】澤田 和也
(72)【発明者】
【氏名】秋山 直紀
【テーマコード(参考)】
4M119
5F004
5F083
5F092
【Fターム(参考)】
4M119AA08
4M119AA19
4M119BB01
4M119DD33
4M119DD37
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4M119JJ12
5F004AA16
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5F083FZ10
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5F092BB22
5F092BB36
5F092BB42
5F092BB53
5F092BC04
5F092BC22
5F092CA08
(57)【要約】
【課題】 特性のばらつきの少ないスイッチング素子を含んだ磁気記憶装置を提供する。
【解決手段】 一実施形態による磁気記憶装置は、第1導電体と、シリコン酸化物と、第2導電体と、第1積層体と、を含む。シリコン酸化物は、第1導電体上に位置し、ドーパントを含み、第1導電体上の第1部分及び第1導電体上で第1部分に隣接する第2部分を含む。第2部分は第1部分より高く、第2部分のドーパントの濃度は第1部分のドーパントの濃度より高い。第2導電体は、シリコン酸化物の第2部分上に位置する。第1積層体は、第2導電体上に位置し、第1磁性層と、第2磁性層と、第1磁性層と第2磁性層との間の第1絶縁層と、を含む。
【選択図】
図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1導電体と、
前記第1導電体上のシリコン酸化物であって、ドーパントを含み、前記第1導電体上の第1部分及び前記第1導電体上で前記第1部分に隣接する第2部分を含み、前記第2部分は前記第1部分より高く、前記第2部分の前記ドーパントの濃度は前記第1部分の前記ドーパントの濃度より高い、シリコン酸化物と、
前記シリコン酸化物の前記第2部分上の第2導電体と、
前記第2導電体上の第1積層体であって、第1磁性層と、第2磁性層と、前記第1磁性層と前記第2磁性層との間の第1絶縁層と、を含む第1積層体と、
を含む磁気記憶装置。
【請求項2】
前記シリコン酸化物は、前記第1導電体上で前記第1部分に隣接する第3部分をさらに含み、
前記第3部分は、前記第2部分とともに前記第1部分を挟み、
前記第3部分は前記第1部分より高く、
前記第3部分の前記ドーパントの濃度は前記第1部分の前記ドーパントの濃度より高く、
前記磁気記憶装置は、
前記シリコン酸化物の前記第3部分上の第3導電体と、
前記第3導電体上の第2積層体であって、第3磁性層と、第4磁性層と、前記第3磁性層と前記第4磁性層との間の第2絶縁層と、を含む第2積層体と、
をさらに含む、
請求項1に記載の磁気記憶装置。
【請求項3】
前記第1積層体は、前記シリコン酸化物の前記第2部分の直上に位置し、
前記第2積層体は、前記シリコン酸化物の前記第3部分の直上に位置する、
請求項2に記載の磁気記憶装置。
【請求項4】
前記シリコン酸化物の前記第1部分上で前記シリコン酸化物の前記第2部分及び前記第3部分の間で前記第2部分及び前記第3部分に接する第1絶縁体をさらに備える、
請求項3に記載の磁気記憶装置。
【請求項5】
前記シリコン酸化物の前記第1部分は、中心を含んだ第4部分と、前記第1部分の表面の領域を含んだ第5部分と、を含み、
前記シリコン酸化物の前記第4部分の前記ドーパントの濃度は、前記シリコン酸化物の前記第5部分の前記ドーパントの濃度より低い、
請求項1に記載の磁気記憶装置。
【請求項6】
前記シリコン酸化物は、前記第1導電体上で前記第1部分に隣接する第3部分をさらに含み、
前記第3部分の前記ドーパントの濃度は前記第1部分の前記ドーパントの濃度より高く、
前記第1積層体は、前記シリコン酸化物の前記第2部分及び前記第3部分の直上に位置する、
請求項1に記載の磁気記憶装置。
【請求項7】
前記シリコン酸化物の前記第1部分上で前記シリコン酸化物の前記第2部分及び前記第3部分の間で前記第2部分及び前記第3部分に接する第1絶縁体をさらに備える、
請求項6に記載の磁気記憶装置。
【請求項8】
前記シリコン酸化物の前記第2部分及び前記第3部分は、第1軸に沿って延び、第2軸に沿って並び、
前記第2軸は前記第1軸と交わる、
請求項6に記載の磁気記憶装置。
【請求項9】
第1導電体と、
前記第1導電体上の、ドーパントを含んだ第1シリコン酸化物と、
前記第1導電体上の、前記ドーパントを含んだ第2シリコン酸化物と、
前記第1シリコン酸化物上と前記第2シリコン酸化物上に亘る第2導電体と、
前記第2導電体上の第1積層体であって、第1磁性層と、第2磁性層と、前記第1磁性層と前記第2磁性層との間の第1絶縁層と、を含む第1積層体と、
を含む磁気記憶装置。
【請求項10】
前記第1導電体上で前記第1シリコン酸化物及び前記第2シリコン酸化物の間で前記第1シリコン酸化物及び前記第2シリコン酸化物に接する第1絶縁体をさらに備える、
請求項9に記載の磁気記憶装置。
【請求項11】
前記第1シリコン酸化物及び前記第2シリコン酸化物は、第1軸に沿って延び、第2軸に沿って並び、
前記第2軸は前記第1軸と交わる、
請求項9に記載の磁気記憶装置。
【請求項12】
前記ドーパントは、ヒ素である、
請求項1乃至請求項11のいずれか1項に記載の磁気記憶装置。
【請求項13】
エッチングを使用して、第1導電体上にシリコン酸化物を形成することであって、前記シリコン酸化物は、第1部分を含む、シリコン酸化物を形成することと、
前記シリコン酸化物に、ドーパントを導入することと、
前記シリコン酸化物の前記第1部分上に第2導電体を形成することと、
前記第2導電体上に第1積層体を形成することであって、前記第1積層体は、第1磁性層と、第2磁性層と、前記第1磁性層と前記第2磁性層との間の第1絶縁層と、を含む第1積層体を形成することと、
を備える磁気記憶装置の製造方法。
【請求項14】
前記シリコン酸化物を形成することは、
前記第1導電体上に、第2シリコン酸化物を形成することと、
前記エッチングを使用して、前記第2シリコン酸化物を部分的に除去することと、
を備える、
請求項13に記載の磁気記憶装置の製造方法。
【請求項15】
前記ドーパントを導入することは、前記シリコン酸化物の上面の垂線に対して角度を有する軌道上で前記ドーパントを導入することを備える、
請求項13に記載の磁気記憶装置の製造方法。
【請求項16】
前記エッチングは、反応性イオンエッチングである、
請求項13に記載の磁気記憶装置の製造方法。
【請求項17】
前記シリコン酸化物は、第2部分をさらに含み、
前記製造方法は、
前記シリコン酸化物の前記第2部分上に第3導電体を形成することと、
前記第3導電体上に第2積層体を形成することであって、前記第2積層体は、第3磁性層と、第4磁性層と、前記第3磁性層と前記第4磁性層との間の第2絶縁層と、を含む第2積層体を形成することと、
をさらに含む、
請求項13に記載の磁気記憶装置の製造方法。
【請求項18】
前記シリコン酸化物の前記第1部分と前記第2部分との間に第1絶縁体を形成することをさらに備える、
請求項17に記載の磁気記憶装置の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
実施形態は、概して磁気記憶装置及び磁気記憶装置の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
磁気抵抗効果素子を用いた記憶装置が知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】米国特許出願公開第2020/0083285号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特性のばらつきの少ないスイッチング素子を含んだ磁気記憶装置を提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
一実施形態による磁気記憶装置は、第1導電体と、シリコン酸化物と、第2導電体と、第1積層体と、を含む。上記シリコン酸化物は、上記第1導電体上に位置し、ドーパントを含み、上記第1導電体上の第1部分及び上記第1導電体上で上記第1部分に隣接する第2部分を含む。上記第2部分は上記第1部分より高く、上記第2部分の上記ドーパントの濃度は上記第1部分の上記ドーパントの濃度より高い。上記第2導電体は、上記シリコン酸化物の上記第2部分上に位置する。上記第1積層体は、上記第2導電体上に位置し、第1磁性層と、第2磁性層と、上記第1磁性層と上記第2磁性層との間の第1絶縁層と、を含む。
【図面の簡単な説明】
【0006】
【
図1】
図1は、第1実施形態の磁気記憶装置の機能ブロックを示す。
【
図2】
図2は、第1実施形態のメモリセルアレイの回路図である。
【
図3】
図3は、第1実施形態のメモリセルアレイの一部の断面の構造を示す。
【
図4】
図4は、第1実施形態のメモリセルアレイの一部の断面の構造を示す。
【
図5】
図5は、第1実施形態のメモリセルの構造の例の断面を示す。
【
図6】
図6は、第1実施形態のメモリセルの構造の例の別の断面を示す。
【
図7】
図7は、第1実施形態の磁気記憶装置の一部の製造工程の間の或る時点での構造を示す。
【
図14】
図14は、参考用の磁気記憶装置の製造工程の間の一状態を示す。
【
図16】
図16は、第1実施形態の変形例の磁気記憶装置の構造の例の断面を示す。
【
図17】
図17は、第2実施形態のメモリセルの構造の例の断面を示す。
【
図18】
図18は、第2実施形態のメモリセルの構造の例の別の断面を示す。
【
図19】
図19は、第2実施形態の磁気記憶装置の一部の製造工程の間の或る時点での構造を示す。
【
図24】
図24は、参考用の磁気記憶装置の製造工程の間の可変抵抗材料の状態の変化を示す。
【
図25】
図25は、第2実施形態の第1変形例の磁気記憶装置の構造の例の断面を示す。
【
図26】
図26は、第2実施形態の第2変形例の磁気記憶装置の構造の例の断面を示す。
【発明を実施するための形態】
【0007】
以下に実施形態が図面を参照して記述される。以下の記述において、略同一の機能及び構成を有する構成要素は同一の参照符号を付され、繰り返しの説明は省略される場合がある。略一の機能及び構成を有する複数の構成要素が相互に区別されるために、参照符号の末尾にさらなる数字又は文字が付される場合がある。
【0008】
図面は模式的なものであり、厚みと平面寸法との関係、各層の厚みの比率等は現実のものとは異なり得る。また、図面相互間においても互いの寸法の関係や比率が異なる部分が含まれ得る。或る実施形態についての記述は全て、明示的に又は自明的に排除されない限り、別の実施形態の記述としても当てはまる。各実施形態は、この実施形態の技術的思想を具体化するための装置や方法を例示するものであって、実施形態の技術的思想は、構成部品の材質、形状、構造、配置等を下記のものに特定しない。
【0009】
本明細書及び特許請求の範囲において、ある第1要素が別の第2要素に「接続されている」とは、第1要素が直接的又は常時或いは選択的に導電性となる要素を介して第2要素に接続されていることを含む。
【0010】
以下、xyz直交座標系が用いられて、実施形態が記述される。以下の記述において、「下」との記述及びその派生語並びに関連語は、z軸上のより小さい座標の位置を指し、「上」との記述及びその派生語並びに関連語は、z軸上のより大きい座標の位置を指す。
【0011】
1.第1実施形態
1.1.構造(構成)
1.1.1.全体の構造
図1は、第1実施形態の磁気記憶装置の機能ブロックを示す。
図1に示されるように、磁気記憶装置1は、メモリセルアレイ11、入出力回路12、制御回路13、ロウ選択回路14、カラム選択回路15、書込み回路16、及び読出し回路17を含む。
【0012】
メモリセルアレイ11は、複数のメモリセルMC、複数のワード線WL、及び複数のビット線BLを含む。メモリセルMCは、データを不揮発に記憶することができる。各メモリセルMCは、1つのワード線WL及び1つのビット線BLと接続されている。ワード線WLは行(ロウ)と関連付けられている。ビット線BLは列(カラム)と関連付けられている。1つの行の選択及び1つ又は複数の列の選択により、1つ又は複数のメモリセルMCが特定される。
【0013】
入出力回路12は、例えばメモリコントローラ2から、種々の制御信号CNT、種々のコマンドCMD、アドレス信号ADD、データ(書込みデータ)DATを受け取り、例えばメモリコントローラ2にデータ(読出しデータ)DATを送信する。
【0014】
ロウ選択回路14は、入出力回路12からアドレス信号ADDを受け取り、受け取られたアドレス信号ADDにより特定される行と関連付けられた1つのワード線WLを選択された状態にする。
【0015】
カラム選択回路15は、入出力回路12からアドレス信号ADDを受け取り、受け取られたアドレス信号ADDにより特定される列と関連付けられた複数のビット線BLを選択された状態にする。
【0016】
制御回路13は、入出力回路12から制御信号CNT及びコマンドCMDを受け取る。制御回路13は、制御信号CNTによって指示される制御及びコマンドCMDに基づいて、書込み回路16及び読出し回路17を制御する。具体的には、制御回路13は、メモリセルアレイ11へのデータの書込みの間に、データ書込みに使用される電圧を書込み回路16に供給する。また、制御回路13は、メモリセルアレイ11からのデータの読出しの間に、データ読出しに使用される電圧を読出し回路17に供給する。
【0017】
書込み回路16は、入出力回路12から書込みデータDATを受け取り、制御回路13の制御及び書込みデータDATに基づいて、データ書込みに使用される電圧をカラム選択回路15に供給する。
【0018】
読出し回路17は、センスアンプを含み、制御回路13の制御に基づいて、データ読出しに使用される電圧を使用して、メモリセルMCに保持されているデータを割り出す。割り出されたデータは、読出しデータDATとして、入出力回路12に供給される。
【0019】
1.1.2.メモリセルアレイの回路構成
図2は、第1実施形態のメモリセルアレイ11の回路図である。
図2に示されるように、メモリセルアレイ11は、M+1(Mは自然数)本のワード線WLa(WLa<0>、WLa<1>、…、WLa<M>)及びM+1本のワード線WLb(WLb<0>、WLb<1>、…、WLb<M>)を含む。メモリセルアレイ11はまた、N+1(Nは自然数)本のビット線BL(BL<0>、BL<1>、…、BL<N>)を含む。
【0020】
各メモリセルMC(MCa及びMCb)は、2つのノードを有し、第1ノードにおいて1本のワード線WLと接続され、第2ノードにおいて1本のビット線BLと接続されている。より具体的には、メモリセルMCaは、αが0以上M以下の整数の全てのケース及びβが0以上N以下の整数の全てのケースの全ての組合せについて、メモリセルMCa<α、β>を含み、メモリセルMCa<α、β>は、ワード線WLa<α>とビット線BL<β>との間に接続される。同様に、メモリセルMCbは、αが0以上M以下の整数の全てのケース及びβが0以上N以下の整数の全てのケースの全ての組合せについて、メモリセルMCb<α、β>を含み、メモリセルMCb<α、β>は、ワード線WLb<α>とビット線BL<β>との間に接続される。
【0021】
各メモリセルMCは、1つの磁気抵抗効果素子VR(VRa又はVRb)及び1つのスイッチング素子SE(SEa又はSEb)を含む。より具体的には、αが0以上M以下の整数の全てのケース及びβが0以上N以下の整数の全てのケースの全ての組合せについて、メモリセルMCa<α、β>は、磁気抵抗効果素子VRa<α、β>及びスイッチング素子SEa<α、β>を含む。さらに、αが0以上M以下の全てのケース及びβが0以上N以下の整数の全てのケースの全ての組合せについて、メモリセルMCb<α、β>は、磁気抵抗効果素子VRb<α、β>及びスイッチング素子SEb<α、β>を含む。
【0022】
各メモリセルMCにおいて、磁気抵抗効果素子VRとスイッチング素子SEは直列に接続されている。磁気抵抗効果素子VRは1本のワード線WLと接続されており、スイッチング素子SEは1本のビット線BLと接続されている。
【0023】
磁気抵抗効果素子VRは、低抵抗の状態と高抵抗の状態との間を切り替わることができる。磁気抵抗効果素子VRは、この2つの抵抗状態の違いを利用して、1ビットのデータを保持することができる。
【0024】
スイッチング素子SEは、例えば以下に記述されるようなスイッチング素子であることが可能である。スイッチング素子は、2つの端子を有し、2端子間に第1閾値未満の電圧が第1方向に印加されている場合、そのスイッチング素子は高抵抗状態、例えば電気的に非導通状態である(オフ状態である)。一方、2端子間に第1閾値以上の電圧が第1方向に印加されている場合、そのスイッチング素子は低抵抗状態、例えば電気的に導通状態である(オン状態である)。スイッチング素子は、さらに、このような第1方向に印加される電圧の大きさに基づく高抵抗状態及び低抵抗状態の間の切り替わりの機能と同じ機能を、第1方向と反対の第2方向についても有する。スイッチング素子のオン又はオフにより、当該スイッチング素子と接続された磁気抵抗効果素子VRへの電流の供給の有無、すなわち当該磁気抵抗効果素子VRの選択又は非選択が制御されることが可能である。
【0025】
1.1.3.メモリセルアレイの構造
図3及び
図4は、第1実施形態のメモリセルアレイ11の一部の断面の構造を示す。
図3は、xz面に沿った断面を示し、
図4は、yz面に沿った断面を示す。
【0026】
図3及び
図4に示されるように、半導体基板(図示せず)の上方に複数の導電体21が設けられている。導電体21は、y軸に沿って延び、x軸に沿って並ぶ。各導電体21は、1つのワード線WLとして機能する。
【0027】
各導電体21は、上面において、複数のメモリセルMCbのそれぞれの底面と接続されている。メモリセルMCbは各導電体21上でy軸に沿って並んでおり、このような配置によってメモリセルMCbはxy面において行列状に配置されている。各メモリセルMCbは、スイッチング素子SEbとして機能する構造と、磁気抵抗効果素子VRbとして機能する構造を含む。スイッチング素子SEbとして機能する構造及び磁気抵抗効果素子VRbとして機能する構造は、各々、後述のように1又は複数の層を含む。スイッチング素子SEbとして機能する構造は、底面を含む下部において、別のスイッチング素子SEbとして機能する構造の下部と接続されている。この結果、複数のスイッチング素子SEbとして機能する構造の下部の組は、一体として、xy面に沿って広がる。一方、各スイッチング素子SEbとして機能する構造のうちの上面を含む上部は、別のスイッチング素子SEbとして機能する構造とは独立している。
【0028】
メモリセルMCbの上方に、複数の導電体22が設けられている。導電体22は、x軸に沿って延び、y軸に沿って並ぶ。各導電体22は、底面において、x軸に沿って並ぶ複数のメモリセルMCbのそれぞれの上面と接している。各導電体22は、1つのビット線BLとして機能する。
【0029】
各導電体22は、上面において、複数のメモリセルMCaのそれぞれの底面と接続されている。メモリセルMCaは各導電体22上でx軸に沿って並んでおり、このような配置によってメモリセルMCaはxy面において行列状に配置されている。各メモリセルMCaは、スイッチング素子SEaとして機能する構造と、磁気抵抗効果素子VRaとして機能する構造を含む。スイッチング素子SEaとして機能する構造及び磁気抵抗効果素子VRaとして機能する構造は、各々、後述のように1又は複数の層を含む。スイッチング素子SEaとして機能する構造は、底面を含む下部において、別のスイッチング素子SEaとして機能する構造の下部と接続されている。この結果、複数のスイッチング素子SEaとして機能する構造の下部の組は、一体として、xy面に沿って広がる。一方、各スイッチング素子SEaとして機能する構造のうちの上面を含む上部は、別のスイッチング素子SEaとして機能する構造とは独立している。
【0030】
y軸に沿って並ぶ複数のメモリセルMCaのそれぞれの上面上に、さらなる導電体21が設けられている。
【0031】
図3及び
図4に示される最下の導電体21の層からメモリセルMCaの層までの構造がz軸に沿って繰返し設けられることによって、
図2に示されるようなメモリセルアレイ11が実現されることが可能である。
【0032】
メモリセルアレイ11は、さらに、導電体21、導電体22、及びメモリセルMCを設けられていない領域において層間絶縁体を含む。
【0033】
1.1.4.メモリセルの構造
図5及び
図6は、第1実施形態のメモリセルの構造の例の断面を示す。
図5は、xz面に沿った断面を示し、
図6は、yz面に沿った断面を示す。
図5及び
図6は、或る導電体22が位置する層と、当該層からz軸に沿って1つ上の導電体21が位置する層までの構造を示す。すなわち、
図5及び
図6に示されるメモリセルMCは、メモリセルMCaに相当する。
【0034】
図5及び
図6に示されるように、層間絶縁体23中に導電体22が設けられている。各導電体22の上面上に、メモリセルMCが位置する。各メモリセルMCは、スイッチング素子SE、スイッチング素子SE上の磁気抵抗効果素子VR、側壁絶縁体36、及びハードマスク35を含む。メモリセルMCは、さらなる層を含んでいても良い。
【0035】
各スイッチング素子SEは、1つの導電体22の上面上に位置する。スイッチング素子SEは、少なくとも可変抵抗材料(層)25を含む。スイッチング素子SEは、さらに、下部電極24及び上部電極27を含むことが可能である。この場合、下部電極24は導電体22の上面上に位置し、可変抵抗材料25は下部電極24の上面上に位置し、上部電極27は可変抵抗材料25の上面上に位置する。以下の記述は、スイッチング素子SEが下部電極24及び上部電極27を含む例に基づく。
【0036】
各下部電極24は、1つの導電体の一部によって実現される。すなわち、下部電極24の組として機能する導電体は、導電体22の上面及び層間絶縁体23の上面上に位置し、xy面に沿って広がる。以下、各下部電極24と機能する部分を含んだ、xy面に沿って広がる導電体は、下部電極24と称される場合がある。下部電極24は、例えば、窒化チタン(TiN)を含むか、TiNからなる。
【0037】
各可変抵抗材料25は、1つの絶縁体の一部によって実現される。すなわち、可変抵抗材料25の組として機能する可変抵抗材料25は、下部電極24の上面上でxy面に沿って広がる。可変抵抗材料25は、例えば2端子間スイッチ素子であり、2端子のうちの第1端子は可変抵抗材料25の上面及び底面の一方に相当し、2端子のうちの第2端子は可変抵抗材料25の上面及び底面の他方である。可変抵抗材料25は、絶縁体からなる材料で形成されており、イオン注入により導入されたドーパントを含有する。絶縁体は窒化物及び(又は)酸化物を含み、例えば、シリコン窒化物(SiN)、ハフニウム酸化物(HfOx)、及び(又は)SiO2或いはSiO2から実質的に構成された材料を含む。ドーパントは、例えば、ヒ素(As)、ゲルマニウム(Ge)を含む。
【0038】
可変抵抗材料25は、1つの第1部分25aと、複数の第2部分25bからなる。第1部分25aは、可変抵抗材料25のうちの底面を含む下部を占め、下部電極24の上面上でxy面に沿って広がる。各第2部分25bは、可変抵抗材料25のうちの上面を含む上部を占め、各導電体22と複数の導電体21の各々がxy面において交わる領域に位置する。第2部分25bは、互いに独立しており、底面において、第1部分25aの上面と接続されている。
【0039】
可変抵抗材料25の第1部分25aは、第3部分25a3、第4部分25a4、及び第5部分25a5からなる。各第3部分25a3は、各第2部分25bの真下の部分を占める。各第4部分25a4は、隣り合う第3部分25a3の間の部分を占める。各第5部分25a5は、1つの第4部分25a4中に位置し、第4部分25a4の中心を含む大きな領域を占める。換言すると、第4部分25a4は、第4部分25a4と第5部分25a5とからなる領域の表層の部分のみを占める。
【0040】
可変抵抗材料25の第2部分25bは、互いに同様のドーパント濃度を有する。より具体的には、各第2部分25bは、微視的にはドーパントの固有の濃度プロファイルを有するが、第2部分25bが極微細であることに基づいて、巨視的には、第2部分25bの全てに亘って同程度のドーパント濃度を有するとみなされることが可能である。このような、或る要素についての、全体に亘って同程度とみなされることが可能なドーパント濃度は、以下、平均ドーパント濃度と称される。或る第2部分25bの平均ドーパント濃度は、例えば、当該第2部分25b中のドーパントの量と当該第2部分25bの体積の比であることが可能である。
【0041】
さらに、相違する第2部分25bは、相違するドーパント濃度プロファイル及び(又は)平均ドーパント濃度を有し得る。しかし、後述のように、第2部分25bは、共通のプロセスにより形成されるため、実質的に同じ平均ドーパント濃度を有し得る。ここで、本明細書及び特許請求の範囲において、「実質的に」は、「実質的に」によって形容される特性が、意図せぬプロセスのばらつきに基づく値のばらつきを許容することを意味する。
【0042】
可変抵抗材料25の全体のうち、各第2部分25bと、当該第2部分25bの真下の第3部分25a3の組は、1つのスイッチング素子SEとして機能する。各スイッチング素子SEの機能の発現及び特性は、その第2部分25b及び第3部分25a3のそれぞれの平均ドーパント濃度に依存する。第2部分25b及び第3部分25a3のそれぞれの平均ドーパント濃度は、当該第2部分25b及び第3部分25a3の組により実現されるスイッチング素子SEが、求められる特性を有する大きさを有する。第2部分25b及び第3部分25a3のそれぞれの平均ドーパント濃度は、スイッチング素子SEに求められる特性を有する大きさを有する限り、互いに実質的に同じであってもよいし、異なっていてもよい。しかしながら、記述が過度に煩雑になることを避けるために、以下の記述は、第2部分25b及び第3部分25a3のそれぞれの平均ドーパント濃度は互いに実質的に同じケースに基づく。
【0043】
一方、可変抵抗材料25の第4部分25a4及び第5部分25a5は、スイッチング素子SEの特性にほとんど影響しない。このため、第4部分25a4及び第5部分25a5のそれぞれの平均ドーパント濃度は、スイッチング素子SEに求められる特性と無関係の大きさを有し、いずれかの第2部分25b及び第3部分25a3それぞれの平均ドーパント濃度よりも大幅に低い。第2部分25b及び第3部分25a3の平均ドーパント濃度と、第5部分25a5の平均ドーパント濃度は異なる。例えば、第5部分25a5は、ほとんどドーパントを含まない。
【0044】
可変抵抗材料25の第2部分25bの間の領域は、絶縁体29を設けられており、例えば、絶縁体29により埋め込まれている。絶縁体29は、例えばシリコン酸化物を含むか、シリコン酸化物からなる。
【0045】
各上部電極27は、当該上部電極27が含まれるスイッチング素子SEの可変抵抗材料25の第2部分25bの上面上に位置する。上部電極27は、互いに独立している。上部電極27は、例えば、TiNを含むか、TiNからなる。各上部電極27は、例えば、側面においてテーパー状であり、上面のxy面に沿った面積は、底面のxy面に沿った面積より小さい。
【0046】
上部電極27の間の領域は、絶縁体30を設けられており、例えば、絶縁体30により埋め込まれている。絶縁体30は、例えばシリコン酸化物を含むか、シリコン酸化物からなる。
【0047】
各上部電極27の上面上に、1つの磁気抵抗効果素子VRが位置する。各磁気抵抗効果素子VRは、例えば、側面においてテーパー状であり、例えば、上面のxy面に沿った面積は、底面のxy面に沿った面積より小さい。例えば、各磁気抵抗効果素子VRの側面は、当該磁気抵抗効果素子VRの下方の上部電極27の側面の延長線上に位置する。
【0048】
本実施形態および後述する変形例では、磁気抵抗効果素子VRとして、トンネル磁気抵抗効果を有する磁気トンネル接合(magnetic tunnel junction; MTJ)を含むMTJ素子の場合について説明を行う。具体的には、磁気抵抗効果素子VRは、強磁性層31、絶縁層32、及び強磁性層33を含む。例として、
図5及び
図6に示されるように、絶縁層32は強磁性層31の上面上に位置し、強磁性層33は絶縁層32の上面上に位置する。
【0049】
強磁性層31は、強磁性層31、絶縁層32、及び強磁性層33の界面を貫く方向に沿った磁化容易軸を有し、例えば界面に対して45°以上90°以下の角度の磁化容易軸を有し、例えば界面と直交する方向に沿った磁化容易軸を有する。強磁性層31の磁化の向きは磁気記憶装置1でのデータの読出し及び書込みによっても不変であることを意図されている。強磁性層31は、いわゆる参照層として機能することができる。強磁性層31は、複数の層を含んでいてもよい。
【0050】
絶縁層32は、例えば、酸化マグネシウム(MgO)を含むか、MgOからなり、いわゆるトンネルバリアとして機能する。
【0051】
強磁性層33は、例えば、コバルト鉄ボロン(CoFeB)又はホウ化鉄(FeB)を含むか、或いはCoFeB又はFeBからなる。強磁性層33は、強磁性層31、絶縁層32、及び強磁性層33の界面を貫く方向に沿った磁化容易軸を有し、例えば界面に対して45°以上90°以下の角度の磁化容易軸を有し、例えば界面と直交する方向に沿った磁化容易軸を有する。強磁性層33の磁化の向きはデータ書込みによって可変であり、強磁性層33は、いわゆる記憶層として機能することができる。
【0052】
強磁性層33の磁化の向きが強磁性層31の磁化の向きと平行であると、磁気抵抗効果素子VRは、或る低い抵抗を有する。強磁性層33の磁化の向きが強磁性層31の磁化の向きと反平行であると、磁気抵抗効果素子VRは、強磁性層31と33の磁化の向きが半平行である場合の抵抗よりも高い抵抗を有する。
【0053】
強磁性層33から強磁性層31に向かって或る大きさの書込み電流が流れると、強磁性層33の磁化の向きは強磁性層31の磁化の向きと平行になる。一方、強磁性層31から強磁性層33に向かって別の或る大きさの書込み電流が流れると、強磁性層33の磁化の向きは強磁性層31の磁化の向きと反平行になる。
【0054】
ハードマスク35は、磁気抵抗効果素子VRの上面上、例えば、強磁性層33の上面上に位置する。ハードマスク35は、導電体からなり、例えば、TiNを含むか、TiNからなる。
【0055】
磁気抵抗効果素子VRの側面及びハードマスク35の側面は側壁絶縁体36により覆われている。側壁絶縁体36は、例えばシリコン窒化物を含むか、シリコン窒化物からなる。
【0056】
y軸に沿って並ぶ複数のメモリセルMCのそれぞれのハードマスク35の上面上に、導電体21が位置する。
【0057】
1.2.製造方法
図7~
図13は、第1実施形態の磁気記憶装置の一部の製造工程の間の状態の構造を順に示す。
図7~
図13は、
図5に示される断面と同じ断面を示す。
【0058】
図7に示されるように、層間絶縁体23(図示せず)中に複数の導電体22が形成される。次いで、層間絶縁体23の上面及び導電体22の上面上に、下部電極24A、及び可変抵抗材料25Aが、この順に堆積される。堆積の方法の例は、CVD(chemical vapor deposition)、及びスパッタリングを含む。下部電極24A、及び可変抵抗材料25Aは、それぞれ、後の工程によって、下部電極24、及び可変抵抗材料25へと加工される要素である。可変抵抗材料25Aは、シリコン酸化物を含むか、シリコン酸化物からなる。
【0059】
可変抵抗材料25Aの上面上に、ハードマスク41が形成される。ハードマスク41は、可変抵抗材料25の第2部分25bが形成される予定の領域の直上において残存し、その他の領域において開口41Aを有する。開口41Aは、ハードマスク41の上面から底面に亘る。ハードマスク41は、例えば、絶縁体からなる。
【0060】
図8に示されるように、ハードマスク41をマスクとして用いる異方性エッチングにより、可変抵抗材料25Aが部分的に除去され、開口25A1が形成される。異方性エッチングの例は、反応性イオンエッチング(RIE)を含む。エッチングは、可変抵抗材料25Aの底面が成形される前に停止される。すなわち、可変抵抗材料25Aの底面を含む下側の第1部分25Aaが残され、開口25A1は、可変抵抗材料25Aの底面に達しない。第1部分25Aaは、後の工程によって可変抵抗材料25の第1部分25aへと加工される部分に相当する。一方、エッチングにより、可変抵抗材料25Aの上部が部分的に除去されることにより、可変抵抗材料25Aの複数の第2部分25Abが形成される。第2部分25Abは、後の工程によって可変抵抗材料25の第2部分25bへと加工される部分に相当する。エッチングにより、ハードマスク41も削られる。
【0061】
図9に示されるように、ここまでの工程によって得られる構造に対して、ドーパントがイオン注入により導入される。ドーパントは、可変抵抗材料25に含まれるドーパントである。ドーパントの軌道は、z軸に対して角度を有する。このような軌道で進むドーパントの一部は、実線の矢印により示されており、可変抵抗材料25Aへと、第2部分25Abの上面から、及び開口25A1を介して第2部分25Abの側面から侵入する。イオン注入は、第2部分25Abの上面及び側面から侵入したドーパントが、そのまま可変抵抗材料25A中で停止することを可能にするエネルギーを用いて行われる。すなわち、可変抵抗材料25Aに侵入したドーパントは、可変抵抗材料25Aの原子による阻害によって、自身のエネルギーを徐々に減じられる。エネルギーの減少の結果、可変抵抗材料25Aに侵入したドーパントのほとんどは、可変抵抗材料25A中に留まる。
【0062】
イオン注入は、対象の構造をz軸を中心として回転しながら行われる。
図9は、回転の間の或る一状態のみを示す。このため、
図9では実線の矢印の延長線上に位置しない領域にも、ドーパントは注入される。
【0063】
一方、イオン注入のエネルギーの調整と、可変抵抗材料25A中での減速によって、可変抵抗材料25Aの第2部分25Abの側面から侵入したドーパントは、第2部分25Abを通過して開口25A1へと到達しない。又は、第2部分25Abの側面から侵入したドーパントの一部が第2部分25Abを通過して開口25A1に到達したとしても、極わずかなエネルギーのみしか有しない。このため、破線により示されるように、ドーパントが、可変抵抗材料25Aのうちの開口25A1の下方の部分に到達することは大きく抑制される。
【0064】
図10に示されるように、ドーパントの注入の結果、可変抵抗材料25Aから可変抵抗材料25が形成される。すなわち、可変抵抗材料25Aのうちの多くのドーパントが留まった領域は、可変抵抗材料25の第2部分25b及び第3部分25a3になる。一方、可変抵抗材料25Aのうち、ドーパントをほとんど導入されなかった領域は、可変抵抗材料25の第5部分25a5になる。第5部分25a5は、例えば、ほとんどドーパントを含まない。可変抵抗材料25のうちの隣り合う第3部分25a3の間の領域は、表層においては少量のドーパントを導入され得る。この結果、第4部分25a4が形成される。第4部分25a4は、第2部分25b及び第3部分25a3と比べると極わずかなドーパントを導入されるのみであるため、第2部分25b及び第3部分25a3のそれぞれの平均ドーパント濃度よりもはるかに低い平均ドーパント濃度を有するのみである。
【0065】
図11に示されるように、絶縁体29が形成される。すなわち、ここまでの工程で得られる構造の上面上に、絶縁体29Aが堆積される。堆積の方法の例は、CVD、及びスパッタリングを含む。絶縁体29Aは、可変抵抗材料25の第2部分25bの間の領域を埋め込む。次いで、第2部分25bの上面上の絶縁体29Aが除去されることにより、絶縁体29が形成される。
【0066】
図12に示されるように、可変抵抗材料25の第2部分25bの上面及び絶縁体29の上面上に、上部電極27A、強磁性層31A、絶縁層32A、強磁性層33A、及びハードマスク35Aが、この順に堆積される。堆積の方法の例は、CVD、及びスパッタリングを含む。ハードマスク35Aは、磁気抵抗効果素子VRが形成される予定の領域の直上において残存し、その他の領域において開口35A1を有する。開口35A1は、ハードマスク35Aの上面から底面に亘る。
【0067】
図13に示されるように、ここまでの工程によって得られる構造が、イオンビームエッチング(IBE)によりエッチングされる。イオンビームは、z軸に対して角度を有する。このようなイオンビームは、ハードマスク35Aの開口35A1の中へと侵入し、開口35A1内で露出している要素を部分的に除去する。一部のイオンビームは、ハードマスク35Aにより阻まれて、開口35A1内の深い領域に到達しない。しかし、ハードマスク35AもIBEによって部分的に除去され、IBEの進行に伴ってハードマスク35Aの上面は徐々に低下する。この結果、IBEの進行とともに、イオンビームは、開口35A1内のより深い領域に到達するようになる。このため、IBEの進行により、強磁性層31A、絶縁層32A、強磁性層33A、及び上部電極27Aは、開口35A1中の部分をエッチングされる。エッチングの結果、強磁性層31A、絶縁層32A、強磁性層33A、及び上部電極27Aの各々が複数の部分へと分割され、強磁性層31、絶縁層32、強磁性層33、及び上部電極27が形成される。
【0068】
図1に示されるように、絶縁体30、側壁絶縁体36、及び導電体21が形成される。
【0069】
1.3.利点(効果)
第1実施形態によれば、以下に記述されるように、特性のばらつきの少ないスイッチング素子SEを含んだ磁気記憶装置1が提供されることが可能である。
【0070】
スイッチング素子SEのような、双方向で動作するとともにドーパントの導入により形成されるスイッチング素子は、以下の方法で形成されることが可能である。
図14及び
図15は、磁気記憶装置の参考用の製造工程の間の一状態を示し、磁気記憶装置1の
図5の部分に相当する部分の構造を示す。
【0071】
図14に示されるように、第1実施形態の
図7と同様に、層間絶縁体123(図示せず)及び導電体122の上面上に、下部電極124A、及び可変抵抗材料125Aが、この順に形成される。下部電極124A、及び可変抵抗材料125Aは、後の工程によって、それぞれ、下部電極124、及び可変抵抗材料125へと加工される要素である。下部電極124及び可変抵抗材料125は、それぞれ、第1実施形態の下部電極24及び可変抵抗材料25と同様の機能を有することを意図されている。
【0072】
可変抵抗材料125Aに、ドーパントがイオン注入により導入され、可変抵抗材料125Bが形成される。可変抵抗材料125Aの上面上に、上部電極127Aが形成される。上部電極127Aは、後の工程によって、上部電極127へと加工される要素である。上部電極127は、第1実施形態の上部電極27と同様の機能を有することを意図されている。
【0073】
図15に示されるように、下部電極124A、可変抵抗材料125A、及び上部電極127Aが、RIEにより部分的に除去される。このエッチングにより、下部電極124A、可変抵抗材料125A、及び上部電極127Aが、下部電極124、可変抵抗材料125、及び上部電極127の複数の組へと成形される。
【0074】
このように形成された複数の可変抵抗材料125の特性、特に抵抗値が、ばらつくことが観察されている。理由の1つは、RIEに起因するドーパント濃度の減少であると考えられている。すなわち、RIEは、RIEに晒される要素の表面にダメージを与え得、特に、可変抵抗材料125の側面に大きなダメージを与える。このダメージは、可変抵抗材料125の特性を劣化させ得る。その理由は、ダメージを受けた領域でのドーパントの消失及び(又は)減少であると予想されている。ドーパント濃度は、当該部分での電流が流れる量に影響する。このため、可変抵抗材料125の側面を含んだ部分でのRIEによるダメージによって、この部分での電流量が少ない。ダメージの生じ方や、ドーパント濃度の減少は、複数の可変抵抗材料125の間で相違し得る。このような理由により、可変抵抗材料125の特性がばらつくと考えられる。
【0075】
第1実施形態によれば、可変抵抗材料25Aがドーパントを導入される前にRIEにより複数の可変抵抗材料25へと成形され、その後、可変抵抗材料25にドーパントが導入される。このため、RIEによって可変抵抗材料25の側面でドーパント濃度が減少することが抑制される。このため、特性のばらつきの少ないスイッチング素子SEを含んだ磁気記憶装置1が提供されることが可能である。
【0076】
1.4.変形例
相違するメモリセルMCのそれぞれの可変抵抗材料25は、互いに独立していても良い。
図16は、そのような例を示し、第1実施形態の変形例の磁気記憶装置の構造の例の断面を示し、
図5と同じ部分を示す。
【0077】
図16に示されるように、可変抵抗材料25は、第1部分25aを含まない。すなわち、各スイッチング素子SEは、可変抵抗材料25の独立した1つの第2部分25bを含む。各第2部分25bは、下部電極24の上面上に位置する。
【0078】
図16の構造は、
図8の工程におけるRIEが、
図8を参照して記述される工程から継続されることにより、形成されることが可能である。
【0079】
変形例によっても、第1実施形態によって得られる利点が得られる。
【0080】
2.第2実施形態
第2実施形態は、可変抵抗材料の構造の点において、第1実施形態と異なる。第2実施形態は、その他の点については、第1実施形態と同じである。以下、第2実施形態の構成のうち、第1実施形態の構成と異なる点が主に記述される。
【0081】
2.1.構造
図17及び
図18は、第2実施形態のメモリセルの構造の例の断面を示す。
図17は、xz面に沿った断面を示し、
図18は、yz面に沿った断面を示す。第2実施形態のメモリセルMC、及びスイッチング素子SEは、第1実施形態でのメモリセルMC及びスイッチング素子SEとの区別のために、それぞれ、メモリセルMCB、及びスイッチング素子SEBと称される場合がある。各メモリセルMCBは、第1実施形態でのスイッチング素子SEに代えてスイッチング素子SEBを含み、スイッチング素子SEBは、第1実施形態での可変抵抗材料25に代えて可変抵抗材料51を含む。
【0082】
図17及び
図18に示されるように、可変抵抗材料51は、下部電極24の上面上に位置する。
【0083】
可変抵抗材料51は、1つの第1部分51aと、複数の第2部分51bからなる。第1部分51aは、可変抵抗材料51のうちの底面を含む下部を占め、下部電極24の上面上でxy面に沿って広がる。
【0084】
各第2部分51bは、可変抵抗材料51のうちの上面を含む上部を占める。第2部分51bは、互いに独立しており、底面において第1部分51aの上面と接続されている。第2部分51bのx軸上での長さ(幅)は、磁気抵抗効果素子VRの、少なくとも磁気抵抗効果素子VRの底面のx軸上での長さより小さい。
【0085】
第2部分51bは、y軸に沿って延びる。各メモリセルMCBは、スイッチング素子SEBを含み、各スイッチング素子SEBは複数の第2部分51bを含む。
図17は、各メモリセルMCBが4つの第2部分51bを含む例を示す。各メモリセルMCBにおいて、第2部分51bは、x軸に沿って、間隔を有して並ぶ。
【0086】
可変抵抗材料51の第2部分51bは、皆、実質的に同じ平均ドーパント濃度を有する。第2部分51bは、第1部分51aの平均ドーパント濃度より高い。例えば、第2部分51bの平均ドーパント濃度と、第1部分51aの平均ドーパント濃度は異なる。
【0087】
可変抵抗材料51の第2部分51bの間の領域は、絶縁体29を設けられている。
【0088】
2.2.製造方法
図19~
図23は、第1実施形態の磁気記憶装置の一部の製造工程の間の状態の構造を順に示す。
図19~
図23は、
図17に示される断面と同じ断面を示す。
【0089】
図19に示されるように、第1実施形態の
図7と同様の工程により、導電体22、及び下部電極24Aが形成され、次いで、下部電極24Aの上面上に可変抵抗材料51Aが堆積される。可変抵抗材料51Aは、可変抵抗材料51へと加工される要素であり、シリコン酸化物を含むか、シリコン酸化物からなる。
【0090】
可変抵抗材料51Aの上面上に、ハードマスク53が形成される。ハードマスク53は可変抵抗材料51の第2部分51bが形成される予定の領域の直上において残存し、その他の領域において開口53Aを有する。開口53Aは、ハードマスク53の上面から底面に亘る。ハードマスク53は、例えば、絶縁体からなる。
【0091】
図20に示されるように、第1実施形態の
図8と同様の工程により、可変抵抗材料51Aが部分的に除去されて、開口51A1、及び可変抵抗材料51Aの第1部分51Aa並びに複数の第2部分51Abが形成される。第1部分51Aa及び第2部分51Abは、それぞれ、後の工程によって可変抵抗材料51の第1部分51a及び第2部分51bへと加工される部分に相当する。
【0092】
図21に示されるように、第1実施形態の
図9と同様の工程により、ここまでの工程によって得られる構造に対して、ドーパントがイオン注入により導入される。イオン注入は、比較的低いエネルギーを用いて行われる。このため、ドーパントは、可変抵抗材料51Aの第2部分51Abに侵入した後、大きく減速し、当該第2部分51Ab中に留まる。一部のドーパントは、或る第2部分51Abを通過し、隣の第2部分51Abに侵入し、そこで留まる。上記のように、イオン注入のエネルギーが比較的低いため、ドーパントのほとんどは、最初に侵入した第2部分51Ab中で停止するか、せいぜい、2番目に侵入した(最初に侵入した第2部分51Abの隣の)第2部分51Ab中で停止する。換言すると、第2部分51Abの寸法に基づいて、ドーパントのほとんどは、最初又は2番目に侵入した第2部分51Ab中で停止することを可能にするエネルギーでイオン注入が行われる。このため、ドーパントのほとんどは、破線で示されるように、第1部分51Aaに到達しない。よって、第1部分51Aaには、ドーパントは、ほとんど、或いは全く導入されない。
【0093】
イオン注入は、
図9を参照して記述されるのと同じく、対象の構造をz軸を中心として回転しながら行われる。このため、
図21では実線の矢印の延長線上に位置しない領域にも、ドーパントは導入される。
【0094】
図22に示されるように、ドーパントの注入の結果、可変抵抗材料51Aから可変抵抗材料51が形成される。すなわち、可変抵抗材料51Aのうちの多くのドーパントが留まった領域は、可変抵抗材料51の第2部分51bになる。一方、可変抵抗材料51Aのうち、ドーパントをほとんど導入されなかった領域は、可変抵抗材料51の第1部分51aになる。
【0095】
図23に示されるように、第1実施形態の
図11に示される工程と同じ工程により、絶縁体29が形成される。次いで、第1実施形態の
図12に示される工程と同じ工程により、可変抵抗材料51の第2部分51bの上面及び絶縁体29の上面上に、上部電極27A、強磁性層31A、絶縁層32A、強磁性層33A、及びハードマスク35Aが、この順に、堆積される。
【0096】
図17に示されるように、第1実施形態の
図13に示される工程と同じ工程により、強磁性層31、絶縁層32、強磁性層33、及び上部電極27が形成される。次いで、絶縁体30、側壁絶縁体36、及び導電体21が形成される。
【0097】
2.3.利点
第2実施形態によれば、第1実施形態と同じく、可変抵抗材料51Aがドーパントを導入される前にRIEにより複数の可変抵抗材料51へと成形され、その後、可変抵抗材料51にドーパントが導入される。このため、第1実施形態と同じ利点を得られる。
【0098】
さらに、第2実施形態によれば、以下に記述されるように、さらに特性のばらつきの少ないスイッチング素子SEBを含んだ磁気記憶装置1が提供されることが可能である。
【0099】
図24は、参考用の磁気記憶装置の製造工程の間の可変抵抗材料125B及び可変抵抗材料125の状態の変化を示す。
図24は、左側の部分において、
図14の工程の直後の状態を示す。
図24に示されるように、ドーパントは、可変抵抗材料125Bの全体に亘って広く分布しており、ほぼ均一に分布している。図では、理解の促進のために、ドーパントが可変抵抗材料125Bの全体に均一に分布している例を示す。
【0100】
図24は、右側の部分において、後続の工程が行われた後の可変抵抗材料125の状態を示す。後続の工程は、可変抵抗材料125Bの部分的除去による可変抵抗材料125の第2部分125bの形成、及び磁気抵抗効果素子VRと同様の磁気抵抗効果素子の形成を含み、また、高温のアニール工程を含む。
【0101】
また、可変抵抗材料125の第2部分125bの形成後のアニール工程は、第2部分125b中のドーパントの移動を促し、ドーパントの塊(クラスタ)を形成し得る。ドーパントの塊が存在しているということは、第2部分125b中のドーパントの濃度の分布が不均一であるとともに、ドーパントが低濃度の領域が存在することを意味する。ドーパントの塊は、電流を多く流しやすいが、ドーパントが非常に低い濃度の領域は、電流をほとんど或いは全く流さない。このようなドーパントの濃度の不均一性は、複数の第2部分125bの間で異なり、このことは、複数の第2部分125bの特性のばらつき、ひいてはスイッチング素子の特性のばらつきを引き起こす。
【0102】
第2実施形態によれば、可変抵抗材料51は、各磁気抵抗効果素子VRの下方で離れて並ぶ複数の第2部分51bを含む。各第2部分51bの幅は小さく、隣り合う第2部分51bの間にはドーパントをほとんど或いは全く含まない絶縁体29が位置している。このため、高濃度のドーパントを含んだ第2部分51bではドーパントの塊が形成されるとしても、塊の形成は、低濃度のドーパントを含む絶縁体29により阻まれ、当該塊が形成されている第2部分51bを超えてx軸に沿って拡大することが抑制される。このことは、ドーパントの塊の形成が無制限に進行することを抑制し、ひいては、複数の第2部分51bの相互間でのドーパントの塊の形成のばらつきを抑制する。このため、スイッチング素子SEB相互の間の特性のばらつきが抑制されることが可能である。
【0103】
第2部分51bのx軸上での幅がより小さいほど、その中でのドーパントの移動がより抑制され、よって、ドーパントの塊がより形成されにくい。よって、第2部分51bのx軸上での幅がより小さいほど、スイッチング素子SEB相互の間の特性のばらつきがより抑制されることが可能である。
【0104】
2.4.変形例
第1実施形態の変形例と同じく、相違するメモリセルMCのそれぞれの可変抵抗材料51は、互いに独立していても良い。
図25は、そのような例を示し、第2実施形態の第1変形例の磁気記憶装置の構造の例の断面を示し、
図17と同じ部分を示す。
【0105】
図25に示されるように、可変抵抗材料51は、第1部分51aを含まない。すなわち、各スイッチング素子SEBは、可変抵抗材料51の第2部分51bを含む。各第2部分51bは、下部電極24の上面上に位置する。
【0106】
図25の構造は、
図20の工程におけるRIEが、
図20を参照して記述される工程から継続されることにより、形成されることが可能である。
【0107】
第1変形例によっても、第2実施形態によって得られる利点が得られる。
【0108】
可変抵抗材料51の第2部分51bが、y軸に沿ってさらに分割されていてもよい。
図26は、そのような例を示し、第2実施形態の第2変形例の磁気記憶装置の構造の例の断面を示し、
図18と同じ部分を示す。
【0109】
図26に示されるように、第2部分51bは、y軸に沿って並ぶ複数の第2サブ部分51b1を含む。第2サブ部分51b1は、xy面において、x軸又はy軸に沿って長く延びない形状を有し、行列状に配置される。しかしながら、第2サブ部分51b1は、行列状に配置されてなくてもよいし、柱状でなくてもよい。柱状の第2サブ部分51b1と、y軸に沿って延びる第2部分51bの両方が1つのスイッチング素子SEB中に設けられてもよい。
【0110】
第2変形例によれば、ドーパントの塊の形成が、y軸に沿って進行することも抑制されることが可能である。
【0111】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると同様に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれるものである。
【符号の説明】
【0112】
1…磁気記憶装置、2…メモリコントローラ、11…メモリセルアレイ、12…入出力回路、13…制御回路、14…ロウ選択回路、15…カラム選択回路、16…書込み回路、17…読出し回路、MC…メモリセル、WL…ワード線、BL…ビット線、VR…磁気抵抗効果素子、SE…スイッチング素子、21…導電体、22…導電体、23…層間絶縁体、24…下部電極、25…可変抵抗材料、25a…第1部分、25b…第2部分、25a3…第3部分、25a4…第4部分、25a5…第5部分、27…上部電極、29…絶縁体、30…絶縁体、31…強磁性層、32…絶縁層、33…強磁性層、36…側壁絶縁体、35…ハードマスク、41…ハードマスク、51…可変抵抗材料、51a…第1部分、51b…第2部分、53…ハードマスク、122…導電体、124…下部電極、125…可変抵抗材料、125b…第2部分、127…上部電極。