(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022051092
(43)【公開日】2022-03-31
(54)【発明の名称】トルクセンサ
(51)【国際特許分類】
G01L 3/10 20060101AFI20220324BHJP
【FI】
G01L3/10 305
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020157367
(22)【出願日】2020-09-18
(71)【出願人】
【識別番号】000000929
【氏名又は名称】KYB株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002468
【氏名又は名称】特許業務法人後藤特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】前原 秀雄
(57)【要約】
【課題】ハウジングとケースとの間のシール性を向上させるとともに、トルクセンサによるトルクの検出を安定させる。
【解決手段】トルクセンサ100は、トーションバー5のねじれ変形に伴って磁気発生部20から回転磁気回路部30を通じて固定磁気回路部40に導かれる磁束密度を検出する磁気検出部50を備え、磁気検出部50は、磁気センサ54を収容するとともに第1集磁ヨーク51及び第2集磁ヨーク52を保持するケース60を有する。ケース60のフランジ部64とハウジング11の取付面11cとの間には、フランジ部64と取付面11cとの間に所定の大きさの隙間Gを形成するスペーサ67が設けられ、隙間Gには、液状ガスケット19が充填される。
【選択図】
図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ハウジング内に回転自在に支持された第1シャフトと第2シャフトとを連結するトーションバーに作用するトルクを検出するトルクセンサであって、
前記第1シャフトと共に回転する磁気発生部と、
前記第2シャフトと共に回転する回転磁気回路部と、
前記回転磁気回路部の外周に沿って環状に設けられ、前記ハウジングに固定される固定磁気回路部と、
前記トーションバーのねじれ変形に伴って前記磁気発生部から前記回転磁気回路部を通じて前記固定磁気回路部に導かれる磁束密度を検出する磁気検出部と、を備え、
前記磁気検出部は、前記磁束密度を検出する磁気検出器と、前記固定磁気回路部を介して前記回転磁気回路部からの磁束を集めて前記磁気検出器へと導く集磁ヨークと、前記磁気検出器を収容するとともに前記集磁ヨークを保持するケースと、を有し、前記ケースが締結部材を介して前記ハウジングに取り付けられることにより前記集磁ヨークが前記固定磁気回路部の外周に当接するように構成され、
前記ケースには、前記締結部材が挿通する挿通孔が形成されたフランジ部が設けられ、
前記ハウジングには、前記締結部材の締結方向において前記フランジ部と対向する対向部が設けられ、
前記フランジ部と前記対向部との間には、前記フランジ部と前記対向部との間に所定の大きさの隙間を形成するスペーサが設けられ、
前記隙間には、液状シール材が充填されることを特徴とするトルクセンサ。
【請求項2】
前記スペーサには、前記締結部材が挿通する貫通孔が設けられることを特徴とする請求項1に記載のトルクセンサ。
【請求項3】
前記フランジ部には、前記締結部材が挿通し前記締結部材の軸力が作用する筒状のカラーが埋設されており、
前記スペーサは、前記カラーのうち、前記フランジ部から前記対向部に向かって突出した突出部であることを特徴とする請求項1または2に記載のトルクセンサ。
【請求項4】
前記スペーサは、前記フランジ部及び前記対向部の何れか一方に形成された突起部であることを特徴とする請求項1または2に記載のトルクセンサ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、トルクセンサに関するものである。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、入力シャフトに固定される磁気発生部と、出力シャフトに固定される回転磁気回路部と、ハウジングに固定される固定磁気回路部と、固定磁気回路部に導かれる磁束密度を検出する磁気検出部と、を備えるトルクセンサが開示されている。
【0003】
磁気検出部は、磁束密度を検出する磁気センサと、固定磁気回路部を介して回転磁気回路部からの磁束を集めて磁気センサへと導く集磁ヨークと、磁気センサ及び集磁ヨークを収容するケースと、を有しており、ケースが締結部材を介してハウジングに締結されることによって、集磁ヨークが固定磁気回路部に接するよう構成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に記載されるようなトルクセンサにおいて、ハウジングとケースとの間のシール性を向上させるためには、Oリングに加えて、または、Oリングに代えて、液状シール材を設けることが考えられる。しかしながら、液状シール材は弾性を有することから、ハウジングにケースを締結する方向において、ハウジングとケースとの間に液状シール材が介在していると、固定磁気回路部と、これに接する集磁ヨークと、の間隔が変化して接触状態が安定せず、結果として、磁気センサの検出値が不安定となり、正確なトルクをトルクセンサによって検出することができなくなるおそれがある。
【0006】
本発明は、上記の問題点に鑑みてなされたものであり、ハウジングとケースとの間のシール性を向上させるとともに、トルクセンサによるトルクの検出を安定させることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、ハウジング内に回転自在に支持された第1シャフトと第2シャフトとを連結するトーションバーに作用するトルクを検出するトルクセンサであって、第1シャフトと共に回転する磁気発生部と、第2シャフトと共に回転する回転磁気回路部と、回転磁気回路部の外周に沿って環状に設けられ、ハウジングに固定される固定磁気回路部と、トーションバーのねじれ変形に伴って磁気発生部から回転磁気回路部を通じて固定磁気回路部に導かれる磁束密度を検出する磁気検出部と、を備え、磁気検出部は、磁束密度を検出する磁気検出器と、固定磁気回路部を介して回転磁気回路部からの磁束を集めて磁気検出器へと導く集磁ヨークと、磁気検出器を収容するとともに集磁ヨークを保持するケースと、を有し、ケースが締結部材を介してハウジングに取り付けられることにより集磁ヨークが固定磁気回路部の外周に当接するように構成され、ケースには、締結部材が挿通する挿通孔が形成されたフランジ部が設けられ、ハウジングには、締結部材の締結方向においてフランジ部と対向する対向部が設けられ、フランジ部と対向部との間には、フランジ部と対向部との間に所定の大きさの隙間を形成するスペーサが設けられ、隙間には、液状シール材が充填されることを特徴とする。
【0008】
この発明では、ケースのフランジ部とハウジングの対向部との間に、フランジ部と対向部との間に所定の大きさの隙間を形成するスペーサが設けられる。このように締結部材の締結方向において液状シール材が充填される隙間の大きさは、ケースのフランジ部とハウジングの対向部との間に設けられたスペーサによって所定の大きさに規定される。このため、締結部材の締結方向において、ケースとハウジングとの間に液状シール材が介在していても、集磁ヨークは、固定磁気回路部に対して安定して接触することになる。この結果、ハウジングとケースとの間のシール性を向上させることができるとともに、トルクセンサによるトルクの検出を安定させることができる。
【0009】
また、本発明は、スペーサに、締結部材が挿通する貫通孔が設けられることを特徴とする。
【0010】
この発明では、スペーサに形成された貫通孔に挿通する締結部材によって、フランジ部がハウジングに取り付けられる。このように、隙間の大きさを規定するスペーサを、締結部材を囲むように設けることによって、スペーサには締結部材の軸力が均等に作用する。このため、締結部材を締め付けても、フランジ部と対向部との間の隙間の大きさは均一となることから、固定磁気回路部と集磁ヨークとの接触状態を安定させることができる。
【0011】
また、本発明は、フランジ部に、締結部材が挿通し締結部材の軸力が作用する筒状のカラーが埋設されており、スペーサが、カラーのうち、フランジ部から対向部に向かって突出した突出部であることを特徴とする。
【0012】
この発明では、フランジ部に埋設されたカラーの突出部がスペーサとして機能する。このように、フランジ部に埋設されたカラーの一部をスペーサとして流用することによって、締結部材の締結方向において液状シール材が充填される隙間の大きさを、大幅なコストの上昇を伴うことなく、容易に所望の大きさに規定することができる。
【0013】
また、本発明は、スペーサが、フランジ部及び対向部の何れか一方に形成された突起部であることを特徴とする。
【0014】
この発明では、フランジ部及び対向部の何れか一方に形成された突起部がスペーサとして機能する。このように、フランジ部や対向部に形成された突起部をスペーサとして流用することによって、締結部材の締結方向において液状シール材が充填される隙間の大きさを、大幅なコストの上昇を伴うことなく、容易に所望の大きさに規定することができる。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、ハウジングとケースとの間のシール性を向上させるとともに、トルクセンサによるトルクの検出を安定させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】本発明の実施形態に係るトルクセンサが適用される電動パワーステアリング装置の断面図である。
【
図3】本発明の実施形態に係るトルクセンサが適用される電動パワーステアリング装置を、
図1において矢印Aで示される方向に向かって見た側面図である。
【
図5】本発明の実施形態に係るトルクセンサの第1変形例を示す断面図であって、
図4に相当する断面図である。
【
図6】本発明の実施形態に係るトルクセンサの第2変形例を示す断面図であって、
図4に相当する断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、図面を参照して、本発明の実施形態に係るトルクセンサ100について説明する。
【0018】
まず、
図1を参照して、トルクセンサ100が適用される電動パワーステアリング装置1について説明する。電動パワーステアリング装置1は、車両に搭載され、ドライバによるステアリングホイールの操舵を補助する装置である。
【0019】
電動パワーステアリング装置1は、ステアリングホイールに連結されステアリングホイールの回転に応じて回転するステアリングシャフト2と、ステアリングシャフト2の回転に応じて車輪を転舵させるラックシャフトと、を有する。
【0020】
ステアリングシャフト2は、ドライバによるステアリングホイールの操舵に伴って回転する第1シャフトとしての入力シャフト3と、車輪を転舵するラックシャフトに連係する第2シャフトとしての出力シャフト4と、入力シャフト3と出力シャフト4を連結するトーションバー5と、を有する。
【0021】
出力シャフト4の下部には、ラックシャフトに形成されたラックギアと噛み合うピニオンギアが形成される。ステアリングホイールが操舵されると、ステアリングシャフト2が回転し、その回転がピニオンギア及びラックギアによってラックシャフトの直線運動に変換され、ナックルアームを介して車輪が転舵される。なお、ラックシャフトに噛み合うピニオンシャフトと出力シャフト4とをインターミディエートシャフトを介して連結する構成であってもよい。
【0022】
電動パワーステアリング装置1は、ドライバの操舵を補助するアシスト機構として、出力シャフト4に連結されたウォームホイールと、ウォームホイールと噛合するウォームシャフトと、ウォームシャフトを回転駆動する電動モータと、を備える。電動パワーステアリング装置1は、電動モータによって出力シャフト4に操舵補助トルクを付与する。
【0023】
入力シャフト3は、転がり軸受13を介して金属製の第1ハウジング11に回転自在に支持される。出力シャフト4は、転がり軸受14を介して金属製の第2ハウジング12に回転自在に支持される。入力シャフト3の下端側と出力シャフト4の上端側との間には、滑り軸受15が介装される。入力シャフト3と出力シャフト4は、同一軸上で回転自在に第1及び第2ハウジング11,12に支持される。第1ハウジング11と第2ハウジング12は、ボルト16を介して締結される。
【0024】
入力シャフト3は円筒状に形成され、入力シャフト3の内部にはトーションバー5が同軸に収容される。トーションバー5の上端部は、ピン17を介して入力シャフト3の上端部に連結される。トーションバー5の下端部は、入力シャフト3の下端開口部より突出し、セレーション5aを介して出力シャフト4に連結される。トーションバー5は、ステアリングホイールを介して入力シャフト3に入力される操舵トルクを出力シャフト4に伝達し、その操舵トルクに応じて軸中心にねじれ変形する。
【0025】
電動パワーステアリング装置1には、入力シャフト3と出力シャフト4との回転角度差に基づいてトーションバー5に付与される操舵トルクを検出する非接触式のトルクセンサ100が設けられる。
【0026】
続いて、
図1~4を参照して、トルクセンサ100について説明する。なお、
図2は、後述の回転磁気回路部30の斜視図であり、
図3は、
図1において矢印Aで示される方向に向かって見た側面図であり、
図4は、
図3のB-B線に沿う断面を拡大して示した断面図である。
【0027】
図1及び
図2に示すように、トルクセンサ100は、入力シャフト3に固定され入力シャフト3と共に回転する磁気発生部20と、出力シャフト4に固定され出力シャフト4と共に回転する回転磁気回路部30と、トーションバー5のねじれ変形に伴って磁気発生部20から回転磁気回路部30を通じて導かれる磁束密度を検出する磁気検出部50と、回転磁気回路部30から磁気検出部50へと磁束を導く固定磁気回路部40と、を備える。トルクセンサ100は、トーションバー5に作用する操舵トルクを磁気検出部50に設けられた後述の磁気センサ54の出力に基づいて検出する。
【0028】
なお、上記構成に代えて、磁気発生部20を出力シャフト4と共に回転するように出力シャフト4に固定し、回転磁気回路部30を入力シャフト3と共に回転するように入力シャフト3に固定するようにしてもよい。
【0029】
磁気発生部20は、入力シャフト3に圧入される環状のバックヨーク21と、バックヨーク21の下端面に結合される環状のリング磁石22と、を備える。
【0030】
リング磁石22は、入力シャフト3の回転軸O方向に磁気を発生する永久磁石である。リング磁石22は、回転軸O方向に向けて硬磁性体を着磁することによって形成される多極磁石であり、周方向に等しい幅で形成される12個の磁極を有する。つまり、リング磁石22の上端面及び下端面には、6個のN極と6個のS極が周方向に交互に配設される。リング磁石22の端面に形成される磁極数は、2個以上の範囲で任意に設定される。
【0031】
バックヨーク21の下端面には、リング磁石22の上端面である上部磁極面が接着剤を介して固定される。バックヨーク24は軟磁性体によって形成されるため、リング磁石22が及ぼす磁界によって磁化され、リング磁石22に吸着する。このように、バックヨーク21とリング磁石22は、接着剤の接着力と磁力とによって結合される。バックヨーク21は、リング磁石22を入力シャフト3に連結する連結部材としての機能と、リング磁石22の隣り合う磁極を結んで磁束を導く継鉄としての機能とを有し、リング磁石22の下端面である下部磁極面に磁力を集中させる。
【0032】
回転磁気回路部30は、
図1及び
図2に示すように、リング磁石22から発生する磁束が導かれる第1軟磁性リング31及び第2軟磁性リング32と、出力シャフト4に取り付けられる取付部材33と、取付部材33に第1軟磁性リング31及び第2軟磁性リング32を固定するモールド樹脂34と、を備える。なお、
図3では、モールド樹脂34の図示を省略している。
【0033】
第1軟磁性リング31は、環状の第1磁路環部31Cと、第1磁路環部31Cから下向きに突出する6個の第1磁路柱部31Bと、各第1磁路柱部31Bの下端からそれぞれ内向きに屈折してリング磁石22の下端面に対峙する第1磁路先端部31Aと、を有する。第2軟磁性リング32は、環状の第2磁路環部32Cと、第2磁路環部32Cから上向きに突出する6個の第2磁路柱部32Bと、各第2磁路柱部32Bの上端からそれぞれ内向きに屈折してリング磁石22の下端面に対峙する第2磁路先端部32Aと、を有する。
【0034】
第1軟磁性リング31及び第2軟磁性リング32は、プレス加工によって形成される。第1軟磁性リング31及び第2軟磁性リング32は、プレス加工に限らず、鋳造、焼結等によって形成してもよい。
【0035】
第1磁路先端部31A及び第2磁路先端部32Aは平板状に形成される。第1磁路先端部31Aと第2磁路先端部32Aは、トーションバー5の回転軸Oと直交する同一平面上に、その回転軸Oを中心として周方向に交互に等間隔を空けて配置される。また、第1磁路先端部31Aと第2磁路先端部32Aは、トーションバー5にトルクが作用していない中立状態で、トーションバー5の径方向に延びるそれぞれの中心線がリング磁石22のN極とS極の境界を指すように配置される。
【0036】
第1磁路柱部31Bと第2磁路柱部32Bは、それぞれ平板状に形成され、トーションバー5の回転軸O方向に延設される。第1磁路柱部31Bは、所定の間隙を空けてリング磁石22の外周面を囲むように配置される。第1磁路柱部31Bは、リング磁石22の磁束を短絡しないように設けられる。第2磁路柱部32Bは、トーションバー5の回転軸Oに沿って第1磁路柱部31Bと反対方向に延設される。
【0037】
第1磁路環部31C及び第2磁路環部32Cは、トーションバー5の回転軸Oと直交する平面上に配置され、全周がつながった環状に形成される。第1磁路環部31C及び第2磁路環部32Cは、この形状に限られず、部分的にスリットが形成されたC字形状であってもよい。
【0038】
第1磁路環部31Cはリング磁石22の下端面より上方に配置され、第2磁路環部32Cはリング磁石22より下方に配置される。つまり、リング磁石22は、トーションバー5の回転軸O方向について第1磁路環部31Cと第2磁路環部32Cの間に配置される。
【0039】
固定磁気回路部40は、
図1に示すように、第1軟磁性リング31の第1磁路環部31Cの外周に沿って設けられた環状の第1集磁リング41と、第2軟磁性リング32の第2磁路環部32Cの外周に沿って設けられた環状の第2集磁リング42と、を備える。
【0040】
第1集磁リング41及び第2集磁リング42は、部分的にスリットが形成されたC字形状であり、第1ハウジング11の内周面にかしめ固定される。第1集磁リング41の内周面は第1軟磁性リング31の第1磁路環部31Cに対峙し、第2集磁リング42の内周面は第2軟磁性リング32の第2磁路環部32Cに対峙する。
【0041】
このように、第1集磁リング41及び第2集磁リング42は、回転磁気回路部30の外周に配置され、回転磁気回路部30の回転振れや偏心の影響を緩和して磁気検出部50へと磁束を導く機能を有する。
【0042】
磁気検出部50は、磁束密度を検出する磁気検出器としての磁気センサ54と、磁気センサ54が接続される基板55と、固定磁気回路部40を介して回転磁気回路部30からの磁束を集めて磁気センサ54へと導く集磁ヨークとしての第1集磁ヨーク51及び第2集磁ヨーク52と、回転磁気回路部30での漏れ磁束に対して磁気センサ54を磁気的に遮蔽する遮蔽板53と、これらの構成部材を収容ないし保持する樹脂製のケース60と、を備える。
【0043】
磁気センサ54には、ホール素子が用いられる。ホール素子は、これを通過する磁束密度に応じた電圧を信号として出力するものである。磁気センサ54は、第1集磁ヨーク51と第2集磁ヨーク52との間に形成される後述の磁気ギャップ内に配置され、第1集磁ヨーク51と第2集磁ヨーク52との間の磁束の方向及び大きさに応じた電圧値を出力する。磁気センサ54から出力された電圧値は、基板55を通じて電動パワーステアリング装置1の駆動を制御するEPSコントローラに入力される。
【0044】
なお、磁気センサ54は、複数設けられていてもよく、この場合、複数の磁気センサ54の出力電圧を比較することによってトルクセンサ100の故障診断を行うことが可能である。換言すれば、磁気センサ54を用いてトルクセンサ100の故障診断を行わない場合には、磁気センサ54は1つだけ設けられていればよい。
【0045】
第1集磁ヨーク51と第2集磁ヨーク52は、互いに同一形状である。第1集磁ヨーク51は、第1集磁リング41の外周面に接触するように周方向に沿って円弧状に形成された接触部51aと、接触部51aから突出して形成される脚部51bと、を有する。同様に、第2集磁ヨーク52は、第2集磁リング42の外周面に接触するように周方向に沿って円弧状に形成された接触部52aと、接触部52aから突出して形成される脚部52bと、を有する。
【0046】
第1集磁ヨーク51と第2集磁ヨーク52とは、接触部51aと接触部52aとがトーションバー5の軸方向において所定の間隔を空けて互いに平行に配置された状態で、射出成形によって、ケース60と一体的にインサート成形される。
【0047】
第1集磁ヨーク51の脚部51bと、第2集磁ヨーク52の脚部52bとは、接触部51aと接触部52aとがトーションバー5の軸方向において互いに対向する端面から延び、径方向外側に向かって折り曲げて形成される。脚部51bの先端部と脚部52bの先端部とは、
図1に示すように、所定の隙間である磁気ギャップをもって互いに対向する。磁気ギャップ内には、上述のように、磁気センサ54が配置される。なお、磁気センサ54が2つ設けられる場合には、第1集磁ヨーク51及び第2集磁ヨーク52には、それぞれ2つの脚部51b,52bが設けられる。
【0048】
遮蔽板53は、軟磁性体によって形成される部材であり、第1集磁ヨーク51及び第2集磁ヨーク52の接触部51a,52aと略同一の曲率半径を有する円弧状に形成される。遮蔽板53は、第1集磁ヨーク51と第2集磁ヨーク52との間において、第1集磁ヨーク51及び第2集磁ヨーク52の両者との間に所定の隙間を空けて配置され、熱カシメ等によって、ケース60に組み付けられる。なお、遮蔽板53は、ケース60とは別部材であるネジ等の結合部材を介してケース60に組付けられてもよい。
【0049】
第1集磁ヨーク51と第2集磁ヨーク52の間に遮蔽板53が配置されることによって、回転磁気回路部30からの漏れ磁束は、遮蔽板53に誘導され、磁気センサ54に到達しにくくなる。つまり、磁気センサ54は、遮蔽板53によって回転磁気回路部30からの漏れ磁束に対して磁気的に遮蔽される。これによりトーションバー5のねじれ変形とは関係のない漏れ磁束の変化が磁気センサ54により検出されてしまうことが避けられ、トルクセンサ100の検出誤差が低減されることで、トルクセンサ100の検出精度を向上させることができる。
【0050】
ケース60は、
図1に示すように、磁気センサ54や基板55が収容される収容部63が内部に設けられる樹脂製のケース本体61と、ケース本体61の収容部63の開口部を封止する樹脂製のカバー62と、を有する。
【0051】
カバー62は、円盤状部材であり、外縁部がケース本体61に熱溶着されることによってケース本体61に結合される。なお、カバー62は、熱溶着とは異なる方法でケース本体61に結合されてもよい。また、ケース60を構成するケース本体61及びカバー62は、樹脂製に限定されず、非磁性材によって形成されていればよい。
【0052】
ケース本体61には、第1ハウジング11に形成された挿通孔11aに挿通する円柱状に形成された挿通部61aが設けられており、挿通部61aには、前述のように、第1集磁ヨーク51及び第2集磁ヨーク52がインサート成形されることによって保持されるとともに、熱カシメによって遮蔽板53が取り付けられる。
【0053】
挿通部61aが挿通する挿通孔11aは、入力シャフト3の回転軸O方向に対して直交する方向に第1ハウジング11を貫通して形成された円孔であり、集磁リング41,42が設けられる位置において開口している。このため、挿通孔11aに挿通部61aを挿通し、ケース60を第1ハウジング11に取り付けることによって、第1集磁リング41及び第2集磁リング42の外周面に第1集磁ヨーク51及び第2集磁ヨーク52がそれぞれ接触した状態となり、第1集磁リング41及び第1集磁ヨーク51と、第2集磁リング42及び第2集磁ヨーク52と、によって、磁気センサ54へと磁束を導く磁路がそれぞれ構成される。
【0054】
また、第1ハウジング11には、挿通孔11aよりも径が大きく第1ハウジング11の外周側において開口する拡径孔11bが、挿通孔11aと同軸上に形成される。拡径孔11bには、Oリング18が保持されており、Oリング18の反発力が拡径孔11bの内周面と挿通部61aの外周面とに作用することによって、第1ハウジング11とケース60との間を通じて外部から第1ハウジング11内へ泥水等が侵入することが防止される。
【0055】
ケース60には、
図3に示すように、締結部材としてのボルト68を介して第1ハウジング11に締結されるフランジ部64と、基板55とEPSコントローラとを電気的に接続するコネクタ65と、がさらに設けられる。
【0056】
フランジ部64は、
図4に示すように、ケース本体61の外周から径方向外側へと突出して形成された鍔状部であり、フランジ部64には、ボルト68が挿通する金属製のカラー66がインサート成形によって予め埋設される。
【0057】
カラー66は、ボルト68が挿通する挿通孔としての貫通孔66aを有する筒状部材であり、貫通孔66aの軸方向における長さは、フランジ部64の厚さよりも長く設定される。また、カラー66の外周面には、インサート成形後にフランジ部64から抜け出てしまうことを防止するために凹凸部が設けられる。
【0058】
フランジ部64が締結される第1ハウジング11には、フランジ部64に対向する対向部としての平面状の取付面11cと、取付面11cに開口するネジ穴11dと、が形成される。カラー66を挿通したボルト68がネジ穴11dに螺着されることによって、ケース60は第1ハウジング11に取り付けられる。
【0059】
また、
図4に示すように、取付面11cと、取付面11cに対向するフランジ部64の対向面64aとの間には、液状シール材としてのシリコーン製の液状ガスケット19が充填される。硬化した液状ガスケット19は、ゴム弾性体となり、その反発力は第1ハウジング11の取付面11cとフランジ部64の対向面64aとに作用する。これにより第1ハウジング11とケース60との間を通じて外部から第1ハウジング11内へ泥水等が侵入することが防止される。
【0060】
また、ケース本体61の挿通部61aとフランジ部64との間の部分には、挿通孔11aの内径よりも径が大きく、Oリング18が保持される拡径孔11bの内径よりも僅かに径が小さい大径部61bが形成される。このように拡径孔11bに僅かな隙間を介して挿入される大径部61bを、挿通部61aとフランジ部64との間に設けておくことによって、液状ガスケット19が充填される取付面11cと対向面64aとの間の空間と、Oリング18が保持される空間と、を連通する部分の面積が狭められるため、硬化する前の液状ガスケット19がOリング18に付着し、Oリング18のシール性能が低下してしまうことを防止することができる。
【0061】
なお、取付面11cと対向面64aとの間の空間から液状ガスケット19が意図しない領域へと漏れ出てしまうことを抑制するためには、フランジ部64及び第1ハウジング11の少なくとも一方に液状ガスケット19が塗布される領域を区画する区画壁、例えば、フランジ部64の外縁に沿って形成される突出壁を設けることが好ましい。
【0062】
ここで、硬化後の液状ガスケット19は弾性を有することから、第1ハウジング11にケース60を締結する方向において、第1ハウジング11とケース60との間に液状ガスケット19が介在していると、集磁リング41,42と、この外周面に接する集磁ヨーク51,52と、の間隔が振動や液状ガスケット19の熱膨張等によって変化し集磁リング41,42と集磁ヨーク51,52との接触状態が不安定になるおそれがある。
【0063】
集磁リング41,42と集磁ヨーク51,52との接触状態が安定しないと、磁気センサ54へと磁束が導かれにくくなって磁気センサ54の検出値が不安定となり、トルクセンサ100において正確なトルクを検出することができなくなるおそれがある。
【0064】
そこで本実施形態では、第1ハウジング11にケース60を締結する方向において液状ガスケット19が設けられる隙間Gの大きさが、常に一定の大きさとなるようにすることによって、集磁リング41,42と集磁ヨーク51,52との接触状態を安定させている。
【0065】
具体的には、
図4に示すように、フランジ部64に埋設されたカラー66を対向面64aから所定の長さだけ突出させておくことにより、対向面64aと取付面11cとの間の隙間Gの大きさを所定の大きさとしている。
【0066】
カラー66には、ネジ穴11dに螺着されるボルト68の軸力が作用し、カラー66の先端面が取付面11cに押し付けられることによって、取付面11cに対するフランジ部64の位置が決まる。つまり、対向面64aから突出して設けられたカラー66の突出部67の長さが隙間Gの大きさを規定することになる。
【0067】
このように、対向面64aから突出して設けられたカラー66の突出部67を、フランジ部64と取付面11cとの間に所定の大きさの隙間Gを形成するスペーサとして機能させることによって、第1ハウジング11にケース60を締結する方向において液状ガスケット19が設けられる隙間Gの大きさを常に一定の大きさとすることが可能となる。
【0068】
これにより挿通孔11aに挿通するケース60の挿通部61aの位置が一定となって集磁リング41,42と集磁ヨーク51,52との接触状態が安定することで、磁気センサ54の検出値が安定し、結果として、トルクセンサ100において正確なトルクを検出することができる。
【0069】
また、第1ハウジング11の外部とOリング18との間に液状ガスケット19を設けることによって、Oリング18が設けられる部分へ外気や泥水等が侵入することが確実に防止されるため、Oリング18の接触面である拡径孔11bの内周面が腐食し、Oリング18によるシール性が低下してしまうことを防止することができる。
【0070】
なお、フランジ部64と取付面11cとの間に何らかの部材を設けておくことによってもフランジ部64と取付面11cとの間に所定の大きさの隙間Gを形成することは可能である。しかしながら、例えば、隙間Gを形成するために設けられた部材が挿通部61aとボルト68との間に配置されている場合、ボルト68を締め付けると、この部材が支点となって、ボルト68付近の隙間Gよりも挿通部61a付近の隙間Gの方が大きくなってしまう。換言すれば、挿通孔11aから挿通部61aが僅かに抜け出てしまい、集磁リング41,42と集磁ヨーク51,52との接触状態が不安定になるおそれがある。
【0071】
また、例えば、隙間Gを形成するために設けられた部材がボルト68を挟んで挿通部61aとは反対側に設けられている場合、ボルト68を締め付けると、この部材が支点となって、この部材付近の隙間Gよりもボルト68や挿通部61a付近の隙間Gの方が小さくなってしまう。換言すれば、挿通孔11a内に挿通部61aが予め設定された長さ以上進入してしまい、集磁リング41,42に集磁ヨーク51,52が必要以上に押し付けられ、これらが破損するおそれがある。
【0072】
これに対して、本実施形態では、上述のように、隙間Gを形成するために設けられた部材であるカラー66の突出部67は、ボルト68を囲むように設けられていることから、突出部67には、ボルト68の軸力が均等に作用することになる。つまり、軸力が作用する部分と、支点となる部分と、が同じ位置に配置されているため、ボルト68を締め付けても、フランジ部64と取付面11cとの間の隙間Gの大きさはどこでも同じ均一な大きさとなる。このため、挿通孔11aに対して挿通部61aを予め設定された長さだけ進入させることが可能となり、結果として、集磁リング41,42と集磁ヨーク51,52との接触状態を安定させることができる。
【0073】
続いて、上記構成のトルクセンサ100によりトーションバー5に作用する操舵トルクを検出する方法について説明する。
【0074】
トーションバー5にトルクが作用しない中立状態では、第1軟磁性リング31の第1磁路先端部31Aと第2軟磁性リング32の第2磁路先端部32Aとは、それぞれリング磁石22のN極及びS極に同一の面積で対峙して両者を磁気短絡する。そのため、磁束は回転磁気回路部30と固定磁気回路部40に導かれない。
【0075】
運転者によるステアリングホイールの操作によってトーションバー5に特定の方向のトルクが作用した場合には、このトルクの方向に応じてトーションバー5はねじれ変形する。トーションバー5がねじれ変形すると、第1磁路先端部31AがS極よりN極に大きな面積を持って対峙する一方、第2磁路先端部32AがN極よりS極に大きな面積を持って対峙する。リング磁石22からの磁束は回転磁気回路部30を通じて固定磁気回路部40に導かれる。具体的には、N極から第1軟磁性リング31、第1集磁リング41、第1集磁ヨーク51、第2集磁ヨーク52、第2集磁リング42、第2軟磁性リング32を経由してS極に向かう経路である。第1集磁ヨーク51と第2集磁ヨーク52の間の磁気ギャップに設置された磁気センサ54は、磁束の大きさ及び方向に応じた電圧値を出力する。
【0076】
一方、運転者によるステアリングホイールの操作によってトーションバー5に上記とは逆方向のトルクが作用した場合には、このトルクの方向に応じてトーションバー5が逆方向にねじれ変形する。トーションバー5がねじれ変形すると、第1磁路先端部31AがN極よりS極に大きな面積を持って対峙する一方、第2磁路先端部32AがS極よりN極に大きな面積を持って対峙する。リング磁石22からの磁束は、回転磁気回路部30を通じて固定磁気回路部40に導かれるが、上記とは逆の経路となる。具体的には、N極から第2軟磁性リング32、第2集磁リング42、第2集磁ヨーク52、第1集磁ヨーク51、第1集磁リング41、第1軟磁性リング31を経由してS極に向かう経路である。第1集磁ヨーク51と第2集磁ヨーク52の間の磁気ギャップに設置された磁気センサ54は、磁束の大きさ及び方向に応じた電圧値を出力する。
【0077】
運転者の操作によりステアリングホイールに入力される操舵トルクが大きい程、トーションバー5のねじれ変形量が多くなるため、第1磁路先端部31Aがリング磁石22のN極とS極に対峙する面積差、及び第2磁路先端部32Aがリング磁石22のN極とS極に対峙する面積差が大きくなり、磁気ギャップに誘導される磁束が大きくなる。これに応じて、磁気センサ54の出力電圧も増大する。
【0078】
以上の実施形態によれば、以下に示す効果を奏する。
【0079】
上記構成のトルクセンサ100では、ケース60のフランジ部64と第1ハウジング11の取付面11cとの間に、フランジ部64と取付面11cとの間に所定の大きさの隙間Gを形成するスペーサとして機能するカラー66の突出部67が設けられる。
【0080】
このようにボルト68の締結方向において液状ガスケット19が充填される隙間Gの大きさは、ケース60のフランジ部64と第1ハウジング11の取付面11cとの間に設けられたカラー66の突出部67によって所定の大きさに規定される。このため、ボルト68の締結方向において、ケース60と第1ハウジング11との間に液状ガスケット19が介在していても、集磁ヨーク51,52は、集磁リング41,42に対して安定して接触することになる。この結果、第1ハウジング11とケース60との間のシール性を向上させることができるとともに、トルクセンサ100によるトルクの検出を安定させることができる。
【0081】
なお、次のような変形例も本発明の範囲内であり、変形例に示す構成と上述の実施形態で説明した構成を組み合わせたり、以下の異なる変形例で説明する構成同士を組み合わせたりすることも可能である。
【0082】
上記実施形態では、カラー66の突出部67が、フランジ部64と取付面11cとの間に所定の大きさの隙間Gを形成するスペーサとして設けられている。これに代えて、スペーサは、
図5に示す第1変形例のように、カラー66とは別部材であるスペーサ69であってもよいし、
図6に示す第2変形例のように、フランジ部64から突出して形成された突起部64cであってもよい。
【0083】
図5に示されるスペーサ69は、ボルト68が挿通する貫通孔69aを有する環状部材であり、カラー66と同じく金属製である。この場合、スペーサ69には、カラー66を介して、ネジ穴11dに螺着されるボルト68の軸力が作用し、スペーサ69の一端面が取付面11cに押し付けられることによって、取付面11cに対するフランジ部64の位置が決まる。つまり、スペーサ69の厚さが隙間Gの大きさを規定することになる。
【0084】
したがって、第1変形例においても、上記実施形態と同様に、ボルト68の締結方向において、ケース60と第1ハウジング11との間に液状ガスケット19が介在していても、集磁ヨーク51,52は、集磁リング41,42に対して安定して接触することになる。
【0085】
なお、第1変形例におけるスペーサ69は、一般的に流通している平ワッシャであってもよく、複数の平ワッシャを重ね合わせることによって構成されてもよい。
【0086】
図6に示されるスペーサとしての突起部64cは、フランジ部64に形成されたボルト68が挿通する挿通孔としての貫通孔64bを囲むようにして環状に突出して形成された部分であり、フランジ部64と一体的に形成されている。この場合、突起部64cには、ネジ穴11dに螺着されるボルト68の軸力が作用し、突起部64cの先端面が取付面11cに押し付けられることによって、取付面11cに対するフランジ部64の位置が決まる。つまり、突起部64cの突出長さが隙間Gの大きさを規定することになる。
【0087】
したがって、第2変形例においても、上記実施形態と同様に、ボルト68の締結方向において、ケース60と第1ハウジング11との間に液状ガスケット19が介在していても、集磁ヨーク51,52は、集磁リング41,42に対して安定して接触することになる。
【0088】
なお、第2変形例における突起部64cは、フランジ部64側ではなく、第1ハウジング11側に設けられていてもよく、この場合、突起部64cは、ネジ穴11dを囲むようにして環状に突出して第1ハウジング11と一体的に形成される。
【0089】
以下、本発明の実施形態の構成、作用、及び効果をまとめて説明する。
【0090】
ハウジング11,12内に回転自在に支持された入力シャフト3と出力シャフト4とを連結するトーションバー5に作用するトルクを検出するトルクセンサ100は、入力シャフト3と共に回転する磁気発生部20と、出力シャフト4と共に回転する回転磁気回路部30と、回転磁気回路部30の外周に沿って環状に設けられ、第1ハウジング11に固定される固定磁気回路部40と、トーションバー5のねじれ変形に伴って磁気発生部20から回転磁気回路部30を通じて固定磁気回路部40に導かれる磁束密度を検出する磁気検出部50と、を備え、磁気検出部50は、磁束密度を検出する磁気センサ54と、固定磁気回路部40を介して回転磁気回路部30からの磁束を集めて磁気センサ54へと導く第1集磁ヨーク51及び第2集磁ヨーク52と、磁気センサ54を収容するとともに第1集磁ヨーク51及び第2集磁ヨーク52を保持するケース60と、を有し、ケース60がボルト68を介して第1ハウジング11に取り付けられることにより第1集磁ヨーク51及び第2集磁ヨーク52が固定磁気回路部40の外周に当接するように構成され、ケース60には、ボルト68が挿通する貫通孔66a,64bが形成されたフランジ部64が設けられ、第1ハウジング11には、ボルト68の締結方向においてフランジ部64と対向する取付面11cが設けられ、フランジ部64と取付面11cとの間には、フランジ部64と取付面11cとの間に所定の大きさの隙間Gを形成するスペーサ(突出部67,スペーサ69,突起部64c)が設けられ、隙間Gには、液状ガスケット19が充填される。
【0091】
この構成では、ケース60のフランジ部64と第1ハウジング11の取付面11cとの間に、フランジ部64と取付面11cとの間に所定の大きさの隙間Gを形成するスペーサ67,69,64cが設けられる。このようにボルト68の締結方向において液状ガスケット19が充填される隙間Gの大きさは、ケース60のフランジ部64と第1ハウジング11の取付面11cとの間に設けられたスペーサ67,69,64cによって所定の大きさに規定される。このため、ボルト68の締結方向において、ケース60と第1ハウジング11との間に液状ガスケット19が介在していても、集磁ヨーク51,52は、集磁リング41,42に対して安定して接触することになる。この結果、第1ハウジング11とケース60との間のシール性を向上させることができるとともに、トルクセンサ100によるトルクの検出を安定させることができる。
【0092】
また、スペーサ67,69,64cには、ボルト68が挿通する貫通孔66a,69a,64bが設けられる。
【0093】
この構成では、スペーサ67,69,64cに形成された貫通孔66a,69a,64bに挿通するボルト68によって、フランジ部64が第1ハウジング11に取り付けられる。このように、隙間Gの大きさを規定するスペーサ67,69,64cを、ボルト68を囲むように設けることによって、スペーサ67,69,64cにはボルト68の軸力が均等に作用する。このため、ボルト68を締め付けても、フランジ部64と取付面11cとの間の隙間Gの大きさはどこでも同じ大きさとなることから、挿通孔11aに対して挿通部61aを予め設定された長さだけ進入させることが可能となり、結果として、集磁リング41,42と集磁ヨーク51,52との接触状態を安定させることができる。
【0094】
また、フランジ部64には、ボルト68が挿通しボルト68の軸力が作用する筒状のカラー66が埋設されており、スペーサは、カラー66のうち、フランジ部64から取付面11cに向かって突出した突出部67である。
【0095】
この構成では、フランジ部64に埋設されたカラー66の突出部67がスペーサとして機能する。このように、フランジ部64に埋設されたカラー66の一部をスペーサとして流用することによって、ボルト68の締結方向において液状ガスケット19が充填される隙間Gの大きさを、大幅なコストの上昇を伴うことなく、容易に所望の大きさに規定することができる。
【0096】
また、スペーサは、フランジ部64及び取付面11cの何れか一方に形成された突起部64cである。
【0097】
この構成では、フランジ部64及び取付面11cの何れか一方に形成された突起部64cがスペーサとして機能する。このように、フランジ部64や取付面11cに形成された突起部64cをスペーサとして流用することによって、ボルト68の締結方向において液状ガスケット19が充填される隙間Gの大きさを、大幅なコストの上昇を伴うことなく、容易に所望の大きさに規定することができる。
【0098】
以上、本発明の実施形態について説明したが、上記実施形態は本発明の適用例の一部を示したに過ぎず、本発明の技術的範囲を上記実施形態の具体的構成に限定する趣旨ではない。
【符号の説明】
【0099】
100・・・トルクセンサ、1・・・電動パワーステアリング装置、3・・・入力シャフト(第1シャフト)、4・・・出力シャフト(第2シャフト)、5・・・トーションバー、11・・・第1ハウジング(ハウジング)、11c・・・取付面(対向部)、12・・・第2ハウジング(ハウジング)、19・・・液状ガスケット(液状シール材)、20・・・磁気発生部、30・・・回転磁気回路部、40・・・固定磁気回路部、41・・・第1集磁リング、42・・・第2集磁リング、50・・・磁気検出部、51・・・第1集磁ヨーク(集磁ヨーク)、52・・・第2集磁ヨーク(集磁ヨーク)、54・・・磁気センサ(磁気検出器)、60・・・ケース、64・・・フランジ部、64b・・・貫通孔(挿通孔)、64c・・・突起部(スペーサ)、66・・・カラー、66a・・・貫通孔(挿通孔)、67・・・突出部(スペーサ)、68・・・ボルト(締結部材)、69・・・スペーサ、69a・・・貫通孔