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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022051190
(43)【公開日】2022-03-31
(54)【発明の名称】回転機械
(51)【国際特許分類】
   H02K 1/27 20220101AFI20220324BHJP
   H02K 21/16 20060101ALI20220324BHJP
【FI】
H02K1/27 501M
H02K21/16 M
【審査請求】未請求
【請求項の数】12
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020157530
(22)【出願日】2020-09-18
(71)【出願人】
【識別番号】000000099
【氏名又は名称】株式会社IHI
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100113435
【弁理士】
【氏名又は名称】黒木 義樹
(74)【代理人】
【識別番号】100170818
【弁理士】
【氏名又は名称】小松 秀輝
(74)【代理人】
【識別番号】100116920
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 光
(72)【発明者】
【氏名】山口 浩二
(72)【発明者】
【氏名】軸丸 武弘
(72)【発明者】
【氏名】米山 夏樹
(72)【発明者】
【氏名】吉永 誠一郎
(72)【発明者】
【氏名】赤松 陽介
(72)【発明者】
【氏名】山田 達郎
(72)【発明者】
【氏名】角田 智哉
(72)【発明者】
【氏名】秋山 雅紘
【テーマコード(参考)】
5H621
5H622
【Fターム(参考)】
5H621BB07
5H621BB10
5H621GA04
5H621HH01
5H622AA03
5H622CA02
5H622CA07
5H622CA10
5H622CA12
5H622CB03
5H622PP01
(57)【要約】
【課題】
リラクタンストルクを用いて出力の向上が図れる回転機械を提供すること。
【解決手段】
固定子2の内側に表面磁石型の回転子3を回転可能に配置した回転機械1であって、回転子3は、回転軸線Aに沿って配置される軸部材31と、軸部材31の外周側に設けられ周方向に沿って異なる磁極を交互に形成する磁石部32とを備え、軸部材31は、回転軸線Aに垂直な断面において、d軸方向とq軸方向で異なる断面積となるように形成されている。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
固定子の内側に表面磁石型の回転子を回転可能に配置した回転機械において、
前記回転子は、回転軸線に沿って配置される軸部材と、前記軸部材の外周側に設けられ周方向に沿って異なる磁極を交互に形成する磁石部と、を備え、
前記軸部材は、前記回転軸線に垂直な断面において、前記磁石部のd軸方向と前記磁石部のq軸方向で異なる断面積となるように形成されている、
回転機械。
【請求項2】
前記軸部材は、前記回転軸線に垂直な断面において、前記d軸方向の断面積が前記q軸方向の断面積より大きくなるように形成されている、
請求項1に記載の回転機械。
【請求項3】
前記軸部材は、前記回転軸線に垂直な断面において、前記q軸方向の断面積が前記d軸方向の断面積より大きくなるように形成されている、
請求項1に記載の回転機械。
【請求項4】
固定子の内側に表面磁石型の回転子を回転可能に配置した回転機械において、
前記回転子は、回転軸線に沿って配置される軸部材と、前記軸部材の外周側に設けられ周方向に沿って異なる磁極を交互に形成する磁石部と、を備え、
前記軸部材は、前記回転軸線に垂直な断面において、前記磁石部のd軸方向と前記磁石部のq軸方向で断面の長さが異なるように形成されている、
回転機械。
【請求項5】
前記軸部材は、前記回転軸線に垂直な断面において、前記d軸方向の断面の長さが前記q軸方向の断面の長さより長くなるように形成されている、
請求項4に記載の回転機械。
【請求項6】
前記軸部材は、前記回転軸線に垂直な断面において、前記q軸方向の断面の長さが前記d軸方向の断面の長さより長くなるように形成されている、
請求項4に記載の回転機械。
【請求項7】
前記固定子は、前記d軸方向に対し前記回転子の回転方向へ先行する磁界を形成し、前記磁界を前記回転方向へ回転させて前記回転子を回転させる、
請求項2又は5に記載の回転機械。
【請求項8】
前記固定子は、前記q軸方向に対し前記回転子の回転方向へ先行する磁界を形成し、前記磁界を前記回転方向へ回転させて前記回転子を回転させる、
請求項3又は6に記載の回転機械。
【請求項9】
前記磁石部は、前記軸部材の外周側に設けられ周方向に沿って異なる磁極を交互に形成するボンド磁石と、前記ボンド磁石の内部に埋め込まれて配置される焼結磁石と、を有している、
請求項1~8のいずれか一項に記載の回転機械。
【請求項10】
固定子の内側に表面磁石型の回転子を回転可能に配置した回転機械において、
前記回転子は、回転軸線に沿って配置される軸部材と、前記軸部材の外周側に設けられ周方向に沿って異なる磁極を交互に形成する磁石部と、を備え、
前記軸部材は、前記回転軸線に垂直な断面において、前記磁石部のd軸方向と前記磁石部のq軸方向の間の角度方向で磁束の通りやすさが最大となるように、形成されている、
回転機械。
【請求項11】
前記軸部材は、前記回転軸線に垂直な断面において、前記磁石部のd軸方向と前記磁石部のq軸方向の中間の角度方向で磁束の通りやすさが最大となるように、形成されている、
請求項10に記載の回転機械。
【請求項12】
前記固定子は、前記q軸方向に向けて磁界を形成し、前記磁界を回転させて前記回転子を回転させる、
請求項10又は11に記載の回転機械。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、回転機械に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、回転機械として、例えば、特開2019-161933号公報に記載されるように、表面磁石型のロータとそのロータを備えるブラシレスモータが知られている。このロータは回転軸の周囲に複数のマグネットを有し、マグネットは異なる磁極のものを周方向に交互に配置して設けられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2019-161933号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
このような表面磁石型の回転子を備える回転機械にあっては、リラクタンストルクを用いて出力を向上させることが難しい。すなわち、表面磁石型の回転子は、永久磁石が周面に沿って配置されているため、リラクタンストルクが生じにくく、主に磁石トルクによって回転が行われる。
【0005】
そこで、リラクタンストルクを用いて出力の向上が図れる回転機械の開発が望まれている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の一態様に係る回転機械は、固定子の内側に表面磁石型の回転子を回転可能に配置した回転機械において、回転子は、回転軸線に沿って配置される軸部材と、軸部材の外周側に設けられ周方向に沿って異なる磁極を交互に形成する磁石部を備え、軸部材は、回転軸線に垂直な断面において、磁石部のd軸方向と磁石部のq軸方向で異なる断面積となるように形成されている。この回転機械によれば、回転子の軸部材が磁石部のd軸方向とq軸方向で異なる断面積となるように形成されているため、軸部材においてd軸方向とq軸方向で磁束の通りやすさを異ならせることができる。これにより、回転機械の駆動時においてリラクタンストルクを用いて、回転機械の出力を向上させることができる。
【0007】
また、本開示の一態様に係る回転機械において、軸部材は、回転軸線に垂直な断面において、d軸方向の断面積がq軸方向の断面積より大きくなるように形成されていてもよい。この場合、d軸方向の断面積がq軸方向の断面積より大きくなるように回転子の軸部材が形成されているため、軸部材においてq軸方向と比べてd軸方向に磁束が通りやすくなる。これにより、回転機械の駆動時においてリラクタンストルクを用いて、回転機械の出力を向上させることができる。
【0008】
また、本開示の一態様に係る回転機械において、軸部材は、回転軸線に垂直な断面において、q軸方向の断面積がd軸方向の断面積より大きくなるように形成されていてもよい。この場合、q軸方向の断面積がd軸方向の断面積より大きくなるように回転子の軸部材が形成されているため、軸部材においてd軸方向と比べてq軸方向に磁束が通りやすくなる。これにより、回転機械の駆動時においてリラクタンストルクを用いて、回転機械の出力を向上させることができる。
【0009】
また、本開示の一態様に係る回転機械は、固定子の内側に表面磁石型の回転子を回転可能に配置した回転機械において、回転子は、回転軸線に沿って配置される軸部材と、軸部材の外周側に設けられ周方向に沿って異なる磁極を交互に形成する磁石部を備え、軸部材は、回転軸線に垂直な断面において、磁石部のd軸方向と磁石部のq軸方向で断面の長さが異なるように形成されている。この回転機械によれば、回転子の軸部材が磁石部のd軸方向とq軸方向で断面の長さが異なるように形成されているため、軸部材においてd軸方向とq軸方向で磁束の通りやすさを異ならせることができる。これにより、回転機械の駆動時においてリラクタンストルクを用いて、回転機械の出力を向上させることができる。
【0010】
また、本開示の一態様に係る回転機械において、軸部材は、回転軸線に垂直な断面において、d軸方向の断面の長さがq軸方向の断面の長さより長くなるように形成されていてもよい。この場合、d軸方向の断面の長さがq軸方向の断面の長さより長くなるように回転子の軸部材が形成されているため、軸部材においてq軸方向と比べてd軸方向に磁束が通りやすくなる。これにより、回転機械の駆動時においてリラクタンストルクを用いて、回転機械の出力を向上させることができる。
【0011】
また、本開示の一態様に係る回転機械において、軸部材は、回転軸線に垂直な断面において、q軸方向の断面の長さがd軸方向の断面の長さより長くなるように形成されていてもよい。この場合、q軸方向の断面の長さがd軸方向の断面の長さより長くなるように回転子の軸部材が形成されているため、軸部材においてd軸方向と比べてq軸方向に磁束が通りやすくなる。これにより、回転機械の駆動時においてリラクタンストルクを用いて、回転機械の出力を向上させることができる。
【0012】
また、本開示の一態様に係る回転機械において、固定子は、d軸方向に対し回転子の回転方向へ先行する回転磁界を形成し、磁界を回転方向へ回転させて回転子を回転させてもよい。軸部材のd軸方向の断面積がq軸方向の断面積より大きくなるように形成され、又は軸部材のd軸方向の断面の長さがq軸方向の断面の長さより長くなるように形成される場合、固定子が回転子に対しd軸方向に先行する回転磁界を形成することにより、回転子にリラクタンストルクを生じさせることができる。このため、回転機械の出力を向上させることができる。
【0013】
また、本開示の一態様に係る回転機械において、固定子は、q軸方向に対し回転子の回転方向へ先行する磁界を形成し、磁界を回転方向へ回転させて回転子を回転させてもよい。軸部材のq軸方向の断面積がd軸方向の断面積より大きくなるように形成され、又はq軸方向の断面の長さがd軸方向の断面の長さより長くなるように形成される場合、固定子が回転子に対しq軸方向に先行する回転磁界を形成することにより、回転子にリラクタンストルクを生じさせることができる。このため、回転機械の出力を向上させることができる。
【0014】
また、本開示の一態様に係る回転機械において、磁石部は、軸部材の外周側に設けられ周方向に沿って異なる磁極を交互に形成するボンド磁石と、ボンド磁石の内部に埋め込まれて配置される焼結磁石を有していてもよい。この場合、磁石部に焼結磁石が設けられることにより、磁石部の磁力を増強することができる。また、高抵抗のボンド磁石の内部に低抵抗の焼結磁石を配置することにより、渦電流損失を抑制しつつ、磁石部の磁力の増強を行うことができる。
【0015】
本開示の一態様に係る回転機械は、固定子の内側に表面磁石型の回転子を回転可能に配置した回転機械において、回転子は、回転軸線に沿って配置される軸部材と、軸部材の外周側に設けられ周方向に沿って異なる磁極を交互に形成する磁石部を備え、軸部材は、回転軸線に垂直な断面において、磁石部のd軸方向と磁石部のq軸方向の間の角度方向で磁束の通りやすさが最大となるように形成されている。この回転機械によれば、回転軸線に垂直な断面において、d軸方向とq軸方向の間の角度方向で磁束の通りやすさが最大となるように、軸部材が形成されていることにより、リアクタンストルクを発生させることができる。このため、表面磁石型の回転機械でありながら、リラクタンストルクを用いて出力の向上を図ることができる。
【0016】
また、本開示の一態様に係る回転機械において、軸部材は、回転軸線に垂直な断面において、磁石部のd軸方向と磁石部のq軸方向の中間の角度方向で磁束の通りやすさが最大となるように形成されていてもよい。この場合、d軸方向とq軸方向の中間の角度方向で磁束の通りやすさが最大となるように、軸部材が形成されることにより、大きいリアクタンストルクを発生させることができる。このため、表面磁石型の回転機械でありながら、リラクタンストルクを用いて出力の向上を図ることができる。
【0017】
また、本開示の一態様に係る回転機械において、固定子は、q軸方向に向けて磁界を形成し、磁界を回転方向へ回転させて回転子を回転させてもよい。この場合、固定子がq軸方向に向けて磁界を形成することにより、磁石トルク及びリアクタンストルクを大きく発生させることが可能となる。このため、表面磁石型の回転機械でありながら、大きなリラクタンストルクを発生させて出力の向上を図ることができる。
【発明の効果】
【0018】
本開示に係る発明によれば、リラクタンストルクを用いて出力の向上が図れる回転機械を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】本開示の第一実施形態に係る回転機械の概要を示す断面図である。
図2図1の回転機械の回転子の断面図である。
図3図2の回転子の斜視図である。
図4図1の回転機械の電気的構成の概要を示すブロック図である。
図5図2の回転子に加わる磁界の説明図である。
図6図1の回転機械の動作を示すフローチャートである。
図7図1の回転機械における電流位相角と出力トルクの関係を示すグラフである。
図8図1の回転機械の変形例を示す図である。
図9図1の回転機械の変形例を示す図である。
図10図1の回転機械の変形例を示す図である。
図11図1の回転機械の変形例を示す図である。
図12】本開示の第二実施形態に係る回転機械の概要を示す断面図である。
図13図12の回転機械の回転子に加わる磁界の説明図である。
図14図12の回転機械における電流位相角と出力トルクの関係を示すグラフである。
図15】本開示の第三実施形態に係る回転機械の概要を示す断面図である。
図16】本開示の第三実施形態に係る回転機械の概要を示す断面図である。
図17】本開示の第四実施形態に係る回転機械の概要を示す断面図である。
図18図17の回転機械における電流位相角と出力トルクの関係を示すグラフである。
図19図17の回転機械の変形例を示す図である。
図20図17の回転機械の変形例を示す図である。
図21図17の回転機械の変形例を示す図である。
図22図17の回転機械の変形例を示す図である。
図23図17の回転機械の変形例を示す図である。
図24図17の回転機械の変形例を示す図である。
図25】本開示の第五実施形態に係る回転機械の概要を示す断面図である。
図26図25の回転機械における電流位相角と出力トルクの関係を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本開示の実施形態について、図面を参照しながら説明する。なお、図面の説明において同一要素には同一符号を付し、重複する説明は省略する。
【0021】
図1は、本開示の第一実施形態に係る回転機械の構成を示す断面図である。図2は、図1の回転機械の回転子の断面図である。
【0022】
図1に示すように、第一実施形態に係る回転機械1は、固定子2の内側に表面磁石型の回転子3を回転可能に配置して構成される。回転機械1は、例えば電動機であり、電気エネルギの供給により回転子3を回転させて機械的エネルギを発生させる。固定子2は、回転軸線Aを中心に回転する磁界を発生させ、回転子3を回転させる。固定子2は、ハウジング4に収容されており、ハウジング4に対して回転及び移動しないように固定されている。回転子3は、ハウジング4に設けられるベアリングなどにより軸受けされ、回転軸線Aを中心に回転可能に取り付けられている。
【0023】
固定子2は、例えば、コア21及びコイル22により構成される。コア21は、磁束の通路となる鉄心であり、回転子3の外周に沿って等間隔で形成される複数のティース21aを形成している。例えば、コア21は、内側に回転子3を配置可能な円筒部21bを有し、円筒部21bの内面から回転軸線Aに向けて突出するティース21aを複数形成している。ティース21aは、コイル22を巻き付けるための部位である。ティース21aの先端は、幅広に形成されている。例えば、ティース21aは、周方向に沿って三つ形成される。
【0024】
コア21は、例えば、回転軸線Aの方向に複数の鋼板を積層させて形成される。鋼板を積層させてコア21を構成することにより、渦電流の発生を抑制でき、鉄損の低減を図ることができる。コイル22は、電流を流すための巻線であって、ティース21aに巻き付けられ、電流の流れにより回転子3に対し磁界を発生させる。例えば、磁界は、回転子3の径方向に沿って形成される。また、複数のコイル22に対し位相をずらして電流を流すことにより、回転軸線Aを中心に回転する磁界を形成することができる。
【0025】
回転子3は、回転軸線Aに沿って配置される軸部材31と、軸部材31の外周側に設けられ周方向に沿って異なる磁極を交互に形成する磁石部32を備えている。軸部材31は、棒状の部材であって、回転機械1のシャフトとして機能する。軸部材31は、例えば金属などの磁性体により形成される。また、軸部材31は、磁石部32と比べて透磁率の高い材料(例えば、強磁性体材料)を用いて形成されている。例えば、磁石部32としてボンド磁石を用いる場合、軸部材31の透磁率は、磁石部32の透磁率と比べて100倍以上高い。このため、軸部材31において磁束の通りやすい方向が回転子3において磁束の通りやすい方向となる。
【0026】
磁石部32は、軸部材31の外周を覆って設けられており、例えば軸部材31との間に他の物体を介在させずに設けられている。ただし、磁石部32と軸部材31の間に、軸部材31と磁石部32を接着するための接着剤など物体が存在するものを排除するものではない。磁石部32は、複数の磁極により構成され、例えば二つの磁極によって構成される二極タイプのものが用いられる。すなわち、磁石部32は、径方向の外周側にN極を有する磁石32a及び径方向の外周側にS極を有する磁石32bを備えている。磁石32a及び磁石32bは、軸部材31の外周を周方向に分割して配置され、軸部材31の外周をそれぞれ半分ずつ覆って設けられている。
【0027】
磁石32a及び磁石32bは、例えばボンド磁石により形成される。つまり、磁石32a及び磁石32bとして、微細な磁石を樹脂やゴムに練り込んで形成されたものが用いられる。ボンド磁石は、ゴム磁石またはプラスチック磁石とも称される。磁石32a及び磁石32bをボンド磁石により形成することにより、軸部材31の形状に対応して磁石32a及び磁石32bを容易に形成することができる。なお、磁石32a及び磁石32bとして、ボンド磁石以外の磁石を用いる場合もある。
【0028】
磁石部32の外周には、スリーブ33が取り付けられている。スリーブ33は、非磁性材料からなる円筒形の部材である。スリーブ33は、磁石部32の外周に取り付けられることにより、磁石部32を拘束する。つまり、スリーブ33は、回転子3の回転時に磁石部32が軸部材31から外れることを防止している。
【0029】
軸部材31は、回転軸線Aと垂直な断面において、磁石部32のd軸方向と磁石部32のq軸方向で異なる断面積となるように形成されている。言い換えれば、回転子3の断面が円形である場合、軸部材31は、d軸方向とq軸方向で軸部材31と磁石部32の断面積の割合が異なるように、形成されている。また、軸部材31は、回転軸線Aと垂直な断面において、磁石部32のd軸方向と磁石部32のq軸方向で断面の長さが異なるように形成されている。磁石部32のd軸方向は、磁石部32の主磁束方向であり、例えば外周側がN極となる磁石32aの周方向の中央を通る方向となる。磁石部32のq軸方向は、磁石32aと磁石32bの境界線に沿った方向となる。例えば、磁石部32が二極タイプである場合、d軸方向とq軸方向は直交している。
【0030】
軸部材31は、例えば、回転軸線Aと垂直な断面において、d軸方向の断面積がq軸方向の断面積より大きくなるように形成されている。また、軸部材31は、例えば、回転軸線Aと垂直な断面において、d軸方向の断面がq軸方向の断面より長くなるように形成されている。軸部材31は、少なくとも磁石部32が設けられる軸方向の位置において、径方向の断面が非円形となるように形成され、例えば回転軸線Aと垂直な断面において円形の両端を削り落とした形状とされる。つまり、軸部材31は、q軸方向の両端を削り落とすことにより、回転軸線Aと垂直な断面においてd軸方向の断面積がq軸方向の断面積より大きくなり、d軸方向の断面の長さがq軸方向の断面の長さより長くなっている。軸部材31の断面を非円形とすることにより、断面が円形の場合と比べて、磁石部32と軸部材31とのトルク伝達に対する性能を向上させることができる。すなわち、磁石部32と軸部材31の相対ずれを抑制することができ、磁石部32と軸部材31を一体として確実に回転させることができる。
【0031】
図2に示すように、軸部材31は、回転軸線Aと垂直な断面において、d軸方向の断面積がq軸方向の断面積より大きく、d軸方向の断面の長さがq軸方向の断面の長さより長くなっている。例えば、d軸方向とq軸方向の中間を通る中間線Mを設定した場合、軸部材31の断面において、d軸と中間線Mの間の断面積Sdは、q軸と中間線Mの間の断面積Sqよりも大きい。このため、軸部材31においてq軸方向と比べてd軸方向に磁束が通りやすくなり、回転子3においてq軸方向と比べてd軸方向に磁束が通りやすくなる。すなわち、軸部材31は磁石部32に対し十分に透磁率が高いため、軸部材31においてd軸方向に磁束を通りやすくすることにより、回転子3においてd軸方向に磁束が通りやすくなる。また、磁束の通りやすさ(合成透磁率)は、次の式により表すことができる。
【0032】
【数1】
【0033】
この式において、磁束の通りやすさ(合成透磁率)は、回転軸線Aと交差し径方向に延びる直線上で回転子3を構成する材料の透磁率を足しあげたものである。この式は、回転軸線Aをz方向とする円筒座標において磁束の通りやすさを算出したものであり、μは材料の透磁率、Rは対象となる断面における回転子3の半径であり、θは回転子3の周方向の角度である。このように、回転子3においてq軸方向と比べてd軸方向に磁束を通りやすくすることにより、回転機械1の駆動時にリラクタンストルクを生じさせることができる。また、例えば、軸部材31の断面において、d軸方向の長さLdは、q軸方向の長さLqよりも長い。このため、軸部材31においてq軸方向と比べてd軸方向に磁束が通りやすくなり、回転子3においてq軸方向と比べてd軸方向に磁束が通りやすくなる。これにより、回転機械1の駆動時にリラクタンストルクを生じさせることができる。
【0034】
図3は、回転子3の斜視図である。図3に示すように、回転子3の軸部材31は、回転軸線Aに沿って延びており、磁石部32から突出して設けられている。軸部材31において、磁石部32から延び出る延出部311は、断面形状が円形とされる。延出部311は、ハウジング4に対し軸受けされる部位である。延出部311のうちハウジング4から外部へ延出する部分は、回転機械1の出力軸として用いられる。軸部材31は、少なくとも磁石部32が設けられる軸方向の位置において、磁石部32のd軸方向と磁石部32のq軸方向で異なる断面積となるように形成されており、磁石部32のd軸方向と磁石部32のq軸方向で断面の長さが異なるように形成されている。言い換えれば、軸部材31は、磁石部32が設けられていない軸方向の位置において、磁石部32のd軸方向と磁石部32のq軸方向で異なる断面積となっていなくてもよく、磁石部32のd軸方向と磁石部32のq軸方向で断面の長さが異なるように形成されていなくてもよい。また、軸部材31は、回転軸線Aに対し直交する断面において、回転軸線Aに沿って断面形状が変化する移行部を備えていてもよい。本実施形態の移行部は磁石部32の回転軸線Aの方向の端面と面一となるように形成されている。
【0035】
図4は、回転機械1の電気的構成の概要を示すブロック図である。図4に示すように、固定子2の三つのコイル22は、例えばY結線(星形結線)により接続されている。つまり、各コイル22の一端は互いに接続され、他端はインバータ91に接続されている。このコイル22は、三相交流電流を流されることにより、回転子3に対し回転する磁界を与える。インバータ91は、直流電圧を交流電圧に変換する機器であり、例えば三相交流電圧をコイル22に印加する。インバータ91としては、例えば六つのパワートランジスタを用いたブリッジ回路が用いられる。インバータ91は、制御器92の制御信号を受けて作動し、コイル22に電流を供給する。制御器92は、外部からの作動指令に応じてインバータ91に対し制御信号を出力する。制御器92は、回転機械1の制御を行う電子制御機器であり、例えばCPU、ROM、RAMを含むコンピュータにより構成される。インバータ91及び制御器92は、固定子2及び回転子3を収容するハウジング4と一体に構成してもよいし、ハウジング4の外部に設置されていてもよい。また、インバータ91は、制御器92の内部に設けられていてもよい。
【0036】
回転機械1には、回転子3の回転状態を検出するセンサ5を備えている。センサ5としては、例えばホール素子などの磁気センサやロータリエンコーダなどが用いられる。センサ5は制御器92に接続され、センサ5の出力信号は制御器92に入力される。制御器92は、センサ5の出力信号に基づいて、回転子3及び軸部材31の回転位置及び回転速度の一部又は全部を含む回転状態を認識する。なお、本実施形態では、センサ5を用いているが、センサレス制御などによって回転子3の回転位置を検出してもよく、センサ5の設置を省略する場合もある。
【0037】
図5は、固定子2によって生成される磁界Bを示す図である。図5の磁界Bの向きは、固定子2により生成される磁界Bの代表的な向き(磁界Bの中心の向き又は磁界Bの平均の向き)を一本の磁力線で示したものである。回転機械1では、例えば、磁界Bが回転子3のd軸方向とq軸方向の間に向くように形成される。つまり、固定子2は、d軸方向に対し回転子3の回転方向DRへ先行する磁界Bを形成し、磁界Bを回転方向DRへ回転させて回転子3を回転させる。図5において、回転方向DRは、反時計回りの方向となっている。
【0038】
表面磁石型の回転機械(例えば、表面磁石型のモータ)では、回転駆動時に、q軸方向に向けて磁界を形成させるのが一般的である。これは、磁石トルクを有効に作用させるためである。一般の表面磁石型の回転機械ではリラクタンストルクがほとんど生じないため、磁石トルクを効果的に働かせるように、磁界をq軸方向に向けて形成している。
【0039】
これに対し、本開示に係る回転機械1では、磁界Bが回転子3のd軸方向とq軸方向の間に向くように形成され、リラクタンストルクを高めている。このとき、磁界Bの向きは、q軸方向とd軸方向の中間方向としてもよい。つまり、二極の回転子3の場合、d軸方向と磁界Bの向きの間の角度θが45度となるように、磁界Bが形成されてもよい。このように磁界Bを形成することにより、リタクタンストルクの向上が図れる。また、磁界Bの向きは、d軸方向よりq軸方向に近い向きとしてもよい。つまり、二極の回転子3の場合、d軸方向と磁界Bの向きの間の角度θが45度より大きく90度未満となる角度となるように、磁界Bが形成されてもよい。このように磁界Bを形成することにより、リタクタンストルクの向上が図れる。本開示に係る回転機械1では、軸部材31がd軸方向に扁平となっている。このため、軸部材31を通過する磁束は大凡d軸方向に向くこととなる。このため、磁界Bにより磁石部32の磁力が相殺されることを抑制することができる。
【0040】
次に、本開示に係る回転機械1の動作について説明する。
【0041】
図6は、回転機械1の動作を示すフローチャートであり、回転機械1の作動制御処理を示している。図6の制御処理は、例えば制御器92により実行され、この制御処理により回転機械1が作動する。まず、ステップS10(以下、単に「S10」という。S10以降のステップについても同様とする。)に示すように、指令信号の読み込み処理が行われる。この指令信号の読み込み処理は、制御器92に対し入力される指令信号を読み込む処理である。指令信号は、回転機械1の作動についての指令信号であり、例えば回転機械1の回転速度の信号が該当する。この指令信号は、例えば外部の機器やインターフェースなどから制御器92に入力される。
【0042】
S12に処理が移行し、回転位置の検出処理が行われる。この検出処理は、回転子3の回転位置を検出する処理である。例えば、制御器92は、センサ5の出力信号に基づいて回転子3の磁極の位置を検出する。なお、この回転位置の検出処理において、センサ5を用いずに回転子3の回転位置を検出してもよい。例えば、制御器92は、各コイル22の誘起電圧検出を行って回転子3の回転位置を検出してもよい。次に、S14に処理が移行し、制御信号の生成処理が行われる。制御信号の生成処理は、インバータ91へ出力する制御信号を生成する処理である。制御信号の生成は、例えば、S10の指令信号及びS12の検出結果を基づいて行われる。具体的には、回転子3の回転位置に対し磁界Bが先行するように制御信号が生成される。つまり、制御信号は、図5に示すように、磁界Bが回転子3のd軸方向とq軸方向の間に向けて形成されるように、生成される。このように制御信号が生成されることにより、リラクタンストルクの向上を図ることができる。
【0043】
また、制御信号は、d軸方向よりq軸方向に近い向きに磁界Bが形成されるように、生成されてもよい。例えば、制御信号は、回転子3が二極の場合、d軸方向との間の角度θが45度より大きく90度未満となる向きに磁界Bが形成されるように、生成されてもよい。このように制御信号が生成されることにより、リラクタンストルクの向上を図ることができる。
【0044】
そして、図6のS16に処理が移行し、信号出力処理が行われる。信号出力処理は、S14にて生成された制御信号を出力する処理である。例えば、制御器92は、S14にて生成された制御信号をインバータ91に対して出力する。これにより、インバータ91は、制御信号に応じた駆動電流を生成し、回転機械1へ駆動電流を出力する。回転機械1の固定子2には駆動電流が入力され、固定子2のコイル22に電流が流れる。このため、d軸方向に対し回転子3の回転方向DRへ先行する磁界Bが形成され、回転子3及び軸部材31が回転する。このとき、図5に示すように、磁界Bが回転子3のd軸方向とq軸方向の間の向きに形成される。このように磁界Bが形成されることにより、リラクタンストルクの向上を図ることができる。また、磁界Bがd軸方向よりq軸方向に近い向きに形成されてもよい。このように磁界Bが形成されることにより、リラクタンストルクの向上を図ることができる。
【0045】
そして、図6のS18に処理が移行し、回転機械1の作動を終了するか否かが判定される。例えば、制御器92に対し作動終了すべき信号が入力されていない場合、回転機械1の作動を終了しないと判定され、S10に処理が戻る。そして、S10~S16の処理が継続して実行される。これに対し、例えば、制御器92に対し作動終了すべき信号が入力された場合、回転機械1の作動を終了すると判定され、図6の一連の制御処理を終了する。
【0046】
以上説明したように、本実施形態に係る回転機械1によれば、回転子3の軸部材31がd軸方向とq軸方向で異なる断面積となるように形成されている。このため、軸部材31においてd軸方向とq軸方向で磁束の通りやすさを異ならせることができ、回転子3においてd軸方向とq軸方向で磁束の通りやすさを異ならせることができる。これにより、回転機械1の駆動時においてリラクタンストルクを生じさせることができる。このリラクタンストルクを用いることにより、回転機械1の出力を向上させることができる。
【0047】
また、本実施形態に係る回転機械1によれば、d軸方向の断面積Sdがq軸方向の断面積Sqより大きくなるように、回転子3の軸部材31が形成される。このため、軸部材31においてq軸方向に比べてd軸方向に磁束を通りやすくすることができ、回転子3においてq軸方向に比べてd軸方向に磁束を通りやすくすることができる。これにより、回転機械1の駆動時においてリラクタンストルクを生じさせることができる。このリラクタンストルクを用いることにより、回転機械1の出力を向上させることができる。例えば、図7に示すように、回転機械1の出力トルクTは、磁石トルクTmとリラクタンストルクTrを合わせたトルクとなり、電流位相角を調整することで磁石トルクTmのみの出力と比べて出力が向上することがわかる。図7の縦軸は回転機械1の出力のトルクであり、横軸は電流位相角である。電流位相角は、d軸を基準として回転方向を正としている。
【0048】
また、本実施形態に係る回転機械1によれば、回転子3の軸部材31がd軸方向とq軸方向で断面の長さが異なるように形成されている。このため、軸部材31においてd軸方向とq軸方向で磁束の通りやすさを異ならせることができる。これにより、回転機械1の駆動時においてリラクタンストルクを生じさせることができる。このリラクタンストルクを用いることにより、回転機械の出力を向上させることができる。
【0049】
また、本実施形態に係る回転機械1によれば、d軸方向の断面の長さLdがq軸方向の断面の長さLqより長くなるように、回転子3の軸部材31が形成される。このため、軸部材31においてq軸方向に比べてd軸方向に磁束を通りやすくすることができ、回転子3においてq軸方向に比べてd軸方向に磁束を通りやすくすることができる。これにより、回転機械1の駆動時においてリラクタンストルクを生じさせることができる。このリラクタンストルクを用いることにより、回転機械1の出力を向上させることができる。
【0050】
また、本実施形態に係る回転機械1によれば、固定子2が回転子3に対しd軸方向に先行して回転する磁界Bを形成することによりマグネットトルクを利用しながら、軸断面長手方向に先行して回転する磁界Bを形成することにより回転子3にリラクタンストルクを生じさせることができる。このため、回転機械1の出力を向上させることができる。
【0051】
以上のように、本開示の第一実施形態について説明したが、本開示の回転機械は、上述した第一実施形態に回転機械1に限定されるものではない。例えば、上述した第一実施形態では、回転子3の軸部材31が円形の両端を削り落とした断面形状であったが、その他の断面形状であってもよい。
【0052】
具体的には、図8の(a)に示すように、回転子3の軸部材31は、円形の両端に内側へ窪む凹部31aを形成した断面で形成されていてもよい。すなわち、軸部材31の断面において、q軸方向に沿って内側へ窪む凹部31aが形成されていてもよい。この場合であっても、軸部材31は、d軸方向の断面積がq軸方向の断面積より大きく、d軸方向の断面の長さがq軸方向の断面の長さより長くなっている。このため、軸部材31においてq軸方向に比べてd軸方向に磁束を通りやすくすることができ、回転子3においてq軸方向に比べてd軸方向に磁束を通りやすくすることができる。これにより、上述した第一実施形態と同様に、d軸方向に沿って磁束が通りやすくなり、リラクタンストルクを高めることができる。
【0053】
また、図8の(b)に示すように、軸部材31の断面において、円形の両端で内側へ窪む凹部31aは、複数形成されていてもよい。例えば、軸部材31の断面において、円形の両側にそれぞれq軸方向に沿って内側へ窪む三つの凹部31aが形成されていてもよい。この場合であっても、軸部材31は、d軸方向の断面積がq軸方向の断面積より大きくなっている。このため、軸部材31においてq軸方向に比べてd軸方向に磁束を通りやすくすることができ、回転子3においてq軸方向に比べてd軸方向に磁束を通りやすくすることができる。これにより、上述した第一実施形態と同様に、d軸方向に沿って磁束が通りやすくなり、リラクタンストルクを高めることができる。
【0054】
また、図8の(c)に示すように、回転子3の軸部材31は、円形の両端に外側へ突出する凸部31bを形成した断面で形成されていてもよい。すなわち、軸部材31の断面において、d軸方向に沿って外側へ突出する凸部31bが形成されていてもよい。この場合であっても、軸部材31は、d軸方向の断面積がq軸方向の断面積より大きく、d軸方向の断面の長さがq軸方向の断面の長さより長くなっている。このため、軸部材31においてq軸方向に比べてd軸方向に磁束を通りやすくすることができ、回転子3においてq軸方向に比べてd軸方向に磁束を通りやすくすることができる。これにより、上述した第一実施形態と同様に、d軸方向に沿って磁束が通りやすくなり、リラクタンストルクを高めることができる。
【0055】
また、図8の(d)に示すように、軸部材31の断面において、円形の両端で外側へ突出する凸部31bは、複数形成されていてもよい。例えば、軸部材31の断面において、円形の両側にそれぞれd軸方向に沿って外側へ突出する三つの凸部31bが形成されていてもよい。この場合であっても、軸部材31は、d軸方向の断面積がq軸方向の断面積より大きく、d軸方向の断面の長さがq軸方向の断面の長さより長くなっている。このため、軸部材31においてq軸方向に比べてd軸方向に磁束を通りやすくすることができ、回転子3においてq軸方向に比べてd軸方向に磁束を通りやすくすることができる。これにより、上述した第一実施形態と同様に、d軸方向に沿って磁束が通りやすくなり、リラクタンストルクを高めることができる。
【0056】
また、図9の(a)に示すように、回転子3の軸部材31は、楕円形の断面で形成されていてもよい。すなわち、軸部材31の断面は、d軸方向に長軸を向けた楕円形であってもよい。この場合であっても、軸部材31は、d軸方向の断面積がq軸方向の断面積より大きく、d軸方向の断面の長さがq軸方向の断面の長さより長くなっている。このため、軸部材31においてq軸方向に比べてd軸方向に磁束を通りやすくすることができ、回転子3においてq軸方向に比べてd軸方向に磁束を通りやすくすることができる。これにより、上述した第一実施形態と同様に、d軸方向に沿って磁束が通りやすくなり、リラクタンストルクを高めることができる。
【0057】
また、図9の(b)に示すように、回転子3の軸部材31は、q軸方向へ向けて形成される貫通孔31cを形成されていてもよい。すなわち、軸部材31の断面は、円形の中央にq軸方向へ向けた貫通孔31cが形成されている。この場合であっても、軸部材31は、d軸方向の断面積がq軸方向の断面積より大きく、d軸方向の断面の長さがq軸方向の断面の長さより長くなっている。このため、軸部材31においてq軸方向に比べてd軸方向に磁束を通りやすくすることができ、回転子3においてq軸方向に比べてd軸方向に磁束を通りやすくすることができる。これにより、上述した第一実施形態と同様に、d軸方向に沿って磁束が通りやすくなり、リラクタンストルクを高めることができる。また、このような軸部材31を備えることにより、磁石部32の磁力を高めることができ、磁石トルクを高めることができる。
【0058】
また、図9の(c)に示すように、回転子3の軸部材31は、矩形の断面で形成されていてもよい。例えば、軸部材31の断面は、長辺をd軸方向に向けた長方形としてもよい。この場合であっても、軸部材31は、d軸方向の断面積がq軸方向の断面積より大きく、d軸方向の断面の長さがq軸方向の断面の長さより長くなっている。このため、軸部材31においてq軸方向に比べてd軸方向に磁束を通りやすくすることができ、回転子3においてq軸方向に比べてd軸方向に磁束を通りやすくすることができる。これにより、上述した第一実施形態と同様に、d軸方向に沿って磁束が通りやすくなり、リラクタンストルクを高めることができる。
【0059】
また、図9の(d)に示すように、回転子3の軸部材31は、複数の軸31dにより構成されていてもよい。例えば、軸部材31の断面は、d軸方向の断面積がq軸方向の断面積より大きく、d軸方向の断面の長さがq軸方向の断面の長さより長くなるように、複数の軸31dが配置される。具体的には、六つの軸31dが、d軸方向に沿って三つ、q軸方向に沿って二つ配列される。この場合であっても、軸部材31は、d軸方向の断面積がq軸方向の断面積より大きく、d軸方向の断面の長さがq軸方向の断面の長さより長くなっている。このため、軸部材31においてq軸方向に比べてd軸方向に磁束を通りやすくすることができ、回転子3においてq軸方向に比べてd軸方向に磁束を通りやすくすることができる。これにより、上述した第一実施形態と同様に、d軸方向に沿って磁束が通りやすくなり、リラクタンストルクを高めることができる。なお、軸31dの断面は、円形以外の形状であってもよい。また、軸31dの数は、六つ以外の数であってもよい。
【0060】
また、図10の(a)に示すように、回転子3の軸部材31は、円形の外部に磁性部材31eを設けて構成されていてもよい。例えば、軸部材31は、円形の外部にd軸方向へ離間して一つずつ磁性部材31eが形成されていてもよい。磁性部材31eは、円形断面の両側に複数形成されていてもよい。この場合であっても、軸部材31は、d軸方向の断面積がq軸方向の断面積より大きく、d軸方向の断面の長さがq軸方向の断面の長さより長くなっている。このため、軸部材31においてq軸方向に比べてd軸方向に磁束を通りやすくすることができ、回転子3においてq軸方向に比べてd軸方向に磁束を通りやすくすることができる。これにより、上述した第一実施形態と同様に、d軸方向に沿って磁束が通りやすくなり、リラクタンストルクを高めることができる。なお、磁性部材31eの断面は、矩形以外の形状でもよい。
【0061】
また、図10の(b)に示すように、回転子3の軸部材31は、円形の両端を削り落とした断面であり、削り落とした部分に非磁性体31fを取り付けて構成されていてもよい。すなわち、軸部材31は、q軸方向の両端の部分に非磁性体31fを取り付けて構成されている。この場合であっても、軸部材31は、d軸方向の断面積がq軸方向の断面積より大きく、d軸方向の断面の長さがq軸方向の断面の長さより長くなっている。このため、軸部材31においてq軸方向に比べてd軸方向に磁束を通りやすくすることができ、回転子3においてq軸方向に比べてd軸方向に磁束を通りやすくすることができる。これにより、上述した第一実施形態と同様に、d軸方向に沿って磁束が通りやすくなり、リラクタンストルクを高めることができる。また、軸部材31に非磁性体31fを取り付けることにより、軸部材31を補強することができ、軸部材31の強度を高めることができる。
【0062】
また、図10の(c)に示すように、回転子3の軸部材31は、複数の矩形の断面で形成されていてもよい。すなわち、軸部材31の断面は、d軸方向に長辺を向けた二つの長方形で構成されてもよい。この場合であっても、軸部材31は、d軸方向の断面積がq軸方向の断面積より大きく、d軸方向の断面の長さがq軸方向の断面の長さより長くなっている。このため、軸部材31においてq軸方向に比べてd軸方向に磁束を通りやすくすることができ、回転子3においてq軸方向に比べてd軸方向に磁束を通りやすくすることができる。これにより、上述した第一実施形態と同様に、d軸方向に沿って磁束が通りやすくなり、リラクタンストルクを高めることができる。
【0063】
また、上述した第一実施形態では、回転子3の軸部材31は、断面の長手方向をd軸方向に向けて形成されているが、このように構成されていなくてもよい。例えば、図11に示すように、回転子3の軸部材31は、断面の長手方向をd軸方向からずれた向きに形成されてもよい。この場合であっても、d軸方向の断面積がq軸方向の断面積より大きく又はd軸方向の断面の長さがq軸方向の断面の長さより長くなるように、軸部材31が形成されることにより、軸部材31においてq軸方向に比べてd軸方向に磁束を通りやすくすることができ、回転子3においてq軸方向に比べてd軸方向に磁束を通りやすくすることができる。これにより、上述した第一実施形態と同様に、d軸方向に沿って磁束が通りやすくなり、リラクタンストルクを高めることができる。また、図8図10に示す軸部材31に対しても、断面の長手方向をd軸方向からずれた向きとしてもよい。
【0064】
次に、本開示の第二実施形態に係る回転機械について説明する。
【0065】
図12は、第二実施形態に係る回転機械1aの回転子3aの断面図である。第二実施形態に係る回転機械1aは、第一実施形態に係る回転機械1とほぼ同様に構成され、回転子3aの構造のみが異なっている。すなわち、上述した第一実施形態に係る回転機械1の回転子3の軸部材31は、d軸方向の断面積Sdがq軸方向の断面積Sqより大きくなるように形成されd軸方向の断面の長さLdがq軸方向の断面の長さLqより長くなるように形成されていたが、第二実施形態に係る回転機械1aの回転子3aの軸部材31は、q軸方向の断面積Sqがd軸方向の断面積Sdより大きくなるように形成されq軸方向の断面の長さLqがd軸方向の断面の長さLdより長くなるように形成されている点で、第一実施形態に係る回転機械1の回転子3と異なっている。
【0066】
軸部材31は、回転軸線Aに対し垂直な断面が非円形となるように形成され、例えば回転軸線Aに対し垂直な断面において円形のd軸方向の両端をq軸に沿って削り落とした形状とされる。つまり、軸部材31は、d軸方向の両端を削り落とすことにより、q軸方向の断面積Sqがd軸方向の断面積Sdより大きくなり、q軸方向の断面の長さLqがd軸方向の断面の長さLdより長くなっている。
【0067】
図13は、固定子2によって生成される磁界Bを示す図である。図13の磁界Bの向きは、固定子2により生成される磁界Bの代表的な向き(磁界Bの中心の向き又は磁界Bの平均の向き)を一本の磁力線で示したものである。回転機械1aでは、例えば、磁界Bが回転子3aのq軸方向に先行する方向に形成される。つまり、固定子2は、q軸方向に対し回転子3aの回転方向DRへ先行する磁界Bを形成し、磁界Bを回転方向DRへ回転させて回転子3aを回転させる。図13において、回転方向DRは、反時計回りの方向となっている。
【0068】
表面磁石型の回転機械(例えば、表面磁石型のモータ)では、回転駆動時に、q軸方向に向けて磁界を形成させるのが一般的である。これは、磁石トルクを有効に作用させるためである。一般の表面磁石型の回転機械ではリラクタンストルクがほとんど生じないため、磁石トルクを効果的に働かせるように、磁界をq軸方向に向けて形成している。
【0069】
これに対し、本開示に係る回転機械1aでは、磁界Bが回転子3aの軸断面長手方向であるq軸方向に先行する向きに形成され、リラクタンストルクを高めている。このとき、磁界Bの向きは、例えば、d軸方向と磁界Bの向きの間の角度θが90度より大きく135度未満となる角度となるように、磁界Bが形成される。つまり、このように磁界Bを形成することにより、リタクタンストルクの向上が図れる。
【0070】
図14は、回転機械1aにおける出力のトルクを示したグラフである。図14の縦軸は回転機械1aの出力のトルクであり、横軸は電流位相角である。電流位相角は、d軸を基準に回転方向を正としている。図14に示すように、回転機械1aの出力トルクTは、磁石トルクTmとリラクタンストルクTrを合わせたトルクとなる。このため、電流位相角を調整することにより、磁石トルクTmのみの出力と比べて出力トルクTを向上させることが可能となる。
【0071】
以上のように、本実施形態に係る回転機械1aによれば、第一実施形態に係る回転機械1と同様な作用効果が得られる。すなわち、軸部材31においてd軸方向とq軸方向で磁束の通りやすさを異ならせることができ、回転子3aにおいてd軸方向とq軸方向で磁束の通りやすさを異ならせることができる。これにより、回転機械1の駆動時においてリラクタンストルクを用いて、回転機械1の出力を向上させることができる。
【0072】
また、本実施形態に係る回転機械1aによれば、q軸方向の断面積Sqがd軸方向の断面積Sdより大きくなるように、回転子3aの軸部材31が形成される。このため、軸部材31においてd軸方向に比べてq軸方向に磁束を通りやすくすることができ、回転子3aにおいてd軸方向に比べてq軸方向に磁束を通りやすくすることができる。これにより、回転機械1aの駆動時においてリラクタンストルクを用いて、回転機械1aの出力を向上させることができる。
【0073】
また、本実施形態に係る回転機械1aによれば、q軸方向の断面の長さLqがd軸方向の断面の長さLdより長くなるように、回転子3aの軸部材31が形成される。このため、軸部材31においてd軸方向に比べてq軸方向に磁束を通りやすくすることができ、回転子3aにおいてd軸方向に比べてq軸方向に磁束を通りやすくすることができる。これにより、回転機械1の駆動時においてリラクタンストルクを用いて、回転機械1の出力を向上させることができる。
【0074】
また、本実施形態に係る回転機械1aによれば、固定子2が回転子3aに対しq軸方向に先行して回転する磁界Bを形成することにより、軸断面長手方向に先行して回転する磁界Bを形成することとなり、回転子3aにリラクタンストルクを生じさせることができる。このため、回転機械1aの出力を向上させることができる。
【0075】
以上のように、第二実施形態の回転機械1aについて説明したが、上述したものに限定されるものではない。例えば、上述した第二実施形態では、回転子3の軸部材31が円形の両端を削り落とした断面形状であったが、その他の断面形状であってもよい。例えば、図8図11に示す軸部材31と同様な形状としてもよい。この場合、回転子3aが、q軸方向の断面積Sqがd軸方向の断面積Sdより大きくなるよう構成し、またはq軸方向の断面の長さLqがd軸方向の断面の長さLdより長くなるように構成することにより、上述した回転機械1aと同様な作用効果を得ることができる。
【0076】
次に、本開示の第三実施形態に係る回転機械について説明する。
【0077】
図15及び図16は、第三実施形態に係る回転機械の回転子の断面図である。第三実施形態に係る回転機械1b及び回転機械1cは、第一実施形態に係る回転機械1とほぼ同様に構成され、回転子3b及び回転子3cの構造が異なっている。すなわち、上述した第一実施形態に係る回転機械1は二極の回転子3を備えていたが、本実施形態に係る回転機械1b、1cは四極の回転子3b、3cを備えている。
【0078】
図15に示すように、回転機械1bは、周方向に異なる磁極を交互に四つ設けた回転子3bを備えている。回転子3bの磁石部32は、周方向に分割されて順次配置される磁石32a、32b、32c及び32dを有している。磁石32a及び32cは外側にN極の磁極を有し、磁石32b及び32dは外側にS極の磁極を有している。また、回転子3bは断面十字型の軸部材31を有し、軸部材31はd軸方向の断面積Sdがq軸方向の断面積Sqより大きくなるように形成されている。回転機械1bの駆動の際、d軸方向に先行するように磁界Bを形成すればよい。これにより、磁石トルクに加えて、リラクタンストルクを高めることができる。
【0079】
図16に示すように、回転機械1cは、周方向に異なる磁極を交互に四つ設けた回転子3cを備えている。回転子3cの磁石部32は、周方向に分割されて順次配置される磁石32a、32b、32c及び32dを有している。磁石32a及び32cは外側にN極の磁極を有し、磁石32b及び32dは外側にS極の磁極を有している。また、回転子3cは断面十字型の軸部材31を有しており、軸部材31はq軸方向の断面積Sqがd軸方向の断面積Sdより大きくなるように形成されている。回転機械1cの駆動の際、q軸方向に先行するように磁界Bを形成すればよい。これにより、磁石トルクに加えて、リラクタンストルクを高めることができる。
【0080】
このような本実施形態に係る回転機械1b、1cによれば、第一実施形態に係る回転機械1と同様な作用効果が得られる。すなわち、軸部材31においてd軸方向とq軸方向で磁束の通りやすさを異ならせることができる。これにより、回転機械1の駆動時においてリラクタンストルクを用いて、回転機械1b、1cの出力を向上させることができる。
【0081】
以上のように、第三実施形態の回転機械1b、1cについて説明したが、上述したものに限定されるものではない。例えば、上述した第三実施形態では、回転子3b、3cの軸部材31が断面十字型の形状であったが、その他の断面形状であってもよい。例えば、図8図11に示す軸部材31の態様を適用してもよい。この場合、回転子が、d軸方向の断面積Sdがq軸方向の断面積Sqより大きくなるよう構成し、またはq軸方向の断面積Sqがd軸方向の断面積Sdより大きくなるよう構成することにより、上述した回転機械1b、1cと同様な作用効果を得ることができる。特に、回転軸線Aの軸回りに四回回転対称の回転子3b、3cを用い、固定子2により二回回転対称となる磁界を形成することにより、リラクタンストルクを向上させることができる。さらに、回転子3b、3cとして周方向に異なる磁極を六つ、八つ、それ以上の数を備えたものであってもよい。この場合、軸部材31として軸回りに六回回転対称、八回回転対称、磁極数に対応する回転対称の断面形状のものを用いればよい。
【0082】
次に、本開示の第四実施形態に係る回転機械について説明する。
【0083】
図17は、第四実施形態に係る回転機械1dの回転子3dの断面図である。第四実施形態に係る回転機械1dは、第一実施形態に係る回転機械1とほぼ同様に構成され、磁石部32の構造のみが異なっている。すなわち、上述した第一実施形態に係る回転機械1の磁石部32はボンド磁石で構成される磁石32a、32bを備えていたが、第四実施形態に係る回転機械1dの磁石部32は、ボンド磁石で構成される磁石32a、32bに加えて、焼結磁石で構成される第二磁石321を備えている。
【0084】
第二磁石321は、磁石部32の磁力を強化するための焼結磁石であって、磁石32a、32bの内部に埋め込まれて配置されている。例えば、第二磁石321は、軸部材31に取り付けられ、軸部材31に接触して設けられている。具体的には、第二磁石321は、軸部材31のd軸方向の端部にそれぞれ取り付けられる。外側にN極を有する磁石32aに接する第二磁石321は、外側にN極を有するように設けられる。一方、外側にS極を有する磁石32bに接する第二磁石321は、外側にS極を有するように設けられる。回転子3dに第二磁石321を設けることにより、磁石部32の磁石を高めることができ、回転機械1の駆動時に磁石トルクを向上させることができる。第二磁石321は、焼結磁石により構成されることにより、ボンド磁石である磁石32a、32bより電気的に低抵抗の磁石となっている。つまり、高抵抗の磁石32a、32bでは渦電流の発生が抑制しやすく、低抵抗の第二磁石321では渦電流の発生が抑制しにくい。
【0085】
図18に示すように、回転機械1dの出力トルクTは、ボンド磁石トルクTmb、焼結磁石トルクTms及びリラクタンストルクTrを合わせたトルクとなる。焼結磁石トルクTmsが加わるため、出力トルクTが向上する。ボンド磁石トルクTmbは磁石32a、32bによる磁石トルクであり、焼結磁石トルクTmsは第二磁石321による磁石トルクである。図18の縦軸は回転機械1dの出力のトルクであり、横軸は電流位相角である。回転機械1dの駆動時には、第一実施形態に係る回転機械1と同様に、d軸方向に先行する磁界Bを形成すればよい。
【0086】
このような本実施形態に係る回転機械1dによれば、第一実施形態に係る回転機械1と同様な作用効果が得られる。すなわち、軸部材31においてd軸方向とq軸方向で磁束の通りやすさを異ならせることができる。これにより、回転機械1の駆動時においてリラクタンストルクを用いて、回転機械1の出力を向上させることができる。また、本実施形態に係る回転機械1dによれば、q軸方向の断面積Sqがd軸方向の断面積Sdより大きくなるように、回転子3aの軸部材31が形成される。このため、軸部材31においてq軸方向に比べてd軸方向に磁束を通りやすくすることができ、回転子3dにおいてq軸方向に比べてd軸方向に磁束を通りやすくすることができる。これにより、回転機械1dの駆動時においてリラクタンストルクを用いて、回転機械1dの出力を向上させることができる。また、本実施形態に係る回転機械1dによれば、q軸方向の断面の長さLqがd軸方向の断面の長さLdより長くなるように、回転子3aの軸部材31が形成される。このため、軸部材31においてq軸方向に比べてd軸方向に磁束を通りやすくすることができ、回転子3dにおいてq軸方向に比べてd軸方向に磁束を通りやすくすることができる。これにより、回転機械1dの駆動時においてリラクタンストルクを用いて、回転機械1dの出力を向上させることができる。
【0087】
また、本実施形態に係る回転機械1dによれば、磁石部32に第二磁石321が設けられることにより、磁石部32の磁力を増強することができる。さらに、高抵抗の磁石32a、32bの径方向の内側に低抵抗の第二磁石321が配置されている。このため、回転子3dの外周近傍に高抵抗の磁石32a、32bがあるので渦電流損失を抑制することができる。また、低抵抗の第二磁石321を回転子3dの径方向の内側に配置することにより、第二磁石321が大きな磁束変化に晒されず、渦電流損失の発生を抑制しつつ、磁石部32の磁力の増強が行える。
【0088】
以上のように、第四実施形態の回転機械1dについて説明したが、上述したものに限定されるものではない。例えば、図8図11に示される軸部材31の態様を適用してもよい。
【0089】
具体的には、図19の(a)に示すように、回転子3の軸部材31は、円形の両端に内側へ窪む凹部31aを形成した断面で形成されていてもよい。すなわち、軸部材31の断面において、q軸方向に沿って内側へ窪む凹部31aが形成されていてもよい。この場合であっても、軸部材31は、d軸方向の断面積がq軸方向の断面積より大きく、d軸方向の断面の長さがq軸方向の断面の長さより長くなっている。このため、軸部材31においてq軸方向に比べてd軸方向に磁束を通りやすくすることができ、回転子3dにおいてq軸方向に比べてd軸方向に磁束を通りやすくすることができる。これにより、上述した第四実施形態と同様に、d軸方向に沿って磁束が通りやすくなり、リラクタンストルクを高めることができる。また、第二磁石321の設置により磁石トルクが増強され、出力トルクを向上させることができる。
【0090】
また、図19の(b)に示すように、軸部材31の断面において、円形の両端で内側へ窪む凹部31aが、複数形成されていてもよい。例えば、軸部材31の断面において、円形の両側にそれぞれq軸方向に沿って内側へ窪む三つの凹部31aが形成されていてもよい。この場合であっても、軸部材31は、d軸方向の断面積がq軸方向の断面積より大きく、d軸方向の断面の長さがq軸方向の断面の長さより長くなっている。このため、軸部材31においてq軸方向に比べてd軸方向に磁束を通りやすくすることができ、回転子3dにおいてq軸方向に比べてd軸方向に磁束を通りやすくすることができる。これにより、上述した第四実施形態と同様に、d軸方向に沿って磁束が通りやすくなり、リラクタンストルクを高めることができる。また、第二磁石321の設置により磁石トルクが増強され、出力トルクを向上させることができる。
【0091】
また、図19の(c)に示すように、回転子3の軸部材31には、円形の両端に外側へ突出するように第二磁石321が設けられていてもよい。すなわち、軸部材31の断面において、d軸方向に沿って外側へ突出するように第二磁石321が形成されていてもよい。この場合であっても、軸部材31は、d軸方向の断面積がq軸方向の断面積より大きく、d軸方向の断面の長さがq軸方向の断面の長さより長くなっている。このため、軸部材31においてq軸方向に比べてd軸方向に磁束を通りやすくすることができ、回転子3dにおいてq軸方向に比べてd軸方向に磁束を通りやすくすることができる。これにより、上述した第四実施形態と同様に、d軸方向に沿って磁束が通りやすくなり、リラクタンストルクを高めることができる。また、第二磁石321の設置により磁石トルクが増強され、出力トルクを向上させることができる。
【0092】
また、図19の(d)に示すように、軸部材31の断面において、円形の両端で外側へ突出する第二磁石321は、複数形成されていてもよい。例えば、軸部材31の断面において、円形の両側にそれぞれd軸方向に沿って外側へ突出する三つの第二磁石321が形成されていてもよい。この場合であっても、軸部材31は、d軸方向の断面積がq軸方向の断面積より大きく、d軸方向の断面の長さがq軸方向の断面の長さより長くなっている。このため、軸部材31においてq軸方向に比べてd軸方向に磁束を通りやすくすることができ、回転子3dにおいてq軸方向に比べてd軸方向に磁束を通りやすくすることができる。これにより、上述した第一実施形態と同様に、d軸方向に沿って磁束が通りやすくなり、リラクタンストルクを高めることができる。また、第二磁石321の設置により磁石トルクが増強され、出力トルクを向上させることができる。
【0093】
また、図20の(a)に示すように、回転子3の軸部材31は、楕円形の断面で形成されていてもよい。すなわち、軸部材31の断面は、d軸方向に長軸を向けた楕円形であってもよい。この場合であっても、軸部材31は、d軸方向の断面積がq軸方向の断面積より大きく、d軸方向の断面の長さがq軸方向の断面の長さより長くなっている。このため、軸部材31においてq軸方向に比べてd軸方向に磁束を通りやすくすることができ、回転子3dにおいてq軸方向に比べてd軸方向に磁束を通りやすくすることができる。これにより、上述した第一実施形態と同様に、d軸方向に沿って磁束が通りやすくなり、リラクタンストルクを高めることができる。また、第二磁石321の設置により磁石トルクが増強され、出力トルクを向上させることができる。
【0094】
また、図20の(b)に示すように、回転子3の軸部材31は、q軸方向へ向けて形成される貫通孔31cを形成されていてもよい。すなわち、軸部材31の断面は、円形の中央にq軸方向へ向けた貫通孔31cが形成されている。この場合であっても、軸部材31は、d軸方向の断面積がq軸方向の断面積より大きく、d軸方向の断面の長さがq軸方向の断面の長さより長くなっている。このため、軸部材31においてq軸方向に比べてd軸方向に磁束を通りやすくすることができ、回転子3dにおいてq軸方向に比べてd軸方向に磁束を通りやすくすることができる。これにより、上述した第一実施形態と同様に、d軸方向に沿って磁束が通りやすくなり、リラクタンストルクを高めることができる。また、第二磁石321の設置により磁石トルクが増強され、出力トルクを向上させることができる。
【0095】
また、図20の(c)に示すように、回転子3の軸部材31は、矩形の断面で形成されていてもよい。例えば、軸部材31の断面は、長辺をd軸方向に向けた長方形としてもよい。この場合であっても、軸部材31は、d軸方向の断面積がq軸方向の断面積より大きく、d軸方向の断面の長さがq軸方向の断面の長さより長くなっている。このため、軸部材31においてq軸方向に比べてd軸方向に磁束を通りやすくすることができ、回転子3dにおいてq軸方向に比べてd軸方向に磁束を通りやすくすることができる。これにより、上述した第一実施形態と同様に、d軸方向に沿って磁束が通りやすくなり、リラクタンストルクを高めることができる。また、磁石トルクの増強により、出力トルクを向上させることができる。
【0096】
また、図20の(d)に示すように、回転子3の軸部材31は、複数の軸31dにより構成されていてもよい。例えば、軸部材31の断面は、d軸方向の断面積がq軸方向の断面積より大きく、d軸方向の断面の長さがq軸方向の断面の長さより長くなるように、複数の軸31dが配置される。具体的には、六つの軸31dが、d軸方向に沿って三つ、q軸方向に沿って二つ配列される。この場合であっても、軸部材31は、d軸方向の断面積がq軸方向の断面積より大きく、d軸方向の断面の長さがq軸方向の断面の長さより長くなっている。このため、軸部材31においてq軸方向に比べてd軸方向に磁束を通りやすくすることができ、回転子3dにおいてq軸方向に比べてd軸方向に磁束を通りやすくすることができる。これにより、上述した第一実施形態と同様に、d軸方向に沿って磁束が通りやすくなり、リラクタンストルクを高めることができる。また、磁石トルクの増強により、出力トルクを向上させることができる。なお、軸31dの断面は、円形以外の形状でもよい。
【0097】
また、図21の(a)に示すように、回転子3の軸部材31は、円形の外部に磁性部材31eを設けて構成されていてもよい。例えば、軸部材31は、円形の外部にd軸方向へ離間して一つずつ磁性部材31eが形成されていてもよい。磁性部材31eは、円形断面の両側に複数形成されていてもよい。第二磁石321は、軸部材31の中央の円形部分と磁性部材31eの間に環状に形成されている。この場合であっても、軸部材31は、d軸方向の断面積がq軸方向の断面積より大きく、d軸方向の断面の長さがq軸方向の断面の長さより長くなっている。このため、軸部材31においてq軸方向に比べてd軸方向に磁束を通りやすくすることができ、回転子3dにおいてq軸方向に比べてd軸方向に磁束を通りやすくすることができる。これにより、上述した第一実施形態と同様に、d軸方向に沿って磁束が通りやすくなり、リラクタンストルクを高めることができる。また、磁石トルクの増強により、出力トルクを向上させることができる。なお、磁性部材31eの断面は、矩形以外の形状であってもよい。
【0098】
また、図21の(b)に示すように、回転子3の軸部材31は、円形の両端を削り落とした断面形状であり、削り落とした部分に非磁性体31fを設けた構成されていてもよい。すなわち、軸部材31は、q軸方向の両端の部分に非磁性体31fを取り付けて構成されている。この場合であっても、軸部材31は、d軸方向の断面積がq軸方向の断面積より大きく、d軸方向の断面の長さがq軸方向の断面の長さより長くなっている。このため、軸部材31においてq軸方向に比べてd軸方向に磁束を通りやすくすることができ、回転子3dにおいてq軸方向に比べてd軸方向に磁束を通りやすくすることができる。これにより、上述した第一実施形態と同様に、d軸方向に沿って磁束が通りやすくなり、リラクタンストルクを高めることができる。また、磁石トルクの増強により、出力トルクを向上させることができる。また、軸部材31に非磁性体31fを設けることにより、軸部材31を補強することができ、軸部材31の強度を高めることができる。
【0099】
また、図21の(c)に示すように、回転子3の軸部材31は、複数の矩形の断面で形成されていてもよい。すなわち、軸部材31の断面は、d軸方向に長辺を向けた二つの長方形で構成されてもよい。この場合であっても、軸部材31は、d軸方向の断面積がq軸方向の断面積より大きく、d軸方向の断面の長さがq軸方向の断面の長さより長くなっている。このため、軸部材31においてq軸方向に比べてd軸方向に磁束を通りやすくすることができ、回転子3dにおいてq軸方向に比べてd軸方向に磁束を通りやすくすることができる。これにより、上述した第一実施形態と同様に、d軸方向に沿って磁束が通りやすくなり、リラクタンストルクを高めることができる。また、磁石トルクの増強により、出力トルクを向上させることができる。
【0100】
また、上述した第四実施形態では、回転子3dの軸部材31は、断面の長手方向をd軸方向に向けて形成されているが、このように構成されていなくてもよい。例えば、図22に示すように、回転子3の軸部材31は、断面の長手方向をd軸方向からずれた向きに形成されてもよい。この場合であっても、d軸方向の断面積がq軸方向の断面積より大きく又はd軸方向の断面の長さがq軸方向の断面の長さより長くなるように、軸部材31が形成されることにより、軸部材31においてq軸方向に比べてd軸方向に磁束を通りやすくすることができ、回転子3dにおいてq軸方向に比べてd軸方向に磁束を通りやすくすることができる。これにより、上述した第一実施形態と同様に、d軸方向に沿って磁束が通りやすくなり、リラクタンストルクを高めることができる。また、磁石トルクの増強により、出力トルクを向上させることができる。また、図19図21に示す軸部材31に対しても、断面の長手方向をd軸方向からずれた向きに形成してもよい。
【0101】
また、上述した第四実施形態では、図17に示すように回転機械1dの回転子3dの軸部材31は、d軸方向の断面積Sdがq軸方向の断面積Sqより大きくなるように形成されd軸方向の断面の長さLdがq軸方向の断面の長さLqより長くなるように形成されていたが、この軸部材31は、q軸方向の断面積Sqがd軸方向の断面積Sdより大きくなるように形成されq軸方向の断面の長さLqがd軸方向の断面の長さLdより長くなるように形成されていてもよい。例えば、図23に示すように、軸部材31は、回転軸線Aに対し垂直な断面が非円形となるように形成され、円形の断面に対しd軸方向の両端をq軸に沿って削り落とした形状とされる。つまり、軸部材31は、d軸方向の両端を削り落とすことにより、q軸方向の断面積Sqがd軸方向の断面積Sdより大きくなり、q軸方向の断面の長さLqがd軸方向の断面の長さLdより長くなっている。そして、磁石部32には、ボンド磁石で構成される磁石32a、32bに加えて、焼結磁石で構成される第二磁石321が設けられている。第二磁石321は、磁石部32の磁力を強化するための焼結磁石であって、磁石32a、32bの内部に埋め込まれて配置されている。例えば、第二磁石321は、軸部材31に取り付けられ、軸部材31に接触して設けられている。具体的には、第二磁石321は、軸部材31のd軸方向の端部にそれぞれ取り付けられる。外側にN極を有する磁石32aに接する第二磁石321は、外側にN極を有するように設けられる。一方、外側にS極を有する磁石32bに接する第二磁石321は、外側にS極を有するように設けられる。回転子3dに第二磁石321を設けることにより、磁石部32の磁石を高めることができ、回転機械1dの駆動時に磁石トルクを向上させることができる。第二磁石321は、焼結磁石により構成されることにより、ボンド磁石である磁石32a、32bより電気的に低抵抗の磁石となっている。つまり、高抵抗の磁石32a、32bでは渦電流の発生が抑制しやすく、低抵抗の第二磁石321では渦電流の発生が抑制しにくい。
【0102】
図24に示すように、図23の回転機械1dの出力トルクTは、ボンド磁石トルクTmb、焼結磁石トルクTms及びリラクタンストルクTrを合わせたトルクとなる。焼結磁石トルクTmsが加わるため、出力トルクTが向上する。ボンド磁石トルクTmbは磁石32a、32bによる磁石トルクであり、焼結磁石トルクTmsは第二磁石321による磁石トルクである。図24の縦軸は回転機械1dの出力のトルクであり、横軸は電流位相角である。回転機械1dの駆動時には、第二実施形態に係る回転機械1aと同様に、q軸方向に先行する磁界Bを形成すればよい。
【0103】
このような回転機械1dによれば、上述した第四実施形態に係る回転機械1dと同様な作用効果が得られる。すなわち、回転機械1dの駆動時においてリラクタンストルクを用いて、回転機械1dの出力を向上させることができる。また、磁石部32に第二磁石321が設けられることにより、磁石部32の磁力を増強することができる。さらに、高抵抗の磁石32a、32bの径方向の内側に低抵抗の第二磁石321を配置することにより、渦電流損失を抑制することができる。また、低抵抗の第二磁石321を回転子3dの径方向の内側に配置することにより、第二磁石321が大きな磁束変化に晒されず、渦電流損失の発生を抑制しつつ、磁石部32の磁力の増強が行える。
【0104】
また、図19~21に示す軸部材31に対しても、q軸方向の断面積Sqがd軸方向の断面積Sdより大きくなるように形成し、q軸方向の断面の長さLqがd軸方向の断面の長さLdより長くなるように形成してもよい。これらの場合であっても、軸部材31においてd軸方向とq軸方向で磁束の通りやすさを異ならせることができる。これにより、回転機械1dの駆動時においてリラクタンストルクを用いて、回転機械1dの出力を向上させることができる。
【0105】
また、上述した第四実施形態では、図17に示すように二極の回転子3dを備えていたが、四極の回転子を備えていてもよい。例えば、回転機械1dは、周方向に異なる磁極を交互に四つ設けた回転子3dを備えていてもよい。つまり、回転子3dの磁石部32は、周方向に分割して配置される四つの磁石を有し、回転子3bは断面十字型の軸部材31を有していてもよい。この場合であっても、上述した第四実施形態と同様に、軸部材31のd軸方向の断面積Sdがq軸方向の断面積Sqより大きくなるように形成されることにより、リラクタンストルクを高めることができる。さらに、回転子3dとして周方向に異なる磁極を六つ、八つ、それ以上を備えたものであってもよい。この場合、軸部材31として軸回りに六回回転対称、八回回転対称、磁極数に対応する回転対称の断面形状のものを用いればよい。
【0106】
次に、本開示の第五実施形態に係る回転機械について説明する。
【0107】
図25は、第五実施形態に係る回転機械1eの回転子3eの断面図である。第五実施形態に係る回転機械1eは、第一実施形態に係る回転機械1とほぼ同様に構成され、回転子3eの構造が異なっている。すなわち、上述した第一実施形態に係る回転機械1の回転子3の軸部材31は、d軸方向の断面積Sdがq軸方向の断面積Sqより大きくなるように形成されd軸方向の断面の長さLdがq軸方向の断面の長さLqより長くなるように形成されていたが、第五実施形態に係る回転機械1eの回転子3eの軸部材31は、回転軸線Aに垂直な断面においてd軸方向とq軸方向の間の角度方向で磁束の通りやすさが最大となるように形成されている点で、第一実施形態に係る回転機械1の回転子3と異なっている。例えば、本実施形態に係る回転機械1eは、図1に示す固定子2を用いることができ、図4に示す電気的構成及び図6に示す作動制御によって駆動する。
【0108】
軸部材31は、回転軸線Aに対し垂直な断面が非円形となるように形成され、d軸方向とq軸方向の間の角度方向で長くなるように形成されている。例えば、軸部材31は、回転軸線Aに垂直な断面において、円形の両端を直線状に削り落として、d軸方向とq軸方向の間の角度方向で長くなるように形成される。軸部材31の断面形状は、d軸方向とq軸方向の中間の角度方向で長くなるように形成してもよい。つまり、d軸とq軸とのなす角が90度である場合、軸部材31の長手方向Lとd軸とのなす角が45度としてもよい。このように、軸部材31がd軸方向とq軸方向の間の角度方向で長くなることにより、d軸方向とq軸方向の間の角度方向で磁束の通りやすさが最大となる。また、軸部材31がd軸方向とq軸方向の中間の角度方向で長くなることにより、d軸方向とq軸方向の中間の角度方向で磁束の通りやすさが最大となる。
【0109】
図25に示すように、回転機械1eでは、例えば、磁界Bが磁石部32のq軸方向に形成される。つまり、固定子2は、q軸方向に磁界Bを形成し、磁界Bを回転方向DRへ回転させて回転子3eを回転させる。図25において、回転方向DRは、回転子3eを回転させる方向であり、ここでは反時計回りの方向となっている。回転機械1eにおいて、磁界Bがq軸方向へ向けて形成されることにより、磁石トルクに加え、リラクタンストルクを発生させることができ、出力トルクの向上が図れる。
【0110】
図26は、回転機械1eにおける出力のトルクを示したグラフである。図26の縦軸は回転機械1eの出力のトルクであり、横軸は電流位相角である。図26に示すように、回転機械1eの出力トルクTは、磁石トルクTmとリラクタンストルクTrを合わせたトルクとなる。このため、電流位相角を調整することにより、磁石トルクTmのみの出力と比べて出力トルクTを向上させることが可能となる。電流位相角が90度の場合、すなわち、d軸から90度のq軸方向に磁界Bを形成した場合、回転機械1eの出力のトルクが最大となることがわかる。
【0111】
以上のように、本実施形態に係る回転機械1eによれば、軸部材31が、回転軸線Aに垂直な断面において、d軸方向とq軸方向の間の角度方向で磁束の通りやすさが最大となるように形成されている。このため、リアクタンストルクを発生させることができる。また、軸部材31が、d軸方向とq軸方向の中間の角度方向で磁束の通りやすさが最大となるように形成されてもよく、リアクタンストルクを効果的に向上させることができる。
【0112】
本実施形態に係る回転機械1eにおいて、q軸方向に向けて磁界Bを形成し、磁界Bを回転させて回転子3eを回転させることにより、大きな磁石トルクが得られつつ、リアクタンストルクも大きいものとなる。このため、回転機械1eの出力を大きく向上させることができる。
【0113】
以上のように、第五実施形態の回転機械1eについて説明したが、上述したものに限定されるものではない。例えば、上述した第五実施形態では、回転子3eの軸部材31が円形の両端を削り落とした断面形状であったが、その他の断面形状であってもよい。例えば、図8図11に示す軸部材31と同様な形状としてもよい。また、図15~17及び図19~21に示す軸部材31と同様な形状としてもよい。これらの場合であっても、軸部材31が、回転軸線Aに垂直な断面において、d軸方向とq軸方向の間の角度方向で磁束の通りやすさが最大となるように形成されていることにより、上述した回転機械1eと同様な作用効果を得ることができる。
【0114】
なお、以上のように本開示の各実施形態に係る回転機械について説明したが、本開示の回転機械は、上述したものに限られるものではない。本開示の回転機械は、特許請求の範囲の記載の要旨を逸脱しない範囲で様々な変形態様で実施することができる。
【0115】
例えば、上述した各実施形態においては、固定子2が三つのティース21aを形成した固定子2を用いる回転機械について説明したが、三つ以外の数のティースを形成した固定子を用いた回転機械であってもよい。
【0116】
また、回転子3として、二極及び四極以外のタイプのものを用いてもよい。例えば、六極以上の回転子を備えた回転機械であってもよい。
【0117】
また、上述した各実施形態においては、回転子3としてスリーブ33を備えたものを用いているが、スリーブ33を備えていない回転子を用いてもよい。
【0118】
また、上述した各実施形態においては、回転機械を電動機に適用した場合について説明したが、回転機械を他の機器に適用してもよい。例えば、回転機械を発電機又はモータジェネレータに適用してもよい。
【符号の説明】
【0119】
1 回転機械
2 固定子
3 回転子
4 ハウジング
21 コア
21a ティース
21b 円筒部
22 コイル
31 軸部材
32 磁石部
32a 磁石
32b 磁石
33 スリーブ
311 延出部
A 回転軸線
B 磁界
Sd、Sq 断面積
Ld、Lq 長さ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19
図20
図21
図22
図23
図24
図25
図26