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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022051201
(43)【公開日】2022-03-31
(54)【発明の名称】ロータ及びモータ
(51)【国際特許分類】
   H02K 1/27 20220101AFI20220324BHJP
【FI】
H02K1/27 501A
H02K1/27 501B
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020157547
(22)【出願日】2020-09-18
(71)【出願人】
【識別番号】000000099
【氏名又は名称】株式会社IHI
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100113435
【弁理士】
【氏名又は名称】黒木 義樹
(74)【代理人】
【識別番号】100170818
【弁理士】
【氏名又は名称】小松 秀輝
(72)【発明者】
【氏名】軸丸 武弘
(72)【発明者】
【氏名】米山 夏樹
(72)【発明者】
【氏名】山口 浩二
【テーマコード(参考)】
5H622
【Fターム(参考)】
5H622AA03
5H622CA02
5H622CA03
5H622CA05
5H622CB02
5H622DD04
5H622DD06
5H622PP10
(57)【要約】
【課題】出力効率の低下を抑制する。
【解決手段】ロータ10は、回転磁界に応じて回転する。ロータ10は、シャフト11と、シャフト11を囲むように配置された筒状の磁石12と、を備える。磁石12は、第1磁性体21と、第1磁性体21よりも高い電気抵抗を有する第2磁性体22と、を有する。第2磁性体22は、第1磁性体21に対してシャフト11の径方向の外側に配置されている。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
回転磁界に応じて回転するロータであって、
シャフトと、
前記シャフトを囲むように配置された筒状の磁石と、を備え、
前記磁石は、第1磁性体と、前記第1磁性体よりも高い電気抵抗を有する第2磁性体と、を有し、
前記第2磁性体は、前記第1磁性体に対して前記シャフトの径方向の外側に配置されている、ロータ。
【請求項2】
前記第2磁性体は、前記シャフトの周方向にわたって連続的に配置されている、請求項1に記載のロータ。
【請求項3】
前記第1磁性体は、前記周方向に沿って分割された第1領域及び第2領域を含み、
前記第1領域と前記第2領域との前記周方向の間には、隙間が形成されており、
前記第2磁性体は、
前記第1領域に対して前記径方向の外側に配置された第1外側領域と、
前記第2領域に対して前記径方向の外側に配置された第2外側領域と、
前記第1外側領域と前記第2外側領域との前記周方向の間から前記隙間に入り込むように配置された中間領域と、を含んでいる、請求項2に記載のロータ。
【請求項4】
前記シャフトの外周面には、前記隙間に対応する位置において前記径方向の内側に窪む溝が形成されており、
前記中間領域は、前記隙間から前記溝に入り込むように配置されている、請求項3に記載のロータ。
【請求項5】
前記第2磁性体は、前記シャフトの周方向に沿って互いに離間するように並んで配置された複数の部分領域を含み、
前記第1磁性体は、前記複数の部分領域に対して前記径方向の内側に配置された内側領域と、前記内側領域よりも前記径方向の外側の位置であって各前記部分領域の前記周方向の間の位置に配置された外側領域と、を含んでいる、請求項1に記載のロータ。
【請求項6】
前記部分領域は、前記シャフトの軸方向に沿って延在している、請求項5に記載のロータ。
【請求項7】
前記部分領域は、前記シャフトの軸方向に対して前記周方向に傾斜した方向に沿って延在している、請求項5に記載のロータ。
【請求項8】
前記部分領域は、前記シャフトの軸方向に沿って互いに離間するように並んで配置された複数の部分を含み、
前記第1磁性体は、前記外側領域である第1外側領域とは別の第2外側領域を更に含み、
前記第2外側領域は、前記内側領域よりも前記径方向の外側の位置であって各前記部分の前記軸方向の間の位置に配置されている、請求項5~7のいずれか一項に記載のロータ。
【請求項9】
請求項1~8のいずれか一項に記載のロータと、
前記ロータを囲むように配置され、前記回転磁界を発生するステータと、を備える、モータ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、ロータ及びモータに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、焼結磁石等の磁石を有するロータと、ロータを囲むように配置されたステータと、を備えるモータが知られている(例えば非特許文献1~3)。このようなモータでは、ステータは、交流電流が供給されることによって回転磁界を発生する。この回転磁界と磁石の磁界とが相互作用することによってロータが回転する。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0003】
【非特許文献1】David Gerada, et al, “ElectricalMachines for Automotive Electrically Assisted Turbocharging” IEEE/ASME Transactionon Mechatronics, Vol. 23, No. 5, October 2018.
【非特許文献2】K. Wang, et al, “Study on rotorstructure with different magnet assembly in high-speed sensorless brushless DCmotors” IET Electric Power Application, Vol. 4, Iss. 4, pp. 241-248, 2010.
【非特許文献3】Koichi Shigematsu, et al, “TheStudy of Eddy Current in Rotor and Circuit Coupling Analysis for Small Size andUltra-High Speed Motor” Proc. of the 4th International Power Electronics andMotion Control Conference, pp. 275-279, 2004.
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述したモータでは、回転磁界に応じてロータが回転する際、回転磁界による磁石の磁束の時間的変化に起因して、磁石に渦電流が発生し得る。このような渦電流は、モータのエネルギー損失を招き得るため、モータの出力効率を低下させる要因となり得る。
【0005】
本開示は、出力効率の低下を抑制できるロータ及びモータを説明する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の一形態に係るロータは、回転磁界に応じて回転するロータであって、シャフトと、シャフトを囲むように配置された筒状の磁石と、を備え、磁石は、第1磁性体と、第1磁性体よりも高い電気抵抗を有する第2磁性体と、を有し、第2磁性体は、第1磁性体に対してシャフトの径方向の外側に配置されている。
【0007】
回転磁界に応じてロータが回転する際、回転磁界による磁石の磁束の時間的変化に起因して、磁石に渦電流が発生する。この渦電流は、磁石において回転磁界の磁束密度が高い位置ほど大きくなり、この磁束密度は、磁石の径方向の外側に位置するほど高くなる。従って、磁石に発生する渦電流は、磁石における径方向の外側に位置するほど大きくなる。そこで、上述したロータでは、第1磁性体よりも高い電気抵抗を有する第2磁性体を、第1磁性体に対して径方向の外側に配置している。このように高い電気抵抗を有する第2磁性体が径方向の外側に配置されると、第2磁性体では渦電流が流れにくくなるため、磁石の径方向の外側に大きな渦電流が流れることが抑制される。一方、磁石の径方向の内側においては渦電流が小さくなるので、第2磁性体よりも低い電気抵抗を有する第1磁性体を径方向の内側に配置しても、磁石の径方向の内側に大きな渦電流は流れない。従って、上述したロータによれば、磁石に大きな渦電流が流れる事態を抑制できるので、渦電流に起因するロータの出力効率の低下を抑制できる。また、高い電気抵抗を有する第2磁性体のみによって磁石を構成すると、磁石全体の磁気特性が低下する懸念があることから、上述したロータでは、第2磁性体のみによって磁石を構成せずに、第1磁性体を磁石に介在させている。これにより、磁石全体の磁気特性が低下する事態を抑制でき、ロータの最大出力が低下する事態を抑制できる。
【0008】
いくつかの態様において、第2磁性体は、シャフトの周方向にわたって連続的に配置されていてもよい。この場合、磁石の径方向の外側に大きな渦電流が流れることをより確実に抑制できる。
【0009】
いくつかの態様において、第1磁性体は、周方向に沿って分割された第1領域及び第2領域を含み、第1領域と第2領域との周方向の間には、隙間が形成されており、第2磁性体は、第1領域に対して径方向の外側に配置された第1外側領域と、第2領域に対して径方向の外側に配置された第2外側領域と、第1外側領域と第2外側領域との周方向の間から隙間に入り込むように配置された中間領域と、を含んでいてもよい。この場合、第2磁性体の中間領域は、第1磁性体における第1領域と第2領域との隙間に入り込むことによって、第1磁性体に対する第2磁性体の回り止めとして機能する。これにより、第1磁性体と第2磁性体との間のトルク伝達が良好となる。
【0010】
いくつかの態様において、シャフトの外周面には、隙間に対応する位置において径方向の内側に窪む溝が形成されており、中間領域は、隙間から溝に入り込むように配置されていてもよい。この場合、第2磁性体の中間領域は、第1磁性体における第1領域と第2領域との隙間からシャフトの溝に入り込むことによって、シャフトに対する第1磁性体及び第2磁性体の回り止めとして機能する。これにより、シャフトと第1磁性体及び第2磁性体との間のトルク伝達が良好となる。
【0011】
いくつかの態様において、第2磁性体は、シャフトの周方向に沿って互いに離間するように並んで配置された複数の部分領域を含み、第1磁性体は、複数の部分領域に対して径方向の内側に配置された内側領域と、内側領域よりも径方向の外側の位置であって各部分領域の周方向の間の位置に配置された外側領域と、を含んでいてもよい。この場合、磁石の径方向の外側において、第1磁性体よりも高い電気抵抗を有する第2磁性体の各部分領域が配置されているので、渦電流が流れにくくなっている。このため、磁石の径方向の外側に大きな渦電流が流れることが抑制されている。更に、第1磁性体が内側領域に加えて外側領域を含むことによって、磁石における第1磁性体の割合を増加することができる。これにより、磁石全体の磁気特性が低下する事態をより確実に抑制でき、ロータの最大出力が低下する事態をより確実に抑制できる。
【0012】
いくつかの態様において、部分領域は、シャフトの軸方向に沿って延在していてもよい。この場合、磁石の形状の複雑化を抑制できるので、ロータの製造が困難になる事態を抑制できる。
【0013】
いくつかの態様において、部分領域は、シャフトの軸方向に対して周方向に傾斜した方向に沿って延在していてもよい。第2磁性体の部分領域と第1磁性体の外側領域との間には、磁気特性の差に起因して磁力差が生じる。つまり、磁石の外周面に沿った周方向の各位置において磁力の高い箇所と磁力の低い箇所とが混在する。これに対し、第2磁性体の部分領域が当該傾斜した方向に沿って延在する構成とすると、磁石の周方向の各位置において軸方向に沿って磁力を平均化したときに、磁石の周方向の各位置毎の平均磁力の差を小さくすることができる。
【0014】
いくつかの態様において、部分領域は、シャフトの軸方向に沿って互いに離間するように並んで配置された複数の部分を含み、第1磁性体は、外側領域である第1外側領域とは別の第2外側領域を更に含み、第2外側領域は、内側領域よりも径方向の外側の位置であって各部分の軸方向の間の位置に配置されていてもよい。この場合、磁石の径方向の外側において、第1磁性体よりも高い電気抵抗を有する第2磁性体の各部分領域が配置されているので、渦電流が流れにくくなっている。このため、磁石の径方向の外側に大きな渦電流が流れることが抑制されている。更に、第1磁性体が内側領域及び第1外側領域に加えて別の第2外側領域を含むことによって、磁石における第1磁性体の割合を更に増加することができる。これにより、磁石全体の磁気特性が低下する事態をより一層確実に抑制でき、ロータの最大出力が低下する事態をより一層確実に抑制できる。
【0015】
本開示の一形態に係るモータは、上述したいずれかのロータと、ロータを囲むように配置され、回転磁界を発生するステータと、を備える。このモータは上述したいずれかのロータを備えるので、このモータでは、上述したように、渦電流に起因するロータの出力効率の低下を抑制でき、更に、磁石全体の磁気特性が低下する事態を抑制できる。
【発明の効果】
【0016】
本開示のいくつかの態様によれば、出力効率の低下を抑制できるロータ及びモータが提供される。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1図1は、第1実施形態に係るロータを備えるモータを示す断面図である。
図2図2は、図1のロータを示す斜視図である。
図3図3は、図2のロータを示す断面図である。
図4図4(a)は、比較例に係るロータを示す斜視図である。図4(b)は、図2のロータを示す斜視図である。
図5図5は、第2実施形態に係るロータを示す斜視図である。
図6図6は、図5のロータを示す断面図である。
図7図7(a)は、比較例に係るロータを示す斜視図である。図7(b)は、図5のロータを示す斜視図である。
図8図8は、第2実施形態の第1変形例に係るロータを示す斜視図である。
図9図9は、第2実施形態の第2変形例に係るロータを示す斜視図である。
図10図10は、図9に示すロータを示す平面図である。
図11図11は、第2実施形態の第3変形例に係るロータを示す斜視図である。
図12図12(a)は、図11のロータを示す断面図である。図12(b)は、図11のロータを示す別の断面図である。
図13図13は、第3実施形態に係るロータを示す斜視図である。
図14図14は、図13のロータを示す斜視図である。
図15図15は、第4実施形態に係るロータを示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、図面を参照して一実施形態について説明する。なお、図面の説明においては、同一の要素同士、或いは、相当する要素同士には、互いに同一の符号を付し、重複する説明を省略する場合がある。
【0019】
[第1実施形態]
図1を参照し、第1実施形態に係るロータ10が適用されたモータ1について説明する。図1に示すモータ1は、例えば航空宇宙の分野に適用される。第1実施形態において、モータ1は、回転式の航空機用モータであって、燃料ポンプ(不図示)の動力源として機能する。モータ1は、他の用途に用いられてもよい。
【0020】
図1に示すように、モータ1は、回転軸線Lの周りに回転可能なロータ10と、ロータ10を囲むように配置されたステータ20と、を備える。以下の説明において、軸方向D1は、回転軸線Lに沿って延在する方向を示しており、周方向D2(図2及び図3参照)は、回転軸線Lを中心とする環に沿う方向を示しており、径方向は、回転軸線Lと直交する方向を示している。ロータ10は、例えば、燃料ポンプのインペラ(不図示)が連結されたシャフト11と、シャフト11を囲むように配置された磁石12と、磁石12を囲むように配置された保護層13と、を有する。
【0021】
シャフト11は、回転軸線Lを中心軸とする円柱状を呈しており、回転軸線Lの周りに回転可能に配置されている。磁石12は、回転軸線Lを中心軸とする円筒状を呈する永久磁石である。磁石12の内周面12aは、シャフト11の外周面11aに固定されている。保護層13は、回転軸線Lを中心軸とする円筒状を呈しており、磁石12を収容している。保護層13の内周面13aには、磁石12の外周面12bが固定されている。従って、保護層13、磁石12、及びシャフト11は、一体となって回転軸線Lの周りに回転する。保護層13は、例えば、非磁性且つ高電気抵抗の材料によって構成されてもよい。一例として、保護層13は、炭素繊維強化樹脂(CFRP:Carbon Fiber Reinforced Plastic)によって構成されてもよい。
【0022】
ステータ20は、ロータ10を囲むように配置されたコア20aと、コア20aに導線が巻回されてなるコイル20bと、を含んでいる。コア20aは、回転軸線Lを中心軸とする円筒状を呈している。コア20aの内部には、ロータ10が配置されている。コア20aは、径方向においてロータ10の保護層13と隙間を空けて離間している。コイル20bは、径方向においてロータ10と対向している。導線を通じてステータ20のコイル20bに交流電流が供給されると、ステータ20は、コア20aの内部に回転磁界を発生する。この回転磁界によってロータ10にトルクが発生する。その結果、ロータ10は、回転軸線Lの周りに回転する。
【0023】
続いて、図2及び図3を参照して、ロータ10の構成をより具体的に説明する。図2は、保護層13の一部を断面化して示している。図3は、回転軸線Lに垂直な平面でロータ10を切断したときのロータ10の断面を示している。図2及び図3に示すように、シャフト11の外周面11aには、外周面11aから径方向の内側に僅かに窪む一対の溝11bが形成されている。一対の溝11bは、外周面11aにおいて回転軸線Lを挟んで対称となる位置に配置されており、軸方向D1に沿って延在している。各溝11bは、例えば、軸方向D1におけるシャフト11の一端から他端にわたって連続的に延在している。図3に示す断面において、各溝11bは、矩形状を呈している。
【0024】
磁石12は、磁石12の径方向の内側に配置された第1磁性体21と、磁石12の径方向の外側に配置された第2磁性体22と、を含んで構成されている。第1磁性体21は、回転軸線Lを中心軸とする略円筒状を呈しており、シャフト11を囲むように配置されている。第2磁性体22は、回転軸線Lを中心軸とする略円筒状を呈しており、第1磁性体21を囲むように配置されている。第1磁性体21の内周面は、磁石12の内周面12aを構成している。第1磁性体21の外周面は、第2磁性体22の内周面に固定されている。第2磁性体22の外周面は、磁石12の外周面12bを構成している。
【0025】
第1磁性体21及び第2磁性体22は、セラミック磁石、金属磁石、及びボンド磁石等から適宜選択される永久磁石である。第2磁性体22としては、第1磁性体21よりも高い電気抵抗を有する永久磁石が選択される。第1実施形態では、第1磁性体21が焼結磁石であり、第2磁性体22がボンド磁石である場合を例示する。ボンド磁石は、磁粉と磁粉との間に高電気抵抗の樹脂が介在するため、磁粉と磁粉との間に樹脂が介在しない焼結磁石と比べて、高い電気抵抗を有する。焼結磁石は、非磁性の樹脂を含んでいないので、焼結磁石における磁粉の充填密度が高い。このため、焼結磁石は、ボンド磁石よりも高い磁気特性を有する。
【0026】
第1磁性体21及び第2磁性体22の組み合わせは、焼結磁石及びボンド磁石の組み合わせに限られず、第2磁性体22の電気抵抗が第1磁性体21の電気抵抗よりも高ければ、適宜変更可能である。例えば、第1磁性体21及び第2磁性体22は共にボンド磁石であってもよい。この場合、第1磁性体21を圧縮成形品とすることにより、第2磁性体22よりも樹脂の充填密度を小さくすることができる。これにより、第2磁性体22の電気抵抗を第1磁性体21の電気抵抗をよりも高くすることができる。
【0027】
図3に示すように、第2磁性体22の径方向の幅W2(具体的には、後述する第1領域21a又は第2領域21bの径方向の幅)は、第1磁性体21の径方向の幅W1(具体的には、後述する第1外側領域22a又は第2外側領域22bの径方向の幅)よりも小さくなっている。第2磁性体22の径方向の幅W2は、第1磁性体21の径方向の幅W1と同一であってもよいし、大きくてもよい。後述するように、磁石12に発生する渦電流は、磁石12に鎖交する回転磁界の磁束密度の高さに応じて大きくなり、この磁束密度は、磁石12の径方向の外側に位置するほど高くなる。そこで、磁石12に鎖交する回転磁界の磁束密度の高さに応じて、第2磁性体22の径方向の幅W2を設定してもよい。つまり、磁石12に鎖交する回転磁界の磁束密度が高い領域に第2磁性体22が設けられるように、第2磁性体22の径方向の幅W2を設定してもよい。
【0028】
第1磁性体21は、第1領域21aと第2領域21bとに分割されている。第1領域21a及び第2領域21bのそれぞれは、例えば、半円筒状を呈しており、回転軸線Lを含む平面に関して面対称となるように配置されている。第1領域21a及び第2領域21bは、当該平面に垂直な方向(径方向)において互いに僅かに離間しており、第1領域21aと第2領域21bとの間には、一対の隙間Gが形成されている。一対の隙間Gは、一対の溝11bに対応する位置に配置されている。すなわち、一対の隙間Gは、軸方向D1から見て回転軸線Lを挟んで対称となる位置であって、周方向D2において一対の溝11bの位置とそれぞれ同一となる位置に配置されている。隙間Gの周方向D2の幅は、例えば、溝11bの周方向D2の幅と同一であってもよい。
【0029】
第2磁性体22は、第1領域21aに対して径方向の外側に配置された第1外側領域22aと、第2領域21bに対して径方向の外側に配置された第2外側領域22bと、第1外側領域22aと第2外側領域22bとの周方向D2の間に配置された一対の中間領域22cと、を有している。第1外側領域22aと第2外側領域22bと一対の中間領域22cとは、周方向D2において隙間なく連続的に配置されている。つまり、第2磁性体22は、周方向D2にわたって連続的に配置されている。一対の中間領域22cは、一対の隙間Gにそれぞれ対応する位置に配置されている。すなわち、軸方向D1から見て回転軸線Lを挟んで対称となる位置であって、周方向D2において一対の隙間Gの位置とそれぞれ同一となる位置に配置されている。中間領域22cは、第1外側領域22aと第2外側領域22bとの周方向D2の間から隙間Gに入り込んでいる。
【0030】
一対の隙間Gには、一対のピンPがそれぞれ配置されている。各ピンPは、軸方向D1に沿って延びる略四角柱状を呈している。ピンPは、磁性を有する材料によって構成されてもよい。ピンPは、隙間Gから溝11bに入り込むように配置されている。ピンPは、図3に示す断面において、径方向の内側に向かうに従ってピンPの周方向D2の幅が狭くなる台形状を呈している。従って、ピンPの径方向の内側の側面S1は、ピンPの径方向の外側の側面S2よりも周方向D2の幅が狭くなっている。側面S1の周方向D2の幅(すなわち、ピンPの周方向D2の最小幅)は、隙間G及び溝11bの周方向D2の幅よりも僅かに狭くなっている。側面S1は、溝11bの底部に接している。
【0031】
一方、側面S2の周方向D2の幅(すなわち、ピンPの周方向D2の最大幅)は、隙間G及び溝11bの周方向D2の幅と同一となっており、隙間Gにおいて第1領域21a及び第2領域21bの双方に接している。側面S2は、第1領域21a及び第2領域21bの外周面に対して径方向の内側にずれた位置に配置されており、当該外周面との間に段差を形成している。中間領域22cは、例えば、隙間Gにおいて、ピンPの側面S2に接する位置まで入り込んでいる。中間領域22cは、ピンPの側面S2よりも径方向の内側に入り込んでいてもよい。すなわち、中間領域22cは、ピンPと隙間G及び溝11bとの隙間を埋めるように、隙間G及び溝11bに入り込んでもよい。
【0032】
ピンPが第1磁性体21の隙間Gからシャフト11の溝11bに入り込むように配置されることによって、シャフト11に対する第1磁性体21の回転が規制される。従って、ピンPは、シャフト11に対する第1磁性体21の回り止めの機能を有する。更に、第2磁性体22の中間領域22cが第1磁性体21の隙間Gに入り込むように配置されることによって、第1磁性体21に対する第2磁性体22の回転が規制される。従って、中間領域22cは、第1磁性体21に対する第2磁性体22の回り止めの機能を有する。ピンP及び中間領域22cによって、シャフト11と第1磁性体21と第2磁性体22との間の相対回転が規制されている。
【0033】
第1実施形態では、シャフト11と第1磁性体21との間の結合の強さが、第1磁性体21と第2磁性体22との間の結合の強さに比べて弱いことを考慮し、シャフト11と第1磁性体21との回転をより確実に規制するために、第1磁性体21の隙間Gからシャフト11の溝11bに入り込むピンPを配置している。なお、ピンPは、第1磁性体21よりも径方向の外側に突出するように配置されてもよい。言い換えると、ピンPの側面S2は、第1領域21a及び第2領域21bの外周面よりも径方向の外側にずれた位置に配置されてもよい。この場合、ピンPは、シャフト11に対する第1磁性体21の回り止め、及び第1磁性体21に対する第2磁性体22の回り止めの機能を有する。
【0034】
以上の構成を有するロータ10を製造する際には、まず、シャフト11、第1磁性体21、保護層13、及び一対のピンPが上述した位置に配置されるように治具等を用いてこれらを仮固定する。その後、第1磁性体21と保護層13との間に、第2磁性体22(ボンド磁石)を射出成形により形成する。これにより、図2及び図3に示すロータ10が得られる。
【0035】
続いて、第1実施形態に係るロータ10及びモータ1によって奏される作用効果について、比較例が有する課題と共に説明する。図4(a)は、比較例に係るロータ100を示している。ロータ100は、シャフト110と、シャフト110を囲むように配置された磁石120と、磁石120を囲むように配置された保護層130と、を備えている。ロータ100では、第1実施形態に係るロータ10と異なり、磁石120が1つの焼結磁石のみによって構成されている。
【0036】
ロータ100が回転する際、回転磁界による磁石120の磁束の時間的変化に起因して、磁石120に渦電流が発生する。この渦電流は、磁石120において回転磁界の磁束密度が高い位置ほど大きくなり、この磁束密度は、磁石120の径方向の外側に位置するほど高くなる。従って、磁石120に発生する渦電流は、磁石120における径方向の外側に位置するほど大きくなる。そして、焼結磁石はボンド磁石と比べて電気抵抗が低いので、渦電流は、磁石120において流れやすい。従って、図4(a)に示すように、磁石120の外周面120aにおいて大きな渦電流Cが流れやすい。このような大きな渦電流Cが磁石120に流れると、ロータ100に大きなエネルギー損失が生じ、ロータ100の出力効率が大きく低下するおそれがある。
【0037】
これに対し、第1実施形態に係るロータ10では、図4(b)に示すように、磁石12が第1磁性体21と第1磁性体21よりも高い電気抵抗を有する第2磁性体22とを含んで構成されており、第2磁性体22が第1磁性体21に対して径方向の外側に配置されている。このように高い電気抵抗を有する第2磁性体22が径方向の外側に配置されると、第2磁性体22では渦電流が流れにくくなるため、磁石12の径方向の外側に大きな渦電流が流れることが抑制される。従って、磁石12の外周面12bに流れる渦電流C(図4(b)参照)は、磁石120の外周面120aに流れる渦電流C(図4(a)参照)と比べて小さくなる。
【0038】
一方、磁石12の径方向の内側には、第2磁性体22よりも低い電気抵抗を有する第1磁性体21が配置されているが、磁石12の径方向の内側においては渦電流が小さくなるので、磁石12の径方向の内側には大きな渦電流は流れない。従って、第1実施形態に係るロータ10では、第1磁性体21及び第2磁性体22に大きな渦電流が流れる事態が抑制されている。このように、ロータ10では、磁石12に大きな渦電流が流れることを抑制できるので、ロータ10に大きなエネルギー損失が生じる事態を抑制できる。これにより、ロータ10の出力効率が大きく低下する事態を抑制できる。
【0039】
更に、第1実施形態に係るロータ10では、高い電気抵抗を有する第2磁性体22のみによって磁石12が構成されず、磁石12に第1磁性体21を介在させている。第2磁性体22では、磁粉と磁粉との間に樹脂を介在させているため、磁粉と磁粉との間に樹脂が介在しない第1磁性体21と比べて、磁粉の充填密度が低い。このため、磁石12を第2磁性体22のみによって構成すると、磁気特性が大きく低下する懸念がある。そこで、磁粉の充填密度が高い第1磁性体21を磁石12に介在させることによって、磁石12全体の磁気特性が大きく低下する事態を抑制し、ロータ10の最大出力が大きく低下する事態を抑制している。
【0040】
第1実施形態に係るロータ10では、第2磁性体22は、シャフト11の周方向D2にわたって連続的に配置されている。これにより、磁石12の径方向の外側に大きな渦電流が流れることをより確実に抑制できる。
【0041】
第1実施形態に係るロータ10では、第2磁性体22は、第1領域21aに対して径方向の外側に配置された第1外側領域22aと、第2領域21bに対して径方向の外側に配置された第2外側領域22bと、第1外側領域22aと第2外側領域22bとの周方向D2の間から隙間Gに入り込むように配置された中間領域22cと、を含んでいる。この構成では、第2磁性体22の中間領域22cは、第1磁性体21における第1領域21aと第2領域21bとの隙間Gに入り込むことによって、第1磁性体21に対する第2磁性体22の回り止めとして機能する。これにより、第1磁性体21と第2磁性体22との間のトルク伝達が良好となる。
【0042】
第1実施形態に係るロータ10では、一対の隙間Gが、第1磁性体21において軸方向D1から見て回転軸線Lを挟んで対称となる位置に形成されている。この場合、第1磁性体21の第1領域21a及び第2領域21bを対称な形状にすることができる。これにより、磁石12の組み立てが容易となるので、ロータ10を容易に製造することができる。
【0043】
[第2実施形態]
次に、図5及び図6を参照して、第2実施形態に係るロータ10Aについて説明する。第2実施形態の説明において、第1実施形態との相違点を中心に説明し、第1実施形態と重複する説明は適宜省略する。図5は、保護層13の一部を断面化して示している。図6は、回転軸線Lに垂直な平面でロータ10Aを切断したときのロータ10Aの断面を示している。
【0044】
第1実施形態では、第2磁性体22が周方向D2にわたって連続的に配置されている場合を例示したが、第2実施形態では、第2磁性体22Aが周方向D2に沿って間欠的に配置されている場合を例示する。つまり、第2実施形態では、第2磁性体22Aは、周方向D2に沿って互いに離間するように配置された複数の部分領域22dに分割されている。各部分領域22dは、例えば、回転軸線Lを中心軸とする円筒が周方向D2に沿って所定角度の範囲で分割された形状(円弧状)に形成されており、軸方向D1に沿って直線状に延在している。各部分領域22dは、例えば、周方向D2に沿って等間隔に並んでおり、軸方向D1における磁石12Aの一端から他端にわたって連続的に延在している。各部分領域22dは、例えば、互いに同一の形状を有している。
【0045】
第1磁性体21Aは、磁石12Aの径方向の内側に配置された内側領域21cと、磁石12Aの径方向の外側に配置された複数の外側領域21dと、を含んでいる。内側領域21cは、複数の部分領域22dに対して径方向の内側に配置されており、シャフト11を囲む円筒状を呈している。外側領域21dは、内側領域21cに対して径方向の外側の位置であって、各部分領域22dの周方向D2の間の位置に配置されている。外側領域21dは、内側領域21cから各部分領域22dの周方向D2の間に入り込むように径方向の外側に突出しており、周方向D2において部分領域22dと交互に並んでいる。外側領域21dと部分領域22dとは、周方向D2において互いに接している。
【0046】
各外側領域21dは、各部分領域22dと同様、回転軸線Lを中心軸とする円筒が周方向D2に沿って所定角度の範囲で分割された形状(円弧状)に形成されており、軸方向D1に沿って直線状に延在している。各外側領域21dは、例えば、周方向D2に沿って等間隔に並んでおり、軸方向D1における磁石12Aの一端から他端にわたって連続的に延在している。各外側領域21dは、例えば、互いに同一の形状を有している。
【0047】
図6に示す例では、外側領域21dの周方向D2の幅W3と、部分領域22dの周方向D2の幅W4とは、互いに同一になっているが、互いに異なってもよい。つまり、部分領域22dの周方向D2の幅W4は、外側領域21dの周方向D2の幅W3よりも大きくてもよいし、小さくてもよい。部分領域22dの周方向D2の幅W4を調整することにより、磁石12Aの径方向の外側における部分領域22dの割合を調整することができる。
【0048】
部分領域22dの周方向D2の幅W4を外側領域21dの周方向D2の幅W3よりも大きくすると、磁石12Aの径方向の外側に渦電流がより流れにくくなるので、磁石12Aに大きな渦電流が流れることをより確実に抑制できる。一方、部分領域22dの周方向D2の幅W4を外側領域21dの周方向D2の幅W3よりも小さくすると、磁石12Aにおける第2磁性体22Aの割合を小さくすることができるので、磁石12A全体の磁気特性が低下する事態をより確実に抑制でき、ロータ10Aの最大出力が低下する事態をより確実に抑制できる。
【0049】
図6に示す例では、外側領域21dの径方向の幅W5と、部分領域22dの径方向の幅W6とは、互いに同一になっているが、互いに異なってもよい。つまり、外側領域21dの径方向の幅W5は、部分領域22dの径方向の幅W6よりも大きくてもよいし、小さくてもよい。外側領域21dの径方向の幅W5は、第1実施形態に係る第1磁性体21の径方向の幅W1と同一であってもよい。部分領域22dの径方向の幅W6は、第1実施形態に係る第2磁性体22の径方向の幅W2と同一であってもよい。
【0050】
続いて、第2実施形態に係るロータ10Aによって奏される作用効果について、比較例が有する課題と共に説明する。図7(a)は、比較例に係るロータ100を示している。ロータ100は、図4(a)に示したロータ100と同一の構成を有している。ロータ100では、上述したように、磁石120の外周面120aにおいて大きな渦電流Cが流れやすく、ロータ100の出力効率が大きく低下するおそれがある。
【0051】
これに対し、第2実施形態に係るロータ10Aでは、高い電気抵抗を有する第2磁性体22Aの各部分領域22dが第1磁性体21Aの内側領域21cに対して径方向の外側に配置されている。このように、磁石12Aの径方向の外側に、高い電気抵抗を有する第2磁性体22Aの部分領域22dが配置される構成とすると、図7(b)に示すように、第2磁性体22Aにおいては大きな渦電流が流れにくくなるので、磁石12Aの径方向の外側に大きな渦電流Cが流れることを抑制できる。
【0052】
更に、第2実施形態に係るロータ10Aでは、第1磁性体21Aが内側領域21cに加えて外側領域21dを含むことによって、磁石12Aにおける第1磁性体21Aの割合を増加することができる。これにより、磁石12A全体の磁気特性が低下する事態をより確実に抑制でき、ロータ10Aの最大出力が低下する事態をより確実に抑制できる。従って、ロータ10Aによれば、磁石12Aに大きな渦電流が流れる事態を抑制しつつ、磁石12A全体の磁気特性が低下する事態をより確実に抑制できる。
【0053】
第2実施形態に係るロータ10Aでは、部分領域22dは、シャフト11の軸方向D1に沿って延在している。これにより、磁石12Aの形状の複雑化を抑制できるので、磁石12Aの製造が困難になる事態を抑制できる。
【0054】
図8は、第2実施形態の第1変形例に係るロータ10Bを示している。ロータ10Bでは、第2磁性体22Bの部分領域22eが、軸方向D1に対して周方向D2に傾斜した傾斜方向に沿って延在している点で、第2実施形態に係るロータ10Aとは相違する。図8に示すように、部分領域22eは、傾斜方向に沿って直線状に連続的に延在している。これに応じて、第1磁性体21Bの外側領域21eも傾斜方向に沿って直線状に連続的に延在している。
【0055】
ロータ10Bでは、ロータ10Aと同様、磁石12Bの径方向の外側において、高い電気抵抗を有する第2磁性体22Bの部分領域22eが配置される構成となるので、上述した第2実施形態に係るロータ10Aと同様の効果が得られる。また、第2磁性体22Bの部分領域22eと第1磁性体21Bの外側領域21eとの間には、磁気特性の差に起因して磁力差が生じ得る。つまり、磁石12Bの外周面12bに沿った周方向D2の各位置において磁力の高い箇所と磁力の低い箇所とが混在する。これに対し、第2磁性体22Bの部分領域22eが軸方向D1に対して周方向D2に傾斜した傾斜方向に沿って延在する構成とすると、磁石12Bの周方向D2の各位置において軸方向D1に沿って磁力を平均化したときに、磁石12Bの周方向D2の各位置毎の平均磁力の差を小さくすることができる。
【0056】
図9は、第2実施形態の第2変形例に係るロータ10Cを示している。図10は、ロータ10Cを径方向から見た平面図であり、保護層13を省略して示している。ロータ10Cでは、部分領域22fが、軸方向D1に沿って複数の部分P1に分割された構成を有する点で、第2実施形態に係るロータ10Aとは相違する。各部分領域22fの周方向D2の間に配置された外側領域21fも、部分領域22fと同様、軸方向D1に沿って複数の部分P2に分割された構成となっている。なお、図10では、説明の便宜上、部分領域22fの部分P1にハッチングを付している。
【0057】
図9及び図10に示すように、ロータ10Cでは、磁石12Cは、軸方向D1に沿って分割された複数の領域R1を有する。各領域R1は、回転軸線Lを中心軸とする円筒を軸方向D1に沿って輪切り状に等間隔に分割された構成を有しており、軸方向D1に沿って並んで配置されている。なお、図9では、複数の領域R1のうち一部の領域R1(具体的には、図9における手前側の3つの領域R1)が他の領域R1から軸方向D1に分解された状態を示している。各領域R1は、部分領域22fの部分P1及び外側領域21fの部分P2を含んでいる。各領域R1に含まれる部分P1及びP2は、例えば、ブロック状を呈しており、互いに同一の形状を有している。
【0058】
各領域R1は、磁石12Cの軸方向D1の一端から他端に位置するほど、周方向D2の回転位置が一方側にずれるように配置されている。このため、各領域R1が軸方向D1に重ねられた状態では、各領域R1に含まれる部分P1及びP2は、軸方向D1に沿って直線状に並んで配置された状態とならず、軸方向D1に対して周方向D2に傾斜した傾斜方向に沿って並んで配置された状態となる。つまり、各領域R1に含まれる部分P1は、磁石12Cの軸方向D1の一端から他端に位置するほど、周方向D2の一方側に部分P1の位置がずれるように斜めに並んでいる。同様に、各領域R1に含まれる部分P2は、磁石12Cの軸方向D1の一端から他端に位置するほど、周方向D2の一方側に部分P2の位置がずれるように斜めに並んでいる。
【0059】
互いに隣り合う2つの領域R1のうち、一方の領域R1に含まれる部分P1と、他方の領域R1に含まれる部分P1とは、軸方向D1から見て互いに重なるように周方向D2にずれている。同様に、一方の領域R1に含まれる部分P2と、他方の領域R1に含まれる部分P2とは、軸方向D1から見て互いに重なるように周方向D2にずれている。従って、軸方向D1に隣り合う部分P1同士は、軸方向D1において互いに接する部分を有し、傾斜方向に沿って接続された状態となっている。この状態は、部分領域22fが傾斜方向に沿って連続的に延在している状態と言える。同様に、軸方向D1に隣り合う部分P2同士は、軸方向D1において互いに接する部分を有し、傾斜方向に沿って接続された状態となっている。この状態は、外側領域21fが傾斜方向に沿って連続的に延在している状態と言える。このような形態を有するロータ10Cでは、ロータ10Bと同様、部分領域22fが傾斜方向に沿って延在する構成となるので、ロータ10Bと同様の効果が得られる。
【0060】
軸方向D1に対する外側領域21fの延在方向の傾斜角度、及び軸方向D1に対する部分領域22fの延在方向の傾斜角度は、それぞれロータ10Bと同様の傾斜角度であってもよい。軸方向D1に対する外側領域21fの延在方向の傾斜角度は、軸方向D1と、傾斜方向において互いに接続される各部分P1の中心を結ぶ直線との角度によって規定することができる。同様に、軸方向D1に対する部分領域22fの延在方向の傾斜角度は、軸方向D1と、傾斜方向において互いに接続される各部分P2の中心を結ぶ直線との角度によって規定することができる。
【0061】
図11は、第2実施形態の第3変形例に係るロータ10Dを示している。ロータ10Dでは、第2磁性体22Dの部分領域22gが、軸方向D1に沿って複数の部分P3に分割された構成を有しており、各部分P3が軸方向D1に沿って間欠的に配置されている点で、ロータ10Aとは相違する。各部分領域22gの周方向D2の間に配置された第1磁性体21Dの外側領域21g(第1外側領域)も、部分領域22gと同様、軸方向D1に沿って複数の部分P4に分割された構成を有しており、各部分P4は、軸方向D1に沿って間欠的に配置されている。
【0062】
図11に示すように、ロータ10Dでは、磁石12Dは、軸方向D1に沿って分割された複数の領域R2及びR3を有する。各領域R2及びR3は、回転軸線Lを中心軸とする円筒を軸方向D1に沿って輪切り状に等間隔に分割された構成を有しており、軸方向D1に沿って交互に並んで配置されている。なお、図11では、複数の領域R2及びR3のうちの軸方向D1の一端に位置する領域R2(具体的には、図9における最も手前の領域R2)が他の領域R2及びR3から軸方向D1に分解された状態を示している。
【0063】
図12(a)は、領域R2を通り且つ軸方向D1に垂直な平面においてロータ10Dを切断したときのロータ10Dの断面を示している。図12(b)は、領域R3を通り且つ軸方向D1に垂直な平面においてロータ10Dを切断したときのロータ10Dの断面を示している。領域R2は、第2磁性体22Dを含んでおらず、第1磁性体21Dのみを含んでいる。領域R2に含まれる第1磁性体21Dの部分P5は、図12(a)に示すように、径方向の内側から外側にわたって領域R2の全体に設けられている。
【0064】
一方、図12(b)に示すように、各領域R3は、第1磁性体21Dの内側領域21c及び外側領域21gに加え、第2磁性体22Dの部分領域22gを含んでいる。領域R3に含まれる部分領域22gの部分P3及び外側領域21gの部分P4は、図11に示すように、例えば、ブロック状を呈しており、互いに同一の形状を有している。領域R2と領域R3とを軸方向D1に沿って交互に配置すると、各部分P3の軸方向D1の間に部分P5が配置された状態となる。すなわち、軸方向D1において部分P3と部分P5とが交互に配置された状態となる。軸方向D1において部分P3に重なる部分P5の領域は、部分P5において径方向の外側に位置する外側領域(第2外側領域)である。
【0065】
このように第2磁性体22Dの各部分P3の軸方向D1の間には、第1磁性体21Dの部分P5が介在するので、各部分P3は、軸方向D1において互いに離間するように並んで配置された状態となる。この状態は、部分領域22gが、軸方向D1に沿って間欠的に延在している状態と言える。同様に、軸方向D1において部分P4及び部分P5も交互に配置された状態となる。但し、部分P4及びP5は共に第1磁性体21Dであるため、実際には、部分P4及びP5は、一体的に構成されることとなる。
【0066】
ロータ10Dでは、ロータ10Aと同様、磁石12Dの径方向の外側に、高い電気抵抗を有する第2磁性体22Dの部分領域22gが配置される構成となるので、磁石12Dの径方向の外側に大きな渦電流が流れることを抑制できる。更に、ロータ10Dでは、第1磁性体21Dが内側領域21c及び外側領域21gに加えて部分P5を含むことによって、磁石12Dにおける第1磁性体21Dの割合を更に増加することができる。これにより、磁石12D全体の磁気特性が低下する事態をより一層確実に抑制でき、ロータ10Dの最大出力が低下する事態をより一層確実に抑制できる。従って、ロータ10Dによれば、磁石12Dに大きな渦電流が流れる事態を抑制しつつ、磁石12D全体の磁気特性が低下する事態をより確実に抑制できる。
【0067】
[第3実施形態]
次に、図13及び図14を参照して、第3実施形態に係るロータ10Eについて説明する。第3実施形態の説明において、第1実施形態との相違点を中心に説明し、第1実施形態と重複する説明は適宜省略する。図13は、保護層13の一部を断面化して示している。図14は、回転軸線Lに垂直な平面でロータ10Eを切断したときのロータ10Eの断面を示している。
【0068】
第1実施形態では、第1磁性体21が第1領域21a及び第2領域21bに分割された場合を例示したが、第3実施形態では、第1磁性体21Eが分割されていない場合を例示する。図13及び図14に示すように、ロータ10Eの磁石12Eでは、第1磁性体21E及び第2磁性体22Eは共に、周方向D2に沿って連続的に配置されている。第1磁性体21Eは、シャフト11を囲む円筒状を呈しており、第2磁性体22Eは、第1磁性体21Eを囲む円筒状を呈している。このような形態であっても、高い電気抵抗を有する第2磁性体22Eが第1磁性体21Eに対して径方向の外側に配置されるので、第1実施形態と同様の効果が得られる。
【0069】
[第4実施形態]
次に、図15を参照して、第4実施形態に係るロータ10Fについて説明する。第4実施形態の説明において、第1実施形態との相違点を中心に説明し、第1実施形態と重複する説明は適宜省略する。図15は、回転軸線Lに垂直な平面でロータ10Fを切断したときのロータ10Fの断面を示している。
【0070】
第1実施形態では、第1磁性体21に形成される隙間GにピンPが配置されている場合を例示したが、第4実施形態では、第1磁性体21に形成される隙間GにピンPが配置されない場合を例示する。図15に示すように、ロータ10Fの磁石12Fでは、第2磁性体22Fの中間領域22hは、第1外側領域22aと第2外側領域22bとの周方向D2の間から隙間G及び溝11bに入り込んでいる。中間領域22hは、隙間G及び溝11bを隙間なく埋めている。従って、中間領域22hは、隙間Gにおいて第1領域21a及び第2領域21bの双方に接すると共に溝11bの内面に接している。
【0071】
このような形態であっても、第1実施器形態と同様の効果が得られる。また、第2磁性体22Fの中間領域22hが第1磁性体21の隙間G及びシャフト11の溝11bに入り込むことによって、シャフト11に対する第1磁性体21及び第2磁性体22Fの回り止めの機能を有する。これにより、シャフト11と第1磁性体21及び第2磁性体22Fとの間のトルク伝達が良好となる。なお、中間領域22hは、隙間G及び溝11bを隙間なく埋めなくてもよく、シャフト11に対する第1磁性体21及び第2磁性体22Fの回転を規制できれば、隙間G及び溝11bの一部分に入り込む構成であってもよい。
【0072】
本開示は、上述した各実施形態に限られず、他に様々な変形が可能である。例えば、上述した各実施形態を、必要な目的及び効果に応じて互いに組み合わせてもよい。
【符号の説明】
【0073】
1 モータ
10,10A,10B,10C,10D,10E,10F ロータ
11 シャフト
11a 外周面
11b 溝
12,12A,12B,12C,12D,12E,12F 磁石
20 ステータ
21,21A,21B,21D,21E 第1磁性体
21a 第1領域
21b 第2領域
21c 内側領域
21d,21e,21f 外側領域
21g 外側領域(第1外側領域)
22,22A,22B,22D,22E,22F 第2磁性体
22a 第1外側領域
22b 第2外側領域
22c,22h 中間領域
22d,22e,22f,22g 部分領域
D1 軸方向
D2 周方向
G 隙間
P1,P3 部分
P5 部分(第2外側領域)
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15